「バンクーバーで多文化と自然を堪能: ワーキングホリデーで英語もバイトもインターンも」(竹田陽香)
GMS学部の竹田陽香さんは、大学3年の3月から半年間、ワーキングホリデーの制度を
利用して、カナダのバンクーバーに海外研修に行ってきました。 バンクーバーがあるカナダの西海岸ブリティッシュ・コロンビア州は、豊かな海岸線と
美しいロッキー山脈を擁し、世界各国からの観光客を魅了しています。とりわけバンクー
バーは、アジア系を中心とした移民が多く、国際色豊かな環境と温暖な気候も相まって、
英語の語学留学先として人気があります。 そんな人気都市バンクーバーで、竹田さんはどのような研修を行ってきたのでしょう
か?以下は、竹田さんにお聞きした内容です。
Q1. 竹田さんの海外研修のきっかけは何でしたか? 私はそれまでの人生で海外経験がほとんどなくって、中学の時から海外生活に憧れてい
ました。GMS 学部は留学する人が多いので、それを見てたら「私も留学に行きたい」と思い、それで行動に移しちゃいました。
Q2. なるほど。確かに GMS 学部は海外研修の実績を卒業科目として認定していることもあって、留学する人が多いですね。しかしたくさんある候補地の中で、なぜ
カナダのバンクーバーを選んだのですか? 私も留学先はどこがよいか、さんざん迷いました。でも最終的にカナダのバンクーバー
に決めた理由は、いくつかあります。 まず私は、単一民族や単一言語を話す人ばかりが住む場所より、多民族・多言語が共存
する場所を探しました。確かに留学には英語を学びに行くのですが、私としては、その土
地生まれ・育ちの、極端に言えば「英語しか」できない人ばかりの土地よりも、色々なバ
ックグラウンドの人と交流できる場所の方が、刺激的で勉強になると思ったからです。そ
の点バンクーバーは、多くの移民を擁するマルチカルチュラルな街であるということで
惹かれました。
↑チャイナタウンの門。住んでいたシェアハウスのすぐ近く。
また、マルチカルチュラルな街というとおのずと候補地は大きめの都市に絞られてく
るのですが、都会であっても「治安がよいこと」は留学先としての必須条件でした。私は
東京生まれの東京育ちなのですが、よく留学生や海外経験がある友達から「東京は治安が
いいから安心」という話を聞いていました。留学は快適な日常から飛び出すことも必要で
すが、不要なリスクを避け、安心して研修生活を送ることができるということも、やっぱ
り大事です。その点バンクーバーは、大都市の割には治安がよいとのことだったので、ポ
イント高かったです。 さらに、候補地選びには気候も考慮しました。例えば、ニューヨークやトロントやロン
ドンなどは、調べていくと色々な肌の色や宗教や言語の人がいて刺激的という点ではよか
ったのです。でも、冬はかなりの積雪量があると聞き、自分にはちょっと厳しいかなーと
思いました。その点、太平洋に面したバンクーバーは気候が温暖で、過ごしやすいとい
う点も惹かれました。 それからさらに調べていくと、バンクーバーは、ちょっと郊外に出ればきれいな海や森
がある、足を延ばせばロッキー山脈もある、という点もいいなと思いました。私が育っ
たのは東京の下町(注:竹田さんは JR山手線の五反田駅近くの戸越銀座育ち)なので、都会もいいのですが、豊かな自然に対する憧れもありました。
Q3. 色々と考えて調べた結果、カナダのバンクーバーに絞ったんですね。それから竹田さんの場合、単なる語学留学ではなくて、ワーキングホリデー制度を利用して
の留学ですよね?GMS 学部でも時々この制度を利用して留学する学生がいますが、竹田さんはどうしてこの制度を利用したのですか?
ワーキングホリデー制度を選んだ一番の理由は、お金です。日本でバイトして貯めたお
金だけでは、6か月も留学することは予算的に難しかったのです。1か月の短期留学だっ
たら日本で貯めたお金でなんとかなる、けれどやっぱり半年間留学したかったんです。し
かしどれだけバイトをしても、お金は足りない・・・。だったら、「現地で働いちゃえ」と。
通常の留学ビザでは留学先で働くことはできませんが、ワーキングホリデービザを取得す
れば、働きながら勉強ができます。 それに私は、海外で働く経験もしてみたかったのです。英語も勉強したいし、お金はほ
しいし、働きたい。そうなると、ワーキングホリデー制度がベストでした。幸いカナダは
ワーキングホリデービザが取得できる国なので、これしかないと思いました。 Q4. 6か月の滞在というと、全部でどれくらいお金がかかりましたか?
えっと、東京とバンクーバーの往復航空券が16万円で、現地での半年分の生活費と交
通費があわせて36万円でした。また半年間の家賃が42万円、それから語学学校の授業
料(3か月)が60万円でした。合計すると、150万円ちょっとです。 渡航前に少しでもお金を貯めようと、実家の居酒屋と渋谷のスペインレストランのアル
バイトを掛け持ちしました。さんざんバイトしたのですが、やっぱり全部を貯めることは
できず、不足分は現地で働いて稼ぎました。 Q5. 大変でしたね。ところで、不足分は現地で稼いだとのことですが、現地ではどんなお仕事をしていたんですか? バンクーバー到着後1ヶ月が過ぎたころ、本格的な和食料理が売りの和食居酒屋でアル
バイトを始めました。この店はバンクーバーの中心駅であるウォーターフロント駅のすぐ
そばにあり、地元の人にも観光客にも人気で、店は毎晩お客さんで溢れていました。 私は、学校を終えて宿題をしてからお店に行き、17時~深夜2時くらいまで、そこで
働いていました。学校の勉強と仕事との両立は、正直言ってきつかったです。
↑ 開店前の和食居酒屋 barカウンター。毎夜、お客で溢れる。
Q6. 竹田さんはご実家の手伝いで居酒屋の仕事には慣れていたとはいえ、勉強しながら毎日9時間も仕事とはタフですね。で、それだけ働いて、留学費用はまかなう
ことはできたんですか? おかげさまで、なんとかなりました。お店からいただく1ヶ月の給与自体は、約8万円
と日本で働くよりも少ないのです。しかし、カナダにはチップ制度があります。給与に加
えて、平均して一日3,000円くらいのチップを、お客様からいただいていました。こうしていただいたお金で、現地の生活費と家賃をまかなうことができました。 Q7 . そうですか、よかったです。ではお金の話ばかりが続いたので少し話題を変えて、現地で住んでいた所について教えてください。現地では、どのようなところ
に住んでいたのですか? (1)ホームステイ 留学する前から、何人かで広めの家を借りて家賃を折半するハウスシェアリングという
のを一度してみたいと思っていました。しかし3月にカナダに到着したばかりの時点では、
現地に友達もいないし土地勘もなかったので、1か月だけカナダ人家庭にホームステイ
しました。 ホームステイ先の家は、学校があるダウンタウンからバスで約30分のバーナビーとい
う、白人の方が多い閑静な住宅街にありました。
↑ ホームスティ先で使っていた部屋
ホストファミリーの家族構成は、髭のお父さん、笑顔が素敵なお母さん、ちょっとぽっ
ちゃりの6歳の男の子、そして自由奔放な4ヶ月の猫がいました。ホストマザーのジョシ
ーは、まだバンクーバーについて右も左も分からなかった私に、優しく街のことや現地の
習慣について教えてくれました。私は家にいるときは、子どもや猫と遊んでました。
← ホストファミリーと
(2)シェアハウスの生活 1ヶ月間のホームステイ生活を終え、バンクーバーにも慣れた頃、念願のハウスシェア
リングをはじめました。ハウスメートは3名のアジア系カナダ人で、場所はバンクーバー
のダウンタウンの高層マンションです。高層マンションというと家賃が高そうに思えるか
もしれませんが、4BRの家賃を私も入れて4人で割ると、一人当たりの負担額は1ヶ月約7万円と、それほどではありませんでした。
↑ シェアハウスからの眺め。バンクーバーで一番好きな景色。
Q8. なかなか快適そうな、住環境ですね。ところで肝心の学校は、どんなところでしたか? 友達はすぐにできましたか?
(1)学校の概要 バンクーバーに到着して最初の三ヶ月間は、inlingua という名前のダウンタウンの語学
学校に通っていました。1クラスの生徒数は、だいたい12人くらいでした。生徒の割合
は、日本人10%、韓国人15%、ブラジル人15%、あとはコロンビア人、台湾人、ス
イス人、スペイン人といったところです。彼らの年齢は、15歳~40歳程度でした。学
校が小さかったため、アットホームでよかったです。
↑ 初級クラス校舎 ↑ 上級クラス校舎 (2)最初のクラスメート達 同時期に入学したクラスメートたちがブラジル人とスペイン人達だったので、最初は
彼女達とばかり行動を共にしていました。みんな私よりも3~10歳年上でしたが、フレ
ンドリーで優しかったです。 ただ、彼女達は仕事の休暇を利用してバンクーバーに来ていたので、1週間~1か月程す
ると帰国してしまいました。その時は、取り残されたようで少し寂しく感じました。
← 一緒に食べ
た巻き寿司。飲
み物はコーラ。
(3)アジア人のクラスメート達 ブラジル人とスペイン人のクラスメート達が帰国したころ、私もカナダ生活に慣れてき
て、アジア人の友達が多くできました。アジア人の人たちとは文化も似ていて、彼らは
日本のことをよく知っていたので、すぐに仲良くなれました。 学校近くのパブに行き、グラスを傾けながらワイワイ楽しく過ごしたり、週末は遊びに
行ったりしました。
(4)Ella との出会い その中でも、最も仲が良かったのは韓国人の Ella です。初めて廊下で彼女とすれ違った
時、同じバッグを持っていることに気づいて、お互い声をかけあいました。彼女とは、そ
れをきっかけに仲良くなりました。Ella は私より 3 歳年上でしたが、国籍や歳が違うことも忘れるくらい気が合って、周囲から「姉妹みたい」と言われるほどいつも一緒でした。
彼女といると、毎日が楽しかったです。
↑出会うきっかけをつくってくれたバッグ ↑Ellaがくれたお揃いのキーホルダー
(5)好きだったクラス 学校の授業はどれも勉強になりましたが、もっとも好きだったのは、ビジネス英語の
クラスです。基礎英語を一通り勉強したあとのクラスで難易度は高かったのですが、担
当の台湾人の先生が面白く、教え方も上手でした。またそのときのクラスメートも、ブ
ラジル人、日本人、香港人、韓国人と出身はバラバラでしたが、先生のおかげで仲良く
なり、笑いの絶えないクラスでした。 プレゼンテーションの時は、クラス一丸となって休日も準備に励みました。
↑台湾人の先生(メガネかけてます)とクラスメートでピクニック
Q9.学校の仲間とは随分打ち解けていたようですが、授業で困ったこととかはありませんでしたか? 困った、という程のことではないのですが、授業の受け方が出身地域によって違うこ
とに驚きました。日本人をはじめアジア出身の生徒達は、大抵授業中は静かに先生の話を
聞いてました。それに対してヨーロッパや中南米からの生徒達は、授業中ひっきりなしに
発言するので、「ああ授業に対する考え方が、こんなに違うものなんだ」って思いました。
↑ アジアと中南米の生徒たち。
Q10. 確かに、日本人の学生さんは、授業中に自分から発言することに慣れていない人が多いですね。ただ授業中の発言はともかくとして、週末一緒に遊びに行ったり
して、竹田さんは随分と仲間との時間を楽しんでいた様子ですね? もっとも竹田さんの場合、駒澤大学でも、隣駅の三軒茶屋や近くの渋谷にクラス
メート達とご飯を食べに行ったりしているので、どんな環境でも生活を楽しむスキ
ルがあるのかもしれませんね。
↑駒澤大学近くの飲食店 ↑仲間とケーキを食べる竹田さん それで、現地では週末は、どんなところに行ったのですか?
え?そんなスキルが私にあるとは思ってもみませんでした・・・。ただ駒澤大学の近
くは、三茶、渋谷、表参道、新大久保等、面白くておいしいお店があるところが沢
山ありますよね。そんな東京も、私は好きです。 ただバンクーバーが東京と少し違うところは、ダウンタウンをちょっと離れただけ
で豊かな自然が広がっているところです。だから週末には、仲間と山登りをしたり、大
きな国立公園で BBQ をしたり、海に行ったりと自然を満喫しました。
↑ BBQ ↑ 山登り途中の吊り橋
↑ 海へ
Q11. 都会なのに自然もお手軽に満喫できるなんて、羨ましいです。我が駒澤大学も、都心の割には緑が多いです。キャンパス横の駒沢公園は、周囲2キロのウォーキン
グコースがあり、春はお花見に秋は紅葉と、学生達は身近な自然を楽しんでいます。
でも、BBQ までは出来ないですね。きれいな海も、ちょっと遠いですし・・。
↑ 駒沢公園 ↑ 公園側からの駒澤大学
話を現地の生活に戻して、海外生活というと食べ物で苦労する人もいるのですが、
竹田さんの場合はどうでしたか?カナダの食事は、口に合いましたか? それが食事には、まったく困らなかったんですよ。何しろバンクーバーは多民族・多言
語都市で、アジア系移民が多いのです。そのため、彼らが顧客となっているアジア系スー
パーがたくさんあります。私はそういう店で、いつも日本食や韓国食を購入してました。
また、バンクーバーは東京に比べて物価が高かったので、近くに住む友達で集まって、
それぞれの国の料理を持ち寄って分け合っていました。それも楽しい思い出です。 ↓ 韓国人の友達作成のキムチチャーハンと私のサーモン寿司。
カナダのサーモンは、新鮮でとても安いです。
↑友人宅でランチ。台湾のトマトスープ、韓
国のチヂミ、トッポギ鍋、日本の焼きそばとオ
ニギリ。
Q12. 北米にいながら、韓国料理も和食も食べられるなんて、いいですね。ところで竹田さんは、和食居酒屋でのアルバイトは3か月と言っていましたが、留学は半年
間ですよね?残りの期間は、何をしていたんですか? 留学を開始してから5か月目に語学学校を修了し、その頃居酒屋のアルバイトも終わり
ました。ちょうどその頃、日本にいる大学の同級生たちがインターンシップをやっている
と聞いていたので、私も残りの1ヶ月間は、A4kidsというバンクーバーの会社でインターンシップを行うことにしました。 この会社は、経済上の理由からスポーツができない子どもたちや、彼らが使用するスポ
ーツ施設に対し、イベント活動等を通じて経済支援を行っている会社です。小さい会社で
したが、女社長のサンディーをはじめ従業員の方々は優しくて、私に親切に接してくれま
した。最初の頃は、コピー取りや資料作成・整頓といったデスクワーク中心でしたが、最
後の方にはサッカーイベントの手伝いに参加したりと、短い間でしたが充実したインター
ンシップでした。
Q13. 語学学校、居酒屋でのアルバイト、そしてインターンシップと、盛りだくさんの研修でしたね。この体験は、今後竹田さんが生きていくうえで、どのように役立
つと思いますか? まず第一に、留学を通じて、自分で考えて努力するようになった、と感じています。そ
れまでは、学校では先生に言われた通りに宿題をして、アルバイト先では店長に言われる
ままに仕事をして、といったように、目上の人の言うことに従ってさえいればよい、とい
う感じでした。勉強に対しても仕事に対しても、受け身の姿勢だったと思います。もちろ
ん人の意見に素直に耳を傾ける姿勢は必要だとは思うのですが、当時の私は「何をすれば
より良くなるだろうか」などとはあまり自分で考えませんでしたし、考えたとしても行動
に移せていませんでした。 しかしこの留学では、準備の段階から自分で研修地を探し、必要なお金を計算して工面
し、学校やアルバイト先やインターンシップ先の手配を行わなければいけなかったので、
いやでも何が必要なのか自分で考えて行動することになりました。また現地に行っても、
慣れない環境の中で、「どのような英語学習を行えば自分は上達するのだろうか」とか、「ど
う行動すれば色々な国の人と打ち解けることができるだろうか」とか、「仕事の効率を上げ
るには何が必要なのか」とか、自分で考えて、多少なりとも目標に向けて努力するように
なりました。
また第二に、異国での学習・仕事経験は、「自分は異なる環境でも生きていけるんだ」と
いう自信になりました。日本どころか東京すら離れたことがなかった私にとっては、これ
は大きな変化です。 今後私が社会人として仕事をしていくうえで、多少なりとも自分で考えて努力するよう
になったことと、異なる環境で生活した経験は、役立つと思います。
Q14. 最後に、これから海外研修を行いたいと思っている人達へのアドバイスやメッセージをお願いします。 海外研修はお金もかかるし、勇気も必要です。しかし、それだけの見返りがあると思い
ます。海外に興味がある人、学生生活で何かしたいと思う人は、ぜひ留学すべきです。自
分の力で何かを成し遂げるという経験が、大きな自信につながると思います。 私が行ったカナダは、海外初心者にはとても住みやすく、留学生に優しい国です。自然
が好きな方にはぜひおすすめです!
おわり (聞き手&文責 GMS学部講師 杉森建太郎)