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第1回の補足の補足
● 運動方程式の解の例のところで質問がありました。– 調和振動子の解で、
から
– になったのはなぜ?Bはどこから来たの?
● 確かにちょっと雑だったので補足します。
● まず、調和振動子(と自由粒子の場合も)の場合、すべて左辺に移項して = 0の形にすると
と書けることに注意して下さい。これは、
[x(t)を含まない演算]*x(t)という形です。
– この演算の部分には、定数、任意の具体的に与えられたtの関数、微分操作、それらの加減乗除による組み合わせが有り得ます。
● 一方、重力/静電気力の場合、逆二乗の項のせいでこうは書けないことに注意して下さい。
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● 1. 単体での物理的意味を考える必要はありません。数学的には広く「微分演算子」というくくりになります。
● 2. すみません、これは上の式が下の式になるという意味ではありません。上の式が調和振動子(f = - kx) の場合、下の式が自由粒子(f = 0)の場合です。第一回の資料と見比べて下さい。自由粒子の式はここでは「必要」ではありませんが、調和振動子の場合と同じく線形であるという特徴を持つことから言及しておきました。
● 3. これはおそらく、納得するには自分で[x(t)を含まない演算]*x(t)の形に書こうとしてみることが必要です。「書けるじゃん!」と思ったらやってみて、私に見せてください。それはどこか違うはずなので、指摘します。そのとき始めて、ああ、これはやってはいけない操作なのか、それじゃ無理だな、と納得できるでしょう。
● 「x(t)を含まないなんらかの演算」の部分をDと書くと ということですが、このような方程式のことを「x(t)について線形」といいます。
● 線形方程式の一般的な性質として、x1、x2をそれぞれこのDx(t) = 0の解、α、βを定数として、以下のようなことが言えます。
● つまり、x1とx2の任意の線形結合もまたDx(t) = 0の解になります。別の言い方をすれば、Dx(t) = 0の解全体はベクトル空間をなすと言ってもいい。
● また、今の場合、k/mが実数なので、
つまり、ある解の複素共役もやはり解になります。
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● 4. 関数という認識でOKです。物理ではx(t)と書きますが、これは厳密に言うと確かに時刻tにおけるxの値のみを表しており、関数全体を表現してはいないので、数学的に正しくものを言おうとすると– 「実数体Rから実数体Rへの無限回微分可能な関数の
作る集合をSとすると、xはその要素であり、Dはxを別のSの要素Dxに移す線形演算子である。」
という抽象的な表現になります。しかし、現実的には物理的な問題ではその後実際にxに関する計算をやらなければならず、その際x(t)という具体的な書き方がどっちみち必要になるので、上記のようなことを了解した上で、時間tの関数であるxを表すのにx(t)と書きます。
● 5. ここは理解が逆です。x1、x2をそれぞれこのDx(t) = 0の解とすると、と言っているので、先にDx1(t) = 0、Dx2(t) = 0が与えられており、そこからD(αx1(t) + βx2(t)) = 0を導いています。
● 6. 「ベクトル空間」というのが、「足し算とスカラー倍について閉じている集合」のことなので、論理的にはここは単なる同値な言い換えにすぎません。
そういう意味では、ベクトル空間について知らないとこう言ったからといって直接何かが分かるわけではありませんが、後でベクトル空間について一般的に成り立つ性質(それこそが「線形代数」ということですが)を何か学んだとき、それがこの方程式にも適用できることが直ちに分かるわけです。またこの方程式の性質を考えるとき、線形代数の結果が直ちに適用できることを知っていれば役立つでしょう。そういった意味で、「線形微分方程式の解→ベクトル空間」と念仏のごとく(表現が古いな…)頭に入れておくことは無意味ではありません。
● と書いた段階ではxが実数であるという制約を考慮していなかったので、xを実数に制限します。「xの実数部」は、
と書けますが、これが前頁で調べた複素共役と、線形結合の組み合わせでできていることに注目して下さい。そうでなかったとしたら、「実数に制限する」という操作自体が、xが方程式の解であるという性質を壊してしまう可能性があったわけです。
● ところで、Aとθは任意の複素数で良かったのですが、実は なので、θはAに含めてしまう( を改めてAと考える)ことができます。つまりθは冗長であり、ここでは必要ありませんでした。
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● 7. 大丈夫です。我々がもし、実世界との対応を気にせず、「複素数で表される空間を運動する粒子」を考えているのであればもちろん虚数部も落とせなくなりますが、今は実数の座標値を取る粒子を考えています。
また、そもそもこの微分方程式の解の形として、指数関数を持ち出さずに最初から三角関数を「これが解です」として出していればそもそもこの疑問自体出なかったかもしれません。
しかし、量子論まで行けば複素数自由度の系も自然に出てきます。また、実は超弦理論のモデル化においても、似た考えは出てきます。つまり、方程式の解全体が作る空間に、何らかの物理的要請を条件として課すことにより、物理的な解を制限するという考えです。(ここでは、何らかの物理的要請というのが「座標は実数値を取る」という条件であったわけです)
● 8. という演算を
1.複素共役を取る
2.加算
3.スカラー倍
の3ステップに分解して図示してみます。
いずれのステップでも、→の出発点が解であれば、行き先も解になるというのが補足で説明した内容です(加算のところは入力2本、出力一本の三股で一つの→と考えます)。各ステップでこれが成り立つので、全体を合成したものも解を解に写す操作であるということです。
複素共役
加算
スカラー倍
● 以上を踏まえた上で、公式
を用いると、
● A = α + iβ (α、βは実数)と置くと
● α、-βをそれぞれ改めてA、Bと置き直すと
と書けます。(θは不要だったわけです)
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● 9. おっしゃる通り、間違っていました。Reは全体にかかります。TeXは括弧が入り組んでくると見づらいですな…
● 10. そうです、別物です。プログラムにおけるローカル変数の使いまわしと似たようなものとお考え下さい。
● 11. Re(x(t)) = x(t)が「x(t)が実数である」ことの式による表現であることはいいでしょうか。7、8の説明とも関係しますが、要は「運動方程式からだけでは自動的に出てこない、xは実数であるという制限を物理的要請として課す」ということです。言い回しとしては、– x(t) = Re(x(t))
– x(t) ←Re(x(t))
– 演算子Q(x(t)) := x(t) - x*(t)を定義して、解の空間をQ(x(t)) = 0を満たすものに制限する。
などがありえますが、言っていることはどれも同じです。「モデル化」の手続きの一部と考えて下さい。