Building Solid Clinical Basis Through Anesthesia Training 麻酔科で得る技術・知識は、
臨床医の基盤になる
患者安全財団準備委員会 委員長
笑顔のおうちクリニック 学習開発
東京慈恵会医科大学 麻酔科 非常勤講師
まつもと たかひろ
事例1
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 2
背景1
• 初期研修医1年目
• 麻酔科でローテーション後
• 外科をローテーション中
• 左肺癌/左上葉切除術患者の術後管理中
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 3
症例1、60代、男性
• 左上葉肺癌の診断で、左上葉切除術が行われた。
• 術中は手術・麻酔とも問題はなかった。
• 術後2日目、病棟看護師から、電話。
• 担当術後患者が蒼白で冷や汗をかいている。
• 心拍数150/min.、血圧70/40 mmHg
• 動脈血酸素飽和度93%, 呼吸数30/min
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 4
心電図モニター波形
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 5
この状態は心停止の危機か?
1. 全く思わない (0)
2. ほとんど思わない(20/100)
3. あまり思わない(40/100)
4. やや思う(60/100)
5. かなり思う(80/100)
6. 非常に強く思う(100)
PBLD @ JSA2014 6 16 May 2014
頻拍
不安定な頻拍
• 主要臓器血流の不安定を示す症状と兆候が、頻拍によって生じている。
安定な頻拍
• 主要臓器血流の不安定を示す症状と兆候が、頻拍によって生じていない
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 7
症例1、60代、男性
• 左上葉肺癌の診断で、左上葉切除術が行われた。
• 術中は手術・麻酔とも問題はなかった。
• 術後2日目、病棟看護師から、電話。
• 担当術後患者が蒼白で冷や汗をかいている。
• 心拍数150/min.、血圧70/40 mmHg
• 動脈血酸素飽和度93%, 呼吸数30/min
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 8
心筋の 血流低下
皮膚の 血流低下
肺の 血流低下
症例1、60代、男性
• 左上葉肺癌の診断で、左上葉切除術が行われた。
• 術中は手術・麻酔とも問題はなかった。
• 術後2日目、病棟看護師から、電話。
• 担当術後患者が蒼白で冷や汗をかいている。
• 心拍数150/min.、血圧70/40 mmHg
• 動脈血酸素飽和度93%, 呼吸数30/min
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 9
心筋の 血流低下
皮膚の 血流低下
肺の 血流低下
この状態は、 不安定頻拍
あなたは、直ちに 何らかの処置をすべきか
1. 全く思わない (0)
2. ほとんど思わない(20/100)
3. あまり思わない(40/100)
4. やや思う(60/100)
5. かなり思う(80/100)
6. 非常に強く思う(100)
PBLD @ JSA2014 10 16 May 2014
この研修医は直ちに、 同期カルディオバージョン
実施して、心停止を避けました。 彼女は麻酔科ローテーション中、
頻脈アルゴリズムを 学んでいました。
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 11
頻脈の治療
• 不安定な頻拍
– 同期カルディオバージョン
– アデノシン
• 安定した頻拍
– バルサルバ手技
– アデノシン
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 12
同期カルディオバージョン 安全・確実に実施できますか?
1. 全く思わない (0)
2. ほとんど思わない(20/100)
3. あまり思わない(40/100)
4. やや思う(60/100)
5. かなり思う(80/100)
6. 非常に強く思う(100)
PBLD @ JSA2014 13 16 May 2014
不安定頻脈・ 症候性徐脈は
心停止につながる
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 14
研修医期間に 不安定頻脈・症候性徐脈を
心停止にしない処置の訓練をすべき
1. 全く思わない (0)
2. ほとんど思わない(20/100)
3. あまり思わない(40/100)
4. やや思う(60/100)
5. かなり思う(80/100)
6. 非常に強く思う(100)
PBLD @ JSA2014 15 16 May 2014
事例2
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 16
背景2
• あなたは、初期研修医2年目。
• 小児科ローテーション中。
• 初期研修1年目に1ヶ月、麻酔科研修済み。
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 17
症例2、11ヶ月、男児
• 6日前、痙攣と意識消失あり、緊急入院。
• 入院中は上記症状なかったが、活気がなかった。
• 一旦退院予定となった。
• 退院前日、脳波検査実施。
• 鎮静剤を投与して、脳波検査行い、終了直前に呼吸停止。
• バッグマスク換気中、心停止。心肺蘇生術実施。
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 18
あなたの目指す「鎮静」は、 様々な状況になる
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 19
あなたの目指す「鎮静」は、 様々な状況になる
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 20
刺激があっても目覚めない、 呼吸・循環も安定した
理想的鎮静、を目指すけど
あなたの目指す「鎮静」は、 様々な状況になる
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 21
刺激があっても目覚めない、 呼吸・循環も安定した
理想的鎮静、を目指すけど
「理想的な鎮静化」 あなたは、高い確率で出来ますか?
1. 全く思わない (0)
2. ほとんど思わない(20/100)
3. あまり思わない(40/100)
4. やや思う(60/100)
5. かなり思う(80/100)
6. 非常に強く思う(100)
PBLD @ JSA2014 22 16 May 2014
「理想的鎮静化」は、ほぼ不可能。
通常、 鎮静不足・鎮静過剰
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 23
鎮静過剰で起こる患者危険に 対応できますか?
1. 全く思わない (0)
2. ほとんど思わない(20/100)
3. あまり思わない(40/100)
4. やや思う(60/100)
5. かなり思う(80/100)
6. 非常に強く思う(100)
PBLD @ JSA2014 24 16 May 2014
この後この病院では小児科医の
鎮静技能向上へ、 麻酔科で訓練が 始まった。
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 25
小児科医の安全な鎮静技能訓練
• 呼吸抑制への対応
– 頭部挙上・顎先挙上
– マスク換気
– ラリンジアル・マスク
– 気管挿管
• 循環抑制への対応
– 昇圧薬、カテコラミン
– 輸液管理
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 26
安全な鎮静のための 呼吸管理・循環管理を身につけたい
1. 全く思わない (0)
2. ほとんど思わない(20/100)
3. あまり思わない(40/100)
4. やや思う(60/100)
5. かなり思う(80/100)
6. 非常に強く思う(100)
PBLD @ JSA2014 27 16 May 2014
患者安全技能
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 28
医療はどれほど危険か? (Leapeより改変)
1
10
100
1000
10000
100000
1 10 100 1000 10000 100000 1000000 10000000
危険
(>1/1000)
やや危険 超安全
(<1/100K)
バンジー
ジャンプ
登山
運転
化学工場
チャーター便
定期便
航空機
欧州鉄道
原子力発電
危険率(何人に1人遭遇するか)
年間死亡者総数
16 May 2014 29 PBLD @ JSA2014
医療はどれほど危険か? (Leapeより改変)
1
10
100
1000
10000
100000
1 10 100 1000 10000 100000 1000000 10000000
1: 危険・
死者多数 3:まあ安全・
死者かなり
5:超安全・
死者少数
2: 危険・
死者少数 4: まあ安全・死者少数
危険率(何人に1人遭遇するか)
年間死亡者総数
16 May 2014 30 PBLD @ JSA2014
医療は、どれほど安全ですか?
1. 危険・死者多数
2. 危険・死者少数
3. まあ安全・死者かなり
4. まあ安全・死者少数
5. 超安全・死者少数
PBLD @ JSA2014 31 16 May 2014
医療は危険 (Leapeより改変)
1
10
100
1000
10000
100000
1 10 100 1000 10000 100000 1000000 10000000
危険
(>1/1000)
まあまあ
超安全
(<1/100K)
バンジー
ジャンプ
登山
運転
化学工場
チャーター便
定期便
航空機
欧州鉄道
原子力発電
危険率(何人に1人遭遇するか)
年間死亡者総数
16 May 2014 32 PBLD @ JSA2014
医療は危険 (Leapeより改変)
1
10
100
1000
10000
100000
1 10 100 1000 10000 100000 1000000 10000000
危険
(>1/1000)
まあまあ
超安全
(<1/100K)
医療
バンジー
ジャンプ
登山
運転
化学工場
チャーター便
定期便
航空機
欧州鉄道
原子力発電
危険率(何人に1人遭遇するか)
年間死亡者総数
16 May 2014 33 PBLD @ JSA2014
医療は危険 (Leapeより改変)
1
10
100
1000
10000
100000
1 10 100 1000 10000 100000 1000000 10000000
危険
(>1/1000)
まあまあ
超安全
(<1/100K)
医療
バンジー
ジャンプ
登山
運転
化学工場
チャーター便
定期便
航空機
欧州鉄道
原子力発電
危険率(何人に1人遭遇するか)
年間死亡者総数
16 May 2014 34 PBLD @ JSA2014
推定:日本の医療
医療は危険 (Leapeより改変)
1
10
100
1000
10000
100000
1 10 100 1000 10000 100000 1000000 10000000
危険
(>1/1000)
まあまあ
超安全
(<1/100K)
医療
バンジー
ジャンプ
登山
運転
化学工場
チャーター便
定期便
航空機
欧州鉄道
原子力発電
危険率(何人に1人遭遇するか)
年間死亡者総数
16 May 2014 35 PBLD @ JSA2014
数字は、米国科学アカデミー医学研究所の推計値。 日本では 医療事故調査会(森功ら)が 年間死亡数が3万人から4万人と推定
推定:日本の医療
ノンテクニカル・スキル (Non-Technical Skills)ご存じですか?
1. 全く知らない
2. ほとんど知らない
3. どちらでもない
4. かなり知っている
5. とてもよく知っている
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 36
• 1977年3月27日,Los Rodeos空港 (スペイン)
• Pan Am機とKLM機が滑走路衝突 – 583名死亡
• 事故原因は航空技能や知識ではなかった
• 事故原因 – 管制とのコミュニケーション
– チームワーク,リーダーシップ
– 意思決定
– 疲労
航空機事故分析
16 May 2014 37 PBLD @ JSA2014
• 1977年3月27日,Los Rodeos空港 (スペイン)
• Pan Am機とKLM機が滑走路衝突 – 583名死亡
• 事故原因は航空技能や知識ではなかった
• 事故原因 – 管制とのコミュニケーション
– チームワーク,リーダーシップ
– 意思決定
– 疲労
航空機事故分析
16 May 2014 38 PBLD @ JSA2014
• 1977年3月27日,Los Rodeos空港 (スペイン)
• Pan Am機とKLM機が滑走路衝突 – 583名死亡
• 事故原因は航空技能や知識ではなかった
• 事故原因 – 管制とのコミュニケーション
– チームワーク,リーダーシップ
– 意思決定
– 疲労
航空機事故分析
16 May 2014 39 PBLD @ JSA2014
• 1977年3月27日,Los Rodeos空港 (スペイン)
• Pan Am機とKLM機が滑走路衝突 – 583名死亡
• 事故原因は航空技能や知識ではなかった
• 事故原因 – 管制とのコミュニケーション
– チームワーク,リーダーシップ
– 意思決定
– 疲労
航空機事故分析
16 May 2014 40 PBLD @ JSA2014
• 1977年3月27日,Los Rodeos空港 (スペイン)
• Pan Am機とKLM機が滑走路衝突 – 583名死亡
• 事故原因は航空技能や知識ではなかった
• 事故原因 – 管制とのコミュニケーション
– チームワーク,リーダーシップ
– 意思決定
– 疲労
航空機事故分析
16 May 2014 41 PBLD @ JSA2014
ノンテクニカル スキル
ノンテクニカルスキル(NTS)
• 欧州民間航空機関で最初に用いられた
• 定義:テクニカルスキルを補う – 認識的技能,
– 社会的技能,
– そして人材技能
– 安全と効果的パフォーマンスに寄与するもの.
• テクニカルスキルを増強させるスキル – NTSの欠如は過ちの可能性を増加させる
– ( Flin, R. BJA 105; 38-44 , 2010)
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 42
あらゆる職種に必要な技能
• どのような職種でも、2種類のスキル(技能)を適格に身につけることが要求される
• テクニカル・スキル
– その職種ならではの専門技能
– 仕事のための技能
• ノンテクニカル・スキル
– 特定の職種を超えた一般技能
– 安全のための技能
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 43
医療事故の主原因も, ノンテクニカルスキルの誤り
• 入院患者の約10%に医療過誤 – コミュニケーション不全,チームワーク破綻,意志決定の遅れによる
– Flin R, et al. p4, Safety at the Sharp End, Ashgate
• 日本での医療過誤(約3300例)の原因 – 確認を怠った:約15%
– 観察を怠った:約15%
– 判断を誤った:約15%
– 『医療事故情報収集等事業第20回報告書』
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 44
英国議会の患者安全対策
• 現状:英国の病院内死亡が多い.
• 対策は4つ.
– ノンテクニカルスキル訓練
– 臨床薬剤師必要
– 診断スキル向上
– 根本原因分析の応用
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 45
このレポートの結論: 英国では医師ノンテクニカルスキルの教育を必須化
ついに、世界保健機関 (WHO) が 患者安全教育を推進しはじめた
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 46
医療者が求めてきたこと
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 47
新人
中堅 熟達者
専門職 知識技能
時間
知識・技能レベル
医療は危険 (Leapeより改変)
1
10
100
1000
10000
100000
1 10 100 1000 10000 100000 1000000 10000000
危険
(>1/1000)
まあまあ
超安全
(<1/100K)
医療
バンジー
ジャンプ
登山
運転
化学工場
チャーター便
定期便
航空機
欧州鉄道
原子力発電
危険率(何人に1人遭遇するか)
年間死亡者総数
16 May 2014 48 PBLD @ JSA2014
専門職の知識と高い技術を追究しても、 患者安全は取り残されました。
患者安全のために、目指すこと
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 49
新人
中堅 熟達者
専門職 知識技能
時間
知識・技能レベル
中堅 熟達者
ノンテクニカルスキル
患者安全な 医療の基本は、
あなたの医師人生の いつ、
身につけますか? 16 May 2014 PBLD @ JSA2014 50
患者安全な医療者になるための 知識・技能を身につけたい
1. 全く思わない (0)
2. ほとんど思わない(20/100)
3. あまり思わない(40/100)
4. やや思う(60/100)
5. かなり思う(80/100)
6. 非常に強く思う(100)
PBLD @ JSA2014 51 16 May 2014
Take Home Messages
• 麻酔科での訓練で、以下が身につきます
– 急変時への対応
– 過剰鎮静・不足な鎮静への対応
• 大切なのは、ノンテクニカルスキル
– 患者安全技能として中堅以降で必須技能
– 初心者から訓練を開始しよう
• 麻酔修得だけでなく、患者安全医師技能を
16 May 2014 PBLD @ JSA2014 52