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. . . . . . . . 環境損害をどのように算定すべきか? 森田 [email protected] 東北大学 東北大学民法研究会 Sep 19, 2013 MORITA Hatsuru (Tohoku University) 環境損害の算定 Sep 19, 2013 1 / 46

環境損害をどのように算定すべきか?――仮想評価法(contingent valuation)を中心に

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......環境損害をどのように算定すべきか?

森田 果 †

[email protected]

† 東北大学

東北大学民法研究会Sep 19, 2013

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Table of contents

1 はじめにMotivation

2 環境損害とその評価環境損害環境損害の評価手法CV

3 CVをめぐる論争CVの問題点実証研究による CVの有効性の評価CVの問題点は解決されたか?

4 訴訟における CVの実際の利用オーストラリア著作権裁判所判決CVの実施裁判所による CVの評価裁判所は CVの代わりに何を使ったか?

5 終わりにMORITA Hatsuru (Tohoku University) 環境損害の算定 Sep 19, 2013 2 / 46

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はじめに Motivation

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海難救助条約の制定作業環境救助報酬を導入すべきという ISU提案が CMIで大差で否決その理由=環境救助報酬の評価の困難性

福島原発事故の放射能汚染損害 - internalizing the whole externalityis desirable

全ての損害が内部化されているのか?森田(2011a,b)cf. recurring event!

他方で,除染作業の CBAなども必要どこまでの除染作業をすべきか?

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はじめに Motivation

motivation

環境損害の評価の手法contingent valuation(CV, 仮想評価法)の利用が大きな論点となってきた

梅村(2004),吉川(2002)に見られるように,CVに期待する日本の学者もいる

他方,現実に訴訟で CVが使われた例も出てきているし,CVの手法も発展してきている(特に行動経済学を取り込む形で)

see 柘植=栗山=三谷(2011),栗山=柘植=庄子(2013)など

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環境損害とその評価 環境損害

環境損害の分類

環境の価値=利用価値+非利用価値利用価値=直接的利用価値+間接的利用価値+オプション価値

直接的利用価値=森林を木材として直接に利用間接的利用価値=キャンプ場,水源保全などの形で,間接的に利用オプション価値=現在利用していなくとも,将来利用するため(たとえば医薬品開発のためのバイオ情報の源)に残しておく価値

非利用価値=遺産価値+存在価値(Krutilla (1967))遺産価値=将来世代にその環境を残すことの価値(cf. ユネスコ世界遺産)存在価値=その環境自体を利用しなくとも,存在しているだけで価値がある

なお,非利用価値を保護対象とすべきかについては,議論がありうる(大塚(2009)を参照)

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環境損害とその評価 環境損害の評価手法

評価手法

支払意思額(WTP)と受入補償額(WTA)WTP=環境を改善するためなら(環境悪化を阻止するためなら),最大限いくらまで支払ってよいか?WTA=環境改善を受けられないなら(環境悪化を受けたなら),最低限いくらの支払を受けることが必要か?

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環境損害とその評価 環境損害の評価手法

評価手法

顕示選好(revealed preference)法と表明選好(stated preference)法顕示選好法=個人の行動を観察することで,個人の選好を明らかにする手法

代替法=代替的な私的財に置き換えたときのコストによる評価トラベルコスト法=訪問地までの旅費と訪問回数(訪問率)の関係による評価(レジャー活動などの価値に使われる)ヘドニック法=代理市場に及ぼす影響に基づいた評価cf. ヘドニックとボトムアップの違い→中嶌(2013)

表明選好法=個人に直接質問することで,個人の選好を明らかにする手法

CV=環境変化に対するWTP/WTAを質問するコンジョイント分析=複数の環境対策を提示し,その選好を質問する(実例あまりなし)

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環境損害とその評価 CV

CV入門

CVとはどのような手法か?(具体例は後掲する裁判例で)特定の環境資源をある状態から別の状態に変化させることを評価するために,素人であっても簡単に理解可能な(しかし同時に科学的に正確な)形で,環境資源の before/afterを記述具体的には,現在の環境資源の状態,および,その変化を説明した上で,その変化をもたらす(政策)介入の内容について説明するそのような変化について,一定の金額の支払(支払方法についても説明する必要あり)に賛成するかどうか(WTPないしWTA),という形で質問を設定このような一種の住民投票で分かるのは,個人個人の評価の上限または下限のいずれかに過ぎないので,その価値の分布を推定するために,統計的な処理(パラメトリック orノンパラ)がなされる

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環境損害とその評価 CV

CVの実施

質問票で設定する価格が決定的に重要(∵「いくらがいいですか」と問うのではなく,「○○円に賛成しますか」という問いであり,そこから分布を推定する)

サーベイデザインが重要だし,サンプルサイズもある程度大きくないと,有効な推定ができない

支払条件(多数決が成立したときだけ支払うかどうか etc),支払方法(課税などの強制的徴収か,自発的な寄付(e.g., 富士山登山)かetc)なども重要

実際には,小さなパイロットグループでプレテストを行ったり個別インタビューをしたりして,適切なサーベイデザインを探る

質問票の中に,回答者の理解度をチェックする質問を入れることも,望ましい

このように,かなりコストのかかる手続なので,リサーチ会社にとってはいい金づる

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CV をめぐる論争

CVの歴史

Exxon Valdez事件(1989年 3月 23日)での扱いCVで 49億ドルこれに対し,Hausmanらがレクリエーションの需要(=利用価値のみ)から 380万ドル1991年に成立した和解では合計約 30億ドルの支払

Exxonは,Hausmanらによるカンファレンスを開催→「CVは信頼できない」

1992年,NOAAが専門家パネルを設置→ 1993年 1月に Arrow et al(1993):一定の条件付きで CVもOK

NOAAの規則制定作業では,1995年以後,金銭的填補から実物的な修復措置が中心になり,1996年の最終規則(梅村(2010))JEPのシンポジウム:1994年,2012年→この 20年でどのような進展があったか?

これまで,Deep Horizon事件までに 25冊の本と 2500本のペーパーが公表(査読なしを入れると 7500以上あるらしい...)

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CV をめぐる論争 CV の問題点

表明選好法としてのCV

経済学者は(そしておそらく法律家も),伝統的に,顕示選好に比して表明選好には懐疑的

∵人間の行動は嘘をつかないけれど,口ではいくらでも嘘をつける(真実を語るインセンティヴがない)個人は,自分の行動の効果が自分自身に帰属する場合に初めて,真剣に考えて行動する

CV研究者からの回答:2つの条件を充足するように CVを設計すればよい

誘因整合性(IC)=戦略的反応を抑止するようなメカニズム公共財への寄与実験では,他者の寄与によるフリーライドを考えて自らの真の選好とは違う選好を意図的に報告するインセンティヴあり

結果性(consequentiality)=当該分析の結果が回答者の厚生に究極的に影響しうると,回答者が信じているかどうか

結果性が満たされない CVの寄与は,選好と何らの関連性もない

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CV をめぐる論争 CV の問題点

CVの問題点

CVには,いくつか有名な問題点がある(一般的には,栗山=柘植=庄子(2013)117-126頁,柘植=栗山=三谷(2011)8-10頁:

仮想 hypotheticalバイアス(一般的には過大評価)WTP ≒ WTAとならない文脈 embedding問題・規模 scope効果

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CV をめぐる論争 CV の問題点

行動経済学やモデルの修正による対応

仮想バイアス結果性条件を充足するようにサーベイデザインすれば解消される?

WTPとWTAの食い違い授与効果やウォームグローによって説明可能

文脈問題心の会計やモデルの修正(e.g., 環境資源はしばしば代替性が低い)で説明可能

このように,選好の違いや,個人の合理性の限界など,行動経済学の発達によって,CVが伝統的な経済学との違いが発生する原因については,だいぶ説明がつくようになってきた

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CV をめぐる論争 実証研究による CV の有効性の評価

有効性の基準

手法の有効性について,Mitchell and Carson (1989)は,APAにならって 4つの validityの概念を提唱:∵私たちは,真の選好について知ることはできないので,客観的な有効性の検証は難しい

基準 criterion有効性=当該手法が,正当な基準として認められている他の手法と,うまく関係しているか?収束 convergence有効性=当該手法が,同じ価値についての他の手法がもたらす結果と,どのくらい相関しているか?構造 construct有効性=当該手法が,どれほど理論的予想と一致しているか?内容 content有効性=当該手法において,その最先端のベスト・プラクティスが実施されているか?

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CV をめぐる論争 実証研究による CV の有効性の評価

基準有効性

誘導評価実験:実施者が参加者に価値を割り当てた場合,被験者は正しくその価値を表明するか?

投票結果は,割り当てられた価値にほぼ全体として一致この結果,評価の形成段階を無視すれば,適切な条件の下でなされたCVは,真のWTPを正しく明らかにする

自己評価実験:参加者自身の,現実の財に対する現実の評価を使った実験

このタイプの実験では,一貫して仮想バイアスあり=表明された価値>現実の価値ただし,結果性条件を満たすような実験では,仮想バイアスはかなりの部分,消えるいくつかの対処法:チープトーク(評価をインフレしやすい傾向があることを事前に警告),回答が不確実な場合にそれを除去するために回答の確実性に関する質問項目を入れておいて事後調整

現実に行われた地域的な住民投票との比較「ほぼ一致」(後述)

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CV をめぐる論争 実証研究による CV の有効性の評価

収束有効性

同一の財についての評価について,表明選好法と顕示選好法を比較した場合に,両者の推定値の間にどの程度の相関関係が見られるか?

ただし,非利用価値については使えない(∵顕示選好法はこの場面では使えない),ということに注意基本的に,表明選好法と顕示選好法は,ほぼ同じ値に収束する

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CV をめぐる論争 実証研究による CV の有効性の評価

構造有効性

環境財に関する選好が,もし通常の経済理論にしたがうのであれば,次のような結果が観察されるはず:

環境財に寄与しようと考える人の割合は,支払額が減少するにつれて増える環境財の量が増えれば,人々の支払額は増加する(規模効果)環境財はぜいたく財だから,WTPの収入弾力性は 1より大きいWTPとWTAはだいたい同じ値になる

これらのうち,1つ目の予想は CVにおいてほぼ常に成立するが,それ以外はしばしば成立しない

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CV をめぐる論争 実証研究による CV の有効性の評価

構造有効性

環境財の量は固定されているし,他の消費財との代替性が限定的であるという点をモデルに取り込むと,WTPの収入弾力性が 1より小さくなることや,規模効果がないということは,モデルの上で示すことが可能サーベイデザインを適切に行えば,規模効果は多くの場合に観察される(ただし,その程度は必ずしも大きくはない)

追加テスト(Diamond-Hausman)は,サーベイデザイン上,実施不可能(∵ 1つ目のサブ財を受け取った後で 2つ目のサブ財についてどのように評価するか,という質問を回答させることは,著しく難しい)

WTPとWTAの間にギャップが存在することは確かであるけれども,それは CVの場合だけではなく,通常の財についての顕示選好の場合でも同じであり,むしろ付与効果などによって(普遍的に)生ずるものと考えるべき

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CV をめぐる論争 実証研究による CV の有効性の評価

内容有効性

さまざまなバイアスのクリアの仕方は,多くの研究によって知られてきているし,きちんとした実務家であれば,それらをきちんと考慮した上で,サーベイデザインとその実施をするはずとりわけ,近時のベストプラクティスは:

環境資源の現状とその変化とが,きちんと説明されることが重要どのような文脈においてその支払がなされるかということと,支払方法について,きちんと説明することが重要サーベイの中に,回答者が合理的で真実の報告を行っているかどうかを確認するための質問項目を含めることも,重要

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CV をめぐる論争 CV の問題点は解決されたか?

CVの進歩

確かに,これまでの 20年間で,CVは大きく進歩してきたその結果,

政策形成や CBAには,一定程度の利用価値があるかもしれないe.g., CBAにおける便益計算を行う際に,便益の最大限あるいは最小限の推定さえできれば,費用との関係では十分な場合は,しばしばあり得る特に,梅村(2004)や吉川(2002)が指摘するように,代替的な手法が存在しない場合においては,唯一の残された手段?しばしばいわれるのは,「曖昧な数字であっても,ないよりはマシsome number is better than no number」

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CV をめぐる論争 CV の問題点は解決されたか?

CVの問題点

仮想バイアスは残る結果性を確保するようにサーベイデザインすれば仮想バイアスはだいたい消えるといわれるけれども現実の住民投票と比較した実証研究でも,Vossler and Kerkvliet(2003)では確かに CVはそのままで住民投票と一致するが,Vossler etal (2003)においては,「分からない」を「いいえ」にカウントすることで初めて CVは住民投票と一致

Vossler and Kerkvliet (2003):河岸整備を固定資産税増税によって実行すべきかというオレゴン州 Corvallisにおける住民投票Vossler et al (2003):空き地維持のためのファンドを固定資産税増税によって実施すべきかというオレゴン州 Corvallisにおける住民投票

そもそも,地域的な環境資源について住民投票によって示される選好(?)自体,安定的なものではない

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CV をめぐる論争 CV の問題点は解決されたか?

CVの問題点

WTPとWTAの食い違いを説明するために,行動経済学に依拠したり,モデルの前提を変えたりすると,CBAを一貫させて使うことができない

e.g., 利他的な要素がWTPに含まれていると考える場合,母集団全員のWTPを合計するとダブルカウントになるし,便益の外部性だけでなくコストの外部性も考慮する必要がある(Diamond and Hausman(1994))通常の CBAとは違う分析枠組みを提示する必要があるが,そのような枠組みはこれまで提示されてきていない現実の市場でも発生するというが,環境財のような仮想設定では,間違える蓋然性が高い (see List and Levitt)

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CV をめぐる論争 CV の問題点は解決されたか?

CVの問題点

CVにおける評価は,文脈によって左右されてしまうもっとも,この点は,だから CVの方が顕示選好より優れているということにつながりうる一方で,CVにおける評価は,安定的な選好ではなく,単なる場面場面の個人的な単純な CBAにすぎないという評価にもつながりうる(Hausmanは明示的に言ってないが)特にこれは,非利用価値については当てはまりやすそう(利用価値については,convergence validityのテストでも分かるように,CVでも割と正確に評価できる)

規模効果について,追加 adding-upテストをパスする CVはほとんどない

サブグループ 1に,公共財 XについてのWTPを質問サブグループ 2に,公共財 YについてのWTPを質問サブグループ 3に,公共財 X+YについてのWTPを質問(X+Y)-Xがほぼ Yに等しくなっているかどうかをテスト

cf. ただし,追加テストについては,補完財かどうかは決定的

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CV をめぐる論争 CV の問題点は解決されたか?

CVに代わるもの?

仮に,非利用価値を測定する手段として,CVが使えないということになった場合,その場合,非利用価値の評価は 0になってしまうのか?(some number is better than no number?)

CVが信頼できないとする立場の基本的評価= CVは安定的な選好ではなく,個人の間違いの多い偶然的な CBAを測定しているに過ぎない

特に,一般人は,身近でないリスク・財の評価について不得手であり,間違えやすく,それよりはむしろ専門家に頼った方が妥当な評価が導ける?(Breyer (1993))

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訴訟における CV の実際の利用 オーストラリア著作権裁判所判決

なぜこの判決を取り上げるのか?

Audio-Visual Copyright Society Ltd v Foxtel Management Pty Ltd(No 4) [2006] ACopyT 2 (3 May 2006)

確かに,知財の判決であって,環境損害についての判決ではないけれど...梅村(2003, 2004, 2010)で引用されている米国の 2つの判決は,いずれも,「行政当局が環境損害の評価に CVを使ってよいことを定めた規則が適切か」という抽象的な問題に対して,「行政当局が裁量の範囲内で,CVを使うことを認めても良い」と判示したに過ぎないこれに対し,この事件は,現実に実施された CVに対する評価が問題さらに,CV支持側から Carson,反対側から Hausmanという,トップ研究者が専門家証人として参加しているので,高度の議論が期待できる環境財においてしばしば問題となる非利用価値ではなく,利用価値についての CVなので,ハードルは低い(逆に,ここでもダメなら非利用価値ではいわんやをや)

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訴訟における CV の実際の利用 オーストラリア著作権裁判所判決

事案

オーストラリアのケーブルテレビ会社数社が,無料 (free-to-air,FTA)テレビ放送を,自分たちの契約者に再送信していた(再送信業者, RT)1995年の判決で再送信は適法とされていたが,著作権者(Audio-Visual Copyright Society Limited, (商標 Screenrights))などのロビー活動によって,2001年 3月 4日に著作権法改正(CopyrightAmendment (Digital Agenda) Act 2000)が成立この著作権法改正によって,再送信は違法(著作権侵害)となり,SRが法定ライセンスを与える(法務長官 attorney generalが,種々の著作権者の代わりに,SRが著作権料収集者になると認定)2002年 1月から 9月まで,再送信業者と SRとの間で,equitableremunerationについて協議を行ったが,合意に達することができず,裁判所に提訴この協議の過程で,SRは,CVを共同で行おうと持ちかけたが,再送信業者はそれに乗らず,結局,SRが単独で CVを行った

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訴訟における CV の実際の利用 オーストラリア著作権裁判所判決

前提となる法律問題

衡平な著作権料の決め方についての,オーストラリア法:market rate:同じライセンスについて,似た環境の同じ市場で課されているライセンス料comparable bargains:同じ市場ではないけれども,十分に似た交渉を参照notional bargain rate:仮想的な交渉において当事者が合意したであろう価格judicial estimation:その他の総合判断

本件では,market rateはないし,comparable bargainsもない

※日本の株式買取請求事件のように,証明責任で切れる事件ではなく,裁判所がとにかく結論を出さなければいけないタイプの事件であることに注意(で,いいはず...)

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訴訟における CV の実際の利用 オーストラリア著作権裁判所判決

前提となる法律問題

仮想的な交渉が行われた場合に,いくらで合意が成立するか?この場合,余剰を,ライセンサーとライセンシーで平等分配するのではなく(SR側専門家の主張),実際の交渉力を考慮すると(ただし,法定ライセンスがないことを前提。SRはライセンスを拒んでいいし,再送信業者は再送信しなくてもいい),いくらで合意が成立していただろうか?という問いが問題

両当事者の間には意見の一致がなく,単一の方式で結論を下すのは不適切

仮想的交渉,海外の事例,そして裁判官の常識に従って,判断を下す

ここで,SRの提出した CVを考慮すべきか否かが問題

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

サーベイの実施に至る過程

SRは,再送信業者に対し,CVを使ったサーベイをしないかと持ちかけたが,RTは拒否

さらに,RTは,SRのサーベイは,証拠採用されるべきではないと主張(ただし,裁判所はこの申立を棄却)RTは,自分たち自身で,Newspollサーベイを行った

SRのサーベイと同じプロトコル・シナリオ・形式・方法で行ったもの実施目的= SRサーベイが間違っていることを示す

裁判所は,SRサーベイを証拠採用した上で,それについてどれほどのウェイトを置くべきかについて審理

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

SRサーベイの構造

Sweeney Researchという会社によって実施

ケーブルテレビの契約者から,ランダムに回答者を選び出し,無料放送についての意見を聞くパイロットサーベイを行った上で,最終サーベイを 2004年 2月 3月に行ったが,デザインプロトコルにしたがっていなかったので,2004年 10月 11月に再度のサーベイ(証拠として審理されるのはこちら)

ケーブルテレビ契約者に対する 373件の訪問調査を,オーストラリア中の 239の地域で行った回答者は,5つすべての無料チャネル(ABC, Channel7/9/10, SBS)を再送信しているケーブルテレビの契約者の世帯で,契約を結ぶかどうかを決めている大人 1人が回答者回答者は,サーベイの主要な質問票は 10分しかかからないことを告げられ,終わりに映画チケットをもらえるインタビューは,口頭質問で行われ,情報提供は,口頭でか,または,カードを回答者に見せることで行われた

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

質問票

20の質問項目からなる質問票Q7だけ,5つのバージョンがある

無料放送の再送信を受けるために,月いくらまでなら追加的に支払う気があるかを問う項目値段について,5つのバージョンがある= 1ドル,2.5ドル,5ドル,7.5ドル,10ドルこれらの質問に対する回答の分布から,需要曲線の形を推定する

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

Q7

質問者は,回答者に,カード 2(i)を提示し,読み聞かせる無料放送の再送信があることによって,映像と音声の品質が上がっているかもしれない再送信によって,1つのリモコンでチャンネルを変えることができる

質問者は,回答者に,カード 2(ii)を提示し,読み聞かせるケーブルテレビを通じた無料放送の再送信が受けられなくとも,電波放送を聞くことができる電波放送について,電波増幅器を購入することによって,映像と音声の品質を改善することができる特別なリモコンを購入することで,有料放送と電波放送とを 1つのリモコンでチャンネルを変えられる

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

Q7

質問者は,回答者に,次のように口頭で説明する最近のオーストラリア法の改正により,ケーブルテレビ会社は,無料放送の再送信のために支払をしなければならなくなりましたこの結果,ケーブルテレビ会社は,再送信をやめてしまうかもしれませんもし,契約者の需要が十分にあれば,ケーブルテレビ会社は,追加的な料金で再送信を行うでしょうこのため,契約者は,再送信を受けるためには,追加の月額料金を支払わなければならなくなりますただし,無料放送が再送信されなくなっても,電波放送を受信することは可能であることに注意してください私たちはあなたに,通常の TVチャンネルをケーブルテレビで契約し続けるかどうかを質問しているわけではありません

以上のような 3つの手続を踏んだ上で,Q7が回答者に提示される

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

Q7

1ドルバージョンでの質問文は,次のようになっている:もし,あなたのケーブルテレビ業者を通じて通常の TVチャンネルを受信し続けるために月 1ドルを追加で支払うか,または,今まで通りの受信料を支払って通常の TVチャンネルを受信できなくなるけれども,テレビアンテナによって受信することができるかの選択を迫られたとしたら,あなたはどうしますか?(a) ケーブルテレビを通じて通常チャンネルを受信できるように,月1ドルを余計に払う(これは,年額 12ドルになり,この金額を他のことに使うことができなくなります)(b) 1ドル余計に支払うことはせず,ケーブルテレビで通常チャンネルにアクセスできなくなる(c) 分からない

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

Q9

無料放送の再送信が停止されたら,ケーブルテレビ契約をやめようと考える契約者がどれくらいいるかを問うもの

もし,通常 TVチャンネルがあなたのケーブルテレビ業者を通じて見られなくなり,ケーブルテレビ業者が特別サービスとして通常 TVチャンネルを提供しなくなったとしたならば,あなたはどうしますか?(a) ケーブルテレビ契約を継続する(b) ケーブルテレビ契約を解除する(c) 分からない

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

Q10a, Q10b, Q11

Q10a

あなたにとって,ケーブルテレビを通じて通常 TVチャンネルを受信できることの主な便益は何ですか?

Q10b

他に何かありますか?

Q11

ケーブルテレビを使わずにテレビアンテナで通常 TVチャンネルを受信した場合,その品質はどうですか?Excellent/Very good/Fairly good/About average/Fairly poor/Verypoor/Terrible

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

SRサーベイへの回答の分布

Q7

支払うとの回答割合:1ドルで 59.2%,2.5ドルで 41.7%,5ドルで32.2%,7.5ドルで 18.6%,10ドルで 19.9%

Q9

68%が契約継続,25%が契約解消,7%が分からない

Q10

52%が「リモコン 1個ですむ」,44%は「映像音声の質がいい」,5%は「ケーブルテレビによって初めて FTAが視聴可能」

Q11

fairly good以上が 64%(excellentが 12%),ほぼ平均が 15%,fairlypoor以下は 15%

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

SRサーベイに基づくWTPの推定

Carsonと Borlandは,1.99から 10ドルの間が,契約者が無料放送から受ける月額の便益だと推定

Q7だけに基づくと,最も保守的な推定値は,1.99pspm(Borland)または 2.00pspm(Carson)Q9も考慮に入れると,最も保守的な推定値は,5.15pspmpspm = per subscriber per month

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

RTによるNewspollサーベイ

RTは,Newspoll Market Researchを通じて,2004年 8月にサーベイを実施Newspollサーベイは,Q7以外はすべて同じで,Q7に 3つのバージョンを追加:

1 Channel9/ABC/SBSが無料で再送信されるけれど,Channel7/10については追加料金が必要

2 Channel7/10は無料で再送信されるけれど,Channel 9/ABC/SBSには追加料金が必要

3 どれも無料では再送信されない

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訴訟における CV の実際の利用 CV の実施

Newspollサーベイの結果

Channel 7/10 Channel 9/ABC/SBS All SR

1ドル 35.0% 65.0% 60.0% 59.2%2.5ドル 27.5% 30.0% 35.0% 41.7%5ドル 27.5% 32.5% 32.5% 32.2%7.5ドル 5.0% 22.5% 20.0% 18.6%10ドル 2.5% 20.0% 15.0% 19.9%

Allと SRはほぼ一致――Newspollサーベイが SRサーベイのreplicationになっていることの証

数字がきれいすぎるのは,small sampleのせい?(判旨には言及なし)

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訴訟における CV の実際の利用 裁判所による CV の評価

Q7の評価

Q7には問題点が多く,信頼できないQ7が提示される前に説明されるシナリオが複雑すぎるQ7の質問項目自体が複雑すぎるSRサーベイでは,7.5ドルと 10ドルとの間の需要曲線が,よく見ても平坦外生性テスト(Hausman specification test [Hausman (1978)])・単調性テストをクリアできない1ドル未満の価格が質問項目に入っておらず,需要曲線の特定には情報が不十分再送信の便益を得るための代替的な手法(e.g., デジタル TV)についての説明が不十分

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訴訟における CV の実際の利用 裁判所による CV の評価

Q9/10/11の評価

Q7以降の質問項目は,Q7で提示された説明によって影響を受けてしまっている

Q9とQ7の回答の間には,一貫性がない

Q10も,Q7によって大きく影響を受けてしまっているQ11も,Q7によって影響を受けている

無料放送の電波状況が悪い地域では,再送信に高い価値を見いだしがちであることは分かるが,Q11への回答データが,そのような結論に使えるかどうかについては,結論を留保

結論:CVには,証拠としてのウェイトを一切置かない

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訴訟における CV の実際の利用 裁判所は CV の代わりに何を使ったか?

仮定的交渉

海外の著作権料については,US・カナダ・ヨーロッパのいずれも比較の対象としては不適切考慮要素

再送信の効果(FTAの電波状況の改善・シングルリモコンの便利さ)再送信のコスト再送信の便益(ケーブルテレビの契約者数への影響,再送信がどれくらい周知されているか)

RTは FTAの再送信をやめる可能性が十分にあるが,現時点では再送信に一定の価値があると考えている

※ RTの交渉力(outside option)についての認定

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訴訟における CV の実際の利用 裁判所は CV の代わりに何を使ったか?

裁判所の結論

SRは 2.5pspm,RTは 0.1pspmを主張

裁判所の結論は,総合考慮で,0.225pspm

裁判所が使うことのできる表明選好サーベイと,ビジネス目的で使う表明選好サーベイとでは,大きな違いがある

裁判所の意思決定は,法原則によって規定されており,証拠法に基づかなければならない

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終わりに

終わりに

CVには,まだまだ(Hausman的にいうともはや絶望的?)限界があるけれど,ちょっと克服は難しそう

そこで明らかにされているのは,やはり,安定的な「選好」ではないのではないか?環境損害(←非利用価値を含む)や仮想的な質問で,結果性を満たすような設計は,実際には難しい特に,環境損害における損害賠償という側面では,特定企業からの徴税という側面を持つので,高い金額を報告するインセンティヴあり(Exxon Valdezでは,「もう一度同じような事後が発生しないように予防措置をとる」という CVだが,本当に結果性を担保できるか?

適切に実施された(=内容有効性をクリアした)CVであっても,多くの欠点を抱えることが多い

結果性や説明の特定性を追求すると,今度は回答者にとって理解の難しいサーベイになってしまいかねない追加テストは厳しすぎるかもしれないが,単調性くらいは満たしてほしい

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終わりに

終わりに

問題となっている局面に応じた処理政策形成・CBA→可能性あり非訟事件→少なくとも現時点では無理(オーストラリアはこのケース)訴訟事件→将来的にも無理?(ただし民訴 248条)

some number is better than no number?

オーストラリアの事件では,CV以外の証拠を活用することができたしかし,それは,この事件では,仮定的交渉を利用するために,両当事者の交渉力がどれくらいあるか(outside optionが何か)を認定することで足りていたから環境損害で,Hausmanの言うように,他の手法(専門家の意見)などは活用可能なのか?

たとえば,除染活動の CBAを行う際に,山林の価値を CVで測定することは問題。habitat equivalency analysis的に,たとえば,住民が別の地域に移転することのコストなどを考えて評価することは(ただし,これは利用価値か)

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