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VR を用いた教育、マーケティング支援について ~米国 EON Reality 社の事例および製品のご紹介~ 久木元伸如○ (株式会社 ケイ・ジー・ティー) Case Study of Marketing Support and Education by Virtual Reality Nobuyuki KUKIMOTO Keywords: Rapid Application, Visual Programing, Dynamics, IPT 1. はじめに VR アプリケーションを構築するためには,視点に 応じた投影画像の変更や,IPT に投影する特殊な技 術が必要なので,高度なプログラミング能力が必要と される.作成したコンテンツの再利用は難しく「苦労 対効果」が低いので,IPT 向けコンテンツを,デスク トップ環境で実行する場合や Web を用いて配信する 場合には,新たにコンテンツの再構築が求められる. また,VR を心理学に応用した場合,視覚に関する実 証実験を必要とする心理学の研究者は OpenGL など グラフィックスライブラリを用いたプログラミングに 必ずしも長けているとは限らないので,簡単な視覚心 理実験を行うにしても多大な労力を必要とする. 本稿では素早く,容易に VR コンテンツを作成でき EON を紹介し,その利用例について述べる. 2. ソフトウェア・プロダクト EON は基本的なパッケージの EON Studio IPT への対応を可能とするモジュール等を組み込んだ EON Professional,EON に独自の機能を追加できる EON SDK のラインナップがある. 2. 1 EON Studio EON Studio はインタラクティブな 3D コンテンツ GUI を用いて開発するオーサリングツールである (Fig1).プログラミングの知識や経験が無くてもビジュ アルなオーサリング環境により3Dコンテンツの開発 が可能である. 2. 2 EON Professional EON Studio に付加機能を追加した EON Profes- sional は,nVIdia Cg Shader を用いた高い視覚効果 の実現や多面 IPT への対応を可能とするモジュール が含まれている.さらに,EON Professional は複雑 な物理特性をリアルタイムに計算するモジュールをサ ポートしている. Fig. 1 EON GUI.左からノード・プロパ ティ,Simulation Tree, プロパティ設定 2. 3 EON SDK EON では多数のモジュールを実装しているが,任 意のモジュールをスクリプト(VBScript もしくは JScript) で記述し,新たなモジュールを作成する事が できる.このスクリプトでもサポートできない機能を 付加するときには SDK を用て独自の EON 機能を作 成する. 3. コンテンツ作成の流れ EON では obj 3ds, lw フォーマットの形状デー タファイルを読み込む事ができる.より視覚効果の高 いデータを読み込むためには EONCAD を用いて 3D Studio MAX MAYA のシーンファイルを読み込み, EON のファイルフォーマットである eoz に変換する. 読み込まれた形状データは Simulation Tree と呼ば れるシーングラフに登録する.シーングラフには形状 データのみならずVR空間のイベントや機能を司る ノードやプロトタイプをドラッグ&ドロップで組み込 む.組み込まれたノードやプロトタイプはプロパティ ウインドウで詳細なパラメータを設定する.ノードや

VRを用いた教育、マーケティング支援について EON Reality社の … · 本稿では,迅速にvrコンテンツを構築きるツール としてeonを紹介した.eonではguiを用いてvr

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VRを用いた教育、マーケティング支援について~米国EON Reality社の事例および製品のご紹介~

久木元伸如○ (株式会社 ケイ・ジー・ティー)

Case Study of Marketing Support and Education by Virtual Reality

Nobuyuki KUKIMOTO

Keywords: Rapid Application, Visual Programing, Dynamics, IPT

1. はじめに

VRアプリケーションを構築するためには,視点に応じた投影画像の変更や,IPT に投影する特殊な技術が必要なので,高度なプログラミング能力が必要とされる.作成したコンテンツの再利用は難しく「苦労対効果」が低いので,IPT向けコンテンツを,デスクトップ環境で実行する場合やWebを用いて配信する場合には,新たにコンテンツの再構築が求められる.また,VRを心理学に応用した場合,視覚に関する実証実験を必要とする心理学の研究者は OpenGLなどグラフィックスライブラリを用いたプログラミングに必ずしも長けているとは限らないので,簡単な視覚心理実験を行うにしても多大な労力を必要とする.本稿では素早く,容易にVRコンテンツを作成できる EONを紹介し,その利用例について述べる.

2. ソフトウェア・プロダクト

EONは基本的なパッケージの EON Studioと IPTへの対応を可能とするモジュール等を組み込んだEONProfessional,EON に独自の機能を追加できる EONSDKのラインナップがある.

2. 1 EON Studio

EON Studioはインタラクティブな 3Dコンテンツを GUIを用いて開発するオーサリングツールである(Fig1).プログラミングの知識や経験が無くてもビジュアルなオーサリング環境により3Dコンテンツの開発が可能である.

2. 2 EON Professional

EON Studio に付加機能を追加した EON Profes-sionalは,nVIdia Cg Shaderを用いた高い視覚効果の実現や多面 IPTへの対応を可能とするモジュールが含まれている.さらに,EON Professionalは複雑な物理特性をリアルタイムに計算するモジュールをサポートしている.

Fig. 1 EON の GUI.左からノード・プロパティ,Simulation Tree, プロパティ設定

2. 3 EON SDK

EONでは多数のモジュールを実装しているが,任意のモジュールをスクリプト(VBScript もしくはJScript)で記述し,新たなモジュールを作成する事ができる.このスクリプトでもサポートできない機能を付加するときには SDKを用て独自の EON機能を作成する.

3. コンテンツ作成の流れ

EONでは objや 3ds, lwフォーマットの形状データファイルを読み込む事ができる.より視覚効果の高いデータを読み込むためには EONCADを用いて 3DStudio MAXやMAYAのシーンファイルを読み込み,EONのファイルフォーマットである eozに変換する.読み込まれた形状データは Simulation Treeと呼ばれるシーングラフに登録する.シーングラフには形状データのみならずVR空間のイベントや機能を司るノードやプロトタイプをドラッグ&ドロップで組み込む.組み込まれたノードやプロトタイプはプロパティウインドウで詳細なパラメータを設定する.ノードや

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Fig. 2 Route Window

Fig. 3 セールス支援ツールとして利用

プロパティの関係はFig2に示すRoutes Simulationウインドウで各ノードを結線し,データもしくはイベンの流れをビジュアルプログラミングする.

4. EONを用いた事例

4. 1 EONを用いた販売促進EONで作成したコンテンツは IPTに限らずデスクトップ環境や Web で展開可能である.EON アプリケーションの Sales Assistant や EON Planner を用いて EONコンテンツを活用し,総合的なセールス・マーケーティング支援アプリケーションの構築が可能となる.Fig3の例では情報端末(KIOSK端末)に商品を表示し,顧客がインタラクティブにオプションや色を変更する BTO(Build To Order)サービスの提供を行う.

4. 2 教育・研究分野への導入事例2007年3月に久留米工業大学に導入された IPTでは,機械部品の設計・製造・整備のシミュレーション,建築・設備の設計の評価などの分野を中心に利用するため,VRソフトウェアとして EON が採用された.

Fig. 4 車部品の組み込み

利用用途として,Fig4に示すように,データグローブを用いてインタラクティブにVR空間のオブジェクトを操作しながら,機械設計の際に設計した部品が正しくレイアウトできるか,組み立てや修理の際に十分なスペースが確保できるかなど検証への利用や,組み立てや整備の手順のシミュレーションへ利用を検討している.特に,Fig4のコンテンツでは物理特性を考慮し,指定した場所以外に部品を取り付けようとするとオブジェクトが床に落下し,同時に効果音も出る.

5. まとめ

本稿では,迅速にVRコンテンツを構築きるツールとしてEONを紹介した.EONではGUIを用いてVRコンテンツの構築が可能となる.したがって,これまでのVRの研究開発で負荷の大きかったプログラミングに関する時間を短縮し,効率的な研究開発とコンテンツに重点を置いたVRアプリケーションの構築が可能となる.また,EONで作成したVRコンテンツはセールス・マーケーティング支援アプリケーションのへ活用できる.VRのインタラクティビティと形状の直感的な把握は顧客に十分な判断材料を与える事ができ,顧客満足度の高いサービスの提供が可能となる.