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第2週・第1回 旅館のビジネスモデルの 変遷と厳しい経営実態 1

Week2 旅館経営

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第2週・第1回 旅館のビジネスモデルの 変遷と厳しい経営実態

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ホテル→資本集約的

旅館→労働集約的

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旅館は、

施設が小型でも、

立地が僻地でも、

内容が特化しても

経営できる。

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地域外部の旅行客がもたらす旅館の売上の

約30%が人件費

約20%が食材仕入れ

として地域内部へと流れる。

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50,000

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1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

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過剰な債務

現場に多くのムダ

古くて時代遅れな施設

悪い労働環境

支持失いつつあるサービス

競争力ない品質

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旅館業の進化

江戸期

旅行・湯治の宿泊施設

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(忘れの里 雅叙苑、妙見温泉) 8

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(向瀧、会津東山温泉) 9

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旅館業の進化

江戸期

旅行・湯治の宿泊施設

平成期

歴史・風土・生活・食・文化のショーウィンドー

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第2週・第2回 会社と社員の約束ごとである 労働契約(就業規則)

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民法第623条 「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」 労働契約法第7条

「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」

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(湯元舘、おごと温泉) 13

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法律 vs 契約

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10人以上と労働契約を締結している事業場において、就業規則の作成と周知は、刑罰を持って会社に義務づけている。

労働契約法に基づいて、会社と従業員が遵守と履行しなければならない基本ルール(労働条件)を就業規則で定める。

労働トラブルが表面化するのは、このルールに対する会社と従業員の理解の不一致が原因であることが多い。

就業規則には有効期限はなく、何か労働トラブルが発生したとき、労働基準監督署に届けられている就業規則に基づいて判断される。

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就業規則の作成・変更・周知は、

必要的記載事項を含む就業規則を書面にて作成

労働者の過半数代表者からの意見聴取

上記の意見書を添付して所轄の労働基準監督署へ届出

事業場の個々の現場で掲示・回覧・説明等による周知

これらの手続きによって、就業規則が労働契約の内容として効力を発生する。

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(あわらの宿・八木、芦原温泉) 17

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第2週・第3回 労務管理の基本

(現場の実態の合った就業規則の導入)

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会社は、

お客様がいれば時間外労働してでも働く

お客様がいなければ休憩または早く帰る

というような労務管理を都合よくしたい。

しかし、始業・終業・休憩時間等を就業規則に記載しなければならず、サービス産業の現場で労務管理を行うのは簡単なことではない。

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労務管理に関する資料は、

法律的記述→規制当局、学者向け

手続的記述→人事・労務担当者、法律専門家向け

実務的記述→現場管理者向け

に分類でき、そのほとんどは法律的、手続的な記述である。

したがって、

これまでは「法律」から「現場」を見ることが多く、

これからは「現場」から「法律」を見る視点が必要

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つまり、就業規則を見れば、

会社は、どのように従業員に働いてほしいのか

従業員は、会社でどのように働かないといけないのか

を知ることができる。

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したがって、

会社の考え方、哲学、経営理念、価値観等を記載すること

理想とする働き方をわかりやすくシンプルに記載すること

相互の理解の曖昧さ、誤解、行き違いを解消すること

法律が定めていない現場の細かい運用方法を決めること

問題を解決するためのルールブックの役割を果たすこと

が望ましい。

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就業規則では、

現場の実態

明確な目的

作業の管理

単純な運用

法令の遵守

という視点がなければならない。

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第2週・第4回 社員の現場での働き方の 基本ルール(服務規律)

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私生活を含め、遵守すべき義務や日常的に守ってもらいたい事項をわかりやすく規定化したのが「服務規律」である。

労働契約に付随する義務を実質的に明確化し、勤務時間中および事業場内外の従業員の行動基準である。

法令違反でなければ内容に制約がなく、一般に職務の専念、施設や物品等の管理、秩序や風紀の保持の事項を定める。

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従業員は、服務規律を定めることで、制度的に業務上の指示や命令に服することとなる。

服務規律に違反した場合の懲戒処分は、あらかじめ懲戒の種別及び事由を定める。

服務規律には、調査協力、秘密保持、競業避止、所持品検査等も含む。

就業規則が事業場で周知されたとき、社員の行為がそれに該当しているときに懲戒処分が可能である。

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就業規則案

(所持品の検査)

第○条 社員は、会社に日常の携帯品以外の私品を事業場内に持ち込んではならない。所定の手続きで事前に会社の許可を受けたときはこの限りではない。

2 会社は業務上または秩序保持上の必要から、社員の所持品を検査することがある。この場合、社員は正当な理由がなければ、所持品の検査を拒むことはできない。

3 検査の結果、不正な所持が認められたとき、会社は所持品を保管または没収することができる。

この所持品の検査は、検査の実施について合理的な理由がない場合や、検査が一般的に妥当な方法で行われない場合等は違法となることもありますので、個別の運用ではご注意ください。

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就業規則案

(私的な情報発信の禁止)

第○条 社員は、業務遂行上知り得た会社の情報及び会社が不利益を被る情報を会社外に私的に発信してはならない。

2 会社は社員が前項に該当する情報を発信していることを発見した場合、その削除を求める。会社からの削除を求められた社員は直ちに当該情報の削除に必ず応じなくてはならない。この場合、社員は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

3 会社は、社員が前各項に違反したときは第○条(懲戒)に基づく処分を科し、また、当該情報発信により会社に損害を与えた場合は、第○条(損害賠償)に基づき、その損害の賠償を求めることがある。

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「服務規律」の作成のポイント

「禁止事項」よりも「奨励事項」

「常識・習慣」よりも「ルール」

を重視することが望ましい。

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第2週・第5回 会社が守るべき基本ルール

(労働時間管理)

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「所定労働時間」は、会社が就業規則に定めた契約上の労働すべき時間であり、法定労働時間の枠内で自由に規定することができる。

就業規則等で定められた始業時から終業時までの拘束時間から休憩時間を除いた時間で計算される。

「実労働時間」が労働基準法上の労働時間で、所定労働時間から欠勤等の不就労時間を除き、時間外労働時間を加えた時間である。

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労働時間とは、従業員が客観的に会社の指揮命令下に置かれている時間をいい、次は一般に労働時間とされる。

事業場内で義務付けられている準備行為・後片付け

場所的拘束を伴って作業対応する電話当番や仮眠時間

参加の自由が保障されていない業務関連の研修・朝礼

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変形労働時間制

1か月単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制

1週間単位の変形労働時間制

フレックスタイム制

裁量労働制

みなし労働時間制

時間外労働

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(龍言、越後六日町温泉) 34

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(始業及び終業時刻の記録)

第15条 労働者は、始業及び終業時にタイムカードを自ら打刻し、始業及び終業の時刻を記録しなければならない。

(厚生労働省モデル就業規則)

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国会答弁書(内閣衆質176第103号、平成22年11月9日)

「労働基準監督機関においては、御指摘のようにタイムカードの記録により算定された労働時間に基づく賃金の支払を強要しているわけではなく、タイムカードの使用を含め、個々の事業場の実情に応じた適切な方法により確認された労働時間に基づき、賃金を支払うよう行政指導を行っているものである。」

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会社は、労働時間を適正に把握する等、労働時間を適切に管理する義務を持っている。

そのために、労働時間を自ら現認することにより確認・記録すること、タイムカード等の客観的な記録で確認・記録することにより算定する。

従業員の自己申告は禁止されていないが、

① 従業員に適切に自己申告する十分な説明

② 自己申告時間と実際の労働時間を適宜調査

③ 適正申告を阻害する時間外労働の上限を設けないこと

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タイムカードは出勤と退社の記録

シフト表は始業と終業の指示・命令

残業申請で労働時間を確定

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第2週・第6回 お客様の動きに合わせた

社員の働き方の設計(シフト管理)

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人手不足 vs 手待ち時間

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人員数

注文数

注文数 人員数

(クア・アンド・ホテル、甲府市) 41

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労働時間

客数

(龍言、越後六日町温泉)

客数

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シフト管理を通じて、

固定費の削減

固定費の変動費化

することで、お客様に過不足なく人員配置する。

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シフトを日々きちんと組むには、

正確な客数変動の把握

必要な作業内容の理解

従業員一人ひとりのスキルの評価

需要変動に対応した現場の作業方法の確立

現場の実態に合った労務管理のルール化

をしなければならない。

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(龍言、越後六日町温泉) 45

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(一の湯、箱根塔ノ沢温泉)

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第2週・第7回 管理会計で現場パフォーマンスを評価

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財務データは、

客観性

比較性

正確性

一貫性

があり、現場の実態を反映した指標となる。

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貸借対照表

損益計算書

キャッシュフロー計算書

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「発生主義会計」とは、収益や費用が発生した期間に正しく割り当てることで特定の期間業績を評価することを言う。

「現金主義会計」とは、現金の受け渡しが実際に行われた日の現金収支を基準とする会計手続きを言う。

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日次決算

部門別収益管理

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第2週・第8回 社員の稼ぐ力を評価

(労働生産性・人時生産性)

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生産性=付加価値÷投入資源

労働生産性とは、投入資源が従業員数

人時生産性とは、投入資源が労働時間

で計算された金額をいう。

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Page 54: Week2 旅館経営

「付加価値」とは、

自社の人、施設・設備、資金、組織による生産活動で生み出された新たな価値で、

経常利益、人件費、貸借料、減価償却費、金融費用、租税公課等の合計で計算され、

多くのサービス産業ではこの付加価値を「売上総利益」で近似することが多い。

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現場の管理指標

売上高

仕入高

従業員数・労働時間

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2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

従業員数 労働生産性

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第2週・第9回 施設や設備の稼ぐ力を評価

(総資産回転率)

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「総資産回転率」とは、

総資産回転率

=売上高/総資産(期首・期末平均)

で計算される。

保有している総資産がどれだけ有効活用されたかという効率性を分析する指標で、総資産回転率が大きい会社は、少ない資産で多くの売上を出し、効率的に資産活用している。

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2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

総資産 総資産回転率

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総資産回転率の改善には、

負債の圧縮

不良資産の処分

売上の増加

遊休資産の活用

することで実現する。

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(時音の宿 湯主一條、鎌先温泉) 61

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(時音の宿 湯主一條、鎌先温泉) 62

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(網元の宿ろくや、岩井湯元温泉) 63

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第2週・第10回 旅館の生産性改革の現場実務

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ステップ1:実態に合った「労務管理」 (就業規則の改革によるサービスの高付加価値化)

↓ ステップ2:「管理会計」の仕組み化

(現場作業の正確な見える化と評価指標の確立) ↓

ステップ3:現場作業の「生産管理」 (ロス削減、固定費低減、需要・内容変動への対応)

↓ ステップ4:「顧客管理」による集客力強化

(時代に合った施設・サービスに基づく営業・集客)

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顧客管理 生産管理

管理会計 労務管理

サービス 生産性改革

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生産性改革とは、 より心地よい接客 より快適な空間 より清潔な施設 より美味しい料理 よりお客様の喜び より良い労働条件 より継続的な雇用 を会社と従業員が協力して実現していくことである。

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