第0785号平成31年4月25日(木曜日) (第三種郵便物認可)(9) 印 刷 ジ ャ ー ナ ル
㈱ミヤコシ(宮腰亨社
長)は3月18・19日の2
日間にわたり、宮腰精機
㈱・国見工場(秋田県大
仙市)で開催した「OP
EN
HOUSE
201
9春」において、LED
―UVを搭載した軟包装
市場向けの最新機種を公
開した。
参考出展として紹介さ
れた「VPP13WL」は、
東レなどと共同開発した
軟包装向け水なしLED
―UV間欠式オフセット
輪転機。同機は、東レが
開発した水なし平版と水
溶性UVインキとの併用
により、印刷時にVOC
を含む液体(湿し水)を
使う必要がないほか、印
刷後の設備などの洗浄に
VOCが発生しない水系
洗浄液を利用することが
できる。
加えて、省電力性が高
いLED―UVを使った
インキ乾燥方式を組み合
わせることで、溶剤乾燥
と排気処理が不要とな
る。これにより、グラビ
ア印刷方式に比べてVO
C排出量の98%以上の削
減と、印刷機1台あたり
約80%減となる年間96万
kWhの電力消費量の削
減を実現する。
展示モデルは、K、C、
M、Y、白、白の6色の
ユニット構成で、さらに
印刷ユニットは、窒素
パージLED―UV装置
が搭載されており、これ
により、乾燥性を高める
とともに、臭気の発生を
防ぐことができるので、
食品用途の軟包装印刷に
も問題なく、対応するこ
とができる。
生産性については、分
速300Shotの間欠
動作での高速印刷を実
現。天地サイズは、数値
入力のみで、215・9
mmから406・4mm
まで対応。さらに同社独
自の圧胴ステップバック
方式により、12ミクロン
mの基材まで対応可能と
なっている。
「MHL13A」は、U
V・水性プライマー対応
の軟包装用スリーブ式オ
フセット印刷機。同社独
自の軽量スリーブを版同
とブランド胴に採用する
ことで導入コストの軽減
を実施。さらに同機は、
プライマーコーティング
ユニット(フレキソ)を
搭載することで、これま
でインキの密着性が悪い
汎用品のフィルムなどに
も対応する。今回の展示
モデルでは、水溶性プラ
イマーを使用していた。
さらに水冷製のLED―
UV乾燥装置の採用によ
り、基材への熱影響を抑
えたフィルム印刷が可
能。加えて窒素パージの
搭載により低臭気化も
図っている。
印刷最高速度は、毎分
100m。印刷幅は、3
30mm、基材幅は、3
81mmから609・6
mmまで対応可能。また、
展示モデルは5色の印刷
ユニットとプライマーは
フレキソタイプ1色(水
性/UV兼用)を加えた
構成となっていた。
VPP13WL
MHL13A
ミヤコシ
新たな軟包装印刷を提案
出品2機種にLED―UV搭載
UVシステムを周辺環境
を含めたソリューション
パッケージで提供
ISTは印刷業界のみ
ならず、様々な産業用途
向けにUVシステムを提
供しており、ユーザー企
業は世界で2000社以
上。このうち1500社
が商業印刷、シール・ラ
ベルなど印刷関係のユー
ザー企業で占める。
ISTでは、ただ単に
UVシステムを販売する
のでなく、ユーザー企業
の状況に応じて、その周
辺環境を含めたソリュー
ションをトータルに提案
することでクライアント
の信頼を築いている。勝
田社長は「ISTはUV
照射機を環境、周辺ユ
ニットなどとセットで提
供している。大切なのは
ユーザー企業のプロジェ
クトが前進することであ
り、ISTはそのための
アプリケーションをユー
ザー企業とともに見極め
ながら全般的なソリュー
ションを提供している」
と説明する。
現在、日本のユーザー
は約200社。イースト
アジアの方針として勝田
社長は「ISTグループ
はドイツ本社であるた
め、マーケットの主力は
ヨーロッパとアメリカ、
近年では中国を含めたア
ジア諸国である。ただ、
日本はとくに産業用途系
で技術的なノウハウや先
進的なものを発信できる
国という位置付けである
ため、全世界で11〜12あ
るISTのグループ企業
の中、イーストアジアで
は最先端の生産技術に対
してUVソリューション
を開拓し、提供していく
という役割を担ってい
る」と話しており、日本
の先進技術にISTのU
V技術を融合させること
で印刷業界だけでなく、
モノづくりの国・日本の
様々な産業に貢献してい
く考えを示している。
低電力入力エネルギーで
従来以上の出力パワーを
実現
ISTイーストアジア
は従来の水冷式・空冷式
のUVシステムに加え
て、最新のLED―UV
システム、そしてこれら
豊富な省電力UVシステ
ムをラインアップ
ISTでは、様々な省
電力UVシステムをライ
ンアップしており、ユー
ザー企業の状況に応じて
最適なシステムを提供し
ている。
UVハンディタイプの
UV―LED照射ユニッ
ト「HANDcure」
は、ドイツの電動工具
メーカーであるmeta
bo社とISTとのコラ
ボレーションによるバッ
テリー駆動のコードレス
UV―LED照射ユニッ
ト。粒子汚染の検出・検
査、材料特性の検出・検
査、UV接着剤の硬化、
UVポッティング剤の硬
化、合成ファイバー生産
での樹脂硬化、プライ
ヤーやパテの硬化などに
活用できる。UV接着剤
の硬化用途ですでに国内
での販売実績もあり、手
軽で低価格なことから今
後のさらなる実績拡大が
予測される。
また、「SPOTCU
RE05」は小ロットに最
適なUVシステム。短い
照射時間と強力なUV出
力の組み合わせにより、
短いサイクルを実現す
る。320nmまでの
短波長領域においても
フィードバック・プール
制御で強力なUV出力を
維持し、UV―C領域の
短波長光の特徴である高
UVエネルギーを必要と
する接着工程に最適なシ
ステムとなっている。
一方、「SPOTCU
RE09」は、最強のUV
出力と波長選択の柔軟性
を有しており、UV出力
と高圧水銀UVランプの
発光を両立したLED―
UVシステム。個々の異
なる波長域を組み合わ
せ、幅広い領域をカバー
できることを特徴にして
いる。
また、「Hot
Swa
p」は、電源ユニットや
ケーブル、冷却設備・配
管などのシステムを構成
する主要部品は共用した
まま、ランプカセットの
入れ替えのみでUVラン
プとUV―LEDランプ
が両用可能なシステム
で、昨年のIGAS20
18でも注目を集めたシ
ステム。システムの導入
後は使用するインク・ニ
スなど材料の開発に合わ
せてUVランプからUV
―LEDへの切り替えを
段階的に低リスクで実現
できる。
ハイパフォーマンス空
冷型のUV―LEDシス
テム「VZ LEDcu
re」は、インクジェッ
トワイド・グランド
フォーマット印刷だけで
なく、各種の産業用途に
も適した最大照度25W/
cm2のハイパワーUV
―LEDシステム。独自
のノウハウによる冷却設
計および高効率LEDモ
ジュールの採用により、
静粛性に優れたコンパク
トボディを実現している。
また、グループ企業の
Integration
Technology社
が開発した小型・高出力
水冷型UV―LEDソ
リューション「SC
L
EDcure」は、世界
最高クラスの出力レベ
ル・安定性を誇る超スリ
ム設計の水冷型UV―L
EDシステムとなってお
り、Integrati
on
Technolo
gy社独自の高効率LE
Dモジュール設計、およ
び冷却設計技術(STE
ADYcool)により、
従来にない低電力UV―
LEDシステムを実現す
る。
◇
◇
今後の方針として勝田
社長は「ISTイースト
アジアとしては、日本市
場を中心に、ブランドの
知名度と信頼をさらに高
めていきたい」と語る。
世界トップシェアの信頼
と長年のノウハウ、コス
ト競争力を高めたIST
のUVソリューションは
UV印刷に取り組んでい
く印刷会社にとって、待
望のシステムと言えそう
だ。印刷業界を軸に、あ
らゆる産業に向けてUV
―LEDシステムで広く
社会に貢献していく同社
の今後の取り組みに期待
したい。
を短時間で切り替えられ
るハイブリッドUVシス
テムを提供し、競争力を
高めている。
ISTのLED―UV
システムは「高出力と省
電力を両立」させている
ことが最大の特長で、勝
田社長は「同一の出力パ
ワーを出すのであって
も、ISTのLED―U
Vシステムは競合メー
カーのものと比べて入力
エネルギーを低く抑える
技術で、効率の高い光源
を持っている。LED―
UVの出力パワーは入力
パワーを上げれば上げる
ほどあがるが、それでは
LEDのメリットである
省電力の効果がなくなっ
てしまう。ISTでは、
世界トップレベルの出力
を、入力をいかに低減し
て達成するか、という基
本軸を曲げない製品開発
を進めている」と説明す
る。
また、ISTでは従来
のUVシステムにおいて
も低い入力エネルギーで
高い出力パワーを出すこ
とができる。その理由に
ついて勝田社長は「電源
のデザインやランプバル
ブの効率、リフレクター
の性能など、部品ひとつ
ひとつで長い歴史を持つ
会社であるため、その作
り込み・ノウハウにおい
て、競合メーカーと差別
化を図ることができてい
る」と話している。
デジタル印刷向けLED
―UVシステムも提供
また、ISTはデジタ
ル印刷向けのUVシステ
ムで世界トップシェアの
供給量を誇るイギリスの
インテグレーションテク
ノロジーをグループ企業
としている。
インテグレーションテ
クノロジーは、世界で初
めてワイドフォーマット
のインクジェットUVプ
リンターが発売された際
に搭載されたUVシステ
ムのメーカーであり、イ
ンクジェット向けのデザ
インでは深いノウハウを
持っている。
「インクジェットプリ
ンターは従来のオフセッ
トやシール印刷機よりも
効率の高いシステム構成
となっているため、UV
システムについてもデザ
インコンセプトがまった
く異なる。このため、限
られたスペースで要望さ
れる出力パワーを実現し
ながら、可能な限りのダ
ウンサイジングも非常に
重要なファクターになっ
てくる。インテグレー
ションテクノロジーのL
EDのヘッドサイズは、
例えば競合メーカー製品
と同レベルの出力パワー
であっても、非常にコン
パクトであり、かつ軽量
にデザインされている」
(勝田社長)
昨今では、LED―U
Vがインクジェットプリ
ンターのマーケットの主
流となっているため、7
割がLED―UVとなっ
ているという。同社では
どのような照射幅、構成
でもモジュラーデザイン
をコンセプトにフレキシ
ブルに搭載できるノウハ
ウを持っている。
また、デジタル印刷だ
けでなく、LED―UV
がトレンドになりつつあ
るフレキソ印刷・スク
リーン印刷などの業界で
も採用事例を増やしてい
るようだ。
コストダウンエンジニア
リングによるコスト競争
力を強化
ISTのUVシステム
は、堅牢性に優れ、寿命
も長いとユーザーから評
価を得ている一方、価格
的な課題をマーケットの
フィードバックとして受
けていた時期もあったよ
うだ。
そこでISTでは、数
年前から「コストダウン
エンジニアリング」とい
う新しいコンセプトを取
り入れた。これは、すべ
てのモデルに対して部品
1つ1つを見直し、リビ
ジョンだけを担当するセ
クション。ここにおいて
各モデルのパフォーマン
スを維持しながら部品を
見直し、コストを落とし
ていくための取り組みが
日常的に行われていると
いう。
「これにより、近年で
は同じ照射幅とパワーレ
ベルであっても競合メー
カーよりもむしろコスト
メリットが高いとの声を
いただいている。しかし、
単純に部品を安くすると
いうのではなく、UVシ
ステムを世界トップシェ
アで提供している強みを
生かし、耐性・品質・流
通効率などを保持した上
での各部品の見直しを継
続し、結果的に各モデル
のコストダウンを実現し
ている」(勝田社長)
勝田 社長
ドイツに本社を構えるISTはUVシステムの供給量で世界トップシェアを誇るメーカー。同社
の日本法人であるISTイーストアジア㈱(本社/東京都府中市、勝田康社長)は、ISTの各種
UVシステムならびにLED―UVシステム、ハイブリッドUVシステムを印刷業界内外に提供し
ている。また、同社はデジタル印刷向けLED―UVシステムで世界トップシェアを誇るイギリス・
インテグレーションテクノロジーをグループ会社としており、豊富なラインアップとノウハウによ
り、ユーザー企業に最適なソリューションを提案している。
照射強度と省電力性能両 立
デジタル印刷向けLED―UVシステムも
世界トップシェアのUVソリューション提供ISTイーストアジア