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地球温暖化対策とまちづくりに関する検討会まちづくりのためのエネルギー消費の選好分析
東京大学
大学院新領域創成科学研究科
吉田好邦
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省エネ型のまちづくり
• 民生・運輸部門における消費選好を検討– 太陽光発電
• 普及のためのカギは何か?
– 自動車交通• なぜCO2排出が増えたのか?
• 地域の特性と保有• 税か規制か?
– 家電、住宅・・・
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望ましい環境管理方法
• 消費者の行動– 合理的に行動するとは限らない– 望ましい環境管理方法(税/排出権取引/規制)はケースバイケース
• 民生・運輸部門– 規制的な対策が施しにくい→製造サイドへの規制規制
– 消費者の選好をうまく利用できないか?→税税による選好誘導
4
消費選好分析の手法
• 表明選好法・・・アンケート調査によるコンジョイント分析など• 顕示選好法・・・過去の統計実績から選好構造を推定
※コンジョイント分析– マーケティング・心理学・環境評価等の分野で適用– 仮想的な財・サービスであるプロファイル(複数の属性と、その属性を構成する水準からなる)をいくつか提示
– 回答者:最も好ましいものを選択 or 好みの順位づけ等– プロファイル群による質問を繰り返し行い,かつ複数の回答者に答えてもらう– 回答結果を統計的に分析⇒属性単位の選好を評価
5
太陽光発電
住宅用太陽光発電住宅用太陽光発電
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
500
万kW
2 003 2010目標
PVの現状と目標 (NEDO資料より作成)
政府目標と比較し、現状は大きく乖離
自律的普及期に入ったとされる
補助金廃止の方向
PVのシェアへの補助金・売電価格の影響は?
6
太陽光発電
普及率の実績
普及率-潜在発電電力量(注) 普及率-設置単価
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
700 800 900 1000 1100 1200
潜在発電電力量(kWh/kW)
普及率(%)
0 .0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
50 60 70 80 90 100 110 120
設置単価(kW/万円)
普及率(%)
設置単価の安い地域ほど、普及率が高い
潜在発電電力量の多い地域ほど、普及率が高い
普及率の説明要因として、設置単価・潜在発電電力量(日射量)を採用
(注)潜在発電電力量:日射量に各地域の気候特性を考慮した発電効率を乗じて算出
7
太陽光発電
価格
普及予測
量産効果を考慮生産量
log{cos ( ) 22.5} 6.345 0.194 log{ ( 1)}t t production t− = − × −∑
・産業連関表を用いて、量産が究極に進んだ場合の設置単価を算出
・量産が進むにつれ、設置単価がその価格に漸近すると仮定
・NEDO公表の実データを用いて、回帰分析
8
太陽光発電
普及予測
計算方法
前年生産量から設置価格算出
モデル式から普及率を算出
単年設置量=普及率×住宅数
累積設置量=Σ単年設置量
普及⇒価格低下⇒普及⇒・・・
9
太陽光発電
普及予測(結果)
0
200,000
400,000
600,000
800,000
1,000,000
1,200,000
1,400,000
1,600,000
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
(kW)
0
20,000
40,000
60,000
80,000
100,000
120,000
140,000
160,000
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
(kW)
0
20
40
60
80
100
120
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
(万円/kW)
累積導入量予測 単年導入量予測
設置単価推移
累積設置kW 2010年度の480万kWという目標は達成困難
設置単価 60万円/kW程度で高止まりしてしまう
単年設置kW 2004年をピークに、年々微減
10
太陽光発電
売電価格の影響は?
売電価格売電価格の変化に対する消費者の購買行動の変化を知ることを目的とする。
分析結果
【アンケートの概要】
実施期間:2006年1月
調査方法:インターネット調査
総回答数:300(戸建て購入意思あり)
アンケート概要
属性 係数 漸近的t値初期投資 -0.0053 -1.7096売電価格 0.0558 3.8638回答者数 77
0.1257ρ2
コンジョイント分析(属性:初期投資と売電価格)
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太陽光発電
売電価格を考慮した普及予測
普及実績のモデル 売電価格のモデル+
統合モデル説明変数:潜在発電電力量、設置単価、売電価格
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
80.0%
90.0%
100.0%
23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49
(売電価格;円/kWh)
(単年普及率;%)
普及率と売電価格(設置単価は70万円/kWとして計算)
売電価格を考慮した普及予測
太陽光発電
2010年度での政府目標を達成するために必要な売電価格、27円/kWh での普及予測(売電価格補助売電価格補助)
同じ投資回収年数で初期投資額への補助9.3万円/kWを補助した場合の普及予測(設置単価補助設置単価補助)
累積設置kW数 設置単価
単年設置kW数
0
10
20
30
40
50
60
70
80
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
単年設置量(万kW)
設置単価補助
売電価格補助
0
10
20
30
40
50
60
70
80
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
設置単価(万円/kW)
設置単価補助
売電価格補助
0
100
200
300
400
500
600
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
累積設置量(万kW)
設置単価補助
売電価格補助
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乗用車乗用車
• 自家用自動車によるCO2排出増加の要因分析– 普通車、小型車、軽– 都市、地方– 保有台数、燃費、走行距離
• 地域特性と保有台数・車種の関係– 人口密度、交通分担率、世帯人員数の保有台数や保有する車のサイズへの影響
• 規制か誘導か?– グリーン税制とトップランナー燃費基準の効果はどちらが大きいのか?
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乗用車(CO2増加の要因)
CO2排出増加の要因分析
●準備:
各地域・各年の乗用車保有台数、走行距離、燃費についてデータを整備
年度・・・1994年から2002年
車種・・・普通・小型・軽
地域・・・北海道、東北・中部、関東、近畿・中国、四国・九州
(以上を「地方」に区分)
東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県
(以上を「都市」に区分)
●普通・小型・軽の保有モデル作成の前段階として・・・
⇒地域別の車種の保有傾向から過去のCO2の排出構造を分析
15
分析結果2001年の車種別CO2排出量(百万トン)
0
10
20
30
40
50
60
70
80
普通 小型 軽
都市
地方
52%
19%
29%
乗用車(CO2増加の要因)
排出量の過半数を普通車が占め、多くを地方で排出
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乗用車(CO2増加の要因)
普通乗用車(2000cc以上)CO2排出量の増加要因
-20%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
94-97 98-02(都市) 98-02(地方)
保有台数
走行距離
燃費
• 保有台数:増加率は減少しつつあるが近年も増加• 走行距離:地方では依然増加• 燃費:改善傾向⇒地方における普通車の燃費向上、他の車種への乗換
17
乗用車(CO2増加の要因)
小型乗用車(2000cc以下)CO2排出量の増加要因
-25%
-20%
-15%
-10%
-5%
0%
5%
10%
94-97 98-02 保有台数
走行距離
燃費
•保有台数:減少傾向にある•走行距離:増加している⇒普通乗用車への乗換によりCO2排出は減少傾向
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乗用車(CO2増加の要因)
軽乗用車CO2排出量の増加要因
-40%
-20%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
94-97 98-02
保有台数
走行距離
燃費
•保有台数:増加傾向•走行距離:減少傾向⇒複数台の所有として軽乗用車の購入⇒CO2増加:走行距離よりも保有台数の効果が大
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乗用車(CO2増加の要因)
CO2削減のためには
• (都市:渋滞による効率の低下)• 地方で増え続ける普通車、軽をどうするか
– 短距離のトリップにも乗用車を使用⇒軽• コールドスタートによる燃費効率の低下⇒生活への車依存への再考を促す
⇒短距離トリップ向けとして電気自動車(EV)の普及をめざす(現在の軽乗用車のEV化)
20
乗用車(地域特性と保有)
地域特性と保有動向
世帯構成
小型乗用保 有台数 大型乗用保 有台数 軽乗用保有 台数
車種選好モデル
人口密度 交通分担率 GDP
保有に関す る地
域モデル
型式別シ ェア
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乗用車(地域特性と保有)
保有台数・車種に与える要因
増加因子 減少因子
保有台数名目GDP道路実延長
鉄道営業キロ
普通車/小型車
人口密度
面積あたり鉄道営業キロ
平均世帯人員数
小型車/軽人口密度
道路実延長平均世帯人員数
22
乗用車(地域特性と保有)
適用例(宇都宮市)宇都宮市のLRT計画(全線10km)が実現したとすると・・・
0
50000
100000
150000
200000
250000
300000
普通 小型 軽 計
保有台数(台)
実績(2004)
推定(2004)
推定(LRT)
• 保有台数:3%程度の減少• 小型と軽の割合:若干減少
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乗用車(税か規制か)
規制か税か?
• 消費者がどのような車を好んで購入しているのかを知る必要がある
• 車種選好モデルの作成
24
乗用車(税か規制か)
車種選好モデル車種選好モデル
• 3つのモデルを作成(660-1500cc,1500-2000cc,2000cc以上)
• シェア(効用)の説明変数– 前年販売台数(対数;台)– 新車種ダミー(0 or 1)– 10.15モード燃費(対数;km/l)– 室内容積(対数;m3)
– 馬力(対数;kW)– 年間経費(対数:円)
• 車両価格と燃料コスト,税を含めた総費用
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乗用車(税か規制か)
型式別シェア型式別シェア(2001(2001年年15001500--20002000cccc))
0%
1%
2%
3%
4%
5%
6%
7%
8%
9%
ス
ト
リ
ー
ム
ス
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ア
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ス
カ
イ
ク
シ
オ
ン
推定シェア
実シェア
26
乗用車(税か規制か)
乗用車
• グリーン税制
ー自動車税25%減免(2年間)
自動車税25%減免(2年間)
自動車税50%減免(2年間)
27
乗用車(税か規制か)
乗用車(トップランナー規制)
• 規制と税の2本立て– 平成22年度重量別燃費基準(生産サイドむけ)
ガソリン車
車重(kg) -703 703-828
828-1016
1016-1266
1266-1516
1516-1766
1766-2016
2016-2266 2266-
燃費基準値(km/l) 21.2 18.8 17.9 16.0 13.0 10.5 8.9 7.8 6.4
28
トップランナー規制
• 1999年4月に施行
12
12.5
13
13.5
14
14.5
15
15.5
1993 1996 1999 2002
(年)
(km/L)
トップランナー方式が適用されている場合
トップランナー方式を適用しなかった場合
平均燃費推移
乗用車(税か規制か)
29
乗用車(税か規制か)
CO2削減率
-4.00%
0.00%
4.00%
8.00%
12.00%
16.00%
2002年 2003年 2004年 2002年 2003年 2004年
普通車 小型車
グリーン税制
トップランナー方式
共に導入した場合
・グリーン税制はトップランナー方式に比べCO2削減率が低い・グリーン税制はトップランナー方式との間に相乗効果
30
まとめ
• 民生・運輸部門の省エネ対策の方向性– 規制か税か?
1. 省エネ規制が有効– 乗用車、冷蔵庫、エアコン
2. 税制等による選好誘導が有効– 太陽光発電、 (乗用車)、大型テレビ
– 地方の中・長距離トリップ(普通車)と短距離トリップ(軽)への対策
– 長期的には地域特性との関連も重要