31
目目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.2 はは 1は ・・・・・・・・・・p.3 はははは ははははははははは は は は は は は は は は ~~ ・・・・・・・・・ p.9 ははははははは ははははは CSR は ・・・・・・・p.10 はははは ・・・・・・・・・・・・・p.10 ははは はははは・・・・・・・・・・・・・p.15 .はははははははは・・・・・・・・p.15 .は ・・・・・・・・・・・・p.20 .は ・・・・・・・・・・・・・・p.27 .は ・・・・・・・・・・・・・・p.32 ははは はは・・・・・・・・・・・・・・・p.37 は ははははは CSR はは ・・・・・・・・・・・p.41 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.45 1

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目次

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.2

谷本教授&谷本ゼミ 1期生紹介・・・・・・・・・・p.3

活動報告 ~年間スケジュール~・・・・・・・・・p.9

業界比較に見る 日本企業のCSR経営・・・・・・・p.10

  第一章  問題提起・・・・・・・・・・・・・p.10

  第二章  企業分析・・・・・・・・・・・・・p.15

       Ⅰ.電気機器メーカー・・・・・・・・p.15

       Ⅱ.損害保険・・・・・・・・・・・・p.20

       Ⅲ.建設・・・・・・・・・・・・・・p.27

       Ⅳ.商社・・・・・・・・・・・・・・p.32

  第三章  結論・・・・・・・・・・・・・・・p.37

    ~業界比較に見る 日本企業のCSR経営~

早稲田祭アンケート集計結果・・・・・・・・・・・p.41

おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.45

1

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はじめに

日本でのCSR元年から約 10年。

 企業のグローバル化や環境問題への関心の高まり、また CSRに関する議論が国際社会で活発に行われるようになりました。このような流れのなかで、企業とステイクホルダーの関係性も変化し、市民

意識の変化とともに社会が企業を見る目も厳しくなっています。それに伴い、日本企業はステイクホ

ルダーからアカウンタビリティを果たすことを求められ、CSRに積極的に取り組むようになりました。 また、企業がグローバル化し様々な国や地域に進出すると、企業に求められる責任や期待される役

割も多様になってきます。企業は多様なステイクホルダーの要望に応えようと努力し、各企業独自の

CSRを展開し、社会に対する責任を果たそうとしています。 このような社会に流れの中で、ステイクホルダーのニーズに基づき、持続可能な社会の実現と同時

に企業価値向上につながるようなCSR経営が企業には求められています。

 そこで私たちは、企業の CSR報告書を約 10年分分析し、日本企業の CSR経営は企業を取り巻く環境の変化にどのように対応してきたのか?また、業界(企業)ごとに CSRの特徴や違いはあるのか?を探ることにしました。 

 今回は以下のテーマを掲げ論文を作成いたしました。読んでいただければ幸いです。

業界比較に見る 日本企業のCSR経営

2012年 11月 19日(月)第 1期ゼミナール  葉利 史佳

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業界比較に見る 日本企業のCSR経営

INDEX

第一章 問題提起

第二章 企業分析

Ⅰ.電気機器メーカーⅡ.損害保険

第三章 結論

 ~業界比較に見る 日本企業のCSR経営~

Ⅲ.建設Ⅳ.商社

第一章 問題提起 90年代以降、企業社会の構造は変化している。 この背景には、企業の不祥事が相次いだこと

もあるが、大きな原因となったのは企業のグ

ローバル化である。企業にとっての資金調達、

生産・販売市場のグローバル化やそれによる海

外営業利益、外国人持ち株比率の増加によって、

企業に CSRを求める声が大きくなってきた。海

外でCSRの議論が活発に行われ、NGOや欧米の

評価機関や機関投資家が日本企業に与える影響も

大きなものになっている。このような流れのな

かで、企業とステイクホルダーの関係性も変化

し、市民意識の変化とともに社会が企業を見る

目も厳しくなってきた。企業はステイクホル

ダーからアカウンタビリティを果たすことを求

められるようになり、CSR経営に取り組むようになった。

 ここで言う CSR経営とは、ステイクホルダーのニーズに基づき、持続可能な社会の実現と同

時に企業価値向上につながるような経営である。

CSR関連動向

 ここで、CSRを取り巻く国内・国際社会の動

きを見ていく。(表 1-1 参照)

2003年に経済同友会が第 15回企業白書『「市

場の進化」と社会的責任』を発行し、CSRを企業の持続的な発展を図るための「投資」である

と位置づけている。この企業白書が日本におけ

る CSR ブームのきっかけになった。国際社会を

見てみると、1999年には国連グローバルコンパ

クトが提唱されている。「企業を中心とした

様々な団体が、責任ある創造的なリーダーシッ

プを発揮することによって社会の良き一員とし

て行動し、持続可能な成長を実現するための世

界的な枠組み作りに自発的に参加することが期

待されている」と提唱されたイニシアチブで、

責任ある行動をとることが要請されている。

 2002年には、南アフリカのヨハネスブルグで

リオ+10が開催され、地球環境問題について議

論が行われ、各国政府だけでなく、企業も参加

するようになった。2004年には、環境報告書ガ

イドラインが環境省より公表され、翌 2005年には京都議定書が発効され、企業社会の環境に対

する意識もより高まってきた。2006年には、多くの企業が報告書作成の際に参考にしている

9

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GRI ガイドラインの第 3 版が公表されている。 2008年には世界金融

危機が起こり、企業は財務の面で大きな影響を

受けた。最近の新しい動きとしては 2010年にISOが企業のみならずあらゆる組織を対象とし

た社会的責任に関する規格を発表した。国内で

はこの動きに早くも対応し、CSR報告書等で

ISO26000 の 7 つの中核課題に沿った報告を

行っている企業もあり、ISO26000が与える影

響は大きいと考えられる。2011年には東日本大

震災によって企業と社会の関係が改めて考え直

された。2012年はブラジルのリオデジャネイロ

にてリオ+20開催され、グリーンエコノミーを

どのように打ち立てていくかの議論が行われ、

企業も積極的にこの会議に参加した。

10

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11

京都議定書 発効

表 1-1

世界金融危機

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 日本での CSR元年から約 10年で、日本企業を取り巻く環境や CSRを取り巻く社会動向は刻々と変化してきた。それに伴い企業とステイ

クホルダーの関係や企業に求められる責任や役

割も変化している。本研究では、日本企業はこ

れらの変化にどのように対応してきたのか。ま

た、業界ごとに企業の CSRは特徴があるのか、について業界を4つ選んで分析し、考察してい

く。

リサーチクエスチョン

 この研究を行うにあたって、私たちは5つの

リサーチクエスチョンを設定した。①財務分析

から見た CSR、② 10年の変遷から見た CSR、③環境経営、④本業に組み込んだ CSR、⑤ステ

イクホルダーとの関わり である。①と②では

社会の大きな流れのなかで企業は CSRをどのように捉え、変化に対応してきたかについて理解

を深め、以降③④⑤のリサーチクエスチョンで

は、具体的に企業がどのように CSRに取り組んでいるのかを見ていくとする。

ここで、リサーチクエスチョンの設定動機につ

いて説明する。

① 財務分析から見たCSR 企業の CSRと財務状況には関わりがあるのか

を探ることで企業が CSRをどう捉えているのか

を考察する。例えば業績が悪化することで CSRへの取り組みが減退してしまうのか、逆に CSRに積極的に取り組めば企業価値は上がり、企業

に利益をもたらすのか、ということである。

② 10年の変遷

 社会の変化に照らし合わせて企業の CSRを見ることで、企業がどのようなきっかけで CSR経営を強化してきたのか、社会の変化にどのよう

に対応しているのかを理解することを目的とし、

このリサーチクエスチョンを設定した。

③ 環境経営 環境経営は CSRのなかでも各企業が特に積極的に取り組んでいる項目だ。1992年の「環境と

開発に関する国際連合会議」以降、持続可能社会

の実現には環境保全は不可欠であると理解され

るようになった。近年、一般的にもエコや省エ

ネという言葉が広まり、環境問題は社会全体で

解決の向けて取り組むべき課題として認識され

るようになった。 このことを踏まえ、企業の行

う環境保全と企業価値向上を同時に実現できるよ

うな取り組みはどのようなものかを探りたいと

考えた。

④ 本業に組み込んだCSR 社会が抱えている問題を解決するために、企

業がもつ知識や技術をなどの本業を活かしたC

SRである。CSRは単に寄付やボランティアな

どではない。企業のもつ資源を活かし本業に組

み込んで CSRに取り組むことで、企業と社会の双方に新しい価値を提供できるのがこの取り組

みなのだ。各企業、強みとなる技術や資源は異

なるため取り組む内容にどのような違いがある

かを考察したい。

⑤ ステイクホルダーとの関わり 業界、企業ごとにステイクホルダーの特徴は

あるのか、またどのようにコミュニケーション

をとり、経営に反映させているのかを見ていく。

4業界を選んだ理由

 今回、研究のために選んだのは、電気機器

メーカー、金融、なかでも損害保険、商社、建設

の4業界である。これらは B to B/B to C、市場

がグローバル化している、国内中心というよう

に2つの切り口で分けたときこれらの4つの業

界は図のように分けることができる。(表 1-2参照)業界ごとの違い見やすいのではないかと

12

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考えたため、この4業界を選んで研究を行った。

                                        表 1-2

13

市場取引形態

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第二章 企業分析本章では、各企業の CSR経営を具体的に見てい

く。

Ⅰ.電気機器メーカー

業界特徴

電気機器メーカーは、資源を調達し商

品を生産・販売そしてそれが廃棄され

るまですべてに配慮する必要がある。

社会の環境への配慮への視線が厳しく

なっている昨今、生産過程で多くの排出

物をだし、消費者の製品使用後はそれが

廃棄物となって環境に悪影響を及ぼす危

険がある。そのため、製品製造ライン

から商品使用のライフサイクルの中で

排出物削減のための技術開発や資源の有

効活用にできるかぎり寄与しようとし

ている。

 また商品への顧客のニーズは時代や場所に

よって全く形をかえる。そのステイクホルダー

の要望を早く察知しそれに応えた商品を開発し

販売しなければ社会に淘汰されてしまう。最終

消費者の顧客の声には最大限に注意を払い、事業

モデルすら変革する必要がある場合、それへの

対応も行い、時代を生き抜いてきた。また海外

に多くの関連会社をもつグローバル企業として、

その取引先や子会社などの関連会社などへの

CSRの普及や理解の共有に三社とも力を入れて

いる。持続可能な社会への取り組みは、グロー

バルな課題であり世界中の会社との協力が必要

で彼らへの普及が欠かせない。大企業として、

他の会社への CSRの理解を深めさせることにも

配慮している。

リコー

リコーは全世界 200以上の国と地域に販売拠点を持つ電気機器メーカーで、

感光紙とカメラからはじまり、複写機や

ファクシミリの開発、画像処理技術向上

を目指してきた。主にオフィス向けの製

品開発、販売を手掛ける。

グループ連結売上高が約 2 兆円、海外売上比率が約

55%のグローバル企業である。

▽財務分析から見たCSRリコーの過去 10年の財務的指標の図

から利益性・安全性・株価・収益性を見

てみると自己資本比率だけはふり幅が

少ないが、どれも 2008年でその数値を落としている。つまり、米国のリーマ

ンショックから起こった世界同時不況

の影響を受けていることが分かる。世

界各地に子会社や関連会社をもつことも

大きく関連しリコーも世界経済の影響を

うけて、その業績が著しく落ちている。

しかしそのような年、さらに次の年の

リコーの社会的責任報告書を見てみると、

このような業績にも関わらず、CSR事業には一貫した理念のもと取組み、さ

らなる CSR経営の目標設定とその具体

的計画を記載している。それはなぜか。

私たちは 3 点の理由を報告書から読み

取った。一つ目は、企業評価の基準が財

務だけでなく非財務の要素も重要視さ

れるようになったから。投資家や株主

などのステイクホルダーが企業を評価

するとき、数十年前のようにただ利益

の多い会社に投資するのではなく、会

社の社会的活動にも目を向けるような

風潮が起こっている。つまり経営が悪

化したからといって、CSR経営を一時滞らせるようなことはかえって企業評

価を下げ投資を減らしてしまう可能性

15

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がある。二つ目は、CSR経営の成果は長期的に発生してくる、ということで

ある。例えばリコーでは CSRに関する中期経営計画を三年ごとに策定している。

CSRは、CSR経営をはじめればすぐに企業利益に結びつくものではなく、投

資家がその経営を知って初めて企業評価

に変化が起こり投資に結びついたり、

初めはコストのかかるような CSR事業でも年を重ねてやっと利益向上に結び

つくものである。三つ目は、電気機器

メーカーに関しては顧客のニーズに省

エネが含まれていることである。地球

環境の急速な変化が叫ばれるようにな

り顧客のニーズは便利から、便利と省

エネに変わってきた。なぜなら省エネ

商品は従来よりも少ないエネルギーで

使用でき、かつ料金も低めるものがお

おいからだ。時代や場所によって異な

るステイクホルダーの要望を敏感に察

知し、対応した商品を生産することは

ステイクホルダーとの長期の信頼関係

を築く基盤になりうる。ステイクホル

ダーの意見を重要視する企業を、ステ

イクホルダーは評価する。そのように

して、長年のパートナーとなってくれ

るステイクホルダーの存在は企業に

とって、大きな利益になる。CSR経営をおこなうことでステイクホルダーの

要望にこたえ、長年の信頼を勝ち取る

ことが将来的に企業に大きな価値を導

くので、経営が悪化したことは CSR経営の方針を変更する理由にはならない

のだ。

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▽10年の変遷から見たCSR リコーの CSR経営に関する取り組みを見てみ

ると早期から国連グローバルコンパクトに参加

し、大企業として海外にも数多く存在するパー

トナー企業にもその CSRを広めて、CSRを世界

に目を向けて考えているのがわかる。社会全体

のグローバル化の波を感じ、自社もグローバル

企業として、場所によって異なる要望や全世界

共通で作ろうとする国際規格などに注意を向け

ている。

▽環境経営リコーは環境経営報告書を 1999年から発行しており、早くから環境問題への意識があったこ

とが分かる。環境技術開発は原材料調達から売却

先での使用、リサイクルまでのライフサイクル

全体において環境負荷の少ない製品を提供し、

環境負荷削減と経済価値の創出を同時に実現して

いくための基盤となる。 また貴重な資源を無駄

にしないため、資源循環の拡大と資源を最大限

に活かす技術を組み込む努力を行っている。

メーカーゆえに、商品を生産する上で出る排出

物をいかに削減するかが重要な課題である。同

業他社富士ゼロックスでは廃棄ゼロという目標

を掲げ取り組んでいる。リコーは環境経営の大

きな目標として、省資源・省エネ・汚染予防を掲

げている。

▽本業に組み込んだCSRメーカーでは本業に組み込んだ CSRが環境経営との境界線が引きにくいので、私たちは本業

に組み込んだ CSRは本業を活かした CSR、リコーの持つ技術を活かした活動 と考えた。

具体的に見ていくと、一つ目としてひとにやさ

しい商品。ひとにやさしい商品とは、製品の高

性能化、多機能化がすすむなか、健常者・障害

者・高齢者の隔てなく全ての顧客が使いやすい

商品を生産することである。 二つ目にカラーユ

ニバーサルデザインとは、人間の色覚の多様性

に配慮し、コピー機のカラー化で困る色弱の人

にも使いやすいように配慮されたデザインのこ

と。 三つ目にリコーサイエンスキャラバンは科

学の面白さを子供たちに広める、という社員が

ボランティアで行っている活動。子供は持続可

能な社会のために必要不可欠な存在であり 彼ら

に学問に興味を持ってもらうことがとても社会

的にもとても重要である。 四つ目に貧困国への

デジタル印刷機の寄贈がある。印刷機を、学校

16

17

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に必要な教材や文書などの印刷に活用すること

で、教育環境の改善に貢献でき、同時に印刷機の

活用状況を把握することで新たなマーケットの

開拓に繋げるという目的もある。

五つ目に、BOP(Base of the Pyramid)といわれる途上国の貧困層の人々との信頼関係を築き、現

地の人々を対等なパートナーとして彼らの社会

的課題の解決策を一緒に考え、現地の持続的な発

展につなげ、さらに新しいビジネスの創出を目

指すという取り組みも行っている。

メーカーは本業の製品の製作に関連した CSRが多いのが目立つ。製品の基本品質の強化や新た

な価値創造には常に力をいれている。開発設計

段階では安全性に特に注意し基準を徹底して遵守

し製品責任と市場品質情報管理を強化。製品に関

する顧客の声には常に気を配り、製品生産に関

しては PDCA サイクルにあわせ、チェックや改

善を怠らない。

同業他社を見ると、キヤノンでは、医療現場か

らの要望にこたえたデジタルカメラの X 線撮影

機を開発した。

▽ステイクホルダーとの関係最終消費者である顧客の存在を基礎において

製品を生産しており、顧客のステイクホルダー

としての意見を重要視している。リコーに関し

て特筆すべきは株主との関係である。社会貢献

積立金制度では、売り上げの一部を社会貢献の

NGO/NPO に寄付しようというもので株主総

会・取締役会の承認を得て行っているものであ

り、従業員・株主・取締役が協同のまさに三位一

体の活動である。CSR経営を株主など、企業の

ステイクホルダーの承認のもと、一丸となって

行っているのでこの活動に関してリコーは理想

的なCSRの在り方である。

 他にも、地域社会というステイクホルダーと

の関わりでは、積極的な活動が同業他社でも大

きな項目として挙げられている。キヤノンや富

士ゼロックスでは本業を活かした地域貢献が特

徴的である。キヤノンでは最新技術と京都伝統

工芸の融合で複製品の作成に寄与している社会貢

献活動「綴プロジェクト」に取り組んでいる。

キヤノンUSAは 1997年より、米国で誘拐など

によって行方不明になっている子どもたちの救

出に取り組むNPO「NCMEC(National Center for Missing & Exploited Children:全米失

踪・被搾取子どもセンター)」を支援。行方不明

者の写真の配布のために必要な機器を寄贈。富士

ゼロックスでは古文書復元の地域貢献。富士ゼ

ロックスの技術を生かしたほんものそっくりの

3D次元のコピーを作成する。さらに、震災時、

多くの医療機関が被災したが、医師たちが紙で

保存していたカルテを電子化することを検討し

ている。

 また、ステイクホルダーダイアログを開催し

有識者からの意見収集も行われている。たとえ

ばリコーでは 2009年には社会貢献と本業を絡めて価値創造のCSRを行うためにダイアログを開催し途上国の社会問題に実績をもつNGOや国際機関とデジタル機器に詳しい先進企業の人々を

召集して意見を求めている。2010年には人権に

関する有識者を招いて意見を共有している。ま

たキヤノンでは、サステナビリテイ報告書の作

成時点でステイクホルダーダイアログを開催し、

ステイクホルダーの意見をできるかぎり反映さ

せた。

同業他社との比較

リコーの同業他社としてキヤノンと富士ゼ

ロックスの CSR報告書をしらべた。三社ともグ

ローバルに展開する大企業であり類似した点が

いくつもみられた。環境経営に関しては廃棄物

削減や資源を最大限に活用することに関する計

画や報告がかなり豊富にあげられている。中長

期環境負荷目標やリコーグループ生物多様性方針

を策定し資源循環の拡大と資源の有効利用を目指

18

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し続けている。

 キヤノンではキヤノングループ環境憲章に沿

い、より少ない資源でより大きな価値を出す

「資源生産性最大化」を推進している。「製品の

高機能化」と「環境負荷の最小化」を同時に達成

することを目指す「キヤノン環境ビジョン

Action for Green」がある。原材料の調達から

生産、販売 物流、使用、廃棄・リサイクルに至・る製品ライフサイクルのすべての段階において、

環境への配慮を徹底した製品開発に注力してき

たキヤノン製品使用時の二酸化炭素排出量や削減

効果を確認できるweb サイトGreen Webを開設。2011年からは実際の製品の環境負荷を「見

える化」する「Eco情報プラグイン」の提供を

開始した。これは消費電力や、二酸化炭素排出量

が分かる。事業活動に伴う二酸化炭素削減→節電。

電力監視システム、リアルタイムでの電力使用

状況、事業所ごとの節電実施状況を「見える化」

した。

 富士ゼロックスでは二酸化炭素抑制にかんし

て 2020年温室効果ガス削減目標」を 2009年に発表した。顧客の商品使用時の環境負荷削減も配

慮しサプライチェーン全体を含めた低炭素なも

のづくりの仕組み構築を目指している。

商品廃棄ゼロへの取り組みは「使用済み商品は

廃棄物ではなく貴重な資源である」という考え

でリユース、リサイクル。廃棄ゼロを目指す、

「資源循環活動」。

 節電対策として各組織の担当者が自部門の電力

使用状況を確認する「見える化」を開始。従業員

使用電力を 30%削減した。

また環境配慮型商品の生産に取り組んでおり、

その大企業の責任としての関連会社や子会社へ

の CSR 調達も行っている。ステイクホルダーと

の関係では、キーとなる株主や投資家、消費者

の意見を重要視しつつ、それぞれとのコミュニ

ケーションを行う。有識者会議を行って意見を

交換したり、関連会社との勉強会を開催して理解

を共有しようとしている企業もある。

まとめ

電気機器メーカーの分析のまとめを行うと、

財務分析に関しては CSRが長期的に金銭的また

は社会的利益に結びつくと捉えている。10年の変遷では、自社のグローバル化に伴い、国際的

な CSRの流れにも受け身ではなく積極的に反応

している。環境経営では環境負荷削減のための

技術開発や資源の有効活用や排出物削減へ数多く

取り組み、本業に組み込んだ CSRでは高齢者や

障害者や色弱者のニーズにも対応した商品生産

を行う。これは需要があまり望めない可能性が

ある、もしくはコストと手間が多少かかる可能

性があるが行うことに意義がある。ステイクホ

ルダーとの関係では、関連会社への CSRの普及

を行い、数多くの会社が協同で取り組む必要性

に配慮している。製品は、資材調達から顧客へ

の販売、使用済み製品の廃棄または回収までが

メ―カー企業の責任のうちという認識もあり、

サプライヤーへの CSRの理解を深め、社会的責

任へのレベルアップをはかる。リコーでは 2006年にリコーグループサプライヤ―行動規範を制

定し各サプライヤーに遵守させている。富士ゼ

ロックスではバリューチェーン全体を富士ゼ

ロックスの責任と考え社会に価値を創造する行

動を徹底しサステナビリテイに貢献する。

19

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Ⅱ.損害保険

 金融業界は銀行、証券会社等、様々あるが、今

回はその中でも比較的 CSR経営が進んでいると言われている損害保険業界を中心に考察してい

く。

損害保険業界の特徴

損害保険業界の CSR経営を分析した結果、業界全体の特徴として次のような傾向が見られた。

少子高齢社会が続き、自動車保険が売れなくな

るなど不況が続く中でも、の取り組みには積極

的である。それは金融危機で世界全体が財政的

に大打撃を受けたが CSR経営に関してはそれほど影響が無い。 むしろ、年を追うごとに環境マ

ネジメントや本業を通じた取り組みが幅広く展

開されるようになり、CSR性の強い商品やサー

ビスの開発が進んだ。さらに保険業界という国

内市場が中心の業界と言うことから基本的には

国際的な動きよりも国内の動きに敏感なのであ

るが、最近では海外進出を睨んで海外の顧客を

ステイクホルダーとして強く意識している様子

が見受けられる。

ここから、これらの特徴が実際どのような経

営状況から言えるのか 5つの視点から見ていく

ことにする。また今回は損害保険業界の CSRをリードする損害保険ジャパンを中心に見ていく。

その他にも東京海上日動火災保険、三井住友海上

火災保険の 2社を調べた。2社の取り組みについ

ては同業他社の取り組みの章で具体的に考察す

る。

損保ジャパンについて

自動車保険などの国内損害保険事業を中心に、

国内生命保険事業、海外保険事業など様々な事業

を展開。2010年に日本興亜損害保険株式会社と

経営統合し、NKSJHD傘下に入る。東京海上HD、

MS&ADインシュアランスグループHDと並ぶ、

いわゆる「三メガ損保」の一角。

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▽財務分析から見たCSR厳しい雇用・所得環境とそれに伴う個人消費と

住宅投資の低迷の中、2004年ごろから輸出の増

加や企業の収益の上昇、設備投資の増加があり、

景気が好転することもあった。2005 年から2006年にかけて保険業界全体で発覚した保険金

未払い事件において、損保ジャパンにも違法業

務が認められ、2006年には金融庁より処分を受

けているが、この未払いは支払システムの不備

により生じたもので、業績がとりわけ悪化して

いたわけではない。

しかし、2007年の半ばごろからサブプライム

ローン問題のあおりを受けて世界規模での信用

収縮が発生するなど、景気減速の懸念が強まっ

た。2008年度は、リーマンショックにより世界

的な金融危機の影響を受け、有価証券で多額の評

価損を

計上した。

 2009年には市場環境の回復が見られたものの、

日本の高齢化が原因で本業の自動車保険の収益が

伸び悩み、2011年には東日本大震災とタイの洪

水の影響により損害率が大幅に上昇した。

以上のような経営環境に置いて、他の財務指標

も悪化を示している。ROE/ROAはもともと年によっては「普通」基準(ROEは 10%弱、ROAは 1~2 %)をクリアできていなかったが、

2008年の金融危機以降は低下の一途をたどって

いる。ROAの低さは損保ジャパンの事業効率が

悪いことを示している。ROEも一貫して平均的数値を下回っているため、株主利益が尊重され

ていない状態になると言える。2011年度には過

去最低の数値を記録した。

自己資本比率も、20~30%で良い企業と呼ば

れることを鑑みると、2007年まではおおむね良

好な財務体質だったと言える。しかし、2008年の金融危機以降は株価とともに右肩下がりであ

る。国際業務を行う銀行等に適用される国際基準

が最低 8%であるから、基準はクリアしている

もののグローバルな経営を拡充する企業として

は心もとない数値である。

株価に関しては、金融危機の煽りを受けて

2008年以降低下の一途をたどる。NKSJHDに合

併後、株価は一時 3000 円台近くまで上がったが、

落下傾向に変化はなく、最近は 1500 円付近で低

迷している。損保ジャパンの株は相対的に割安

な状態になっている。

財務面に関して、2008年の金融危機以来、業

績は悪くなる一方だが、損保ジャパンの CSR活動はそれに反比例して縮小するような動きは認

められなかった。むしろ、タイの洪水や東日本

大震災を考慮した事業展開を行うなど本業を通

じて社会のニーズに応えようとしているのが分

かる。この点で、経済状況に関わらず、損保

ジャパンは企業の社会的責任を重視した経営を

行う努力をしていると言うことができる。

図3-1 損保ジャパンの10年間の財務分析

20

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▽10年の変遷から見たCSR2002年から 2011年の 10年間の間で、社会で起きた動きに対し、損保ジャパンがアクショ

ンを取った事例を挙げる。

CSR元年と言われ、経済同友会による第 15回企業白書『「市場の進化」と社会的責任経

営』が発行されるなどした 2003年以来、CSRの専門部署を設けたりと、自社の CSRを推進するための体制を整える動きが活発化している。

2005年には、地球温暖化の原因となる温室

効果ガスについてその削減率を定めた「京都議

定書」が発効された。同年、損保ジャパンでは

機関投 資 家としてカーボン・ディスクロ

ジャー・ プロジェクト(以下 CDP)へ参画した。

CDPは、世界の主要な機関投資家が連携して、

各国の企業に気候変動への戦略や温室効果ガス

の排出量の公表を要請することで、企業の気候

変動対策を促す。

同年、保険金の不払い及び不正営業で金融庁

から処分を受けた。これを受けて損保ジャパン

は契約管理システムや事務手続きの見直しなど

を軸とする再発防止策を策定。コンプライアン

スの強化と併せて「顧客」がステイクホルダー

の中で一番という基本に立ち返り、2007年からは顧客からの苦情の状況とそれを生かした取

り組み改善事例等が記載された「お客様の声白

書」を発行するなど顧客の意見を反映する動き

が顕著になった。同時に、「PDCA サイクルに

基づく実行計画の策定」も開始された。NPO/NGO 等の有識者からフィードバックをもらっ

てそれを CSR経営のプラン策定に取り入れる

ようになっている。

2009年には生物多様性条約 第 10回締約国会議(COP10)が開催され、「名古屋議定書」

が採択された。名古屋議定書の中では、「2020

年までに生物多様性の損失を止めるための行動

を起こす」ことを掲げ、その下に保護地域の設

定など 20の個別目標が定められた。

損保ジャパンでは同じく 2009年に「SAVE JAPAN プロジェクト」 の取り組みを始めた。

「SAVE JAPAN プロジェクト」は損保ジャパ

ンと NPO法人日本 NPOセンター、 各地域の

NPO 団体が協働で主催する市民参加型の環境保

全活動である。損保ジャパンの契約者がWeb約款を選択した場合、保険料の一部を活用し、

日本各地の環境 NPOなどへ寄付を行う。(

21

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Web約款とは、保険などの契約書を「紙」の

印刷物ではなく、 ホームページ上で受け取れ

るようにする仕組みである。大幅な紙の節約に

なり、輸送コスト(二酸化炭素)も削減でき

る。)

全体を通して世界的な会議やその中で出てき

た動向よりも国内で定められた法律や条例など

の方に比較的敏感に反応する傾向がある。CSRという定量情報ではなく定性情報を扱うことが

多い事柄に関しては、世界的な会議においても

結論が抽象的で曖昧なものに留まるケースは少

なくない。それよりも国内法や条例という形で

差し迫った必要性を与える方が企業はそれを経

営に反映させる努力をするのかもしれない。

▽環境経営損保ジャパンでは気候変動に対してその「緩

和」と「適応」、そして「生物多様性保全」の

三つを掲げて CSR経営の一つの課題としてい

る。本章では損保業界全体として強く取り組ま

れている「紙の使用量削減」、「CO2 排出総量

の削減」、「生物多様性の保全」について見て

いく。

環境経営の軸:損保ジャパンは環境マネジメ

ントの軸を国際規格である ISO14001に置い

ている。さらに本社・事務本部以外の全国の地

区本部・支店・支社では、ISO14001 認証をも

とに独自開発したマネジメントシステム“E-ことプロジェクト”を導入し、地域の特徴を活か

した活動に取り組んでいる。

・紙使用量の削減:損保ジャパンでは紙使用量

総合管理計画に基づき、PDCA サイクルによる

マネジメント体制を構築し、紙使用量削減に取

り組んでいる。拠点ごとの紙経費データの「見

える化」による紙使用量削減を推進している

2011年度の紙使用量は 6,366tとなり、前年に比べ 23.1%の削減となった。特に、自動車

保険Web約款の導入効果により、約款・しお

りの紙使用量は前年度比 51.5%の削減となっ

た。

・CO2 排出総量の削減:全社的な CO2 削減に

ついては、「2020年度までに 2002年度比 40 .5%、2050年度までに同 56 .0% CO2総量削

減」という目標を掲げ、2011年度は 2002年度比で 39 .5%の削減を達成している。具体的

な取り組みとしては、環境に与える負荷ができ

るだけ小さい製品の優先的購入(グリーン購

入)の推進、バリューチェーンの CO2 排出の

調査・報告を支援、社有車の低公害車両への入

れ替、エコ安全ドライブの実施などを行ってい

る。

・生物多様性保全:損保ジャパンでは生物多様

性民間参画パートナーシップに参加している。

同団体は、2010年、COP10の 開催を契機に、

「生物多様性民間参画パートナーシップ行動指

針」の趣旨に賛同した事業者、経済 団 体、

NGO、政府などにより設立された。その他に

も全国8か所の自治体地方自治体と協定を締結

し、地域の方々、グループ社員、代理店、その

家族とともに森林整備活動や環境教育を展開し

ている。

自然災害と密接な関係にある保険会社にとっ

て、気候変動のリスクに「適応」し「緩和」を

促すことは、重要な経営課題であると同時に、

ビジネスの機会でもある。一方で保険業界は直

接的に生物多様性の劣化に大きな影響を与える

業種ではないが、事業を通じて環境に負荷を与

えていることから、生物多様性保全に積極的に

取り組んでいる。また前章で触れた「SAVE JAPAN プロジェクト」や、同事業の中のWeb約款、そして全国の森林整備活動といった事業

は、社内だけで出来る省エネや募金のような企

業の力のみで成立する取り組みではない。なぜ

ならそれらの活動は社員、顧客、地域社会、

NPO/NGOといった様々なステイクホルダーを組 み 込 ん だ 事 業 と な っ て い る か ら だ 。

22

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ISO14001のような国際規格を積極的に採用し

たり、CDPに参加することもグリーバル企業

として当然賞讃に値する。しかしそれ以上に、

ステイクホルダーエンゲージメントと環境経営

が両立出来ているという意味で、損保業界の環

境経営は非常に「先進的」である。

▽本業に組み込んだCSR保険業界では本業に組み込んだ CSR、つまり社会的事業が積極的に行われている。損保ジャ

パンでは本業である金融・保険機能を活かして

社会的課題の解決を目指している。即ちこれが

損保ジャパンの社会的事業である。

エコファンド:環境問題に積極的に取り組ん

でいる企業の株式に投資する種類の投資信託。

損保ジャパンは『損保ジャパン・グリーン・

オープン(愛称:ぶなの森)』を運営。

SRI ファンド:エコファンドの CSR 全域版。

損保ジャパンは『損保ジャパン SRI オープン

(愛称:未来のちから)』を運営している。エ

コに限らず、CSR上の諸課題に積極的に取り組

む企業の株式に投資する投資信託。『ぶなの

森』と『未来のちから』は、2012年 R&I ファ

ンド大賞の優秀ファンド賞を受賞しており、外

部からも高い評価を受けている。

マイクロインシュアランス:インドには貧困

層が 34%を占め、多くが農村部に居住している。そのような現状を受けて、インド現地法人

が、北部の農村地帯を中心に、2008年 2月、マイクロインシュアランス(小規模保険サービ

ス)の提供を開始した。マイクロインシュアラ

ンスが融資のバックアップとなり、農業従事者

はお金が借りやすくなる。さらに、農工具など

の購入で生産効率が向上し、収穫率が上がると

いう好循環を生み、継続性のある貧困改善に寄

与している。

天候インデックス保険:2010年 1月にタイ東北部で販売を開始した『天候インデックス保

険』。気候変動への適応策のひとつとして、稲

作農家の干ばつによる損害の軽減を目的とした

この商品は、2012年から販売地域を 9県に拡大している。農業経営のリスクの一つとして、

風水害や台風などの自然災害や、低温・日照不

足などの天候不順によるリスクがある。近年、

異常気象による大規模災害が増加しているなか、

リスクを軽減・回避する「適応」策の一つとし

て、世界的にも期待されている。

保険会社には資産運用を行う機関投資家の立

場として ESGに配慮した責任ある投融資が求

められている、という考えの元、SRI ファンド

を立ち上げ、国連の PRI(責任投資原則)に署

名し、SRIの普及に尽力している点は非常に高

く評価でき、本業に組み込んだ CSRを展開していると言える。また、マイクロインシュアラ

ンスと天候インデックスは近年注目されている

BOPビジネスである。海外における BOPビジネスは、現地のステイクホルダーと有効な関係

を築く必要があるが、実際にインドで運営に当

たっているユニバーサルソンポ(USGI:UniversalSompo General Insurance Co. Ltd.)は、インド国営銀行が関与する初めての

損害保険会社で、政府というステイクホルダー

とうまく付き合うことができている。損保ジャ

パンは損保業界の中でも CSR性の高い商品や

サービスを幅広く展開出来ている好例であろう。

▽ステイクホルダーとの関わり損保業界では、建築、電気機器メーカーと違

い、どれか特定のステイクホルダーに注力した

エンゲージメントをしている、というわけでは

ない。もちろん B to Cの企業であるから顧客

が第一ということになるが、以下の図が示す通

り、様々なステイクホルダーと均一な関係を

23

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保っている。環境や、投融資先企業、などは先

述したようにかなり先進的な取り組みが行われ

ている。

 また、損保業界で特徴的なステイクホル

ダーとして、代理店が挙げられる。損保ジャパ

ンは代理店に対して大きく2つの取り組みをし

ている。

一つ目は、経団連が定めた「企業行動憲章」

に基づくアンケートを実施すること。二つ目は、

損保ジャパンに対して代理店が CSRレポートを提出することを要請することである。これら

を行うことで代理店に対して損保ジャパンの掲

げる理想の CSRについて理解を深めてもらい、

適合するように促している。また、社内に「ち

きゅうくらぶ」というボランティア団体を作っ

た。これは社員全員が「ちきゅうくらぶ」の会

員であるという位置付けで、全国の代理店を通

じてボランティア活動が行われている。さらに

その過程で、地域社会とも関わりがある。先の

「SAVE JAPAN プロジェクト」や、森林整備

活動で関わる NPOや地方自治体と共同で植林

活動をしている。

損保ジャパンのステイクホルダーエンゲージ

メントは多岐にわたっている。しかし、だから

と言って広く浅い印象は受けない。主要事業の

自動車保険に関連させたエコ安全ドライブの推

進や、身体ケアといった生命保険事業に関する

取り組み、さらにはインドや、タイで行われて

いるマイクロインシュアランスや天候インデッ

クスといった BOPビジネスと平行して、安定

した生活の為のボランティア活動も行われてい

る。これらは本業に組み込まれた事業であるの

と同時にステイクホルダーのニーズをしっかり

捉えた取り組みである。従って今後の事業展開

を見据えた上でも有効であると言える。

さらに前述したように、顧客を始め様々なス

テイクホルダーとコミュニケーションを取って

いる。CSRレポートの巻末でも確認できるが、

NPO 等の有識者を呼んで、CSR部署の担当者

を中心に社員とステイクホルダーミーティング

が行われている。損保ジャパンではこれを

CSR経営の策定プランの有効な手段として活用

している。CSR経営の 5つの重点課題を定め

る上での重要なプロセスにステイクホルダーダ

イアログが組み込まれているのである。NKSJグループ全体が大きくなる一方で、どれだけス

テイクホルダーと双方向のコミュニケーション

を図り、ニーズを把握していけるかが今後の課

題である。

図3-3 損保ジャパンの主なステイクホルダー24

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▽同業他社比較

今回は損害保険業界の中でも「三メガ損保」

と呼ばれる東京海上日動火災保険と三井住友海

上火災保険を調べた。

環境マネジメントに関しては、2 社共に

ISO14001の認証を取得し、さらに独自の環境

マネジメントシステムを導入している。CO2削減にも力を入れていて、特に東京海上日動は

カーボン・ニュートラル(事業活動により生じ

る CO2 排出量に対して、植林や自然エネル

ギーの利用、排出権クレジットの償却等による

CO2の吸収・削減効果の換算量が等しい状態を

さす。)を 2009年から毎年連続で達成してい

る。また三井住友海上では生物多様性に関する

シンポジウムを 2007年から実施している。環境省からの後援も得ている。同社は各業種 14社の賛同を得て発足した「企業と生物多様性イ

ニシアティブ(Japan Business Initiative for Biodiversity(JBIB))」の会長会社を務めて

いる。

本業を通じた取り組みに関しても3社とも共

通してマイクロインシュアランス、天候保険

GreenPower サポーターのようなWeb約款を使った環境に関する社会貢献活動等を行ってい

る。これらの活動の結果、2社とも保険商品に

「エコマーク」が認定されるようになった。

2社共にステイクホルダーとのコミュニケー

ションを重要視している。苦情対応マネジメン

トシステム(ISO10002)に準拠した業務態勢

の見直しを行い、顧客の声を分析し、事業に取

り入れるサイクルを形成している。これらの改

善に向けた取り組みの内容・結果などについて

は、ホームページで順次公表し、顧客にも改善

状況が確認できるようになっている。他にも双

方向のコミュニケーションを実現させるために

Facebookも用いられている。

結果的に言えば、3社共に活動の幅に違いは

無かった。国際規格に準拠したマネジメントサ

イクルを採用し、CO2 排出削減、紙の使用量削

減、生物多様性保全に力を入れている。本業を

通じた活動についてもマイクロインシュアラン

ス等、海外における BOPビジネスが目立つ。

植林活動等、社会貢献活動に関しては、インド

や東南アジアで行われている場合が多く、海外

での事業と併せて現地のステイクホルダーと信

頼関係を築くための戦略の一環なのかもしれな

い。顧客の声にしっかり耳を傾けようとするの

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は保険会社が BtoC企業だから当然なのかもしれないが、有識者との会談を始め様々なステイ

クホルダーの意見を反映させようとするのはや

はり 2006年度の金融庁からの保険業界全体に

対する監査と行政処分からの反省があるようだ。

図3-4 東京海上日動と三井住友海上のCSR経営

まとめ

損保業界は経営環境として 2007年の金融危機

以降厳しい状態が続いている。また、2011年には東日本大震 災、タイ洪水被害などがあり、

2012年にも中国での反日デモの暴動が激化し撤

退を余儀なくされるなど、不況の出口は見えな

い。

そんな中にあって、損保業界は総体的に見て

積極的に CSRに取り組むことができていると言

える。2004年の京都議定書の発効以後は環境マ

ネジメント、とりわけ二酸化炭素排出量削減へ

の取り組みに積極的である。現在ではカーボ

ン・ニュートラルを実現する企業も出てくるな

ど非常に先進的な水準に至っている。

CSR経営を推進する上で、国際的な会議や規

格の動向よりも、国内法や国内の経済団体の動向

により敏感に反応する傾向があるが、これは

現在の損保業界の主な市場が国内であるためと

考えられる。

社会的事業としては損保企業としてのノウハ

ウを生かして社会性の高い保険商品やリスクコ

ンサルティングを展開している。これら損保業

界の社会的事業やボランティアや寄付など社会

貢献活動は東南アジアの発展途上国を対象にし

たものが主となっていることが非常に特徴的で

ある。これは東南アジアで積極的な CSRを展開することで、現地での企業ブランドやレピュ

テーションを高め、東南アジアでの事業展開を

有利に進めたいという各企業の CSRを本業に繋げるための戦略という側面もあると推測される。

国内事業が少子高齢化などの煽りを受けて頭打

ちとなる中で、次の市場としてインドや東南ア

ジアは財務/非財務戦略の両面で焦点となって

いる。

26

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Ⅲ.建設

 建設業とは建設工事を施工することを主とし

ている事業である。 大きくわけると(1)建築物、

土木施設、その他土地に接着する工作物とそれ

らに付属する設備を新設、改造、修繕、解体、除

去および移設すること、(2)土地、水路などを改

良、造成すること、(3)機械装置を備え付け、解

体、移設することなどの事業がある。今回は大

成建設を中心に清水建設、鹿島建設を研究対象と

し、建設業界の CSR経営について導き出していく。

◆建設業界特徴まず、業界全体の客観的特徴からみていくこ

とにする。建設業界では2つの業界特徴がある。

一つ目に環境ビジネスに重点を置いていること、

二つ目に談合問題があったことである。一つ目

の環境ビジネスでは、建物を建設する際にその

現場は常に屋外であることが大きく関わる。現

場が屋外であり尚且つ場所が現場ごとに変わり

一定しない。つまり環境に直接影響を与え、ま

た大きく見れば広範囲であるといえる。建設を

する際にその周りの環境の負担の上で成り立っ

ているため、考慮に入れない限りよりよい仕事

ができないことは明らかである。二つ目の談合

問題は建設業界特有の問題である。談合問題とは

企業間で価格や生産数量、販売地域などを協定す

ることである。特に公共工事関連での入札で見

られた。談合が行われることにより企業同時で

の過度な値引き合戦や赤字受注の入札を防ぐこ

とになる。しかし談合行為は公共工事の高騰を

抑制する目的に自由競争を導入するという入札

制度の趣旨に反していて、独占禁止法にあたる。

近年では 2007年名古屋市発注の地下鉄工事談合

事件を最後に談合事件はなくなったといわれて

いる。

◆大成建設ここからは大成建設について財務的視点、10年間の変遷、CSRの取り組みを記述する。

大成建設は 1873年に創立された建設会社であ

る。従業員は 8000 名を超え、国内営業所を

53ヵ所、海外営業所を7か所もつスーパーゼネ

コンの一つである。大成建設グループの事業は

土木事業、建設事業、開発事業を主に行っていて

他にもエンジニアリング事業、環境事業、開発

事業、コンサルティングなどを行っている。

CSR経営において第一とするのは、「グループ

理念=人がいきいきとする環境を創造する」で

ある。全役職員が「大成スピリット」(:「グ

ループ理念」を追求・実現するために、大成建設

グループ全役職員が大切にする考え方)を共有

し経営計画系と行動指針系を実施することで、

グループ理念の実現を目指す。

▽財務分析から見たCSR図 4-1を参照してほしい。これは大成建設の

10年間の財務表である。経常利益と純利益は収

益額、ROEと ROAは収益性、自己資本比率は安

全性、株価は現在取引されている当該株式の気配

値を示している。ここの図から 2008年に経常利益、当期純利益、ROA、ROEが大きく落ち込

んでいることが顕著であることがわかる。これ

は 2007年のリーマンショックをはじめとする

世界金融危機の影響によるものだと考えられる。

2009年以降徐々に回復に向かうが 2011年の東

日本大震災で建築物が大きく被害を受けたこと

により再び落ち込むこととなった。株価をみて

みると 2006年から落ち込んでいることがわか

る。これは脱談合宣言後に再度の談合事件の発覚

の影響であると考えられる。財務的視点から社

会の影響を大きく受けることがうかがえる。

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図 4-1 財務分析

図 4-2 10年の変遷

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▽10年の変遷から見たCSR大成建設の主な出来事と言えばやはり談合問題

である。図 4-2を参照してほしい。2000年を過ぎたあたりから談合ブームといわんばかりの

不祥事が相次いでいた。これを受け 2005年は脱談合宣言や CSR委員会が設置されるなど、大成

建設が CSR経営に向けて大きな一歩を踏み出し

た年である。しかし 2005年末の脱談合宣言以後

の防衛施設庁談合事件、そして 2007年の名古屋市営地下鉄桜通線の延長工事に関する再度の談合事件が起こる。脱談合宣言以後最初の談合事件が起きた 2006年にコンプライアンス委員会を発足、CSR報告書を刷新やグループ経営理念制定などを行い CSRについて見直すこととなる。名古屋市営地下鉄工事談合事件以降、談合事件は起こっていない。

▽環境経営大成建設は「人がいきいきとする環境を創造

する」というグループ理念のもと、自然との調

和の中で、建設事業を中核とした企業活動を通じ

て、良質な社会資本の形成や生活環境の改善に取

り組んでいる。一方、環境問題は地球規模でま

すます深刻化しており、企業活動は環境への負

荷の上に成立している。これらを環境経営の原

点として捉え、環境配慮型社会の形成をめざし、

グループ会社とともに全ての企業活動において、

「環境の保全と創造」に努め、「先駆的な環境事

業」を推進している。

具体的に、2011に大成アジェンダという目標

を立て「地球温暖化への対応」「資源の有効利

用」「生物多様性の保全と環境貢献活動」「環境

リスクへの対応」「環境技術研究・開発と提案力

の向上」「総合的な環境活動」のそれぞれの項目

に適切な目標をたて、実践している。

また、その環境経営の質の高さから 2011年に株式会社日本政策投資銀行が実施する環境格付融

資において最高ランクの格付を取得した。また、

「環境への配慮に対する取り組みが特に先進

的」で、格付評点が傑出して高い企業に贈られ

る「特別表彰」を受賞しました。他にも 2012年に環境省の『エコ・ファースト制度』の認定を

取得した。『エコ・ファースト制度』は、環境

省が企業の環境保全に関する業界のトップラン

ナーとしての取組みを促進するために実施して

いる制度である。環境大臣に対し、企業が自ら

環境保全に関する具体的な取組み内容、実施年限

などを約束し認定されるものである。

▽本業に組み込んだCSR

 大成建設では社会的にも企業的にも価値を生み

出す取り組みとして 2010~2014年度の中期経営計画において「建設業の社会的責任の遂行」

「高付加価値化に向けた事業構造の確立」の二つ

を基本方針とした。この基本方針から社会的課題

と大成建設の事業を照らし合わせ、災害に強い

安心・安全な街づくりと、低炭素・循環型社会の

構築に取り組んでいる。

 この中の取り組みの一つ目に「ゼロ・エネル

ギー・ビル(ZEB)」への挑戦である。ゼ

ロ・エネルギー・ビルとは省エネルギー、創エ

ネルギーの技術を駆使することでビルに必要な

石油や天然ガスなどの1次エネルギー消費量を

ゼロにするビルのことである。経済産業省では

このゼロ・エネルギー・ビルを 2020年までで新築の公共建築物、2030年までに全新築建築物

に取り入れる目標を掲げている。大成建設は

2006年に他社に先駆けハーフ・エネルギー・ビ

ルを達成し、2014年の早期実現を目指している。

また、対象をビルだけではなく地域全体を対象

にしたスマートコミュニティの構築も取り組ん

でいる。その一つとして現在横浜市が推進する

「横浜スマートシティプロジェクト」に参画し

ている。

 二つ目に「災害に強い社会づくり」である

2011年の東日本大震災が起こったことにより、

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地震や津波に負けない建物づくりを通じて、安

心・安全な社会を実現することが建設業の使命

として取り組みを行っている。この取り組みに

お い て 具 体 的 に 減 災 対 策 を は じ め 、

BCM ( Business   Continuity Management)の策定や運用をサポートしてい

る。BCMとは企業が災害や不祥事などの緊急事

態が発生したときに重要な事業を続け、もしく

は被害を最小限におさえる活動に取り組むうえ

で、事業継続計画の策定から、その導入・運用・

見直しという継続的改善を含む、包括的・統合的

な事業継続のためのマネジメントのことである。

▽ステイクホルダーとの関係利害関係者であるステイクホルダーは多数存

在する。この場では大成建設における特徴的な

三つのステイクホルダーについて記述する。

 一つ目に「環境」である。上記にある建設業界

の特徴でもあるように屋外で一定しない現場で

あり、事業が環境の負担の上で成り立っている

ということから特に重視されている。取り組み

としては環境経営や本業に組み込んだ取り組み

で記述の通りである。

 二つ目に「政治・行政」である。建設業界の

CSRの取り組みのきっかけとして談合問題があ

げられる。そのためどの企業もコンプライアン

スを徹底している。この点からして政治・行政

は欠かせない存在であり他業界ではあまりみら

れない特徴的なステイクホルダーである。

 三つ目に「地域社会・国際社会」である。事業

現場である地域社会との良好な関係構築やその

文化・慣習の尊重はかかせないものとなってい

る。具体的に建設事業の見学会や展示会、ボラン

ティア活動を行っている。

◆同業他社との比較

建設業界の特徴を導き出すために大成建設と

おなじスーパーゼミコンである清水建設、鹿島

建設も同様に環境経営、本業に組み込んだ取り組

み、ステイクホルダーとの関係の三つの観点か

ら考察を行っていく。

環境経営を重視する点や本業に組み込んだ取り

組みは大成建設と大きく異なることはないこと

がわかる。その中でも鹿島建設の環境マネジメ

ントシステム監査は内部監査であり、新しい取

り組みだといえる。ゼロ・カーボン・ビルや

BCMは建設業界全体の課題であることもうかが

える。ステイクホルダーとの関係は少しずつ異

なっているようである。清水建設は地域社会と

の様々なコミュニケーション活動を行っている。

例えば地域の人向けに行う事業の見学会、株主や

学校向けに行うシミズオープンアカデミーや学

生向けの環境ビジネスコンテストなどである。

シミズオープンアカデミーは「建築・ものづく

り」の意義・楽しさを伝え未来の建築の担い手

ともなる青少年の育成に貢献するとして 2012年に日本建築学会教育賞を受賞している。また鹿

島建設はステイクホルダーの意見を積極的に受

け入れるようにアンケートを実施したり、情報

発信のツールを多数利用している。

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図4-3 同業他社との比較

◆まとめ 以上より建設業界のCSR経営のまとめに移る。まず財務との関連から見ていく。建設業界全体

がリーマンショックにはじまる金融危機、談合

や東日本大震災で財務的に一時落ちこむことに

なるが CSR活動を怠ることはなかった。これは経営そのものに CSRという考え方が含まれてい

るためだと考えられる。

 10年の変遷を見てみると、建設業界が CSRの取り組みに力を入れるきっかけになったのは談

合事件である。談合事件発覚により政府より業務

停止命令を受け、また株価も下がりステイクホ

ルダーの信頼を失う結果となった。そこからま

ず企業はコンプライアンスを重視し、またステ

イクホルダーからの信頼を取り戻すために様々

な取り組みを行ってきた。現在では談合事件は

なくなる。

 環境経営を考えるうえで踏まえておきたいの

は、建設業界の特徴は屋外で一定しない現場で

あり、事業が環境の負担の上で成り立っている

という点である。このことから持続可能な社会

に向け環境経営を重視して取り組む傾向がある。

具体的には①二酸化炭素の削減 ②新エネルギー

開発 ③資

源リサイクルなどである。

 上記のように環境経営を重視していることか

ら本業に組み込んだ取り組みも環境面や地域社

会に関する内容である。具体的に①ゼロ・カー

ボン・ビル ②スマートシティ ③ BCM策定な

どである。

 建設業界にとってステイクホルダーは国内が

中心である。その中でも特に環境、政府・行政、

地域社会は建設業を行う上で切り離せない存在

である。

 以上のように建設業界は本業を通じて CSRに取り組みやすく、先駆者となるべき業界だとい

えよう。建設業界の事業はステイクホルダーで

もわかる通り国内が中心であった。しかしその

国内市場も飽和状態である。これから建設業界

では強みである高い技術力や工期遵守を生かし

て海外市場の進出が求められている。その中で

海外のステイクホルダーとの関わりを重視し、

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継続的なネットワーク形成や維持、生産地での

資機材や労働力の調達が課題である。

Ⅳ.商社

 ここでは主に三井物産について見ていき、同

業他社として三菱商事と丸紅との比較から商社業

界のCSR経営について考察する。

商社業界の特徴

商社業界全体にいえる事柄としてグローバル

に展開している、あらゆる業種に関連している、

ビジネスパートナーが多様であるといった特徴

があげられる。

① グローバルに展開している

商社は他業界と比較しても海外と取引をする

ことが多いためグローバルに展開しているとい

える。特に最近は展開地域が新興国へシフトし

てきているため先進国では見られない課題も多

い。例えば現地の労働問題・環境汚染などの問題

は他業界に比べても重要な課題であるといえる

だろう。

② あらゆる業種に関連している

総合商社であれば様々な業種に関わっており

経営が多角化している。すなわちセクターごと

に CSRの課題が異なってくるということがいえ

る。そのためセクターごとに CSR 課題を設定し、

CSRレポートなどで公開している企業も多い。

③ 多様なビジネスパートナー

商社はビジネスのパートナーが多岐にわたる

という特徴がある。そのため様々なステイクホ

ルダーに目を向ける必要がある。特に製品を提

供している事業者に対してだけでなく、その先

の消費者や地域社会を意識し中間に位置する企業

としての責任を理解しておくべきである。

三井物産

三井物産は 1947年に設立された日本初の総合

商社である。(1)世の中にとって役に立つものか

(2)お客様やパートナーにとって有益で付加価値

をもたらすものか(3)自分のやりがい・納得感

につながるかの 3つの視点から「良い仕事」の

実践をし、本業を通じて社会へ価値を提供する

ことに努めている。

ここからは三井物産について 5つの視点から

見ていき考察をする。

▽財務分析から見たCSR

ここでは三井物産の財務状況をみて、経済状況

と企業の CSR活動に相関関係があるのかどうかを考察する。

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R 推進委員会の設置

    グローバルコンパクト支持宣言

2006年 CSR推進部の設置

2007年 サプライチェーンCSR取組方針制作

2008年 「国連ミレニアム開発目標」の達成に

向けた宣言書に署名

2010年 CSR推進部を経営企画部に統合

2011年 東日本大震災被災地への支援

    サプライチェーンCSR取組方針改訂

2012年 CSRレポートとアニュアルレポートを統合

 上記の年表を見て分かるように、三井物産で

は 2002年と 2004年に大きな不祥事が 2度起きている。2002年の不正入札事件に関しては翌年

の CSRレポートでもあまり触れられず、企業側

の情報開示はあまり積極的ではなかった。その

反省からか 2004年に起きた DPF偽装問題の発覚した翌年の CSRレポートでは前年度に起きた不祥事についての特集が組まれ、不祥事の概要

や対応について詳しく開示している。また同年、

CSR推進委員会を設置したりグローバルコンパ

クトへの支持をしたりするなど不祥事後の反省

や社会からの批判を受け、CSR活動が活発化し

てきた。さらに 2010年に CSR推進部を経営企画部に統合したことは、CSR活動を本業に組み

込む体制が整えられたという意味で重要な出来

事だったといえる。

 このように三井物産では不祥事の反省から

CSR 強化への動きがみられるとともに、日本国

内での CSR ムーブメントに伴い企業の CSR活動を活発化させている様子がうかがえた。

▽環境経営世界中で多岐にわたる事業を展開する三井物産

は、環境問題への産業的解決による貢献を「環境

方針」の行動指針に組み込み、その積極的な対応

を経営上の最重要課題のひとつとして位置づけ、

グローバル・グループベースでさまざまな環境

関連ビジネスを展開している。主な事業として

再生可能エネルギー関連事業・温室効果ガス排出

削減プロジェクト・資源リサイクル事業などが

あげられる。再生可能エネルギー関連事業では

地球温暖化対策、そして持続可能な世界実現のた

め企業の保有エネルギー資産に占める再生可能

エネルギーの比率を大幅に引き上げることを目

標とし、米州・欧州・豪州等にて再生可能エネル

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ギーの事業の推進及び対応強化を行っている。

また温室効果ガス排出削減プロジェクトでは日

本の環境技術の提供も含めた温室効果ガス排出削

減事業を推進し、中長期にわたる地球規模での気

候変動問題の解決に貢献している。さらに資源

リサイクル活動では資源の安定供給確保と環境

問題の産業的解決を目指している。

このように環境経営の分野でも、中長期的な

視点にたちグローバルな活動を行っているのが

三井物産の特徴といえる。

▽本業に組み込んだCSR三井物産の事業活動は「金属」「機械・インフ

ラ」「化学品」「エネルギー」「生活産業」「次

世代・機能推進」の 6つの分野から成り立って

いる。また ISO26000における中核主題のうち

「人権」「環境」「消費者課題」「コミュニティ

参画・発展」という 4つの主題が重要であると

考えている。そして事業が世の中の役に立つも

のか、顧客に付加価値をもたらすものか、自分

自身のやりがいにつながっているかを常に意識

しつつ、事業展開を行う中で社会的責任を果た

せるよう努めている。そのため三井物産の CSRレポートでは事業分野ごとに CSR 課題を設定し、

前年度の各分野での取り組みを公開している。

具体的な本業に組み込んだ活動としては以下の

ものがあげられる。

・希少な水資源を現地で活かしていく

・エネルギー資源の多様化を実現

・次世代の交通インフラサービス

・鉄鉱石の安定供給と金属リサイクル

・持続可能な森林資源づくり

▽ステイクホルダーとの関わり 商社ではステイクホルダーが多岐にわたると

いう特徴がある。その中でも三井物産が重要視

していると考えられるのが以下の 3つのステイクホルダーである。

一つ目は従業員である。企業を取り巻く環境

が変化する中でグローバル競争を勝ち抜くには、

変化の先を読み新たな市場を開拓し続ける必要

がある。そこで三井物産が力を入れているのが

従業員の人材育成である。時代や顧客の真のニー

ズをとらえるにはそれを肌感覚でつかむのが大

切で、その感性は現場経験によって磨かれるた

め、多様な人材がお互い鍛え合える場を提供す

ることが必要と考えられている。そのため人材

開発プログラムに力を入れたり、人材のグロー

バル化や女性・障害者の雇用を積極的に行うダ

イバーシティの推進などをしたりしている。

二つ目は環境である。商社という業界の特性

上、事業領域が多岐にわたるため環境との関わ

りを考えることは必要不可欠である。特に京都

議定書の合意を受けて、地球温暖化ガス排出量削

減に寄与すべく、排出権取引や太陽光・風力発電

事業、バイオエタノール・バイオディーゼルな

どの代替エ

ネルギー開発などの取り組みに盛んなことが特

徴である。

三つ目は取引先である。三井物産は幅広い事業

活動を通じて関与するサプライチェーンが抱え

る課題の把握に努め、その解決に努めることで

持続可能な社会の構築を目指している。その取

り組みとして「サプライチェーン CSR取組方

針」を制定している。サプライヤーをはじめと

する取引先に対してこの方針の理解と実践を求

めることでサプライチェーンの組織的な能力の

向上を支援している。

またこれら 3つのステイクホルダー以外にも、

多種多様かつグローバルな事業活動により影響

を及ぼすステイクホルダーとの関係を大切にし

ている。ステイクホルダーダイアログを開催す

るなど双方向の対話を通じて、社会からの期待

や要請もしっかりと把握するよう努めている。

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同業他社との比較

三井物産の同業他社として三菱商事と丸紅の環

境経営・本業に組み込んだ CSR・ステイクホルダーとの関わりを見て、商社業界の特徴を考察

する。 上にあるのが同業他社との比較を表した

図である。   環境経営に関しては三菱商事で

は環境・CSR 全般の基本方針を討議する組織と

して、「環境・CSR委員会」を設置している。

また幅広いビジネスと環境との関わりをきちん

と把握することが重要だと考え、 ISO14001 規

格に則った環境マネジメントシステムを構築し

ている。そして取引先や事業投資先に関する調

査・ヒアリング・視察を行い環境管理の状況や

緊急時の対応策の確認などを行っている。丸紅

でも三菱商事と同様に環境マネジメントシステ

ムを導入している。また環境への取り組みは

PDCA サイクルに基づいて計画、実施および運

用、点検、マネジメント、レビューを行い継続

的な改善を進めている。

 

 本業に組み込んだ CSRに関しては 2社とも主

に海外での活動に力を入れていることがわかる。

また CO2 排出権ビジネスや太陽光発電は両社と

もに共通する取り組みである。さらに川上から

川下まで幅広いサポートをしていることが特徴

であった。

 ステイクホルダーとの関わりに関しては、三

菱商事ではアドバイザリーコミッティーにより

社外有識者の方々に企業の環境・CSRについて助言や提言をしてもらう機会を設けている。ま

た丸紅では CSRレポート以外にも株主レポート

やアニュアルレポートといった多様なレポート

を発行することでステイクホルダーへの情報開

示を積極的に行っている。

まとめ

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以上より商社業界の CSR経営について考察す

る。

財務分析については 3企業とも経済状況にか

かわらず、CSR活動に取り組んでいることがわかった。各社ともに CSRを長期的視点で取り組

むものだという認識があるのもその理由の一因

であると考える。

10 年の変遷については商社業界全 体的に

2003年の CSR元年や、2005年の京都議定書発

効といった国内での CSR動向に伴い企業の CSR活動強化の動きが読み取れた。

環境経営に関しては取引 先などサ プ ライ

チェーンにおける環境問題への取り組みに積極

的であった。とりわけ CO2 削減や再生可能エネ

ルギー事業への取り組みは 3社とも重要視して

いる分野であった。またグローバルに展開する

企業としてサプライチェーンマネジメントは商

社にとって大事な分野であり、商社の特徴であ

るともいえる。

本業に組み込んだ CSRについては商社の幅広

い事業領域と展開地域といった特性を生かし、

企業の経済的活動を行うと同時に社会的に価値を

生み出すよう努めている。取引先をはじめとす

る海外での取り組みが活発であることが特徴的

である。

ステイクホルダーとの関わりとして商社で特

徴的なのは環境や地域社会を重要なステイクホ

ルダーとして位置付けている点である。また事

業領域が多方面にわたるため、それぞれの分野

でどのステイクホルダーに影響を与えているの

かを見極めることも大切である。

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第三章 結論

~業界比較に見る 日本企業の CSR経営~ ここまで4業界の CSRの特徴をみてきた。こ

こから5つのリサーチクエスチョンに沿って業

界比較を行う。

① 財務分析から見たCSR どの企業も 2008年の金融危機で財務的に影響

を受けている。しかし、CSRを怠る、蔑ろにしていることはなかった。過去の不祥事への反省

から CSRは経営や企業価値に関わる、また持続可能な社会が存在するからこそ会社が存続でき

るとの考え方など、各社 CSRに取り組む理由は

様々だ。しかし、総じて言えるのは会社の経済

状態が悪い中でも CSRは行う。なぜなら、各企業、CSRは長期的視点を持って行うもので、社

会からの横暴に応えることが企業価値の向上に

つながるので CSRは経営に不可欠であると日本

企業において認識されるようになったからであ

る。しかし、CSRを積極的に行うことが企業価値の向上につながっていることの明確な相関関

係は見いだせなかった。CSRは長期的視点で捉

えるものなので、やったからすぐに目に見えて

効果(利益)があがるというものではなく、そ

の上日本ではCSRを評価する市場が欧米に比

べると未熟である。しかし、社会が企業を評価

する基準が変化していることを踏まえると今後

CSRが企業価値向上につながる可能性は高いと言える。

② 10年の変遷から見たCSR

 社会のグローバル化や企業・業界内の不祥事、

国内外での CSR関連の動きが活発になるにつれ

て日本企業も CSRを強化してきた。この背景に

は、社会が企業を評価するときの基準が変化し

てきたこと、利益の追求のみではなく、社会に

対して責任を果たしているかが企業評価におけ

る重要なポイントになってきた。グローバル化

に伴い企業を取り巻くステイクホルダーが多様

になり、求められる責任も集まる期待も異なっ

てくる。それらに対応すべく企業は CSRを強化

してきた。事業と CSRが表裏一体の関係である

ということを企業が認識するようになってきた。

③ 環境経営

 環境問題は世界的にみても関心の高い問題で、

どの業界のどの企業も環境問題への取り組みは

特に重要視している。持続可能な社会に向けて

環境保全に取り組むことは業界を越えての共通

認識であると言える。例えば、電気機器メー

カーであれば、扱うすべての製品ライフサイク

ルにおける環境負荷低減を目標とした取り組み

を行っている。また、損害保険業界は、紙の約

款からウェブの約款に切り換えて紙の使用量を

削減している。その他にも生物多様性に関する

取り組みや、資源のリサイクルなど環境経営と

一口に言っても企業によって取り組みは様々で

ある。また長期的なビジョンを持って環境経営

に取り組んでいる。各企業、力を入れているこ

とは共通しているが、特にメーカーに関しては

CSRがブームになる前から環境経営には積極的

に取り組んでいて、CSR報告書を発行する前か

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ら環境経営報告書を出している企業も多かった。

取り組み始める時期や方法は異なっていても、

どこも本業と環境がどのように関わり、本業を

通して環境保全をする方法をとっている。共通

の目標(環境保全)があってその中で企業ごと

に本業と関連させて環境経営を行っている。

④ 本業に組み込んだCSR 各企業ともに、持続可能な社会と企業価値向上

を同時に実現できるような取り組みを行ってい

る。単なる社会貢献活動ではなく、社会にも企

業にも価値を提供できるような取り組みが、企

業が目指すべき CSRである。例えば建設業界の

スマートシティ開発や損保業界の SRI ファンド

の運営は企業の持つ技術や資源を活かし持続可能

な社会の実現に向けて取り組んでいる良い例で

ある。今回の研究で、企業が行う CSRは自社の強みを活かし、本業に組み込まれたものが多く、

CSRへの理解が深まり実践に移せていることが

分かった。

⑤ステイクホルダーとの関わり 各企業、事業内容や取り巻く市場環境が異なる

ので重視するステイクホルダーが異なるという

ことが分かった。そのうえで各企業、ステイク

ホルダーダイアログを開催しているが、そこで

得られた意見を経営に組み込むところまででき

ている企業は多くない。しかし、例えば今回研

究した企業のなかでは損保ジャパンが有識者と

のダイアログは CSR経営プラン策定に活かすよ

うな仕組みになっており、ステイクホルダーの

意見を経営に反映させていると言える。今後、

ステイクホルダーといかに双方向のコミュニ

ケーションをとり、彼らの意見を経営に反映で

きるかが企業にとっての課題である。

 

 最後に、4業界を選ぶ際の基準である、取引形

態と市場の広がりで企業を分類したときの特徴

をまとめる。ここでは環境経営、本業に組み込

んだ CSR、ステイクホルダーとの関わりの3点

で違いが見られた。

市場がグローバルな企業は、環境保全に関する

取り組みを世界中で行っている。一方で国内市

場中心の企業は国内での取り組みが中心となっ

ている。これは上述のように、環境と本業の関

わりを考慮したうえで環境経営を行っているか

らである。

ステイクホルダーとの関係においては、取引形

態によって重視するステイクホルダーは異なり、

その企業が関わる市場の動きに敏感であること

が分かった。また、企業によって CSRを強化す

るに至った経緯が企業ごとに少し異なっている。

不祥事への反省から CSRを積極的に推進してきた企業もあれば、もともと環境経営には力を入

れていたが社会に流れに沿うようにもっと広い

範囲の CSRに取り組んできた企業も存在する。企業によって本業は異なり、それに組み込む形

で行う CSRには各業界、各企業で多様になっている。

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今後求められるCSR経営とは・・ 今回は主に過去から現在の CSRについて研究

してきた。これらを踏まえて今後日本企業に求

められるCSR経営とは何かを考えてみる。

 財務との関連では、経済状況が悪化する中で

も CSRに取り組むのはもちろんだが、CSRの取り組みが企業の利益につながることが今後の理

想である。それには評価する制度や市民の意識

が必要だが、CSRが徐々に浸透していくなかで、

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企業にプラスの効果をもたらすことは可能性が

高いと考えられる。過去から現在にかけて企業

は社会の流れに沿って CSRへの理解を深め積極

的に取り組んできた。今後考えられるのは、国

内市場を中心に事業を展開していた企業も海外

に目を向けるであろうということだ。その際、

グローバルな基準で CSRに取り組むことや有識

者の意見だけでなく、事業活動を行う現地の

様々な立場のステイクホルダーの声に耳を傾け、

社会の多様なニーズに応えていくことが重要だ。

環境経営は本業に組み込ん

  

だ CSRでは、企業と社会の双方に新しい価値を

提供できるような取り組みを行っていくことが

理想

であり、短期的な利益にとらわれることなく長

期的な視点を持ち、持続可能な社会を意識して

CSRを経営に組み込むことが今後求められる

CSR経営である。

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【参考文献】

• ロバート・G.エクレス マイケル・Pクルス『ワンレポート 統合報告が開く

持続可能な企業と社会』 東洋経済新報社 2012• チャールズ・Jホンブラン『コーポレート・レピュテーション』 東洋経済新報社

2005• 海外事業活動関連協議会『グローバル経営時代のCSR報告』日本経団連出版

• 山本 時男『CSR報告書の読み方・作り方』 中央経済者 2009• 長谷川 恵一・清水 孝・伊藤 嘉博『バランスト・スコアカードの理論と導

入』 ダイヤモンド社 2001• 水尾 順一『CSRで経営力を高める』 東洋経済新報社 2005• 吉田 憲一郎『商社』 日本経済新聞出版社 2006• 倍 和博『CSR会計を導入する』 日本規格協会

• 小泉 定祐『有価証券報告書の見方・読み方』 清文社 2008• 谷本 寛治『CSR 企業と社会を考える』 NTT出版 2006• リコーHPwww.ricoh.co.jp/• 富士ゼロックスHPwww.fujixerox.co.jp/• キャノンHP http://canon.jp/• 三井物産 HP www.mitsui.com/jp/ja/• 丸紅HP www.marubeni.co.jp/• 三菱商事HP www.mitsubishicorp.com/jp/ja / • 損保ジャパンHP www.sompo-japan.co.jp/• 東京海上HP www.tokiomarinehd.com/• MS&AD ホールディングスwww.ms-ad-hd.com/-• 大成建設 www.taisei.co.jp• 清水建設 www.shimz.co.jp/• 鹿島建設 www.kajima.co.jp• YAHOO ファイナンス finance.yahoo.co.jp/• 日本経済新聞―株価HP

www.nikkei.com/markets/company/index.aspx?scode=9984• 国連グローバルコンパクトジャパンネットワークHP

http://www.ungcjn.org/• 新日本有限責任監査法人HP

http://sustainability.shinnihon.or.jp/publish/csr-report-special/special-report-02.html

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早稲田祭 プロジェクト研究発表 アンケート集計結果2012年 11月 3日(土)14:30~15:30 (発表 約 52分、質疑応答 約 5分)有効回答数 37 (内 2年生7 4年生 3)

【何を見て今回の発表を知りましたか?】

・ビラ 1 人 ・パンフレット 5 人 ・HP 4 人

・その他(友達から聞いて、家族、通りすがりに声をかけられて) 16 人

【年齢を教えてください】

・10代 5 人・20代 17 人・30代 0 人・40代 2 人・50代 11 人・60代 1 人・

70代 1 人

【ご職業を教えてください】

・高校生 2 人 ・大学生 (早稲田 12 人 それ以外 5 人) ・会社員 11 人 ・主婦

6 人 

・その他 2 人

【発表の長さはどうでしたか?】

・短い 1 人 ・ちょうど良い 36 人 ・長い 0 人

【内容は理解できましたか】

・良く分かった 17 人 ・分かった 16 人 ・あまり分からなかった 3 人 ・分から

なかった 0 人

【感想・意見】

一般の方

・業界ごとに知れたので違いを感じることができた

・まだ手探りであるCSRの分野に学生目線での提言をしてほしい

・中小企業のCSRも知りたい

・販売の仕事をしているので、今回のテーマはすごく身近で参考になった

・みなさん少し早口だったのが気になった(時間の都合なのかもしれませんが・・)

・スピーカーが前を向いて話していたのが良かった

・ポインターを使用できればもっとよかった

・時機を捉えたテーマだと思う

・少し難しかった

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・企業評価の基準が近年変わっていることがこの発表でとてもよくわかった

・ちゃんと研究していてえらいと思った。社会に出ても役立つ観点が育つと思った

・CSRの取り組みをもっと知って、ちゃんと評価できる社会づくりが大切だと思った。

その点で日本は未熟で、CSR活動を比較評価できるシステムや機関が必要と感じた。

・よくまとまっていた

・グローバル化した業界と国内市場向けの業界との違いが何なのかいまいち理解できな

かった

・CSRという言葉を知らなかったが、少し理解でき、今後ニュース等を見るとき、少し

違った見方ができそう

・具体的な企業名があってわかりやすかった

・すばらしい発表と分析内容だった

・CSRの取り組みが企業の信用を支えているのだと思う

・エコポイントなどで、家電業界が CSRに取り組んでいるのは知っていたが、他の業界

は知らなかったので、たいへん為になった

・分かりやすい説明で、難しいかなと思ったが楽しく時間が過ぎた

・過去から現在に関しては詳しく調べられていたと思う。一方、未来・今後に関して「ど

うすれば良いか?」という切り口の主張が少し少なかったと思う。また財務分析では、

リファレンスが欲しかった。(例えば株価であれば日経平均など)

・本業に組み込んだ CSR、その中で CSRは経営そのものの認識のもとコンプライアンス

からスタートした活動が、CSR部組織そして経営企画部署内へ組み込まれていく、他社

の事例等、大変参考になった。

・不祥事はなぜ発生するか、その防止にどう取り組むかといった視点から少し突っ込ん

だ調査をされることを期待している

2年生から・CSRについて詳しくない自分でも理解できた

・4つの業界例にとった具体的な説明で、違いが分かりおもしろかった

4年生から・「本業に組み込んだ CSR」をどのように考えているのかが少しわかりづらかったので

定義など書いてあると良かった

・4業界を、国内/グローバル、B to B/B to Cで選んでいたが、それぞれの特徴や違いが

まとめに反映されていない(ように見えて)もったいない、少しわかりづらい。

・論理構成がもっとわかりやすいとよい。提示されている事実と考察に乖離があるよう

に見える。「財務分析」や「10年の変遷」という調査視点は分かりやすくまとめられて

いたが、そこから本当に業界の特徴が導けているのか。感覚だが、結論ありきの事実提

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示だったような気がする。

・内容ももちろん大事だが、聴衆のことも考えるべきなので、見ていて気持ちの良い発

表だった

【反省点】

~内容に関すること~

序論も結論もない主張の曖昧な発表に陥ったまま、なかなか改善できなかった。

グローバル/国内市場、B to B/B to Cで業界ごとにどのような違いがあるのか結論できちんと示せていなかった。

最後に示した理想の CSR経営と最初に提示した日本企業の CSR経営とはについて内容が

重複していたため最後の理想の CSRについてはもう少し突っ込んだ説明(本業に組み込

んだ CSRについてもう少し具体的にどうどうとらえているかなど)を加え、提言の部分

をもう少し膨らませるべきだった。

問題提起で言っている社会の動き・世界の CSR動向について詳しく示しているスライド

がなかったためそれをうけて企業がどのように変化していったかわかりづらかった。

専門用語が多かった?

内容面では最初の問題提起のところと最後の結論部分のつながりが甘かった

最初のテーマ設定、問題提起をもう少ししっかり練るべきだった

せっかく提示した4業界を選んだ理由の視点が生かされていないなどまとめ方が甘く、

聴衆にとっては不親切な内容となってしまった

論理の矛盾を感じる、結論に後付け感があるなど、実際に自分達が主体的に深めることが

できなかった点を追及されたのが残念だった

リサーチクエスチョンの策定に手間取ってしまい、問題提起と結論に時間をかけられな

いまま研究を始めてしまったこと

~発表に関すること~

全体的にやや早口の印象を与えてしまった。「適切なスピード、適切な表現で伝える」と

いうことがプレゼンを行う上で非常に大切なこと

原稿ばかり見てしまって、前をあまり見て発表できなかった

時間内に収めるためにどこを強調してどこを削るかの選択が難しかった

分かりやすくということをを心掛けたところ、練習のときより時間がオーバーしてし

まった

アンケートを踏まえて反省すると、CSRに関する知識があまりない方々にとっては、私

たちの発表が少し早口に感じたようでした。しかし、3か月調べてまとめた内容を外部

43 39

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向けにまとめるのは大変だったので、分かりやすかった、CSRへの理解が深まったとの

声は、私たちにとってはうれしい意見でした。発表するときは、原稿を見過ぎず聴衆の

方を見ながら話すことを心掛けました。練習のときは、原稿を読むことに必死になって

いましたが、本番では聴衆・スライド・原稿をバランス良く意識できたと思います。内

容に関しての反省は上で述べたとおりですが、先生や先輩方から頂いたご指摘を参考に

して論文にまとめていきたいと思います。

今回のプロジェクト研究では、共同研究の難しさを感じました。各々調べてきたことを

どう組み合わせて結論を導き出すのか、それぞれ考えることも違い、一つにまとめるの

は大変でした。最初は行き当たりばったり感が否めない研究の進捗具合でしたが、目標

がはっきり見えるとそれに向けてやるべきことも明確になったので全員がうまくまと

まったと思いました。

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Page 46: · Web view目次 はじめに・・・・・ p.2 谷本教授&谷本ゼミ1期生紹介・・・・・ p.3 活動報告 ~年間スケジュール~・・・・・・・・・p.9

 おわりに

谷本ゼミは今年から早稲田大学にて新しいスタートを切り、新しい環境の中で試行錯誤

しながら活動して参りました。

私たち1期生にとって、プロジェクト研究は自分たちだけで進める初めての本格的研

究活動でした。そんな中先生から多くのアドバイスを仰ぎながらも、どうにか論文発表

までこぎつけることができました。本当にありがとうございました。

3年生になって初めてゼミが始まり、わからないことだらけで苦戦が多かったように

思います。しかし、このプロジェクト研究から論文制作までの一連の活動に取り組む中

で、私たち1期生も着実に成長し、一丸となってひとつの研究を編み上げることができ

たのではないかと感じています。

このように、今年の谷本ゼミも徐々に勢いを増してきましたが、まだまだ超えるべき

課題はいくつもあります。しかし 15年間一橋大学にて先生や先輩方が積み上げてこられ

た谷本ゼミの歴史や伝統を損なうことなく、「早稲田に移って一層発展した。」と言って

いただけるように精進していきます。

最後に、谷本ゼミでのご縁を大事にし、寛逓会で末永くお付き合いできることを心よ

り願っています。

                            2012年 11月 19日(月)                         第1期ゼミナール幹事 嶋本 健太

       第1期生一同

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