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A. Asano, Kansai Univ. 2014年度秋学期 応用数学(解析) 浅野 晃 関西大学総合情報学部 第4部・複素関数論ダイジェスト 孤立特異点と留数 第13回

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4部・複素関数論ダイジェスト / 第13回 孤立特異点と留数 (2015. 1. 8)

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

2014年度秋学期 応用数学(解析)

浅野 晃 関西大学総合情報学部

第4部・複素関数論ダイジェスト 孤立特異点と留数

第13回

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sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

なにをするんでしたっけ?

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はこの考えを使って,実関数の積分

! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。この考えを使って,実関数の積分

! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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x

数直線を

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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x

数直線をy

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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x

数直線をy

複素平面に拡張

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, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

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sano

, Kan

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niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

こういう周C上で

C

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

こういう周C上で

C

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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を計算すると

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sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

こういう周C上で

C

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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を計算すると

上の積分も求まる

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

前回の復習 コーシーの積分定理

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez

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A. A

sano

, Kan

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niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez

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A. A

sano

, Kan

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niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez 積分は0

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ここからの話は正則でない点を囲んで積分したら?

f(z) = 1 / z−1

−0.50

0.51

−1

−0.5

0

0.5

1−20

−15

−10

−5

0

5

10

15

20

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ここからの話は正則でない点を囲んで積分したら?

f(z) = 1 / z−1

−0.50

0.51

−1

−0.5

0

0.5

1−20

−15

−10

−5

0

5

10

15

20

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ここからの話は正則でない点を囲んで積分したら?

f(z) = 1 / z−1

−0.50

0.51

−1

−0.5

0

0.5

1−20

−15

−10

−5

0

5

10

15

20

積分は?

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ここからの話は正則でない点を囲んで積分したら?

f(z) = 1 / z−1

−0.50

0.51

−1

−0.5

0

0.5

1−20

−15

−10

−5

0

5

10

15

20

積分は?

正則でない「穴」によって決まる

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

f(z) = zn の積分

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考える関数をべき級数で表して, 各項の積分を考えるため

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考える関数をべき級数で表して, 各項の積分を考えるため

f(z) = zn を,単位円周C に沿って正の向きに回って積分する

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考える関数をべき級数で表して, 各項の積分を考えるため

f(z) = zn を,単位円周C に沿って正の向きに回って積分する

複素平面において 原点を中心とする 半径1の円周

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考える関数をべき級数で表して, 各項の積分を考えるため

f(z) = zn を,単位円周C に沿って正の向きに回って積分する

複素平面において 原点を中心とする 半径1の円周

実軸

虚軸

1

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考える関数をべき級数で表して, 各項の積分を考えるため

f(z) = zn を,単位円周C に沿って正の向きに回って積分する

複素平面において 原点を中心とする 半径1の円周

実軸

虚軸

1

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考える関数をべき級数で表して, 各項の積分を考えるため

f(z) = zn を,単位円周C に沿って正の向きに回って積分する

複素平面において 原点を中心とする 半径1の円周

実軸

虚軸

1

1 正の向き

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考える

n = 0, 1, 2, … のとき

f(z) = z0, z1, z2, … は単位円周C の内部で正則

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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コーシーの積分定理により

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるn = –1, –2, –3, … のときややこしいので,あらためて

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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とおいて n = 1, 2, 3, …とする

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるn = –1, –2, –3, … のときややこしいので,あらためて

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

とおいて n = 1, 2, 3, …とする

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるn = –1, –2, –3, … のときややこしいので,あらためて

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

とおいて n = 1, 2, 3, …とする

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

実軸

虚軸

1

1

C

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるn = –1, –2, –3, … のときややこしいので,あらためて

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

とおいて n = 1, 2, 3, …とする

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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経路 C 上で

実軸

虚軸

1

1

C

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるn = –1, –2, –3, … のときややこしいので,あらためて

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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とおいて n = 1, 2, 3, …とする

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

経路 C 上で

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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実軸

虚軸

1

1

C

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるn = –1, –2, –3, … のときややこしいので,あらためて

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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とおいて n = 1, 2, 3, …とする

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

経路 C 上で

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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実軸

虚軸

1

1

C

置換積分

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるn = –1, –2, –3, … のときややこしいので,あらためて

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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とおいて n = 1, 2, 3, …とする

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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経路 C 上で

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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実軸

虚軸

1

1

C

置換積分

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるについて n = 1のとき

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるについて n = 1のとき

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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n = 1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるについて n = 1のとき

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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n = 1

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるについて n = 1のとき

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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n = 1

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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n = 2, 3, … のとき

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるについて n = 1のとき

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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n = 1

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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n = 2, 3, … のとき

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるについて n = 1のとき

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

n = 1

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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n = 2, 3, … のとき

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるについて n = 1のとき

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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n = 1

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz = i

#e2(n−1)πi − 1

$(3)

で,e2(n−1)πi = cos(2(n− 1)π) + i sin(2(n− 1)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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n = 2, 3, … のとき

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前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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より

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前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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Page 46: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4部・複素関数論ダイジェスト / 第13回 孤立特異点と留数 (2015. 1. 8)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるつまり

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるつまり

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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また,a を中心とする半径1の円周を C とすると

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるつまり

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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また,a を中心とする半径1の円周を C とすると

実軸

虚軸

C

a

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

zn の積分を考えるつまり

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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2014年度春学期 応用数学(解析) 第14回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 孤立特異点と留数

前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

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また,a を中心とする半径1の円周を C とすると

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前回の講義で,

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

という「コーシーの積分定理」を説明しました。では,閉曲線 C の内側に,関数 f(z) =1

z − 1におけ

る z = 1のように正則でない点、いわば「穴」があいている場合はどうなるか,が今回の話題です。

f(z) = znの積分

今日の問題のような積分を考えるために,関数を級数で表して,各項に対する積分を考えます。その準備として,f(z) = znを,単位円周(複素平面における,原点を中心とする半径 1の円周)にそって正の向きにまわって積分した時の値を考えます。

Cを単位円周とします。まず,n = 0, 1, 2, . . . の場合は,円周内で znは正則ですから,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz = 0です。

一方,n = −1,−2, . . . のとき,あらためて f(z) =1

zn(n = 1, 2, . . . )とおきます。このとき,z = 0で

f(z)は正則ではありません。この場合は,単位円周Cを正の向きにまわる zが z = eiθ (0 ! θ < 2π)と表されるので,

!

Cf(z)dz =

" 2π

0e−inθ dz

dθdθ

=

" 2π

0e−inθieiθdθ

= i

" 2π

0ei(1−n)θdθ

(1)

となります。この積分は,n = 1のとき!

C

1

zdz = i

" 2π

0dθ = 2πi (2)

となり,n = 2, 3, . . . のときは!

C

1

zndz =

i

i(1− n)

#ei(1−n)θ

$2π0

=1

1− n

#e2(1−n)πi − 1

$ (3)

で,e2(1−n)πi = cos(2(1− n)π) + i sin(2(1− n)π) = 1ですから上の積分は 0です。

同様に,aを中心とする半径 1の円周を C とするとき,!

C

1

(z − a)ndz =

%2πi n = 1

0 n = 2, 3, . . .(4)

となります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  1/7 ページ

実軸

虚軸

C

a

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式正則関数の任意の点での値は, その点を囲む閉曲線上の値だけできまる

領域 D で正則な関数fの点 z における値 f(z) は, D 内で点 z を囲み,正の方向に1周する閉曲線 C 上の積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

で表される

z = 0 のときは 原点を囲み,正の方向に1周する閉曲線 C 上の積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

で表される

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez

正則関数の任意の点での値は, その点を囲む閉曲線上の値だけできまる

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez

正則関数の任意の点での値は, その点を囲む閉曲線上の値だけできまる

正則関数は 「折り目なく」 曲がっているから,

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez

正則関数の任意の点での値は, その点を囲む閉曲線上の値だけできまる

正則関数は 「折り目なく」 曲がっているから,

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez

正則関数の任意の点での値は, その点を囲む閉曲線上の値だけできまる

正則関数は 「折り目なく」 曲がっているから,周囲(囲む閉曲線上)の 値によって その中心の値が決まって しまっても不思議ではない

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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原点

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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原点

こういう経路で

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

原点

こういう経路でを積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

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関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

原点

こういう経路でを積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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原点

こういう経路でを積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

原点

こういう経路でを積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

原点

こういう経路でを積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

原点

こういう経路でを積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

原点

こういう経路でを積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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原点

こういう経路でを積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

原点

こういう経路でを積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

原点

こういう経路で

原点では正則でないが

を積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

原点

こういう経路で

原点では正則でないが

グレーの部分では正則

を積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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を考える

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

原点

こういう経路で

原点では正則でないが

グレーの部分では正則

を積分

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

関数

コーシーの積分定理により,積分=0

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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グレーの部分では正則 コーシーの積分定理により,

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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グレーの部分では正則 コーシーの積分定理により,

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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グレーの部分では正則 コーシーの積分定理により,

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

グレーの部分では正則 コーシーの積分定理により,

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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グレーの部分では正則 コーシーの積分定理により,

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

同じ経路を逆方向だから       打ち消し合う

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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グレーの部分では正則 コーシーの積分定理により,

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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同じ経路を逆方向だから       打ち消し合う

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

グレーの部分では正則 コーシーの積分定理により,

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

同じ経路を逆方向だから       打ち消し合う

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

グレーの部分では正則 コーシーの積分定理により,

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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C とは逆回りだからマイナス

同じ経路を逆方向だから       打ち消し合う

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

グレーの部分では正則 コーシーの積分定理により,

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

C とは逆回りだからマイナス

同じ経路を逆方向だから       打ち消し合う

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(??)式の意味を考えるため,図??のような,原点を囲む閉曲線Cとその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

−Cr

f(ζ)

ζdζ = −

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (9)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

グレーの部分では正則 コーシーの積分定理により,

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

C とは逆回りだからマイナス

同じ経路を逆方向だから       打ち消し合う

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(??)式の意味を考えるため,図??のような,原点を囲む閉曲線Cとその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

−Cr

f(ζ)

ζdζ = −

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (9)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/?? ページ

つまり

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

内側の円の半径→0とすると

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

内側の円の半径→0とすると

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

内側の円の半径→0とすると

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

に収束する (詳細略)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

内側の円の半径→0とすると

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

に収束する (詳細略)

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

内側の円の半径→0とすると

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

に収束する (詳細略)

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

内側の円の半径→0とすると

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

に収束する (詳細略)

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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内側の円の半径→0とすると

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

に収束する (詳細略)

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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よって

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分公式

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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内側の円の半径→0とすると

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

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O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

に収束する (詳細略)

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

よって

O

C

Cr

P

Q

図 1: コーシーの積分公式

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式は,領域Dで正則な関数 f の点 zにおける値 f(z)が,D内で点 zを囲み正の方向に1周する閉曲線 C に沿った積分を使って

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ (5)

と表されるというものです。とくに z = 0のとき,C を原点を囲み正の方向に一周する閉曲線として

f(0) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζdζ (6)

となります。この公式は,正則関数 f の点 zでの値は,zを囲む閉曲線上の値だけで決まってしまうことを示しています。正則関数を「軟らかい板を,ぐにゃぐにゃとどこにも折り目がなく曲げたようなもの」と考えれば,ある点での関数の値が周囲での値によって決まってしまう,というのは,それほど不思議ではありません。

(6)式の意味を考えるため,図 1のような,原点を囲む閉曲線 C とその内側で原点を囲む半径 rの円Cr,それに両者を結ぶ線分 PQを考えます。関数 f(ζ)

ζは原点で正則ではありませんが,P からCを正

の向きに1周→ PQ→ Cr を逆向きに1周→QP という経路を考えると,この経路は閉曲線で,その内部で関数 f(ζ)

ζは正則です。よって,コーシーの積分定理により

!

C

f(ζ)

ζdζ +

" Q

P

f(ζ)

ζdζ +

!

−Cr

f(ζ)

ζdζ +

" P

Q

f(ζ)

ζdζ = 0 (7)

で,P → Qの積分とQ → P の積分は打ち消し合い,−Cr(Crの負の方向)に沿った積分は (−1)×Cr

の正の方向に沿った積分となるので,!

C

f(ζ)

ζdζ =

!

Cr

f(ζ)

ζdζ (8)

となります。r → 0のとき,上式の右辺は!

Cr

f(0)

ζdζ に収束し 1,前節で説明した 1

zの積分を使うと

!

Cr

f(0)

ζdζ = f(0)

!

Cr

1

ζdζ = 2πif(0) (9)

1なぜ収束するのかは,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  2/7 ページ

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

孤立特異点と ローラン級数展開

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ここからの見通し孤立特異点とは

f(z) = 1 / z−1

−0.50

0.51

−1

−0.5

0

0.5

1−20

−15

−10

−5

0

5

10

15

20

こういう,正則関数にあいた「穴」(1点を除いて正則)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ここからの見通し孤立特異点をもつ関数について孤立特異点の周りの積分を使って 関数が級数に展開できる(ローラン級数展開)

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

1−20

−15

−10

−5

0

5

10

15

20ローラン級数を 積分することで孤立特異点の周りの 積分は「留数」で 表されることがわかる

留数を別途求められれば,積分が簡単に求まる

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開孤立特異点の周りの経路で積分前と同じ考えで,コーシーの積分公式より

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

前と同じ経路で

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開孤立特異点の周りの経路で積分前と同じ考えで,コーシーの積分公式より

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

前と同じ経路で

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開孤立特異点の周りの経路で積分前と同じ考えで,コーシーの積分公式より

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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前と同じ経路で

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

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niv.

ローラン級数展開

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

等比級数の形

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

等比級数の形

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

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ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

等比級数の形

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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ζ は外側の経路上だから

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

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(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

等比級数の形

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

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(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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ζ は外側の経路上だから

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

絶対値が1より小さく,収束する

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

等比級数の形

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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ζ は外側の経路上だから

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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絶対値が1より小さく,収束する

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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こちらの ζ は内側の経路上

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページa

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

こちらの ζ は内側の経路上

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページa

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (11)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開以上から

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開以上から

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

孤立特異点 a のまわりのローラン級数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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ところで

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

ところでa

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

ところでa

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

ところでa

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

グレーの部分で f(z) は正則なので,コーシーの積分定理より

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ローラン級数展開

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

ところでa

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

グレーの部分で f(z) は正則なので,コーシーの積分定理より

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

よって

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

Page 120: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4部・複素関数論ダイジェスト / 第13回 孤立特異点と留数 (2015. 1. 8)

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

Page 121: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4部・複素関数論ダイジェスト / 第13回 孤立特異点と留数 (2015. 1. 8)

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

留数と「n位の極」

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

留数あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

関数 f(z) を展開して, C′′ に沿って積分

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

留数あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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関数 f(z) を展開して, C′′ に沿って積分

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

留数あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

関数 f(z) を展開して, C′′ に沿って積分

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

ここしか残らない 積分すると 2πi

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

留数あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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関数 f(z) を展開して, C′′ に沿って積分

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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ここしか残らない 積分すると 2πi

つまり

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

留数あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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関数 f(z) を展開して, C′′ に沿って積分

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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ここしか残らない 積分すると 2πi

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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つまり

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

留数あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

関数 f(z) を展開して, C′′ に沿って積分

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

ここしか残らない 積分すると 2πi

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

つまり

f(z) の孤立特異点 a における [留数 (residue)]という

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

留数あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

関数 f(z) を展開して, C′′ に沿って積分

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  3/7 ページ

ここしか残らない 積分すると 2πi

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

つまり

f(z) の孤立特異点 a における [留数 (residue)]という

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

留数あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

関数 f(z) を展開して, C′′ に沿って積分

a

C

P

Q

Cʹʹ

図 2: 孤立特異点とローラン級数展開

となりますから,(6)式が得られました。これをさらに zだけ(積分経路も含めて)平行移動すると,(5)式が得られます 2。

孤立特異点とローラン級数展開

領域Dにおいて,関数 f(z)が1点 aを除いて正則であるとき,aを f(z)の孤立特異点といいます。つまり,今日の最初に述べた「穴」です。

このとき,aを中心とする円周 C と,その内部にありやはり aを中心とする円周 C ′を考え,図 2のように,P から C を正の向きに1周→ PQ→ C ′を逆向きに1周→QP という閉じた経路を考えます。すると,経路の内部で f(z)は正則ですから,f(z)をコーシーの積分公式を用いて表すことができます。図 1と同様の関係を考慮すると

f(z) =1

2πi

!

C

f(ζ)

ζ − zdζ − 1

2πi

!

C′

f(ζ)

ζ − zdζ (10)

となります。

ここで,(10) 式の第1項の積分の過程では,ζ が外側の経路 C を動き,z は C の内部にあるので|z − a| < |ζ − a|です。そこで,

1

ζ − z=

1

(ζ − a)− (z − a)=

1

ζ − a· 1

1− z − a

ζ − a(11)

と変形すると,右辺の 2つめの分数は初項 1,公比 z − a

ζ − aの等比級数の和で表され,

1

ζ − z=

1

ζ − a

"1 +

z − a

ζ − a+

#z − a

ζ − a

$2

+ · · ·%

(12)

となります。同様に,(10)式の第2項の積分の過程では,ζ が内側の経路 C ′を動き,zは C ′の外部に

2詳細は,参考文献を参照してください。

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ここしか残らない 積分すると 2πi

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

つまり

f(z) の孤立特異点 a における [留数 (residue)]という

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

留数を別の方法で求められれば,積分は簡単に計算できる

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数ローラン級数がa-nから始まるような 孤立特異点を,[n位の極]という

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数ローラン級数がa-nから始まるような 孤立特異点を,[n位の極]という

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数ローラン級数がa-nから始まるような 孤立特異点を,[n位の極]という

両辺を (n – 1) 回微分すると

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数ローラン級数がa-nから始まるような 孤立特異点を,[n位の極]という

両辺を (n – 1) 回微分すると

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数ローラン級数がa-nから始まるような 孤立特異点を,[n位の極]という

両辺を (n – 1) 回微分すると

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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微分によって,a-1 の手前の項まで消える

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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z→a のとき,これらの項は0

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

z→a のとき,これらの項は0よって

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

z→a のとき,これらの項は0よって

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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z→a のとき,これらの項は0よって

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

孤立特異点を囲んだ閉曲線上の積分は 留数で表される

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

z→a のとき,これらの項は0よって

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

孤立特異点を囲んだ閉曲線上の積分は 留数で表される

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

z→a のとき,これらの項は0よって

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

孤立特異点を囲んだ閉曲線上の積分は 留数で表される

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  4/7 ページ

n位の極については,留数は別途求まる

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

「n位の極」と留数

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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z→a のとき,これらの項は0よって

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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孤立特異点を囲んだ閉曲線上の積分は 留数で表される

あるので |ζ − a| < |z − a|で,

1

ζ − z=

−1

ζ − a

!1 +

ζ − a

z − a+

"ζ − a

z − a

#2

+ · · ·$

(13)

と表されます。

(12)式,(13)式を (10)式に代入すると,

f(z) = · · ·+ a−n

(z − a)n+

a−(n−1)

(z − a)n−1+ · · ·+ a−1

z − a+

a0 + a1(z − a) + · · ·+ an−1(z − a)n−1 + an(z − a)n + · · ·(14)

ただし

an =1

2πi

%

C

f(ζ)

(ζ − a)n+1dζ (n = 0, 1, 2, . . . ) (15)

a−n =1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ (n = 1, 2, . . . ) (16)

となります 3。

ここで,図 2の円環領域で f(z)は正則なので,コーシーの積分定理により1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)n−1dζ − 1

2πi

%

C′f(ζ)(ζ − a)n−1dζ = 0 (17)

であり,これを使うと,(15)式と (16)式を合わせて

an =1

2πi

%

Cf(ζ)(ζ − a)−n−1dζ (n = 0,±1,±2, . . . ) (18)

と表すことができます。

関数 f(z)をこのような級数で表すことを,f(z)の孤立特異点 aのまわりのローラン (Laurent)級数展開といいます。関数 f(z)と孤立特異点 aについて,|f(z)| → ∞ (z → a)のとき,aを f(z)の極といいます。これは,ローラン級数の負のべきの項が有限,すなわち級数が a−n (n ! 1)から始まることと同値です(詳細は略)。このとき,aをn位の極といいます。なお,負のべきの項が無限に現れるときは,aは真性特異点とよばれます。

留数

図 2において,f(z)を円環部分の中にある円周 C ′′に沿って正の向きに1周して積分することを考えます。f(z)をローラン級数展開したものの各項を積分すると考えると,今回の最初に説明した「znの積分」により, 1

z − aの項以外はすべて 0となり,

a−1 =1

2πi

%

C′′f(z)dz (19)

3本当は,ここで「無限級数の積分」を「積分の無限級数」に置き換えられるのは,当然ではありませんが,ここでは詳細は略します。

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n位の極については,留数は別途求まる

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

孤立特異点がいくつあってもb1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

孤立特異点がいくつあってもb1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

孤立特異点がいくつあってもb1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

孤立特異点がいくつあっても

いくつかの孤立特異点を囲んだ 閉曲線上の積分は それぞれの孤立特異点での 留数がわかれば求められる

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

Page 149: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4部・複素関数論ダイジェスト / 第13回 孤立特異点と留数 (2015. 1. 8)

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ようやく,最初の問題へ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

こういう周C上で

C

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

こういう周C上で

C

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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を計算すると

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

こういう周C上で

C

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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を計算すると

上の積分も求まる

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

を計算する

経路は

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

を計算する

経路は

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

を計算する

経路は

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

孤立特異点 は,すべて1位の極

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

を計算する

経路は

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

孤立特異点 は,すべて1位の極展開するまでもなく

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

それぞれ留数を求める

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

それぞれ留数を求める

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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それぞれ留数を求める

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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それぞれ留数を求める

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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n=1だから微分しなくてよい

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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それぞれ留数を求める

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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n=1だから微分しなくてよい

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(1+i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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それぞれ留数を求める

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

n=1だから微分しなくてよい

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(1+i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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それぞれ留数を求める

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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n=1だから微分しなくてよい

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(1+i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分する経路の内部にある孤立特異点は2つ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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それぞれ留数を求める

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  5/7 ページ

n=1だから微分しなくてよい

となります 4。この a−1を,f(z)の孤立特異点 aにおける留数 (residue)といい,Res(a; f)で表します。

ここで,孤立特異点 aが n位の極であるとき

f(z) =a−n

(z − a)n+ · · ·+ a−1

z − a+ a0 + a1(z − a) + · · · (20)

と表されますから,

(z − a)nf(z) = a−n + a−n+1(z − a) + · · ·+ a−1(z − a)n−1 + a0(z − a)n + · · · (21)

という,べき級数が得られます。したがって,両辺を (n− 1)回微分すると,

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) = (n− 1)!a−1 +

n!

1!a0(z − a) +

(n+ 1)!

2!a1(z − a)2 + · · · (22)

となり,

Res(a; f) = a−1 =1

(n− 1)!limz→a

dn−1

dzn−1(z − a)nf(z) (23)

が得られます。これらのことは,孤立特異点つまり「穴」を囲んだ閉曲線上の積分が,留数で表され,しかも留数は上の式が計算できれば求められることを表しています。

また,閉曲線 C の内部で,関数 f(z)が有限個の孤立特異点 b1, b2, . . . を除いて正則であるとします。このとき,b1, b2, . . . のそれぞれを囲み C の内部にある円周を正の向きに一周する経路を C1, C2, . . . とすると,これまでと同様の考えで,コーシーの積分定理により

!

Cf(z)dz −

!

C1

f(z)dz −!

C2

f(z)dz − · · · = 0 (24)

ですから,1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(b1; f) + Res(b2; f) + · · · (25)

がなりたちます。このことは,いくつかの「穴」を囲んだ閉曲線上の積分は,それぞれの「穴」での留数がわかれば求められることを示しています。

留数と定積分

留数の考えを使って,図 4に示す,幅 2r・高さ rの長方形の経路Cに沿った f(z) =1

z4 + 1の積分を

考えます。1

z4 + 1=

1

(z − 1+i√2)(z − −1+i√

2)(z − −1−i√

2)(z − 1−i√

2) (26)

ですから,4つある f(z)の孤立特異点 1 + i√2,−1 + i√

2,−1− i√

2,1− i√

2は,すべて1位の極です。

4こう言えるのは,ローラン級数が「一様収束」しているからです。詳細は略します。

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b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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同様に

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(1+i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分するよって

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分するよって

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページ

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページではこの考えを使って,実関数の積分

! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → ∞のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → ∞のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

は?

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分するよって

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページではこの考えを使って,実関数の積分

! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → ∞のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → ∞のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

は?

r→∞ のとき, 実軸上以外は0 (略,プリントで)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数にして積分するよって

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  6/7 ページではこの考えを使って,実関数の積分

! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → ∞のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → ∞のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

は?

r→∞ のとき, 実軸上以外は0 (略,プリントで)

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → ∞のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → ∞のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度春学期) 第14回 (2015. 1. 8) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

よって

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

今日のまとめ孤立特異点とローラン級数展開  孤立特異点の周りの積分を使って  関数を級数に展開することができる

留数  ローラン級数の形で積分すると  孤立特異点の周りの積分は留数で表せる

留数を使って積分を求める  n位の極については,留数を別の方法で  求めることで,積分が簡単に求められる