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グループウェアを用いた 社会人学生向けオンライン専門ゼミの発言構造 The Structure of Utterances by Adult Learners for Online Professional Seminar with Groupware Application 中村 康則* 川上 祐子* 向後 千春** Yasunori Nakamura* Yuko Kawakami* Chiharu Kogo** 早稲田大学大学院人間科学研究科* 早稲田大学人間科学学術院** Graduate School of Human Sciences, Waseda University* Faculty of Human Sciences, Waseda University** <あらまし> 専門ゼミの授業は,スタディスキルやアカデミックライティングスキルを教 員から学生へと一方的に伝達するのではなく,ゼミ構成員間において協同で学習するといっ た性質が強い.そこで本報告では,通信教育課程に所属する社会人学生を対象とし,オンラ インゼミとして用いられているグループウェア上の発言構造と特徴を明らかにする.その上 で,現状のオンラインゼミ運営上の課題を抽出し,社会人学生のゼミ共同体における協同の 促進について検討する. <キーワード> ゼミ 共同体 グループウェア ネットワーク分析 計量テキスト分析 1. 序論 専門ゼミ(以下,ゼミと記述)の授業は,ス タディスキルやアカデミックライティングス キルを教員から学生へと一方的に伝達するの ではなく,ゼミの構成員間において協同で学 習するといった性質が強い.船曳(2005)は, ゼミの特徴として,構成員間で互いに論評す ることで,一人ではできなかった発見をする 旨を挙げている.また,毛利(2006)は,ゼミ の特徴として,教員と学生,あるいは学生同 士の結びつきが大変強く,学生がゼミを選ぶ ことはゼミ共同体の一員になることを意味す ると述べている.さらに,伏木田ほか(2013) によれば,ゼミを指導する教員は,ゼミを専 門教育の方法としてだけではなく共同体とし ても認識していること,専門性の習得を超え た価値をゼミに見出している可能性を示唆し ている.つまり,ゼミ授業は,ゼミ共同体に よる協同が重要な意味を持つと考えられる. しかし,ゼミ共同体における協同を,社会 人学生向けのオンラインゼミに適用するとな れば事情は異なる.社会人学生が仕事をしな がら,あるいは家事や育児をしながら大学の 授業を受けるのは決して容易なことではない (関ほか 2014).また,社会人学生は,学習時 間の確保が難しく,ゼミ構成員同士が遠隔地 に在住している場合もある.そのため,社会 人学生は,他のゼミ構成員と意見交換をした り,研究会や自主ゼミを行ったりすることが 難しい(近田 2008).さらに,社会人学生は, 既に複数の共同体による協同を経験している ため,ゼミの協同により得られる学習経験に 価値を見出していない可能性もある. そこで本報告では,通信教育課程に所属す る社会人学生を対象とし,オンラインゼミと して用いられているグループウェア上の発言 を分析することで,社会人学生のゼミ共同体 における協同の促進について検討する. 2. 方法 2.1. 分析対象としたゼミの概要 本報告では X 大学 Y 学部通信教育課程の Z ゼミを分析の対象とした.通信教育課程にお ける Z ゼミの構成員は,担当教員,教育コー チ,3年次の専門ゼミ科目学生,4年次の卒 業研究科目学生となる.教育コーチ(以下, コーチと記述)は,担当教員の研究分野と同じ, あるいは近い研究分野を持つ研究者が担って

中村康則 20160305 原稿8頁 ゼミ発言(修正) v1...中村康則・川上祐子・向後千春(2016.3)グループウェアを用いた社会人学生向けオンライン専門ゼミの発言構造『日本教育工学会研究報告集』JSET16-1,

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Page 1: 中村康則 20160305 原稿8頁 ゼミ発言(修正) v1...中村康則・川上祐子・向後千春(2016.3)グループウェアを用いた社会人学生向けオンライン専門ゼミの発言構造『日本教育工学会研究報告集』JSET16-1,

グループウェアを用いた 社会人学生向けオンライン専門ゼミの発言構造

The Structure of Utterances by Adult Learners for Online Professional Seminar with Groupware Application

中村 康則* 川上 祐子* 向後 千春** Yasunori Nakamura* Yuko Kawakami* Chiharu Kogo**

早稲田大学大学院人間科学研究科* 早稲田大学人間科学学術院** Graduate School of Human Sciences, Waseda University*

Faculty of Human Sciences, Waseda University** <あらまし> 専門ゼミの授業は,スタディスキルやアカデミックライティングスキルを教

員から学生へと一方的に伝達するのではなく,ゼミ構成員間において協同で学習するといっ

た性質が強い.そこで本報告では,通信教育課程に所属する社会人学生を対象とし,オンラ

インゼミとして用いられているグループウェア上の発言構造と特徴を明らかにする.その上

で,現状のオンラインゼミ運営上の課題を抽出し,社会人学生のゼミ共同体における協同の

促進について検討する. <キーワード> ゼミ 共同体 グループウェア ネットワーク分析 計量テキスト分析

1. 序論

専門ゼミ(以下,ゼミと記述)の授業は,ス

タディスキルやアカデミックライティングス

キルを教員から学生へと一方的に伝達するの

ではなく,ゼミの構成員間において協同で学

習するといった性質が強い.船曳(2005)は,

ゼミの特徴として,構成員間で互いに論評す

ることで,一人ではできなかった発見をする

旨を挙げている.また,毛利(2006)は,ゼミ

の特徴として,教員と学生,あるいは学生同

士の結びつきが大変強く,学生がゼミを選ぶ

ことはゼミ共同体の一員になることを意味す

ると述べている.さらに,伏木田ほか(2013)によれば,ゼミを指導する教員は,ゼミを専

門教育の方法としてだけではなく共同体とし

ても認識していること,専門性の習得を超え

た価値をゼミに見出している可能性を示唆し

ている.つまり,ゼミ授業は,ゼミ共同体に

よる協同が重要な意味を持つと考えられる. しかし,ゼミ共同体における協同を,社会

人学生向けのオンラインゼミに適用するとな

れば事情は異なる.社会人学生が仕事をしな

がら,あるいは家事や育児をしながら大学の

授業を受けるのは決して容易なことではない

(関ほか 2014).また,社会人学生は,学習時

間の確保が難しく,ゼミ構成員同士が遠隔地

に在住している場合もある.そのため,社会

人学生は,他のゼミ構成員と意見交換をした

り,研究会や自主ゼミを行ったりすることが

難しい(近田 2008).さらに,社会人学生は,

既に複数の共同体による協同を経験している

ため,ゼミの協同により得られる学習経験に

価値を見出していない可能性もある. そこで本報告では,通信教育課程に所属す

る社会人学生を対象とし,オンラインゼミと

して用いられているグループウェア上の発言

を分析することで,社会人学生のゼミ共同体

における協同の促進について検討する.

2. 方法

2.1. 分析対象としたゼミの概要

本報告では X大学 Y学部通信教育課程の Zゼミを分析の対象とした.通信教育課程にお

ける Z ゼミの構成員は,担当教員,教育コー

チ,3年次の専門ゼミ科目学生,4年次の卒

業研究科目学生となる.教育コーチ(以下,

コーチと記述)は,担当教員の研究分野と同じ,

あるいは近い研究分野を持つ研究者が担って

中村康則・川上祐子・向後千春(2016.3)グループウェアを用いた社会人学生向けオンライン専門ゼミの発言構造『日本教育工学会研究報告集』JSET16-1, Pp.437-444
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おり,資格は修士号取得者である(西村・向後 2015).Z ゼミにおいては,コーチは担当教員

の補佐的役割を担う.専門ゼミ科目は卒業研

究を実施する際に必要なスキルを身につける

ための科目であり,卒業研究科目は専門ゼミ

科目と同様の指導体制に従い,教員のアドバ

イスをもとに設定したテーマで卒業研究を実

施し,卒業論文としてまとめ上げるための科

目である(西村・向後 2015).Z ゼミにおける

専門ゼミ科目と卒業研究科目の進め方を表1

に示す. また,Z ゼミでは,通信教育課程のゼミ運

営にサイボウズ株式会社が開発したグループ

ウェアとなる「サイボウズ Live」を利用して

いる(中村・向後 2014).対面でのスクーリン

グ(はじめのスクーリング,ワールドカフェ,

ゼミ研究発表会など)を除き,教員・コーチか

らの指導,ゼミ構成員間における議論,研究

資産の共有,研究の進捗管理,連絡などは,

すべてサイボウズ Live 上で実施される.

2.2. 分析対象とした発言データ

発言データの分析対象期間は 2011 年 4 月

から 2015 年 9 月までの 4 年半とした.期間

中の発言者は,教員が2人,教育コーチが 13人,学生が 28 人の計 41 人であった.教員の

うち1人は担当教員がサバティカル研修の期

間中に配属された非常勤講師であった(ただ

し,サバティカル研修期間中であっても,担

当教員はグループウェア上で発言していた).学生は 28 人全員が社会人であり,その年代

は 30 代から 60 代までであった.分析の対象

期間を 2011 年 4 月から 2015 年 9 月までと

したため,2011 年度から 2013 年度までにゼ

ミに所属した学生の発言は2年分であり,

2014 年度の発言は 1.5 年分であった.各年度

の発言総数を表2に示す. 表2 構成員の発言総数

ゼミに所属した年度

教員 人数

コーチ 人数

学生 人数

発言 総数

2011 年度 2 3 6 3,823 2012 年度 1 4 9 7,200 2013 年度 1 2 6 3,1702014 年度 1 3 7 2,844

計 17,037

2.3. 手続き

グループウェア上の発言記事は,独自の

Web スクレイピングプログラムを開発し,テ

キスト文書として扱えるようデータ化した.

取得可能なデータは「トピック名称」「発言

番号」「発言日時」「発言者氏名」「宛先氏

名」「発言内容」「(添付ファイルがある場合

は)添付ファイル名のリスト」とした.その際,

返信に関しては,サイボウズ Live から,返

信発言番号(例:>10 への返信)を取得する

ことで,宛先氏名を特定できるようにした.

表1 Z ゼミにおける専門ゼミ科目・卒業研究科目の進め方 科目 時期 イベント 内容

専門ゼミⅠ

3年次 4月

はじめのスクーリング (対面)

ゼミメンバー紹介.全員が卒業研究の計画について発表する.教員・コーチ,学生同士の議論を通じて,計画を洗練させる.

3年次 4~8月

演習 (オンライン)

全 15 回のオンライン演習を行い,卒業研究に必要なスキルを学ぶ.プレミニ卒論(20 ページ以上),要旨,ポスター原稿を作成する.

3年次 8月

ワールドカフェ (対面)

プレミニ卒論の内容についてポスター発表を行う.発表を通して,研究内容を修正,発展させる.

専門ゼミⅡ

3年次 9月

はじめのスクーリング (対面)

翌年1月に実施される研究発表会に向けた研究計画を発表する.議論を通して,研究計画を洗練させる.

3年次 9~1月

演習 (オンライン)

各自の研究計画に従い,ミニ卒論(40 ページ以上),要旨,ポスター原稿を作成する.教員・コーチは研究の進捗を管理し,指導を行う.

3年次 1月

ゼミ研究発表会 (対面)

ミニ卒論の内容についてポスター発表を行う.発表を通して,研究内容を修正,発展させる.

卒業研究Ⅰ

4年次 4月

はじめのスクーリング (対面)

8月に実施されるワールドカフェに向けた研究計画について発表する.議論を通して,研究計画を洗練させる.

4年次 4~8月

卒業研究 (オンライン)

各自の研究計画に従い,プレ卒論(40 ページ以上),要旨,ポスター原稿を作成する.教員・コーチは研究の進捗を管理し,指導を行う.

4年次 8月

ワールドカフェ (対面)

プレ卒論の内容についてポスター発表を行う.発表を通して,研究内容を修正,発展させる.

卒業研究Ⅱ

4年次 9月

はじめのスクーリング (対面)

翌年1月に実施される口頭試問に向けた研究計画について発表する.議論を通して,研究計画を洗練させる.

4年次 9~1月

卒業研究 (オンライン)

各自の研究計画に従い,卒論(50 ページ以上),要旨,ポスター原稿を作成する.教員・コーチは研究の進捗を管理し,指導を行う.

4年次 1月

ゼミ研究発表会 (対面)

卒論の内容について口頭発表を行う.発表を通して,口頭試問に向けた最終調整を行う.

4年次 1月下旬

口頭試問 (対面)

口頭試問.これに合格すれば卒業となる.

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しかし,返信者がサイボウズ Live の返信機

能を用いていない場合は,返信発言番号が存

在しないため,それが新規の発言なのか,あ

るいは返信の発言なのかが不明となる.その

ため,本 Web スクレイピングプログラムで

は,発言内容に書かれた氏名やニックネーム

の情報から,宛先氏名を自動で類推できるよ

うにした.また,新規の発言であっても,宛

先が明記されている場合には,それを宛先氏

名として用いるようにした. その後,テキスト化された発言データを用

いて,統計分析,ネットワーク分析,計量テ

キスト分析を実施した.統計分析とネット

ワーク分析には,統計解析ソフトウェアであ

る「R 3.2.3」と,ネットワーク解析用ライブ

ラリ「igraph 1.0.0」を用いた.また,計量テ

キスト分析には「KH Coder 2.00f」を用いた.

3. 結果

3.1. 構成員間の発言構造

2011から 2014年度までのゼミ構成員間の

発言に関し,発言者と宛先を分類したところ,

「学生から教員・コーチへの発言」が 44.4%,

「教員・コーチから学生への発言」が 40.6%,

「学生同士の発言」が 3.7%,「その他の発言(自分から自分への発言,メモ等)」が 11.3%と

なった(図1).

学生から

教員・

コーチへの

発言

44.4%

教員・

コーチから

学生への

発言

40.6%

学生同士の

発言

3.7%

その他

11.3%

図1 発言の比率

図1の分類に差があるかどうかを調べるた

め,カイ二乗検定を行ったところ,分類に有

意な差が認められた(χ2(3)=50.44, p <.01).さらにライアンの名義水準を用いた多重比較

を行ったところ,「学生から教員・コーチへ

の発言」と「教員・コーチから学生への発言」

が「学生同士の発言」と「その他の発言」に

くらべ,発言数が有意に多かった(p <.01).こ

の結果から,ゼミ構成員間の発言は,教員・

コーチと学生間が主であり,学生同士の発言

は少ないことが判明した. 次に,ゼミ構成員間の発言構造を分析する

ためネットワーク分析を行った.本分析では,

図1の結果より,教員・コーチから学生への

発言数と,学生から教員・コーチへの発言数

に違いがみられなかったため,作成するネッ

トワーク図は「無向グラフ」かつ「重みあり

グラフ」とした(図2). 図中,○印で表現されたノードはゼミ構成

員を示す.P は担当教員,T は担当教員がサ

バティカル研修期間中に配属された非常勤講

師,C1 から C11 までがコーチ,S1 から S28までが学生である.C や S の後に続く数字は

個人毎に割り当てた番号であるため,たとえ

ば 2011 年度の C1 と 2012 年度の C1 は同じ

コーチとなる.また,2つのノード間を接続

する線はエッジと呼ばれ,この線がノード間

で交わされた発言数を表す.エッジの太さは

発言数に比例させたため,線が太いほど発言

が活発に交わされたことになり,線が細けれ

ばあまり発言が交わされなかったことになる.

さらに,ノードの大きさは,ネットワークの

固有ベクトル中心性の値に比例させている.

固有ベクトル中心性とは,あるノードの中心

性を評価するときに,そのノードと隣接する

ノードの中心性を反映させたものである(鈴木 2009).そのため,固有ベクトル中心性は,

仲間関係の多い他者とつながることによる集

団での影響力を示す指標として利用される

(神戸・山本 2008).つまり,ノードのサイズ

が大きいほど,ゼミ共同体において強い影響

力を持つことが考えられる.固有ベクトル中

心性の結果を表3に示す. エッジの太さに着目すると,ゼミ構成員間

の発言は,教員・コーチと学生との間のコミュ

ニケーションが主であり,学生同士の発言は

少ないことが判明した.これは図1の結果と

同様である.また,学生間の発言は総じて低

調であり,特定の学生同士の発言のみが多い

といったケースも見当たらなかった.さらに

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ノードの大きさに注目すると,ゼミ共同体に

おいて強い影響力を持つのはコーチであるこ

とが分かる(C1,C5,C7,C10).また,学生

のノードの中にはコーチと同等にサイズが大

きなノードがある一方で,小さいノードもみ

られるなど,ばらつきが大きい.加えて,年

度を重ねるに従い,学生の影響力が弱まって

いることも明らかとなった.

3.2. 発言が多い曜日と時間帯

社会人学生は仕事や家事を優先することか

ら,学習のタイミングが個々により異なる可

能性がある.そのため,学習のタイミングを

調査する目的から,グループウェア上の発言

が多い曜日と時間帯を算出した. まず,学生と教員・コーチの発言数に対し,

曜日の偏りを調べるため,カイ二乗検定を

行ったところ,有意な差が認められた(学生:

χ2(6)=747.48, p <.01,教員・コーチ:χ2(6)= 383.76, p <.01)(図3).ライアンの名義水準を

用いた多重比較を行ったところ,学生と教

員・コーチ共に日曜日の発言数が他の曜日の

発言数にくらべ有意に多かった(p <.01).

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

月 火 水 木 金 土 日

発言数

発言した曜日

学生 教員・コーチ

図3 発言した曜日

2011 年度にゼミに所属した構成員 2012 年度にゼミに所属した構成員

2013 年度にゼミに所属した構成員 2014 年度にゼミに所属した構成員

図2 ゼミ構成員間の発言ネットワーク

表3 ゼミ共同体の固有ベクトル中心性

順位 2011 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度

ノード 固有 V ノード 固有 V ノード 固有 V ノード 固有 V

1 C1 1.000 C5 1.000 C7 1.000 C10 1.0002 S4 0.940 C1 0.965 S21 0.649 S28 0.5333 S3 0.800 S9 0.818 S16 0.490 S22 0.5044 P 0.750 S7 0.758 S19 0.481 S23 0.4455 C2 0.698 S14 0.743 S18 0.384 S26 0.3766 S2 0.545 P 0.742 P 0.326 S24 0.3487 T 0.538 C4 0.566 S20 0.249 S27 0.3468 S1 0.526 S12 0.471 S17 0.235 P 0.2479 C3 0.500 S13 0.427 C8 0.016 C9 0.20510 S6 0.438 S8 0.423 S25 0.15011 S5 0.362 S11 0.377 C11 0.08312 C6 0.350 13 S15 0.306 14 S10 0.280

S15 S10

C8

S17

S18

S20

C11

C9

S24

S25

P

S26 S27

P

S5

S6

C6

S11

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また,発言が多い時間帯を調査したところ,

23 時台を中心に発言が多いことが判明した

(図4).

0

500

1,000

1,500

5 6 7 8 910

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23 0 1 2 3 4

発言数

発言した時間帯

学生 教員・コーチ

図4 発言した時間帯

3.3. 返信に要した時間

グループウェアは非同期型コミュニケー

ションであるため,対面型のコミュニケー

ションにくらべ困難感を抱くケースが多い.

そのため,発言に対する返信に要した時間を

測定した.その結果,学生から教員・コーチ

への発言時間の累積パーセントは,15 分未満

が 17.5%,1時間未満が 39.8%,1日未満が

89.0%であった.また,教員・コーチから学

生への返信時間に関しては,15 分未満が

18.6%,1時間未満が 41.7%,1日未満が

92.0%であった(表4).

3.4. 学生から教員・コーチへの発言内容

学生から教員・コーチへの発言内容を把握

するため,クラスター分析を実施した.分析

対象とするテキストデータは,学生から教

員・コーチへの発言に限定した上で,「特定

の単語が頻出する質問項目リスト」の発言を

除くものとした.形態素解析を実施した結果,

全体で 798,144 種類,分析対象として

158,578 種類の単語が抽出された.その後,

発言内容の把握に適する「名詞」「形容詞」

「動詞」の各品詞を対象とし,クラスター分析

を実施した.クラスターの数は,樋口(2014)の方針に従い,クラスター併合水準の値の変

化を考慮しつつ,データの要約が目的なので

クラスター数が多すぎないこと,また,分析

結果の解釈のしやすさを総合的に判断し,17に設定した(表5). 各クラスターを解釈すると,クラスター

C10,C13 には「研究」「計画」「RQ」などの

研究計画に関する用語が分類された.C2,C7,C8,C11,C12 には「質問紙調査」「実験」「イ

ンタビュー」などの研究方法に関する用語が

集まっていた.C1,C4,C5,C6 は「分散分

析」「因子分析」「相関」などの分析手法に関

する専門用語で構成されていた.C16,C17には「図」「表」「文章」「序論」「結論」など,

卒業論文の校正に関する論文指導の用語が分

類された.さらに,C9 は文献調査法,C3 は

ソフト使用法,C15 は研究発表,C14 は進捗

報告に関する用語で構成された. 上記の解釈から,学生から教員・コーチへ

の発言は「研究計画」「研究方法」「分析方法」

「論文指導」「文献調査法」「ソフト使用法」「研

究発表」「進捗報告」の8種類に要約できよう.

3.5. 教員・教育コーチから学生への発言内容

教員・コーチから学生への発言内容を把握

するため,クラスター分析を実施した.形態

素解析を実施した結果,全体で 853,686種類,

分析対象として 168,984種類の単語が抽出さ

れた.樋口(2014)の方針に従い,クラスター

数を 15 に設定した(表6). 各クラスターを解釈すると,クラスターC4

には「計画」「RQ」「トピック」などの研究計

画に関する用語が分類された.C1,C14 には

「アンケート」「インタビュー」などの研究方

法に関する用語が集まっていた.C2,C3,C12,C13,C15 は「カテゴリ」「分散分析」

「有意差」「因子分析」などの分析手法に関す

る専門用語で構成されていた.C8,C11 には

表4 返答に要した時間

返信に要した時間

学生から 教員・コーチ

教員・コーチから学生

頻度

割合(%)

累積(%)

頻度

割合(%)

累積(%)

15 分未満 764 17.5 17.5 901 18.6 18.6 15 分以上 30 分未満 480 11.0 28.5 523 10.8 29.5 30 分以上 1 時間未満 494 11.3 39.8 592 12.2 41.7 1 時間以上 2 時間未満 487 11.1 50.9 528 10.9 52.6 2 時間以上 3 時間未満 245 5.6 56.5 302 6.2 58.9 3 時間以上 6 時間未満 410 9.4 65.9 510 10.6 69.4 6 時間以上 12 時間未満 543 12.4 78.4 652 13.5 82.9 12 時間以上 1 日未満 464 10.6 89.0 437 9.0 92.0 1 日以上 2 日未満 243 5.6 94.6 191 4.0 95.9 2 日以上 3 日未満 65 1.5 96.0 59 1.2 97.1 3 日以上 4 日未満 41 0.9 97.0 51 1.1 98.2 4 日以上 5 日未満 30 0.7 97.7 16 0.3 98.5 5 日以上 6 日未満 20 0.5 98.1 21 0.4 99.0 6 日以上 7 日未満 27 0.6 98.7 17 0.4 99.3 7 日以上 55 1.3 100.0 33 0.7 100.0

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「図」「表」「文章」「考察」「意味」「表記」など,

卒業論文の校正に関する論文指導の用語が分

類された.さらに,C7,C10 は文献調査法,

C9 はソフト使用法,C5 は研究発表,C6 は

研究成果物の確認に関する用語で構成された. これらの解釈から,教員・コーチから学生

への発言は「研究計画」「研究方法」「分析方

法」「論文指導」「文献調査法」「ソフト使用法」

「研究発表」「研究成果物の確認」の8種類に

要約できよう.

3.6. 学生同士の発言内容

学生同士の発言内容を把握するため,クラ

スター分析を実施した.形態素解析を実施し

た結果,全体で 59,800 種類,分析対象とし

て 11,310 種類の単語が抽出された.樋口

(2014)の方針に従い,クラスター数を 16 に設

定した(表7).

表5 学生から教員・コーチへの発言に頻出していた語のクラスター分析結果

要因 472 分析 2316 実験 607 研究 2683 進める 441 表 364分散分析 372 項目 2181 学習 546 作成 927 遅い 413 図 243

因子 1752 課題 501 発表 568 大変 300 グラフ 222尺度 1401 予定 417 計画 452 作業 299

フェイス 342 データ 1251 実施 394 ゼミ 447 年齢 291シート 308 因子分析 894 検討 378 学期 417 女性 276 コメント 903

関係 579 状況 324 スクーリング 255 RQ 270 考察 717相関 544 目的 315 ポスター 227 頑張る 266 書く 613

添付 531 削除 500 影響 302 テーマ 253 アップ 595記載 475 逆転 301 設定 274 相談 227 卒論 554検定 448 負荷 204 効果 257 文字 542 作る 220 チェック 443使う 447 情報 239 概念 391 入る 216 変更 440ファイル 292 評価 223 インタビュー 367 出来る 215 指摘 438使用 289 調査 1063 質問紙調査 219 カテゴリ 324 参加 206 追加 370SPSS 266 回答 752 用いる 215 関連 285 不安 203 文章 334有意差 240 協力 498 明らか 214 構成 237 資料 201 序論 301EXCEL 238 アンケート 443 授業 208 信頼 209 整理 201 ミニ卒論 281記述 232 REAS 407 対応 197 見直し 237統計 209 入れる 384 訂正 237

質問項目 364 論文 781 質問 1051 完成 214質問紙 364 文献 537 考える 1030 報告 535 結論 213

α 489 文 244 アドバイス 527 方法 802 進捗 390係数 317 予備 215 参考 440 見る 584 スケジュール 209

ページ 197 読む 431 理解 439先行研究 370 教える 410

得点 382 卒業 331 出る 372 修正 2603下位 253 引用 297 説明 331 提出 2151平均 248 検索 233 良い 311 確認 1761

意味 232 要旨 827出す 206 スライド 622聞く 201違う 197

C14(進捗報告)C4(分析方法)

C5(分析方法) C15(研究発表)

C2(研究方法)C17(論文指導)

C3(ソフト使用法)

C11(研究方法)

C7(研究方法)

C9(文献調査法)

C16(論文指導)

C12(研究方法)

C1(分析方法) C6(分析方法) C8(研究方法) C10(研究計画) C13(研究計画)

数値はそれぞれの語の出現回数

表6 教員・コーチから学生への発言に頻出していた語のクラスター分析結果

質問 1023 報告 278 文献 477 考察 876 検定 949 分析 2248回答 826 情報 276 引用 431 チェック 714 要因 633 項目 2086調査 630 スクーリング 274 記述 623 分散分析 602 因子 1585質問項目 460 トピック 271 読む 590 EXCEL 435 データ 1369協力 383 作業 266 表 759 説明 545 統計 395 尺度 1150インタビュー 328 RQ 262 図 447 文章 541 平均 367 因子分析 942アンケート 323 調べる 255 タイトル 407 良い 520 有意 351 関係 651REAS 240 頑張る 246 ページ 398 目的 514 有意差 342 相関 608実施 225 予定 244 番号 397 例 495 群 268 得点 526

追加 243 グラフ 299 文字 484 差 268 削除 471教える 234 本文 280 検討 410 計算 260 負荷 333

カテゴリ 426 検索 228 半角 268 文 384 年齢 249 逆転 322概念 402 数字 257 意味 366 女性 248 下位 292関連 289 統一 257 PDF 352 対応 236 出す 230

発表 686 不要 225 入る 349 分ける 228 SPSS 227スライド 630 スペース 223 変更 315

変数 281 印刷 301 記載 311分散 274 ポスター 236 表記 306 α 433モデル 250 ファイル 551 指摘 302 係数 310

添付 411 質問紙 291確認 1683 設定 377 使用 286

考える 720 修正 1489 表示 316 示す 250 シート 313作成 646 コメント 1321 設問 270 分かる 249 フェイス 274実験 606 提出 1088 WORD 254 用いる 241計画 450 要旨 843 構成 240課題 413 入れる 644 ミニ卒論 234進める 379 アップ 637 研究 2595 受ける 231学習 360 ゼミ 593 書く 1301 表現 227学期 343 卒論 526 方法 1149 書き方 224効果 316 完成 299 使う 942理解 311 論文 914影響 307 見る 874先行研究 306 参考 733作る 301 出る 606

C2(分析方法)

C7(文献調査法)

C8(論文指導)

C13(分析方法)

C14(研究方法)

C5(研究発表)

C6(研究成果物の確認)

C10(文献調査法)

C3(分析方法)

C12(分析方法)C1(研究方法) C11(論文指導) C15(分析方法)

C9(ソフト使用法)

C4つづき

C4(研究計画)

数値はそれぞれの語の出現回数

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各クラスターを解釈すると,クラスターC7には「調査」「目的」などの研究計画に関する

用語が分類された.C5,C11 には「質問紙調

査」「研究」「方法」などの研究方法に関する

用語が集まっていた.C6,C12 は「尺度」「分

析」「因子分析」などの分析手法に関する専門

用語で構成されていた.C10,C16 には「ペ

ア」「ワーク」「指摘」「チェック」など,ペア

ワークに関する用語が分類された.C1,C2,C3 には「図表」「番号」「引用」「数字」「文章」

「書き方」など,卒業論文の校正に関する論文

指導の用語が分類された.さらに,C4 はソ

フト使用法,C14 は研究発表,C9 は情報共

有,C13 は進捗報告,C8 はワールドカフェ

やゼミ研究発表会のイベント役割分担,C15は励ましに関する用語で構成された. これらの解釈から,学生同士の発言は「研

究計画」「研究方法」「分析方法」「ペアワーク」

「論文指導」「ソフト使用法」「研究発表」「進

捗報告」「情報共有」「イベント役割分担」「励

まし」の 11種類に要約することができよう.

4. 考察

これまで述べた結果より,社会人学生のゼ

ミ共同体による協同について考察する. まずは,グループウェアの返信に要した時

間である.返信に要した時間の累積パーセン

トは,1時間未満が約4割であり,1日未満

が約9割であった.これは Z ゼミのガイドラ

インである「返信は1日以内に返す」が遵守

されている結果と推察できる.しかし,この

返信時間をもってしても,議論が1~2回の

発言で収束しない場合は,決着までにかなり

の日数を要することになる.これでは,グルー

プウェア上での議論を避けることになるだろう. その一方で,発言の多い時間帯は 23 時台

を中心に分布していた.社会人学生は,その

背景が千差万別であることから,学習する時

間帯も異なると推測していた.しかし,結果

は異なっていた.このことから,社会人学生

であっても,ゼミの学習タイミングを揃える

ことは不可能ではなく,Skype などの同期型

コミュニケーションツールを適用できる可能

性が示唆された. つぎに,ゼミ構成員間の発言構造について

考察する.構成員間の発言は,教員・コーチ

と学生間の発言が主であり,学生同士の発言

は少なかった.このことから,Z ゼミにおい

ては,教員・コーチと学生が1対1の個別指

導体制となっていることが伺える.また,教

員・コーチと学生間の発言内容は,クラスター

分析の結果から「研究計画」「研究方法」「分

析方法」「論文指導」「文献調査法」「ソフト使

用法」「研究発表」「研究成果物の確認」「進捗

表7 学生同士の発言に頻出していた語のクラスター分析結果

文献 34 表示 47 尺度 57 情報 31 データ 83 頑張る 57変更 26 ファイル 42 検討 20 説明 23 分析 75 良い 46基本 26 EXCEL 37 因子 20 学習 22 使う 39 お互い 24本文 22 グラフ 36 関連 17 難しい 20 因子分析 34 実験 24PDF 22 入力 31 分かる 20 読む 33 語る 15領域 22 設定 31 共有 15 入れる 33図表 21 保存 30 調査 77 教える 32削除 19 クリック 22 目的 29 理解 23 確認 124統一 18 選択 21 明らか 23 ワーク 25 ページ 19 チェック 94番号 17 指定 18 反応 23 ペア 20 参考 90引用 17 サイト 18 用いる 21 コメント 88序論 15 コピー 17 使用 21 インタビュー 39 修正 87

貼る 17 信頼 19 研究 155 実施 28 要旨 71範囲 17 利用 16 協力 75 状況 19 提出 34

半角 28 方法 72 予定 19 卒論 29数字 27 質問 45 見える 18 大変 27スペース 15 回答 106 作成 54 発表 45 違う 17 遅い 26全角 15 項目 103 考える 47 写真 37 報告 16 添付 25

アンケート 62 意見 31 見る 37 助かる 20女性 27 運営 29 出る 33 指摘 19

文字 51 フェイス 20 シート 28 質問紙 29 アップ 43 資料 19論文 45 年齢 19 出来る 27 課題 24 部屋 25 気づく 17書く 43 関係 18 印刷 25 質問項目 23 スライド 23 サイボウズ 16レベル 37 答える 16 担当 23 目 22 PC 21 WORD 15文章 32 要因 15 作業 20 言う 20 個人 18 受ける 15表記 31 記述 15 委員 19 検証 19 入る 15参照 28 場所 15 行く 16 アドバイス 18文 24 質問紙調査 15 進行 15 参加 17背景 23 環境 17書き方 16 一緒 16

相談 16

C1(論文指導) C4(ソフト使用法) C6(分析方法) C9(情報共有) C12(分析方法) C15(励まし)

C5(研究方法) C8(イベント役割分担)

C3(論文指導) C14(研究発表)

C7(研究計画)C16(ペアワーク)

C10(ペアワーク)

C13(進捗報告)C11(研究方法)

C2(論文指導)

数値はそれぞれの語の出現回数

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報告」となっており,これらは卒業研究を成

立させるために重要な知見となろう.ネット

ワーク図を参照すれば,2011 年と 2012 年の

学生は複数の教員・コーチから指導を受ける

機会に恵まれていた.しかし,2013 年以降で

は,1名のコーチがその役を担っていた.こ

の状態は,社会人学生が卒業研究を成立させ

る上で高いリスクとなるだろう.なぜなら,

コーチとの関係が研究上の命綱となるからで

ある.この問題を是正するためには,コーチ

を複数人体制とした上で,どのコーチにも気

軽に相談できるよう配慮すべきである.また,

この体制とすることで,学生と教員・コーチ

間の協同をより密にできると推察する. 一方,学生同士の発言内容は,クラスター

分析の結果から「研究計画」「研究方法」「分

析方法」「ペアワーク」「論文指導」「ソフト使

用法」「研究発表」「進捗報告」「情報共有」「イ

ベント役割分担」「励まし」で構成されていた.

これらの発言の大半は,教員・コーチからの

ペアワーク指示によるものであった.しかし,

SPSS などの「ソフト使用法」や,引用文献

などの「情報共有」の2点に関しては,発言

数は少ないものの,学生が自主的に発言して

いた.このことから,類似の研究テーマを研

究している学生同士,あるいは同じ研究方法

を用いている学生同士がサブグループを形成

し,そこにコーチも所属するような体制を構

築すれば,協同をより促進できる可能性があ

る.協同が自分の研究に役立つのであれば,

学習時間の短さという社会人学生の問題を乗

り越え,協同に励むのではないかと推察する.

5. 結論

本報告では,通信教育課程に所属する社会

人学生向けのオンラインゼミ上での発言を分

析することで,ゼミ共同体における協同の促

進について検討した.検討の結果は,以下の

3点に集約できる. 1) 社会人学生であっても,ゼミ授業の学習タ

イミングを揃えることは不可能ではなく,

同期型コミュニケーションツールを適用

できる可能性が示唆された.同期型コミュ

ニケーションツールの適用は,より協同を

促進させるであろう. 2) コーチを複数人体制とした上で,学生がど

のコーチにも気軽に相談できるよう配慮

すれば,学生と教員・コーチ間の協同がよ

り促進される可能性がある.また,この体

制の構築は,学生の研究が不成立となるリ

スクを低減できよう. 3) 類似の研究テーマや,同じ研究方法を用い

ている学生同士がサブグループを形成し

た上で,そのグループにコーチも所属する

ような体制を構築すれば,協同がより促進

される可能性がある.

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