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2015. 3. 19
萩 原 雅 之
masashi.hagihara@gmail.com
トランスコスモス・アナリティクス 取締役副社長 マクロミル総合研究所 所長
行動経済学とマーケティングリサーチの革新
JMRX 第50回勉強会 <公開用資料>
BEHABIOURL ECONOMICS
2 Copyright 2014. Masashi Hagihara
行動経済学がマーケティングリサーチに必要な理由
“Consumers don't think what they feel, don't say what they think
and don't do what they say – behavioural economics can prove it.”
Source : “Fast and slow lessons for marketers”, The Guardian, 7 April 2014
3 Copyright 2014. Masashi Hagihara
行動経済学が示唆する伝統的MR手法のリスク
1.消費者は自分の買物行動を説明できない。
2.意思決定には感情が大きな要素を占めている。
3.消費者は自分の感情を必ずしも「言葉」で表現できない。
4.無意識や直観が存在する以上、本当の理由を明らかにするのは難しい。
5.消費行動はコンテクスト(生活場面)に依存する。 (アンケートやグループインタビューにはコンテクストがない) 6.記憶は思い出す状況やタイミングで変化する。 (アンケートやインタビューへの回答は作られた物語かもしれない)
Source : Wendy Gordon “Behavioural economics and qualitative research” International Journal of Market Research Vol. 53 Issue 2 (2010)
4 Copyright 2014. Masashi Hagihara
行動経済学はハイプ(過大評価)ではなくゲームチェンジャー
■ ESOMAR でもセミナーを開催
BEHABIOURL ECONOMICS AND RESEARCH SEMINAR NOT JUST HYPE – BUT A GAME CHANGER Amsterdam 10-14 June 2013 In this seminar we will explore: How BE get to the truth of consumer behaviour and emotions
If there is a systematic approach to applying BE to unlock value for
marketers (ie. brand preference translates into purchase behaviour) Where classical tools fail to capture those effects
5 Copyright 2014. Masashi Hagihara
25%のリサーチャーが行動経済学モデルを利用している
Source : GreenBook Research Industry Report, 2014
現在利用中/利用検討している新しいリサーチ手法(Global)
6 Copyright 2014. Masashi Hagihara
行動経済学がもたらすマーケティングリサーチへのインパクト
無意識レベルを把握するための手法開発
アンケート調査が内包するバイアス理解
間違った解釈をしてしまうリスクの軽減
認知的錯覚の理解に基づく調査の設計
自然な行動や反応からインサイトを得る手法
無意識や感情の定量的測定(メジャメント)
7 Copyright 2014. Masashi Hagihara
そもそも質問票におけるバイアスとは何だろうか
• ダブル・バーレル – 消費税増税は財政赤字解消に最も有効なので、積極的に推進すべきだ
• 誘導効果(暗示効果) – 日本の財政赤字は毎年拡大してこのままでは破綻の懸念がありますが、あなたはそれを解決するための消費税増税に賛成ですか。
• キャリーオーバー効果 – Q1 あなたは日本の財政赤字解消は必要だと思いますか。
– Q2 では、財政赤字解消を目的とした消費税増税に賛成ですか。
• アンバランス尺度 – 積極的に賛成、どちらかといえば賛成、やむをえない、反対だ
8 Copyright 2014. Masashi Hagihara
• どのような女性を連想しますか?
A.女子大生が夜キャバクラでバイトしている
B.キャバクラ嬢が昼は大学で学んでいる
Q
同じことを言ってるが、印象は異なる A
CASE
Source : Twitter
9 Copyright 2014. Masashi Hagihara
CASE
伝染病による死者は600人と予測され、ふたつの対策がある。 Q
A 上段では A:72%, B:28%、下段では A:22%, B:78%
Source : ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』下巻, P318
・プログラムAを採用した場合、400人が死亡する
・プログラムBを採用した場合、1/3 の確率でひとりも死なないが、
2/3の確率で600人が死亡する
・プログラムAを採用した場合、200人が救われる
・プログラムBを採用した場合、1/3 の確率で600人が救われるが、
2/3の確率でひとりも助からない
10 Copyright 2014. Masashi Hagihara
CASE
デートの回数と幸福感との関係を調べたい。
【A】 Q1 あなたは最近どのくらい幸せですか
Q2 あなたはこの1か月、何回デートしましたか。
【B】 Q1 あなたはこの1か月、何回デートしましたか。
Q2 あなたは最近どのくらい幸せですか。
Q
A 【A】では相関なし、【B】では強い相関(R=0.64)
Source : ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』上巻, P151
11 Copyright 2014. Masashi Hagihara
• Q1 このワインは 1,000円よりも高いと思いますか?
Q2 では、どのくらいの値段なら買いたいですか?
Q1 このワインは 10,000円よりも高いと思いますか?
Q2 では、どのくらいの値段なら買いたいですか?
Q
CASE
A 先行刺激によって評価が変わる。
Source : 萩原作成
12 Copyright 2014. Masashi Hagihara
行動経済学が明らかにした人間の「認知的錯覚」の法則
• フレーミング
– ものの言い方次第で異なる判断になる
• ヒューリスティック(利用可能性、代表性、確証、感情)
– 手っ取り早い情報から深く考えず直感的に判断する
• プライミング
– 事前に与えられた情報や感情に影響されて判断する
• アンカリング
– 基準になる数字が無意識に判断に影響する
13 Copyright 2014. Masashi Hagihara
行動経済学が明らかにした人間の「認知的錯覚」の法則
• フレーミング
– ものの言い方次第で異なる回答になる
• ヒューリスティック(利用可能性、代表性、確証、感情)
– 手っ取り早い情報から深く考えず直感的に回答する
• プライミング
– 事前に与えられた情報や感情に影響されて回答する
• アンカリング
– 基準になる数字が無意識に回答に影響する
14 Copyright 2014. Masashi Hagihara
Source : マクロミル定点観測調査「Macromill Weekly Index」
内閣支持率も感情で動く?
安倍内閣支持DI/評価DI
(2013.4~2015.3)
15 Copyright 2014. Masashi Hagihara
「経験する自己」と「記憶する自己」
・1年以内にクルマを購入したYahoo!会員対象、購入検討開始時期をアンケートで回答 ・アンケート回答者ごとに検索ログデータから検索開始時期を算出
■ 実際の行動とアンケート回答との差異 (Yahoo! JAPAN)
Source : Yahoo! JAPAN マーケティングソリューション(2015.2.20)
アンケートの回答 (記憶する自己)
実際の検索行動 (経験する自己)
16 Copyright 2014. Masashi Hagihara
「経験する自己」と「記憶する自己」
・記憶に基づく評価は、ピークと終了時の苦痛の平均でほとんど決まる。 ・検査の持続時間は、苦痛の総量の評価にはほとんど影響を与えない。
■ 苦痛を伴う大腸内視鏡検査における「ピークエンドの法則」
Source : ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』下巻, P217
・60秒ごとに感じている苦痛を10段階評価(0:痛くない、10:我慢できないほど痛い) ・検査後に「検査で感じた苦痛の総量」を評価、リアルタイム計測と比較
17 Copyright 2014. Masashi Hagihara
「経験する自己」と「記憶する自己」
■ 満足度、幸福度をより正確に測定するための手法
Source : ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』下巻, P233
• 私たちは自分自身の過去の経験を、そのピーク時にどうだったか(嬉しか ったか悲しかったか)ならびにそれがどう終わったかだけで判定する
• 【A】あなたは、自分の車にどのくらい満足してますか 【B】あなたは、どんな時に自分の車に満足してますか
→ 【A】では長期的に関心を持ち続けた経験が低く評価される(焦点錯覚)
経験サンプリング法(ESM : Experience Sampling Method)
→ ランダムなタイミングで感情と状況を記録、モバイルサーベイで実用化
一日再構築法(DRM : Day Reconstruction Method)
→ 昨日の出来ごとをチャプター化、それぞれの感情を記録
18 Copyright 2014. Masashi Hagihara
ファスト思考とスロー思考
• 二重プロセスモデル Dual-process model
私たちの大脳が用いる二つの情報処理システム (Stanovich, 2011)
Source : ダニエル・カーネマン 『ファスト&スロー』を元に作成
System 1 System 2
Fast (速い) Slow (遅い)
Automatic (自動的) Conscious (意識的)
Intuitive (直感的) Effortful (努力を要する)
Associative (連想的) Rule-governed (規則に支配)
Emotional (感情的) Neutral (客観的)
19 Copyright 2014. Masashi Hagihara
Source : 萩原雅之・上田雅夫、ブランドパワーをいかに測定するか、『ブランド戦略全書』 (2014)
ファスト思考の測定:Response Latency
・「ビールといえば __ 」に対する回答の反応時間を測定する(時間は個人差の影響を取り除くため標準化する)
方法
■ ブランド想起率と反応時間の関係
一般的に想起率の高いブランドは反応時間も早い
反応時間はブランドエンゲージ
メントの指標となりうる
仮説
20 Copyright 2014. Masashi Hagihara
Source : 萩原雅之・上田雅夫、ブランドパワーをいかに測定するか、『ブランド戦略全書』 (2014)
ファスト思考の測定:Response Latency
■ ブランド想起率と反応時間の関係
21 Copyright 2014. Masashi Hagihara
ファスト思考の測定:Response Latency
・ブランドと正解キーワードとの合致を判定するまでの時間を測定する
方法
■ キーワード正解率と反応時間の関係
Source : 萩原雅之・上田雅夫、ブランドパワーをいかに測定するか、『ブランド戦略全書』 (2014)
一般的に正解率の高いキーワードは反応時間も早い
反応時間はブランドイメージ連
想の深さの指標となりうる
仮説
22 Copyright 2014. Masashi Hagihara
ファスト思考の測定:Response Latency
■ キーワード正解率と反応時間の関係
Source : 萩原雅之・上田雅夫、ブランドパワーをいかに測定するか、『ブランド戦略全書』 (2014)
質問:「キリン」というブランドに次のキーワードは当てはまりますか (「はい」の比率=正解率)
23 Copyright 2014. Masashi Hagihara
無意識レベルを把握できる可能性を持つ技法
コンテクストもあわせてデータ収集する仕組み
(行動観察、ソーシャルリスニング)
購買や心が動くタイミングをリアルタイムで捉えるツール
(モバイルサーベイ、センサートラッキング)
言葉に頼らずに、感情や反応を測定する技術
(脳波測定、ヒートマップ、顔表情分析)
自然な行動、自然な集約が可能になるプラットフォーム
(予測市場、ゲーミフィケーション)
24 Copyright 2014. Masashi Hagihara
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facebook.com/masashi.hagihara