精神科・心療内科 永井美緒 - Japanese Red Cross …...MARTA(多受容体...

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精神科・心療内科

永井美緒

抗精神病薬を常用している患者が救急搬送されてきた!

①どんな精神疾患の患者であるかの情報収集

②抗精神病薬投与に起因した身体症状を考慮した対応

抗精神病薬が投与された背景を理解し、精神科的治療の必要性について吟味する

抗精神病薬 抗精神病作用、すなわち抗幻覚妄想作用のある薬物

定型抗精神病薬

フェノチアジン系 鎮静作用 ウインタミン、レボトミン等

ブチロフェノン系 D2受容体の親和性が高く、抗幻覚妄想作用に優れる

セレネース等

ベンザミド系 ドグマチール、グラマリール等

非定型抗精神病薬

SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)

線条体の5-HT2受容体に拮抗→

ドパミン抑制が少なく錐体外路症状が出にくい

リスパダール、ルーラン、ロナセン

MARTA(多受容体作用抗精神病薬)

5-HT受容体、H1受容体など多数の受容体に作用

ジプレキサ、セロクエル、クロザリル

DSS(ドパミン部分作動薬)

D2受容体の部分作動薬 エビリファイ

抗精神病薬が使用されるイメージ

統合失調症 気分障害

神経症性障害

器質・症状性精神障害

幻覚・妄想・興奮

抑うつ気分/爽快気分 不眠・不穏

不眠・不穏

抗精神病薬が使用されるイメージ

統合失調症 気分障害

神経症性障害

器質・症状性精神障害

抗幻覚妄想

気分安定

鎮静

自殺企図

自殺しようという意図があった

YES

自殺しない約束ができる

YES 精神科受診を促す

YES

精神科入院を勧める NO

今も死にたい気持ちがある NO

注意深く経過観察

直後は落ち着いて見えることも

抗精神病薬の副作用に伴う身体症状を見逃さない

思い出したい抗精神病薬に伴う身体症状 悪性症候群

不整脈

水中毒

イレウス

メタボリックシンドローム

誤嚥性肺炎

など

悪性症候群 以下のうち、3項目を満たせば確定診断

発症の7日以内に抗精神病薬を使用

(持効性注射剤は2~4週間以内)

38℃以上の発熱

筋強剛

以下のうち5項目 ・精神状態の変化 ・頻脈 ・高血圧あるいは低血圧

・頻呼吸あるいは低酸素血症 ・発汗あるいは流涎

・振戦 ・尿失禁 ・CKの上昇あるいはミオグロビン尿

・白血球増多 ・代謝性アシドーシス

他の薬剤の影響、全身性、精神神経疾患の除外

Caroffらによる悪性症候群の診断基準

不整脈 QT延長症候群→Torsade de Pointes

抗精神病薬の服薬量が多くなると、リスクが増大

クロルプロマジン換算 オッズ比

~1000㎎ 1.4

1001~2000㎎ 5.4

2001㎎以上 8.2

【参考】クロルプロマジン換算1000㎎とは

リスパダール10㎎

セレネース20㎎

水中毒 統合失調症患者の10~40%に多飲傾向、そのうち数%は水中毒

口渇:抗コリン作用、薬剤性SIADHなどによる

病的多飲水(水中毒)→電解質異常(低Na、低K)

意識障害、けいれん

横紋筋融解症の併発に注意

電解質の補正はゆっくりと

イレウス 抗コリン作用→腸管の運動機能が低下

慢性的な便秘→巨大結腸になっていることも

抗精神病薬の投与量が多いとリスクが高くなる

メタボリックシンドローム 体重増加:フェノチアジン系、MARTAなど

耐糖能異常:特にMARTA

糖尿病禁忌:ジプレキサ、セロクエル

糖尿病原則禁忌:クロザリル

脂質代謝異常

誤嚥性肺炎 嚥下障害(錐体外路症状)、咳嗽反射の低下(ドパミンの低下→サブスタンスPの低下)を背景に、不顕性誤嚥を起こしやすい。

まとめ 抗精神病薬は、様々な精神疾患に対して使用される薬剤であるため、過剰量服薬した経緯によっては、精神科的な治療を急ぐ必要がある。

身体疾患の診察・治療にあたっては、抗精神病薬投与による影響も考慮する必要がある。

ご清聴ありがとうございました

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