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超音波による骨質評価と信号処理: 瞬時周波数の応用 亮輔 東京大学大学院 総合文化研究科 特別研究員PD 長谷 芳樹 神戸市立工業高等専門学校 電子工学科 准教授 1

超音波による⾻質評価と信号処理: 瞬時周波数の応⽤

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超音波による骨質評価と信号処理: 瞬時周波数の応用

橘 亮輔 東京大学大学院 総合文化研究科 特別研究員PD

長谷 芳樹 神戸市立工業高等専門学校 電子工学科 准教授

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瞬時周波数って矛盾してません?

でも・・・

frequencyとは頻度のこと。周期的に生じる波の数。

1サイクルもないのに周期的とはこれいかに

瞬時周波数とはその瞬間その時点での周波数のこと。

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このへん 高そう

このへん 低そう

ある瞬間t1 ある瞬間t2

定義

単一音源 x(t) を考える

AMかけられたFMな複素正弦波

θは時々刻々の位相(瞬時位相)

瞬時位相の時間微分を瞬時周波数

時々刻々の偏角の回転速度

直感的には音源(振動源)が1個だとすると瞬時周波数は解釈可能

𝑓𝑖𝑛𝑠 𝑡 =𝑑𝜃

𝑑𝑡=

𝑑 arg [𝑥 𝑡 ]

𝑑𝑡

𝑥 𝑡 = 𝐴(𝑡) × 𝑒𝑗𝜃(𝑡)

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瞬時周波数は詳細な「時間-周波数表現」

波形

スペクトロ グラム

瞬時 周波数

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骨の話

骨は皮質骨と海綿骨でできてる

骨の強度=骨密度と骨質(弾性とか異方性とか)

骨粗鬆症は海綿骨がスカスカになる

皮質骨 海綿骨 健康 アカン…

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骨粗鬆症財団ウェブサイトより from Encarta (Microsoft)

二波分離現象

骨を水の中に置いて超音波を照射して、反対側で受波

速い波と遅い波が受かる。先行する波は骨を通ってきたはず

この速い波を細かく調べればなんか分かりそう

少なくとも分離したい 瞬時周波数 つかえるかも

Hosokawa & Otani (1997) JASA

水だけ

骨あり

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FDTD a.k.a 「さわ~」 有限差分時間領域法

http://ultrasonics.jp/nagatani/fdtd/

音圧の 更新式

粒子速度の 更新式

𝜅 : 体積弾性率 𝜌 : 密度

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研究の目的と方針

骨に超音波を当てたときの「速い波」をみれば骨の状態が細かく分かるかも

瞬時周波数を利用して時間周波数表現を調べる

理想的な状況を対象としたいので模擬データ使う

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Hosokawa & Otani (1997) JASA

ウェーブレット変換した例

複素モルレー(ガボール)

ガウス近似

Hasegawa, et al (2010) JJAP

残差

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とりあえず普通の瞬時周波数

受波信号をヒルベルト変換して虚部をつくり解析信号を得る。 解析の偏角の時間微分をとる。

振幅の小さい(相対的にノイズが大きい)ところですごいバタつく。二波が重なるところで(?)ぶっ飛ぶ(矢印の箇所)

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マルチチャンネルIF法(MCIF)

短時間フーリエ変換(スペクトログラム)の偏角をとって瞬時位相とし、その時間微分を求めて各チャンネルの瞬時周波数とする

時間窓はガウス窓。

Nagatani & Tachibana (2014) J Acoust Soc Am 135: 1197

バンドパス フィルタバンク

元信号 マルチチャンネル

瞬時周波数 スペクトログラム

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安定的な稜線を抽出する

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解析ガウス窓 σ= 0.25 us CF-IF関数の制約 傾斜制約: 0.5 Hz/Hz 曲率制約: 0.003Hz/Hz2

フィ

ルタ

の中

心周

波数

(M

Hz)

時間(us)

結果1:骨の厚み変えてみた

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Nagatani & Tachibana (2014) J Acoust Soc Am 135: 1197

結果2:骨梁の太さ変えてみた

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Nagatani & Tachibana (2014) J Acoust Soc Am 135: 1197

MCIF法まとめと展望

詳細な時間-周波数表現が得られた

– 骨の状態を表現している。結構使えそう。

実は他の分野でもある方法なのだが、骨分野に応用したところがポイント

– ノイズに敏感なので現場で使うには工夫がいるかも

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「さわ~」情報

http://ultrasonics.jp/nagatani/fdtd/

「FDTD法で視る音の世界」(コロナ社,今秋発刊予定)

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