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【報告】 若者の政治参加を高める社会教育からの提案 子どもの頃の体験に着目して The proposition from social education to make political participation of young people increase. Focus on childhood experiences.- 上野 修司 UENO Shuji 国立夜須高原青少年自然の家 要旨 若者の選挙離れが続く中、政治参加を図る取組が喫緊の課題になっている。現在、学校 では「社会に開かれた教育課程」の下で主権者教育が推進されているが、その連携先とし て期待される地域社会は十分な受け皿とはなり得ていない状況である。両者が連携・協働 し若者の政治参加へと繋げていくためにも、地域の選挙常時啓発活動を活性化させること が急務である。活動の当事者が参加する研修会をとおして、子どもの活動や家庭教育を支 援する提案をした結果、子どもや若者への啓発に関する様々なアイデアが出された。また、 子どもの頃の体験と政治参加意識の関連性について、研修会後のアンケートや大学生への 意識調査を基に検証してみた。 キーワード 選挙常時啓発、政治参加意識、18 歳選挙権、投票の量と質、子どもの体験 Ⅰ.主題設定の理由 1.若者の選挙離れより 若年層の低投票率が続いている。直近の国政選挙でも、その傾向が確認できる(後掲表 3)。健全な社会発展のためにも、若者による政治参加の必要性がずっと以前から説かれ てきたが 1) 、近年は「いずれの選挙においても他の世代に比べて低く、しかもその差が拡 大してきている。(中略)投票率が低いのは、他の世代に比べて、政治的関心、投票義務 感、政治的有効性感覚が低いからである」 2) と、分析されている。 2.学校での主権者教育の高まりより 平成 28 年7月の参議院議員選挙から、選挙権年齢が 18 歳に引き下げられ実施された。 しかし、従前の学校教育は「政治や選挙の仕組みは教えても、選挙の意義や重要性を理解 させたり、社会や政治に対する判断力、国民主権を担う公民としての意欲や態度を身につ けさせたりするのに十分なものにはなっていない」 3) 状況であった。かかる指摘の中で、 平成 29 年3月に改訂された新学習指導要領には主権者教育の充実や高等学校の新科目「公 共」が盛り込まれ、18 歳選挙権と相まって学校では俄かにその取組が熱を帯びてきた。 92 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

【報告】 3.地域社会の現状より (1)選挙常時啓発活動 の現状 … · 表3 18歳選挙権が行われて以降の投票率 (2)投票の量と質《着眼2

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Page 1: 【報告】 3.地域社会の現状より (1)選挙常時啓発活動 の現状 … · 表3 18歳選挙権が行われて以降の投票率 (2)投票の量と質《着眼2

3.地域社会の現状より

(1)選挙常時啓発活動4)の現状

学校で主権者教育が高まる一方、地域で選挙啓発を推進する組織の現状は大変深刻なも

のがある。筆者が居住する福岡県5)では、選挙常時啓発において「福岡方式」と呼ばれる

選挙管理委員会(以下、選管)・教育委員会(以下、教委)・明るい選挙推進協議会(以

下、明推協)の三者による連携事業が展開されてきた〔図1〕。

図1 福岡県における選挙常時啓発事業の推進体制6)

この連携下で誕生したのが、「まちの政治をみつめよう学級(政治学級)」7)である。

昭和 41 年に設置され、県内 300 学級ほどまで広まった。以来、各自治体の選管・教委・

明推協が一体となってこの指導・育成にあたってきたが、メンバーの高齢化、後継者や指

導者の不足、活動予算の縮減等の理由により、現在は 138 学級にまで半減した8)〔表1〕。

表1 福岡県内の政治学級と明推協の推移

(2)選挙管理委員会の現状

福岡県筑豊地区の 11 自治体9)は、財政状況の逼迫に伴う組織体制のスリム化や職員の

削減が行われており、選管の職員体制にも大きな影響を与えている。選管の多くは「総務

課(庶務係等)」内に設置され、専任職員はほとんどなく少人数で他業務と兼務している。

選挙“常時”啓発を推進する立場にありながら、“常日頃から”選挙関係の業務を十分に

行えていない矛盾を抱えている。

※福岡県選挙管理委員会

「平成 30 年度福岡県明るい選挙

推進事業事務提要」より抜粋

【報告】

若者の政治参加を高める社会教育からの提案

- 子どもの頃の体験に着目して -

The proposition from social education to make political participation

of young people increase.

- Focus on childhood experiences.-

上野 修司 UENO Shuji

国立夜須高原青少年自然の家

要旨

若者の選挙離れが続く中、政治参加を図る取組が喫緊の課題になっている。現在、学校

では「社会に開かれた教育課程」の下で主権者教育が推進されているが、その連携先とし

て期待される地域社会は十分な受け皿とはなり得ていない状況である。両者が連携・協働

し若者の政治参加へと繋げていくためにも、地域の選挙常時啓発活動を活性化させること

が急務である。活動の当事者が参加する研修会をとおして、子どもの活動や家庭教育を支

援する提案をした結果、子どもや若者への啓発に関する様々なアイデアが出された。また、

子どもの頃の体験と政治参加意識の関連性について、研修会後のアンケートや大学生への

意識調査を基に検証してみた。

キーワード

選挙常時啓発、政治参加意識、18 歳選挙権、投票の量と質、子どもの体験

Ⅰ.主題設定の理由

1.若者の選挙離れより

若年層の低投票率が続いている。直近の国政選挙でも、その傾向が確認できる(後掲表

3)。健全な社会発展のためにも、若者による政治参加の必要性がずっと以前から説かれ

てきたが1)、近年は「いずれの選挙においても他の世代に比べて低く、しかもその差が拡

大してきている。(中略)投票率が低いのは、他の世代に比べて、政治的関心、投票義務

感、政治的有効性感覚が低いからである」2)と、分析されている。

2.学校での主権者教育の高まりより

平成 28 年7月の参議院議員選挙から、選挙権年齢が 18 歳に引き下げられ実施された。

しかし、従前の学校教育は「政治や選挙の仕組みは教えても、選挙の意義や重要性を理解

させたり、社会や政治に対する判断力、国民主権を担う公民としての意欲や態度を身につ

けさせたりするのに十分なものにはなっていない」3)状況であった。かかる指摘の中で、

平成 29 年3月に改訂された新学習指導要領には主権者教育の充実や高等学校の新科目「公

共」が盛り込まれ、18 歳選挙権と相まって学校では俄かにその取組が熱を帯びてきた。

92 Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

52000174_KyoikuKiyo_8#2honbun#1-154.indd 92 2020/03/11 14:12:36

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3.地域社会の現状より

(1)選挙常時啓発活動4)の現状

学校で主権者教育が高まる一方、地域で選挙啓発を推進する組織の現状は大変深刻なも

のがある。筆者が居住する福岡県5)では、選挙常時啓発において「福岡方式」と呼ばれる

選挙管理委員会(以下、選管)・教育委員会(以下、教委)・明るい選挙推進協議会(以

下、明推協)の三者による連携事業が展開されてきた〔図1〕。

図1 福岡県における選挙常時啓発事業の推進体制6)

この連携下で誕生したのが、「まちの政治をみつめよう学級(政治学級)」7)である。

昭和 41 年に設置され、県内 300 学級ほどまで広まった。以来、各自治体の選管・教委・

明推協が一体となってこの指導・育成にあたってきたが、メンバーの高齢化、後継者や指

導者の不足、活動予算の縮減等の理由により、現在は 138 学級にまで半減した8)〔表1〕。

表1 福岡県内の政治学級と明推協の推移

(2)選挙管理委員会の現状

福岡県筑豊地区の 11 自治体9)は、財政状況の逼迫に伴う組織体制のスリム化や職員の

削減が行われており、選管の職員体制にも大きな影響を与えている。選管の多くは「総務

課(庶務係等)」内に設置され、専任職員はほとんどなく少人数で他業務と兼務している。

選挙“常時”啓発を推進する立場にありながら、“常日頃から”選挙関係の業務を十分に

行えていない矛盾を抱えている。

※福岡県選挙管理委員会

「平成 30 年度福岡県明るい選挙

推進事業事務提要」より抜粋

【報告】

若者の政治参加を高める社会教育からの提案

- 子どもの頃の体験に着目して -

The proposition from social education to make political participation

of young people increase.

- Focus on childhood experiences.-

上野 修司 UENO Shuji

国立夜須高原青少年自然の家

要旨

若者の選挙離れが続く中、政治参加を図る取組が喫緊の課題になっている。現在、学校

では「社会に開かれた教育課程」の下で主権者教育が推進されているが、その連携先とし

て期待される地域社会は十分な受け皿とはなり得ていない状況である。両者が連携・協働

し若者の政治参加へと繋げていくためにも、地域の選挙常時啓発活動を活性化させること

が急務である。活動の当事者が参加する研修会をとおして、子どもの活動や家庭教育を支

援する提案をした結果、子どもや若者への啓発に関する様々なアイデアが出された。また、

子どもの頃の体験と政治参加意識の関連性について、研修会後のアンケートや大学生への

意識調査を基に検証してみた。

キーワード

選挙常時啓発、政治参加意識、18 歳選挙権、投票の量と質、子どもの体験

Ⅰ.主題設定の理由

1.若者の選挙離れより

若年層の低投票率が続いている。直近の国政選挙でも、その傾向が確認できる(後掲表

3)。健全な社会発展のためにも、若者による政治参加の必要性がずっと以前から説かれ

てきたが1)、近年は「いずれの選挙においても他の世代に比べて低く、しかもその差が拡

大してきている。(中略)投票率が低いのは、他の世代に比べて、政治的関心、投票義務

感、政治的有効性感覚が低いからである」2)と、分析されている。

2.学校での主権者教育の高まりより

平成 28 年7月の参議院議員選挙から、選挙権年齢が 18 歳に引き下げられ実施された。

しかし、従前の学校教育は「政治や選挙の仕組みは教えても、選挙の意義や重要性を理解

させたり、社会や政治に対する判断力、国民主権を担う公民としての意欲や態度を身につ

けさせたりするのに十分なものにはなっていない」3)状況であった。かかる指摘の中で、

平成 29 年3月に改訂された新学習指導要領には主権者教育の充実や高等学校の新科目「公

共」が盛り込まれ、18 歳選挙権と相まって学校では俄かにその取組が熱を帯びてきた。

93Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

52000174_KyoikuKiyo_8#2honbun#1-154.indd 93 2020/03/17 22:09:18

Page 3: 【報告】 3.地域社会の現状より (1)選挙常時啓発活動 の現状 … · 表3 18歳選挙権が行われて以降の投票率 (2)投票の量と質《着眼2

表3 18 歳選挙権が行われて以降の投票率

(2)投票の量と質《着眼2》

根津 16)は、明るい選挙推進運動の展開方法として「形式的に、多くの人の投票参加を求

めること。実質的に、住民の政治意識の向上を図ること。」を挙げ、特に後者が基本であ

るとしている。いわゆる投票の「量と質」に通じる示唆である。両者は不可分の関係にあ

り、どちらか一方に比重差が生じても問題があるとされている。藤井 17)も主権者教育は

「模擬選挙を行うことだけではないし、投票率を上げることだけが目的ではない。主権者

として必要な知識に基づいた問題意識、考察力・判断力・行動力を養うもの」としている。

2.若者への選挙啓発の手がかり

これらの着眼を踏まえ、地域の若者に対する選挙啓発の手がかりを整理してみた〔表4〕。

そして、研修会では表4②の手がかりを採用した。18 歳年齢までに政治参加意識をいかに

高めさせ、19 歳以降になっても高い意識の下で投票されるかが鍵になると考えた。

初めて行われた 18 歳の投票率は、近年、全体の投票率が低下 18)している中でそれとほ

ぼ同じ率であったことを勘案すれば、やはり 18 歳投票率も“低投票率”であったのではな

いか。それだけに、18 歳までの学校教育段階における児童・生徒への働きかけがより重要

性を増してくる。

表4 選挙啓発の手がかり

Ⅳ 研究の実際

1.啓発に向けた2つの視点

(1)直接的に働きかける対象

総務省「18 歳選挙権に関する意識調査」19)によると、18~20 歳の若者が回答した「選

挙や政治に関心を持つためにすべきこと」の第1位は「模擬選挙体験」(23.1%)であっ

た。実際に投票した後の感想の第1位が「投票は簡単だった」(38.6%)ことから、若者

にとって投票が“敷居が高く難しそうな手続き”に映っていたかが窺える。事前の取組次

第(模擬体験等)で、投票への不安を払しょくし、投票行動へと繋げることができるので

はないかと研修会では指摘した。総務省・文部科学省が作成した高校生向け副読本『私た

ちが拓く日本の未来』でも、実践編として模擬選挙の方法等を例示している 20)。

(2)間接的に働きかける対象

各自治体の明推協委員は、地元の団体代表者等でほぼ構成されている(前掲表2)。こ

れは、福岡県社会教育行政が行う通学合宿推進事業 21)における実行委員会の構成員とも酷

(3)明るい選挙推進協議会 10)の現状

筑豊地区には8自治体で明推協が設置されている。委員の多くが地域団体から推薦を受

けた形での充て職になっており、幅広い意見が活動に生かされる仕組みになっている〔表

2〕。しかし、年数回程度の集まりでしかなく、政治学級と同じく活動の形骸化やマンネ

リ化が見られる 11)。

表2 明るい選挙推進協議会の構成事例

4.選挙管理委員会と学校の連携課題より

筑豊地区では、選管と学校との連携において優れて先進的な取組が行われている。初の

18 歳選挙権の実施となった参議院議員選挙(2016)では、福岡県内4大学・1高等学校の

計5校で期日前投票所が開設されたが、うち3校が筑豊地区であった。

しかしながら、この取組は 18 歳投票が初めて行われる国政選挙に際しての、言わば“臨

時”の実施であり“常時”ではない。選挙が近づいた時にだけ啓発活動や主権者教育が盛

り上がるのではなく、計画的・継続的な連携のあり方が求められている。

Ⅱ 研究の目的

今後、地域と学校の連携・協働が期待されている 12)ことを思えば、地域が行う選挙常時

啓発も学校が行う主権者教育も一体となって、体系的に整備されていくことが望ましい。

そのためにも、両者を俯瞰できる社会教育の立場から選挙常時啓発活動を活性化させるこ

とは大変意義深いと考える。

このような将来的展望を見据えつつ、選挙啓発推進者に新たな活動の可能性を見出して

もらい、意欲が高まることをとおして地域の現状を変えていく一歩としたい。そして、若

者の政治参加へと繋げていきたい。

Ⅲ 研究の方法

かかる地域の現状を踏まえ、選挙常時啓発推進者が一堂に会する筑豊地区の研修会 13)

(以下、研修会)をとおして、社会教育の立場から新たな活動へのヒントとなる視点を提

案した。具体的には、18 歳選挙権下で行われた投票率に焦点を当て、その実態から啓発す

べき対象を絞り込むことで、活動への更なる意欲を引き出そうと試みた。すなわち、啓発

推進者の特性(前掲表2)から、「子どもの体験」に係る各種データを例示することが、

新たな気づきとして地域に住む子どもや若者への活動実践を誘発していくと考えた。

1.研修会(参加者)の着眼点 14)

(1)18 歳と 19 歳以降の投票率の隔たり《着眼1》

研修会では、18 歳投票が初めて行われた参議院議員選挙(2016)と衆議院議員選挙(2017)

での若者(18 歳~29 歳)の投票率に着目した 15)。どちらも 18 歳は全体の投票率に近い結

果となったが、19 歳以降は落ち込んでいく傾向にあった〔表3〕。

94 Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

52000174_KyoikuKiyo_8#2honbun#1-154.indd 94 2020/03/11 14:12:37

Page 4: 【報告】 3.地域社会の現状より (1)選挙常時啓発活動 の現状 … · 表3 18歳選挙権が行われて以降の投票率 (2)投票の量と質《着眼2

表3 18 歳選挙権が行われて以降の投票率

(2)投票の量と質《着眼2》

根津 16)は、明るい選挙推進運動の展開方法として「形式的に、多くの人の投票参加を求

めること。実質的に、住民の政治意識の向上を図ること。」を挙げ、特に後者が基本であ

るとしている。いわゆる投票の「量と質」に通じる示唆である。両者は不可分の関係にあ

り、どちらか一方に比重差が生じても問題があるとされている。藤井 17)も主権者教育は

「模擬選挙を行うことだけではないし、投票率を上げることだけが目的ではない。主権者

として必要な知識に基づいた問題意識、考察力・判断力・行動力を養うもの」としている。

2.若者への選挙啓発の手がかり

これらの着眼を踏まえ、地域の若者に対する選挙啓発の手がかりを整理してみた〔表4〕。

そして、研修会では表4②の手がかりを採用した。18 歳年齢までに政治参加意識をいかに

高めさせ、19 歳以降になっても高い意識の下で投票されるかが鍵になると考えた。

初めて行われた 18 歳の投票率は、近年、全体の投票率が低下 18)している中でそれとほ

ぼ同じ率であったことを勘案すれば、やはり 18 歳投票率も“低投票率”であったのではな

いか。それだけに、18 歳までの学校教育段階における児童・生徒への働きかけがより重要

性を増してくる。

表4 選挙啓発の手がかり

Ⅳ 研究の実際

1.啓発に向けた2つの視点

(1)直接的に働きかける対象

総務省「18 歳選挙権に関する意識調査」19)によると、18~20 歳の若者が回答した「選

挙や政治に関心を持つためにすべきこと」の第1位は「模擬選挙体験」(23.1%)であっ

た。実際に投票した後の感想の第1位が「投票は簡単だった」(38.6%)ことから、若者

にとって投票が“敷居が高く難しそうな手続き”に映っていたかが窺える。事前の取組次

第(模擬体験等)で、投票への不安を払しょくし、投票行動へと繋げることができるので

はないかと研修会では指摘した。総務省・文部科学省が作成した高校生向け副読本『私た

ちが拓く日本の未来』でも、実践編として模擬選挙の方法等を例示している 20)。

(2)間接的に働きかける対象

各自治体の明推協委員は、地元の団体代表者等でほぼ構成されている(前掲表2)。こ

れは、福岡県社会教育行政が行う通学合宿推進事業 21)における実行委員会の構成員とも酷

(3)明るい選挙推進協議会 10)の現状

筑豊地区には8自治体で明推協が設置されている。委員の多くが地域団体から推薦を受

けた形での充て職になっており、幅広い意見が活動に生かされる仕組みになっている〔表

2〕。しかし、年数回程度の集まりでしかなく、政治学級と同じく活動の形骸化やマンネ

リ化が見られる 11)。

表2 明るい選挙推進協議会の構成事例

4.選挙管理委員会と学校の連携課題より

筑豊地区では、選管と学校との連携において優れて先進的な取組が行われている。初の

18 歳選挙権の実施となった参議院議員選挙(2016)では、福岡県内4大学・1高等学校の

計5校で期日前投票所が開設されたが、うち3校が筑豊地区であった。

しかしながら、この取組は 18 歳投票が初めて行われる国政選挙に際しての、言わば“臨

時”の実施であり“常時”ではない。選挙が近づいた時にだけ啓発活動や主権者教育が盛

り上がるのではなく、計画的・継続的な連携のあり方が求められている。

Ⅱ 研究の目的

今後、地域と学校の連携・協働が期待されている 12)ことを思えば、地域が行う選挙常時

啓発も学校が行う主権者教育も一体となって、体系的に整備されていくことが望ましい。

そのためにも、両者を俯瞰できる社会教育の立場から選挙常時啓発活動を活性化させるこ

とは大変意義深いと考える。

このような将来的展望を見据えつつ、選挙啓発推進者に新たな活動の可能性を見出して

もらい、意欲が高まることをとおして地域の現状を変えていく一歩としたい。そして、若

者の政治参加へと繋げていきたい。

Ⅲ 研究の方法

かかる地域の現状を踏まえ、選挙常時啓発推進者が一堂に会する筑豊地区の研修会 13)

(以下、研修会)をとおして、社会教育の立場から新たな活動へのヒントとなる視点を提

案した。具体的には、18 歳選挙権下で行われた投票率に焦点を当て、その実態から啓発す

べき対象を絞り込むことで、活動への更なる意欲を引き出そうと試みた。すなわち、啓発

推進者の特性(前掲表2)から、「子どもの体験」に係る各種データを例示することが、

新たな気づきとして地域に住む子どもや若者への活動実践を誘発していくと考えた。

1.研修会(参加者)の着眼点 14)

(1)18 歳と 19 歳以降の投票率の隔たり《着眼1》

研修会では、18 歳投票が初めて行われた参議院議員選挙(2016)と衆議院議員選挙(2017)

での若者(18 歳~29 歳)の投票率に着目した 15)。どちらも 18 歳は全体の投票率に近い結

果となったが、19 歳以降は落ち込んでいく傾向にあった〔表3〕。

95Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

52000174_KyoikuKiyo_8#2honbun#1-154.indd 95 2020/03/17 22:09:19

Page 5: 【報告】 3.地域社会の現状より (1)選挙常時啓発活動 の現状 … · 表3 18歳選挙権が行われて以降の投票率 (2)投票の量と質《着眼2

考えを主張し説得する力」の2つが強調されている。そして、これらは「学校だけではな

く家庭や地域社会によって得られる」25)としている。やはりこの2つの力も、同じように

地域・家庭から得られている「体験の力」を基盤にして、より一層育まれていくものとな

るのではないだろうか。

(2)子どもの体験と政治・選挙への関心の関係性

機構による別の調査報告では、子どもの様々な体験が政治や選挙への関心にも影響を及

ぼしていることが明らかとなっている 26)〔図2〕。自然体験・生活体験が多い子ほど、政

治や選挙に関心があると回答している。やはり、子どもの様々な体験を地域の側からも支

援することによって、いわゆる投票の“質”にあたる部分が涵養され、18 歳以降の投票行

動として“量”にも大きく作用してくるのではないか、と参加者に投げかけた。

図2 子どもの体験と政治・選挙への関心の関係性

3.投票行動を促す要因に関する選挙啓発推進者の意識

これらの内容を押さえ、研修会では地域や学校における子どもの活動及び家庭教育への

支援を提案し、アンケート 27)を参加者に実施してみた〔表7〕。

研修会以前から「子どもの頃

の体験」や「家庭教育」が将来 表7 研修会のアンケート内容と回答結果(N=50)

の投票行動に関係しているかど

うかについて、考えたことがあ

るか尋ねてみた(表7②③)。

②子どもの頃の体験との関係

性については、「考えたことが

ある」者も「考えたことはなかっ

た」も者もほぼ半々であった。

一方、③家庭教育との関係性

については、「考えたことがあ

る」者の方が「なかった」者よ

りもおよそ倍近くいた。子ども

の将来の投票行動は、家庭教育

に因る部分もあると認識してい

似している〔表5〕。選挙啓発推進者は居住地域での行事や学校支援ボランティアとして、

子どもとの接点も多いのではないか 22)。

この視座に立てば、年に数回の会合しかなく形骸化が感じられる明推協において、日常

的に啓発が行える場面や対象が見出せそうである。すなわち、地域や学校での子どもの活

動支援である。折しも、学校は「社会に開かれた教育課程」に向けて積極的に社会参加を

していこうとしており、地域の側からも主権者教育等で連携・協力ができそうである。

表5 通学合宿実行委員会の構成事例

2.子どもの頃の体験とその後の影響

(1)「体験の力」獲得と政治参加意識の醸成

研修会では、独立行政法人国立青少年教育振興機構(以下、機構)が行った「子どもの

体験活動の実態に関する調査研究」報告書(2010)の資料データも引用した 23)〔表6〕。

報告書には「子どもの頃の体験は、その後の人生に影響する」という副題 24)も付いている。

子どもの頃の6つの「体験」(①友だちとの遊び、②地域活動、③家族行事、④動植物と

のかかわり、⑤自然体験、⑥家事手伝い)と7つの側面「意識・価値観」(①自尊感情、

②共生感、③意欲・関心、④規範意識、⑤職業意識、⑥人間関係能力、⑦文化的作法・教

養)との関連を明らかにし、その7つの側面を「体験の力」と定義付けている。

18 歳年齢に近い高校2年生が 表6 高校2年生が獲得している「体験の力」

獲得している「体験の力」の多

くは、中学校段階までに「地域」

「家庭」から得ていることが見

て取れる。このデータに依拠す

るならば、地域や家庭教育で子

どもの健全な成長を支援するこ

とによって、将来良識ある公民

としての資質を備えた、政治参

加意識を高く持つ大人になり得

ることになる。これはすなわち、

一票の価値を理解した投票行動

や政治参加のできる主権者へと

成長するものと期待できる。

また、前掲した高校生向け副

読本『私たちが拓く日本の未来』

には、第一章の3「有権者として身に付けるべき資質とは」で、政治に参加するために必

要な力として「課題を多面的・多角的に考え、自分なりの考えを作っていく力」「自分の

96 Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

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考えを主張し説得する力」の2つが強調されている。そして、これらは「学校だけではな

く家庭や地域社会によって得られる」25)としている。やはりこの2つの力も、同じように

地域・家庭から得られている「体験の力」を基盤にして、より一層育まれていくものとな

るのではないだろうか。

(2)子どもの体験と政治・選挙への関心の関係性

機構による別の調査報告では、子どもの様々な体験が政治や選挙への関心にも影響を及

ぼしていることが明らかとなっている 26)〔図2〕。自然体験・生活体験が多い子ほど、政

治や選挙に関心があると回答している。やはり、子どもの様々な体験を地域の側からも支

援することによって、いわゆる投票の“質”にあたる部分が涵養され、18 歳以降の投票行

動として“量”にも大きく作用してくるのではないか、と参加者に投げかけた。

図2 子どもの体験と政治・選挙への関心の関係性

3.投票行動を促す要因に関する選挙啓発推進者の意識

これらの内容を押さえ、研修会では地域や学校における子どもの活動及び家庭教育への

支援を提案し、アンケート 27)を参加者に実施してみた〔表7〕。

研修会以前から「子どもの頃

の体験」や「家庭教育」が将来 表7 研修会のアンケート内容と回答結果(N=50)

の投票行動に関係しているかど

うかについて、考えたことがあ

るか尋ねてみた(表7②③)。

②子どもの頃の体験との関係

性については、「考えたことが

ある」者も「考えたことはなかっ

た」も者もほぼ半々であった。

一方、③家庭教育との関係性

については、「考えたことがあ

る」者の方が「なかった」者よ

りもおよそ倍近くいた。子ども

の将来の投票行動は、家庭教育

に因る部分もあると認識してい

似している〔表5〕。選挙啓発推進者は居住地域での行事や学校支援ボランティアとして、

子どもとの接点も多いのではないか 22)。

この視座に立てば、年に数回の会合しかなく形骸化が感じられる明推協において、日常

的に啓発が行える場面や対象が見出せそうである。すなわち、地域や学校での子どもの活

動支援である。折しも、学校は「社会に開かれた教育課程」に向けて積極的に社会参加を

していこうとしており、地域の側からも主権者教育等で連携・協力ができそうである。

表5 通学合宿実行委員会の構成事例

2.子どもの頃の体験とその後の影響

(1)「体験の力」獲得と政治参加意識の醸成

研修会では、独立行政法人国立青少年教育振興機構(以下、機構)が行った「子どもの

体験活動の実態に関する調査研究」報告書(2010)の資料データも引用した 23)〔表6〕。

報告書には「子どもの頃の体験は、その後の人生に影響する」という副題 24)も付いている。

子どもの頃の6つの「体験」(①友だちとの遊び、②地域活動、③家族行事、④動植物と

のかかわり、⑤自然体験、⑥家事手伝い)と7つの側面「意識・価値観」(①自尊感情、

②共生感、③意欲・関心、④規範意識、⑤職業意識、⑥人間関係能力、⑦文化的作法・教

養)との関連を明らかにし、その7つの側面を「体験の力」と定義付けている。

18 歳年齢に近い高校2年生が 表6 高校2年生が獲得している「体験の力」

獲得している「体験の力」の多

くは、中学校段階までに「地域」

「家庭」から得ていることが見

て取れる。このデータに依拠す

るならば、地域や家庭教育で子

どもの健全な成長を支援するこ

とによって、将来良識ある公民

としての資質を備えた、政治参

加意識を高く持つ大人になり得

ることになる。これはすなわち、

一票の価値を理解した投票行動

や政治参加のできる主権者へと

成長するものと期待できる。

また、前掲した高校生向け副

読本『私たちが拓く日本の未来』

には、第一章の3「有権者として身に付けるべき資質とは」で、政治に参加するために必

要な力として「課題を多面的・多角的に考え、自分なりの考えを作っていく力」「自分の

97Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

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Page 7: 【報告】 3.地域社会の現状より (1)選挙常時啓発活動 の現状 … · 表3 18歳選挙権が行われて以降の投票率 (2)投票の量と質《着眼2

(2)若者(大学生)への実態調査による示唆

研修会とは別の調査として、子どもの頃の体験が投票行動にいかに結びついているのか、

比較的 18 歳年齢に近く、選挙(投票)を経験したであろう大学生にアンケートを実施して

みた 28)〔表 10〕。

表 10 大学生へのアンケート内容と回答結果(N=349/n=337)

表 10「①外遊びや自然の中での活動体験」は、学生本人の自覚に負う個人差は否めない

が、その自覚の度合いをフィルターにして「②投票の有無」「③今後も投票に行くか」を

分析してみた。①活動体験で「ア 多く経験した」「イ ある程度経験した」「ウ ふつ

うである」者について、「②投票の有無」は大きな差異が感じられないようであった(「エ

あまり経験していない」「オ ほとんどしていない」者についてはサンプル数が非常に少

ないことから、ここでは敢えて言及を控える)。しかしながら、「③今後も投票に行くか」

については、①活動体験の経験度によって「必ず行く」という強い意思表示に差が感じら

れた(表 10、点線囲み部)。経験が多い者ほど、「必ず行く」意思を持つ傾向が窺える。

これは、前掲表4の手がかり「18 歳年齢までに高い政治参加意識を醸成しておく」に十分

な視点として、有効になり得るのではないかと考える。

2.課題

研修会をとおして、実際に地域の子どもや家庭を意識した活動にどれだけ結びついたの

か、或いは学校と連携・協働が進んだのか、そしてその努力が若者の政治参加として成果

に現れていくのか、地道な追跡調査が必要である。とりわけ、前掲表9で出されたアイデ

ることが窺えた。しかしながら、②・③について以前から「考えたことがある」者も「な

かった」者も、研修会をきっかけにして「関係がある」もしくは「ある程度関係がある」

と考えるに至った(表8)。前者は自身の考えをより強くする機会になったようであり、

後者は新たな気づきに繋がったと思われる。

表8 子どもの頃の体験・家庭教育と「将来の投票行動」の関係性について

Ⅴ 成果と課題

1.成果

(1)研修会の成果

研修会後のアンケート(前掲表7)では、「④今後、地域での子どもの活動に関わる機

会があれば、協力したいか」との問いに対し、67.3%が「協力したい」と答えた。「現在、

協力している」16.3%を加えると、実に 83.6%になる。子どもの体験の重要性が理解され

たものと考えたい。とりわけ、子どもや学校に関わるボランティアをしていない者のうち

75.0%(21/28 名)が、今後は「協力したい」と回答していた。これから先、子ども達への

選挙啓発をも念頭に入れた“常時”活動として、地域と学校の連携が更に促進される期待

が高まる。

参加者の感想にも、「投票呼びかけの大切さを認識した。まずは身近な人(家族や地域)

に対して。」「(地域も学校も家庭も)全て繋がっていると感じた。」とあり、啓発の対

象となる不特定多数の“曖昧な”有権者から脱却し、具体的な対象者がイメージされたよ

うである。従前から行われているビラ配り等の街頭活動は、啓発すべき対象範囲が広く一

方通行的であったことから、活動そのものの手応えや成果が実感できていなかったのも、

形骸化や閉塞感を助長する一因になっていたのではないだろうか。

なお、参加者からは今後地域での選挙啓発について様々なアイデアが出されている〔表

9〕。新たな活動として地域が前進する可能性も出てきた。

表9 参加者の間で出された新たな啓発アイデア

98 Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

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(2)若者(大学生)への実態調査による示唆

研修会とは別の調査として、子どもの頃の体験が投票行動にいかに結びついているのか、

比較的 18 歳年齢に近く、選挙(投票)を経験したであろう大学生にアンケートを実施して

みた 28)〔表 10〕。

表 10 大学生へのアンケート内容と回答結果(N=349/n=337)

表 10「①外遊びや自然の中での活動体験」は、学生本人の自覚に負う個人差は否めない

が、その自覚の度合いをフィルターにして「②投票の有無」「③今後も投票に行くか」を

分析してみた。①活動体験で「ア 多く経験した」「イ ある程度経験した」「ウ ふつ

うである」者について、「②投票の有無」は大きな差異が感じられないようであった(「エ

あまり経験していない」「オ ほとんどしていない」者についてはサンプル数が非常に少

ないことから、ここでは敢えて言及を控える)。しかしながら、「③今後も投票に行くか」

については、①活動体験の経験度によって「必ず行く」という強い意思表示に差が感じら

れた(表 10、点線囲み部)。経験が多い者ほど、「必ず行く」意思を持つ傾向が窺える。

これは、前掲表4の手がかり「18 歳年齢までに高い政治参加意識を醸成しておく」に十分

な視点として、有効になり得るのではないかと考える。

2.課題

研修会をとおして、実際に地域の子どもや家庭を意識した活動にどれだけ結びついたの

か、或いは学校と連携・協働が進んだのか、そしてその努力が若者の政治参加として成果

に現れていくのか、地道な追跡調査が必要である。とりわけ、前掲表9で出されたアイデ

ることが窺えた。しかしながら、②・③について以前から「考えたことがある」者も「な

かった」者も、研修会をきっかけにして「関係がある」もしくは「ある程度関係がある」

と考えるに至った(表8)。前者は自身の考えをより強くする機会になったようであり、

後者は新たな気づきに繋がったと思われる。

表8 子どもの頃の体験・家庭教育と「将来の投票行動」の関係性について

Ⅴ 成果と課題

1.成果

(1)研修会の成果

研修会後のアンケート(前掲表7)では、「④今後、地域での子どもの活動に関わる機

会があれば、協力したいか」との問いに対し、67.3%が「協力したい」と答えた。「現在、

協力している」16.3%を加えると、実に 83.6%になる。子どもの体験の重要性が理解され

たものと考えたい。とりわけ、子どもや学校に関わるボランティアをしていない者のうち

75.0%(21/28 名)が、今後は「協力したい」と回答していた。これから先、子ども達への

選挙啓発をも念頭に入れた“常時”活動として、地域と学校の連携が更に促進される期待

が高まる。

参加者の感想にも、「投票呼びかけの大切さを認識した。まずは身近な人(家族や地域)

に対して。」「(地域も学校も家庭も)全て繋がっていると感じた。」とあり、啓発の対

象となる不特定多数の“曖昧な”有権者から脱却し、具体的な対象者がイメージされたよ

うである。従前から行われているビラ配り等の街頭活動は、啓発すべき対象範囲が広く一

方通行的であったことから、活動そのものの手応えや成果が実感できていなかったのも、

形骸化や閉塞感を助長する一因になっていたのではないだろうか。

なお、参加者からは今後地域での選挙啓発について様々なアイデアが出されている〔表

9〕。新たな活動として地域が前進する可能性も出てきた。

表9 参加者の間で出された新たな啓発アイデア

99Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

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Page 9: 【報告】 3.地域社会の現状より (1)選挙常時啓発活動 の現状 … · 表3 18歳選挙権が行われて以降の投票率 (2)投票の量と質《着眼2

で多様な取組を行うこと」が必要であるとした。

https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/ikusei/1372381.htm、2020 年1月 18 日参照

13)福岡県・市町村選管及び県教委連携主管事業である「筑豊地区明るい選挙推進事業担

当者研修会」参加者 49 名(2017 年7月 10 日)、「飯塚市・嘉麻市・桂川町明るい選挙

推進大会」参加者 36 名(同年 11 月 22 日)、「田川地区明るい選挙推進協議会研修会」

参加者 55 名(2018 年2月 23 日)で、筆者は講師を務めた。(この3研修会は、全て筑

豊地区内で毎年開催されている。)

14)同3研修会において、筆者(講師)は主催者側との間で研修内容を事前協議し、2つ

の着眼点を共有した。そして、これらを参加者にも示しながら展開することにした。

15)総務省「国政選挙の年代別投票率の推移について」https://www.soumu.go.jp/

senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/index.html、2020 年1月 18 日参照

※実際の研修会(当時)では、資料作成及び分析時間の関係から速報値を用いた。

16)根津菊次郎「はしがき」『“まちの政治をみつめよう学級”』福岡県選挙管理委員会

編、1969、p.2

17)藤井剛「主権者教育への疑問に答えます」 明推協情報誌『Voters』30 号、2016、

pp.52-61.

18)総務省、前掲データ 15)

19)総務省「18 歳投票権に関する意識調査(報告書)」2016、p.32 及び p.22

https://www.soumu.go.jp/main_content/000457171.pdf、2020 年1月 18 日参照

20)総務省・文部科学省『私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付

けるために』2015、pp.50-71.

21)通学合宿とは、一定の期間子どもが親元を離れ、地域の公民館などに集団で寝泊まり

をして学校へ通うことである。福岡県では各小学校区で実行委員会が組織され、地域の

大人が指導や見守りをしている。子どもの育成だけでなく、地域の絆づくりにも繫がる

取組として広く行われている。

22)後掲する研修会アンケートの回答結果(表7①)では、学校や子どもの地域活動にお

いてボランティア等で関わっている者が、50 名中 19 名いることが判明した。

23)独立行政法人国立青少年教育振興機構「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」

報告書 2010、p.50(表 4-3-②)

24)同機構、「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書〔概要〕2010、

https://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/62/File/10taiken-gaiyou.pdf、

2020 年1月 18 日参照

25)総務省・文部科学省、前掲書 20)、p.7

26)独立行政法人国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」報告

書(平成 24 年度調査)2014、p.130(図 285)及び p.132(図 399)

27)13)の3つ研修会ではほぼ同じ内容の研修を組んだが、本アンケートを用いた調査は、

最後の「田川地区明るい選挙推進協議会研修会」のみで実施した。

28)2018 年6月、中村学園大学講師の橋本一雄氏に協力をいただき、同大学栄養科学部・

教育学部・流通科学部・短期大学部の学生 349 名に対してアンケートを実施した。

アがその後どういった形で実現に及んだのかも注視していきたい。

また、本研究は研修会でのアンケート結果を基に論考したが、サンプル数(アンケート

回収数)が少ないため、選挙啓発活動推進者の実態を正確に把握したとは言い難い。大学

生(若者)に対する調査結果も同様であり、更なる調査の蓄積によって研究の精度を高め

ていきたい。そして「体験の力」が、有権者として身に付けるべき資質・能力とどれくら

い関連が見出せるのか、或いは数ある体験の中でも何が政治参加に有効であるのかを深く

掘り下げて究明していく必要がある。

引用文献・参考文献・注

1)財団法人明るい選挙推進協会『青年層に対する啓発活動について』1988

2)総務省:常時啓発事業のあり方等研究会「常時啓発事業のあり方研究会(最終報告書)」

2011、p.2

https://www.soumu.go.jp/main_content/000141752.pdf、2020 年 1 月 18 日参照

3)総務省:常時啓発事業のあり方研究会、同報告書、p.3

4)総務省「選挙常時啓発事業推進要綱」(1978)には、「民主政治の健全な発展を期す

るには、国民一人ひとりが主権者としての自覚と豊かな政治意識、高い選挙道義を身に

つけることが必要であり、そのためには長期的展望に立った地道な啓発活動」とある。

5)筆者は、平成 25 年と 29 年に福岡県教育庁の出先機関(教育事務所)で、県内6地区

の1つ筑豊地区で選挙常時啓発を担当した。本研究は、その実践を基に展開している。

6)福岡県選挙管理委員会「平成 30 年度明るい選挙推進事業事務提要」2018、p.5

7)「まちの政治をみつめよう学級」設置要領では、「地域住民の身の回りの問題がいか

に深く『まちの政治』とかかわりあいをもち、それに包含されているかを認識し、政治

に対する正しい理解を深めるためにまちの政治について学習し話しあいを行う」ことを

とおして、学級生が地域社会のオピニオンリーダーへと成長することが期待された。

8)福岡県で毎年開催されている「政治学級活性化研究会」において、県内どの地区も活

動の衰退ぶりが報告されている。したがって、本研究のサンプルとして採り上げている

「筑豊地区」の状況は、福岡県全体の姿を映し出しているとも言える。

9)飯塚市、田川市、嘉麻市、桂川町、香春町、添田町、糸田町、川崎町、大任町、

福智町、赤村(計3市7町1村)。筆者はこの選管全てに聞き取りをした。

10)国民の政治常識を高め、政治倫理を確立する運動を行うための「選挙常時啓発事業」

及び金のかからないきれいな選挙を呼びかける「選挙をきれいにする国民運動」(明る

く行われる選挙)を推進するために都道府県や市町村に設置されている組織。

11)筑豊地区明推協の現状について、各事務局に聞き取りをした。委員の多くは 60 歳代~

80 歳代の高齢者であり、政治学級生と年齢層がほぼ同じである。なお、前掲報告書 2)に

も、全国的に活動の停滞が課題として報告されており、筑豊地区や福岡県にとどまらな

い現状になっている。

12)文部科学省「主権者教育の推進に関する検討チーム」中間まとめ(2016)では、主権

者教育の目的を「主権者として社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を

生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一人として主体的に担うことができる

力を身に付けさせること」とし、「学校・家庭・地域が互いに連携・協働し、社会全体

100 Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

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Page 10: 【報告】 3.地域社会の現状より (1)選挙常時啓発活動 の現状 … · 表3 18歳選挙権が行われて以降の投票率 (2)投票の量と質《着眼2

で多様な取組を行うこと」が必要であるとした。

https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/ikusei/1372381.htm、2020 年1月 18 日参照

13)福岡県・市町村選管及び県教委連携主管事業である「筑豊地区明るい選挙推進事業担

当者研修会」参加者 49 名(2017 年7月 10 日)、「飯塚市・嘉麻市・桂川町明るい選挙

推進大会」参加者 36 名(同年 11 月 22 日)、「田川地区明るい選挙推進協議会研修会」

参加者 55 名(2018 年2月 23 日)で、筆者は講師を務めた。(この3研修会は、全て筑

豊地区内で毎年開催されている。)

14)同3研修会において、筆者(講師)は主催者側との間で研修内容を事前協議し、2つ

の着眼点を共有した。そして、これらを参加者にも示しながら展開することにした。

15)総務省「国政選挙の年代別投票率の推移について」https://www.soumu.go.jp/

senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/index.html、2020 年1月 18 日参照

※実際の研修会(当時)では、資料作成及び分析時間の関係から速報値を用いた。

16)根津菊次郎「はしがき」『“まちの政治をみつめよう学級”』福岡県選挙管理委員会

編、1969、p.2

17)藤井剛「主権者教育への疑問に答えます」 明推協情報誌『Voters』30 号、2016、

pp.52-61.

18)総務省、前掲データ 15)

19)総務省「18 歳投票権に関する意識調査(報告書)」2016、p.32 及び p.22

https://www.soumu.go.jp/main_content/000457171.pdf、2020 年1月 18 日参照

20)総務省・文部科学省『私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付

けるために』2015、pp.50-71.

21)通学合宿とは、一定の期間子どもが親元を離れ、地域の公民館などに集団で寝泊まり

をして学校へ通うことである。福岡県では各小学校区で実行委員会が組織され、地域の

大人が指導や見守りをしている。子どもの育成だけでなく、地域の絆づくりにも繫がる

取組として広く行われている。

22)後掲する研修会アンケートの回答結果(表7①)では、学校や子どもの地域活動にお

いてボランティア等で関わっている者が、50 名中 19 名いることが判明した。

23)独立行政法人国立青少年教育振興機構「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」

報告書 2010、p.50(表 4-3-②)

24)同機構、「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書〔概要〕2010、

https://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/62/File/10taiken-gaiyou.pdf、

2020 年1月 18 日参照

25)総務省・文部科学省、前掲書 20)、p.7

26)独立行政法人国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」報告

書(平成 24 年度調査)2014、p.130(図 285)及び p.132(図 399)

27)13)の3つ研修会ではほぼ同じ内容の研修を組んだが、本アンケートを用いた調査は、

最後の「田川地区明るい選挙推進協議会研修会」のみで実施した。

28)2018 年6月、中村学園大学講師の橋本一雄氏に協力をいただき、同大学栄養科学部・

教育学部・流通科学部・短期大学部の学生 349 名に対してアンケートを実施した。

アがその後どういった形で実現に及んだのかも注視していきたい。

また、本研究は研修会でのアンケート結果を基に論考したが、サンプル数(アンケート

回収数)が少ないため、選挙啓発活動推進者の実態を正確に把握したとは言い難い。大学

生(若者)に対する調査結果も同様であり、更なる調査の蓄積によって研究の精度を高め

ていきたい。そして「体験の力」が、有権者として身に付けるべき資質・能力とどれくら

い関連が見出せるのか、或いは数ある体験の中でも何が政治参加に有効であるのかを深く

掘り下げて究明していく必要がある。

引用文献・参考文献・注

1)財団法人明るい選挙推進協会『青年層に対する啓発活動について』1988

2)総務省:常時啓発事業のあり方等研究会「常時啓発事業のあり方研究会(最終報告書)」

2011、p.2

https://www.soumu.go.jp/main_content/000141752.pdf、2020 年 1 月 18 日参照

3)総務省:常時啓発事業のあり方研究会、同報告書、p.3

4)総務省「選挙常時啓発事業推進要綱」(1978)には、「民主政治の健全な発展を期す

るには、国民一人ひとりが主権者としての自覚と豊かな政治意識、高い選挙道義を身に

つけることが必要であり、そのためには長期的展望に立った地道な啓発活動」とある。

5)筆者は、平成 25 年と 29 年に福岡県教育庁の出先機関(教育事務所)で、県内6地区

の1つ筑豊地区で選挙常時啓発を担当した。本研究は、その実践を基に展開している。

6)福岡県選挙管理委員会「平成 30 年度明るい選挙推進事業事務提要」2018、p.5

7)「まちの政治をみつめよう学級」設置要領では、「地域住民の身の回りの問題がいか

に深く『まちの政治』とかかわりあいをもち、それに包含されているかを認識し、政治

に対する正しい理解を深めるためにまちの政治について学習し話しあいを行う」ことを

とおして、学級生が地域社会のオピニオンリーダーへと成長することが期待された。

8)福岡県で毎年開催されている「政治学級活性化研究会」において、県内どの地区も活

動の衰退ぶりが報告されている。したがって、本研究のサンプルとして採り上げている

「筑豊地区」の状況は、福岡県全体の姿を映し出しているとも言える。

9)飯塚市、田川市、嘉麻市、桂川町、香春町、添田町、糸田町、川崎町、大任町、

福智町、赤村(計3市7町1村)。筆者はこの選管全てに聞き取りをした。

10)国民の政治常識を高め、政治倫理を確立する運動を行うための「選挙常時啓発事業」

及び金のかからないきれいな選挙を呼びかける「選挙をきれいにする国民運動」(明る

く行われる選挙)を推進するために都道府県や市町村に設置されている組織。

11)筑豊地区明推協の現状について、各事務局に聞き取りをした。委員の多くは 60 歳代~

80 歳代の高齢者であり、政治学級生と年齢層がほぼ同じである。なお、前掲報告書 2)に

も、全国的に活動の停滞が課題として報告されており、筑豊地区や福岡県にとどまらな

い現状になっている。

12)文部科学省「主権者教育の推進に関する検討チーム」中間まとめ(2016)では、主権

者教育の目的を「主権者として社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を

生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一人として主体的に担うことができる

力を身に付けさせること」とし、「学校・家庭・地域が互いに連携・協働し、社会全体

101Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

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