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時系列データを用いた広告効果測定の実際~Mind-TOPデータを用いた広告効果の解析~
2015年5月29日
JMRX勉強会[公開版]
青島弘幸(株)ビデオリサーチ マーケティング事業推進局
猪狩良介慶應義塾大学大学院経済学研究科/日本学術振興会特別研究員
• 設立‒ 1962年(昭和37年) 9月20日
• 資本金‒ 2億 2,050万円
• 社員数‒ 395名(2013年4月1日現在)
• 株主‒ 広 告 会 社:電通、博報堂、大広‒ 民間放送局:日本テレビ、TBS、フジテレビ、 テレビ朝日、テレビ東京他 (放送局計23社)
‒ 広 告 主:東芝ソリューション など 合計27社• グループ会社‒ 株式会社 ビデオリサーチコムハウス(テレビ・ラジオ広告統計など)‒ 株式会社ビデオリサーチインタラクティブ(インターネット視聴率など)‒ Video Research USA, Inc‒ Video Research International(Thailand)Ltd.
3
ビデオリサーチの概要
テレビ視聴率
ラジオ聴取率
ネット視聴率
新聞閲読率
雑誌閲読率
屋外・交通利用率
各メディアの接触状況の測定
テレビ広告統計テレビCM
評価調査
タレントイメージ
テレビ番組 評価調査 広告想起
ブランド再生
キャラクター・子供調査
生活時間・行動調査
新聞広告評価調査 雑誌広告
評価調査
メディア接触と消費行動・意識調査
商品利用や関与
趣味・嗜好・意識
各メディアの接触状況
ビデオリサーチの情報サービス
6
消費市場の変化
• 市場の細分化‒ ライフスタイルの多様化により、ニッチな市場に向けた商品の増加
• 市場の成熟化‒ 商品のコモデティ化‒ 少子高齢化‒ リサイクル市場の形成
• 不況の長期化(過去形?)‒ デフレ
商品の違いが分からない
モノを捨てずにすむようになった
新しい情報に反応しやすい若者が減少オトナが多くなった
所得が増えず、モノを買う動機が上がらず
家族でなく個に対応
6
• 消費者の情報選択手段の分散化‒ ポータルサイトの台頭‒ モバイルの普及
• 消費者が情報を検索・発信する機会の増加‒ SNSの普及‒ ブロードバンドによってコンテンツもよりリッチに
メディアへの接触時間や態度に影響
メディア環境の変化
7
広告主側の環境変化
• 広告手段の多様化/組織の複雑化‒ デジタル部門の強化
• 広告主側がデータ・リッチに‒ 自社Webサイトの行動記録‒ ツイッター・SNSでの発言録‒ 流通チェーン側のPOS開示‒ お手軽なネット・リサーチの普及
• 分析を経営戦略の武器にしたい‒ ビックデータの活用
意思の共有化が大変
人材がいない・人手が足らない
データは集めたが・・・あるいは勝手に集まるが・・・
8
• 消費市場の変化により‒ 広告支出に対する説明責任の浸透・定着
• メディア側の環境変化により‒ 消費者への情報伝達手段が複雑化
• 広告主側の環境変化により‒ オフラインとオンラインの施策を、統合的な観点から、広告効果の説明や、効率を高める提言の要求が強まる
9
変化が広告施策者側に与えた影響
10
広告効果の把握は、レスポンスデータを基準へ
・購買履歴データ‒ POSデータ‒ ID付きPOSデータ
・パネルデータ‒ マーケティングシンジケートデータ‒ スキャンパネルデータ
・Webアクセスログデータ‒ 企業サイトなどの閲覧履歴データ‒ ECサイトなどにおける購買データ
アクセス日時閲覧ページ、セッション数、閲覧時間リファラー情報、購買記録 etc…
購買ブランド、購買個数、価格日時、店舗個人の属性 etc…
デモグラフィック属性、サイコグラフィック属性メディア接触、サイト閲覧状況商品購入状況 etc…
記録されている情報
様々なデータが個人/時系列レベルで取得できる環境が整う
広告効果の把握の担い手は、データ解析スペシャリストへ
• データサイエンティストはブームかもしれないが・・・• データ解析による問題解決の場面は増えるし、• データ解析による意思決定への関与も高まっていくだろう
12
13
やがて広告の予算配分が投資ファンドのように運用成績を元に決定される時代になるかもしれない・・・
0
2,500
5,000
7,500
10,000
今回はこのタイミングでこれくらいの広告予算を
投入しよう株はいつが売り時だろう?
日々刻々と変化する時間に合わせて意思決定を行なうために必要な分析は?
17
時系列データの例② 広告出稿と広告想起
・他の変数(説明変数)を導入してプロットしてみると
⇒広告出稿量(GRP)と広告想起率の間には関係がありそうだ
GRP(Gross Rating Points):CMの視聴率を足し上げたもの
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
9000
10000
0
10
20
30
40
50世帯15秒換算GRP 計 広告想起率(%) ブランド考慮率(%)
データソース:ビデオリサーチMind-TOP
18
時系列データを用いて将来を予測する
ある企業の株価プロット
得られている時系列データをモデリングして過去のデータから未来を予測する(=時系列解析法)
時系列データを用いて広告の効果を把握する
0
2,500
5,000
7,500
10,000
?将来予測
19
時系列データにそのまま回帰分析を適用すると
・目的変数Y(i期の売上や認知率など)を説明変数X(i期の広告投入量やGRPなど)で説明する回帰分析
広告想起率=(定数項)+(CM出稿量)×係数+誤差
ttt xy
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
9000
10000
0
10
20
30
40
50世帯15秒換算GRP 計 広告想起率(%)
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時系列データにそのまま回帰分析を適用すると
テレビ出稿(X)と広告想起率(Y)の回帰モデル
推定結果の残差プロット
データソース:ビデオリサーチMind-TOP®
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
0
5
10
15
20
25
1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51
広告想起率 残差
目的変数(Y)と残差が明らかに関係してる(相関0.83)
⇒過去のスコアを利用しないと予測力は高くない
21
時系列データにそのまま回帰分析を適用すると
■時系列データの特徴・スコアの変動は時間に依存する⇒過去の自分のスコアを利用する必要がある・単純な回帰分析では、データを説明しきれない⇒過去の自分のスコアをモデルに組み込む
■時系列データ解析を行うことで・過去の自分のスコアで変動を説明できる⇒広告の長期効果や残存効果を説明できる(広告効果モデルの考え方などにもあっている)⇒出稿スケジューリングの問題に対応可能(予測に活用が可能)
⇒時系列解析法を用いて広告効果の分析を行います
22
過去のスコアが影響する:自己回帰モデル(ARモデル)
・過去のスコアで次の時期のスコアを予測するモデル
Ex)AR(1)モデルでは、
広告想起率Yt
広告想起率Yt-1
広告想起率Yt+1係数
α係数α
εt-1 εt εt+1
観測データ(売上など)
誤差項
ttt yy 1
t期の広告想起率= (t-1期の広告想起率)×係数+誤差
23
過去のスコアが影響する:自己回帰モデル(ARモデル)
・広告出稿量Xを組み込んだモデル⇒過去のスコアと説明変数で予測するモデル
Ex)ARX(1)モデルでは、
広告想起率Yt
広告想起率Yt-1
広告想起率Yt+1係数
α係数α
εt-1 εt εt+1
観測データ(売上など)
誤差項
tttt Xyy 1
t期の広告想起率=(t-1期の広告想起率)×係数+(t期の広告出稿量)×係数+誤差
広告出稿量Xt-1
広告出稿量Xt
広告出稿量Xt+1
24
過去のスコアが影響する:自己回帰モデル(ARモデル)
モデル推定による広告想起率の推定と予測
パラメータ推定 予測
0.0
1,000.0
2,000.0
3,000.0
0
10
20
9月13日
10月11日
11月8日
12月6日
1月17日
2月14日
3月14日
4月11日
5月9日
6月6日
7月4日
8月1日
8月29日
9月26日
10月24日
11月21日
12月19日
1月30日
2月27日
3月27日
4月24日
5月22日
6月19日
7月17日
8月14日
9月11日
10月9日
11月6日
12月4日
2013年 2014年
世帯GRP 広告想起率(実測値) 広告想起率(予測値)
tttt Xyy 1
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多変量時系列モデル
・モデルを多変量に拡張することで、競合他社との関係をモデルで捉えたり、構造を導入することが可能
Ex)多変量自己回帰モデル(VAR)
…競合他社の売り上げが下がると自社の売り上げは伸びる?競合他社の広告出稿量が増えると自社の売り上げはどうなる?⇒これらを把握することができるのが多変量時系列モデル
モデルに中間指標を含めてモデリングを行うこともある
競合売上Xt
競合売上Xt-1
競合売上Xt+1
自社売上Yt-1
自社売上Yt
自社売上Yt+1
自社売上データ
競合売上データ
26
状態空間モデル
・様々な現象は時間の推移とともに変動する?-回帰分析や自己回帰モデルでは係数は一定⇒広告効果はいつも一定と仮定しているのと同じ
・現実の世界では、係数は一定ではない?-競合の出稿状況により広告効果が一時的に下がることも-クリエイティブの繰り返し効果により広告効果が上がることも⇒これらを表現するには、係数は時間によって変化すると考えるのが自然
・回帰モデルや通常の時系列モデルでは時間の推移によって変化するパラメータを捉えるのは難しい-データ数よりもパラメータ数の方が大きくなり、推定が難しい
⇒ここで用いるのが状態空間モデル
27
状態空間モデルの定式化
■状態空間モデルのイメージ
<観測モデル>
<システムモデル>
Yt+1YtYt-1 Yt+2Yt-2 観測データ(観測モデル)
θt-2 θt+1θtθt-1 θt+2 状態(システムモデル)
時間によって変化していく
観測されているデータの背後には何らかの状態があり、時間によって変動していると考える
),0(~, RNwwHy tttt
),0(~,1 QNvvF tttt
あらゆる時系列解析手法を統一的に表現可能
⇒近年の広告効果モデルでは状態空間モデルで表現するのが主流となりつつある
■効果係数が時間によって変化する(時変係数モデル)
28
状態空間モデル
16
20
24t1 t3 t5 t7 t9 t11t13t15t17t19t21t23t25t27t29t31t33t35t37t39t41t43t45t47t49t51
広告効果係数は時間によって変化
),0(~, 2 Nxy ttttt <観測モデル>
<システムモデル>),0(~, 2
1 Nvv tttt 効果係数は1階の自己回帰
XはテレビCM出稿量(GRP)の対数
29
時系列因子分析
・動的因子分析を状態空間モデルを用いて表現する⇒ブランドの売り上げ変動などの要因を少数の共通因子で表現する
通常は、状態空間モデルで表現する
ブランドA売上YAt
因子tブランドA売上
YBtブランドC売上
YCt
ブランドA売上YAt+1
因子t+1ブランドA売上
YBt+1ブランドC売上
YCt+1
t期
t+1期
背後にある因子は時間によって
変化
観測データ背後にある構造(共通因子)
),0(~),,0(~, tttttt NfNEEfY ),0(~,1 Nuuff tttt Λ:因子負荷量、f:因子得点
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Mind-TOP® 概要
• 調査開始: 2001年 10月~
• 調査方法: ネットリサーチ
• 対象者条件: 男女18~59歳、関東1都6県居住者
‒ パネル式調査(パネル期間は1年間、2ヶ月毎に1/6をローテーション)
• 調査間隔: カテゴリによって2週/4週間隔
• 指令標本数: 約2100s ※女性のみ対象のカテゴリは1050s
‒ 男性1系列、女性2系列
• 調査カテゴリ: 35カテゴリ (2014年12月現在)
商品カテゴリ刺激によるブランド再生、広告想起調査商品カテゴリ刺激によるブランド再生、広告想起調査
<調査設計>
状態空間モデルの導入
• 広告効果は、時間の推移と共に変動しているはず。‒ 新しく投入したクリエイティブによって広告効果は高まっているはず。‒ 逆に、競合会社の新CMによって影響を受けているはず。‒ でも、一般的な回帰分析や自己回帰モデルでは係数は一定
• キャンペーン前後に区切らず、時間の推移によって変化するパラメータを捉えるには?⇒ここで用いるのが状態空間モデル
GRPにかかる効果係数が変動する
広告想起率
GRP等 競合のGRP等
競合のGRPを加味したモデルによる広告効果係数の変化
• ソフトバンクの広告第1想起率に与える競合GRPの影響は・・・ドコモのGRPの影響は、1000GRP当たりで-1.154% auは、1000GRP当たりで-1.056%
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ホワイト家族24 制服着る家族 お父さん自転車
LTE12年10-13年1月
ホワイト学割13年2-3月
プラチナバンド時代12年9-10月
ドコモ田家の影響
震災の影響 14年1月- 吉永小百合
14年6月 pepper
GRP係数(1000GRP当たりの広告想起増加量)
広告想起率の変動の共通因子を抽出
36
時系列因子分析の事例
0
5
10
15
20
25
2010年1月28日 2011年1月28日 2012年1月28日 2013年1月28日 2014年1月28日 2015年1月28日
ブランドA
ブランドB
ブランドC
ブランドD
ブランドE
ブランドF
ブランドG
ブランドH
ブランドI
2010年1月28日 2011年1月28日 2012年1月28日 2013年1月28日 2014年1月28日 2015年1月28日
因子1 因子2 因子3 因子4
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本日のまとめ
・メディア・広告環境は変化してきており時系列的に見た広告効果の把握が必要
・時系列で得られているデータには時系列解析法を用いる⇒特に近年では状態空間モデルを用いるのが主流
・実際のデータを用いて時系列データを用いた広告効果測定の事例を紹介
⇒時系列データを用いた広告効果測定は今後も重要なテーマであり、ビデオリサーチも全力で取り組んでいきます