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ソラフェニブの効果予測法から
分子標的薬のコンパニオン診断薬への展開
近畿大学医学部ゲノム生物学教室
教授 西尾和人
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◆ソラフェニブは、進行肝細胞がんにおいて承認を受けたマルチキナーゼ阻害薬であり、現在肝細胞がんに対して承認を受けている唯一の分子標的薬である。 ◆ソラフェニブは、 25000名の肝細胞がん患者に対し投与された。 ◆ソラフェニブは、腎がんに対しても承認を得ている。 ◆ソラフェニブはマルチキナーゼ阻害剤の一つで、マルチキナーゼ阻害剤は多くのがん種で適応を得ている。
ソラフェニブ
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承認されているマルチキナーゼ阻害剤 一般名/商品名 標的分子 適応がん種 米国承認年 日本承認年 Brentuxim ab vedotin/Adcetris *2 CD30
再発・難治性ホジキンリ ンパ腫,未
分化大細胞リ ンパ腫2011年 2014年
Rituxim ab/Rituxan *1 CD20 B細胞性非ホジキンリ ンパ腫, MCL 1997年 2001年 Crizotin ib/Xalkori ALK **非小細胞肺がん( ALK fusion
gene)2011年 2012年
Trastuzum ab/Herceptin *1 Her2 ** 乳がん, 胃がん 1998年 2001年 Ruxolitin ib /Jakafi JAK ** 骨髄線維症 2011年 2014年
Gem tuzum ab
ozogam icin/Mylotarg *2CD33 再発・難治性AML 2000年 2005年 Axitin ib/In lyta Multi-kinases ** 腎細胞がん 2012年 2012年
Alem tuzum ab/Cam path
*1CD52 CLL 2001年 2014年 Vism odeg ib/Erivedge Hh sig naling 基底細胞がん 2012年 未開発
Im atin ib/Gleevec Bcr-Abl/Kit ** CML, GIST, Ph+ ALL 2001年 2001年 Mogam ulizum ab/Potelig eo*1 CCR4 ATL, PTCL, CTCL Phase III 2012年
Ibritum om ab
tiuxetan/Zevalin *3CD20 B細胞性非ホジキンリ ンパ腫, MCL 2002年 2008年 Pertuzum ab/Perjeta *1 Her2** 乳がん 2012年 2013年
Tositum om ab/Bexxar *3 CD20 再発・難治性非ホジキンリ ンパ腫 2003年 状況不明 Carfilzom ib/Kyprolis Proteasom e 多発性骨髄腫 2012年 Phase III
Gefitin ib/Iressa EGFR **非小細胞肺がん( EGFR遺伝子変異陽性)
2003年 2002年 Ziv-aflibercept/Zaltrap *4 VEGF 大腸がん 2012年 Phase III
Bortezom ib/Velcade Proteasom e 多発性骨髄腫, MCL 2003年 2006年 Bosutin ib/Bosulif Bcr-Abl/Src ** CML 2012年 2014年
Bevacizum ab/Avastin *1 VEGF
大腸がん, 非小細胞肺がん, 乳が
ん, グリ オブラ スト ーマ, 腎細胞が
ん, 卵巣がん, 悪性神経膠腫, 子
宮頸がん
2004年 2007年 Regorafenib/Stivarg a Multi-kinases ** 大腸がん, GIST 2012年 2013年
Cetuxim ab/Erb itux *1 EGFR ** 大腸がん, 頭頸部がん 2004年 2008年 Cabozantin ib/Com etriq Multi-kinases ** 甲状腺髄様がん 2012年 Phase I
Erlotin ib/Tarceva EGFR **
非小細胞肺がん,
( EGFR/exon19del, L858R) ,
膵がん
2004年 2007年 Ponatin ib/Iclusig Bcr-Abl(T315I)** CML, Ph+ ALL 2012年 Phase I/II
Azacitid ine/Vidaza DNMT 骨髄異形成症候群 2004年 2011年Trastuzum ab em tansine/ Kadcyla
*2Her2 ** 乳がん 2013年 2013年
Sorafenib/Nexavar Multi-kinases **腎細胞がん, 肝細胞がん, 甲状腺
がん2005年 2008年 Dabrafenib/Tafin lar BRAF(V600E) ** メ ラ ノ ーマ( BRAF/V600E) 2013年 Phase II
Sunitin ib/Sutent Multi-kinases ** GIST, 腎細胞がん, NET 2006年 2008年 Tram etin ib/Mekin ist MEK** メ ラ ノ ーマ( BRAF/V600E/K) 2013年 Phase III
Dasatin ib/Sprycel Bcr-Abl/Src ** CML, Ph+ ALL 2006年 2009年 Afatin ib/Gilotrif EGFR/Her2 **非小細胞肺がん( EGFR
/exon19del, L858R)2013年 2014年
Panitum um ab/Vectib ix *1 EGFR ** 大腸がん 2006年 2010年 Obinutuzum ab/Gazyva *1 CD20 CLL 2013年 Phase III
Vorinostat/Zolinza HDAC CTCL 2006年 2011年 Ibrutin ib/Im bruvica Btk ** MCL, CLL, W M 2013年 申請中
Decitab ine/Dacogen DNMT 骨髄異形成症候群 2006年 Phase I/II Ram ucirum ab/Cyram za *1 VEGFR2 **胃腺がん及び胃食道接合部腺がん,
非小細胞肺がん2014年 Phase III
Lapatin ib/Tykerb EGFR/Her2 ** 乳がん 2007年 2009年 Ceritin ib/Zykadia ALK **非小細胞肺がん( ALK fusion
gene)2014年 Phase III
Tem sirolim us/Torisel m TOR ** 腎細胞がん 2007年 2010年 Belinostat/Beleodaq HDAC PTCL 2014年 状況不明
Nilotin ib/Tasig na Bcr-Abl ** CML 2007年 2009年 Nivolum ab/Opdivo *1 PD-1 メ ラ ノ ーマ Phase III 2014年
Everolim us/Afin itor m TOR **腎細胞がん, SEGA, NET, 乳がん腎
血管筋脂肪腫2009年 2010年 Alectin ib/Alecensa ALK **
非小細胞肺がん( ALK fusion
gene)Phase III 2014年
Pazopanib/Votrient Multi-kinases ** 腎細胞がん、 軟部腫瘍 2009年 2012年 Idelalisib/Zydelig PI3K ** CLL, FL, SLL 2014年 状況不明
Ofatum um ab/Arzerra *1 CD20 CLL 2009年 2013年 Pem brolizum ab/Keytruda *1 PD-1 メ ラ ノ ーマ 2014年 Phase II
Rom idepsin/Istodax HDAC CTCL, PTCL 2009年 Phase I/II Nintedanib/Vargatef Multi-kinases ** 非小細胞肺がん 2014年 *** Phase III
Denosum ab/Ranm ark *1 RANKL
多発性骨髄腫による骨病変及び
固形がん骨転移による骨病変 , 骨
関連事象予防, 骨巨細胞腫
2010年 2012年 Blinatum om ab/Blincyto *5 CD19/CD3 Ph-ALL 2014年 状況不明
Ip ilim um ab/Yervoy *1 CTLA-4 メ ラ ノ ーマ 2011年 申請中 Olaparib/Lynparza PARP 卵巣がん( BRCA遺伝子変異陽性) 2014年 Phase III
Vandetanib/Caprelsa Multi-kinases ** 甲状腺髄様がん 2011年 Phase III Palbociclib/Ibrance CDK4/6 ** 乳がん 2015年 Phase III
Vem urafenib/Zelboraf BRAF(V600E) ** メ ラ ノ ーマ(BRAF/V600E) 2011年 2014年 Lenvatin ib/Lenvim a Multi-kinases ** 甲状腺がん 2015年 申請中
(2015.2月現在)
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(2015.2月現在)
臨床試験ステージにあるキナーゼ阻害剤
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従来技術とその問題点 がん分子標的薬であるソラフェニブは、肝細胞がん患者及び腎細胞がん患者に適応されているが、ソラフェニブの効果を示すかどうかを事前に予測する方法は無かった。 血漿中の肝細胞成長因子(HGF)濃度変化が、ソラフェニブの効果予測因子であるとの報告が2008年に欧州癌学会で発表されたが、その後の検証はなされていない。 ソラフェニブにより肝細胞がんに著効(CR: complete response又はgood PR: good partial response)又は部分奏功(PR: partial response)を示す症例は非常に稀であるが、わが国では著効例が2%程度散見される。これを見分けることができれば、肝細胞がん患者がソラフェニブに著効を示すかどうかを事前に予測することができ、ソラフェニブの適切な投与を可能にし、治療効果の向上が期待できる。
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⑥FGF3/4 遺伝子の過剰発現させた腫瘍はソラフェイブに感受性が高いか?
(基礎研究)
FGF3/4 遺伝子増幅のあるがん細胞はソラフェイブに感受性が高い。
FGF3/4 遺伝子の過剰発現させた腫瘍はソラフェイブに感受性が高い。
(担がんマウスモデル)
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 本技術により、今まで不可能であったソラフェニブの効果を予測することに成功した。
• 従来は漫然とソラフェニブの使用を行ってきたが、効果の予測が可能となるため、奏功が期待される患者に集中的に、早期に投与することが可能となる。
• 本技術の適用により、薬剤コストが大幅に削減され、医療費の削減、副作用の回避が期待される。
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その後の展開
① 他のがん種への展開 ② 検査診断薬への展開 ③ 新しいマーカーの発見 ④ コンパニオン診断薬への展開
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①他のがん種への展開
食道がんでは40%に増幅がみられる。
OncoScan (CGH)
(コピー数解析)
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②検査診断薬への展開
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解析結果② FGF19コピー数異常の頻度
All patients
(N = 45)
No. (%)
FGF19 copy number
gain-positive
samples
No. (%)
P*
ソラフェニブ
奏効率
(RECIST)
CR 6 (13.3) 2/6 (33.3%)
0.024 Non-CR (PR, SD, PD) 39 (86.7) 2/39 (5.1%)
TERT (reference gene)
Target gene
Flu
ore
scen
ce i
nte
nsi
ty
Flu
ore
scen
ce i
nte
nsi
ty コピー数 増加
◆FGFR1/2/3/4, FGF3/4/19のコピー数変動を検討し、CR症例で高頻度にFGF19のコピー数増加が検出された。
コピー数 正常
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想定される用途
• 本技術の特徴を生かすためには、臨床検査室、臨床検査会社において、FGF遺伝子増幅検査を実施することで、臨床側、患者のメリットが大きいと考えられる。
• 肝がん、腎がん以外に、食道がんで頻度が高く、そのコンパニオン診断薬の開発が期待される。
• 現在開発が盛んなFGFR阻害剤のコンパニオン診断として期待される。
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実用化に向けた課題
• 現在、FISH法を用いた受託検査が可能なところまで開発済み。しかし、real time PCR法を用いてのコピー数アッセイなどでの検査の条件設定(カットオフ値の設定など)は未実施。
• 今後、次世代シーケンサーを用いた解析について実験データを取得し、FGFを含むマルチ診断薬として実施するための臨床研究を実施している。
• デジタルPCR、リキッドバイオプシーへの展開は始まったばかりである。
• 実用化に向けて、FGFR阻害剤の臨床試験での(プレスクリーニング)使用がコンパニオン診断薬の開発に有利になると考えられる。
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企業への期待
• 研究用検査としてのFISHは検査診断薬メーカーと確立済み。
• 製薬企業との共同研究を希望。 • FGFR阻害薬を開発中の企業、コンパニオン
診断薬、バイオマーカーへの展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。
• リキッドバイオプシーにおけるスクリーニング系を確立中であり、同分野での共同研究を希望。(デジタルPCR、次世代シーケンサー、CTC等)
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本技術に関する知的財産権
発明の名称 :ソラフェニブの効果予測方法
出願番号 :特開2012-249633(P2012-249633A) 出願人 :近畿大学 発明者 :荒尾 徳三、松本 和子、西尾 和人、工藤 正俊 (近畿大学医学部)
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お問い合わせ先
近畿大学
リエゾンセンター 武田 和也
豊吉 巧也
TEL 06-4307 - 3099
FAX 06-6721 - 2356
e-mail takedakaz@kindai.ac.jp
takuya.toyoshi@itp.kindai.ac.jp
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