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40 寒地土木研究所月報 №776 2018年1月

1.はじめに

第19回国際地盤工学会議(19th International Conference on Soil Mechanics and Geotechnical Engineering)が、2017年9月17日~9月22日に大韓民国ソウル市で開催されました。寒地地盤チームより、冨澤と佐藤が参加する機会を得ましたので概要を報告します。

2.国際地盤工学会議の概要

本会議は、地盤工学に関する技術者と研究者が世界中から一堂に会する国際会議で、4年に一度開催されています。論文は各国内で審査された後、組識委員会でのフルペーパー査読を経て採択されます。本会議には、世界82カ国から1952人の参加があり、日本からは、日本地盤工学会の歴代会長をはじめ約160名が参加しました。

今回の会議では、試験と予測、実施工、自然災害、環境、世界規格、新技術の6つのトピックについて活発な討論が行われました。会議進行はTC(技術専門委員会)が行う形式で、1~2日目は主に地盤工学の著名な研究者の基調講演、3~5日目の口頭発表、ポスター発表およびワークショップが実施されました。6日目は軟弱地盤上に施工されている仁川空港建設現場を中心とした見学会でした。

3.テクニカルセッション発表

冨澤は、3日目の軟弱地盤セッションで、Seismic strengthening technique for existing pile foundations in soft ground and liquefiable ground(軟弱地盤および液状化地盤における既設杭基礎の耐震補強技術)を口頭発表しました。本セッションでは、座長が冒頭に各研究の概要を説明したこともあり、特段の質疑は有りませんでした。ただ、老朽化した構造物基礎の今後の補強・補修の必要性は理解されたものと考えています。

佐藤は同日の盛土セッションで、Factors Causing Deformation in Embankments Constructed in Winter, and Control Measures (冬期土工による盛土の変状要因とその対策)を口頭発表しました。本研究は冬期土工により融雪期に盛土が変状する事象に対して、その要因と対策方法を現場試験施工から整理したものです。会場からは、寒冷地特有の地盤工学上の課題として、興味を持ったというコメントがありました。

聴講した他テクニカルセッションやポスターには、パイルドラフトや群杭設計法、アスファルト廃材利用や微生物固化の研究などの口頭発表も有り、各国で同様な課題を共有していること知ることができました。

4.研究者との交流

世界的な国際会議に参加すると著名な研究者に会えます。基礎工学では現在Mark Randolph氏(オーストラリア)が非常に有名ですが、冨澤は挨拶をすることができました。

基調講演ではRandolph氏が橋梁などの基礎設計のみでなく、海岸工学の地中構造物に付いても触れていることに深い興味を感じました。日本では、各機関(道路、建築、港湾、鉄道など)で独自の設計施工基準を持っていますが、今後の耐震・防災に備えては、技術者間の認識共有が必要と考えています。

佐藤は3年前からTC207の国内メールメンバーとなりましたが、委員長であるMichael Lisyuk氏と話をす

第19回国際地盤工学会議(ソウル会議)に参加して

冨澤 幸一  佐藤 厚子

報 告

写真-1 オープニングセレモニー

パン・ギムン第8代国際連合事務総長の来賓挨拶

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寒地土木研究所月報 №776 2018年1月 41

ることができました。また、TC207が主催するワークショップが開催され、このメンバーと土構造物の設計法に関する最近の話題などの情報交換ができました。

5.おわりに

次回4年後の国際地盤工学会議は、オーストラリアでの開催が決まっています。地盤工学発展のため、日本の技術者・研究者はこの国際会議に是非参加して頂きたいと考えます。

なお、本会議の論文等のデータは寒地土木技術情報センターにありますので、参考にしてください。

写真-2 Mark Randolph基調講演

写真-3 土構造物専門委員会TC-207

   Michael Lisyuk委員長

佐藤 厚子SATO Atsuko

寒地土木研究所寒地基礎技術研究グループ寒地地盤チーム・地域景観ユニット

(兼務)主任研究員博士(工学)技術士(建設・総合技術監理)

冨澤 幸一TOMISAWA Koichi

 寒地土木研究所寒地基礎技術研究グループ寒地地盤チーム主任研究員博士(工学)技術士(建設・総合技術監理)


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