世界を取り巻く石油事情1427103　宮城透

普段わたしたちが利用するエネルギーの多くが石油によって賄われている。石油は化学製品を作る・自動車を動かす・電気を発電するなど数えきれないほど様々なものに利用されている。そして日本が消費する原油のほぼ 100 ％を海外からの輸入にたよっているので、石油価格の変動が企業の業績や人々の消費生活に大きな影響を受ける。それでは、世界の石油事情はどうなっていて、またどのように価格が決定されるのだろう？

私たちの生活と石油の関係

かつては中東の石油産出国を中心とした OPEC （石油輸出国機構）が石油市場の絶大なシェアを持ち、加盟国間でのカルテルによって政治的・戦略的に利用され、おもに減産による生産調整によって、市場価格を操作し莫大な利益を得てきた。時には世界経済を混乱に陥れた（第一次・二次オイルショック）。 しかし近年、当時から OPEC の次に石油を産出していたロシアは堅調な原油産出を続けたことや、石油掘削技術が発達にしたよるシェールオイルの採掘でアメリカが台頭してきたことから OPEC の国際石油シェアが減少に転じ、原油市場の国際競争が始まった。

激化する国際競争

世界の出来事と原油価格の推移（長期）

OPEC 原油シェアの縮小と原油価格の推移（短期）

出所： EIA 統計

OPEC 加盟国 14 か国　　　　　　　　　　　　　　　　　　アメリカ 世界原油生産シェア　　　　　　　　　　　　　　　原油 1day 生産量ランキング　約 43 ％　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（国別）筆頭加盟国　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 VS 　第 1 位（ 2016 ）サウジアラビア　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 1164 万 4 千バレル / 日原油 1day 生産量　　　　　　　　　　　　　　　（内、シェールオイル 443万バレル）　ランキング（国別）　　　　　　　　　　　　　　　　　　世界原油輸出シェア第 2 位（ 2016 ）　　　　　　　　　　　約 13 ％1150 万 5 千バレル / 日

OPEC 　 VS 　 アメリカ①

お互いに原油の生産を競い合う。 採算ライン　　　 OPEC 　 29 ドル /1 バレルあたり（原油） 　　　　　　アメリカ　 62 ドル /1 バレルあたり（シェールオイル） OPEC の狙い OPEC 総会で加盟国間で原油の増産を約束し、供給を増やし原油の市場価格を 60ドル以下に持っていく→アメリカ企業のシェールオイル事業の撤退→シェアの拡大 アメリカの狙い シェールオイルの量産体制を早急に整え、国内消費の拡大、また地理的な利便を生かした北米・南米向けの原油輸出をねらう

OPEC 　 VS 　 アメリカ②（シェールオイル）

世界各国の原油需要量と供給量の増減

下落し続ける原油価格

A

原油価格の決定要因と影響の大きさ　　　　　　　　　 A 　　　　　　　　　　　　　 B

これらのグラフは IMF （国際通貨基金）によって統計・作成され、 2015 年4 月に WEO （ World Economic Outlook, 世界経済見通し会議）で報告されたグラフである。 A と B のグラフを見ると、価格決定の比重は需要の要因より供給の要因の方が大きいことがわかる。　　　　　　価格決定への影響力　　　供給＞需要つまり、供給サイドである世界原油市場の約 4割を占める OPEC の戦略的カルテル（アメリカのシェールオイルに対抗した増産合意）が大きな影響を与えていることがわかる。 IMF は、このまま両者がシェア争いで増産合戦を続けると、原油輸出国の経済に深刻な悪影響が起こると OPEC に警告した。

原油価格の最大要因

B のグラフから、これからは投資家心理の変化によって、原油価格の振れ幅が大きくなるかもしれない。 過去 10 年で原油先物とオプション取引の Non-commercial trading（直接現物を取引しない、需要者と供給者以外の人々による投機的取引）は、急激に増加した。 201４末から 2015 年初頭にかけ原油のスポット価格の暴落は、ちょうどエネルギー関連企業の株価が、企業業績に重要な影響を及ぼす長期的な原油価格の予想に反応し、ほぼ横ばいに推移したときであった。それらは、過去の原油価格の下落は原油市場のファンダメンタルズに反応したものだとわかる。（次ページグラフ参照）

高まる投機的需要

投機的取引と原油価格の関係

最近の原油価格の下落が続く理由は、国際石油市場の競争が激化したことによる OPEC とアメリカの戦略的な生産行動によるものだとわかった。 また、今後は需要と供給だけではなく投機的な需要が高まれば、より原油価格の変動の幅が広がり、ますます競争が激しくなるだろう。 日本は石油をほぼすべてを輸入に頼っているので、今後原油価格の変動の影響を軽減するためには、石油に対するエネルギー依存度を減らすか、または幅広い原油産出国から原油を輸入しリスクを分散させる必要があると考える。

まとめ・考察

http://www.infomine.com/investment/metal-prices/crude-oil/5-year/ https://

www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/fop/commodity/0030.html

https://www.imf.org/external/pubs/cat/longres.aspx?sk=43052.0 「 IMF STAFF DISCUSSION NOTE- Global Implications of Lower

Oil Prices 」＜ AUTHORS＞Aasim M. Husain, Rabah Arezki, Peter Breuer, 　 Vikram Haksar, Thomas Helbling, Paulo Medas, Martin Sommer, and an IMF Staff Team

参考文献①

http://memorva.jp/ranking/world/bp_statistical_review_of_world_energy_2015_pro

参考文献②