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平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における原子力政策等動向調査) 調査報告書 平成 29 年 3 月 株式会社 三菱総合研究所

平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

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Page 1: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

平成 28年度発電用原子炉等利用環境調査

(諸外国における原子力政策等動向調査)

調査報告書

平成 29年 3月

株式会社 三菱総合研究所

Page 2: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

本報告書は経済産業省資源エネルギー庁殿からの委託事業として株式会社三菱総合研究所

が実施した「平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査(諸外国における原子力政策等動向

調査)」の成果をとりまとめたものです。

したがって、本報告書の複製、転載、引用等には経済産業省資源エネルギー庁殿の承認手

続きが必要です。

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目次

はじめに ................................................................................................................................. 5

1. 随時提供した情報の一覧 ................................................................................................. 6

1.1. 即時的に提供した情報 ............................................................................................. 6

1.1.1. 北米・南米 ........................................................................................................ 6

1.1.2. 欧州(西) ....................................................................................................... 11

1.1.3. 欧州(東) ...................................................................................................... 16

1.1.4. 旧ソ連諸国 ...................................................................................................... 16

1.1.5. アジア ............................................................................................................. 18

1.1.6. 中東・アフリカ ............................................................................................... 22

1.2. 重要動向として提供した情報 ................................................................................ 24

1.2.1. 北米・南米 ...................................................................................................... 24

1.2.2. 欧州(西) ...................................................................................................... 25

1.2.3. 欧州(東) ...................................................................................................... 28

1.2.4. 旧ソ連諸国 ...................................................................................................... 29

1.2.5. アジア ............................................................................................................. 29

1.2.6. 中東・アフリカ ............................................................................................... 31

2. 参考情報---分析レポート ............................................................................................... 32

3. 資料とりまとめの一覧 ................................................................................................... 36

(1) 諸外国における原子力発電プロジェクトの資金調達の方法について ....... 36

(2) 英国での原子炉運転期間の延長認可について ........................................... 51

(3) 欧州委員会(EC)の PINC 報告書について ............................................. 54

(4) 中国・ロシア製原子炉の国外進出状況 ...................................................... 56

(5) 脱原子力国の Pu 管理方針について ........................................................... 58

(6) 各国の高速炉開発体制(原型炉以降) ...................................................... 61

(7) 中露からイランへの原子炉の輸出等の検討状況について ......................... 62

(8) フランスの原子力発電所におけるストについて ........................................ 66

(9) IAEA 低濃縮ウラン備蓄構想の状況について ........................................... 67

(10) 英国における一般設計評価(GDA)と新設候補サイトに対する戦略的サ

イト評価(SSA)の進捗状況 .................................................................................... 69

(11) 仏フラマンヴィル 3 号機の建設遅延に影響した規制要件の強化について

70

(12) ウレンコ社の株式売却に関するオランダ議会情報について .................. 72

(13) EURATOM 条約からの脱退について---英国の EU 脱退に関連して ..... 74

(14) IAEA の低濃縮ウランバンク構想の経緯と日本の関与について ........... 76

(15) 米国・共和党、民主党の大統領候補等の原子力発電に対するスタンス等

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について 80

(16) 米国の原子力関連事業への外資参入規制について ................................. 85

(17) 中国・江蘇省連雲港市における燃料サイクル施設のサイト選定について

87

(18) 米国の新設計画について ......................................................................... 90

(19) 米国の電力自由化の最新状況について ................................................... 95

(20) 中国製炉の輸出に向けた動向 ................................................................. 96

(21) 台湾における電気事業法の改正案について............................................ 98

(22) ウレンコ社の株式売却に関するオランダ議会情報について ................ 100

(23) ウレンコへの西独民間出資に係る経緯 ................................................. 103

(24) スイス国民投票:「新設禁止・既存炉運転制限なし」を選択について 106

(25) ドイツ(周辺)における電力の売買量及び物理的流入・流出量について

108

(26) 仏大統領選挙に向けた各党・候補者の対原子力スタンス ..................... 114

(27) ドイツの原子力発電所廃止措置コスト試算:試算対象のユニット一覧

115

(28) ヴォーグル・サマー費用見積等 ............................................................. 117

(29) ヴォーグル費用見積等 .......................................................................... 121

(30) サマー費用見積等 .................................................................................. 125

(31) H.R.590 法案の内容について ............................................................... 129

(32) 韓国第 5 次原子力振興計画について .................................................... 130

(33) インドのサイクル政策 .......................................................................... 133

(34) DOE の FY2017 予算要求における原子力 R&D 費用の詳細 .............. 136

4. 国別プロファイル ........................................................................................................ 144

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はじめに

本報告書は経済産業省資源エネルギー庁殿からの委託事業として株式会社三菱総合研究

所が実施した「平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査(諸外国における原子力政策等動

向調査)」における調査成果をまとめたものである。

本調査では、諸外国の原子力政策、原子力産業界の動向や核不拡散政策等を適時・適切に

幅広く情報収集・分析し、我が国の原子力政策の立案・発信に資することを目的として調査

を行った。

本事業では、諸外国(全世界 40 ヶ国程度)の原子力関連機関の公開情報等について情報

を収集し、経済産業省資源エネルギー庁殿へ、メールを用いて即時的な情報、及びより詳細

な検討が必要な案件については背景情報なども踏まえた重要情報として情報提供を実施し

ている。また、これら調査項目の参考情報や経緯等についても、原子力政策の立案に資する

ものとして必要とされる範囲で整理・提供を行っている。本報告書では、以上の随時提供し

た情報について国別に報告を行っている。

また、海外の原子力動向のうち特に重要と考えられる事項につき、重点的に調査を実施し、

経済産業省資源エネルギー庁殿に報告した成果も本報告書内に反映されている。

更には、調査対象国・地域の原子力動向をより良く把握できるようにするために、各国の

基本情報、エネルギー政策・計画、原子力政策・計画(エネルギー政策における原子力の位

置付け、燃料サイクル政策等)、原子力関連動向(新規原子炉建設計画、対外協力関係等)

をまとめ、国別プロファイルとして整理し報告している(別添ファイル参照)。また、原子

力利用先進国の中で、我が国の原子力産業の国際展開において競合国となるフランス、韓国、

ロシア及び中国の海外進出に係る最新動向などについてもまとめている。

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1. 随時提供した情報の一覧

本章では、当該期間において、資源エネルギー庁殿へ随時、メールベースで提供した①即

時的情報(1.1)、②重要情報(1.2)について、そのタイトル一覧をそれぞれ国別、時系列

に報告する。

1.1. 即時的に提供した情報

1.1.1. 北米・南米

米国

2016.03.22 米 NRC スタッフ、2020 年に向けた組織規模の適正化のために短期・長

期で取り組む効率化策を提示

2016.03.23 米産業界、原子力プラントの効率性等の向上のためのイニシアチブで取り

組む具体策を一部公開

2016.04.01 米ウィスコンシン州、原子炉建設のモラトリアムを撤廃

2016.04.05 英サイズウェル B で同国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

2016.04.11 米エナジー・ソリューションズ社、環境修復や廃棄物処理・処分に係る事

業の英 Atkins 社への売却を完了

2016.04.14 米エクセロン社、運転継続が危ぶまれるクリントンの恒久停止判断を 1

年先伸ばし---容量市場オークションの結果を踏まえ

2016.04.14 米韓両国、原子力ハイレベル委員会の第 1 回会議をソウルで開催

2016.04.18 米 GE と日立、レーザー濃縮プラントの商業化事業から撤退へ

2016.04.20 米連邦議会上院、包括的なエネルギー政策近代化法案を可決

2016.04.20 日本原電、敦賀 1 号機の廃止措置で米エナジーソリューションズ社と協

力合意

2016.04.27 米 NRC、原子炉等の外国支配規制に関する標準審査計画案を発表

2016.04.27 米 NEI の世論調査、電源としての原子力利用を 67%が支持

2016.04.28 米 WCS 社、テキサス州での中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請

を NRC に提出

2016.05.05 米 TVA、ベルフォント原子力発電所の売却を発表

2016.05.05 米 NRC、ユッカマウンテン処分場の環境影響評価書補足の最終報告書を

公表

2016.05.11 東芝と米・CB&I 社がサウステキサスプロジェクトにおける協力関係を解

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2016.05.12 米オマハ公営電力、経済的理由からフォートカルホーン原子力発電所を閉

鎖へ

2016.05.12 米連邦議会上院、FY17 エネルギー・水開発歳出法案を可決

2016.05.13 米 TVA、米国初となる SMR の早期サイト認可申請を提出

2016.05.17 米 DOE/EIA、「2016 年版エネルギー見通し」の速報版を公表

2016.05.20 全米科学工学医学アカデミー、福島第一原子力発電所事故からの教訓に関

するフェーズ2報告書を発表

2016.05.20 NEI 会長、DOE の原子力サミットでプラント存続の重要性を主張

2016.05.23 米国とベトナムが民生用原子力利用における協力を拡大へ

2016.05.23 米 TVA のワッツバー2 号機の原子炉が初臨界に

2016.05.24 ベトナム放射線・原子力安全規制庁、米ライトブリッジ社との協力契約、

および米 WH 社との MOU を締結

2016.05.24 米 NRC がラクロス原子力発電所のライセンス譲渡を承認

2016.05.24 米 NRC、小型モジュール炉(SMR)の個別料金体系にかかる規則を改正

2016.05.25 米エクセロン社のクォドシティーズと TMI、容量市場オークションで落

札に失敗

2016.05.26 露 TVEL 社、米 GNF-A 社と米国 PWR 向け燃料事業で提携

2016.06.02 米エクセロン社、クリントン及びクォドシティーズの早期閉鎖を発表

2016.06.03 米 TVA のワッツバー2 号機が発電試験を開始

2016.06.07 米印首脳、インドへの米国製原子炉輸出に対する支持を表明

2016.06.13 米 DOE、GAIN による原子力のバウチャー提供先に中小企業 8 社を選定

2016.06.16 米オマハ公営電力(OPPD)、フォートカルホーン原子力発電所の閉鎖を

決定

2016.06.29 北米 3 カ国が気候変動等に関するパートナーシップアクションプランを

発表―2025年までに発電量の 50%をクリーンエネルギーで賄うとの努力

目標

2016.07.07 米ニュースケール社と英シェフィールド・フォージマスターズ社、英国で

の SMR 導入に向け協力へ

2016.07.07 NEI、DOE の「4 年毎のエネルギーレビュー(QER)」への意見書を提出

--- 原子力の維持・新設を可能とする電力市場改革を求める

2016.07.08 米 NYPSC、北部 3 カ所の原子力発電所に 12 年間の補助金交付を提案

2016.07.13 米原子力プラント効率化イニシアチブ、業務管理や予防保全に関する新た

な効率化策を発表

2016.07.13 米エンタジー社と米エクセロン社がフィッツパトリック原子力発電所の

売買を協議

2016.07.18 米国共和・民主両党が大統領選挙に向け政策綱領を策定

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2016.07.22 米国とメキシコ、原子力協力協定の年内締結に向け交渉を開始へ

2016.08.01 米 NY 州、原子力を含むクリーンエネルギー基準を承認

2016.08.03 米 NRC、ウィリアム・ステーツ・リーサイトに建設予定の 2 基の AP1000

に対する安全性評価を完了

2016.08.18 BWXT カナダ社、GE 日立ニュークリア・エナジー・カナダ社を買収へ

2016.08.31 米印戦略・商業対話、インドでの AP1000 建設に向けた取組みを評価

2016.09.03 米中、首脳会談において原子力の懸案に言及---核セキュリティ協力、国際

的な原子力損害賠償レジーム強化等

2016.09.12 米連邦議会下院、先進炉の技術開発支援に向けた法案を可決

2016.09.29 米エネルギー省、劣化六フッ化ウラン(DUF6)再転換工場の運営を英ア

トキンス社、米ウェスティングハウス社らの合弁会社に発注

2016.10.03 ロシア、米国とのプルトニウム管理・処分協定(PMDA)を停止へ

2016.10.03 TVA のワッツバー2 号機が出力上昇試験を終了

2016.10.05 ロシア、原子力・エネルギー分野における研究開発に係る米国との協力協

定を一時停止

2016.10.18 米 NEI の世論調査、電源としての原子力利用を 65%が支持

2016.10.19 米 TVA 社のワッツバー2 号機が営業運転を開始

2016.10.20 米 NRC、レビー郡に新設予定の原子力発電所(AP1000 2 基)に係る COL

を発給へ

2016.10.24 米ウェスティングハウス社と韓国水力原子力(KHNP)、技術協力のため

の覚書(MOU)を締結

2016.10.31 米 GEH 社、先進炉の開発・許認可取得に向け米サザン・ニュークリア社

との協力に合意

2016.11.02 米ライトブリッジ社と仏 AREVA 社、金属燃料の開発・商業化に向けた合

弁会社設立で大筋合意

2016.11.08 米エンタジー社がバーモントヤンキー原子力発電所を売却へ

2016.11.09 米 NEI が、トランプ氏の大統領当選を祝福するコメントを発表

2016.11.09 米国大統領選挙で共和党のトランプ候補が当選

2016.11.10 米 DOE、米 GEH 社とレーザー濃縮のための劣化ウラン売渡しで合意

2016.11.16 米 DOE のハンフォード・サイトで取り壊し作業が開始

2016.11.17 米 NYPSC、フィッツパトリック原子力発電所の売却承認を発表

2016.11.18 米ターキーポイント 6、7 号機(AP1000 2 基)の COL 発給へ前進

2016.11.21 米インディアンポイント 2、3 号機の運転認可更新で沿岸管理に関する州

の審査が必要とする判決

2016.11.21 仏 AREVA NP 社、米パロベルデ原子力発電所 2 次冷却系給水加熱器 12

基の供給契約を受注

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2016.12.02 米イリノイ州、未来のエネルギー雇用法案を可決

2016.12.08 米エンタジー社が MI 州パリセーズ原子力発電所の早期閉鎖を発表

2016.12.14 スウェーデン・ヴァッテンファル社、露 TVEL 社等と燃料供給契約を締

2016.12.14 米原子力協会が原子力プラント効率化イニシアチブの成果を発表

2016.12.14 米トランプ次期大統領、DOE 長官に前テキサス州知事を指名へ

2016.12.20 米 SCE 社が CA 州サンオノフレ原子力発電所の廃炉事業者を発表

2016.12.21 米原子力協会がトランプ政権移行チームに対する要望事項を公表

2016.12.21 米 NRC、ウィリアム・ステーツ・リーサイトでの 2 基の AP1000 新設に

係る COL を発給

2016.12.23 DOE、WIPP における TRU 廃棄物定置の再開を承認

2017.01.03 スウェーデン OKG 社がオスカーシャム 1、2 号機の廃止措置業務の一部

を米 GEH 社に委託

2017.01.05 米エネルギー長官が内閣退陣メモを公表

2017.01.06 米 DOE が「4 年毎のエネルギーレビュー(QER)」の第 2 回報告書を発

2017.01.09 米 WIPP で操業が再開 --- 再開後初の廃棄物の定置作業を実施

2017.01.09 米エンタジー社と NY 州がインディアンポイントの閉鎖に合意

2017.01.10 米韓両国、原子力ハイレベル委員会の活動進捗会議をワシントンで開催

2017.01.11 米 DOE が管轄の国立研究所に関する初めての報告書を公表

2017.01.12 米 NuScale 社が、NRC に小型モジュール炉の認証申請を提出

2017.01.13 米 NRC が TN 州クリンチリバーサイトの ESP 申請を受理

2017.01.20 米連邦議会下院、先進炉の技術開発支援に関する法案を可決

2017.01.24 米テレストリアル・エナジー社が IMSR の許認可申請計画を米 NRC へ通

2017.02.01 米ノーススター社と仏 AREVA 社の子会社が JV 設立で合意

2017.02.02 米トランプ大統領、NRC 委員長にクリスティン・L・スビニキ委員を任

2017.02.03 豪 SILEX 社、米 GEH 社とウラン濃縮事業再編の議論を継続

2017.02.09 米原子力プラントの設備利用率、過去 15 年間 90%超を維持

2017.02.14 米 WH 社、米 V.C.サマー2、3 号機の建設を続行

2017.02.15 英ホライズン社、米エクセロン社とウィルヴァ原子力発電所プロジェクト

で提携

2017.02.16 米 DOE の GAIN、2017 年度の先進原子力技術開発を目指す中小企業へ

資金提供を発表

2017.02.27 米 WH 社、スウェーデン OKG 社と燃料供給契約を締結

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2017.02.27 米ホルテック・インターナショナル社、スロベニアの乾式貯蔵施設建設の

契約を受注

2017.03.02 米連邦議会上院がペリー新 DOE 長官の指名を承認

2017.03.03 米 NRC、フィッツパトリック原子力発電所のライセンス譲渡を承認

カナダ

2016.06.22 加 CNSC、ジェンティリー2 号機に廃止措置認可を発給

2016.06.29 北米 3 カ国が気候変動等に関するパートナーシップアクションプランを

発表―2025年までに発電量の 50%をクリーンエネルギーで賄うとの努力

目標

2016.08.18 BWXT カナダ社、GE 日立ニュークリア・エナジー・カナダ社を買収へ

2016.09.22 加 SNC-ラヴァリン社、中国 CNNC および上海電気集団が、先進燃料

CANDU 炉の開発・建設等に向けてジョイントベンチャーを設立へ

2016.10.06 加ブルース・パワー社と SNC-ラヴァリン社がブルース原子力発電所の改

修等に係る枠組合意文書に署名

2016.10.07 英国立原子力研究所(NNL)とカナダ原子力研究所(CNL)、原子力科学

技術能力開発に向けた覚書(MOU)に署名

2016.10.14 加ダーリントン原子力発電所の改修工事が開始

2016.11.24 加 SNC-ラヴァリン社とアルゼンチン原子力発電会社、アルゼンチンにお

ける CANDU 炉新設プロジェクトの検討のための契約を締結

ブラジル

2016.08.04 ブラジルのエレトロ・ニュークリア社の元 CEO に、43 年の禁固刑が宣

アルゼンチン

2016.05.27 アルゼンチン原子力規制庁、アトーチャ 2 号機の運転認可を発給

2016.06.30 アルゼンチン・エネルギー鉱業省と中国・国家能源局、アルゼンチンの 4、

5 基目建設に向けた MOU を締結

2016.10.28 アルゼンチン原子力発電会社とウクライナ・エネルゴアトム社、原子力開

発に係る MOU を締結

2016.11.24 加 SNC-ラヴァリン社とアルゼンチン原子力発電会社、アルゼンチンにお

ける CANDU 炉新設プロジェクトの検討のための契約を締結

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メキシコ

2016.06.29 北米 3 カ国が気候変動等に関するパートナーシップアクションプランを

発表―2025年までに発電量の 50%をクリーンエネルギーで賄うとの努力

目標

2016.07.22 米国とメキシコ、原子力協力協定の年内締結に向け交渉を開始へ

1.1.2. 欧州(西)

フランス

2016.03.11 欧州委員会、英国での原子炉新設に向けた仏 EDF と中 CGN とのパート

ナーシップを承認

2016.04.20 スウェーデン・スタズヴィク社、低レベル放射性廃棄物処理事業を仏 EDF

に売却へ

2016.04.22 仏 EDF 取締役会、長期的な財務方針について協議 ---40 億ユーロの増

資を検討する可能性も

2016.04.26 フランスで第 4 回環境会議が開催 ---フェッセンハイム閉鎖に係る政令

が 2016 年中に発給される見通し

2016.05.03 仏 AREVA 社のル・クルーゾ製鋼プラントにおいて製品検査の不備が発

2016.05.13 英 ONR、仏 ASN と EDF から AREVA 社製造機器に関する品質問題につ

いて報告を受ける

2016.05.27 仏 ASN が 2015 年報を公表 ---国内の原子力施設の運転の安全性は良好

であると評価

2016.06.15 仏 AREVA 社、燃料サイクル事業に特化する新会社 NEW CO の設立を発

2016.06.28 三菱重工業と仏 EDF、原子力発電事業に関する MOU を締結

2016.07.11 フランスで可逆性のある地層処分場設置に関する法律が成立

2016.07.28 仏 EDF、フェッセンハイム原子力発電所の閉鎖に係る補償について政府

との協議の進捗状況を公表

2016.07.28 仏 EDF、AREVA NP 社の子会社化に向けた進捗状況を公表

2016.07.28 仏 EDF、英ヒンクリーポイント C(HPC)の建設投資を最終決定

2016.08.03 フィンランド・ハンヒキビ 1 原子力発電所のタービン発電機を仏アルス

トム・パワーシステムズ社が受注

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2016.08.30 仏 AREVA 社、燃料サイクル事業の新会社 NEW CO への移管手続きを開

2016.09.26 仏 AREVA 社とベルギー・シナトム社、使用済燃料輸送貯蔵用キャスクの

設計・製造契約を締結

2016.10.18 仏 ASN、炭素偏析が存在する 5 基の原子炉の蒸気発生器に関する補完的

検査を EDF に指示

2016.10.19 フィンランド・オルキルオト 3 号機で 2017 年初夏に機能試験開始へ

2016.10.28 仏政府、多年度エネルギー計画(PPE)を発表

2016.11.02 米ライトブリッジ社と仏 AREVA 社、金属燃料の開発・商業化に向けた合

弁会社設立で大筋合意

2016.11.03 仏 EDF、蒸気発生器の問題による原子炉停止期間の延長により 2016 年

の業績見通しを下方修正

2016.11.03 仏 AREVA 社の臨時株主総会、燃料サイクル事業の新会社 NEW CO への

移管を承認

2016.11.10 フィンランド TVO、オルキルオト 3 号機の建設遅延に関する ICC の部分

的仲裁判断の確定を公表

2016.11.16 仏 AREVA 社の原子炉製造等事業の譲渡に関して EDF と AREVA 社が正

式に合意

2016.11.21 仏 AREVA NP 社、米パロベルデ原子力発電所 2 次冷却系給水加熱器 12

基の供給契約を受注

2016.12.01 仏オランド大統領、2017 年の大統領選挙への立候補を断念 ---右派候補

はフィヨン元首相に決定

2016.12.06 カザフスタン、中国との共同出資による燃料加工工場の建設を開始

2016.12.14 スウェーデン・ヴァッテンファル社、露 TVEL 社等と燃料供給契約を締

2017.01.03 仏 AREVA NP 社、ロシア第 2 ノボボロネジ原子力発電所 1 号機に安全系

計装制御システムを供給

2017.01.10 欧州委員会、仏 AREVA 社に対する公的資本注入について、国家補助規則

に違反しないと判断

2017.01.11 仏 AREVA 社が経営再建に向けた増資の詳細を発表

2017.01.24 仏 EDF 取締役会、フェッセンハイム閉鎖に係る政府による補償条件を承

2017.02.01 南ア ESKOM の情報要求(RFI)へ 27 社が参加意向を表明

2017.02.03 仏 AREVA 社と NEW CO の株主総会が増資計画を承認 ---三菱重工業、

JNFL が NEW CO への出資で大枠合意

2017.02.21 仏 NEW AREVA と CNNC が、工業・商業協力に関する枠組み協定に調

Page 13: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

13

2017.03.01 仏 AREVA 社、2016 年の業績を発表 ---6 年連続の最終赤字

2017.03.02 仏マクロン元経済大臣が大統領選挙プログラムを発表

ドイツ

2016.04.06 独ボン地方裁、福島第一原子力発電所事故後の原子炉一時停止命令に関

する EnBW 社の損害賠償請求を却下

2016.04.27 ドイツ「脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会」、放射性廃棄物管

理資金の連邦基金への移行等を勧告

2016.06.01 独政府が放射性廃棄物管理・処分資金の公的基金化等の実現に向けた声

明を閣議決定

2016.06.08 独 E.ON 社、株主総会で火力発電部門等のスピンオフを可決

2016.06.28 独「高レベル放射性廃棄物処分委員会」が最終報告書案を採択

2016.07.04 独 E.ON 社、福島第一原子力発電所事故後の原子炉一時停止命令を巡る

賠償請求訴訟で一審敗訴

2016.07.05 独「高レベル放射性廃棄物処分委員会」が最終報告書を政府議会に提出

2016.08.18 ウクライナ・エネルゴアトム社、ウレンコ社とウラン濃縮役務の提供に

係る契約を締結

2016.09.12 独 E.ON 社、火力発電部門等のスピンオフが完了

2016.10.19 独連邦政府、放射性廃棄物管理資金の公的基金化等を定める法案を閣議決

2016.12.06 独連邦憲法裁、2011 年の原子力法改正に関して補償を求める電気事業者

の主張を一部認める判決

2017.01.25 ドイツで新法「放射線防護法」案が閣議決定

英国

2016.03.11 欧州委員会、英国での原子炉新設に向けた仏 EDF と中 CGN とのパート

ナーシップを承認

2016.03.17 英 DECC、小型モジュール炉(SMR)の開発事業者の公募を開始

2016.03.24 EDF エナジー社 CEO、英国議会で HPC 新設計画に変更がないことを明

2016.04.05 英サイズウェル B で同国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

2016.04.11 米エナジー・ソリューションズ社、環境修復や廃棄物処理・処分に係る

事業の英 Atkins 社への売却を完了

Page 14: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

14

2016.05.13 英 ONR、仏 ASN と EDF から AREVA 社製造機器に関する品質問題につ

いて報告を受ける

2016.05.20 英ホライズン社、ウィルヴァ原子力発電所の新規建設プロジェクトのサ

プライヤーにメンター・ニューウィッド社を指名

2016.06.20 英サイズウェルB原子力発電所が運転再開---仏AREVA社製機器に 問題

なし

2016.06.24 英国原子力産業協会(NIA)会長、EU 離脱決定に対するコメントを発表

2016.07.07 英ホライズン社、日本原子力発電、日立製作所が英国での原子炉新設に

関する技術支援協定を締結

2016.07.14 英 DECC に代わり、ビジネス・エネルギー・産業戦略省が設置される

2016.07.28 仏 EDF、英ヒンクリーポイント C(HPC)の建設投資を最終決定

2016.08.18 ウクライナ・エネルゴアトム社、ウレンコ社とウラン濃縮役務の提供に

係る契約を締結

2016.09.15 英国、ヒンクリーポイント C 原子力発電所の建設へ

2016.09.29 英 BEIS、仏 EDF、中 CGN がヒンクリーポイント C に係る契約書等に

署名

2016.10.07 英国立原子力研究所(NNL)とカナダ原子力研究所(CNL)、原子力科学

技術能力開発に向けた覚書(MOU)に署名

2016.10.26 英ホライズン社、ウィルヴァ原子力発電所新設の計画許可を英政府に申請

へ ---2017 年 5 月に申請見込み

2016.12.01 原子力廃止措置機関(NDA)、人材育成に関する原子力技能戦略計画の実

施を開始したことを発表

2016.12.12 英国の環境規制機関、日立 GE ニュークリア・エナジー社の ABWR に関

する公開協議を開始

2016.12.20 英ナショナルグリッド社、2020 年度の容量市場についての競争入札結果

を発表

2017.01.10 英規制機関、中国製原子炉華龍 1 号(HPR1000)の一般設計評価(GDA)

を開始へ

2017.02.02 英政府、EU 離脱とともに EURATOM からも離脱することを発表

2017.02.15 英ホライズン社、米エクセロン社とウィルヴァ原子力発電所プロジェクト

で提携

スイス

2016.09.30 スイス議会、原子力発電所の新設を禁止する原子力法改正を含む法案パッ

ケージ採択

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2016.11.27 スイス国民投票、段階的脱原子力の加速を求めるイニシアチブ否決

2017.02.01 スイス政府、「エネルギー戦略 2050 政策パッケージ」関連政令の制定手

続きに着手

ベルギー

2016.09.26 仏 AREVA 社とベルギー・シナトム社、使用済燃料輸送貯蔵用キャスクの

設計・製造契約を締結

フィンランド

2016.04.14 フィンランド TVO、2018 年末までの運開に向けてオルキルオト 3 号機

の運転認可を申請

2016.06.22 フィンランド Fennovoima 社が独自の使用済燃料処分場建設に向け手続

きを開始

2016.08.03 フィンランド・ハンヒキビ 1 原子力発電所のタービン発電機を仏アルス

トム・パワーシステムズ社が受注

2016.10.19 フィンランド・オルキルオト 3 号機で 2017 年初夏に機能試験開始へ

2016.11.10 フィンランド TVO、オルキルオト 3 号機の建設遅延に関する ICC の部分

的仲裁判断の確定を公表

2017.01.26 フィンランド TVO、オルキルオト 1、2 号機の運転認可延長を申請

スウェーデン

2016.04.20 スウェーデン・スタズヴィク社、低レベル放射性廃棄物処理事業を仏 EDF

に売却へ

2016.10.03 スウェーデン SKB、研究開発・実証プログラム 2016 を SSM に提出

2016.12.14 スウェーデン・ヴァッテンファル社、露 TVEL 社等と燃料供給契約を締

2017.01.03 スウェーデン OKG 社がオスカーシャム 1、2 号機の廃止措置業務の一部

を米 GEH 社に委託

2017.02.27 米 WH 社、スウェーデン OKG 社と燃料供給契約を締結

イタリア

2016.07.28 伊 ENEL 社、スロバキア電力における株式持分売却---チェコ EPH 社に

Page 16: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

16

よる買収第 1 段階が完了

オランダ

2016.08.18 ウクライナ・エネルゴアトム社、ウレンコ社とウラン濃縮役務の提供に

係る契約を締結

1.1.3. 欧州(東)

スロバキア

2016.07.28 伊 ENEL 社、スロバキア電力における株式持分売却---チェコ EPH 社に

よる買収第 1 段階が完了

チェコ

2016.03.31 チェコ CEZ グループと中国・CGN が原子力等の分野における協力に関

する覚書(MOU)を締結

2016.07.28 伊 ENEL 社、スロバキア電力における株式持分売却---チェコ EPH 社に

よる買収第 1 段階が完了

ハンガリー

2017.02.02 露プーチン大統領、ハンガリー・パクシュ原子力発電所増設資金の 100%

を融資可能であると発言

2017.03.06 欧州委員会、ハンガリーのパクシュ 2 投資計画への財政支援について国

家補助規則に違反しないと判断

ブルガリア

2016.10.26 露 ASE とブルガリア NEK、ベレネ原子力発電所建設プロジェクト中止

に関する和解で最終合意

1.1.4. 旧ソ連諸国

ロシア

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2016.03.25 ロシア第 2 ノボボロネジ原子力発電所 1 号機で燃料装荷を開始

2016.05.17 ロシア、カンボジアと原子力の平和利用に係る 2 種類の覚書を締結

2016.05.18 イラン原子力発電・開発会社、ブシェール 1 号機の運転認可を取得

2016.05.20 エジプト大統領、同国での原子力発電所建設に向けたロシアからの融資

に係る大統領令を公布

2016.05.26 露 TVEL 社、米 GNF-A 社と米国 PWR 向け燃料事業で提携

2016.06.24 バングラデシュ初となるルプール原子力発電所建設に係る立地許可が発

2016.07.11 ロシアとボリビア、原子力技術研究開発センタープロジェクト実現に向

け、人材育成と社会的受容性向上に係る覚書を締結

2016.07.27 ロシア、バングラデシュとルプール原子力発電所建設の融資に係る政府

間協定を締結

2016.08.03 フィンランド・ハンヒキビ 1 原子力発電所のタービン発電機を仏アルス

トム・パワーシステムズ社が受注

2016.08.04 ロシアとボリビア、原子力技術研究開発センターの建設に向けた契約を

締結

2016.09.10 イラン・ブシェール原子力発電所で、2・3 号機の起工式が開催

2016.09.26 ロシアとチュニジア、原子力平和利用に係る政府間協定を締結

2016.09.27 ロシアとキューバ、原子力平和利用に係る政府間協定を締結

2016.09.27 露 ROSATOM とヨルダン原子力委員会、原子力分野における人材育成に

係る覚書を締結

2016.10.03 ロシア、米国とのプルトニウム管理・処分協定(PMDA)を停止へ

2016.10.05 ロシア、原子力・エネルギー分野における研究開発に係る米国との協力

協定を一時停止

2016.10.05 露 ROSATOM の新総裁にアレクセイ・リハチョフ氏を任命

2016.10.10 トルコとロシア、アキュ原子力発電所の建設プロジェクトの加速で合意

2016.10.15 印クダンクラム 3・4 号機で基礎工事が開始

2016.10.15 印露首脳、インドで計画中のロシア製原子炉新設に向けた進捗状況を公

2016.10.18 露 ROSATOM とパラグアイ原子力・放射線規制委員会、原子力平和利用

に係る覚書を締結

2016.10.26 露 ASE とブルガリア NEK、ベレネ原子力発電所建設プロジェクト中止

に関する和解で最終合意

2016.11.01 ロシアの高速実証炉 BN-800 が営業運転を開始

2016.11.07 ロシアと中国、原子力平和利用に係る共同声明を発表

Page 18: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

18

2016.11.09 ベトナム、ニントゥアン原子力発電所の建設を中止へ

2016.12.14 スウェーデン・ヴァッテンファル社、露 TVEL 社等と燃料供給契約を締

2017.01.03 仏 AREVA NP 社、ロシア第 2 ノボボロネジ原子力発電所 1 号機に安全系

計装制御システムを供給

2017.01.24 露 ROSATOM の監査委員会委員長に元総裁セルゲイ・キリエンコ氏を任

2017.02.01 南ア ESKOM の情報要求(RFI)へ 27 社が参加意向を表明

2017.02.02 露プーチン大統領、ハンガリー・パクシュ原子力発電所増設資金の 100%

を融資可能であると発言

2017.02.03 ロシア政府、原子炉新規導入予定国に対する人材育成支援活動への連邦

予算配賦を公表

2017.02.27 ロシアとタジキスタン、原子力平和利用に係る協力協定を締結

ウクライナ

2016.08.18 ウクライナ・エネルゴアトム社、ウレンコ社とウラン濃縮役務の提供に

係る契約を締結

2016.08.31 ウクライナ・エネルゴアトム社と韓国 KHNP、原子力分野の協力強化に

係る MOU を締結 --- フメルニツキ 3、4 号機建設再開に向け

2016.10.28 アルゼンチン原子力発電会社とウクライナ・エネルゴアトム社、原子力

開発に係る MOU を締結

2016.11.29 チェルノブイリ 4 号機で新シェルターの設置が完了

カザフスタン

2016.06.01 IAEA とカザフスタンのウルバ冶金プラント、低濃縮ウラン貯蔵施設建設

に向けたパートナーシップ協定を締結

2016.10.25 カザフスタンとサウジアラビア、原子力平和利用に係る協力協定に署名

2016.12.06 カザフスタン、中国との共同出資による燃料加工工場の建設を開始

1.1.5. アジア

中国

2016.03.11 欧州委員会、英国での原子炉新設に向けた仏 EDF と中 CGN とのパート

Page 19: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

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ナーシップを承認

2016.03.16 中国で第 13 次五カ年計画が策定

2016.03.17 華龍国際核電技術有限公司が正式に発足

2016.03.31 チェコ CEZ グループと中国・CGN が原子力等の分野における協力に関

する覚書(MOU)を締結

2016.05.05 中国の CAP1400 が IAEA の一般原子炉安全レビューに合格

2016.05.24 中国・CNNC がスーダンにおける原子炉建設への協力を表明

2016.06.01 中国核工業建設集団公司とインドネシア原子力庁が高温ガス炉プロジェ

クトで協力へ

2016.06.01 中国核工業建設集団公司と ASEAN エネルギーセンターが原子力技術に

おける協力に関する MOU を締結

2016.06.29 トルコ・エネルギー天然資源省と中国・国家能源局、原子力協力および

原子力技術開発に係る覚書を締結

2016.06.30 アルゼンチン・エネルギー鉱業省と中国・国家能源局、アルゼンチンの 4、

5 基目建設に向けた MOU を締結

2016.07.18 中国、CNEC と CGN が高温ガス炉プロジェクトでの協力に関する合意

文書に署名

2016.08.10 中国・江蘇省連雲港市で燃料サイクル施設のサイト選定が中断

2016.08.29 サウジアラビア KA-CARE と中国 CNNC、原子力人材育成に係る MOU

を締結

2016.09.02 トルコと中国の原子力協力協定が発効

2016.09.03 米中、首脳会談において原子力の懸案に言及---核セキュリティ協力、国

際的な原子力損害賠償レジーム強化等

2016.09.22 加 SNC-ラヴァリン社、中国 CNNC および上海電気集団が、先進燃料

CANDU 炉の開発・建設等に向けてジョイントベンチャーを設立へ

2016.10.16 パキスタン・チャシュマ 3 号機が送電網に併入

2016.11.07 ロシアと中国、原子力平和利用に係る共同声明を発表

2016.11.07 中国政府が「電力発展第 13 次五カ年計画」を策定

2016.11.22 ヒンクリーポイント C 原子力発電所プロジェクトへの出資に向け、中国

のエネルギー開発企業と CGN が枠組み合意文書を締結

2016.12.06 カザフスタン、中国との共同出資による燃料加工工場の建設を開始

2016.12.27 パキスタン・チャシュマ 3 号機、商業運転を開始

2017.02.01 南ア ESKOM の情報要求(RFI)へ 27 社が参加意向を表明

2017.02.10 中国・国家能源局が「2017 年エネルギー工作指導意見」を公表-AP1000

及び EPR の世界初号機の年内運開計画を提示

2017.02.21 仏 NEW AREVA と CNNC が、工業・商業協力に関する枠組み協定に調

Page 20: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

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韓国

2016.04.14 米韓両国、原子力ハイレベル委員会の第 1 回会議をソウルで開催

2016.05.25 韓国政府、高レベル放射性廃棄物管理基本計画(案)を公示

2016.06.23 韓国原子力安全委員会、新古里 5、6 号機の建設許可を発給へ

2016.07.05 韓国政府、原子力輸出戦略レビューを実施

2016.07.25 UAE の首長国原子力会社と韓国 KHNP、バラカ原子力発電所の運転支援

に係る契約を締結

2016.08.31 ウクライナ・エネルゴアトム社と韓国 KHNP、原子力分野の協力強化に

係る MOU を締結 --- フメルニツキ 3、4 号機建設再開に向け

2016.09.04 韓国 KEPCO とケニア原子力委員会が相互協力 MOU を締結

2016.09.13 韓国、慶州地域での地震により月城 1~4 号機を精密点検のため運転停止

2016.10.20 UAE の首長国原子力会社(ENEC)、KEPCO との合弁事業契約締結を

発表

2016.10.20 韓国電力公社(KEPCO)、UAE バラカ発電所プロジェクト会社に約 9 億

ドルを出資

2016.10.24 米ウェスティングハウス社と韓国水力原子力(KHNP)、技術協力のため

の覚書(MOU)を締結

2016.11.01 UAE バラカ原子力発電所の電力購入契約が締結

2016.11.25 韓国原子力安全委員会、サウジアラビア KA-CARE と原子力安全規制に

係る MOU を締結

2016.12.07 ヨルダン、同国初となる研究炉の完成を発表

2016.12.20 韓国、新古里 3 号が商業運転を開始 --- 初の APR1400 運開

2017.01.07 UAE のバラカ原子力発電所、建設の進捗率が 75%に

2017.01.10 米韓両国、原子力ハイレベル委員会の活動進捗会議をワシントンで開催

2017.01.22 UAE 規制当局、燃料の輸送・取扱・貯蔵に関する許可を発給

2017.01.25 韓国政府、第 5 次原子力振興総合計画を確定

2017.02.01 南ア ESKOM の情報要求(RFI)へ 27 社が参加意向を表明

2017.02.02 韓国の斗山重工業、発電サービス事業本部を新設 -- 海外発電所 O&M 市

場に参入

2017.02.07 ソウル行政裁、月城 1 号機の運転延長許可を無効とする判決

台湾

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2016.10.21 台湾政府が電気事業法の改正案を公表-2025年までの脱原子力を法制化

2017.01.11 台湾で 2025 年までの脱原子力を定めた電気事業法の改正法が成立

ベトナム

2016.05.23 米国とベトナムが民生用原子力利用における協力を拡大へ

2016.05.24 ベトナム放射線・原子力安全規制庁、米ライトブリッジ社との協力契約、

および米 WH 社との MOU を締結

2016.11.09 ベトナム、ニントゥアン原子力発電所の建設を中止へ

2016.11.22 ベトナム国会、ニントゥアン原子力発電所建設プロジェクトの中止を承

インド

2016.06.07 米印首脳、インドへの米国製原子炉輸出に対する支持を表明

2016.08.29 印クダンクラム 2 号機が送電網に併入

2016.08.31 米印戦略・商業対話、インドでの AP1000 建設に向けた取組みを評価

2016.10.15 印クダンクラム 3・4 号機で基礎工事が開始

2016.10.15 印露首脳、インドで計画中のロシア製原子炉新設に向けた進捗状況を公

2016.11.11 日本とインド、原子力協定に署名

バングラデシュ

2016.06.24 バングラデシュ初となるルプール原子力発電所建設に係る立地許可が発

2016.07.27 ロシア、バングラデシュとルプール原子力発電所建設の融資に係る政府

間協定を締結

マレーシア

2016.08.04 日立 GE とマレーシアの 2 大学、新たな原子力人材育成プログラム実施

で合意

インドネシア

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2016.06.01 中国核工業建設集団公司とインドネシア原子力庁が高温ガス炉プロジェ

クトで協力へ

パキスタン

2016.10.16 パキスタン・チャシュマ 3 号機が送電網に併入

2016.12.27 パキスタン・チャシュマ 3 号機、商業運転を開始

1.1.6. 中東・アフリカ

トルコ

2016.06.29 トルコ・エネルギー天然資源省と中国・国家能源局、原子力協力および原

子力技術開発に係る覚書を締結

2016.09.02 トルコと中国の原子力協力協定が発効

2016.10.10 トルコとロシア、アキュ原子力発電所の建設プロジェクトの加速で合意

2017.03.10 トルコ・アキュ原子力発電所プロジェクト会社が 1 号機の建設許可を申

ヨルダン

2016.09.27 露 ROSATOM とヨルダン原子力委員会、原子力分野における人材育成に

係る覚書を締結

2016.12.07 ヨルダン、同国初となる研究炉の完成を発表

アラブ首長国連邦

2016.07.02 UAE のバラカ 1 号機、建設の進捗率が 88%に---首長国原子力会社が運開

に向けた機能試験の進捗を公表

2016.07.20 UAE のバラカ原子力発電所 3 号機に原子炉容器が据付

2016.07.25 UAE の首長国原子力会社と韓国 KHNP、バラカ原子力発電所の運転支援

に係る契約を締結

2016.10.20 UAE の首長国原子力会社(ENEC)、KEPCO との合弁事業契約締結を発

2016.10.20 韓国電力公社(KEPCO)、UAE バラカ発電所プロジェクト会社に約 9 億

Page 23: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

23

ドルを出資

2016.11.01 UAE バラカ原子力発電所の電力購入契約が締結

2016.11.10 IAEA、UAE での IPPAS ミッション完了を発表

2017.01.07 UAE のバラカ原子力発電所、建設の進捗率が 75%に

2017.01.10 UAE、長期エネルギー戦略を発表

2017.01.22 UAE 規制当局、燃料の輸送・取扱・貯蔵に関する許可を発給

サウジアラビア

2016.08.29 サウジアラビア KA-CARE と中国 CNNC、原子力人材育成に係る MOU

を締結

2016.10.25 カザフスタンとサウジアラビア、原子力平和利用に係る協力協定に署名

2016.11.25 韓国原子力安全委員会、サウジアラビア KA-CARE と原子力安全規制に

係る MOU を締結

エジプト

2016.05.20 エジプト大統領、同国での原子力発電所建設に向けたロシアからの融資に

係る大統領令を公布

南アフリカ

2016.03.16 南アフリカ国家原子力規制局、Eskom から 2 つの原子力施設サイト許可

申請を受領

2016.11.11 南ア ESKOM グループの最高経営責任者が辞任

2016.11.25 南アフリカ政府、総合エネルギー計画及び統合資源計画の策定に向けパブ

リックコメントの募集を開始

2016.12.20 南ア ESKOM、情報要求(RFI)を開始

2017.02.01 南ア ESKOM の情報要求(RFI)へ 27 社が参加意向を表明

Page 24: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

24

1.2. 重要動向として提供した情報

1.2.1. 北米・南米

米国

2016.03.22 米 NRC スタッフ、2020 年に向けた組織規模の適正化のために短期・長

期で取り組む効率化策を提示

2016.03.23 米産業界、原子力プラントの効率性等の向上のためのイニシアチブで取

り組む具体策を一部公開

2016.04.14 米エクセロン社、運転継続が危ぶまれるクリントンの恒久停止判断を 1

年先伸ばし---容量市場オークションの結果を踏まえ

2016.04.14 米韓両国、原子力ハイレベル委員会の第 1 回会議をソウルで開催

2016.04.18 米 GE と日立、レーザー濃縮プラントの商業化事業から撤退へ

2016.04.20 米連邦議会上院、包括的なエネルギー政策近代化法案を可決

2016.04.28 米 WCS 社、テキサス州での中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請

を NRC に提出

2016.05.05 米 NRC、ユッカマウンテン処分場の環境影響評価書補足の最終報告書を

公表

2016.05.12 米連邦議会上院、FY17 エネルギー・水開発歳出法案を可決

2016.06.13 米 DOE、GAIN による原子力のバウチャー提供先に中小企業 8 社を選定

2016.06.29 北米 3 カ国が気候変動等に関するパートナーシップアクションプランを

発表―2025 年までに発電量の 50%をクリーンエネルギーで賄うとの努

力目標

2016.07.18 米国共和・民主両党が大統領選挙に向け政策綱領を策定

2016.08.01 米 NY 州、原子力を含むクリーンエネルギー基準を承認

2016.09.12 米連邦議会下院、先進炉の技術開発支援に向けた法案を可決

2016.10.19 米 TVA 社のワッツバー2 号機が営業運転を開始

2016.11.02 米ライトブリッジ社と仏 AREVA 社、金属燃料の開発・商業化に向けた

合弁会社設立で大筋合意

2016.11.08 米エンタジー社がバーモントヤンキー原子力発電所を売却へ

2016.11.09 米 NEI が、トランプ氏の大統領当選を祝福するコメントを発表

2016.11.09 米国大統領選挙で共和党のトランプ候補が当選

2016.11.10 米 DOE、米 GEH 社とレーザー濃縮のための劣化ウラン売渡しで合意

2016.11.21 米インディアンポイント 2、3 号機の運転認可更新で沿岸管理に関する州

の審査が必要とする判決

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25

2016.12.02 米イリノイ州、未来のエネルギー雇用法案を可決

2016.12.14 米原子力協会が原子力プラント効率化イニシアチブの成果を発表

2016.12.21 米原子力協会がトランプ政権移行チームに対する要望事項を公表

2017.01.06 米 DOE が「4 年毎のエネルギーレビュー(QER)」の第 2 回報告書を発

2017.01.09 米 WIPP で操業が再開 --- 再開後初の廃棄物の定置作業を実施

2017.01.24 米テレストリアル・エナジー社が IMSR の許認可申請計画を米 NRC へ

通知

2017.02.01 米ノーススター社と仏 AREVA 社の子会社が JV 設立で合意

2017.02.02 米トランプ大統領、NRC 委員長にクリスティン・L・スビニキ委員を任

カナダ

2016.06.29 北米 3 カ国が気候変動等に関するパートナーシップアクションプランを

発表―2025 年までに発電量の 50%をクリーンエネルギーで賄うとの努

力目標

ブラジル

2016.08.04 ブラジルのエレトロ・ニュークリア社の元 CEO に、43 年の禁固刑が宣

メキシコ

2016.06.29 北米 3 カ国が気候変動等に関するパートナーシップアクションプランを

発表―2025 年までに発電量の 50%をクリーンエネルギーで賄うとの努

力目標

1.2.2. 欧州(西)

フランス

2016.04.20 スウェーデン・スタズヴィク社、低レベル放射性廃棄物処理事業を仏 EDF

に売却へ

2016.04.22 仏 EDF 取締役会、長期的な財務方針について協議 ---40 億ユーロの増

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資を検討する可能性も

2016.04.26 フランスで第 4 回環境会議が開催 ---フェッセンハイム閉鎖に係る政令

が 2016 年中に発給される見通し

2016.05.03 仏 AREVA 社のル・クルーゾ製鋼プラントにおいて製品検査の不備が発

2016.05.13 英 ONR、仏 ASN と EDF から AREVA 社製造機器に関する品質問題につ

いて報告を受ける

2016.05.27 仏 ASN が 2015 年報を公表 ---国内の原子力施設の運転の安全性は良好

であると評価

2016.06.15 仏 AREVA 社、燃料サイクル事業に特化する新会社 NEW CO の設立を発

2016.06.28 三菱重工業と仏 EDF、原子力発電事業に関する MOU を締結

2016.07.11 フランスで可逆性のある地層処分場設置に関する法律が成立

2016.07.28 仏 EDF、フェッセンハイム原子力発電所の閉鎖に係る補償について政府

との協議の進捗状況を公表

2016.07.28 仏 EDF、AREVA NP 社の子会社化に向けた進捗状況を公表

2016.07.28 仏 EDF、英ヒンクリーポイント C(HPC)の建設投資を最終決定

2016.08.30 仏 AREVA 社、燃料サイクル事業の新会社 NEW CO への移管手続きを開

2016.10.18 仏 ASN、炭素偏析が存在する 5 基の原子炉の蒸気発生器に関する補完的

検査を EDF に指示

2016.10.28 仏政府、多年度エネルギー計画(PPE)を発表

2016.11.02 米ライトブリッジ社と仏 AREVA 社、金属燃料の開発・商業化に向けた

合弁会社設立で大筋合意

2016.11.03 仏 EDF、蒸気発生器の問題による原子炉停止期間の延長により 2016 年

の業績見通しを下方修正

2016.11.10 フィンランド TVO、オルキルオト 3 号機の建設遅延に関する ICC の部分

的仲裁判断の確定を公表

2016.11.16 仏 AREVA 社の原子炉製造等事業の譲渡に関してEDF と AREVA 社が正

式に合意

2016.12.01 仏オランド大統領、2017 年の大統領選挙への立候補を断念 ---右派候補

はフィヨン元首相に決定

2016.12.06 カザフスタン、中国との共同出資による燃料加工工場の建設を開始

2017.01.11 仏 AREVA 社が経営再建に向けた増資の詳細を発表

2017.01.24 仏 EDF 取締役会、フェッセンハイム閉鎖に係る政府による補償条件を承

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2017.02.03 仏 AREVA 社と NEW CO の株主総会が増資計画を承認 ---三菱重工業、

JNFL が NEW CO への出資で大枠合意

2017.03.01 仏 AREVA 社、2016 年の業績を発表 ---6 年連続の最終赤字

2017.03.02 仏マクロン元経済大臣が大統領選挙プログラムを発表

ドイツ

2016.04.06 独ボン地方裁、福島第一原子力発電所事故後の原子炉一時停止命令に関

する EnBW 社の損害賠償請求を却下

2016.04.27 ドイツ「脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会」、放射性廃棄物管

理資金の連邦基金への移行等を勧告

2016.07.04 独 E.ON 社、福島第一原子力発電所事故後の原子炉一時停止命令を巡る

賠償請求訴訟で一審敗訴

2016.07.05 独「高レベル放射性廃棄物処分委員会」が最終報告書を政府議会に提出

2016.10.19 独連邦政府、放射性廃棄物管理資金の公的基金化等を定める法案を閣議

決定

2016.12.06 独連邦憲法裁、2011 年の原子力法改正に関して補償を求める電気事業者

の主張を一部認める判決

2017.01.25 ドイツで新法「放射線防護法」案が閣議決定

英国

2016.03.17 英 DECC、小型モジュール炉(SMR)の開発事業者の公募を開始

2016.03.24 EDF エナジー社 CEO、英国議会で HPC 新設計画に変更がないことを明

2016.05.13 英 ONR、仏 ASN と EDF から AREVA 社製造機器に関する品質問題につ

いて報告を受ける

2016.06.24 英国原子力産業協会(NIA)会長、EU 離脱決定に対するコメントを発表

2016.07.28 仏 EDF、英ヒンクリーポイント C(HPC)の建設投資を最終決定

2016.09.15 英国、ヒンクリーポイント C 原子力発電所の建設へ

2016.09.29 英 BEIS、仏 EDF、中 CGN がヒンクリーポイント C に係る契約書等に

署名

2016.10.26 英ホライズン社、ウィルヴァ原子力発電所新設の計画許可を英政府に申

請へ ---2017 年 5 月に申請見込み

2017.01.10 英規制機関、中国製原子炉華龍 1 号(HPR1000)の一般設計評価(GDA)

を開始へ

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スイス

2016.09.30 スイス議会、原子力発電所の新設を禁止する原子力法改正を含む法案パ

ッケージ採択

2016.11.27 スイス国民投票、段階的脱原子力の加速を求めるイニシアチブ否決

フィンランド

2016.04.14 フィンランド TVO、2018 年末までの運開に向けてオルキルオト 3 号機

の運転認可を申請

2016.06.22 フィンランド Fennovoima 社が独自の使用済燃料処分場建設に向け手続

きを開始

2016.11.10 フィンランド TVO、オルキルオト 3 号機の建設遅延に関する ICC の部分

的仲裁判断の確定を公表

スウェーデン

2016.04.20 スウェーデン・スタズヴィク社、低レベル放射性廃棄物処理事業を仏 EDF

に売却へ

イタリア

2016.07.28 伊 ENEL 社、スロバキア電力における株式持分売却---チェコ EPH 社に

よる買収第 1 段階が完了

1.2.3. 欧州(東)

スロバキア

2016.07.28 伊 ENEL 社、スロバキア電力における株式持分売却---チェコ EPH 社に

よる買収第 1 段階が完了

チェコ

2016.03.31 チェコ CEZ グループと中国・CGN が原子力等の分野における協力に関

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する覚書(MOU)を締結

2016.07.28 伊 ENEL 社、スロバキア電力における株式持分売却---チェコ EPH 社に

よる買収第 1 段階が完了

ブルガリア

2016.10.26 露 ASE とブルガリア NEK、ベレネ原子力発電所建設プロジェクト中止

に関する和解で最終合意

1.2.4. 旧ソ連諸国

ロシア

2016.06.24 バングラデシュ初となるルプール原子力発電所建設に係る立地許可が発

2016.10.26 露 ASE とブルガリア NEK、ベレネ原子力発電所建設プロジェクト中止

に関する和解で最終合意

2016.11.09 ベトナム、ニントゥアン原子力発電所の建設を中止へ

ウクライナ

2016.11.29 チェルノブイリ 4 号機で新シェルターの設置が完了

カザフスタン

2016.12.06 カザフスタン、中国との共同出資による燃料加工工場の建設を開始

1.2.5. アジア

中国

2016.03.16 中国で第 13 次五カ年計画が策定

2016.03.17 華龍国際核電技術有限公司が正式に発足

2016.03.31 チェコ CEZ グループと中国・CGN が原子力等の分野における協力に関

する覚書(MOU)を締結

2016.07.18 中国、CNEC と CGN が高温ガス炉プロジェクトでの協力に関する合意

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文書に署名

2016.08.10 中国・江蘇省連雲港市で燃料サイクル施設のサイト選定が中断

2016.11.07 中国政府が「電力発展第 13 次五カ年計画」を策定

2016.12.06 カザフスタン、中国との共同出資による燃料加工工場の建設を開始

2017.02.10 中国・国家能源局が「2017 年エネルギー工作指導意見」を公表-AP1000

及び EPR の世界初号機の年内運開計画を提示

韓国

2016.04.14 米韓両国、原子力ハイレベル委員会の第 1 回会議をソウルで開催

2016.05.25 韓国政府、高レベル放射性廃棄物管理基本計画(案)を公示

2016.07.05 韓国政府、原子力輸出戦略レビューを実施

2016.09.13 韓国、慶州地域での地震により月城 1~4 号機を精密点検のため運転停止

2016.10.20 UAE の首長国原子力会社(ENEC)、KEPCO との合弁事業契約締結を発

2016.10.20 韓国電力公社(KEPCO)、UAE バラカ発電所プロジェクト会社に約 9 億

ドルを出資

2016.12.20 韓国、新古里 3 号が商業運転を開始 --- 初の APR1400 運開

2017.01.25 韓国政府、第 5 次原子力振興総合計画を確定

2017.02.07 ソウル行政裁、月城 1 号機の運転延長許可を無効とする判決

台湾

2016.10.21 台湾政府が電気事業法の改正案を公表-2025 年までの脱原子力を法制化

2017.01.11 台湾で 2025 年までの脱原子力を定めた電気事業法の改正法が成立

ベトナム

2016.11.09 ベトナム、ニントゥアン原子力発電所の建設を中止へ

インド

2016.11.11 日本とインド、原子力協定に署名

バングラデシュ

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2016.06.24 バングラデシュ初となるルプール原子力発電所建設に係る立地許可が発

1.2.6. 中東・アフリカ

アラブ首長国連邦

2016.10.20 UAE の首長国原子力会社(ENEC)、KEPCO との合弁事業契約締結を発

2016.10.20 韓国電力公社(KEPCO)、UAE バラカ発電所プロジェクト会社に約 9 億

ドルを出資

南アフリカ

2016.11.11 南ア ESKOM グループの最高経営責任者が辞任

2016.11.25 南アフリカ政府、総合エネルギー計画及び統合資源計画の策定に向けパブ

リックコメントの募集を開始

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2. 参考情報---分析レポート

米国

FY17 予算教書---原子力 R&D と核不拡散関連の予算要求

米国:クラス C を超える(GTCC)低レベル放射性廃棄物の処分を巡る検討状況

図表で見る世界の原子力事情---新規導入国の状況(1)米州・アジア編

米国での SMR の開発状況---先行する NuScale と実用化に向けた関心の高まり

米国:既存発電プラントの CO2 規制「クリーン電力計画」規則の差止め判決とそ

の影響

核セキュリティ・サミット---6 年間の成果と今後

原子力プラントの効率性向上のための米国原子力業界の新たな取組み

米国における電力貯蔵の概況

図表で見る世界の原子力事情---主要国の原子力政策(1)米州・アジア編

米国原子力規制委員会(NRC)のスリム化---議会の圧力と NRC の対応状況

どうなる MOX オプション---米国の余剰兵器級プルトニウム処分計画の行方

図表で見る世界の原子力事情---二国間協定の締結状況(2016 年 5 月現在)

米国 DOE/EIA の年次エネルギー需給見通し---CO2 規制導入でも原子力発電は

増えず

インドとの原子力協力---米国、カナダ、豪州、そして日本

米国における原子力発電に関する意識調査---異なる調査結果とその理解

米国原子力プラントの安全とセキュリティ改善のための福島第一原子力発電所事

故からの教訓―米国科学アカデミーPhase 2 報告書―

米国:原子力発電所の相次ぐ閉鎖とその対応

会社研究---中国 3 大原子力グループ、CNNC、CGN、SPIC

米国大統領選におけるエネルギー・原子力政策および核不拡散政策の論点

米国:原子力規制委員会(NRC)の規制に対するステークホルダーの見解と NRC

の対応

核なき世界を目指したオバマ大統領の政治的遺産

米国の原子力発電の将来~先進炉実用化に向けた取組

原子力セクターを中心とした米国サイバーセキュリティ動向

米国における原子力プラントの新設に関する動き(2016 年)

米国の廃棄物処分・使用済燃料管理政策に関する 2016 年の総括

2016 年の核不拡散・核セキュリティ動向

米国における廃止措置の最新状況

IAEA の核セキュリティ会議

図表で見る世界の原子力事情---世界のエネルギー長期需給展望と原子力(2016 年

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版)

処分場・中間貯蔵施設の「同意に基づくサイト選定プロセス」~オバマ政権下での

検討成果

2016 年版レッドブック---ウラン市場の低迷で投資・探鉱レベルは低く、生産能力

が将来的な課題に

米国における「四年毎のエネルギーレビュー」の第 2 回報告書

カナダ

カナダにおける原子力発電事業の現況

フランス

仏 IRSN、極低レベル放射性廃棄物の管理方針について問題提起---金属廃棄物の一

般産業分野におけるリサイクルも視野に

フランスの長寿命低レベル放射性廃棄物処分プロジェクトの進捗状況---処分場サ

イト公募の失敗からの仕切り直し

福島第一原子力発電所事故から 5 年---仏 IRSN が補完的安全性評価から引き出し

た教訓と商用原子力施設における改善措置の展開

仏 EDF の 40 年超運転に向けた保守・改修計画に関する会計検査院の報告書---政

府の減原子力目標との兼ね合いは?

フランスにおける原子力安全・放射線防護の重要動向と今後の展望---ASN の 2015

年報より

電力市場における原子力発電譲渡制度 ARENH の行き詰まり---自由化市場におけ

る原子力発電の位置づけをめぐり苦慮するフランス

フランスにおける運転中の商用原子炉の重大事故管理に関する IRSN の見解と勧

フランスのエネルギー転換法が原子力規制にもたらす進歩---原子力安全・放射線防

護はどう変わる?

仏フラマンヴィル原子力発電所 3 号機=EPR の事故研究に関する IRSN の見解と

勧告

フランスの高レベル放射性廃棄物管理の進捗 ---地層処分プロジェクトの新たな

スケジュール設定、新規コスト試算の状況

フランスにおける原子炉機器の鋼材異常---問題の核心と対応状況

フランスの第 4 世代高速炉 ASTRID の開発の経緯と現状、そして今後の展望は?

フランスの 2016 年の総括

フランスにおける 90 万 kW 級原子炉の 40 年超運転---規制当局と地域情報委員会

の共同セミナーより

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ドイツ

ドイツ「脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会」勧告---放射性廃棄物管理・

処分資金の公的基金化に道すじ

独「高レベル放射性廃棄物処分委員会」最終報告書---公衆参加型サイト選定に向け

たマイルストーン

ドイツの脱原子力・エネルギー変革政策---高所得者、大企業、外国企業に偏る恩恵

ドイツ E.ON 社、「巨大企業」の看板を下ろすスピンオフは起死回生の一手となる

ドイツ、放射性廃棄物管理に関する体制・制度変更の状況

ドイツの 2016 年の総括

ドイツ、脱原子力政策をめぐる訴訟のゆくえ

英国

英国の原子炉新設の動向---仏 EDF が HPC への投資を決定も英国政府がプロジェ

クトを再検証へ

英国の原子炉新設の動向 --- HPC 建設開始とその他の新設プロジェクトの進捗

英国の 2016 年の総括

英国、原子力産業戦略の見直しへ

スイス

スイス、初の商用発電炉廃止措置計画に着手

福島第一原子力発電所事故から 5 年---スイスにおける「教訓」導出と反映の枠組

スイス、国民投票で原子炉早期閉鎖イニシアチブを否決―原子力法改正が成立

ベルギー

国際エネルギー機関、ベルギーに関する最新のエネルギー政策レビューで脱原子力

政策の再考を勧告

ロシア

ロシアの海外進出動向 2016-原子力超大国の座を狙うロシアの野望-

韓国

2016 年の韓国---UAE プロジェクトが大詰め

国際

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図表で見る世界の原子力事情―主新規導入国の状況(2)欧州・CIS・中東・アフ

リカ編

欧州委員会、福島第一原子力発電所事故後初めて 2050 年までの原子力発電と燃料

サイクル・バックエンドに係る投資額の試算を公表

図表で見る世界の原子力事情---主要国の原子力政策(2)欧州編

ウラン濃縮に関する最近の話題

図表で見る世界の原子力事情---新規導入国の状況(1)米州・アジア編

図表で見る世界の原子力事情―主新規導入国の状況(2)欧州・CIS・中東・アフ

リカ編

EU トピカル・ピアレビュー2017“原子力発電所の高経年化対策”に向けて(そ

の 1)---国別報告書の作成に関する ENSREG の委任事項より

EU トピカル・ピアレビュー2017“原子力発電所の高経年化対策”に向けて(そ

の 2)---国別評価報告書の作成に関する WENRA の技術仕様書

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3. 資料とりまとめの一覧

本章では、当該期間において、海外の原子力動向のうち特に重要と考えられる事項につき

重点的に調査を実施し、経済産業省資源エネルギー庁殿に報告した成果を以下に示す。本章

における記載内容は、経済産業省資源エネルギー庁殿への報告時点のものである。

(1) 諸外国における原子力発電プロジェクトの資金調達の方法について

1. 米国

(1)国内プロジェクトに係る連邦債務保証

米国では、2005 年エネルギー政策法の第 XVII 章に基づき、大気汚染物質または温室効

果ガスを回避/削減可能で、米国で使用されている商業技術と比べて新しいか著しく向上

している技術を用いるプロジェクトを対象とした、連邦債務保証プログラムが運用されて

いる。先進的原子力施設も適格な技術として認められている。

同プログラムでは、プロジェクトコストの 80%を限度として債務保証が行われる。債務

保証コスト(保証料に相当)は借り手が負担することとされ、DOE は、保証料計算につい

て OMB の審査・承認を受け、債務保証の条件について財務長官と協議した上で、申請者

と保証契約を締結する。債務の 100%を保証の際は連邦融資銀行(FFB)が融資する。

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三菱総合研究所作成(「平成25年度発電用原子炉等利用環境調査(海外における原子力政策等実態調査)」

資料編より引用)

連邦債務保証のメカニズム

先進的原子力施設のための債務保証枠は、2008 会計年度(FY08)歳出予算法により 185

億ドルと定められているが、発給済みの債務保証はヴォーグル 3、4 号機(AP1000)の建

設プロジェクトに関連する 83 億ドルに留まっている。

エネルギー省(DOE)は、残る約 100 億ドルの保証枠について、対象となる施設として、

先進原子炉に加え小型モジュール炉(SMR)、既設炉の増強及び改良を加えた形で追加応募

を受け付けており、現在も募集中である。

(2)国外プロジェクトに係る輸出信用保証

米国の公的な輸出信用機関(ECA)としては、1945 年の輸出入銀行法(PL79-173)に

基づき設置されている輸出入銀行(EXIM)がある。EXIM は米国製品の輸出促進及び国内

の雇用促進を目的としている。

EXIM は民間部門では引受けを行わない中長期の直接融資や輸出信用保証の供与なども

行っており、2012 年にはアラブ首長国連邦(UAE)における原子炉建設計画に関して、ウ

ェスティングハウス(WH)社による設備供給、サービス提供を保証するための 20 億ドル

エネルギー長官(DOE)

連邦議会•債務保証枠の決定(歳出法で規定)•債務保証コストの政府支給の決定

(歳出予算を決定しない限り事業者負担→原子力は事業者負担)

(DOE)•債務保証適用規則の制定•適用申請者の募集・審査・選定•債務保証条件の交渉・決定(Treasury)•債務保証条件の交渉・決定(OMB)•債務保証料計算の審査・承認

連邦政府各組織の役割

財務長官(Treasury)

保証料計算等の提示

行政管理予算局

(OMB)

協議 保証料計算の審査・承

認保証

(Pjコストの80%限度)

申請、手数料・保証料納付

募集、審査、適用決定

債務保証契約・支払協定

連邦議会債務保証枠決定

借り手(プロジェクト実施者)

銀行等の融資者

融資 返済30年又はPj期間の90%内に完済

債務の100%の保証を受ける場合は連邦融資銀行(FFB)が融資

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38

の直接融資が承認された。

なお米国の ECA としては海外民間投資公社(OPIC)もあるが、原子力プロジェクトへ

の支援は行わない方針を掲げている。

(出所)

・Energy Policy Act of 2005

http://www.energy.gov/sites/prod/files/2014/03/f14/EPAof2005.pdf

・Consolidated Appropriations Act, 2008 , Division C—Energy and Water Development

and Related Agencies Appropriations Act, 2008

https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/CPRT-110HPRT39564/pdf/CPRT-110HPRT39564-Divi

sionC.pdf

・Federal Register Vol. 74, No. 232, 63544, Loan Guarantees for Projects That Employ

Innovative Technologies

http://www.energy.gov/sites/prod/files/2014/03/f11/FR-1703-Dec4.pdf

・DOE, Loan Guarantee Solicitation Announcement

http://www.energy.gov/sites/prod/files/2015/12/f27/DOE-LPO_ADV-NUCLEAR_Solici

tation_10-Dec-2014.pdf

・Energy Department Issues Remaining $1.8 Billion in Loan Guarantees for Vogtle

Advanced Nuclear Energy Project

http://www.energy.gov/articles/energy-department-issues-remaining-18-billion-loan-

guarantees-vogtle-advanced-nuclear

・Draft Advanced Nuclear Energy Projects Loan Guarantee Solicitation

http://www.energy.gov/sites/prod/files/2014/09/f18/Draft%20Advanced%20Nuclear%2

0Solicitation%20presentation.pdf

・Congressional Research Service, Export-Import Bank: Overview and Reauthorization

Issues, June 30, 2014

http://fas.org/sgp/crs/misc/R43581.pdf

・NEI ウェブサイト(Federal Coordination)

http://www.nei.org/Issues-Policy/Exports-Trade/Federal-Coordination

2. 英国

(1)国内の重要インフラ施設建設のための資金調達における政府の債務保証制度

英国政府は 2012 年 7 月、インフラ施設への投資促進のため、民間事業者がインフラ投資

のために市場から資金を調達する場合に、政府がその債務保証を行っていく方針を発表した。

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英国政府は、各インフラ・プロジェクトの商業性・経済性によるものだけでなく、世界的な

金融危機によって資本・金融市場の制約が増大し、また、借入が認められるまでに非常に長

期間を要することなどを背景に事業者による資金調達が困難となっており、結果として国家

にとって重要なインフラ施設への投資が進んでいないことを踏まえ、このような支援を行う

としている。

2012 年 10 月 31 日、インフラ・プロジェクト投資のための事業者による資金調達におい

て政府が債務保証を実施できる制度について規定したインフラ法が制定され、同日に発効し

た。同法において、政府による債務保証制度の対象となるインフラ・プロジェクトは、水・

電力・ガス・通信・下水・鉄道・道路・交通施設・保健施設・教育施設・裁判所・刑務所・

住居施設とされている。また、本制度の財源は統合国庫資金(日本の一般会計に相当)であ

り、その予算額は 500 億ポンドとなっているが、既にそのうちの 100 億ポンドは住居施設

用として充当されている。なお、本制度の開始当初は、その申請期限は 2014 年 12 月まで

とされていたが、2013年6月に2016年12月までに2年間延長されることが決定している。

英国政府によるインフラ投資に対する債務保証制度の概略図を以下に示す。

英国政府による債務保証制度

本制度では、英国政府により事業者の債務についての無条件・取消不能の保証が提供され

る。また、事業者発行の債権を購入する投資家も貸手と同様に債務保証される。なお、保証

料率は市場レートで請求されることとなっているが、保証料率及びその決定方法等について

の情報は現時点で公表されていない模様である。

英国政府は前述の 500 億ポンドの予算枠の中で債務保証を行うプロジェクトを選定して

いる。債務保証の対象となるプロジェクトは表に示すように 4 つの段階を経て決定される

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40

ことになっている。

英国政府が債務保証を行うプロジェクトの選定段階

第 1 段階 事業者がプロジェクトを英国財務省に申請

第 2 段階 プロジェクトが保証制度の対象となる可能性があるかについて財務省の

担当大臣が決定 → 予備承認(Pre-qualification)

第 3 段階 プロジェクトに対する評価及びデュー・デリジェンスの実施

第 4 段階 財務省内部のリスク委員会にて審議

→ 財務大臣がプロジェクトを承認

英国財務省によるプロジェクトの予備承認(pre-qualification)に向けた審査においては、

信用度、開発段階、保証の必要性、重要度、費用対効果等が考慮される。予備承認後、本審

に入り、貸付側と財務省による一般的なデュー・デリジェンスが行われる。最終段階では、

プロジェクトは財務省内部のリスク委員会に諮られた後、財務大臣に承認されて債務保証が

受けられる資格を得る。

英国会計検査院(NAO)は、予備承認に関しては以下の 5 つの要件があるが、財務省は

特に重要な、「保証の必要性」および「費用対効果」については要件を細かく定めていない

としている。一方、財務省側は、客観的検証はプロジェクトにとって好ましくない要件とな

りうる可能性があるのでこれら 2 つの要件には柔軟性を持たせているとしている。

要件1.重要度

政府の国家インフラ計画(毎年更新)で特定されているように国家的に重要なプロジェク

トか。

要件2.

保証が付与されてから 12 カ月以内に建設が開始できる準備ができているか。必要な計画

許可やその他の開発合意が取得されているか(または間もなく取得か)。

要件3.信用度

エクイティファイナンスが確約されており、納税者へのリスクを制限するためにプロジェ

クト支援者がプロジェクトの適切な再構築を受け容れられるか。

要件4.保証の必要性

プロジェクトを進めるために保証が不可欠か、保証が無ければ合理的なスケジュール内に

資金調達を行うことができないのか。

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要件5.費用対効果

財務省がプロジェクトについて受容可能な信用品質かを評価した結果、納税者にとって良

い価値があるものか。受容不可能な財政・経済リスクがないか。経済成長にプラスの効果が

あるか。

新規原子力発電所に関しては、英国政府は、EDF グループが計画するヒンクリー・ポイ

ント C 原子力発電所(HPC)への債務保証制度の適用が可能であるとの予備承認をしたこ

とを 2013 年 6 月に、約 20 億ポンドの債務保証を行うことを承認することを 2015 年 9 月

に公表している。ホライズン社による新設、NuGen 社による新設についても、債務保証制

度の適用に関して、政府との間での協議が行われている。

(出所)

Infrastructure UK、2012 年 7 月、Chancellor announces UK Guarantees Scheme、

https://www.gov.uk/government/news/chancellor-announces-uk-guarantees-scheme

Infrastructure Act (Financial Assistance) 2012、

http://www.legislation.gov.uk/ukpga/2012/16/contents

Infrastructure Act (Financial Assistance) 2012 Explanatory Notes、

http://www.legislation.gov.uk/ukpga/2012/16/notes/contents

HM Treasury、Investing in Britain’s future、2013 年 6 月、

https://www.gov.uk/government/publications/investing-in-britains-future

HM Treasury、UK Guarantees scheme key documents、A brief overview of the

standard documentation (prepared by Allen & Overy)、

https://www.gov.uk/government/publications/uk-guarantees-scheme-key-documents

HM Treasury、UK Guarantees scheme: prequalified projects、

https://www.gov.uk/government/publications/uk-guarantees-scheme-prequalified-pr

ojects/uk-guarantees-scheme-table-of-prequalified-projects

HM Treasury、Chief Secretary announces government's new approach to PF2

infrastructure investment、201 年 10 月、

https://www.gov.uk/government/speeches/chief-secretary-announces-governments-n

ew-approach-to-pf2-infrastructure-investment

HM Treasury、New projects pass ‘first hurdle’ to secure government guarantee

for infrastructure、2013 年 10 月、

https://www.gov.uk/government/news/new-projects-pass-first-hurdle-to-secure-gove

rnment-guarantee-for-infrastructure

英国会計検査院(NAO)、UK Guarantees scheme for infrastructure、2015 年 1 月、

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42

http://www.nao.org.uk/wp-content/uploads/2015/01/UK-Guarantees-scheme-for-infr

astructure.pdf

財務省ウェブサイト、

https://www.gov.uk/government/news/2-billion-support-for-hinkley-point-c

ホライズン社ウェブサイト、http://www.horizonnuclearpower.com/news

NuGen 社ウェブサイト、http://www.nugeneration.com/news-02122014.html

(2)国外プロジェクトへの輸出における政府支援(公的貿易保険制度)

英国における公的貿易保険制度は英国輸出信用保証省(UKEF:UK Export Finance)

によって運営されている。UKEF は英国政府の貿易保険担当機関であり、民間企業である

ドイツの Euler Hermes やフランスの Coface などとは根本的に異なる。UKEF は、英国

企業による輸出促進の為、1919 年に世界で初めて設立された輸出信用機関(ECA) の現

在の組織である。

UKEF は、民間企業によってカバーされないリスクに対し保証・保険を輸出事業者・金

融機関・投資家に提供すること、また海外事業者に英国の輸出事業者との契約額の 85%を

上限として、直接貸付や銀行からの借入に対する債務保証を付与することで、輸出事業者を

支援している。

OECD による分類カテゴリーにより、信用付与期間(償還期間)は、カテゴリー1 の国

の場合は通常 8.5 年間、カテゴリー2 の国の場合は通常 10 年間となっているが、発電所、

大型飛行機、船舶、再生可能エネルギー、水等のプロジェクトについては、それよりも長期

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間の設定が可能となっており、原子力発電プロジェクトに関しては最長 18 年間とされてい

る。

この他に原子力に対して特に設けられているファイナンス投資のスタンスや制度につい

ての情報は確認できない。過去 5 年において UKEF が原子力プロジェクト関連で実施した

支援は以下の 3 件である。

2011 年度において、英 Clyde Union Holdings 社による、中国原子能工業公司(CNEIC)

へのポンプの輸出に関して、債務保証(約 580 万ポンドまで)を付与

2013年度において、英Arcade社による、スイスにある欧州共同原子核研究所(CERN)

へのポンプの輸出に関して、債権支援スキーム(BSS)1により 約 6 万 4,000 ポンド相

当の債権を発行

2015 年度において、英 Sensonics 社による、アラブ首長国連邦(UAE)で建設中の原

子力発電所向けの振動モニタリング機器の輸出に関して、BSS により約 14 万ドル相当

の債権を発行

(出所)

• 経済産業省殿委託調査 「平成 20 年度 輸出信用機関(ECA)のバイヤープレミアム

制度に関する調査報告書」(三菱総合研究所受託)

http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/trade_insurance/pdf/itaku/20n

endo-eca-premiaum.pdf

• 英国政府ウェブサイト、UK Export Finance、

https://www.gov.uk/government/organisations/uk-export-finance

https://www.gov.uk/government/organisations/uk-export-finance/about

• 英 国 政 府 ウ ェ ブ サ イ ト 、 UK Export Finance Business Plan 2014-17 、

https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/3214

03/UKEF_Business_Plan_2014-17.pdf

• UK Export Finance、1Competitive Finance your purchases from UK exporters、

https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/4910

43/UKEF_Overseas_marketing_brochure_GLOBAL.pdf

• UK Export Finance、Take your business further、

https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/3036

83/UKEF_Brochure_v2_04.14.pdf

1 海外顧客から事前に債権等の発行を求められた場合に、UKEF による保証を受けた民間

銀行が債権を発行するというスキーム

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• Export Credits Guarantee Department, Annual Report and Accounts 2011–12,

https://www.gov.uk/government/publications/annual-report-and-accounts-2011-to-2

012--7

• UK Export Finance, Annual Report and Accounts 2013-14,

https://www.gov.uk/government/publications/annual-report-and-accounts-2013-to-2

014--2

• 英国政府ウェブサイト、We helped Sensonics win a flagship export contract、

https://www.gov.uk/government/case-studies/how-uk-export-finances-bond-support-

scheme-helped-a-uk-company-win-a-flagship-export-contract

3. フランス

(1)国内の電力多消費事業者向け Exeltium 社による資金調達スキーム2

鉄鋼、アルミニウム、化学等の電力多消費事業者が電気料金の上昇にさらされるリスクを

回避し、国際競争力を維持する目的で、フランス政府は 2005 年 7 月、これらの事業者を集

めたラウンドテーブルを開催し、この結果、これらの事業者が参加し、最適な条件で資金調

達と電力供給を行うためのコンソーシアム Exeltium 社が 2006 年 5 月に設立された。

EU 大で実施された公募の結果、Exeltium 社はフランス電力(EDF)との間で 2007 年 4

月、EDF の原子力発電をベースとした競争力のある価格で 24 年間にわたり 3,110 億 kWh

の電力供給に関するパートナーシップを締結した。その後、欧州委員会からの合意を取り付

けた後、2008 年 7 月に、EDF と Exeltium 社は契約を締結した。

しかし、2008 年秋以降の金融危機をうけて、当初 Exeltium 社が EDF に支払うとしてい

た初期払込み金 40 億ユーロの調達が困難になったことから、電力供給契約の遂行は、以下

の 2 フェーズに分割されることとなった。

24 年間にわたり 1,480 億 kWh を供給。初期払込み金として 17.5 億を EDF に支払う。

24 年間にわたり 1,630 億 kWh を供給。

この契約に基づき、EDF は 2010 年 5 月 1 日以降、第 1 フェーズとして、Exeltium 社に

出資する 27 事業者の工場等の産業サイトへの電力供給を開始している。

Exeltium 社による資金調達スキームを以下の図に示す。

2 Exeltium 社ウェブサイト、

http://www.exeltium.com/le-projet/#rendre-de-la-visibilite-aux-industriels-electro-intens

ifs

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45

なお、第 2 フェーズは 2011 年から開始される計画であったが、電力市場新体制(NOME)

法に基づく原子力発電電力量の一部を EDF 以外の小売事業者に譲渡する制度(ARENH)

の導入、電力需要の低下等の要因から、開始されていない。また、開始の検討に関する議論

も停滞している。

(2)国際プロジェクトに係る輸出信用保証

フランスにおける公的貿易保険制度は、Coface(Compagnie Francaise d’Assurance Pour

Le Commerce Exterieur)によって運営されている。Coface は1946 年に輸出信用保証を

提供するための企業としてフランス政府によって設立され、1994年に民営化されたが、政

府に代わり輸出信用保証を提供する業務を継続している3。

政府信用保証を希望する事業者は、Coface に対し、申請を提出する。Coface は申請内容

について、政府の輸出信用保証方針、OECD 輸出信用アレンジメント4、腐敗行為防止に係

る規則、環境影響に係る規則等に照らして分析し、事業リスクを評価する。Coface の審査

を受けた事業は、政府からの委任を受けた Coface 内部委員会または財務省管轄の政府保

証・輸出信用委員会の審議に付され、信用保証を提供するかどうかの判断がなされ、信用保

3 Coface ウェブサイト、http://www.coface.com/Group/Our-history 4 OECD 貿易委員会が事務局となり、参加国の間で取り決めた紳士協定。公的な輸出信用

等の条件面における過当競争を回避するために、①最低保険料率(ミニマム・プレミアム・

レート)、②15%の頭金、③最長返済・償還期間、④最低貸出金利などを定めたもの。

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証が提供される場合には、信用期間、保証金額等について決定される5。

Coface は仏原子力産業の輸出プロジェクトに対しても信用保証を提供した実績がある。

例えば、フィンランド・オルキルオト 3 号機(欧州加圧水型原子炉:EPR)の建設プロジ

ェクトについては、AREVA 社に対し、5 億 7,000 万ユーロの信用保証を提供している6。

なお、2008 年末時点で EDF は、中国における原子力開発や米国における EPR 建設プロ

ジェクトに関して、Coface からの支援が期待できるとの見方を示していたが、EDF が実際

に Coface からの信用保証を得たかどうかについての情報は確認できない7。

4. ドイツ

(1)国内における公的投資支援策

1998 年に脱原子力政策を開始したドイツでは、2002 年の原子力法改正発効以後、国内に

おける原子力発電所の建設が禁止されている。国内の原子力発電プロジェクトにおける資金

調達等に対する公的な支援は存在しない。

(2)輸出に対する公的投資支援策

現在、原子力発電事業は対象除外であるが、かつては原子力関連の輸出案件にも連邦政府

勘定の輸出保証(貿易保険含む)である「ヘルメス保証」が付与された実績がある。

2016 年現在、国外の原子力発電所への輸出案件は付保対象から除外されている(研究炉

等は引き続き対象となりうる)。

「ヘルメス保証」は、1949 年に当時の西ドイツによって開始された連邦政府勘定による

輸出保証制度(貿易保険含む)であり、当初から民間企業(ユーラー・ヘルメス社等コンソ

ーシアム)に委託して運用されてきた。所管官庁は、連邦経済エネルギー省(BMWi)であ

る。

ヘルメス保証における原子力発電分野の取扱いは、1998 年に成立した社会民主党(SPD)

と緑の党の連立政権が脱原子力政策を開始して以降、以下のような変遷をたどった。

• 2001 年: SPD・緑の党が、「ヘルメス環境ガイドライン」策定。原子力関連輸出を付

5 財務省ウェブサイト、http://www.tresor.economie.gouv.fr/7723_l-assurance-credit 6 Coface ウェブサイト、

http://www.coface.fr/content/download/2802/38908/file/gc2_04.pdf 7 2008 年 12 月 4 日、EDF Investor Day 資料、

https://www.edf.fr/sites/default/files/contrib/groupe-edf/espaces-dedies/espace-finance-e

n/financial-data/investors-analysts/events/investor-day-workshops/edf_investorday_full

_va.pdf

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47

保対象から除外

• 2009 年:キリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)の連立政権8

が、輸出に対する政府の保険付与に際して「欧州共通のガイドライン(OECD のガイ

ドライン)のみを基準とする」ことを決定。ヘルメス環境ガイドラインを廃止。原子力

発電向け輸出への保証付与再開

• 2014 年:2013 年 12 月に SPD が政権復帰9。福島第一原子力発電所事故後の原子力に

批判的な世論風潮も受け、原子力発電向け輸出をあらためて対象から除外。(2001 年の

ガイドラインのような明文化は確認していない)

上記のように、ドイツでは脱原子力政策開始後も、一時期であるが、原子力発電向けを含

めた輸出案件に対する保証の付与が実施された。2014 年の連邦議会資料によれば、2009

年のヘルメスガイドライン廃止後、2014 年 4 月 1 日時点までに実際に保証付与された原子

力関連の輸出案件(発電所対象以外含む)は、下表の 11 件、総額 5215 万ユーロである。

なお、2011 年の福島第一原子力発電所事故以後も 2014 年 6 月まで、連邦政府は原子力

発電所案件を明示的に保証対象外とする方針は示していない。ただし、2010 年に 13 億ユ

ーロあまりの保証付与が仮決定されていたブラジルのアングラ 3 号機建設プロジェクト関

連の輸出案件(申請者:AREVA 社のドイツ子会社)は、2011 年の福島第一原子力発電所

事故後の影響で最終決定が出されないまま、申請者により申請が撤回されている。

(2009 年以降) 輸出物品 対象国/施設

保証額

(100 万ユーロ)

2009 水中のウラン含有計測

のための試験技術

フランス、ピエール

ラットウラン濃縮施

0.08

2010 工業用バルブ 中国、台山原子力発

電所 10.7

2010 コンポーネント フランス、国際熱核

融合実験炉(ITER) 7.05

2010 鋼板、広径配管、鋼鉄、

機械類等

中国、台山原子力発

電所 12.0

2010 放射線計測機器 ロシア(施設不明) 0.375

8 第 2 次メルケル政権。原子力に批判的な SPD が下野、原子力に好意的な FDP の入閣に

伴い、原子炉新規建設の禁止は維持するものの、既存炉への生涯発電電力量積み増しによる

運転期間延長を図るなどの措置を実施した。(ただし 2011 年の福島第一原子力発電所事故

を受け、運転延長方針撤回。) 9 第 3 次メルケル政権(CDU/CSU、SPD)。原子力に批判的な SPD が政権復帰。

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2010 放射線計測機器 リトアニア(施設不

明) 0.08

2010 放射線計測機器 スロベニア(施設不

明) 0.025

2010 放射線計測機器 韓国(施設不明) 0.55

2010 放射線計測機器 中国(施設不明) 0.25

2010 放射線計測機器 ルーマニア(施設不

明) 0.15

2012 コンポーネント フランス、ITER 20.89

その後連邦政府は 2014 年 6 月、原子力発電に関連する施設(新規建設・既存施設両方)

への輸出案件をヘルメス保証の対象から原則除外することを決定した。この決定について、

BMWi のガブリエル大臣は、同省のプレスリリースにおいて、ドイツが国内で脱原子力を

行う以上、国外の原子力発電所に対しても政府勘定の貿易保険を供与しないことは、当然の

帰結であると述べている。

ただし、同プレスリリースに拠れば、既存施設の安全性向上や、廃止措置・解体・廃棄物

管理といったバックエンドに関わる物資やサービスの提供は、例外的に貿易保険の対象とし

て認められることもあるという。また、研究炉や核医学関連施設など、商用発電以外の目的

に利用される原子力設備に関する案件は、引き続き対象とされる。

(出所)

• 連邦経済エネルギー省(BMWi) ドイツ連邦政府公的輸出保証制度ウェブサイト

http://www.agaportal.de/index.html

• 輸出保証付与に関する連邦政府ガイドライン(1984 年 1 月 1 日発効)

http://www.verwaltungsvorschriften-im-internet.de/bsvwvbund_30121983_VC2504

229.htm

• BMWi プレスリリース、2014 年 6 月 12 日

http://www.bmwi.de/DE/Presse/pressemitteilungen,did=642020.html

• 経済産業省殿委託調査 「平成 20 年度 輸出信用機関(ECA)のバイヤープレミアム

制度に関する調査報告書」(三菱総合研究所受託)

http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/trade_insurance/pdf/itaku/20n

endo-eca-premiaum.pdf

• 連邦議会議事録 Drs.17/540、2010 年 1 月 27 日

http://dip21.bundestag.de/dip21/btd/17/005/1700540.pdf

• 連邦議会議事録 Drs.18/968、2014 年 4 月 1 日

Page 49: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

49

http://dipbt.bundestag.de/dip21/btd/18/009/1800968.pdf

5. フィンランド

フィンランドにおける原子力発電事業に対する公的支援は確認できないが、同国にはフィ

ンランド特有の「マンカラ」(Mankala)・モデルが存在しており、原子力発電事業もこれ

を活用して進められている。

マンカラは複数の出資者(エネルギーの卸売事業者、小売事業者、エネルギーを大量に消

費する産業分野の企業)により共同保有され、出資者はマンカラの事業費用を負担する。マ

ンカラ・モデルの主要な目的の一つは、各出資者が単独で行うには規模が大きすぎるプロジ

ェクトを複数で実施することである。原子力のように、スケジュール遅延や費用増等に大き

な影響を受けるプロジェクトにおいて、出資者間で建設完了リスクを分散することができる

ため、マンカラ・モデルは本質的に融資を受けやすいモデルであるとの見方もある。金融関

係者は、リスクの分散手法に関連して下記の特徴を挙げている10。

リスクの異なる出資者間での分担リスクを引き受ける出資者の質の高さ

リスクを共有する/引き受ける出資者の数の多さ

リスクを共有する/引き受ける出資者の結束力

オルキルオト 1、2 号機を運転し、さらに同 3 号機(EPR)の建設を進めるフィンランド

林業関係電力会社(TVO)は、保有株式に応じて発電電力量を発電原価(cost price)で出

資者に販売する”マンカラ”である。

TVO の総売上高、自己資本比率、職員数の推移は下表のとおりである11。

2011 2012 2013 2014 2015

総売上高(百万ユーロ) 347 347 363 325 273

自己資本比率(%) 29.3 28.5 29.4 30.0 28.9

職員数(人) 847 879 890 858 791

TVO の構成は以下の図のとおりである12。

10 2009 年 10 月 22 日、ノルデア銀行資料、

http://www.ben.ee/public/Tuumakonverentsi%20ettekanded%202009/Peter%20S.%20Tr

eialt%20-%20Mankala%20principles.pdf 11 TVO ウェブサイト、http://www.tvo.fi/Key%20figures 12 TVO ウェブサイト、http://www.tvo.fi/Company%20information

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50

TVO の出資構成

TVO が運転するオルキルオト 1、2 号機(OL1、OL2)及び建設を進める同 3 号機(OL3)、

さらに Meri-Pori 石炭火力発電所それぞれのプロジェクトによる発電電力量の各社に対す

る割当比率及び TVO 全体の出資比率は下表のとおりである。

OL1/OL2 OL3 Meri-Pori 全体の出資比率

EPV Energia Oy 6.5 6.6 6.5 6.5

Fortum Power and Heat Oy 26.6 25.0 26.6 25.8

Karthu Voima Oy 0.1 0.1 0.1 0.1

Kemira Oyj 1.9 - 1.9 1.0

Oy Mankala Ab 8.1 8.1 8.1 8.1

Pohjolan Voima Oy 56.8 60.2 56.8 58.5

合計 100 100 100 100

TVO(マンカラ)

EPV Energia社Fortum Power and Heat社Karhu Voima社Kemira社Mankala Ab社

Pohjolan Voima社(マンカラ)

OL1、2 OL3Meri-

Pori

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51

(2) 英国での原子炉運転期間の延長認可について

(1)EDF エナジーがそれぞれの改良型ガス冷却炉(AGR)の運転延長申請を発表したあ

とに、原子力規制局(ONR)が実際に延長を認可したプラント

EDF エナジー社が発表したのは AGR の運転延長の意向であり、2016 年 4 月の段階では

未だ申請の段階に入った原子力発電所はない。英国における原子炉運転期間について、以下

に概要を示す。

●英国の原子炉運転期間について

英国では原子炉の運転継続のためには ONR による定期安全レビュー(PSR)を受け、ONR

から承認を得なければならないが、運転延長や PSR についての期間を具体的に定めた法令

等はない。ONR は通常、運転開始から 10 年毎に PSR を実施することを事業者に求めてい

る。したがって、最初の運転の際の安全性確認またはその後の PSR の結果として、運転が

認められる期間は多くは 10 年間となっているが、必ずしも全ての炉に 10 年間の運転が認

められてきたわけではない。

以下に、現在運転中の 14 基のガス改良型炉(AGR)と 1 基の PWR の PSR の実施時期と

現在の運転承認期限を示す。

なお、最初の PSR の実施時期が 10 年をかなり超えて実施されている原子炉があるが、そ

の理由を示した情報は確認できなかった。ただ、現在は全て廃止措置段階に入っているガス

冷却炉(GCR、通称マグノックス炉)については、PSRの前身である長期安全レビュー(LTSR)

を 25 年以内に実施することとなっていたため、1990 年代に入っての PSR への移行の際に

変則的に第 1 回目の PSR が実施されたためと考えられる。

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【出典】

ONR 、 原 子 力 サ イ ト 許 可 条 件 、 Nuclear Site Licensing Condition 、

http://www.onr.org.uk/documents/licence-condition-handbook.pdf

ONR ウェブサイト、Operating reactors、

http://www.onr.org.uk/civil-nuclear-reactors/operating-reactors.htm

ONR ウェブサイト、Periodic Safety Reviews (PSRs)、

http://www.onr.org.uk/periodic-safety-review/index.htm

DECC、第 5 回原子力安全条約報告書、http://www.onr.org.uk/cns5.pdf

(2)英国における原子炉の運転延長許可付与の仕組み(概要)

①英国には法的な寿命はなく、ONR が実施する10年毎の安全レビュー(PSR)において

向こう 10 年の運転可否が判断される。

②マグノックス炉の設計寿命は 25 年、AGR の設計寿命は 30 年(会計上の寿命は 25 年)

で、これが事業者にとっての運転期間の一つの目安ではあるが、個々の炉の運転期間につい

ては、事業者がその経済性などを鑑みて判断する。

③ONR は 10 年毎の安全レビュー(PSR)において「付与されたサイト許可の条件に合致

し、向こう 10 年間、炉を運転するだけの安全性が担保されているか」を判断するのみであ

り、PSR を実施後の廃炉時期は、事業者が炉の経済性などをもとに判断する。

所有者/運転者

発電所設備容量(万kW)

炉型 運開年PSR

(1回目)PSR

(2回目)

現在のONRによる承認期限

ハンターストンB1 47.5 AGR 1976 1996 2006 2016ハンターストンB2 48.5 AGR 1977 1996 2006 2016ヒンクリーポイントB1 47.5 AGR 1976 1996 2006 2016ヒンクリーポイントB2 47.0 AGR 1976 1996 2006 2016ハートルプール-1 59.5 AGR 1983 1998 2008 2018ハートルプール-2 58.5 AGR 1984 1998 2008 2018ヘイシャム1-1 58.0 AGR 1983 1998 2008 2018ヘイシャム1-2 57.5 AGR 1984 1998 2008 2018ダンジネスB1 52.0 AGR 1983 1997 2007 2017ダンジネスB2 52.0 AGR 1985 1997 2007 2017ヘイシャム2-1 61.0 AGR 1988 1999 2009 2019ヘイシャム2-2 61.0 AGR 1988 1999 2009 2019トーネス-1 59.0 AGR 1988 1999 2009 2019トーネス-2 59.5 AGR 1989 1999 2009 2019サイズウェルB 119.8 PWR 1995 2005 2014 2025

EDFエナジー社

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④EDF エナジーは複数の AGR の運転延長方針を同じタイミングで発表しているが、実際

は個々の炉がPSRのタイミングを迎えた際にONRがそれぞれについて 10年間の延長可否

を判断しているため、ONR から全ての炉について同時に延長を認める発表がなされるわけ

ではない。

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(3) 欧州委員会(EC)の PINC 報告書について

① 2016 年原子力計画指針(PINC)報告書と 2007 年 PINC 報告書における原子力発電シ

ェア見通しとの比較

② IEA 等、他の国際機関が示している原子力発電シェア見通しとの比較

2007 年 PINC では、2016 年で示されているような EU における発電電力量における原

子力発電シェアは示されていない。

EU のみ 2007 年 PINC 2016 年 PINC

原子力発電利用

EU 加盟国数

15 カ国 14 カ国

基数 152 基 129 基

総発電設備容量 記載なし 約 1 億 2,000 万 kW

発電電力量における

原子力発電のシェア

記載なし 2015 年:27%

2050 年:20%

2007年PINCでは、国際エネルギー機関(IEA)の 2006年版「世界エネルギー展望」(World

Energy Outlook)での全世界ベースでの数値が、以下のように引用されている。なお、2016

年 PINC では IEA の数値等は引用されていない。

原子力発電利用国数 31 カ国

基数 443 基

原子力発電設備容量 3 億 6,800 万 kW 超

原子力発電による

電力供給シェア

現在:15%

2030 年:8%

また、IEA の 2015 年版「世界エネルギー展望」や国際原子力機関(IAEA)の年次報告

書「2050 年までのエネルギー、電力、原子力発電の予測」の 2015 年版において、今回の

PINC 報告書で示されたような EU 内における原子力シェア見通しは示されていない。

【出典】

欧州委員会、2016 年 PINC(Nuclear Illustrative Programme)報告書、

http://ec.europa.eu/transparency/regdoc/rep/1/2016/EN/1-2016-177-EN-F1-1.PDF

欧州委員会、2007 年 PINC(Nuclear Illustrative Programme)報告書、

http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52006DC0844&fr

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om=EN

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(4) 中国・ロシア製原子炉の国外進出状況

1. 中国

国名 運転中 建設中 計画中 備考

(WNA の計画中ステータスに含まれないが、中

国の進出が何らか具体的に動いている案件の概

要を示しました)

パキスタン 2(CNP-300) 2(CNP-300) 2(華龍 1 号)

アルゼンチン 0 0 0 同国 5 基目の原子炉として、華龍 1 号の導入を検

英国 0 0 0 ブラッドウェルB原子力発電所への華龍1号の導

入を検討

サウジアラビア 0 0 0 中国の高温ガス炉建設プロジェクトのための

MOU に署名済

【出典】

World Nuclear Association ウェブサイト

http://www.world-nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-a-f/china-nuclear-power.aspx

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2. ロシア

国名 運転中 建設中 計画中13 備考

(WNA で運転中、建設中、契約済(Contracted)

の案件を抽出)

ウクライナ 2(VVER-1000) 0 0

イラン 1(VVER-1000) 0 2(VVER-1000)

中国 2(VVER-1000) 2(VVER-1000) 0

インド 1(VVER-1000) 1(VVER-1000) 2(VVER) 計画中の詳細な炉型は未定

ベラルーシ 0 2(VVER-1200) 0

バングラデシュ 0 0 2(VVER-1200)

トルコ 0 0 4(VVER) 詳細な炉型は未定

ベトナム 0 0 2(VVER-1200)

フィンランド 0 0 1(VVER-1200)

アルメニア 0 0 1(VVER-1000)

【出典】

World Nuclear Association ウェブサイト

http://www.world-nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-o-s/russia-nuclear-power.aspx

13 WNA で契約済(Contracted)の案件を記載

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(5) 脱原子力国の Pu 管理方針について

1. ドイツ

ドイツでは 2000 年の脱原子力協定及び 2002 年原子力法制定に伴い、2005 年 7 月以降、

再処理を目的とした使用済燃料の国外輸送が禁止された。

既契約分については、原子力法 9a 条(c)において、上記期限までに英仏に輸送された使用

済燃料の再処理により抽出された Pu を、全て燃料(MOX 燃料)に加工し、原子炉で燃焼

することが義務づけられている。基本的には国内の原子炉への装荷が前提とされているが、

発電用途の燃料として確かに燃焼するということを確約する、拘束力を有する確認書を提示

することにより、EU 域内及びスイスの商用原子炉への装荷も可能である。

ドイツでは 2011 年の原子力法改正に基づき段階的に原子炉が閉鎖されるが、2011 年 9

月の連邦議会資料等に拠れば、ドイツはこれらの MOX 燃料利用燃料を全て国内の原子炉で

燃焼する予定である。ドイツでは 2005 年 7 月以後の新しい再処理契約はない。

なお、既契約分については、EU 及びスイスの原子力発電所での燃焼も法律上可能だが、

炉関しても、余剰 Pu の処分等を目的とした英国等国外への売却は検討されていない。

(※参考)再処理契約の英国からフランスへの移転を目的としたドイツ起源の使用済燃料由

来のプルトニウムの英国への所有権移転

ただし、ドイツ国内の全原子炉閉鎖までに国内の炉への装荷を間に合わせる目的で、英国

内に所在するドイツ所有のプルトニウムの所有権が英国原子力廃止措置機関(NDA)に移

転されたケースがある。

2011 年の福島第一原子力発電所事故後の影響もありセラフィールド MOX 燃料加工プラ

ント(SMP)の閉鎖が確定したことを受け、英国ではドイツとの再処理契約の履行が危ぶ

まれる状況となった。英国における再処理新プラントの操業開始予定は 2025 年頃であり、

ドイツの脱原子力完了(2022 年)に間に合わない。このため、フランスが契約履行を代行

し、MOX 燃料をドイツの事業者に納入することになった。これに際して、2012 年 7 月、

原子力廃止措置機関(NDA)、独企業、仏 AREVA 社は、下記の内容について商業的取り決

めを交わした。

・ 仏国内にある一部のプルトニウムの所有権を独企業が取得し、それらのプルトニウムを

AREVA 社が混合酸化物(MOX)燃料に加工して独企業に供給する。

・ 英国内に貯蔵されている独企業所有の約 4 トンのプルトニウムの所有権を NDA に移転

する。

上記のように、Pu の所有権移転は、加工された MOX 燃料を最終的にドイツ国内の原子

炉で燃焼することを前提とした措置であり、ドイツが所有する Pu を国外移転により減少さ

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59

せることを目的としたものではない。

なお、過去にも 2005 年のトラブルにより英国の再処理プラント(THORP)が長期停止

したことを受け、再処理契約がフランスに移転されたことがある。ただしこのときは、プル

トニウムの所有権を移転することなく、該当するドイツ所有のプルトニウムを、英国からフ

ランスに移送した。2012 年の取り決めは、プルトニウムの物理的な移動を伴わずにフラン

スによる再処理の代行履行を可能にするために行われたものである。

【出典】

ドイツ原子力法

http://www.gesetze-im-internet.de/atg/

廃棄物合同条約ドイツ第 5 次国別報告書、2014 年 8 月

http://www.bmub.bund.de/fileadmin/Daten_BMU/Download_PDF/Atomenergie/jc_5

_bericht_deutschland_en.pdf

英国エネルギー・気候変動省、2012 年 7 月 13 日

http://www.decc.gov.uk/en/content/cms/news/wms_plut_ger/wms_plut_ger.aspx

ドイツ連邦議会議事録 Drs 17/7137 2011.09.23

http://dipbt.bundestag.de/dip21/btd/17/071/1707137.pdf

ドイツ連邦議会議事録 Drs 17/8527 2012.01.31

http://dipbt.bundestag.de/dip21/btd/17/071/1707137.pdf

2. スイス

スイスで 2005 年に発効した現行原子力法は、原子力発電の利用継続を前提としつつも、

再処理に関しては将来のオプションを検討するため、2006 年 7 月 1 日から 10 年間、再処

理を目的とした使用済燃料の国外輸送を禁止(モラトリアム)している。このモラトリアム

は、議会決議により更に 10 年間延長することが可能である。(第 106 条)

したがって、2015 年 9 月現在、スイスは再処理モラトリアム中であり、使用済燃料を全

て、放射性廃棄物として中間貯蔵している。

2011 年の日本での原子力発電所事故を受け、スイス連邦政府は 2011 年 5 月、原子炉の

リプレース・新規建設を行わず段階的に原子力発電から撤退する方針を示した。現在、スイ

スでは議会がこの方針を受けた原子力法令等の改正を審議中である。原子力法の改正案には、

原子炉の新規建設禁止に加え、再処理禁止が盛り込まれている。再処理を禁じる改正原子力

法の発効は、現行法に基づくモラトリアムが終了する 2016 年以降になると推測されるもの

の、現状を鑑みるとモラトリアムを解除し、事業者が新たな再処理契約を締結するとは考え

がたい。

2014 年の廃棄物合同条約第 5 回スイス報告書によれば、2006 年 6 月末までにフランス

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(ラ・アーグ)及び英国(セラフィールド)に輸送された使用済燃料については、2014 年

の時点で全て再処理ずみであり、Pu は MOX 燃料に加工されてスイス国内の原子炉に装荷

される。脱原子力に伴う Pu の他国への所有権移転(国内余剰分の売却・移転)に係る情報

は確認されていない。

【出典】

スイス原子力法

https://www.admin.ch/opc/de/classified-compilation/20010233/index.html

廃棄物合同条約スイス第 5 次国別報告書、2014 年 10 月

http://static.ensi.ch/1412923949/joint_convention_05_2014_ensi.pdf

3. イタリア

イタリアは使用済燃料を再処理する方針を採用し、1987 年の国民投票によって原子力発

電が全廃された後も、英原子力燃料会社(BNFL、当時)への使用済燃料の再処理委託は継

続されており、英国向けには 2005 年までに合計 716.2 トンの使用済燃料が輸送された。再

処理後に発生したプルトニウムはセラフィールドサイトに貯蔵されている。(所有権は

SOGIN 社)

なおイタリアで廃止措置を担当している SOGIN 社は 2006 年 11 月の仏-伊政府間合意に

基づき、イタリアの使用済燃料 235 トンの再処理契約を 2007 年 5 月に AREVA NC 社との

間で結んだ。二国間合意の内容によれば、SOGIN 社と AREVA NC 社は、再処理によって

発生するウランやプルトニウムについては、SOGIN に所有権があるとしているが、これら

の物質の一部または全部の核燃料等での(直接的または第三者を通じた間接的な)再利用方

法については、両社が協議・決定するとしている。

【出典】

Sogin2013 年持続可能報告書

http://www.sogin.it/SiteAssets/AMBIENTE.PDF

イタリアの使用済燃料 235 トンの再処理に関する伊仏両政府間の合意の公布に関する

2007 年 5 月 7 日付の政令

http://www.legifrance.gouv.fr/eli/decret/2007/5/7/MAEJ0730029D/jo/texte

AREVA 社 2007 年 5 月 9 日付プレスリリース

http://www.areva.com/EN/news-6496/areva-and-sogin-sign-a-contract-to-reprocess-

235-tons-of-used-fuel.html

Page 61: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

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(6) 各国の高速炉開発体制(原型炉以降)

14 バービニ社(BHAVINI)HP>ABOUT US、http://www.bhavini.nic.in/Userpages/CompanyView.aspx 15 仏会計検査院報告書、https://www.ccomptes.fr/content/download/1794/17981/version/6/file/Rapport_thematique_filiere_electronucleaire.pdf 16 仏会計検査院報告書、https://www.ccomptes.fr/content/download/2421/24234/version/1/file/ProgrammesNucleairesCivilsCea.pdf 17 Afrikantov OKBM HP、http://www.okbm.nnov.ru/npp#fast 18 インド原子力省(DAE)HP>Fast Breeder Reactor Technology、http://dae.nic.in/?q=node/179 19 仏会計検査院報告書、https://www.ccomptes.fr/content/download/1794/17981/version/6/file/Rapport_thematique_filiere_electronucleaire.pdf 20 Afrikantov OKBM BN-1200ブックレット、http://www.okbm.nnov.ru/images/pdf/bn-1200_en_web.pdf 21 “Kalpakkam breeder reactor to go on stream” .The Hindu.8 July 2015、http://www.thehindu.com/sci-tech/science/kalpakkam-prototype-fast-breeder-reactor-to-go-on-stream/article7396541.ece 22 “Bhavini, fast-breeder reactor operator, to raise Rs.1,200 crore”.News Track India. 10 June 2012.

http://www.newstrackindia.com/newsdetails/2012/06/10/70--Bhavini-fast-breeder-reactor-operator-to-raise-Rs-1-200-crore-.html

仏国 ロシア 中国 インド

原子炉名 フェニックス スーパーフェニックス ASTRID BN350 BN600 BN800 BN1200 CFR600 PFBR

開発段階 原型炉 実証炉 実証炉 原型炉 原型炉 実証炉 商用炉 実証炉 原型炉

状況 閉鎖 閉鎖 設計段階 閉鎖 運転中 運転中 設計段階 設計段階 建設段階

電気出力 25.5万 kW 124万 kW 60万 kW 60万 kW 80万 kW 60万 kW 50万 kW

初臨界/閉鎖 1973年/2010年 1985年/1998年 2030年頃/- 1972年/ 1980年/- 2014年/- 2020年頃/- 2025年頃/- 2016年中/-

所有者 CEA/EDF NERSA

(EDF:51%、Enel:33%、

SBK:16%)

CEA ロスエネルゴアトム

(ロスアトム傘下)

ロスエネルゴアトム

(ロスアトム傘下)

ロスエネルゴアト

ム(ロスアトム傘

下)

ロスエネルゴアトム

(ロスアトム傘下)

Bharatiya Nabhikiya

Vidyut Nigam Limited

(BHAVINI)14

開発体制

設計

人数 人数は不明。

1976年までの建設・運

転コスト及び最初の

プルトニウム装荷費

用の合計で、10億ユー

ロ(2010 年価額)15。

出資比率は CEA 80%、

EDF 20%16。

人数は不明。

1974~1997 年までの建

設・運転コストは 120 億

ユーロ(2010年価額)。

人数は不明。 Afrikantov OKBM17 (ロ

スアトム傘下)が設計

を担当。人数は不明。

Afrikantov OKBM17

(ロスアトム傘下)

が設計を担当。人数

は不明。

Afrikantov OKBM17

(ロ スアトム 傘

下)が設計を担当。

人数は不明。

Afrikantov OKBM17

(ロスアトム傘下)が

設計を担当。人数は不

明。

ロシアとの協力に向

けた協議が進展して

いない模様であり、公

開情報はないと思わ

れる。

インディラ・ガンジー

原子力研究センター

(IGCAR)が設計を担当

したが、人数は不明18。

資金 未来への投資の枠組

みで、2017 年までに

6.5 億ユーロが配賦

19。

不明 不明 不明 2020 年以降に建設開

始予定20のため詳細未

定。

不明

建設

人数

未定

不明 不明 不明 BHAVINI が建設を担当

しているが、人数は不

明21。

資金 不明 不明 不明 PFBR プロジェクトコ

ス ト を Rs.5,677

crore(567.7 億インド

ルピー)22。

運転

人数 ロスエネルゴアトム

(ロスアトム傘下)

人数は不明。

ロスエネルゴアトム

(ロスアトム傘下)

人数は不明。

ロスエネルゴアト

ム(ロスアトム傘

下)人数は不明。

BHAVINI が運転を担当

する予定であるが、人

数は不明。

資金 不明 不明 不明 不明

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62

(7) 中露からイランへの原子炉の輸出等の検討状況について

イランは、以前から核開発を進めており、核計画の軍事的側面に懸念を表明する国際社会

との対立が表面化していたが、特に 2015 年 7 月 14 日の EU3 カ国および米中露とイランに

よる核問題の最終合意以降、イランに対して原子炉の輸出を試みるアプローチが一部の国に

よってなされている。そのうち、中国とロシアの動向について、以下に整理した。

1. 中国

(1) 政府、事業者等による公式報道等に基づく情報

中国において、対外的に原子力分野で国を代表する組織であり、原子力事業の行政・監督

機能や国際協力のとりまとめを実施する組織である国家原子能機構(CAEA)は、2015 年

8 月 26 日付けのプレスリリースにおいて、CAEA のトップの許達哲主任が、訪中中のサー

レヒ・イラン原子力庁(AEOI)長官と会見したことを伝えた。

同プレスリリースによると、両者はアラク重水炉の改造や、両国の原子力分野における協

力等について意見交換し、許主任は、中国がアラク重水炉の改造において引き続き建設的な

関与をしていくことを表明し、サーレヒ長官は同炉の改造における CAEA との協力の推進

に対する期待感を表明した。

なお、EU3(英仏独)+3(米中露)とイランが合意した「包括的共同行動計画(JCPOA)」

にも、アラク重水炉の改造については、EU3+3 を含む国際パートナーシップにより実施す

ることとされている(ただし、改造を実施する国は特定されていない)。CAEA のプレスリ

リースの記載とあわせて判断すると、中国が言及したアラク重水炉の改造については、

JCPOA で合意された事項を指しているものと考えられる。

また、同じく CAEA は、2016 年 1 月 23 日に、テヘランにおいて習近平国家主席とロー

ハニ大統領の立会いの下、許主任とサーレヒ長官が「中国国家原子能機構とイラン原子力庁

の原子力の平和利用における協力に関する覚書(MOU)」に署名したことを公表した。

【出典】

CAEA、2015 年 8 月 26 日付プレスリリース(中国語)

http://www.caea.gov.cn/n16/n1100/n1298/749661.html

CAEA、2016 年 1 月 23 日付プレスリリース(中国語)

http://www.caea.gov.cn/n16/n1100/n1298/808640.html

EU3+3 とイランの「包括的共同行動計画」全文

http://eeas.europa.eu/statements-eeas/docs/iran_agreement/iran_joint-comprehensi

ve-plan-of-action_en.pdf

(2) 民間報道等による情報

Nuclear Engineering International の 2015 年 9 月 8 日付の情報によると、上述した同

Page 63: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

63

年 8 月末のサーレヒ長官の訪中期間中、同長官は中国核工業集団公司(CNNC)幹部とも

会見したとされている(CNNC 側は、イランとの協力について、プレスリリース等は公表

していない。)。この報道によると、中国側は CNNC が開発を進めている、電気出力 10 万

kW 規模の小型炉 ACP100 を 2 基イランに建設する際の支援に言及したとされており、こ

の建設には CNNC が関与する可能性が考えられる。

また、この報道では、中国のイランに対する、余剰濃縮ウランの近隣国への輸出の支援が

言及されている。JCPOA では、今後 15 年間、イランは濃縮度 3.67%以下の六フッ化ウラ

ン(または同等の他の化学形態)を 300kg 未満しか所有しないものとされており、それを

超えるウランは売却または天然ウランのレベルまで希釈することなどとされている。

さらに上述の情報では、イランでの大型炉の建設に対する資金提供についても言及されて

いるが、ここで言及されている大型炉が中国のものとなるのか、あるいは別の国のプラント

なのかなどの情報は明示されていない。

【出典】

Nuclear Engineering International、2015 年 9 月 8 日付け記事” China offers nuclear

assistance to Iran”

http://www.neimagazine.com/news/newschina-offers-nuclear-assistance-to-iran-466

4960

2. ロシア

(1) 政府、事業者等による公式報道等に基づく情報

(以下ではロシアにより建設されたブシェール原子力発電所(100 万 kW 級 VVER)の

送電網への併入(2011 年)以降の動きについて示す)

2014 年 3 月、AEOI と露 ROSATOM 国営原子力会社は、ブシェール原子力発電所での 2

基の増設について予備的な合意に達した。同年 6 月、ROSATOM のキリエンコ総裁は、2014

年末までにブシェール原子力発電所での 2 基の原子炉建設に係る契約を締結できるとの見

通しを発表していた。両国はその後 2014 年 11 月に原子力平和利用の協力拡大に係る覚書

に署名し、イランにロシア製 VVER を 8 基建設することで合意した。このうち、ブシェー

ルに建設する 2 基については、同日付で契約書に調印した。また、燃料はロシアが供給し、

使用済燃料をロシアが引き取る。イラン国内での燃料棒生産を検討することも確認した。

【出典】

イラン国営通信、2014 年 3 月 12 日付記事

http://www.irna.ir/en/News/2650468/Politic/Iran,_Russia_reach_primary_agreemen

t_on_building_2_more_nuclear_power_plants

イラン国営通信、2014 年 11 月 11 日付記事

http://www.irna.ir/en/News/2784243/

ROSATOM、2014 年 11 月 11 日付けプレスリリース

Page 64: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

64

http://www.rosatom.ru/en/presscentre/highlights/30a77880462a2263af3eefd490c07

3ed

(2) 民間報道等による情報

ロシアのメディアである Pravda の 2016 年 1 月 25 日付の情報によると、2015 年 12 月

に両国の原子力産業の協力に係る会合が持たれた模様である。また、Sputniknews の 2016

年 2 月 20 日付の情報によると、ROSATOM のキリエンコ総裁はブシェールの 2 基増設プ

ロジェクトのための事前調査はまもなく完了し、早期に建設工事が開始されるとの見通しを

発表した23。

【出典】

Pravda、2016 年 1 月 25 日付記事” Iran and Russia to start building nuclear power

plant in Bushehr”

http://www.pravdareport.com/news/world/25-01-2016/133153-iran_russia-0/

Sputniknews、2016 年 2 月 20 日付記事” New Nuclear Plants 'an Indication of

Growing Trust Between Russia, Iran”

http://sputniknews.com/middleeast/20160220/1035109918/nuclear-power-russian-ir

anian-cooperation.html

(補足情報)

ブシェール原子力発電所について:

ブシェール(Bushehr)原子力発電所は、ペルシャ湾岸に位置するイラン最初の原子力発電

所である。1970 年代に当時のイランが西独(当時)シーメンス社と契約して建造を始めた

ものであり、当時は 2 基の 120 万 kW級 PWR の完成を目指していた。ところが、1979 年

にイスラム革命が起こり、ドイツの撤退によって事業は中断された(1 号機はほぼ完成し、

2 号機も半分の作業まで完了していたが、1984~1988 年に空爆の標的となり、大きな被害

を受けた)。その後の 1992 年、イランはこのブシェール原子力発電所を完成させるべく、

ロシアと契約を調印し、計画が再び動き出した。この計画は、イランをめぐる国際情勢の厳

しさもありプロジェクトの進捗に遅延は生じたものの、2011 年に 1 基の 100 万 kW 級の

VVER の建設が完了し、同年に送電が開始された。

【出典】

IAEA、Country Nuclear Power Profiles

http://www-pub.iaea.org/MTCD/Publications/PDF/CNPP2013_CD/countryprofiles/I

23 なお、事前調査の終了および建設工事の開始に関する情報は、2016 年 5 月 17 日時点で

確認できない。

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(8) フランスの原子力発電所におけるストについて

フランスでは、エルコムリ雇用大臣が提案した労働法案を、政府が 5 月 10 日に強硬可決

したことを契機として、各地でこれに抗議するデモが発生している。原子力発電所において

も、5 月 26 日にフランス電力(EDF)の労働組合 FNME-CGT は、同日 20 時より、カッ

トノン、シノン、ダンピエール、ノジャン、パリュエル、サン・ローラン・デ・ゾー、トリ

カスタンの 7 つの発電所で出力低下によるストを行うことを決定したとのプレスを発表し

ている。同プレスには、プレス公表時点において、すでにこれらの発電所における出力低下

の措置が実施中であることが記載されている。

その後、EDF や労組、また系統運用会社である RTE 社からの公式な発表は確認できな

いが、フランス現地時間 5 月 26 日 11 時 53 分のトリビューン紙によれば、国内 19 カ所の

原子力発電所の労組が、出力低下によるストの実施を決定したとされている。ただし、同紙

によれば、実際に出力低下措置を開始したのは、このうち 12 カ所のみである。

出力低下によるストの影響について、同紙では、安全機能は確保されるとの労組のコメン

トが紹介されている。また、電力供給に問題はないとする RTE 社のコメントも紹介されて

いる。

なお、同紙によれば、ストは 24 時間の予定で実施されるという。

【出典】

2016 年 5 月 26 日、FNME-CGT プレスリリース

http://www.fnme-cgt.fr/index.php/communiques/apres-le-transport-hier-la-producti

on-reprend-en-main-l-outil-de-travail

2016 年 5 月 26 日付、トリビューン紙

http://www.latribune.fr/economie/france/loi-travail-16-centrales-nucleaires-ont-vote

-la-greve-574236.html

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(9) IAEA 低濃縮ウラン備蓄構想の状況について

低濃縮ウラン備蓄構想については、2015 年 8 月の国際原子力機関(IAEA)とカザフス

タン間での低濃縮ウラン燃料バンク設置に関する協定締結以降の具体的な動きは公開情報

の範囲では確認できていない。ただし、最近の事務局長発言などで、その進捗状況が言及さ

れているため、以下では、過去の経緯を含め最近の状況を整理する。

IAEA の理事会は 2015 年 6 月 11 日、カザフスタンに低濃縮ウラン (LEU)を備蓄する

ウラン燃料バンクを設置するために、同国とホスト国協定を締結することを承認した。同日

付の IAEA のプレスリリースによると、同バンクの所有・管理は IAEA が、運用はカザフ

スタンが行い、最大90トンのLEUをウルバ冶金プラントの施設に貯蔵する計画とされた。

貯蔵施設の操業開始年については、同日付の核脅威イニシアチブ(NTI)の情報では、2017

年とされていた。

その後同年 8 月 27 日に、IAEA とカザフスタンがウラン燃料バンクの設置に関する協定

を締結した。

翌 2016 年 3 月 7 日に開催された IAEA 理事会において、天野之弥事務局は同バンクに言

及した。発言によると、2016 年 3 月時点で貯蔵施設の設計は完成しつつあり、2017 年 9

月までに貯蔵施設に対する認可が発給され、施設が完成する見込みであるという。

また、2016 年 3 月 31 日から 4 月 1 日にかけて米国ワシントンで開催された核セキュリ

ティ・サミットにあわせて、カザフスタンが公表した国別報告書にも、その進捗が若干言及

されている。報告書によると、カザフスタンでは 2016 年 1 月に原子力利用に係る法律(改

定版)が施行され、今後、同法の条文等に基づき、核セキュリティに係る規制が策定・強化

される見込みであるという。また同国に設置するウラン燃料バンクに係る今後のスケジュー

ルとして、2017 年に貯蔵施設の建設が完了し、同年に貯蔵施設への LEU 輸送が行われる

ことが示されている。

なお同サミットにおいて、カナダ、チェコ、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリ

ー、日本、ヨルダン、カザフスタン、ノルウェー、中国、フィリピン、韓国、スペイン、ス

ウェーデン、アラブ首長国連邦、英国、米国の各首脳は、カザフスタンにおけるウラン燃料

バンクに係る共同声明を採択して、これまでの IAEA 及びカザフスタンの取り組みを評価

し、上述のようなカザフスタン側での法的枠組みの整備状況を評価した上で、バンクの操業

への期待を表明した。

【出典】

IAEA、2015 年 6 月 11 日付プレスリリース

https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-moves-ahead-establishing-low-enriched-ura

Page 68: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

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nium-bank-kazakhstan

NTI、2015 年 6 月 11 日付プレスリリース

http://www.nti.org/newsroom/news/iaea-board-approves-fuel-bank/

IAEA、2015 年 8 月 27 日付プレスリリース

https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-and-kazakhstan-sign-agreement-establish-l

ow-enriched-uranium-bank

IAEA、2016 年 3 月 7 日付プレスリリース

https://www.iaea.org/newscenter/statements/introductory-statement-to-the-board-of-go

vernors

核セキュリティ・サミット、2016 年 3 月 31 日付、国別報告書—カザフスタン

http://www.nss2016.org/document-center-docs/2016/3/31/national-progress-report-kaza

khstan

核セキュリティ・サミット、2016 年 4 月 5 日付、LEU 燃料バンクに係る共同声明

http://www.nss2016.org/document-center-docs/2016/4/1/joint-statement-on-leu-fuel-ban

k

The IAEA LEU Bank(ウラン燃料バンクに関する情報がまとめられている)

https://www.iaea.org/ourwork/leubank

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(10) 英国における一般設計評価(GDA)と新設候補サイトに対する戦略的サイト評価

(SSA)の進捗状況

●SSA:11 カ所の候補サイトに対して 2009 年秋に一斉に実施され、完了。(明確な完了時

期は不明)

(EDF/AREVA)

「ヒンクリーポイント及びサイズウェルに建設予定の EPR については、2012 年 12 月、

GDA を取得済み。SSA については、ヒンクリーポイント及びサイズウェル共に 2009 年秋

に完了。」

(日立)

「ウィルファ及びオールドベリーに建設予定の ABWR については、2016 年 5 月現在、GDA

を取得中。現在、フェーズ 4 の段階にあり、2017 年 12 月に取得予定。SSA については、

ウィルファ及びオールドベリー共に 2009 年秋に完了。」

(東芝/WEC)

「ムーアサイドに建設予定の AP1000 については、2016 年 5 月現在、GDA を取得中。現

在、フェーズ 4 後の段階にあり、規制機関に指摘された解決すべき課題に対応中、

2017 年 1 月に取得予定。SSA については 2009 年秋に完了。」

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(11) 仏フラマンヴィル 3 号機の建設遅延に影響した規制要件の強化について

フランス電力(EDF)は 2014 年 11 月 18 日付プレスリリースにおいて、フラマンヴィ

ル 3 号機(欧州加圧水型原子炉:EPR)の運開時期の遅延を発表した。EDF は遅延の理由

の 1 つとして、EPR の国内初号機であるフラマンヴィル 3 号機の原子力圧力機器(ESPN)

に関する規制要件の導入に、これら ESPN を製造し、現地での組み立てを行っている

AREVA 社が対応することが困難であることを挙げている。

ESPN の規制要件について、EDF の 2015 年報では、ESPN に関する 2005 年のアレテ

(省令)が制定されたことにより、原子力規制機関(ASN)が、機器の機械的性能に関す

る新たな仕様の充足を要求するようになったことが指摘されている24。

ESPN に関する 2005 年のアレテとは、「原子力圧力機器に関する 2005 年 12 月 12 日の

アレテ」である。その内容について、ASN は以下のように説明している。

ESPN について

ESPN とは、原子炉の機械コンポーネントの主要な部分を構成する機器であり、例えば

原子炉容器、蒸気発生器(SG)がこれに該当する。これらの機器は高圧・高温にさらされ、

一次冷却系においては、圧力は 155 バール、温度は 300℃に達する。さらにこれらの機器

は放射性流体を含む場合もある。ESPN は、炉心の冷却と放射性物質の閉じ込めという 2

つの重大な機能を果たしており、ESPN が呈するリスクは、圧力と温度、放射性流体によ

るものであり、その不具合は ESPN によって確保されている原子炉安全機能に影響を及ぼ

すと言える。

ESPN に関する 2005 年 12 月 12 日のアレテについて

2005 年 12 月 12 日のアレテは、(原子力に限定されない)一般的な圧力機器に関する EU

指令 97/23/EC に基づき制定されたものであり、原子力圧力機器に関する要件を詳細化する

ことを目的としている。同アレテでは以下のような内容が定められている。

ESPN の製造者は、設計と製造に関して責任を負う。製造者は、設計と製造に先立ち

考慮しておくリスクを分析しなければならない。

ESPN の製造者は、安全と放射線防護上の要件を遵守しなければならない。これらの

要件は、製造者に対して対抗力を有する。

ESPN の製造者は、ESPN の要件の充足状況の評価を受けなければならない。評価は

ASN が認証した組織によって実施することも可能であるが、安全上重要な ESPN につ

24 AREVA 社の年報では 2008 年以降、規制リスクとして、2005 年のアレテの規制要件へ

の対応が挙げられている。

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いては、ASN による評価を受けなければならない。

2005 年 12 月 12 日のアレテにより、ESPN の品質保証に関する規制は既存の圧力機器に

関する規制よりも強化されることとなり、ESPN の製造者は、これまでよりも多くの証明

書を ASN に提供しなければならない。

ASN は、安全上重要な ESPN について、設計に関する技術文書(計算結果、金属疲労の

分析等)や製造プロセスに関する技術文書(溶接、非破壊検査等)等、文書ベースでの詳細

な調査を行うとともに、製造者及び発電事業者に対する実地での検査を実施する。このよう

な監督によって ASN は、これらの ESPN が必要な品質に達し、維持され、その品質保証

が十分なものとなるよう保証する。

【出典】

2014 年 11 月 18 日、EDF プレスリリース

http://medias.edf.com/fichiers/fckeditor/Commun/Presse/Communiques/EDF/2014/c

p_EDF_20141118_vf.pdf

原子力圧力機器に関する 2005 年 12 月 12 日のアレテ

https://www.legifrance.gouv.fr/affichTexte.do?cidTexte=LEGITEXT000021236266

2005 年 12 月 12 日のアレテに関する ASN の技術ノート

http://www.asn.fr/content/download/93998/651726/file/ESPN_note_technique.pdf

EDF2015 年報

https://www.edf.fr/sites/default/files/contrib/groupe-edf/espaces-dedies/espace-finan

ce-en/financial-information/regulated-information/reference-document/edf-ddr_201

5-va.pdf

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(12) ウレンコ社の株式売却に関するオランダ議会情報について

以下では、ドイツの政党ウェブサイト(2015 年 10 月)及びオランダ第二院(下院)の

2016 年 2 月 2 日付文書(経済相名の議会書簡)をもとに、2016 年 2 月までにおけるウレ

ンコ社の民営化に関する状況について報告する。

現在:英・蘭・独の三国が 1/3 ずつ保有。

英・蘭:政府保有

ドイツ:電気事業者 E.ON 社と RWE 社が保有(民間企業)

⇒現状ではいわゆる政府保有が 2/3(多数)

このうち、英国・ドイツは株式を売却したい意向を示している(まだ売却はしていない)。

オランダ議会では核不拡散の観点などから、売却に賛否両論である。

⇒英国政府が株式を売却した場合、政府保有はオランダ分の 1/3 のみ(少数)

⇒オランダ側は、民営化後も公共の利益の観点から政府関与を残す方向で検討中。ただし、

ドイツ政府の政策検討等の関係で停滞中の模様。

■ウレンコ社の株式売却計画に関するオランダ議会情報

(1)ドイツ「左派党」議員ウェブサイト情報(2015 年 10 月 19 日付)

原子力に批判的なドイツの政党(連邦野党)「左派党」に所属する国会議員であるフーベ

ルトゥス・ツデーデル議員は、左派党ウェブサイト内の自らのページ(2015 年 10 月 19 日

付)において、ウレンコ社売却に係るオランダの議論の動向を報告している。同ウェブサイ

トに示されているポイントは以下のとおり。

英独はすでにウレンコ株式の売却意向を示しているが、オランダに関しては、売却

するとしても、それは英独の圧力を受けてのことであろう(英独撤退後、オランダ

のみが残っても 1/3 の少数出資者。政府出資のメリットがない。)

オランダでは、核不拡散の観点からウレンコ社の売却(民営化)を懸念する意見25が

出ており、労働党(PvdA)とキリスト教民主同盟(CDA)が売却反対を主張してい

る。

2015 年 6 月には Dijsselbloem 財務相が、オランダ政府含め、現在の株主がウレンコ

社の株式を売却した場合でも、公衆の利害、安全保障の観点から政府関与を残す内

容の法案を議会に示した模様である。

25 ウレンコ社に関しては、同社に在籍したカーン博士が核開発技術を持ち出し、イランの

核開発に関与したことがよく知られている。

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ただし、ドイツ側との調整が済んでおらず、正式な法案提出はドイツ待ち、という

状態である。

(2)オランダ第二院(下院) 経済大臣書簡(2016 年 2 月 2 日付)

※以下はオランダ語⇒ドイツの機械翻訳経由で確認した範囲の情報である。

オランダのカムプ経済相が 2016 年 2 月 2 日に議会下院に提出した書簡では、オランダで

は英独のウレンコ株式売却計画に関して、カムプ財務相が 2013 年の書簡において、英国政

府が株式を売却した場合、政府保有分が過半数を切り、いわゆる公有企業でなくなることを

受け、「公共の利益」を保護するため、同社の新しい企業形態を考える必要があることに言

及したことが示されている。

その後、英・独・蘭三国の出資者による協議の結果、2015 年に今後のウレンコの企業形

態について大筋合意に至ったとされている。

ウレンコ社をオランダ法下の企業とし(現在本社は英国)

(民営化された場合でも)3 カ国政府も「公共の利益に係る権利の保護に関する権利と

義務を付された特別な株式」を保有する

しかし、同書簡によれば、ドイツ政府は上記の大筋合意に対し、ドイツにおける脱原子力政

策を反映する観点から検討の必要ありとして不同意の見解を示している(ドイツ側としての

具体的な代替案の有無等不明)。ドイツではバックエンド関連の資金確保のありかたに関し

て政府が見直しを行っているところである。こうした状況から、大筋合意についても RWE

社、E.ON 社経営層の最終承認にいたっていない。ウレンコ社の企業形態や関連法案その他

に関する議会への正式な報告、提出は、関係各所の合意が得られてのちになるとの見通しが

示されている。

2016 年 9 月現在、ドイツでは資金確保のありかたの見直し(連邦と事業者の責任分担議

論を含む)について、政府側と事業者側が交渉の途上にある。従って、上記に示された 2016

年 2 月の状況から大きな進展はないものと推測される。

(参考)

ドイツ左派党 フーベルトゥス・ツデーデル議員ウェブサイト、2015 年 10 月 19 日

http://www.hubertus-zdebel.de/verkauf-von-uran-waffen-technik-niederlande-berei

tet-urenco-gesetz-vor-neue-geschaeftsfuehrung-gesucht/

オランダ第二院(下院)、カムプ経済相 2016 年 2 月 2 日付書簡

https://zoek.officielebekendmakingen.nl/kst-28165-233.html

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(13) EURATOM 条約からの脱退について---英国の EU 脱退に関連して

■EURATOM 脱退に係る規定

EU からの脱退・再加盟についてはリスボン条約(正式名:欧州連合条約及び欧州連合の

運営に関する条約)の第 50 条で規定されている。また、EURATOM 条約の第 106a 条では、

EU 条約の第 50 条が EURATOM 条約に適用されることが規定されている。

・リスボン条約の第 50 条

1. 加盟国は自国の憲法上の要件に応じて EU から脱退することを決定できる。

2. 脱退を決めた加盟国はその意向を欧州理事会に通知する。欧州理事会のガイドラインに

沿って、EU は、当該国と EU との今後の関係についての枠組みを考慮して、脱退対応

について、当該国との交渉を行い、協定を締結する。この協定は、欧州連合の運営に関

する条約(TFEU)の第 218 条第 3 項に沿って交渉される。同協定は、欧州議会の合

意を得た後、欧州理事会における特定多数決によって締結される。

3. 当該国との脱退協定の発効日から、またはそれに至らない場合は当該国が本条第 2 パ

ラグラフで言及した通知を行ってから 2 年後に条約は適用されなくなるが、欧州理事

会は、当該国と合意し、満場一致で決定した場合は同期間を延長することができる。

4. 本条の第 2、第 3 パラグラフに関して、脱退を決定した当該国の欧州理事会の理事また

は EU 理事会(閣僚理事会)の理事は、欧州理事会または EU 理事会の議論、または

その議論に関する決定に参加することはできない。特定多数決については TEFU の第

238 条第 3 項(b)に沿って定義される1。

5. EU から脱退した国家が再加盟を要請した場合、その要請は第 49 条における手続を踏

まなければならない。

【出典】

・EU 条約

http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex%3A12012M%2FTXT

・TEFU 条約

http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex%3A12012E%2FTXT

・EURATOM 条約

http://europa.eu/eu-law/decision-making/treaties/pdf/consolidated_version_of_the_treat

y_establishing_the_european_atomic_energy_community/consolidated_version_of_the_t

reaty_establishing_the_european_atomic_energy_community_en.pdf

1 TEFU 第 238 条第 3 項(b)では、加盟国数の 72%、EU 加盟国人口の 65%とされている。

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■EU 非加盟国がユーラトム加盟国たりうるのか

明確に示された出典は確認できなかったが、EU のウェブサイトの欧州議会のサイトにお

いて、EU と EURATOM のどちらかだけに加盟できるのかというオーストリアの議員から

の質問に対し、欧州委員会の代表者から、どちらかだけに加盟することはできないという見

解が示されている。

【出典】

・欧州議会における質疑応答(以下、2 つのサイト)、

(質問サイト)

http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//TEXT+WQ+E-2010-8740

+0+DOC+XML+V0//EN

(回答サイト)

http://www.europarl.europa.eu/sides/getAllAnswers.do?reference=E-2010-8740&langua

ge=EN

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(14) IAEA の低濃縮ウランバンク構想の経緯と日本の関与について

国際原子力機関(IAEA)の低濃縮ウランバンク構想に関しては、2016年5月27日に IAEA

とカザフスタンのウルバ冶金プラント(UMP)が、低濃縮ウラン(LEU)を備蓄するウラ

ン燃料バンクの貯蔵施設建設に向けたパートナーシップ協定を締結するという動きが見ら

れた。UMP は今後、カザフスタン国内で必要な承認を得た上で、2017 年 9 月までに施設

を完成させ、運営に係る準備を完了させるとの見通しを示している。以下に、本構想立ち上

げの経緯や日本の構想への関与について、整理した。

1. 低濃縮ウランバンク構想立ち上げの経緯

上述の IAEAとUMPのパートナーシップ協定締結に結実したような低濃縮ウランバンク

構想の源流として、IAEA のエルバラダイ事務局長(当時)と米国・ブッシュ大統領(当時)

の提案の 2 案を挙げることができる1。

(1) IAEA・エルバラダイ事務局長の構想

2005 年 2 月 22 日付で専門家グループ2が IAEA の当時のエルバラダイ事務局長に対し

て提出した核燃料サイクルに対する多国間アプローチに関する文書”INFCIRC/640”は、

核兵器の材料としての利用が可能な物質の利用を、多国間管理の下に置かれる場合にのみ

認めるとする構想の先駆として、同事務局長の 2003 年 10 月 16 日付のエコノミスト誌へ

の寄稿”Towards a safer world”を挙げている。”Towards a safer world”においてエルバラ

ダイ事務局長は、提案の一つとして以下を示している。

第一に、今や、核兵器として利用可能な物質(分離プルトニウム及び高濃縮ウラン)

の処理、及び再処理と濃縮を通じた新たな物質の生産を、これらの【処理や生産といっ

た】オペレーションを多国間管理下にある施設のみに制限することに合意することによ

って、民生用原子力プログラムに制限すべき時だ。こうした制限は適切なルールと透明

性を伴ったものである必要があり、また、とりわけ、合法的にこれらのオペレーション

を利用したいと希望するユーザーがその供給を受けることができるという確証を伴っ

たものである必要がある。

(2) 米国・ブッシュ大統領の提案

1 例えば、日本原子力研究開発機構は、第二回核不拡散科学技術フォーラムにおける配布資

料において、そのような整理をしている。

https://www.jaea.go.jp/04/np/activity/2007-02-07/2007-02-07-3.pdf 2 この専門家グループは、エルバラダイ事務局長が、自身の核燃料サイクルに対する多国間

アプローチについて検討させるために設置したものである。

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ブッシュ大統領(当時)は 2004 年 2 月の国防大学における声明において、以下の通り、

ウラン濃縮と再処理技術を既存施設の保有国だけに限定する提案を行っている。

国際社会は、兵器拡散の危険性を増加させない、民生用原子炉の、安全で秩序だった

体系を構築しなければならない。世界の主要な原子力分野の輸出事業者は、民生用原子

炉の燃料を必要としている国に対して、合理的な費用で、信頼できるアクセスを―当該

国が濃縮と再処理を放棄している限りにおいて―提供すべきである。

以上、低濃縮ウランバンク構想の源流として、IAEA のエルバラダイ事務局長(当時)と

米国・ブッシュ大統領(当時)の提案の 2 案を挙げたが、いずれも、我が国が関わった提

案ではない。

【出典】

IAEA、INFCIRC/640、2005 年 2 月 22 日

https://www.iaea.org/sites/default/files/publications/documents/infcircs/2005/infcirc

640.pdf

エコノミスト誌、”Towards a safer world”、2003 年 10 月 16 日

http://www.economist.com/node/2137602

National Defense University、”At the Crossroads Counterproliferation and National

Security Strategy”、2004 年 4 月

http://wmdcenter.ndu.edu/Portals/97/Documents/Publications/Articles/At-the-cross

roads1.pdf

2. IAEA の低濃縮ウランバンク構想の具体化に向けた取り組み

1.で示した構想の具体化に向けて、複数の提案が行われているが、以下、特に IAEA によ

る低濃縮ウランバンク構想の実現につながるものとして、仏、独、蘭、露、英、米の 6 カ

国の構想と、米国の非政府組織である核脅威イニシアチブ(NTI)による IAEA ウラン燃料

バンク構想の概要を示す。

(1) 仏、独、蘭、露、英、米の 6 カ国の構想

自国にウラン濃縮能力を有する仏、独、蘭、露、英、米の 6 カ国の政府代表は、2006

年 5 月 31 日に IAEA のエルバラダイ事務局長(当時)と天野之弥 IAEA 理事会議長(当

時)に対して、市場原理による供給、IAEA のサポートを伴う濃縮事業者のバックアップ・

システム、及びこれらの 6 カ国/IAEA による低濃縮ウランの備蓄の 3 層からなるウラン

供給保証体制の構築に関する提案について、加盟国による検討を要求する書簡を提出した。

しかしながら、こうした構想により、濃縮能力を持つ国と持たざる国の二分化が生じる

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との見解も提示されている3。

(2) 核脅威イニシアチブ(NTI)による IAEA ウラン燃料バンク構想の提案

2006 年 9 月 19 日から 21 日にかけて開催された第 50 回 IAEA 総会特別イベント「21

世紀における原子力利用の新たな枠組み:供給保証と不拡散」において、NTI は、IAEA

のウラン燃料バンク構想の具体化に向けて提案を行った。イベントで NTI は、IAEA が

所有・管理する、自国でウラン濃縮を行わないと選択した国に対して供給される低濃縮ウ

ラン備蓄施設を設置するために、5,000 万ドルを提供する用意があると発表した。

なお後に NTI は、このイニシアチブは自前の核燃料製造を確立・拡張する各国の権利

を減ずるものではないとしている。

【出典】

仏、独、蘭、露、英、米の 6 カ国の政府代表からエルバラダイ IAEA 事務局長と天野

之弥 IAEA 理事会議長に宛てた書簡、2006 年 5 月 31 日

http://www-pub.iaea.org/mtcd/meetings/PDFplus/2006/cn147_ConceptRA_NF.pdf

Tariq Rauf, Multilateral Approaches to the Nuclear Fuel Cycle and other proposals,

Vienna, 6 February 2007

http://www-pub.iaea.org/mtcd/meetings/PDFplus/2007/Seminar_For_Diplomats/Ra

uf_Presentation_NEW.ppt

3. 低濃縮ウランバンク構想における日本の関与

IAEA の低濃縮ウランバンクに対しては、上述のとおりカザフスタンが低濃縮ウランの備

蓄に向けた取り組みを進め、NTI、米国、欧州連合(EU)、アラブ首長国連邦、クウェート、

ノルウェー、カザフスタンが資金拠出を決めている。

日本は、資金拠出等の形で同構想に関与はしていないが、以下、低濃縮ウランバンク構想

における日本の関与等について整理する。

(1) 「核燃料供給登録システム」の構築に関する提案

日本の低濃縮ウランバンク構想への関与として、上記の IAEA 総会特別イベント「21

世紀における原子力利用の新たな枠組み:供給保証と不拡散」で行った「核燃料供給登録

システム」の構築に関する提案を挙げることができる。

「核燃料供給登録システム」の提案資料によれば、日本は核燃料供給保障に関する仏、独、

3 例えば、ウラン濃縮の検討経緯のある南アフリカの閣僚や、濃縮を実施しているブラジル

の原子力発電会社幹部らが、こうした見方を提示したとされている。なお、6 カ国が濃縮ウ

ランの備蓄等を行う構想は実現していない。

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蘭、露、英、米の 6 カ国の構想の目的を支持している。しかしながら、ウラン濃縮に限

らず、ウラン原料、転換・燃料加工、ウラン在庫・備蓄等フロントエンド全体をカバーす

るメカニズムを考慮することが有益である、等の考えを示している。そして、6 カ国の構

想を補完するものとして、以下の 3 項目によって構成される提案を行っている。

IAEA 加盟国による IAEA へのシステムへの参加意向の通知、ウラン鉱石・ウラン備

蓄・ウラン転換・ウラン濃縮及び燃料製造キャパシティの核燃料供給登録システムへ

の登録

核燃料供給登録システム参加国のこれらのキャパシティの定期的(年次)報告

IAEA による参加国が提供した情報の管理等

なお、日本の「核燃料供給登録システム」の提案は、2.(2)の NTI の提案が行われたイ

ベントと同じイベントで公表されたものではあるが、両提案はそれぞれ独立した提案であ

る。

(2) カザフスタンの低濃縮ウランバンク構想等への貢献に対する日本の評価

安倍総理の 2015 年 10 月のカザフスタン訪問の際に公表された両国の共同声明で、日

本は、カザフスタンが、同国における IAEA の低濃縮ウランバンク設立及び輸送分野に

おける核セキュリティ強化を含め、核燃料の安定供給及び核セキュリティの分野において

大きな貢献を行っていることを高く評価している。

【出典】

IAEA の低濃縮ウランバンク構想への資金拠出について纏めたウェブサイト

https://www.iaea.org/ourwork/leubank/funding

原子力委員会、「第 50 回国際原子力機関(IAEA)総会等の結果について」、2006 年 9

月 26 日

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2006/siryo39/siryo1.pdf

「日本の軍縮・不拡散外交」(第六版)(平成 25 年)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/gun_hakusho/2013/pdfs/zenbun.pdf

2015 年 10 月 27 日の「日本国とカザフスタン共和国との間の戦略的パートナーシップ

の深化及び拡大に関する共同声明」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000107705.pdf

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(15) 米国・共和党、民主党の大統領候補等の原子力発電に対するスタンス等について

米国では、2016 年 11 月 8 日が大統領選挙の投票日となっている。

この 7 月 18~21 日にかけて、共和党の全国党大会が開催され、7 月 19 日に、実業家の

ドナルド・トランプ氏が大統領候補として正式に指名された他、マイク・ペンス・インディ

アナ州知事が副大統領候補として指名された。一方民主党の全国党大会は 7 月 25~28 日に

開催され、大統領候補としてヒラリー・クリントン前国務長官が指名される見込みである。

■共和党大統領候補等の原子力発電に対するスタンス

以下に、共和党の全国党大会を受け、米国・International Technology and Trade

Associates, Inc.(ITTA社)が作成した7月 21日付けのレポートUpdate on Nuclear Energy

Policies of US Presidential Candidates で報告された、共和党の正副大統領候補等や、共

和党が政策綱領で示した原子力発電に対するスタンス等について整理する。

1. ドナルド・トランプ大統領候補のエネルギー政策や原子力発電に対するスタンス等

トランプ氏のエネルギー政策には、一貫性の欠如が見られる。一例として、過去原子力

への支援に言及しているものの、具体的にどのような形での支援なのかは不明確である。

気候変動は偽りの警告であると発言している。

石油は「国の活力源」であるとしており、国内の石油及びガスの生産量増加を支援する

と繰り返し発言している。

原子力への支援について言及している。東京電力福島第一原子力発電所事故後には、原

子力を廃止すべきではないと明言していたことがある。また、事故が発生したからとい

って放棄することはできないものとして、原子力の必要性を航空機になぞらえた発言も

ある。

トランプ氏にとって、原子力は選挙運動における優先事項ではない。

トランプ氏は原子力に対して強いスタンスを取ってはいないと考えられる。過去に同氏

は、原子力への支持を述べているが、選挙演説では原子力をほとんど取り上げていない。

同氏のエネルギー顧問は、大半が石油・ガス業界の出身である。

トランプ氏のエネルギー顧問の一人、ノース・ダコタ州出身、共和党のケビン・クレイ

マー(Kevin Cramer)下院議員は、トランプ氏にエネルギー問題に関して提言を行っ

ている。ノース・ダコタ州にはバッケン・シェール油田が所在しているため、石油とガ

ス資源の開発で経済的な恩恵を受けている。そのため、クレイマー氏は石油及びガス開

発の促進を全面的に支援している。

2. マイク・ペンス副大統領候補のエネルギー政策や原子力発電に対するスタンス等

あらゆる種類の発電源を支持しているが、再生可能エネルギー、原子力、その他のエネ

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ルギー供給源に補助金を拠出しようとは考えていない。

原子力に対して前向きではあるが、石炭を含む他のエネルギー供給源以上に原子力を支

持している訳ではない。ペンス氏は石炭及び化石燃料産業の強力な支持者として知られ

ている。地元・インディアナ州は、全米で第 8 位の石炭産出量を誇り、雇用の多くを

石炭産業に依存している。

インディアナ州には原子力発電所がなく、ペンス氏が職務を遂行するに当たって、原子

力が問題とされることはほとんどない。

トランプ氏同様に、化石燃料産業を他のエネルギー技術より優先すると思われる。また、

原子力を石炭や他のエネルギー供給源以上に重視することはないと思われる。

2012 年の演説で、原子力の技術と安全性を称賛している。また同じく 2012 年の演説

で、インディアナ州の企業が、小型モジュール炉建設のサプライチェーンの一員である

ことを称賛している。

3. 共和党の政策綱領におけるエネルギー政策や原子力発電に対するスタンス等

従来の共和党のエネルギー政策に対するスタンスと同様に、エネルギー生産における規

制緩和を支持し、自由市場のアプローチに基づき、公共部門への財政的支援の撤廃を主

張している。

原子力拡充の必要性に言及していた 2012 年の政策綱領と比較すると、今回の政策綱領

では原子力の緊急性に対する姿勢は弱まっている。

原子力開発における規制緩和を支持しているが、債務保証のような財政的支援は提唱し

ていない。他方で、原子力や他の種類の発電所の許認可手続きにおける負担の軽減を求

めている。

原子力における規制を取り除くとしている。ここで言われている「規制」とは、原子力

規制委員会(NRC)による規制を指しているものと考えられる。

オバマ政権が 1982 年放射性廃棄物政策法(NWPA)を遵守しないことを批判し、ユッ

カマウンテンプログラム再開の意向を示している。

2012 年、2016 年両方の政策綱領で、使用済燃料の長期管理政策策定の必要性を指摘し

ているが、2012 年は先進的再処理技術に言及していたのに対して、2016 年は言及して

いない。

2016 年の政策綱領では、先進的な原子力技術の開発を可能にする政策の必要性を主張

している。

4. その他

ペンス氏の指名によりトランプ氏は、保守的な経歴を持つ同伴者を得ることとなった。

一部の共和党員は、トランプ氏が保守主義の原則を欠いていることを批判しているが、

ペンス氏の指名によりバランスが取れることとなる。

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■民主党大統領候補等の原子力発電に対するスタンス

以下に、民主党の全国党大会を受け、米国・International Technology and Trade

Associates, Inc.(ITTA社)が作成した7月 26日付けのレポートUpdate on Nuclear Energy

Policies of US Presidential Candidates 等で報告された、民主党の正副大統領候補等や、

民主党が政策綱領で示した原子力発電に対するスタンス等について整理する。

1. ヒラリー・クリントン大統領候補のエネルギー政策や原子力発電に対するスタンス等

クリントン氏は大統領選において、再生可能エネルギーに的を絞って気候変動・エネル

ギー政策を提示している。

原子力に関してクリントン氏は過去、既存の原子力発電所に対する財政的支援には反対

する一方、新技術の開発への支持を表明している。既存の原子力発電所の運転継続1に

ついて明確な態度は示していない。なお、2007 年には既存の原子力発電について「何

とも言えない(agnostic)」と発言している。これまでの同氏の発言から判断すれば、環

境問題を理由として既存の原子力発電所の運転継続に賛成であるものの、財政的支援に

は反対すると考えられる。

クリントン氏の大統領選ウェブサイトでは、公的支援を行うべきクリーンエネルギーの

研究開発として、電力貯蔵、先進的原子炉、二酸化炭素貯留等が示されている。

ユッカマウンテンプロジェクトについてクリントン氏は、2008 年の大統領選では反対

を明言し、最近は棚上げを主張している。また、放射性廃棄物処分については、科学に

基づく継続的な取り組みの必要性について言及している。

2. ティム・ケーン副大統領候補のエネルギー政策や原子力発電に対するスタンス等

ケーン氏はバージニア州選出の上院議員であり、上院軍事委員会、予算委員会、外交委

員会、高齢化問題特別委員会の委員である。同氏はバージニア州リッチモンド市長及び

州知事を歴任している。

ケーン氏のエネルギー政策は穏健で合意を重視するものであり、実践的である。概して

再生可能エネルギーに好意的である。一方で米国のエネルギーミックスにおいて化石燃

料が引き続き重要な位置を占めるという認識も有している。その点でオバマ政権の”All

of the Above”政策と同様の見解を有していると考えられるが、化石燃料への支援に対

してはオバマ政権より積極的であると思われる。

ケーン氏は原子力に対して前向きな姿勢を見せている。例えば、バージニア州知事時代、

1 MRI 注:「既存の原子力発電所の運転継続」が原子力発電を利用し続けることを指してい

るのか、原子力発電所の 60 年超運転を指しているのか、原文からは明確でないが、大統領

候補が原子力規制の詳細について立場を表明するのは一般的ではないと思われることから、

ここでは原子力発電を利用し続けることを指しているものと考えられる。

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州のエネルギー計画において原子力を選択肢の一つとしている2。

上院議員としては、既設炉の高コスト3と廃棄物処分の問題を解決するならば、原子力

が二酸化炭素排出削減政策に含まれるべきとの発言をしている。

3. 民主党の政策綱領におけるエネルギー政策や原子力発電に対するスタンス等

政策綱領で直接原子力発電に関する政策は示されていないが、民主党が重視する「クリ

ーンエネルギー」の概念に原子力発電が含まれている。「再生可能エネルギー」ではな

く「クリーンエネルギー」という表現が用いられているのは、そのためであると考えら

れる。

民主党は、明らかに再生可能エネルギーを原子力より重要視している。

直接原子力発電に関する言及がないことは、民主党の原子力に対する反対姿勢を示唆す

るものではない。言及がないのは、大統領候補指名においてクリントン氏と争ったサン

ダース上院議員が原子力に強く反対していたことを意識してのものと考えられる。

政策綱領では、以下に引用する通りクリーンエネルギーの導入目標が提示されている。

しかしながら、政策綱領での主張は拘束力を有するものではなく、目標の実現に向けた

明確な戦略が示されない場合も多い。むしろ、政策綱領での主張は有権者に対して党と

しての姿勢を示すものと捉えるべきものである。

政策綱領では、今世紀半ばまでに、米国をクリーンエネルギーに全面的に依拠するもの

とするとの主張がされている。「100%クリーンエネルギーに依拠するシステム」は、

候補指名争いの中でサンダース上院議員が提示していたものであり、それが党の政策綱

領に反映されたと考えられる。クリントン氏自身は、時間枠を特定しての 100%クリー

ンエネルギーシステムの構築について言及したことはなかった。

政策綱領では、10 年以内に発電源の 50%をクリーンエネルギーによるものとすること、

4 年以内で 5 億枚の太陽光パネルを設置すること、それにより家庭への電力供給を再生

可能エネルギーで賄えるようにすることが掲げられている。クリントン氏自身かつて、

5 億枚の太陽光パネル設置に向けた行程について言及したことがある。

政策綱領では、連邦政府の電力を全てクリーンエネルギーで発電された電力で賄う取り

組みへの支援が掲げられている。既にオバマ政権で、連邦政府が使用する電力における

再生可能エネルギーの拡大による産業の支援に向けた取り組みが進められている。

4. その他

原子力への支援に対して限られた発言しかしていないという点で、クリントン、ケーン、

2 MRI 注:バージニア州では現在、ノースアナ、サリー両サイトで 2 基ずつの原子炉が運

転中である。 3 MRI 注:existing reactor models と表現しており、新設炉の建設コストのことを指して

はいない。

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トランプ、ペンスの両党正副大統領候補は同様である。

今回の大統領選で原子力は重要課題とはならないと思われる。エネルギーや気候変動に

関する議論においても、原子力は重要課題とはならないであろう。

【出典】

International Technology and Trade Associates, Inc.(ITTA 社)、Update on Nuclear

Energy Policies of US Presidential Candidates、2016 年 7 月 21 日

International Technology and Trade Associates, Inc.(ITTA 社)、Update on Nuclear

Energy Policies of US Presidential Candidates、2016 年 7 月 26 日

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(16) 米国の原子力関連事業への外資参入規制について

①原子炉・原子力施設の外国支配規制について

原子炉・原子力施設(濃縮施設等)のオーナーシップについては、原子力法(AEA)Sec.103.

Commercial Licenses の d.に関連の規定があり、原子力規制委員会(NRC)が、外国人、

外国法人、外国政府の支配下にある(所有、管理、支配を含む)ことを知った場合及びそう

みなすに足る理由がある場合に、これら施設については許認可の発給は行われないことが規

定されている。

Atomic Energy Act of 1954, as amended (Sec.103. Commercial Licenses d.を参照)

http://www.nrc.gov/docs/ML1327/ML13274A489.pdf#page=23

②その他、米国への投資(支配)に関する規制について

①の他、産業を特定しない(が、原子力を含むと考えてよい)外資規制として、改正 1950

年国防生産法第 721 条、通称 Exon-Florio 条項がある。

Exon-Florio 条項には、審査の上で、国家安全保障上の懸念等があると判断される場合に

は出資自体を禁じることができることが定められている。審査は大統領の委託を受けた対米

外国投資委員会(CFIUS)が実施し、大統領が出資を禁ずる判断を行うことができること

が定められている。

米財務省・外資規制(Exon-Florio 条項)に関する説明

https://www.treasury.gov/resource-center/international/foreign-investment/Pages/cfius-l

egislation.aspx

同ページにある PDF リンクから、721 条の内容が確認できる。

--------------------------------

なお、原子力施設に対する外国支配に関して、カルバートクリフス 3 号機(CC3)の一

括建設運転許認可(COL)手続に関連して、2014 年 9 月に NRC スタッフが規制指針の見

直し提案を行った際の報告書に、過去からの検討の経緯や(PDF p24~, Enclosure 1,

Legislative History and Proposed Amendments)、他国での外資規制の例(PDF p113,

Table 4)も含めて整理されている。

米原子力規制委員会、2014 年 9 月、SECY-14-0089 Fresh Assessment of Foreign

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Ownership, Control, or Domination of Utilization Facilities

http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/commission/secys/2014/2014-0089scy.pdf

※米国以外の国における外資規制については、Table 4 Other Countries’ Foreign

Investment Reviews が参考になる。

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(17) 中国・江蘇省連雲港市における燃料サイクル施設のサイト選定について

中国核工業集団公司(CNNC)は、仏 AREVA 社と協力して、燃料サイクル施設の建設

に向けた取り組みを進めている。具体的には、2007 年 11 月に CNNC は、再処理プラント

の建設にかかるフィージビリティ調査を実施することで AREVA 社と合意し、2015 年 6 月

に両者は、使用済燃料の再処理プロジェクトに関する協力覚書(MOU)を締結している。

CNNC は 2015 年 9 月 23 日には、燃料サイクルプロジェクトについて、2020 年に再処

理プラントの建設を開始し、2030 年頃に完工するという見通しを示した。しかし、この見

通しを示した際に CNNC は、施設の建設サイトについては情報を公表していなかった。

このたび、江蘇省の連雲港市政府が燃料サイクル施設のサイト選定を暫定的に中断すると

公表した。そのため、今回のサイト選定の中断に至るまでの動きについて、以下に整理する。

1. 江蘇省・連雲港市の概要

中国東部、黄海に面する江蘇省の連雲港市には、田湾原子力発電所があり、現在ロシア

製のプラントであるVVER 2基が運転中、2基のVVERと1基の中国国産炉(CNP-1000)

が建設中である。

後述する通り、サイト選定が実施されているのは江蘇省以外に山東省、浙江省、福建省、

広東省、甘粛省である。このうち甘粛省以外は全て臨海部にあり、また、原子力発電所

が所在している(内陸部の甘粛省には原子力発電所はないものの、再処理施設のパイロ

ットプラント等が所在している。)。このため、燃料サイクル施設のサイト選定は、使用

済燃料の輸送の利便性が高い沿海部を中心に進められているものと考えられる。

2. 連雲港市における燃料サイクル施設のサイト選定に関連する動き

以下、最近の連雲港市における燃料サイクル施設のサイト選定に関連する動きについて、

確認できた情報を整理する。

(1) AREVA 社アジア太平洋地区の代表らが連雲港市のサイトを視察

サイクル事業の実施主体である CNNC グループの中核瑞能科技有限公司(CNNC

Nuclear Fuel Reprocessing Co., Ltd. CNFR)によると、2016 年 5 月 11 日から 12 日に

かけて、AREVA 社アジア太平洋地区の代表らの一行 7 名が、連雲港市のサイトを視察し

た。

(2) 国家国防科学技術工業局高官が連雲港市のサイトを視察

CNNC によると、2016 年 7 月 26 日に国家国防科学技術工業局の王副局長が連雲港市

のサイトを視察した。王副局長は視察において、「現地の社会環境と民意の状況を重視し、

科学技術に関する情報提供を強化」すべきことを強調している。

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(3) CNFR がサイト選定の状況についてウェブサイトで説明

CNFR は 2016 年 8 月 6 日付けで、ウェブサイトに「中仏の協力による燃料サイクル

プロジェクトの最近の状況の説明」を掲載した。全文は以下の通りである(下線による強

調は三菱総研による)。

当社は、最近連雲港市の広範なネットユーザーが中仏の協力による燃料サイクルプロジェ

クトに大変注目していることを認識しており、プロジェクトの基本的な状況を理解してもら

うために、以下の通り説明する。

中仏の協力による燃料サイクルプロジェクトは、2009 年に中仏の協力が正式に開始されて

以降1、一貫して両国政府の支持を得て、両国の最高指導者の立会いの下、政府間や企業間の

協力に関する文書に署名してきた。本プロジェクトの完工後、我が国の原子力発電プロジェ

クトは安全で持続可能な発展を実現し、我が国の原子力利用における全体的な技術水準は向

上され、「原子力強国」が構築され、また、地元の産業構造の高度化を促進し、現地の社会経

済やクリーンな発展のために貢献することとなるだろう。

現在のところ、中仏の協力による燃料サイクルプロジェクトは前期作業段階2にあり、サイ

ト選定は、国の原子力プロジェクトのサイト選定要件3に従って、山東省、江蘇省、浙江省、

福建省、広東省及び甘粛省で展開されている。

(4) 連雲港市政府がサイト選定の中断等を公表

2016 年 8 月 10 日、連雲港市政府は、暫定的に燃料サイクル施設のサイト選定の前期

作業を中断すると公表した。また前日 9 日に市政府は、一部の群衆が非合法の集会や示

威活動によりサイト選定に対する反対を表明しているとして、示威活動は法律の規定によ

り行うこと、ウェブサイト等を通じた非合法の集会活動の扇動を禁じることなどを通告し

た。

1 2009 年に中仏の協力が正式に開始されたというのは、同年 12 月に両国が中国で燃料サイ

クル施設を建設するとの共同声明を公表したことを指していると思われる。なお、同月には、

CNNC と当時の仏原子力庁(CEA)が「原子力の平和利用における研究開発についての協

力合意」文書に署名している。

CNFR ウェブサイト

http://www.cnfr.cc/article/index/id/156/cid/4 2 ここでサイト選定の「前期作業」と記載されているが、前期・後期の区分については現時

点では確認できていない。 3 核燃料サイクル施設のサイト選定における安全要件は、「民生用核燃料サイクル施設の安

全規定(HAF301)」で規定されている。

Page 89: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

89

【出典】

国際原子力機関(IAEA)、Power Reactor Information System(PRIS)

CNFR ウェブサイト

CNNC ウェブサイト

連雲港市政府ウェブサイト

Page 90: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

90

(18) 米国の新設計画について

① 米国における新原子力プロジェクトの状況について

下表に米国における新原子力プロジェクトの状況(2016 年 9 月 30 日現在)を整理する。

表 新原子力プロジェクトの状況(2016 年 9 月 30 日現在)

事業者 サイト 炉型 基

数 ESP

COL

申請日

COL

取得日

建設中・新規運開(5基)

サザン社

ヴォーグ

ル 3, 4

(ジョージ

ア州)

AP1000 2 2009/8承

認 2008/3/28 2012/2/10

サウスカロライナ・エ

レクトリック&ガス社

サマー2,

3

(サウス

カロライ

ナ州)

AP1000 2 該当なし 2008/3/27 2012/3/30

テネシー渓谷開発公

社(TVA)

ワッツバ

ー2 [注

1]

(テネシ

ー州)

Gen II PWR 1 該当なし -

建設許可発給

1973/1/23

運転認可発給

2015/10/22

COL発給済みで建設前 〔2申請、計 3基〕

デトロイト・エジソン社

フェルミ 3

(ミシガン

州)

ESBWR 1 - 2008/9/18 2015/05/07

STPニュークリア・オ

ペレーティング社

(STPNOC)

サウステ

キサスプ

ロジェクト

3,4

(テキサ

ABWR 2 - 2007/9/20 2016/02/12

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91

ス州)

COL審査中 〔4申請、計 7基〕

ドミニオン社

ノースア

ナ 3

(バージ

ニア州)

ESBWR 1 2007/11承

認 2007/11/26

デューク・エナジー社

ウィリア

ム・ステ

ーツ・リ

ー1, 2

(サウス

カロライ

ナ州)

AP1000 2 - 2007/12/12

フロリダ・パワー&ラ

イト(PPL)社

ターキー

ポイント

6, 7

(フロリダ

州)

AP1000 2 - 2009/6/30

デューク・エナジー社

レビー1,

2

(フロリダ

州)

AP1000 2 - 2008/7/30

COL審査中断 〔4申請〕

デューク・エナジー社

ハリス 2,

3

(ノースカ

ロライナ

州)

AP1000 2 - 2008/2/18

ルミナント社

コマンチ

ェピーク

3, 4

(テキサ

ス州)

US-APWR 2 - 2008/9/19

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TVA(NuStart)

ベルフォ

ント 3, 4

(アラバ

マ州)

AP1000 2 - 2007/10/30

PPL社/UniStar社

ベルベン

(ペンシ

ルベニア

州)

U.S.EPR 1 - 2008/10/10

2016/8/31

取り下げを申請

(NRCの承認待ち)

COL申請取り下げ 〔6申請〕

エクセロン社

ビクトリ

ア郡 1, 2

(テキサ

ス州)

ESBWR 2 2008/9/3 2010/7/20

取り下げ

エンタジー社

(NuStart)

グランド

ガルフ 3

(ミシシッ

ピ州)

ESBWR 1 2007/4承

認 2008/2/27 2015/9/22取り下げ

UNE

ナインマ

イルポイ

ント 3

(ニューヨ

ーク州)

U.S.EPR 1 - 2008/9/30 2014/3/31

取り下げ

UNE

カルバー

トクリフス

3

(メリーラ

ンド州)

U.S.EPR 1 -

2007/7/13

&

2008/3/14

2015/9/22

取り下げ

アメレン社

キャラウ

ェイ 2

(ミズーリ

州)

U.S.EPR 1 - 2008/7/24 2015/10/29

取り下げ

エンタジー社 リバーベ ESBWR 1 - 2008/9/25 2016/6/14

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ンド 3

(ルイジ

アナ州)

取り下げ

早期サイト認可(ESP)

エクセロン社

クリントン

(イリノイ

州)

未定 - 2007/3承

認 未定

エクセロン社

ビクトリ

ア郡

(テキサ

ス州)

未定 - 2012/10申

請取り下げ

申請取り下

パブリック・サービス・

エンタープライズ・グ

ループ(PSEG)社

セイラム/

ホープク

リーク

(ニュー

ジャージ

ー州)

未定 - 2016/5承

認 未定

計画中

ブルーキャッスルホ

ールディングス社

グリーン

リバー

(ユタ州)

未定 未

定 -

ユタ州公営電力シス

テムズ(UAMPS)社

アイダホ

国立研

究所(ア

イダホ

州)

ニュースケー

ル・パワー社

SMR

定 -

TVA

クリンチ

リバー

(テネシ

ー州)

SMR(未定) 未

【出典】米原子力規制委員会(NRC)、原子力協会(NEI)ウェブサイトほか

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② ベルベンド原子力発電所の COL の審査状況について

マーチャント発電事業会社であるタレン・エナジー社は 2016 年 8 月 31 日、米 NRC に

対して、ペンシルベニア州ルザーン郡(同社が保有するサスケハナ原子力発電所に隣接する

サイト)に建設を予定していたベルベンド原子力発電所の COL 申請の取り下げを要請した

1。正式な COL 申請取り下げには NRC の承認が必要である。

同発電所は 2008年 10月に公益事業会社であるPPL社によりCOL申請が行われていた。

しかしながら、2015 年 2 月に同発電所の炉設計(炉型は U.S. EPR)を担う仏 AREVA 社

が標準設計認証(DC)の審査プロセスを中断するよう NRC に申し入れており 2、無期限の

中断となった。

なお、今般 COL 申請の取り下げを要請したタレン・エナジー社は 2015 年 6 月に PPL 社

の発電部門がスピンオフし、米プライベート・エクイティ(PE)投資会社リバーストーン

社と共に創設したマーチャント発電事業会社である 3。COL を申請した事業者と、取り下

げを要請した事業者が異なるのはこのためである。

また、タレン・エナジー社は、今般の COL 申請の取り下げに関して、同発電所の COL

発給には「実行可能な方策がない(No viable path)」としており 1、炉設計を担う仏 AREVA

社がDCの審査プロセスの中断をNRCに申し入れていたことが要因になったと説明されて

いる。

【参考文献】

・ タレン・エナジー社プレスリリース:COL 申請の取り下げ(2016 年 8 月 31 日)

http://talenenergy.investorroom.com/news-releases?item=122

・ AREVA 社レター:NRC に対する標準設計認証(DC)取り下げ(2015 年 2 月 25 日)

http://static1.1.sqspcdn.com/static/f/356082/26020851/1425746000493/NR112510.p

df?token=ZqXPQjB6YapIm9RLgyzvYbnW%2BnE%3D

・ PPL 社のプレスリリース:タレン・エナジー社の創設(2015 年 6 月 1 日)

http://pplweb.mediaroom.com/index.php?s=12270&item=137156

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(19) 米国の電力自由化の最新状況について

① 米国における電力自由化の現状について

米国における電力自由化の現状について、ITTA よりレポートを受領したので、回付する。

尚、ITTA レポートによれば、電力小売りの全面自由化を実施しているのは 14 州と DC で

あり、この状況に変化はない。しかし、カリフォルニア州での電力危機以降に自由化プロセ

スを中断している州の中では、規制緩和の動きを再開させるべきとの議論は継続していると

のことである。

②自由化に向けた具体的な動き

調査した範囲では、現在、ネバダ州では 2016 年 11 月に実施される住民投票の中で、エ

ネルギー市場の創設が議題として入っている。

【参考資料】

・ ネバダ州の住民投票の議案

https://nvsos.gov/Modules/ShowDocument.aspx?documentid=4434

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(20) 中国製炉の輸出に向けた動向

中国製原子炉の国外における展開状況は下表の通りである。

国名 サイト 炉型

設備容

(グロス、

万 kW)

建設開始(予定) 商業運転開始(予定) ステータス

パキスタン

チャシュマ 1号機 CNP-300 32.5 1993年 8月 1日 2000年 9月 15日 運転中

チャシュマ 2号機 CNP-300 32.5 2005年 12月 28日 2011年 5月 18日 運転中

チャシュマ 3号機 CNP-300 34 2011年 5月 28日 2016年 12月 建設中

チャシュマ 4号機 CNP-300 34 2011年 12月 18日 2017年 10月 建設中

カラチ 2号機 華龍 1号 116.1 2015年 8月 20日 2021年末 建設中

カラチ 3号機 華龍 1号 116.1 2016年 7月? 2022年末

計画中。WNAは建設開始予定を

「2016年 7月?」としているが、着

工したという情報は確認できていな

い。

アルゼンチン アトーチャ 4号機

または別のサイト 華龍 1号 不明 2019年 不明

同国 5基目の原子炉として、華龍 1

号の導入を検討

英国 ブラッドウェル B 華龍 1号 不明 不明 不明 検討中

サウジアラビア 不明 高温ガス炉 不明 不明 不明 中国の高温ガス炉建設プロジェクト

のための MOUに署名済

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【出典】

・ World Nuclear Association ウェブサイト

http://www.world-nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-a-f/china-nuclear-power.aspx

http://www.world-nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-o-s/pakistan.aspx

http://www.world-nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-a-f/argentina.aspx

・ 国際原子力機関(IAEA) Power Reactor Information System (PRIS)

https://www.iaea.org/PRIS/home.aspx

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(21) 台湾における電気事業法の改正案について

台湾では、夏期を中心に供給予備力が逼迫する中、原子力が 15%強の電力供給を賄って

きたものの、脱原子力を打ち出す民進党政権時代の 2002 年に制定された環境基本法1第 23

条で、「非核家園(原発のない故郷)という目標を実現する」ことが定められた。2008 年に

成立した国民党政権は一時原子力を容認する方針を示したものの、2011 年 3 月の東京電力

福島第一原子力発電所事故などを受けて、段階的に脱原子力を目指すことを決定した。

2016 年の総統選挙では再度、脱原子力に積極的な民進党の蔡英文氏が当選し、同年 5 月

に総統に就任した。民進党は選挙戦の時点から 2025 年までの脱原子力実現を掲げていたも

のの、政権成立以降、この政策の実現に向けた法改正への動きは進めていなかった。

こうした中、経済部は、行政府(日本の内閣に相当)が立法院(日本の国会に相当)にお

ける審議のために 2016年 10月 20日に策定した電気事業法の改正案2を公表した。これは、

民進党の脱原子力政策の法制化に向けた取り組みと捉えることができる。

以下に、改正案における 2025 年までの脱原子力の規定と、再生可能エネルギーの促進策

の 2 点について整理する。

1. 2025 年までの脱原子力の実現について

改正案の第 94条に、「原子力発電施設は2025年までに全て運転を停止するものとする。」

という規定が置かれている。なお、現行の電気事業法にこれに該当する条文はない。本条の

改正案の説明には、「2025 年までに非核家園を実現するという目標に合わせて、本条により

原子力発電施設の運転停止期限を確定する。」と記載されている。

2. 再生可能エネルギーの促進策について

日本の報道で、行政院が説明会において、2025 年までに再生可能エネルギーの比率 20%

を達成する3との目標を提示したとの報道があったが、電気事業法の改正案には、エネルギ

ーミックスについて具体的に定める規定はない4。

1 環境基本法

http://lis.ly.gov.tw/lglawc/lawsingle?0^4C0681890CC01ACD26818197E4984C2689C90C

DC18CD6681 2 台湾 経済部ウェブサイト

http://web3.moeaboe.gov.tw/ECW/populace/content/wHandMenuFile.ashx?file_id=1629 3 なお、2013 年のデータでは、台湾では石炭火力が総発電量の約 50%を占め、天然ガスが

約 27%、原子力の割合は約 17%である。再生可能エネルギーの比率は 4%程度である。 4 現政権の再生可能エネルギー導入比率の目標については、総統府や経済部等の関係機関か

ら情報は公表されていない模様である。なお報道によれば、蔡総統は総統就任前の 2015 年

の反原子力デモ参加時に、2025 年には台湾の電力に占めるクリーンエネルギーの割合を

20%にするという目標を提示していたとのことである。

http://www.ettoday.net/news/20150326/484329.htm

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改正案では、電気事業の問題点として、電力市場が自由化されていないことが再生可能エ

ネルギー発展の制約となっているなどと指摘し、再生可能エネルギーによる発電電力につい

て、送配電会社を通じた販売や需要家に対する直接販売、及び卸売等を通じて発電電力を需

要家に販売できるようにするとしている。

【参考】台湾における電力市場の自由化に向けた計画

経済部の能源局が 2016 年 7 月に作成した資料「電気事業法修正草案計画 要約」5によ

れば、台湾では先進国の事例も参考し、以下の 2 段階で電力市場の自由化を進めるとして

いる。

第 1 段階(改正法成立後 1~2 年半):発電、売電、卸売市場の開放

電力の卸売と直接販売を自由化し、発電・売電も自由競争に

漸進的に需要家による電力会社の選択を可能に

電気事業の管理組織を設置

国営台湾電力公司の一体性は維持

第 2 段階(改正法成立後 4~6 年):発送電分離

国営台湾電力公司は発電会社と送電会社に分離

5 台湾 経済部ウェブサイト

http://electricitylaw.tier.org.tw/1050726-27%E9%9B%BB%E6%A5%AD%E6%B3%95%E

4%BF%AE%E6%AD%A3%E8%8D%89%E6%A1%88%E8%A6%8F%E5%8A%83%E7%B

0%A1%E5%A0%B1.pdf

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(22) ウレンコ社の株式売却に関するオランダ議会情報について

【概況】

現在:英・蘭・独の三国が 1/3 ずつ保有。

英・蘭:政府保有

ドイツ:電気事業者 E.ON 社と RWE 社が保有(民間企業)

⇒現状ではいわゆる政府保有が 2/3(多数)

このうち、英国・ドイツは株式を売却したい意向を示している(まだ売却はしていない)。

3 者の協議は 2016 年 9 月時点でも決着していない模様。

⇒英国政府が株式を売却した場合、政府保有はオランダ分の 1/3 のみ(少数)

⇒オランダ政府は、民営化した場合も政府関与を残す内容の法案を準備(議会未提出)。た

だし、法案の目的は公共の利益の保護。政府は法制定とウレンコの売却是非判断は別個の

ものと説明。売却是非は、出資 3 者の協議及び法案成立後に議論するとしており、現状で

具体的な予定はないとしている。

<2016 年 6 月 13 日時点の状況>

■ウレンコ社の株式売却計画に関するオランダ議会情報

(1)ドイツ「左派党」議員ウェブサイト情報(2015 年 10 月 19 日付)

原子力に批判的なドイツの政党(連邦野党)「左派党」に所属する国会議員であるフーベ

ルトゥス・ツデーデル議員は、左派党ウェブサイト内の自らのページ(2015 年 10 月 19 日

付)において、ウレンコ社売却に係るオランダの議論の動向を報告している。同ウェブサイ

トに示されているポイントは以下のとおり。

英独はすでにウレンコ株式の売却意向を示しているが、オランダに関しては、売却

するとしても、それは英独の圧力を受けてのことであろう(英独撤退後、オランダ

のみが残っても 1/3 の少数出資者。政府出資のメリットがない。)

オランダでは、核不拡散の観点からウレンコ社の売却(民営化)を懸念する意見6が

出ており、労働党(PvdA)とキリスト教民主同盟(CDA)が売却反対を主張してい

る。

2015 年 6 月には Dijsselbloem 財務相が、オランダ政府含め、現在の株主がウレンコ

社の株式を売却した場合でも、公衆の利害、安全保障の観点から政府関与を残す内

容の法案を議会に示した模様である。

6 ウレンコ社に関しては、同社に在籍したカーン博士が核開発技術を持ち出し、イランの核

開発に関与したことがよく知られている。

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ただし、ドイツ側との調整が済んでおらず、正式な法案提出はドイツ待ち、という

状態である。

(2)オランダ第二院(下院) 経済大臣書簡(2016 年 2 月 2 日付)

※以下はオランダ語⇒ドイツの機械翻訳経由で確認した範囲の情報である。

オランダのカムプ経済相が 2016 年 2 月 2 日に議会下院に提出した書簡では、オランダで

は英独のウレンコ株式売却計画に関して、カムプ財務相が 2013 年の書簡において、英国政

府が株式を売却した場合、政府保有分が過半数を切り、いわゆる公有企業でなくなることを

受け、「公共の利益」を保護するため、同社の新しい企業形態を考える必要があることに言

及したことが示されている。

その後、英・独・蘭三国の出資者による協議の結果、2015 年に今後のウレンコの企業形

態について大筋合意に至ったとされている。

ウレンコ社をオランダ法下の企業とし(現在本社は英国)

(民営化された場合でも)3 カ国政府も「公共の利益に係る権利の保護に関する権利と

義務を付された特別な株式」を保有する

しかし、同書簡によれば、ドイツ政府は上記の大筋合意に対し、ドイツにおける脱原子力政

策を反映する観点から検討の必要ありとして不同意の見解を示している(ドイツ側としての

具体的な代替案の有無等不明)。ドイツではバックエンド関連の資金確保のありかたに関し

て政府が見直しを行っているところである。こうした状況から、大筋合意についても RWE

社、E.ON 社経営層の最終承認にいたっていない。ウレンコ社の企業形態や関連法案その他

に関する議会への正式な報告、提出は、関係各所の合意が得られてのちになるとの見通しが

示されている。

⇒2016/10/28 補足:ドイツでは 2016 年 10 月にバックエンド関連の資金基金化法案が閣議

決定されたばかりで、法案は成立していない。また、政府と事業者は今後バックエンド合意

を締結予定。こうした状況から、2016 年 10 月現在、ドイツ側でウレンコ売却について確

定的な方針が示される状況にはないと推測される。

<上記以降の議会文書>

(1)ドイツ連邦議会 2016 年 5 月 30 日付文書 (Drs.18/8582)及び 2016 年 9 月 23 日付

文書(Drs.18/9730)

Drs.18/8582 では、英独蘭の現出資者によるウレンコ売却に関する交渉状況を尋ねる議員

質問に対し、政府が直近で 2016 年 4 月に 3 者が会合し、「交渉の継続」で合意した旨回答

している。Drs.18/9730 は 2016 年 9 月付の議員質問一覧(回答文書はまだ出ていない)で

あるが、この中で議員がその後 2016 年内にいつ、協議が行われるのか進展を訊ねている。

少なくとも、3 者の協議は 2016 年 10 月時点で未決の模様である。

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(2)オランダ第一院(上院)大臣書簡(国営企業民営化に関する書簡)(2016 年 6 月 29

日付)

※以下はオランダ語⇒ドイツの機械翻訳経由で確認した範囲の情報である。

ウレンコ売却については、2016 年 2 月の状況から変化はない。同書簡では、ウレンコに

おけるオランダ政府持分については、2016 年 2 月の書簡時点同様、売却の是非を論じる時

期にないとしている。政府は、民営化の場合でも政府が一定の関与をしうる法案を策定して

いるが、英独蘭の協議が決しておらず、法案審議も止まっている。ウレンコ売却のオランダ

政府持分の売却是非がタイムテーブルに乗るのは、3 社の協議が決し、法案が議会に提出さ

れ、成立した後であると記されている。

(参考)

ドイツ左派党 フーベルトゥス・ツデーデル議員ウェブサイト、2015 年 10 月 19 日

http://www.hubertus-zdebel.de/verkauf-von-uran-waffen-technik-niederlande-berei

tet-urenco-gesetz-vor-neue-geschaeftsfuehrung-gesucht/

オランダ第二院(下院)、カムプ経済相 2016 年 2 月 2 日付書簡

https://zoek.officielebekendmakingen.nl/kst-28165-233.html

ドイツ連邦議会 2016 年 5 月 30 日付文書 (Drs.18/8582)

http://dipbt.bundestag.de/doc/btd/18/085/1808582.pdf

ドイツ連邦議会 2016 年 9 月 23 日付文書(Drs.18/9730)

http://dipbt.bundestag.de/doc/btd/18/097/1809730.pdf

オランダ第一院(上院)大臣書簡(国営企業民営化に関する書簡)(2016 年 6 月 29 日

付)

https://zoek.officielebekendmakingen.nl/kst-C-AG.html

Page 103: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

103

(23) ウレンコへの西独民間出資に係る経緯

以下、連邦議会文書 18/1540(2014 年 5 月 21 日付)による左派党議員の議会質問に対

する連邦経済エネルギー省(BMWi)の回答文書(2014 年 6 月 24 日付)に基づき、ウレ

ンコへの西独民間参画に関する経緯についてとりまとめる。

【概要】

※ドイツでは 1960 年代、再処理、ウラン濃縮など燃料関連事業の国産化実現を視野に、金

属・化学系産業界が研究開発等に参画していた。

1960 年代に、ドイツ国内におけるウラン濃縮等の R&D 実施者として西独政府が政府

100%所有の「GKT 社」設立。

1970 年アルメロ条約(1971 年発効)にて、英独蘭三カ国が「商業ベース」で濃縮事

業促進を図ることを約する。これに際し西独政府は、ドイツを代表してウレンコ事業

に参画する主体として民間企業ウラニット社(採鉱会社と原子力企業 NUKEM による

合弁)を指定。

1987 年、国有 GKT 社資産をウラニット社に譲渡

西独政府は 1970 年から、政府の支援が終了する 1992 年までの間、研究開発・投資支

援・運営支援としてウレンコ社に総額 11 億 6000 万マルク投入。

1993 年にドイツ政府とウラニット社が支援終了合意締結。ウラニット社が政府による

投資・運営支援費のうち 1 億 600 万ユーロを政府に返すことで合意。すでに支払済。

現在ウラニット社は RWE と E.ON が 50%ずつ出資。支援終了合意以後、ドイツ政府

による補填・財政支援などは受けていない。

■1960 年代:ウラン濃縮の研究開発を行う国有企業設置(実施主体 民間⇒政府)

ドイツは 1960 年代~1990 年代初頭にかけて、国内でのクローズドサイクル実現をめざ

し、ウラン濃縮や再処理などの研究開発を官民共同で進めていた。60 年代ごろまでは金属

精錬や化学などの産業界がウラン関連事業への関心を示し、政府と協力して研究開発に着手

したが、経済性を不安視して金属・化学業界は撤退。その後、サイクル事業の事業化に向け

た連邦の取り組みには電気事業者が共同で参画する形が主となった。

1960 年代:ウラン濃縮等の R&D 実施者として西独政府が政府 100%所有の「GKT 社」

設立。

GKT 社は 1964 年、それまで民間の金属製錬事業者 Degussa が持っていたウラン濃縮

に関するノウハウと人材を 500 万マルクで買い取り。

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■1970 年:西独政府、民間会社ウラニット社をウレンコ参画におけるドイツ側主体に指定

(実施主体 政府⇒民間【ただし政府補助あり】)

1969 年:ウラニット社設立

ウレンコ設立に係る 70 年の英独蘭アルメロ条約に先立ち、ウレンコ社にドイツ側主体

として参画する民間会社ウラニット社を設立。ゲルゼンベルク社(鉱山会社。電力会社

が共同出資。1975年に現在のE.ONの前身VEBAに吸収された)及びNUKEM社(2006

年まで RWE 子会社。現在は露 ROSATOM 傘下)が 50%ずつ出資。

⇒これが現在の E.ON 社及び RWE 社所有につながる。ROSATOM による 2006 年の

NUKEM 買収時も、ウレンコ事業の持分はロシア ROSATOM への移転対象から除外

され、RWE グループに残された。

1970 年:英独蘭アルメロ条約(1971 年発効)

アルメロ条約ではウラン濃縮を「商業ベースで」三国政府が支援するとしている。当時

の西独政府は同条約に基づき、R&D 資金やウレンコの事業に係る投資資金、運営資金

の補助等を実施。ドイツ側の運営参画主体としてウラニット社を指定。

1987 年:西独政府、ウラニット社と政府所有会社 GKT 社の資産譲渡にかかる契約締

結。ウラニット社側は GKT 社の 1985 年末時点での簿価(金額不明)を政府に支払っ

た。

※西ドイツ政府はウラン濃縮の研究開発、プラント建設等の投資費用、及びウレンコ社の赤

字補填などに、1970-1992 年にかけ、総額 11 億 1,600 万マルクを国庫から支出

■1992 年:ドイツ政府の支援終了(実施主体:民間。【政府補助なし】)

1993 年:ドイツ政府(東西統一後)とウラニット社が、アルメロ条約に基づく政府の

技術開発支援は役割を終了したとして、支援終了合意を締結。政府から受けた投資費

用・赤字補填分のうち約 1 億 1000 万マルクをウラニット社が政府に払い戻すことで合

意(R&D 費は政府持ち)。ウラニット社は支払済。(時期は不明)

現在、ウラニット社は RWE と E.ON がそれぞれ 50%出資。ドイツ連邦政府からの事

業費補填などは受けていない。1993 年以降はウレンコ社が行う研究開発に対するドイ

ツ政府からの国庫支出もない。

(補足)英蘭と違い、政府が事業会社に出資していないドイツの場合、ガス遠心分離による

ウラン濃縮技術が成熟した後も、ウレンコ社の濃縮事業による収益が直接国庫に入ることは

ない。このため、支援終了に際し、国家補助のいわば余剰分返還をウラニットに求めたもの

と考えられる。

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(参考)

連邦議会文書 18/1540(2014 年 5 月 21 日付)による左派党議員の議会質問に対する

連邦経済エネルギー省(BMWi)の回答文書(2014 年 6 月 24 日付)

http://bmwi.de/BMWi/Redaktion/PDF/P-R/Parlamentarische-Anfragen/18-1540,pro

perty=pdf,bereich=bmwi2012,sprache=de,rwb=true.pdf

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(24) スイス国民投票:「新設禁止・既存炉運転制限なし」を選択について

1. 原子力法案における「新設禁止」におけるリプレースの取扱について

2016 年 11 月 27 日実施の国民投票に際し、連邦政府・議会が早期脱原子力要求の対案と

して策定した法案パッケージ(エネルギー戦略 2050 政策パッケージ)に含まれる原子力法

改正案では第 12a 条において、「原子力発電所に対する概要承認の発給を禁止する」ことが

規定されている。

概要承認は、施設計画概要に対する連邦政府承認であり、原子力施設については新設の場

合もリプレースの場合も概要承認の取得が必要である。

※12a 条により原子力発電所に関しては、新設・リプレース問わず実施できない。研究炉な

ど原子力発電所以外の原子力施設は禁止対象とされていない。

(参考)

政策パッケージ、議会最終動議、2016 年 9 月 30 日付

https://www.parlament.ch/centers/eparl/curia/2013/20130074/Schlussabstimmungs

text%201%20NS%20D.pdf

2. 政府・議会対案の全文

早期脱原子力イニシアチブに対し、連邦政府・議会は原子力法を含む複数の法案をまとめ

て「政策パッケージ」とし、これを対案と位置づけている。

この政策パッケージはエネルギー法や原子力法など複数の法律を改正する条文で構成さ

れている。上掲の「参考」に示した文書がその全文に相当する。

3. 政府の原子力の理解活動について(※国民投票関連に限定)

原子力分野に限らず一般に、イニシアチブが提起され国民投票が実施される場合、投票実

施日までイニシアチブの賛成派・反対派はそれぞれ、自派への支持を求めるキャンペーンを

展開する。キャンペーンの実施手段としては、

街頭活動

討論会

ポスター掲示、パンフレットの配布

などが挙げられる。

連邦政府は「早期脱原子力イニシアチブの不支持」を有権者に求める側であった。国民へ

の呼びかけ手段としては以下のものが挙げられる。

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国民投票に向けた政府側説明冊子の作成

イニシアチブの内容と政府主張の論点を整理。政府・議会が有権者に対し「イニシアチ

ブを支持しないことを求める」ことを明示

(冊子 URL)

https://www.uvek.admin.ch/dam/uvek/de/dokumente/dasuvek/abstimmungen/atom

ausstiegsinitiative-buechlein.pdf.download.pdf/27-11-2016_DE_screen-3.pdf

連邦環境大臣が参加しての討論会を各地で開催(4 回)

ウェブサイト上でのイニシアチブ特集コーナー設置(下記参考)

イニシアチブの主張、及び同イニシアチブに対し政府が問題点と考える点〔安定供給〕

などを整理

なお、スイスでは福島第一原子力発電所事故以前にも複数回にわたっていわゆる「反原子

力イニシアチブ」が提起され、国民投票が実施された。1990 年の国民投票では原子炉新設

の 10 年凍結を求めるイニシアチブが賛成多数となり、スイスでは同年から 10 年間原子力

発電所の新規建設が凍結された。しかし、既存炉の閉鎖を求めるイニシアチブについては過

去複数回にわたり否決されている。このときも政府は、発電電力量の 4 割(当時)が原子

力、5 割以上が水力というスイスの電力ポートフォリオを示し、原子力の経済性や環境への

貢献、供給安定性などを強調している。

(参考)

国民投票特集ウェブサイト、連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)

https://www.uvek.admin.ch/uvek/de/home/uvek/abstimmungen/atomausstiegsinitia

tive.html#-547474207

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(25) ドイツ(周辺)における電力の売買量及び物理的流入・流出量について

ドイツではかねてより発電設備容量に余力があったことに加え、固定価格買取制度に

よる補助を受けた再生可能エネルギー電力が、優先給電制度にも支えられ、市場に優先

的に流入し、電力卸売市場価格を押し下げる状況となっている。

卸売価格が安価に抑えられることにより、ドイツは、国際的な電力市場では全体とし

て輸出超過の状態が続いている。ただし、ドイツ国内で見た場合、この安価な卸売価格

と、高く設定された再エネ固定価格の差額は、国内の電力消費者が電気料金に上乗せし

て支払う賦課金によってカバーされており、主に家庭向け電気料金の高騰に繫がってい

る1。

送電網が国境を越えて連繋されているヨーロッパ地域においては、電力「輸出入」に

ついて、商業取引で売買される電力量と、電力の物理的なトラフィックとを分けて考え

る必要がある。

後述する「2.ドイツと周辺国間における電力売買量と物理的流入・流出量(ご参考)」

に示すように、ドイツは近年、商業取引ベースでは「輸出超過」状態にある。

一方、物理的な電力のトラフィックに関しては、自国からの輸出に加え、国内の送電

容量不足により、ドイツ北部の電力がいったん国境を越えて迂回し、ドイツ南部に流れ

込むといった計画外潮流や、大陸欧州の東西の中間にあるといった地理的要因から国際

的な電力流通のハブとなるといった要因も、国際間のトラフィックに大きく関係してく

る(フランスからイタリアへの輸出分がドイツを経由するなどのケース)。このため、二

国間のみをみた場合、後述するように、例えば対フランスでは、商業取引ベースではド

イツが「輸出超過」だが、二国間の物理的な電力の流入ではフランスからドイツへの流

入量がドイツからの流出量を大きく上回るといったケースが確認できる。

1.ドイツと周辺国間における計画外潮流

ドイツにおいて送電事業を監督する連邦ネットワーク庁が、エネルギー事業法に基づ

き年次で公表する「モニタリング報告書」の 2016 年版には、2014 年及び 2015 年にお

ける計画外潮流の発生状況が図 1、図 2 のように示されている。

電力の商取引のいかんに関わらず、電力は最も抵抗の低い方向へと流れる。ドイツ国

内の送電容量不足に伴い、ドイツでは電力が国境を越え、他国を経由してドイツ国内(主

に南部)に戻ってくる状況が生じている。西側では、風力が多い北部からオランダ、ベ

1 再エネ法では、国内の産業と雇用を保護する観点から、電力集約型の企業(ほとんど

が大企業)に対し、賦課金の負担を大幅に軽減する措置が規定されている。大企業の減

免分は家庭などの一般消費者が負担することから、家庭向け電気料金を押し上げる要因

ともなっている。

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ルギー、フランスを経由してドイツ国内へと電力が再び流れ込む。一方、東側ではポー

ランド、チェコを経由してオーストリアへと流れ込むが、2014 年には 10.93TWh、2015

年には 14.45TWhがドイツに戻らずオーストリア国内で消費あるいはさらに他国へと送

電された。

同報告書では、国際連携がなされている状態において、電力が第三国を経由する状況

は送電網の整備が進んだ場合でも発生しうるとはいえ、ドイツでは再エネの拡充に送電

網整備が追いついていないことから、近隣国のネットワークに負担をかけている現状を

認識しており、ポーランドやチェコ国境に位相変圧器をドイツ側の負担で設置するなど

対策を行っている。

位相変圧器の設置のほか、国境を越えたリディスパッチ(再給電指令:例えば、独か

らの急な再エネ流入に際し、隣国側の発電所に給電先の変更や停止が再指令される。こ

の際には再指令を受けた発電所に対する補償金が発生する。補償金は最終的に送電コス

トとしてドイツの電気料金に上乗せされ回収される。)も行っている。2015 年には

3.2TWh 相当がこの国際リディスパッチの対象となった。

図 1 2014 年に発生した計画外潮流

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図 2 2015 年に発生した計画外潮流

(出所)独連邦ネットワーク庁「モニタリング報告 2016」

※ドイツでは小数点をコンマ(,)、桁区切りをピリオド(.)で表記する。

2.ドイツと周辺国間における電力売買量と物理的流入・流出量(ご参考)

連邦ネットワーク庁のモニタリング報告 2016 年版によれば、2014 年及び 2015 年に

おける、ドイツと国境を接する周辺 8 カ国との間での電力売買量と物理的流入・流出量

を、以下の表 1、表 2 のように示している。売買量においてドイツが入超となっている

のは、主にチェコとスイス、デンマークである(ポーランドはドイツからの電力の物理

的経由地になっているが、取引自体は少ない)。

前項に示した計画外潮流の発生に加え、計画内であっても、売買された電力は直接、

相対する二国を直結する送電線を経由するとは限らないため、売買量と物理的入出量に

はしばしば、大きな差違が生じる。ドイツ-フランス間では、商業取引ベースではドイツ

が輸出超過であるが、二国を直接繋ぐ送電系統を介した物理的なトラフィックの面では、

フランスからドイツへの流入量が明らかに多い。

国際的な電力取引によるドイツの金銭的収支は表 3 のように示されている。ドイツは

単価の低い電力の大量の輸出により、年間の電力輸出額が輸入額を大きく上回る状態に

ある。

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表 1 物理的流入量と電力購入量(TWh)

2014 年 2015 年

相手国 物理的流入量 電力購入量 物理的流入量 電力購入量

オランダ 0.4 0.1 0.3 0.1

ポーランド 0.1 0.5 0.0 0.4

チェコ 6.3 7.6 6.1 4.8

フランス 14.8 3.7 12.1 2.1

デンマーク 4.5 4.4 5.2 5.1

スイス 4.6 6.1 3.0 2.5

オーストリア 4.1 0.5 3.5 0.2

スウェーデン 1.8 1.8 1.9 1.9

表 2 物理的流出量と電力販売量(TWh)

2014 年 2015 年

相手国 物理的流出量

(2014)

電力販売量

(2014)

物理的流出量

(2015)

電力販売量

(2015)

オランダ 24.3 18.1 24.0 16.3

ポーランド 9.2 0.1 10.7 0.1

チェコ 3.8 0.7 6.3 1.2

フランス 0.8 9.7 1.4 11.5

デンマーク 4.0 3.8 2.9 2.5

スイス 11.5 4.2 16.1 7.3

オーストリア 14.5 21.9 17.8 28.9

スウェーデン 0.8 0.8 0.2 0.2

表 3 ドイツにおける国際電力取引の金銭的収支

2014 年 2015 年

電力量

(TWh) 金額(ユーロ)

電力量

(TWh) 金額(ユーロ)

輸出 59.17 約 19 億 67.96 約 20 億 6,000

輸入 24.66 約 8 億 4,000 万 16.95 約 5 億 9,000 万

収支 34.52 約 10 億 6,000

万 51.01

約 14 億 7,000

1MWh あたり

の輸出収益(ユ

ーロ)

32.12 30.35

1MWh あたり

の輸入コスト

(ユーロ)

34.05 34.71

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3.独仏間の電力売買推移

ドイツ・フランス間の電力売買については、過去のモニタリング報告書(2009 年~2016

年)における上掲表 1、表 2 に相当する記述から、以下の表のような推移が確認できる。

日本の福島第一原子力発電所事故後にドイツで原子炉が急に一斉閉鎖された 2011 年を

除き、冒頭に述べたように設備余剰・再エネ拡充に伴いドイツの電力卸売価格がフラン

スより安価な傾向が続いていることもあり、年間を通じてみればドイツからフランスへ

の電力販売量が多い状態となっている。

表 4 独仏の電力取引推移(TWh)

2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008

販売(独→仏) 11.5 9.7 12.5 11.1 5.0 10.7 13.7 14.8

購入(仏→独) 2.1 3.7 2.7 2.4 7.3 4.0 1.7 2.2

(補足)

2008 年以前の独仏二国間の電力取引量は不明である。ただし、独連邦経済エネルギー

省の統計に基づき電力輸出入収支の全体を見れば、ドイツでは東西統一後、2003 年より

前は年により入超・出超が入れ替わる状況であったが、2003 年以降は出超が続いている。

ドイツでは 2000 年に再生可能エネルギー法が制定され、再エネの固定価格買取制度を

軸とした再エネ拡充が本格的に開始された。また 2000 年前後は欧州大で電力自由化が

進んだ時期でもあった。以下の図 3 は、同省の統計「エネルギーデータ」(2016 年 10

月 31 日)に示された電力輸出入収支の推移をグラフ化したものである。

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図 3 ドイツの電力輸出入収支の推移

参考資料

連邦ネットワーク庁「モニタリング報告」2009 年~2016 年版

https://www.bundesnetzagentur.de/cln_1412/DE/Sachgebiete/ElektrizitaetundG

as/Unternehmen_Institutionen/DatenaustauschundMonitoring/Monitoring/Mon

itoringberichte/Monitoring_Berichte_node.html

連邦経済エネルギー省「エネルギーデータ」(2016 年 10 月最終更新)

http://bmwi.de/BMWi/Redaktion/Binaer/energie-daten-gesamt,property=blob,be

reich=bmwi2012,sprache=de,rwb=true.xls

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(26) 仏大統領選挙に向けた各党・候補者の対原子力スタンス

共産党他左翼政党 欧州エコロジー・緑の党(EELV) 無所属 共和党 国民戦線(FN)

党としての原子力へのスタンス

共産党は原子力に否定的でなく、フェッセンハ

イムの閉鎖も産業、環境、安全の観点から見

て整合性に欠けると批判。

http://www.pcf.fr/91184

公式サイトにおいて、2017年以降の原子力

政策に関する詳細な言及はない。

ただし、これまでと同様に主張は脱原子力であ

ると考えられる。

2017年の大統領選挙・総選挙に向けたプロ

グラムの中で、以下を提案している。

*減原子力目標の見直し:エネルギー転換

法の規定(原子力発電の割合:50%と総

設備容量6,320万kW上限)の見直し。

 →既存炉の運転期間については明示的に

提案されていないが、米国と同様に60年間運

転可能であるとの見方が示されている。

*フェッセンハイム原子力発電所閉鎖の取りや

https://d3n8a8pro7vhmx.cloudfront.

net/republicains/pages/555/attachm

ents/original/1468258956/Projet_LR

_2017_complet.pdf?1468258956

2012年の選挙プログラムでは、エネルギー自

立とCO2排出削減のため、原子力を維持する

必要があり、そのために、安全強化、運転を終

える原子炉をリプレースするための新型炉への

研究開発投資が必要であるとしている。ただ

し、原子力のリスクはゼロにはならないため、長

期的には、脱減力が望ましく、そのための再エ

ネやその他新エネルギーへの研究投資も必要

であるとされている。

http://www.frontnational.com/pdf/P

rogramme.pdf

大統領選挙候補者※ メランション ジャド マクロン フィヨン ルペン

原子力へのスタンス

脱原子力を主張。

http://www.jlm2017.fr/il_faut_sortir

_du_nucleaire

メランション氏は2012年の大統領選挙でも共

産党他左翼政党の支持を受けて立候補して

いた。

大統領選挙向けサイト

(http://avecjadot.fr/)では、原子力に

反対である旨の記載はあるが詳細については

示されていない。EELVの候補であり、グリーン

ピースフランスの代表であったので、当然主張は

脱原子力であると考えられる。

http://avecjadot.fr/2016/11/07/suis

-candidat-demain-soit-mieux-

quaujourdhui-discours-de-yannick-

jadot/

大統領選挙向けサイト(https://en-

marche.fr/emmanuel-macron/)で

は、原子力に関する特段の方針は記載されて

いない。

オランド政権で最近まで経済産業大臣を務め

ていたことから、現政府の方針(減原子力、

フェッセンハイムの閉鎖、一部の炉については

40年超の運転も容認)を踏襲していると考え

られる。

フィヨン氏は自身の選挙プログラムの中で、以

下の方針を示している。

*原子力政策は現実味がなく、国の利益を

損なうものであると批判

*米国などにならって、既存炉の運転期間を

60年まで延長

*フェッセンハイム原子力発電所の閉鎖を取り

やめ

*第4世代炉R&Dの強化

https://www.fillon2017.fr/wp-

content/uploads/2016/10/ENVIRON

NEMENT-ET-TRANSITION-

ENERGETIQUE.pdf

大統領選挙向けサイトでは、ルペン氏が原子

力発電に対する立場について語る動画が公

開されており、この中で同氏は、原子力はフラ

ンスにとって武器であり、安全性を維持しなが

ら、既存炉の運転延長を進めるべきであると主

張している。

https://www.marine2017.fr/2017/01

/11/marine-pen-donne-position-

nucleaire/

社会党

公式サイトにおいて、2017年以降の原子力政策に

関する詳細な言及はない。

ただし、現政権与党であり、エネルギー転換法に示さ

れた基本方針、すなわち、2025年までの減原子力

(総発電電力量に占める割合を75%→50%)、

既存炉の運転期間はエネルギー安定供給を確保し、

化石燃料電源に依存しないために、40年以上に運

転期間を延長する、ただしフェッセンハイム原子力発

電所は閉鎖する、という方針を維持すると考えられる。

ハモン

大統領選挙向けサイト

(https://www.benoithamon2017.fr/wp-

content/uploads/2016/11/Propositions-

Ecologie-BenoitHamon2017-vf4628.pdf)

で示されたエネルギー政策に関する公約では、EDFが

原子力ではなく再生可能エネルギー開発に注力する

べきであると主張。

また2016年8月末に行ったスピーチでは、エネルギー

ミックスに占める原子力の割合を縮減する方針を確

認。https://www.benoithamon2017.fr/wp-

content/uploads/2016/10/discours-saint-

denis.pdf

メディアとのインタビューでは、現政権の掲げる減視力

目標(75%→50%)を踏襲すると発言。

https://reporterre.net/Benoit-Hamon-On-

aura-Marine-Le-Pen-si-la-gauche-ne-

projette-pas-un-imaginaire

Page 115: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

115

(27) ドイツの原子力発電所廃止措置コスト試算:試算対象のユニット一覧

2017 年 1 月現在、ドイツにおける原子力発電所の廃止措置コスト試算は、連邦経済エ

ネルギー省(BMWi)が会計監査法人に委託して実施したバックエンド資金に関する財

務ストレステストの報告書によるものが最新である。同ストレステスト報告書は、2016

年 4 月に政府に報告書を提出した連邦設置の「脱原子力に係る資金確保に関する検討委

員会」の検討の根拠とされた。

同報告書では、2015 年以降に発生する原子力発電所廃止措置コストの総額を、197 億

1,900 万ユーロ(2014 年価格)と見積もっている。このコストには、原子力発電所の運

転を終了後、施設を解体し、原子力法の規制対象から外れるまでのコストが含まれるが、

規制解除後の緑地回復コストは含まない。試算対象とされたユニットは、商用発電を目

的として旧西ドイツ地域に設置され、電気事業者により廃止措置が実施される原子炉 23

基である。1990 年の東西統一時に閉鎖された旧東ドイツの原子炉や研究炉など、連邦の

費用で廃止措置されるユニットは対象外である。対象ユニットの一覧は以下の通りであ

る。16 番のグンドレミンゲン以降は原子力法に基づき 2017 年以降の閉鎖が予定されて

いる。

番号 ユニット名 炉型 運開日 運転終了日

設備容量

( グ ロ

ス )

(Mwe)

設備容量

( ネ ッ

ト )

(Mwe)

1 グンドレミンゲン A BWR 1967/4/12 1977/1/13 250 237

2 リンゲン BWR 1968/10/1 1977/1/5 268 183

3 ミュルハイム・ケール

リッヒ PWR 1987/10/1 1988/9/9 1302 1219

4 ヴュルガッセン BWR 1975/11/11 1994/8/26 670 640

5 シュターデ PWR 1972/5/19 2003/11/14 672 640

6 オブリッヒハイム PWR 1969/4/1 2005/5/11 357 340

7 ビブリス A PWR 1975/2/26 2011/8/6 1225 1167

8 ビブリス B PWR 1977/1/31 2011/8/6 1300 1240

9 ブルンスビュッテル BWR 1977/2/9 2011/8/6 806 771

10 イーザー1 BWR 1979/3/21 2011/8/6 912 878

11 クリュンメル PWR 1984/3/28 2011/8/6 1402 1346

12 ネッカー1 PWR 1976/12/1 2011/8/6 840 785

13 フィリップスブルク 1 PWR 1980/3/26 2011/8/6 926 890

14 ウンターベーザー PWR 1979/9/6 2011/8/6 1410 1345

15 グラーフェンラインフ

ェルト PWR 1982/6/17 2015/6/27 1345 1275

16 グンドレミンゲン B BWR 1984/7/19 2017/12/31 1344 1284

17 フィリップスブルク 2 PWR 1985/4/18 2019/12/31 1468 1402

18 ブロックドルフ PWR 1986/12/22 2021/12/31 1480 1410

19 グローンデ PWR 1985/2/1 2021/12/31 1430 1360

Page 116: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

116

20 グンドレミンゲン C BWR 1985/1/18 2021/12/31 1344 1288

21 エムスラント PWR 1988/6/20 2022/12/31 1406 1335

22 イーザー2 PWR 1988/4/9 2022/12/31 1485 1410

23 ネッカー2 PWR 1989/4/15 2022/12/31 1400 1310

(参考資料)

Warth&Klein Grant Thornton、”Gutachtliche Stellungnahme zur Bewertung der

Rückstellungen im Kernenergiebereich”

※廃止措置コスト試算対象ユニットの一覧は以下の PDF32 ページ目(印字 22 ページ)

に掲載

https://www.bmwi.de/BMWi/Redaktion/PDF/S-T/stresstestkernenergie,property=pdf,

bereich=bmwi2012,sprache=de,rwb=true.pdf

Page 117: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

117

(28) ヴォーグル・サマー費用見積等

① ヴォーグルとサマーに関して、WNEW の昨年 4 月のレポートにあるように、各々こ

れまでの PSC のスケジュール&コスト認可状況(いつ、幾らで認可したか)

ヴォーグル

VCM

の回

3号機の運開時期 建 設 コ ス ト

(2007年価格)

1 2009年 3月:ジョージア州 PSCが承認 2016年 4月 96.7億ドル

2 2009年 6月:事業者の見積額 2016年 4月 96.7億ドル

3 2009年 12月:事業者の見積額 2016年 4月 96.2億ドル

4 2010年 6月:事業者の見積額 2016年 4月 96.6億ドル

5 2010年 12月:事業者の見積額 2016年 4月 96.5億ドル

6 2011年 6月:事業者の見積額 2016年 4月 97.6億ドル

7 2011年 12月:事業者の見積額 2016年 4月 97.6億ドル

8 2012年 6月:事業者の見積額 2017年第 4四半期 99.3億ドル

9 2012年 12月:事業者の見積額 2017年第 4四半期 105.0億ドル

10 2013年 12月:事業者の見積額 2017年第 4四半期 105.0億ドル

11 2014年 6月:事業者の見積額 2017年第 4四半期 105.0億ドル

12 2014年 12月:事業者の見積額 2019年第 2四半期 110.4億ドル

13 2015年 6月:事業者の見積額 2019年第 2四半期

110.4億ドル

14 2015年 12月:事業者の見積額 2019年第 2四半期

119.0億ドル

15 2016年 6月:事業者の見積額 2019年第 2四半期

119.0億ドル

(注)建設コストは、所有比率で GPC 社負担額を割り戻した値。なお、ここには財務

費用の見積額は含まれていない。

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※黄色の網掛けは、直接 VCM から確認したのでなく、前後の VCM からの推定

V.C.サマー

2号機の運開時期 建設コスト(2007 年価

格)

2009年 3月:州 PSCが承認1 2016年 4月 82.5億ドル

2012年 11月:州 PSCが承認 2017年 3月 82.7億ドル

2015年 9月:州 PSCが承認 2019年 6月 94.5億ドル(誤記の修

正)

2016年 11月:州 PSCが承認2 2019年 8月 約 123.6億ドル

(注)建設コストは、所有比率で SCE&G 社負担額を割り戻した値。

※黄色が新たに追加した情報。

③ サマーで採用されている価格固定オプションなる仕組みの概要と経緯

概要

【AP1000 建設体制の刷新】3

米ウェスティングハウス(WH)社とシカゴ・ブリッジ&アイアン(CB&I)社は、2015

年 10 月に、WH 社が AP1000 建設事業等を担う CB&I 社の子会社ストーン&ウェブス

ター社(以下、S&W 社)を買収することで正式契約を締結していた件で、12 月 31 日

付で同買収を完了したことを発表した。

S&W 社は、米国と中国での AP1000 建設、米国での原子力分野でのエンジニアリン

グ業務や他建設プロジェクトを行っており、これらの事業と関連資産は WH 社が新たに

設立した子会社 WECTEC に移管される予定である。

買収に伴い、米国でのヴォーグル 3、4 号機と V.C.サマー2、3 号機(いずれも AP1000)

建設プロジェクトについては、設計・調達・建設(EPC)契約者が WH 社と CB&I 社(コ

ンソーシアム)から WH 社単独に変更され、その下で WECTEC 社と新たに下請となっ

1

https://dms.psc.sc.gov/Attachments/Order/5E3440FB-FC31-8115-18C5057D060BF8

EF P.97, 127 2

https://www.scana.com/docs/librariesprovider15/pdfs/press-releases/11092016-psc-sc-

approves-settlement-agreement-concerning-sceg-39-s-petition-to-update-constructio

n-and-capital-cost-sc.pdf?sfvrsn=0 3 本パートは以下の WNEW 記事より抜粋

https://www.wnew.jp/news/main/contents.aspx?key=heAQ3MblHdRpQCG3pxZEjg%

3d%3d

Page 119: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

119

た建設大手のフルアー社により進められる。フルアー社は、両プロジェクトの管理業務

を行う予定であり、前契約者から専門の知見や現場スタッフの大部分を速やかに引き受

けるとしている。

新体制について、V.C.サマーを保有するサウスカロライナ・エレクトリック&ガス

(SCE&G)社の親会社である SCANA 社は、EPC 契約の一本化とともに、V.C.サマー1

号機建設で同社と関係の深いフルアー社が参加することについても歓迎するとしている。

新体制において CB&I 社は EPC 契約者ではなくなるが、サブコントラクタとして引き

続き一部のモジュールや配管の供給を行う。

【V.C.サマー建設に係る EPC 契約の刷新及び固定価格オプションの採用】4

上記の AP1000 建設体制の刷新に伴い、SCE&G 社と WH 社は V.C.サマー建設に係る

EPC 契約を刷新した。契約の刷新に当たっては、新たに固定価格オプションが採用され

た。概要は以下の通りである。

日付 出来事

2008 年 5 月 23 日 SCE&G 社と、WH 社及び CB&I 社が、V.C.サマー建設に係る EPC 契

約を締結

2015 年 10 月 27 日 SCE&G 社は、AP1000 建設体制の刷新に伴い、上記 EPC 契約を刷

新したことを公表。また SCE&G 社と WH 社は、固定価格オプショ

ンの採用についても協議。これは、2015 年 6 月 30 日時点以降の残

存支払額を 60.82 億ドルに固定するオプションを発注者側に賦与す

るもの【補足:このオプションは、将来的に建設コストが高騰しても、

SCE&G 社側が WH 社側に支払う残存建設コストを、一定額に固定で

きる権利を SCE&G 社側にあたえるもの】

2016 年 5 月 26 日 SCE&G 社は、州公益事業委員会に対して、建設コスト及びスケジュ

ールのアップデート、及び固定価格コスト採用の承認を要求。この要

求では、価格固定オプション費用は約 9.18 億ドル【補足:この約 9.18

億ドルのオプション費用とは、上述した残存建設コストを一定額に固

定できる権利を SCE&G 社が獲得するために、WH 社側に支払った費

用】

2016 年 11 月 28 日 州公益事業委員会は上記の要求を承認し、それに係る命令書を公表。

オプション費用は、SCE&G 社の要求と同額の、約 9.18 億ドル。な

お命令書には、いつの時点で、残存支払額をいくらに固定するオプシ

4 本パートは、SCANA 社のプレスリリースと、州公益事業委員会の 2016 年 11 月 28 日

の命令書により作成

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120

ョンとなるかについては記述はない。【補足:州公益事業委員会は、

上記の固定価格オプション費用(約 9.18 億ドル)満額を電力料金か

ら回収することを SCE&G 社に認めた模様。ただし、2015 年 10 月

27 日の項で示した、残存建設コストをいくらで固定するオプション

とするかについては、州公益事業委員会の文書では言及されていな

い。】

(注)表内の金額は、2007 年価格で、所有比率で SCE&G 社負担額を割り戻した値。

Page 121: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

121

(29) ヴォーグル費用見積等

計画遅延とコスト増大の理由

ヴォーグルについて、スケジュール及びコストの変動があった時点の VCM(Vogtle Construction Monitoring Report)を参照し、理由を記載

VCM

3 号機の運開

時期 遅延理由

建設コスト(2007

年価格) 増額理由

1 2009 年 3 月:ジョージ

ア州 PSC が承認

2016 年 4 月 96.7 億ドル

2 2009 年 6 月:事業者

の見積額

2016 年 4 月 96.7 億ドル

3 2009年12月:事業者

の見積額

2016 年 4 月 96.2 億ドル

4 2010 年 6 月:事業者

の見積額

2016 年 4 月 96.6 億ドル

5 2010年12月:事業者

の見積額

2016 年 4 月 96.5 億ドル

6 2011 年 6 月:事業者

の見積額

2016 年 4 月 97.6 億ドル

7 2011年12月:事業者 2016 年 4 月 97.6 億ドル

Page 122: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

122

の見積額

8

2012 年 6 月:事業者

の見積額

2017 年第 4

四半期

NRC のプラント設計変更承認取得のた

めに要する時間に関連したスケジュール

変更

99.3 億ドル NRC のプラント設計変更承認取得のために要する

時間に関連したスケジュール変更、PSC が認可した

設計の NRC が承認した建設設計図への組み込

み、ニュークリアアイランドを含む複数の構造物の建

設進度

9 2012年12月:事業者

の見積額

2017 年第 4

四半期

105.0 億ドル

10 2013年12月:事業者

の見積額

2017 年第 4

四半期

105.0 億ドル

11 2014 年 6 月:事業者

の見積額

2017 年第 4

四半期

105.0 億ドル

12

2014年12月:事業者

の見積額

2019 年第 2

四半期

WHC による設計承認の承認取得、設

計変更、PSC が認可した設計の NRC

が承認した建設設計図への組み込み、

及び主要な設備の製造や納品の遅

れ、CB&I によるモジュール製造や納

品、現場での建設の遅れ

110.4 億ドル

13 2015 年 6 月:事業者

の見積額

2019 年第 2

四半期

110.4 億ドル

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123

14 2015年12月:事業者

の見積額

2019 年第 2

四半期

119.0 億ドル WHC との紛争解決契約の締結費用※

15 2016 年 6 月:事業者

の見積額

2019 年第 2

四半期

119.0 億ドル

(注)建設コストは、所有比率で GPC 社負担額を割り戻した値。なお、ここには財務費用の見積額は含まれていない。

※次項で後述

Page 124: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

124

事業者間の係争が起きた要因、和解等に到るハードルやプロセス

ヴォーグル建設プロジェクトにおいて、オーナー側とコントラクター側で複数の係争

が発生していたが、オーナー側と WHC 社は 2015 年 10 月 27 日、「最終的解決合意」

(Definitive Settlement Agreement)について合意した。最終的解決合意は、承認を求

めるために州公益委員会に提出されており、それが公開されているが、それによると、

主なポイントは下記の通りである。

コントラクター側は、NRC の規制の変更による費用増は、EPC 契約の「法令

の変更または制御不能な環境」によるものであるため、オーナー側に請求可能

と主張

オーナー側は、コスト負担責任に関する不一致は、WHC と CB&I という二重

のプライムコントラクター体制にあると判断

最終的解決合意では、WHC が CB&I を買収し、子会社化することでオーナー

側とコントラクター側が合意

最終的解決合意では、コントラクターによる、特に NRC に関連した法令の変

更とされる発注の変更を制限するよう契約を改定

リスクアロケーションへの配慮はどうだったか、どのような契約だったのか

VCM によれば、EPC 契約は、契約時点で業務の実施期間や費用が不明な場合に用い

られる「人日と材料費による契約」(time and materials contract)が主体となっており、

そのため VCM では、契約でオーナー側やその顧客は保護されている、としている。

また、上記の通り、最終的解決合意で NRC の規制変更等に起因する費用の増加も、

コントラクター側は請求できなくなった見込みである。

政府当局との関係

ヴォーグル建設プロジェクトにおいて、オーナー側は連邦債務保証プログラムを利用

して、プロジェクト遂行のための資金確保に係る費用を抑制させている。なお、連邦債

務保証プログラムは、プロジェクトの実施者側(オーナー側)に適用されるものであり、

コントラクターに適用されるものではない。

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125

(30) サマー費用見積等

計画遅延とコスト増大の理由

サマーについて、州公益委員会の決定文書と SCANA 社のプレスを参照し、理由を記載

2号機の運開時期 遅延理由

建設コスト

(2007年価格)

増額理由

2009 年 3 月:州 PSC が承認 2016 年 4 月① ― 82.5 億ドル② ―

出典:

https://dms.psc.sc.gov/Attachments/Order/5E3440FB-FC31-8115-18C5057D060BF8EF

① PAGE2 The anticipated commercial service date for Unit 2 is April I, 2016

② PAGE123 The Approved Capital Cost, pursuant to S.c. Code Ann. § 58-33-270(B)(2), shall be $4,534,747,000 in 2007

dollars これは 55%所有の SCE&G 社の負担額であるため、総額は$4,534,747,000÷55≒82.5 億ドル

2012 年 11 月:州 PSC が承

2017 年 3 月① NRC による COL の発給の

遅れ②

82.7 億ドル③ Shield buildings の設計変更

等による EPC 契約額の変更、そ

の他④

出典

① 添付「1211 サマー」PAGE7~8 In the Petition, SCE&G also seeks approval of an updated construction schedule for the

Units. This updated schedule delays the completion date of Unit 2 by 11 months to March 2017

Page 126: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

126

② 添付「1211 サマー」PAGE5 (ii) the additional costs in rescheduling the construction project as a result of the approximately

nine-month delay in issuance of the COL

③ 添付「1509 サマー」PAGE8 のハイライト部分に、Capital Cost の推移があり、2012 年は 45.48 億。45.48 億÷55≒82.7 億

④ 添付「1211 サマー」PAGE5 ハイライトした段落に増額の 4 つの要因が記載されている。

2015 年 9 月:州 PSC が承認 2019 年 6 月① サブモジュールの建設遅れ② 95.4 億ドル③ EPC 契約額の変更等④

出典

① 添付「1509 サマー」PAGE5 This updated schedule delays the substantial completion date of Unit 2 by 27 months to June 19,

2019,

② 添付「1509 サマー」PAGE5 The cause of the delay in the project to date has been delay in the production of submodules for the

Units.

③ 添付「1611 サマー」PAGE6 のハイライト部分に、Capital Cost の推移があり、2015 年は 52.47 億。52.47 億÷55≒95.4 億

④ 添付「1509 サマー」PAGE6 ハイライトした部分に増額の要因が記載されている。

2016 年 11 月:州 PSC が承

2019 年 8 月① 添付「1611 サマー」で、明

確な遅延理由は確認できな

い。(前回と比べた遅延期

間が 2 カ月と小さいためか)

約 123.6 億ドル② EPC 契約額の変更、価格固定

オプション③

出典

① 添付「1611 サマー」PAGE3 This updated schedule revises the substantial completion date of Unit 2 to August 31, 2019,

② 添付「1611 サマー_プレス」The total project capital cost is now estimated at approximately $6.8 billion (SCE&G’s 55% portion in

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127

2007 dollars). $6.8 billion÷55≒123.6 億ドル

③ 添付「1611 サマー」PAGE3~4 ハイライトした段落に増額の要因が記載されている。

(注)建設コストは、所有比率で SCE&G 社負担額を割り戻した値。なお、ここには財務費用の見積額は含まれていない。

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128

事業者間の係争が起きた要因、和解等に到るハードルやプロセス

添付「151027 サマー_プレス」で、オーナー側とコントラクター側の EPC 契約改定

が公表されているが、それによると両者間の過去の係争の多くの原因となっていたのが

規制による変更(regulatory changes)であり、契約改定によりその定義を厳密なもの

としたとのことである。

リスクアロケーションへの配慮はどうだったか、どのような契約だったのか

① コントラクター間のリスクアロケーション

添付「151027 サマー_プレス」では、EPC 契約改定における、WHC による CB&I か

らの Stone & Webster の買収が伝えられている。プレスによると、この契約改定によっ

て、CB&I はサマープロジェクト関連の保証義務から解放されるとのことである。契約

改定により、支払い義務を負うのは WHC と Stone & Webster になり、また、改定され

た契約は、東芝が WHC の支払い義務に対する保証を再確認することを規定している。

② オーナーとコントラクターのリスクアロケーション

添付「151027 サマー_プレス」によると、SCE&G 社と WHC は、固定価格オプショ

ンの採用についても協議した。これは、オーナー側からコントラクター側への、2015 年

6 月 30 日時点以降の残存支払額を、(SCE&G 社の持分の 55%分だけでなく)プロジェ

クト全体で 60.82 億ドルに固定するオプションを発注者側に賦与するもの【補足:この

オプションは、将来的に建設コストが高騰しても、SCE&G 社側が WHC 側に支払う残

存建設コストを、一定額に固定できる権利を SCE&G 社側に与えるもの】である。

政府当局との関係

ヴォーグル建設プロジェクトでは、オーナー側は連邦債務保証プログラムを利用して

いたが、サマーでは利用されていない。ただし、サマーでは販売電力量 1kWh 当り 1.8

セントの税額控除を認める生産税控除の適用申請が検討されている模様(添付「1611 サ

マー」PAGE36)。

なお、NRC との関係については 1 ページの表を参照。

Page 129: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

129

(31) H.R.590 法案の内容について

2017 年 1 月 23 日に下院を通過した H.R.590 法案は、民生利用における先進的な原子

力技術の研究開発促進、技術ライセンス供与・商業化の加速を目的としている。本法案

には、具体的な対象炉、技術開発の支援規模や期間等、具体的な記載はない。

本法案はロバート議員によって提出されたが、同議員は 2016 年 9 月にも、ほぼ同内

容の、先進原子力技術開発法案(H.R. 4979)を提出していた。H.R.590 は H.R.4979 が

法案可決に至らなかったことによる二度目の提出であると考えられる。

H.R.590 の議会への提出に先立ち、諮問委員会は立ち上げられていないが、エネルギ

ー・商業下院委員会、下院科学・宇宙技術下院委員会、商業・科学・交通上院委員会の

レビューを受けている。

H.R.590 と H.R.4979 における違いは、H.R.4979 に記載されていた、実験用原子炉の

安全性や放射性廃棄物、使用済み核燃料等の処分に関する報告書を議会に提出すること

等に関する節が H.R.590 で削除されていることである。削除された経緯は不明である。

トランプ政権移行後では初の、原子力に関する法案が下院で可決された動きであり、

今後、上院を通過し、大統領の承認を得られるのかまずは注目ポイントと考えられる。

条文は以下から参照できる。

https://www.congress.gov/bill/115th-congress/house-bill/590/actions

Page 130: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

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(32) 韓国第 5 次原子力振興計画について

韓国政府は 2017 年 1 月 25 日に、今後 5 年間の原子力振興・利用政策の方向性を定め

る第 5 次原子力振興総合計画(2017~2021 年)(以下、第 5 次振興計画)を確定した。

以下に「原子力振興総合計画」と、その他原子力に関連する国家計画との関係、エネル

ギーミックス計画、原子力発電プラント建設計画との関係等を整理して示す。

1.原子力振興総合計画、エネルギー基本計画、原子力安全総合計画の関係

原子力振興総合計画は、今後 5 年間の原子力振興・利用政策の方向性を定める、原子

力振興・利用に関する国家計画のうち最上位の計画である。策定の実務を主導するのは

原子力利用の推進省庁である未来創造科学部(MSIP)である。また、同計画の審議・

確定は国務総理を委員長とし、原子力振興・利用政策を審議・確定するために随時招集

される「原子力振興委員会(AEC)」が行う1。

振興総合計画と並列の関係にあるのが、産業通商資源部(MOTIE)が策定し、確定す

るエネルギー基本計画と、原子力安全委員会(NSSC)が策定し、確定する原子力安全

総合計画で、これらはいずれも 5 年毎に策定される。それぞれの基本計画の策定の際に

は相互に整合が図られることになっている。

振興総合計画の下位計画が年度別推進計画(毎年策定)、エネルギー基本計画の下位計

画が電力需給基本計画(2 年に一度策定)、原子力安全総合計画の下位計画が年度別実施

計画(毎年策定)である。これらの関係を図示したものが以下である。

1 ただし今回の第 5 次原子力振興総合計画については、原子力振興委員会の招集についての情報は示さ

れていない。

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2.エネルギー基本計画

前述のとおり、エネルギー基本計画はエネルギーセクターの全分野を対象とし、今後

20年のエネルギー展望、ビジョンを提示する性格を有する政策文書である。現在のエネ

ルギー基本計画は第2次エネルギー基本計画で、2015~2035年を対象期間とし、2014年

1月に確定したものである。ここでは、2035年時点の総発電設備容量に占める原子力発

電の比率を29%とした。

3.電力需給基本計画

電力需給基本計画は、エネルギー基本計画の下位計画で、2 年毎に策定される。原子

力を含む発電プラントの立地自治体名までを含む具体的な建設計画が示されるのが常で、

新規の電源施設の建設は、電力需給基本計画の確定を以て、政府の基本的な了解を得た

ものと位置づけられる。

ただし、実際の建設のためには、電源開発促進法に規定されている「電源開発事業実

施計画」の政府承認、原子力安全委員会による建設許可等の各種許認可を別途得る必要

がある。

最新の電力需給基本計画は 2015 年 7 月に策定・確定された第 7 次電力需給基本計画

である。ここでは2029年時点の総発電設備容量に占める原子力発電の比率目標を28.5%

とし、また、2028、2029 年を運開予定とする原子炉を計 2 基新設する方針が示された。

上述のとおり、発電プラントの立地自治体名が示されるのが本来は通例であるが、第 7

次計画では 2 基の具体的な建設地は未定とされた。

事業者は、2028、2029 年に各 1 基建設する原子炉については「盈徳(天地)3、4 号

または三陟(大津)1、2 号機」に建設するとの意向は示したが、具体的な立地について

は「(建設)許可段階で確定する」と第 7 次計画に記述されるにとどまった。

第 7 次計画は、本来は 2014 年末の確定が目指されていたが、MOTIE は 2014 年下半

期の原油価格の下落の影響などを見極めた上で、2015 年上半期中の策定を目指す方針を

明らかにしており、結果的に 2015 年 7 月に策定・確定した。この影響を受け、第 8 次

計画も、2016 年末からずれ込んで 2017 年上半期中の策定が目指されているものと推測

される。

第 8 次計画の上位計画は本来、エネルギー基本計画であるが、エネルギー基本計画の

次回見直しは早くても 2018 年中、おそらくは 2019 年初であり、この策定を待って第 8

次計画をあと 2 年以上も先送りする可能性はさすがに低い。一方、2017 年 1 月に確定し

た原子力振興総合計画は、原子力の振興・利用の方針を決めるものであり、具体的な電

源構成にまで踏み込むものではないが、今後 5 年間、原子力利用の拡大・維持・縮小と

いった大方針が示されるため、第 8 次計画に何らかの影響を与えるとすれば、次回のエ

ネルギー基本計画ではなく、原子力振興総合計画になるはずである(少なくとも第 8 次

計画は、振興総合計画と不整合な方向性を出すことはできない)。

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政府与党が、大統領不在のこの時期にあえて原子力振興総合計画の確定を急いだのは、

原子力の継続的な利用・拡大あるいはクリーンエネルギーとしての位置づけを振興計画

の中で確固たるものとしておき、2017 年上半期に進められるはずの第 8 次計画の検討過

程において、原子力に否定的な野党の声がたとえ高まったとしても、振興計画の方針を

盾に取り、少なくとも第 7 次計画までに確定した 2028、2029 年までの新設計画が覆さ

れにくい環境を作っておきたい意向があるのではないかと推測される。

【出典】

それぞれのニュースに、エネルギー基本計画をはじめとする元出典の URL を記載して

あります。

韓国、第 7 次電力需給基本計画を確定

2015/07/22 付、産業通商資源部

http://www.motie.go.kr/motie/ne/presse/press2/bbs/bbsView.do?bbs_seq_n=157410&b

bs_cd_n=81

韓国、第 2 次エネルギー基本計画を確定

2014/01/14 付、産業通商資源部

http://www.motie.go.kr/motie/ne/rt/press/bbs/bbsView.do?bbs_seq_n=78654&bbs_cd_

n=16

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(33) インドのサイクル政策

インドでは主に 2 カ所の施設で原子力発電所の使用済燃料再処理を行っている

高速炉燃料の再処理実験も実施

最終処分については、HLW を深地層処分するとの言及があるが、具体的な計画は

不明

インドは長期的な原子力政策として、国内に豊富に存在するトリウム資源の有効利用

を目指し、次の 3 段階からなる増殖炉燃料サイクル計画を進めている。なお、高速増殖

実験炉(FBTR)が既に稼動しており、現在、高速増殖原型炉(PFBR)が建設中である。

(2016 年末運開を目指していたが、2017 年 2 月現在運転は開始されていない。)

・ 第 1 段階:天然ウランを燃料とする加圧重水炉(PHWR)でのプルトニウムの生

・ 第 2 段階:高速増殖炉(FBR)でのプルトニウム利用及びトリウム照射によるウ

ラン 233 の生成

・ 第 3 段階:改良型重水炉(AHWR)でのウラン 233 の利用及びトリウム照射によ

るウラン 233 の生成

■インドの再処理プラント

インドでは現在、主要な使用済燃料再処理プラントとして以下の施設が操業中である。

このうち、民生原子力発電所の使用済燃料再処理を行っているのは、タラプールとカル

パッカムの 2 カ所である。これらの施設では、重水炉燃料の再処理に加え、高速炉燃料

の再処理の取り組みも進めている。

トロンベイ再処理施設

運転者:バーバ原子力研究センター(BARC)

運開:1964 年、1974 年停止後 1980 年代半ばにスケールアップ、再稼働

施設規模:50t/y(1980 年代以降)

再処理方式:PUREX 法

使用済燃料の供給源:研究炉 DHRUVA(軍事級プルトニウム生産)

施設規模:50t/y(1980 年代以降)

再処理方式:PUREX 法

使用済燃料の供給源:研究炉 DHRUVA(軍事級プルトニウム生産)

タラプール再処理工場

運転者:バーバ原子力研究センター(BARC)

運開:1974 年(PREFERE1)、2011 年(PREFERE2)

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施設規模:100-150t/y

再処理方式:PUREX 法

使用済燃料の供給源:発電炉(BWR、PHWR、CANDU)ほか、タラプールにある

高速増殖実験炉 FBTR 燃料の再処理も実施(処理済燃料は FBTR に再供給)。

カルパッカム再処理施設

運転者:インディラガンジー原子力研究センター(IGCAR)

運開:1996 年

施設規模:100-125t/y

再処理方式:PUREX 法

使用済燃料の供給源:マドラス発電所(PHWR)燃料(U-Pu 使用済燃料)。再処理

した Pu はタラプールにある高速増殖原型炉(PFBR:建設中)燃料として供給。

この他、高速炉使用済燃料再処理のパイロットプラントとして、2003 年に IGCAR に

CORAL を建設、高速実験炉 FBTR 使用済燃料の再処理試験を実施している。

また、この成果を受けて、現在建設中の高速実証炉 PFBR 燃料再処理を想定した再処理

実証プラント DFRP の建設も進められている。

なお、トロンベイとタラプールでは、再処理施設に併設して高レベル放射性廃棄物

(HLW)のガラス固化施設が設置されており、ガラス固化された HLW はこれらサイト

内で貯蔵されている。

■インドの HLW 最終処分方針

バーバ原子力研究所ウェブサイト「放射性廃棄物管理:インドのシナリオ」高レベル

放射性廃棄物管理のページには、インドの高レベル放射性廃棄物の処分方針が、以下の

ように示されている。

再処理施設などで発生する高レベル放射性廃棄物(HLW)をガラス固化

パッシブな冷却機能を備えた施設で中間貯蔵・監視

深地層処分

なお、処分場計画について具体的な選定計画等は不明である。

(参考資料)

日本原子力学会 再処理・リサイクル部会 テキスト「核燃料サイクル」 6-6「世

界の再処理工場」6-7「高速炉燃料再処理」

http://www.aesj.or.jp/~recycle/nfctxt/nfctxt.html

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IAEA、PRIS

バーバ原子力研究所ウェブサイト、REPROCESSING AND NUCLEAR WASTE

MANAGEMENT

http://www.barc.gov.in/randd/rwm.html

バーバ原子力研究所ウェブサイト、Radioactive Waste Management: Indian

scenario

http://www.barc.gov.in/pubaware/nw.html

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(34) DOE の FY2017 予算要求における原子力 R&D 費用の詳細

1.R&D 予算のカテゴリー

DOE 原子力(NE)局の FY2017 予算要求における原子力関連の主要 R&D 項目は以

下のカテゴリー(大分類)とサブカテゴリー(中分類)に含まれている(下線サブカテ

ゴリーについては別途、R&D 項目を具体的に記述する)。

(1) SMR 許認可技術支援(LTS)

NuScale パワー

サイト承認および許認可

(2) 原子炉概念研究開発・実証(RD&D)

軽水炉維持可能性サブプログラム

先進炉技術サブプログラム

(3) 原子力実現技術(NEET)

分野横断的技術開発(CTD)

原子力先進モデル化・シミュレーション(NEAMS)

モデル化・シミュレーションのエネルギー革新ハブ(Hub)

核科学ユーザー施設(NSUF)

原子力トレイニーシップ

2.SMR 関連の R&D 項目

DOE は小型・モジュール型原子炉(SMR)技術の商業化と展開時期の加速に高い優

先度を与えており、SMR 許認可技術支援(LTS)プログラムは SMR 技術の設計認証と

許認可活動および SMR のサイト許認可活動に関する最初のコストについて、産業界の

パートナーとのコスト分担取極(産業界側が最低 50%を負担する)によって支援してい

る。2013 年 12 月に設定された SMR LTS プログラムの活動に資金手当てする最終年で

ある FY2017 における活動は以下の通り。

(1) NuScale パワー

SMR の設計、エンジニアリング、開発者である NuScale パワー社の、NRC への設計

認証申請(DCA)の提出及びその後の一連の NRC 審査プロセス対応を支援するプログ

ラムである。FY2017 で支援される重要な技術活動は、NRC への DCA 提出;DCA に関

する追加情報要請への回答;燃料試験の完了;原子炉モジュール検査実証の完了;1 次

系熱水力とコード検証試験の実施;ヘリカルコイル蒸気発生器その他の 1 次系システム

の製造実証の実施;人的ファクターのエンジニアリングと試験の完了である。

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(2) サイト承認および許認可

TVA は追加情報要請への回答に必要な活動を含め、早期サイト承認申請(ESPA)の

NRC 審査を引き続き支援する。TVA はクリンチリバー・サイトに選定した SMR 技術を

立地させるための一括建設運転許認可申請(COLA)の作成を開始する。

NuScale/ユタ公営電力システムズ(UAMPS)は、選定サイトに関するサイト特性評

価活動を継続する。NuScale/UAMPS は、セキュリティ計画、緊急時計画、環境報告書、

地質学・地質工学調査等の COLA 文書の作成を継続する。

DOE は、SMR 許認可および商業化の可能性向上にとって重要な分析と研究を継続す

る。

3. GAIN 関連の R&D 項目

原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(Gateway for Accelerated Innovation in

Nuclear:GAIN)が関連するカテゴリーは、上記のうち(3)原子力実現技術(NEET)で

あり、さらにそのうちのサブカテゴリーの「分野横断的技術開発(CTD)」および「核

科学ユーザー施設(NSUF)」である。

(3) 分野横断的技術開発(CTD)の役割

この CTD サブプログラムは、ユニークで分野横断的な原子力の課題に対する革新的

なソリューション開発に繋がる、優先度の高い R&D を競争プロセスによって大学、国

立研究所、産業界に認定し、以て GAIN イニシアチブの目標、目的、活動を支えるよう

な能力の強化を図ろうとするものである。

さらに CTD は、国立研究所における競争力のある原子力関連インフラの強化、研究

者の最先端 R&D 能力へのアクセス保証に対しても戦略的に投資する。

このサブプログラムにおいて開発される技術・能力が運転中および将来の原子力発電

プラントの安全性、セキュリティ、信頼性、経済性の向上を目指す総合投資戦略の一環

となることを確実にするため、NE 局の他の R&D プログラムとの調整が図られる。

このプログラムでの活動の特徴は以下の通り:

現在の技術的限界を克服できる可能性のある高リスク研究

原子力への応用がこれまで検討されたことのない新等級の物質の試験

NE 局の R&D プログラムに共通する調整された能力

個々のプログラムを超越した実現技術の開発

NE 局の R&D 事業にとって必要な新たな能力

(4) 原子力先進モデル化・シミュレーション(NEAMS)

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NEAMS は、先進炉技術サブプログラムや燃料サイクル R&D 等の NE 局のプログラ

ムを支援する先進モデル化、シミュレーションのツールを開発する。NEAMS は、原子

力システムのシミュレーションの先進計算手法を動かす最先端の物理・化学のマルチス

ケール・モデルを開発する科学者・技術者を手配する。NEAMS は、原子炉と燃料の両

方のシステム解析能力を有する計算 Toolkit を開発中である。これらの能力は末端利用

者のニーズに応じて単独でまたは組み合わせて運用可能である。NEAMS プログラムの

下で開発された計算ツールは核シミュレーションにおける最先端を明らかにするもので、

現在、国内外の 60 以上の組織で使用されている。NEAMS の Toolkit の成熟につれ、

NEAMS はトランジエント炉試験(TREAT)施設における実験活動の再開等の NE 局プ

ログラムの優先度に対応して、Toolkit の適用を支援する。

FY2017 では、Toolkit の業務は定常状態、運転過渡状態、事故条件で十分に機能する

PWR 燃料の一連の挙動コードの公開バージョンの作成に焦点を当てる。更に、軽水炉お

よび先進原子炉概念に適用される次世代原子炉コードの開発が継続される。

検証目的で NEAMS は、短期的(2~3 年)で原子力の応用に重要かつ前向きの変化

をもたらすことが出来る高インパクト問題(HIP)に対処する。HIP は、重要性と影響

を確認するために他の DOE プログラムや原子力の利害関係者とのパートナーシップで

明確化され解決される。

(5) モデル化・シミュレーションのエネルギー革新ハブ(Hub)

FY2017 予算では Hub の第 2 期、最終 5 年間の 3 年度目の資金が提供される。オーク

リッジ国立研究所が国立研究所、大学、産業界のパートナーの主導コンソーシアム

(CASL:軽水炉シミュレーション・コンソーシアム)であり、これまでにウェスティ

ングハウス社が設計し TVA が保有・運転する PWR の仮想原子炉モデルの作成に成功し

ている。この仮想モデルは現在、原子炉の安全で経済的な運転にとっての重要な課題の

解析と理解のために利用されている。今度の第 2 期、5 年フェーズでは、Hub の能力が

BWR および SMR を含む他の軽水炉設計の支援にまで拡張されることになる。同様に、

Hub のメンバーシップが他の原子炉ベンダーと電力会社にまで拡張される。計画では、

仮想原子炉ツールを事業者のコンピューターにインストールするコスト分担による展開

試験が含まれている。ツールのインストール後は、原子炉の出力を制限する事業者が明

らかにした問題の理解向上のために利用される。

(6) 核科学ユーザー施設(NSUF)の役割

NSUF は、米国に拡がる並はずれた核研究能力、専門的メンター、実験者(パートナ

ー施設)を広範に結び付けるハブであり、ユニークな原子力研究施設の利用を促進し、

関連核科学研究における大学、産業界、研究所の積極的な協力を促進する“将来に向け

た研究所のプロトタイプ”の役割を果たす。

NSUF は提案競争により、研究組織が協力して実験と実験後の分析を行い、通常は利

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用できない施設での高度な演算能力を活用するメカニズムを提供する。毎年、研究者が

これらユニークな施設で実施するプロジェクト(期間は 2~3 カ月ないし数年)を提案す

る。プロジェクトが採用されると、NSUF がパートナーのユーザー施設での実験サポー

トと研究所サービスの費用を負担して、研究者は新たな技術、設備、要員という恩恵を

得られる。

NSUF は、アイダホ国立研究所の先進試験炉(ATR)、物質・燃料コンプレックス(MFC)

の照射後検査(PIE)施設、既存の先進科学計算研究ユーザー施設を補完するファルコ

ン等のスーパーコンピューターを無償で提供する。さらに、NSUF のパートナーである

先進エネルギー研究センター(CAES)の PIE 資産;オークリッジ国立研究所、マサチ

ューセッツ工科大学、ノースカロライナ州立大学の研究炉;イリノイ工科大学との協力

による先進フォトン・ソース(APS)でのビーム・ライン機能;パシフィック・ノース

ウェスト国立研究所での照射実験の設計・製造能力;ウェスティングハウス社のホット

セルおよび製造能力;ウィスコンシン大学、ミシガン大学、カリフォルニア大学バーク

レー校、パーデュー大学、ネバダ大学ラスベガス校の実験施設が研究コミュニティにと

って利用可能となる。

FY2017では、NSUFは仮想知識センターとして原子力知識・検証センター(NEKVC)

の構築を継続する。NEKVC は、原子力コミュニティの科学者達に先進原子力システム

と関連能力の精度を評価・分析するために必要な情報を提供する。さらに NSUF は、原

子力インフラストラクチャー・データベースの構築と刊行、トランジエント原子炉試験

(TREAT)運転再開の一環として次世代科学トランジエント試験能力の開発を支援する。

これらおよびその他の NSUF の取組みは、産業界の技術者・科学者にこれらユニーク

な原子力研究資産へのアクセスを可能とし、原子力が米国のエネルギー・環境課題を満

足させる競争力のある選択肢であり続けることを確実にするために最大限に活用できる

ようにするという、DOE の GAIN イニシアチブの重要コンポーネントである。例えば、

NSUF は、革新的システムとコンポーネントを商業化するために働く主体が利用可能と

するため、DOE 事業を横断する人、施設、物質、データを含む広範な能力への容易なア

クセスの単一窓口を確立しており、それが維持される。さらに、FY2017 には TREAT

の過渡試験ミッションにとって必須である探知システムである制限視野 TREAT ホドス

コープの改修が完了する。2007 年にユーザー施設として指定されて以来、NSUF は 25

の大学と 4 研究所に対して 124 の実験を認めている。新たに認められる実験は全て全額

の資金が付与され、貸付は廃止され、一貫性が向上する。

4.先進炉の R&D 項目

先進炉 R&D は、原子炉概念研究開発・実証(RD&D)のカテゴリーのサブカテゴリ

ーである先進炉技術(ART)サブプログラムに含まれる。

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以下は FY2017 予算要求における具体的な R&D 項目である:

(1) 高速炉技術

構造工学的試験研究室(METL)操業の継続、および液体金属炉(LMR)実験装置の

保守。安全解析コードの改良、検証・妥当性確認(V&V)。LMR 用の熱水力および中性

子工学的コードの開発。液体ナトリウム炉(SFR)および鉛冷却高速炉-第Ⅳ世代国際

フォーラム(LFR GIF)支援およびその他の二国間国際協力。

(2) 高温炉技術

TRISO 燃料の開発および認定の継続。先進ガス炉(AGR)-5/6/7 照射の開始。先進黒

鉛クリープ(AGC)黒鉛の認定継続。アルゴンヌ国立研究所(ANL)の自然循環シャッ

トダウン熱除去試験施設(NSTF)での過酷事故熱除去およびオレゴン州高温試験施設

を利用した炉心熱水力モデルの実験的 V&V。GIF における、また二国間協力による高温

炉(HTR)国際活動。

(3) 先進炉共通技術

アロイ 709 コード認定を含む高速炉用先進構造材料の開発継続。高温材料の規制上の

問題解決および SiC/ HTR 用 SiC の開発。ナトリウム冷却材の特性実験の継続。プロセ

ス熱交換器開発の調査。先進炉概念に特化した計装・制御の開発継続。先進炉の安全性、

熱水力、施設に関する二国間・多国間(例えば第Ⅳ世代国際フォーラム)の取組み、そ

の他の協力研究の継続。

(4) sCO2クロスカット支援の活動

sCO2ブレイトンサイクル試験実験アーティクル(BCTA)を用いた実験の実施。高出

力・大型システム用の規模拡大活動の仕上げ。先進 sCO2 復熱装置の開発。小漏洩減少

(SLP)試験の継続。

(5) 先進炉の規制枠組み

軽水炉特有の許認可問題に対処するための様々なイニシアチブの追求。NRC の政策お

よび技術的問題の解決など、一部の活動については NRC と合同で実施。高温ガス冷却

炉(HTGR)安全設計基準に関する IAEA 調整研究プロジェクトへの支援を継続。ART

規制技術開発計画(RTDP)に記述された R&D の実施。

(6) 先進炉システム研究

完了と成果を待って先進試験/実証炉研究の結果を履行するための活動の実施。

(7) 宇宙・国防電力システム

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国家安全保障プロジェクトから生じたレガシー特殊核物質(SNM)およびシステム資

産の管理活動の継続。

5.既存炉の R&D 項目

既存炉 R&D は、原子炉概念研究開発・実証(RD&D)のカテゴリーのサブカテゴリ

ーである軽水炉維持可能性(LWRS)サブプログラムに含まれる。60 年の運転認可の期

限が 2029 年から満了を迎え始めるため、電力会社は 60 年超の運転認可の取得手続きを

開始しており、最初の申請が 2018 年から行われるものと予想されている。

LWRS プログラムはまた、効率向上と安全性改善を助けるパイロット・プラント(PP)

プログラムによる新技術を導入することによって事業者が現在の経済的課題に対処する

ことにも役立つ。

LWRS は研究ニーズの調整とコスト分担のために産業界および NRC とのパートナー

シップを組んでいる。事業者が主として短期的な研究ニーズに取組む一方、LWRS は産

業界・NRC と共に長期的な研究ニーズを推進する。

LWRS は経年による材料劣化管理のための技術基盤を構築し、計装・制御システムに

関連した主要コンポーネントの改修・交換戦略、および安全裕度の特性評価に関する情

報を提供する。

LWRS における取組の性質から、事業者の支持を確実とするためにコスト分担が特に

重要であり、2005 年エネルギー政策法の第 988 条により適切なコスト分担の取極が確保

される。現在、産業界とのコスト分担は主として、電力研究所(EPRI)との共同または

調整研究プロジェクトとして、作成された合同研究・開発計画の下で実施されている。

それ以外の産業界のパートナーとのコスト分担はプロジェクトの作業契約で文書化され

ている。

福島第一原子力発電所事故以来、原子力コミュニティは安全の前提とプラントの安全

性能の再評価を行った。NE 局は LWRS において、出現した安全上の懸念に技術的進歩

がどのように対処できるかという観点から、事故とその結果をより十分に理解するため

の研究に着手した。

研究活動には、福島からの情報を利用したモデル化・シミュレーション・ツールの有

効性評価;事故防止、影響緩和、事故時の信頼に足る情報提供に利用できる可能性のあ

る新技術を開発する産業界への協力;福島事故に関する核鑑識を実施し産業界が教訓を

取り入れて安全性向上を可能にするための日本および国際コミュニティへの協力が含ま

れている。これら活動は現在および将来の軽水炉の事故耐性を強化し事故対応能力を強

化することに繋がるものと期待される。

以下は FY2017 予算要求における具体的な R&D 項目である:

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(1) 材料の経年化と劣化

原子力発電プラントにおける材料の性質の長期的な環境劣化の理解と予測のための科

学的基盤の構築。この取組は、原子力発電プラントの安全と持続的運転に不可欠なシス

テム、構造物、コンポーネントの性能を評価するデータと手法を提供する。R&D の成果

は長期間の運転条件の対象となる原子力発電プラントのシステム、構造物、コンポーネ

ントにおける材料に関する運転限界および経年化の緩和アプローチを明確にするために

利用され、規制者と産業界の両方に重要なインプットを提供する。研究対象として、コ

ンクリート;原子炉圧力容器(RPV)脆化;ケーブル劣化;炉心内部の溶接補修;照射

誘起応力腐食割れ(IASCC)の機構;ニッケル基盤合金中の亀裂;炉心内部のスウェリ

ング、相転換、計算機による熱力学技法;ザイオン廃止措置プラントからのバッフル・

ボルトおよび RPV 材料の採取が含まれる。コンクリートおよびケーブル絶縁体の非破壊

検査技術の開発。

(2) 安全裕度の特性評価

原子力発電プラントに関する意思決定を改善するために安全裕度の定量化における不

確実性に対処するアプローチの開発と展開。これには、安全裕度の定量化に関連するリ

スク評価手法の開発と実証、および原子力発電プラントの安全裕度とそれに関連する運

転および経済性への影響をより精確に示すことを可能にする安全評価の最新ツールの開

発を含む。R&D の成果は、実際のプラントの安全裕度への新たな洞察を生み、運転延長

期間におけるこれら裕度のコスト効果の高い管理を可能にする、最新の原子力発電プラ

ントの安全解析の作成において利用される。資金計画では、洪水・地震等の外部事象の

モデル開発;物理現象モデルを検証する外部事象機器故障試験;裕度解析手法の開発;

リスク分析・仮想制御環境(RAVEN)の更なる開発(シミュレーション制御ソフトウェ

ア)について支援する。コンポーネント経年化および原子炉コンポーネントの損傷進行

を模擬する Grizzly ツール開発の継続。

(3) 計装・制御システム

長期経年化への対処、および新たな計装制御技術の開発、実証、試験ならびに自動化

され信頼性の高いプラント運転のために進化した状況監視技術を通じた現行の計装制御

技術の最新化。この研究は、産業界がプラント運転条件と利用可能な裕度への理解を高

め、運転事象への対応戦略と能力を向上させる新たな計装制御技術・システムを設計し、

既存の原子力発電プラントに展開するために利用される。資金計画では、コンピュータ

ー運転員支援システム(COSS)の基礎として包括的なプラント物理現象モデルを開発

するパイロット・プラントの新規プロジェクト 1 件と共に、5 件のパイロット・プラン

ト・プロジェクト(先進ハイブリッド制御室;自動化作業パッケージ;自動化プラント

用のデジタル・アーキテクチャー;プラント停止リスク管理;自動化マニュアル・プラ

ント活動)への支援が継続される。さらに、パッシブ・コンポーネント(コンクリート

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143

とケーブルの両方)のオンライン監視能力の開発、および他のプラント自動化システム

へのオンライン監視能力の統合を支援する。

(4) システム解析および新たな問題

水化学管理に必要なリチウム 7 供給の潜在的制限など、既存プラントの継続的有効性

に影響を及ぼす可能性のある新たな問題への対処。

(5) 原子炉安全技術

設計基礎事象を超えた原子炉の安全性を強化する産業界の取組を支援する科学・技術

的洞察、データ、解析、手法の開発。過酷事故モデル化の不確実性の SAMG への影響お

よび福島炉検査計画立案、国際パートナーとの調整の支援。

【出典】

Department of Energy FY 2017 Congressional Budget Request Volume 3

https://energy.gov/sites/prod/files/2016/02/f29/FY2017BudgetVolume3_2.pdf

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4. 国別プロファイル

本章では、調査対象国・地域の原子力動向をよりよく把握するために、地域全体の一

覧的な情勢把握が可能な地域毎の地図と、エネルギー政策・計画、原子力政策、原子力

関連動向等の各国の情報を整理した各国の基本情報を報告する。また、原子力利用先進

国の中で、我が国の原子力産業の国際展開において競合国となるフランス、ロシア、韓

国、中国の原子力分野での海外進出状況を地図の形でまとめ報告している。

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平成 28年度発電用原子炉等利用環境調査

(諸外国における原子力政策等動向調査)

:国別プロファイル:

平成 29年 3月

株式会社 三菱総合研究所

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目次

1. 国別プロファイル ............................................................................................................ 4

1.1. 地域圏の地図情報 .................................................................................................... 5

1.1.1. 北米・南米 ........................................................................................................ 5

1.1.2. 欧州(西) ........................................................................................................ 7

1.1.3. 欧州(東) ........................................................................................................ 8

1.1.4. 旧ソ連諸国 ........................................................................................................ 9

1.1.5. アジア ............................................................................................................. 10

1.1.6. 中東・アフリカ ................................................................................................ 11

1.1.7. 世界の原子炉一覧 ........................................................................................... 12

1.2. 各国のプロファイル ............................................................................................... 13

1.2.1. 北米・南米 ...................................................................................................... 13

(1) 米国 ............................................................................................................. 13

(2) カナダ ......................................................................................................... 28

(3) ブラジル ...................................................................................................... 34

(4) アルゼンチン ............................................................................................... 38

(5) メキシコ ...................................................................................................... 42

1.2.2. 欧州(西) ...................................................................................................... 46

(1) フランス ...................................................................................................... 46

(2) ドイツ ......................................................................................................... 55

(3) 英国 ............................................................................................................. 64

(4) スイス ......................................................................................................... 72

(5) ベルギー ...................................................................................................... 78

(6) フィンランド ............................................................................................... 83

(7) スウェーデン ............................................................................................... 89

(8) イタリア ...................................................................................................... 94

(9) スペイン ...................................................................................................... 99

(10) オランダ ................................................................................................ 103

1.2.3. 欧州(東) .................................................................................................... 108

(1) スロバキア ................................................................................................ 108

(2) スロベニア ................................................................................................. 112

(3) チェコ ........................................................................................................ 116

(4) ハンガリー ................................................................................................ 121

(5) ポーランド ................................................................................................ 126

(6) ブルガリア ................................................................................................ 130

(7) ルーマニア ................................................................................................ 134

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1.2.4. 旧ソ連諸国 .................................................................................................... 138

(1) ロシア ....................................................................................................... 138

(2) ウクライナ ................................................................................................ 145

(3) リトアニア ................................................................................................ 150

(4) カザフスタン ............................................................................................. 154

(5) ベラルーシ ................................................................................................ 159

(6) アルメニア ................................................................................................ 162

1.2.5. アジア ........................................................................................................... 166

(1) 中国 ........................................................................................................... 166

(2) 韓国 ........................................................................................................... 174

(3) 台湾 ........................................................................................................... 182

(4) ベトナム .................................................................................................... 187

(5) インド ....................................................................................................... 191

(6) バングラデシュ ......................................................................................... 196

(7) タイ ........................................................................................................... 200

(8) マレーシア ................................................................................................ 204

(9) インドネシア ............................................................................................. 208

(10) パキスタン ............................................................................................. 213

1.2.6. 中東・アフリカ ............................................................................................. 217

(1) トルコ ....................................................................................................... 217

(2) ヨルダン .................................................................................................... 222

(3) アラブ首長国連邦 ..................................................................................... 226

(4) サウジアラビア ......................................................................................... 231

(5) エジプト .................................................................................................... 236

(6) 南アフリカ ................................................................................................ 240

1.3. フランス、ロシア、韓国、中国の原子力産業海外進出動向 ............................... 244

1.3.1. フランス........................................................................................................ 245

1.3.2. ロシア ........................................................................................................... 246

1.3.3. 韓国 ............................................................................................................... 247

1.3.4. 中国 ............................................................................................................... 248

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1. 国別プロファイル

この国別プロファイルでは、調査対象国・地域の原子力動向をよりよく把握するために、

地域全体の一覧的な情勢把握が可能な地域毎の地図と、エネルギー政策・計画、原子力政

策、原子力関連動向等の各国の情報を整理した各国の基本情報を報告する。また、原子力

利用先進国の中で、我が国の原子力産業の国際展開において競合国となるフランス、ロシ

ア、韓国、中国の原子力分野での海外進出状況を地図の形でまとめ報告している。

各国の統計的な情報については、注記のあるものを除き、以下の出典より各国共通のデ

ータを参照し、報告している。

〔基本情報〕

外務省ウェブページ”各国・地域情勢”

(基本情報、政治・経済情報)(2017 年 3 月現在)

〔エネルギー・電力〕

国連、Energy Statistics Yearbook(保有資源、電源種別設備容量:2014 年値)

国際エネルギー機関(IEA), World Energy Balances 2016 Edition

(総一次エネルギー供給、エネルギー自給率、原子力シェア、一次エネルギー供給構

成比、最終エネルギー消費構成比、電力消費量、発電電力量、輸入電力量、電源種別

発電電力量:2014 年値)

〔原子力関連〕

世界原子力発電協会(WNA)

(原子力発電設備容量・発電電力量・原子力シェア、運転中・建設中・計画中原子炉

の基数1)(2017 年 3 月現在)

※上記のように、3.1の地図中、及び 3.2 の各国のプロファイル冒頭の原子力発電設備容量、

発電電力量、原子力シェアは WNA のデータをもとに最新の情報を示している。一方、3.2

の各国のプロファイルのエネルギー・電力の項では、原子力を含む設備容量、発電電力量、

原子力シェアは、IEA 及び国連の資料をもとに統一的なデータを参照しており、両者の値

が異なることがある。

1 計画中基数については、各プロジェクトの実情も考慮して微修正を加えていることがある。

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1.1. 地域圏の地図情報

1.1.1. 北米・南米

米国

設備容量:9,953.5万kW 発電電力量:7,980億kWh

運転中:99基(PWR:64, BWR:35)

建設中:4基(PWR)

計画中:9基 原子力シェア:19.5%

※1:計画中基数は、許認可審査が中断しているプロジェクトを除く許認可申請の基数

原子力発電電力量は世界一。トランプ政権の原子力政策は否定路線ではないが、まだ明らかではない。いくつかの州では原子力を維持するための施策の導入を決定している。

原子力開発は事業者が電源の経済性に基づいて決定しており、2009年までに18件の一括建設・運転許認可(COL)申請が提出。約30年ぶりの新規原子炉建設許認可として、2012年2月にヴォーグル3,4号機、同3月にサマー2、3号機のCOLが発給。またワッツバー2号機が2016年10月に営業運転を開始。

但しシェールガス革命による極めて低いガス価格の継続、電力需要の伸びの鈍化が、原子炉の新設や運転延長の判断に影響を与えており、2013年~2014年にかけて5基の原子炉が恒久運転停止。うち2基は経済性を理由に閉鎖。2015年10月と11月に更に2基の早期閉鎖を事業者が発表。2016年6月には、4基の早期

閉鎖に向けた手続きを開始することを事業者が発表した(いずれも州の支援策により後に撤回)。さらに、2016年12月、1基の早期閉鎖を事業者が発表した。

カナダ

設備容量:1,355.3万kW

発電電力量:956億kWh 運転中:19基(PHWR)

建設中:0基 計画中:2基

原子力シェア:16.6%

豊富なウラン資源を背景に、連邦政府所有の公企業であるカナダ原子力公社(AECL)が中心となってCANDU炉と呼ばれる独自の原子炉を設計・開発。資源の乏しいオンタリオ州で1970~80年代にかけて積極的に導入。

オンタリオ州をはじめ、ニューブランズウィック州、アルバータ州など既存原子力発電所のある地域で新規建設が検討されたが、経済情勢や電力需要の変化等を受けて新設計画の検討は現在は進められていない。

北米地図情報

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メキシコ

設備容量:160万kW 発電電力量:112億kWh

運転中:2基(BWR2基) 建設中:0基

計画中:0基 原子力シェア:6.8%

2010年5月の電源計画では、10基の原子炉の

建設を含むシナリオも示されていたが、メキシコ湾での新たなガス田発見を受けて、コスト上の理由から計画は見直された。その後政府は2016年、原子炉3基を2028~2030年に運開さ

せる計画が盛り込まれた新たな電力システム開発計画を発表。

アルゼンチン

設備容量:162.7万kW

発電電力量:65億kWh 運転中:3基(PHWR3基)

建設中:1基(PWR) 計画中:2基

原子力シェア:4.8%

1990年代より中断されていたアトーチャ2号機の建設が2006年に再開、2014年6月に運開した。4

基目(アトーチャ3号機)及び5基目は中国核工業集団公司(CNNC)が建設する。5基目には中国が開発したPWRである華龍1号の採用を検討。

ブラジル

設備容量:190.1万kW

発電電力量:139億kWh

運転中:2基(PWR2基)

建設中:1基(PWR1基)計画中:0基

原子力シェア:2.8%

1980年代から建設が中断されていたアングラ原子力発電所3号機の建設が2010年6月に再開され、2022年に運開予定。政府は長期的には、4~8基の原子炉建設も検討しているが、今後2024年までのエネルギー拡大計画では新規建設はアングラ3号機に限定する方針。

中南米地図情報

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1.1.2. 欧州(西)

英 国

設備容量:888.3万kW 発電電力量:639億kWh 運転中:15基 (AGR14基、PWR1基)建設中:0基(建設前:1基)計画中:12基 原子力シェア:18.9%

2008年以降、原子炉新設推進方針。また福島

第一原子力発電所事故後も、その教訓を生かす意向を示しつつ推進方針を維持。仏EDFと中国CGN、日立、東芝および仏ENGIEが、ほ

どなく運転寿命を迎える既存炉のサイト周辺等における新設を計画または検討中。なお政府は、事業者による原子炉新設のための資金調達における政府債務保証の提供や、固定価格買取差額決済契約(FIT CfD)制度の原子力発電への適用といった支援策を打ち出している。

フランス

設備容量:6,313万kW 発電電力量:4,190

億kWh 運転中:58基(PWR58基)

建設中:1基(PWR) 計画中:1基 原子力シェア:76.3%

世界第2位の原子力大国。2012年の大統領選挙・下院総選挙後に発足した社会党政権は、2025年までに総発電電力量に占める原子力の割合を現状の75%から50%に縮減する方針を掲げている。オランド大統領は国内でもっとも古いフェッセンハイム原子力発電所を2016年末までに閉鎖するとしている。

フラマンヴィルサイトに国内初のEPRが建設中。

スウェーデン

設備容量:884.9万kW 発電電力量:545億kWh

運転中:9基(BWR6基、PWR3基)

建設中:0基 計画中:0基 原子力シェア:34.3%

2014年10月に政権についた社会民主党と緑の党の連立政権は当初、再生可能エネルギーとエネルギー利用効率の向上により原子力を代替するとの政策を示して、脱原発を推進する方針を鮮明にしていたが、政権と一部野党が2016年6月、リプレース容認等を含む政策に合意した。

その一方で、2015年10月には原子力発電事業の経済性悪化を主因として、オスカーシャム1、2号機およびリングハルス1、2号機の運転停止時期の前倒しが相次いで決定している。

ベルギー

設備容量:594.3万kW

発電電力量:248億kWh

運転中:7基(PWR7基)

建設中:0基 計画中:0基

原子力シェア:37.5%

2003年の脱原子力法によって原子炉新設の禁止と原子炉運転年限が定められている。一部原子炉については、当初想定の運転期間の40年を10年間延長することが認められているが、2025年までに全ての原子炉が閉鎖されることとなっている。

フィンランド

設備容量:276.4万kW 発電電力量:223億kWh 運転中:4基(BWR2基、PWR2基)

建設中:1基(PWR) 計画中:1基

原子力シェア:33.7%

国内電源の確保や気候変動対策などのために、原子力は重要な電源との位置付け。2005年から建設を開始した、林業関係電力会社(TVO

)によるオルキルオト3号機(EPR)は、スケジュールが遅延し、運開は2018年の見込み。国内6

基目の原子炉として、Fennovoima社がハンヒキビ1原子力発電所の建設を計画中であり、露ROSATOMが建設契約を受注。

ドイツ

設備容量:1,072.8万kW 発電電力量:868億kWh 運転中:8基(BWR2

基、PWR6基)建設中:0基 計画中:0基 原子力シェア:14.1%

2010年の原子力法改正ではいったん原子炉運転延長が認められたが、福島第一原子力発電所事故を受けてエネルギー政策の見直しが行われた。2010年末時点では12カ所で合計17基が運転していたが、2011年8月の原子力法改正に伴い、2016年12月現在までに9基の原子炉が閉鎖済である。残る8基も2022年までに順次閉鎖される。

原子力発電からの段階的撤退を規定した2002年の原子力法改正で、ドイツでは原子炉の新設が禁止されている。

イタリア運転中発電原子炉無し

チェルノブイリ事故後の1987年の国民投票を受けて原子力発電から撤退したが、2008年5月に発足したベルルスコーニ内閣は原子力発電の再開を目指し、法制度の整備を進めてきた。しかし、2011年6月12、13の両日に実施された国民投票では、投票者の大多数が将来的な原子力発電の再開を拒否する結果となった。

スイス

設備容量:333.3万kW 発電電力量:222億kWh

運転中:5基(BWR2基、PWR3基)建設中:0基 計画中:0基原子力シェア:33.5%

原子力は水力と並ぶ主要電源。福島第一原子力発電所事故後の政策見直しの結果、2011年5月に政府が段階的に原子力発電から撤退する方針を決定、検討中の原子炉建設・リプレース計画は破棄された。2016年11月の国民投票では、既存炉の早期閉鎖を求める国民発議が否決された。2018年初には新規炉建設禁止・既存炉の運転期間制限なしを軸とする原子力法改正が発効する見込みである。

スペイン

設備容量:712.1万kW 発電電力量:548億kWh 運転中:7基(BWR1基、PWR6基)

建設中:0基 計画中:0基 原子力シェア:20.3% 前政権は再生可能エネルギー開発に注力し、原子力発電への依存度を縮減していく方針を示していたが、2011年の総選挙で政権を奪回した中道右派の国民党は原子力発電に肯定的。

現政権は、国内最古のガローニャ原子力発電所を2013年7月で閉鎖するとした前政権の方針を見直し、事業者が2019年までの運転延長申請を行うことを認めることを決定。更に60年間への運転認可更新が申請され、現在審査中。

欧州(西)地図情報

オランダ

設備容量:48.5万kW 発電電力量:39億kWh

運転中:1基(PWR1基) 建設中:0基

計画中:0基 原子力シェア:3.7%

国内唯一のボルセラ原子力発電所における原子炉の増設申請2件が提出されている。福島第一原子力発電所事故後も政府の原子力政策に変更はないが、デルタ社が2012年1月に経済的理由から原子炉新設計画を凍結すると発表した後、計画は凍結されたままである。

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1.1.3. 欧州(東)

ポーランド

運転中:0基 建設中:0基

計画中:6基

政府は2009年、原子力発電の導入についてのロードマップを採択。2014年1

月、2024年末までに初号機を運開す

る計画を閣議決定したが、スケジュールは数年繰り延べの見込み。2016年6

月、建設サイト候補がジャルノビエツとルビャトボ-コパリノの2カ所に絞り込まれた。

スロベニア

設備容量:69.6万kW

発電電力量:54億kWh

運転中:1基(PWR1基)

建設中:0基

計画中:0基

原子力シェア:38%

ウェスティングハウス社製PWR1基が稼働。2基目の建設に向けた動きは停滞中。

チェコ

設備容量:390.4万kW

発電電力量:253億kWh

運転中:6基(PWR6基) 建設中:0基

計画中:2基 原子力シェア:32.5%

旧ソ連製原子炉VVER6基が稼働。政府は原子力発電を拡大する方針だが、2014

年にテメリンにおける原子炉増設の入札が中止。政府は増設1基目のサイトをドコバニに変更し、新たな入札を開始する意向。

ブルガリア

設備容量:192.6万kW 発電電力量:147億kW

運転中:2基(PWR2基) 建設中:0基 計画中:1基(PWR1基)

原子力シェア:31.3%

コズロドイ発電所で旧ソ連製VVER2基が稼働中。ブルガリア・エネルギー・ホールディングは2013年12月、米WH社と同発電所7号機としてAP1000を建設する方向で交渉を開始することで合意した。

一方、ベレネ原子力発電所建設プロジェクトは資金難などから計画が停滞した後、2013年2月に計画中止が確定した。

スロバキア

設備容量:181.6万kW

発電電力量:141億kWh

運転中:4機(PWR4基)

建設中:2基(PWR2基) 計画中:0基

原子力シェア:55.9%

旧ソ連製原子炉VVER4基が稼働。政府は原子力発電拡大の方針を示しており、モホフチェ3・4号機が建設再開されるとともに、新規原子炉建設に向けた動きが進められている。

東欧地図情報

ルーマニア

設備容量:131万kW

発電電力量:107億kWh

運転中:2基(PHWR2基)

建設中:0基 計画中:2基

原子力シェア:17.3%

カナダ製CANDU炉2基が稼働中。政府は原子力発電拡大の方針を示しており、新規原子炉建設に向けた動きが進められている。2011年4月に経済・通商・ビジネス環境省が2035年までに新たに合計464万kWの原子力発電の導入を目指すエネルギー戦略草案を発表。

ハンガリー

設備容量:188.9万kW

発電電力量:150億kWh

運転中:4基(PWR4基) 建設中:0基

計画中:2基 原子力シェア:52.7%

既存のパクシュ原子力発電所において旧ソ連製原子炉VVER4基が稼働。さらに2基のVVER増設を計画している。

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1.1.4. 旧ソ連諸国

カザフスタン

計画中:2基

1999年まで原子力発電を行っていたが、現在は行っていない。政府は2009年9月、

新たな原子力発電所を建設する方針を発表。原子炉2基の建設を計画しており、ロ

シアに協力を求めている。なおウラン生産量は2009年に初めて世界一となり、その後も生産量を増大させようとしている。

ロシア

設備容量:2,686.5万kW

発電電力量:1,828億kWh

運転中:35基(PWR18基、LWGR15基、FBR2基)建設中:7基(PWR7基)

計画中:26基(FBR:4基、LWGR:0基、PWR:22基)

原子力シェア:18.6%

原子力発電設備容量は、米国、フランス、日本に次いで世界第4位。原子力発電を積極的に拡大。

2009年11月に閣議決定した連邦重点プログラムに

より、総発電電力量に占める原子力発電の比率を2030年までに25~30%、2050年までに45~50%とする目標を設定。

高速増殖炉の原型炉であるBN-600が運転中である他、実証炉BN-800が2014年に初臨界を達成し、2016年に定格出力で運転を開始。

ウクライナ

設備容量:1,310.7万kW

発電電力量:824億kWh

運転中:15基(VVER)建設中:0基

計画中:2基 原子力シェア:56.5%

2013年に政府が発表した「改定2030年まで

のウクライナのエネルギー戦略」では、電力需要は2015年の2,310億kWhから2030年には3,951億kWhへと増加することが見込まれており、2030年には、再生可能エネルギー設備容量シェアの10%達成と、原子力発電シェア50%を目標に掲げている。

リトアニア

計画中:1基

2009年末に最後の原子炉を停止したが、バルト三国共同でヴィサギナス原子力発電所(1基)を新設する計画である。2012年3月には日立GEがエネルギー省と同計画の事業権契約に

調印した。発電所建設に向けた準備が進められていたが、2016年11月、政府は同発電所の

建設プロジェクトを一時凍結する方針を発表した。

旧ソ連地図情報

アルメニア

設備容量:37.6万kW

発電電力量:26億kWh

運転中:1基(PWR)

建設中:0基 計画中:1基(PWR)

原子力シェア:34.5%

政府は2010年8月、現在運転中のメタモール発電所で、同3号機(VVER-1000)を増設する政府間協定をロシアと締結。2018年の建設開始が見込まれている。

ベラルーシ

建設中:2基

現在原子力発電は未導入であるが、グロドノ州オストロベツに120万kWの原子炉を2基建設中である。1号機は2018年、2号機は2020年の運開が計画されている。

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10

1.1.5. アジア

韓国

設備容量:2,301.7万kW 発電電力量:1,572億kWh

運転中:25基(PWR21基、PHWR4基)建設中:3基

計画中:8基 原子力シェア:31.7%

政府は低炭素電源として、原子力発電を推進する方針。2014年1

月に策定した第2次エネルギー基本計画では2035年の原子力シェアを29%とした。原子炉輸出に関して政府は2010年1月、UAEへの原子力発電プラント輸出を契機に、2030年までに原子炉80基を輸出する戦略を発表。第2の輸出成約は未だ実績がないが、国産

小型炉の事業協定をサウジアラビアと締結するなどの動きがある。

タイ

エネルギー省エネルギー政策計画局 (EPPO)が発表した電源開発計画(PDP2015)によると、2035~2036年にかけて100万kWの原子炉2基が運開する計画である。

マレーシア

2011年1月にマレーシア原子力開発会社(MNPC)が設立された。政府は、原子力発電の導入を決定し、2基建設する場合には、1基目は2021年、2基目は2022年に運開させる方針であった。しかしMNPCによると、建設開始が2021年以降になる見通し。

インドネシア

ムリア半島での建設計画は中止されたが、新候補地バンカ島での2

基の原子炉建設に向け、政府は2010年10月に州と覚書を締結。原

子力庁は福島第一原子力発電所事故後も、原子力発電導入計画を継続する意向を示す。

インド

設備容量:621.9万kW

発電電力量:346億kWh

運転中:22基(PHWR18基、BWR2

基、PWR2基)

建設中:5基(PHWR4基、FBR1基)計画中:20基 原子力シェア:3.5%

急激な経済成長に伴い電力需要の大幅な増大が予想されることから、福島第一原子力発電所事故後も引き続き原子力開発を推進。2032年までに原子力発電設備容量を6,300万kW

に拡大することを目指す。原子力開発政策では3段階からなるトリウム燃料サイクルを推進。

ベトナム

東南部のニントゥアン省に2基ずつ2カ所の原子力発電所(総発電設備容量400万kW)の建設が計画されていたが、2016年11月、計画は白紙撤回された。

中国

設備容量:3,161.7万kW 発電電力量:1,612億kWh

運転中:35基(PWR33基、PHWR2基)

建設中:21基(PWR20基(うちEPR2基、AP1000 4基)、HTGR1基)

計画中:40基 原子力シェア:3.0%

電力不足解消や温暖化対策などの理由から、特に2004年以降から原子力開発を推進し、国産炉開発だけでなく第3世代炉の導入・国産化にも積極的。2014年6月に国務院により承認された「エネルギー発展戦略行動計画(2014-2020年)」では、2020年までに原子力発電の設備容量を5,800万kWとし、同時期の建設中の原子力発電所の設備容量を3,000万kW以上にする目標。

また国産炉の輸出を通じた国際協力、高速増殖炉(FBR)によるクローズドサイクルの実現、高温ガス炉や核融合などの研究開発にも積極的。

台湾

設備容量:492.7万kW

発電電力量:351億kWh

運転中:6基(PWR2基、BWR4基)

建設中:2基 計画中:0基

原子力シェア:16.3%

2008年3月の総統選挙に勝利した国民党の馬政権は2011年5月、段階的に脱原子力を目指し、

既存の原子炉の運転期間を延長しないことを発表。なお2012年に馬総統は再選し、脱原子力政策を維持。

第四(龍門)原子力発電所においてABWR2基が建設中。当初は2006~2007年に運開予定であ

ったが、度重なる建設遅延により大幅に遅延し、2015年6月には3年間の一時的な閉鎖状態に移行。2016年1月の総統選挙で、より脱原子力に積極的な民進党の蔡英文氏が当選。5月20日に就任式が実施された。

アジア地図情報パキスタン

設備容量:104万kW

発電電力量:43億kWh

運転中:4基(PWR3基、PHWR1基)建設中:3基 計画中:0基

原子力シェア:4.3%

政府は原子力発電設備容量を2030年までに880万kWに拡大する方針。2011年12月に4号機、2015年8月にカラチ2号機の建設が開始。

バングラデシュ

2010年12月に国会が同国初のルプ

ール原子力発電所建設プロジェクトを承認。2011年11月に露ROSATOMと

建設へ向けた政府間協定に署名。同発電所1号機の商業運転開始は2023

年、2号機の運開は2024年と見込まれている。

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1.1.6. 中東・アフリカ

トルコ

2009年に議会が承認した電力市場等に関する戦略では、2020年までに発電電力量の最低5%を原子力で賄う目

標が設定。建設プロジェクトでは、アキュ原子力発電所については露ROSATOMが受注(VVER-1200を4

基)、シノップ原子力発電所については三菱重工業やGDF-Suez社(現ENGIE社)ら日仏連合が、シノップサ

イトの地質調査や環境影響評価等を含むフィージビリティ調査を開始している。

サウジアラビア

2010年4月、原子力開発政策の立案・原子力安全規制

を行う機関として「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市(KA-CARE)」が設置された。2011年5月、KA-CAREの高官は、2030年までに16基の原子炉を建設する計画を明らかにした。2012年3月までに初の原

子力発電所の建設サイトを発表し、同年末までに入札手続きを開始する意向であった。入札に関する状況は確認できていないが、各国との協議が行われている模様である。

アラブ首長国連邦(UAE)

建設中:4基(PWR) 計画中:0基

2009年12月に韓国電力公社中心のコンソーシアムに4基のAPR1400の建設契約を発注。4基とも建設が開始されており、2017年~2020年まで毎年1基ずつ運開する予定。

ヨルダン

政府は、エネルギーの輸入依存を減らすため原子力の導入を進めている。建設者の選定においては、2013年11

月に露ROSATOMを建設プロジェクト

に係る優先交渉権者に決定。東Zarqa市から東に60kmのサイトで、100万kW級のプラント2基が2023年までに建設される予定。

中東・アフリカ地図情報

エジプト

2011年2月の大統領辞任や、政治情勢

の不安定を理由に原子力発電所建設に関する入札が延期されていたが、その後検討が再開され、2015年11月にはロシアとの間で、120万kW級の原子炉4基の建設・運転に関する政府間協定(IGA)が締結。

南アフリカ

設備容量:183万kW 発電電力量:110億kWh

運転中:2基(PWR) 建設中:0基

計画中:最大8基 原子力シェア:4.7%

政府は2011年3月に承認した統合資源計画(IRP)2010で、2030年までに160万kW級の原子炉6基(合計960万kW)を運開させかつ電源構成に占める原子力シェアを23%とする方針を決定した。現在IRPの改定作業が進められている。

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1.1.7. 世界の原子炉一覧

世界の原子炉一覧

国名 運 建

フランス 58 1

ドイツ 8 0

英国 15 0

スイス 5 0

ベルギー 7 0

フィンランド 4 1

スウェーデン 9 0

イタリア 0 0

スペイン 7 0

オランダ 1 0

西欧

国名 運 建

スロバキア 4 2

スロベニア 1 0

チェコ 6 0

ハンガリー 4 0

ポーランド 0 0

ブルガリア 2 0

ルーマニア 2 0

東欧

凡例

運:運転中

建:建設中

国名 運 建

ロシア 35 7

ウクライナ 15 0

リトアニア 0 0

カザフスタン 0 0

ベラルーシ 0 2

アルメニア 1 0

ロシア・CIS

国名 運 建

中国 35 21

韓国 25 3

台湾 6 2

ベトナム 0 0

インド 22 5

バングラデシュ 0 0

タイ 0 0

マレーシア 0 0

インドネシア 0 0

パキスタン 4 3

アジア

国名 運 建

米国 99 4

カナダ 19 0

北米

国名 運 建

トルコ 0 0

ヨルダン 0 0

UAE 0 4

サウジアラビア 0 0

中東

国名 運 建

ブラジル 2 1

アルゼンチン 3 1

メキシコ 2 0

南米

国名 運 建

エジプト 0 0

南アフリカ 2 0

アフリカ

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1.2. 各国のプロファイル

1.2.1. 北米・南米

(1) 米国

●基本情報

設備容量:9,953.5 万 kW 発電電力量:7,980 億 kWh

運転中:99 基(PWR:64, BWR:35)建設中:4 基(PWR)計画中:9 基 原子力シェア:19.5%

※1:計画中基数は、許認可審査が中断しているプロジェクトを除く許認可申請の基数

原子力発電電力量は世界一。トランプ政権の原子力政策は否定路線ではないが、まだ明らかではない。

いくつかの州では原子力を維持するための施策の導入を決定している。

原子力開発は事業者が電源の経済性に基づいて決定しており、2009 年までに 18 件の一括建設・運転

許認可(COL)申請が提出。約 30 年ぶりの新規原子炉建設許認可として、2012 年 2 月にヴォーグル 3,

4 号機、同 3 月にサマー2、3 号機の COL が発給。またワッツバー2 号機が 2016 年 10 月に営業運転を

開始。

但しシェールガス革命による極めて低いガス価格の継続、電力需要の伸びの鈍化が、原子炉の新設や

運転延長の判断に影響を与えており、2013 年~2014 年にかけて 5 基の原子炉が恒久運転停止。うち

2 基は経済性を理由に閉鎖。2015 年 10 月と 11 月に更に 2 基の早期閉鎖を事業者が発表。2016 年 6

月には、4 基の早期閉鎖に向けた手続きを開始することを事業者が発表した(いずれも州の支援策に

より後に撤回)。さらに、2016 年 12 月、1 基の早期閉鎖を事業者が発表した。

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面積 962.8 万 k ㎡ 人口 3 億 875 万人

公用語 英語(法律上の定めはない)

通貨 1 米ドル=112.78 円(2017 年 1 月 24 日)

政治体制 大統領制、連邦制

議会 二院制:上院(100 議席/任期 6 年)、下院(435 議席/任期 2 年)

主要政党:民主党、共和党

政府 大統領 ドナルド・トランプ(共和党)

GDP 17 兆 9,470 億ドル(2015 年名目)

3.5%(2016 年第 3 四半期確報値)

経済の特徴及び概況

景気は回復が続くと見込まれるが、トランプ新政権の政策の動向及び影響に留意する

必要がある。

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):543,788

石炭:8,370,813 天然ガス:10 兆 4,410 億

(立方メートル) ウラン:207,400(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

22 億 1,618 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

90.8%(原子力含)、81.0%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):9.8%

19.5%

35.3%28.2%

9.8%

1.0% 6.3% 石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

22億1,618万

石油換算トン

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●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:787,407 水力:102,162 原子力:98,569 その他:85,300

電力供給体制の概

私営、連邦営、地方公営など、3,000 以上のさまざまな電気事業者が

存在。電気事業規制は原則として州が権限を有し、一部の州では総

括原価方式が維持されており、料金規制を受ける規制事業者と、州

法により規制緩和され、マーチャントプラントとして相対取引や卸

市場で電力を販売する多数の事業者が併存。

電源種別発電電力量

米国では歴史的に、他電源より燃料費の安い

石炭が最大の電源で、発電電力量の約 4 割を

占める。またシェールガス革命によりガス価

格が下落しており、原子力と共に、石炭に次

ぐ主要電源として、天然ガスが電力量の各 2

割前後を占めている。

電力消費量

(百万 kWh)

3,787,791

発電電力量

(百万 kWh)

4,319,156

輸入電力量

(百万 kWh)

53,209

電力需要の推移と見通し

エネルギー省エネルギー情報局(DOE/EIA)によると、電力需要の伸び率は 1950 年代

以降、経済構造の変化や効率改善等により徐々に鈍化している。EIA の 2015 年エネルギ

ー見通しにおけるレファレンスケースでは、2011 年から 2040 年までの電力使用量(自家

発電含む)は年率 0.8%で緩やかに増加し、2040 年には 2011 年比 25%増の 4 兆 7、970

億 kWh となると予測されている。

●エネルギー政策・計画

2009~2016 年の間大統領の座にあったた民主党のオバマ前大統領は、クリーンエネルギ

ー分野の開発により雇用を促進するとの方針から、その方策の一つとして原子力発電プラ

ントの新設が必要であると明言してきた。また、気候変動対策に注力する姿勢を示し、2015

年 11 月に、ホワイトハウスで国内有識者による「原子力サミット」を開催、CO2 排出削減

のための原子力の重要性を再認識し、原子力の維持拡大に向けた一連の取り組みを発表し

て関係者の注目を集めた。さらに 2016 年 6 月には、北米 3 ヶ国(米国、カナダ、メキシコ)

の首脳会談において、気候変動等に関するパートナーシップアクションプランを公表した。

また、エネルギー政策文書に位置づけられるレポートとして、エネルギー省(DOE)が 2017

年 1 月に発表した「4 年毎のエネルギーレビュー(QER)」の第 2 回報告書を発表した。こ

の報告書は、「米国の電力システムの変革(Transforming the Nation's Electricity System)」

1,712,577

39,877

1,161,333

830,584

261,473

313,312

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

4,319,156GWh (単位は GWh)

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18

と題され、発電、送配電から、需要構造に至るまで、電力システムに関する詳細な分析が

実施され、経済競争力の強化、環境保護、国家安全保障のためのリスクと機会を明確化す

ることを目的とした 76 の提言がなされた。

オバマ前政権は毎年の予算要求において、再エネや送電網強化の関連予算の大幅増額な

どを求めてきたが、2014 会計年度(FY14:2013 年 10 月~2014 年 9 月)、FY15、及び FY16

の一括歳出法では再エネ予算は小幅な増額にとどまった。原子力関連研究開発(R&D)予

算については、前年に比べ増額された FY14 の水準が、FY15 では微増、FY16 で約 8%増

額され、超党的に支持されている小型モジュール炉(SMR)の R&D にも引き続き予算が

充てられていた。2016 年 2 月に発表された、オバマ政権では最後となる FY17 予算要求で

は、気候変動対策のための R&D 費の増額方針などが示され、原子力関連 R&D にも FY16

要求・歳出予算よりも増額要求がなされていた。

気候変動対策として、オバマ政権時の環境保護庁(EPA)が、既存の発電施設を含む CO2

排出規制「クリーン電力計画(CPP)」の最終規則を 2015 年 10 月に公示し、12 月に発効

となったものの、国内 24 州が EPA の規制権限逸脱を控訴裁判所に申し立てた。2016 年 2

月には最高裁判所判決で、排出削減目標達成には発電設備の早期閉鎖や再生可能エネルギ

ーの開発等が必要であるが、CPP が各州に与える影響は大きいとの理由から原告の訴えが

認められ、執行停止状態のまま大統領選を経て政権交代に至っている。トランプ政権下で

EPA 長官に就任したスコット・プルイット元オクラホマ州司法長官は地球温暖化に懐疑的

な人物で、CPP の先行きは不透明感を増している。

2017 年 1 月に新大統領に就任したトランプ氏は、具体的なエネルギー、原子力政策を示

していない。ただし、原子力利用を否定する発言はしていない。3 月 16 日に公表された予

算方針では、DOE 予算を 5.6%削減し、連邦債務保証プログラムを取りやめる意向を示し

ている。一方で、ユッカマウンテンの許認可活動の再開、中間貯蔵プログラムを開始する

ための予算を要求している。トランプ大統領は就任から間もなく、原子力規制委員会(NRC)

委員長にクリスティン・L・スビニキ委員を任命した。なお、S・バーンズ前 NRC 委員長

は任期が満了する 2019 年 6 月まで NRC 委員を務める予定である。

●原子力政策・計画

原子力発電

ブッシュ前政権時代に制定された 2005 年エネルギー政策法には、先進的な原子炉プロジ

ェクトに対する連邦債務保証(保証枠 185 億ドル)、生産税控除、許認可手続の遅延に係る

リスク保険など、原子炉新設に係る促進策が含まれている。

債務保証プログラムでは、2010 年にヴォーグル 3、4 号機建設プロジェクトに出資する

ジョージア・パワー社(GPC)、オグレソープ・パワー社及びジョージア州営電力局に合計

83 億ドルの条件付きコミットメントが発行され、2015 年 6 月までに全額分の債務保証が発

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行された。なお事業者がエネルギー省(DOE)に支払う信用保証料の交渉が長引いたが、

GPC 及びオグレソープ・パワー社の信用保証料はゼロであった。

DOE は債務保証の申請を再度求める募集の受付を 2014 年 12 月に開始し、更に、後述す

る 2015 年 12 月の原子力支援策の発表時に、保証範囲を広げる形に募集要綱を微修正する

意向を明らかにしている。残りの原子力発電施設向けの保証枠(約 100 億ドル)の対象と

しては、新型の原子炉に加え、SMR、既設炉の増強及び改良が対象とされ、またフロント

エンド施設向けに 20 億ドルの保証枠への申請も再募集されているが、2017 年 2 月末現在

でも条件付きコミットメントの発行など大きな進展は伝えられていない。

またオバマ前政権は、FY12 から SMR の許認可支援プログラムとして、4 億 5,200 万ド

ルの資金提供枠を DOE に認めており、開発活動を強力に後押ししている。DOE は 2013

年 12 月までに、資金提供先として、BXT テクノロジーズ(BWXT)社(旧バブコック&

ウィルコックス(B&W)社)らの合弁会社ジェネレーション mPower(GmP)社のモジュ

ール、及びフルアー社子会社のニュースケール・パワー社の NuScale モジュールを選出し、

資金提供を開始している。このうち先行する NuScale モジュール建設については、ユタ州

公営電力システムズがアイダホ国立研究所(INL)等を候補サイトとしており、DOE は同

社との間で INL 敷地使用許可(INL Site Use Permit)を 2016 年 2 月に締結している。同

社は 2016 年 12 月、NRC へ設計認証(DC)申請を提出し、3 年 4 ヶ月以内に認証プロセ

スを終える予定である。

なお DOE は非軽水炉に関しては、先進炉コンセプトの研究開発・実証(RD&D)プログ

ラムとして、2035 年までに実証可能な開発プロジェクトを促進するための資金提供公募

(FOA)を 2015 年 7 月末に発表した。また DOE は 2016 年 5 月付で「先進炉の開発・実

用化に向けたビジョン・戦略」のドラフト版を公開している。同ドラフト版には、2030 年

までに、少なくとも 2 種類の先進炉のコンセプトを技術的に成熟させ、安全性と経済的便

益を実証し、建設に向けて NRC による安全審査を完了させることが目標として掲げられて

いる。

こうした原子力産業支援策の活用を促すため DOE は、ワンストップ窓口(略称:GAIN)

を設けることを 2015 年 11 月に発表し、関連して、GAIN 利用のためのリソースや機器に

関する目録をまとめたデータベースの開発計画に加え、2016 年 6 月には GAIN を通じたバ

ウチャー提供先として中小企業 8 社を選定している。非軽水炉に関して、テレストリアル・

エナジー社は、同プログラムより 20 万ドルの資金を獲得し、2017 年 1 月に開発中の一体

型溶融塩炉(IMSR)の許認可申請計画を NRC へ通知している。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

<転換>

ハネウェル社が所有・操業する、イリノイ州メトロポリスのプラントが操業中である。

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<濃縮>

米国の濃縮プラントは 2015 年 12 月現在、ルイジアナ・エナジー・サービシズ社(LES)

のニューメキシコ州で、英ウレンコ社の技術を用いたガス遠心分離濃縮プラント

(URENCO USA)のみが商業運転している。グローバル・レーザー・エンリッチメント

(GLE)社(ゼネラル・エレクトリック社/日立/カメコ社の合弁会社)、仏 AREVA 社の

濃縮プラントの建設計画もあるが、現在は停滞している。一方、1990 年代に連邦政府の濃

縮事業を引き継いだ旧米国濃縮会社(USEC)は、唯一稼働していたガス拡散濃縮プラント

を 2013 年 5 月に停止しており、濃縮役務供給力はゼロの状態である。

USEC は、オハイオ州パイクトンにおいて、ガス遠心分離法に基づく商業濃縮プラント

(ACP)の研究開発に取り組んできたが、商業化の試験段階での事故、資金調達の問題等

が発生していた。同社は財政再建のために 2013 年 12 月に再建計画を発表し、破産裁判所

の承認を得て、2014 年 9 月から「セントラス・エナジー社」として事業を再開している。

DOE は、オークリッジ国立研究所(ORNL)の委託運営者を通じて、セントラス・エナ

ジー社(当時 USEC)と ACP 技術の RD&D 継続を目的とした契約を 2014 年 5 月に締結

し、セントラス・エナジー社はサブコントラクターとしてオークリッジでの開発活動及び

パイクトンでの ACP のカスケード運転を継続している。ただし 2015 年 10 月に同契約が更

新されたが、契約額は過去 1 年と比べて 60%減で R&D ではカスケード運転等は含まれて

いない。

2016 年 11 月、DOE は GLE 社に対し今後 40 年以上にわたって劣化ウランを売り渡すこ

とで合意している。この合意により、GLE 社はウラン濃縮の為、DOE のパデューカサイト

近隣にレーザー濃縮プラントを 2020 年代前半に建設・運転開始する予定である。ただし、

GLE 社の親会社である GE 日立ニュークリア・エナジー(GEH)は事業再編を協議してお

り、GHE は保有する GLE 社株の売却を検討している。

<燃料加工>

PWR 用燃料は主にウェスティングハウス(WH)社と AREVA NP 社が、BWR 用燃料

はグローバル・ニュークリア・フューエル・アメリカズ社と AREVA NP 社が製造している。

<再処理・プルサーマル>

1977 年にカーター民主党政権(当時)が核不拡散の観点から国内再処理の無期延期を発

表し、次のレーガン政権(共和党)で再処理禁止は解除されたが、以後、再処理事業に参

入する民間企業は現れていない。

オバマ民主党政権は、再処理を含むクローズドサイクル路線への支持は表明していたが、

燃料サイクル R&D の重点を短期的な技術開発・普及から長期的な科学基礎研究へと移す方

針を示していた。

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21

また、先進リサイクル技術の開発・実証を目指した包括的プログラムとして、ブッシュ

政権時代に開始された国際原子力パートナーシップ(GNEP)は 2009 年 6 月に中止された

が、同パートナーシップを正式に引き継ぐ体制として、GNEP と同じ運営体制・参加国で

2010 年 6 月から「国際原子力協力フレームワーク(IFNEC)」が開始されている。

なお、民間事業としてのプルサーマルも実施されていない。

放射性廃棄物管理・処分

<高レベル放射性廃棄物(HLW)>

米国では DOE が、1982 年放射性廃棄物政策法(NWPA)に基づき、商業炉から発生す

る使用済燃料の処分責任を負っており、ネバダ州のユッカマウンテン高レベル放射性廃棄

物(HLW)処分場において深地層処分する計画を進めてきた。ブッシュ政権期の DOE は、

ユッカマウンテン処分場の許認可申請書を NRC へ提出した。

しかし、オバマ政権は発足当初から同処分場計画の中止方針を表明しており、FY11 以降、

ユッカマウンテン関連予算の要求額はゼロとしていた。オバマ政権は、その後に設置した、

放射性廃棄物管理の代替方策を検討するための特別委員会(ブルーリボン委員会:BRC)

の勧告を踏まえて、放射性廃棄物管理・処分戦略を 2013 年 1 月に策定した。同戦略に従い、

2015 年 12 月に DOE は、同意に基づくサイト選定プロセス設計のための取り組みを開始し

た。2015 年 12 月からのパブリックコメントの募集とともに、2016 年 1 月にはワシントン

D.C.でのキックオフミーティング、3 月から 7 月に掛けては全米 8 カ所でのパブリックミー

ティングも開催された。DOE はパブリックミーティングで提出されたすべてのコメントを

公開するとともに、サマリ報告書を公表し、9 月にサマリミーティングを開催した。

一方で、オバマ政権による計画中止の方針を受け、予算制約を理由に NRC は、実質的に

許認可審査活動を停止していたが、2013 年 8 月の連邦控訴裁判決で手続の再開が NRC に

命じられ、NRC は、残予算により審査を再開し、安全評価報告書(SER)全 5 分冊の公表

(2015 年 1 月)、意見募集のために環境影響評価書(EIS)補足文書案の公示(同 8 月)等

を行い、2016 年 5 月には EIS 補足の最終報告書を公表した。なお、2015 年 12 月に成立し

た FY16 一括歳出予算法、及び FY17 予算要求ではユッカマウンテン開発のための追加予算

は追加/要求されていない。

また 2015 年初めから注目されているのが、DOE を顧客と想定した、民間による中間貯

蔵に関する動きで、米ウェースト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社は 4 月、テ

キサス州での使用済燃料の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請書を NRC に提出し

ている。

以上のユッカマウンテン処分場に代わる代替サイトの選定、処分場の建設許可発給前の

中間貯蔵の実施には、そのための法的権限を DOE に与える必要があるとされている。上院

では超党派による放射性廃棄物管理法案でパイロット施設による中間貯蔵等も検討された

が、ユッカマウンテン再開を強く望む下院ではユッカマウンテン計画中止に対する批判の

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声も根強く、こう着状態が続いている。

なお使用済燃料は現在、原子力発電所サイト内でプール貯蔵、または乾式貯蔵キャスク

などで貯蔵されているが、サイト外中間貯蔵施設でプール貯蔵されている例(イリノイ州

モリス中間貯蔵施設)もある。

<低レベル放射性廃棄物(LLW)>

民間の低レベル放射性廃棄物(LLW)処分場はユタ州クライブ、ワシントン州リッチラ

ンド、サウスカロライナ州バーンウェル、テキサス州アンドリュースの 4 カ所で操業中で

ある。

安全規制

福島第一原子力発電所の事故を受けて設置された、短期タスクフォース(NTTF)の提言

を踏まえ NRC は、3 段階の優先順位を設定し、最優先する 8 項目の規制対応を中心に進め

ている。NRC は 2012 年 3 月に、3 項目に対応する命令、及び 3 項目に対応する情報要求

(RFI)を発行した。

影響緩和戦略に関する命令については、原子力協会(NEI)の指針がエンドースされ、可

搬型の機器やサイト外からの支援等を含めた多様で柔軟な対応戦略(FLEX)が、許容可能

な対応アプローチとして認められた。各発電所では、緩和戦略命令と共に、使用済燃料プ

ールの計装強化に係る命令への対応も合わせて検討され、対応する総合計画を策定してい

る。両命令への対応は遅くとも2016年末までであるが、一部の発電所では総合計画に従い、

所内の工事や手順書の策定・訓練を完了させており、NRC により命令履行が確認され始め

ている。

RFI に対しては、洪水・地震ウォークダウン、及び FLEX 戦略の実施可能性を図るため

の緊急時対応手順・要員に関する評価結果が事業者により提出され、対応はほぼ完了に近

づいている。残る RFI 要求事項として、2015 年から 2016 年にかけて地震・洪水リスクに

関する暫定評価が事業者から提出されており、スクリーニング結果に応じて各ハザードに

関する確率論的リスク評価(PRA)も実施される予定である。

また規則については、上記命令と RFI を規則要件化する形で影響緩和戦略に係る規則、

及び緊急時対応手順・要員の統合・訓練に関する規則が検討されている。制定プロセス(コ

メント募集やミーティング)は一体的に行われており、2015 年 11 月にコメント募集のた

めに規則案が公告され、2016年 12月にコメントを踏まえた最終の規則草案が公示された。

また NRC は、MarkⅠ/Ⅱ型 BWR 格納容器のベント系の強化を求める命令について、

要件を変更し、過酷事故条件においても操作可能なベント系設置を求める新命令

EA-13-109 を 2013 年 6 月に発行しており、2019 年 6 月までの命令履行を求めている。な

お同ベント系について NRC では、格納容器フィルターの追加要件の要否などが規則策定プ

ロセスを通じて検討されたが、著しい安全性向上をもたらさない等とする解析結果に基づ

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き 2015 年 8 月に、フィルターは要件化されず、また新規則の策定も行われないことが正式

に決定された。

最優先項目以外の第 2・第 3 優先度の NTTF 提言については、スタッフの評価結果と評

価活動の終了計画が委員会に報告され、2016 年 2 月に同計画が承認されており、NRC が

主催するブリーフィング等にて教訓反映活動が報告されており、その活動は収束に向かっ

ている。

●原子力企業動向

国内動向

<既設炉>

NRC の発給する運転認可期間は 40 年間であるが、20 年間の運転認可更新も認められて

おり、70 基以上の原子炉の運転認可がすでに更新済である。また、未だ実現例はないが、

更に 20 年間、すなわち 60 年超の運転延長も排除はされておらず、ドミニオン社のサリー1・

2 号機、エクセロン社のピーチボトム 2・3 号機など、申請を検討する例も出てきている。

なお 2 度目の運転認可更新に関して NRC は、関連する規制指針等の改定は必要に応じて進

めるが、新たな規則策定は不要であると決定している。また産業界側も NEI が中心となり、

最初のプラントで運転期間が 60 年に達する 2029 年に向けて、60 年超の運転認可更新に向

けた産業界や政府機関の役割を整理したロードマップを策定するなどしている。

長らく米国で運転中の原子炉は 104 基であったが、2013・2014 年に、5 基の発電用原子

炉(クリスタルリバー3 号機、キウォーニ、サンオノフレ 2・3 号機、バーモントヤンキー)

が恒久停止され、2015 年 10 月に運転認可が発給されたが商業運転の開始前にあるワッツ

バー2 号機を除くと、運転中の原子炉は 99 基である。クリスタルリバーとサンオノフレに

ついては、それぞれ技術的なトラブルを受けての閉鎖であったが、キウォーニ及びバーモ

ントヤンキーは経済性の低下が理由である。なおサンオノフレの事業者は、問題となった

蒸気発生器(SG)の製造者である三菱重工業(MHI)を相手取り、損害賠償請求を国際商

業会議所(ICC)に提出していたが、ICC は契約における責任上限を有効とする MHI の主

張を支持する決定を出した。

競争市場下にある原子力プラントの経済性低下の要因としては、電力価格や天然ガス価

格の低迷に加え、セキュリティや安全性の強化に関わる規制の累積的影響も要因とされ、

特に単機プラントには重荷となっている。エンタジー社は、2015 年 10 月・11 月に、共に

ベント強化が求められているMark I型格納容器BWRで単機ユニットであるピルグリム及

びフィッツパトリックを早期閉鎖すると発表した 2016 年 6 月には、エクセロン社がクリン

トン(BWR、1 基)、クォドシティーズ(BWR、2 基)の早期閉鎖に向けた手続きを開始す

ると発表し、オマハ公営電力もフォートカルホーン(PWR、1 基)の閉鎖を決定した。2016

年 12 月には、エンタジー社のパリセード(PWR、1 基)の早期閉鎖を発表するなど、既設

プラントの早期閉鎖が相次いでいる。

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こうした事態を受け、ニューヨーク州は原子力を含んだクリーンエネルギー基準(CES)

を検討し、2016 年 8 月に州公益事業委員会(PSC)がこれを承認した。その一環として、

州北部の 3 カ所の原子力発電所(ナインマイルポイント、ギネー、フィッツパトリック)

に対してゼロ排出クレジット(ZEC)の対象として適格認定されており、フィッツパトリ

ックはエクセロン社への売却が決まり、早期閉鎖は回避された。他の一部の州でも厳しい

事業環境から撤退が相次ぐ原子力発電所を維持するための検討も行われている。イリノイ

州では、2 カ所の原子力発電所(クリントン、クォドシーズ)に対して、ZEC の対象とす

る法案が 2016 年 12 月に可決し、これら 3 基の早期閉鎖も回避された。

またイリノイ州の一部も含む PJM では、将来の信頼度確保のための容量市場2改革が進

行中で、従来のベース容量に代わり、年間を通じてより厳しい状況での給電指令への対応

を義務付ける「容量パフォーマンス(CP)」が導入された。CP 導入後初のオークションが

2015 年 8 月~9 月に行われ、エクセロン社は落札結果を踏まえてクォドシティーズ、バイ

ロンの運転継続に係る判断を 1 年間延期することを発表した。しかしながらエクセロン社

は、所有するクォドシティーズの落札に 2016 年 5 月に失敗し、バイロン原子力発電所の一

部も落札できなかったことを発表し、同年 6 月にはクォドシティーズ(BWR、1、2 号機)

の早期閉鎖に向けた手続きを開始すると発表していたが、前述のとおりイリノイ州のクリ

ーンエネルギー法案の可決を受け、運転継続が図られることになった。

また、市場環境の悪化を背景として NEI は 2015 年 12 月に、原子力事業者、原子力発電

運転協会(INPO)、電力研究所(EPRI)と共同で、既存の原子力プラントの安全性を維持

しつつ効率性と経済性を向上させるために、原子力産業界が複数年で取り組む新たなイニ

シアチブ“Delivering the Nuclear Promise”を新たに立ち上げた。活動の 3 本柱として、

安全な運転の維持、原子力の価値の認識、効率性向上が掲げられており、2016 年 12 月に

は、イニシアチブ立ち上げから業界全体で 6 億ドル以上のコスト削減を達成したことを発

表した。

<新設計画>

現在米国ではヴォーグル 3、4 号機、V.C.サマー2、3 号機の 4 基の原子炉が建設中で、こ

れらは 1989 年に制定された COL 規則(10CFR Part52)に基づく COL が発給されたプロ

ジェクトである。

各機の建設スケジュールは計画当初よりも遅れ、遅延に関連した追加費用については、

事業者側と WH 社とシカゴ・ブリッジ&アイアン(CB&I)からなるコンソーシアム側が争

ってきたが、WH 社と事業者らは 2015 年 11 月に、設計・調達・建設(EPC)契約を変更

するなどして双方の訴訟を取り下げることで合意した。WH 社は同合意に基づき 2016 年 1

月に、建設活動を行ってきた CB&I 社の子会社等を買収(WH 社が新たに設立した

2 米国の電力市場では、RTO/ISO 毎に違いはあるが、卸電力市場、容量市場、アンシラリ

ー市場などが導入されている。

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WECTEC に業務を移管)し、新しい EPC 契約の単独の主契約者となった。プロジェクト

は WH 社の下、WECTEC 及び新たに下請となったフルアー社により進められている。新

EPC 契約により、ヴォーグル 3 号機が 2019 年 6 月に、V.C.サマー2 号機が 2019 年 8 月の

完成を予定しており、2 基目であるヴォーグル 4 号機および V.C.サマー3 号機は、各 1 年後

(2020 年 6 月および 2020 年 8 月)に完成する予定であった。しかし 2017 年 2 月、V,C サ

マー2、3 号機は運転開始予定時期を 2020 年 4 月、12 月にそれぞれ変更している。

なお 2015 年 5 月にフェルミ 3 号機(ESBWR)、2016 年 2 月にサウステキサスプロジェ

クト(STP)3、4 号機(ABWR2 基)の COL が発給された。2016 年 10 月には NRC がレ

ビー郡(AP1000 2 基)の COL が発給を承認したが、発給には福島第一原子力発電所事故

の要件に対する対応および緊急時対応計画の提出が求められている。この他に 2016 年 12

月に NRC がウィリアム・ステーツ・リーサイト(AP10002 基)の COL を発給した。フェ

ルミ3号機について事業者は建設活動を開始するかどうか最終決定をしておらず、一方STP

3、4 号機は建設開始に必要な出資者が見つかっていない。

その他 NRC は 7 件の COL 申請を抱えているが、5 件は事業者の要請などで審査が中断

されており、審査中の COL 申請は 2 件である。直近では、外国資本による許認可保有者の

支配禁止に係る NRC 規則への抵触が決定されて事実上 COL 発給が不可能な状態にあった

フランス電力(EDF)のカルバートクリフス 3 号機(CC3)の申請が 2015 年 7 月に取り

下げられた。なお、NRC は 2016 年 4 月、原子炉等の外国支配を禁ずる NRC 規則に対す

る審査指針となる標準審査計画(SRP)の改訂案を発表し、意見募集を開始している。

<ベンダー動向>

ヴォーグル、V.C.サマーで建設されている AP1000 等は NRC の設計認証(DC)を取得

しており、その他に、ゼネラル・エレクトリック(GE)社の ESBWR、STP の COL 申請

で採用されている ABWR 更新版(新規制に対応)が DC を取得済みである。それ以外に、

東芝と GE 日立ニュークリア・エナジーの各 ABWR(同上)、三菱重工業の US-APWR、

韓国の APR1400 が NRC により審査中である。ただし、三菱重工業の US-APWR に関して

は、2013 年 11 月に DC 取得活動の減速を発表し、事実上申請活動は中断している状況で

ある。なお、審査が長期化していた U.S.EPR については、仏 AREVA 社の判断で、2015

年 2 月に申請活動の中断が正式に決定された。

また、DOE の SMR 許認可支援プログラムの資金提供先として選出された SMR プロジ

ェクトのうち、ニュースケール・パワー社は、先行して選出されていた mPower SMR を抜

き、2016 年には SMR 第一号として NuScale モジュールの DC 申請、2017 年 3 月 NRC が

審査を開始した。同社と提携するユタ州公営電力システムズ(UAMPS)らは、2023 年に

は最初のモジュールの運転を開始させたい考えで、有力な候補地であったアイダホ国立研

究所(INL)の敷地内での立地に向けて、UAMPS と DOE が敷地使用許可を 2016 年 2 月

に締結した。なおニュースケール・パワー社は、2016 年 7 月に、英シェフィールド・フォ

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ージマスターズ社と英国での SMR 導入に向けて協力していくことを発表している。

一方、B&W 社(当時、現 BWXT 社)とベクテル社の合弁会社が進めてきた mPower 開

発事業では、事業を進めるにあたり更に資金提供者を募っていたが不調に終わり、主導し

ていた B&W社が 2014 年 4 月に支出削減の方針を発表した。これに伴い DOE からの資金

提供も停止されていたが、その後 2016 年 3 月にベクテル社は、12 カ月の期限付きで、同

社主導の資金提供者募集を行うことを発表した。ベクテル社と新生 BWXT 社の間で締結さ

れた枠組契約によると、資金提供者の候補は DOE、SMR 建設に関心を示すテネシー渓谷

開発公社(TVA)、英国政府等とされ、ベクテル社が資金獲得の可能性有りと判断する場合

には同社が事業再編・再開において主導権を握るが、事業を再開しないと判断する場合、

合弁は解消される。なお、TVA はのテネシー州クリンチリバーサイトでの小型モジュール

炉(SMR)建設に関する早期サイト認可(ESP)申請は、2017 年 1 月に NRC が受理して

いる。

国外動向

米国の原子炉ベンダーとして海外での原子炉受注に向けた活動を行う企業としては、東

芝子会社の WH 社、日立と提携関係を持つ GE 等がある。

WH 社は、中国で 4 基の AP1000 を受注(着工済)している。また AP1000 は、ブルガ

リアのコズロドイ 7 号機の建設プロジェクトでも選出されており、建設に向けて国営事業

者らと合意に達しており、同合意への次期政権の承認が待たれている。同社は、他にもチ

ェコのテメリン原子炉増設プロジェクト、ポーランド、インド、トルコなどで受注活動を

展開しており、また、英国とカナダでは AP1000 の標準設計について規制当局のレビュー

を受けている。

一方 GE はインド、ポーランド、フィンランド等で受注に向けて活動している。また 2014

年 6月に、仏アルストム社は 2014年 6月、エネルギー分野でGEと提携することを決定し、

両社は GE 提案に基づき、原子力タービン及びフランス国内の蒸気タービン部門の合弁会

社(50%ずつ出資)の設立などを発表、その後欧州委員会により 2015 年 9 月に条件付きで

承認された。

WH 社及び GE がとも進出を目指すインドでは、ベンダーにまで原子力事故の際の求償

が及ぶ可能性を含む、独特の原子力損害賠償制度等の懸念事項があり、オバマ前大統領と

モディ首相は 2015年 1月にこれを含む諸課題への取り組みについて合意したことを発表し

た。原子力損害賠償については、ベンダー等、事業者以外の者の損害賠償リスクを補償す

るために、インドの保険公社や政府の出資で〝インド原子力保険プール”を新設すること

がインド側から提案された。モディ首相は 2016 年 6 月に訪米し、オバマ大統領との会談後

の共同声明において、WH 社によってインドでの 6 基の AP1000 新設に向けた準備作業が

開始されたことに対し、歓迎の意を表明している。声明などによると、WH 社とインド原

子力発電公社(NPCIL)は、設計作業に即座に着手し、2017 年 6 月までに契約面での合意

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締結を目指す。完工予定は 2030 年とされている。

●出典

エネルギー省(DOE)

ホワイトハウス

原子力規制委員会(NRC)

連邦議会

テネシー計画開発公社(TVA)

イリノイ州議会

エクセロン社

サザン社サザン・カリフォルニア・エディソン(SCE)社

ウェスティングハウス(WH)社

ゼネラル・エレクトリック社(GE)

サウスカロライナ・ガス&エレクトリック(SCE)社

エンタジー社

ウェースト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社

ロチェスター・ガス&エレクトリック社

米国濃縮会社(USEC)

オマハ公営電力(OPPD)

各種報道情報

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(2) カナダ

●基本情報

面積 998.5 万 k ㎡ 人口 約 3,616 万人

公用語 英語、仏語

通貨 1 カナダドル=83 円(2016 年 4 月中適用、日本銀行)

政治体制 立憲君主制(イギリス型議院内閣制と連邦主義に立脚)

議会 二院制。上院(105 議席)、下院(338 議席)、主要政党:自由党、保守党、

新民主党

政府 首相 ジャスティン・トルドー(自由党)

GDP 1 兆 5,505 億米ドル(2015 年名目)

成長率 1.2%(2015 年実質)

経済の特徴及び概況

経済・金融危機の影響により 2009 年はマイナス成長であった。しかし、国内金融市場

の安定等によって回復には時間がかからず、2010 年以降は再びプラス成長となった。

2015 年 11 月に発足したトルドー自由党政権の方針では、2016 年度から 3 年間は財政

赤字を許容するものの、インフラなどの公共投資を増強するとされている。

設備容量:1,355.3 万 kW

発電電力量:956 億 kWh

運転中:19 基(PHWR)

建設中:0 基 計画中:2 基

原子力シェア:16.6%

豊富なウラン資源を背景に、

連邦政府所有の公企業であ

る カ ナ ダ 原 子 力 公 社

(AECL)が中心となって

CANDU 炉と呼ばれる独自

の原子炉を設計・開発。資源

の乏しいオンタリオ州で

1970~80年代にかけて積極

的に導入。

オンタリオ州をはじめ、ニュ

ーブランズウィック州、アル

バータ州など既存原子力発

電所のある地域で新規建設

が検討されたが、経済情勢や

電力需要の変化等を受けて

新設計画の検討は現在は進

められていない。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):29,947 石

炭: 315,786 天然ガス:1 兆 9,870 億(立

方メートル) ウラン:357,500(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

2 億 7,988 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

167.9%(原子力含)、157.9%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):10.0%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:36,217 水力:75,537 原子力:14,033 その他:11,557

電力供給体制の概

州によって異なるが多くが発送配電一貫型で、州営、公営の電気事

業者が電力供給する地域が多い。ただし、私営事業者も存在。なお

一部の州では電力市場が自由化されている。

電源種別発電電力量

水力発電資源量が非常に多く、電源種別発電

電力量でも全体の約 6 割を水力発電が占め

る。構成比は州によって大きく異なり、化石

燃料資源の少ないオンタリオ州などの東部

では原子力発電の割合が高い。

電力消費量

(百万 kWh)

489,244

発電電力量

(百万 kWh)

656,114

輸入電力量

(百万 kWh)

-45,616

電力需要の推移と見通し

国家エネルギー委員会(NEB)が 2016 年 1 月に公表したエネルギー予測によると、既存

の発電設備のリプレースとして、また増加する電力需要を満たすために新たに、設備容量

が増強されており、2014 年時点での発電設備容量は 1 億 4,000 万 kW に達したが、今後の

需要増と設備の閉鎖に対応するため、2040 年までには追加で 4,500 万 kW の設備が必要に

なるとされている。閉鎖される設備は主に石炭火力であるが、原子力及び石油もわずかに

減少すると予測されている。

6.9%

34.8%

31.7%

10.0%

11.8%

4.8%石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

2億7,988万

石油換算トン

64,7187,974

61,355

107,678382,463

31,926石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

656,114GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

州政府が州のエネルギー開発や規制等を管轄し、連邦政府はカナダ全体のエネルギー政

策を管轄している。各州政府は天然資源の有無や需要などそれぞれの状況に応じてエネル

ギー政策を実行しており、将来的なエネルギー需要の増加に対しては、クリーンエネルギ

ーの導入を検討している州もある。例えばオンタリオ州は、2013 年 12 月に発表した長期

エネルギー計画(LTEP)において 2025 年における石炭火力発電のシェアをゼロとし、再

生可能エネルギーのシェアを大幅に増加させる方針を示し、2014 年 4 月にはすでに石炭火

力発電の全廃を達成している。

●原子力政策・計画

原子力発電

カナダは豊富な水力資源を背景に、発電電力の約 6 割を水力発電により賄っているが、

水力・化石燃料資源の乏しいオンタリオ州では 18 基、またニューブランズウィック州ポイ

ントルプローで 1 基の原子炉(CANDU 炉)が稼働している。これらの州やサスカチュワ

ン州では新規原子炉建設も視野に入れられてはいるが、意思決定は将来の電力需要の見通

しによって判断することとなっており、いずれの州においても近い将来の建設へ向けた具

体的な検討段階までには至っていない。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

カナダには豊富なウラン資源があり、ウラン採鉱と製錬が仏 AREVA 社の子会社やカメ

コ社により国内の 5 カ所の鉱山で行われている。またウラン転換はカメコ社が、燃料加工

は同社と GE 日立ニュークリア・エナジー・カナダ社がそれぞれカナダ国内で実施してい

る。

また、カナダでは天然ウランを燃料とする CANDU 炉が主力であることもあり、濃縮・

再処理・プルサーマルは経済性の観点、政策的な判断などから実施されておらず、実施予

定もない。

放射性廃棄物管理・処分

カナダでは、現在運転中の商業炉は全て天然ウランを燃料とする CANDU 炉であり、燃

焼度が低く再処理に適さないため、原子炉から取り出された使用済燃料は廃棄物と見做さ

れる。使用済燃料は、発生した原子力発電所で貯蔵されており、プールで 6~10 年間冷却

した後、乾式の貯蔵施設へ移されている。

カナダの使用済燃料の管理方針は、「適応性のある段階的管理」と呼ばれている。同方針

によれば、最終的には使用済燃料の地層処分を目指すが、その達成までの 300 年またはそ

れ以上の期間を、30 年程度の集中管理の準備(第 1 期)、同じく 30 年程度の集中貯蔵と技

術実証(第 2 期)、およびそれ以降の期間の、長期閉じ込め、隔離、モニタリング(第 3 期)

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31

の 3 期に分けて、取り組みが進められる。

現在は第 1 期が進められており、その一環で 2010 年 5 月から、地層処分場のサイト選定

が進められている。国内の使用済燃料を地層処分場に輸送するために約 30 年を要すること

から、サイトが選定され実際に使用済燃料が定置されるのは、今後約 60~90 年後になると

されている。

カナダでは、操業している低・中レベル放射性廃棄物の処分場はなく、原子力発電所で

発生した低・中レベル放射性廃棄物はサイト内で保管されている。現在オンタリオ・パワ

ー・ジェネレーション(OPG)社は、同社が運転する原子力発電所から発生した低・中レ

ベル放射性廃棄物を処分する地層処分場(DGR)の建設計画を進めており、2011 年には建

設許認可申請を、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に提出した。建設許可について、2015

年内に環境大臣による判断が示されることとなっていたが、大臣が判断のために OPG社に

対して追加の情報を要求したため、判断は遅れることとなった。環境大臣がプロジェクト

は実施可能であると判断した場合には、建設許可について審査を行っている合同評価パネ

ルが、サイト準備と建設に関する許認可を発給できるようになる。なお、大臣の判断は 2017

年 8 月中頃になるとされている。

安全規制

CNSC は、福島第一原子力発電所事故を受け、国内の原子力安全及び安全規制について

の再評価を行ったタスクフォースの提言を踏まえ、事故の教訓を活かすための行動計画の

ドラフトを 2011 年 12 月に公表し、2012 年 2 月までに 2 回の公開協議による公衆からの意

見募集を経て、2013 年 8 月に統合行動計画を発行した。

この行動計画のドラフトの発行以降、CNSC は規制文書の改定に着手し、2012 年 7 月に

発電プラントの過酷事故管理プログラムや確率論的安全評価の改定案に対するパブリック

コメントを募集した。

行動計画では、この規制文書改定を含む 8 項目を短期間(12 カ月)で実施し、残る 5 項

目を中期(24 カ月)、長期(48 カ月)の時間枠で実施する方針が示されており、短期の行

動計画、及び中期の行動計画はそれぞれ 2012 年 12 月と 2013 年 12 月に完了している。

原子力損害賠償

カナダ外務貿易開発省は 2013 年 12 月、カナダが原子力損害の補完的補償に関する条約

(CSC)に署名したことを発表した。CSC の批准に向け、カナダ政府は 2014 年 1 月、1976

年原子力損害賠償法を改正し、原子力損害賠償措置額を現在の 7,500 万カナダドルから 10

億カナダドルに引き上げるエネルギー安全・セキュリティ法案を議会に提出し、同法は 2015

年 2 月に成立した。

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●原子力企業動向

国内動向

<既設炉の寿命延長>

カナダでは現在、低炭素のベースロード電源を維持する目的から、複数の原子力発電所

において寿命延長に向けた大規模改修が実施・計画されている。

オンタリオ州のブルース原子力発電所では、全 8 基の内 1~4 号機(1976~1978 年運開)

が、高経年化と経済性の低下を理由として 1990 年代に停止された。しかしその後、同州で

の新規発電設備の建設が電力需要の増加に追い付かないとの理由から、4 基全ての運転再開

が決定され、2004 年に 3、4 号機、2012 年には 1、2 号機の運転が再開された。

同発電所では現在、3~8 号機で各機 30~35 年の寿命延長を目的とした大規模改修工事

が計画されている。2013 年 12 月に発表されたオンタリオ州の LTEP では、2016 年に改修

工事を開始する見込みが示されていたが、2015 年 12 月に同州政府と運転者であるブルー

ス・パワー社が合意した改修計画では、工事開始時期が 2020 年に繰り延べられた。

この他、同州のダーリントン原子力発電所(1990~1993 年運開)については、OPG 社

が 30 年の寿命延長に向けて、2016 年 10 月から 2026 年にかけて全 4 基のユニットの大規

模改修工事に入った。改修により 2055 年までの運転継続が見込まれている。

さらにニューブランズウィック州でも、ポイントルプロー原子力発電所(1982 年運開)

が、寿命延長を主目的とした改修のために 2008 年に運転を停止したのち、2012 年 11 月に

運転を再開している。

<新増設計画>

オンタリオ州では、OPG 社のダーリントン原子力発電所における 5、6 号機の増設が計

画され、2009 年に建設に向けた競争入札も実施されたが、価格面の折り合いがつかないな

どの理由で手続きは中断された。OPG社はCNSCからサイト準備認可を2012年に取得し、

2013 年初めにはウェスティングハウス(WH)社と CANDU エナジー社がそれぞれ AP1000

と改良型 CANDU-6 型炉(EC6)の建設に関する計画・スケジュール・コスト見積を州政

府に提出し、州政府の新設に関する判断が待たれていた。しかし州政府は、2013 年 12 月

に発表された LTEP の中で、同増設計画を当面は進めない方針を示した。

ニューブランズウィック州におけるポイントルプローでの原子炉増設も同州の政権交代

により棚上げとなり、またアルバータ州での原子力発電所の新設計画も事業者が既設炉の

改修作業に集中するために中断されている。

<原子炉ベンダー>

カナダ政府は、原子力産業の国際競争力強化に向けて、カナダ原子力公社(AECL)の商

業炉部門を民間企業であるSNC-ラヴァリン社に売却した。2011年 10月に手続きが完了し、

同部門は SNC-ラヴァリン社の子会社の CANDU エナジー社となった。

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<第Ⅲ世代炉の開発>

AECL の商業炉部門を CANDU エナジー社として傘下に収めた SNC-ラヴァリン社は、

旧 AECL が主力製品としてきた ACR-1000 の開発を継続せず、建設費用を削減し、安全性

を向上させた EC6 の開発を進める方針である。なお EC6 は CNSC の事前設計審査の最終

段階を完了している。

国外動向

SNC-ラヴァリン社は、既に CANDU 炉を採用しているルーマニアのチェルナボーダやア

ルゼンチンのアトーチャにおける増設計画に参画する意欲を示している。SNC-ラヴァリン

社の子会社 CANDU エナジー社と中国広核集団公司(CGNPC)傘下の中広核工程有限公

司(CNPEC)は 2014 年 7 月、ルーマニアのチェルナボーダ原子力発電所 3、4 号機建設

に向けた独占的かつ拘束性を有する協力合意書に署名した。2014 年 10 月には、両機の建

設プロジェクトへの出資者として、中国広核集団(CGN)が選定されたが、炉型としては

チェルナボーダ 1、2 号機と同じ CANDU 炉が予定されている。

また CANDU エナジー社は中国や英国などの海外市場における新設の受注獲得も狙って

いる。

●出典

Cameco 社ウェブサイト

IAEA “Country Nuclear Fuel Cycle Report: IAEA Technical Reports Series

No.425, 2nd Edition, May 2005”.

IAEA “Status and Advances in MOX Fuel Technology: STI/DOC/010/415, May

2003”.

オンタリオ州政府

カナダ原子力公社

核燃料廃棄物管理機関(NWMO)ウェブサイト

SNC-ラヴァリン社ウェブサイト

ブルース・パワー社

オンタリオ・パワー・ジェネレーション社

カナダ原子力安全委員会(CNSC)

カナダ国家エネルギー委員会(NEB)

ルーマニア国営ニュークリアエレクトリカ社

中国広核集団

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(3) ブラジル

●基本情報

面積 851.2 万 k ㎡ 人口 約 2 億 784 万人

公用語 ポルトガル語

通貨 1 米ドル=約 3.4 レアル(2016 年 12 月 1 日現在)(1 レアル=約 33 円)

政治体制 連邦共和制(大統領制)

議会 二院制。上院(81 議席)、下院(513 議席)

政府 大統領 ミシェル・ミゲル・エリアス・テメル・ルリア(2016 年 8 月 31

日より)

GDP 1 兆 7,747 億米ドル(2015 年名目)

成長率 マイナス 3.8%(2015 年実質)

経済の特徴及び概況

同国は南米で最大の経済規模を有する。また、潤沢な外貨準備高(2016 年 9 月時点で

3,778 億ドル)を有する対外純債権国である。2016 年の経済成長率は、マイナス 3.3%

の見通し。

設備容量:190.1 万 kW 発電電力量:139 億 kWh

運転中:2 基(PWR2 基) 建設中:1 基(PWR1 基)計画中:0 基 原子力シェア:2.8%

1980 年代から建設が中断されていたアングラ原子力発電所 3 号機の建設が 2010 年 6 月に再開され、

2022 年に運開予定。政府は長期的には、4~8 基の原子炉建設も検討しているが、今後 2024 年までの

エネルギー拡大計画では新規建設はアングラ 3 号機に限定する方針。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):13,624 石

炭:30,444 天然ガス:4,240 億(立方メー

トル) ウラン:155,100(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

3 億 324万石油換算トン

・エネルギー自給率%

88.1%(原子力含)、86.8%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):1.3%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:37,827 水力:89,193 原子力:1,990 その他:4,903

電力供給体制の概

発送配電は州によって異なっている。サンパウロ州やリオデジャネ

イロ州等の南東部では民間事業者が発電、配電を担当し、州営事業

者やブラジル電力公社(Eletrobras 社)傘下の企業が送電を担当し

ている。北部や北東部では Eletrobras 社傘下の Eletronorte が発送

配電を担当する。

電源種別発電電力量

水力発電の占める割合が圧倒的であり、6 割

強を占める。原子力は約 3%を占めている。

電力消費量

(百万 kWh)

500,779

発電電力量

(百万 kWh)

590,632

輸入電力量

(百万 kWh)

33,779

電力需要の推移と見通し

ブラジルの発電電力量は 2000 年が 3,480 億 kWh であったが、2012 年には 5,524 億 kWh

となった。2030 年の電力需要は約 1 兆 300 億 kWh となると予測されている。

5.8%

41.7%

11.7%1.3%

10.6%

29.0%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー総供給

3億324万

石油換算トン

26,754

35,423

81,075

15,378

373,439

58,563 石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

590,632GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

ブラジルでは水力発電の占める割合が高いが、新規の水力発電所建設に対する環境規制

等を背景として、2007 年に承認された「2030 年までの長期国家エネルギー計画(PNE2030)」

では、石炭火力発電や原子力発電の拡大を検討する可能性が示された。2017 年 3 月現在、

2050 年までの長期国家エネルギー計画(PNE2050)が策定中である。

●原子力政策・計画

原子力発電

ブラジルでは現在、アングラ原子力発電所で 2 基の原子炉(PWR、合計 190.1 万 kW)

が稼働中で、運転は Eletrobras 社傘下の Eletronuclear 社が担当している。米ウェスティ

ングハウス(WH)社製のアングラ 1 号機は 1985 年、独シーメンス社製の同 2 号機は 2001

年に運開した。

上記の PNE2030 では、水力発電への依存度の低減や新・再生エネルギーへの移行度合い

に応じて、4~8 基の原子炉の建設を行うとする 3 つのシナリオが示されている。鉱山エネ

ルギー省が発表する向こう 10 年間のエネルギー拡大計画(PDE)の最新版である PDE2024

では、2024 年までに増設が見込まれるプラントはアングラ 3 号機のみであるが、鉱山エネ

ルギー省大臣は 2015 年 4 月、2030 年までに 4 基、その後 2050 年までにさらに 4 基(計 8

基)の原子炉新設が見込まれると発言した。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

天然ウランの 2013 年時点での確認資源量は 276 万 1,000 トンである。ラゴア・レアルと

イタタイアにウラン鉱山がある。濃縮の大半は欧米のウレンコ社に委託しているが、一部

はブラジル原子力委員会(CNEN)傘下のブラジル原子力工業会社(INB)が操業するレ

ゼンデ濃縮施設で実施されている。レゼンデには転換、再転換、成型加工を行う核燃料工

場も設置されている。

放射性廃棄物管理・処分

CNEN が放射性廃棄物の管理・処分に責任を負う。2001 年には放射性廃棄物の貯蔵施設

及び処分場の選定、建設、操業について定めた法律が制定され、2008 年には、低・中レベ

ル放射性廃棄物処分場設置に向けたプロジェクトが開始された。なお、アングラ 1・2 号機

で発生した低・中レベル放射性廃棄物は現在、サイト内で貯蔵されている。

また、同発電所で発生した使用済燃料は、各ユニットの使用済燃料プールで貯蔵されて

いる。なお、同発電所のサイト内に、新たに湿式の使用済燃料中間貯蔵施設の建設が計画

されており、操業開始は 2018 年と見込まれている。使用済燃料の処分方針については未定

である。

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●原子力企業動向

国内動向

1980 年代から建設が中断され建設許可も無効となっていたアングラ 3 号機について、政

府は 2008 年に建設再開を決定した。建設許可は 2010 年 5 月に発給され、同年 6 月にコン

クリート打設が開始された。建設プロジェクトの総コストは 100 億レアルの見込みで、政

府系銀行 2 行からの融資が決定している。2013 年には仏 AREVA 社と、同機の完工・試運

転支援に関する契約(契約額:12 億 5,000 万ユーロ)を締結した。

なお、PDE2024 では同基の商業運開を 2019 年 1 月と見込んでいるが、建設工事に係る

贈収賄が発覚した影響等もあり、Eletronuclear 社は 2016 年末時点で、同機の運開時期を

2022 年としている。

アングラ 3 号機の完工に続くブラジルにおける今後の原子炉新設には、米国、韓国及び

ロシアが関与する姿勢を示している。2015 年 4 月には、Eletrobras 社と Eletronuclear 社、

および韓国電力公社(KEPCO)が、3 社間の原子力分野における協力覚書(MOU)を締

結した。また、国営原子力関連機器メーカーNuclebras Equipamentos Pesados 社

(NUCLEP)は同年 6 月、アングラ 1 号機建設の実績を有する WH社と、ブラジルにおけ

る AP1000 関連の設備・機器の製造に関する MOU を締結した。一方で NUCLEP 社は同

年 9 月、露 ROSATOM 国営原子力会社と、原子力・電力産業を含む広範な分野での関係強

化を目指し、MOU を締結した。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Brazil

Eletronuclear “Role and Responsibilities in the Conclusion of the Angra 3 NPP and

New Builds”, December 2016.

鉱山エネルギー省

Eletronuclear 社

Nuclebras Equipamentos Pesados 社

仏 AREVA 社

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(4) アルゼンチン

●基本情報

面積 278 万 k ㎡ 人口 4,342 万人

公用語 スペイン語

通貨 1 米ドル=14.9008 ペソ(変動相場制、2016 年 8 月現在)

政治体制 立憲共和制

議会 二院制、上院(72 議席)、下院(257 議席)、上院議長は副大統領が兼任。

政府 大統領 マウリシオ・マクリ

GDP 5,832 億ドル(2015 年名目)

成長率 2.4%(2015 年名目)

経済の特徴及び概況

2001 年後半、金融不安が金融危機や全般的な経済危機に転化。政府は対外債務の支払

い停止(デフォルト)、兌換制の放棄(自由変動相場制への移行)を行った。政府はデ

フォルト後、2005年と 2010年に 75%の元本削減を内容とする民間債務再編を強行し、

9 割強の債権者が債券交換に応じた。応じなかった債権者の一部が米国で起こした訴訟

に対して、米裁判所は、原告への満額(13.3 億ドル)の支払を政府に命じた。

設備容量:162.7 万 kW

発電電力量:65 億 kWh

運転中:3 基(PHWR3 基)

建設中:1 基(PWR) 計画中:2 基

原子力シェア:4.8%

1990 年代より中断されていたアトーチ

ャ 2 号機の建設が 2006 年に再開、2014

年 6 月に運開した。4 基目(アトーチャ

3 号機)及び 5 基目は中国核工業集団公

司(CNNC)が建設する。5 基目には中

国が開発したPWRである華龍 1号の採

用を検討。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):385 石炭:

9,270 天然ガス:3,320 億(立方メートル)

ウラン:8,600(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

8,661 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

87.0%(原子力含)、85.2%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):1.7%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:24,651 水力:10,074 原子力:1,018 その他:202

電力供給体制の概

発送配電は分離されている。発電については、100 以上の発電事業者

が行う。送電は地域間を連携する送電線を保有する Transener 社及

び地域内を結ぶ送電線を保有する 6 つの地域送電会社が担当してい

る。配電については、約 40 の配電会社が担当している。

電源種別発電電力量

天然ガスによる発電が 5 割弱を占めている。

残りの主要電源は水力、石油で、原子力発電

は約 4%を占める。

電力消費量

(百万 kWh)

126,756

発電電力量

(百万 kWh)

141,260

輸入電力量

(百万 kWh)

9,860

電力需要の推移と見通し

電力消費は 1990 年代以降急速に増加。総発電電力量も 2000 年の 890 億 kWh から 2013

年には 1,391 億 kWh に伸びている。

1.8%

38.0%

48.7%

1.7%

4.1% 5.7%石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

8,661万

石油換算トン

4,038

19,540

67,3785,756

41,022

3,526

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

141,260GWh (単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

アルゼンチンは、石油、天然ガス等のエネルギー資源に恵まれているが、1950 年代から

原子力の研究開発が進められており、1968 年に原子力発電所の建設が開始、1974 年に初号

機が運開している。

発電システムの拡大に関する計画(2008-2025)によれば、中長期的に水力、原子力、

再生可能エネルギーに基づいた多様な電源での発電を行うとの目標を示している。

●原子力政策・計画

原子力発電

アルゼンチンでは、国営のアルゼンチン原子力発電会社(NASA)がアトーチャ原子力発

電所 1 号機(33.5 万 kW)と 2 号機(69.2 万 kW)、エンバルセ原子力発電所(60 万 kW)

の 3 基の原子炉(いずれも重水炉 PHWR)を運転している。また、中国・ロシアの協力の

下、原子炉の新規建設計画も進めている。

4 基目となるアトーチャ 3 号機(PHWR)の建設には、中国、韓国、フランス、ロシア

などが関心を表明してきたが、2014 年 9 月に NASA は、中国核工業集団公司(CNNC)と、

同基の建設に係る協定を締結した。その後 5 基目の建設計画も併せて協議が進められ、2015

年 2 月の両国政府合意を経て、両社は同年 11 月にアトーチャ 3 号機の建設に関する契約、

及び 5 基目建設に向けた枠組契約を締結している。これらの契約を受け、2016 年 6 月 30

日には、アルゼンチン・エネルギー鉱業省と中国・国家能源局(NEA)が、2 基の建設に

向けた協力覚書(MOU)を締結した。

アトーチャ 3 号機は NASA 主体で建設され、CNNC が中国での重水炉(CANDU6)の

運転経験を活かして技術面や機器供給で支援を行う。一方、5 基目については、中国国産の

PWR である華龍 1 号が採用される見通しである。両機の建設コストは合計約 150 億ドルと

見積もられており、中国側が資金協力を行う。両国政府は両機の 2017 年、2019 年の着工

を目指している。

国内 6 基目については、アルゼンチンとロシアが 2015 年 4 月に、ロシア製 VVER(120

万 kW級)建設のための協力の枠組みを定めた MOU に署名した。

なお、アルゼンチンは小型一体型 PWR(CAREM)の独自開発も進めている。2014 年 2

月にはアトーチャ原子力発電所近傍のサイトにおいて、プロトタイプ CAREM-25(出力 2.5

万 kW)の建設が開始された。同機は 2018 年の運開が見込まれている。

この他、アルゼンチンは韓国やウクライナとの協力も進めている。NASA は 2016 年 1

月、韓国水力原子力(KHNP)と、原子力発電所の運転、保守、エンジニアリング、建設

等の分野における技術協力に関する MOU を締結し、同年 10 月には、ウクライナ・エネル

ゴアトム社と、原子力開発に係る MOU を締結した。

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核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

1950 年代半ばからウラン鉱山の開発を行ってきたが、経済的理由から 1997 年にウラン

鉱山は閉鎖された。ピルカニジェウには、アルゼンチン原子力委員会(CNEA)が保有する

小規模のウラン転換工場がある。また、CNEA 子会社の CONUAR SA 社は、エセイサで燃

料集合体製造工場を操業している。

濃縮については、1980 年代にピルカニジェウのプラントで小規模に行われていたが、同

プラントは 1990 年代に入って閉鎖され、その後濃縮は米国に委託されていた。しかし、政

府は濃縮活動を再開・拡大する方針を示しており、2015 年 11 月末には同プラント補修に

伴う落成式が執り行われている(プラント規模は不明)。

放射性廃棄物管理・処分

低中レベル放射性廃棄物はエセイサ原子力研究センターで処分されている。使用済燃料

は主に原子力発電所のプールに貯蔵されているが、エンバルセ発電所には乾式貯蔵施設も

設置されている。高レベル放射性廃棄物の最終処分については、1980 年代にフィージビリ

ティ調査が行われ、候補地の名前まで上がったが、その後進展していない。

●原子力企業動向

国内動向

運転中のエンバルセ発電所では30年間の寿命延長に向けた作業が2007年より開始され、

同プラントでは 2015 年末以降、運転を停止して蒸気発生器交換等を伴う大規模補修を実施

している。NASA とカナダの CANDU エナジーは 2011 年 8 月、同発電所の寿命延長のた

めの工事契約を締結した。また米ウェスティングハウス(WH)社の子会社は 2013 年に、

同発電所の蒸気発生器交換に係るエンジニアリング役務を受注している。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Argentina

IAEA NEWMDB

アルゼンチン大統領府

連邦計画・公共投資・公共サービス省

アルゼンチン原子力委員会

アルゼンチン原子力発電会社

ROSATOM 国営原子力会社

韓国水力原子力株式会社

ウェスティングハウス(WH)社

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42

(5) メキシコ

●基本情報

面積 196 万 k ㎡ 人口 約 1 億 2,701 万人

公用語 スペイン語

通貨 1 ドル=約 20.0 ペソ(2017 年 1 月 墨中銀)

政治体制 立憲民主制による連邦共和国

議会 二院制。上院(128 議席)、下院(500 議席)

政府 大統領 エンリケ・ペニャ・ニエト

GDP 1 兆 1,443 億ドル(2015 年名目)

成長率 2.5%(2015 年実質)

経済の特徴及び概況

1994 年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)の締約国である。世界的な経済危機

の影響により、2009 年の実質経済成長率はマイナス 4.7%となったが、その後回復。

2015 年は 2.5%の成長率となった。

設備容量:160 万 kW 発電電力量:112 億 kWh

運転中:2 基(BWR2 基) 建設中:0 基 計画中:0 基 原子力シェア:6.8%

2010 年 5 月の電源計画では、10 基の原子炉の建設を含むシナリオも示されていたが、メキシコ湾での

新たなガス田発見を受けて、コスト上の理由から計画は見直された。その後政府は 2016 年、原子炉 3

基を 2028~2030 年に運開させる計画が盛り込まれた新たな電力システム開発計画を発表。

Page 187: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

43

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):1,496 石

炭:5,422 天然ガス:3,240 億(立方メー

トル) ウラン:2,800(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

1 億 8,797万石油換算トン

・エネルギー自給率%

110.8%(原子力含)、109.5%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):1.3%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:48,893 水力:12,464 原子力:1,400 その他:3,481

電力供給体制の概

メキシコ電力公社(CFE)が中心となり、発送配電を行っている。

電源種別発電電力量

総発電電力量に占める天然ガスの割合が半

分を超えている。その他石油、石炭、水力な

どに加え、原子力発電(約 3%)も活用して

いる。

電力消費量

(百万 kWh)

252,221

発電電力量

(百万 kWh)

301,496

輸入電力量

(百万 kWh)

-523

電力需要の推移と見通し

メキシコ・エネルギー省(SENER)の「電力セクター展望 2016-2030」によれば、2016

年から 2030 年の期間におけるメキシコの電力消費量の伸び率は年平均 3.4%と予測されて

おり、電力消費量は 2015 年の 2,882 億 kWh から 2030 年には 4,760 億 kWh へと増加す

る見通し。

6.7%

51.3%32.2%

1.3%1.8% 6.7%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1億8,797万

石油換算トン

33,881

33,006

171,962

9,677

38,893

14,077

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

301,496GWh(単位はGWh)

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44

●エネルギー政策・計画

メキシコは世界有数の原油生産国であり、メキシコ石油公社(Pemex)による原油生産

の独占体制が敷かれている。

1990 年の「国家エネルギー計画」では、2010 年までに原子力発電設備容量を 300 万~

690 万 kWまで拡大することが想定されていたが、その後、メキシコ湾で新たなシェールガ

スが発見されたことを受け、化石燃料や天然ガス等の火力発電にシフトすることとなった。

●原子力政策・計画

原子力発電

メキシコでは、ラグナベルデ原子力発電所において米ゼネラル・エレクトリック(GE)

社製の 2 基の原子炉(BWR)が稼働中である。同発電所は政府によって所有され、エネル

ギー省傘下のメキシコ電力公社(CFE)によって運転されている。

CFE は 2010 年 5 月、2019 年から 2028 年までに新設される発電所の設備容量に関して

4 つのシナリオを発表し、低炭素シナリオでは原子力発電や風力発電への大規模な投資の計

画を示した。同シナリオでは、10 基の新規原子炉が建設される計画であったが、その後

メキシコ湾で新たなシェールガス田が発見されたことを受け、政府はコスト上の理由から

計画を見直した。

政府が 2016 年 5 月に発表した「国家電力システム開発プログラム(PRODESEN)」で

は、2028 年、2029 年、2030 年にそれぞれ 1 基ずつ運開させる計画が示されている。なお

政府は、2013年 12月にロシアとの間で原子力平和利用に関する協力協定に署名しており、

同協定は 2015 年 8 月に発効した。米国とは 2016 年 7 月に、2016 年内の協力協定締結に

向けて交渉を開始することで合意したが、2017 年 3 月現在、協定締結の事実は確認できて

いない。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

メキシコにはウラン資源が存在するが、安価なウランを国際市場で調達しており、国産

ウランを生産する予定はない。UF6 は主にロシアから調達し、ウラン濃縮と燃料加工は米

国へ委託している。

放射性廃棄物管理・処分

現在、放射性廃棄物管理の政策は確立されていない。管理方法はウラン需給、価格、技

術革新、国内での原子炉新設に係る政策などの要因に鑑みて今後決定される。なお、エネ

ルギー省が放射性廃棄物の貯蔵・処分に責任を負う。

ラグナベルデ原子力発電所で発生した使用済燃料は、サイト内の使用済燃料プールに保

管されている。また、低・中レベル放射性廃棄物は、同発電所内の施設で貯蔵されている。

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●原子力企業動向

国内動向

ラグナベルデ原子力発電所では 2007 年から 2013 年にかけて、スペイン・イベルドロー

ラ社らにより出力増強・寿命延長のための改修工事が行われた。これにより同発電所の出

力は 20%増大、合計 164 万 kW(82 万 kW×2 基)となり、運転寿命も 40 年に延長された。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Mexico

IAEA NEWMDBRadioactive waste management programmes in OECD/NEA

member countries, Mexico, 2005

メキシコ大統領府

エネルギー省

ROSATOM 国営原子力会社

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1.2.2. 欧州(西)

(1) フランス

●基本情報

面積 54.4 万 k ㎡ 人口 約 6,633 万人

公用語 フランス語

通貨 1 ユーロ=121.06 円(2017 年 2 月 13 日)

政治体制 共和制

議会 二院制 国民議会と上院 主要政党:社会党(PS)

政府 首相 マニュエル・ヴァルス

GDP 2 兆 4,210 億ドル(2015 年)

成長率 1.14%(2015 年)

経済の特徴及び概況

世界的金融・経済危機の影響により、2008 年半ばから景気が悪化、2009 年通年では戦

後最低のマイナス成長を記録した。その後も景気回復は足踏みを続けたが、2015 年は

景気回復傾向が強まり成長率は+1.3%に達した。2016 年の成長率は、+1.5%の見通し。

設備容量:6,313 万 kW 発電電力量:4,190 億 kWh 運転中:58 基(PWR58 基)

建設中:1 基(PWR) 計画中:1 基 原子力シェア:76.3%

世界第 2 位の原子力大国。2012 年の大統領選挙・下院総選挙後に発足した社会党政権は、2025 年まで

に総発電電力量に占める原子力の割合を現状の 75%から 50%に縮減する方針を掲げている。オランド

大統領は国内でもっとも古いフェッセンハイム原子力発電所を 2016 年末までに閉鎖するとしている。

フラマンヴィルサイトに国内初の EPRが建設中。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):1,013 石

炭:390 天然ガス:100 億(立方メートル)

ウラン:11,500(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

2 億 4,264万石油換算トン

・エネルギー自給率%

56.5%(原子力含)、9.6%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):46.9%

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:24,411 水力:25,294 原子力:63,130 その他:

16,234

電力供給体制の概要 フランスで発電を行っているのは、国が株式の 8 割以上を保

有するフランス電力(EDF)である。送配電も EDF が行っ

ていたが、電力自由化の流れをうけて、同社の送配電部門が

送電系統運用株式会社(RTE)として設立され、さらに配電

部門もフランス電力配電社(ERDF)として分離された。な

おEDFはRTEとERDFそれぞれの全株式を保有している。

電源種別発電電力量

フランスでは発電電力量のうち 8 割弱を原

子力発電によって賄っている。また原子力発

電に次いで発電電力量が多いのは水力であ

り発電電力量の約 9 割が温室効果ガスを排

出しない電源によって賄われている。ただ

し、現社会党政権は原子力の割合を 2025 年

までに 50%まで縮減する方針を掲げてい

る。

電力消費量

(百万 kWh)

415,326

発電電力量

(百万 kWh)

556,979

輸入電力量

(百万 kWh)

-67,186

電力需要の推移と見通し

3.8%

29.0%

13.4%

46.9%

2.2% 4.7%石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

2億4,264万

石油換算トン

12,014 1,80612,738

436,474

62,829

31,118石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

556,979GWh(単位はGWh)

Page 192: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

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政府は 2015 年 8 月に制定した「グリーン成長のためのエネルギー転換に関する法律」(エ

ネルギー転換法)に基づき策定された多年度エネルギー計画(PPE)は、2030 年までの電

力消費量が現状とほぼ変わらず 4,750 億 kWh で推移するシナリオに基づいている。

●エネルギー政策・計画

フランスでは、石油ショックを契機としてエネルギー自立の確保がエネルギー政策の最

大の課題となっており、国産技術としての原子力開発を進める政策をとってきた。

2005年7月に制定されたエネルギー政策法では、省エネの促進、再生可能エネルギー開発、

原子炉のリプレースに備えた欧州加圧水型原子炉(EPR)の初号機の2015年までの建設に

ついて規定された。

しかし、2012 年の大統領選挙及び議会下院総選挙の結果、野党・社会党のオランド氏が

大統領に就任し、大規模な省エネルギー、再生可能エネルギー開発への注力と原子力発電

の縮減等によって、フランスの“エネルギー転換”を実現するとの目標を掲げた。これら

の方針が反映された「グリーン成長のためのエネルギー転換に関する法律」(以下、エネル

ギー転換法)が 2015 年 8 月に制定された。

ただし、同法では、減原子力の実現のための具体的な方策は示されていない。会計検査

院(CDC)は、目標達成のためには原子炉の閉鎖が必要であるにも関わらず、EDF が全て

の原子炉の運転期間の延長を見据えた保守を実施する計画であり、政策と事業者の施策が

整合していない問題を指摘している。エネルギー転換法に基づき、政府は多年度エネルギ

ー計画(PPE)を策定し、2016 年 10 月に公開した。PPE を公布する政令では、2025 年ま

での減原子力目標と整合した戦略計画を、フランス電力(EDF)が策定することが義務付

けられている。

●原子力政策・計画

原子力発電

フランス政府はほぼ一貫して原子力発電を維持する政策を採ってきており、2005 年のエ

ネルギー政策法では、既存炉のリプレースを見据えた EPR の建設が規定された。フラマン

ヴィル 3 号機として EPR の建設が 2007 年から進められているが、運開時期は当初予定の

2012 年から大幅に遅延し、2018 年頃になる見通しである。

2011 年の福島第一原子力発電所事故後も当時の前中道右派政権は原子力発電を積極的に

支持する方針を示したが、2012 年に実施された大統領選挙及び議会下院選挙の結果、減原

子力の方針を掲げた野党・社会党が勝利した。大統領に就任したオランド氏は、総発電電

力量に占める原子力の割合を 2025 年に現在の 75%から 50%に縮減するとし、国内でもっ

とも古いフェッセンハイム発電所を 2016 年末までに閉鎖する方針を掲げた。

政府はこの目標の達成に向けて、2012 年 11 月から 2013 年 7 月にかけて、“エネルギー

転換”に関する全国規模の討論会を開催し、討論会の結果をふまえて策定され、最終的に

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成立したエネルギー転換法では、2025 年までの減原子力の目標と、原子力発電の設備容量

の上限を現状の 6,320 万 kW とする内容が盛り込まれた。ただし、オランド大統領と政府

は、フラマンヴィルの EPR 建設は継続する方針である。

フェッセンハイム発電所の閉鎖について、政府は 2016 年中に同発電所の運転承認を廃止

する政令を発給する方針であったが、政令発給のために必要な EDF からの運転承認の取り

消し申請が行われていない模様である。EDF は 2017 年 1 月にフェッセンハイム閉鎖に係

る補償条件について政府と合意しているが、その際に EDF は、申請を行うための条件とし

て、①フラマンヴィル 3 号機の建設継続に必要な承認(設置許可政令の有効期限(官報公

示日から 10 年)の延長承認)を得られること、②運転停止中のパリュエル 2 号機を再稼動

できること、③政府との補償合意について欧州委員会が国家補助規則に照らして承認する

こと、の 3 点を提示している。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

フランスではウラン採掘から放射性廃棄物の最終処分まで、燃料サイクルの全領域がカ

バーされている。特に、国が株式の大半を所有する AREVA 社が提供するウラン資源調達

から再処理まで一貫したサービスが、仏原子力産業の特長である。

フロントエンドでは、AREVA 社がカナダ、ニジェール、カザフスタン等にウラン権益を

有し、輸入したウラン資源を国内の燃料サイクル施設(転換、再転換、濃縮施設、燃料加

工施設)において燃料に加工している。またバックエンドでは、原子力発電所で発生する

使用済燃料を再処理してリサイクルする“クローズド燃料サイクル”政策が採用されてい

る。

EDF の原子炉から取り出された使用済燃料は、サイト内の燃料プールにおいて 1~2 年

間貯蔵された後、AREVA 社のラ・アーグプラントに輸送され、同プラント内の燃料プール

で 3~5 年間貯蔵された後に、再処理が行われる。再処理で抽出されたプルトニウムは、マ

ルクールの MELOX プラントにおいて混合酸化物(MOX)燃料に加工され、EDF の一部

の原子炉に装荷されている。

国内の原子力発電の縮減を掲げている現政権も、核燃料サイクルを含むバックエンド政

策は転換しておらず、再処理を継続する方針である。

放射性廃棄物管理・処分

1991 年に制定された放射性廃棄物管理研究法に基づき、高レベル放射性廃棄物及び長寿

命の中レベル放射性廃棄物の管理について、(1)深地層処分、(2)核種分離・変換、(3)長期地

上貯蔵、に関する研究が 15 年間にわたって実施された。研究の成果、国家評価委員会(CNE)

や議会科学技術選択評価委員会(OPECST)による評価等を踏まえ、2006 年 6 月に放射性

廃棄物等管理計画法が成立し、同法では可逆性のある地層処分を標準オプションとして採

用する方針が示された。

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50

同法では地層処分場を 2025 年に操業開始することが規定されており、処分の実施主体で

ある放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、立地候補区域として、ビュール地下研究所近傍

の 30km2の区域(ZIRA)を 2009 年 10 月に政府に提案し、政府もこれを承認した。

2012 年の政権交代後も、2006 年の放射性廃棄物管理計画法に基づいて地層処分プロジェ

クトを進める方針が踏襲されており、処分場の設置許可申請に必要な公開討論が 2013 年 5

月~12 月にかけて実施された。公開討論の結果をふまえ、ANDRA はパイロット操業フェ

ーズを導入する等のプロジェクトの変更方針を示し、これを 2006 年放射性廃棄物等管理計

画法に反映する法律が 2016 年 7 月に成立した。ANDRA は、2018 年に設置許可申請を提

出し、2025 年にパイロット操業フェーズを開始する計画である。なお政府は 2016 年 1 月、

140 年間にわたる地層処分場プロジェクトの全てのフェーズにおいて発生する総コストの

目標額を 250 億ユーロとすることを決定した。これに伴い、事業者が計上するバックエン

ド引当金額も上方修正されている。

なお、放射性寿命が 100 日以下と非常に短い廃棄物については、発生サイトで放射能を

減衰させる。原子力施設の運転・保守及び廃止措置によって発生する極低レベル放射性廃

棄物は、浅地中に処分する方針であり、モルヴィリエに処分場が設置されている。ただし、

同処分場は短期的に満杯になる見通しであり、今後数十年にわたり、原子力発電所の大規

模な廃止措置が実施されて発生する極低レベル放射性廃棄物の管理が課題となっている。

現状、フランスではゾーニングの考え方が採用されているが、極低レベル放射性廃棄物管

理方針の最適化のため、金属廃棄物の溶融によるリサイクルの促進や、産業廃棄物処分場

への処分等、管理方針の見直しが検討されている。

原子力施設の運転及び廃止措置から発生する低中レベル放射性廃棄物のうち、放射性寿

命が 30 年以下のものについては、一部を除き浅地中に処分する方針であり、東部オーブ県

に処分場が設置されている。低レベル放射性廃棄物のうち、寿命が 30 年以上のもの(低レ

ベル長寿命放射性廃棄物:FAVL)については、地下 200 メートルまでのやや深い地層にお

ける余裕深度処分が検討されている。

安全規制

フランスでは 2006 年の原子力安全・情報開示法に基づき、原子力安全機関(ASN)が発

足し、技術支援機関(TSO)である放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)の支援を受け、

国内の原子力施設における活動を監督している。

フランスでは福島第一原子力発電所事故をうけて、原子力施設に対する補完的安全性評

価(ECS)が実施された。その結果 ASN は、即時閉鎖が必要な施設はないと判断したが、

安全強化策として、異常な状況でも基本的な安全機能を管理するための設備や体制から構

成される“ハードコア”を構築するよう事業者に要請し、EDF や AREVA 社はその対応を

進めている。

なお ASN は 2015 年 4 月、AREVA 社による力学的試験や化学的試験の結果、フラマン

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51

ヴィルで建設中のEPRの原子炉容器上蓋及び下鏡の鋼材の組成に炭素偏析があることが明

らかになったと発表した。AREVA 社は異常に関する詳細調査を進めており、その結果は

2016年末に ASNに提出される予定である。さらに、この問題発覚をうけて EDF や AREVA

社が調査を行った結果、当該原子炉容器を製造したクルゾ・フォルジュ社及び日本鋳鍛鋼

株式会社(JCFC)が製造した蒸気発生器(SG)チャンネルヘッドにも炭素偏析が存在す

ること、またクルゾ・フォルジュ社が 1965 年以降に製造した約 400 個の部品の製造検査に

関する不備も発覚した。SG のチャンネルヘッドの問題については、EDF が行った鋼材の

適格性証明を ASN が承認したことで解決の目途が立っているが、製造検査の不備は、現在

も AREVA 社による全貌解明のための調査が実施中である。

●原子力企業動向

国内動向

<原子力産業の再編>

フランスでは国が株式の大半を保有する EDF が発電事業を行い、AREVA 社がフロント

エンドからバックエンドまで一貫した燃料サイクルサービスを提供している。しかし

AREVA 社は 2011 年以降、最終赤字が続いており、2014 年決算では約 48 億ユーロ、2015

年決算では約 20億ユーロ、直近の 2016年決算でも約 6.7億ユーロの最終赤字を計上した。

経営が悪化した同社を救済するため、政府は原子力産業界の再編を進めている。2015 年 7

月の AREVA 社と EDF との合意に基づき、原子炉サービス部門である AREVA NP 社の下

に子会社 NEW NP が設置され、その株式の少なくとも 51%、最大で 75%を EDF が取得

することが 2016 年 11 月に決定した。さらに AREVA 社は、燃料サイクル事業に特化する

新会社 NEW COを設置し、同社の鉱業部門、フロントエンド部門及びバックエンド部門の

資産及び負債を移管する。同社は 2016 年 8 月に、移管手続きを開始したことを明らかにし

ている。また政府は AREVA 社本体及び NEW CO に対して総額 50 億ユーロの増資を実施

する予定である。増資については 2017 年 1 月に欧州委員会が EU 国家補助規則に照らして

問題ないとの判断を下したことで、翌 2 月の両社の株式総会においても承認された。増資

は AREVA 社本体には政府から 20 億ユーロ、NEW CO には政府から 25 億ユーロ、三菱重

工業と日本原燃(JNFL)からそれぞれ 2.5 億ユーロずつ実施される。

なお欧州委員会は政府による増資を認める条件として、フラマンヴィル 3 号機(欧州加

圧水型原子炉:EPR)の原子炉容器の問題解決と、NEW NP 社の EDF への株式譲渡に関

する企業結合規則に照らした欧州委員会の承認の 2 点を提示している。この条件が充足さ

れて増資が実施されるまでのつなぎ資金として、政府は AREVA 社及び NEW CO に対し、

それぞれ 20 億ユーロ、13 億ユーロのつなぎ資金を提供している。

<発電事業>

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52

現政権が国内の原子力発電を縮減する方針をとっていることもあり、現在国内で建設が

進められているのは、フラマンヴィル 3 号機(EPR)1 基のみである。同機の運開時期は当

初 2012 年とされていたが、度重なる工期の遅延により、EDF が 2015 年 9 月に発表した最

新スケジュールでは、運開時期は 2018 年に繰り延べられ、建設コストも総額 105 億ユーロ

にのぼっている。

なお、同機の設置許可政令では、政令の官報公示日から 10 年以内に同機を運開させるこ

とが規定されている。このため EDF は 2015 年 10 月、この規定を変更し、運開期限を 3

年間延長することを政府に要請した。一方で EDF は、エネルギー転換法の規定に基づき、

同機の運開後に原子力の総発電設備容量が法定上限の 6,320 万 kW を超えないよう、既存

炉の運転承認取り消しも政府に申請する意向を示した。EDF は運転承認取り消し対象とし

てフェッセンハイム原子力発電所の 2 基の原子炉(それぞれ 90 万 kW)を検討するとして

いる。

なお EU における卸電力価格が低迷していること等から、EDF は将来的な経営悪化に備

えた措置を講じる方針であり、2017 年 3 月には 40 億ユーロの増資手続きが開始された。

40 億ユーロのうち、30 億ユーロは国が出資する。

国外動向

フランスは前サルコジ政権下で原子力産業の海外進出を積極的に支援してきた。国内で

は減原子力の方針を掲げる現社会党政権も、前政権の方針を踏襲していることから、EDF

や AREVA 社は、活発な海外展開を行ってきた。

ただし、AREVA 社が原子炉及び関連サービスを、EDF が原子力発電所の建設・運転の

知見を提供する体制で進めてきた海外進出の体制は、AREVA NP 社が EDF の傘下に入る

ことで、EDF が炉の供給から建設・運転まで担う体制に変更されることになる。

なお、トルコ 2 カ所目となるシノップ原子力発電所の建設に係る入札では、炉型として

ATMEA 1 が採用され、ENGIE 社(旧 GDF-Suez 社)が原子力発電所に関する知見を提供

する形でプロジェクトに参加することとなった。また、2014 年 1 月に同社は、英国ムーア

サイドにおける原子炉新設プロジェクトで東芝とパートナーシップを組むことを発表した。

最近のフランスの事業者の原子炉建設に係る主な受注実績と建設の進捗状況を以下に示

す。

<フィンランド>

AREVA 社と独シーメンス社のコンソーシアムが、オルキルオト 3 号機(OL3)として

EPR を建設中である。同機は当初 2009 年に運開予定とされていたが、度重なる工期の遅

延等により、コンソーシアムは運開時期が 2018 年にずれ込むとの見通しを示している。遅

延に伴う追加コストの負担をめぐって、コンソーシアムと発注者である林業関係電力会社

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53

(TVO)が対立しており、国際商業会議所(ICC)による仲裁手続きが行われている。な

お、AREVA NP 社の株式を取得するにあたり、EDF は OL3 プロジェクトに係る負債の切

り離しを条件としており、このため AREVA NP 社の負債は AREVA 社本体に移管されるこ

とになっている。

<中国>

EDF と AREVA 社が台山サイトで EPR2 基を建設中である。1 号機は 2014 年に運開す

る見通しであったが、2017 年 2 月に中国政府が公表した「エネルギー工作指導意見」では、

同機の運開時期は 2017 年内とされている。なおフランスは原子力分野における中国との協

力を強化する方針であり、2012 年 10 月には AREVA、EDF、中国広東核電集団公司

(CGNPC:当時)との間で第 3 世代の中型炉開発に関する MOU が締結されている。また

2013 年 4 月には、AREVA 社と CNNC との間で、中国における再処理プラント建設契約締

結に向けた基本合意書(LOI)が締結されている。2014年 3月には、同LOIに基づき、AREVA

社とCNNCが中国における再処理プラント建設プロジェクトの遂行に関する協定を締結し

た。さらに 2017 年 2 月には、燃料サイクル事業に関する工業・商業協力に関する枠組み協

定に調印した。また両社は、民生原子力分野における包括的な協力に向けた戦略パートナ

ーシップ構築に関する協定及びデジタル計装制御システム TELEPERM XS を中国市場で

展開する合弁会社を設立する協定にも調印した。

<英国>

EDF 子会社の EDF エナジー(2008 年に買収したブリティッシュ・エナジー社を吸収統

合)が、英国ヒンクリーポイント C(HPC)サイトにおける EPR の建設を計画している。

同建設計画には英セントリカ社が出資していたが、同社は 2013 年 2 月に計画への参加をと

りやめることを決定した。その後 EDF エナジー社は 2013 年 10 月、同プロジェクトに中

国広核集団(CGN)と CNNC からの出資を受け入れることで英国政府と合意した。

EDF は 2016 年 7 月に、HPC プロジェクトの最終投資決定を下し、英国の EU 離脱の是

非を問う国民投票後に発足した新政権も 9 月にプロジェクトの推進を最終決定した。これ

を受けて同月、英国政府、EDF、中国広核集団(CGN)の 3 者がヒンクリーポイント C 原

子力発電所(HPC)に係る固定価格買取差額決済契約(FIT CfD)と投資合意書に署名し

た。

●出典

大統領府ウェブサイト

首相府ウェブサイト

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ASN ウェブサイト

ANDRA ウェブサイト

AREVA 社ウェブサイト

EDF ウェブサイト

EDF エナジーウェブサイト

Engie 社ウェブサイト

Alstom 社ウェブサイト

英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省ウェブサイト

中国国家能源局ウェブサイト

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(2) ドイツ

●基本情報

面積 35.7 万 k ㎡ 人口 8,177 万人

公用語 ドイツ語

通貨 1 ユーロ=121.06 円(2017 年 2 月 13 日)

政治体制 連邦共和制

議会 二院制:連邦議会(調整議席を含め現在は 630 人(法定定数は 598 人)

/小選挙区比例代表併用制・任期 4 年)、連邦参議院(69 人/各州の代表)

主要政党:

【与党】キリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)、社会民主党(SPD)

【野党】左派党、緑の党

政府 首相 アンゲラ・メルケル(CDU)

GDP 2 兆 7,830 億ユーロ(2015 年実質)

成長率 1.7%(2015 年実質)

経済の特徴及び概況

ベルリン

ゴルレーベン中間貯蔵サイト

コンラート処分場

アーハウス集中中間貯蔵施設

ノルト集中中間貯蔵施設

 原子力発電所(○内は基数)

 計画中、建設中の原子力発電所

 核燃料サイクル施設(( )内は種別)

 計画中、建設中の核燃料サイクル施設

  C:転換施設 E:濃縮施設

  F:燃料製造・加工施設 R:再処理施設

 放射性廃棄物管理施設

 計画中、建設中の放射性廃棄物管理施設

グロナウ濃縮工場(E)

リンゲン燃料製造工場(C、F)

ブロックドルフ ①

イザール①

ネッカル ①

グンドレミンゲン ②

フィリップスブルグ ①

グローンデ ①

エムスラント ①

設備容量:1,072.8 万 kW 発電電力量:868 億 kWh

運転中:8 基(BWR2 基、PWR6 基)建設中:0 基 計画中:0 基 原子力シェア:14.1%

2010 年の原子力法改正ではいったん原子炉運転延長が認められたが、福島第一原子力発電所事故を

受けてエネルギー政策の見直しが行われた。2010 年末時点では 12 カ所で合計 17 基が運転していた

が、2011 年 8 月の原子力法改正に伴い、2016 年 12 月現在までに 9 基の原子炉が閉鎖済である。残

る 8 基も 2022 年までに順次閉鎖される。

原子力発電からの段階的撤退を規定した 2002 年の原子力法改正で、ドイツでは原子炉の新設が禁止

されている。

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世界有数の先進工業国であるとともに貿易大国。GDP の規模では欧州内で第 1 位。主

な貿易相手を見ると、輸出入共に欧州が全体の 3 分の 2 程度を占める。

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):317 石炭:

196,356 天然ガス:390 億(立方メートル)

ウラン:3,000(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

3 億 607万石油換算トン

・エネルギー自給率%

39.1%(原子力含)、30.9%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):8.3%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:97,203 水力:11,234 原子力:12,074 その他:77,905

電力供給体制の概

Uniper(2016 年 9 月に E.ON からスピンオフ)、E.ON、RWE、

Vattenfall、EnBW が発電の大部分を占める。送発電分離により、発

送配電の垂直統合体制を保持しているのは現在、EnBW のみである。

電源種別発電電力量

脱原子力政策により原子力発電が漸減する

と共に、再生可能エネルギー(再エネ)の急

速な拡充が進められている。一方で、従来国

内で産出する褐炭・黒炭などの石炭火力発電

が広く利用されてきたが、温室効果ガス削減

のため、特に褐炭発電の低減に向けた取り組

みに着手している。

電力消費量

(百万 kWh)

512,837

発電電力量

(百万 kWh)

621,938

輸入電力量

(百万 kWh)

-33,884

電力需要の推移と見通し

26.0%

33.0%

20.7%

8.3%

0.6%11.5%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー総

供給3億607万石

油換算トン

284,911

5,65962,270

97,129

19,587

152,382

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

621,938GWh(単位はGWh)

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ドイツでは、脱原子力と低炭素社会の実現に向け、省エネと再エネの拡大が推進されてい

る。2011年 6月 6日のエネルギー政策合意では、2020 年までに電力消費量を現在より 10%

削減する方針が示されている。また、再生可能エネルギー法では、消費電力に占める再エ

ネの割合を 2025 年までに 40~45%、2035 年までに 55~60%、2050 年までに 80%以上

とする目標を掲げている。

●エネルギー政策・計画

ドイツでは 1998 年に成立した社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権が脱原子力の方針

を打ち出して以降、原子炉の運転期間延長が検討された時期もあったものの、一貫して「脱

原子力」「再生可能エネルギー(再エネ)促進」「省エネ」が推し進められてきた。

2010 年の「エネルギー構想」(2050 年までの政策方針)に基づき、いったんは既存炉の

運転を延長して事業者の余剰利益に課税し、再エネ促進の原資とする方策が決定された。

しかし 2011 年 3 月の福島第一原子力発電所事故を機に、連立政府は同年、運転延長を取消

し、脱原子力の期日を 2022 年に早めることを決定し、原子力法を改正した。

ドイツの再生可能エネルギー法(EEG)は、消費電力に占める再エネの割合を 2025 年ま

でに 40~45%、2035 年までに 55~60%、2050 年までに 80%以上とする目標を掲げてい

る。現在ドイツでは、上記目標に向けて引き続き再エネを拡大しつつ、固定価格買取(FIT)

頼みの体制からの段階的脱却を図るべく、「電力市場 2.0」と呼ばれる市場改革を中心とし

た様々な施策・検討が実施されている。また、二酸化炭素削減対策として、排出量の多い

褐炭発電の低減に向け、事業者との合意に基づき複数の褐炭発電ユニットを段階的に運転

停止し、電力供給のバックアップとして 4 年間待機させた後、恒久閉鎖させることなどを

盛り込んだ複数の法改正が行われ、2017 年 1 月 1 日に発効した。

●原子力政策・計画

原子力発電

ドイツではチェルノブイリ事故の影響等による原子力発電に否定的な世論の高まりを受

け、1998 年に成立した社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権により、脱原子力政策が開

始された。同政権は 2000 年に電気事業者と脱原子力協定を締結、2002 年に原子力法を改

正した。これによりドイツ国内における原子炉の新規建設が禁止され、既存炉に関しても

規定の発電電力量(運転期間 32 暦年を基準)に達した炉から閉鎖し、段階的に脱原子力を

進めることになった。

2009 年に発足した第二次メルケル政権(キリスト教民主/社会同盟〔CDU/CSU〕と自

由民主党の連立政権)は原子力を再生可能エネルギー移行までの橋渡しと位置づけ、2010

年に原子力法を改正し、いったんは既存炉の運転延長(平均 12 年)が可能となった。しか

し 2011 年 3 月の福島第一原子力発電所事故を受けて、同政権は運転延長方針を撤回して前

年改正したばかりの原子力法を再度改正し、2022 年までに全炉を閉鎖することを決定した。

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ドイツでは 2010 年末時点で 12 カ所の原子力発電所で計 17 基の原子炉が稼働し、総発電

電力量の 28.4%を占めていたが、改正原子力法に基づき、1980 年以前に運開した炉を中心

とする 8 基の運転認可が 2011 年 8 月に失効し、2015 年 6 月には同年末が期限であったグ

ラーフェンラインフェルトが閉鎖された。残る 8 基も 2017 年、2019 年までに各 1 基、2021

年、2022 年までに各 3 基が閉鎖期限を迎え、全原子炉が閉鎖される。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

ドイツは使用するウランの全量を輸入している。国内にウラン転換施設はないが、濃縮・

燃料加工施設は国内に立地している。濃縮は、グローナウにある URENCO 社のプラント

(処理能力:4,100tSW/年〔2015 年末〕)で行われている。また、軽水炉用燃料の加工はリ

ンゲンにある ANF 社(仏 AREVA NP 社の子会社)のプラントで実施されている。

ドイツは現在、使用済燃料を全量直接処分する方針であるが、1994 年に直接処分がオプ

ションとして認められるまでは、全量再処理が義務付けられていた。当時ドイツは国内で

のクローズドサイクルの実現を目指していたが、1980 年台後半から 1990 年代半ばにかけ

て、コスト高騰や反対運動の影響から、再処理施設(バッカースドルフ)、MOX 燃料加工

プラント(ハナウ)の計画が相次いで中止となった。これ以降、ドイツは国内再処理を断

念し、英国(セラフィールド)及びフランス(ラ・アーグ)での国外再処理に切り替えた。

その後、2002 年の原子力法改正により新たな再処理が禁止され、再処理を目的とした使

用済燃料の英仏への輸送は 2005 年 6 月をもって終了した。英仏に輸送された使用済燃料か

ら回収されたプルトニウムは全量 MOX 燃料に加工され、原子炉に装荷することが義務付け

られている。なお、英国への委託分については、同国再処理プラントのトラブルやセラフ

ィールド MOX 燃料加工プラント(SMP)の閉鎖確定に伴い遅延が発生しており、ドイツ

の脱原子力完了(2022 年)に間に合わせる目的で、フランスによる代行履行が行われてい

る。

放射性廃棄物管理・処分

ドイツにおける放射性廃棄物は、処分地層への熱影響に応じて、高レベル放射性廃棄物

を含む「発熱性放射性廃棄物」(以下 HLW と表記)と、それ以外の「非発熱性放射性廃棄

物」(以下 I/LLW)に分類される。I/LLW については 2022 年操業開始予定で、コンラート

処分場の設置作業が進められている。一方、HLW に関しては処分場設置計画が長期化の様

相を呈している。

HLW 処分場選定:2013 年 7 月の「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関す

る法律(サイト選定法)」では、従来の候補地ゴアレーベンを白紙化し、新たに住民参加型

のサイト選定手続を通じて複数候補から絞り込みを行い、2031 年までに処分場サイトを確

定する方針が示されている。同法に基づき設置された「高レベル放射性廃棄物処分委員会

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(処分委員会)」は 2016 年 7 月 5 日、サイト選定手続に係る各種前提条件の検討結果と勧

告を取りまとめた最終報告書を政府議会に提出した。同委員会は、3 段階からなるサイト選

定プロセスや公衆参加の仕組み・手続等について勧告した。委員会の勧告を受けて政府議

会は現在、実施に必要な法整備等を進めている。2016 年 11 月にはサイト選定における連

邦レベルの公衆参加組織「社会諮問委員会」の初代委員 9 名が選定され、先に述べた法整

備への関与を含めた活動を開始している。なお、ドイツではアッセⅡ研究鉱山閉鎖に際し、

同地に試験処分された廃棄物の再回収が予定されている。回収される廃棄物は I/LLW だが、

現在設置中のコンラート処分場では容量が不足することから、今後選定される HLW処分場

に処分する方向で検討が進められている。

使用済燃料管理:使用済燃料は原子力発電所サイト内の中間貯蔵施設で貯蔵されている。

一方、国外再処理に伴い返還されるガラス固化体は従来、主にゴアレーベンの集中中間貯

蔵施設で保管されてきたが、サイト選定法制定に伴う原子力法改正により、今後返還され

るキャスク 26基分については、新たに原子力発電所サイト近傍での保管が義務づけられた。

これらのキャスクは、国内 4 カ所の原子力発電所サイト内中間貯蔵施設に分散して貯蔵さ

れる方針であり、2015 年 12 月までに連邦政府と受け入れ先 4 州が合意済である。今後、

事業者は受け入れサイトと基数を最終的に確定し、連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE、※

2016 年 7 月の組織変更後)に対し、貯蔵許可申請を提出する見込みである。なお、2016

年 12 月 16 日に議会通過、2017 年内に発効予定の「原子力バックエンドにおける責任分担

刷新法」により、中間貯蔵の実施主体は今後、現在の事業者から連邦が新設する 100%国営

組織に移管される予定である。

規制・実施体制:2016 年 7 月の「最終処分分野における組織体制刷新のための法律」発効

に伴って原子力法等が改正され、ドイツでは放射性廃棄物処分の実施主体や規制体制が変

更された。

放射性廃棄物処分の実施主体:連邦放射線防護庁(BfS)から 100%国営組織「連邦放

射性廃棄物機関(BGE)」(※新設)に変更。

BfE の名称変更と管轄拡大、BfSの管轄縮小:BfE の名称を「連邦放射性廃棄物処分庁」

から「連邦放射性廃棄物処分安全庁」に変更(略称変わらず)。放射性物質の貯蔵・輸

送許可、放射性廃棄物の国家管理、原子力技術安全に係る業務等、従来 BfS が担って

いた業務の大部分が BfE に移管。BfE が処分場関連規制だけでなく幅広い分野を所管

する一方、BfSは専ら放射線防護関連の業務に注力することとなった。

こうした変更の背景には、実施主体(BfS)と規制機関(BfE)が共に、連邦環境省傘下

の連邦官庁であるという従来の処分事業体制では規制機関の独立性が担保されないとの批

判があったことなどがある。処分委員会は 2015 年 4 月に政府に体制変更を求める決議を採

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60

択し、政府は委員会報告書の提出に先立ち法改正の取り組みを進めていた。

組織体制に加え、ドイツでは放射性廃棄物の中間貯蔵・処分に必要な資金の管理方法の

変更も予定されている。ドイツでは現在、こうした費用を事業者が引当金を計上して確保

し、各自で管理している。しかし、2016 年 4 月に報告書を提出した「脱原子力に係る資金

確保に関する検討委員会」はこれらの資金の管理を連邦の公的基金に移行することを勧告

した。この勧告は法制化のため、法案パッケージである「原子力バックエンドにおける責

任分担刷新法」案に盛り込まれた。同法案は 12 月 15 日に連邦議会で可決され、翌 16 日に

参議院の承認を得て成立した。同法は EU の国家補助規制に照らした審査を経たうえで、

2017 年中に発効する見込みである。

安全規制

2011 年の福島第一原子力発電所事故後、ドイツ政府は EU のストレステストに先立ち、

全原子炉の安全検査を実施した。国内に原子炉の安全上大きな問題は確認されなかったも

のの、2022 年末までに全原子炉を閉鎖する方針を決定し、2011 年 8 月に改正原子力法が発

効した。

ドイツでは 2000 年代前半から、1970~80 年代に作成された安全要件の最新化への取組

が続けられてきた。福島第一原子力発電所事故の教訓等もふまえ、2011 年 11 月、原子力安

全規制の最高監督官庁である連邦環境省(BMU)と、規制業務の執行を担当する各州当局

は、原子力発電所の運転に関する新しい安全要件『原子力発電所に対する安全要件』につ

いて合意し、同安全要件は 2013 年 1 月に官報公示された。

なお、2013 年末の第 3 次メルケル政権発足に伴い、原子力規制の最高監督官庁である連

邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)

に改編された。また 2014 年には、処分場関連規制を州から移管して集約する目的で、新た

に連邦放射性廃棄物処分庁(BfE、現在の連邦放射性廃棄物処分安全庁)が設置された。上

述の通り、2016 年 7 月の法改正により BfE の所管範囲は大幅に拡大されている。

●原子力企業動向

原子力産業

ドイツではシーメンス社が1960年代から国内外への原子力発電関連機器の供給で中心的

な役割を担ってきた。しかし政府の脱原子力政策開始により国内市場拡大が見込めなくな

ったことから、2001 年以降、フランスのフラマトム社との合弁企業(現 AREVA NP 社)

のもとで活動を続けてきた。

しかし、シーメンス社は2009年に合弁解消の方針を発表してAREVA社から撤退し、2011

年には原子力事業からの撤退を決定した。その後もシーメンスは世界有数の重電メーカー

として、非原子力機器の供給やエンジニアリング等を中心に、AREVA 社等とコンソーシア

ムを組んで原子力施設建設等の事業に関与している。なお、同社は 2014 年 6 月、三菱重工

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業と共に、仏アルストム社のエネルギー事業部門に関する提携・買収に係る共同提案をア

ルストム社に提出したが、米国ゼネラル・エレクトリック(GE)社に敗れている。

シーメンス社が AREVA に参画していたこともあり、ドイツ国内には現在、AREVA 社の

拠点が複数立地しているが、AREVA 社は 2015 年 4 月、経営合理化策の一環として、2016

年半ばまでにドイツ国内の事業拠点を統合整理する計画を発表した。

電気事業者

ドイツでは 1998 年の電力自由化後の電気事業再編により、E.ON、RWE、EnBW、

Vattenfall(スウェーデン企業)の 4 大グループ体制が形成された。2008 年以降発送電分

離が進み、現在は EnBW を除く 3 社が送電部門を売却済みである。

ドイツ国内の原子力発電所は全てこれら 4 大グループの傘下にある。E.ON 社や RWE 社

は 2000 年代後半、国外での原子力拡大事業にも積極的に進出する姿勢を見せた。しかし欧

州の経済情勢の悪化や国内原子力政策の影響もあり、現在までに全ての国外での新規建設

計画から撤退している。

卸電力価格の低迷や再エネ優遇政策の影響に伴う主力の火力部門の不振により、4 大グル

ープはいずれも厳しい経営環境に置かれている。

そのような中、ドイツ最大のエネルギー事業者だった E.ON 社は、2016 年 9 月に火力発

電事業等を新会社 Uniper にスピンオフし、同社はダウンサイジングして再エネと顧客ソリ

ューションを主業務とすることになった。なお、2014 年 11 月に公表された当初計画では、

原子力部門もスピンオフ対象に入っていたが、2015 年 9 月に計画が変更され、ドイツ国内

の原子力関連資産は E.ON 傘下に残ることとなった。これは、新会社の責任能力等を不安

視したドイツ連邦政府が、スピンオフによる支配権喪失後も、元の親会社である E.ON の

責任を存続させる内容の法案(二次責任法案)策定に着手したことを受けたものである。

E.ON 社は原子力部門のスピンオフを断念したが、政府は「原子力バックエンドにおける責

任分担刷新法」案の中にこの二次責任法案の改訂版を盛り込んでおり、2017 年内には法律

が発効する見込みである。

2015 年 12 月には、ドイツの電気事業者として E.ON と双璧をなす RWE 社も、企業再

編計画を発表し、2016 年に再エネ・配電・小売部門を分社化した。新会社の株式の 1 割程

度を公募増資し、残る 9 割は親会社である RWE 社が保有している。なお、原子力を含む在

来型発電事業は、親会社の元に留まっている。

<2011 年の福島第一原子力発電所事故後の政府の原子力政策変更を巡る訴訟>

2011 年の福島第一原子力発電所事故後の政府の原子力政策変更を巡って、電気事業者ら

は複数の訴訟を提起した。代表的な訴訟は以下の 2 件である。

モラトリアム訴訟

福島第一原子力発電所事故後の原子炉停止指示(モラトリアム)を不服として RWE 社

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が提起。2014 年 1 月に、州によるビブリス A、B 号機の一時停止措置を違法と認める

行政裁判決が確定。この司法判断を受け 2014 年末までに RWE 社、E.ON 社、EnBW

社が連邦と州を相手取り、所有する原子炉の一時停止に係る損害賠償を求める通常裁

判を提起。

2011 年原子力法の違憲訴訟

E.ON、RWE、Vattenfall3 社が、2011 年原子力法改正において、2010 年原子力法に

おける運転延長の撤回などがあったにも拘わらず、賠償規定がないのは違憲と主張。

連邦憲法裁判所は 2016 年 12 月、2011 年原子力法は概ね合憲で、補償なしでの運転延

長撤回に違憲性はないとしつつも、一部の事案について補償の必要性を認め、該当す

る補償条項を 2018 年 6 月までに原子力法に盛り込むよう立法者に命じる判決。

連邦政府は現在、事業者との「バックエンド協定」交渉を進めており、バックエンドの

体制見直し・資金基金化の取り組みと併せて、一連の法廷闘争を終結させる方向で調整を

進めている。既に事業社側は、上掲の訴訟のうち、モラトリアム訴訟を含む複数の裁判の

取り下げを政府側に申し入れているが、係争中の事案も残っており、今後の行方が注目さ

れる。

●出典

CDU・CSU・FDP 連立協定, "WACHSTUM. BILDUNG. ZUSAMMENHALT",

2009.

CDU・CSU・SPD連立協定, " Deutschlands Zukunft gestalten", 2013.

CIA, The World Factbook

IAEA, Nuclear Fuel Cycle Information System (NFCIS)

M.Weis, M. Flakowski, R. Haid, F. Plaputta, F Volker, Plutonium-Verwertung:

40 Jahre MOX-Einsatz in deutschen KernkraftwerkenAtomwirtschaft,

December 2006.

UN, Energy Statistics Yearbook

2002 年原子力法

2010 年原子力法

2011 年原子力法

2013 年サイト選定法

2014 年再生可能エネルギー法

2015 年廃止措置・廃棄物管理費用に係る二次責任法案

連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)ウェブサイト

連邦経済・技術省(BMWi)ウェブサイト

連邦政府ウェブサイト

連邦放射線防護庁(BfS)ウェブサイト

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連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)ウェブサイト

高レベル放射性廃棄物処分委員会最終報告書

連邦憲法裁判所ウェブサイト

欧州司法裁判所ウェブサイト

連邦経済・エネルギー省(BMWi), Energiekonzept für eine umweltschonende,

zuverlässige und bezahlbare Energieversorgung, September 2010

原子力安全条約ドイツ第 6 回ナショナルレポート

RWE 社ウェブサイト

E.ON 社ウェブサイト

EnBW 社ウェブサイト

Vattenfall 社ウェブサイト

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64

(3) 英国

●基本情報

面積 24.3 万 k ㎡ 人口 6,511 万人

公用語 英語

通貨 1 ポンド=約 147.06 円(2016 年 12 月 16 日付)

政治体制 立憲君主制

議会 二院制(上院、下院。下院は 650 議席)

2015 年 5 月の下院選挙で保守党が 331 議席を獲得し、単独与党に。

政府 首相 テリーザ・メイ

GDP 1 兆 7,890 億ポンド(2015 年実質)

成長率 2.2%(2015 年実質)

設備容量:888.3 万 kW 発電電力量:639 億 kWh 運転中:15 基 (AGR14 基、PWR1 基) 建設

中:0 基(建設前:1 基) 計画中:12 基 原子力シェア:18.9%

2008 年以降、原子炉新設推進方針。また福島第一原子力発電所事故後も、その教訓を生かす意向を示

しつつ推進方針を維持。仏 EDF と中国 CGN、日立、東芝および仏 ENGIE が、ほどなく運転寿命を迎

える既存炉のサイト周辺等における新設を計画または検討中。なお政府は、事業者による原子炉新設の

ための資金調達における政府債務保証の提供や、固定価格買取差額決済契約(FIT CfD)制度の原子力

発電への適用といった支援策を打ち出している。

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65

経済の特徴及び概況

フランス・ドイツに次ぐ欧州第 3 の経済規模を有する。英国経済は、内需の下支えに

より成長が継続していたが、2016 年 6 月 23 日の EU 国民投票の結果、英国の EU 離

脱が決定。今後の見通しについて下方修正が続いたが、現在のところ英経済は予想よ

りもかなり良好な状態で推移している。

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):875 石炭:

188,340 天然ガス:2,060 億(立方メート

ル) ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

1 億 7,942 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

60.3%(原子力含)、51.1%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):9.3%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:64,238 水力:4,467 原子力:9,937 その他:18,367

電力供給体制の概

1990 年に原子力発電以外の電力事業が、1996 年に大部分の原子力

発電所が民営化され、現在運転中の原子炉は全て民間事業者が運転。

送電についてはイングランド・ウェールズ、南北スコットランド、

北アイルランドの 4 つの系統があり、配電については国内の発電も

手掛ける事業者を含め 6 社が担っている。

電源種別発電電力量

1990 年の電力自由化以降、天然ガスへの転

換が進み、電源構成に占めるシェアは当時の

1%程度からピーク時には約 40%までに伸

びた。しかし、北海油田での化石燃料は生産

が減少して現在ではすべての化石燃料が輸

入超過であることや、地球温暖化の観点等か

ら原子力などの役割が期待されている。

16.7%

32.7%33.3%

9.3%

0.3%7.8%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1億7,942万

石油換算トン

102,014

1,670100,670

63,748

5,88562,055

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

336,042GWh(単位はGWh)

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電力消費量

(百万 kWh)

303,558

発電電力量

(百万 kWh)

336,042

輸入電力量

(百万 kWh)

20,523

電力需要の推移と見通し

英国政府は暖房・輸送・一部産業の電化進展と経済・人口成長によって電力需要は増加し

続け、2011 年時点で 2050 年には約 2 倍までになるとみており、需要削減政策も進めてい

る。また一方で政府は、容量市場が開始される 2018 年までの厳しい電力供給状況に対処す

るため、現在稼働していない発電所のピーク時利用に向け系統会社のナショナル・グリッ

ド社やガス・電力市場規制局(Ofgem)と協働している。

●エネルギー政策・計画

英国は、過去においてエネルギー供給の大部分を化石燃料に依存してきたが、気候変動

への対応や、北海における石油や天然ガスの生産量の減少に伴い、低炭素エネルギーシス

テムの構築に注力している。

2003 年 2 月のエネルギー白書「英国のエネルギーの将来:低炭素経済の創設」の公表時

点では、原子力発電は将来のオプションとして維持するとされたのみであった。しかし、

その後期待された再生可能エネルギーの拡充は行き詰まり、2004 年からは化石燃料の純輸

入国となり、2020 年までの国内の発電所の閉鎖も多く見込まれるなどエネルギー・セキュ

リティの問題も浮上したため、政府は 2005 年 11 月よりエネルギー・レビューに着手した。

その結果として 2008 年 1 月、原子力発電に関する白書(原子力白書)が発行され、原子力

発電はエネルギー・セキュリティ及び気候変動対策において重要な役割を果たせる低炭素

電源であるとして推進が決定された。

同年 11 月に成立した気候変動法では、2050 年までに温室効果ガスを 1990 年比で 80%

削減する目標値が規定された。同法における温室効果ガス削減目標の達成を視野に入れ、

2009 年 7 月には、2020 年までに排出量を 1990 年比で 34%削減するための方策等を示し

た「英国低炭素移行計画」が発表された。電力部門における 2020 年までの削減目標は約

50%とされ、さらに、同年までに低炭素電源のシェアを 40%(原子力及びクリーンコール

で 10%分、再生可能エネルギーで 30%分)にすることとされている。

また、低炭素発電電力の導入促進のため、固定価格買取差額決済契約(FIT CfD)制度や

容量市場制度を含む電力市場改革(EMR)の詳細枠組みを定めた 2013 年エネルギー法の

もと各制度の詳細実施内容について規定する下位法令が策定され、FIT CfD や容量市場制

度が開始されている。

●原子力政策・計画

原子力発電

英国政府が 2008 年 1 月に原子炉新設推進を決定して以降、新設に向けて投資を呼び込む

ために、以下のような施策が実施されている。

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炉型を事前に認証する原子炉の一般設計評価(GDA)

計画許認可プロセスを統合・効率化した 2008 年計画法の制定

事業者から応募のあった新設候補サイトに対する戦略的サイト評価(SSA)の実施

電力市場改革(EMR)における固定価格買取差額決済契約(FIT CfD)制度の原子力

発電への適用

炭素価格下限値(CFP)の設定

原子力発電を含め重要インフラ新設のための事業者による資金調達における政府債務

保証

原子力発電を含め重要インフラ新設立地自治体への新しい財政支援策

ただし英国政府は、新設実現は最終的には市場原理に委ね、民間事業者の判断に任せる

としている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

英国内にはウラン資源が存在しないため、ウランは全て輸入に依存している。ウラン濃

縮業務は、英・独・蘭による国際共同企業体のウレンコ社が実施している。英国政府は、

ウレンコ社の全株式のうちの 33%を保有している。

転換・燃料加工については、ウェスティングハウス(WH)社の子会社スプリングフィー

ルズ燃料会社が実施している。

再処理については、NDA 所有のセラフィールド・サイトにおいて、NDA の子会社セラ

フィールド(SL)社が、マグノックス社の既存原子力発電所(全て GCR)と EDF エナジ

ー社の既存原子力発電所(全て AGR)から発生する使用済燃料をそれぞれマグノックス燃

料再処理工場と酸化物燃料再処理工場(THORP)で再処理している。政府は GCR の使用

済燃料については全量再処理、AGR の使用済燃料及び海外起源の使用済燃料については少

なくとも既契約の履行が完了する 2018 年までは THORP を操業する方針である。また、国

内起源の使用済燃料を再処理するか否かは事業者の判断に委ねられているが、政府は AGR

から発生する使用済燃料で THORP での再処理契約量を超える使用済燃料及び新規原子炉

から発生する使用済燃料については再処理を想定しておらず、事業者が再処理を希望する

場合は協議を行うとしている。

プルサーマルについては、英国内で混合酸化物(MOX)燃料の装荷を許可された原子力

発電所はなく、専ら海外顧客の使用済燃料を対象として SL 社が混合酸化物(MOX)燃料

加工プラント(SMP)を操業していたが、実績低迷に加えて福島第一原子力発電所事故発

生後の日本の原子力状況を踏まえた商業的な判断として、NDA は 2011 年 8 月、SMP の閉

鎖を発表した。一方で政府は、プルトニウムの長期管理方針について 2012 年 12 月、MOX

燃料としての利用が最適であるとした。しかし、NDA は MOX 燃料としての再利用に加え

GE 日立の PRISM(ナトリウム冷却高速炉)や CANDU エナジー社の改良型 CANDU6 炉

(EC6)での再利用についての検討も継続して行うとしている。なお、MOX 燃料利用のた

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めには SMP に代わる第 2 の MOX 燃料製造工場が必要となる。

放射性廃棄物管理・処分

英国では低レベル放射性廃棄物はドリッグとドーンレイ低レベル放射性廃棄物処分場に

て浅地中処分されている。英国政府は 2006 年 10 月に、低レベル放射性廃棄物のうち浅地

中処分できないものと中高レベル放射性廃棄物について、中間貯蔵の後、地層処分とする

方針を決定した。2008 年白書「放射性廃棄物の安全な管理:地層処分実施に向けた枠組み」

において処分場サイト選定プロセスが示され、立地に向けた公募が開始されたが、関心を

表明していた 3 つの自治体は 2013 年 1 月、選定プロセスから撤退した。これを受けて政府

は 2014 年 7 月に地層処分の実施に関する白書(地層処分白書)を発行し、新たなサイト選

定プロセスを提示した。新選定プロセスでは、最初の 2 年間が「英国政府及び実施主体に

よる初期活動」期間とされ、スコットランドを除く英国全土を対象とした地質学的スクリ

ーニング調査や、関心を示した自治体との間でのサイト選定活動における協働方法の決定

等が行われる。その後の 15~20 年間が「関心を示した自治体と実施主体との正式な協議」

期間とされ、自治体との間で実施される正式協議にもとづいて、ボーリング等の詳細な地

質調査等を実施し、最終的に自治体の合意を得て、地層処分場に適したサイトを 1 カ所選

定することになる。なお、同白書では、地層処分の実施主体が、原子力廃止措置機関(NDA)

から 2014年 4月にNDAの完全子会社として設置された放射性廃棄物管理会社(RWM社)

に移管されている。

安全規制・安全対策

原子力安全規制は、2013 年エネルギー法により独立法定組織として設置された原子力規

制局(ONR)が管轄している。なお、英国政府は原子力安全全般に関する責任を有してい

る。

ONR は原子力施設に対する 10 年毎の定期安全レビュー(PSR)を実施する。この PSR

で施設操業に関する安全要件が満たされていることが確認された場合のみ、当該施設の操

業の継続が認められる。

2011 年福島第一原子力発電所事故後、ONR によって事故の教訓を安全要件等に反映し、

安全規制・対策を継続的に強化する取組が進められている。

新原子炉建設に向けた規制活動

ONR 等の規制当局は、2013 年 1 月に開始した日立 GE ニュークリア・エナジー社の

ABWR の一般設計評価(GDA)を 2017 年 12 月までに完了する予定である。ABWR の GDA

は 2014 年 1 月に開始された第 2 段階が同年 8 月に、第 3 段階が 2015 年 10 月に終了し、

現在は最終段階である第 4段階に入っている。また、2011年 12月にGDAにおけるAP1000

の暫定認証の取得以降、採用顧客が未定であるために作業を中止していた WH 社は、東芝

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が主導する形で計画が進められているムーアサイド原子力発電所で同炉型の採用が決定さ

れたことから、2014年8月にGDAにおける最終認証取得に向けた作業を再開した。AP1000

の GDA は、2017 年 3 月に完了する見込みである。さらに、EDF エナジー社のサイトであ

るブラッドウェルにおける新設に採用が検討されている中国の国産炉である中国広核集団

(CGN)の華龍 1 号の GDA については、2017 年 1 月に英国政府より規制当局に対して開

始要請が行われた。

●原子力企業動向

原子力発電分野ではフランス電力(EDF)の英国子会社 EDF エナジーが改良型ガス冷却

炉(AGR)14 基と PWR1 基を運転している。核燃料サイクル分野では、ウラン濃縮を英

独蘭政府が共同所有するウレンコ社が、燃料加工を WH 社が、再処理を NDA との契約の

もとセラフィールド社が、低レベル放射性廃棄物処分を NDA との契約のもと低レベル放射

性廃棄物処分場(LLWR)社が実施している。

新規原子炉建設に関する動向

現在、以下のような新設が計画されている。

親会社 出資割合 英国子会社

(建設・運転者) 炉型 基数 サイト

EDF 66.5% NNBG(HPC)社 EPR 2

ヒンクリーポイ

ント C(HPC) CGN 33.5%

EDF 80% NNBG(SWC)社 EPR 2

サイズウェル C

(SWC) CGN 20%

EDF 33.5% NNBG(BWB)社 華龍 1 号 2

ブラッドウェル

B(BWB) CGN 66.5%

日立製作所 100% ホライズン社 ABWR 2 ウィルヴァ

ABWR 2 オールドベリー

東芝 60% Nugeneration 社 AP1000 3 ムーアサイド

仏 ENGIE 社 40%

EDF、CGN、英国政府の 3 者は 2016 年 9 月、FIT CfD を含め HPC に関する政府支援

内容に関する契約を締結し、HPC の新設のみが正式に決定されている。同契約により、HPC

と SWC の両発電所を建設する場合の固定買取価格(ストライク・プライス)は 89.5 ポン

ド/MWh、HPC のみの場合はコスト削減効果が見込まれないことから 92.5 ポンド/MWh

となっている。このストライク・プライスは運開から 35 年間適用される。また、英国政府

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70

は HPC 建設のための資金調達において約 20 億ポンドの借入れに対して政府が債務保証を

付与することを承認していたが、EDF 側は当分の間、債務保証申請をしない意向を示して

いる。

なお、HPC への FIT CfD 制度の適用や建設資金調達における政府の債務保証といった英

国政府による支援について、欧州委員会は EU の国家補助(State Aid)規則に抵触するか

否かを審査した結果、抵触しないという結論に至ったことを2014年10月に発表している。

ホライズン社、NuGeneration 社は現在、新設に関する許認可申請準備等を進めるとともに、

政府支援内容について政府と協議中である。

容量市場制度に関する動向

英国のナショナル・グリッド社は 2016 年 12 月 20 日、英国で 3 回目となる容量市場に

ついての競争入札結果が最終確定されたことを公表した。これにより、以下のように既存

の 8つの原子力発電所を含む発電設備容量が 2020年 10月~2021年 9月の 1年における容

量市場の対象として確定され、これらの設備は確定された容量に基づいて確実に電力を供

給する義務を負う一方、容量 1kW 当たりの報酬を得る。

対象期間 対象容量 報酬単価(£/kW)

2018 年 10 月~2019 年 9 月 約 4,926 万 kW 19.4

2019 年 10 月~2020 年 9 月 約 4,635 万 kW 18.0

2020 年 10 月~2021 年 9 月 約 5,243 万 kW 22.5

廃止措置・クリーンアップ事業に関する動向

英国政府は 2015 年 1 月 13 日、セラフィールド・サイトでクリーンアップ事業等を実施

しているセラフィールド(SL)社の事業管理方法の変更を承認した。従来は原子力廃止措

置機関(NDA)との契約に基づき、仏 AREVA、英 AMEC、米 AECOM テクノロジーのコ

ンソーシアムである原子力管理パートナーズ(NMP)社が SL 社の親会社(PBO)として

事業管理を行ってきたが、NDA は 1 年間のレビューの結果、NMP 社との契約の中途解約、

及び SL 社の子会社化を決定した。2016 年 4 月から開始された新たな管理方法の特徴は

NDA の子会社となった SL 社が、民間企業の中から競争入札により選定される戦略的パー

トナーと 10 年程度の契約を締結し、サイト操業についてのアドバイスや支援を受けて操業

を実施することにある。なお、NDA は SL 社以外の NDA のサイトの操業者については、

PBOによる現状の管理方法を維持するとしている。

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●出典

Energy Network Association ウェブサイト

英国政府ウェブサイト

原子力規制局(ONR)ウェブサイト

原子力廃止措置機関(NDA)ウェブサイト

EDF エナジー社ウェブサイト

ホライズン社ウェブサイト

NuGeneration 社ウェブサイト

AREVA 社ウェブサイト

Westinghouse 社ウェブサイト

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(4) スイス

●基本情報

面積 4.1 万 k ㎡ 人口 824 万人

公用語 ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語

通貨 スイスフラン(2015 年 7 月現在,1 スイスフラン約 130 円)

政治体制 連邦共和制

議会 二院制:上院〔全州議会〕(46 議席/各州の代表)、下院〔国民議会〕(200

議席/任期 4 年)

政府 シモネッタ・ソマルーガ大統領

(大統領は 7 名の大臣の輪番制、任期 1 年)

GDP 6,359 億スイスフラン(2013 年)

成長率 2.0%(2014 年実質)

経済の特徴及び概況

2014 年貿易黒字は前年度比 26%増となる過去最高額を更新した。堅実な財政を維持し

ている。2015 年に入り、スイスフランのユーロ等に対する為替相場高騰の影響もあり、

成長率は鈍化している。

設備容量:333.3 万 kW 発電電力量:222 億 kWh

運転中:5 基(BWR2 基、PWR3 基)建設中:0 基 計画中:0 基 原子力シェア:33.5%

原子力は水力と並ぶ主要電源。福島第一原子力発電所事故後の政策見直しの結果、2011 年 5 月に政府

が段階的に原子力発電から撤退する方針を決定、検討中の原子炉建設・リプレース計画は破棄された。

2016 年 11 月の国民投票では、既存炉の早期閉鎖を求める国民発議が否決された。2018 年初には新規

炉建設禁止・既存炉の運転期間制限なしを軸とする原子力法改正が発効する見込みである。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):該当データ

なし 石炭:該当データなし 天然ガス:該

当データなし ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

2,505 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

52.9%(原子力含)、24.2%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):28.8%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:993 水力:13,743 原子力:3,308 その他:1,121

電力供給体制の概

発電部門の 80%を国内の大手 4 グループ(Alpiq、AXPO、BKW、

EWZ)が占めている。送電事業については、2013 年以降、国内単一

の送電会社「スイスグリッド」に完全移行され、所有権分離が完了

している。配電事業はほとんどが公営事業者によって行われている。

電源種別発電電力量

スイスは水力資源の豊富な国であり、発電電

力量の 6 割程度を水力発電が占めている。原

子力は水力に次ぐ第 2 の電源であり、冬場に

出力が低下する水力を補完する重要な役割

を果たしている。

電力消費量

(百万 kWh)

57,453

発電電力量

(百万 kWh)

70,102

輸入電力量

(百万 kWh)

-5,488

電力需要の推移と見通し

2011 年 3 月の福島第一原子力発電所事故を受けてスイス政府が同年 5 月に公表した「エネ

ルギー見通し 2050」における電力需要予測では、2010 年の実績 59.7TWh に対し、脱原子

力を前提としたレファレンスケース「政府提案対策」における 2050 年の予測値が 68.5TWh

とされている。政府はこの見通しに基づき、段階的脱原子力を前提とした政策的取組「エ

ネルギー戦略 2050」を進めている。

0.6%

37.5%

10.7%

28.8%

13.1%

9.4%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

2,505万

石油換算トン

42521

27,557

38,036

3,946石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

70,102GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

スイスでは、水力と原子力という低炭素電源で総発電電力量の 9 割を賄う電源構成が維

持されてきた。しかし 2011 年 3 月の福島第一原子力発電所事故を受け、既存炉のリプレー

スを行わないことで段階的に脱原子力を進める方針が決定された。現在政府が進めている

「エネルギー戦略 2050」では、脱原子力に伴い、省エネを強化するとともに水力及び再生

可能エネルギーを拡充する方針だが、短期・中期的には電熱併給やガス複合発電等の増設、

電力輸入の増加も視野に入れている。特に火力発電設備の新設については、温室効果ガス

排出の増加が懸念される。

●原子力政策・計画

原子力発電

スイスでは 4 カ所の原子力発電所において、計 5 基の原子炉(BWR2 基、PWR3 基、総

設備容量約 325 万 kW)が運転されている。原子力発電は総発電電力量の 4 割弱を占め、

水力発電と並ぶ主力電源である。1986 年のチェルノブイリ原子力発電所事故の影響で、

1990 年の国民投票により新規原子炉の建設が 10 年間凍結(モラトリアム)されたが、期

限到来時の国民投票では原子力発電の継続が選択され、既存炉の運転期間を制限せず、新

規炉の建設も禁止しない内容の原子力法が成立した(2005 年発効)。

その後、2007 年の「2035 年までのエネルギー見通し」で政府が原子炉新規建設をオプシ

ョンに含むシナリオを提示したこともあり、2010 年末の時点では、原子力発電事業者 3 社

が合同で 2 基の建設・リプレースを目指す方針を示し、連邦エネルギー庁(BFE)も 2012

年内の政府決定を見込んでいた。

しかし、2011 年 3 月の福島第一原子力発電所事故後、スイス連邦評議会(内閣)は 5 月

にエネルギーシナリオ見直しを反映した「エネルギー戦略 2050」を閣議決定した。同戦略

では、原子炉のリプレースを行わず、段階的に原子力から撤退する方針が示され、この方

針を実現するために必要な、原子力法を含む一連の法改正等を盛り込んだ「エネルギー戦

略 2050 政策パッケージ」が策定された。なお、同パッケージに含まれる原子力法改正案(政

府案)は、リプレースは禁止するものの、既存炉の運転期間に制限を設けない内容となっ

ている。

同パッケージは 2016 年 9 月 30 日に議会を通過した。スイスでは法案の議会通過に、上

下両院の完全一致が必要である。原子力法改正について、両院は原子炉の新設・リプレー

ス禁止では早期に合意した。一方既存炉の長期運転制限に関しては、支持する下院と反対

する上院の調整が長引いていたが、最終的には既存炉の運転を制限しないことで決着した。

なお、スイスの国民投票・国民発議制度に基づき、緑の党が 2012 年に成立させた脱原子

力イニシアチブ(全炉の運転期間を 45 年に制限。脱原子力を憲法に規定)について、スイ

ス国民は 2016 年 11 月 27 日に実施された国民投票でこのイニシアチブを否決した。このま

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まいけば 2017 年内にも既存炉の運転を制限しない内容の原子力法ほか「政策パッケージ」

に含まれる一連の法律が発効すると見込まれていたが、脱原子力に反対するスイス国民党

が、原子力継続を求め政策パッケージの廃案を問う国民投票を提起し、2017 年 5 月に国民

投票が実施されることになった。ただしスイス国民党の提案が賛成多数を得る可能性は低

いことから、政府は現在、一連の法律の 2018 年初の発効を見込んで、関連政令の策定作業

を進めている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

スイス国内にはウラン濃縮、転換、燃料加工、再処理施設は立地しておらず、すべて国

外に委託している。

スイスは従来、使用済燃料を全量再処理する方針であったが、2005 年施行の原子力法に

おいて、既存の契約が終了する 2006 年 7 月から 10 年間、再処理を凍結することが盛り込

まれた(再処理モラトリアム。10 年間延長可能)。なお、このモラトリアムは現在、原子力

法改正途上であることから延長されている。2018 年発効見込みの改正原子力法には、再処

理の禁止が盛り込まれている。このためスイスでは今後、モラトリアムが解除されないま

ま再処理が終了する見通しである。

なお、英国及びフランスとの既契約分については 2014 年末までに全て再処理済であり、

回収されたプルトニウムは MOX 燃料に加工され、スイス国内の原子炉に装荷される(BWR

燃料からの回収分も含め、MOX 燃料は全て PWR に装荷)。

放射性廃棄物管理・処分

スイスでは現在、2008 年に閣議決定された特別計画「地層処分場」に沿って、放射性廃

棄物処分場のサイト選定が進められている。同計画に基づき、高レベル放射性廃棄物(HLW)、

低中レベル放射性廃棄物(I/LLW)はともに地層処分される。処分の実施主体は、廃棄物発

生者が共同出資する放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)である。

特別計画「地層処分場」では、3 段階の手続きを経てサイトの絞り込みを行う。第 1 段階

では、2008 年に地層処分場の候補地域 6 エリア(ジュラ東部、ジュラジュートフス、北部

レゲレン、ズュートランデン、ヴェレンベルク、チューリヒ北東:全て I/LLW の処分可能。

うち 3 カ所では HLW の処分も可能)が選定され、2011 年 11 月末に連邦政府の承認を受け

た。

現在、手続きは第 2 段階にある。第 2 段階では地元住民や自治体等との協働のもと、エ

リアの絞り込みに向けた作業が進められ、NAGRA は 2015 年 1 月、選定プロセスの最終段

階(第 3 段階)における詳細調査の対象(優先候補)として、チューリッヒ北東とジュラ

東部の 2 カ所(いずれも I/LLW・HLW 双方に対応可能)を連邦エネルギー庁(BFE)に

提案したことを公表した。ただし、その後の審査の過程で、連邦原子力安全検査局(ENSI)

が、NAGRA が優先候補から外した北部レゲレンの関連データに不備があると指摘した。

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76

NAGRA は BFE の指示に基づき追加資料を提出したが、ENSI は 2016 年 12 月に、同地

域を第 3 段階の検討から除外すべきでないとの見解を示しており、現在 NAGRA は 2 つの

優先候補に北部レゲレンを加えた 3 地域を対象に、第 3 段階の詳細調査に向けた準備作業

を実施中である。第 3 段階における NAGRA の最終的なサイト提案は 2020 年頃、サイト

の確定は 2027 年頃と見込まれている。

なお、スイスでは原子炉運転停止後に発生する放射性廃棄物管理費用および廃止措置に

関する費用をそれぞれ公的基金により確保・管理しているが、2015 年 1 月 1 日に発効した

改正廃止措置・廃棄物管理基金令(SEFV)に基づき、費用増大や基金の運用実績の低迷に

備える措置として、費用見積額の 3 割に相当する予備費(コンティンジェンシー)が新た

に上乗せされ、事業者の負担する拠出金が大幅に引き上げられた。

安全規制

スイスでは福島第一原子力発電所事故後、同国単独の取組として既存の原子炉の安全点

検(ストレステスト)を行い、この取組の一環として、EU ストレステストにも参加した。

スイス独自のストレステストは原子力規制を担う連邦原子力安全検査局(ENSI)の主導で

行われ、事業者への検査指示や改善指示、事業者による実施報告とこれに対する ENSI の

フィードバックを段階的に行う形で進められ、その取組は現在も続けられている。

スイスは2011年に原子炉のリプレースを行わず段階的に脱原子力を進める方針を決定し

ており、今後は残余の運転期間における原子力安全に注力することになる。

なお、スイスのベツナウ 1 号機(現在稼働中の商用炉としては世界最古)では 2015 年 7

月、2012 年にベルギーのドール 3 号機及びチアンジュ 2 号機に原子炉容器に欠陥の兆候が

発見された問題に関連して実施された原子炉圧力容器材料の超音波検査において、数カ所

で製造プロセスに起因するとみられる軽微な異常の兆候が確認され、ENSI に報告を行った。

これをうけ、ベツナウ 1、2 号機では定検停止期間を延長して運転事業者である AXPO によ

る分析や ENSI による評価が実施されている。2 号機は 2015 年 12 月末に ENSI から再稼

働許諾を得て運転を再開したが、1 号機に関しては 2017 年 3 月現在も停止状態が続いてい

る。

●原子力企業動向

スイスでは、AXPO 社、BKW社、Alpiq 社が原子力発電所を所有しており、福島第一原

子力発電所事故以前には、既存炉のリプレースを中心とした原子炉建設計画に着手してい

た。しかし政府の方針転換によりリプレース計画が中止となり、2011 年は AXPO 社を中心

に大幅な減益を記録した。

また、BKW 社のミューレベルク原子力発電所(MARK-I 型)については、福島第一原子

力発電所事故後に安全性を疑問視する議論が起き、2013 年内の停止を命じる判決も出され

係争中であったが、BKW 社は長期運転に伴うバックフィットなどの投資の回収が不可能で

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77

あるとして、同発電所を 2019年 12月 20日に閉鎖することを決定した。同発電所はかつて、

スイスの原子力発電所で唯一期限付きの運転認可を受けていたが、2009 年に期限が撤廃さ

れていた。

●出典

IAEA, Nuclear Fuel Cycle Information System (NFCIS)

原子力法(KEG) vom 21. März 2003.

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)ウェブサイト

連邦エネルギー庁(BFE)ウェブサイト

連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)ウェブサイト

連邦原子力安全検査局(ENSI)ウェブサイト

連邦議会ウェブサイト

NAGRA ウェブサイト

BKW社ウェブサイト

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(5) ベルギー

●基本情報

基本

情報

面積 3 万 k ㎡ 人口 1,135.3 万人

公用語 オランダ語、フランス語、ドイツ語

通貨 1 ユーロ=121.06 円(2017 年 2 月 13 日)

政治

政治体制 立憲君主制

議会 二院制(下院:150 名,上院:60 名)

政府 首相 シャルル・ミシェル(仏語系自由党(MR))

経済

GDP 4,701.79 億ドル(2016 年名目)

成長率 1.45%(2016 年)

経済の特徴及び概況

欧州債務危機の影響で特に 2012 年以降低迷していた経済成長率は、ユーロ圏の経

済の持ち直しと内需の微増拡大に支えられて緩やかに回復し、2015 年に 1.4%、

2016 年に 1.2%となった。

設備容量:594.3 万 kW 発電電力量:248 億 kWh 運転中:7 基(PWR7 基)

建設中:0 基 計画中:0 基 原子力シェア:37.5%

2003 年の脱原子力法によって原子炉新設の禁止と原子炉運転年限が定められている。一部原子炉につ

いては、当初想定の運転期間の 40 年を 10 年間延長することが認められているが、2025 年までに全て

の原子炉が閉鎖されることとなっている。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):該当データ

なし 石炭:4,510 天然ガス:0 ウラン:

該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

5,277 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

23.7%(原子力含)、7.1%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):16.6%

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:8,605 水力:1,429 原子力:5,927 その他:4,957

電力供給体制の概要 発電部門では仏 GDF-Suez 社傘下のエレクトラベル社が、原

子力発電を含む国内全ての発電設備容量の約 7割を保有する

第一の発電事業者となっている。送電部門は Elia 社が担当

し、配電については、地域ごとに複数の事業者が配電系統の

運用を行っている。

電源種別発電電力量

ベルギーの発電電力量の約 50%が原子力に

よって賄われている。次いで、天然ガス火力

が全体の約 3 割を占めるが、ベルギーは国内

にエネルギー資源をほとんど有していない

ため、輸入に依存している。

電力消費量

(百万 kWh)

80,558

発電電力量

(百万 kWh)

71,455

輸入電力量

(百万 kWh)

17,605

電力需要の推移と見通し

政府が 2015 年 1 月に公表した電力需要の見通しでは、2010 年から 2030 年にかけて、ベ

ルギーの電力需要は年率 0.76%の割合で増加するとされており、2010 年時点の電力需要が

904億 kWhであったのに対し、2030年の需要は 1,051億 kWhにのぼると見込まれている。

6.3%

42.3%

23.9%

16.6%

10.9%石炭

石油

天然ガス

原子力

その他

一次エネルギー

総供給

5,277万

石油換算トン

4,402217

19,292

33,703

27413,567

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

71,455GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

ベルギーのエネルギー政策は京都議定書の遵守を優先課題とし、再生可能エネルギーの

開発・普及を目指しているが、1999 年の脱原子力政策の開始以降も、政府の専門家委員会

はエネルギー・セキュリティや電力価格安定の観点から原子力発電を含めたバランスの良

いエネルギーミックスを構成するよう提言している。

●原子力政策・計画

原子力発電

ベルギーでは 2003年 2月に制定された「商業原子力発電からの段階的撤退に関する法律」

(脱原子力法)において、新規原子炉の建設禁止、既存炉の運開から 40 年での閉鎖が規定

された。ただし同法には、電力の安定供給が危ぶまれる場合などには原子力発電を継続で

きるとする例外規定があった。

2020-2030 年のエネルギーミックス検討するために政府が設置した専門家グループ

GEMIX が 2009 年 10 月に政府に提出した報告書では、ドール 1、2 号機とチアンジュ 1 号

機を運開から 40 年を迎えた時点で閉鎖すれば、2020 年時点で電力不足に陥る可能性を指

摘し、これら 3 基の運転期間を 10 年延長すること等を勧告した。これを受けて政府は 2009

年 10月、2010年から 2014年にかけて原子力発電による余剰利益に課税することを条件に、

3 基の 10 年間の運転延長を認める方針を決定した。しかし、2010 年 6 月の総選挙後の連立

協議が難航して 1 年以上新政権不在となり、運転延長に必要な法改正手続は進められなか

った。福島第一原子力発電所事故の発生後の 2011 年 10 月には連立協議に参加する 6 政党

が、2003 年の脱原子力法の基本方針を踏襲することで合意し、10 年間の運転延長は白紙撤

回された。

ただし政府は 2012年 6月にとりまとめられた電源開発計画において、2017年までに 120

万~200 万 kW程度の電力が不足する可能性が指摘されたことから、2015 年に運開から 40

年を迎えるチアンジュ 1 号機の 10 年運転延長を同年 7 月に決定し、同機の運転延長、及び

脱原子力法の例外規定の廃止を盛り込んだ法律が 2013 年末に成立した。

その後 2014 年 5 月に実施された議会下院総選挙の結果、同年 10 月にワロン系改革運動

(MR)のミシェル党首を首班とする新政府が発足した。政府は 12 月にドール 1、2 号機の

運転期間を 10 年間延長する方針を決定し、2013 年に改正された脱原子力法の改正法が

2015 年 6 月に成立した。両機の運転延長の条件であった事業者の負担金の支払い及び原子

力事業の余剰利益に対する課税額については、11 月に政府とエレクトラベル社が合意に至

り、2016 年 6 月の再改正により、脱原子力法にも規定された。

なお政府は、ドール 1、2 号機を 2025 年以降運転することはないとし、同年までに国内

7 基の原子炉全てが閉鎖されるとの立場に立っている。

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核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

○フロントエンド

ベルギーは国内にウラン資源を持たず、ウラン採鉱、製錬、転換、濃縮は実施していな

い。軽水炉用燃料の加工施設としては、デッセルに仏 AREVA NC 社傘下の FBFC インタ

ーナショナル社のプラントがある。同プラントでは PWR 用燃料と MOX 燃料の組み立てが

行われている。

○再処理

1986 年に国内での再処理が断念されて以降、ベルギーで発生した使用済燃料の再処理は

フランス核燃料公社(COGEMA:現在の AREVA NC 社)に委託して行われていた。しか

し、1990 年に議会の要請を受けて使用済燃料管理政策の再検討が開始され、2001 年以降を

対象とする再処理契約を凍結することが 1993 年に決まった。さらに同契約は 1998 年 12

月に破棄され、ベルギーは 2000 年を最後に新たな使用済燃料の再処理を実施していない。

ベルギー政府は現在、使用済燃料の再処理と直接処分オプションを比較検討しており、今

後の方針は未決である。

○プルサーマル

ベルギーでは 1960 年代から燃料サイクル技術と施設の開発が開始されたが、現在プルト

ニウムリサイクルは終了している。

放射性廃棄物管理・処分

ベルギーでは、長寿命の低・中レベル廃棄物(カテゴリーB)、及び高レベルと超高レベ

ル廃棄物(カテゴリーC)の地層処分を検討しており、放射性廃棄物処分の実施主体である

放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)がモル・デッセル地域の

地下 230m にある研究施設 HADESにおいて粘土層の長期的な挙動を研究している。

ONDRAF/NIRAS は、地層処分研究を実施するほか、廃棄物発生者である電気事業者

等から費用を徴収している。

ONDRAF/NIRAS は 2011 年 9 月、B・C 廃棄物の長期管理に関する国家計画を政府に提

出し、これらの廃棄物の管理方針として地層処分を提案した。政府は現在、同国家計画に

基づき、これらの廃棄物の最終的な管理方針を検討中である。

安全規制

ベルギーでは、連邦原子力規制機関(AFCN/FANC)が技術支援機関(TSO)である Bel

V の支援をうけ、原子力施設における活動を監督している。

2012 年には、ドール 3 号機及びチアンジュ 2 号機で原子炉容器に欠陥の兆候が確認され

たことから両機の運転が停止され、詳細な調査が実施された。両機と同じサプライヤーか

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82

ら原子炉容器を供給された原子炉がベルギー以外の複数国に存在したことから、この問題

については、国際的な枠組みで調査・検証が行われた。

AFCN/FANC は 2013 年 1 月、この欠陥の兆候について、運転を恒久的に停止すべき要

素を見出さないとの見解を示し、再稼働を認めるための要件を提示した。エレクトラベル

社が 4 月に、これらの要件への対応を示した追加的な安全報告書を AFCN/FANC に提出し

たことで、AFCN/FANC は翌 5 月、両機の再稼働を最終的に承認した。両機は 6 月より運

転再開されたが、2014 年 3 月に入り、両機の原子炉圧力容器で確認された水素脆性型剥離

を含む材料サンプルへの照射試験において、材料特性への照射影響が予想以上に大きいと

の予備的な結果が示されたことをうけて、計画停止が前倒しされた。この問題に関するエ

レクトラベル社の調査・分析結果をまとめた安全性論拠証明(セーフティーケース)につ

いて評価した結果、AFCN/FANC は 2015 年 11 月、両機の運転再開を承認した。

●出典

Energy policies of IEA countries, Belgium

OECD/NEA、“Radioactive waste management programmes in OECD/NEA

member countries, Belgium”2010

IAEA Country Nuclear Power Profiles

「商業原子力発電からの段階的撤退に関する法律」(脱原子力法)

ベルギー連邦原子力規制機関(AFCN/FANC)ウェブサイト

ONDRAF/NIRAS ウェブサイト

連邦経済・中小企業・自営業・エネルギー省

ベルギー気候・エネルギー大臣官房ウェブサイト

GDF-Suez 社ウェブサイト

Elia ウェブサイト

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(6) フィンランド

●基本情報

面積 33.8k ㎡ 人口 約 549 万人

公用語 フィンランド語、スウェーデン語(全人口の約 5.4%)

通貨 1 ユーロ=121.06 円(2017 年 2 月 13 日)

政治体制 共和制

議会 一院制(任期 4 年)、200 議席

政府 大統領 サウリ・ニーニスト

首相 ユハ・シピラ

GDP 2,996 億ドル(2015 年名目)

成長率 0.431%(2015 年)

経済の特徴及び概況

豊かな森林資源を活かした製紙・パルプ・木材、金属・機械産業及び情報通信産業が

主要な産業である。2012 年から 14 年にかけて 3 年連続でマイナス成長が継続してい

るが、2015 年度 GDP 成長率は 0.1%に上昇した。

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):該当データ

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

設備容量:276.4 万 kW 発電電力量:223 億 kWh 運転中:4 基(BWR2 基、PWR2 基) 建設中:1 基(PWR) 計画中:1 基、原子力シェア:33.7% 国内電源の確保や気候変動対策などのために、原子力は重要な電源との位置付け。2005 年から建設を

開始した、林業関係電力会社(TVO)によるオルキルオト 3 号機(EPR)は、スケジュールが遅延し、

運開は 2018 年の見込み。国内 6 基目の原子炉として、Fennovoima 社がハンヒキビ 1 原子力発電所の

建設を計画中であり、露 ROSATOM が建設契約を受注。

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なし 石炭:1,270 天然ガス:該当データ

なし ウラン:1,100(トン)

・一次エネルギー供給

3,393 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

53.8%(原子力含)、35.7%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):18.1%

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:9,607 水力:3,248 原子力:2,752 その他:638

電力供給体制の概要 発電は半官半民や民間の複数の電気事業者が行い、基幹系

統の送電は政府が出資するフィングリッドが一元管理し

ている。配電は、地方自治体の公企業や外資の民間事業者

が行っている。

電源種別発電電力量

原子力発電が最も多く、フィンランドの発電

電力量の約 35%を占める。次いで発電電力量

が多いのは水力発電であり、約 20%を占めて

いる。

電力消費量

(百万 kWh)

79,140

発電電力量

(百万 kWh)

68,093

輸入電力量

(百万 kWh)

17,965

電力需要の推移と見通し

フィンランドでは従来、電力需要に占める森林産業の割合が高かったが、近年では家庭・

農業部門やサービス・輸送部門の電力需要が増えている。政府の 2008 年の国家エネルギー・

気候戦略では、2007 年の総電力消費量が 903 億 kWh であったのに対して、2020 年には基

準ケースで 1,030 億 kWh(産業界の試算では 1,065 億 kWh)に増加するとの予測が示され

た。2013 年 3 月に政府により承認された 2013 年版の国家エネルギー・気候戦略では、2020

年に総電力消費量が 940 億 kWh になるとの予想が新たに示された。

●エネルギー政策・計画

フィンランドは、林業等のエネルギー多消費型産業が盛んであるが、電力の約 2 割を輸

13.2%

25.7%

7.4%

18.1%3.4%

32.2%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

3,393万

石油換算トン

11,818

235

5,521

23,580

13,397

13,542

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

68,093GWh (単位はGWh)

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85

入に頼っており、特にロシアへの電力及びエネルギー源の過度な依存の解消が課題とされ

ている。また政府は、EU の 2020 年までの気候変動対策目標、すなわち”3 つの 20%”3の

達成を目指しており、これら 2 つのエネルギー政策課題に取り組むため、エネルギー利用

の効率化、再エネの拡充等に加えて原子力発電も重視している。

なお 2013 年度版の国家エネルギー・気候戦略では、カーボンニュートラルな社会の長期

的な実現に向けた 2050 年までのロードマップが示されており、国内の十分な電源確保や温

室効果ガスの排出削減のために、原子力が引き続き重要な電源として位置付けられている。

●原子力政策・計画

原子力発電

フィンランドでは 1995 年に原子炉新設を巡る議論が凍結されたが、将来的な電力需要の

増加や CO2 削減などの観点から、凍結が解除された。このような情勢をうけて、林業関係

電力会社(TVO)は 2000 年 11 月に国内 5 基目の原子炉となるオルキルオト 3 号機(OL3)

の建設に関する原則決定を申請し、2002 年に原則決定が発給された。

さらに、2008 年の国家エネルギー・気候戦略を受けて、TVO、Fennovoima 社、国営の

フォータム社はそれぞれ、6 基目以降の原子炉の建設に関する原則決定を申請した。政府は

2010 年 5 月、TVO 及び Fennovoima 社の原子炉新設計画を認める原則決定を発給した。

現在は、国内 6 基目の原子炉として、Fennovoima 社がハンヒキビ 1 原子力発電所の建設

を計画中であり、露 ROSATOM が建設契約を受注している。

なお、既設炉の運転延長に向けた取り組みも進められており、TVO は 2017 年 1 月に、

オルキルオト 1、2 号機の運転認可期限を、当初の 2018 年末から 2038 年末に延長するた

めの申請を雇用経済省に提出している。1 号機は 1978 年に、2 号機は 1980 年にそれぞれ

送電網に併入されているため、2038 年までの運転が認められれば、両機とも 60 年ほど運

転することとなる。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

フィンランドにおけるウランの確認埋蔵量はわずかであり、全て輸入に依存している。

フロントエンドについて、TVOは、ウランの転換はカナダとフランスに、濃縮はロシアに、

燃料加工は、ドイツ、スウェーデン及びスペインに委託している。なお、フォータム社の

前身の IVO は、ロビーサ原子力発電所の燃料の供給契約をロシアと締結しており、使用済

燃料は 1996 年までロシアに返還されていた。

放射性廃棄物管理・処分

フィンランドでは使用済燃料を再処理せず直接処分する方針である。前述のとおり、ロ

3 2020 年までに、温室効果ガス排出量の 1990 年比 20%削減、最終エネルギー消費に占め

る再生可能エネルギー比率 20%の達成、エネルギー効率の 20%向上を目指すものである。

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ビーサで発生した使用済燃料はロシアに返還されていたが、1994 年に改正された原子力法

で、国内で発生した使用済燃料は国内で処分する方針が規定されたことで、1996 年以降、

使用済燃料はオルキルオト及びロビーサの両発電所サイトで貯蔵されている。

放射性廃棄物の管理・処分計画は、1983 年の「放射性廃棄物管理目標に関する閣議決定」

に沿って進められてきた。1995 年に TVO とフォータム社が処分事業の実施主体としてポ

シバ社を設立した。2001 年には世界で最も早く、高レベル放射性廃棄物の地層処分場のサ

イトとして、オルキルオトが選定されており、ポシバ社はオルキルオトで地下特性調査施

設(ONKALO)を建設し、研究を進めている。

ポシバ社は 2012 年 12 月に、最終処分場の建設許可を雇用経済省(TEM)に申請し、放

射線・原子力安全局(STUK)は 2015 年 2 月、最終処分場を安全に建設できるとの判断を

示した安全審査結果を TEM に提出した。同年 11 月にはフィンランド政府が、ポシバ社に

対し、使用済燃料の最終処分場の建設許可を発給した。同社は、処分場の建設作業を 2016

年 12 月に開始することを公表している。また、処分場の操業準備が整うのは 2023 年にな

るとの見通しを示している。

また、ハンヒキビ 1 原子力発電所(HA1)建設プロジェクトを進める Fennovoima 社は、

2016 年 6 月に、TEM に対して、HA1 から発生する使用済燃料の地層処分に向けた環境影

響評価(EIA)計画書を提出したことを公表した。Fennovoima 社は、処分プロジェクトの

実施に向け、ポシバ社の子会社であるポシバ・ソリューションズ社と業務契約を締結して

いる。

低中レベル放射性廃棄物については、オルキルオト及びロビーサの処分場で処分されて

いる。

●原子力企業動向

国内動向

国内で建設中の OL3、2010 年に原子炉新設計画を認められた TVO(オルキルオト 4 号

機:OL4)、及び Fennovoima 社(HA1)による建設プロジェクトの進捗は以下のとおりで

ある。

・OL3(TVO)

TVO は、電力多消費型産業の電力確保を目的として、国内の電力会社及び産業界の共同

出資により設立された会社であり、現在 OL1、2 を運転・所有している。なお TVO には、

フォータム社も約 25%を出資している。

OL3 は 2005 年に仏 AREVA 社と独シーメンス社のコンソーシアムにより、世界初の欧州

加圧水型原子炉(EPR)として建設が開始され、当初は 2009 年に運開予定であった。しか

し詳細設計や工法の審査手続きに時間がかかったことなどからスケジュールが大幅に遅延

している。建設側のコンソーシアムは 2014 年 9 月、同機の運開時期が 2018 年になるとの

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見通しを発表した。TVO は 2016 年 4 月に、OL3 の運転認可申請を政府に提出した。TVO

は 2018 年末までに同機を運開させる計画である。

なお、度重なるスケジュールの遅延に伴うコストや損失の負担を巡って、TVO と建設側

のコンソーシアムは争っており、国際商業会議所(ICC)による仲裁手続きが行われている。

2016 年 11 月には、ICC の部分的仲裁判断が示され、建設プロジェクトの初期段階(スケ

ジュール、許認可及びシステム設計)について TVO 側の主張の大部分が認められている。

ただし損失額については、判断は下されていない。

・OL4(TVO)

TVO は当初、同機の 2014 年の着工、2020 年の運開をめざし、OL4 建設に係る入札を開

始し、2013 年 1 月には、東芝の ABWR、GE 日立の ESBWR、韓国水力原子力株式会社

(KHNP)の APR1400、三菱重工業の APWR、AREVA 社の EPR の提案書が提出された。

しかしその後の入札手続きは遅延し、TVOは 2014 年 5 月、OL3 の遅延を理由として OL4

の建設許可申請を延期するための原則決定の変更申請を TEM に提出したが、変更申請は同

年 9 月に棄却された。その後 TVOの臨時株主総会は 2015 年 6 月、OL4 の建設に係る 2010

年の原則決定が失効する 2015 年 6 月末までに、同機の建設許可申請を提出しないことを決

定し、この原則決定は失効している。

・HA1(Fennovoima 社)

ピュヘヨキサイトにおける HA1 建設を計画する Fennovoima 社は、国内のエネルギー関

連企業等が出資する Voimaosakeyhtiö 社(66%)と独 E.ON 社(同 34%)との共同出資に

より設立された多国籍コンソーシアムであった。

しかし 2012 年に E.ON 社がコンソーシアムから撤退したことで、Fennovoima 社はプロ

ジェクト体制の変更を余儀なくされ、炉型も、当初想定していた大型炉から中型炉への変

更が検討された。最終的に Fennovoima 社はロシア製の AES-2006 の採用を決定し、2013

年 7 月に ROSATOM 子会社の Rusatom Overseas とプロジェクト開発合意書に調印、同年

12 月には原子炉供給契約を締結した。また、プロジェクト体制についても、E.ON 社撤退

分の 34%の株式が 2014 年 3 月に ROSATOM フィンランド法人に売却された。プロジェク

ト体制及び炉型の変更をうけて、Fennovoima 社は 2010 年に発給された原則決定の変更申

請を 2014 年 5 月に TEM に提出し、政府が 9 月に、議会が 12 月に、それぞれこの申請を

承認した。

●出典

Cameco 社ウェブサイト

IAEA “CNPP”.

雇用経済省ウェブサイト

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放射線原子力安全局ウェブサイト

ポシバ社ウェブサイト

TVOウェブサイト

フォータム社ウェブサイト

Fennovoima 社ウェブサイト

国営放送(YLE)ウェブサイト

ROSATOM 国営原子力会社ウェブサイト

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(7) スウェーデン

●基本情報

面積 約 45 万 k ㎡ 人口 約 988 万人

公用語 スウェーデン語

通貨 クローナ(1 クローナ=約 12.4 円(2016 年 9 月現在))

政治体制 立憲君主制

議会 一院制(349 議席 任期 4 年)

政府 首相 ステファン・ロヴェーン(社会民主党党首)

左派少数連立政権(2014 年 10 月成立)

GDP 4,926 億ドル(2015 年)

成長率 4.1%(2015 年)

経済の特徴及び概況

世界経済の混乱を受けて、2012 年、2013 年には経済成長率が低迷したが、2014 年以

降は高い伸びを記録し、2015 年には経済成長率を 4.2%とした。EU 圏の成長鈍化や

移民難民危機等に起因する見通しの不確実性は認識しつつも、2016 年以降も経済成長

が続く見込み。

ストックホルム

中低レベル処分場

オスカーシャムキャニスタ封入施設予定地

集中中間貯蔵施設

フォルスマルク処分場予定地フォルスマルク ③

オスカーシャム ②リングハルス ④

 原子力発電所(○内は基数)

 計画中、建設中の原子力発電所

 核燃料サイクル施設(( )内は種別)

 計画中、建設中の核燃料サイクル施設

  C:転換施設 E:濃縮施設

  F:燃料製造・加工施設 R:再処理施設

 放射性廃棄物管理施設

 計画中、建設中の放射性廃棄物管理施設

スウェーデン燃料工場(C、F)

設備容量:884.9 万 kW 発電電力量:545 億 kWh 運転中:9 基(BWR6 基、PWR3 基)

建設中:0 基 計画中:0 基 原子力シェア:34.3%

2014 年 10 月に政権についた社会民主党と緑の党の連立政権は当初、再生可能エネルギーとエネルギー

利用効率の向上により原子力を代替するとの政策を示して、脱原発を推進する方針を鮮明にしていた

が、政権と一部野党が 2016 年 6 月、リプレース容認等を含む政策に合意した。

その一方で、2015 年 10 月には原子力発電事業の経済性悪化を主因として、オスカーシャム 1、2 号機

およびリングハルス 1、2 号機の運転停止時期の前倒しが相次いで決定している。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):875 石炭:

781 天然ガス:該当データなし ウラン:

5,000(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

4,815 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

71.7%(原子力含)、36.6%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):35.1%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:9,270 水力:15,996 原子力:9,507 その他:5,157

電力供給体制の概

1996 年 1 月より電力市場が自由化されているほか、国際的な電力取

引も盛んに行われている。発送電は分離されており、送電について

は国営のスウェーデン系統運用局(Svenska Kraftnät)が基幹系統

や国際連系線を所有・管理し、配電系統は全ての経済主体に開放さ

れている。

電源種別発電電力量

スウェーデンでは化石燃料のほとんどを輸

入に頼っているが、化石燃料による発電電力

量はごくわずかである。主力は水力と原子力

で、総発電電力量の約 85%を占めている。

また、再生可能エネルギーの拡充にも力を入

れている。

電力消費量

(百万 kWh)

122,186

発電電力量

(百万 kWh)

153,554

輸入電力量

(百万 kWh)

-15,628

電力需要の推移と見通し

4.4%

24.1%

1.6%

35.1%

11.4%

23.4%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

4,815万

石油換算トン

994 300413

64,877

63,764

23,206

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

153,554GWh (単位はGWh)

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スウェーデンにおける電力消費量は、過去 20 年にわたってほぼ横ばいとなっている。うち

半分近くが産業用に消費されているが、特に同国の輸出に大きく貢献しているエネルギー

集約型の産業における電力需要は、2050 年にかけて高水準で推移すると見込まれている。

●エネルギー政策・計画

2006 年の総選挙で誕生した穏健党・自由党・中央党・キリスト教民主党の中道右派 4 党

による前連立政権が 2009 年 2 月に発表したエネルギー政策では、化石燃料への依存から脱

却し、再生可能エネルギーの利用と効率的なエネルギー利用の促進により、国内電力の安

定供給と競争力強化を目指すとされており、また、2020 年までの達成目標として、再生可

能エネルギーのシェアの 50%への向上、温室効果ガス排出量の 40%削減、エネルギー利用

の効率の 20%向上などの数値が掲げられていた。同政策では、原子力発電が将来において

もスウェーデンの電源として重要なものであり続けるとの認識に基づき、当時稼働中の基

数であった 10基を超えない範囲で既存のサイトに新たな原子炉を建設することを容認して

いた。

2014 年 9 月の総選挙を受け発足した社会民主党と緑の党の連立政権は、最終的にはエネ

ルギーの 100%を再生可能エネルギーで確保するといった方針を示すとともに、脱原子力に

向けた政策を進めることを明らかにしていたものの、連立政権と一部野党は 2016 年 6 月、

10 基を上限として、既存のサイトにおいて原子炉のリプレースを容認する等の内容の政策

に合意した。

●原子力政策・計画

原子力発電

スウェーデンでは、1980 年の国民投票の結果を受けて原子炉の全廃が決定され、その後

脱原子力政策の一環として全 12 基の原子炉のうち 2 基が閉鎖された。しかし 2006 年に成

立した中道右派 4 党の連立政権は、前政権の脱原子力政策を凍結し、2010 年までは原子炉

の増設も閉鎖も行わず、既存炉の出力増強を認め、原子炉のリプレースも容認する方針を

示した。その後 2010 年 6 月、議会において原子炉の建設許可の発給を禁じた原子力活動法

などの改正案が可決され、2011 年 1 月に施行された。こうして原子炉のリプレースが可能

となり、ヴァッテンファル社は 2012 年 7 月、既存の原子炉 1~2 基のリプレースに関する

申請書をスウェーデン放射線安全機関(SSM)に提出した。

このように、リプレースに向けた動きも進められていたが、2014 年 10 月に発足した社

会民主党と緑の党の連立政権は、脱原子力政策の推進で合意した。この合意を受けて、脱

原子力政策の一環として行われた原子力発電に対する課税の強化や、電力価格の低迷によ

る原子力発電の経済性の悪化を背景として、2015 年 10 月には、オスカーシャム 1、2 号機

およびリングハルス 1、2 号機の早期閉鎖が、相次いで決定された。この決定により、設備

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の更新のために 2013 年 6 月以降運転を停止していたオスカーシャム 2 号機は、運転を再開

せずに閉鎖されることとなり、同 1 号機は 2017 年 6 月に閉鎖するとの決定が行われた。リ

ングハルス 1、2 号機は、それぞれ 2018 年と 2020 年に運転停止される予定である。

なお、上述の通り、2016 年 6 月に連立政権と一部野党が、原子炉のリプレースを容認す

る等の内容の政策に合意している。ただし、この合意の公表後、電気事業者による原子炉

の早期閉鎖の撤回といった動きは見られていない。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

スウェーデンではウランの採鉱は 1985 年を最後に行われておらず、原子力発電の燃料と

なるウランはほぼ輸入により賄われている。例えば、フォルスマルク原子力発電所の場合、

濃縮ウランの 20%は Eurodif から、60%は Urenco から、20%は Tenex から納入されてい

る。燃料加工については、ウェスティングハウス・エレクトリック・スウェーデン社が

Vasteras の燃料加工工場(生産能力約 400tUO2/年)を操業している。

放射性廃棄物管理・処分

スウェーデンはかつて国内の使用済燃料を英国およびフランスに委託して再処理してい

たが、1970 年後半には再処理から直接処分に路線を転換した。現在は、使用済燃料は各発

電所で炉心から取り出し、約1年間冷却した後、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)

が操業している集中中間貯蔵施設(CLAB)に輸送され、地下に設けられたプールで貯蔵さ

れている。

使用済燃料などの管理・処分については、SKB が実施主体として、最終処分場の候補サ

イトの選定や処分技術の研究開発を進めてきた。SKB は使用済燃料の処分場候補サイトの

選定について、全国規模の調査および 8 自治体におけるフィージビリティ調査を経て、2002

年からはオスカーシャム、エストハンマル両自治体でサイト調査を行ってきた。

その結果、SKB は 2009 年 6 月、処分場の最終候補サイトとしてエストハンマル自治体

のフォルスマルクを選定した。2011 年 3 月には SSM および環境裁判所に処分場の建設許

可申請が提出され、現在審査が行われている。処分場の操業については、2029 年から試験

操業として年間 25~50 本のペースで使用済燃料を封入したキャニスタの処分を開始し、そ

の後徐々に処分ペースを増加し、通常操業へ移行する計画である。

低中レベル放射性廃棄物については、SKB が操業する、フォルスマルクの SFR 処分場で、

処分が実施されている。

●出典

Country Nuclear Power Profile (CNPP)

スウェーデン政府ウェブサイト

エネルギー庁(Energimyndigheten)ウェブサイト

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スウェーデン放射線安全機関(SSM)ウェブサイト

スウェーデン系統運用局(Svenska Kraftnät)ウェブサイト

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)ウェブサイト

ヴァッテンファル社ウェブサイト

OKG 社ウェブサイト

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(8) イタリア

●基本情報

地図

面積 30.1 万 k ㎡ 人口 60.7 百万人

公用語 イタリア語

通貨 1 ユーロ=121.06 円(2017 年 2 月 13 日)

政治体制 共和制

議会 二院制:下院と上院 主要政党:民主党(PD)

政府 首相 パオロ・ジェンティローニ

GDP 1 兆 8,158 億ドル(2015 年)

成長率 0.8%(2015 年実質)

経済の特徴及び概況

経済成長率は、ユーロ導入以降一貫してユーロ圏平均より低い。経済活性化のために、

労働市場改革(ジョブズアクト)、税制改革、海外からの投資促進策等に取り組み、2015

年は 2011 年以来のプラス成長となり、2016 年もプラス成長が見込まれるなど、一定

の成果を上げた。

チェルノブイリ事故後の1987年の国民

投票を受けて原子力発電から撤退した

が、2008 年 5 月に発足したベルルスコ

ーニ内閣は原子力発電の再開を目指し、

法制度の整備を進めてきた。しかし、

2011 年 6 月 12、13 の両日に実施され

た国民投票では、投票者の大多数が将来

的な原子力発電の再開を拒否する結果

となった。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):10,528 石

炭:656 天然ガス:450 億(立方メートル)

ウラン:4,800(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

1 億 4,677 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

25.0%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):原子力未導入

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:71,272 水力:22,098 原子力:該当データなし そ

の他:28,392

電力供給体制の概要 イタリア電力公社(ENEL)が国内第一の発電事業者である。

送電部門は ENELの送電設備管理会社であった Terna 社が

担当し、配電部門は各地方の公営事業者が担っている。

電源種別発電電力量

イタリアは原子力発電を行っておらず、発電

電力量の 8 割を火力発電、うち 5 割強を天然

ガス火力によって賄っている。

電力消費量

(百万 kWh)

281,500

発電電力量

(百万 kWh)

278,116

輸入電力量

(百万 kWh)

43,721

電力需要の推移と見通し

生産活動省(現経済振興省)が 2005 年に発表した 2020 年までのエネルギー需給のシナリ

オ分析では、発電電力量が 2015 年には 3,631 億 kWh、2020 年には 4,100 億 kWh に増加

すると見込まれている。

8.9%

35.1%

34.5%

3.4%18.0%

石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1億4,677万

石油換算トン

46,52414,163

93,63758,545

65,247

石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

278,116GWh (単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

イタリアは国内のエネルギー資源に乏しく、海外へのエネルギー依存度が高い。このた

め政府はエネルギー源の多様化とエネルギー安定供給の確保を目指している。原子力発電

は全廃されており、現在は発電電力の 8 割以上が天然ガス、石油、石炭による火力発電に

よってまかなわれている。また国内の電力供給基盤が脆弱なことから、スイスやフランス

からの輸入電力に依存しており、国内消費電力量の約 15%を輸入電力で賄っている。この

ような状況を改善することを目指して、2008 年に発足した前政権は、原子力発電の再開を

目指したが、2011 年 6 月の国民投票で大多数の投票者がこれに反対する姿勢を示したこと

から、政府は原子力発電の再開を断念し、再生可能エネルギー開発に注力する方針を示し

ている。

●原子力政策・計画

原子力発電

イタリアでは、1986 年のチェルノブイリ事故の影響で反原子力の世論が高まり、1987

年 11 月に原子力開発・利用の是非を問う目的で国民投票が実施された。その結果を考慮し

て、政府は新規原子炉の建設をすべて中止するとともに、稼働中の原子炉を閉鎖して廃止

措置を進める閣議決定を下し、国会の承認を得た。

2008 年に発足したベルルスコーニ政権(当時)は、原子力発電の再開を目指して法制度

の整備を進めてきた。しかし野党の要請をうけて憲法裁判所は 2011 年 1 月、国内での原子

炉の新規建設を認める法令の一部を無効とするか否かを問う国民投票の実施を決定した。

同年 3 月の福島第一原子力発電所事故により、原子力に対する国内世論が急激に否定的

な方向に傾斜する中、国民投票の対象となった原子炉新設に関する法規定を廃止する修正

が、2011 年 3 月末に制定された暫定措置令の法律への転換に関する議会審議の中で政府か

ら提案された。この修正は承認され、同暫定措置令は 5 月末に法律に転換され、成立した。

政府はこの法改正により、国民投票実施の回避を企図したが、破棄院(最高裁判所)は 6

月 1 日、同月 12、13 の両日に国民投票を実施するとの裁定を下した。その事由は、5 月末

に成立した法律の一部条項では、国内における将来的な原子力発電所の建設の可能性が完

全に排除されておらず、同条項を廃止するか否かを国民に問う必要があるというものであ

った。予定どおり実施された国民投票の結果、原子力発電の再開に否定的な票が全体の約

95%を占めた(投票率は約 57%)。

イタリアの国民投票は、特定の法令の一部または全部の廃止の是非を問うものであり、

今回の結果も原子力発電を再開するという政策決定を永久的に禁じるような法的拘束力を

持ったものではない。しかし、投票者の 9 割が原子力再開を拒否したことで、イタリアの

エネルギー政策から少なくとも短・中期的には原子力が排除されることになった。

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核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

原子力発電の凍結に伴い、国内で操業されていた燃料製造施設は閉鎖され、廃止措置が

進められている。

イタリアは使用済燃料を再処理する方針を採用し、1987 年の国民投票後に原子力発電が

全廃された後も、海外への使用済燃料の再処理委託は継続された。1990 年代半ば以降、一

時再処理の中止が検討されたが、2004 年には再開が決定され、政府は国内に貯蔵されてい

る使用済燃料の再処理を海外に委託するようイタリア原子力施設管理会社(SOGIN)に命

じた。SOGINは仏AREVA社と 2007年 5月に使用済燃料 235トンの再処理契約を締結し、

現在は仏ラ・アーグプラントにおいて再処理が進められている。

放射性廃棄物管理・処分

イタリア新技術・エネルギー・持続可能経済開発庁(ENEA)の旧原子力安全・衛生防護

監督官(ENEA-DISP)が策定した技術指針 No.26 では、使用済燃料の再処理によって発

生した高レベル放射性廃棄物は、深地層処分される方針が示されているが、具体的な処分

場のサイト選定等の計画は示されていない。

なお、SOGIN が AREVA 社に委託した再処理によって発生する廃棄物のイタリアへの返

還は 2020~2025 年と想定されている。

●原子力企業動向

国外動向

イタリアでは原子力発電は行われていないものの、SOGIN 社によって既存炉の廃止措置

が進められており、廃止措置の分野においては、関連企業が海外展開を行っている。

アンサルド・エネルジアは 2014 年 5 月、子会社のアンサルド・ヌクレアーレを通じて、

英セラフィールド・サイトの廃止措置プロジェクトに参画する英ニュークリア・エンジニ

アリング・サービス(NES)社を買収することで NES 社と合意に至った。

また SOGIN 社は 2014 年 6 月、中国広東核電集団公司(CGNPC)と廃止措置及び放射

性廃棄物管理分野における協力協定を結んだ。同協定に基づき、SOGIN 社と CGNPC 傘下

の中広核工程有限公司(CNPEC)は、中国国内の原子力発電所における廃止措置作業のコ

スト・スケジュールの最適化に向けた研究等を実施する。

●出典

Energy policies of IEA countries, Italy, 2009 review

OECD/NEA、“Radioactive waste management and decommissioning in Italy”

2010 年 2 月 10 日の委任立法令第 31 号

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フランス法令データベース

AREVA 社ウェブサイト

イタリア経済振興省ウェブサイト

保護・環境高等研究所(ISPRA)ウェブサイト

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(9) スペイン

●基本情報

面積 50.6 万 k ㎡ 人口 約 4,646 万人

公用語 スペイン語

通貨 1 ユーロ=121.06 円(2017 年 2 月 13 日)

政治体制 議会君主制

議会 二院制、上院:266 議席 下院:350 議席

政府 首相 マリアノ・ラホイ・ブレイ

GDP 約 1 兆 1,997 億ドル(2015 年)

成長率 3.2%(2015 年)

経済の特徴及び概況

2008 年のリーマン・ショックまで好調を維持したが、2008 年以降、景気低迷による

財政赤字の拡大、不動産バブルによる金融機関の破綻、ユーロ危機に伴う国債リファ

イナンスの困難等に直面した。2013 年第 4 四半期以降は、実質 GDP 成長率が前期比

で 13 四半期連続プラス成長となる等、経済には回復傾向が見られる。

設備容量:712.1 万 kW 発電電力量:548 億 kWh 運転中:7 基(BWR1 基、PWR6 基)

建設中:0 基 計画中:0 基 原子力シェア:20.3%

前政権は再生可能エネルギー開発に注力し、原子力発電への依存度を縮減していく方針を示していたが、

2011 年の総選挙で政権を奪回した中道右派の国民党は原子力発電に肯定的。

現政権は、国内最古のガローニャ原子力発電所を 2013 年 7 月で閉鎖するとした前政権の方針を見直し、

事業者が 2019 年までの運転延長申請を行うことを認めることを決定。更に 60 年間への運転認可更新が

申請され、現在審査中。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):59 石炭:

5,901 天然ガス:30 億(立方メートル) ウ

ラン:14,000(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

1 億 1,455 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

30.6%(原子力含)、17.6%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):13.0%

●電力

電源種別設備容量(千

kW)

火力:56,786 水力:19,423 原子力:7,399 その他:30,166

電力供給体制の概要 5 大企業グループが配電の 100%、発電の約 70%を賄ってい

る。

電源種別発電電力量

天然ガス火力による発電が約 25%を占め、

原子力発電も 21%を占めている。これに次

ぐのが石炭火力発電で、約 19%を占める。

またスペインは風力発電など再生可能エネ

ルギーの導入に力を入れており、「その他」

の比率が高くなっている。

電力消費量

(百万 kWh)

226,895

発電電力量

(百万 kWh)

274,949

輸入電力量

(百万 kWh)

-3,407

電力需要の推移と見通し

国際エネルギー機関(IEA)が 2016 年に公表したスペインのエネルギー政策に関するレビ

ューによると、2014 年から 2020 年までに電力需要の増大に伴い、発電電力量は 20%増加

して 3,125 億 kWh にのぼると予想されている。

●エネルギー政策・計画

スペインのエネルギー政策は主として欧州連合(EU)の政策に準拠しており、経済成長

10.0%

40.9%20.7%

13.0%

2.9%

12.5%石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1億1,455万

石油換算トン

45,295

14,121

47,273

57,305

39,169

71,786

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

274,949GWh (単位はGWh)

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101

と競争力を可能にする持続可能な発展の維持とエネルギー供給の確保が目指される一方、

エネルギー生産等による環境負荷の減少が目指されている。中でもスペインは再生可能エ

ネルギーの促進とエネルギー効率の向上に力を入れており、風力発電に関しては世界のト

ップクラスにある。

●原子力政策・計画

原子力発電

スペインでは 1960 年代に原子力発電が導入され、2016 年 9 月現在、PWR6 基、BWR1

基の計 7 基が運転しており、総発電量に占める原子力の割合は約 20%となっている。

スペインでは 1973 年の石油危機以降、原子炉の建設が続いたが、1979 年の米国のスリ

ーマイルアイランド事故などを受け、1982 年に発足した社会労働党(PSOE)政権以降、

新規建設の凍結が続いている。

サパテロ PSOE 政権(2004~2011 年)は、40 年の運転期間を目安として既存の原子炉

を順次閉鎖する段階的な脱原子力政策を採ってきたが、同政権下の 2011 年頃から、地球温

暖化対策やエネルギー安全保障などの観点から原子力発電を再評価する動きが見られる。

2011 年 12 月に発足した現国民党(PP)政権は原子力発電に肯定的であり、スペインで

最も古いガローニャ原子力発電所を 2013年 7月に閉鎖するという前 PSOE政権の 2009年

の決定を見直し、2019 年までの運転継続を検討する方針を示した。しかし、政府がエネル

ギー改革に伴う売電収入に対する新税の導入を決めたことをうけて、運転継続の経済性が

損なわれることを懸念した同発電所の所有者 Nuclenor 社は、申請期限の 2012 年 9 月まで

に、2013 年以降の運転継続に必要な運転認可の更新申請を行わず、2012 年末に同発電所の

運転を停止した。その後同社は、申請期限前に政府からエネルギー改革の詳細に関する説

明がなかったことが問題であるとして、2013 年 5月に申請期限の延長を政府に要請したが、

政府はこれを認めず、同発電所は 2013 年 7 月 5 日に運転認可が失効し、恒久閉鎖された。

しかしその後 2014 年 3 月に官報公示された王令によって、原子力施設等に関する規則が

改定され、安全上の問題がない原子炉については、運転停止宣言から 1 年以内であれば、

運転認可更新を申請することが可能となった。これをうけてNuclenor社は 5月 27日、2031

年 3 月 2 日まで(同発電所の商業運転開始から 60 年間)の運転認可を原子力安全委員会

(CSN)に申請した。CSN は 2017 年 2 月、条件付きで同機の運転を認可する決定を下し

た。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

スペインでは、1970 年代から一時期国内ウラン鉱山での生産が行われたが、現在は閉山

されている。なお現在、スペイン・ウラン公社(ENUSA)社とオーストラリアのバークレ

イ・リソーシズ社がサラマンカ地方でのウラン開発プロジェクトを共同で進めている。

ウラン濃縮等は国外のサービスを利用しているが、燃料加工についてはサラマンカ地方

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102

にある ENUSA のフスバド燃料加工施設において、国内の原子炉や欧州の顧客のために

PWR・BWR 用燃料が製造されている。

放射性廃棄物管理・処分

スペインでは、中低レベル及び極低レベル放射性廃棄物は同国南部にあるエル・カブリ

ル処分場で処分されている。一方、使用済燃料とガラス固化体については、直接処分する

方針が構想されている。

このうち、使用済燃料とガラス固化体の管理・処分に関しては、放射性廃棄物処分の実

施主体である放射性廃棄物管理公社(ENRESA)が起草し、最終的に政府の承認を受ける

総合放射性廃棄物計画(GRWP)によって基本方針が定められている。スペインでは、使

用済燃料等の処分に向けて 1990 年代までサイト選定手続が実施されたが、その後中断され

た。また 1999 年の第 5 次 GRWP では、2010 年まで使用済燃料等の最終的な管理方針決定

の延期や、地層処分の関連技術や核種分離・変換の研究の遂行が方針として示されている。

さらに 2006 年に政府によって承認された第 6 次 GRWP では、使用済燃料等の最終的な管

理方針の決定はさらに先送りされており、現在に至っている。

一方、第 6 次 GRWP では、使用済燃料等のための集中中間貯蔵施設(ATC)の設置が当

面の優先事項として掲げられている。ATC サイトは公募によって選定される方針となって

おり、2006 年に公募に向けた準備等を行う省庁間委員会が設置された後、2009 年 12 月か

ら2010年1月にATCの候補サイトの公募が実施された。公募に応じた14の自治体のうち、

最終的に 8 自治体が候補となっていたが、政府は 2011 年 12 月、8 自治体の中からビジャ

ル・デ・カニャス(カスティーリャ・ラ・マンチャ州クエンカ県)を ATC サイトに選定し

た。ENRESA は 2014 年 1 月に ATC の立地及び建設の許可申請を行っているが、CSN は

2015 年 7 月、立地許認可申請について、条件付きで肯定的な評価結果を示した。

●出典

IAEA, Country Nuclear Power Profiles: Spain

IEA, Energy Policies in IEA Countries : Spain 2009 Review

Joint Convention on the Safety of Spent Fuel Management and on the Safety of

Radioactive Waste Management. Third Spanish National Report, October 2011

スペイン下院ウェブサイト

スペイン上院ウェブサイト

スペイン政府ウェブサイト

原子力安全委員会(CSN)ウェブサイト

国家エネルギー委員会(CNE)ウェブサイト

産業・エネルギー・観光省ウェブサイト

放射性廃棄物管理公社(ENRESA)ウェブサイト

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103

(10) オランダ

●基本情報

面積 4.1 万 k ㎡ 人口 1,704.8 万人

公用語 オランダ語

通貨 1 ユーロ=121.06 円(2017 年 2 月 13 日)

政治体制 立憲君主制

議会 二院制(第二院(下院)150 議席、第一院(上院)75 議席)

政府 首相 マルク・ルッテ

GDP 7,384 億ドル(2015 年)

成長率 1.9%(2015 年)

経済の特徴及び概況

欧州債務危機以降、脆弱な経済成長率であったが、財政支出削減等により 2014 年から

プラス成長。しかし、英国の EU 離脱の影響により、経済成長率がやや鈍化する見通

し。

設備容量:48.5 万 kW 発電電力量:39 億 kWh

運転中:1 基(PWR1 基) 建設中:0 基 計画中:0 基 原子力シェア:3.7%

国内唯一のボルセラ原子力発電所における原子炉の増設申請 2 件が提出されて

いる。福島第一原子力発電所事故後も政府の原子力政策に変更はないが、デルタ

社が 2012 年 1 月に経済的理由から原子炉新設計画を凍結すると発表した後、計

画は凍結されたままである。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):30 石炭:

3,984 天然ガス:6,750 億(立方メートル)

ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

7,295 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

80.2%(原子力含)、78.8%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):1.5%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:27,286 水力:37 原子力:485 その他:3,954

電力供給体制の概

2004 年に自由化を達成。発電は国内外資本の大手 5 社が市場の大部

分を占める。送電は政府所有の TenneT 社が担っている。

電源種別発電電力量

オランダでは、国内生産量の豊富な天然ガス

が最大の電源として利用されており、発電電

力量の半分以上を占めている。

電力消費量

(百万 kWh)

101,628

発電電力量

(百万 kWh)

103,418

輸入電力量

(百万 kWh)

14,733

電力需要の推移と見通し

オランダ政府が 2016 年 1 月に公表した「エネルギーレポート」のために作成された電力

供給シナリオでは、オランダの電力消費量が 2015年の 117TWhから 2035年には 121TWh

に増加するとの見通しが示されている。

●エネルギー政策・計画

オランダは海抜が低く、国土も狭いため、水力発電等の大規模開発は見込めず、CO2 の

排出抑制の観点から火力発電の大規模増強も難しい。このような中、オランダは国産の天

12.3%

39.1%39.5%

1.5%7.6%

石炭

石油

天然ガス

原子力

その他

一次エネルギー

総供給

7,295万

石油換算トン

32,420

1,90651,522

4,091112

13,367

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

103,418GWh(単位はGWh)

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105

然ガスを主力としたエネルギー構成を維持してきた。しかし、2008 年 6 月の「エネルギー

レポート」(政府のエネルギー見通し)では、天然ガス産出量の減少傾向を受け、2025 年頃

には同国が天然ガスの純輸入国になるとの見通しとともに、「再生可能エネルギー促進(洋

上風力中心)に加え、次政権以降に原子炉を新設する(既存のボルセラ原子力発電所のリ

プレース)」というオプションが示された。

その後 2010 年に成立したルッテ政権は、原子炉新設の促進を打ちだし、2011 年 3 月の

福島第一原子力発電所事故後も、ボルセラをリプレースする方針を維持したが、2012 年以

降、事業者により計画は凍結されている。

2016 年 1 月に公表された「エネルギーレポート」2016 年版では、2015 年に 13%であっ

た再生可能エネルギーによる電力の割合が、2035 年までに 54%まで上昇する一方、電力需

要の増加と石炭火力の減少により電力輸入も増加する見通しが示されている。原子力につ

いては、将来的な新設オプションを否定しないものの、現時点では具体的な計画が進行し

ていないとされている。

●原子力政策・計画

原子力発電

オランダで現在稼働中の商業用原子炉は、ボルセラ原子力発電所の 1 基のみである。

オランダでは 1995 年、2003 年までに原子力発電から撤退する政策方針が決定され、1997

年にドーデバルト原子力発電所が閉鎖された。しかしその後、エネルギーの安定供給や気

候保全の観点から、1 基残ったボルセラの運転期限は 2013 年(運転期間 40 年)、2023 年

(同 60 年)と徐々に延長されてきた。

2007 年の第 4 次バルケネンデ政権の連立合意では、任期中に新規建設に関する政府決定

を行わないこととされていたが、2008 年 6 月の「エネルギーレポート」では次政権以降の

原子炉新設オプションが示された。これは建設決定さえ行わなければ手続きの着手は可能

とする与党見解を反映したものである。これを受け、下表のとおり 2 社がそれぞれ個別に

ボルセラのリプレース計画の準備に着手した。

着手時期 申請者 計画内容等

2009 年 6 月 デルタ社(現在、ボルセラ原子力発

電所の 50%を所有)

第Ⅲ世代の PWR(最大 250万 kW)

2010 年 9 月 エナジー・リソーシズ・ホールディ

ング(ERH)(現在、ボルセラ原子

力発電所の 50%を所有)

AP1000(1~2 基)、EPR(1 基)、

BWR(1 基)

2010 年 10 月に成立したルッテ政権は、任期内に原子炉の新規建設許可を発給する方針

を示したが、その後経済状況の悪化などを理由に事業者が計画を凍結しており、再開の目

処は立っていない。

2016 年 1 月に政府が議会に提出した「エネルギーレポート」では、原子力発電について、

現状での新増設は不要との見解を示している。その一方で、低炭素電源として今後の建設

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106

の可能性を排除しない意向が示されている。

なお、オランダでは従来、原子力安全規制の関連業務が経済省など複数の省庁に分散し

ていたが、これらの業務を一カ所に集約するため、原子力安全・放射線防護庁(ANVS)が

設置され、2015 年 1 月 1 日に業務を開始し、2016 年には正式に独立行政組織となった。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

同国では、アルメロで URENCO 社がウラン濃縮工場を操業している。処理能力は年間

4,500tSWU である。

再処理に関しては、オランダ政府は使用済燃料を再処理するか直接処分するかの判断を

事業者に委ねている。再処理は英仏との契約に基づき国外で実施されている。旧契約では、

回収したプルトニウムは MOX 燃料の材料として売却されていたが、その後の契約では回収

されたプルトニウムを MOX 燃料に加工してボルセラ炉に装荷することになっている。

ボルセラ発電所は 2011 年に MOX 燃料装荷の許可を取得しており、2014 年に初めて 8

体の MOX 燃料の装荷が実施された。2015 年以降は年 12 体のペースで装荷を実施してい

る。

放射性廃棄物管理・処分

オランダでは発生した放射性廃棄物の総量がまだ少なく、最終処分場を実際に設置する

ための具体的な計画の段階にない。現在、同国では全ての放射性廃棄物がボルセラ東部に

ある放射性廃棄物中央機構(COVRA)の集中中間貯蔵施設で管理されている。同施設では

100 年分以上の廃棄物の貯蔵が可能である。

最終処分に関しては、他国との共同処分を実施するか、あるいは、廃棄物の量と資金が

蓄積されるのを待って国内に全種類の廃棄物を処分する深地層処分場を設置するかの 2 種

類の方針が検討されている。

●原子力企業動向

電気事業者

デルタ社は 2012 年 1 月以降、金融危機や投資環境の悪化等を理由に、ボルセラ原子力発

電所 2 号機の新規建設計画を凍結中である。原子力発電をエネルギーミックスの一部とみ

なすオランダ政府の方針に変化はなく、同社は環境が改善されれば計画を再開するとして

いる。なお、ボルセラ原子力発電所では 2014 年に初めて MOX 燃料の装荷が実施された。

●出典

EPZ 社ウェブサイト

ERH ウェブサイト

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107

IAEA, Nuclear Fuel Cycle Information System (NFCIS)

IMF, IMF Executive Board Concludes 2011 Article IV Consultation with the

Kingdom of the Netherlands–Netherlands , Public Information Notice (PIN) No.

11/79 June22, 2011

オランダ経済省, Energie Rapport2016, January 2011

frontier economics、Senarios for the Dutch electricity supply system, September

2015

オランダ経済省, Energie Rapport2011, June 2011

オランダ社会経済諮問委員会,Energieakkoord voor duurzame groei, September

2013

オランダ経済省, Energierapprt2008, June 2008

オランダ経済省ウェブサイト

オランダ政府ウェブサイト

デルタ社ウェブサイト

オランダ原子力安全・放射線防護庁ウェブサイト

外務省ウェブサイト

AREVA 社ウェブサイト

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1.2.3. 欧州(東)

(1) スロバキア

●基本情報

面積 4.9 万 k ㎡ 人口 542.6 万人

公用語 スロバキア語

通貨 1 ユーロ=121.06 円(2017 年 2 月 13 日)

政治体制 共和制

議会 一院制(150 議席)

政府 首相 ロベルト・フィツォ

GDP 866 億米ドル(2015 年)

成長率 3.6%(2015 年)

経済の特徴及び概況

世界金融・経済危機の影響を大きく受け、2009 年はマイナス成長を記録したが、その

後は徐々に立ち直りを見せ、近年は輸出と共に国内消費が牽引するバランスのとれた

形で EU・ユーロ圏でも高い経済成長を示している。

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):1 石炭:

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

設備容量:181.6 万 kW 発電電力量:141 億 kWh 運転中:4 機(PWR4 基) 建設中:2 基(PWR2 基) 計画中:0 基 原子力シェア:55.9%

旧ソ連製原子炉 VVER4 基が稼働。政府は原子力発電拡大の方針を示しており、モホフチ

ェ 3・4 号機が建設再開されるとともに、新規原子炉建設に向けた動きが進められている。

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1,229 天然ガス:140 億(立方メートル)

ウラン:0

・一次エネルギー供給

1,594 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

41.2%(原子力含)、15.6%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):25.6%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:3,068 水力:2,523 原子力:1,940 その他:561

電力消費量

(百万 kWh)

24,163

発電電力量

(百万 kWh)

27,148

輸入電力量

(百万 kWh)

1,105

電力供給体制の概

発送配電は分離されている。発電部門の約 8 割はスロバキア電力会

社(SE)が占めている。送電はスロバキア送電系統会社(SEPS)

が担当しており、配電は地域別に西スロバキア電力会社(ZSE)、中

央スロバキア電力会社(SSE)、東スロバキア電力会社(VSE)が行

っているが、その他の配電事業者も存在する。

電源種別発電電力量

原子力発電の割合が約 6 割を占め、主要電源

として機能している。原子力についで多いの

が水力発電であり、石炭やガスなど火力発電

は、全体の 1/4 程度である。

電力需要の推移と見通し

スロバキア政府が 2014 年に承認した「スロバキアのエネルギー政策 2014」では、2014 年

から 2035 年にかけて約 24%の消費電力量増加が見込まれている。(GDP 成長率を年 1.2%

とした場合)。

●エネルギー政策・計画

エネルギー政策は国家経済戦略の一部とされており、経済省が少なくとも 5 年ごとに更

新することとされている。

21.5%

18.8%

23.6%

25.6%

2.3%8.2% 石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1,594万

石油換算トン

3,356

302

1,619

15,499

4,209

2,163 石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

27,148GWh(単位はGWh)

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110

2035 年までの政策展望を示した「スロバキアのエネルギー政策 2014」では、気候保全の

観点から、再生可能エネルギーの増強に加えて原子力発電を拡大し、石炭への依存度を更

に低減する方針が示されている。この文書では、現在建設中のモホフチェ 3、4 号機の完成

後、既存のボフニチェ原子力発電所サイト内に新規原子炉を建設する方針が示されている。

●原子力政策・計画

原子力発電

社会主義時代にボフニチェ原子力発電所(PWR4 基)が運開し、1993 年のチェコとの分

離後に、モホフチェ原子力発電所(PWR2 基)が運開したが、EU 加盟の条件としてボフニ

チェ 1・2 号機を閉鎖したため、現在稼働中の原子炉は 4 基である。国内電力需要の半分以

上が原子力で賄われており、電力に占める原子力のシェアは東欧地域最大である。

また、資金難により建設が中断されていたモホフチェ 3・4 号機については、建設再開が

2007 年 8 月に決定され、現在、建設作業が進められている。2013 年 8 月には、スロバキ

ア最高裁が 3、4 号機の許認可手続きに瑕疵があるとの判断を下し、コンサルテーションプ

ロセスがやり直されることとなったが、建設許可は有効であり、建設作業は予定通り進め

られている。3 号機は 2017 年、4 号機は 2018 年の運開が見込まれている。

なお、隣国チェコとの合弁で進められてきたボフニチェ 5 号機の新設計画に関しては、

チェコ電力(CEZ)が自国事業への注力を理由に、合弁会社 JESS からの撤退を希望して

いる。こうした中、2013 年 1 月に露 ROSATOM 国営原子力会社がプロジェクトへの参加

検討に向けた覚書に署名したが、ロシア側との交渉は双方の条件が見合わず 2013 年内に一

旦停止されている。ただし、「スロバキアのエネルギー政策 2014」にはボフニチェに 120

万 kW 級原子炉 1 基を建設する方針が盛り込まれており、別のオプションとして、120 万

kWを 2基、あるいは 175万 kWを 1基建設する案も示されている。同計画については 2016

年に、政府が 3 年間に及ぶ環境影響評価プロジェクトを承認しており、計画は継続してい

る。ロシアも引き続き関心を示しているとされるが、参加の是非は不透明である。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

国内に核燃料サイクル施設は存在しない。国内にはウラン鉱床が確認されているが、採

掘は行われていない。なお、2015 年の法改正により、採掘実施には地元の住民投票で賛成

多数を獲得する必要がある。核燃料はロシアから供給されており、スロバキア電力会社(SE)

と露 TVEL 社は 2014 年 6 月、TVEL 社が現在スロバキアで運転中の 4 基に対し、2016-21

年の間、燃料を供給する契約に署名した。

放射性廃棄物管理・処分

低中レベル放射性廃棄物に関しては、2001 年にモホフチェで浅地層処分場が操業を開始

した。

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111

高レベル放射性廃棄物に関しては、1994 年に地層処分場の開発に関するプロジェクトが

開始されたが、政府は国際共同処分も検討対象に含めている。

なお、原子力発電所の廃止措置に関しては、EU への加盟条件として一部原子炉を閉鎖し

た他の東欧各国同様、資金不足が指摘されている。欧州議会予算監督委員会は 2013年 1月、

ブルガリア、リトアニアおよびスロバキアで総額 25 億ユーロの廃止措置資金が不足してい

ると指摘する報告書を採択した。この点に関し EU 理事会は同年 12 月、スロバキアのボフ

ニチェ 1、2 号機の廃止措置に対し約 2 億 2,500 万ユーロの財政支援を決定している。

安全規制

スロバキア原子力規制局(UJDSR)は 2013 年 9 月 15 日付で、モホフチェ及びボフニチ

ェ原子力発電所を対象とした EU ストレステストの中間報告書を公表し、同年 12 月 31 日

には最終報告書を公表した。この中で UJDSR は、両原子力発電所が過酷な自然事象に対

応可能であるとの判断を示した。

●原子力企業動向

スロバキア国内で運転中の発電用原子炉全てを所有するスロバキア電力会社(SE)は、

2005 年の民営化以来、イタリアの ENEL グループの傘下にあった(ENEL が 66%、残る

34%をスロバキア政府が保有)。

しかし、ENEL は 2015 年 12 月、スロバキア電力における同社の株式持分(66%)の売

却で、チェコのエネルギーグループである EPH 社と合意した。ENEL の保有株式を新会社

社「スロバキア・パワー・ホールディング(SPH)社」に全て移管した上で、新会社の株

式を 50%ずつ 2 度に分けて EPH に売却する。売却の第 1 段階は 2016 年 7 月 28 日に完了

した。第 2 段階は、モホフチェ 3、4 号機(建設中)の試運転許可発給の 1 年後を予定して

いる。売却総額は約 7.5 億ユーロ(調整による変動あり)と見込まれている。

また、上述のとおり、ボフニチェ 5 号機新設のために設置した合弁会社 JESS について

は、チェコ CEZ 社が撤退を希望している。代替の参加者として露 ROSATOM 国営原子力

会社が関心を示しているが、条件面で合意に至っていない。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Slovakia

OECD-NEA ウェブサイト

スロバキア電力会社(SE)ウェブサイト

JAVYS社ウェブサイト

欧州委員会ウェブサイト

UJSDR ウェブサイト

伊 ENEL 社ウェブサイト

Page 256: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

112

(2) スロベニア

●基本情報

面積 2 万 k ㎡ 人口 約 206 万 5 千人

公用語 スロベニア語

通貨 1 ユーロ=121.06 円(2017 年 2 月 13 日)

政治体制 共和制

議会 二院制

政府 首相 ミロ・ツェラル

GDP 385 億ユーロ(2015 年)

成長率 2.9%(2015 年)

経済の特徴及び概況

人口約 200 万人と市場としては小さいため、欧州を見据えた経済活動が基本であり、

製造業も欧州、EU 内への供給を中心としている。欧州危機の影響を受け、2012 年

-2.3%、2013 年-1.1%のマイナス成長となったが、2014 年初めより経済回復の兆しが

見え始め、同年の GDP 成長率は前年比 3.0%に達した。

設備容量:69.6 万 kW 発電電力量:54 億 kWh 運転中:1 基(PWR1

基) 建設中:0 基

計画中:0 基 原子力シェア:38% ウェスティングハウス

社製 PWR1 基が稼働。

2 基目の建設に向けた

動きは停滞中。

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113

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):0 石炭:

1,122 天然ガス:0 ウラン:1,700(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

667 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

55.5%(原子力含)、30.6%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):24.9%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:1,242 水力:1,296 原子力:688 その他:228

電力供給体制の概

発送配電は分離されている。発電事業者は HSE 社と GEN Energia

社であり、両社の傘下には複数の水力発電会社と火力発電会社があ

る。送電はスロベニア電力公社(ELES)が行い、配電は SODO 社

が担当している。

電源種別発電電力量

原子力と石炭・水力がそれぞれ 3 割程度を占

めており、これらで全体の 9 割を賄ってい

る。

電力消費量

(百万 kWh)

12,453

発電電力量

(百万 kWh)

17,163

輸入電力量

(百万 kWh)

-2,744

電力需要の推移と見通し

2014 年の総発電電力量は約 163 億 kWh であった。国家エネルギー計画(NEP)策定に向

けて 2014 年に策定されたエネルギーシナリオ(2030 年まで)では、2030 年の発電電力量

は約 174 億 kWh(レファレンスケース)と見込まれている。

15.7%

34.6%

9.4%

24.9%

7.9%7.6%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

667万

石油換算トン

3,759

42

374

6,370

6,092

526 石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

17,163GWh(単位はGWh)

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114

●エネルギー政策・計画

スロベニア政府は 2011 年に「国家エネルギー計画(NEP2030)」ドラフト版を公表した

が、NEP2030 は 2016 年 12 月現在、最終化されていない。2011 年のドラフト版では、環

境上の持続可能性とセキュリティ、競争力の維持が同国のエネルギー政策の目標として挙

げられている。環境対策として褐炭の削減を打ち出す一方、原子力については既存プラン

トの長期利用を軸に、原子炉新設は市場の状況等を踏まえて検討する方針が記されている。

その後、2014 年に公表された 2030 年までのエネルギーシナリオのレファレンスケースで

は、新規プラントの運開は 2030 年以降と想定されている。

●原子力政策・計画

原子力発電

現在スロベニアで運転している発電用原子炉は、旧ユーゴスラビア時代に建設されたク

ルスコ原子力発電所の PWR(設備容量 69.6 万 kW、米国ウェスティングハウス社製)1 基

のみである。1983 年に商業運転を開始した同発電所は旧東欧共産圏で初の西欧型原子炉で

あり、現在は隣国クロアチアとスロベニアにより 50%ずつ所有され、両国に電力を供給し

ている。

スロベニア政府は 2005 年に同発電所 2 号機を建設する方針を決定し、2010 年には国営

スロベニア電力(GEN Energia)が、110 万~160 万 kW の第Ⅲ世代 PWR の建設許可申

請を経済省に提出した。しかし、政府が国家エネルギー計画の改訂(NEP2030)作業の過

程で 2014年に公表したエネルギーバランス予測では、クルスコ 2号機の増設計画について、

資金面その他再検討を要する課題があるとされており、計画は停滞している。2 号機の建設

是非は確定していないが、建設される場合でも運開は2030年以降になると見込まれている。

一方、2023 年に 40 年の運転寿命を迎える既存の 1 号機に関しては、電力需要の拡大を

受けて政府が最大 20 年の運転延長方針を示し、2012 年にはスロベニア原子力安全庁

(SNSA)が、運転事業者の提出した運転延長申請を承認している。この運転延長について

は、2015 年 7 月に、スロベニアとクロアチアの政府間会合において、両国政府が同発電所

の運転延長方針を支持することで合意が交わされている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

スロベニアにウラン鉱山、転換施設、濃縮施設、燃料加工施設、再処理施設はない。

放射性廃棄物処分

「2006 年から 2015 年までの放射性廃棄物・使用済燃料国家管理計画(NPROG)」によ

れば 2035 年までにサイト適地の候補を複数選び、2055 年までに最終的なサイトを決定す

るとされている。政府は 2016年 3月 10日に、2016年から 2025年までの計画(ReNPROG)

を閣議決定し議会に送付している。

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低中レベル放射性廃棄物処分場については、ヴルビナへの設置が決まっており、2020 年

頃に操業を開始すると見込まれている。

●出典

原子力規制委員会(UJDSR)ウェブサイト

ELES 社ウェブサイト

NEK 社ウェブサイト

スロベニア電力ウェブサイト

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Slovenia

IAEA Net Enabled Waste Management Database (NEWMDB), Slovenia

廃棄物合同条約スロベニア国別報告、2014 年

スロベニアインフラ省 Dolgoročne energetske bilance Slovenije do leta 2030 in

strokovne podlage za določanje nacionalnih energetskih ciljev、2014 年

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(3) チェコ

●基本情報

面積 7.8 万 k ㎡ 人口 1,055 万人

公用語 チェコ語

通貨 1 コルナ=約 4.2 円(2016 年 6 月)

政治体制 共和制

議会 二院制(下院 200 名 任期 4 年、上院 81 名、任期 6 年)

政府 首相 ボフスラフ・ソボトカ

GDP 1,819 億米ドル(2015 年)

成長率 4.5%(2015 年)

経済の特徴及び概況

欧州債務危機等の影響から、2012~2013 年はマイナス成長となったが、2014 年に入

り 2.7%まで回復し、2015 年には 4.5%の成長となった。2016 年も 2%台の成長率を見

込んでいる。

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):2 石炭:

30,004 天然ガス:40 億(立方メートル)

ウラン:1300(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

4,120 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

71.0%(原子力含)、51.8%(原子力除)

38.5%

21.2%

15.0%

19.2%

0.4% 5.7%石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

4,120万

石油換算トン

設備容量:390.4 万 kW 発電電力量:253 億 kWh

運転中:6 基(PWR6 基) 建設中:0 基 計画中:2 基 原子力シェア:32.5% 旧ソ連製原子炉 VVER6 基が稼働。政府は原子力発電を拡大する方針だが、2014 年にテメリンにおける

原子炉増設の入札が中止。政府は増設 1 基目のサイトをドコバニに変更し、新たな入札を開始する意向。

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・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):19.2%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:13,082 水力:2,252 原子力:4,290 その他:2,346

電力供給体制の概

発・送・配電が分離(法的分離)されているが、チェコ電力(CEZ)

が大きなシェアを有している。

電源種別発電電力量

石炭火力が総発電電力量の 5 割以上を占め

ており、原子力発電の比率は 3 割強である。

電力消費量

(百万 kWh)

56,198

発電電力量

(百万 kWh)

84,972

輸入電力量

(百万 kWh)

-16,302

電力需要の推移と見通し

政府が2015年5月に承認した長期エネルギー戦略では、チェコにおける電力消費量は2040

年までに、2015 年比で 20%近く増加すると見込まれている。

●エネルギー政策・計画

チェコではエネルギーの安定供給と、持続可能で環境に配慮したエネルギーの効率的利

用が目指されている。2015 年 5 月に閣議決定された 2040 年までの長期エネルギー戦略で

は、温室効果ガスの排出を抑制するため、2040 年までに、発電電力量に占める原子力の比

率を 46~58%、再生可能エネルギーの比率を 18~25%とし、現在発電電力量の約 50%を

占める石炭については、11~21%まで低減させる方針が示されている。

●原子力政策・計画

原子力発電

チェコでは現在、政府が約 70%の株式を保有するチェコ電力(CEZ)社により、社会主

義体制下のチェコスロバキア時代から1993年のチェコとスロバキアの分離後にかけて建設

された計 6 基の旧ソ連製 VVER が、テメリンとドコバニの両発電所において運転されてい

る。政府はエネルギー安全保障の観点から、再生可能エネルギー開発に注力するとともに

43,723

381,647

30,325

1,909

7,330石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

84,972GWh(単位はGWh)

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原子力発電の継続と拡充を指向してきた。

原子力拡充の方針は 2011 年の東京電力福島第一原子力発電所事故以後も変わらず、2015

年 5 月に閣議決定された 2040 年までの長期エネルギー戦略では、2040 年までに、総発電

電力量に占める原子力の割合を現在の約 3 割から 5 割前後に高める方針などが示されてい

る。同戦略では、2035 年までに既存の原子力発電所のサイト内に 250 万 kW 相当の原子炉

を増設するとともに、ドコバニの既存炉(50 万 kW 級 VVER4 基、1985 年~1987 年運開)

の運転期間を 50~60 年まで延長する意向が示されている。これ以降の原子炉建設について

は、既存炉の廃止措置に伴う電力需給の状況等を見極めつつ判断するとされている。

この戦略を受け、同年 6 月には国家原子力行動計画が閣議決定された。同行動計画では、

原子炉新設に向けた入札等の手続きに迅速に着手した上で、建設許可発給予定の 2025 年頃

までに電力市場の状況を見極めて、原子炉新設への政府保証の付与の要否や付与方式等に

ついて決定する方針が示されている。担当大臣は、新設においてテメリンとドコバニの両

サイトでの増設も視野に入れており、1 基目の新設サイトはドコバニとする考えを示してい

る。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

チェコでは国内でウランが産出されるが、国内需要を充足できるだけの産出量には達し

ていない。現在はロシアの TVEL 社がチェコの原子炉のための転換・濃縮・燃料製造を行

っている。

放射性廃棄物管理・処分

放射性廃棄物処分の実施主体は、産業貿易省傘下の放射性廃棄物処分機関(SÚRAO)で

ある。

チェコは過去にロシアに委託して使用済燃料の再処理を実施していたが、現在再処理は

行っていない。ドコバニ及びテメリンの両原子力発電所で発生した使用済燃料は現在、使

用済燃料プールでの貯蔵後、それぞれのサイト内の中間貯蔵施設で乾式貯蔵されている。

現在の法律では、使用済燃料は所有者によって廃棄物であると宣言されない限り、放射性

廃棄物とはみなされない。2002 年に策定された放射性廃棄物および使用済燃料の管理政策

によれば、再処理についても研究は行うこととされている。

高レベル放射性廃棄物については、地層処分が検討されている。目下、SÚRAO が 2025

年までを目途に主候補サイトと第 2 候補サイトを選定する予定で手続を進めており、2014

年 10 月にはチェコ環境省が SÚRAO に対し、候補エリア全 7 カ所における地質調査の実施

を許可した。高レベル放射性廃棄物処分場の建設は 2050~65 年頃に行われる見込みである。

中低レベル放射性廃棄物は、3 カ所の中低レベル放射性廃棄物処分場(リヒャルト、ドコ

バニ、ブラトルストヴィ)で浅地中処分されている。また 1959~65 年に操業を開始し、1997

年に閉鎖されたホスティム低中レベル放射性廃棄物処分場では、現在モニタリングが実施

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119

されている。

●原子力企業動向

CEZ 社はテメリン原子力発電所 3、4 号機の建設を計画し、2009 年に入札が開始され、

2012 年 7 月に東芝-ウェスティングハウス(WH)社連合の他、フランス、ロシアの計 3 者

が入札書を提出した。当初予定では 2013 年末までに落札者を選定した後、2017 年初めに

建設を開始し、3 号機は 2023 年、4 号機は 2025 年までの運開が見込まれていた。

入札では 2013 年 3 月に米 WH 社が一次審査で最上位の評価を得た。米国の輸出入銀行

は WH 社が落札した場合、増設費用の半額を融資する意向を示しており、米国勢が優位な

状況で推移していた。

しかし、政府が新規の原子炉に対して電力買取価格の保証を付与しない方針を示したこ

とから、CEZ 社は 2014 年 4 月に入札の中止を決定した。

今後は増設サイトをドコバニ原子力発電所に変更して、CEZ 社により改めて入札の手続

きが開始される見込みである。政府は事業形態について検討中であり、検討結果によって

は、建設受注を希望するメーカーが事業会社への出資・参画を求められる可能性もある。

現在チェコは、原子力分野で中国と協力関係を構築している。具体的には、CEZ グルー

プと中国広核集団(CGN)が 2016 年 3 月、原子力と再生可能エネルギー分野における協

力に関する覚書(MOU)を締結した。両者は今後、プラントの調達、建設、試運転、運転

およびメンテナンス、改修、燃料サイクル等の分野での情報や経験の共有を行っていくほ

か、原子力発電所の人材育成、欧州電気事業者要件(EUR)認証の取得、第三国の原子力

プロジェクトへの共同での投資機会の追求などを行っていくとしている。

また CGN は、チェコの現地企業と協力してのドコバニとテメリンにおける原子炉の増設

への参画や、中国が自主開発する第 3 世代炉である華龍 1 号のチェコへの導入を目指す意

向を示している。

●出典

IAEA, Country Nuclear Power Profiles

STÁTNÍ ENERGETICKÁ KONCEPCE ESKÉ REPUBLIKY, Dexember 2014

廃棄物合同条約チェコ国別報告、2014 年

Energy in Central and Eastern Europe (CEE)ウェブサイト

Energy Regulatory Office(ERU)ウェブサイト

POWER EXCHANGE CENTRAL EUROPE (PXE)ウェブサイト

チェコ政府ウェブサイト

チェコ産業貿易省(MPO)ウェブサイト

チェコ原子力安全局(SUJB)ウェブサイト

チェコ議会上院ウェブサイト

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チェコ議会下院ウェブサイト

放射性廃棄物処分機関(SÚRAO)ウェブサイト

チェコ電力(CEZ)社ウェブサイト

ウェスティングハウス社ウェブサイト

中国広核集団(CGN)ウェブサイト

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121

(4) ハンガリー

●基本情報

面積 約 9.3 万 k ㎡ 人口 約 983 万人

公用語 ハンガリー語

通貨 1 フォリント=0.37 円(2016 年 9 月 20 日、ハンガリー国立銀行)

政治体制 共和制

議会 一院制(199 議席)、主要政党:フィデス(与党)、キリスト教民主国民党

(与党)、社会党、ヨッビク

政府 首相 オルバーン・ヴィクトル

GDP 1,206 億ドル(2015 年)

成長率 2.9%(2015 年)

経済の特徴及び概況

2012 年は EU の景気後退に伴い-1.5%のマイナス成長となったが、農業部門の回復や

EU 補助金の活用により 2013 年後半から景気が上向き、2014 年は GDP 成長率 3.5%

を記録した。2015 年は引き続き個人消費が堅調だったものの、EU 補助金の流入が減

少したことから成長率は 2.9%に減速した。

設備容量:188.9 万 kW 発電電力量:150 億 kWh

運転中:4 基(PWR4 基) 建設中:0 基 計画中:2 基 原子力シェア:52.7%

既存のパクシュ原子力発電所において旧ソ連製原子炉 VVER4 基が稼働。さらに 2 基の VVER 増

設を計画している。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):4 石炭:

13,597 天然ガス:80 億(立方メートル)

ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

2,283 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

44.4%(原子力含)、26.5%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):17.9%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:6,333 水力:57 原子力:2,000 その他:419

電力供給体制の概

6 つの配電事業者によって電力が供給、電力市場は自由化されてい

る。

電源種別発電電力量

原子力発電が総発電電力量の 5 割弱、次いで

天然ガスが 3 割程度を占めている。

電力消費量

(百万 kWh)

34,709

発電電力量

(百万 kWh)

29,371

輸入電力量

(百万 kWh)

13,395

電力需要の推移と見通し

「国家エネルギー戦略 2030」では、石炭火力による発電が減少していく一方、天然ガス火

力と再生可能エネルギーによる発電の増大が見込まれている。原子力発電についてはパク

シュでの 2 基増設を基本として、中期的に発電設備容量を維持していく方針である。

9.6%

27.8%

30.6%

17.9%

0.1% 14.0%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

2,283万

石油換算トン

6,114

73

4,225

15,649

302

3,008石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

29,371GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

政府が 2011 年に採択した「国家エネルギー戦略 2030」には、2050 年までを視野に入れ

た、中長期的なエネルギー戦略として、持続可能なエネルギー経済の構築に向け、再生可

能エネルギーの拡充、原子力の役割向上、地域のエネルギー・インフラの開発、新たなエ

ネルギー関連組織の構築、エネルギー効率の改善と省エネを推進する方針が示されている。

2030 年までの予測に関しては、ドイツの脱原子力を見据えた電力輸出の可能性等も念頭

に、パクシュ 5、6 号機増設と石炭火力の一部新設を含むシナリオが基本シナリオとして想

定されている。

●原子力政策・計画

原子力発電

現在、社会主義時代に建設された 4 基の旧ソ連製 VVER-440 が国内唯一のパクシュ原子

力発電所で稼働しており、総発電電力量の約半分を賄っている。原子力発電への依存度が

高いハンガリーでは、原子力発電の利用継続・拡大が重視され、既存炉の運転延長及び原

子炉新設に向けた取り組みが行われている。

パクシュ 1~4 号機では、当初の運転認可期限(30 年間)を 20 年間延長する手続きが行

われ、2013 年及び 2014 年にそれぞれ認可期限を迎える 1 号機、2 号機については、ハン

ガリー原子力庁(OAH)がそれぞれ 2012 年 12 月と 2014 年 11 月に、原子力発電事業者

MVM 社に対し、運転認可延長の承認を発給した。2016 年に認可期限が切れる 3 号機につ

いても 2016 年 1 月に、運転認可延長の手続が開始された。2017 年が期限の 4 号機につい

ても、同様の手続きが予定されている。

パクシュでは、原子炉の増設計画も進められている。ハンガリー国会は 2009 年 3 月、同

発電所に 100万 kWの原子炉を 2020年から 2030年にかけて 2基増設するための事前承認

を可決した。2012 年 9 月には、本プロジェクトの国有事業会社として、MVM Paks II が

設立された。建設工事に関しては、当初は入札で受注者を決める方向で進んでいたが、そ

の後受注交渉は、ハンガリーとロシアの政府間合意に基づく手続きに移行し、両国は 2014

年 1 月にパクシュにおける VVER2 基増設に関する政府間合意に署名した。翌月にはこの

合意内容がハンガリーで法制化され、4 月には政府と ROSATOM との間で、ロシアからの

融資に関する協定が締結された。12 月には、MVM Paks II が ROSATOM と、パクシュ原

子力発電所における 2 基の建設、運転・保守、核燃料の供給に係る契約に署名した。1 基目

の運開は 2025 年から 2026 年と見込まれている。

しかしこのパクシュ増設プロジェクトのスキームについて、欧州委員会(EC)は EU の

国家補助(State Aid)規則や公共調達指令への違反が疑われるとの見方を示し、2015 年

11 月に本件に関する調査や手続きを開始した。ハンガリー政府が公正競争への影響抑制策

として、「パクシュ 2 の利益の用途を政府への還元または通常の運転費に限定(施設拡大へ

の再投資禁止)」「パクシュとパクシュ 2 の運転者を法的に分離」「パクシュ 2 の電力の最低

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3 割を自由市場で販売」等の措置を約束したことを受け、EC は 2017 年 3 月、ハンガリー

政府の財政支援枠組みは国家補助規則に違反しないとの判断を示し、パクシュでのプロジ

ェクトの進行が可能となった。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

社会主義時代には、パクシュ原子力発電所への燃料供給から使用済燃料の返還に至るま

で、旧ソ連が核燃料サイクルに関する全てのサービスを提供していた。現在はロシアの

TVEL 社が、同発電所の燃料を全て供給している。

放射性廃棄物管理・処分

使用済燃料に関しては再処理せずに国内で直接地層処分する方針が採られており、実施

主体である国有の放射性廃棄物管理公共非営利企業(RHK Kft)を中心に準備が進められ

ている。また中低レベル放射性廃棄物については、1970 年代以降、ピュシュペクシラージ

放射性廃棄物管理・処分施設に処分されてきたが、2012 年 12 月には新たにバータアパー

ティ処分場が操業を開始した。

●その他の動向

ハンガリーは、ロシアの協力の下パクシュにおける VVER 増設を進める一方で、韓国や

フランスとも協力関係を築いている。ハンガリーと韓国は 2013 年 10 月、原子力協力協定

に署名し、原子力安全、先端技術共同研究、人的交流などの分野における協力強化で合意

した。一方、フランスでは AREVA 社が、ハンガリー国内の既存炉及び新設炉への計装制

御システム供給に向け、ハンガリー企業と 2015 年 2 月に協力覚書を締結している。

また、ハンガリーは 2016 年 2 月にイランとの間で小型炉開発構想に協力して取り組んで

いく方針を示すなど、アジア・アフリカ諸国への展開を念頭に置いた小型炉開発にも関心

を示している。

●出典

IAEA, Country Nuclear Power Profiles : Hungary

IEA, Energy Policies of IEA Countries - Hungary- 2006 Review

REPUBLIC OF HUNGARY NATIONAL REPORT Third Report prepared in

the framework of the Joint Convention on the Safety of Spent Fuel

Management and on the Safety of Radioactive Waste Management, 2008

Energy in Central and Eastern Europe (CEE)ウェブサイト

ハンガリー議会ウェブサイト

ハンガリー首相府ウェブサイト

ハンガリー国家開発省、「国家エネルギー戦略 2030」(英語版)、2012 年

Page 269: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

125

ハンガリー原子力庁(OAH)ウェブサイト

放射性廃棄物管理公共非営利企業(RHK Kft)ウェブサイト

スイス原子力産業会議ウェブサイト

ROSATOM 国営原子力会社

欧州委員会ウェブサイト

仏 AREVA 社ウェブサイト

MVM 社ウェブサイト

MVM Paks II ウェブサイト

Page 270: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

126

(5) ポーランド

●基本情報

面積 32.2 万 k ㎡ 人口 約 3,848 万人

公用語 ポーランド語

通貨 1 ズロチ=約 26 円(2016 年 8 月平均)

政治体制 共和制

議会 二院制(下院 460 議席,上院 100 議席,両院とも任期 4 年)

政府 首相 ベアタ・シドゥウォ

GDP 約 5,448 億ドル(2014 年)

成長率 3.3%(2014 年)

経済の特徴及び概況

2004 年の EU 加盟以降、2014 年までに計 50%の成長を達成、EU 内で 2008 年以降も

プラス成長を維持した唯一の国である。2012 年後半には欧州債務危機の影響による個

人消費の落ち込みから 1.9%の成長となったが、順調に回復。2014 年以降は、国内消

費、海外輸出ともに堅調で、年間 3%台の経済成長を維持している。

運転中:0 基 建設中:0 基 計画中:6 基 政府は 2009 年、原子力発電の導入についてのロードマッ

プを採択。2014 年 1 月、2024 年末までに初号機を運開す

る計画を閣議決定したが、スケジュールは数年繰り延べの

見込み。2016 年 6 月、建設サイト候補がジャルノビエツ

とルビャトボ-コパリノの 2 カ所に絞り込まれた。

Page 271: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

127

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):22 石炭:

429,321 天然ガス:950 億(立方メートル)

ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

9,401 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

71.6%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):原子力未導入

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:29,760 水力:2,364 原子力:該当データなし その他:3,865

電力供給体制の概

発送配電は分離されている。発電は PGE、TAURON、ENEA、

ENERGA 等複数の企業が行っている。送電は PSE Operator 社、配

電は PGE、TAURON、ENEA、ENERGA 等複数の企業が行ってい

る。

電源種別発電電力量

ポーランドでは石炭火力発電が総発電電力

量の大部分を占める。残りの多くは天然ガス

と石油による発電及び水力発電である。

電力消費量

(百万 kWh)

125,860

発電電力量

(百万 kWh)

158,508

輸入電力量

(百万 kWh)

2,163

電力需要の推移と見通し

2009 年に閣議決定された「2030 年までのポーランドのエネルギー計画」によると、2006

年の発電電力量は 1,477 億 kWh であったのが、2020 年には 1,561 億 kWh、2030 年には

2,018 億 kWh まで増加すると見込まれている。

52.5%

23.4%

14.3%

0.2%9.7%

石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

9,401万

石油換算トン

131,551

1,594

5,328

2,183 17,852

石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

158,508GWh(単位はGWh)

Page 272: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

128

●エネルギー政策・計画

2005 年以降、ロシアとウクライナの間で天然ガス供給をめぐって頻繁に対立が起きるよ

うになり、ポーランドは国内で使用する天然ガスの約半分をロシアに依存していることか

ら、エネルギーをロシアのみに依存することへのリスクが強く認識され始めた。

2009 年に閣議決定された「2030 年までのポーランドのエネルギー計画」では、エネルギ

ー効率を改善し、エネルギー供給を確実なものとし、バイオ燃料等の再生可能エネルギー

の利用を促進し、環境への負荷を低減することが目標とされている。また、原子力発電を

導入して電源の多様化を推し進めることも目標となっている。

●原子力政策・計画

原子力発電

ポーランド政府は 2009 年 1 月、同国初の原子力発電所建設計画を促進し、2020 年まで

に最初の原子炉を運開させることを閣議決定した。この決定には、ポーランド国営電力

(PGE)が 2 カ所で発電所(各約 300 万 kW)を建設することが盛り込まれた。2010 年に

は原子力発電所建設プロジェクトの特別目的事業体として、国営ポーランド電力(PGE)

傘下に PGE EJ1 が設置され、同社は 2011 年に、同国初の原子力発電所建設サイトの候補

地として、ジャルノビエツ、ホチェボ(のちにホチェボを含むルビャトボ-コパリノに変更)、

ゴンスキの 3 カ所(いずれもバルト海沿岸)を発表した。

更に政府は、2014 年 1 月に閣議決定した「ポーランド原子力発電計画」において、2016

年までにサイトと炉型を決定し、2024 年までに初号機、2030 年までに 2 号機を運開させ、

2035 年までに 2 カ所目の原子力発電所を完成させるとしていた。ただし、当初別個に入札

を行う予定であったベンダーと出資者について、出資を含めたプロジェクト参加を募る方

針に変更したため、スケジュールは繰り延べとなっており、PGE EJ1 は初号機の運開が

2029 年頃になるとの見込みを示している。なお、2016 年 6 月には、PGE EJ1 が、1 カ所

目の原子力発電所の候補地 3 カ所のうちゴンスキを対象から外し、今後の検討・環境影響

調査の対象をジャルノビエツとルビャトボ-コパリノの 2 カ所に絞る方針を示している。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

ポーランドに核燃料サイクル施設は存在しない。

放射性廃棄物管理・処分

Rózan の浅地中処分場において、国営企業「放射性廃棄物管理工場」が医療や研究分野

等から発生する低中レベル放射性廃棄物の処分を行っている。研究炉の使用済燃料はそれ

ぞれの施設の使用済燃料プールに保管されている。これらの使用済燃料及び原子力発電開

始後に発生する使用済燃料については、深地層処分オプションが検討されている。

Page 273: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

129

●原子力企業動向

原子炉新設動向

ポーランドでは、事業会社 PGE EJ1 が同国初の電子力発電所建設に向けた取り組みを進

めている。同社は当初、国営 PGE の 100%子会社であったが、2014 年以降は国内エネル

ギー企業 4 社(PGE、ENEA、KGHM、TAURON)による共同出資となっている。

PGE EJ1 は 2011 年に 3 カ所の建設候補地を示した後、2013 年 2 月からは、豪ウォーリ

ー・パーソンズ社に委託してサイト特性調査を実施していた。しかし、ウォーリー・パー

ソンズ社による遅延や仕様内容への不適合を理由に、この契約は2014年12月に解除され、

その後の特性調査は PGE EJ1 自ら行うことになった。

PGE EJ1 は 2016 年内にも炉の供給と出資を担うプロジェクト参加者を決める入札を実

施する予定としていたが、スケジュールは遅延している。報道等によれば、2015 年 11 月

時点で、ウェスティングハウス社、GE 日立、カナダの SNC ラヴァリン社、フランス電力

/AREVA社、韓国電力公社の5社がPGE EJ1に対し入札参加意思を示したとされている。

国外動向

ポーランドはバルト三国と共同でリトアニアのヴィサギナスにおいて原子力発電を行う

ことで 2007 年 2 月に基本的に合意したが、PGE は 2011 年 12 月、このプロジェクトへの

参加を見送ることを決定した。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Poland

Energy Policy of Poland until 2030

リトアニア・エネルギー省

PGE ウェブサイト

PGE EJ1 ウェブサイト

AREVA 社

ポーランド首相府

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130

(6) ブルガリア

●基本情報

面積 11.09 万 k ㎡ 人口 718 万人

公用語 ブルガリア語

通貨 レフ(複数形:レヴァ)、1 ユーロ=1.95583 レヴァ(固定相場制)

政治体制 共和制

議会 一院制(240 議席)

政府 暫定首相 オグニャン・ゲルジコフ(2017 年 1 月就任)

GDP 489.52 億ドル(2015 年)

成長率 3.0%(2015 年)

経済の特徴及び概況

2007 年に EU に加盟した。2008 年の年末以降、世界金融危機の影響を受け-5.8%の

マイナス成長となったものの、2013 年はプラス成長を記録した他、2014 年も最低賃

金や年金の引き上げにより内需が拡大し、実質 GDP は 1.7%となった。

設備容量:192.6 万 kW 発電電力量:147 億 kW

運転中:2 基(PWR2 基) 建設中:0 基 計画中:1 基(PWR1 基) 原子力シェア:31.3%

コズロドイ発電所で旧ソ連製 VVER2 基が稼働中。ブルガリア・エネルギー・ホールディングは 2013

年 12月、米WH社と同発電所 7号機として AP1000を建設する方向で交渉を開始することで合意した。

一方、ベレネ原子力発電所建設プロジェクトは資金難などから計画が停滞した後、2013 年 2 月に計画

中止が確定した。

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131

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):20 石炭:

11,062 天然ガス:60 億(立方メートル)

ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

1,789 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

63.4%(原子力含)、40.3%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):23.2%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:4,470 水力:3,219 原子力:1,975 その他:1,726

電力供給体制の概

発送配電は分離されている。発電及び配電は複数の会社が行ってお

り、送電は国有電力会社(NEK)が担当している。

電源種別発電電力量

石炭火力の占める割合が一番高く、50%弱で

ある。原子力の占める割合がその次に高く約

33%、水力発電は約 9%、天然ガスによる発

電は約 5%である。

電力消費量

(百万 kWh)

27,674

発電電力量

(百万 kWh)

46,927

輸入電力量

(百万 kWh)

-9,453

電力需要の推移と見通し

2010 年 6 月に発表された「2020 年までのブルガリアのエネルギー戦略構想」では、電力

需要が 2005 年比で 2020 年に 8%、2030 年に 23%増加するとの見通しが示されている。

●エネルギー政策・計画

2010 年 6 月に発表された「2020 年までのブルガリアのエネルギー戦略構想」では、温

室効果ガス排出量の削減が目標とされている。電源構成は大きく変化していないが、石炭

火力発電所のリプレースや再生可能エネルギー電力の拡大、新規原子力発電所の運転開始

35.7%

22.1%13.2%

23.2%

2.2%3.6%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1,789万

石油換算トン

21,305

2112,142

15,867

4,605

2,797 石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

46,927GWh(単位はGWh)

Page 276: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

132

により、発電に伴う CO2排出を、2005 年の 500 kg СО2/MWh から、2020 年には 156 kg

СО2/MWh まで低減する目標が示されている。

●原子力政策・計画

原子力発電

ブルガリアでは社会主義時代にコズロドイ原子力発電所に旧ソ連製原子炉が 6 基建設さ

れたが、EU への加盟(2007 年)の条件として 2006 年までに 1~4 号機が閉鎖された。し

かし温室効果ガス対策やロシアからの天然ガスの供給不安、さらにブルガリアから電力供

給を受けている周辺諸国のエネルギー安全保障上の懸念などから、原子力発電を拡大する

方針が採られている。

一方、1990 年に建設が中断されたベレネ原子力発電所(VVER2 基)では建設再開が決

まり、入札を経て 2006 年にロシアのアトムストロイエクスポート(ASE)のコンソーシア

ムが建設プロジェクトの主契約者に指名された。しかし資金確保が難航し、2010 年に計画

が凍結され、2012 年に政府が計画中止を決定、2013 年には議会がこの方針を承認した。同

計画については主契約者の ASE とブルガリア国営電力会社(NEK)が、計画中止までに発

生したコストの支払を巡って係争に発展し、国際仲裁裁判所は 2016 年 6 月、製造済み機器

にかかったコストのみを補償対象として認め、ブルガリア側に ASE 要求額(12 億ユーロ)

のおよそ半額に相当する補償金の支払を命じる裁定を下した。両者は 2016 年 10 月にこの

裁定に基づく最終合意を締結し、NEK が ASE に約 6 億ユーロを支払うことで和解、そし

て 2016 年 12 月 9 日、NEK が ASE に補償金を全額支払った。なお、ブルガリアは 2017

年内に、ベレネの原子炉をロシア側から受領する予定である。受領された原子炉について

は、コズロドイへの設置、あるいは新たな民間プロジェクトでの活用可能性などが検討さ

れている。

現在、ベレネでの新設に替えてコズロドイ発電所に 7 号機を建設する計画が進行中であ

る。炉型としては VVER と PWR が検討されたが、2013 年 12 月にブルガリア・エネルギ

ー・ホールディングスは、WH 社・東芝と AP1000 を建設する方向で交渉を開始すること

で合意し、翌 2014 年 8 月には、WH 社により、AP1000 が選定されたことが公表されてい

る。ただし、ブルガリア政府が WH 社の出資比率を 49%まで高めることを要求したため交

渉が難航している。資金確保に向け、中国からの出資も視野に検討が行われている。

なお、閉鎖されたコズロドイ 1~4 号機については、欧州復興開発銀行の基金の支援を受

けて廃止措置が進められている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

ブルガリアの全てのフロントエンド燃料サイクルサービスは、ロシアの TENEX 社を通

じて TVEL 社が供給している。

Page 277: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

133

放射性廃棄物管理・処分

ブルガリアにおける放射性廃棄物処分の実施主体は、国営放射性廃棄物公社(SERAW)

である。

中低レベル放射性廃棄物については、処分場の建設が 2005 年に閣議決定された。SERAW

は 2011 年 10 月、処分場の設計契約をスペイン放射性廃棄物管理公社(ENRESA)、ウェ

スティングハウス・エレクトリック・スペイン(WES)社、独 DBE テクノロジー社から

なるコンソーシアムと締結している。2013 年 7 月には、処分サイトとして、コズロドイ原

子力発電所に隣接するサイト(Radiana)が選定されたことが公表されている。同処分場の

操業開始は、2020 年頃が予定されている。

使用済燃料と放射性廃棄物の管理については、2011 年に「2030 年までの使用済燃料・放

射性廃棄物管理戦略」が閣議決定されている。この管理戦略において、使用済燃料につい

ては、再処理、直接処分および減衰するまでの処分の延期の 3 つの選択肢が提示されてい

る。コズロドイ原子力発電所では、2011 年 5 月に使用済燃料のサイト内乾式貯蔵施設が完

成しており、閉鎖された 1~4 号機および運転中の 5・6 号機の使用済燃料が貯蔵されてい

る。なお、「2030 年までの使用済燃料・放射性廃棄物管理戦略」では、他国との共同処分の

オプションも排除はされていない。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Bulgaria

原子力安全条約ブルガリア第 7 次国別報告書

廃棄物合同条約ブルガリア第 5 次国別報告書

ブルガリア政府ウェブサイト

国営放射性廃棄物公社(SERAW)ウェブサイト

Page 278: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

134

(7) ルーマニア

●基本情報

面積 約 23.8 万 k ㎡ 人口 約 1,976 万人

公用語 ルーマニア語、ハンガリー語

通貨 1 ユーロ=4.4908 レイ(2016 年平均,出典:ルーマニア中央銀行)

政治体制 共和制

議会 二院制(上院 136 議席、下院 329 議席)、任期 4 年

政府 首相 ソリン・グリンデアーヌ

GDP 約 1,773.1 億米ドル(2015 年)

成長率 3.7%(2015 年)

経済の特徴及び概況

金融危機の影響による消費後退を機に、消費に頼る経済成長ではなく、生産と輸出を

増加させる健全な経済成長を目指した結果、2011 年には GDP 成長率もプラスに転じ、

2013 年には、EU 内で 2 番目の成長率を記録。2016 年は国内消費がさらに拡大し、4%

を超える成長が見込まれている。

チェルナボーダ②

燃料製造工場(F)

フェルディオアラ工場(C)

ブカレスト

 原子力発電所(○内は基数)

 計画中、建設中の原子力発電所

 核燃料サイクル施設(( )内は種別)

 計画中、建設中の核燃料サイクル施設

  C:転換施設 E:濃縮施設

  F:燃料製造・加工施設 R:再処理施設

 放射性廃棄物管理施設

 計画中、建設中の放射性廃棄物管理施設

設備容量:131 万 kW 発電電力量:107 億 kWh 運転中:2 基(PHWR2 基)

建設中:0 基 計画中:2 基 原子力シェア:17.3%

カナダ製 CANDU 炉 2 基が稼働中。政府は原子力発電拡大の方針を示しており、新規原子炉建設に向け

た動きが進められている。2011 年 4 月に経済・通商・ビジネス環境省が 2035 年までに新たに合計 464

万 kW の原子力発電の導入を目指すエネルギー戦略草案を発表。

Page 279: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

135

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):80 石炭:

12,695 天然ガス:1,100 億(立方メートル)

ウラン:3,100(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

3,168 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

83.2%(原子力含)、73.6%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):9.6%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:11,323 水力:6,613 原子力:1,411 その他:4,707

電力供給体制の概

発送配電は分離されている。発電と配電は複数の事業者が行ってお

り、送電は Transelectrica 社が担当している。

電源種別発電電力量

水力が 30%弱を占める。それに石炭火力が

約 27%、原子力が約 18%、天然ガスが約

12%で続いている。

電力消費量

(百万 kWh)

41,907

発電電力量

(百万 kWh)

65,202

輸入電力量

(百万 kWh)

-7,128

電力需要の推移と見通し

2000 年の発電電力量は 515 億 kWh であったが、2008 年には 649 億 kWh へと増加した。

2015 年には発電電力量はやや減少し、617 億 kWh となっている。

18.0%

25.2%

29.5%

9.6%

5.1% 12.5%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

3,168万

石油換算トン

17,808

4868,104

11,676

18,806

8,322

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

65,202GWh(単位はGWh)

Page 280: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

136

●エネルギー政策・計画

2007 年に政府が承認した「国家エネルギー部門戦略(2007-2020)」では、エネルギー

効率の改善や再生可能エネルギーの推進が優先事項として掲げられている。また、チェル

ナボーダ原子力発電所に 2 基の原子炉を増設することが目標とされている。

●原子力政策・計画

原子力発電

政府が 2011 年 4 月に発表したエネルギー戦略の草案では、2035 年までに既存の原子力

発電設備容量に加えて、新たに合計 464 万 kW の原子力発電設備容量を増加させることが

目標として掲げられている。

チェルナボーダ原子力発電所では、運転中の 2 基に加えてさらに 3 基を建設する計画が

1991 年に凍結されたが、凍結された 3~5 号機のうち 3、4 号機については、2008 年 11 月

に国営ニュークリアエレクトリカ社、ドイツの RWE 社、フランスの GDF-Suez 社、イタ

リアの ENEL 社、チェコの CEZ 社、スペインのイベルドローラ社及びルクセンブルクに本

社を置くアルセロール・ミタル社の間で建設プロジェクトへの出資合意書が署名され、2009

年に事業会社エネルゴニュークリア社が設立された。

しかしその後、経済上の理由等で外国企業が次々に撤退した。2011 年 1 月までに CEZ、

RWE、GDF-Suez、イベルドローラが撤退し、出資者を募る入札も 2012 年 9 月、応札者が

ないまま終わった。2013 年 12 月 23 日には ENEL 社とアルセロール・ミタル社の撤退が

発表され、これにより全国外企業がプロジェクトから撤退することとなった。

チェルナボーダ 3、4 号機の建設計画を続行するというニュークリアエレクトリカ社の意

向は変わらず、改めて新たな出資者を募集した結果、2014 年 10 月に、中国広核集団(CGN)

がプロジェクトの出資者として選定された。なお、それに先立つ 2014 年 7 月には、CGN

のグループ企業の中広核工程有限公司(CNPEC)が、加・SNC-ラヴァリン社の子会社

CANDU エナジー社と、チェルナボーダでの原子炉建設に向けた独占協力合意書に署名し

た。この合意により、チェルナボーダ 3、4 号機では、CANDU6 炉が採用されるものと見

られている。2015年 11月には、ニュークリアエレクトリカ社とCGNがチェルナボーダ 3、

4 号機の建設、運転、廃止措置や資金調達等に関する覚書(MOU)を締結したことを公表

した。今後、CGN 側が最低でも 51%出資する予定の、プロジェクト会社の設立に向け、定

款等を確定するための交渉が実施される。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

ルーマニアにはウラン資源が賦存しており、国営ウラン会社(CNU)が 1952 年以来、

国内の 3 カ所の鉱山で採掘を行っている。また、CNU は Feldioara のプラントにおいて、

二酸化ウランへの転換等も行っている。燃料製造は、ニュークリアエレクトリカ社がピテ

Page 281: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

137

シュティの燃料プラントで実施している。

放射性廃棄物管理・処分

チェルナボーダ原子力発電所の近傍に低中レベル放射性廃棄物処分場を建設する構想が

ある。高レベル放射性廃棄物に関しては、最終的な管理方針は決まっていない。

●産業動向

ニュークリアエレクトリカ社は EU ストレステストの枠組みで、シビアアクシデント管

理のための追加的措置として、チェルナボーダ 1、2 号機へのフィルター付きベントシステ

ム(FCVS)の設置を提案した。これを受けて、仏 AREVA 社が供給する FCVS をカナダの

エンジニアリング会社 SNC-ラヴァリン・ニュークリアが両機に設置する契約が 2012 年 1

月に締結されている。

なお、国営企業であったニュークリアエレクトリカ社は 2013 年 9 月、ブカレスト証券市

場における新規株式公開(IPO)を通じて株式の 10%を売却し、一部民営化された。

また同社と CGN は 2013 年 11 月 25 日、チェルナボーダ 3、4 号機建設プロジェクトに

係る基本趣意書(LOI)に署名した。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Romania

国営ニュークリアエレクトリカ社

国立放射性廃棄物局(ANDRAD)

仏 AREVA 社

加 SNC-ラヴァリン社

中国広核集団(CGN)ウェブサイト

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138

1.2.4. 旧ソ連諸国

(1) ロシア

●基本情報

面積 約 1,710 万 k ㎡ 人口 1 億 4,651 万人

公用語 ロシア語

通貨 64.26 ルーブル/ドル(2016 年 6 月)

政治体制 共和制、連邦制

議会 連邦院(上院)と国家院(下院)の二院からなるロシア連邦議会

政府 大統領 プーチン,ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ

首相 メドヴェージェフ,ドミトリー・アナトリエヴィチ

GDP 1 兆 3,247 億米ドル(2015 年)

成長率 マイナス 3.7%(2015 年)

経済の特徴及び概況

石油・天然ガスなどの天然資源に経済的・財政的に依存するロシアでは、2015 年、国

際的な原油価格の低迷を受けて経済・財政状況が悪化した。

ビリビノ ④

クルスク ④(計画中④)

ノボボロネジ ③(建設中①)

ニジェゴロド(計画中②)

ディミトロフグラート(計画中①)

ツェントラル(計画中②)

ベロヤルスク ②(計画中①)

セベルスク(計画中②)

コラ ④(計画中②)

カリーニン ④

レニングラード ④(建設中②、計画中②)カリーニングラード(建設中①、計画中①)

スモレンスク ③(計画中④)

バラコボ ④ロストフ ③(建設中①)

ペベク(建設中②)※浮体式

プリモルスカヤ(計画中②

南ウラル(計画中②)

タタール(計画中②)

スベルドロフスク濃縮工場(E)

マヤク再処理工場(R)

ノボシビルスク工場(R)

セベルスク濃縮工場(E)

クラスノヤルスク濃縮工場(E)

アンガルスク濃縮工場(E)

エレクトロスタル工場(F)

PA マヤク

シベリヤ化学コンビナート

モスクワ

設備容量:2,686.5 万 kW 発電電力量:1,828 億 kWh

運転中:35 基(PWR18 基、LWGR15 基、FBR2 基) 建設中:7 基(PWR7 基)

計画中:26 基(FBR:4 基、LWGR:0 基、PWR:22 基) 原子力シェア:18.6%

原子力発電設備容量は、米国、フランス、日本に次いで世界第 4 位。原子力発電を積極的に拡大。

2009 年 11 月に閣議決定した連邦重点プログラムにより、総発電電力量に占める原子力発電の比率を2030 年までに 25~30%、2050 年までに 45~50%とする目標を設定。

高速増殖炉の原型炉である BN-600 が運転中である他、実証炉 BN-800 が 2014 年に初臨界を達成し、2016 年に定格出力で運転を開始。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):49,494 石

炭:4,297,136 天然ガス:32 兆 2,710 億(立

方メートル) ウラン:216,500(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

7 億 1,088 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

183.7%(原子力含)、177.0%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):6.7%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:182,465 水力:50,845 原子力:25,304 その他:406

電力供給体制の概

ロシアでは発送配電は分離されている。発電を行うのは、卸売発電

会社(WGC)、地域発電会社(TGC)、ロスエネルゴアトム社等複数

の会社である。送電は連邦送電会社(FGC UES)と子会社の地域間

基幹送電会社が担当している。配電は複数の地域を含む地域間配電

会社(IDGC)が行っている。

電源種別発電電力量

天然ガスによる発電が最も多く、約半数を占

める。水力、石炭火力、原子力がそれぞれ 2

割程度を占める。

電力消費量

(百万 kWh)

737,826

発電電力量

(百万 kWh)

1,062,333

輸入電力量

(百万 kWh)

-8,047

電力需要の推移と見通し

ロシアでは 2008 年の電力消費量は 7,255 億 kWh であったが、2013 年には 7,440 億 kWh

まで増加した。

14.6%

23.4%52.3%

6.7%

2.1%0.9%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

7億1,088万

石油換算トン

158,299

10,703

533,493

180,757

175,267

3,814 石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

1,062,333GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

豊富な天然資源を有するロシアは、持続的な経済成長や国際的立場の強化のために、エ

ネルギー資源と既存のエネルギー部門を効率的に利用することをエネルギー政策の目標と

して掲げている。この目標の実現に向けて 2009 年 11 月にロシア政府が閣議決定した「2030

年までのロシアのエネルギー戦略」(ES-2030)では、2030 年までにエネルギー消費量は

40%以上増加(2005 年比)する見通しである。そのうち一次エネルギー消費に占める天然

ガスの割合を 52%から 46~47%に減少させる一方、非化石エネルギー(原子力と再生可能

エネルギー)の割合を 11%から 13~14%に増加させる方針である。

●原子力政策・計画

原子力政策

ロシアでは、化石燃料を輸出に回すために、国内の発電部門を原子力などで代替する戦

略がとられている。またクローズド燃料サイクル路線が採用され、早くから高速炉や燃料

サイクル技術の研究開発が行われている。

原子力開発計画について政府は、2006 年 9 月に、発電電力量に占める原子力の割合を

2020 年までに 23%とする目標を発表していた。2009 年 11 月に閣議決定された連邦重点プ

ログラム(Federal Target Program:FTP)の「2010~2015 年さらに 2020 年までを対象と

した次世代原子力技術」では 2050 年も見据えた上で、2030 年までに発電電力量に占める

原子力の割合を 25~30%し、2050 年までに 45~50%とする目標を設定している。

安全規制を除く原子力開発等の原子力行政については、2007 年 12 月に連邦原子力庁

(Rosatom)を改組して設置された ROSATOM 国営原子力会社が担っている。同社の傘下

では、民生原子力部門を管轄するアトムエネルゴプロム社、その他核兵器や基礎科学、放

射線関連などの企業が事業を展開している。また 2011 年には、海外ビジネスを推進・統括

する子会社として Rusatom Overseas が設立された。現在、ROSATOM の国際展開を所掌

するビジネス・ユニットは、世界各地に点在する地域総括局の支援・管理を担当する

Rusatom International Network、海外で進行中のプロジェクト管理を担当する Rusatom

Energy International、海外展開のためのソリューションの提案と営業を担当する

Rusatom Overseas の 3 つの組織である。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

<フロントエンド>

ロシア国内において以下の施設で精錬、転換、濃縮及び燃料加工が行われている。また

旧ソ連時代に東欧諸国等に輸出した VVER にも燃料を供給している。

ウラン採鉱・製錬施設:プリアルグンスク、クラスノカメンスク及びダルルにある施

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設が操業中、ヒアグダでも施設を建設中(2018 年に本格生産の開始を予定)。

転換施設:ROSATOM の保有するアンガルスクとエカテリンブルクの複合施設が操業

中。

濃縮施設:ROSATOM 社やその傘下の TVEL 社等により 4 施設(アンガルスク、セヴ

ェルスク、ゼレノゴルスク、ノヴォウラルスク)が操業中。

燃料加工施設:TVEL 社が商用ベースで、VVER-440、VVER-1000、RBMK 向けの燃

料を製造しており、同社所有の 2 施設(機械製造プラント及びノボシビルスク化学精

鉱プラント)が操業中。なお VVER-1000 向けのペレットの製造施設をノボシビルスク

化学精鉱プラントに建設する計画がある。

<再処理関連>

ロシアでは、原則、使用済燃料を再処理する方針である。現在は、VVER-440、BN-600、

原子力潜水艦から発生した使用済燃料が、商用プラント RT-1(マヤーク)において再処理

され、回収ウランは RBMK の燃料として再利用されている。なお、再処理前の使用済燃料

は、各サイトまたは集中貯蔵施設で貯蔵されている。

また、ロシアではクローズド燃料サイクルの確立等のためにプルトニウム燃料の高速炉

利用が目指されている。2014 年 7 月には、MOX 燃料を装荷した高速増殖炉、ベロヤルス

ク 4 号機(ナトリウム冷却型高速炉 BN-800)が臨界に達し、2015 年 12 月に系統接続、2016

年 11 月には営業運転を開始した。2019 年までにはフル MOX 燃料で運転することを目指し

ている。後継の高速炉として BN-1200 の開発も継続しており、2025 年頃の着工が予定さ

れている。

放射性廃棄物管理・処分

VVER-1000、RBMK-1000 等の使用済燃料は、再処理施設が建設・凍結された鉱業化学

コンビナート(MCC)の集中貯蔵施設において貯蔵されている。

2011 年 7 月に放射性廃棄物管理法が成立し、放射性廃棄物管理の実施主体として、国営

企業ノオラオ(NO RAO)が 2012 年 3 月に設立された。同法に基づき、高レベル放射性固

体廃棄物と長寿命中レベル放射性固体廃棄物は地層処分され、低レベル放射性固体廃棄物

と短寿命の中レベル放射性固体廃棄物は浅地中処分される計画である。

安全規制

国内の原子力施設における活動は、環境技術・原子力監督庁(Rostechnador)が監督し

ている。

福島第一原子力発電所事故を受け、ROSATOM 社は国内の原子力発電所の安全点検(書

類上の審査と実地での設備点検)を実施し、その評価結果について、2011 年 4 月までに

Rostechnador のレビューが行われた。

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さらにロシアは 2011 年 6 月に、EU 及び 6 カ国の EU 域外諸国と西欧原子力規制者協会

(WENRA)の評価基準を用いたストレステストを実施することで合意した。これに基づき、

原子力発電所の運転会社であるロスエネルゴアトム社は、地震・洪水等の自然外部事象と

人的要因による影響、シビアアクシデント等の事故管理の準備などについて評価を実施し

た。8 月に提出された報告書では、これらの評価結果とともに同社の安全対策も示された。

Rostechnador によるレビューは同年 12 月に完了し、ロスエネルゴアトム社の安全強化

策が正当かつ十分であること、また建設中のサイトにおいても自然外部事象や人的要因の

影響について評価すべきこと、既設炉に関する安全規制を再構成する必要があることなど

を結論づけた。

●原子力企業動向

国内動向

ロシアでは 2016 年に、世界初の海上浮揚式原子力発電所として建設した「アカデミック・

ロモノソフ」の係留試験が開始されている。ROSATOM 社傘下の建造会社は同年 10 月、

極東に位置するペベクにおいて、アカデミック・ロモノソフを設置するために送電系統の

工事等に着手した。さらに 2016 年 8 月、同国初の第 3 世代炉である AES-2006 を採用した

ノヴォヴォロネジ原子力発電所 II-1 号機の送電が開始された。

2017 年 3 月現在、ロシア国内では 7 基の原子炉が建設中である。各原子力プラントの状

況は以下の通りである。

表:ロシア国内で建設中の原子力プラントの状況(2017年 3月現在)

プラント名 基数 炉型 建設開始時期 運開予定

ノヴォヴォロネジ

(Novovoronezh)II-2号機 1基 VVER-1200 2009年 7月 2018年 10月*

ロストフ(Rostov)4号機 1基 VVER-1000 1983年 2017年後半また

は 2019年

レニグラード II-1、2号機 2基 VVER-1200 1号機:2008年 10月

2号機:2010年 4月

2018年 5月*

2019年 11月*

バルチック(Baltic)1号機

(カリーニングラード) 1基 VVER-1200

2012年 4月

(2013年 6月建設中断) 未定

浮揚型原子力発電所 2基 KLT-40S 2009年 5月 2017年~2018年

合計 7基の原子炉が建設中

※印:併入時期を記載(運開時期は記載なし)

WNA、ROSATOM 年報などより作成

国外動向

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ROSATOM は、旧ソ連圏に限らず新興国や欧州にも積極的に進出している。2016 年 12

月現在、ROSATOM が国外で建設中の原子力プラントは 2 カ所 4 基、契約済みプラントは

6 カ所 12 基、受注が確定したものは 6 か所 13 基である4。ベトナムで受注していたニント

ゥアン原子力発電所は 2016 年 11 月、ベトナム国内事情により建設計画が中止となったた

めこの数値に含まれていない。

ロシアは、2014 年 7 月にアルゼンチンと、9 月にアルジェリアと、11 月にイランと原子

力平和利用に関する協力協定を締結している(イランとの協定は協力拡大)。同年 12 月に

は、インドと原子力平和利用に係る二国間協力の拡大に係る協定文書に署名し、同国にロ

シア製原子炉を追加建設することや、ロシア製原子炉の第三国への輸出のための協力、天

然ウランの採掘、核燃料製造、廃棄物削減を共同で進めていくことに合意した。また 2015

年 2 月にはエジプトと、6 月にはガーナ、サウジアラビアと協力協定を締結した。さらに

2016 年 5 月にはカンボジアと、同年 10 月にはパラグアイと原子力の平和利用に係る覚書

を締結した。中国とも、同国内でのプラント新設や浮揚式原子力発電プラントの建設、ナ

トリウム冷却型高速炉の開発等の共同プロジェクトで協力強化することを確認した。ロシ

ア政府は 2017 年 2 月、ROSATOM の「2017 年~2019 年の原子力発電産業振興国家プロ

グラム」の下、原子炉新規導入予定国を対象とした人材育成支援を行うことを発表してい

る。

一方で、二国間の政治的な関係悪化が原子力分野に影響を及ぼすケースが生じている。

ウクライナとは国家間の関係悪化により、フメルニツキ 3・4 号機の建設再開に係る契約が

2016 年 5 月に破棄された。また、2015 年 11 月のロシア軍機撃墜事件によってトルコとの

関係が悪化し、同国におけるアックユ新設プロジェクトへの波及が懸念されていたが、現

在、プロジェクトは再開している。さらに、ロシアは 2016 年 10 月、関係が悪化した米国

との間で 2000 年に締結していたプルトニウム管理・処分協定(PMDA)を停止するととも

に、原子力・エネルギー分野における研究開発に係る協力協定も一時停止した。

その他各国への進出動向については後述の 1.3.2 に記載している。

表:国外でROSATOMが建設中、契約済、受注確定の原子力プラントの状況(2017年3月現在)

国 プラント名 炉型 基数 備考

中国 田湾 3,4号機 VVER-1000 2 建設中(2012年建設開

始)

ベラルーシ オストロベツ 1,2 号機 VVER-1200 2 建設中(2013年建設開

始)

建設中:4 基

インド クダンクラム 3,4号機 VVER-1000 2 建設開始予定:2017年

4 受注確定については、出典とした ROSATOM の公式発表などから判断した。

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144

国 プラント名 炉型 基数 備考

バングラデシュ ルプール 1,2号機 VVER-1200 2 建設開始予定:2017年

トルコ アックユ 1-4号機 VVER-1000 4 建設開始予定:2016年

フィンランド ハンヒキビ 1 VVER-1200 1 建設開始予定:2018年

イラン ブシェール 2,3 号機 VVER-1000 2

アルメニア メタモール 3号機 VVER-1000 1

契約済: 12基

中国 田湾 7,8 号機 VVER-1200 2

インド クダンクラム 5,6 号機 VVER-1000? 2

ハンガリー パクシュ 5,6号機 VVER-1200 2

スロバキア ボフニチェ V3 VVER-1200 1

ヨルダン Al Amra VVER-1000 2

エジプト El Dabaa VVER-1200 4

受注確定: 13基

WNA、ROSATOM 年報などより作成

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Russia

WNA, Russia's Nuclear Fuel Cycle

ロシア大統領府ウェブサイト

ロシア首相府ウェブサイト

ロスエネルゴアトム社ウェブサイト

ROSATOM 社ウェブサイト

フランス政府・首相ホームページ

カーネギー国際平和財団ウェブサイト

米国国家核安全保障庁ウェブサイト

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(2) ウクライナ

●基本情報

面積 60.37 万 k ㎡ 人口 4,520 万人

公用語 ウクライナ語

通貨 1 米ドル=24.81 フリヴニャ(2016 年 7 月 20 日現在:ウクライナ中央銀

行)

政治体制 共和制

議会 一院制のウクライナ最高会議(定数 450 名、任期 5 年)

政府 大統領 ペトロ・ポロシェンコ

首相 ヴォロディミル・フロイスマン

GDP 906 億ドル(2015 年)

成長率 マイナス 9.9%(2015 年)

経済の特徴及び概況

2008 年夏以降、世界経済・金融危機の影響を受けて財政状況が悪化。その後、経済は

回復したが、2013 年にはロシア向け輸出の落ち込みを受け、成長率が 0%となった。

2014 年に入ると、東部紛争の影響を受け、貿易額や鉱工業生産高が大きく落ち込むな

ど経済状況の悪化が深刻な状況となった。同年 4 月以降、IMF を始めとする国際金融

機関及び欧米諸国から多くの支援を受けている。

設備容量:1,310.7 万 kW 発電電力量:824 億 kWh

運転中:15 基(VVER)建設中:0 基 計画中:2 基 原子力シェア:56.5%

2013 年に政府が発表した「改定 2030 年までのウクライナのエネルギー戦略」では、電力需要は 2015

年の 2,310 億 kWh から 2030 年には 3,951 億 kWh へと増加することが見込まれており、2030 年には、

再生可能エネルギー設備容量シェアの 10%達成と、原子力発電シェア 50%を目標に掲げている。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):654 石炭:

125,981 天然ガス:6,040 億(立方メート

ル) ウラン:84,800(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

1 億 568 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

72.8%(原子力含)、50.8%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):21.9%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:35,335 水力:5,851 原子力:13,835 その他:822

電力供給体制の概

発送配電はそれぞれ別の会社が行っている。発電は国営原子力発電会

社エネルゴアトム、火力発電会社、水力発電会社等により行われてお

り、送電はウクルエネルゴ社が担当、配電は各地方の配電会社により

行われている。

電源種別発電電力量

原子力発電への依存度が高く、5 割近くを占

める。また石炭の割合も大きいが、天然ガス

の割合は 1 割に満たず、水力はわずかであ

る。

電力消費量

(百万 kWh)

128,384

発 電 電 力量

(百万 kWh)

181,972

輸入電力量

(百万 kWh)

-8,430

電力需要の推移と見通し

2013 年にウクライナ政府が発表した「改定 2030 年までのウクライナのエネルギー戦略」

では、電力需要は 2015 年の 2,310 億 kWh から 2030 年には 3,951 億 kWh へと増加するこ

とが見込まれている。

33.7%

10.1%31.6%

21.9%

0.7% 2.0%石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1億568万

石油換算トン

70,489

216

12,714

88,389

8,4751,689

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

181,972GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

2013 年に発表された「改定 2030 年までのウクライナのエネルギー戦略」では、安定か

つ高品質なエネルギー供給を可能とする体制の構築、確実かつ持続的な発展を目的とした

エネルギー政策の策定、エネルギー安全保障の確立を挙げている。2030 年には、再生可能

エネルギー設備容量シェアの 10%達成と、原子力発電シェア 50%を目標に掲げている。原

子力発電に関しては、フメルニツキに 3・4 号機の増設を計画している。

●原子力政策・計画

原子力発電

政府は前述のエネルギー戦略に基づき、現在と同レベルの原子力発電シェアを 2030 年ま

で維持する方針であり、新設も検討している。

政府は 2006 年、1990 年に建設工事が中断されていたフメルニツキ 3・4 号機を完成する

方針を決定し、露アトムストロイエクスポート社と両機の建設に関する枠組契約を締結、

2019 年の完成に向けて計画を推進していた。しかし、ロシアとの関係悪化により、フメル

ニツキ 3・4 号機建設の契約を 2016 年 5 月に破棄した。2016 年 8 月には、両機の建設再開

に向けた協力を含んだ覚書(MOU)を韓国水力原子力会社(KHNP)と締結した。

また、ウクライナでは経年化した国内 11 基のプラントについて、当初の運転期間である

30 年を超える運転を目指している。すでにロブノ原子力発電所 1、2 号機、南ウクライナ 1、

2 号機、ザポロジェ 1、2 号機で運転期間の延長を規制当局が認めている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

ウクライナは、核燃料をロシアに依存しているため、以前から燃料供給源の多様化を目

指していたが、クリミア問題による両国の関係悪化もあり、米ウェスティングハウス(WH)

社からの供給体制を確保するに至っている。エネルゴアトム社は、2005 年に開始したウク

ライナ核燃料認定プロジェクト(UNFQP)の下で、VVER-1000 に WH 社の試験燃料を装

荷しており、その後に両者が締結した契約の下で WH 社は、2009 年から同国 3 基の原子炉

に燃料供給を開始していた。2014 年 4 月に契約が 5 年間延長され、供給期間が 2020 年ま

で延長された。

エネルゴアトム社は 2015 年 4 月、ウクライナの原子力発電所向けに濃縮ウランを供給す

る契約を仏 AREVA 社と締結した。さらに、2016 年 8 月には、英・独・蘭による国際共同

企業体のウレンコ社と、ウラン濃縮役務の提供に係る契約を締結した。

一方、国内での燃料製造に向けて、エネルゴアトム社は VVER-1000 向けの燃料製造プラ

ントの建設に関する入札を行い、2010 年 9 月に TVEL 社を落札者として選定した。その後

建設が進められてきたが、契約条件に関する問題を理由として遅れが発生したことが 2014

年 7 月に明らかとなっており、操業時期は未定である。

濃縮については、ウクライナの国営会社「ウクライナ核燃料」が 2010 年 10 月に、露

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ROSATOM 社からアンガルスクの国際ウラン濃縮センター(IUEC)の株式 10%を取得し

ている。

なお、ウクライナでは 2011 年 6 月から Novokostiantynivsk ウラン鉱山の試験生産が開

始されている。

放射性廃棄物管理・処分

ウクライナではかつて、VVER-440 から発生する使用済燃料の一部をロシアへ送って再

処理していたが、現在では基本的にザポロジェ原子力発電所以外のサイトで発生するすべ

ての使用済燃料がサイト内で一時保管されている。なお、ザポロジェの使用済燃料に関し

ては、長期乾式貯蔵施設で管理されている。

同国は、集中型乾式使用済燃料貯蔵施設(CSFSI)の建設を進めており、2014 年 4 月に

チェルノブイリの立入禁止区域内に CSFSI を立地する法令が承認され、2014 年 8 月に米

ホルテック・インターナショナル社の技術を用いて建設が開始され、2017 年までに完成す

ることが目指されている。

一方、閉鎖されたチェルノブイリ 1~3 号機から発生した使用済燃料の処理と貯蔵につい

ては、同サイトから数 km 離れた場所に乾式中間貯蔵施設(ISF-2)が建設中である。同施

設も米ホルテック社によって建設され、2018 年に完成予定である。

安全規制

ウクライナは EU 加盟国ではないが、EU ストレステストに自発的に参加した。その後、

同国では、総額 14 億ユーロの原子力発電所の安全性向上プログラムを開始した。

ウクライナ国家原子力規制庁は 2015 年 4 月、原子力施設の安全性評価、改修、放射線防

護、放射性廃棄物管理、廃止措置等の分野を対象とする協力協定をフランスの放射線防護・

原子力安全研究所(IRSN)と締結した。

チェルノブイリ事故に関する動向

2011 年 4 月、チェルノブイリ事故から 25 年を機に「安全で革新的な原子力利用に関す

るキエフ・サミット」が開催され、欧州復興開発銀行(EBRD)、欧州委員会、欧州主要国

を含む 28カ国が、チェルノブイリ 4号機を覆う新たなシェルターの建設等に合計 5億 5,000

万ユーロを追加拠出することで合意した。同サミットで追加拠出することに合意した国際

機関と主な国および拠出予定額は、EBRD が 1 億 2,000 万ユーロ、欧州委員会が 1 億 1,000

万ユーロ、英国が 2,850 万ポンド、ドイツが 4,240 万ユーロ、ロシアが 4,500 万ユーロ、

ウクライナが 1 億 400 万ユーロである。

放射性物質の閉じ込めと飛散防止を目的とする新シェルターによる密封期間は約 100 年

と想定されている。2016 年 11 月、事故を起こした 4 号機を覆う新シェルターの設置が完

了し、新シェルターへの機器・装置の設置据付作業を残すのみとなった。

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●出典

Energy Strategy of Ukraine for the Period until 2030

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Ukraine

欧州委員会ウェブサイト

欧州復興開発銀行ウェブサイト

ウクライナ・エネルゴアトム社ウェブサイト

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(3) リトアニア

●基本情報

面積 6.5 万 k ㎡ 人口 284.9 万人

公用語 リトアニア語

通貨 1 ユーロ(2015 年 1 月 1 日から導入)=121.06 円(2017 年 2 月 13 日)

政治体制 共和制

議会 一院制(議席数 141、任期 4 年)

政府 首相 サウリウス・スクバルネリス(農民・グリーン同盟選出)

GDP 412 億ドル(2015 年)

成長率 1.6%(2015 年)

経済の特徴及び概況

金融危機の影響で 2009 年の経済成長率は大幅に落ち込んだが、その後は景気が回復し

ている。

計画中:1 基

2009 年末に最後の原子炉を停止したが、バルト三国共同でヴィサギナス原子力発電所(1 基)を新設する計画である。2012 年 3 月には日立 GE がエネルギー省と同計画の事業権契約に調印した。発電所建設に向けた準備が進められていたが、2016 年 11 月、政府は同発電所の建設プロジェクトを一時凍結する方針を発表した。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):1 石炭:

1,206 天然ガス:該当データなし ウラ

ン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

700 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

25.0%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):原子力未導入

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:3,026 水力:877 原子力:0 その他:382

電力供給体制の概

発送配電は分離されている。火力、水力などの発電所が一つの会社

として発電を行い、それぞれが発電会社となっている。送電は Litgrid

社が担当し、配電は LESTO 社が行っている。

電源種別発電電力量

原子力発電の占める割合が高かったが、

2009 年 12 月末に最後の原子炉が閉鎖され

た。

電力消費量

(百万 kWh)

9,233

発電電力量

(百万 kWh)

3,708

輸入電力量

(百万 kWh)

7,628

電力需要の推移と見通し

リトアニア政府が 2011 年 5 月に承認した「国家エネルギー政策」によると、リトアニアの

電力需要は 2020 年に 120~140 億 kWh へと増大し、2030 年には 130~170 億 kWh とな

ると予測されている。

3.2%

35.7%

29.5%0.5%

31.1%

石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

700万

石油換算トン

2 160

1,749

399

1,398

石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

3,708GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

2011 年の「国家エネルギー政策」は、2020 年までにリトアニアのエネルギーの独立性を

達成することを目標としている。そのために再生可能エネルギーの発電電力量を増やすと

ともに、ヴィサギナスに新たな原子力発電所を建設する方針であったが、建設計画は一時

凍結されている。

●原子力政策・計画

原子力発電

リトアニアではイグナリナ原子力発電所からの電力が、総発電電力量の74.2%(2008年)

を占めていたが、チェルノブイリと同型であることへの懸念から、同発電所は EU 加盟の

条件として閉鎖を求められ、1 号機は 2004 年末、2 号機は 2009 年末に閉鎖された。

同国はイグナリナの代替として、バルト三国共同でヴィサギナス原子力発電所を建設す

ることを計画している。2011 年 7 月には改良型沸騰水型原子炉(ABWR)1 基(130 万 kW)

を提案する日立 GE ニュークリア・エナジー社が戦略投資家に選定され、2012 年 3 月には

同社とエネルギー省が同計画の事業権契約に調印した。

しかし 2012 年の国民投票で、約 63%が原子力発電所の新設に反対する結果となった。こ

の結果を受けて設置された同計画に関するワーキンググループは 2013 年 4 月、エネルギー

自立戦略に関する提案の中で、ヴィサギナス原子力発電所建設計画の続行の条件として、

バルト三国間における費用・リスク分担の明確化及びコストの圧縮等を求めた。

プロジェクト費用の問題はあるものの、2014 年 3 月に主要 7 政党が合意した 2014-2020

年の国家安全保障戦略指針において、ヴィサギナス原子力発電所の建設プロジェクトにも

取り組んでいくとの政府方針が示された。同年 7 月、エネルギー省はヴィサギナス原子力

発電所の建設プロジェクト推進に向け、日立製作所と事業会社の設立に関する協議の開始

で合意し、覚書(MOU)を締結した。

しかし、その後、LNG 基地が同国で建設されるなどエネルギー事情が変化し、2016 年

10 月の議会選挙で反原発を掲げるリトアニア農民・緑の連合が第 1 党に躍進したことで、

原発建設は困難となった。リトアニアのエネルギー省は 2016 年 11 月、「国家エネルギー戦

略に関する主要ガイドライン」において、ヴィサギナス原子力発電所の建設プロジェクト

を一時凍結する方針を公表した。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

リトアニアでは、1992 年の環境保護法で再処理は禁止されており、使用済燃料管理法に

より、使用済燃料は放射性廃棄物として扱われている。また、ウラン濃縮も行われていな

い。

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放射性廃棄物管理・処分

低中レベル放射性廃棄物については、浅地中処分する方針である。高レベル放射性廃棄

物の処分方針については決まっていない。

既に閉鎖されたイグナリナ原子力発電所から発生した使用済燃料は、サイト内の中間貯

蔵施設(建設中。2016 年コールド試験開始。2017 年ごろ操業開始見込み)に最長 50 年間

保管される予定である。なお、同発電所は、欧州委員会の「イグナリナ国際廃止措置支援

基金」の資金援助を得て廃止措置作業を進めており、廃止措置完了は2038年の予定である。

●出典

National Energy (Energy Independence) Strategy, May 25, 2011

Lietuvos Energija 社ウェブサイト

RATA Annual Report 2012

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Lithuania

国家原子力安全検査局(VATESI)ウェブサイト

エネルギー省ウェブサイト

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(4) カザフスタン

●基本情報

面積 272.49 万 k ㎡ 人口 1,790 万人

公用語 カザフ語(ロシア語は公用語)

通貨 1 ドル=333.3 テンゲ(2016 年 12 月現在:カザフスタン国立銀行)

政治体制 共和制

議会 二院制(上院:セナート(定員 47 名、任期 6 年(3 年毎に半数改選))、

下院:マジリス(定員 107 名、任期 5 年))

政府 大統領 ヌルスルタン・ナザルバエフ

首相 バクィトジャン・サギンタエフ

GDP 1,843.6 億ドル(2015 年)

成長率 1.2%(2015 年実質)

経済の特徴及び概況

石油、天然ガスなどのエネルギー資源、鉱物資源に恵まれた資源大国。2000 年以降年

平均 10%という好調な経済成長を維持してきた。但し、2007 年以降は金融危機による

世界的な景気の減退とともに経済成長率は鈍化。その後、景気は回復し、近年は 5%前

後の成長率で推移している。

計画中:2 基

1999 年まで原子力発電を行っていたが、現在は行っていない。政府は 2009 年 9 月、新たな原子力発電

所を建設する方針を発表。原子炉 2 基の建設を計画しており、ロシアに協力を求めている。なおウラン

生産量は 2009 年に初めて世界一となり、その後も生産量を増大させようとしている。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):4,332 石

炭:186,400 天然ガス:9,360 億(立方メ

ートル) ウラン:285,600(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

7,666 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

216.9%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):原子力未導入

●電力

電源種別設備容量(千

kW)

火力:22,500 水力:2,500 原子力:該当データなし その

他:11

電力供給体制の概要 発送配電は分離されている。約 60 の発電会社が発電を担って

いる。カザフスタン系統運用会社(KEGOC)が送電を担当し、

地方の複数の配電会社が配電を担っている。

電源種別発電電力量

総発電電力量のうち 70%以上を石炭が占め

る。原子力発電は行われていない。

電力消費量

(百万 kWh)

68,895

発電電力量

(百万 kWh)

105,068

輸入電力量

(百万 kWh)

-1,163

電力需要の推移と見通し

2010 年時点でのカザフスタン国立原子力センターの発表では、設備容量ベースでの需要

が、最高成長予想で 2020 年までに 200 万 kW、2030 年までに 650 万 kW の増加が、最低

成長予想でも 2030 年までに 400 万 kW近い増加が予測されている。

48.2%

17.0%

33.8%

0.9%石炭

石油

天然ガス

水力

一次エネルギー

総供給

7,666万

石油換算トン

75,594

1,024

20,173

8,263 14石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

105,068GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

カザフスタンは、安価な低品位炭を最大限に利用して発電を行い、エネルギーの独立性

を高める方針をとっている。原子力発電の導入はエネルギー安全保障のために必要なオプ

ションとされており、2002 年の「カザフスタンの原子力・ウラン産業発展構想(2002-2030)」

では、同国の原子力産業をハイテクで先進的な部門へと発展させることが目標とされた。

●原子力政策・計画

原子力発電

マンギスタウ州アクタウでは、1972 年から 1999 年まで原子力発電が行われ、高速炉 1

基(BN-350、13 万 5 千 kW)が運転されていたが、現在原子力発電は行われていない。し

かし、将来的な電力需要の増加に対応するため、原子炉の新設を検討している。新設の検

討はロシアとの協力を中心に進められている。

ナザルバエフ大統領は 2012 年 5 月、新組織、国家原子力庁を設置する大統領令に署名し

た。同庁は原子力・放射線安全、核物質防護等の分野を担当する。

カザフスタンはロシアと 2014 年 5 月、首都アスタナで開催されたユーラシア最高経済評

議会に際して、カザフスタンにおける、ロシアによる原子力発電所建設に係る二国間協力

に関する覚書(MOU)に調印した。同 MOU は、総設備容量 30~120 万 kW の原子力発電

プラントの設計、建設、運転から廃炉までを対象とする二国間協力の内容について規定し

ているほか、カザフスタン国内に燃料製造施設を設置することや、原子力発電所の運転作

業員の人材育成に関する協力についても取り決めている。

また両国は 2014 年 10 月、カザフスタンにおける原子力発電所の建設と運転に向けた二

国間協力で暫定合意した。プラントの設備容量や建設スケジュールなどの詳細な契約条件

が今後協議される。この暫定合意により両国は、規制枠組みの整備、人材育成、廃止措置

に関しても協力する。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

カザフスタンのウラン生産量は 2009 年に初めて世界一位の生産量になった。カザトムプ

ロム社は 2016 年 1 月、2015 年のウラン生産量が 23,800 トンに上ったと発表した。

ウラン濃縮については、カザトムプロム社と露 ROSATOM 国営原子力会社が 2010 年 7

月、核燃料分野での合弁会社の設立に関する覚書を締結したことに加え、ロシアのウラン

濃縮施設であるウラル電気化学コンビナートへのカザフスタンの参加に関する共同声明も

発表した。なお、カザトムプロム社はロシアのアンガルスクにある国際ウラン濃縮センタ

ー(IUEC)の株式 10%を保有している。

また、カザフスタンと IAEA は 2015 年 8 月にウラン燃料バンクの設置に関する協定を、

2016 年 5 月には貯蔵施設建設に向けたパートナーシップ協定を締結した。同バンクはカザ

フスタン北東部のウルバ冶金プラント(UMP)に設置され、最大 90 トンの LEU(100 万

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157

kW 級の軽水炉 1 基を 3 年間運転できる量に相当)を備蓄する予定である。同バンクの建設

は 2016 年 8 月に開始されており、UMP は 2017 年 9 月までに施設を完成し、操業に係る

準備を完了する予定である。

転換については、UMPが担っている。UMPは 1973年以降、ロシアとウクライナのVVER

及び RBMKで使用する燃料ペレットを製造している。

放射性廃棄物管理・処分

アクタウの BN-350 から発生した使用済燃料はサイト内で貯蔵されている。また、カザ

フスタンではウラン鉱山と精錬の過程で発生する放射性廃棄物が全体の 90%を占める。

同国では放射性廃棄物に関する具体的な処分方針は決まっておらず、現在、放射性廃棄

物の貯蔵と処分方法について検討されている。

対外協力

a)米国

カザフスタンと米国は 2016 年 4 月、エネルギー分野における両国間の連携に関する共同

声明に署名した。両国は、カザフスタンの研究炉改築やセキュリティ強化といった分野で

の協力を行うことに合意している。

b)中国

カザフスタンは 2010 年 6 月、中国と原子力協力協定に調印し、カザトムプロム社が中国

へのウラン供給に関する契約を受注した。

また、カザトムプロム社は 2014 年 12 月、中国広核集団有限公司(CGN)と相互協力協

定に署名し、ウラン資源の採掘や核燃料の製造、原子力の平和的利用、そしてカザフスタ

ン-中国間におけるウラン製品輸送に関する協力を拡大させることに合意した。さらに、

CGN とは 2015 年 12 月、カザフスタン国内に立地予定の燃料製造工場の設計・建設とウラ

ン採掘の共同開発に係る商業契約書に署名したほか、2016 年 9 月には燃料ペレットの供給

に係る契約を締結し、中国の原子力発電所向けに 180 トンの燃料ペレットを供給すること

に合意した。2016 年 12 月には、CGN との共同出資(カザフスタン側、中国側がそれぞれ

51%、49%を出資)による燃料加工工場の建設を開始した。この燃料加工技術については

仏 AREVA NP 社が提供する。燃料の製造開始は 2020 年を予定している。

c)フランス

カザフスタンとフランスは 2010 年 10 月、原子力協力協定に調印した。2015 年 11 月に

はフランス電力(EDF)と天然ウラン精鉱を 2021 年~2025 年まで供給する契約を締結し

た。

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d)韓国

カザフスタンは 2010 年、韓国電力公社(KEPCO)とウラン採鉱と原子力発電所建設に

おける協力について前向きに検討することで合意した。

e)インド

カザフスタンは 2011 年 4 月、インドと原子力協力協定に署名し、インド原子力発電公社

(NPCIL)に天然ウランを供給している。2015 年 7 月、供給契約を 2019 年までに更新し

た。

f)カナダ

2013 年 11 月、カザフスタンとカナダは原子力協力協定に署名し、同協定は 2014 年 8 月

に発効した。

g)サウジアラビア

2016 年 10 月、カザフスタンとサウジアラビアが原子力平和利用に係る協力協定に署名

した。

h)日本

カザトムプロムは 2015 年 10 月、日本原子力発電および丸紅ユティリティ・サービスと

原子力分野に係る覚書(MOU)を締結した。同 MOU に基づき、原子力利用に関する協力

関係の拡大、広報分野の経験の共有、安全確保に関する専門家育成を進めていく。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Kazakhstan

Nuclear Energy Complexes in Russia and Kazakhstan

カザフスタン国営通信ウェブサイト

カザトムプロム社ウェブサイト

カザフスタン大統領府ウェブサイト

カザフスタン外務省ウェブサイト

ウルバ冶金プラント・ウェブサイト

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(5) ベラルーシ

●基本情報

面積 20.7 万 k ㎡ 人口 約 950 万人

公用語 ベラルーシ語、ロシア語

通貨 1000 ベラルーシ・ルーブル≒6 円(2016 年 4 月 1 日現在)

政治体制 共和制

議会 二院制。上院(64 議席)、下院(110 議席)

政府 大統領 アレクサンドル・ルカシェンコ

首相 アンドレイ・コビャコフ

GDP 620 億ドル(2015 年)

成長率 マイナス 3.56%(2015 年)

経済の特徴及び概況

大型の国営企業が温存された旧ソ連的な管理経済体制を維持。2011 年春には経済危機

により、IMF 等に支援を要請した。世界的に原油価格が下落したことにより、市場の

大半を占めるロシア経済が落ち込み、ベラルーシ経済にとって大きな打撃となってい

る。2016 年 3 月には、ロシア主導のユーラシア安定化発展基金が、ベラルーシに対し

3 年間で 20 億ドルの融資を決定。

建設中:2 基

現在原子力発電は未導入であるが、グロドノ州オストロベツに 120 万 kW の原子炉を 2 基建設中である。1 号機は 2018 年、2 号機は 2020

年の運開が計画されている。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):1,027 石

炭:2,246 天然ガス:30 億(立方メートル)

ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

2,774 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

13.2%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェ

ア(%):原子力未導入

●電力

電源種別設備容量 火力:9,999 水力:33 原子力:該当データなし その他:4

電力供給体制の概

関係する情報は確認できていない。

電源種別発電電力量

約 8 割が天然ガスによる火力発電である。

電力消費量

(百万 kWh)

30,221

発電電力量

(百万 kWh)

34,735

輸入電力量

(百万 kWh)

3,314

電力需要の推移と見通し

関係する情報は確認できていない。

●エネルギー政策・計画

2015 年 12 月の「ベラルーシのエネルギー安全保障構想」は、2035 年までのエネルギー

基本方針をとりまとめたものであり、再生可能エネルギーによる供給量の拡大やエネルギ

ー調達先の分散化に今後注力することが示されている。

3.0%

29.5%

61.1%

6.3%石炭

石油

天然ガス

その他

一次エネルギー

総供給

2,774万

石油換算トン

26379

34,042

121167

石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

34,735GWh(単位はGWh)

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●原子力政策・計画

原子力発電

2011~2020 年を対象としたエネルギー戦略においては、ロシアへのエネルギー依存の縮

減を目指すとしている。発電分野については、ロシア起源のガス火力発電の割合を縮小す

るために、240 万 kW の原子力発電設備容量を確保することを目標としている。

ルカシェンコ大統領は 2007 年 11 月、原子力発電所建設に関する政令に署名し、2008 年

12 月には、建設サイトとしてグロドノ州オストロベツが選定された。

政府は 2009 年 6 月、オストロベツ発電所の建設の総合請負事業者として、露アトムスト

ロイエクスポート(ASE)を選定し、2011 年 3 月には建設に係る政府間協定が締結され、

同年 10 月に原子力発電所建設総局と ASE が VVER-1200(120 万 kW)2 基の建設契約を

締結した。その後 2013 年 11 月、オストロベツ 1 号機のコンクリート打設が開始され、2015

年 10 月に原子炉容器が納入された。2016 年 11 月には、ベラルーシの原子力規制当局が原

子力と電離放射線取扱に関するライセンスを発給し、1、2 号機の試運転に向けての作業が

可能となった。1 号機は 2018 年 11 月、2 号機は 2020 年 7 月に運開予定である。

なお、ロシアは同発電所の建設に対する資金援助も行っており、総額 100 億ドルの融資

を行う合意書が、ベラルーシの Belvnesheconombank とロシア開発対外経済銀行との間で

2012 年 2 月に締結されている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

核燃料サイクルの政策については、定まっていない。

放射性廃棄物管理・処分

ベラルーシでは原子力発電が行われていないが、放射性廃棄物管理施設「Ekores」、

「Polesie」、「Radon」で放射性廃棄物の貯蔵・処分が行われている。なお、IAEA 安全基

準に基づく放射性廃棄物管理方針が 2015 年 6 月に策定された。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Belarus.

ベラルーシ国営通信ウェブサイト

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162

(6) アルメニア

●基本情報

面積 2.9 万 k ㎡ 人口 300 万人

公用語 アルメニア語

通貨 1 ドル=483.5 ドラム(2016 年 4 月現在:アルメニア中央銀行)

政治体制 共和制

議会 一院制(任期 5 年、定数 131)

政府 首相 カレン・カラペチャン

GDP 110.6 億ドル(2014 年)

成長率 3.4%(2014 年実質)

経済の特徴及び概況

2004 年~2007 年は高い水準で成長率が推移。2009 年は世界経済危機の影響でマイナ

ス成長となったが、2010 年には再びプラスに転じた。2015 年 1 月、ロシアが主導す

るユーラシア経済同盟に加盟。

設備容量:37.6 万 kW 発電電力量:26 億 kWh

運転中:1 基(PWR) 建設中:0 基 計画中:1

基(PWR) 原子力シェア:34.5%

政府は 2010 年 8 月、現在運転中のメタモール発電

所で、同 3 号機(VVER-1000)を増設する政府間

協定をロシアと締結。2018 年の建設開始が見込ま

れている。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):44 石炭:

480 天然ガス:180 億(立方メートル) ウ

ラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

295 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

28.7%(原子力含)、7.0%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):21.7%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:2,390 水力:1,289 原子力:408 その他:4

電力供給体制の概

発送配電はそれぞれ別の会社が行っている。複数の発電会社が発電

を行っている。送電は「高圧送電網会社」、配電はアルメニア電力網

会社が行っている。

電源種別発電電力量

総発電電力量に占める原子力の割合は 4 割

弱である。その他では、天然ガスと水力の占

める割合が大きい。

電力消費量

(百万 kWh)

5,349

発電電力量

(百万 kWh)

7,750

輸入電力量

(百万 kWh)

-1,105

電力需要の推移と見通し

2005 年 4 月にアルメニア政府により承認された「アルメニアの経済発展に関連したエネル

ギー部門開発戦略」によると、電力需要予想には参照シナリオと低シナリオの 2 つがある。

参照シナリオでは 2020 年の電力需要の約 50%を原子力で賄い、電力需要がより低く設定

されている低シナリオでは 58%を原子力で賄うとされている。

10.6%

61.1%

20.9%

5.6%-1.9%

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

295万

石油換算トン

3,289

2,465

1,992

4

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

7,750GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

政府が 2007 年に承認したエネルギー戦略では、エネルギー源の多様化と原子力及び再生

可能エネルギー利用によるエネルギー安全保障の実現が重点目標として掲げられた。

●原子力政策・計画

原子力発電

アルメニアではメタモール 2 号機(VVER-440、37.6 万 kW)が国内で運転中の唯一の原

子炉であり、同国の総発電電力量の約 3 割を供給している。

2007 年のエネルギー戦略に基づき、政府はメタモールに新たな原子炉を建設するための

フィージビリティ調査を実施することを発表した。調査には、ロシア、米国及び国際原子

力機関(IAEA)が支援を行った。

2009年 2月に政府はメタモールにおける 100万 kW規模の原子炉建設に関する入札を開

始し、6 月にはプロジェクトのマネジメントを行う事業者として、豪ウォーリー・パーソン

ズ社が選定された。同年 10 月には議会が原子炉新設に関する法律を承認し、12 月には政府

が、アルメニアとロシアの合弁企業メタモールエネルゴアトムの設立を承認した。さらに

政府はロシア政府と 2010 年 8 月、VVER-1000(1 基)の建設と燃料供給及び同機の廃止

措置までのサービスをロシアが提供する協定を締結した。

なお、国内で唯一運転中のメタモール 2 号機については、隣接する EU 諸国やトルコか

ら安全上の懸念から、早期閉鎖が要請されていたが、アルメニア政府はメタモール 3 号機

が運開するまでは、国内電力需要で重要な役割を担う 2号機の運転を継続する方針である。

メタモール 3 号機の建設開始時期は 2018 年が見込まれている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

燃料サイクル分野でもアルメニアはロシアと協力しており、2008 年 4 月には、政府と露

ARMZ ウランホールディングの間で、アルメニアでウラン採掘などを行う合弁会社を設置

する協定が署名された。しかし、ウラン採掘は成功せず、2015 年に事業は終了した。

また露 ROSATOM 国営原子力会社は 2012 年 5 月、アンガルスクの国際ウラン濃縮セン

ター(IUEC)の株式の 10%相当分をアルメニア原子力発電会社に売却した。

放射性廃棄物管理・処分

放射性廃棄物はすべてメタモール原子力発電所サイトに貯蔵されている。使用済燃料と

高レベル放射性廃棄物の処分構想については、今後、同サイトの既存炉の廃止措置計画に

盛り込まれる予定である。

安全規制

アルメニアは EU 加盟国ではないが、2011 年 6 月に、EU ストレステストを自発的に実

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165

施した。

●出典

アルメニア電力網会社ウェブサイト

アルメニア・エネルギー・天然資源省ウェブサイト

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Armenia

ロシア大統領府ウェブサイト

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1.2.5. アジア

(1) 中国

●基本情報

基本

情報

面積 約 960 万 k ㎡ 人口 約 13.76 億人

公用語 中国語

通貨 1 ドル=約 6.5 元(2015 年末,中国国家外国為替管理局)

政治

政治体制 人民民主共和制

議会 一院制(全国人民代表大会)

政府 国家主席 習 近平

国務院総理(首相) 李 克強(共産党)

経済 GDP 約 10 兆 9,828 億ドル(2015 年名目)

成長率 6.9%(2015 年実質)

北龍中低レベル処分場

西北中低レベル処分場 紅沿河④(建設中②、計画中)

田湾②(建設中④、計画中)海陽(建設中②)石島湾(建設中①)

秦山⑦方家山②

寧徳④(計画中)桃花江(計画中)

咸寧(計画中)彭澤(計画中) 三門(建設中②、計画中)

福清③(建設中③、計画中)

陸豊(計画中)大亜湾 ②嶺澳④陽江③(建設中③)

昌江②(計画中)

防城港②(建設中②、計画中)

台山(建設中②)

宜賓燃料加工施設(F)

包頭燃料加工施設(F)

蘭州濃縮施設(E)、再処理パイロットプラント(R)

漢中濃縮施設(E)

北京

 原子力発電所(○内は基数)

 計画中、建設中の原子力発電所

 核燃料サイクル施設(( )内は種別)

 計画中、建設中の核燃料サイクル施設

  C:転換施設 E:濃縮施設

  F:燃料製造・加工施設 R:再処理施設

 放射性廃棄物管理施設

 計画中、建設中の放射性廃棄物管理施設

設備容量:3,161.7 万 kW 発電電力量:1,612 億 kWh

運転中:35 基(PWR33 基、PHWR2 基)

建設中:21 基(PWR20 基(うち EPR2 基、AP1000 4 基)、HTGR1 基)

計画中:40 基 原子力シェア:3.0%

電力不足解消や温暖化対策などの理由から、特に 2004 年以降から原子力開発を推進し、国産炉開発だけ

でなく第 3 世代炉の導入・国産化にも積極的。2014 年 6 月に国務院により承認された「エネルギー発展

戦略行動計画(2014-2020 年)」では、2020 年までに原子力発電の設備容量を 5,800 万 kW とし、同時

期の建設中の原子力発電所の設備容量を 3,000 万 kW 以上にする目標。

また国産炉の輸出を通じた国際協力、高速増殖炉(FBR)によるクローズドサイクルの実現、高温ガス

炉や核融合などの研究開発にも積極的。

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経済の特徴及び概況

1970 年代より閉鎖的な計画経済からより市場志向の経済へと移行し、農業・財政・

金融などの分野で改革を進めてきた。1990 年代前半から飛躍的な経済成長が続き、

2010 年には世界最大の輸出国となるとともに、米国に次ぐ世界第二の経済大国とな

った。2009 年には世界経済危機の影響で中国経済も後退したが、その後急速な回復

を見せた。しかし、景気は緩やかに減速している。足元では地域や業種等によって

景気動向にばらつきがあり、例えば製造業を始めとする第二次産業は減速する一方、

金融、サービスを始めとする第三次産業は堅調であるなど、「まだら模様」の状態に

ある。

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):50,121 石

炭:5,931,953 天然ガス:3 兆 8,410 億(立

方メートル) ウラン:120,000(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

30 億 5,150 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

85.0%(原子力含)、83.8%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):1.1%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:1,005,720 水力:313,981 原子力:19,880 その他:122,358

電力供給体制の概

2002年の電力改革により電力工業部の流れをくむ国家電力公司が分

割され、現在の 5 大電力会社が設立された。同時に発送電も分離さ

れ、発電部門とは独立して設立された国家電網公司及び中国南方電

網有限責任公司がほぼ国内全土の電力供給を担っている。

電源種別発電電力量

65.9%16.5%

5.0%

1.1%3.0%

8.4%石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

30億5,150万

石油換算トン

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電力の約 75%を石炭に依存している。消費

地までの輸送コストや安定供給、環境保護な

どの面から原子力発電が推進されているが、

原子力のシェアはいまだ 2%台にとどまっ

ている。また、再生可能エネルギーの開発に

も注力している。

電力消費量

(百万 kWh)

4,715,698

発電電力量

(百万 kWh)

5,665,745

輸入電力量

(百万 kWh)

-11,407

電力需要の推移と見通し

国際エネルギー機関(IEA)は 2010 年時点で、中国の電力需要が 2008 年から 2035 年に

かけて 3 倍に増加すると予測しており、この電力需要を満たすため膨大な設備容量の追加

が必要となると見込んでいる。また、同期間において、原子力や二酸化炭素貯留(CCS)

技術を備えた発電プラント、水力、再生可能エネルギーなど低炭素電源による発電電力量

の割合は 2 倍になるとの見通しも示されている。

●エネルギー政策・計画

共産党政権は、重点事業や国家経済運営の在り方を示した計画(五カ年計画)を 5 年ご

とに策定している。エネルギー需要が伸び続けている中国であるが、第 11 次五カ年計画期

間(2006~2010 年)においては、それまでのエネルギー多消費型の経済成長から、エネル

ギー効率の高い経済成長へと転換することが目標とされた。第 12 次五カ年計画(2011~

2015年)では、エネルギー消費量を単位 GDPあたり 16%削減し、二酸化炭素排出量を 2010

年比で 17%削減するとの目標が示されている。

また、2014 年 6 月に政府が策定した「エネルギー発展戦略行動計画(2014-2020 年)」

では、「節約優先戦略」、「国内自給戦略」、「クリーン低炭素戦略」及び「革新駆動戦略」の

4 つの戦略が掲げられており、原子力はこのうち「クリーン低炭素戦略」の中で、非化石エ

ネルギー源の発展や漸進的な石炭消費量の低下を実現するための電源の一つとして位置づ

けられている。さらに同年 11 月には、二酸化炭素(CO2)排出量のピークを 2030 年頃と

し、一次エネルギー消費量における非化石エネルギー源のシェアが 2030 年までに 20%前後

に達するようにするという目標が、習国家主席とオバマ前大統領との首脳会談後の、温室

効果ガス(GHG)の排出量の削減目標に関する共同声明の中で示されている。

2016 年 3 月に採択された第 13 次五カ年計画(2016~2020 年)では、「エネルギー構造

の改善」として、風力・太陽光発電の継続的推進、太陽熱発電の拡大、バイオマスや地熱、

潮汐エネルギーの活用、石炭のクリーンで高効率な利用などの施策が挙げられている。ま

た、原子力についても、沿海部を中心として建設を推進していくことが示されている。

4,115,215

9,517

114,505

132,538

1,051,137

242,833

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

5,665,745GWh (単位はGWh)

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●原子力政策・計画

原子力発電

国務院は、2014 年 6 月に策定した「エネルギー発展戦略行動計画(2014-2020 年)」に

おいて、2020 年までに原子力発電の設備容量を 5,800 万 kW とし、同時期の建設中の発電

所の設備容量を 3,000 万 kW 以上にする、という目標を掲げている。

福島第一原子力発電所事故後も、政府の原子力開発計画に変更はないが、事故を踏まえ

て原子力の安全基準を見直すため 2011年 3月から新規原子炉建設計画の承認手続きが中断

された。2012 年 10 月に政府は、「原子力安全・放射性汚染防止第 12 次五カ年計画と 2020

年長期目標」及び「原子力発電安全計画」を承認し、既設炉と新設炉の安全規制に関する

方針を決定した。また同年 10 月に承認した、2020 年までの原子力開発計画に関する方針

を示す「原子力発電中長期発展計画」において、今後承認される原子炉は国際的に最も高

い水準の安全基準を満たすものでなくてはならないとの方針が示された。2015 年 3 月 10

日には、国家発展改革委員会(NDRC)が遼寧省・紅沿河原子力発電所の 5・6 号機の建設

プロジェクトを承認し、新規建設の承認が再開された。さらに同年 4 月 15 日には、国務院

の常務会議で、中国が自主開発する第 3 世代炉である華龍 1 号の福建省・福清原子力発電

所における建設プロジェクトが承認された。華龍 1 号は現在、福建省・福清及び広西チワ

ン族自治区・防城港の両原子力発電所で建設中であり、その他、2015 年 7 月には福建省・

寧徳原子力発電所 5・6 号機での採用が決定している。

また、第 13 次五カ年計画では、「沿海部における原子力発電ベルトを重点とし、自主開

発する原子炉のモデルプロジェクトの建設を安全に進める」という計画が示されている。

中国で建設中のプラントは、2017 年 1 月現在で 21 基であり、それらには 4 基の AP1000

及び 2 基の欧州加圧水型原子炉(EPR)などの第 3 世代炉も含まれている。2017 年 2 月に

国家能源局が策定した「2017 年エネルギー工作指導意見」では、2 基の AP1000(三門及

び海陽 1 号機)及び 1 基の EPR(台山 1 号機)を含む、合計 5 基のプラントを同年内に運

開させるよう取り組むとの計画が示されている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

中国では原則としてウランを国内自給する方針を採用してきたが、原子力開発目標が拡

大されたことから、この原則が見直されるようになった。2006 年 4 月のオーストラリアと

の原子力協力協定締結によりウラン輸入が可能となったのをはじめ、ヨルダンやカザフス

タン、ウズベキスタン、カナダ、ロシア、フランスとの間でウラン採鉱や供給に関する契

約を締結している。

中国では、ウランの転換、濃縮及び燃料加工は大部分、自国で実施されている。VVER

の燃料についてはロシアから調達していたが、これについても国内における製造へと移行

させており、建設中の AP1000 の燃料についても、製造施設の設計・建設に関して米ウェ

スティングハウス(WH)社と合意している。なお、中国広核集団(CGN)はカザフスタ

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170

ンとの協力により燃料調達を進めようとしており、2016 年 12 月には CGN とカザフスタン

国営原子力会社カザトムプロムが共同出資する燃料加工工場の建設が開始されている。

また、中国は国内でのクローズド燃料サイクル(再処理、FBR 開発)路線を推進すると

している。現在、使用済燃料は、一部を除いて、各発電所の原子炉建屋内の燃料プールで

貯蔵されている。再処理について、蘭州(Lanzhou)に商業用再処理多目的パイロットプ

ラントが完成して、ホット試験が実施されている。また、フランスとの協力で進められて

いる核燃料サイクルプロジェクトについて中国核工業集団公司(CNNC)は、2020 年に再

処理プラントの建設を開始し、2030 年ごろに完工するという見通しを示しており、CNNC

は 2017 年 2 月には、燃料サイクル事業に特化する NEW AREVA 社との間で、燃料サイク

ル事業に関する工業・商業協力に関する枠組み協定に調印している。

一方、軽水炉での混合酸化物(MOX)燃料の装荷については未定であり、プルサーマル

の実績はないが、2010 年 10 月には CNNC がベルギー企業等との間で、国内での MOX 燃

料製造パイロットプラントの建設に関する枠組み協力協定に調印している。FBR 開発につ

いては、実験炉(CEFR)が 2010 年 7 月に初臨界に達し、2011 年 7 月に送電網に併入さ

れている。

放射性廃棄物管理・処分

高レベル放射性廃棄物処分について、ガラス固化体(HLW)及び一部の使用済燃料を対

象廃棄物とし、候補岩種を花崗岩とした地層処分が予定されており、1985 年より CNNC

が中心となって、研究開発やサイト選定などを実施している。処分場サイトの有力候補と

してはゴビ砂漠の北山(Beishan)が検討されており、CNNC が処分場に適した地点を特

定するための地質評価を実施中である。HLW 管理計画については、2006 年 2 月に発表さ

れた「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画ガイド」に次のようなスケジ

ュールが示されている。

・ 実験室レベルでの研究とサイト選定(2006-2020 年):全体方針、計画、法規、技術基

準等の検討

・ 地下での試験段階(2021-2040 年):処分工程技術、地質、化学及び安全評価に関する

研究、総合試験研究、検証と評価作業

・ プロトタイプ処分場の検証実験、処分場建設段階(2041-今世紀半ば):プロトタイプ処

分場の検証実験、地層処分場建設の研究

低中レベル放射性廃棄物の処分について、中国では、甘粛省・西北、広東省・北龍の 2

カ所の低・中レベル放射性廃棄物処分場が操業中であり、四川省の飛凰山低・中レベル放

射性廃棄物処分場が建設段階にある。

安全規制

中国政府は、福島第一原子力発電所事故後も、同国の原子力開発計画に変更はないとの

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171

考えを示す一方、前述のように事故を受けて安全基準を見直すため、新規原子炉建設計画

の承認手続きを一時的に中断した。

まず環境保護部(MEP)は事故を受けて原子炉の安全評価を実施した。2011 年 6 月に既

存炉、8 月には建設中の原子炉を対象として評価を実施し、大きな安全上の問題は認められ

なかったとの評価結果を示した。その後 MEP の国家核安全局(NNSA)は、2012 年 6 月

に、運転中の原子炉を対象とした事故後の一般技術基準を発表した。同基準では 8 分野に

おける安全性の改善策が示された。

更に政府は、2012 年 10 月に「原子力安全・放射性汚染防止第 12 次五カ年計画と 2020

年長期目標」及び「原子力発電安全計画」を承認した。前者の計画において、既存の原子

炉も含めた原子力施設の安全性や放射線障害のリスクの低減など、原子力安全全般の取組

が示された。同計画では、2015 年までに 798 億元を投じ、原子力発電所の安全性を高め、

放射線障害のリスクを大幅に低減させるとの方針が示されていた。また、2020 年までに、

原子力発電所の安全性や放射線障害に対する監督のレベルを総合的に引き上げるとともに、

緊急時対応能力の向上、環境放射線の良好な状態の維持に取り組むなど、安全レベルを国

際的にも高いレベルに到達させることを目標としている。

一方、新規の原子炉の安全目標については後者の「原子力発電安全計画」に示されてい

る。同計画では、今後承認される原子炉は国際的に最も高い水準の安全基準を満たすもの

でなくてはならないとされ、新設の原子炉については、第 3 世代炉と同等の技術水準を満

たすことが条件づけられた。

●原子力企業動向

国内動向

中国は第 3 世代炉の導入・国産化に積極的である。国家核電技術公司(SNPTC)は 2013

年 5 月、米 WH 社と、次世代小型モジュール炉(SMR)の開発及び国内外市場開拓におけ

る協力のための MOU を締結したこと、及び共同出資により State Nuclear WEC Co.Ltd.

を設立したことを発表した。同社は AP1000 の資機材サプライヤー認定サービスを実施す

るが、将来的にはグローバルサプライチェーンのコントロール機能も担うことが期待され

ている。なお、SNPTC と五大発電会社の一角を担う中国電力投資集団公司(CPI)との経

営統合により、2015 年 7 月に国家電力投資集団公司(SPIC)が発足しており、SNPTC は

現在、SPIC の子会社となっている。

また、CGN と CNNC による共同開発が進められてきた第 3 世代国産炉の華龍 1 号は、

2012 年 8 月に、国の技術審査に合格している。CGN と CNNC は、両者の技術融合をさら

に進める目的で、2016 年 3 月には 50%ずつの共同出資により華龍国際核電技術有限公司を

発足させている。

国外動向

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172

中国において、原子炉の海外輸出に先鞭を着けたのは CNNC である。CNNC はパキスタ

ンのチャシュマ原子力発電所 1 号機を建設しており、同機は 2000 年に商業運転を開始して

いる。さらに、2015 年 8 月にはカラチ原子力発電所 2 号機の建設が開始された。カラチ 2、

3 号機には、中国が自主開発する第 3 世代炉である華龍 1 号が採用される。

フランスと中国は、原子力分野で幅広く協力関係を構築しており、仏 AREVA 社は 2015

年 6 月に、①使用済燃料の再処理プロジェクトに関する CNNC との MOU、②燃料サイク

ルの全フェーズ及び原子炉に関する CNNC 及び EDF との合意、③中型炉及び大型炉に関

する長期的な協力に関する CGN と EDF との基本趣意書(LOI)を結んでいる。

また中国は英国への進出に向けた動きを進めている。2015 年 10 月、中国の習国家主席

と英キャメロン首相は、両国が原子力分野における協力について合意したことを発表した。

合意文書には、具体的な協力の内容として、EDF エナジー(EDFE)社によるヒンクリー

ポイント C 原子力発電所(HPC)の建設(EPR、2 基)に対して、中国企業が 33.5%出資

すること、EDF が計画しているサイズウェル C 原子力発電所の建設(EPR、2 基)に対し

ても、中国企業が出資すること、ブラッドウェル B 原子力発電所において、EDF と協力し

つつ、中国側が主事業者となり、中国の設計による原子炉の新設を進める提案が行われて

いることなどが示されている。2016 年 9 月には、英国のビジネス・エネルギー・産業戦略

省(BEIS)が、BEIS、フランス電力(EDF)、及び CGN の 3 者が HPC プロジェクトに

係る固定価格買取差額決済契約(FIT CfD)に関する文書と投資合意書(SOSIA)に署名

したことを公表した。これにより、HPC 建設が正式に決定したこととなる。

その他、中国の原子力企業は、ルーマニアやトルコ、南アフリカ、サウジアラビア等の

国々に進出する動きを見せている。こうした中、2015 年 2 月には、アルゼンチンに、同国

4基目の商用炉となる重水炉と 5基目となるPWRを建設する協議を開始するための両国政

府の了解覚書が取り交わされた。同年 11 月には、アルゼンチン原子力発電会社(NASA)

と CNNC が、4 基目の建設に係る商業面での契約と、5 基目の建設に係る枠組み契約に署

名した。また、2015 年 12 月にはタイ電力公社(EGAT)子会社の RATCH が防城港第 2

期原子力発電所プロジェクトに共同出資する合意が締結されたが、これも将来的なタイへ

のプラント輸出を見据えた動きと考えられる。

2016 年に入っても、1 月の中国核工業建設集団公司(CNEC)とサウジアラビアのアブ

ドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市(KA-CARE)の間での高温ガス炉の建設プロジ

ェクトのための協力覚書(MOU)の締結、5 月の CNNC によるスーダンの原子炉建設への

協力表明、6 月の CNEC とインドネシア原子力庁との間での高温ガス炉プロジェクトでの

協力の表明など、中国企業による積極的な海外進出の動きは続いている。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles(CNPP)

International Energy Association, “World Energy Outlook 2010”

Page 317: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

173

"Ju WANG (CNNC)"Deep Geological Disposal of High Level Radioactive Waste

in China: Long-term Plan and Latest Progress by 2004", 2004.

原子力発電中長期発展規則(2005~2020 年)

中国政府ウェブサイト

カナダ首相府ウェブサイト

国家電網公司ウェブサイト

スペイン原子力安全委員会(CSN)ウェブサイト

中国核工業集団公司(CNNC)ウェブサイト

フランス電力(EDF)ウェブサイト

エクセロン社ウェブサイト

World Nuclear News

AREVA 社プレスリリース

新華社ウェブサイト

中国広核集団プレスリリース

アルゼンチン連邦計画・公共投資・公共サービス省プレスリリース

国家核電技術公司(SNPTC)ウェブサイト

アルゼンチン原子力発電会社プレスリリース

核工業建設集団公司(CNEC)ウェブサイト

カザトムプロムウェブサイト

Page 318: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

174

(2) 韓国

●基本情報

基本

情報

面積 約 10 万 k ㎡ 人口 約 5,150 万人

公用語 韓国語

通貨 1 ドル=1,172.00 ウォン、100 円=972.01 ウォン(2015 年)12 月

政治

政治体制 民主共和国

議会 一院制(300 議席)、

政府 大統領 黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行(国務総理)

2017 年 3 月 10 日朴槿惠(パク・クネ)前大統領罷免決定により国

務総理が権限を代行。次の大統領選挙は 2017 年 5 月を予定

経済

GDP 1 兆 4,170 億ドル(2014 年名目)

成長率 2.6%(2015 年実質)

経済の特徴及び概況

経済は、2015 年、民間消費や建設投資は前年に比べると増加したが(それぞれ前年

比 2.1%増,前年比 4.0%増)、輸出は減少し、経済成長率は 2.6%となった。

慶州市中低レベル 放射性廃棄物処分場(建設中)

 原子力発電所(○内は基数)

 計画中、建設中の原子力発電所

 核燃料サイクル施設(( )内は種別)

 計画中、建設中の核燃料サイクル施設

  C:転換施設 E:濃縮施設

  F:燃料製造・加工施設 R:再処理施設

 放射性廃棄物管理施設

 計画中、建設中の放射性廃棄物管理施設

新ハンウル (建設中② 計画中②) ハンウル ⑥

天池(計画中②)

ハンビット ⑥ 新月城②月城 ④

新古里③ (建設中① 計画中④)古里 ④

韓電原子力燃料会社(C、F)

ソウル

設備容量:2,301.7 万 kW 発電電力量:1,572 億 kWh 運転中:25 基(PWR21 基、PHWR4 基)建設中:3 基 計画中:8 基 原子力シェア:31.7%

政府は低炭素電源として、原子力発電を推進する方針。2014 年 1 月に策定した第 2 次エネルギー基本

計画では 2035 年の原子力シェアを 29%とした。原子炉輸出に関して政府は 2010 年 1 月、UAE への

原子力発電プラント輸出を契機に、2030 年までに原子炉 80 基を輸出する戦略を発表。第 2 の輸出成

約は未だ実績がないが、国産小型炉の事業協定をサウジアラビアと締結するなどの動きがある。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):該当データ

なし 石炭:2,347 天然ガス:60 億(立方

メートル) ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

2 億 6,841 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

18.3%(原子力含)、3.1%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):15.2%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:69,122 水力:6,467 原子力:20,716 その他:3,525

電力供給体制の概

半官半民の韓国電力公社(KEPCO)が発送配電を独占している。

電源種別発電電力量

韓国では発電電力量の 4 割強を石炭火力が

占め、次いで天然ガスが 3 割弱。原子力は約

25%。

電力消費量

(百万 kWh)

486,837

発電電力量

(百万 kWh)

545,865

輸入電力量

(百万 kWh)

0

電力需要の推移と見通し

2014 年 1 月に決定された第 2 次エネルギー基本計画では、2035 年までの間、電力消費の

上昇率を年平均 2.5%と試算した上で、2035 年時点の総電力需要を 8,160 億 kWh と結論づ

けた。

30.4%

35.9%

16.1%

15.2%

0.1% 2.3%石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

2億6,841万

石油換算トン

231,500

17,395

130,458

156,407

2,7527,353

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

545,865GWh (単位はGWh)

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176

●エネルギー政策・計画

韓国のエネルギー政策の重点は、エネルギーの安定供給、省エネルギー、環境保全であ

る。また、韓国政府は数年来、気候変動対策に積極的に取り組む姿勢を見せており、2009

年には大統領直轄の「グリーン成長委員会」を設置し、2050 年までの長期ビジョンである

「グリーン成長国家戦略」を策定した。

発電コストが低く CO2 排出量の少ない電源として原子力開発を推進してきた韓国政府は、

福島第一原子力発電所事故後も新規原子炉建設を推進する方針を堅持してきた。積極推進

派であった李明博(イ・ミョンバク)大統領に代わって 2013 年 2 月に大統領に就任した朴

槿惠(パク・クネ)大統領は、中長期的に再生可能エネルギーの開発を進めるとしながら

も、原子力発電縮減政策はとらず、国民の安全と環境を最優先に考慮して、運転中の原子

炉については徹底した管理を行うとの方針を示すなど、国民の不安と不信に配慮した、原

子力発電維持の方針を表明している。なお、韓国は 2015 年 12 月の COP21 に際し、2030

年までに BAU 比 37%減とする温室効果ガス削減目標案を掲げている。

●原子力政策・計画

原子力発電

現政権5は、国民の受容性に配慮しながらも、国内では原子力発電を引き続き重要な電源

と位置付けるとともに、輸出は引き続き促進する方針である。

2014 年 1 月、国のエネルギー政策上の最上位の計画にあたる、エネルギー基本計画(第

2 次、2013~2035 年を対象)が確定した。2013 年 10 月の官民ワーキンググループによる

「第 2 次エネルギー基本計画に関する政策提言」では、発電設備容量に占める原子力発電

の比率範囲 22~29%が示されていたが、第 2 次エネルギー基本計画では最も高い 29%が政

府案として示され、国務会議の承認を経て確定した。この数値の採用にあたり政府は、2035

年までの間、電力消費の上昇率を年平均 2.5%と試算した上で、2035 年時点で必要な原子力

発電設備容量を 4,300 万 kWと結論付けた。同設備容量を実現するためには 2024 年~2035

年の間に約 700 万 kW の新・増設が必要となる。なお、韓国の原子炉は 2025 年以降、順次

設計寿命を迎えるが、運転許可延長に関する方針が現状では未定であるため、今後の新設

基数はリプレースのための増設の可能性も検討しながら決定される。

政府は 2015 年 7 月、「第 7 次電力需給基本計画」を決定し、2029 年時点での電源ミック

スに占める原子力の比率を 28.5%とするとともに、2028、2029 年を運開予定とする原子炉

を計 2 基新設する方針を示した。一方、韓国最古の原子炉である古里 1 号機の 2017 年の恒

久停止も同時期に決定されたため、2029 年時点での総基数は 35 基となる見込みである。

5 2017 年 3 月 10 日、憲法裁判所は朴槿惠前大統領の罷免を決定。次の大統領選挙までの

間、国務総理が権限を代行。。

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対外関係

海外進出については引き続き官民一体での積極的な取り組みが続いているが、2009 年末

のアラブ首長国連邦(UAE)での 4 基の受注以降、2010 年にはトルコ、ヨルダン、リトア

ニアのプロジェクトに取り組んだが、いずれも成果を上げることができなかった。近年で

は、2032 年までに 12~16 基の新設を計画するサウジアラビアに対して、複数回の原子力

発電産業ロードショーを開催したほか 2013 年 10 月には、フィンランド、ハンガリーと新

たに原子力協力協定を締結している。

2015 年 3 月にサウジアラビアとの間で、国産の小型炉 SMART を 2 基以上サウジアラビ

アに建設し、同国との協力により第 3 国への輸出を目指す MOU に署名しており、同年 9

月には、同 MOU の合意内容を受け、建設前詳細設計(Pre-Project Engineering)事業協

定を締結した。韓国は 2015 年 3 月に、UAE との間でも今後第 3 国への共同進出の可能性

を検討する MOU に署名している。

また 2017 年 2 月には、南アフリカ原子力公社(ESKOM)による原子炉新設計画に係る

情報要求(RFI)に対し、KEPCO が参加意向を表明したことが ESKOM 側から公表され

ている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

核燃料サイクルのフロントエンドのうち韓国国内で行っているのは燃料加工工程のみで

ある。

韓国には経済性のあるウラン資源は賦存しておらず、ウラン精鉱は全量輸入に依存し、

フランス、豪州、カナダ、カザフスタン、ドイツ、ニジェールなど供給源を多様化してい

る。ウラン転換は、米国、カナダ、フランス、ドイツ、中国等に委託している。重水炉用

ウラン転換は 1993 年以降、全量をカナダの Cameco に委託している。濃縮は、5~10 年単

位の役務提供契約を国際入札によって締結しており、英国、フランス、ロシア、中国等が

現在の供給元である。

燃料加工は、韓国原電燃料(KNFC)が国内の全ての原子力発電所の燃料を製造している。

韓国は 1991 年 11 月の「朝鮮半島の非核化と平和構築のための宣言」において再処理施

設の保有を放棄している。しかし、外交通商部(現・外交部)は 2009 年 7 月、同国内での

原子力発電の重要性が増大している現状に照らせば、2014 年に満了する米韓原子力協定の

更新に際して国内での濃縮・再処理を求めたいとの意向を示した。その後、両国は 2011 年

1 月、使用済燃料のパイロプロセス(乾式再処理)の共同研究を 2021 年まで実施すること

で合意し、協定改定交渉の議題からは切り離すこととした。米韓原子力協定の改定に向け

た協議はその後複数回にわたり行われたが、韓国国内での再処理および濃縮に関して両国

の溝は埋まらず、協定を 2 年延長して交渉を継続した。両国は、2015 年 4 月、韓国側の既

存の研究施設における照射後試験および低濃縮ウランからの放射性同位元素分離の許容、

海外再処理委託の許容、20%未満の濃縮の許容に関する両国協議の枠組みの設置(次官級

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二国間ハイレベル委員会)、産業・商業協力の促進などの内容が盛り込まれた新たな原子力

協定の締結で合意に至り、同 6 月に正式署名した。その後米国連邦議会の審議期間の満了

により、11 月 25 日の両国外交公文の交換を以て、同日に新原子力協定が発効した。

放射性廃棄物管理・処分

① 高レベル放射性廃棄物

韓国では、産業通商資源部(MOTIE)が放射性廃棄物の貯蔵・処理・処分に関する基

本政策と実施計画を策定することとなっている。なお、処分事業の実施主体として 2009

年 1 月に韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC、当時。現・韓国原子力環境公団=KORAD)

が設立された。

現在、使用済燃料は各原子力発電所内の貯蔵プールまたはサイト内乾式貯蔵施設で全量

が貯蔵されている。

将来的に使用済燃料の再処理を実施せず直接処分する場合の管理方法として、地層処分

が検討されているが、結論は出ていない。2011 年以降、各原子力発電所サイト内の使用

済燃料貯蔵施設でリラッキングによって貯蔵容量を拡大させる方法が検討されている。

MKE(当時)は 2012 年 9 月に、使用済燃料の管理に関する国民的議論のプロセスに着

手すること、および自治体、社会・環境団体、研究者らから構成される民間の諮問機関で

ある「使用済燃料公論化委員会」を設置して議論を深め、同諮問機関の勧告を踏まえて

2014 年中に「使用済燃料管理対策基本計画」を策定する方針を固めた。2013 年 10 月に

発足した公論化委員会は、討論会、円卓会議、タウンミーティング、アンケート、インタ

ーネットなどによる公論化プロセスの結果や、専門家グループの意見書を踏まえ、2015

年 6 月に「使用済燃料管理勧告」を取りまとめた。

公論化委員会の勧告を受けた政府は 2016 年 5 月に「高レベル放射性廃棄物管理基本計

画(案)」を公示し、同計画案はパブリックコメント期間を経て同年 6 月に確定した。同

計画では、中間貯蔵施設と、最終処分施設の両方を 1 カ所に立地するためのサイト選定

を今後約 12 年かけて、オープンで民主的なプロセスにより行った上で、中間貯蔵施設を

約 7 年間、最終処分施設に先行して建設する地下研究施設を約 14 年間かけてそれぞれ建

設し、この地下研究施設を、建設後約 10 年間の地下特性調査等の研究期間を経て、最終

処分施設へと拡充する等の計画が示されている。サイトが予定通り確定した場合、中間貯

蔵施設は 2035 年頃、最終処分施設は 2053 年頃の操業開始が見込まれる。その一方、世

界のすう勢も念頭に置き、国際共同貯蔵・処分の可能性についても経済性・安全性等の観

点から検討する方針が示されている。

② 中低レベル放射性廃棄物

慶州市の中低レベル放射性廃棄物処分場は、2008 年に第 1 期建設に着工し、2014 年 6

月に建設が完了、原子力安全委員会の操業許可を同 12 月に取得して第 1 期区域の操業が

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2015 年 7 月に開始された。2017 年 2 月、第 2 期区域(浅地中処分を予定)については、

前年の慶州地震を受けた耐震性能強化のため、当初計画から 1 年遅れの 2020 年の操業予

定へと計画が後ろ倒しされた。

安全規制・安全対策

福島第一原子力発電所事故後、韓国でも原子力発電所の安全に対する国民の不安が高ま

り、2011 年 3 月 23 日から 4 月 30 日にかけて全国の原子力発電所の安全点検が行われた。

この安全点検は、震度 7.2 の地震とそれに伴う津波が発生した場合を想定して、国内の全原

子力発電所の安全性を確認したもので、政府は 5 月、国内の全原子力発電所の安全性が確

認されたことを発表した。

一方、原子力研究開発を推進する MEST(当時。現・未来創造科学部=MSIP)、の傘下に、

原子力安全規制を担当する原子力安全委員会と安全規制の技術支援機関(TSO)である韓

国原子力安全技術院(KINS)が置かれている既存の体制が問題視され、同 10 月に原子力

安全委員会が大統領直属の常設行政機関として設置された。新たな原子力安全委員会は委

員長と副委員長を含め計 7~9名の委員で構成される原子力安全政策の最高行政機関と位置

付けられており、KINS および韓国原子力統制技術院(KINAC)はその下位組織となった。

2013 年 2 月に朴槿惠新政権が誕生すると、原子力安全委員会の位置付けは再び変更され、

国務総理室直属機関へと変更された。

福島第一原子力発電所事故後、韓国では国内でもっとも古い古里 1 号機における全交流

電源喪失事象が事業者から隠ぺいされていた事件や、原子力発電所部品の品質書類の偽造

が相次いで発覚したことなどを受けて国民の原子力に対する不信感が募り、2013 年 4 月に

は高経年化プラント 2 基について、朴前大統領の就任時の公約に沿った措置として EU ス

トレステストと同水準の安全評価が実施されることになった。古里 1 号、月城 1 号機を対

象としたストレステストは終了し、2012 年 11 月に設計寿命を満了して停止した状態で運

転延長を申請していた月城 1 号機については、原子力安全委員会(NSSC)が 2015 年 2 月

に 10 年間の運転延長を認めた。2016 年には、高経年化プラント以外の運転中の全プラン

トについてもストレステストを実施する方針が示されていたが、状況に関する情報は確認

されていない。

2016 年 9 月に慶州で過去最大級となる M5.8 の地震が発生した。震源地から約 28 キロの

距離にある月城 1~4 号機は、発電事業者である韓国水力原子力(KHNP)の独自の安全規

定に基づき精密点検のため運転を手動停止した。今回の地震を機に、原子力安全委員会は

2016 年 12 月、「大規模地震に備えた原子力施設安全性改善対策」を発表し、原子力発電施

設の耐震補強、耐震能力の精密評価、地質調査に加え、耐震設計基準の再評価も行うこと

を明らかにした。

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●原子力企業動向

国内動向

韓国水力原子力(KHNP)は 2013 年 5 月、地域のブランドイメージを損ねるとの住民の

声に応える形で、国内 2 カ所の原子力発電所の名称を変更することを発表した。蔚珍(ウ

ルチン)はハンウルに、霊光(ヨンガン)はハンビットにそれぞれ名称を変更した。現在

韓国では 25 基が運転中、3 基が建設中であるが、2016 年 6 月には新たに新古里 5、6 号機

の建設許可が発給されており、間もなく建設が開始されれば建設中の原子炉は 5基となる。

韓国初の第 3 世代炉であり、現在 UAE のバラカで建設中の 4 基の原子炉のレファレンス

プラントでもある新古里 3 号機(APR1400、発電設備容量 140 万 kW、設計寿命 60 年間)

は 2016 年 12 月に商業運転を開始した。

海外動向

原子力政策・計画

「対外関係」の項に示すとおり、韓国は原子力輸出に官民一体の取り組みを続けている。

政府は 2016 年 7 月、原子力輸出戦略レビューを実施し、商材の多角化、戦略的提携の推進、

輸出可能事業者の拡大、輸出推進体制の強化・調整等の取り組みの強化が指示された。こ

れに伴い、これまで輸出の際には KEPCO のサブコントラクターとしてコンソーシアムの

一員として参加していた KHNP も、独自の販路で運転、メンテナンスサービス等の輸出に

積極的に取り組むことが可能になった。

UAE プロジェクトの進捗

2009年 12月に受注したUAEバラカ原子力発電所建設プロジェクトは 2012年 7月にバ

ラカ 1、2 号機の建設許可が発給され、建設が開始されている。2014 年 5 月にバラカ 1 号

機、2015 年 6 月に 2 号機の原子炉容器の据付がそれぞれ行われた。

2014 年 9 月にはバラカ 3、4 号機の建設許可が発給され、同月に 3 号機、2015 年 9 月に

は 4 号機のコンクリート打設がそれぞれ開始された。

初号機となるバラカ 1 号機は 2016 年 2 月に運転前の機能試験を開始し、プロジェクト契

約時の計画にほぼ沿った 2017 年中の運開を目指している。

2016 年 10 月、首長国原子力会社(ENEC)と韓国電力公社(KEPCO)が合弁事業契約

を締結し、バラカ発電所の建設、発電事業を担う Barakah One PJSC(Barakah One 社)

を共同で設立することが決定された。KEPCO 側の出資額は約 9 億ドル(持分約 18%)で、

同時に、ENEC の 100%子会社で運転を担う Nawah Energy 社の約 18%持分も取得するこ

ととなった。一連の合弁事業契約に際しては、韓国輸出入銀行(KEXIM)が合計 31 億ド

ルの金融支援を行う。

2016 年 11 月、Barakah One 社とアブダビ水・電力会社(ADWEC)との間で電力購入

契約(PPA)が締結された。

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●出典

IAEA,”CNPP”.

韓国政府ポータルサイト

大統領府

経済通商資源部

未来創造科学部

外交部

大韓民国電子官報

韓国電力公社

韓国水力原子力株式会社

原子力安全委員会

原子力環境公団

韓国原子力産業会議

原子力発電白書

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(3) 台湾

●基本情報

面積 3.6 万 k ㎡ 人口 約 2,350 万人

公用語 中国語、台湾語、客家語等

通貨 1 米ドル=32.318 新台湾ドル(2016 年年平均,台湾中央銀行)

政治体制 民主共和制

議会 一院制

政府 総統 蔡英文

副総統 陳建仁

GDP 5,289 億米ドル(2016 年)

成長率 1.40%(2016 年実質)

経済の特徴及び概況

台湾では投資や貿易に関する政府の介入が減り、銀行や公営企業の民営化も進められ

てきた。経済を牽引しているのは輸出で、電子機器・機械に代表される輸出が GDP 成

長率の約 70%を占めており、輸出依存型であることから世界経済の影響を受けやすい

傾向にある。台湾の長期的な課題としては、外交上の孤立、少子高齢化が指摘されて

いる。

設備容量:492.7 万 kW

発電電力量:351 億 kWh

運転中:6 基(PWR2 基、BWR4 基)

建設中:2 基 計画中:0 基

原子力シェア:16.3%

2008 年 3 月の総統選挙に勝利した国民党の馬政権は 2011 年 5 月、段階的に脱原子力を目指し、既存の原子炉の運転期間を延長しないことを発表。なお 2012 年に馬総統は再選し、脱原子力政策を維持。

第四(龍門)原子力発電所において ABWR2

基が建設中。当初は 2006~2007 年に運開予定であったが、度重なる建設遅延により大幅に遅延し、2015 年 6 月には 3 年間の一時的な閉鎖状態に移行。2016 年 1 月の総統選挙で、より脱原子力に積極的な民進党の蔡英文氏が当選。5 月 20 日に就任式が実施された。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):該当データ

なし 石炭:該当データなし 天然ガス:該

当データなし ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

1 億 1,023 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

12.4%(原子力含)、2.3%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):10.0%

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:37,391 水力:4,683 原子力:5,144 その他:1,257

電力供給体制の概要 国営の台湾電力公司(TPC)が発送配電を行っているが、発

電部門には独立電気事業者が参入している。

電源種別発電電力量

台湾では石炭火力が総発電量の約 50%を占

め、天然ガスが約 27%、原子力の割合は約

16%である。

電力消費量

(百万 kWh)

232,000

発電電力量

(百万 kWh)

256,904

輸入電力量

(百万 kWh)

0

電力需要の推移と見通し

電力消費量の伸び率は、過去 10 年間では約+7.6%~-3.9%とばらつきがあり、年平均で

は約+2.1%である。

●エネルギー政策・計画

2008 年 3 月の総統選挙で誕生した馬英九政権は、前政権の「脱原子力国家」政策から一

転して原子力を容認する方針であったが、2011 年 3 月の福島第一原子力発電所事故などを

受けて、段階的に脱原子力を目指すことを決定した。政府は原子力発電の代わりに、総発

電設備容量に占める再生可能エネルギーの比率を 2030 年までに最大で 20%にしたい考え

37.1%

38.4%

12.4%

10.0%

0.3%1.8%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1億1,023万

石油換算トン

125,415

8,565

70,483

42,389

4,3185,734

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

256,904GWh (単位はGWh)

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184

を示した。

馬総統は 2012 年 1 月に再選を果たしたが、2016 年の総統選挙では、より脱原子力に積

極的な民進党の蔡英文氏が当選し、同年 5 月に総統に就任した。新政権は脱原子力への意

思を鮮明にした。2017 年 1 月には、2025 年までに原子力発電を全廃するとの内容を含ん

だ改正電気事業法が成立した。

●原子力政策・計画

原子力発電

前国民党政権は、原子力発電を容認してきたが、ドイツが脱原子力を決定したことを受

けて、段階的に脱原子力を目指す方針を示し、2011 年 6 月に、国内に 3 カ所ある既存の原

子力発電所はいずれも基本的に運転延長しない方針であることを明らかにした。

一方、建設中の第四原子力発電所(ABWR×2 基、各 135 万 kW)について政府は、すべ

ての安全基準に適合させることを政府が保証することを条件として完成させる方針を示し

た。

これらの原子力政策を含め、前国民党政府は台湾の新たな原子力政策の方向性として、

2011 年 11 月に以下の方針を明らかにした。

既存の 3 カ所の原子力発電所の運転期間を延長しない

建設中の第四原子力発電所は安全性が確認されない限り運開させない

第四原子力発電所の運開後は、段階的な脱原子力を達成すべく、原子力発電の縮減に

向けた計画を 4 年ごとに改訂する

原子力発電所の基準を上回る自然災害が発生した場合、当該の発電所について運転を

一時停止するか閉鎖する

第四原子力発電所の 2 基の原子炉が 2016 年までに営業運転を開始した場合、第一原子

力発電所を 2018 年以前に閉鎖する可能性がある

既存の原子力発電所の閉鎖に向けて、政府は電力需要の削減に向けた積極的な措置を

講じる

電力安定供給、電気料金維持、CO2 排出量削減を脱原子力と両立させる

上記のように第四原子力発電所は建設が進められる方針であった。しかし政府と立法院

は 2013 年 2 月に、建設中止の是非を問う国民投票の実施で合意した。その後の市民運動の

活発化なども受け政府は 2014 年 4 月に、国民投票の実施まで建設活動を中断すること等を

決定した。ただし政府は、この決定が原子力放棄を意味しないことを強調しており、エネ

ルギー会議を開催する方針も示している。なお、国民投票の実施時期は現在も未定である。

第四原子力発電所 1 号機は、2014 年 7 月に、安全検査に合格しているものの、台湾電力公

司(TPC)は 2015 年 6 月に、第四原子力発電所について、3 年間の一時的な閉鎖状態に移

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行させることを公表している。

2016 年の総統選挙により新総統となった民進党の蔡氏による新政権は、2025 年までの脱

原子力の実現という、民進党がかつてから示していた方針を堅持しており、脱原子力の具

体化に向けた法改正が行われている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

台湾はフロントエンドについて、海外に委託している。ウラン供給については、オース

トラリア パラディン・エナジー社、カナダ カメコ社及び英国 リオ・ティント社の 3

社と、長期の供給契約を締結している。ウランの転換は、カナダ カメコ社及び米国 コ

ンバーダイン社と長期契約を締結し、2021 年までの必要分を確保している他、濃縮につい

ては英国 ウレンコ社及びフランス AREVA NC 社と契約を締結していた。両社との契約

は 2015 年で満了したが、ウレンコ社とは契約を 7 年延長している。燃料は、第一・第二発

電所は米国 AREVA Inc.、第三発電所は米国 ウェスティングハウス社から購入しており、

まだ運転開始していない第四発電所については米国 GNF-A社から購入することとなって

いる。

台湾では、現在、使用済燃料は発電所のプールで保管されている。また、第一及び第二

原子力発電所では、乾式貯蔵施設の建設が進められているが、まだ操業には至っていない。

現在、使用済燃料の再処理は実施されていないが、TPC は 2015 年 2 月に、1,200 体の使用

済燃料の再処理を海外委託する国際入札を開始した。この入札の当初の開札予定は同年 4

月 9 日であったが、立法院(国会)での審議において、入札における立法院の関与が不十

分であることや、バックエンド基金の使用に関する法的規定がない中で基金を利用しよう

としていると指摘されたことを受けて公告を取り下げた。TPC は、立法院で再処理予算に

関する承認が得られれば、再度入札を実施するとの意向を示していたが、いまだ取り組み

は再開されていない。

放射性廃棄物管理・処分

使用済燃料は各原子力発電所サイト内で中間貯蔵した後、地層処分する予定である。TPC

はサイト選定に向けて各地の岩盤の特性調査・評価を実施しており、地層処分場の建設は

2055 年頃に開始される見込みである。

また、政府は、現在の湿式貯蔵が限界に達する前に各原子力発電所に乾式貯蔵施設を建

設する方針である。

なお低レベル放射性廃棄物に関して、候補サイトとされている台東県・達仁郷と金門県・

烏坵郷での処分場設置の可否に関する住民投票の実施は遅れている。

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●出典

経済部・エネルギー局

台湾電力公司

台湾原子能委員会

台湾行政院新聞局

中央通訊社

台湾行政院

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(4) ベトナム

●基本情報

面積 32.92 万 k ㎡ 人口 約 9,270 万人

公用語 ベトナム語

通貨 1 ドル=約 22,162 ドン(2017 年 1 月)

政治体制 社会主義共和国

議会 一院制(定数 500 名)

政府 首相 グエン・スアン・フック

GDP 約 2,019 億米ドル(2016 年)

成長率 6.21%(2016 年)

経済の特徴及び概況

1986 年のベトナム共産党第 6 回大会でドイモイ(刷新)政策が提唱されて以降、ベト

ナムは市場経済システムの構築と積極的対外開放政策に取り組んでいる。2000 年代に

入り、海外直接投資も順調に増加し、2000 年~2010 年の平均経済成長率は 7.26%と

高成長を達成した。2011 年以降、マクロ経済安定化への取り組みに伴い、成長率が若

干鈍化した一方でインフレを抑制しつつ安定的に成長している。

東南部のニントゥアン省に 2 基

ずつ 2 カ所の原子力発電所(総発

電設備容量 400 万 kW)の建設が

計画されていたが、2016 年 11

月、計画は白紙撤回された。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):599 石炭:

210,115 天然ガス:6,170 億(立方メート

ル) ウラン:1,000(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

6,662 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

106.9%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):(原子力未導入)

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:18,368 水力:15,603 原子力:該当データなし その他:

109

電力供給体制の概

商工省(MOIT)管轄下のベトナム電力公社(EVN)系列企業が発

送配電事業の大半を担っている(一部 IPP 事業者等も存在)。

電源種別発電電力量

水力が最大の電源として利用されており、発

電電力量の約 45%を占めている。次いで天

然ガス(約 34%)と石炭火力(約 20%)の

比率が高い。現時点では原子力発電は導入さ

れていない。

電力消費量

(百万 kWh)

130,895

発電電力量

(百万 kWh)

140,913

輸入電力量

(百万 kWh)

2,616

電力需要の推移と見通し

2014 年から 2015 年にかけての電力需要の伸びは 11%程度であった。政府は 2016 年 3 月、

2011年 7月に策定された第 7次国家電力開発マスタープラン(PDP7)を修正。修正版PDP7

では、2020 年の電力需要は 2,350 億 kWh、2030 年時点で 5,000 億 kWh とされており、

当初の PDP7 から約 3 割下方修正されている。

28.8%

26.9%13.4%

7.6%

23.4%

石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

6,662万

石油換算トン

34,563

449

47,211

58,544

146 石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

140,913GWh(単位はGWh)

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●エネルギー政策・計画

ベトナムでは高い経済成長を背景に、社会経済発展を支える電力の安定供給のため、天

然ガス・石炭火力の開発に加えて、原子力発電の導入も計画されてきた。

グエン・タン・ズン首相(当時)が 2011 年 7 月に承認した第 7 次国家電力開発マスター

プラン(PDP7)では、2020 年におけるベトナムの総発電電力量は 3,300 億 kWh と想定さ

れており、その内訳は水力 19.6%、石炭火力 46.8%、天然ガス火力 24%、再生可能エネル

ギー4.5%、原子力 2.1%、輸入 3%となっていた。しかし、近年の経済成長の鈍化をうけて

PDP は修正された。修正版 PDP では、原子力発電の導入は 2030 年頃とされ、同国の原子

力開発計画はペースダウンしていた。さらに政府は 2016 年 11 月、ニントゥアンにおける

2 カ所の原子力発電所建設計画を白紙撤回することを国会に提案し、国会はこれを承認した。

●原子力政策・計画

原子力発電

ベトナムでは工業省(MOI:現 MOIT)とベトナム原子力機構(VAEI)等が中心となっ

て 1996 年から 2001 年にかけて原子力発電の導入に関する検討が実施された。その後 2002

年3月に政府が設置した運営委員会(NEPIO)により、予備的なフィージビリティ調査(FS)

が開始された。

予備的 FS の結果に基づき、政府は 2008 年 3 月、同国初の原子力発電所としてニントゥ

アン省の 2 カ所に 4 基(計 400 万 kW)建設することを決定し、計画は 2009 年 11 月に国

会で承認された。

2010 年 10 月には第 1 発電所の建設に関するロシアとの政府間協定(IGA)、2011 年 10

月には第 2 発電所の建設に関する日本のとの IGA が締結され、以降、FS や人材育成等が

両国の協力のもと進められてきた。。しかし政府は 2016 年 11 月、これらの建設計画を白紙

撤回することを国会に提案し、国会はこれを承認した。政府が原子力開発計画を断念した

背景には、経済成長率の鈍化、(計画当初は、年率平均 7.5~8%の成長が想定されていたが、

現在では成長率は最高でも 6%程度)、省エネ技術の進歩による電力消費の効率化が見込ま

れること、建設投資コストの増大(福島第一原子力発電所事故をうけた安全強化策を考慮

することで、建設投資額は2009年時点の試算額から倍増し180億ドルにのぼる)等がある。

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●出典

露 ROSATOM 国営原子力会社

ベトナム外務省ウェブサイト

ベトナム原子力機構ウェブサイト

ベトナム国会ウェブサイト

ベトナム電力公社ウェブサイト

ベトナム放射線・原子力安全規制庁ウェブサイト

ベトナム政府ポータルサイト

ベトナム国営通信

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(5) インド

●基本情報

面積 328.74 万 k ㎡ 人口 12 億 1,057 万人

公用語 連邦公用語はヒンディー語、他に憲法で公認されている州の言語が 21

通貨 1 ルピー=1.67 円(2016 年 11 月 30 日)

1 米ドル=68.39 ルピー(2016 年 11 月 30 日)

政治体制 共和制

議会 二院制:上院(250 議席)、下院(545 議席)

主要政党:インド人民党(BJP)が 2014 年 4、5 月の下院選挙で単独

過半数を獲得し政権を樹立

政府 首相 ナレンドラ・モディ(BJP)

GDP 2 兆 74 億ドル(2015 年名目)

成長率 7.6%(2015 年)

経済の特徴及び概況

インドは 1991 年代前半の経済自由化路線への転換を機に飛躍的な経済発展を遂げ

た。リーマン・ショックに端を発する世界的な金融危機の影響の中でも 6.7%の成長

ナローラ ②

クムハリア(計画中④)

ラジャスタン ⑥(建設中②)

バルジ(計画中②)

マドラス ②PFBR(建設中①) FBR(計画中②)

クダンクラム② (計画中④)

カイガ ④(計画中②)

ジャイタプール(計画中②)

タラプール ④

カクラパー②(建設中②)

トロンベイ廃棄物固化プラント(WIP)

カルパッカム廃棄物固化プラント(WIP)建設中

タラプール廃棄物固化プラント(WIP)ガラス固化体中間貯蔵施設(SSSF)

ニューデリー

 原子力発電所(○内は基数)

 計画中、建設中の原子力発電所

 核燃料サイクル施設(( )内は種別)

 計画中、建設中の核燃料サイクル施設

  C:転換施設 E:濃縮施設

  F:燃料製造・加工施設 R:再処理施設

 放射性廃棄物管理施設

 計画中、建設中の放射性廃棄物管理施設

設備容量:621.9 万 kW 発電電力量:346 億 kWh

運転中:22 基(PHWR18 基、BWR2 基、PWR2 基)

建設中:5 基(PHWR4 基、FBR1 基) 計画中:20 基 原子力シェア:3.5%

急激な経済成長に伴い電力需要の大幅な増大が予想されることから、福島第一原子力発電所事故後

も引き続き原子力開発を推進。2032 年までに原子力発電設備容量を 6,300 万 kW に拡大することを

目指す。原子力開発政策では 3 段階からなるトリウム燃料サイクルを推進。

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率を維持、2010-2011 年度は 8.4%まで回復したが、経済は減速。2014 年度に入り、

経済重視の姿勢を掲げるモディ新政権が成立。2015 年度の GDP 成長率は 7.6%とな

った。今後の政策及び政権運営が注目されている。

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):764 石炭:

393,465 天然ガス:1 兆 4,890 億(立方メ

ートル) ウラン:77,000(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

8 億 2,474 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

65.7%(原子力含)、64.6%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):1.1%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:241,396 水力:40,061 原子力:5,780 その他:29,142

電力供給体制の概

電力供給体制は各州により異なる。事業者には、中央政府・州政府

管轄下の公社、民間の電気事業者が存在する(原子力発電事業は中

央政府が独占的に実施)。

電力消費量

(百万 kWh)

947,128

発電電力量

(百万 kWh)

1,287,398

輸入電力量

(百万 kWh)

5,012

電源種別発電電力量

石炭産出量の豊富なインドでは、石炭火力が

発電電力量の約 7 割を占めている。石炭火力

に次ぐ主力電源は水力、天然ガス火力であ

り、原子力の比率は 3%程度に過ぎない。

電力需要の推移と見通し

インド計画委員会が 2006 年に策定した「総合エネルギー政策」によると、GDP 成長率を

年 8%と想定した場合、電力需要は 2032 年までに 3 兆 8,800 億 kWh に拡大すると予想さ

45.8%

22.4%

5.2%

1.1%

1.4% 24.0%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

8億2,474万

石油換算トン

966,520

22,696

62,929

36,102

131,643

67,508石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

1,287,398GWh (単位はGWh)

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193

れている。この需要に対応するために必要な発電設備容量は 7 億 7,800 万 kW とされてお

り、その中で原子力は 6,300 万 kW を占めると想定されている。

●エネルギー政策・計画

電力需要が増大しているインドでは、更なる発電設備の増設や送配電インフラの整備が

緊急の課題となっている。インド計画委員会が策定した「第 12 次五カ年計画」(2012 年~

2017 年)では、GDP 成長率 9%とした場合(レファレンスケース)において、同期間の発

電設備の追加目標は約 1 億 1,850 万 kW、うち火力が 7,230 万 kW、水力が 1,090 万 kW、

原子力が 530 万 kW、再生可能エネルギーが 3,000 万 kW(風力 1,500 万 kW、太陽光 1,000

万 kWを含む)となっている。

●原子力政策・計画

原子力発電

インドは長期的な原子力政策として、国内に豊富に存在するトリウム資源の有効利用を

目指し、次の 3 段階からなる増殖炉燃料サイクル計画を進めている。なお、高速増殖実験

炉(FBTR)は既に稼動している。

・ 第 1 段階:天然ウランを燃料とする加圧重水炉(PHWR)でのプルトニウムの生産

・ 第 2 段階:高速増殖炉(FBR)でのプルトニウム利用及びトリウム照射によるウラ

ン 233 の生成

・ 第 3 段階:改良型重水炉(AHWR)でのウラン 233 の利用及びトリウム照射による

ウラン 233 の生成

インドは 1960~70 年代にかけて米国とカナダから原子炉を輸入したが、1974 年に核実

験を行ったために海外からの技術援助が打ち切られ、核不拡散上の国際的制約もあるため

に、上記のような国産の PHWR を開発し、自前で核燃料サイクルを推進する政策への転換

を図ってきた。

しかし近年では、2008 年の米印原子力協力協定の締結を契機として、政府は諸外国との

協力の下での原子力開発拡大に向けて動き始めている。インドは 2008 年 9 月以降、これま

でにフランス、米国、ロシア、カナダ、韓国、オーストラリア、スリランカ等との間で二

国間民生原子力協力協定に署名したが、2016 年 11 月にはこれに日本も加わった。

<建設中の新規原子炉>

2016 年 8 月に、クダンクラム 2 号機(VVER、100 万 kW)が送電網に併入され、現在

建設中の新規原子炉は、下表の 5 基(PHWR4 基、高速増殖原型炉(PFBR)1 基)である。

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炉型 設備容量(万 kW:

ネット) 建設開始時期

カルパッカム PFBR 50 2004年 10月

カクラパー3 PHWR 70 2010年 11月

同 4 PHWR 70 2011年 3月

ラジャスタン 7 PHWR 70 2011年 7月

同 8 PHWR 70 2011年 9月

計 330

(出所):World Nuclear Association, "Country Profiles"、インド原子力規制委員会(AERB)

<新設計画>

国産炉の新設計画としては、ハリヤナア州のクムハリア近郊に建設が予定されているゴ

ラクプール原子力発電所における国産加圧重水炉(PHWR)4 基(各 70 万 kW)新設に対

して、2015 年 7 月にインド原子力規制委員会(AERB)の立地許可が発給された。また、

マディアプラデシュ州、ラジャスタン州、カルナタカ州でも国産PHWRの建設が計画され、

タミルナドゥ州では高速増殖炉(FBR、50 万 kW)の建設が計画されている。

国産炉以外では、フランスの協力で欧州加圧水型原子炉(EPR)がマハラシュトラ州ジ

ャイタプールに 6 基、ロシアの協力で VVER がクダンクラムサイトに新たに 4 基(うち 2

基については 2016 年 10 月に基礎工事開始)、さらに他のサイトに数基建設される見通しで

ある。また米国の協力で 6 基の AP1000 が新設される計画で、完工予定は 2030 年とされて

いる。インド政府は米国に対しても、新設が可能なサイトとして、グジャラート州ミティ・

ヴィルディとアンドラプラデシュ州コヴァーダの 2 カ所を示している。

<原子力損害賠償制度>

海外の原子力企業、特に民間主体の米国企業がインドに進出するには、インドにおける

原子力損害賠償制度の整備が不可欠とされてきた。

インドでは 2010 年 9 月に原子力損害賠償法が公布され、同年 10 月には政府が原子力損

害の補完的補償に関する条約(CSC)に署名したが、米国からは同法の内容は CSC に適合

していないとの見方が示されていた。こうした問題に対処するため、米印両国は連絡グル

ープを設置して取り組みを進め、インドは 2015 年 6 月に原子力保険プールを設置した。ま

た同国は、2016 年 2 月に CSC 批准書を国際原子力機関(IAEA)に寄託、同年 5 月にイン

ドは CSC 締約国となった。

これにより、米国を初めとする各国企業のインドにおける原子力事業への進出に道が開

けた。2016 年 6 月には米国のオバマ大統領が、原子力供給国グループ(NSG)へのインド

の参加を支持する声明を出している。

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核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

インドでは、原子力庁(DAE)傘下の公社や研究機関が核燃料サイクル事業全般(ウラ

ン探査・採鉱、燃料・重水製造、発電、再処理、廃棄物管理など)を実施している。燃料

コンプレックス(NFC)のハイデラバード核燃料施設では、濃縮六フッ化ウランの二酸化

ウラン粉末への転換、PHWR 用燃料の製造及びごく少量だが BWR 燃料の製造も行われて

いる。また、バーバ原子力研究センター(BARC)の再処理プラント(トロンベイ、タラプ

ール、カルパッカム)では、PHWR 使用済燃料の再処理が行われている。

国際的なウラン資源の確保に関する最近の動きとして、2015 年 4 月に DAE とカナダの

カメコ社との間で 2020年までの期間に約 3,200トンのウラン精鉱を供給する長期契約が締

結された。また、2015 年 7 月には、DAE がカザフスタン国営原子力会社カザトムプロム

との間で天然ウラン供給契約を更新している。

放射性廃棄物管理・処分

インドは再処理施設などで発生する高レベル放射性廃棄物(HLW)をガラス固化した後、

20~30 年間中間貯蔵し、最終的には地層処分する方針である。

原子炉や再処理施設で発生する放射性廃棄物は各サイトで貯蔵されている。また、BARC

の高レベル放射性廃棄物の固化プラント(WIP)がタラプールとトロンベイにあり、ガラ

ス固化体を地層処分するまで一時的に貯蔵するための中間貯蔵施設(S3F)がタラプールで

操業中である。

●出典

インド議会ウェブサイト

インド原子力発電公社(NPCIL)ウェブサイト

計画委員会ウェブサイト

原子力庁(DAE)ウェブサイト

国際原子力機関(IAEA)ウェブサイト

首相府ウェブサイト

米国務省ウェブサイト

カザトムプロムウェブサイト

カメコ社ニュースリリース

バーバ原子力研究センター(BARC)ウェブサイト

インド原子力規制委員会(AERB)ウェブサイト

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(6) バングラデシュ

●基本情報

面積 14.7 万 k ㎡ 人口 1 億 5,940 万人

公用語 ベンガル語

通貨 1 米ドル=77.67 タカ(2015 年度平均、バングラデシュ中央銀行)

政治体制 共和制

議会 一院制:350 議席

政府 首相 シェイク・ハシナ

GDP 1,566 億ドル(2015 年実質)

成長率 7.11%(2016 年)

経済の特徴及び概況

2016 年度は、7.11%の経済成長率を達成した。背景として縫製品輸出や海外労働者送

金の安定的伸長、農業セクターの安定した成長といった要因があげられる。他方、縫

製品輸出や海外労働者の海外送金に依存するところが大きく構造的に脆弱であるた

め、産業の多角化が課題である。

2010年 12月に国会が同国初のルプール原子力発電所建設プロジェクトを承認。2011 年 11

月に露 ROSATOM と建設へ向けた政府間協定に署名。同発電所 1 号機の商業運転開始は2023 年、2 号機の運開は 2024

年と見込まれている。

Page 341: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

197

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):4 石炭:

3,694 天然ガス:2,320 億(立方メートル)

ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

3,542 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

83.2%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):原子力未導入

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:11,302 水力:230 原子力:該当データなし その他:25

電力供給体制の概

送電はバングラデシュ電力系統会社(PGCB)、配電はバングラデシ

ュ電力開発庁(BPDB)や地域配電会社等によって行われている。

電源種別発電電力量

国内で豊富に産出する天然ガスによる発電

の割合が電源種別発電電力量においてほと

んどを占めており、次いで石油、石炭が続い

ている。現時点では原子力発電は導入されて

いない。

電力消費量

(百万 kWh)

48,919

発電電力量

(百万 kWh)

55,845

輸入電力量

(百万 kWh)

0

電力需要の推移と見通し

近年高い経済成長率を示してきたバングラデシュでは、今なお大きな問題となっている貧

困を緩和するためには、今後年 7%以上の経済成長が必要とみなされている。現在の見通

しでは、GDP 成長率を年 7%とした場合、電力需要を満たすために必要な発電設備容量が、

2010年の最大 645万 4,000kWから 2030年には最大 3,370万 8,000kWまで上昇すると予

測されている。

2.6%

14.5%

56.6%

0.1%

26.1%

石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

3,542万

石油換算トン

1,100

8,209

45,799

588149 石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

55,845GWh(単位はGWh)

Page 342: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

198

●エネルギー政策・計画

バングラデシュでは、貧困を緩和し、持続可能な社会経済的発展を達成するためには、

電力の安定供給が不可欠として、2020 年までに全国民への電力供給を実現することが目指

されている。

政府の計画委員会の一般経済部が作成した、「バグラデシュの見通し 2010-2021 年」(2012

年 4 月)では、発電設備容量を 2015 年、2021 年にそれぞれ 800 万 kW、2,000 万 kW ま

で拡大させる目標が掲げられた。また電源種別のシェアも示されており、2021 年における

原子力のシェアは 10%とされている。

(単位:%)

現状のシェア 2021 年のシェア

ガス 87.5 30

石炭 6.0 3

石油 3.7 53

水力 2.7 1

原子力 0 10

再エネ 0.5 3

(出所)Perspective Plan of Bangladesh 2010-20216

●原子力政策・計画

原子力発電

バングラデシュでは、パキスタンからの独立以前の 1963 年に西部のルプールが原子力発

電所の建設候補サイトとして選定された。1971 年の独立後、1980 年の建設プロジェクト認

可、1986~87 年のフィージビリティ調査、2000 年のバングラデシュ原子力行動計画

(BANPAP)の承認などを経て、2010 年 4 月にバングラデシュ政府がロシアによる 100

万 kW の原子炉建設を閣議決定し、同年 5 月にロシアとの間でルプール原子力発電所プロ

ジェクト(RNPP)に関する枠組み協力協定が締結された。さらに同年 12 月にはバングラ

デシュ国会によって RNPP 実施を承認する決議が採択されている。

バングラデシュとロシアは 2011年 11月に、同発電所建設に向けた政府間協定を締結し、

2015 年 12 月には、バングラデシュ原子力委員会(BAEC)と露 ROSATOM 国営原子力会

社子会社の間で、建設・運転に関するターンキー契約が締結された。2016 年 6 月には、バ

ングラデシュ原子力規制機関(BAERA)がルプール原子力発電所の立地許可を発給した。

6

http://www.plancomm.gov.bd/wp-content/uploads/2013/09/Perspective-Plan-of-Banglade

sh.pdf

Page 343: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

199

2016 年 7 月には、両国政府が同発電所建設のためのロシアからバングラデシュへの融資に

係る政府間協定が締結された。ロシアは建設費用の 85%程度の資金を融資する。

ルプール原子力発電所は 2017 年に建設が開始され、2023 年から 2025 年にかけて 2 基が

運開する見込みである。

なお、2012 年 9 月に首相が、ルプールに続く 2 カ所目の原子力発電所を同国南部に建設

する計画があることを明らかにしていたが、その後の関連情報は確認できていない。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

2010年 5月に締結されたRNPPに関する枠組み条約では、ウランやトリウムの鉱床開発、

核燃料供給などにおいてバングラデシュとロシアが協力することが取り決められたとみら

れている。

放射性廃棄物管理・処分

現時点ではルプール原子力発電所から発生する放射性廃棄物の管理・処分に関する公式

の方針は示されていない模様である。一方、バングラデシュ原子力委員会(BAEC)が所轄

する原子力研究施設(AERE)では、放射性廃棄物処分の前段階における安全管理について

の半パイロット施設である中央放射性廃棄物処理・貯蔵施設(CWPS)が設置され、研究

が行われている。

●出典

IAEA, Country Nuclear Power Profiles, Bangladesh

IAEA ウェブサイト

バングラデシュ政府ウェブサイト

バングラデシュ電力系統会社(PGCB)ウェブサイト

バングラデシュ電力開発庁(BPDB)ウェブサイト

ダッカ配電会社(DPDC)ウェブサイト

バングラデシュ原子力委員会(BAEC)ウェブサイト

バングラデシュ電力エネルギー鉱物資源省(MPEMR)ウェブサイト

原子力研究施設(AERE)ウェブサイト

国営バングラデシュ通信

ROSATOM 国営原子力会社ウェブサイト

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200

(7) タイ

●基本情報

面積 51.4 万 k ㎡ 人口 6,593 万人

公用語 タイ語

通貨 1 ドル=約 34.25 バーツ(2015 年平均)

政治体制 立憲君主制

議会 国家立法議会(220 名)

政府 国王 プミポン・アドゥンヤデート

首相 プラユット・ジャンオーチャー

GDP 3,952 億ドル(2015 年名目)

成長率 2.8%(2015 年)

経済の特徴及び概況

タイ経済は、主に機械、電子部品、農業、宝石等の輸出に支えられている。2008~2009

年にかけての世界金融危機では、多くの産業で輸出量が大幅に落ち込んだ。その後、

大洪水からの復旧・復興から始まり、内需が牽引する形で経済活動は回復し、2012 年

は、7.3%の成長を記録。2016 年の経済成長は、3.0~4.0%を見込んでいる。

エネルギー省エネルギー政策計画局

(EPPO)が発表した電源開発計画(PDP2015)によると、2035~2036

年にかけて 100 万 kW の原子炉 2 基が運開する計画である。

Page 345: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

201

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):965 石炭:

2,952 天然ガス:2,200 億(立方メートル)

ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

1 億 3,475 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

58.4%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):原子力未導入

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:48,238 水力:3,444 原子力:該当データなし そ

の他:1,790

電力供給体制の概要 国営のタイ電力公社(EGAT)が最大の発送配電事業者であ

るが、近年は IPP の参入も相次いでいる。

電源種別発電電力量

タイでは、総発電電力量に占める天然ガスの

割合が高い。国内には天然ガス資源が確認さ

れているが、近い将来枯渇するとみられてい

る。また、発電用の天然ガスを輸入している

ため、政府はエネルギー・セキュリティのた

めに代替電源を検討している。

電力消費量

(百万 kWh)

168,791

発電電力量

(百万 kWh)

173,631

輸入電力量

(百万 kWh)

10,663

電力需要の推移と見通し

タイ政府は、同国の電力需要が年平均 2.67%増加し、2036 年には約 3,261 億 kWh に達す

ると予測している。

11.8%

39.9%

28.1%

0.4% 19.9%

石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1億3,475万

石油換算トン

37,579

1,721

118,560

5,540

10,231

石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

173,631GWh(単位はGWh)

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202

●エネルギー政策・計画

エネルギー資源が豊富でないタイでは、資源開発を推進しつつエネルギーの効率的な利

用によってエネルギー資源の輸入依存度を低下させることがエネルギー政策の基本方針と

されている。タイのエネルギー政策において、原子力はエネルギー自給力を高める手段と

みなされており、フィージビリティ調査(FS)を行ったうえ、原子力発電の経済的優位と

公衆受容に関する詳細な調査結果に基づいて、政府の決定が行われることになっている。

●原子力政策・計画

原子力発電

タイ政府は 2010 年 3 月、2020~2028 年に 5 基の原子炉(各 100 万 kW)を運開させる

方針を含む電源開発計画(PDP2010)を承認した。PDP2010 では、2020 年に 1 基目の原

子炉が、2021 年に 2 基目が運開する予定になっており、初の原子力発電所建設に向けて米

Burns & Roe 社が行った FS 結果が、2010 年末に政府に提出された。

しかし、福島第一原子力発電所事故を受けて、アピシット首相(当時)は 2011 年 3 月、

原子力発電の導入に関する計画の見直しをエネルギー省に指示した。エネルギー省は同年 4

月、国際原子力機関(IAEA)から法令整備や公衆受容が不十分との指摘を受けたとして、

1 基目と 2 基目の原子炉の運開時期を 2023 年と 2024 年に変更することを発表した。さら

に、タイ貢献党を中心として 2011 年 8 月に発足したインラック政権は 2012 年 6 月、

PDP2010 を見直し、1 基目の完成時期を 2023 年から 2026 年に先送りすることとした。

2014 年の政変後に発足した軍による暫定政権のもとで、エネルギー省エネルギー政策計

画局 (EPPO)は 2015 年 6 月に、2015~2036 年にかけての電源開発計画(PDP2015)

を発表した。PDP2015 では、1 基目の運開時期が 2035 年に、2 基目の運開時期が 2036 年

に先送りされている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

タイではウランの採鉱は行われていない。

また原子力発電を導入した場合、燃料供給も他国に委託することを現時点では検討して

いる。

放射性廃棄物管理・処分

国営電力の EGAT が核燃料サイクルおよび放射性廃棄物管理に関する調査を進めている。

●出典

IAEA “Country Nuclear Fuel Cycle Report: IAEA Technical Reports Series

No.425, 2nd Edition, May 2005”.

Page 347: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

203

IAEA “CNPP”.

IAEA “Site Safety Requirement and Site Selection for NPP in Thailand”、

2013 年 3 月

タイ政府

タイエネルギー省

タイ電力公社

Page 348: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

204

(8) マレーシア

●基本情報

面積 約 33 万 k ㎡ 人口 2,995 万人

公用語 マレー語

通貨 1 米ドル=約 3.50 リンギット、1 リンギット=約 34.2 円(2014 年 12 月

31 日終値(マレーシア中央銀行))

政治体制 立憲君主制(議会制民主主義)

議会 二院制。上院:70 議席、任期 3 年。44 名は国王任命、26 名は州議会指

名。下院:222 議席、任期 5 年。直接選挙(小選挙区制)

政府 第 14 代国王 アブドゥル・ハリム・ムアザム・シャー

首相 ナジブ・ラザク

GDP 9,867 億リンギット(2013 年名目)

成長率 4.7%(2013 年)

経済の特徴及び概況

2008 年半ばまで経済成長率は 5%前後で推移していたが、世界金融経済危機に伴う輸

出急落で 2009 年は-1.7%に下落。2010 年は内需の回復及び好調な中国経済に牽引さ

れて通年では 7.2%まで回復した。成長は減速傾向にあるが、2013 年の経済成長率は

4.7%となった。

2011 年 1 月にマレーシア原子力開発会社(MNPC)が設立された。政府は、原子力発電の導入を決定し、2 基建設する場合には、1 基目は 2021

年、2 基目は 2022 年に運開させる方針であった。しかし MNPC によると、建設開始が 2021 年以降になる見通し。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):471 石炭:

1,840 天然ガス:1 兆 1,690 億(立方メー

トル) ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

8,970 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

105.5%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):(原子力未導入)

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:25,040 水力:4,773 原子力:該当データなし そ

の他:161

電力供給体制の概要 最大の発送配電事業者である国営のテナガナショナル電力

公社(TNB)のほか、サバ州やサラワク州では州営の事業者

等が発送配電事業を行っている。

電源種別発電電力量

マレーシアでは総発電電力量に占める天然

ガスの割合が高く、政府はこの割合を下げる

ために燃料資源をバランスよく利用するこ

とを呼びかけており、石炭の利用も増えつつ

ある。

電力消費量

(百万 kWh)

132,640

発電電力量

(百万 kWh)

147,469

輸入電力量

(百万 kWh)

12

電力需要の推移と見通し

マレーシアでは、経済の高度成長に伴い 1980 年代から急速に電力需要が増加した。2011

年における電力消費量は 1995 年比で 3 倍程度まで伸びている。2015 年策定の第 11 次マ

レーシア計画(MP)では、電力需要が 2010 年の約 1,082 億 kWh から 2020 年には約 1,919

億 kWh に増大するとの予想が示されている。

17.0%

36.9%

42.8%

1.3%2.1%

石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

8,970万

石油換算トン

55,827

3,490

73,836

13,388928

石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

147,469GWh(単位はGWh)

Page 350: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

206

●エネルギー政策・計画

マレーシア政府は、エネルギー・インフラの強化と共に、エネルギー安全保障を重要視

している。

政府は 2015 年 6 月に公表した第 11 次マレーシア計画(MP:2016~2020 年の経済開発

計画)で、上記の目標の達成に向けた戦略の 1 つとして「発電セクターにおける安全保障

のための供給源の多様化の促進」を掲げている。その中で、代替エネルギー源確保のため、

原子力発電導入について更なる検討を行い、法的枠組みを整備した上で独立した規制委員

会を設置する方針を示している。

●原子力政策・計画

原子力発電

原子力発電導入に関する最終決定はまだ正式になされていないが、政府は 2010 年に策定

した「経済改革プログラム」(ETP)の 12 の経済重点分野に含まれたエネルギー分野にお

いて、導入プログラム(Entry Point Project:EPP)の 1 つとして原子力発電を検討した。

政府は原子炉 2 基を 2021 年と 2022 年に運開させる目標で、2013~2014 年までに立地候

補等の評価を終えて 2016 年までに入札を行うことを目標として、2011 年 1 月にマレーシ

ア原子力発電会社(MNPC)を設立した。

福島第一原子力発電所事故後、2011 年 7 月の MNPC 資料では 2021 年に初号機を運開さ

せる目標は変わらず、サイト選定は 2013 年中、入札を 2014~2015 年に前倒しする暫定ス

ケジュールが示された。しかし 2013 年に MNPC は、原子炉の建設開始が 2021 年以降に

なる見通しであると発表した。

なおサイト候補地については、パハン州、ジョホール州、トレンガヌ州が調査対象とさ

れていることがメディアで報じられた。2011 年 1 月にベトナムのハノイで開催されたコン

ファレンスでは、原子力許認可委員会(AELB)のノラムリー委員長が、サイトについては

2 カ所へと絞り込みが行われ、コンサルタントによるレビューが進められていると語ってい

た。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

核燃料サイクルに関する方針は、原子力発電の導入を見込んで今後取り組むべき課題と

されており、国営電力会社であるテナガナショナル(TNB)に設置された原子力ユニット

(NEU)が燃料調達、放射性廃棄物管理等について検討する予定である。

放射性廃棄物管理・処分

2015 年までに中低レベル放射性廃棄物処分場、2070 年までに使用済燃料の最終処分場の

立地を決定する見込みが示されていたが、2017 年現在サイト決定は確認されていない。詳

Page 351: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

207

細については、NEU が検討する予定である。

●出典

エネルギー・グリーン技術・水省ウェブサイト

首相府ウェブサイト

マレーシア原子力発電会社(MNPC)ウェブサイト

テナガナショナル(TNB)ウェブサイト

IAEA ウェブサイト

首相府、第 11 次マレーシア計画7

マレーシア原子力庁, “Nuclear Power Development in Malaysia – Preparatory

Activities”8

国営通信(BERNAMA)

7 http://rmk11.epu.gov.my/book/eng/Elevent-Malaysia-Plan/RMKe-11%20Book.pdf 8

http://mys.mofa.go.kr/webmodule/common/download.jsp?boardid=13837&tablename=T

YPE_LEGATION&seqno=ffd071f8e048000015fd6072&fileseq=064f91063018f83f8d027f

b1

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208

(9) インドネシア

●基本情報

面積 約 189 万 k ㎡ 人口 約 2.55 億人

公用語 インドネシア語

通貨 1 ドル=13,192 ルピア(2016 年 5 月 2 日,インドネシア中央銀行)

政治体制 大統領制、共和制

議会 国会(DPR):定数 560 名(任期 5 年)、地方代表議会(DPD):定数 132

名(任期 5 年)、国民協議会(MPR):692 名(国会議員 560 名及び地方

代表議員 132 名で構成)

政府 大統領 ジョコ・ウィドド

GDP 8,619 億ドル(2015 年名目)

成長率 5.0%(2016 年実質)

経済の特徴及び概況

2005 年以降の経済成長率は、世界金融・経済危機の影響を受けた 2009 年を除き、5%

後半~6%台という比較的高い成長率を達成。2010 年には一人当たり名目 GDP が

3,000 ドルを突破した。ただし、経常収支の赤字化や通貨安もあり、輸出促進による収

支改善が課題。

ムリア半島での建設計画は中止されたが、新候補地バンカ島での 2 基の原子炉建設に向け、政府は 2010

年 10 月に州と覚書を締結。原子力庁は福島第一原子力発電所事故後も、原子力発電導入計画を継続す

る意向を示す。

Page 353: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

209

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):498 石炭:

225,132 天然ガス:2 兆 8,390 億(立方メ

ートル) ウラン:8,400(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

2 億 2,551 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

203.1%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):原子力未導入

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:53,692 水力:5,306 原子力:該当データなし その他:1,590

電力供給体制の概

国営インドネシア電力公社(PLN)が独占的に電力供給を行ってお

り、発電については私企業も発電会社を設立することが可能である

が、PLN に売電すべきであるとされている。

電源種別発電電力量

インドネシアで最も豊富に存在しているの

は石炭資源であり、電源構成においても最大

のシェアを占めている。水力発電は高い潜在

性をもつ電源とされているが、ジャワ島を除

いて効果的に活用されていない。

電力消費量

(百万 kWh)

198,605

発電電力量

(百万 kWh)

228,555

輸入電力量

(百万 kWh)

12

電力需要の推移と見通し

原子力庁(BATAN)は 2010 年 6 月の国際原子力機関(IAEA)におけるプレゼン資料に

おいて、2025 年にかけて国内における電力供給量が現在の 2 倍以上になり、中でも天然ガ

スによる供給が大幅に増加するとの予測を示している。

16.0%

33.3%

16.2%0.6%

33.9%

石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

2億2,551万

120,332

25,782

56,287

15,14811,006

石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

228,555GWh (単位はGWh)

Page 354: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

210

●エネルギー政策・計画

インドネシアでは、2006 年 1 月に大統領令 2006 年第 5 号として制定された「国家エネ

ルギー計画(NEP:National Energy Plan)」で、石油依存度の低減、エネルギー源の多様

化、貧困の削減、経済成長、環境に優しい開発の促進などの観点から、全部門におけるエ

ネルギー利用の転換の必要性が強調されている。また同大統領令を実現させるため、2014

年に発行された政令 79/2014(国家エネルギー政策)で、2025 年における各エネルギー源

のシェアに関する目標も設定されており、石炭は 30%、石油は 25%まで削減し、天然ガス

は 22%以上、新エネルギー及び再生可能エネルギーは 23%以上(新エネルギーには原子力

を含む)との割合が示されている9。

政府は、大統領令 2006 年第 5 号のほかにも新エネや再生可能エネルギーに関する規則や

政策を策定しており、同国のエネルギー政策の中で原子力発電は化石燃料への依存度の低

減や長期的なエネルギー供給、大気汚染などの面で役割を果たすことが期待されている。

●原子力政策・計画

原子力発電

インドネシアでは、2007 年 2 月制定の「国家長期開発計画(2005-2025 年)に関する法

律 2007 年第 17 号」において、2015 年から 2019 年の間に原子力発電を開始する方針が示

された。BATAN は、ムリア半島を有力候補地として原子力発電導入計画を進め、1 号機を

2019 年までに運開し、2025 年までに 4 基の運転を行うことを目指していた。しかし、ム

リア半島では過去にも複数回にわたって原子力導入計画の検討と中止を繰り返しており、

2009 年内に実施が予定されていた入札は同年 5 月、無期限延期が決まった。

BATAN は 2010 年 10 月に、バンカ・ブリトゥン州のバンカ島を新たな候補地として、

同島における原子力発電所建設計画に関する同意覚書を州政府と締結した。同島西部のム

ントックと南部のペルミスが候補サイトとなる見込みで、ムントックには 100 万 kW級を 1

基、ペルミスには 80 万 kW 級を 1 基建設する計画である。BATAN は 2011 年 1 月よりバ

ンカ島における原子力発電所建設に関するフィージビリティ調査の入札を実施し、日本原

子力発電株式会社(JAPC)も応札した。なお、2011 年 3 月の東日本大震災に際し、BATAN

は過去の記録から、バンカ島は比較的火山活動や地震活動の面では安定した地域であると

述べている。また、エネルギー鉱物資源省も同年 6 月、ジャカルタで開催された世界経済

フォーラム東アジア会議において、同国は原子力発電利用の可能性を完全に放棄したわけ

ではないと述べた。

9 一部報道では、新たに策定中の NEP には原子力の新設計画が含まれないとも伝えられて

いるが、政府等の公式情報では確認できていない。

http://www.indonesia-investments.com/news/todays-headlines/indonesia-to-focus-on-re

newable-energy-not-nuclear-power/item6289

Page 355: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

211

なお BATAN は非商用/実験用発電炉として、第 4 世代炉・高温ガス炉(HTGR: 熱出力

3 万 kW)を 2019 年までに建設・運開させる計画であるが、このプロジェクトは、同国に

おける将来的な商用発電炉の導入を見据えたものと位置付けられている。2015 年 4 月には、

この HTGR の概念設計に係る契約を、露 ROSATOM 国営原子力会社の子会社が参加する

コンソーシアムが受注した。その後同年 6 月に BATAN と ROSATOM は、原子力平和利用

の進展に向けた覚書(MOU)に署名した。

また BATAN は、2017 年に出力 1 万 kW のペブルベッド・モジュール型高温ガス冷却原

子炉の実験炉の建設を開始する計画であり、設計・調達・建設(EPC)の入札を開始する

見込みである。BATAN は 2016 年 5 月、中国核工業建設集団公司(CNEC)との間で、高

温ガス炉プロジェクトで協力していくことを確認し、CNEC に対し入札への参加を要請し

た。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

インドネシアの原子力法では、BATAN が燃料サイクルにおける概要調査や探査のほか、

企業等と協力して核燃料の原料の生産・調達を行う旨が規定されている。また、非商業ベ

ースでの核燃料及びアイソトープの製造は BATAN が行うが、商業ベースの核燃料製造に

ついては企業等が実施することとされている。BATAN は、2015 年 12 月のジャカルタにお

けるワークショップで、露 TVEL 社との間で、インドネシアの研究炉・実験炉での利用を

念頭においた燃料サイクル分野における協力の枠組み構築に向けた MOU に署名した。

放射性廃棄物管理・処分

原子力法では、BATAN が放射性廃棄物管理を行うことが規定されており、高レベル放射

性廃棄物処分場設置の責任も BATAN に課されている。処分場のサイトは、下院の承認を

得たうえで政府が決定することになっている。

BATAN は 2007 年のワークショップにおいて、使用済燃料の管理方針として、ワンスス

ルーの方針を採用し、原子力発電所を建設・運転した場合、使用済燃料はサイト内で暫定

貯蔵後、中期的には中間貯蔵施設で管理する見込みを示している。なお、ROSATOM は、

2010 年 12 月のジャカルタにおけるプレゼンテーションで、ロシアが建設した原子力発電

所で発生する放射性廃棄物についてはロシアが引き取り、処分するオプションも提示して

いた。

●出典

在インドネシア日本国大使館

Achmad S. Sastratenaya, Ariyanto Sudi ( BATAN ) , “Nuclear Energy

Development in Indonesia,” June 2010.

OECD/IEA, Energy Policy Review of Indonesia, 2008

Page 356: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

212

FNCA, Updated Consolidated Report on Radioactive Waste Management in

FNCA Countries, March 2007

インドネシア原子力庁(BATAN)ウェブサイト

中国核工業建設集団公司(CNEC)ウェブサイト

Page 357: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

213

(10) パキスタン

●基本情報

面積 79.6 万 k ㎡ 人口 1 億 9,540 万人

公用語 ウルドゥー語、英語

通貨 1 米ドル=104.75 ルピー(2016 年 5 月)(2015/2016 年度パキスタン経

済白書)

政治体制 連邦共和制

議会 二院制

政府 首相 ナワズ・シャリフ

GDP 約 2,710 億ドル(2015 年実質)

成長率 4.71%(2015/2016 年度実質)

経済の特徴及び概況

数十年に及ぶ国際紛争などの影響により、今日のパキスタンは低開発の国として貧困

の問題を抱えている。2008 年に IMF の融資の下、経済改革に取り組んだものの、目

標を達成しないままプログラムは終了。その後も経済危機は深刻化し、2013 年に IMF

から 3 年間で 66.4 億ドルの融資が承認された。引き続き、経済・財政の立て直しに取

り組んでいる。

チャシュマ ③(建設中①)

カラチ ①(建設中②)

イスラマバード

 原子力発電所(○内は基数)

 計画中、建設中の原子力発電所

 核燃料サイクル施設(( )内は種別)

 計画中、建設中の核燃料サイクル施設

  C:転換施設 E:濃縮施設

  F:燃料製造・加工施設 R:再処理施設

 放射性廃棄物管理施設

 計画中、建設中の放射性廃棄物管理施設

設備容量:104 万 kW 発電電力量:43 億 kWh

運転中:4 基(PWR3 基、PHWR1 基) 建設中:3 基 計画中:0 基 原子力シェア:4.3%

政府は原子力発電設備容量を 2030 年までに 880 万 kW に拡大する方針。2011 年 12 月に 4 号機、2015 年 8 月にカラチ 2 号機の建設が開始。

Page 358: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

214

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):50 石炭:

188,656 天然ガス:5,430 億(立方メート

ル) ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

8,988 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

75.9%(原子力含)、74.4%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):1.5%

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:15,888 水力:6,893 原子力:750 その他:155

電力供給体制の概

送電事業は国家送電会社(NTDC)、配電事業はパキスタン電力会社

(PEPCO)傘下の配電会社等によって実施されている他、カラチ電

力供給会社(KESC)が送配電事業を行っている。

電源種別発電電力量

石炭火力発電が約 40%、水力発電が約 30%

を占めている。原子力発電の比率は 5%弱だ

が、今後拡大が予想される。

電力消費量

(百万 kWh)

86,326

発電電力量

(百万 kWh)

105,305

輸入電力量

(百万 kWh)

430

電力需要の推移と見通し

2005 年にパキスタン政府が承認した 2005-2030 年のエネルギー保障行動計画では、2030

年までに発電設備容量が 14,331 万 kW 増加し、石炭や原子力に加え、風力や太陽光などの

再生可能エネルギーの設備容量も増加するとされている。

3.6%

26.9%

29.2%

1.5%

3.0%

35.8%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

8,988万

石油換算トン

164

41,779

26,447

5,090

31,428

397 石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他総発電電力量

105,305GWh(単位はGWh)

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215

●エネルギー政策・計画

国内エネルギー源(石炭、水力、原子力、再生可能エネルギー)の開発と輸入依存度の

減少により、競争力を維持しうる価格で持続可能なエネルギー供給を確保することが長期

的エネルギー政策の目標とされている。

一方で、電力需要の急増と配電設備の不備による電力不足によって停電が頻発し、産業

界と国内の治安に悪影響を及ぼしていることから、この危機に対処するために節電をはか

るとともに、水力に変えて原子力の拡大を検討している模様であり、2011 年 6 月にはギラ

ーニ首相(当時)が電力需要を賄うために原子炉を多く建設する必要があると発言してい

る。

●原子力政策・計画

原子力発電

1970 年代にカナダ製 CANDU 炉を用いたカラチ原子力発電所が、2000 年代に中国製

PWR のチャシュマ原子力発電所 1 号機、2011 年 5 月にチャシュマ 2 号機が商業運転を開

始している。

さらに、中国による、チャシュマ 3 号機、4 号機(共に PWR、34 万 kW)の建設が、2011

年 5 月と 12 月にそれぞれ開始され、3 号機が 2016 年 12 月に商業運転を開始した。2015

年 8 月には、カラチ 2 号機(PWR、110 万 kW)の建設が開始され、カラチ 3 号機の増設

も計画されている。カラチ 2、3 号機には、中国が自主開発する第 3 世代炉の華龍 1 号が採

用される。

なお 2005 年に政府が承認した 2005-2030 年のエネルギー安全保障行動計画では、2030

年までに原子力発電設備容量を 880 万 kW に拡大する方針が示されている。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

原子炉の新設とともに核燃料サイクルの確立が目指されている。わずかながらウランを

産出するパキスタンでは、2015 年以降、350 トンの U3O8 の生産が目指されている他、転

換・濃縮・燃料加工施設の建設に向けた準備も行われている模様である。

放射性廃棄物管理・処分

パキスタン原子力委員会(PAEC)が放射性廃棄物管理を担当している。使用済燃料は原

子力発電所サイト内で貯蔵されており、現時点では最終的な管理方針は決定されていない

模様である。

●出典

IAEA, Country Nuclear Power Profiles 2011 Edition : Pakistan

IAEA, Power Reactor Information System

Page 360: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

216

Medium Term Development Framework 2005-2010, Planning Commission,

Government of Pakistan, May 2005.

パキスタン外務省ウェブサイト

パキスタン原子力委員会(PAEC)ウェブサイト

国家送電会社(NTDC)ウェブサイト

パキスタン電力会社(PEPCO)ウェブサイト

カラチ電力供給会社(KESC)ウェブサイト

駐カラチ中国総領事館

Page 361: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

217

1.2.6. 中東・アフリカ

(1) トルコ

●基本情報

面積 78 万 k ㎡ 人口 7,874 万人

公用語 トルコ語

通貨 トルコ・リラ=約 33 円 (2017 年 1 月時点)

政治体制 共和制

議会 一院制 (550 議席 任期 4 年 複数政党制)

政府 首相:ビナリ・ユルドゥルム

GDP 8,561 億ドル(2015 年名目)

成長率 6.1%(2015 年)

経済の特徴及び概況

2012 年に入り、政府の進める経済抑制策の影響等から成長に減速が見られたが、2013

年に入り経済成長も徐々に回復、2015 年も順調に 6.1%の経済成長率を達成した。他

方、2016 年に入り、クーデター未遂事案、テロ、観光業の不振等により第 3 四半期の

経済成長率はマイナス 1.8%となっており、また 2017 年 1 月 11 日、トルコ・リラは

歴史上最安値となる 1 ドル 3.94 リラ近辺まで下落し、新興国通貨で最も大きな下落幅

を記録した。

2009 年に議会が承認した電力市場等に関する戦略では、2020 年までに発電電力量の最低 5%を原子力で賄う目標が設定。建設プロジェクトでは、アキュ原子力発電所については露 ROSATOM が受注(VVER-1200 を 4 基)、シノップ原子力発電所については三菱重工業や GDF-Suez 社(現 ENGIE 社)ら日仏連合が、シノップサイトの地質調査や環境影響評価等を含むフィージビリティ調査を開始している。

Page 362: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

218

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):330 石炭:

26,856 天然ガス:70 億(立方メートル)

ウラン:7,300(トン)

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

1 億 2,154 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

25.8%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):原子力未導入

●電力

電源種別設備容量

(千 kW)

火力:44,576 水力:24,187 原子力:該当データなし その他:

4,130

電力供給体制の概

発送配電は分離されている。発電はトルコ発電公社、送電をトルコ

送電公社、配電をトルコ配電公社及び Kayseri 配電会社が担ってい

る。

電源種別発電電力量

天然ガスによる発電の割合が一番高く、約

48%である。石炭火力の占める割合は約

30%、水力発電の割合は約 16%となってい

る。

電力消費量

(百万 kWh)

205,442

発電電力量

(百万 kWh)

251,963

輸入電力量

(百万 kWh)

5,256

電力需要の推移と見通し

2008 年 7 月にトルコ送電公社が発表した「トルコの電力:今後 10 年の発電容量見積」に

よると、2008 年の電力需要は 2,040 億 kWh であったのが、基本需要のシナリオでは 2017

年に 3,906 億 kWh、低需要のシナリオでは 3,629 億 kWh まで増加すると見込まれている。

29.5%

27.0%

33.1%

2.9% 7.5%石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1億2,154万

石油換算トン

76,263

2,146120,576

40,645

12,333

石炭

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

251,963GWh(単位はGWh)

Page 363: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

219

●エネルギー政策・計画

2009 年 5 月に議会が承認した「電力・エネルギーの市場及び供給保障に係る戦略文書」

では、電力市場の成熟により供給保障を実現する方策などが示されており、拡大する電力

需要への対応として、国内の石炭資源を活用すること、2023 年までに発電シェアの 23%を

再生可能エネルギー(水力、風力、地熱、太陽光など)で賄うこと、2020 年までに発電シ

ェアの最低 5%を原子力で賄い長期的にはさらに増加させること、などの目標が示されてい

る。

●原子力政策・計画

原子力発電

トルコでは現在、アキュ(地中海沿岸)とシノップ(黒海)の二つのサイトで、原子力

発電所の建設計画が進められている。また政府は 3 カ所目の原子力発電所の建設にも積極

的な姿勢を示すなど、原子力発電の拡大方針を示している。なお、2012 年 6 月に世界経済

フォーラムの場でエネルギー相が、国内で既に建設計画が進められている 3 カ所の原子力

発電所において、2023 年までに少なくとも 23 基の原子炉を建設する方針であると発言し

ている。

<アキュ原子力発電所>

アキュ原子力発電所プロジェクトに関しては 2010 年にロシアの受注が確定した。ロシア

は ROSATOM 国営原子力会社を中心とする事業会社を設置し計画を進めており、2013 年 2

月にエンジニアリング調査を終了した。同発電所では、4 基の VVER-1200 が建設される計

画であり、ROSATOM は 2014 年 4 月、環境影響評価(EIA)報告書をトルコ環境都市整

備省に提出した。2015 年 4 月には冷却のための沖合構造物の起工式が開催された。建設は

2018 年に開始され、2022 年以降、1 基ずつ運開する見通しである。なお、2016 年 10 月、

トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領は会談において、アキュプロジェク

トの加速で合意している。また 2017 年 3 月にはプロジェクトを実施しているアキュ NPP

プロジェクト会社が、トルコ原子力委員会(TAEK)に対してアキュ原子力発電所 1 号機の

建設許可を申請した。

投資総額は約 200 億ドルを見込み、計画に必要な資金はすべて ROSATOM 側が調達する

方針である。なお、トルコのエネルギー相は 2013 年 2 月に、建設費が 220 億~250 億ドル

となる見込みであると述べている。

事業方式は BOO(build-own-operate)の適用を予定しており、これは原子力業界では初

の試みであるという。電力購入に係る条件は、各機運開から 15 年間、トルコ国営電力卸会

社 TETAS が 1、2 号機の発電電力量の 70%、3、4 号機の 30%を平均 12.35 セント/kWh

で事業会社から購入することとなっている。残りの電力は事業会社が電力市場で販売する。

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220

<シノップ原子力発電所>

シノップ原子力発電所については、日本とトルコの両政府が 2013 年 5 月に、三菱重工業

と GDF-Suez 社(現 Engie 社)を中心とする日仏連合に優先交渉権を与えるとする協定に

署名した。2015 年 4 月には、トルコ議会がシノップ原子力発電所の建設プロジェクトに関

するトルコ・日本の政府間協定(IGA)を承認した。この承認をうけて、建設を行う日仏連

合は、シノップサイトの地質調査や環境影響評価等を含むフィージビリティ調査を開始し

ており、2023、2024 年に 1 基ずつ、2027、2028 年に 1 基ずつ運開することが見込まれて

いる。

<3 カ所目以降の原子力発電所>

3 カ所目となる原子力発電所の建設に向けて、トルコ発電公社(EUAS)は 2014 年 11

月、米ウェスティングハウス(WH)社及び中国国家核電技術公司(SNPTC)との間で、

原子力発電所新設のための独占交渉に入ることを定めた覚書を締結した。ただしこの覚書

はベンダーを決定するものではなく、具体的なサイトや炉型などについても明確な情報は

示されていない。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

トルコには、豊富ではないもののアナトリア地域の Temrezli にウラン資源が存在してお

り、オーストラリアのアナトリアエナジー社(Anatolia Energy)が鉱業権を持っている。

また、TAEK の Çekmece 原子力研究訓練センターにおいて、UO2 転換のパイロットプ

ラントとウラン燃料ペレット製造のパイロットプラントが運転されている。

放射性廃棄物管理・処分

Çekmece 原子力研究訓練センターにある中間貯蔵施設において、産業・医療・研究施設

で発生する低レベル放射性廃棄物が貯蔵されている。

●出典

TURKISH ELECTRICAL ENERGY 10-YEAR GENERATION CAPACITY

PROJECTION (2008 – 2017), July 2008

ELECTRICITY ENERGY MARKET AND SUPPLY SECURITY STRATEGY

PAPER, 21 MAY 2009

Current status of nuclear power program in Turkey, May 2016

トルコ大統領府

韓国大統領府

Page 365: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

221

GDF-Suez

アキュ原子力発電会社

アナトリアエナジー社ウェブサイト

露 ROSATOM 国営原子力会社

トルコ原子力委員会(TAEK)

Page 366: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

222

(2) ヨルダン

●基本情報

面積 8.9 万 k ㎡ 人口 759.4 万人

公用語 アラビア語

通貨 1 ヨルダン・ディナール=約 1.41 米ドル=約 161 円(2017 年 1 月)

政治体制 立憲君主制

議会 二院制、上院(65 議席)、下院(130 議席)

政府 国王 アブドッラー2 世・イブン・アル・フセイン

首相 ハーニ・ムルキー

GDP 375.1 億米ドル(2015 年名目)

成長率 2.4%(2015 年)

経済の特徴及び概況

1990年代以来 IMFと協調して進めてきた経済構造改革プログラム(2004年 7月終了)

の成果等により、近年は平均で 7%を超える高い成長を実現していたが、2008 年の世

界的金融危機の影響を受け、現在、経済成長は伸び悩んでいる。都市・地方間の所得

格差、高い水準で推移する貧困率・失業率、慢性的な財政ギャップなど構造的な問題

を抱えている。

政府は、エネルギーの輸入依存を減らすため原子力の導入を進めている。建設者の選定においては、2013 年 11 月に露 ROSATOM を建設プロジェクトに係る優先交渉権者に決定。東 Zarqa 市から東に60km のサイトで、100 万 kW 級のプラント 2 基が 2023 年までに建設される予定。

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223

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):5,242 石

炭:該当データなし 天然ガス:60 億(立

方メートル) ウラン:0

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

818 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

3.2%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):原子力未導入

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:4,186 水力:12 原子力:該当データなし その他:

1

電力供給体制の概要 発電:政府系のサムラ発電会社(SEPGCO)、民間の中央発

電会社(CEGCO)、独立系発電事業者(IPP)

送電:国家電力公社(NEPCO)

配電:電力配電公社(EDCO)、ヨルダン電力会社(JEPCO)、

イルビッチ地域電力会社(IDECO)

電源種別発電電力量

ヨルダンでは総発電電力量の約 93%を石油

火力が占めている。天然ガスは、パイプライ

ンを通じて近隣諸国からの輸入に依存して

いる。国内にはウラン資源が確認されている

ため、政府はエネルギー源として活用したい

考えである。

電力消費量

(百万 kWh)

15,186

発電電力量

(百万 kWh)

18,220

輸入電力量

(百万 kWh)

372

電力需要の推移と見通し

4.4%

89.5%

3.7%0.1% 2.3%

石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

818万

石油換算トン

16,858

1,29658 8

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

18,220GWh(単位はGWh)

Page 368: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

224

電力需要は 2030 年までに倍増するとみられ、現在の総発電設備容量は 240 万 kW である

が、2015 年までに 120 万 kWを追加し、2030 年までに合計で 822 万 kW が必要になると

見積もられている。

●エネルギー政策・計画

ヨルダンのエネルギー政策では、持続可能なエネルギーを最小限のコストで供給するこ

とが重視されており、将来的には、自国資源を開発してエネルギーの輸入依存を減らす方

針である。この方針の下、エネルギー天然資源庁が 2007 年に策定したエネルギー部門戦略

(2007-2020)においては、2020 年までにエネルギー総供給量の 39%を自国資源で賄う目

標が掲げられた。ヨルダンのエネルギー需要は今後 20 年間で 50%増加すると見込まれてお

り、原子力発電は天然ガスに替わるエネルギー源や、海水の淡水化を通じた飲料水確保の

手段として、また自国に賦存するウラン資源を燃料として活用する発電方式として評価さ

れている。

●原子力政策・計画

原子力発電

ヨルダンでは、2007 年 8 月の原子力基本計画最上級委員会の第 1 回会合で、2040 年ま

でに総発電電力量の約 30%を原子力発電で賄い、初号機を 2015 年までに完成させる方針が

示された。

サイト候補地の変更などを経てヨルダン原子力委員会(JAEC)は 2013 年 10 月に、建

設プロジェクトに係る優先交渉権者として露アトムストロイエクスポート(ASE)の親会

社の ROSATOM 国営原子力会社を選定し、ASE が原子炉ベンダー、Rusatom Overseas

社がプロジェクトの戦略的パートナー及び発電所運転者となることを発表した。プロジェ

クト費用は ROSATOM が 49%、ヨルダン政府が 51%を負担する方針であるが、ヨルダン

政府は融資オプションについては未決定部分もあり、建設・所有・運転(BOO)契約に基

づいたオプションとなる可能性もあるとしている。その後 JAEC は 2014 年 9 月、Rusatom

Overseas 社との間で、新規原子力発電所建設に係る協定を締結した。同協定には、新設さ

れる原子力発電所の冷却系の設計やフィージビリティ調査、サイト評価支援、環境影響評

価の実施等の内容が盛り込まれている。2015 年 3 月には、原子力発電所の建設・運転を目

的としたロシアとヨルダン両政府による協力協定(IGA)が締結された。さらに 2016 年 9

月、ROSATOM と JAEC は原子力分野における人材育成に係る覚書を締結した。

発電所には 100 万 kW 級の原子炉 2 基が 2023 年までに建設される予定で、建設費用は 2

基で約 100 億ドルとされている。また建設予定地は、政府が当初予定していたマフラク県

ではなく、東 Zarqa 市から東に 60km の Amra に変更されたとされている。

なお、ヨルダンは同国初の研究炉(5,000kW)の建設契約を韓国原子力研究所(KAERI)、

Page 369: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

225

大宇建設のコンソーシアムと 2010 年 3 月に 1 億 3,000 万ドルで締結し、2016 年 12 月に同

研究炉の完成が発表された。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

ヨルダンには推定 7 万トン U のウラン資源が存在するとされている。ウラン開発等の商

業活動を行うため、2007 年に JAEC が所有するヨルダン・エネルギー資源会社(JERI)

が設立され、2010 年 2 月には、JAEC が仏 AREVA 社とウラン開発に関する協力で合意し

ている。

放射性廃棄物管理・処分

JAEC が、使用済燃料の長期管理・処分に向けたあらゆるオプションを検討中である。放

射性廃棄物の管理に備えて国内の全研究所の運営能力について調査しているほか、使用済

燃料及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約の締結に向け、2016 年 4 月に批准書を寄託

した。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Jordan

OECD/ NEA

計画国際協力省

エネルギー鉱物省

ヨルダン国営通信

露 ROSATOM 国営原子力会社

Page 370: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

226

(3) アラブ首長国連邦

●基本情報

※2012 年にサイト呼称がブラカ(Braka)からバラカ(Barakah)へと改められた

面積 8.3 万 k ㎡ 人口 約 945 万人

公用語 アラビア語

通貨 1 米ドル=3.6731 ディルハム(1997 年 11 月以来ドルに連動)

政治体制 7 首長国による連邦制

議会 連邦国民評議会(選挙により選出される 20 名及び各首長の勅選により任

命される 20 名、計 40 名の議員(任期 4 年)から構成。立法権は限定的)

政府 大統領 ハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン(アブダビ

首長)

首相 ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム(副大統領、

ドバイ首長)

GDP 4,016 億ドル(2014 年)

成長率 3%(2015 年)

経済の特徴及び概況

豊富な石油収入を背景に活発な対外投資。同時に石油モノカルチャー経済からの脱却

を図っており、製造業やサービス業等産業の多様化に努めている。ドバイは商業・運

輸のハブとして発展。

アブダビ

 原子力発電所(○内は基数)

 計画中、建設中の原子力発電所

 核燃料サイクル施設(( )内は種別)

 計画中、建設中の核燃料サイクル施設

  C:転換施設 E:濃縮施設

  F:燃料製造・加工施設 R:再処理施設

 放射性廃棄物管理施設

 計画中、建設中の放射性廃棄物管理施設

バラカ(建設中④)

建設中:4 基(PWR) 計画中:0 基

2009 年 12 月に韓国電力公社中心のコンソーシアムに 4 基の APR1400 の建設契約を発注。4 基とも建設が開始されており、2017 年~2020 年まで毎年 1 基ずつ運開する予定。

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227

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):12,976 石

炭:該当データなし 天然ガス:6 兆 910 億

(立方メートル) ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

7,047 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

283.8%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):(原子力未導入)

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:28,769 水力:該当データなし 原子力:該当データ

なし その他:60

電力供給体制の概要 各首長国の公営事業者が発送配電を行っている。

電源種別発電電力量

UAE では、電源の 9 割以上を天然ガスで賄

っており、石油は輸出用に回している。天然

ガスも豊富であるが、利用量が増えたため

2007 年からは純輸入国となった。

電力消費量

(百万 kWh)

95,093

発電電力量

(百万 kWh)

109,979

輸入電力量

(百万 kWh)

81

電力需要の推移と見通し

2008 年 4 月に公表された「原子力平和利用の評価と開発可能性に関するアラブ首長国連邦

の政策」では、UAE の総発電設備容量は 2020 年までに 4,000 万 kW 以上必要になると試

算されている。

2.1%

21.6%

76.1%

0.2%

石炭

石油

天然ガス

その他

一次エネルギー

総供給

7,047万

石油換算トン

1,473

108,205

301

石油

天然ガス

その他

総発電電力量

109,979GWh(単位はGWh)

Page 372: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

228

●エネルギー政策・計画

アラブ首長国連邦(UAE)ではそれぞれの首長国が独自のエネルギー政策を策定するた

め、連邦政府の果たす役割は限られている。ただし、連邦政府の方針として、CO2 排出量

の削減を重視して、天然ガスや原子力の比率を高めて発電や淡水化事業における CO2 排出

量を削減していくことが示されている。

●原子力政策・計画

原子力発電

今後増大すると予想されるエネルギー需要に備えて、UAE は原子力発電の導入を決定し

た。政府が 2008 年に発表した「原子力平和利用の評価と開発可能性に関するアラブ首長国

連邦の政策(原子力白書)」では、2007 年以降の UAE の GDP 成長率を 9%と仮定して、

2020 年には 4,000 万 kWの発電設備容量が必要になるとの予測が示された。同白書におい

て、原子力発電は環境負荷が低く、経済的なオプションであると評価された。

2017 年 1 月にはエネルギー省が 2050 年までの長期エネルギー戦略を発表し、2050 年ま

でにエネルギーミックス(電源構成)の 50%を、原子力発電を含むクリーンエネルギーと

する目標(再生可能エネルギー44%、ガス 38%、クリーンコール 12%、原子力 6%)を示し

た。

<バラカ発電所の建設>

首長国原子力会社(ENEC)は 2009 年 12 月、韓国電力公社(KEPCO)と原子力発電所

の建設契約を締結し、計 4 基の APR1400 がバラカサイトで建設されている。契約額は設計

から燃料初装荷までで約 200 億ドルである。

連邦原子力規制局(FANR)は 2012 年 7 月に 1、2 号機の建設許可を発給し、また 2014

年 9 月には 3、4 号機の建設許可を発給した。2016 年 2 月には 1 号機の機能試験が開始さ

れ、今後同機は燃料装荷、試運転などを経て、2017 年中の運転開始を目指している。

2017 年 1 月現在、1~4 号機の工事進捗率は 75%を超え、3~4 号機についても 50%を超

えたことが ENEC から発表されている。

1 号機以降について ENEC は、2 号機を 2018 年、3 号機を 2019 年、4 号機を 2020 年と、

年に 1 基ずつのペースで運開させる方針である。発電所の運転会社については、ENEC の

100%子会社である Nawah 社(以下、Nawah 社)が 2016 年 6 月に設立された。

同 7 月には、ENEC と、韓国コンソーシアムの一員である韓国水力原子力(KHNP)が、

4 基の運転支援に係る約 6 億ドルの契約を締結した。同契約に基づき KHNP は、2030 年ま

で毎年最大で 400 名程度の専門家を同発電所に派遣し、運転支援を行う。

さらに同 10 月には、ENEC と KEPCO との間で、プロジェクト会社 Barakah One SJPC

(以下 Barakah One 社)を共同出資により設立することが合意された。KEPCO 側の出資

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229

額は約 9 億ドル(持分約 18%)で、同時に、ENEC の 100%子会社で運転を担う Nawah

社の約 18%持分も KEPCO が取得することとなった。

2016 年 11 月には、Barakah One 社とアブダビ水・電力会社(ADWEC)との間で電力

購入契約(PPA)が締結された。

なお、ENEC は 2012 年 8 月、バラカ 1~4 号機向けの 2017 年から 15 年間にわたるウラ

ン精鉱・転換・濃縮サービス提供に関する契約を、米コンバーダイン社、加ウラニウム・

ワン社、英ウレンコ社、リオ・ティント社、露テクスナブエクスポート(TENEX)、及び

仏 AREVA 社の計 6 社とそれぞれ締結したことを発表した。

<5 基目以降の原子炉受注に向けた各国の動き>

韓国・KEPCO の CEO は 2012 年 4 月、現在進行中の 4 基に加え、4 基の追加受注に向

けて 2013 年にも UAE 側と交渉を開始したいとの意向を示した。

一方仏オランド大統領は 2013 年 1 月に UAE を公式訪問した際に、同国における原子力

開発の新規受注を目指すことを明らかにしている。

原子力損害賠償

UAE は 2014 年 7 月に原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)の批准書を国際原

子力機関(IAEA)に寄託した。なお CSC は 2015 年 4 月に発効している。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

UAE は、自国でウラン濃縮や使用済燃料の再処理を行わない方針である。UAE 政府が

2008 年 3 月に承認した民生原子力開発プログラムに関する IAEA との覚書では、国内で濃

縮を行わないことが示されており、同国の原子力白書では濃縮も再処理も行わない方針で

あること、海外から燃料供給を受けることが明記されている。

放射性廃棄物管理・処分

使用済燃料は短期的には発電所サイト内のプールで貯蔵してから乾式貯蔵し、その後長

期的な管理に移る予定であるが、長期的な管理・処分の戦略に関しては今後決定される。

70~100 年後の中期では乾式貯蔵、100 年後以降の長期に関しては、地層処分を行う可能性

等が検討されている模様である。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, United Arab Emirates

UAE 政府

連邦原子力規制局

首長国原子力会社

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国営通信(WAM)

米国原子力協会(NEI)

韓国電力公社

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231

(4) サウジアラビア

●基本情報

面積 215 万 k ㎡ 人口 3,154 万人

公用語 アラビア語

通貨 1 米ドル=3.75 サウジアラビア・リヤル(固定レート)

政治体制 君主制

議会 諮問評議会(ただし立法権はない)

政府 国王兼首相 サルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード

GDP 6,535 億ドル(2015 年)

成長率 3.4%(2015 年実質)

経済の特徴及び概況

世界最大級の石油埋蔵量、生産量及び輸出量を誇る。輸出総額の約 9 割、財政収入の

約 8 割を石油に依存。人材育成、民営化、外資導入、市場開放等諸改革に努めている。

外国資本を呼び込むために 2005 年、世界貿易機関(WTO)に加盟した。

2010 年 4 月、原子力開発政策の立案・原子力安全規制を行う機関として「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市(KA-CARE)」が設置された。2011 年 5 月、KA-CARE の高官は、2030 年までに 16 基の原子炉を建設する計画を明らかにした。2012 年 3 月までに初の原子力発電所の建設サイトを発表し、同年末までに入札手続きを開始する意向であった。入札に関する状況は確認できていないが、各国との協議が行われている模様である。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):36,618 石

炭:該当データなし 天然ガス:8 兆 3,250

億(立方メートル) ウラン:該当データな

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

2 億 1,350 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

291.5%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):(原子力未導入)

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:65,506 水力:該当データなし 原子力:該当データ

なし その他:1

電力供給体制の概要 サウジ電力会社(SEC)が発送配電を一貫して行っている。

電源種別発電電力量

サウジアラビアは石油資源が豊富であるが、

石油は輸出に回すため、天然ガス火力発電の

割合が増えている。

電力消費量

(百万 kWh)

272,116

発電電力量

(百万 kWh)

311,806

輸入電力量

(百万 kWh)

0

電力需要の推移と見通し

電力需要は今後 10 年で 7~8%増大するものと予測されており、政府は最終的に電力需要

の 20%を原子力で賄う方針である。

●エネルギー政策・計画

サウジアラビアは、海外からの投資を呼び込むためにエネルギーの安定供給が重要であ

るとして、再生可能エネルギーの開発も含めて発電設備容量を拡大する方針である。また、

2010 年時点で世界最大の石油産出国であるが、人口増加に伴うエネルギー需要増に対応す

67.4%

32.6%石油

天然ガス

一次エネルギー

総供給

2億1,350万

石油換算トン

152,285159,520

1

石油

天然ガス

その他総発電電力量

311,806GWh(単位はGWh)

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233

るためにも、エネルギー源の多様化を目指している。

●原子力政策・計画

原子力発電計画

サウジアラビア政府は 2010 年 4 月、「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市

(KA-CARE)」をリヤドに設置した。

KA-CARE のメライバリー科学協力部門相談役は 2011 年 5 月、今後 10 年で国内初とな

る原子炉 2 基を完成させ、その後は年に 2 基のペースで増設し、2030 年までに 16 基とす

る計画を明らかにした。現在、国際入札に向けた準備作業段階にある模様であり、1 基あた

り約 70 億ドルの建設コストが見込まれている。

原子力開発に向けた諸外国と協力

サウジアラビアの原子力開発に向けては、以下に示すとおり海外主要国が支援を行って

いる。

○フランス

仏 AREVA 社とフランス電力(EDF)は、同国における原子力開発に向けて、地元研究

機関との協力や、サプライチェーンの構築など進め、2013 年 12 月にはサウジアラビアの

エネルギー分野の投資会社グローバル・エナジー・ホールディング・カンパニー(GEHC)

と合弁会社を設立する協定に調印した。その後、2015 年 6 月には KA-CARE と仏外務省が

サウジアラビアにおける 2 基の欧州加圧水型原子炉(EPR)の建設に関するフィージビリ

ティ調査(FS)を実施する協定に調印しており、前述の合弁会社が FS を実施する予定で

ある。その他、2014 年 6 月には、AREVA 社と EDF はサウジアラビアの学生をエンジニア

リング分野の長期実習生として受け入れている。

○米国

米ウェスティングハウス(WH)社、東芝及びエクセロン・ニュークリア・パートナーズ

は 2013 年 9 月、サウジアラビア政府に対して 3 社体制での合同提案を行うとする、合意覚

書(MOU)を締結した。

○韓国

韓国政府は 2015 年 3 月、韓国国産の小型炉 SMART のサウジアラビアでの建設及び第三

国への共同進出の推進にかかる覚書「SMART 共同パートナーシップ及び人材育成 MOU」

をサウジアラビア政府との間で締結したことを発表した。さらに同年 9 月、KA-CARE と

韓国原子力研究院(KAERI)は、SMART のサウジアラビアでの建設のための建設前詳細

設計(PPE)事業協定を締結した。安全規制面では、2016 年 11 月、KA-CARE と韓国原

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234

子力安全委員会(NSSC)が、原子力安全規制分野における協力の促進に係る覚書(MOU)

を締結している。

〇ロシア

KA-CARE と露 ROSATOM 国営原子力会社は 2015 年 6 月、原子力の平和利用に関する

協力協定に署名した。協定は、核燃料サイクルや使用済燃料及び放射性廃棄物の管理、原

子力分野における人材教育など、原子力分野における両国の協力関係を構築するものであ

る。

○中国

KA-CARE と中国核工業集団公司(CNNC)は 2014 年 8 月、原子力の平和利用に関する

協力覚書(MOU)を締結した。また、KA-CARE と中国核工業建設集団公司(CNEC)は

2016年 1月、サウジアラビアでの高温ガス炉の建設プロジェクトのための協力覚書(MOU)

を締結したことを発表した。CNEC は、高温ガス炉はその特性状、海水の淡水化や石油化

学工業への電力供給など、幅広い利用が可能であるとしている。さらにKA-CARE とCNNC

は 2016 年 8 月、原子力人材育成に係る覚書(MOU)を締結したことを発表した。

○フィンランド

フィンランドの放射線・原子力安全局(STUK)は 2014 年 5 月、サウジアラビアにおけ

る放射線・原子力分野の規制機関設立に向けた支援を行うことを発表した。

○ハンガリー

サウジアラビア政府とハンガリー政府は 2015 年 10 月、リヤドで原子力の平和利用に関

する協力協定に署名した。協定には、商用炉や研究炉の設計・建設・運転、緊急時対策と

対応、放射性廃棄物の管理、医療・工業・農業における放射線技術の利用、人材育成など

の分野が含まれている。

○ヨルダン

サウジアラビア政府は 2014 年 1 月に、ヨルダンと原子力の平和利用に関する協力協定を

結び、中東域内における原子力分野での協力体制の構築にも着手している。

○カザフスタン

サウジアラビア政府とカザフスタン政府は 2016 年 10 月、原子力平和利用に係る協力協

定に署名した。

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235

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

同国ではウラン採鉱、濃縮、転換は行われていない。

放射性廃棄物管理・処分

放射性廃棄物に関する長期的な管理・処分の方針については不明である。

●出典

アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市(KA-CARE)

サウジアラビア政府ポータルサイト

サウジアラビア国営通信

ヨルダン国営通信

フィンランド放射線・原子力安全局(STUK)

仏 AREVA 社

仏外務省

韓国大統領府

韓国原子力研究院(KAERI)

露 ROSATOM 国営原子力会社

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236

(5) エジプト

●基本情報

面積 約 100 万 k ㎡ 人口 9,338 万人

公用語 アラビア語

通貨 1 米ドル=約 18 エジプト・ポンド(2017 年 1 月(2016 年 11 月以降,

自由変動相場制))

政治体制 共和制

議会 一院制。代議院(2016 年 1 月 10 日召集)

政府 首相 シェリーフ・イスマイール

GDP 3,307 億ドル(2014/15 年度)

成長率 4.2%(2015 年実質)

経済の特徴及び概況

2011 年の政変後、観光及び投資の落ち込みにより、大幅な貿易赤字が続いている。2013

年政変後、湾岸諸国からの支援により、外貨準備高は一時的に回復したが、2011 年政

変前の水準には達していない。2016 年 11 月、エジプト政府は、事実上の融資の条件

となっていた為替自由変動相場制への移行と燃料補助金改革を実施し、IMF 理事会は

3 年間総額 120 億ドルの融資を承認した。

2011 年 2 月の大統領辞任や、政治情勢の不安定を理由に原子力発電所建設に関する入札が延期されていたが、その後検討が再開され、2015 年 11 月にはロシアとの間で、120 万 kW 級の原子炉 4

基の建設・運転に関する政府間協定(IGA)が締結。

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●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):1,274 石

炭:247 天然ガス:1 兆 8,460 億(立方メ

ートル) ウラン:該当データなし

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

・一次エネルギー供給

7,482 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

107.4%(原子力未導入)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):(原子力未導入)

●電力

電源種別設備容量(千

kW)

火力:32,420 水力:2,800 原子力:該当データなし その

他:687

電力供給体制の概要 現在、電力エネルギー省傘下のエジプト電力持株会社(EEHC)

が電気事業の中核を担っており、発送電設備の拡充を計画して

いる。一方で 1996 年からは、BOT(建設・運転・移転)方式

での民間事業者の参入が許可されている。

電源種別発電電力量

かつては石油の輸出が基幹産業であったが、

現在は純輸入国である。代わりに天然ガスの

開発が積極的に進められ、国内のエネルギー

需要の大半を賄っている。またナイル川では

大規模な水力発電が行われている。

電力消費量

(百万 kW)

146,558

発電電力量

(百万 kW)

171,747

輸入電力量

(百万 kW)

-384

電力需要の推移と見通し

1999 年から 2008 年までの統計資料によれば、総消費電力量は年率約 7%で増加している。

EEHCは第 7次 5カ年計画において、2012年から 2017年の電力需要の年間の増加率を 6%

と設定しており、同社の設備容量を 2017 年までに 1,110 万 kW とすることを目標としてい

る。

0.5%

40.9%54.6%

1.6%2.4%

石炭

石油

天然ガス

水力

その他

一次エネルギー

総供給

7,482万

石油換算トン

21,029

135,177

13,9791,562

石油

天然ガス

水力

その他総発電電力量

171,747GWh(単位はGWh)

Page 382: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

238

●エネルギー政策・計画

エジプトのエネルギー資源はほぼ石油と天然ガスに限られており、持続可能な経済成長

のために水力や風力、太陽光発電の導入も検討されている。2007 年 3 月に約 20 年ぶりに

改定されたエネルギー基本計画では、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの

比率を 2020 年までに 20%とすること、エネルギー効率の改善と省エネの促進、2030 年ま

での外資導入、石油と天然ガスの備蓄・生産量の増大等が掲げられ、原子力発電も検討す

べきオプションの一つに挙げられている。

●原子力政策・計画

原子力発電

1980 年代に地中海沿岸のダバを候補地とした原子力発電所建設に関する入札が実施され

たが、1986 年のチェルノブイリ事故を契機として計画は中止された。

しかし、天然ガス・石油価格の上昇や、国内の天然ガスの将来的な枯渇への懸念から、

ムバラク大統領(当時)は 2006 年 9 月、原子力平和利用の促進を打ち出した。同大統領は

2007 年 10 月に、複数の原子力発電所の建設計画を策定する方針を示し、建設に必要な手

続の実施、原子力開発計画の策定、計画承認を行う最高評議会の再設置、原子力法案の起

草等を指示した。エジプト政府はこの時点で、2025 年までに計 4 基の原子炉を建設し、初

号機を 2019 年に運開させる計画を示していた。

政府は 2010 年 8 月 25 日に、改めてダバを原子力発電所サイトに指定した。建設に関す

る入札は 2011 年末までに公示され、2012 年 7 月末から 8 月初めまでに落札者が決まる見

込みであった。しかし、民衆蜂起により 2011 年 2 月にムバラク政権が崩壊し、その後の政

情不安を理由に入札は延期となった。その後政府は、国際入札ではなく原子炉建設に係る

提案要請(RFP)を行う方針に転換し、RFP に応じたロシア、中国、韓国の事業者と協議

を行った結果、2015 年 11 月、ロシアとの間で、120 万 kW 級の原子炉 4 基の建設・運転

に関する政府間協定(IGA)を締結した。

IGA には、使用済燃料の管理や発電所の運転員の訓練、及び原子力関連の規則・基準の

改善支援も含まれている。また両国の原子力規制当局は、原子力インフラ整備の促進に向

けた協力覚書(MOU)を締結した。

翌 2016 年 5 月には、原子力発電所建設に向けロシアから 250 億ドルの融資を受けるとす

る大統領令を、エルシーシ大統領が公布したことが発表された。

その他諸外国との原子力協力では、エジプト原子力委員会は 2011 年 5 月、クウェート保

健省と原子力平和利用、シビアアクシデント対応のための技術、人材育成等の分野での協

力に関する覚書を締結した。また 2012 年 12 月には、韓国と経済長官会議を開催し、貿易・

投資、建設・インフラ等の分野に加え、原子力分野でも協力を強化することで合意した。

両国は韓国側が提案したシステム一体型モジュラー先進炉(SMART)のエジプト導入のた

めのフィージビリティ調査(FS)の共同実施などを進めるとしている。

Page 383: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

239

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

1970 年代後半以降、複数国と濃縮役務の供給協定を締結しており、これらの協定はムバ

ラク政権崩壊までは有効とされていた。

放射性廃棄物管理・処分

ムバラク政権(当時)は、使用済燃料を原子力発電所サイト内で貯蔵した後、直接処分

する方針を示していた。

原子力関連法令の制定及び改廃動向

原子力法は、国際原子力機関(IAEA)のレビューを受けた後、2010 年 2 月の人民議会

による承認、翌 2011 年 3 月のムバラク大統領(当時)による承認を経て、成立した。同法

では、原子力平和利用に関する体制構築、各機関の任務、独立した規制機関の設置などが

規定されている。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, Egypt

EIA, “Country Analysis BRIEFS”

EEHC,“Annual Report 2008/2009”

EEHC ウェブサイト

エジプト国家情報サービス

イスラエル・ハヨム

ロシア大統領府

ROSATOM 国営原子力会社

Egypt Independent

Overview of Egypt’s Nuclear Power Program, February 2016

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240

(6) 南アフリカ

●基本情報

面積 122 万 k ㎡ 人口 5,495 万人

公用語 英語、アフリカーンス語、バンツー諸語(ズールー語、ソト語等)合計

11

通貨 1 米ドル=約 14 ランド(2016 年 10 月)

政治体制 共和制

議会 二院制(全国州評議会(上院に相当)90 名、国民議会(下院に相当)400

名)

政府 大統領 ジェイコブ・ゲドレイーシュレキサ・ズマ

GDP 3,128 億米ドル(2015 年)

成長率 1.5%(2014 年)

経済の特徴及び概況

2008-9 年の世界金融危機後、投資・輸出の不振等が響き、2009 年の経済成長率はマイ

ナス 1.5%に転落。2010 年、2011 年には上向き傾向を示していたが、その後は 1%前

半の低い成長率が続いている。2016 年の経済見通しは 0.9%となっている。

●エネルギー

・保有資源(百万トン)

原油(オイルシェールを含む):21 石炭:

一次エネルギー供給構成比(エネルギー源

別)

設備容量:183 万 kW 発電電力量:110 億 kWh

運転中:2 基(PWR) 建設中:0 基 計画中:最大 8 基 原子力シェア:4.7%

政府は 2011 年 3 月に承認した統合資源計画(IRP)2010 で、2030 年までに 160 万 kW 級の原子炉 6 基(合計 960万 kW)を運開させかつ電源構成に占める原子力シェアを 23%とする方針を決定した。現在 IRP

の改定作業が進められている。

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223,560 天然ガス:100 億(立方メートル)

ウラン:175,300(トン)

・一次エネルギー供給

1 億 4,702 万石油換算トン

・エネルギー自給率%

114.5%(原子力含)、112.0%(原子力除)

・一次エネルギー供給における原子力シェア

(%):2.4%

●電力

電源種別設備容量(千 kW) 火力:43,538 水力:725 原子力:1,880 その他:820

電力供給体制の概要 国営の南アフリカ電力公社(ESKOM)が発送電をほぼ独占

しているが、配電は地方自治体の公営事業者が行っている。

電源種別発電電力量

石炭火力の割合が圧倒的に高く、今後は天然

ガス、原子力、及び再生可能エネルギーを発

電源としてより積極的に活用していく計画

である。

電力消費量

(百万 kWh)

198,093

発電電力量

(百万 kWh)

249,471

輸入電力量

(百万 kWh)

-2,663

電力需要の推移と見通し

南アフリカの総発電設備容量は約 4,000 万 kW であるが、最新の統合資源計画(IRP)で

は、2030年までに 4,000万 kW相当の発電設備を増設する必要があるとの試算が示された。

●エネルギー政策・計画

南アフリカでは、経済発展と貧困の解消に向けて、持続可能なエネルギーを適正価格で

供給することがエネルギー政策の基本方針となっている。2010-2012 年のエネルギー戦略

によると、エネルギー確保、エネルギー源の多様化、エネルギー部門の改革、エネルギー

利用の効率化、クリーンエネルギーの活用による持続可能な成長の促進等が主な目標とさ

れている。また、エネルギーミックスの多様化及び炭素排出量削減の一環として原子力開

発計画を推進していく方針も示されている。

69.4%

14.9%

2.6%

2.4%0.1%

10.6%

石炭

石油

天然ガス

原子力

水力

その他

一次エネルギー

総供給

1億4,702万

石油換算トン

232,020

189

13,794975 2,493

石炭

石油

原子力

水力

その他総発電電力量

249,471GWh (単位はGWh)

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●原子力政策・計画

原子力発電

国営の南アフリカ電力公社(ESKOM)がクーバーグ原子力発電所で 2 基の PWR(各 90

万 kW)を運転している。ESKOM は 2014 年 9 月、仏 AREVA 社との間で同発電所の蒸気

発生器の交換にかかる総額約 3 億ユーロの契約を締結した。

政府は新規の原子炉建設を推進する方針であり、2011 年 3 月、2030 年時点の電源構成に

占める原子力の割合を 23%とする統合資源計画(IRP)2010-2030を閣議決定した。IRP2010

では、ベースケースとして、2030 年までに 6 基の原子炉(各 160 万 kW 級)を建設する方

針が示された。

その後、南アフリカ政府は新設に向けた検討を進め、2014 年 10 月~2015 年 3 月にかけ

て、事業者選定プロセスの一環としてロシア、中国、フランス、米国、韓国、カナダ及び

日本の各国の事業者による南アフリカ関係者向けのワークショップが順次開催された。ま

た、事業者選定プロセスと並行して ESKOM は 2016 年 3 月、国家原子力規制局(NNR)

に対し、シスパント及びダインフォーテンにおける原子力発電所の新設・運転に向けたそ

れぞれのサイト許可申請を提出した。

しかし 2016 年 11 月、同国政府は 2050 年にかけてのエネルギー需給シナリオ等を示す

総合エネルギー計画(IEP)の草案と、IRP 策定に向けた仮定やベースケースを発表、

IRP2010-2030 策定時に想定されたほどの経済成長は見込まれないことから、原子力発電の

設備容量を 2037年までに約 140万 kW、2050年までの累計で約 2,040万 kW増強すると、

シナリオを下方修正した。IEP 及び IRP は今後、2017 年 3 月までパブリックコメントが募

集される他、複数の都市で公衆協議が開催され、最終的には得られた意見を取りまとめ、

政府承認を経て確定される予定である。

また 2016 年 12 月、ESKOM は同国の原子炉新設計画に係る情報要求(RFI)を開始した。

仕様によれば、炉型は PWR と想定し、合計で 960 万 kW の設備容量の原子炉を建設する

うちの、1、2 号機の設計・調達・建設(EPC)等に関する情報を募集することとされてい

た。ESKOMは、2017年 2月までに、中国国家核電技術公司(SNPTC)、フランス電力(EDF)、

露 Rusatom Overseas 社、韓国電力公社(KEPCO)等の 27 社から参加意向表明があった

と発表している。

核燃料サイクル(ウラン資源確保含む)

南アフリカでは、金や銅の採掘の副産物としてウラン鉱石が採掘されている。

同国では、1965年に運開した研究炉サファリ 1とクーバーグ原子力発電所向けに、濃縮、

転換、燃料加工まで一貫した燃料サイクルが実現されていたが、サイクル施設は全て 1990

年代までに経済性等の理由から閉鎖されている。現在南アフリカは、主にロシア(テクス

ナブエクスポート:TENEX)から燃料調達を行っているが、2006 年 8 月には鉱物・エネ

ルギー省(DME、当時)が、国内におけるウラン濃縮プログラムを検討中であることを明

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243

らかにし、2007 年には、再処理も含めた燃料サイクルの全過程の開発に関するプログラム

を示した原子力発電政策案が策定された。原子力公社(NECSA)は 2011 年に国内燃料サ

イクル事業再開計画に関する第 1 段階のフィージビリティ調査(FS)を完了したうえで、

さらに 2013 年以降、濃縮施設の建設に関するプレ FSを進めている。

放射性廃棄物管理・処分

南アフリカでは 2005 年に、放射性廃棄物管理政策及び戦略が承認され、NNR、鉱物・

エネルギー省(当時)、環境問題・観光事業省(DEAT)、厚生省(DOH)、水利森林省(DWAF)

から成る放射性廃棄物管理国家委員会(NCRWM)が設立され、廃棄物発生者とは独立し

て同政策・戦略の遂行を監視することとなった。また、放射性廃棄物管理については NECSA

が責任を負っていたが、2008 年に管理責任を担う国家放射性廃棄物処分機関が新設された。

中低レベル放射性廃棄物(ILLW)については、1986 年より NECSA が操業する北部ケ

ープ地域のヴァールパッツ処分場において、廃棄物を金属製のドラム缶とコンクリート製

のコンテナに封入して処分が行われている。また、NECSA の活動などから発生した ILLW

についてはペリンダバ・サイトに貯蔵されており、これらの廃棄物はペルストア・サイト

の集中貯蔵施設に移される予定である。

使用済燃料については、2008 年 8 月に、鉱業・エネルギー省(当時)が使用済燃料を海

外で再処理する意向を明らかにした。クーバーグ原子力発電所の使用済燃料はサイト内に

おいて大部分が湿式、一部が乾式で貯蔵されており、さらに 40 年という原子炉の設計寿命

に鑑みてすべての使用済燃料を貯蔵できるようプールの改修が行われた。また、サファリ

研究炉から発生した使用済燃料は、NECSA のペリンダバ・サイト内に貯蔵されている。

●出典

IAEA Country Nuclear Power Profiles, South Africa

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約、国別報告書 2008 年.

政府情報サイト

南アフリカエネルギー省

南アフリカ電力公社(ESKOM)

南アフリカ国家原子力規制局(NNR)

南アフリカ原子力公社(NECSA)

南アフリカ原子力産業協会(NIASA)

サウスアフリカ・インフォ

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1.3. フランス、ロシア、韓国、中国の原子力産業海外進出動向

原子力利用先進国の中で、我が国の原子力産業の国際展開において競合国となるフラン

ス、ロシア、韓国、中国の海外進出に係る最新動向について、各国を中心とする地図にま

とめたほか、進出先の国ごとに情報をまとめた。

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1.3.1. フランス

英国・ EDFがヒンクリーポイント(HPC)で2基のEPR建設を決定。プロジェクトにはEDFが66.5

%、CGNが33.5%を出資する計画(2016年9

月)・サイズウェルでの2基のEPR建設は計画中。・Engie社(旧GDF-Suez社)を含むコンソーシアムがセラフィールド近郊のムーアサイドでAP1000を3基建設する計画

ポーランド・EDFとポーランド国営電力が、EPR建設に関するFSに関するMOUを締結(2009年11月)・AREVA社が地元サプライヤーとの会合を開催し、複数のMOUに調印(2013年9月、2014年11月)

④カタール・ EDFがカタール政府とエネル

ギー分野における協力覚書(MOU)を締結(2008年1月)

⑤アラブ首長国連邦(UAE)・ AREVA、EDFのコンソーシアムが応札したが、落札できず

中国・EDF、AREVA社が台山サイトの原子炉建設(EPR×2)を受注し、現在建設中・広東核電集団公司(CGNPC)と2万トンのウランを10年間にわたって供給する35

億ドル規模の契約、中国核工業集団公司(CNNC)と再処理分野における協力に関する産業協定を締結(2010年11月)・EDFとAREVA社、CGNPCと第3世代炉開発に関するMOUに調印 (2012年11月)・AREVA社-CNNC間で再処理プラント建設契約締結に向けた基本合意書(LOI)が、AREVA-EDF-CGNPC間で産業的、商業的協力の強化に関する協定が締結(2013年4月)・AREVA社とCNNC、使用済燃料の輸送等の分野での合弁会社(JV) 設立に係る

MOU(2015年1月)・AREVA社は①使用済燃料の再処理プロジェクトに関するCNNCとのMOU、②燃料サ

イクルの全フェーズ及び原子炉に関するCNNC及びEDFとの合意、③中型炉及び大型炉に関する長期的な協力に関するCGN及びEDFとの基本趣意書(LOI)を締結(2015年6月)・AREVAとCNNC、ウラン資源開発、フロントエンド、再処理、輸送、廃止措置までをカバーする協力で合意。EDFとCNNCは中・

大型炉の輸出に向けた協力の強化等に係る共同声明に署名(2015年11月)・AREVAとCNNC、燃料サイクル事業に関する工業・商業協力に関する枠組み協定に調印(2017年2月)

⑧インド・AREVA社とインドNPCIL、EPR2基の建設と25年にわたる燃料の供給等に関する枠組み契約を締結 (2010年12月)。・原子力協力協定が発効(2010年1月)・AREVA社とNPCILがジャイタプールにおけるEPR建設に関するプレエンジニアリング契約を締結(2015年4月)・EDFとNPCILがジャイタプールにおける6基のEPR建設契約の締結に向けた協議に関するMOUに調印(2016年1月)

⑩米国・カルバートクリフス3号機としてEPR

の建設が計画されているが、規制当局は規則(許認可保有者の外国支配を禁ずる)に抵触していると判断(2013年3月)

・上状況により、許認可発給が不可能な状態。PPL社によるベルベンドサイトでのEPR建設に係るCOL申請

も提出されているが、建設見通しは不明。・AREVA社は、U.S.EPRに関するNRC

の設計認証取得に向けた作業を中断し、取得に向けた審査の中断を規制機関に要請。(2015年2月)

⑪ブラジル

・ 原子力協力協定を締結(2002年10月)・AREVA社、ブラジルのエレトロ・ニュークリア社と原子力発電拡張のためのMOUに調印(2008年12月)・AREVA、アングラ3号機の建設完了に係る契約を受注(2013年10月)

⑥ヨルダン・ AREVAと三菱重工業の合弁会社がATMEA 1を提案したが、落札できず(2013年10月)

⑫アルゼンチン・原子力・代替エネルギー庁(CEA)

がアルゼンチン原子力委員会(CNEA)と科学技術協力協定に調印。

⑦サウジアラビア・AREVA社とサウジ・ビンラディン・グループが太陽光・原子力発電における協力合意を締結(2011年1月)・原子力協力協定を締結(2011年2月)・AREVAがEDFとともに、サウジアラビア国立技術研究所と協協定に調印し(2013年7月)、サプライヤーネットワーク構築に向けた地元企業との協議を実施(2013年11月)・EDFはサウジアラビアのグローバル・エナジー・ホールディング・カンパニー(GEHC)と合弁会社の設立協定に調印(2013年12月)・仏外務省とKA-CAREが2基のEPRの建設に関するフィージビリティ・スタディ(FS)を実施する協定に調印(2015年6月)

⑬南アフリカ・ AREVA社と南アフリカ原子力公社(NECSA)が核燃料等の分野の協力に関する関心表明書に署名(2011年3月)・原子力協力協定を締結(2014年10月)

フランス運転中:58基(全てPWR)建設中:1基(EPR)計画中:0基

▲原子力発電所(運転中)△同上(建設・計画中)■燃料サイクル施設(運転中)□同上(建設・計画中)●廃棄物管理施設(運転中)○同上(建設・計画中)

チェコ・EPRの建設も見据えて、AREVA社とチェコの14企業がEPR向け機器等の供給に関する協力合意を締結(2012年3月)・テメリン増設プロジェクト入札からAREVA社は排除された(2012年10月)が、その後入札自体が中止に。(2014年4月)・政府は原子炉新設入札をやり直す予定。新規入札にはAREVAも参加可能となる見込み

欧州(西)

欧州(東)

中東・アフリカ アジア

北米・南米フランスの海外進出状況

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1.3.2. ロシア

ロシアの海外進出状況

チェコ・ASE社を中心とするロシア-チェコの企業連合、テメリン3、4号機の建設プロジェクトに応札(2012年7月)

ブルガリア

・ブルガリア政府と建設契約を締結したベレネ発電所計画の凍結を決定(2012年3月)

・国際商業会議所の仲裁裁定に基づき、ベレネ凍結による賠償の和解協定を締結(2016年10月)

ウクライナ・フメルニツキ3、4号機の建設をASE社が受注。・フメルニツキ3・4号機建設に関する政府間協定を破棄(2016年5月)

トルコ・原子力協力協定締結(2008年12月)・ROSATOM、アキュ発電所(VVER-1200×4)の受注を確定(2010年)・同プロジェクトの環境影響評価報告書が承認(2014年12月)

ヨルダン・原子力協力協定調印(2009年4月)

・原子力発電所の建設・運転に係る政府間協定を締結(2015年3月)

エジプト・原子力協力協定締結(2008年3月)・原子力発電所(120万kW級4基)の

建設・運転への協力に関する政府間協定(IGA)を締結(2015年11月)

バングラデシュ・ルプール発電所(VVER-1000×2)建設に係る協定締結(2011年11月)

・同発電所建設の融資に係る政府間協定を締結(2016年7月)

インド・原子力協力協定締結(2010年3月)

・両政府、ロシアが受注したクダンクラム1、2号機に加え、同3、4号機の建設に合意(2008年12月)

・原子力平和利用の拡大に係る二国間協定文書に署名し、追加建設のための検討を開始(2014年12月)

ベトナム・ニントゥアン第1発電所建設計画のパートナーとしてロシアを選択(2010年5月)・同発電所建設のための80億ドルの借款協定締結(2011年11月)

・ニントゥアン発電所建設計画が中止(2016年11月)

中国・CNNCの子会社との間で浮揚式原子

力発電プラントの共同開発に係る覚書に署名(2014年7月)

・浮揚式プラント建設、高速炉開発等、中国と共同で進めるプロジェクトで協力強化に係る共同声明(2016年11月)

ロシア運転中:35基(FBR: 2基、LWGR:15基、PWR:18基)建設中: 7基(PWR:7基)計画中:26基(FBR: 4基、PWR:22基)

▲原子力発電所(運転中)△同上(建設・計画中)■燃料サイクル施設(運転中)□同上(建設・計画中)●廃棄物管理施設(運転中)○同上(建設・計画中)

カザフスタン・原子力発電所建設に関するMOUに調印(2014年5月)

・カザトムプロムと原子力の普及促進を目的とした協力覚書に署名(2014年9月)

・原子力発電所建設・運転に係る二国間協力で暫定合意(2014年10月)

イラン・原子炉8基建設で両国合意(2014年11月)

アルメニア

・新規原子炉建設に関する政府間協定を締結(2010年8月)

ベラルーシ

・政府間でオストロベツ原子力発電所建設に関する最終契約を締結。契約額は100億ドル。(2012年7月)・オストロベツ1号機の建設開始(2013年11月)

ルーマニア

・露アトムテクノプロム等がチェルナボーダ3、4号機建設プロジェクトに応札する意思を表明(2011年1月)

フィンランド・Rusatom Overseas社、ハンヒキビ原子力発電所建設に関してVVER-1200の供給契約締結(2013年12月)・原子力協力協定(以前の協定は2004年に満了)に署名( 2014年2月)

ハンガリー・パクシュでのVVER2基建設等に係る政府間合意に署名(2014年1月)

・原子力分野の人材育成に係るMOU署名(2015年2月)

アルゼンチン・原子力協力協定署名(2014年7月)・原子炉建設に向けた協力のMOUに署名(2015年4月)

アルジェリア・原子力協力協定署名(2014年9月)

南アフリカ・原子力分野での戦略的パートナーシップ協定を締結(2014年9月)・原子力分野における人材教育のためのMOUと、原子力に関する公衆の認知の向上のためのMOUを締結(2015年7月)・原子炉新設計画に係る情報要求(RFI)に参加(2017年1月)

タイ

・タイ王立原子力技術研究所と原子力平和利用に関する協力覚書(MOU)に署名(2014年9月)

チュニジア

・原子力平和利用に係る政府間協定を締結(2016年9月)

ガーナ

・原子力平和利用に関する協力協定に署名(2015年6月)

インドネシア・ROSATOM子会社によるコンソーシ

アムが高温ガス研究炉の概念設計に係る契約を受注(2015年4月)

欧州(西)

欧州(東)

旧ソ連諸国

中東・アフリカ

アジア

北米・南米

メキシコ

・原子力平和利用に関する協力協定が発効(2015年8月)

ミャンマー

・原子力平和利用に関する覚書に署名(2015年6月)

サウジアラビア

・原子力平和利用に関する協力協定に署名(2015年6月)

ブラジル・国営関連機器メーカーNUCLEP社と

原子力平和利用の協力強化に係るMOUを締結(2015年9月)

ボリビア・原子力の平和利用に係るMOUを締結(2015年10月)

・ボリビア原子力公社と原子力技術研究開発センターの建設に向けた契約を締結(2016年8月)

カンボジア・原子力の平和利用に係るMOUを締結(2015年11月)

キューバ

・原子力平和利用に係る政府間協定を締結(2016年9月)

パラグアイ

・原子力平和利用に係る覚書を締結(2016年10月)

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247

1.3.3. 韓国

トルコ

・シノップ原子力発電所建設事業交渉で敗退(2012年12月)。

アラブ首長国連邦(UAE)・原子力間協力協定を締結(2009年6月)・KEPCO、原子力発電所の建設(APR-1400、140万kW×4)を受注(2009年12月)4基建設中・第3国への共同進出MOU締結(2015年3月)・ENEC・KEPCOが事業会社Barakah OneのJV設立合意(2016年10月)

マレーシア・KEPCO、原子力発電所計画に関す

るコンサルティング・サービスを受注(2009年6月)

フィリピン・KEPCO、バターン原子力発電所開発再開に関するF/Sを完了(2009年12月)

韓国の海外進出状況

ポーランド・MKE、ポーランド経済省と原子力協力覚書(MOU)を締結(2010年8月)

ウクライナ・KHNPとエネルゴアトム、フメルニツキ3、4号機建設再開に向けた協力覚書(MOU)に署名(2016年8月)

カザフスタン・KEPCO、大韓鉱業振興公社(KORES)、カザトムプロム社が原子力分野での協力覚書(MOU)を締結(2010年4月)

インド・原子力協力協定を締結(2011年7月)

・大統領訪問、原子力平和利用協力で合意(2014年1月)

ヨルダン・原子力協力協定を締結(2008年12月)・同国初の研究炉建設受注。7,000万ドルの借款供与(2010年)・研究炉が完成(2016年12月)

バングラデシュ

・外交通商部次官補、原子力発電所の建設を提案(2009年5月)

中国

・中国への原子炉販売を目指しているとの報道(2008年3月)

メキシコ

・エネルギー長官会談、メキシコ側は専門人材養成支援などを要請(2010年7月)

モンゴル・MKE、モンゴル原子力庁に、小型炉(SMART)の導入可能性に関する共同F/Sを提案(2010年6月)

リトアニア・KEPCO、ヴィサギナス原子力発電

所建設プロジェクト入札に参加するも、翌月に応札を撤回(2010年12月)

南アフリカ・原子力協力協定を締結(2010年10月)・KEPCO、原子力公社(ESKOM)の情報要求(RFI)に参加表明(2017年2月)

エジプト・小型炉導入に向けたFS実施協力で合意(2012年12月)

アルゼンチン・原子力発電に関するMOUを締結(2010年9月)・KHNPとNASAが技術協力MOUを締結(2016年1月)

韓国運転中: 25基(PWR:21基、PHWR:4基)建設中:3基(APR-1400:3基)計画中:8基(APR-1400+)

▲原子力発電所(運転中)△同上(建設・計画中)■燃料サイクル施設(運転中)□同上(建設・計画中)●廃棄物管理施設(運転中)○同上(建設・計画中)

サウジアラビア・原子力協力協定締結(2011年11月)・国産SMART炉共同パートナーシップMOU締結(2015年3月)

・同上建設前詳細設計事業協定を締結(2015年9月)

フィンランド・KHNP、OL4に応札(2013年1月)・原子力協力協定を締結(2013年10月)

オランダ

・デルフト工科大研究炉改修を受注(2014年11月)

ブラジル・ KEPCOとEletrobrasが原子力分野協力MOU締結(2015年5月)

欧州(西) 欧州(東)

旧ソ連諸国

中東・アフリカ アジア 北米・南米

米国・APR1400のDC審査を開始(2015年3月)

ケニア・KEPCOとケニア原子力委員会(KNEB)が原子力の包括的協力に係るMOU締結(2016年9月)

Page 392: 平成 28 年度発電用原子炉等利用環境調査 (諸外国における ...2016.04.05 英サイズウェルB で国初となる乾式の独立使用済燃料貯蔵施設が完成

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1.3.4. 中国

トルコ・SNPTCと米ウェスティングハウス(WH)社がトルコ発電公社(EUAS)とAP1000技術による4基の原子炉建設に向けた独占交渉を開始(2014年11月)

中国の海外進出状況

ルーマニア・CGNとルーマニア国営ニュークリア

エレクトリカ社がチェルナボーダ増設に係る基本趣意書(LOI)に署名(2013年11月)し、同LOIの期限を2014年末まで延長(2014年4月)・中広核工程有限公司(CNPEC)と加CANDUエナジー社がチェルナボーダ3、4号機建設に向けた独占協力合意書に署名(2014年7月)・CGNがチェルナボーダ3、4号機の出資者として選定(2014年10月)・ CGNとルーマニア国営ニュークリアエレクトリカ社がチェルナボーダ3、4号機の建設等に関するMOUを締結(2015年11月)

カザフスタン

・カザトムプロムと広東核電集団公司(CGNPC)が原子力に係る相互協力協定(2014年12月)

ヨルダン・原子力協力協定を締結(2008年11月)

チェコ

・両国首脳が中国企業のチェコ原子力発電事業への参画について協議(2014年10月)・チェコ電力(CEZ)グループとCGNが

原子力等における全面的な協力に関するMOUを締結(2016年3月)

南アフリカ・国家能源局(NEA)が南ア・エネル

ギー省と原子力協力に係る政府間枠組協定に調印(2014年11月)・南ア原子力公社(NECSA)とCNNC

が核燃料サイクル分野における協力に関するMOUを締結(2014年12月)

・南アフリカ国家原子力規制局(NNR)と中国国家核安全局(NNSA)が技術協力協定に署名(2015年11月)・ SNPTCが原子炉新設計画に係る情報要求(RFI)に参加(2017年1月)

中国運転中: 35基

(PWR:33基、PHWR:2基)建設中:21基(PWR20基(うちEPR2基、

AP1000 4基)、HTGR1基)計画中:40基

▲原子力発電所(運転中)△同上(建設・計画中)■燃料サイクル施設(運転中)□同上(建設・計画中)●廃棄物管理施設(運転中)○同上(建設・計画中)

サウジアラビア

・サウジアラビアと中国、原子力開発等での協力に合意(2012年1月)・CNNCとアブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市(KA-CARE)が原子力平和利用に関するMOUに調印(2014年8月)・CNECとKA-CAREがサウジアラビア

での高温ガス炉の建設プロジェクトのための協力覚書(MOU)を締結(2016年1月)

英国

・民生原子力分野での協力枠組みを定める政府間MOUを締結(2013年10月)・中国国家原子能機構(CAEA) ・核工業集団公司(CNNC)と英エネルギー・気候変動省(DECC) ・国際原子力サービス(INS)社が燃料サイク

ル・サプライチェーン分野の協力強化のMOUに調印(2014年6月)・中国広核集団(CGN)及び中国国家核電技術公司(SNPTC)が英ロー

ルスロイス社と民生原子力分野でのMOUに調印(2014年6月)・英中政府が、EDFエナジー社によるヒンクリーポイントC及びサイズウェルC原子力発電所の建設への中国企業の出資や、ブラッドウェルB原子力発電所において、EDFと協力し、

中国側が主事業者となり中国の設計による原子炉の新設を進めることで合意(2015年10月)・ヒンクリーポイントC原子力発電所建設が正式決定(2016年9月)

欧州(西) 欧州(東)

中東・アフリカアジア

ケニア・ケニア原子力委員会(KNEB)とCGN

が、原子力開発に係る包括的なMOUに調印(2015年9月)

パキスタン・中国が自主開発する第3世代炉である華龍1号を採用したカラチ原子力発電所2号機のコンクリート打設開始(2015年8月)

タイ・タイ電力公社(EGAT)子会社のRATCHが防城港第2期原子力発電所プロジェクトに共同出資(2015年12月)

スーダン・CNNCは、スーダン水資源・電力省

と原子力分野での協力に関する枠組み合意文書に署名した他、スーダンにおける60万kW級の原子炉の建設に協力する意向を表明(2016年5月)

アルゼンチン

・アルゼンチン原子力発電会社(NASA)とCNNCが、同国4基目となるアトーチャ3号機の建設に関する協定を締結(2014年9月)・NASAとCNNCが、アトーチャ3号機及び同国5基目の商用炉の建設に係る契約に署名(2015年11月)

北米・南米

インドネシア・中国核工業建設集団公司(CNEC)とインドネシア原子力庁(BATAN)が

高温ガス炉プロジェクトで協力していくことを確認(2016年6月)