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人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

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人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007) http://www.bba.or.jp/AOGC2007/2006/12/miyake.html http://www.bba.or.jp/AOGC2007/2007/01/aogc2006tokyo_223.html

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人工知能が拓くオンラインゲームの可能性

   三宅 陽一郎

          

2007.2

AOGC 2007 講演

Page 2: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

人工知能が拓くオンラインゲームの可能性

   三宅 陽一郎

  

AOGC 2007 講演

(注)  PPT 配布資料と、本講演の PPT は少々違いがございます。配布資料の方が詳細な説明になっていますので御了承下さい。

Page 3: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズ 人工知能技術デモ

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m07_001_01_ComvsCom.avi

クロムハウンズ AI 技術デモ

Page 5: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

m07_001_02_ComvsCom.avi

クロムハウンズ AI 技術デモ

Page 6: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

m07_001_03_ComvsCom.avi

クロムハウンズ AI 技術デモ

Page 7: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

技術デモ

COM  12体(6 vs. 6)の対戦

エージェント

マルチエージェント リアルタイムパス検索

チーム AI ナビゲーションメッシュ

ゴール指向プランニング

自律型エージェントによって戦場を構成

Page 8: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

今日の講演のテーマ

人工知能技術はゲームコンテンツの可能性を拓き    実装したゲームの価値を高める   

この具体的な説明を本講演を通じて行います。

Page 9: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

本講演の構成 第1部    人工知能技術とは  ( 10分 )

    第2部    クロムハウンズにおける人工知能技術(25分 )

             質疑応答(5分)

第3部   人工知能技術をゲーム開発へ活かすために(15

分)       質疑応答(5分)

Page 10: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

知能とは?

                   環境内部状態(身体、精神)

知性(意識)

内部状態を持つ生命が環境の変化に適応するために持った機能

記憶 学習 思考

Page 11: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

人工知能技術とは?

            環境内部状態(身体、精神)

知性(意識)

生命が持つ知性の様々な機能を抽出し発展したもの

自然言語処理

知識表現

推論

ニューラルネットワーク

プランニング

Page 12: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

人工知能学会ホームページより   http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt038j/0405_03_feature_articles/200405_fa03/200405_fa03.html

人工知能の研究の歴史(若い!発展

中)

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この50年で発展して来た人工知能技術たち (1)エージェント

(2)ニューラルネットワーク

(3) Rule-Base   A.I.

(4)ベイジアンネットワーク

(5)自己組織化マップ(6)遺伝的アルゴリズム(7)遺伝的プログラミン

アカデミックに学問として蓄積されて来た 人工知能技術には、たくさんの技術がある。

  (8) Finite State Machine

  (9) Automaton

  (10) Subsumption Architecture

  (11) Competitive evolution

  (12) A* Path Finding

 … .

(赤色…よく応用 青色…少しだけど応用)

どれぐらいゲームに応用されているの?     一部だけ

Page 14: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

何故、今まで応用されて来なかったか?

(1) 特にグラフィック偏重でゲームが発展して来た。

(2) メモリ容量や計算時間が必要なものが多い。(3) 一般的な基礎がなく、逆に、   基礎を探求して行く学問である。        それぞれの分野で断片的である(入りやすいが奥

が深い)

(4)数学、哲学、科学の上に組み上げられている分野が多く、応用の仕方が難しく見えにくい。

      数学 … 偏微分方程式、多変数ダイナミクス         科学 … 進化論     

         哲学 … . 現象学 

CG (四次元の数学 )

Page 15: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

Hardware の発展

理論の蓄積

実用例の蓄積

学問としての AI の発展

演算能力の向上シミュレーション能力容量(メモリ)の拡大

KillzoneQuake, F.E.A.R.

ゲーム AI に関する多数の論文

AI に関する多数の成果と論文

無理なくAI のテクノロジーを実現できる環境が整備された

何故、これからは応用が可能か?

Page 16: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

次世代ゲームの第3の軸としてAI

これからのゲーム

これまでのゲーム

Hardware( 容量、演算能力 )

Network

AI

Page 17: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

FC     SFC SS, PS PS2,GC,Xbox    Xbox360, PS3, Wii

DC               (次世代)

TV game

3D

Network

AI

成長期

成熟期

インパクト

Hardware

技術の歴史的な流れから見て、人工知能技術のゲームへの応用は、次世代で成長し、次々世代で成熟するだろう。

人工知能技術の導入の適切なタイミングはいつか?

時間軸20051999

Page 18: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

 

オンライン  x  人工知能

= ? 

Page 19: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

本講演の構成 第1部    人工知能技術とは  ( 15分 )

   質疑応答(5分)

第2部    クロムハウンズにおける人工知能技術(20分 )

             質疑応答(5分)

第3部   人工知能技術をゲーム開発へ活かすために(15

分)      質疑応答(5分)

Page 20: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

第2部 クロムハウンズにおける

  人工知能技術

Page 21: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

I. クロムハウンズ紹介

Page 22: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

紹介ムービーをご覧ください

Page 23: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

Openning_Movie.avi

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クロムハウンズ          発売元       : セガ デザイン    : フロムネットワー

クス 開発元    : フロムソフトウエ

(C) SEGA Corporation / FromNetworks, Inc. / FromSoftware, Inc. , 2006

2006年6月、世界7カ国で、同時発売

Page 25: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズはどんなゲームか?

(1) オンライン(2) アクション(3) 勝利条件(4) スカッドと呼ばれるチームをベース (5) 80を超える複雑なマップ(6) コミュニケーションのシステム(7) 戦略の重要性

Multiplayer Online Battles on Xbox 360

詳細

CH-I

基本設定 :

Page 26: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

(1)  オンラインCH-I

オンラインでチーム同士で戦う

基本設定

Page 27: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

(2)  アクション

基本はメカ対メカのアクションゲーム

基本設定

Page 28: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

(3)  勝利条件

15分以内に、敵全員を殲滅するか、敵本拠地を破壊!

時間切れの場合は、コムバス占拠数がより多い側が勝者!

基本設定

Page 29: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

(4)  スカッドと呼ばれるチームをベース

最大6人のプレイヤーがスカッドとなって、一度に同じ戦場に出ることができる。

CH-I基本設定

Page 30: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

(5) 80を超える複雑なマップ

市街、山岳、さばく、河、湖、海など、 多岐に渡る80以上 のマップ ハウンズは20mのスケール、マップは4km四方

CH-I基本設定

Page 31: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

コムバス(通信塔)を占拠してネットワーク領域を作り、初めてチームメンバーと通信可能!  コンバスをどう取るか、敵、味方の情報をどう伝えるか、の情報戦だ!

(6)  コミュニケーションのシステム CH-I基本設定

Page 32: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

(7)  戦略が大切

各プレイヤーは、広大なマップを15分間、敵を予測して、戦略を立てなければならない。接近戦だけで、勝敗はつかない

CH-I基本設定

Page 33: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

COM への要求

オンライン上で対戦チームが見つからないときに、人間の代わりに、プレイヤーチームと戦う 

COM  のチームを作る

(1) ユーザーに対して常に対戦相手を提供する

(2) 途中から参戦したユーザーに対する練習相手となって、腕前の差を埋める。

Page 34: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズにおける人工知能技術

クロムハウンズ 自律型エージェント

ゲーム ゲーム AI

Page 35: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

エージェント 環境に対して情報を集める感覚(センサー)を持

ち、また、環境に対して働きかけることができる能力を

持つ。

体(オブジェクト)を持ち感覚を持ち 世界に働きかける能力を持つ

生物の知性を模した人工知能のフレーム

Page 36: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

サッカーエージェント フィールドの情報を集める能力があり、 かつ、サッカープレイヤーとして参加する。 ⇒ ロボカップ ネットワークエージェント ネットワーク上で、情報を検索し、データベースに情報を収集する。                                           ⇒ ロボット、ウイルス

お掃除エージェント … 部屋の情報を確認して、塵を集める

               ⇒ お掃除ロボット

                       

世の中にあるエージェントの具体例

Page 37: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

「エージェント」がゲームに提供する機能

(1)   COM をエージェントとすることで、ゲーム内で自律的(自分で情報を取得、判断、行動)に行動する。

(2) 本来、ユーザーのキャラクターの役割の代理をさせることができる。

      

人の知性を模した AI  =  COM と相性がよい

Page 38: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズにおけるエージェント

A A

A

PP

PP A

プレイヤーチームの人数(1~6人)に合わせてAI チームを編成して対戦を行う。

Page 39: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

II.  クロムハウンズの COMを作る

アイデアから実際の製作、デバッグまでを追体験しよう

Page 40: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

COM は15分間の間、戦略、戦術、情報戦においてプレイヤーと同等に渡り合わねばならない。

より詳細なクロムハウンズ AI への要求の考察

• プレイヤーと同じ条件(チームメンバー数、平等な情報)のもとで、同等に渡り合える能力。

自律的に思考し、自分で移動する「自律型エージェント」 (autonomous agent)

を作ろう。

CH-I

Page 41: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズで自律的エージェントを実現することを考

える

(1)考える - どんな技術が必要だろう ?

(2)  歩く -  どんな技術が必要だろう ?

自分で判断して、自分で行動して、プレイヤーと戦う

Page 42: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

COM の思考

Page 43: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

COM は、どういうふうに考えれば、うまく行動できるだ

ろうか? 

本拠地から出発

最も近くの通信塔へ行って占拠

敵本拠地へ前進する。

   敵と戦闘

人間同士の戦闘がどうなっているかパターンを集めてみよう

例 1

Page 44: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

COM は、どういうふうに考えれば、うまく行動できるだ

ろうか? 

本拠地から出発

敵の本物の本拠地がどれであるかを偵察

本拠地発見

味方本拠地へ戻る

実際の戦闘がどうなっているかパターンを集めてみよう

例 3

Page 45: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

わかったこと その(1)

ハウンズは、計画を立てて行動しなければいけない。

        ハウンズが長期的に計画を立てて      行動できるように思考を作ろう。         (プランニングの技術が必要だ)

      

Page 46: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

COM は、どういうふうに考えれば、うまく行動できるだ

ろうか? 

本拠地から出発

本拠地に近い通信塔を取る

2番目に近い通信塔を取る

敵本拠地を占拠する

目標を一つずつ達成している!

実際の戦闘がどうなっているかパターンを集めてみよう

例 

Page 47: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

わかったこと その(3)ハウンズは、一つ一つゴールを達成している。   ハウンズは、幾つかのゴールを順番に達成す

るプランを立てて行動する。             

         

      

     ゴール指向型プランニング

Page 48: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゴール指向型プランニングとは?

Page 49: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

一つのゴールはより小さなゴールから組み立てられる

Goal

Goal Goal Goal

   

Page 50: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

 ゴールはより小さなゴールから組み立てられる

Goal

Goal Goal Goal

Goal

Goal

Goal Goal Goal

Page 51: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

映画を見たい

映画館に行く

映画を見る

映画館は新宿だ

映画館まで歩く

新宿駅に行く

晴れなら 新宿駅へ歩く

雨なら 電車で新宿へ

駅まで歩く

電車に乗る

ゴール指向型プランニングの考え方

Page 52: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズにおける ゴール指向型プランニング

パスに沿って移動する

通信塔を見つける

パスを見つける通信塔へ行く

通信塔を占拠

通信塔を占領する

撃つ

歩く

止まる通信塔の周囲に

1 0秒間いる

戦術、振る舞い 操作 ハウンズ

Page 53: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

Conquer_Combas_TeamAI.avi

Page 54: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゴール指向型プランニング

ゴール

環境

本拠地を守れ

敵をたおせ

味方を援護

複数のゴール  ×  プランニング

多数の目的 目的に対する多様な行動

プランニング

プランニング

プランニング

=     ゲーム状況から、為すべきことを判断し、      最も適切な方法でそれを達成するCOM

Page 55: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

最終的なゴール総合図

歩く 撃つ 止まる

2点間を移動

歩く、一度止まる、歩く

攻撃する

パスをたどる

敵を叩く 味方を守る

操作層

振る舞い層

戦術層

戦略層

通信塔占拠

静止する

ある地点へ行く

本拠地防衛

敵本拠地破壊

味方を助ける

巡回する

敵基地偵察

近付く 合流する

巡回する 逃げる

後退する

前進する

敵側面へ移動

全て再利用可能

      ここを作り変えるだけで同じ舞台の上で全く別の AI が作成できる

MOD

Page 56: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゴール指向型プランニング製作スケジュール

全体設計 → エージェント → チーム

エージェントシステム → チームシステム

テスト ⇔ 必要なゴール抽出、実装

ひたすらチーム対戦

2005/10

2006/1

2006/1

2006/3

2006/5

基本設計

基礎システム

ゴール漸近的増産

2006/3

2006/4

2006/4

デバッグ

研究者 (1, 三宅 )

AI プログラマー (1)

企画 (1)

デバッガーさん(6)、開発者(多数)

Page 57: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゴール指向型プランニングのまとめ① 

リアルタイム ゴール指向型プランニングとは? (1) 「ゴール」と呼ばれる目標を、戦略に沿って順番に    組み上げることをプランニングという。 (2) 周囲の状況の変化に応じてプランニングをすることを    リアルタイムプランニングという。

何が可能になったか? (1) 長い時間に渡る一連の動作の制御  (2) 短い時間における状況の変化に適応

Page 58: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゴール指向型プランニングのまとめ②

単純反射型AI

ゲーム状況 行動

ゴール指向型プランニングAI

行動1 ゴール行動2 行動3 ゲーム状況

長い時間に渡って計画的に行動できる

これまでの AI との比較

Page 59: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

最近のゲーム AI におけるゴール指向型プランニング

F.E.A.R  を始めとする 欧米の FPS 、シミュレーションゲームで主流になりつつある技術

GDC2005 、 Game Programming Gems 2, Web上で多数の論文あり

ゴール指向型プランニングのまとめ

③ 

F.E.A.R 画像

Page 60: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゴール指向プランニングでいろいろなゲームを考えよう

ゴール指向型プランニングのまとめ

④ 

Page 61: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

組み合わさって初めて意味を持つ行動の例

• チーム?

歩く 撃つ 止まる

衛 戦う

本陣を防御敵基地Aを攻撃

敵を叩く味方を維持

物資を購入

補給部隊

チームAIへの応用

司令官

大隊

中隊

兵士

Entity Entity

Team

Entity

Group Group Group

① 軍隊のモデル

Page 62: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

② チーム内の連携による攻撃

リーダー(待機)

通信塔

AI AI

通信塔

通信塔を占拠 通信塔を占拠中央で待機して危険な方を援護

味方基地

L地点を制圧

Page 63: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

AI AI

通信塔 通信塔

味方基地

通信塔を占拠A地点へ向かえ

通信塔を占拠A地点へ向かえ

中央で待機して危険な方を援護A地点へ向かえ

② チーム内の連携による攻撃

L地点を制圧

Page 64: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

リーダー ( 待機 )

AI AI

リーダー ( 待機 )

AI

AI

通信塔を占拠必要があれば見方援護A地点へ向かえ

中央で待機して危険な方を援護A地点へ向かえ

通信塔を占拠A地点へ向かえ

通信塔を占拠必要があれば近くの

見方援護A地点へ向かえ

中央で待機して危険な方を援護A地点へ向かえ

通信塔を占拠必要があれば近くの

見方援護A地点へ向かえ

L地点を制圧

M地点を制圧

L地点 M地点

平原を制圧② チーム内の連携による攻撃

Page 65: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

リーダー ( 待機 )

コンバス

コンバス

AI AI

リーダー ( 待機 )

コンバス

コンバス

AI

② チーム内の連携による攻撃

Page 66: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

③  RPG における詠唱順序

火属性の魔法ダメージ

アップ

魔法反射の効果無効 ファイラ!

ダメージを与える

実は、魔法を計画して唱えることができればより面白い RPG が作れる

Image: http://www.anne-box.com

Page 67: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

④ 街を舞台にしたオンラインゲーム

設定:それぞれがこの街でミッションを持っている

街の機能を停止

ある製品を今夜中に回収人を集めて

コンサートを成功させる

ある犯罪組織を摘発COM

Page 68: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

街の機能を停止

賄賂を渡す 話す 歩く

爆弾を手に入れる 爆破する

ダムを決壊発電所を爆破

人を巻き込む

要人暗殺

移動する

待機

戦術

戦略

行動

30分の間 目的を遂行するための行動を

プランニングAIで実現

Page 69: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

⑤ 戦術シミュレーション

C DAに勝つ

①Aの戦力を自分以下にする

AとBを戦わせる

Cとの友好度を上げる

Dとの友好度

を上げる

②背後が安全である

Page 70: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズで自律的エージェントを実現することを考

える

(1) 考える - リアルタイムのゴール指向型プランニング

(2)  歩く -  どんな技術が必要だろう ?

自分で判断して、自分で行動して、プレイヤーと戦え

Page 71: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

COM を歩かす

Page 72: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

自律型エージェントに必要な移動能力

      フィールドを自由に歩き回ることが出来る

            フィールドの、どんな2点の間も、      自分でパスを見つけて移動することが

できる リアルタイムパス検索

マップをパス検索することが出来るデータの形にしておく必要がある

Page 73: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

知識表現とは?

世界

事象

AIのための知識表現

(データ)

人間が準備してあげる

Page 74: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

世界表現とは?

AIのためのデータ

AIの属する世界の大局的な情報の知識表現

ポリゴンのモデルがどうしたの?

Page 75: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

世界表現の例 パス検索データ

地形データ

ポリゴンのモデルがどうしたの?

検索すれば道がみつかる

ウエイポイントデータ

Page 76: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

世界表現の例 パス検索データ+ウエイポイントの明るさ

地形データ

ポリゴンのモデルがどうしたの?

明るい道がみつかる

ウエイポイントデータウエイポイントの明るさ

Page 77: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

世界表現の例 パス検索データ+ウエイポイントの明るさ

     + 東側に対して視線が通らない(見通しが悪い)

地形データ

ポリゴンのモデルがどうしたの?

敵が東側から来るので、東側から見えにくくて暗い道を

通ろう

ウエイポイントデータウエイポイントの明るさ東側から見えやすいかどうか(+、ー)

-

+ -

-

世界表現を精緻にすればするほど、AIができることは増え、また高度になる

Page 78: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

さまざまな世界表現ゲーム世界をAIの目的に応じて適切に表現してあげる必要が

ある。

 (知識表現 (knowledge representation) 、世界表現 (World

representation) ) 

Killzone Chrome Hounds

地表状態トポロジー情報

Halo2

戦術的位置8方向に対する可視距離

Page 79: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

Navigation Mesh 法とは?  マップを凸多角形で埋めてキャラクターを移動させる方法

B

手順(1) マップを障害物を含まない三角形に分割する(データを用意する)(2) その三角形の情報から、パスを検索する(ゲーム内リアルタイム)。(3) 検索したパスに従って移動する(ゲーム内リアルタイム) 。    

Page 80: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

情報が埋め込まれたナビゲーションメッシュ

(1) 水や砂地は、ハウンズのスピードを減速させるので、    メッシュに表面の性質を埋め込んでおく 

             最短時間の経路を導く                ハウンズが地表効果を考慮して移動する

(2) 障害物が破壊されたら、メッシュのデータを更新する                 ハウンズが状況の変化に対応して移動する      

Page 81: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

Debug_Path02.avi

Page 82: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

NavMesh.avi

Page 83: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ナビゲーションメッシュ製作スケジュール

基本データ構造 -> 必要な情報の埋め込み設計

基本システム

パスチェック数千回

2005/10

2006/1

2006/3

2007/5

基本設計

基礎システム

2007/3

2007/3

デバッグ

研究者 (1, 三宅 ) 、メインプログラマー

AI プログラマー (1)

デバッガーさん(6)、開発者(多数)

Page 84: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズにおけるリアルタイムパス検索 のまとめ① 

ナビゲーションメッシュ法とは? (1) 地形を三角形に分けてパスを検索して移動する方法 (2) ハウンズが床から離れない場合に有効

何が可能になったか? (1) フィールド内の完全に自由な移動

 (2) 地表の効果や、オブジェクトの破壊など、     環境の変化を考慮に入れて賢く行動する。

 (3) (1)(2)を全てのマップの形状に対応。

Page 85: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

リアルタイムパス検索のまとめ②

固定パス(エリア)のAI リアルタイムパス検索のAI

いつでも自由に好きな場所へ移動できる

これまでの AI との比較

デバッグ可能

デバッグは工夫する必要あり

Page 86: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

最近のゲーム AI におけるナビゲーションメッシュ

ウエイポイントと並んで、世界表現における主要技術の一つ

リアルタイムパス検索のまとめ③

リアルタイムパス検索自体は既に基本となりつつある

カウンターストライクではユーザーが作成可能なツールがある

ウエイポイント ナビゲーションメッシュ

カウンターストライクパス検索

デモムービー

Page 87: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゴール指向プランニング×

リアルタイムパス検索

でどんなゲームが作れるようになるだろうか?

Page 88: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

① プレイヤーが妨害してルートが一つでも

存在する限り目的地にたどりつける

P

Page 89: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

② プレイヤーに妨害されつつ任務を遂行する

P

レーザー砲起動装置

レーザー砲

起動装置オン

レーザー砲発射

プレイヤー撃破

Page 90: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

③ プレイヤーに妨害されつつ任務を遂行する

P

レーザー砲起動装置

レーザー砲

砲台へ行く

レーザー砲発射

プレイヤー撃破

起動装置オン

Page 91: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズで自律的エージェントを実現する

    (1) 考える - リアルタイムのゴール指向型プランニング

(2)  歩く - リアルタイムのナビゲーションメッシュ上の        A* アルゴリズムによるパス検索

自分で判断して、自分で行動して、プレイヤーを倒す

Page 92: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

自律型エージェントの実現

 リアルタイム ゴール指向型プランニング              ×

      リアルタイム パス検索             ×

             

       自律型エージェント 完成 

意思決定機構

Page 93: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

COM の意志決定

Page 94: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

COM の意思決定過程

本拠地占拠 敵を叩け 通信塔

占拠本拠地防衛

味方機を助けよ

 周囲の状況を反映して意思決定する          評価関数法

意志決定機構

選択戦略

プランニング

どれぐらい状況に適しているか、点数をつけて比較する方法

Page 95: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

エージェントが意思決定をする仕組み

その戦略を達成することで得られる 見返り (S; 重要度 )  と、それを達成するための リスク (R; 危険度 ) の兼ね合い

実行評価値 (E)  =  S * ( 1 –R )

S (73)  R( 57 )

S (11)  R(8 )

S (89)  R( 64 )

S (24)  R(4 )

S (33)  R(80 )S (33)  R(43 )

S (33)  R( 2 )

本拠地破壊

通信塔占拠

1 E = 24

2 E =12

3 E =6

C E = 20

D E = 32

F E = 3

J E = 21

Page 96: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

通信塔の「重要度  S」3つのファクターから決まる。       (1) 味方司令部との関係  ( 通信塔 - 敵司令部

)    (2) 敵司令部との関係   ( 通信塔 - 味方司令

部 )    (3)  通信塔同士の関係  ( 通信塔 - Combus )

    S = W_1   * 味方司令部との距離による関数 + W_2 * 敵司令部との距離による関数   + W_3 * 隣の通信塔の占拠状態からなる関数

W … 重み    

                            S   =     W_EBase * ( Σ F( L_EBase, L_MapScale ) * Est_Base_NonConstFactor                + W_SBase * F( L_SBase, L_MapScale )

      + W_InComNet * Est_InComNet    

W_EBase + W_SBase + W_InComNet = 1      

Est_InComNet = W_static * Est_Static_Combus + W_dynamic * Est_Dynamic_Combus        Est_Static_Combus = (Connectable_Number - Connected_Number) /Max_Connectable_Number

Est_Dynamic_Combus = Connected_Number/Max_Connectable_Number               

    W_static + W_dynamic = 1…

Page 97: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

通信塔の「重要度  S」3つのファクターから決まる。       (1) 味方司令部との関係  ( 通信塔 - 敵司令部

)    (2) 敵司令部との関係   ( 通信塔 - 味方司令

部 )    (3)  通信塔同士の関係  ( 通信塔 - Combus )

    S = W_1   * 味方司令部との距離による関数 + W_2 * 敵司令部との距離による関数   + W_3 * 隣の通信塔の占拠状態からなる関数

W … 重み

Page 98: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

通信塔の「危険度  R」3つのファクターによる。 (1) 敵ハウンズが通信塔からどれぐらいの距離にいる

か。 (2) ザコ敵がどれぐらいの距離にいるか。 (3) 味方ハウンズが通信塔からどれぐらいの距離にい

R   = W_1   * 敵ハウンズの通信塔との距離による関数

+ W_2 * ザコ敵と通信塔の距離による関数   + W_3 * 味方ハウンズ通信塔との距離の関数

W … 重み

パラメーター と関数の形を調整する

意志決定の形やハウンズの個性が決定

テストをくり返しながら 計 100 近くのパラメーターを調整

Page 99: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

 戦略の流れ戦場の俯瞰図。緑色が COM 、赤がプレイヤー。

2 人のエージェントが、通信塔 B を取りに向かい、残りの一体は D へ向かう。

通信塔 B を占拠した後、 残りの 1 体を援護するため、 D へ向かう。

プレイヤーを攻撃して、破壊した。

通信塔占拠

味方機を助ける

Strategy of COM1 Strategy of COM1

COM1

敵を叩け

Strategy of COM1

CH-II

Page 100: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

自律型エージェントの実現

 リアルタイム ゴール指向型プランニング              ×

      リアルタイム パス検索             ×

             

       自律型エージェント 完成 

意思決定機構

Page 101: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

複数のプレイヤーに同時に対応しなければならない

           人間のチームのように、      互いの連携と取ってチームとして行動させたい

チーム AI を導入する

オンラインゲーム特有の問題

チーム全体を統制

マルチエージェント

各エージェント間の協力

常に複数の視線、複数のターゲットにさらされている

Page 102: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

マルチエージェント

各エージェント間の協力

Page 103: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

マルチエージェント技術とはエージェント同士が依存、協調し

システム全体として問題を解決する技術

エージェントを連携させて、ユーザーチームと対戦させ、エージェント全体として賢明な行動を取らせることができる

オンラインゲームにおける歯ごたえのあるチーム戦いを実現することができる。

Page 104: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズにおけるマルチエージェント技術

A

A

A

PP

PA

P

エージェント同士が協調してユーザーチームに対抗する

Page 105: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズにおけるマルチエージェント技術

① 護衛 一体のエージェントが他のエージェントと移動を共にする。

A1

A2

「護衛する」というゴールを用意する

護衛される対象は戦力が少ないか、 移動速度が遅いハウンドが選ばれやすい

Page 106: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズにおけるマルチエージェント技術

② 救援 一体のエージェントが窮地にある他のエージェントの戦場に       駆けつける。

A1

A2

「救援する」というゴールを用意する

護衛される対象は体力の残りが少ないハウンズ

囮に使われる可能性があるので、 あまりに遠かったり、あまりに 体力が少ない場合は、救援に行かない

P

P

P

P

Page 107: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

プレイヤーたちの戦力 > 1.4 x エージェントたちの戦力

AP

プレイヤーたちの戦力  <  1.4 x エージェントたちの戦力

本拠地へ退却

戦闘!

クロムハウンズにおけるマルチエージェント技術

③ 群制御 エージェントが周りの敵と味方の戦力を計算して         戦うべきか、逃げるべきかを判断する。

PP

A A

APP

PA A

AAA

PP P

A

戦力比が大きい無駄な戦闘を回避し、常に相手を上回る戦力を増築してプレイヤーに対抗する

デバッグの過程で追加

Page 108: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

クロムハウンズにおけるマルチエージェント技術

④ 集中砲火 複数のエージェントが複数の敵ターゲットに対し           ターゲットを統一する

その場で戦力が最も低い敵を集中的に攻撃しダメージの分散を防ぐ

A A

A

PP

P戦闘!

その場で戦力が最も低い敵を集中的に攻撃する

デバッグの過程で追加

Page 109: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゲームにおけるマルチエージェントの注意点

(1) プレイヤーが逆利用して、エージェントたちを誘導する可能性がある。

(2) 間違ったアルゴリズムを組むと、マップ状で団子状態になってうまく展開しない。

テストをくり返す。ノウハウの蓄積する(論文多数)

ユーザーチーム全体に対するゲーム性を提供することができる(単なるザコ敵の集合ではない)

Page 110: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

チーム AI を作る

 チーム全体を統制

Page 111: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

例えば、チームとしてこういうことをさせたい

 

 一機だけの戦闘で戦局が   変わることはない。

敵をやっつける時は、なるべく  多 vs 1 になるようにする

    

実際の戦闘がどうなっているかパターンを集めてみよう

戦力を集中させたい

Page 112: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

例えば、チームとしてこういうことをさせたい

 勝負が決まり始める後半では、 勝つための方針がばらばらに ならないようにしたい

 ゲーム後半では、チーム AI が 方針を決定する

    

実際の戦闘がどうなっているかパターンを集めてみよう

ゲーム後半では、方針を統一

Page 113: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

例えば、チームとしてこういうことをさせたい

 

 敵基地を落とすのは、   火力が必要

1体で行っても、火力が足りない上に敵が防衛している

本拠地は多数の機体で攻めたい

    

実際の戦闘がどうなっているかパターンを集めてみよう

勝負をかけるタイミングをあわせたい

Page 114: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

  チーム AI の構造

チーム AI  意志決定機構

チームとしての戦略 (=勝利条件と同じ)

   4つの戦略を持ち、ゲーム全体の状況を反映する   評価関数によって、一つの戦略を決定する。      (評価関数による意思決定 = 個体の意志決定と同じ方法 )

敵殲滅 本拠地防衛

敵本拠地破壊

通信塔占拠数で勝つ

敵本拠地破壊

Page 115: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

  チーム AI の構造

チーム AI  意志決定機構

   4つの戦略を持ち、評価関数によって、一つの戦略を決定する。    (評価関数による意思決定 = 個体の意志決定と同じ方法 )

本拠地破壊

本拠地破壊

本拠地破壊

一つのチーム戦略は、各機体への命令からなる

敵殲滅 本拠地防衛

敵本拠地破壊

通信塔占拠数で勝つ

敵本拠地破壊

Page 116: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

チーム AI の構造 = ゴール指向型の拡張

チーム AI  意志決定機構

敵殲滅 本拠地防衛

敵本拠地破壊

通信塔占拠数で勝つ

   

本拠地破壊

本拠地破壊敵本拠

地破壊

本拠地破壊

一つのチーム戦略は、各機体への命令からなるCOM 1 COM 2 COM 3

本拠地破壊

本拠地破壊

本拠地破壊

プランニング

COM のゴール指向プランニングの上に、チーム AI を積み上げる

Page 117: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

チーム AI のデモをご覧ください

Page 118: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

Protect_CB_TeamAI.avi

Page 119: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

チーム AI まとめ①この方法の利点と欠点(1) グローバルな情報を基にした行動

  プレイヤーに「 AI がチームとして行動している」ことを感じさせる

(2) 前半、中盤、後半、ゲームの流れに沿ったチームの行動を実現

  プレイヤーに AI は流れを読んでいると思わせる

 

Page 120: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

チーム AI 、マルチエージェントまとめ②

協調のないAI 協調するAI

オンラインゲームでこそ実現する価値のあるマルチエージェント、チーム AI

これまでの AI との比較

各個撃破(オフラインと同じ)

オンラインならではの体験

P

P

P

P

P

P

Page 121: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

最近のゲーム AI におけるマルチエージェント、チームAI

オンラインゲームでこそ威力を発揮する技術だが、同期の問題などがあり、オフラインゲームへの応用が多い

      これからの応用が期待される

チーム AI 、マルチエージェントまとめ③

オフラインゲームでは多いが、オンラインでは少ない

Find!

Page 122: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

マルチエージェントでゲームを

考えてみよう

Page 123: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

① エージェントたちが物を作って目的を達成する

林檎食べたい

Page 124: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

① エージェントたちが物を作って目的を達成する

山から岩を切り出す

岩を組み上げる

岩を運ぶ

林檎食べたい

Page 125: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

① エージェントたちが物を作って目的を達成する

林檎を手に入れ

た!

Page 126: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

② 連携プレー

Page 127: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

③  RPG  戦闘

Image:   http://www.anne-box.com

Page 128: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

③  RPG  戦闘

火属性の魔法ダメージ

アップ

魔法反射の効果無効 ファイラ!

ダメージを与える

氷属性の魔法ダメージ

アップアイス! ファイラ!

ダメージを与える

アイス! ファイラ! ヒール!ダメージを与える

協調しながらプランニング

プランニング

協調

Image:   http://www.anne-box.com

Page 129: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

第2部まとめ

Page 130: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

第2部まとめ

(1) ゲームには人工知能技術を応用するチャンスがあり、それがゲームのクオリティーを上げる。

(2) オンラインゲームには、さらに人工知能技術を応用する高い要求のチャンスがあり、ゲームのクオリティーを上げる。

Page 131: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

本講演の構成 第1部    人工知能技術とは  ( 15分 )

   質疑応答(5分)

第2部    クロムハウンズにおける人工知能技術(20分 )

             質疑応答(5分)

第3部   人工知能技術をゲーム開発へ導入するために(1

5分)      質疑応答(5分)

Page 132: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

第3部 

人工知能技術をゲーム開発へ導入するために

Page 133: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

人工知能技術の導入の仕方( Step 1) 人工知能技術を調査、研究する。                       ( Step 2) ゲームの要求に対して、どのような技

術が必要     であるかを見抜き、ゲーム設計の中に組み込む。

( Step 3) 製作ラインの中にワークフローを実現する。

         (新しい技術には、新しいデバッグ方法)

特にこれを企画と技術の双方がコミュニケーションを取りながら進めることが必要

Page 134: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

人工知能導入の問題点と注意点(1) 日本では開発の情報を公開することが少ない。 ゲームへの人工知能の応用の情報は、圧倒的に欧米が多い。

       文献は英語で探す。海外の方が総合的に質と量が高い。

(2) 応用の仕方は、抽象的な思考を通して行う必要がある。既存の具体例をそのままそのゲームへ応用できる例は多くない。

        基本的(簡単)な知識からクリエイティブに発想しよう。

Page 135: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

しかし今、日本のゲーム開発者にゲーム AIの情報が手に取りやすい状況にあるだろう

か?

Page 136: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

欧米と日本におけるゲーム AI の開発の比較

欧米 日本情報公開 論文、会議で発表 不明

文献 論文や書籍の膨大な蓄積 とても少ない

アカデミズムとの関係

大学でゲーム AI を研究。大学から開発の現場へ参

加。

希少

取り組む AIの分野

FPS を中心とするキャラクターメインのゲーム

さまざまなゲーム

業界としての取り組み

標準化への流れがある(IGDA AIISC( 人工知能インタフェース標準化委員会) )

(AI のミドルウエア市場の形成 )

標準化の流れに参加する形( IGDA JAPAN を通して紹介がされている。 CEDEC でも RoundTable がある)

(例 )   Quake を扱った修士論文は世界的に有名になった。

Page 137: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゲーム AI における日本のチャンス

(1) ゲーム AI は、ゲームのコンテンツに対応して形成される。

(2) FPS 、スポーツゲームだけでなく、いろいろな種類のゲームを作る日本には、いろいろな種類の AI を作れるチャンスがある。   技術的チャレンジ

(3) 日本は、ゲーム AI の発展に欧米とは違う方向からも貢献できるはずだ。

ゲーム ゲーム AI

そのための情報発信、カンファレンスの場

Page 138: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

 開発者が一同に介して、ゲームAIについて学び、討論する場

これからのゲーム開発におけるゲームAIの

可能性を知る

実際のゲーム開発へ活用する

よい循環をを形成する

日本におけるゲームAIのセミナー・カンファレンスの場

IGDA日本ゲームAI連続セミナー

Page 139: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゲームAI連続セミナー               

「ゲーム AI を読み解く」

    主催 :  国際ゲーム開発者協会日本支部 (IGDA 日本 )    後援 :  日本デジタルゲーム学会 (DiGRA JAPAN)

    協力 :  株式会社 フロム・ソフトウェア  

Page 140: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

セミナーの現在のプラン

12月 第1回

 2月 第2回

CEDEC2007まとめ

全6回(継続を目指す) 会場は大学、企業のホールなど

2ヶ月に1回実施

目標へ進みつつ、参加者の意図を汲みながら徐々に改善して行く

IGDA日本 セミナー

告知 技術紹介 ディスカッション セミナーの内容をまとめて公表

2006 年9月

対象は、主に企画と技術者。人工知能技術の情報を共有しゲーム AI について討論する。

第1回資料公開中 (IGDA日本 Site )第1、2回討論内容編集中

Page 141: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

これまでのセミナーの様子

講演 グループワーク 懇親会No 期日 内容 場所 参加

人数

第1回 2006/12/16 「 Killzone における NPC の動的な 制御方法」

東京大学工学部新 2号館

100

第2回 2007/2/10 「 F.E.A.R におけるゴール指向型 アクションプランニング」

東京大学工学部新 2号館

100

第3回 4月予定 「クロムハウンズにおけるチーム

AI」 未定 -

第4~6回 未定 未定 未定 -グループワークを行うので、毎回100名に限定しています。参加費は資料代のみ。

第 2回は「ゴール指向型アクションプランニング」 (Slash Games.)

http://www.rbbtoday.com/news/20070128/37987.htmlゲーム AI連続セミナー「ゲーム AI を読み解く」 第 2回 レポート (CodeZine)       http://codezine.jp/a/article/aid/1003.aspx

Page 142: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

ゲームAI

Halo2

HFSM

これからのセミナーの展開

Counter Stike

Navigation Mesh

Nero

Neural Networ k などアルゴリズム

Killzone

世界表現

第1回

F.E.A.R

ゴール指向型プランニング

第2回

Chrome Hounds

オンラインにおけるAI     チームAI

第3回

Page 143: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

エージェントが見せるオンラインゲームの未来

Page 144: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

エージェントが拓くプレイヤーと COM の関係性

P

プレイヤーチームとプレイヤーチーム

PP

P PP

P PP

プレイヤーチームと COM チーム

AA

A

P

P P

A

A A

プレイヤ-チームと COM チーム

A P

プレイヤーチームと COM チーム

AA

AAA

A

P

オンラインゲーム

プレイヤー同士の関係敵チームとしての AI

仲間としての AI第3者としての AI

オンラインゲーム世界での AI同士の闘争。プェイヤーは関与してもしなくてもよい。(例)種族間闘争

Page 145: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

人工知能から見るオンラインゲームの未来

オンラインゲームの中に、オブジェクト、経済、政治、生物、知性までが自律的に生成、動作、発展する世界が構築される。

オンラインゲームこそ、人工知能の最も深く豊かな応用の場である。

オンラインゲームの一つの方向自律的世界

(例)

    Gumonji環境シミュレーター (Community Engine)

Matrix(Movie)

 クロムハウンズ  AI    技術デモ

映画 ゲーム

Page 146: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

m07_001_01_ComvsCom.avi

クロムハウンズ AI 技術デモ

Page 147: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

m07_001_02_ComvsCom.avi

クロムハウンズ AI 技術デモ

Page 148: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

m07_001_03_ComvsCom.avi

クロムハウンズ AI 技術デモ

Page 149: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

本講演のまとめ

(1) ゲーム AI には、    ゲームの未来を切り拓く力がある。

(2) ゲームとゲーム AI は、お互いがお互いを進化させる。

(3) オンラインゲームには、オフラインゲーム以上に、

    人工知能を応用できる豊かな土壌がある。

(4) ゲーム業界全体で、 AI の技術の応用に取り組むことで、ゲームの新しい時代を築くことが出来る。

    

Page 150: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

オンライン  x  

人工知能技術

= ? =人間と本物の人工知能が出会う場所

Page 151: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

質疑応答

これ以外に、意見や質問があれば、メイルへ

ご清聴ありがとうございました。

Page 152: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

参考文献

Page 153: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

参考文献① ゴール指向型 AI   論文  Orkin, J. (2006),

3 States & a Plan: The AI of F.E.A.R., Game Developer's Conference Proceedings.

参考文献 (I) Mat Buckland, “Programming Game AI by Example”, Chapter 9, WORDWARE publishing      (第9章とそのサンプルコードはゴール指向型プランニングの優れた解説です。  教科書をお探しの方は、ゲームAIについて最良の書の一つです。推薦します。)

参考文献 (II) Jeff Orkin’ HP http://web.media.mit.edu/~jorkin/              

( Jeff Orkin は、米におけるゲームAIにおけるゴール指向型プランニングの推進者の一人。著者のサイトに豊富な情報があります。)

参考文献 (III) 星野 瑠美子 ,“F.E.A.R. の AI - 3 つの状態とゴール指向プランニングシステム” http://www.igda.jp/modules/xeblog/?action_xeblog_details=1&blog_id=62

     (IGDA Japan  サイト内、 GDC2006 講演の紹介)

Page 154: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

参考文献② 世界表現 

[1] William van der Sterren (2001),"Terrain Reasoning for 3D Action Games", http://www.cgf-ai.com/docs/gdc2001_paper.pdf

[2] William van der Sterren (2001) ,"Terrain Reasoning for 3D Action Games(GDC2001 PPT)", http://www.cgf-ai.com/docs/gdc2001_slides.pdf

[3] Remco Straatman, Arjen Beij, William van der Sterren (2005) ,"Killzone's AI : Dynamic Procedural Combat Tactics", http://www.cgf-ai.com/docs/straatman_remco_killzone_ai.pdf

[4] Arjen Beij, William van der Sterren (2005),"Killzone's AI : Dynamic Procedural Combat Tactics (GDC2005)", http://www.cgf-ai.com/docs/killzone_ai_gdc2005_slides.pdf

[5] Damian Isla (2005), "Dude, where’s my Warthog? From Pathfinding to General Spatial Competence", http://www.aiide.org/aiide2005/talks/isla.ppt

[6] Chris Butcher,Jaime Griesemer (2002),"The Illusion of Intelligence The Integration of AI and Level Design in Halo", http://www.gamasutra.com/features/gdcarchive/2002/jaime_griesemer.ppt

[7]  三宅 陽一郎 (2006) , “ クロムハウンズにおける人工知能開発から見るゲーム AI の展望 , CEDEC2006 PPT

Page 155: 人工知能が拓くオンラインゲームの可能性 (AOGC 2007)

参考文献③ IGDA日本 ゲームAI連続セミナー 関連ページ

(1) IGDA日本      http://www.igda.jp

(2) 第1回資料   

http://www.igda.jp/modules/news/article.php?storyid=1050