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1. はじめに
ベンチャー・キャピタル(以下、VC)が行う
投資手法の1つに、シンジケート投資とよばれる
ものがある。シンジケート投資とは、VCなどの
投資家がベンチャー企業に投資する際、単独では
なく複数で協同して投資する手法のことを指す。
VCによる企業への投資は、新規株式公開(以下、
IPO)までの間、複数回行われるのが一般的であ
るため、VCが投資を行うたび(=ラウンドと称
する)にシンジケーションが組成されることにな
る。学術的な観点からは、VCのシンジケート投
資が投資先企業の育成やIPO時のパフォーマンス
にどのような影響を及ぼすのか、また、シンジケ
ーションそのものがどのような目的の元に組成さ
れるのかといった点をめぐって欧米を中心に複数
の研究が存在している。
例えば、Lerner [1994]は、最初に投資する
VC(リードVC)とその案件に参加しようとして
いる他のVCによる投資先企業の二重チェックの
重要性について、米国のVC投資データで検証を
行った。実証分析の結果、VCによるシンジケー
ションが組成される理由は、リードVCが投資先
企業を選択する際、他のVCにセカンドオピニオ
本稿では、ベンチャー・キャピタル(VC)のシンジケーション組成理由を実証的に明らかにする。具体的には、
日本のIPO企業へのVC投資データから、シンジケーション組成の有無ならびに投資時のVC数が投資リターン
に与える影響を検証する。実証分析の結果、わが国におけるVCのシンジケーション組成理由は、投資案件のセ
レクションの過程で、第三者の立場から他のVCにセカンドオピニオンを求める点にあることが明らかとなった。
1.はじめに
2.仮説の設定と推計モデル
3.サンプルと基本統計量
4.分析結果
5.結論と課題
目 次
論 文
論 文
ベンチャー・キャピタル(VC)のシンジケーション組成理由についての実証分析
幸 田 圭一朗
幸田 圭一朗(こうだ けいいちろう)
2009年立命館大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了。修士(経営学)。同年4月
より立命館大学大学院経営学研究科博士課程後期課程在学中。京都学園大学経営学部非常
勤講師。NPO法人Japan Venture Research理事。