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A: 原子のエネルギー準位
A: 原子のエネルギー準位
2007年10月1日
単位名学部 :天体輻射論I
大学院:恒星物理学特論IV
教官名 中田 好一
授業の最後に出す問題に対し、レポートを提出。成績は「レポート+出欠」でつける。
授業の内容は下のHPに掲載される。
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html
A: 原子のエネルギー準位
A: 原子のエネルギー準位 2007年10月 1日
B: 熱平衡 2007年10月15日
C: 線吸収 2007年10月22日
D: 連続吸収 2007年10月29日
E: ダストの吸収 2007年11月 5日
F: 輻射強度 2007年11月12日
G: 黒体輻射 2007年11月19日
H: 等級 2007年11月26日
I: 色等級図 2007年12月 3日
J: 星間減光 2007年12月10日
K: 輻射方程式 2007年12月17日
L: エディントン近似 2008年 1月 7日
M: 吸収線の形成 2008年 1月21日
N: 星のスペクトル 2008年 1月28日
A: 原子のエネルギー準位
A.1.水素原子のエネルギー準位(I)
水素は宇宙で最も多い元素である。
水素は核反応によりじわじわと減っていくが、現在でも原子の総質量の70%、原子数では90%が水素である。
宇宙空間での水素は下の図に示すように、水素分子H2、水素原子H、水素イオン(陽子、プロトン)Pの3つの形態をとる。水素イオンはH-とも書く。
天文特有の用語として、HをHI(エイチワン)、H-をHII(エイチツー)とも呼ぶ。
H
星H P
星間雲
分子雲
molecular cloud
H2
HII領域
HII region
P
A: 原子のエネルギー準位
電子の運動エネルギーKと、ポテンシャルエネルギーUは
a
p水素原子は右の図に示すように陽子の周りを一つの電子が回っている。
電子は運動エネルギー K と、
ポテンシャルエネルギー U をもつ。
総エネルギー E=K+U を求めてみよう。
の持つエネルギーEを水素原子Hのエネルギーと呼ぶ。
陽子と電子との間には+と-の電荷の間のクーロン力Fが働いている。簡単のため電子は陽子から距離 a 離れた円軌道を速度Vで回っているとする。
力の釣り合いの式は、
a
vm
a
eF
2
2
2
04
1
a
eUmVK
2
0
2
4
1
2
1
A: 原子のエネルギー準位
総エネルギー E=K+Uは、
UUKE
Ua
emVK
2
1
2
1
4
1
2
1
2
1 2
0
2
前の式を角運動量L=mVaを使って書き直しておくと、
2
0
2
0
2
0
2
2
2
2
0
424
1
2
1
2
1
4
1
1
4
1
L
em
a
eUE
L
me
a
ma
L
am
a
eF
ここまでは古典物理学の範囲である。
A: 原子のエネルギー準位
一方、量子力学では、電子の角運動量 L が次のように量子化されている。
L=nh/(2π) n=1,2,3,... : 量子条件(h=プランク定数)
このように L が飛び飛びの値を取るために、前頁のEの式は、
(εL =13.6 eV )
22 nnL
h
em
nh
em
L
emE
1
84
2
242
222
水素原子のエネルギーは上の式のnに1,2,3、...を入れると決まる。
n=1
n=2n=3
n=∞
ーεL
ーεL/4
ーεL/9
基底状態
第1励起状態第2励起状態
A: 原子のエネルギー準位
A.2.原子のエネルギーレベル
水素原子のエネルギー準位は主量子数nで簡単に表現された。
他の原子のエネルギー準位は水素と次の点が異なる。
1).電子が一つ以上付いているので、各電子の状態を指定する必要がある。
nで指定される。
2).各電子が持つ角運動量 l 、スピン s を合成した値, L, Sがエネルギーに影響
3).LとSを合成した総角運動量Jもエネルギーに影響する。
影響の大きさは下へ行くほど小さいので、1),2),3) それぞれでグループ分けをしている。その名前と詳しい解説がここから、しばらく続く。
A: 原子のエネルギー準位
名前 電子配列 項 準位 状態
(configuration) (term) (level) (state)
指定値 (n1,l1)(n2,l2)....(nk,lk) S, L S, L, J S, L, J, M
状態数 (2S+1)(2L+1) 2J+1 1
エネルギーグループの名前
原子のエネルギー状態はまず、その原子に属する個々の電子がどんな軌道を占めているかを指定することで大きく規定される。
電子配列
項与えられた電子配列に属する電子の総軌道角運動量 L と総スピン角運動量 Sが指定された原子の状態
順位
L,Sに加えて、総角運動量Jまで指定された原子の状態状態
L,S, J に加えて、総角運動量のZ成分Mまで指定された原子の状態
A: 原子のエネルギー準位
原子内の電子を、いくつかの量子数で指定する。
n:主量子数 (principal quantum number) 1, 2, 3, 4, ...
l:方位量子数 (azymuthal quantum number) 0, 1, ..., n-1
m:磁気量子数 (magnetic quantum number) -l, -(l-1), -1, 0, 1, ...(l-1). l
主量子数nの状態は殻(シェル、shell)とも呼ばれ、名前は下からK,L,M,...。
方位量子数lにも名前が付いている。l=0はs、l=1はp、l=2はd、...
A.3.電子配列 (configuration)
主量子数n 1(K) 2(L) 3(M)
方位量子数l 0(s) 0(s) 1(p) 0(s) 1(p)
磁気量子数m 0 0 -1 0 1 0 -1 0 1
スピン ↑↓ ↑↓ ↑↓ ↑↓ ↑↓ ↑↓ ↑↓ ↑↓ ↑↓
主量子数n 3(M)(続き)
方位量子数l 2(d)
磁気量子数m -2 -1 0 1 2
スピン ↑↓ ↑↓ ↑↓ ↑↓ ↑↓
この先は、
n=4(N), 5(O),6(P)…
A: 原子のエネルギー準位
同じnでも、l小(遠心力ポテンシャル低い)では中心付近にたまるので他の電子の遮蔽効果が弱くなり、エネルギーレベルが下がる。
⇒ n+l(エル)がレベルの目安。
(nl)レベルをエネルギーの低い順にならべると、
n l 1s 2s 2p 3s 3p 4s 3d 4p 5s 4d …….
n+l 1 2 3 3 4 4 5 5 5 ………..
実際、原子の基底状態の電子配列は上の式に従って決まっている。H He
1s (1s)2
Li Be
(1s)22s (1s)2(2s)2
B C N O F Ne
(1s)2(2s)22p (1s)2(2s)2(2p) 2 (1s)2(2s)2(2p) 3 (1s)2(2s)2(2p) 4 (1s)2(2s)2(2p) 5 (1s)2(2s)2(2p) 6
A: 原子のエネルギー準位
Na Mg
..(2p) 6(3s) ..(2p) 6(3s)2
Al Si P S Cl Ar
….(3s)23p .. (3s)2(3p) 2 .. (3s)2(3p) 3 ….. (3s)2(3p) 4 ….. (3s)2(3p) 5 ….. (3s)2(3p) 6
K Ca
…(3p) 64s …(3p) 6 (4s)2
Sc Ti V Cr Mn
…(3p) 63d(4s)2 …(3p) 6 (3d)2 (4s)2 …(3p) 6 (3d)3 (4s)2 …(3p) 6 (3d)5 4s …(3p) 6 (3d)5 (4s)2
Fe Co Ni Cu Zn
…(3p) 6 (3d)6 (4s)2 …(3p) 6 (3d)7 (4s)2 …(3p) 6 (3d)8 (4s)2 …(3p) 6 (3d)10 4s …(3p) 6 (3d)10 (4s)2
(続き) (下線のあるCrとCuのところで飛びがある)
A: 原子のエネルギー準位
Kα線
主量子数n=1の一番内側の殻(シェル)をKシェルと呼ぶ。
X線を浴びてKシェル(n=1)にある電子が叩き出されると、そこに上のLシェルか
ら電子が落ちてくる。この時、LシェルとKシェルのエネルギー差に相当するX線が放射される。これをKα線と呼ぶ。MシェルからKシェルへの落下の場合はKβ
線である。
また、Lシェル電子が叩き出されてそこに上のMシェルから落下した場合は
Lα線と呼ばれる。以下同様。 Kα線
X線
A.4.殻 (shell)
A: 原子のエネルギー準位
汚染土壌の蛍光X線スペクトル E=6.4KeVの鉄、FeのKα線が強い
A: 原子のエネルギー準位
籾殻の蛍光X線分析
珪素SiのKα線が1.7KeVで強い。
A: 原子のエネルギー準位ISASホームページから引用
銀河団のX線スペクトル
珪素Siと鉄FeのKα線が地上の汚染検
査と同じ位置に出ている。Feは高温のためHe-likeなイオンで、Kα線は6.7KeVで、中性原子の6.4Kevより高い。
1KeV付近の鉄はMシェルからLシェルへのLα線
A: 原子のエネルギー準位
名前 量子数 状態数
電子配列 ( configuration) (n1l1) (n2l2)………(nklk)
項 ( term ) (n1l1) (n2l2)………(nklk) SL (2S+1)(2L+1)
準位 (level) (n1l1) (n2l2)………(nklk) SLJ 2J+1
状態 ( state) (n1l1) (n2l2)………(nklk) SLJM 1
S= s1+ s2+ ……… + sk L= l1+ l2+ …. + lk J=S+L M=MJ
A.5.項 (term), 準位 (level), 状態 (state),k個の電子を持つ原子では、まずk個の電子状態のセットを指定する。これが、電子配列(configuration)であった。
そのk個の状態から作られる合成角運動量をL、Sとした時に、共通のLとSを持つ状態の組を項(term)と呼ぶ。
総角運動量Jは、LとSのベクトル合成 J=L+S である。一般には原子のエネルギー準位はJの値により分裂する。これを、準位(level)と呼ぶ。
最後に、JのZ成分Mまで指定すると原子の量子状態は完全にきまる。これを状態(state)と呼ぶ。
A: 原子のエネルギー準位
状態(state)
L,S,J,M
1
準位(level)
L,S,J
(2J+1)
line
項(term)
L,S
(2L+1)(2S+1)
multiplet
名前
指定値
状態数
合成軌道角運動量L=∑lの名前は、 L= 0 1 2 3
名前 S P D F
項(term)は 2S+1L という形で表記する。 (L,S) (2,0) (1,1) (0,0)
2S+1L 1D 3P 1S
A: 原子のエネルギー準位
g L・S(LS相互作用 ) (2S+1) 準位 S<Lの場合
(2L+1) 準位 S>Lの場合
項 (Term)
最外殻の電子は通常共通の主量子数を持っている。殻のエネルギー準位は、 L=Σlによって分裂する。これを項 (term) と呼ぶ。
項は(n1l1) (n2l2)………(nklk) SL で指定される。
多電子系: L=Σl, S=Σs, J=L+S (LS結合)
項の決定法:
通常、内側の殻(shell)はL=0,S=0の状態で閉じている。最も外側の殻に属する電子だけでLとSを決める。その電子は同じ(n、l)を持つかどうかで扱いが尐し異なる。
(a) p電子(l=1)+d電子(l=2)
2つの軌道角運動量lが異なる(不等価電子)ので
L=1+2 L=3 (F), 2(D), 1(P)
S= 1/2+1/2 S = 1, 0
2S+1L = 1P, 1D, 1F, 3P, 3D, 3F (SとLの任意の組み合わせ)
A: 原子のエネルギー準位
(b) 2個のp電子 (l=1)の例 (1個のp電子の場合は2P項)
等価電子[ 同じ(n,l) ]にはパウリ排他率の考慮が必要。
2つのp電子(l=1)は同じ磁気量子数ml(=1,0、-1)とms(=1/2、-1/2)を持つことが出来ない。まず、可能な組み合わせを↑(ms=+1/2), ↓(ms= - 1/2) を使い表にし、各組み合わせの合成磁気量子数MLとMSを書き込む。
↑↓ 2 0 ( 1, 1/2) ( 1, -1/2)
↑ ↑ 1 1 ( 1, 1/2) ( 0, 1/2)
↑ ↓ 1 0 ( 1, 1/2) ( 0, -1/2)
↓ ↑ 1 0 ( 1, -1/2) ( 0, 1/2)
↓ ↓ 1 - 1 ( 1, -1/2) ( 0, -1/2)
↑ ↑ 0 1 ( 1, 1/2) (-1 , 1/2)
↑ ↓ 0 0 ( 1, 1/2) (-1 , -1/2)
↓ ↑ 0 0 (1, -1/2) (-1 , 1/2)
↓ ↓ 0 - 1 (1, -1/2) (-1 , -1/2)
↑↓ 0 0 (0, 1/2) ( 0, -1/2)
↑ ↑ -1 1 ( 0, 1/2) (-1, 1/2)
↑ ↓ -1 0 ( 0, 1/2) (-1, - 1/2)
↓ ↑ -1 0 ( 0, -1/2) (-1, 1/2)
↓ ↓ -1 - 1 ( 0, -1/2) (-1, -1/2)
↑↓ -2 - 0 (-1, 1/2) (-1, - 1/2)
Σ ml =ML Σms=MS ( ml ms)ml
+1 0 ‐1
A: 原子のエネルギー準位
↑↓ 2 0 ○ 1D (L=2、 S=0)
↑ ↑ 1 1 × 3P (L=1, S=1)
↑ ↓ 1 0 ○↓ ↑ 1 0 ×↓ ↓ 1 - 1 ×↑ ↑ 0 1 ×↑ ↓ 0 0 ○↓ ↑ 0 0 ×↓ ↓ 0 - 1 ×
↑↓ 0 0 △ 1S (L=0, S=0)
↑ ↑ -1 1 ×↑ ↓ -1 0 ○↓ ↑ -1 0 ×↓ ↓ -1 - 1 ×
↑↓ -2 - 0 ○
Σ ml =ML Σms=MS
ml
+1 0 ‐1
前頁の表から、p電子2個には計15個の独立な状態があることが判る。L,Sの固有関数も計15個で、前頁15個関数の一次結合で表わされる。
Σ ml =MLの列を見ると、最大が2で、そのMS=0である。これは、L=2、S=0の状態が出来ていることを意味する。(L=1,0から、 ML =2は生じないし、L=3が出来れば、ML=3があるはず。)そこで、L=2,S=0状態に寄与し得る関数に○をつける。実際にはMs=0で、ML=2,1,0、-1、-2を一つずつ選ぶ。
A: 原子のエネルギー準位
ところで、( ml ms)= ( 1, 1/2) ( 1, -1/2) は(L、S)の固有関数でもあるので、(L,S)の次の固有関数を作る際にはこれはもう使えない。残った中で(ML, MS)の最大値を探すと、 (ML, MS) =(1,1)があるので、L=1,S=1状態があることが判る。そこで (ML, MS) =(1,1) (1,0) (1,-1) (0,1) (0,0) (0,-1) (-1,1) (-1,0) (-1,-1)となる( ml ms)9組に×印をつける。
このようにして、 2個の等価p電子からは (L,S)=(2,0)、(1,1)、(0,0)の項が出来ることが分かった。(2,1)や(1,0)はできない。
最後には(ML, MS) =(0,0)が一組だけ残る。したがって、これはL=0,S=0を表わすと考える。
(c) 3個以上の等価電子の場合
(b)と全く同様にできる。例えば、p電子の場合、
3個 4S, 2P, 2D
4個 1D, 3P, 1S
5個 2P
A: 原子のエネルギー準位
準位 (level)
項(term)は異なる J毎に、準位 (level) へと分裂する。準位は、S,L,Jが指定され
2S+1LJ の形で表記される。準位への分裂を微細構造(fine structure)と呼ぶ。
例: 2個の等価p電子の系では、1D 、1S,3Pの項が存在する。
1D 項(L=2,S=0)は、J=L+S=2+0=2のみ、同様に1S項もJ=0のみ。
3P項(L=1,S=1)は、J=L+S=1+1=2,1,0が存在する。
(2p)2
電子配列
(configuration)
JM=2,1,0,-1,-2
JM=2,1,0,-1,-2
JM=1,0,-1
JM=0
JM=0
状態
(state)
3P
1S
1D
項
(term)
準位
(level)
1S0
1D2
3P2
3P1
3P0
A: 原子のエネルギー準位
電離エネルギーが低い。
存在比は小さいが、電離しやすいので、有効温度Te < 5000 K (K型より晩期 ) の星ではKとNa が電子の主な供給源である。
元素 Eion(eV)
Li(2s) 5.4
Na(3s) 5.1
K (4s) 4.3
Rb(5s) 4.2
Cs (6s) 3.9
s型原子:アルカリ金属、Li, Na, K, Sc,..、のように閉殻の外にs電子が1つ付加。
�d �£ �G�l ���M�[
0
5
10
15
20
25
30
0 5 10 15 20 25 30�́�q �Ô ��
�d�£�G�l���M�[
Li Na K
He
Ne
Ar
B
Al
H
A.6.項 (term)と準位 (level)の例
A: 原子のエネルギー準位
(1s)2(2s)2(2p) 6 (3s) 2S1/2
基底状態 3s電子 ――> L=0, S=1/2, J=1/2 2S1/2
第1励起状態 3p電子 ――> L=1, S=1/2, J=1/2, 2P1/2
――> L=1, S=1/2, J=3/2, 2P3/2
D1 line
5889 A
2P 項(term)
S=1/2, L=1
(3p) 2P3/ 2 準位 (level) S=1/2,L=1,J=3/2
(3p) 2P1/ 2 準位 (level) S=1/2,L=1,J=1/2
2S 項(term)
S=1/2, L=0(3s) 2S1/2準位 (level) S=1/2,L=0,J=1/2
D2 line
5895 A
(4s) 2S1/2
g=4
g=2
g=2
D line (multiplet)
s型の例1:Na
A: 原子のエネルギー準位
Ca II 基底状態の電子配列は (1s)2(2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (4s) 2S
その上に、 (1s)2(2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (3d) 2D と
(1s)2(2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (4s) 2P がある。
(4p) 2P3/2
(4p) 2P1/2
(4s) 2S1/2
(3d) 2D3/2
(3d) 2D5/2
85428498
8662
7291 7323
3933
K線
3968
H線
(s)型の例2: Ca II
CaII triplet
A: 原子のエネルギー準位
(p)2型の例1:NII Ground -level = (1s)2(2s)2 (2p)2 3P
(p)2 型 なので、 1D, 3P, 1S 項 (term) が出来る。
3070
3062
5754
6583
6548
22μ
76μ
1S0
1D2
3P2
3P1
3P0
NII (2p)2
(p)2型原子
A: 原子のエネルギー準位
(2p)2 1D, 3P, 1S
2331
2321
4363
5007
4959
52μ
88μ
1S0
1D2
3P2
3P1
3P0
(p)2型の例2:OIII
A: 原子のエネルギー準位
(p)3型の例1: OII (2p)3
2P1/2
2P3/2
2D3/2
2D5/2
4S3/2
37263728
73307319
7329
7318
2470 2470
(p)3型原子
A: 原子のエネルギー準位
SII (3p)3
2P3/2
2P1/2
2D5/2
2D3/2
4S3/2
6730 6716
10370
A=0.08/s
10336
A=0.16/s
10320
A=0.18/s10286
A=0.13/s
4076
A=0.09/s
4068
A=0.22/s
(p)3型の例2:SII
A: 原子のエネルギー準位
電離しやすいs型原子は、1000K以下の恒星大気に多く存在する。
そのような原子は強い吸収線を生み出すことが多い。NaのD1、D2線と
CaIIのH,K線はそのよい例である。
一方、p2、p3型のイオンは高温のネビュラに多い。OIIIの4959,5007A
禁制線はそのよい例である。
A.7.天体スペクトル中のラインの例
A: 原子のエネルギー準位
A
Hα
Mg b
Hγ
K, H
D
CaII
triplet
Hβ
B
g
G型星吸収線
A: 原子のエネルギー準位
A: 原子のエネルギー準位
A-1で、水素原子のエネルギー準位が主量子数nだけで決まることを導いた。さらに詳しい値は以下のように与えられる。
この式を見るとLもSも入っていず、nとJでEが決まっている。nは殻(シェル)を定め、Jは微細構造(ファインストラクチャー)を決める量である。L,Sは項を定める量であるがそれがEに入っていない。従って、水素原子は項による準位の分裂がないという珍しい原子である。
4nJnn2
L 3
2
1
11
2E
A.8.水素原子のエネルギー準位(II)
A: 原子のエネルギー準位
水素のエネルギー準位
殻(shell)
n=3(M殻)
(3s), (3p), (3d)
n=2(L殻)
(2s), (2p)
n=1(K殻)
(1s)
項(term)
2D 2P 2S
2P 2S
2S
2D3/2 2P3/2
2P1/2 2S1/2
2P3/2
項が分裂していないのが珍しい
準位(level)
2D5/2
2P1/2 2S1/2
2S1/2
微細構造
Lが違うから違う項に属す。普通はJが同じでも準位は違う。水素は特別。
A: 原子のエネルギー準位
Lyα LyβLyγ
hνL =13.6 eV
自由
電子
n= 2
n= 1ライマン系列(Lyman)
Lyman α: n=2 n=1
β: n=3 n=1
γ : n=4 n=1
バルマー系列(Balmer)
H α: n=3 n=2
β: n=4 n=2
γ : n=5 n=2
Hα Hβ Hγ
水素のスペクトル線
水素のエネルギー準位
n1 n2 n3 n4
Lyman Balmer Paschen Brackett
A: 原子のエネルギー準位
Lyα (ライマンアルファ線):H (水素原子)
1215.668 ATwo Photon
A(2S)=8.23/s
2 s 2S1/2
2p 2P3/2
共鳴線( resonance line)の最初の例。
共鳴線=基底状態 ――>遷移可能な第1励起状態。
通常最も強い。A(2P)=4.7 108 / sec で短時間で放出される。
吸収もされやすく,したがって、高温ガス星雲内ではLyαフォトンは1S
状態のH原子により、散乱を受けながら拡散していく。
ライマンα線
1s 2S1/2
2p 2P1/2
1215.674 A
A: 原子のエネルギー準位
水素原子の超微細構造
その大きさはF=J+Iとして、
Δ E=g(Me/Mp) (hν Lα2/ n3){[F(F+1) – I(I+1) – J(J+1)] / J(J+1)(2L+1)}
水素原子(I=1/2)の基底状態 2S1/2では、J=1/2, I=1/2なので、 F=I+J=1, 0
F=1 0 遷移は、g(Me/Mp) (hν Lα2)(1x2-0x1)/[(1/2)(3/2)(0+1)]
=g (13.6eV) (1/1840) (1/173)2(2x4/3)
=5.9×10-6eV 水素21cm電波線
I=1/2
J=S=1/2
2S1/2
F=1
F=0
水素原子核は核スピン I により磁気モーメント μ =gμ NI をもつ。
ここに、 g=5.5855 μ N=(eh/4π Mp c)=(Me/Mp)(eh/4π Me c)=(Me/Mp)μ B
その結果、水素の準位はF=J+Iによって、微細構造の約(Me/Mp)=(1/1840)倍
の大きさに分裂する。これを超微細構造(super-fine structure)と呼ぶ。
A: 原子のエネルギー準位
Electronic state E
E=Er + Ev + Ee = 回転 + 振動 + 電子
A.9.分子のエネルギー準位
vibrational level rotational level
A: 原子のエネルギー準位
I= 慣性モーメント(moment of inertia) = [mAmB/(mA+mB )]r2
J=回転量子数 (rotational quantum number)
ΔJ=±1 が許される遷移。
例 SiO maserJ=3
J=1
J=0
J=2
J=2 to J=1 86 GHz
回転エネルギー
BJJI
hJJ
I
LJER 1
81
2
12
22
JBI
hJJEJEJE RRR 2
821
2
2
J=1 to J=0 43 GHz
A: 原子のエネルギー準位
Ev=hν o (v + 1/2)
Δ v=±1 が許される遷移(調和振動ポテンシャルが良い近似の範囲で)。
Fundamental bands = 01, 12, 23, … First overtones = 02, 13,…..
例:CO 4.6μ m CO: 2.3μ m
v=3
v=2
v=1
v=0
v= 01 12 23 02 13
振動エネルギー
A: 原子のエネルギー準位
振動―回転遷移 (rotation and vibration band)
P-branch
v=1 J1=3
J0=0
v=0 J0=3
J0 (J0+1)B0
J1 (J1+1)B1
J1=0
R(0)
of the (1,0) band
R(1)
R(2)
P(0)
of the (1,0) band
P(1)
P(2)
R-branch
A: 原子のエネルギー準位
R-branch P-branch
J1=5
J1=4
J1=3J1=2
J1=1
J1=4
J1=3J1=2
J1=0
0 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 6 J0
hν
2
1001
01
01
2
1001
01
01
000111
11
)1(
11
121
)1(
)1()1(
JBBJBBE
BJJJBJEE
JJBranchP
JBBJBBE
BJJBJJEE
JJBranchR
BJJBJJEE
V
V
V
V
V
問題A 出題平成19年10月1日
解答レポートの第1頁には、氏名、学科、学年、提出月日を忘れず記入せよ。(なるべく)翌週の授業に提出すること。
A1. 等価p電子が3,4,5,6個の各系について、その項(term)を定めよ。
A2. 等価p電子1個と5個、2個と4個の系が同じ項を持つのはなぜか?
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