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Page 1: 高分子表面の劣化原因解析~走査プローブ顕微鏡(SPM)による … · ※高分子討論会(2Pf052)より 【パルスNMRによる親水性の評価】 パルスNMRは、横緩和時間(T

パルスNMRを用いた分子運動性解析による高分子と液体との相互作用評価Evaluation of Interaction between Polymer and Solution by Analysis of

Molecular Dynamics with Pulsed-NMR(株)三井化学分析センター ○亀谷 俊輔、生井 勝康Mitsui Chemical Analysis & Consulting Service, Inc., 580-32, Nagaura, Sodegaura, Chiba 299-0265, Japan

高分子は各種材料として幅広く利用されているが、ゲルのような吸水性材料では水との相互作用、

電解質膜などでは電解液との相互作用が重要となっているように、高分子材料と液体との相互作

用を理解する必要がある。このような相互作用の評価方法として、パルスNMRによる分子運動性

解析が考えられる。パルスNMRは1HのT2値により試料の分子運動性を評価できる手法であり、水

であればそのT2値により自由水や結合水の割合を見積もることが可能である。本研究では、パル

スNMRを用いた各種材料と液体間の相互作用評価を行った。

【概要】

【まとめ】 パルスNMRを用いた分子運動性解析により、材料ー液体間の相互作用状態の評価を行うことが可能である。

また、ガス吸着測定を組み合わせることで、相互作用状態に関してさらに詳細な解析が可能となる。

○市販のおむつの不織布部分(サンプルA、サンプルB)の水との相互作用評価

BET比表面積

19.4比表面積の比(水蒸気/Kr)

1.29

親水性 サンプルA > サンプルB

0.33

0.017

0.180.14

○水に浸漬させたサンプルで、パルスNMR測定を行い、自由水と結合水の割合を求め、親水性の評価を行った。※高分子討論会(2Pf052)より

【パルスNMRによる親水性の評価】◎パルスNMRは、横緩和時間(T2)を見ることで、分子運動性の評価が可能である。

T2値を見ることで、分子運動性を評価し、運動性が異なる成分(例:Hard、Mid、Soft)に分けることが出来る。

存在比(%) T2(ms)

A B A B

Hard

-30 ℃ 44.9% 68.7% 7.79 8.10

-10 ℃ 18.6% 48.4% 8.60 8.76

0 ℃ 0.0% 8.5% 10.5

Mid

-30 ℃ 35.4% 31.3% 175 121

-10 ℃ 4.8% 36.2% 68.2 273

0 ℃ 2.0% 0.0% 35.1

Soft

-30 ℃ 19.7% 0.0% 2760

-10 ℃ 76.6% 15.4% 3490 1640

0 ℃ 98.0% 91.5% 6120 5970

例)パルスNMRによるシリカゲル中の水の分子運動性の評価

シリカゲルAでは、低温(-30 ℃)でも、Soft成分が存在しており、これらは、束縛水であるものと推測できる。

サンプルA サンプルB

自由水と束縛水の存在比

結合水

自由水

0.15 0.10

6nm 15nm

市販シリカゲル2種類 シリカゲルの細孔分布

各成分の存在比とT2

自由水(粒子間にあるbulkyな水)

☆強く結合相互作用した水・・不凍水☆材料と接する界面の微細構造に取り込まれた水・・束縛水

不凍水束縛水

結合水

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0 2 4 6 8 10 12

磁化

強度

Time (ms)

-70 ℃ -60 ℃

-50 ℃ -40 ℃

-30 ℃ -20 ℃

-10 ℃ 0 ℃

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0 200 400 600 800 1000

磁化

強度

Time(μs)

Hard Mid Soft

黒鉛A 14.7% 1.8% 83.4%

黒鉛B 18.2% 5.1% 75.9%

窒素吸着での比表面積

水蒸気吸着での比表面積

比表面積の比(水蒸気/窒素)

黒鉛A 1.4 [m2/g] 0.22 [m2/g] 0.16

黒鉛B 3.5 [m2/g] 0.25 [m2/g] 0.07

パルスNMRによる親水性評価の

結果は、ガス吸着、水蒸気吸着の結果と良い相関が見られた。

○電解質膜の親水性評価

市販の電解質膜を水に一晩浸漬後降温して測定。

各温度の減衰曲線

-70℃でも減衰曲線に急激な減衰は見られず、数ms程度のT2値であることから、氷は見られない。⇒試料と水との親和性が高い

○黒鉛―電解液系の相互作用評価

黒鉛近傍の電解液の各温度での減衰曲線

2種の黒鉛(黒鉛A、黒鉛B)について、電解液を浸漬させ、パルスNMRにより黒鉛中の電解液の状態を評価。

-80℃での電解液の存在比黒鉛の細孔径評価

黒鉛Aの方が比表面積の比が大きい⇒電解液との化学的な相互作用が強いと考えられる

黒鉛Aは、-80 ℃で凍結した成分(Hard)が少ない⇒黒鉛と電解液の相互作用が強い

黒鉛と電解液の状態の模式図

パルスNMRを用いることで、試料

中の水の状態を評価可能であり、それにより試料との相互作用の強さについて比較ができる。

黒鉛Aの方が電解液との相互作用が強く、不凍液体が多いことで凍結が起こりにくいと考えられる。黒鉛A、Bともに凍結したと考えられる。

室温_サンプルA

室温_サンプルB

-80 ℃_サンプルA

-80 ℃_サンプルB

-80 ℃では初期に急激な減衰が見られる⇒氷が形成された。

各温度での減衰曲線

0

50

100

150

200

250

-90 -70 -50 -30 -10 10

T2(m

s)

温度(℃)

各温度のT2値

黒鉛A:人造系、黒鉛B:天然系 電解液:1M-LiPF6 EC/EMC/DMC

※第68回高分子年次大会にて発表(1Pa031)

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