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2016.11.25 敗血症におけるバソプレシンとノルアドレナリンの比較

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背景 Septic Shock における循環動態改善には輸液と昇圧剤が重要である ノルエピネフリンは昇圧剤の第一選択であるが Septic shock では相対的に Vasopressin の欠乏が示唆されており、 Vasopressin投与が注目されている 過去の研究 VASST   study 等を踏まえ今回の研究が計画、実施された

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日本版敗血症診療ガイドライン The Japanese Guidelines for the Management of Sepsis

敗血症初期の末梢が温暖な warmshock では,血管作動薬としてノルアドレナリン( 0.05μg/kg/ min 〜)を第 1 選択とする( 1A ) ノルアドレナリンへの反応性が低下している場合 には, ノルアドレナリン( 0.05μg/kg/min 〜)に加 えて,バソプレシン( 0.03 単位 /min )の併用を考慮 する( 2B )。

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今回の研究の元となった StudyVASST   Study   ( Vasopressin   and  Septic   Shock   Trial )

2001年から2006年に実施 この研究では Septic Shock 患者778人を対象に Vasopressin 投与と Norepinephrine 投与が比較され Primary   Outcome は 28 日間の死亡率二重盲検化試験Vasopressin 群は Norepinephrine 群と比較して全死亡に有意差は認めなかった

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VASST   Study   ( Vasopressin   and   Septic  Shock   Trial )

VASST の考察では重症度の低い Septic   Shock では Vasopressin投与群で死亡率が低くなった サブアナライシスで AKI の発症が Vasopressin 投与群で減少した Vasopressin の投与量を 0.06U/min とより高用量では効果があるのではないか   以上が今回の試験へ導入となった

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背景 ステロイド投与 VASST のサブアナライシスにてステロイド併用に関しては Vasopressin と Corticosteroids は相互作用があり、 Vasopressin と corticosteroids 併用で 生存率改善、ショックの早期離脱が期待できる可能性示された

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PICOPitient :輸液で血圧が十分上昇しない Septic Shock 患者Intervension :早期 Vasopressin 投与はComparison : Norepinephrine と比較してOutcome :急性腎障害のリスクを下げられるか

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Methods    trial design

二重盲検無作為化試験(2 × 2群に振り分け)期間は 2013 年 2 月から 2015 年 3 月施設はイギリスの 18 の ICU にて実施 割り付けはコンピュータにより無作為に行われ試験薬はラベルで覆われ判別不能な状態で投与された

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Methods    trial design 適格基準 16 歳以上の sepsis(2-4 の SIRS 基準を満たす ) 患者で 十分な輸液に反応せず昇圧剤が必要な患者が選択された

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Methods    trial design 除外基準 もともと ICU 入院中に昇圧剤の持続注射がされている患者 ステロイド治療が必要な患者(副腎不全、ステロイド療法を 3か月以内にされている患者など)、 末期腎不全患者、腸間膜虚血の患者、レイノー現象のある患者、全身性強皮症患者、血管収縮性疾患患者、 治療者が妊娠等の理由で十分に治療ができないと考えられた患者、ほかの試験に参加している患者

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Methods    trial design登録された患者は以下の4群(2 × 2)に割り付け    Drug1 Drug2〇 Vasopressin and Hydrocortisone〇 Vasopressin and Placebo〇 Norepinephrine and Hydrocortisone〇 Norepinephrine and Placebo

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Methods    trial design投与方法 投与条件昇圧剤が必要である患者は drug1 としてVasopressin (最大投与速度 0.06U/min )と Norepinephrine (最大投与速度 12μg/min )に振り分けられ中心静脈カテーテルより投与され、 MAP 目標値( 65-75mmHg )を満たすよう最大投与速度まで投与量を増加していきました※この試験開始までは臨床医の判断で昇圧剤が使用されこの試験に登録後昇圧剤は切り替えられる範囲内で切り替えられた

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Methods    trial design投与方法 投与条件Drug1最大投与速度量に至ったときに目標血圧を達成できていなかった場合drug 2として Hydrocortisone 50mg または Placebo 50mg を1回量として6時間ごとに 5 日間、 12時間ごとに 3 日間、 1 日 1 回 3 日間投与したこのときショックより早期に離脱できた場合その時点より Drug2 は漸減していった

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Methods    trial designdrug 2が投与されても血圧低値であるとき等必要に応じてレスキュー目的に他の盲検化されていない昇圧剤投与としたその他の治療はその時の Surviving Sepsis Campaign Guidelines に基づき医師の判断に委ねられました。

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Primary outcomePrimary outcome は28 日間で急性腎不全ではなかった期間腎不全は AKIN 分類stage3 を腎不全と定義

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Secondary OutcomeSecondary Outcome は〇腎代替療法( RRT )の比率と実施期間〇死亡率〇重篤な副作用

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Statistical Analysisサンプルサイズは 400 が必要と算出された加えてイギリスでの過去の study より 3% の同意撤回があると考慮し最終的に412がサンプルサイズとして決定された主な解析  modified ITT解析で行われ腎代替療法と死亡率をロジスティック回帰モデルと Cox 回帰モデルを使用した ITT にて解析P値 0.05未満を群間の有意差ありとした

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Result登録後の患者の流れ

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Results   crossover 群プラセボ群で計 8 人の患者が必要に応じて Hydrocortisone を投与とされNorepinephrine 群にて 2 人 Vasopressin が投与された(そのうち 1人はプラセボ群で Hydrocortisone 投与された患者 )これらの患者は crossover 群として解析Drug2 を用いなかった患者はプラセボ群で登録された クロスオーバー群と drug2 を用いなかった患者は per-protocol解析から除外した

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患者基本情報 患者背景各治療群間に基本情報に差はない

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患者基本情報 患者背景各治療群間に基本情報に差はない

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Study   Drug1  開始7 日間の MAP ( FigureA )Norepinephrineの総投与量( FigureB )MAP は開始後 7 日間同等でVasopressin 群で血圧維持のために追加で使用されるNorepinephrine 量を減らした

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各群での急性腎不全でない期間 Vasopressin 群とNorepinephrine 群で腎不全の無い期間の分布では有意差はなった( p値0.88 )

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VasopressinとNorepinephrineKaplan-Meier生存曲線Kaplan-Meier 生存曲線上は Norepinephrine群が Vasopressin を上回っている

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試験開始後7日までの血清Cre  と尿量

Norepinephrine 群よりVasopressin 群で 7 日間の投与後、血清 Creは低く尿量はわずかに多かった

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Results生存者で急性腎不全にならなかった人数Vasopressin 群  94 人 /165 人  57.0%Norepinephrine 群  93 人 /157 人  59.2%95%信頼区間 -13% to 8.5%有意差なし

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Results亡くなった方、急性腎不全になった方での腎不全でなかった期間の平均はNorepinephrine 群  9 日間Vasopressin 群  13 日間95%信頼区間 -13% to 8.5%血清 Cre値と尿量個々で腎不全を定義した場合でも同等の結果が得られ As-treated解析  per-protocol解析でも同様の結果が出た

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Results両群間で死亡率には有意差はなかった28 日での死亡率 , 30.9%Vasopressin 群 vs 27.5%Norepinephrine 群[95%CI,−5.4% to 12.3%]),Vasopressin 群と Norepinephrine 群で新規臓器障害の出現率、臓器障害にも有意差はなかった副作用は Vasopressin 群で 22 人の患者が 29 の副作用があり       Norepinephrine 群で 17 人の患者が 19 の副作用あり

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Results輸液はすべての群で同等量なされ輸液バランス、血清乳酸値、心拍数はすべての群で同等であった

腎代替療法 RRT は Vasopressin 群で 25.4%使用され Norepinephrine群 35.3%で使用されており (odds ratio, 0.40 [95% CI, 0.20-0.73])

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Results  ステロイド併用による効果Vasopressin 群におけるDrug2 ( Hydrocortisone と Placebo )投与による Vasopressin 投与量

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Results  ステロイド併用による効果開始7日間の血清クレアチニン値 開始7日間の尿量

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Results  ステロイド併用による効果Kaplan-Meier 生存曲線

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Results  ステロイド併用による効果28 日での死亡は Hydrocortisone 群と placebo 群でも有意差なし p値 0.98Hydrocortisone 群と placebo 群では血清クレアチニン、尿量、腎不全の割合、 RRT使用、死亡、重篤な副作用において有意差なしであった

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DiscussionPrimary   Outcome であるSeptic Shock に対する早期 Vasopressin 投与は Norepinephrine と比較して急性腎不全期間に有意差はなかった

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Discussion今回の試験は過去の VASST study の結果をもとにたてられた理論を検証されているVASST study で  Vasopressin がすでに AKI になっている患者では効果がないが腎不全への進行の減らし腎保護作用を持つかもしれないとされた今回の結果としては Vasopressin 群と Norepinephrine 群で急性腎不全の発症数に有意差はなかった

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Discussion腎不全に有意差はないが Vasopressin 群にて RRT がより少なかったただ RRT の使用条件が設定されておらず臨床医の判断で使用されているそのためどのような条件下で使用されたかは判断できないが二重盲検化試験であり臨床医によるバイアスの可能性は低い

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DiscussionCorticosteroids は Vasopressin の必要量を減らしたが死亡率に差はなく、優位性も認められなかったこれに関してはステロイド使用者が少なく優位さが出ていないのではないかステロイド使用 VASST 試験より重症度( APACHE 分類で比較)で比較すると軽症が多くステロイドはより重傷の Septic shock で軽症では有意差はでなかったか

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LimitationRRT開始のタイミング、血行動態のモニタリングのタイミングが統一されていない28 日間と短い観察期間であること長期予後の評価がなされていない

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Conclusion成人の Septic Shock で早期 Vasopressin と Norepinephrine との比較で急性腎不全のに優位な改善は認めなかったこれよりは Vasopressin が Norepinephrine にかわって初期治療に使うべきとは言えない ただ RRT 等の結果よりは Vasopressin 腎機能に保護的に働くとしRTT に進行を防ぐ意味で Septic shock で Vasopressin 投与は意味があるのではないか