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IAEA International Atomic Energy Agency
放射線診断とIVRにおける放射線防護
L17.2: IVRにおける防護の最適化
国際原子力機関 診断およびIVRにおける放射線防護に関する修練教材
訳: 日本IVR学会放射線防護委員会
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 2
はじめに
• IVR治療は有害な確定的影響を及ぼしうる.
• そのような結果を避ける為,ICRPによる国際勧告を遵守することが不可欠である.
• 放射線防護の手段を有効に実施することが、術者および患者の被ばくを有意に減らす唯一の方法である.
IAEA 3
内容
• IVRにおける確定的影響
• ICRP 85年 NCRP 168 勧告
• 被ばく線量の低減法
17.2: IVRにおける防護の最適化
IAEA 4
概要
• IVRで生じうる確定的影響とこれに関係する放射線防護に関する国際勧告を熟知すること.
17.2: IVRにおける防護の最適化
IAEA International Atomic Energy Agency
Part 17.2: IVRにおける防護の最適化
Topic 1: IVRにおける確定的影響
国際原子力機関 診断およびIVRにおける放射線防護に関する修練教材
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 6
インターベンショナルラジオロジー(IVR)
CT
X線撮影
IAEA 7
(a) 複数回の冠動脈造影と冠動脈形成術後6-8週 (b) 16-21週 (c) 術後18-21ヶ月に組織壊死を生じた (d) (c)の病変の拡大写真 (e) 皮膚移植後の写真 (写真はT. Shope & ICRP の厚意による)
(d) (e)
(a) (c)
(b)
1日に2回の冠動脈形成術の後,合併症のため,バイパスグラフト手術が行われた.被ばく線量 20 Gy (ICRP 85)
17.2: IVRにおける防護の最適化
IAEA 8
塞栓後5-6週に生じた右後頭部の一過性脱毛 (W. Hudaのご厚意による). 3ヶ月後に再発毛 (以前より灰色) が確認された
総線量 8 Gy
眼窩周囲AVMに対し2回の動脈塞栓術を3日間の間隔で施行した
17.2: IVRにおける防護の最適化
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 9
a) 3回のTIPS術後の患者の背部中央に生じた周囲の色素沈着をともなう硬化性脱色素プラーク
こられの変化は手技の後2年間でも存在し,典型的な慢性放射線性皮膚炎と記載された (写真はNahass and Corneliusのご厚意による 1998)
b) 背部中央の長方形の色素沈着に囲まれた潰瘍化プラーク
(a) (b)
経頚静脈肝内門脈静脈シャント - TIPS -
IAEA International Atomic Energy Agency
Part 17.2: IVRにおける防護の最適化
Topic 2: ICRP勧告 85
国際原子力機関 診断およびIVRにおける放射線防護に関する修練教材
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 11
オーバーチューブ装置から高レベルの散乱線を受けたIVR医の放射線誘発水晶体混濁
(写真はVañó et al. のご厚意による 1998).
ICRP 85
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 12
術者の手が直接X線に被ばくする可能性のある透視下の脊髄刺激電極留置: (a) 術者の手がX線束内にある.この状態で照射されると、手は直接線の被ばくを受け,(b) 画面に写っている.
(写真はS. Balterのご厚意による)
(a) (b)
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 13
これらの障害の多くは避けられる
特に重篤な障害は全て避けることができる!
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 14
血管造影
1990年代に50以上の報告がある
症例は100以上
未報告例はおそらく何千例も
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 15
何が原因?
手技を行う医師に向けた放射線防護のトレーニングが実施されていない.例えば・・・
• 循環器科医 • 泌尿器科医 • 消化器科医 • 整形外科医 • 血管外科医 • 災害外科医 • 小児科医 • 麻酔科医
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 16
がん
小児では高リスク
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 17
FDAに報告された透視下手技での皮膚障害
障害が生じた手技 症例数
ラジオ波心臓カテーテル焼灼術 12 化学療法の為のカテーテル留置 1 経頸静脈肝内門脈静脈短絡術 (TIPS) 3 冠動脈形成術 4 腎動脈形成術 2 複数回の肝・胆道手技 (血管形成術,ステント留置,生検など) 3 経皮的胆道造影と複数回の塞栓術 1
放射線皮膚障害
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 18
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995
No. of Cases
インドにおけるPTCAの増加 (1989-1995).
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 19
1994年から1995年で20.5% の増加.
1999年 – ほぼ14,000例 1990年代には 5-10%の反復施行 (他部位に対して同一部位に3倍)
PTCA
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 20
1995年から1996年で10.6% の増加 (2,879例から5,925例)
主に僧帽弁バルーン拡張術
冠動脈以外の心臓インターベンション
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 21
インドでは人口1,000人あたりのPTCAは 0.01件. これは日本の100分の1.
インド!将来の件数,装置の台数はどれほど増える?
人口1,000人に対するPTCA施行例数
0
0.5
1
1.5
2
84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98
年
Germany Japan Spain
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 22
1. 皮膚の紅斑: 2 Gy 2. 白内障: 0.5 Gy (2011年4月21日のICRP報告による) 3. 永久脱毛: 7Gy 4. 遅れて生じる皮膚壊死: 12 Gy 眼への長期間の被ばく (例えばIVR医で経験されるような): 5. 白内障は, 3ヶ月未満の期間での被ばくなら4 Gy, 3ヶ月以上の期間であれば5.5 Gyで生じる
1回の,もしくは短い間隔での複数手技によって組織にもたらされる急性被ばく線量は以下の障害をおこす:
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 23
早期の一過性発赤
主紅斑
晩期障害
2Gyの被ばく後数時間で生じる (血管透過性の変化による) 10日後あたりから. 上皮細胞の壊死により生じる炎症の結果. 被ばく後8-10週くらいから,蒼白な色調は皮膚の虚血を示す.
26週以降では毛細血管の拡張と壊死を生じる
皮膚に生じる変化
IAEA International Atomic Energy Agency
Part 17.2: IVRにおける防護の最適化
Topic 3: 被ばく線量の低減法
国際原子力機関 診断およびIVRにおける放射線防護に関する修練教材
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 25
防 護
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 26
X線照射時間を限界まで短縮せよ - - - これは 患者と術者の被ばく低減の黄金則である. 体の厚い患者ほど線量率が高く,線量の蓄積も早いことを忘れるべからず. X線管球を患者からなるべく離すこと. 検出器をできるだけ患者に近づけること.
線量コントロールの具体的方法
血管造影
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 27
幾何学的であれ電子的であれ拡大透視(撮影)を多用しすぎないこと.
体の小さな患者の手技や検出器を患者に近づけられない場合はグリッドを外すこと.
つねに関心領域ぎりぎりまで絞りを入れること.
予想外に手技が長時間に及んだ場合は, 皮膚の同一部位に直接X線が連続してあたらないよう,患者の体位やX線照射野を変更するなど,X線束の角度を変える手段を講ずる.
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 28
多くの装置で, IVR手技中に線量率が変動する. 透視時間は,放射線障害の発生を予見する上では非常におおまかな指標となるにすぎない.
透視時間が同じであっても,患者の体格や手技の内容、例えば照射野の部位,照射角度,通常モードまたは高線量率モード,管球と患者の距離,撮影回数などによって,患者の最大皮膚線量は10倍も異なる.
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術者は防護エプロンを着用すること.遮蔽板を使用すること.自己の線量をモニターすること.そして自分の立ち位置と装置の配置を工夫して線量を最小限にする方法を知っていること.
X線束が水平またはそれに近い場合,被ばく低減のため術者は検出器の側に立つこと.
X線束が垂直またはそれに近い場合は,X線管球を患者の下に配置すること.
術者被ばくの制御
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患者は,手技が放射線障害のリスクを伴うものであれば,被ばくリスクに関して説明を受けるべきである. 皮膚への推定最大累積線量が3Gy以上の場合、被ばく線量記録は保管されるべきである. 皮膚への推定皮膚線量が3Gy以上の全ての患者は被ばく後10-14日間経過観察されるべきである. 患者の主治医は放射線影響の可能性を知らされるべきである. 線量が症状を現すのに十分なものであれば,患者は術後に説明を受けるべきである. 反復する手技を認識するシステムが整備されるべきである
血管造影 – 患者の防護
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 31
まとめ
• 線量低減の方法を用いることで、患者と術者の両者において確定的影響の発生を防止できる.
• ICRPおよびNCRPの勧告は,IVR手技を患者および術者の両者に安全な方法で施行するための骨子となるものである.
IAEA 17.2: IVRにおける防護の最適化 32
さらに詳しい情報を得るには
• Wagner LK and Archer BR. Minimising risks from fluoroscopic x rays. Third Edition. Partners in Radiation Management (R.M. Partnership). The Woodlands, TX 77381. USA 2000.
• Avoidance of radiation injuries from medical interventional procedures. ICRP Publication 85. Ann ICRP 2000;30 (2). Pergamon.
• Radiation Dose Management for Fluoroscopically-Guided
Interventional Medical Procedures, NCRP Report No. 168,
National Council on Radiation Protection and
Measurement. Bethesda, MD. 2010
• Interventional Fluoroscopy: Physics, Technology, Safety, S.
Balter, Wiley-Liss, 2001