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Drug Delivery System 281, 2013 35 S D D 大阪大学大学院・薬学研究科・薬剤学分野 中川岳志・岡田直貴・中川晋作 キメラ抗原受容体 (CAR) 発現細胞傷害性 T 細胞 (CTL) を用いた 次世代養子免疫療法の開発 Development of next-generation adoptive immunotherapy using cytotoxic T-lymphocyte (CTL) expressing chimeric antigen-receptor (CAR) Adoptive immunotherapy, relying on the transfer of tumor-specific cytotoxic T-lymphocytes (CTL) differentiated from CD8 + T cells of cancer patient, is autologous cell therapy attempting tumor regression and suppression of metastasis and recurrence. However, it is difficult to induce sufficient number of tumor-specific CTLs from most patients who are in immunosuppression. As a way out, development of the technique to create CTLs expressing chimeric antigen-receptor (CAR) is pushed forward. CAR comprises an extracellular target molecule recognition domain fused to a transmembrane domain and cytoplasmic signal transduction domain capable of modifying CTL function. Herein, we review trend of the CAR study and our next-generation adoptive immunotherapy using tumor vessel-specific CAR-expressing CTL. 養子免疫療法は、癌患者より採取した CD8 + T 細胞から腫瘍特異的な細胞傷害性 T 細胞 (CTL) を 分化誘導し、再び患者へと移入することで癌の退縮および転移・再発抑制を図る自己細胞療法であ る。しかし、癌患者は免疫抑制状態に陥っているため、治療に十分な数の腫瘍特異的 CTL を誘導す ることが困難である。この打開策として、キメラ抗原受容体 (CAR) を発現させた CTL を創製する 手法の開発が進められている。CAR は、標的分子に特異的に結合する細胞外ドメインと CTL 機能 を修飾する細胞内シグナル伝達ドメインとを融合した人工蛋白質であり、CTL に標的分子特異的な 細胞傷害活性を付与できる。本稿では、CAR 研究の動向ならびに筆者らの腫瘍血管特異的 CAR 発 現 CTL を用いた次世代養子免疫療法について概説する。 Takeshi Nakagawa , Naoki Okada , Shinsaku Nakagawa Keywords: Chimeric antigen-receptor, Cytotoxic T-lymphocytes, Adoptive immunotherapy, Tumor vessel-targeting, Gene transduction Laboratory of Biotechnology and Therapeutics, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Osaka University 細胞治療と DDS -細胞を制御する、細胞で制御する- はじめに 癌に対する免疫応答を細胞・分子レベルで解析す る腫瘍免疫学の進展により、遺伝子変異を蓄積した 癌細胞が質的・量的に正常細胞とは異なる分子を発 現していることが明らかとなった。これら腫瘍関連 抗原 (TAA; Tumor associated antigen)と呼ばれ る分子に対する免疫監視機構が、初期癌細胞の排除 という生体の恒常性維持に重要な役割を果たして いることが判明し、TAA 特異的な癌免疫療法が盛 んに研究されてきた 1) 。なかでも、腫瘍免疫応答に おいて中心的なエフェクター細胞として機能する TAA 特異的な細胞傷害性 T 細胞 (CTL; Cytotoxic Tlymphocyte)を用いた養子免疫療法は、原発癌 の退縮のみならず転移や再発の抑制にも効果を発揮 し、かつ正常組織への副作用がほとんどない新規癌 治療戦略として大きな期待を集めている。本療法 は、癌患者より採取した末梢血単核球分画や癌浸潤 リンパ球に含まれる CD8 + T 細胞をソースとして、 ex vivo において TAA ペプチドや腫瘍細胞などに よって刺激を加えることで腫瘍特異的な CTL とし て増幅・活性化し、再び患者に移入する方法であ る。しかしながら、免疫系が抑制されている癌患者 からは治療に十分な数の CTL を分化誘導すること が困難であったり、患者に再移入した CTL の腫瘍 組織集積性が乏しかったりすることが臨床応用への

キメラ抗原受容体 (CAR) 発現細胞傷害性T細胞 (CTL) を用いた …

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Drug Delivery System 28― 1, 2013 35

SDD大阪大学大学院・薬学研究科・薬剤学分野

中川岳志・岡田直貴・中川晋作*

キメラ抗原受容体 (CAR) 発現細胞傷害性 T 細胞 (CTL) を用いた

次世代養子免疫療法の開発

Development of next-generation adoptive immunotherapy using cytotoxic T-lymphocyte (CTL) expressing chimeric antigen-receptor (CAR)

Adoptive immunotherapy, relying on the transfer of tumor-specific cytotoxic T-lymphocytes (CTL) differentiated from CD8+ T cells of cancer patient, is autologous cell therapy attempting tumor regression and suppression of metastasis and recurrence. However, it is difficult to induce sufficient number of tumor-specific CTLs from most patients who are in immunosuppression. As a way out, development of the technique to create CTLs expressing chimeric antigen-receptor (CAR) is pushed forward. CAR comprises an extracellular target molecule recognition domain fused to a transmembrane domain and cytoplasmic signal transduction domain capable of modifying CTL function. Herein, we review trend of the CAR study and our next-generation adoptive immunotherapy using tumor vessel-specific CAR-expressing CTL.  養子免疫療法は、癌患者より採取した CD8+ T 細胞から腫瘍特異的な細胞傷害性 T 細胞 (CTL) を分化誘導し、再び患者へと移入することで癌の退縮および転移・再発抑制を図る自己細胞療法である。しかし、癌患者は免疫抑制状態に陥っているため、治療に十分な数の腫瘍特異的 CTL を誘導することが困難である。この打開策として、キメラ抗原受容体 (CAR) を発現させた CTL を創製する手法の開発が進められている。CAR は、標的分子に特異的に結合する細胞外ドメインと CTL 機能を修飾する細胞内シグナル伝達ドメインとを融合した人工蛋白質であり、CTL に標的分子特異的な細胞傷害活性を付与できる。本稿では、CAR 研究の動向ならびに筆者らの腫瘍血管特異的 CAR 発現 CTL を用いた次世代養子免疫療法について概説する。

Takeshi Nakagawa , Naoki Okada , Shinsaku Nakagawa*

Keywords: Chimeric antigen-receptor, Cytotoxic T-lymphocytes, Adoptive immunotherapy, Tumor vessel-targeting, Gene transduction

* Laboratory of Biotechnology and Therapeutics, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Osaka University

細胞治療と DDS -細胞を制御する、細胞で制御する-

はじめに

 癌に対する免疫応答を細胞・分子レベルで解析する腫瘍免疫学の進展により、遺伝子変異を蓄積した癌細胞が質的・量的に正常細胞とは異なる分子を発現していることが明らかとなった。これら腫瘍関連抗原 (TAA; Tumor―associated antigen) と呼ばれる分子に対する免疫監視機構が、初期癌細胞の排除という生体の恒常性維持に重要な役割を果たしていることが判明し、TAA 特異的な癌免疫療法が盛んに研究されてきた1)。なかでも、腫瘍免疫応答において中心的なエフェクター細胞として機能する

TAA 特異的な細胞傷害性 T 細胞 (CTL; Cytotoxic T―lymphocyte) を用いた養子免疫療法は、原発癌の退縮のみならず転移や再発の抑制にも効果を発揮し、かつ正常組織への副作用がほとんどない新規癌治療戦略として大きな期待を集めている。本療法は、癌患者より採取した末梢血単核球分画や癌浸潤リンパ球に含まれる CD8+ T 細胞をソースとして、ex vivo において TAA ペプチドや腫瘍細胞などによって刺激を加えることで腫瘍特異的な CTL として増幅・活性化し、再び患者に移入する方法である。しかしながら、免疫系が抑制されている癌患者からは治療に十分な数の CTL を分化誘導することが困難であったり、患者に再移入した CTL の腫瘍組織集積性が乏しかったりすることが臨床応用への

36 Drug Delivery System 28―1, 2013

大きな障壁となっている。このような養子免疫療法をとりまく現状を打破すべく、遺伝子工学的手法を駆使することによって、TAA に特異的な一本鎖抗体 (scFv; Single―chain variable fragment) とT 細胞活性化シグナル伝達ドメインとの融合分子であるキメラ抗原受容体 (CAR; Chimeric antigen―receptor) を発現させた CTL を創製し、これを患者に移入する次世代養子免疫療法の開発が進められている。本稿では、近年の CAR 技術の研究動向について概説するとともに、筆者らが独自に開発した腫瘍血管特異的 CAR 発現 CTL 療法について紹介する。

CAR 開発の経緯 (図 1)

 CTL は、細胞膜に発現している T 細胞受容体

(TCR; T―cell receptor) と補助受容体である CD8を介して、標的細胞表面上の主要組織適合遺伝子複合体 (MHC; Major histocompatibility complex) class I 分子に提示される抗原ペプチドを認識することで、特異的かつ強力な細胞傷害活性を発揮する。しかしながら、そもそも癌細胞の由来は正常細胞であり、TAA といえども自己抗原であるために、TAA に対する T 細胞レパトアには免疫系が本来備えている中枢性トレランスにより大きな制限がかかる。TAA に対する T 細胞のうち、高親和性 TCRを持つものが T 細胞成熟化の過程において負の選択を受け、淘汰されるため、成人の体内では中~低親和性 TCR を持つものが支配的となる2)。したがって、癌患者より採取した CD8+ T 細胞に対していくら TAA や腫瘍細胞による刺激を加えても、増幅された腫瘍特異的 CTL の TCR は TAA に対して低

図 1 従来の養子免疫療法の問題点とその解決策従来の養子免疫療法では、癌患者より採取した T 細胞を体外で増幅・活性化しても十分な数の腫瘍特異的 CTL が得られないことが問題点として残されている。そこで、TAA 特異的 TCR 遺伝子や CAR 遺伝子を CTL に導入することによって腫瘍特異的 CTL を人為的に大量調製するアプローチが考案され、これらの基礎研究および臨床研究が精力的に進められている。

癌患者よりCD8+T細胞を採取

癌患者よりCD8+T細胞を採取

癌患者よりCD8+T細胞を採取

TAAペプチドや腫瘍細胞を用いて腫瘍特異的CTLを増幅・活性化

TCR遺伝子導入による腫瘍特異的CTLの調製

CAR遺伝子導入による腫瘍特異的CTLの調製

TAA特異的CTLクローンから得られたTCR遺伝子を導入

標的分子特異的なscFvと細胞内シグナル伝達ドメインを融合したCAR遺伝子を導入

【問題点】

• 内因性TCRとのミスペアリング• 多様なTCRライブラリー構築の必要性• 腫瘍細胞におけるMHC class I発現低下

【問題点】

• 腫瘍特異的CTLを大量に調製可能【利点】

• 腫瘍細胞表面に発現するTAAが少ない【問題点】

• 腫瘍特異的CTLを大量に調製可能• MHC class Iを介さずに抗原認識が可能

【利点】

• 十分な数の腫瘍特異的CTLを 誘導することが困難

従来の腫瘍特異的CTLの調製

Drug Delivery System 28― 1, 2013 37

親和性であり、再移入した際の腫瘍組織への集積性や細胞傷害活性という点において満足な機能を発揮できていないものと考えられる。 この問題点に対する打開策の 1 つとして、TAA特異的 CTL クローンから得られた TCR 遺伝子の導入によって、癌患者から採取した CD8+ T 細胞のほぼすべてを人為的に TAA 特異的 CTL へと改変するアプローチが試みられている。Rosenburgらは、TAA の一種である MART―1 に特異的な TCR の遺伝子を、レトロウイルスベクターを用いて T 細胞に導入し、悪性黒色腫患者に対する養子免疫療法の臨床試験を行った結果、腫瘍縮小効果が認められたことを報告している3)。しかしながら、本手法においては、外来的に新たな TCR 遺伝子を導入することで、T 細胞が元来有している内因性の TCR との間で生じる不具合が問題となっている。TCR はα鎖とβ鎖により構成されるヘテロ二量体であり、個々の T 細胞は一般にそれぞれにユニークな 1 種類の TCR を多数発現している。遺伝子導入されたTAA 特異的 TCR のα鎖とβ鎖は内因性 TCR のα鎖とβ鎖との間で不適切なヘテロ二量体を形成する可能性があり、期待される TAA 特異的 TCR のヘテロ二量体形成の確率を減少させるばかりでなく、予測不可能な特異性を持つ TCR が出現し重篤な自己免疫疾患を引き起こす危険性もはらんでいる4,5)。この問題を解決すべく最近では、TAA 特異的 TCR遺伝子を搭載したレトロウイルスベクターに内因性 TCR の発現を阻害する siRNA の発現カセットを組み込むことによって、目的とする外来性 TCRの発現を向上させる試みもなされている6)。しかし、TCR の抗原特異性は TAA のみならず多様なハプロタイプを有する MHC にも拘束されるため、本手法においては癌患者ごとに膨大な TCR クローンが必要であり、TAA 特異的 CTL を調製する方法として簡便性に欠けると言わざるを得ない。さらには、癌細胞の免疫抑制機構の 1 つとして、MHC class I分子の発現が低下していることが明らかとなっており7)、たとえ新たに遺伝子導入した TCR を高発現させることができても、TCR を介した癌細胞の認識は困難となり、十分な細胞傷害活性が発揮されない可能性も考えられる。

 TAA 特異的 TCR 遺伝子導入法におけるこれらの問題点を克服するには、MHC との相互作用に依存せず癌細胞を特異的に認識・傷害できる CTL を短期間で大量に作製しうる方法論が必要となる。そこで考案されたのが、CAR を遺伝子工学的に発現させた T 細胞を移入する次世代養子免疫療法である。CAR は、TAA 特異的なモノクローナル抗体由来の scFv と TCR/CD3 複合体の細胞内シグナル伝達ドメインをタンデムに結合させた人工受容体である。細胞外ドメインである scFv が TAA と特異的に結合することで T 細胞に対してシグナルが伝達され、抗原特異的な細胞傷害活性を誘導することができる。従来の養子免疫療法とは異なり、本療法においては T 細胞のレパトアに左右されず、比較的簡便に腫瘍特異的な CTL を大量に調製することが可能である。すなわち、TCR とは異なり CARには MHC 拘束性がないため、TAA 特異的 TCR遺伝子導入法における問題点を一挙に解決することができる手法と言える。また、抗体は TCR と比較して標的分子に対する特異性と結合親和性に優れており、従来の養子免疫療法で問題とされてきた移入CTL の低い腫瘍集積性という問題も克服できることが期待される。 

CAR の構造

 CAR の分子内構造は大きく 3 つのドメインに分別される (図 2)。細胞外ドメインとして標的分子に結合する scFv、細胞膜貫通ドメイン、そしてシグナル伝達を担う細胞内ドメインである。まずCAR の細胞内ドメインについて詳説したい。 前述のとおり、CAR の細胞内ドメインは、scFvが標的分子に結合してはじめて T 細胞に細胞傷害活性を誘導するシグナルを伝達する必要がある。そこで CAR の細胞内ドメインとして最初に選択されたのが、TCR/CD3 複合体の構成分子である CD3ζ鎖である (図 2)。TCR 分子は T 細胞表面上で複数の CD3 分子 (CD3γ鎖、CD3δ鎖、CD3ε鎖、CD3ζ鎖) と会合しており、これらの CD3 分子は ITAM (Immunoreceptor tyrosine―based activation motif) と呼ばれるチロシンのリン酸化に特徴的な配列モ

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チーフを有している。なかでも CD3ζ鎖に含まれるITAM のチロシンリン酸化が、TCR の結合に基づく T 細胞活性化シグナル伝達に重要であることが知られている。T 細胞は CD3ζ鎖のリン酸化が引き起こされると、細胞内 Ca2+ 濃度の上昇、サイトカイン分泌などの一連の応答を示し、最終的には細胞分裂がおこり、CTL においては細胞傷害活性を示すようになる。したがって、CAR を構築するにあたり CD3ζ鎖は CTL の細胞傷害活性の誘導に不可欠なコンポーネントであり、実際に細胞内ドメインとして CD3ζ鎖を選択した CAR (第 1 世代 CAR) を発現させた CTL が抗原特異的に細胞傷害活性を発揮できるとする報告が多数なされている8~21)。 さらに、TCR からの T 細胞活性化シグナルがさまざまな共刺激受容体からのシグナルによって調節されていることに着目し、CAR による T 細胞機能

修飾の最適化を目的として、細胞内ドメインにさまざまな免疫機能分子のシグナル伝達ドメインが追加された第 2 世代 CAR の開発が進められている 。代表的な例が CD28 シグナル伝達ドメインを付与したCAR であり、本来 CD28 は T 細胞活性化の過程で重要な共刺激シグナルを発し、IL―2 産生を増大させることによって T 細胞の増殖を促進する22)。実際に細胞内ドメインに CD28 と CD3ζ鎖のシグナル伝達ドメインを連結した第 2 世代 CAR を発現させた CTL は、CD3ζ鎖のみを細胞内ドメインとする第 1 世代 CAR を発現させた CTL よりも標的分子特異的な増殖活性ならびに細胞傷害活性が優れており、効果増強が認められる23~30)。また最近では、CTL へのメモリー機能の付与を実現すべく、CD28に加えて 4―1BB、ICOS、OX40 などのシグナル伝達ドメインを細胞内ドメインに追加した第 3 世代

図 2 CAR の構造CAR の構造は大きく 3 つのドメインに分けることができる。細胞外に発現して標的分子に特異的に結合する scFv、細胞膜貫通ドメイン、そしてシグナル伝達を担う細胞内ドメインである。細胞内ドメインが CD3ζ鎖のみである第 1 世代 CAR に続いて、細胞増殖活性の向上を目的に CD28 細胞内ドメインを追加した第 2 世代 CAR が開発され、最近では 3 つ目のシグナル伝達ドメインとして 4-1BB や ICOS の細胞内ドメインを追加した第 3 世代 CAR が、CTLに対するメモリー機能の付与を目指して開発研究されている。

第1世代CAR 第2世代CAR 第3世代CAR

標的分子に特異的な一本鎖抗体 (scFv)

CD28細胞内領域

CD3ζ鎖細胞内領域

4-1BB/ICOS細胞内領域

メモリー機能 (Memory)

細胞増殖 (Proliferation)

細胞傷害活性 (Cytotoxicity)

細胞膜貫通領域

Drug Delivery System 28― 1, 2013 39

CAR の開発もなされている32~35) 。4―1BB は CD28とは異なる経路で共刺激シグナルを発する免疫機能分子であり、T 細胞活性化の最終段階において引き起こされるアポトーシスを抑制することによってメモリー細胞への分化を促すことが示唆されているため36)、そのシグナル伝達ドメインを CAR の細胞内ドメインに導入することで T 細胞のメモリー機能の増強につながる可能性を秘めている。 以上のように、CAR の細胞内ドメインは T 細胞の活性化機序の基礎的理解をもとにして着実な進化を遂げており、単なる腫瘍細胞に対する傷害活性のみならず、細胞増殖や細胞死の抑制、サイトカインの分泌促進、果てはメモリー T 細胞の誘導までをも可能とする CAR を開発すべく研究が進められている。 CAR の機能発現において細胞内ドメインと同様に非常に重要な因子が、細胞外ドメインであるscFv の標的分子に対する特異性と親和性である。

前述のとおり TAA はあくまで自己抗原であるため、CAR 発現 CTL を用いた養子免疫療法は高い治療効果が期待される反面、重篤な自己免疫疾患を引き起こすリスクも指摘されている。実際に過去のCAR 発現 CTL を用いた臨床試験において副作用が発生した例が報告されており37)、正常組織との共通抗原を標的とする限り、予期しうる副作用と得られる治療効果とのバランスを考慮して利用していくことが求められる。 これまでに CAR の標的分子として様々な TAAが報告されており (表 1)、血液癌に対しては CD19や CD20 など、固形癌に対しては CEA や PSMAなどが代表的である。現在研究が進められているCAR 発現 CTL 養子免疫療法の傾向としては、標的とする疾患には血液系の癌が多いこと、in vitro での検討が中心でin vivo での抗腫瘍効果や安全性を検討した報告は少ないことが挙げられる38)。これは、血液系の癌においては移入した CTL が癌細胞と接

表 1 現在研究が進められている CAR 発現 CTL 養子免疫療法CEA; carcinoembryonic antigen, PSMA; prostate-specific membrane antigen, TAG-72 ; tumor-associated glycoprotein 72 , GD; ganglioside, EGP; epithelial glycoprotein, MUC; Mucin 1 .

CARの構造 標的分子 標的とする癌種 CTL 評価系 文献

第1世代

scFv-CD3ζ

CD19 B cell malignancies Human In vivo 8Human Clinical 9

CD20 B cell malignancies Human In vitro 10CD44 v7/8 Cervical carcinoma Mouse In vivo 11

CEA Colorectal cancer Human In vitro 12,13EGP2 Multiple malignancies Human In vitro 14

erB2,3,4 Breast and others Human In vitro 15GD2 Neuroblastoma Human In vitro 16GD3 Melanoma Human In vitro 17

Mesothelin Multiple cancers Human In vivo 18PSMA Prostate carcinoma Human In vivo 19

TAG-72 Adenocarcinoma Human In vivo 20,21

第2世代

scFv-CD28-CD3ζ

8H9 Multiple cancers Human In vivo 23CD20 B cell malignancies Human In vitro 24

CEA Colorectal cancerMouse In vivo 25

Mouse, Human In vivo 26Human In vitro 27

erB2,3,4 Breast and others Human In vivo 28Lewis-Y Epithelial derived tumors Human In vivo 29PSMA Prostate carcinoma Human In vivo 30

scFv-4-1BB-CD3ζ CD20 B cell malignancies Human In vitro 31CEA Colorectal cancer Human In vitro 32

scFv-CD3ζ-OX40 CEA Colorectal cancer Human In vitro 32

第3世代

scFv-CD28-4-1BB-CD3ζ CD19 B cell malignancies Human In vivo 33CD20 B cell malignancies Human Clinical 34

scFv-CD28-CD3ζ-OX40 CEA Colorectal cancer Human In vitro 32scFv-CD28-OX40-CD3ζ MUC1 Multiple cancers Human In vivo 35

40 Drug Delivery System 28―1, 2013

触しやすいのに対して、固形癌と CTL が直接接触するには CTL が血管外に浸潤して癌細胞の周辺に存在する間質を通過する必要があるため、in vivoにおいて顕著な有効性を発揮した例が少ないためであると考えられる。

腫瘍血管特異的 CAR 発現 CTL の創製

 前述のとおり、これまでの CAR の細胞外ドメインである scFv は、癌細胞表面に発現する TAA を標的分子としてきた。しかし、① TAA の多くは細胞内抗原であり CTL 表面に発現させた CAR では認識できない、② TAA は癌種によって異なるため患者ごとに特異的な scFv を有する CAR を使い分けなければならない、などの理由から、TAA 特異的 CAR 発現 CTL を用いた養子免疫療法では適応

が制限されてしまう。そこで筆者らは、腫瘍新生血管に対して標的指向性と傷害活性を発揮する CAR発現 CTL を創製することによって、汎用性と利便性を改善した次世代養子免疫療法が開発できるとの着想に至った。 既存の血管系から分岐して造られる腫瘍組織内の新生血管は、癌細胞への酸素や栄養の供給源であり老廃物の排除を担うことから腫瘍の成長に必須であり、全ての固形癌に対して共通に存在している。腫瘍組織内の血管内皮細胞が癌細胞数と比較して非常に少ないという事実は、多くの癌細胞の増殖が一つの血管内皮細胞の存在に強く依存しているという仮説を強く支持している。また、薬剤のアクセスが非常に容易であるため、近年、腫瘍血管を標的とする薬物・抗体療法が新たな癌治療法として盛んに研究・開発されている。筆者らは本アプローチを CAR 発

図 3 flk1 特異的 CAR 発現 CTL の創製flk1 特異的な scFv に CD28 の細胞膜貫通ドメイン、CD28 および CD3ζの各細胞内シグナル伝達ドメインをタンデムに結合した CAR の遺伝子を構築し、C57BL/6 マウス由来 CTL にレトロウイルスベクターを用いて遺伝子導入することにより flk1 特異的 CAR 発現 CTL を創製した。flk1 特異的 CAR を発現させた CTL は、腫瘍血管を破綻させ腫瘍組織のライフラインを遮断することで、癌細胞そのものを標的とするよりも効率のよい養子免疫療法の創出を実現できる。TM; transmembrane domain, IRES; internal ribosome entry site, GFP; green fluorescent protein

C57BL/6 マウス

MACSにより単離

CD8+ T 細胞 抗CD3/CD28抗体および IL-2 による刺激

レトロウイルスベクターによる遺伝子導入

GFP+ flk1 特異的CAR発現CTL

scFv CD28 CD3ζ IRES GFPCD28-TM

flk1 に特異的な scFv

CD28膜貫通領域

CD28細胞内領域

CD3ζ鎖細胞内領域

flk1特異的CAR

腫瘍血管内皮細胞

腫 瘍 組 織

flk1

Drug Delivery System 28― 1, 2013 41

図 4 flk1 特異的 CAR 発現 CTL を用いた養子免疫療法(A) C57BL/6 マウス由来 CTL に flk1 特異的 CAR 遺伝子を導入することにより flk1 特異的 CAR 発現 CTL (CAR-CTL[WT]) を創製した。また、CD8+ T

細胞に gp100 特異的 TCR を発現させた Pmel-1 トランスジェニックマウスから単離した CTL に対して、細胞内ドメイン欠損型あるいは完全型の flk1特異的 CAR の遺伝子を導入し、scFv-CTL[Pmel] および CAR-CTL[Pmel] をそれぞれ作製した。

(B) flk1 発現細胞 (MS1 細胞) および gp100 発現細胞 (B16BL6 細胞) に対する各遺伝子改変 CTL の細胞傷害活性を 51Cr 遊離アッセイにより評価した。(C) B16BL6 担癌マウス (腫瘍径 6 mm) に CAR-CTL[WT] は 5×106 cells/mouse で、scFv-CTL[Pmel] および CAR-CTL[Pmel] は 1 × 106 cells/mouse で

静脈内投与し、経時的に腫瘍体積をモニタリングした。

(A) 野生型マウス(WT) Pmel-1 マウス(Pmel)MHC class I

+gp100 ペプチド

CAR-CTL[WT] scFv-CTL[Pmel] CAR-CTL[Pmel]

scFvを介してflk1発現細胞と結合し、特異的な細胞傷害活性を示す

scFvを介してflk1発現細胞と結合し、gp100を発現する癌細胞を特異的に傷害する

scFvを介してflk1発現細胞と結合し、特異的な細胞傷害活性を示すとともに、gp100を発現する癌細胞を傷害する

CD8+ T細胞がgp100特異的なTCRを発現するトランスジェニックマウス

TCR

細胞傷害活性(%)

00 5 10 15 20 25 30 35 40

腫瘍体積(mm3 )

0

(B) (C)

0

20

40

60

80

100

0

20

40

60

80

100

0

20

40

60

80

100

1000

2000

3000

4000

5000

6000

MS1細胞 (flk1+gp100-)

CTL[WT]

scFv-CTL[Pmel]

CAR-CTL[WT]

CAR-CTL[Pmel]

PBS

scFv-CTL[Pmel]: 1×106 cells

CAR-CTL[WT]: 5×106 cells

CAR-CTL[Pmel]: 1×106 cells

エフェクター /ターゲット比

0.8 1.6 3.1 6.3 12.5 25 50

0.8 1.6 3.1 6.3 12.5 25 50

CTL移入後の日数

B16BL6細胞 (flk1-gp100+)

42 Drug Delivery System 28―1, 2013

現 CTL 養子免疫療法へと導入するべく、CAR の標的分子として血管内皮増殖因子受容体 (VEGFR2 ; Vascular endothelial growth factor receptor―2/flk1 ; fetal liver kinase 1) に着目した (図 3)。flk1は正常血管と比較して腫瘍新生血管の内皮細胞に高発現しており、腫瘍血管ターゲティングを成功させる標的分子の 1 つであると期待されている39,40)。flk1 特異的 CAR を発現させた CTL は、腫瘍血管を破綻させ腫瘍組織のライフラインを遮断することで、癌細胞そのものを標的とするよりも効率のよい養子免疫療法の創出を実現できるものと予想された。

flk1 特異的 CAR 発現 CTL を用いた養子免疫療法

 筆者らは、flk1 特異的な scFv に CD28 の細胞膜貫通ドメイン、CD28 および CD3 ζの各細胞内シグナル伝達ドメインをタンデムに結合した CAR の遺伝子を構築し、C57BL/6 マウス由来 CTL にレトロウイルスベクターを用いて遺伝子導入することにより flk1 特異的 CAR 発現 CTL (CAR―CTL[WT])を創製した (図 3, 図 4A)。併せて、CD8+ T 細胞がメラノーマ関連抗原である gp100 に特異的なTCR を発現する Pmel―1 トランスジェニックマウスから単離した CTL に対して、細胞内ドメイン欠損型あるいは完全型の flk1 特異的 CAR の遺伝子を導入し、scFv―CTL[Pmel] および CAR―CTL[Pmel]をそれぞれ作製した (図 4A)。 まず、細胞傷害活性における各遺伝子改変 CTLの特異性を比較したところ (図 4B)41)、CAR―CTL[WT] は flk1 発現細胞 (MS1 細胞) に対してのみ傷害活性を発揮し、細胞表面に発現させた flk1特異的 CAR が機能的な抗原受容体であることを確認した。また、scFv―CTL[Pmel] は内因性 TCR を介して gp100 発現細胞 (B16BL6 細胞) を特異的に傷害し、さらに CAR―CTL[Pmel] は内因性 TCR と外来性 CAR が共に機能することによって flk1 発現細胞および gp100 発現細胞の両方を傷害することができた。 次に、これらの遺伝子改変 CTL を B16BL6 担癌

マウスに移入した際の抗腫瘍効果を検討したところ (図 4C)、CAR―CTL[WT] 投与群では明らかな腫瘍増殖の遅延が認められ、腫瘍血管を標的とする養子免疫療法の有効性を実証することができた。また、CAR―CTL[WT] 移入による抗腫瘍効果が癌種ならびに MHC ハプロタイプに依存しないことも確認しており41)、養子免疫療法の適応拡大を図るうえで筆者らの腫瘍血管標的化 CTL 創製がきわめて有用な手段であることが証明された。さらに、CAR による腫瘍血管傷害性と内因性 TCR による癌細胞傷害性を併せ持った CAR―CTL[Pmel]を移入する養子免疫療法モデルにおいては、7 例中 3 例において腫瘍の完全退縮が達成できるほど劇的な治療効果を得ることができた41)。 以上のように筆者らの flk1 特異的 CAR 発現システムは、養子免疫療法における細胞医薬であるCTL に腫瘍血管標的化能 (腫瘍組織集積性の増強) および腫瘍血管傷害活性 (さまざまな固形癌に対する増殖抑制効果) を付与することによって、治療効果の改善のみならず汎用性と利便性の向上にも貢献できることが示された。また、腫瘍血管と癌細胞をともに傷害できる CTL の創製など、新たな養子免疫療法の創出へとつながる点で非常に魅力的なアプローチでもある。flk1 特異的 CAR 発現 CTL を用いた次世代養子免疫療法がこれまでの低分子医薬や抗体医薬に続き、腫瘍血管を標的とした新たな癌治療法として実用化されることを目指して、今後さらなる技術改良を図っていきたいと考えている。

おわりに

 2012 年ノーベル生理学・医学賞に輝いた山中伸弥博士らの功績によって、いまや自身の体細胞からあらゆる組織に分化可能な多能性幹細胞を人工的につくり出すことも可能な時代に突入した。しかし、細胞療法の臨床応用実現に向けてはまだまだ長い道のりが待っており、治療法の理論的根拠、有効性・安全性の評価基準、細胞医薬の性能・品質管理など、従来の低分子有機化合物を用いた薬物治療が成し遂げてきたような厳しい基準をクリアしていくことが要求される。現在はこれら多岐にわたる検討

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課題を個々に克服している段階であるが、将来的には基礎研究と臨床研究の連携によって細胞療法研究の体系化を図っていくことが必要であろう。本稿で紹介した研究内容は、CTL の目的機能を増強・最適化しつつ、それらの体内動態をも制御しようというものである。細胞医薬の薬理作用を増強・最適化

する方法論を創製し、それらを作用部位へと効率よく送達するための DDS、すなわち“Cell Delivery System”の開発研究を推進していくことで、細胞医薬を用いた次世代医療が実現することを期待する。

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