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』
・サルコベニアの評価と予防
サルコペニアに対する
運動療法の実際
横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科
若林秀隆
サルコペニアに対する運動療法を開始する前に,運動機能を評価してサルコペ
ニアの原因(加齢,活動,栄養,疾患)を追究する.サルコペニアの原因を考
えずに運動療法を行うと,逆効果となることがある.二次性サルコペニアの場
合,リハビリテーション栄養の考え方が有用である.
運動機能の評価
ト運動療法の開始前に運動機能を評価する
・・筋力,歩行速度,全身持久力を評価する
運動機能には,筋力,持久力(筋持久力,
全身持久力),歩行能力,バランス能力,柔
軟性,瞬発力などが含まれる.本稿ではサル
コペニアで認めることが多い筋力低下,歩行
速度低下,全身持久力低下の評価について解
説する.
(1)筋力
①握 力
筋力を定量的に評価するためには,握力が
最も簡便な方法である.European Working
Group on Sarcopenia in 01der People (EW
GSOP)では,サルコベニア診断基準の握力
のカットオフ値を男性30kg未満,女性20kg
未満としている1).一方,下方ら2)が作成し
た日本人高齢者のサルコペニア簡易基準では,
握力が男性25kg未満,女性20kg未満の場
合に脆弱高齢者としている.「2008(平成20)
32 日本医事新報N0.4677參2013.12.14
年度体力・運動能力調査」における20~79
歳の性別の握力を表1に示す3).
②徒手筋カテスト(manual muscle testing:
MMT)
すべての筋力を検査機器で定量的に評価す
ることは難しい.握力を除くと,MMT(表2)
で評価するのが現実的である.特に大腿四頚
筋の筋力をMMTで評価する.
(2)歩行速度
①歩行速度
10mの歩行時間を計測すれば,歩行速度
を計算できる.EWGSOPのサルコペニア診
断基準では0.8m/秒以下,Society on Sarco-
penia,Cachexia and Wasting Disorders
(SSCWD)のサルコペニア診断基準4)および
下方ら2)のサルコベニア簡易基準においては
1m/秒未満を,それぞれカットオフ値とし
表1「平成20年度体力・運動能力調査」年齢別握力の結果(kg)
回 サルコペニアの
評価と予防
年齢(歳)男性 女性 ゛
標本数 平均値 標準偏差 標本数 平均値 標準偏差
20~24 1555 48.11 フ.21 1366 28.88 4.93
25~29 1614 47.96 7.21 1434 28.77 4.77
30~34 1671 48.24 フ.04 1623 29.04 4.68
35~39 1844 48.20 6.70 1856 29、66 4.69
40~44 1833 48.01 6.55 1857 29.97 4.60
45~49 1701 47.43 6.34 1638 29.39 4.61
50~54 1651 46.62 6.37 1560 28.50 4.41
55~59 1546 44.47 6.65 1621 26.89 4.20
60~64 1587 42.12 6.29 ワ55 25.85 4.12
65~69 938 39.34 6.12 933 24.68 3.84
70~74 933 36.56 5.93 935 23.26 4.27
75~79 910 34.26 5.79 925 21.98 4.22
表2 徒手筋カテスト(MMT)
5(normaL)最大の抵抗と重力に抗し,運動域全体にわたって動かせる
4(good) ある程度の抵抗と重力に抗し,運動域全体にわたって動かせる
3(fair) 抵抗を加えなければ重力に抗して,運動域全体にわたって動かせる
2(poor) 重力に抗さなければ運動域全体にわたって動かせる
1(trace) 筋の収縮がかすかに認められるだけで,関節運動は起こらない
○(zero) 筋の収縮も認められない
表3「平成20年度体力・運動能力調査」年齢別6分間歩行距離の結果(m)
年齢 男性 女性. 三ニ(歳) 標本数 平均値 標準偏差 標本数 平均値 標準偏差
65~69 885 618.75 91.19 852 575.63 ア8.17
70~74 867 584.26 107.52 850 551.38 82.05
75~79 822 554.74 90.70 820 515.90 83.75
ている.
②timed up&go test(TUG)
運動器不安定症の診断基準に使用されてい
る.椅子に深く座り,背筋を伸ばした状態で,
肘掛けがある椅子では肘掛けに手を置いた状
態から,肘掛けがない椅子では手を膝の上に・
置いた状態からスタートする.無理のない速
さで歩いて,3m先の目印で折り返し,終了
時間はスタート前の姿勢に戻った時点とする.
運動器不安定症のカットオフ値は11秒であ
る.
(3)全身持久力
①6分間歩行テスト
呼吸器疾患を有し在宅酸素療法を実施もし
くは検討中の患者や,循環器疾患を有する患
者の全身持久力を評価する.サルコベニアの
全身持久力評価にも使用できる.片道20~
30m程度の直線コースを自分のペースでで
きるだけ遠く6分間歩き,歩行距離を測定す
る.SSCWDではカットオフ値を400mとし
ている4).2008(平成20)年度「体力・運動能
力調査」での65~79歳の結果を表3に示す3).
N0.4677⑩2013.12.14日本医事新報 33
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‐
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②最大酸素摂取量,無酸素性作業間値
最大酸素摂取量とは,運動中の単位当たり
の酸素摂取量(mL/kg/分)の最大値で,ど
れだけ多くの酸素を体内に取り込むことがで
きるかを示す全身持久力の指標である.
サルコペニアの原因
無酸素性作業間値とは,有酸素的代謝から
嫌気性代謝(無酸素的代謝)に変わる際の運
動強度レベルである.これらの計測に当たっ
ては,運動負荷試験および呼気ガス分析を要
する.
卜運動療法の開始前にサルコペニアの原因を評価する
トサルコペニアの原因には加齢,活動,栄養,疾患がある
ト実際には複数の原因を合併していることが多い
EWGSOPではサルコペニアの原因を,加
齢のみである原発性と,活動・栄養・疾患に
よる二次性に分類している(表4)1).特に入
院患者では,複数の原因を合併してサルコペ
ニアとなっていることが多い.
(1)加齢
加齢とともに筋力や全身持久力は低下する.
75歳の高齢者では,男性で3~4%/年,女
性で2.5~3%/年の筋力低下を認める5〕.一
方筋肉量低下は,男性で0.80~0.98%/年,
女性で0.64~0.70%/年であり,筋力低下の
ほうが筋肉量低下より2~5倍速い5〕.
(2)活 動
活動量が低下すると,筋力や全身持久力は
低下する.廃用症候群では商用性筋萎縮,起
立性低血圧,呼吸機能低下などを認め,さら
に活動量が低下する悪循環となりやすい.特
に抗重力筋の筋力低下は,安静臥床で顕著と
なる.廃用症候群の約9割に低栄養を合併し
ており6〕,安静臥床のみで生じる廃用症候群
は稀である.
(3)栄養
食事摂取量の減少によってエネルギーバラ
ンスが負になると,体脂肪量,筋肉量とも減
少する.典型例は神経性食思不振症である.
34 日本医事新報 N0.4677⑩2013.12.14
表4 サルコペニアの原因
原発性サルコペニア
加齢の影響のみで,活動・栄養・疾患の影響はない
二次性サルコペニア
活動によるサルコペニア:廃用性筋萎縮,無重力
栄養によるサルコペニア:飢餓,エネルギー摂取量
不足
疾患によるサルコペニア
侵 襲:急性疾患・炎症,外傷,手術,急性感染
症,熱傷など
悪液質:慢性疾患・炎症,がん,慢性心不全,慢
性腎不全,慢性呼吸不全,慢性肝不全,
関節リウマチ,慢性感染症など
原疾患:筋萎縮性側索硬化症,多発lt筋炎,甲状
腺機能六進症など
飢餓では筋肉量減少に伴い,筋力も低下する
ことが多い.飢餓では筋肉と肝臓への十分な
グリコーゲンの貯蔵が困難となり,鉄欠乏性
などによる貧血となりやすいため,全身持久
力が低下する.
(4)疾患
侵襲,悪痕質,神経筋疾患などが含まれる.
侵襲とは,手術,外傷,骨折,感染症,熱傷
など,生体の内部環境の恒常性を乱す刺激で
ある.急性炎症であり一時的に代謝が低下す
る傷害期,代謝が充進して骨格筋の分解が著
明となる異化期,骨格筋や脂肪を合成できる
同化期に分類できる.異化期に筋肉量が滅少
し,二次性サルコペニアとなる.
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悪液質とは,多くの要因による症候群であ
る.従来の栄養サポートでは十分な回復が難
しい骨格筋減少の進行を認める.脂肪は喪失
することもしないこともある.食思不振や代
一一 原発性サルコペニアに対する運動療法
四回 サルコペニアの
評価と予防
謝異常の併発で蛋白とエネルギーのバランス
が負になることが,病態生理汐特徴である.
慢性炎症などによって筋肉量が減少し,二次
性サルコペニアとなる.
加・レジスタンストレーニングと蛋白質・アミノ酸補給を併用する
・・持久性トレーニングもサルコペニア予防に有用な可能性がある
加・メッツとは運動の強さの指標である
(1)レジスタンストレーニング
加齢によるサルコペニアには,レジスタン
ストレーニングと蛋白質・アミノ酸補給(特
に分岐鎖アミノ酸)の併用が最も効果的であ
る7).レジスタンストレーニングと蛋白質補
給の効果を見たメタ解析では,若年者,高齢
者とも除脂肪量が増加し筋力が改善した8).
レジスタンストレーニングの筋肉量増加の
効果を見た系統的レビューでは,運動強度の
高い場合には6論文中5論文で有効で,運動
強度が中等度の場合には3論文とも無効であ
った9).そのため,負荷強度が最大負荷量
(1RM)の80%以上,セット数が2~3セット,
回数が1セットにつき8~12回,頻度が週3
回,期間が3ヵ月以上の内容を推奨している.
ただし,やや低めの負荷強度1RMの40~70
%程度でも,反復回数を増やすことで高負荷
と同等の効果が得られる可能性はある.レジ
スタンストレーニングは筋肉量だけでなく,
筋力および身体機能も改善させる.
二次性サルコペニアに対する運動療法
(2)持久性トレーニング
持久性トレーニングには抗炎症作用,イン
スリン抵抗性の改善,骨格筋のミトコンドリ
ア増加といった効果がある.そのため,持久
性トレーニングもサルコペニア予防に有用な
可能性がある.加速度計で評価した中等度の
歩行活動は,高齢者の筋肉量と筋力に関連し
たlo).短期間の歩行運動の効果は賛否両論
あるが,半年間以上の歩行,ジョギング,間
欠的走行は,高齢者の下肢筋肉量を増加させ
る可能性があるlo).「健康づくりのための身
体活動基準2013」では,65歳以上で血糖・血
圧・激賛が基準範囲内の場合,強度を問わず
身体活動を毎日40分(=10メッツ・時/週)
行うことを推奨している.メッツとは,運動
時の酸素消費量を安静時の酸素消費量で割ら
た数値で運動の強さの指標である.主な身体
活動のメッツを表5に示す11).身体活動によ
るエネルギー消費量(kcal)は,1.05×メッ
ツ×時間(h)×体重(kg)で計算できる.
1リハビリテーション栄養の考え方が有用である
・・飢餓や侵襲の異化期の場合,レジスタンストレーニングは禁忌である
・・終末期でない悪液質の場合,軽負荷でレジスタンストレーニングを行う
二次性サルコベニアヘの対応は,リハビリ
テーション栄養の考え方が有用である.リハ
ビリテーション栄養と抹栄養状態も含めて
;
国際生活機能分類で評価を行った上で,障害
者や高齢者の機能,活動,参加を最大限発揮
できるような栄養管理を行うことである.
N0.4677斜2013.12.14日本医事新報 35
―
自白=目目り目
‐
表5 身体活動のメッツ
メッツ 身体活動1.0 横になって静かにテレビを観る,睡眠
1.3 座って静かにする,立位で静かにする
1.5 坐位:会話をする,食事をする
1.8 トイレ:坐位,立位,しゃがんでの排泄
2.0
家の中を歩く,シャワーを浴びる(タオルで拭
く,立位),身支度をする(手を洗う,髭を剃る,
歯を磨く,化粧をする,坐位または立位)
2.5 着替え(立位または坐位)
2.8 歩行(3.2km/時,ゆっくり,平らで固い地面)
3.0 歩行(4.0km/時,平らで固い地面)
3.5
レジスタンストレーニング(複合的エクササイ
ズ,様々な種類のレジスタンストレーニング
を8~15回繰り返す),階段を降りる,歩行
(4.5~5.1km/時,ほどほどの速さ,平らで
固い地面)
4.0 階段を上る(ゆっくり)
5.0 歩行(6.4km/時,平らで固い地面,とても速い)
6.0
レジスタンストレーニング(ウェイトリフティ
ング,フリーウェイト,マシーンの使用),パ
ワーリフティング,ボディビルディング,き
つい労力
8.8 階段を上る(速い)
(1)活動によるサルコペニア
不要な安静臥床を避けて,早期離床で廃用
症候群を予防することが最も重要である.高
齢者では入院するだけで身体活動量は減少し
て,廃用性筋萎縮が生じやすい.栄養管理が
適切であれば,レジスタンストレーニングや
持久性トレーニングも有用である.
(2)栄養によるサルコペニア
適切な栄養管理が最も重要である.特に1
日エネルギー摂取量が基礎エネルギー消費量
より少ない場合,運動しなくても筋肉量が減
少する.この状況でトレーニングを行うと,
栄養状態が悪化して筋肉量がさらに減少する
ため禁忌となる.一方,安静臥床も問題であ
る.1日エネルギー消費量の80%程度のエネ
ルギー投与量で2週間,安静臥床群と非安静
群(日中は立位,病棟内歩行可能,10分間の
エルゴメーターを1日3回実施)で除脂肪体
36 日本医事新報N0.4677奉2013.12.14
重の変化を比較検討した研究がある12).2週
間の除脂肪体重の減少は,安静臥床群I.10
±0.1kg,非安静群0.3=t=0.3kgと安静臥床
群で顕著であった.そのため,飢餓でも離床
や2~3メッツ以下の活動は制限しない.
(3)疾患によるサルコペニア
①侵 襲
異化期はレジスタンストレーニングによる
筋肉量増加を期待できないため,廃用性筋萎
縮の合併予防に離床と2~3メッツ以下の活
動を行う.同化期移行後,サルコペニア改善
を目標にレジスタンストレーニングを行う.
CRP 3mg/dL以下を同化期と考える目安が
ある.
②悪液質
終末期でない悪液質では,運動による抗炎
症作用で食欲や筋肉量が改善する可能性があ
るため,3~4メッツ程度の負荷でレジスタン
ストレーニングと持久性トレーニングを行う.
終末期の悪液質の場合,レジスタンストレー
ニングや持久性トレーニングは禁忌である.
●文献
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10.2340/16501977-1258[Epub ahead of
print]
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