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IPCC AR5から考える 20~40年後のエネルギー ~今後のエネルギー動向を企業はどう捉えるべきか~ EcoLead 安井 東京大学名誉教授・国連大学元副学長 (独)製品評価技術基盤機構(NITE)・理事長 http://www.yasuienv.net/ 1

【平成25年度】IPCC AR5から考える20~40年後のエネルギー ~ 今後のエネルギー動向を企業はどう捉えるべきか ~

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IPCC AR5から考える20~40年後のエネルギー

~今後のエネルギー動向を企業はどう捉えるべきか~@EcoLead

安井 至東京大学名誉教授・国連大学元副学長

(独)製品評価技術基盤機構(NITE)・理事長

http://www.yasuienv.net/

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IPCC AR5WG3情報

2朝日新聞 http://www.asahi.com/articles/photo/AS20140317003338.html

こんなことが可能だと思いますか???

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2050年までの

途上国と先進国の分担

エネルギー起源二酸化炭素のみ

予想通り

2007年作成の図By YASUI

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20~40年後(2035~2055)のエネルギー

現時点から未来の方向性を決定し、その上で解決策を求めるのは難しい

なぜならば福島第一原発事故以来、国民的合意ができていないから

どのようなシナリオを書いても、なんらかのリスクが残留してしまうので、リスクの選択と受忍が必須になる

むしろ、遠い未来である2100年のエネルギー像を描いた上で、バックキャストを行って、その中間地点である20~40年をイメージする方法が唯一可能ではないか

その上で、リスクを選択し決断する

それには認知バイアスの解消、リスクコミュニケーション、満足度という新基準、など、技術以外の変革が鍵

技術革新は不可欠だが、変革の前提条件である4

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自然と科学 確率の世界とどう向き合うか朝日新聞 東京本社科学医療部長 上田俊英ザ・コラム 2013年12月8日

前略

科学はさまざまな自然現象のなかから法則性を見いだし、自然を理解する学問である。しかし、法則は厳密でも、科学が導き出す回答は、たいていは確率的だ。

なにしろ物質の根源である素粒子の世界が「不確定性原理」にとらわれている。

ドイツの物理学者ハイゼンベルグは1927年、ミクロの世界では物の位置と運動の様子を同時に、正確に知ることはできないという「原理」を発表した。理由は、人間の知恵と技が未熟だからではない。ミクロの世界では、物はもともとぼやけて存在しているからだ。

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東大・理学部物理出身

未来を読んでリスクを選択する≒科学を信頼できるか

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中略

いくつもの自然現象が複雑にからみあった生命科学や地球科学、巨大工学のような世界では、科学が導き出す回答は、なおさら確率的になる。そして、明確な答えを求める社会との間に、しばしば溝ができる。

中略

既存の原子炉が損傷する深刻な事故の発生頻度について、国際原子力機関が掲げる目標は「原発1基あたり、1万年に1回」。

さて、この確率をどう読もう。「1万年に1回」どころか「永遠にゼロ」がいいに決まっているが、それは「絶対に有効な治療法」を求めるに等しい。「1万年に1回」ならいいのか、それでも嫌なのか。決めるのは、やはり私たち、人、である。

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注:1万年に1回は燃料棒の損傷であって、放射線放出ではない。

どうやって判断すべきか示されていない

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文系理系の論理の違い

文系の論理

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理系の論理

確定的な部分

不確実な部分

不確実な部分

ニュートン力学熱力学電磁気学エネルギー保存則質量保存則

量子力学相対性理論不確定性理論

巨大システム

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「現時点での不確実性」の理解

それは巨大なシステムに付随する

「ラプラスの悪魔」が存在した時代があった:1812年

生命体 ヒト=細胞の数60兆個

+腸内細菌100兆個

ヒトの総重量= 60kg×70億=4.2×1011kg

地球システム 重量=約5.972×1024 kg16gの酸素は、6×1023個の原子

1kgの酸素は、3.5×1025個の原子

1050個の原子からできている集合体のすごさ

太陽活動の不確実性 マクロには活動大へ8

新悪魔:「セルカウンター(細胞の数を一瞬で数える能力をもつ)が160兆個と答えた」

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2100年の状況は?

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地球の破綻の姿 2050~2100 気候変動・異常気象はかなり危機的状況

影響は、当面、淡水関係が深刻

その後、海面上昇は深刻だが、かなり先

ゼロメートル地帯の高潮対策は重要

生物多様性喪失も深刻

ただし、その被害がどのような影響をもたらすか不明 =最悪シナリオはどんなものか

気候変動も状況を悪化させるだろう

慎重に対応しておいた方が良さそう

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資源枯渇 古典的金属が危機的

金属は回収・リサイクルを自然エネで徹底的に

化石燃料は枯渇より、使いすぎ=温室効果ガスの放出が問題

人口問題は多面的 アフリカ、イスラム、etc. 食糧問題 全地球レベルなら

穀物が不足するとは思いにくい

人口問題が片付けば、食糧問題も片付く

国際紛争 地域レベルの農業の崩壊?

気候変動による居住不能地は増える

気候変動難民が発生する11

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World Population Prospects, the 2010 RevisionFigure 1: Estimated and projected world population according to

different variants, 1950-2100 (billions)国連による世界人口の推計 2100年まで

低位予測

高位予測

中位予測

=「2052」の予測

「2050年の世界」の予測

「地球の破綻」の予測は赤線

これ

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2100年頃、共通の個人感覚は?

だんだんと悪くなっているような気がする

気候変動が起きて、異常気象がますます大変に

海面上昇によって農地が消失し、環境難民が出始めている

自然破壊が起きて、食糧の供給不足が心配

渇水状態になって、日常生活が変わりつつある

豊かさが感じられない社会になりつつある

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もし、今と同じ生活でも、それが10年後、20年後にも実現できていると思えば、幸福の条件の一つを満たすのに、、、

定常状態を求めている人が増えている

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定常状態 理論的な表現 巨視的な量が変化しないこと

物質量は入力量=出力量

エネルギーは入力量=出力量

地球は物質ではほぼ閉鎖系である

物質の入力は流星の飛来

物質の出力は大気から水素とヘリウムが若干抜けている

エネルギーは温室効果によって大気圏より内側に貯まっている量が増大しつつある

=温暖化の物理的表現 定常状態を損なっている

質が変化するのは生物が存在していると当然!

生物多様性を定常状態に保つのは難しい

長期的な外界(≒太陽)からの影響は避けられない14

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Herman DalyのSteady State Economics 1971 “再生可能な資源”の持続可能な利用の速度は, その供給源の

再生速度を超えてはならない=木材・紙や薪・炭、漁獲量、水などの場合

“再生不可能な資源”の持続可能な利用の速度は, 持続可能なペースで利用する再生可能な資源へ転換する速度を越えてはならない=化石燃料・プラの場合 金属、鉱物資源などについては、適用不能だが、リユース・水平リサイク

ルが必要条件であることは明確

ただし、エネルギー源を再生不可能な資源に依存している限り、余りにも多大なエネルギーを使用することは非持続可能である

しかし、再生可能なエネルギーのみに依存すれば、リユース・水平リサイクルが条件を満足する

“汚染物質”の持続可能な排出速度は, 環境がそうした汚染物質を循環し, 吸収し, 無害化できる速度を越えてはならない=公害型汚染物質、廃棄物、温室効果ガス、オゾン層破壊物質、

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利用技術が全く駄目

2100年には、リストに使用済み核燃料が入っている

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過去のイノベーションを延長すれば第5番目は究極のイノベ-ション

人類史的な観点からのエネルギー

第1=「火を使い始めたこと」 50万年前

第2=「化石燃料を使い始めたこと」 1800年

第3=「電気を使い始めたこと」 1880年

第4=「化石燃料以外のエネルギー」=原発を使い始めたこと 1943年

=太陽電池、風力の本格実用化 未完成

第5=「定常状態を実現していること」 2100年

16過去を解析し未来を担保する

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目標の分かりやすい表現:『ほぼ自然エネルギーだけの2100年』

これだけで持続可能問題の90%以上解決する

すなわち、ほぼ定常状態が実現できる

ただし、

急ぎすぎると別の問題が起きる

なぜなら、

★技術は依然として未熟

★既存の価値観が抜けない「認知バイアス」

★巨大利権を守る防衛本能

★地球の実態を認識する自然理解力の不足

★気候シミュレーションを信じることができるか

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18革新プロジェクト報告書より

図2-18 各種RCPモデルの温度変化

RCP2.6

RCP4.5

RCP6.0

RCP8.5

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IPCC AR5 WGⅠ

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Allowance of

IPCC AR5 WGⅠ

Integrated Assessment Model

Best Available Scenario?

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Lenton and Schellnhuber (2007)

1990

年水

準か

らの

全球

気温

上昇

(℃

北極

の夏

季海

氷北

極の

夏季

海氷

グリ

ーン

ラン

ド氷

床グ

リー

ンラ

ンド

氷床

北方

林北

方林

西南

極氷

床西

南極

氷床

アマ

ゾン

熱帯

雨林

アマ

ゾン

熱帯

雨林

サハ

ラ/

サヘ

ル及

び西

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リカ

モン

スー

ンサ

ハラ

/サ

ヘル

及び

西ア

フリ

カモ

ンス

ーン

ENSO

の強

さEN

SOの

強さ

大西

洋子

午面

循環

大西

洋子

午面

循環

IPC

C-

AR

4で

の21

00年

まで

の気

温上

昇予

測幅

(℃

地球システムの大規模かつ非連続的な変化の可能性(tipping elements)

21江守正多氏提供

一旦、スイッチが入ったら、かなり温度を下げないと元に戻らない

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化石燃料起源の二酸化炭素2050~2100年

2.5℃以下の温度変化の実現によって、Tipping Elementsの遅延を目指す

それには、

2050年 10GtC/year 人口約90億人

一人当たりの排出量 1.1 tC/year/capita 2100年 4GtC/year以下 人口約90億人

一人当たりの排出量 0.25 tC/year/capita

22

cf.日本では今 2.7 tC/year/capita

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認知バイアスの重要性

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思考停止をしている日本を完全停止させたい?

エコノミスト誌が報じた温暖化の「停滞」

竹内 純子国際環境経済研究所主席研究員

http://www.gepr.org/ja/contents/20130415-02/

「東京大地震研究所が、地中に埋まっていたコンクリート構造物を地震の際にできた石と誤認していたとして、これを「活断層を確認した」としていた見解を撤回するという出来事があったが、事程左様に科学とは万能ではないのである」。

単なる思い込みによるミスと気候変動予測の不確実性を同じレベルで議論して良いのだろうか。

典型的「環境経済背反型認知バイアス」ではないか24

2000年以降、地球の平均気温が余り上昇していないのは事実

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降水量=淡水の利用可能量の変化

増加減少未来予測は正確なのか

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地球の気候は「太陽が温める赤道」が決める

太陽の熱で温められる

上昇気流

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中緯度の気候はどう決まる 「大気の循環」

気温上昇

通常位置

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中緯度の気候はどう決まる 「大気の循環」

北へ移動

偏西風が蛇行する

=これが

中緯度における

気候変動の一つ

気温上昇

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2010年の夏 モスクワの猛暑=6月26日に32.4℃2012年のNY ハリケーン・サンディ

偏西風の蛇行

ブロッキング高気圧という現象

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Hurricane Sandy 高気圧

被害総額6兆円

地下鉄1週間後にも2割不通、停電復活に1ヶ月

実は今冬の北米の厳寒もブロッキング高気圧が犯人

とうことは、気候変動がすでに現れているということか

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陸地は海よりも暑くなる。回帰線の間が暑くなる。

増加減少

コンピュータによる計算も、直感的に理解できることを定量化しているに過ぎない

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中村元隆氏 JAMSTEC主任研究員2015年から寒冷化する! グリーンランド湾のゆらぎ

31詳しい説明は、http://www.yasuienv.net/ をご参照ください

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電力の認知バイアスを解消する

電力は安定でなければならない

⇒ 電力は総量さえ足りていればよい

⇒ 不安定でも使う技術はいくらでもできる

電力価格はできるだけ不変であるべき

⇒ 自然エネルギーがときに大量に余るが、それは不安定なまま無料で供給すればよい

:不安定電力供給網を構築

電力が万一不足すれば供給者側の責任

⇒ 不足した場合には需要側が別途対応する

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これらは、比較的簡単に実現可能。しかし、社会制度の変更が必須

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リスクを正しく理解する

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まずは、既存エネルギーのリスクを解析

原子力発電 安全性、最終処分、ウラン資源

火力発電 温室効果ガス、貿易赤字

石炭 大気汚染 CCSの強制

天然ガス CCSがやはり強制

水力発電 開発の可能性なし

通常水力発電 現状維持が精々だができるか

揚水発電 何がベースロード?

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Carbon Capture and Storage

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原子力発電のリスク

1.福島第一の事故のように、放射性物質をまき散らす可能性 原因は様々

1’.隣国からの放射性物質の侵入

2.使用済み核燃料の処理・最終処分

もしも再処理をしなければ10万年

Cf.現人類の歴史は20万年

3.増殖炉のシナリオがなければ、ウランは資源的に不十分 ⇒ 燃料の枯渇による高騰がありそう

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原発の事故リスクを下げる

福島第一原発の事故前の状況を比較対象とすれば、今後、事故の発生リスクは、最低でも1/1000にする → 「100万年に1回の放射線大量放出」

その主たる手法は、確率的リスク評価

Probabilistic Risk Assessment=PRA 事故発生の確率を過去の事故事例などから求め、

被害の大きさと組合せ、リスクを算出する方法

Level3 PRA:炉心溶融が起き、放射性物質の放出が起き、その影響が住民に及びことまで解析するレベル

Level3 PRAの結果をどうやって住民に伝達するコミュニケーションが大きな問題

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最終処分は最大の問題

プルトニウムなどの長寿命核種のため放射線強度が高い

消滅処理技術も無いわけではない⇒専用炉も必要かもしれない

フィンランドのオンカロ(最終処分場)があるオルキルオト島は、雇用対策?

しかし、10万年はホモ・サピエンスの歴史の半分の時間で、余りにも長い

定常状態にするには、別の処理法か

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とことんウランとプルトニウムを燃やし尽くす

方法1:処理専用の原子炉を作る。

本来は、高速増殖炉が本命だった

しかし、もんじゅの失敗で、信頼性ゼロ

増殖を狙わず処理専用=減衰炉を目指す

方法2:最初から長期間燃焼を可能にする

東芝の4S炉

ビル・ゲイツが経営するテラパワー

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東芝4S原子炉

41http://www.toshiba.co.jp/nuclearenergy/jigyounaiyou/4s.htm

●小型のナトリウム冷却高速炉●最初に装荷した燃料を交換することなく30年間運転可能●自然現象を活用した安全設計(人的操作がなくても自然に炉停止・除熱)

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地球深部掘削船 「ちきゅう」

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10万年=プレートが10km移動する時間

プレートの移動速度は、

~10cm/年(太平洋プレートの場合)

海溝から一定の距離には火山はない

プレートが100kmもぐりこむと、脱水して融点が下がり、溶融してマグマになる

そこまで行くのに100万年かかるので、放射線が外部に漏れる可能性はない

当然、現時点では海洋投棄禁止条約(ロンドン条約)に反する行為(海底に穴を掘ればどうなのか?)

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小型原発ならそのまま処理できる??

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火力発電

二酸化炭素をそのまま放出すれば、化石燃料を使う限り気候変動を引き起こす

二酸化炭素は、炭素分離貯蔵(CCS)で処理することも可能だが、問題もある=場所がない、コスト

CCS設備を付けた装置によって褐炭から水素を製造し輸入することが現実的か?

しかし、エネルギー輸入による貿易赤字の影響によって、破綻国家になるか? 2013年10兆円赤字

それなら、やはり自然エネルギーで置き換える?

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天然ガス発電なら良いのか

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エネルギー源 単位 発熱量kcal kg-CO2 g-CO2/kcal

一般炭(輸入炭) kg 6,354 2.39 0.376

液化天然ガス(LNG) kg 13,019 2.77 0.213

ガソリン L 8,266 2.38 0.288

1.77倍

1.35倍

◆石炭の変わりに天然ガスで発電しても効率が同じならば、44%削減にしかならない。◆自動車の燃料として、ガソリンの代わりに天然ガスという選択肢もなさそう。レンジエクステンダー用なら可??

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炭素分離貯留 CCSのリスク

コストの問題

20~30%の燃料代アップに相当

これを製鉄業に強いれば、途上国へ移転

これを石炭火力に強いれば、電力料金、特に、産業用電力料金の上昇によって、国内産業が打撃を受ける

処理場所の問題

日本海の海底の地下ぐらいか

日本海溝などに処分すれば、なんらかの環境破壊の原因になる可能性がある

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水力発電 大型水力は、すでに適地がなく、増設は不可能

揚水発電は、電力貯蔵用に不可欠だが、揚水に必要なエネルギーは、福島事故前には原子力であった

石炭火力による電力を揚水用に用いる以外に方法がないのが現状

将来、風力発電の揺らぐエネルギーを貯蔵するために揚水発電は使えるのか

中小水力による電力はどうしても高価

しかし、地域のエネルギー源にすれば、メンテナンスの雇用も確保可能か

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自然エネルギーのリスク

不安定な自然エネルギーの過剰導入

太陽光発電

風力発電

今後の開発の見通しが暗い

海洋エネルギー 社会制度

地熱 過剰規制?

不安定性への認識

安定な電力が必須=『認知バイアス』

適地が遠い 北海道、東北、九州

直流送電網建設のコスト48

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再生可能エネルギー

必要な対応の準備不足リスク 長距離直流送電技術

九電力体制では不必要だった

電力を不安定なまま使う技術

ダイナミックプライシング

地熱などを実用化する配慮不足

所有者不明の森林バイオマス

漁業権と海洋エネルギー開発の整合性

地中熱の自治体(下水道)の認識

天然ガスの分散型利用を無視49

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地球のエネルギーバランス

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WWFの世界100%自然エネルギーシナリオhttp://www.wwf.or.jp/activities/lib/pdf_climate/green-energy/WWF_EnergyVisionReport_sm.pdf

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設置容量 平均的電力需要量の4倍の設備容量最低供給量 しかし、最悪条件だと需要量の1/4まで

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再生可能エネルギーのリスク対応

不安定さへの対応 高価

電池の大量導入 -- 5kWhで50万?

大電力用キャパシタ(未完成)

不安定なまま使う方法の開発

ダイナミックプライシング(まだまだ限定的)

不安定電力供給網(概念も未完)

直流送電用の交直変換用ダイアモンド半導素子(未完成)

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安定型の再生可能エネルギー 地熱=本命だが、社会制度の問題が大きい

電気事業法の改正で、300kW以下の場合、専任のボイラー・タービン技術者を置かなくてもよくなった。

バイオマス

森林バイオマスがやはり本命

N2Oの発生は気候変動に影響

大気汚染対策が必須

特殊バイオマス⇒液体燃料、環境破壊?

藻類:もしニーズがあるとすればジェット燃料、すなわち、炭化水素系液体

エタノールはサトウキビ以外はCO2量多し

自動車用はもっと簡単なものでよい

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不安定な電力に対応する 価格は?

供給の平滑化

全国直流送電網の建設

直流・交流変換素子の大容量高効率化

需要の平滑化

ダイナミックプライシングが鍵

特に、『余ったら無料』が有効

家庭用蓄電池、もしくは、電気自動車が普及する

大容量キャパシタによる平滑化

不安定電力の地域供給網

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その他のエネルギー関連技術

水素エネルギー?

水素はエネルギー源ではない。単なるエネルギー運搬役=エネルギー・キャリアである。

したがって、元々のエネルギーをどこから得るか、によって話が全く違う。

『水素社会』という言葉、したがって、言い過ぎである。

商品を評価せず、「インターネットショッピング」の時代であると表現するに等しい。

エネルギー・キャリアとしての水素には、いくつもの欠陥がある。

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エネルギー・キャリアー

自然エネルギーの余剰分を電力線以外の方法で運搬する:エネルギーは電力を化学エネルギーに変換されるが、もっとも簡単なものが水素

低質の化石燃料を、現地で脱炭素しCCS処理+可燃性のガスとして運搬:この方式だとエネルギーは一旦、水素の形となる

方式は2種類

水素をそのまま運搬する

水素を液体状化合物にする

冷却で容易に液化する化合物にする

常温で液体の化合物化する

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液体水素 沸点は-252.6℃ ボイル・オフ分を常に排

出する必要がある

液体水素は非常に軽い液体で、その密度は70.8kg/立方メートル(20Kの時)と水(1000kg/立法メートル)の約14分の1

cf.ガソリンの燃焼熱

ガソリン 47 kJ/g → 35000kJ/L 水素 141 kJ/g → 11.7kJ/L

ガソリンの体積の3000倍

液体水素 141kJ/g → 9980kJ/L ガソリンの体積の3.5倍

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自動車用の燃料としての水素

体積あたりの発熱量比較

ガソリン 47 kJ/g → 35000kJ/L 水素 141 kJ/g → 11.7kJ/L

ガソリンの体積の3000倍以上

同じ体積の燃料タンクなら3000気圧

これは技術的に無理なので700気圧

金属は、水素脆性を起こすので使えない

カーボンファイバー強化のプラスチック

円筒状なのでガソリンの5倍以上のスペースが必要

cf.液体のタンクは、自由な形状になる。

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エネルギー・キャリア 水素以外

有機ハイドライド

トルエンを水素化して得られる

C6H5CH3 + 3H2 C6H11CH3

水素の体積は 1/500になるcf. 発熱量で比較:ガソリンなら1/3000

アンモニア

N2 と H2 から合成

N2 + 3H2 ⇒ 2NH3

10気圧程度で液化する

アンモニアは直接燃焼でき、CO2を出さない59

http://www.jst.go.jp/osirase/pdf/besshi.pdf

→←

まだ6倍

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省エネルギーの可能性

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CO2排出の要素分解式

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Satisfaction x x x = Satisfaction

Service

Service

E.Consump. CO2 EmissionE.Consumption

CO2

Emission

低炭素エネルギー源LowーC E. Resources

省エネEnergy Saving

満足サービスService Satisfaction

Decomposition Formula

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満足度を導入しても

2035年で 環境税が大増額でなければ

2005年の一人あたりエネルギー使用量“ーα”← 日本産業構造を維持すれば

となると人口減少が13%程度なので

エネルギー総量としても20%減少程度

CO2の削減は、再生可能エネルギー・原発次第

2050年で 環境税がやや大幅に

一人あたりのエネルギー使用量が0.8倍ぐらい

人口は30%程度減少するので、0.7倍

国全体としてのエネルギー消費量で45%削減

CO2削減は、CCS導入量次第だが、65%削減?62

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0

20

40

60

80

100

120

1980 2000 2020 2040 2060 2080 2100 2120 2140 2160 2180

自然エネルギー原子力

CO2排出量

あと10%下げることができるか?

22世紀までの

日本人一人あたりのエネルギー量・ CO2排出量2050年でCO2半減。しかし、人口が70%ぐらいなので、国としては65%程度削減されているのではないか。

これが「ほぼ自然エネルギーだけの2100年」の現実だろう。