Upload
dinhdung
View
218
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
マレーシアサバ州における
マンギウムアカシア人工林の養分利用
と荒廃地回復機能に関する研究
2012年
稲垣昌宏
本論文により稲垣昌宏に対し東京大学から2012年7月6日に博士(農学)が授与された
Inagaki Masahiro (2012) A study of a fast-growing species, Acacia mangium in Sabah Malaysia
in relation to its nutrient use and its functional effects on rehabilitation of degraded soils. Ph.D.
Dissertation, The University of Tokyo. 137 pp.
ii
目次
1. 序論 1! 1.1 研究の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.2 研究小史 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.2.1 マンギウムアカシアの生理生態学的特徴 ・・・・・・・・・・ 3 1.2.2 マンギウムアカシア造林が土壌に及ぼす影響 ・・・・・・・・ 6 1.2.3 湿潤熱帯における窒素とリンの可給性と獲得 ・・・・・・・・ 9 1.2.4 熱帯の植物による窒素、リン利用の違い ・・・・・・・・・ 10! 1.3! 本論文の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12! 1.4! 本論文の試験地と構成 ・・・・・・・・・・・・・ 13
2. メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素とリンの蓄積様式:植物及び土壌要因の影響評価 17
! 2.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 2.2 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 2.2.1 熱帯樹木の地上部バイオマスと養分蓄積量に関するデータセット 18
2.2.2 統計解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19! 2.3! 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 2.3.1 地上部バイオマスと地上部養分蓄積量との関係 ・・・・・・・ 19 2.3.2 窒素、リン利用効率の樹種間比較 ・・・・・・・・・・・ 20 2.3.3 窒素、リン利用効率のグループ間および土壌因子の影響 ・・・・ 21 2.3.4 地上部バイオマス中の養分蓄積における葉とその他の部位との関係・ 22! 2.4! 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 2.4.1 地上部の窒素利用効率 ・・・・・・・・・・・・・・・ 24 2.4.2 地上部のリン利用効率 ・・・・・・・・・・・・・・・ 25 2.4.3 葉と葉以外の地上部の養分利用効率への影響 ・・・・・・・ 27 2.5! まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
3. 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性 35
iii
! 3.1! はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 3.2! 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 3.2.1 試験地の位置と表層地質 ・・・・・・・・・・・・・・ 36 3.2.2 気温と降水量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 3.2.3 表層土壌と堆積有機物のサンプリングと分析 ・・・・・・・ 38! 3.3! 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 3.4! 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 3.5! まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48
4. マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響 55
! 4.1! はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 4.2! 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 4.2.1 林分の概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 4.2.2 リターフォールのサンプリングと分析 ・・・・・・・・・・ 58 4.2.3 土壌と堆積有機物データ ・・・・・・・・・・・・・・ 58 4.2.4 統計解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58
! 4.3! 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 4.4! 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 4.4.1 リターフォールに含まれる養分量 ・・・・・・・・・・・ 64
4.4.2 リターフォールに含まれる養分量が土壌化学性に及ぼす影響 ・・ 68! 4.5! まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71
5. マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林の養分添加による細根成長 73
! 5.1! はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 5.2! 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 5.3! 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 5.4! 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 5.5! まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82
iv
6. マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールの質と落葉前の再転流 85
! 6.1! はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 6.2! 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 6.2.1 試料のサンプリング ・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 6.2.2 リターフォールの養分フラックスに関するデータセット ・・・・ 87 6.2.3 統計解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87! 6.3! 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 6.3.1 3林分のリターフォール中の元素濃度 ・・・・・・・・・・ 88 6.3.2 生葉と落葉の比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 6.3.3 熱帯造林木の窒素とリンのバランス ・・・・・・・・・・・ 91! 6.4! 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 6.4.1 マンギウムアカシアの窒素、リン動態と養分要求 ・・・・・・ 92 6.4.2 マンギウムアカシアリター中の窒素とリンのバランス及びその利用・ 96! 6.5! まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97
7. 総合考察 103! 7.1! 本研究の結果の総括 ・・・・・・・・・・・・・・ 103! 7.2! マンギウムアカシアの湿潤熱帯環境下における成長戦略 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107
7.3! 本研究の意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109 7.4! 成果の応用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 110 7.4.1 アグロフォレストリーを含む混交林 ・・・・・・・・・・ 110 7.4.2 単一林に残る問題とその改善策 ・・・・・・・・・・・・ 111! 7.5! 今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112
要旨 115謝辞 119引用文献 121
v
図目次
1.1 本論文の構成
2.1 熱帯造林木の地上部バイオマスと窒素、リン蓄積量との関係
2.2 熱帯造林木の地上部バイオマス中の窒素及びリン利用効率(log10変換後)
2.3 熱帯造林地の表層土壌の全窒素、可給態リン濃度と地上部バイオマスの窒素、リン利用
効率との関係
2.4 熱帯造林木の葉バイオマスと葉中の窒素、リン蓄積量との関係
2.5 熱帯造林木の葉以外の地上部バイオマスとその窒素、リン蓄積量との関係
3.1 試験地の位置
3.2 サンダカンの月平均降水量と平均気温
3.3a 有機炭素、全窒素の堆積有機物中含有量と表層土壌濃度の4樹種間での違い
3.3b 堆積有機物中のカリウム含有量と表層土壌の交換性カリウム濃度、および土壌pH (H2O)
の4樹種間での違い
3.4 堆積有機物中の養分含有量と表層土壌(0-5 cm)中の養分濃度との関係
4.1 各プロットの状況
4.2 3林分におけるリターフォール5画分中の年養分供給量
4.3 測定期間中の降水量と、リターフォールから供給される炭素、窒素、リン量の月変化
4.4 3林分におけるリターフォールから供給される養分量、堆積有機物中の養分含有量、表
層土壌(0-5 cm)の養分濃度
5.1 イングロースコア試験
5.2 表層土壌中の有機物量(表2.3より算出)と、対照区における細根生産量(n = 6)
5.3 窒素とリン添加に対する3樹種のイングロースコア内での細根成長
5.4 窒素とリン添加に対するマンギウムアカシアの細根重量あたりの根粒数の増加
6.1 主要樹種落葉中の窒素、リン濃度およびN:Pの月変化と測定期間中の月降水量
6.2 熱帯造林木のリターフォール中のリンと窒素量との関係
6.3 窒素固定木(n = 24)のリターフォールのN:P比の頻度分布
vi
7.1 熱帯造林木の年平均バイオマス成長量と窒素、リン利用効率との関係
7.2 熱帯造林木の地上部バイオマス中の年間窒素蓄積量およびリン蓄積量
vii
表目次
1.1 2005年の造林地面積(FAO 2006)
1.2 マンギウムアカシア造林区と対照区の土壌を比較した研究事例
2.1 窒素及びリン利用効率に対する土壌要因と森林グループの影響
2.2 熱帯造林木の葉の窒素、リン濃度およびN:P比
3.1 堆積有機物と土壌サンプリングプロットの詳細
3.2 各種人工林の堆積有機物量とその養分含有量
3.3 各種人工林の表層土壌の理化学性
3.4 2試験地4樹種を要因とした、土壌パラメータへの二元配置分散分析の結果
3.5 2試験地4樹種を要因とした、堆積有機物パラメータへの二元配置分散分析の結果
4.1 リターフォール測定をした3プロットの林分概況
4.2 3年間の年平均リターフォール量と年平均養分供給量及び、養分供給量への林分および
測定年の影響
4.3 本研究と文献値から得られた3樹種のリターフォール量と養分供給量
4.4 測定期間中の胸高断面積成長
4.5 測定期間中の残存木の個体成長
5.1 イングロースコア埋設時土壌中の細根中の窒素濃度
5.2 GLMを用いた、N、P添加に伴う細根成長のモデル選択結果
5.3 GLMを用いた、N、P添加に伴うマンギウムアカシアの根粒数のモデル選択結果
6.1 3樹種のリターフォール各画分中の主要成分の加重平均濃度、N:P比および落葉の養分
利用効率(Vitousek 1982)
6.2 生葉と落葉の主要成分濃度と落葉/生葉比
6.3 本研究と文献値から得られた3樹種のリターフォール中のN:P比
7.1 年平均バイオマス成長量と窒素、リン利用効率とのSMA回帰パラメータおよび検定
viii
付図目次
3.1 ボルネオ島北中部の降水量の分布(Walsh and Newbery 1999)
3.2 Gum Gum試験地の土壌断面 (フープパイン林)
3.3 Kolapis A試験地の土壌断面 (マンギウムアカシア林)
3.4 Segaliud-Lokan試験地の土壌断面 (ファルカタ林)
付表目次2.1 熱帯造林木の地上部バイオマスと養分蓄積量および土壌化学性
3.1 土壌断面の理化学性
4.1 Kabili-Sepilok保護林内の3タイプの一次林 (Dent et al. 2006) とGum Gum試験地(付図
3.2)との土壌物理化学性の比較
4.2 リターフォール画分毎の養分供給量に対する、林分、年、各林分にネストしたリター
フォール画分を要因とした反復測定分散分析の結果
6.1 熱帯造林地のリターフォールからの養分供給量
ix
本研究を構成する公表論文
本研究の一部はすでに印刷公表された下記の論文により構成されている。
第3章
Inagaki M, Titin J (2009) Evaluation of site environments for agroforestry production In: Gotoh, T., Yokota, Y. (eds), Development of agroforestry technology for the rehabilitation of tropical forests. JIRCAS working report 60, Japan International Research Center for Agricultural Sciences, Tsukuba, Japan 26–31.
第4章
Inagaki M, Kamo K, Titin J, Jamalung L, Lapongan J, Miura S (2010) Nutrient dynamics through fine litterfall in three plantations in Sabah, Malaysia, in relation to nutrient supply to surface soil. Nutr. Cycl. Agroecosyst. 88(3):381–395. doi:10.1007/s10705-010-9364-6.
第5章
Inagaki M, Inagaki Y, Kamo K, Titin J (2009) Fine-root production in response to nutrient application at three forest plantations in Sabah, Malaysia: higher nitrogen and phosphorus demand by Acacia mangium. J. Forest Res. 14(3):178–182. doi:10.1007/s10310-009-0113-0
第6章
Inagaki M, Kamo K, Titin J, Jamalung L, Lapongan J, Miura, S (2011) Nitrogen and phosphorus retranslocation and N:P ratios of litterfall in three tropical plantations: Luxurious nitrogen and efficient phosphorus use by Acacia mangium. Plant Soil 341(1/2):295–307. doi:10.1007/s11104-010-0644-3
第7章
Inagaki M, Ishizuka S (2011) Ecological impact on nitrogen and phosphorus cycling of a widespread fast-growing leguminous tropical forest plantation tree species, Acacia mangium. Diversity 3(4):712-720. doi:10.3390/d3040712
x
第1章 序論
1.1 研究の背景
20世紀後半から続く、広大な面積の熱帯林の伐採によって、熱帯林のバイオマス資源の減少
のみならず、熱帯林生態系の大規模な破壊、分断化、貴重な遺伝子資源の減少が大きな問題と
なっている。熱帯林面積は、1990–2000年にかけて830万haという膨大な面積が毎年減少した。
2000年代に入り多少の緩和はあったものの、毎年520万haずつ純減し、現在も留まるところを知
らない(FAO 2010)。第2次世界大戦後、熱帯林資源の開発が始まった当初は、熱帯林は、そ
の成長量と蓄積の大きさから、容易に再生されると考えられ、安易に伐採が行われていた。と
ころが、それまで困難であった熱帯林の生態学的研究が1960年代頃から発展するにつれ、熱帯
の土壌は一般的に貧栄養で(Sanchez 1976)、多くの養分が長い間の森林形成を経て樹体内に
蓄積されており(Jordan 1985)、また天然生湿潤熱帯低地林の林冠木を構成するような樹種は
個体数密度が非常に低く結実間隔が長いため、伐採が種子の供給と実生の生産を大きく阻害す
ることがあきらかになってきた。そのため、熱帯林は伐採に対して非常に脆弱で、林冠木の再
生は非常に困難であることがあきらかになってきた。さらに、熱帯林の開発と減少は、オイル
パームをはじめとする商品作物の作付け、気候変動に起因した山火事、伝統的でない焼き畑、
土地所有の法的権利のあいまいさや法律の不適切な運用(特に違法伐採)など、さまざまな国
際的、社会経済的事情が絡んで、最早コントロールが非常に難しい状況になっている。
天然林の伐採が進む一方で、持続的な木材供給やパルプ供給を目標とした熱帯造林も、イン
ドやアフリカなど欧米の旧植民地地域を足がかりに20世紀後半からさかんに行われるように
なった。世界の人工林面積は、択伐林の再造林地を含め、2010年時点で全森林面積の7%であ
る2億6400万haと見積もられており(表1.1; FAO 2010)、アジア地域がその半分近くを占める。
外来の早生樹は、早期のバイオマス資源の回復という目的に適していることから、広い面積で
造林されている。南米では造林樹種の90%以上が外来種であり、早生樹造林は一定の成功を収
めている。ところが、単一樹種の早生樹人工林は、病虫害によるダメージを受けやすい
(Cossalter and Pye-Smiths 2003)、生物の多様性が低い(Lugo 1997; Cossalter and Pye-Smiths
2003)、水や養分といった資源を枯渇させやすい(Fölster and Khanna 1997; Yamashita et al.
2008)といった問題点が指摘されている。それぞれの問題点は、比較の対象を何にするかに
よって、早生樹人工林に正負両面の評価を与えることができる。しかし、天然生一次林と比べ
第1章 序論
1
ると、さまざまな生態系サービスの機能が劣ることは確かである。そのような問題を抱えつ
つ、近年は、地球温暖化問題対応のため、熱帯人工林の持つ役割が変化しつつある。例えば、
Clean Development Mechanism (CDM)では、炭素排出量の取引に熱帯人工林の新規植林による
炭素固定量が利用されるようになっている。また、Reducing Emissions from Deforestation and
Forest Degradation plus(REDD+)の枠組み制定の中においても、いかにして現存の熱帯林を維
持、管理、増加させるかという視点から植林活動は大きな役割を果たし、あらためてさまざま
な熱帯林の成長や機能の解明が必要とされている。
各種造林樹種の中でも、オーストラリアやニューギニア島原産のマンギウムアカシア(Acacia
mangium Willd.)はユーカリ類と並んで、湿潤熱帯アジアでの代表的な早生樹造林木の一つであ
る。本樹種だけで、全世界で210万ha植えられており(FAO 2006)、アフリカや中南米において
も造林樹種として利用されている(CAB International 2005)。この値は、アカシア全体で900万
ha、ユーカリ類全体で1300万ha造林されている中、単一樹種ではきわだって広面積で造林され
ている(表1.1)。本研究を行ったマレーシアサバ州においても、1960年代に導入されてから、
2003年までに10万ha以上造林されている(Sabah Forestry Department 2005)。本樹種の特徴とし
て、1)早生樹であり伐期が極めて短い、2)マメ科であるため窒素固定を行う、3)荒廃地
や貧栄養な場所でも生育することが可能(Srivastava 1993; Norisada et al. 2005; Yang et al. 2009)
といった点が挙げられる。さらに、その生育の良さから、人工林近隣の天然林や、山火事の跡
地などに容易に侵入することが問題になっている(Osunkoya et al. 2005)。この種においても、
ユーカリ類と並んで単一樹種人工林が持つ問題点が指摘されている。さらに、環境面では、窒
素固定によって窒素の可給性が高まり、低分子有機酸の生成や無機化の促進による土壌の酸性
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
2
表1.1 2005年の造林地面積 (FAO 2006ほか)Table 1.1 Area of planted forest in the world
土地利用 (million ha)2000-2010年の毎年の森林純減 5.2
アカシア造林地 8.9 (対象31カ国)ユーカリ造林地 13 (対象31カ国)マツ造林地 55 (対象31カ国)ポプラ造林地 9.2 (対象31カ国)
人工林 141 (対象61カ国)天然生林の補植地を含む全造林地 271 (アジアが49%)全森林面積 3,952日本の陸地面積 37.8全陸地面積 12,081
化(Majalap 1999)、およびCO2の298倍の強さを持つ温室効果ガスであるN2O、およびNO放出
の増大が指摘されている(Arai et al. 2008; Konda et al. 2010; Mori et al. 2010)。さらに、対流圏
で安定なN2Oは、成層圏ではNO同様にNOxガスに変化するため、他の人為生成のフロンガス規
制がなされるようになって以降、オゾン層破壊ガスとして21世紀最大の要因になると考えられ
ている(Ravishankara et al. 2009)。
一斉林の問題とは別に、マンギウムアカシアの樹種特性として荒廃地の土壌改良効果が大き
いという特徴がある(Norisada et al. 2005; Yang et al. 2009)。混交林(Laclau et al. 2008)やアグ
ロフォレストリー造成の際の他の植栽種への成長促進効果など多目的樹種としての活用が期待
されている(Kamo et al. 2002; Abdu et al. 2008; Yang et al. 2009)。単一樹種人工林をアグロフォ
レストリーを含む混交林へと転換する試みが、近年様々なプロジェクトにおいて行われている
(JIRCAS 2007; Abdu et al. 2008; Sakai et al. 2009)。林床への被陰効果のみならず施肥効果や土
壌改良効果を考える場合においては、この樹種の養分循環特性の理解を深めることによって、
より効果的な活用が期待できる。単一樹種人工林も、今後、CDM植林などにより造林面積が増
えることは自明であり。養分循環特性の理解によって、問題の軽減のために必要な情報を提供
することが期待できる。
このように、マンギウムアカシア林の利用は、問題を抱えつつも多くの機能面から期待され
ており、その養分循環特性の理解を深めることによって、現在の時代背景から、今後の持続的
な熱帯造林を推進する上で指針となる情報をもたらすことが期待できる。
1.2 研究小史
1.2.1 マンギウムアカシアの生理生態学的特徴
マンギウムアカシアはマメ科の早生樹であり、しかもその成長のピークを極めて早い樹齢で
迎える。本研究を行ったマレーシアサバ州サンダカン近郊では、年成長のピークが4.5年目にあ
り(Kamo and Jamalung 2005)、インドネシアの報告でも4–6年とされている(Heriansyah et al.
2007)。湿潤熱帯環境下でのマンギウムアカシアの早生樹としての特性は、最大光合成能が他
樹種より大きいこと(Maruyama et al. 1997)、蒸発散量が大きく利用水分あたりの乾物生産効
率が低いこと(Sá et al. 1999)や材中の含水率が極めて高いことから(Yamamoto et al. 2003)、
通水機構による光合成能への水分制限が少ないことなど、湿潤かつ明るい条件下において光合
成の能力を有効に発揮できる特徴から裏付けられている。そのような明るい場所での成長の良
第1章 序論
3
さは、自然植生への侵入にも特徴付けられている。他の外来のマメ科植物にみられるようにマ
ンギウムアカシアも初期成長が速く他樹種との競争に強いことから山火事の跡地においてたや
すく優占していくが、強光下で無い場合は競争力は強くない(Osunkoya et al. 2005)。養分利用
については、他樹種の造林が困難な砂質の貧栄養土壌に生育が可能であり、荒廃地を他樹種の
造林に好適な環境に改変する効果が期待されている(Norisada et al. 2005; Yang et al. 2009)。マ
ンギウムアカシアは、共生した根粒菌が窒素固定を行う。地上部バイオマス中及び地上部地下
部のリターを加えた総量において、窒素量全体の50%前後が根粒菌によって固定された窒素で
あるという報告が多い(Galiana et al. 2002; Bouillet et al. 2008b; Mercado et al. 2011)。Mercado et
al.(2011)はフィリピンの12年生のマンギウムアカシア林で、地上部バイオマス中に存在する
1994 kg N ha-1 の窒素の内、1136 kg N ha-1 が窒素固定によって得られた窒素であり、総量では年
平均で100 kg N ha-1 以上が窒素固定によるものであることを報告している。共生微生物との関
係では、根粒菌の他に、外生菌根菌、アーバスキュラ菌根菌、菌根菌と共生するシュードモナ
ス属のような細菌と複雑な共生関係を持つことが報告されている(Aggangan et al. 2010)。
一般に、マメ科早生樹は窒素固定によって獲得できる窒素に比べて、リンが成長の制限要因
になると考えられている。東南アジアにアカシア造林を推進しているオーストラリア連邦科学
産業研究機構(CSIRO)のHarwood(2011)は、アカシア造林とその研究に関するレビューの
中で、既存のアカシア造林は貧栄養な荒廃地に低資源投入の林業が行われているため経済的価
値が低いと考えられていたが、多くの場合制限となりがちなリン肥料を主体とした施肥、およ
び適切な施業を行うことによって、より高付加価値な製材品を目的とした林業を行うことが出
来ると記している。過去に施肥試験をおこなった研究例では、アカシア造林地ではリンが主要
な成長制限要因であったと結論づけられた(Kadir et al. 1988; Majid and Paudyal 1999; Liu et al.
2002)。しかし、それらの研究では窒素やカリウム施肥によっても有意に成長が促進されてい
た。多重比較が行われていない例や(Kadir et al. 1988)一元配置の分析により元素毎の影響解
析が不十分である例(Majid and Paudyal 1999)があり、リンのみが単独で大きな制限要因であ
るとされた研究例は見られなかった。むしろ、窒素施肥がより成長を促進した事例も報告され
ている(Paudyal and Majid 2000)。マンギウムアカシアのリン要求に関して荒廃地造林での適
性を理解するために、実験室での生理学的知見をもとに林地で起こる結果を解釈していくこと
が重要である。
マンギウムアカシアのリン利用については栽培試験によって、低リン下においてリン利用効
率が上昇するという報告がなされている(Vadez et al. 1995; Ribet and Drevon 1996; Nguyen et al.
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
4
2006)。通常窒素固定を行う植物は根粒の維持のために、窒素固定を行わない植物と比較して
リンをより多く必要とすると考えられている。しかし、Vitousek et al.(2002)の総説によれ
ば、1)窒素固定植物は窒素固定の有無にかかわらず、本質的に窒素の要求が高いこと、2)
窒素固定植物によるリンの要求は、農業作物と天然の草本や樹木とで異なり、天然の草本や樹
木は根粒を維持するためにリンをそれほど多く必要としないことが記されている。1)につい
ては、葉中の窒素濃度の比較で窒素固定植物は常に窒素濃度が高かったことから、窒素固定植
物は「窒素要求性の生活形態」をしていると表現されている(McKey 1994)。2)について
は、本研究で取り上げるマンギウムアカシアの苗を使った生理的な実験例が紹介されており
(Ribet and Drevon 1996)、窒素固定による窒素源と尿素を添加による窒素源で育てた苗のあい
だでバイオマス量とバイオマス中のリン含有量に変化が無いことが示された。したがってマン
ギウムアカシアは、農業で利用される草本でみられるような根粒との共生コストによる高いリ
ン要求を示さないことが示唆されている。
また、最近の研究では、熱帯の窒素固定植物が他の種よりも、根圏細胞外酵素の生産により
高いリン獲得能力を持っていることを示す事例が報告されている。Houlton et al.(2008)は文献
調査から、酸性フォスファターゼ活性が窒素固定植物の根圏土壌で有意に高いことを示した。
実際に、温帯、熱帯を含んだ造林地土壌で、窒素固定木の林分が比較林分よりフォスファター
ゼ活性が高い事例が紹介されており(Khanna 1997)、マンギウムアカシアの苗木および実際の
林地の土壌で、比較樹種より高いフォスファターゼ活性が確認されている(小島 2004; Lee et
al. 2006)。マンギウムアカシアの苗木試験では、さらにリン不足条件下でリントランスポー
ターmRNAの増加が確認されている(小島 2004)。これらのことから、マンギウムアカシアの
リン利用は効率的に行われていることが予想されるが、熱帯人工林の窒素固定樹木下のリン循
環を詳しく測定した研究事例は限られている(Zou 1995; Binkley et al. 2000; Siddique et al.
2008)。リンを欠乏させた条件で生育させた砂耕栽培試験の結果から、マンギウムアカシア、
およびファルカタ(Falcataria moluccana)ではリン欠乏耐性があることが明らかにされている
(小島 2004; 村松・助野 2009)。しかし、窒素欠乏条件下では、成長が大きく制限される
結果となった(村松・助野 2009)。
以上のような性質から、マンギウムアカシアは窒素固定による多量の窒素の取り込みと、リ
ン制限下での卓越したリン獲得能、および少量のリンでの十分な光合成生産が示唆されてお
り、実際の造林地でリンが従来考えられてきたような制限要因であったのかという疑問に対し
て十分な検証が必要である。
第1章 序論
5
1.2.2 マンギウムアカシア造林が土壌に及ぼす影響
植物は光合成によって炭素を同化、蓄積し、リターフォール(枯死有機物)を介して土壌の
有機物含量を高める。堆積有機物層を含む土壌中の有機物は大半が短期間で分解され、一部は
溶存有機炭素(DOC)となる。有機酸のような低分子溶存有機炭素は、数時間という単位でそ
のほとんどが微生物呼吸によるCO2となって大気に放出されるが(van Hees et al. 2005; Fujii et al.
2010)、DOC中の難分解な成分が土壌中に長期間留まる。したがって、植物生産は土壌の肥沃
度によって規定されるが、逆に生産の枯死分であるリターフォールの供給が、表層土壌の性質
を改変する大きな要因ともなる。土壌に留まることが出来る有機物の量は、土壌母材や有機物
の性質によって決定される。人為的な土地利用改変によって植生の状態は変化し、供給される
有機物の量と質も変化する。造林にともなって土壌に蓄積される有機物と、有機物中に含まれ
る養分は、土地利用の履歴、土壌の性質、気候区分、造林後の期間などさまざまな要因によっ
て影響される(Fisher and Binkley 2000; Sakai et al. 2010; Wei et al. 2010)。熱帯人工林のリター
フォールは、荒廃した土壌に養分を循環させる過程として重要であるが、単一樹種の人工林の
リターフォール生産量は、天然生の一次林や二次林より少ない場合が多い(Brasell et al. 1980;
Binkley et al. 1997; Tang et al. 2010)。しかし、マンギウムアカシアの場合は特に年生産速度が大
きいこと(FAO 2006)と窒素固定を行うことから、表層土壌への有機物および窒素供給量が大
きいことが予想される。
マンギウムアカシア造林による土壌への影響に関する研究は、過去10年間に飛躍的に報告例
が増えた(表1.2)。これらの研究例のうちの多くが、劣化二次林などの対照林分との比較で、
マンギウムアカシア林の土壌では有機物量と、全窒素濃度の有意な増加を示していた(Fisher
1995; Majalap 1999; Garay et al. 2004; Jang et al. 2004; Xue et al. 2005; Kimaro et al. 2007; Abdu et al.
2008; Macedo et al. 2008; Kunhamu et al. 2009; Wang et al. 2010)。さらに、有機態の窒素源の増加
に伴い、硝化速度もマンギウムアカシア林下の土壌で有意に大きかったという報告がなされて
いる(Bernhard-Reverasat 1996; Majalap 1999; Li et al. 2001; Kimaro et al. 2007; Wang et al.
2010)。Vitousek et al. (2002)は、熱帯生態系の窒素循環において、窒素固定による移入経路
の重要性を強調しており、リターフォールによる多量の窒素供給と、高温による分解の促進に
よって窒素可給性が高まっていることが示唆されている。年 150 kg N ha-1 以上のリターフォー
ルによる窒素供給(Bernhard-Reversat 1996; Majalap 1999)や、100 kg N ha-1 以上の堆積有機物中
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
6
第1章 序論
7
表1.2 マンギウムアカシア造林区と対照区の土壌とを比較した研究事例
表1.2 マンギウムアカシア造林区と対照区の土壌とを比較した研究事例
表1.2 マンギウムアカシア造林区と対照区の土壌とを比較した研究事例
表1.2 マンギウムアカシア造林区と対照区の土壌とを比較した研究事例
表1.2 マンギウムアカシア造林区と対照区の土壌とを比較した研究事例
表1.2 マンギウムアカシア造林区と対照区の土壌とを比較した研究事例
Tab
le 1
.2 C
ase
stu
die
s m
easu
rin
g e
ffec
ts o
f A
caci
a m
an
giu
m p
lan
tati
on
s o
n s
oil
s co
mp
ared
wit
h c
on
tro
lsT
able
1.2
Cas
e st
ud
ies
mea
suri
ng
eff
ects
of
Aca
cia
ma
ng
ium
pla
nta
tio
ns
on
so
ils
com
par
ed w
ith
co
ntr
ols
Tab
le 1
.2 C
ase
stu
die
s m
easu
rin
g e
ffec
ts o
f A
caci
a m
an
giu
m p
lan
tati
on
s o
n s
oil
s co
mp
ared
wit
h c
on
tro
lsT
able
1.2
Cas
e st
ud
ies
mea
suri
ng
eff
ects
of
Aca
cia
ma
ng
ium
pla
nta
tio
ns
on
so
ils
com
par
ed w
ith
co
ntr
ols
Tab
le 1
.2 C
ase
stu
die
s m
easu
rin
g e
ffec
ts o
f A
caci
a m
an
giu
m p
lan
tati
on
s o
n s
oil
s co
mp
ared
wit
h c
on
tro
lsT
able
1.2
Cas
e st
ud
ies
mea
suri
ng
eff
ects
of
Aca
cia
ma
ng
ium
pla
nta
tio
ns
on
so
ils
com
par
ed w
ith
co
ntr
ols
Stu
dy
are
aO
bje
ctiv
e sp
ecei
sS
tan
d a
ge
Co
mp
are
d s
ites
Eff
ects
on
so
ils
Ref
eren
ces
La
Sil
va,
Co
sta
Ric
a
A.
ma
ng
ium
48
in
dig
eno
us,
2 o
ther
ex
oti
c sp
ecie
s
and
co
ntr
ol
(pas
ture
)
C a
nd
N c
on
cen
trat
ion
s w
ere
sig
nif
ican
tly
in
crea
sed
by
aff
ore
stat
ion
an
d o
nly
soil
s in
A.
ma
ng
ium
sit
e in
crea
sed
fo
r b
oth
C a
nd
N.
Fis
her
19
95
Po
inte
No
ire,
Co
ng
o
A.
ma
ng
ium
an
d A
.
au
ricu
lifo
rmis
5-1
0E
uca
lyp
tus,
Pin
us
and
Sav
ann
aN
co
nce
ntr
atio
n i
ncr
ease
d s
ign
ific
antl
y i
n o
lder
Aca
cia
stan
ds
and
N
min
eral
izat
ion
was
hig
her
th
an i
n S
avan
na.
Ber
nh
ard
-Rev
ersa
t 1
99
6
Sab
ah,
Mal
aysi
a
A.
ma
ng
ium
7-1
0S
eco
nd
ary
fo
rest
C a
nd
N c
on
ten
ts w
ere
hig
her
in
su
rfac
e so
ils
of
Aca
cia
and
N m
iner
aliz
atio
n
was
lar
ger
th
an t
hat
in
sec
on
dar
y f
ore
sts.
Maj
alap
19
99
Gu
ang
do
ng
,
Ch
ina
A.
ma
ng
ium
an
d A
.
au
ricu
lifo
rmis
13
Eu
caly
ptu
s ci
trio
do
ra,
Pin
us
elli
oti
ii
and
Sch
ima
su
per
ba
N m
iner
aliz
atio
n a
nd
nit
rifi
cati
on
is
larg
e in
Aca
cia
site
s.L
i et
al.
20
01
Lin
har
es,
Bra
zil
A.
ma
ng
ium
7E
uca
lyp
tus
gra
nd
isN
co
nte
nt
in t
he
fore
st f
loo
r an
d s
oil
fin
e fr
acti
on
was
hig
her
th
an i
n
Eu
caly
ptu
s.
Gar
ay e
t al
. 2
00
4
Mak
ilin
g,
the
Ph
ilip
pin
es
A.
ma
ng
ium
an
d A
.
au
ricu
lifo
rmis
9-1
0Im
per
ata
gra
ss l
and
So
il N
an
d e
nzy
me
acti
vit
ies
wer
e h
igh
er i
n A
caci
a si
tes.
Jan
g e
t al
. 2
00
4
Gu
and
un
g,
Ch
ina
A.
ma
ng
ium
8E
uca
lyp
tus
uro
ph
ylla
an
d 3
co
nif
ers
N a
mo
un
t in
fo
rest
flo
or
was
hig
hes
t an
d N
co
nce
ntr
atio
n i
n t
he
soil
was
resu
lted
in
to
p c
lass
.
Xu
e et
al.
20
05
Mo
rog
oro
,
Tan
zan
ia
A.
ma
ng
ium
5G
liri
cid
ia s
epiu
m,
3 A
caci
as
and
con
tro
ls (
nat
ura
l fa
llo
w a
nd
con
tin
uo
us
cro
pp
ing
)
All
ele
men
ts i
n t
op
so
il w
ere
hig
her
th
an s
oil
s u
nd
er o
ther
tre
es a
nd
co
ntr
ols
exce
pt
ino
rgan
ic N
. In
org
anic
N u
nd
er A
caci
a w
as h
igh
er t
han
un
der
co
ntr
ols
.
Kim
aro
et
al.
20
07
Per
ak,
Mal
aysi
a
A.
ma
ng
ium
wit
h
inte
rcro
pp
ing
Dip
tero
carp
s
17
*se
con
dar
y f
ore
st w
ith
in
terc
rop
pin
g
Dip
tero
carp
s an
d n
atu
ral
fore
st
Th
e S
oil
Fer
tili
ty I
nd
ex o
f A
caci
a so
il w
as h
igh
er t
han
co
ntr
ol,
ev
en t
ho
ug
h l
ess
than
nat
ura
l fo
rest
.**
Ab
du
et
al.
20
08
An
gra
do
s
Rei
s, B
razi
l
7 l
egu
mes
in
clu
din
g A
.
ma
ng
ium
13
nat
ive
fore
st a
nd
def
ore
sted
lan
dC
an
d N
co
nce
ntr
atio
ns
in s
oil
s w
ere
equ
ival
ent
tho
se i
n n
atu
ral
fore
sts
and
hig
her
th
an i
n d
efo
rest
ed l
and
.
Mac
edo
et
al.
20
08
So
uth
Su
mat
ra,
Ind
on
esia
A.
ma
ng
ium
8se
con
dar
y f
ore
st a
nd
co
ntr
ol
(Im
per
ata
gra
ssla
nd
)
Mo
st o
f p
aram
eter
s w
ere
sim
ilar
to
in
sec
on
dar
y f
ore
st a
nd
Aca
cia
fore
sts
con
tain
s sm
alle
r b
ases
th
an t
he
gra
ssla
nd
.
Yam
ash
ita
et a
l. 2
00
8
Ker
ala,
In
dia
A.
ma
ng
ium
9tr
eele
ss l
and
C a
nd
N c
on
cen
trat
ion
s in
so
ils
(0-1
5 c
m)
wer
e si
gn
ific
antl
y h
igh
er t
han
in
con
tro
l.
Ku
nh
amu
et
al.
20
09
Gu
and
un
g,
Ch
ina
A.
ma
ng
ium
an
d A
.
au
ricu
lifo
rmis
23
2 p
lan
tati
on
s, a
nat
ive
fore
st,
a
seco
nd
ary
sh
rub
lan
d
C a
nd
N c
on
cen
trat
ion
s in
to
p s
oil
s (0
-5 c
m)
wer
e h
igh
er u
nd
er A
caci
as t
han
com
par
ed s
ites
ex
cep
t sh
rub
lan
d.
Wan
g e
t al
. 2
01
0
* T
he
nu
mb
er w
as t
he
age
for
the
A.
ma
ng
ium
an
d i
nte
rcro
pp
ing
wer
e ex
ecu
ted
aft
er 2
yea
rs o
f A
caci
a p
lan
tin
g*
Th
e n
um
ber
was
th
e ag
e fo
r th
e A
. m
an
giu
m a
nd
in
terc
rop
pin
g w
ere
exec
ute
d a
fter
2 y
ears
of
Aca
cia
pla
nti
ng
* T
he
nu
mb
er w
as t
he
age
for
the
A.
ma
ng
ium
an
d i
nte
rcro
pp
ing
wer
e ex
ecu
ted
aft
er 2
yea
rs o
f A
caci
a p
lan
tin
g*
Th
e n
um
ber
was
th
e ag
e fo
r th
e A
. m
an
giu
m a
nd
in
terc
rop
pin
g w
ere
exec
ute
d a
fter
2 y
ears
of
Aca
cia
pla
nti
ng
* T
he
nu
mb
er w
as t
he
age
for
the
A.
ma
ng
ium
an
d i
nte
rcro
pp
ing
wer
e ex
ecu
ted
aft
er 2
yea
rs o
f A
caci
a p
lan
tin
g*
Th
e n
um
ber
was
th
e ag
e fo
r th
e A
. m
an
giu
m a
nd
in
terc
rop
pin
g w
ere
exec
ute
d a
fter
2 y
ears
of
Aca
cia
pla
nti
ng
**
Th
e S
oil
Fer
tili
ty I
nd
ex w
as p
rop
ose
d b
y M
ora
n e
t al
. (2
00
0)
**
Th
e S
oil
Fer
tili
ty I
nd
ex w
as p
rop
ose
d b
y M
ora
n e
t al
. (2
00
0)
**
Th
e S
oil
Fer
tili
ty I
nd
ex w
as p
rop
ose
d b
y M
ora
n e
t al
. (2
00
0)
**
Th
e S
oil
Fer
tili
ty I
nd
ex w
as p
rop
ose
d b
y M
ora
n e
t al
. (2
00
0)
**
Th
e S
oil
Fer
tili
ty I
nd
ex w
as p
rop
ose
d b
y M
ora
n e
t al
. (2
00
0)
**
Th
e S
oil
Fer
tili
ty I
nd
ex w
as p
rop
ose
d b
y M
ora
n e
t al
. (2
00
0)
の窒素量(Xue et al. 2005; Macedo et al. 2008)によって、対照区よりも表層土壌で窒素濃度や硝
化速度が大きい結果になっていたと考えられた。Garay et al.(2004)は、さらに、ミミズなどの
生物活動によって生成した有機物、特に窒素をより多く含む団粒の割合が、マンギウムアカシ
ア林の土壌でユーカリ林の土壌より高いことを示した。Abdu et al.(2008)は、Moran et al.
(2000)によって提唱された土壌肥沃度指数(SFI)を用いて、マンギウムアカシア間伐地に植
栽したフタバガキ林では近隣の二次林よりもSFIが高いことを示した。このように、マンギウム
アカシア林の造林によって有機物供給に伴う土壌の窒素濃度や諸性質の改善が、様々な事例研
究から示されている。
窒素固定を行う早生樹は、混交林やアグロフォレストリーなど、隣接して植える種の成長を
促進するための肥料木の目的でも利用されており、Forrester et al. (2006)による総説に詳し
い。モリシマアカシア(Acacia mernsii)を、ユーカリなどのリターフォール中の成分濃度の低
い樹木と混交することによって、林分全体でのバイオマス量を、ユーカリの一斉林と比較して
2倍程度に増加させる効果が報告されている(Forrester et al. 2004)。
このような植生による土壌改良効果に関する研究例の中で、熱帯人工林でリターフォールと
堆積有機物、および土壌との関係を詳細に調べた例は多くはない。マンギウムアカシア林の物
質循環を詳細に検討した研究事例では、マンギウムアカシアから年間 12 Mg ha-1 供給されるリ
ターフォールが厚い堆積有機物層を形成し、表層土壌の有機物量とそれに伴う窒素量を高めた
(Majalap 1999)。一方、そこから生産されるDOCが土壌中で吸着、無機化される過程で酸性
化が促進されたこと、林木の成長に伴い塩基類が土壌の深い層から浅い層に移動したことが報
告されている。また、土地利用と土壌に関する研究事例では、インドネシア、スマトラにおけ
るマンギウムアカシア人工林と草地において、地上部に蓄積されたカルシウム量と土壌30cmま
での交換性カルシウム量を比較したところ、合計値はほぼ同じであるのに、マンギウムアカシ
ア人工林では約7割が地上部に存在していた(Yamashita et al. 2008)。窒素以外の鉱物由来元
素は、造林によって生態系への移入量が大きく増加する訳ではない。しかし、人為的な開発に
よって表層の有機物が失われた荒廃地や、表層のA層が薄い熱帯土壌で肥料木による他樹種へ
の成長促進効果を考える場合、表層土壌への有機物及び養分集積効果は、草本や若齢木の根圏
範囲である表層土壌の養分可給性を改善し、初期成長を促進するのに重要であると言える。
窒素固定早生樹のリターフォールを通じた林床への窒素供給量は、高いところで年 200 kg N
ha-1 以上であることが、熱帯域の複数地点での研究例から報告されている(Binkley et al. 1992;
Swamy and Proctor 1997; Jamaludheen and Kumar 1999)。しかし、マンギウムアカシアのリター
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
8
フォールに関するデータは少なく、窒素以外の元素の移動量まで測定している研究例は限られ
ている(Majalap 1999; Hardiyanto and Wicaksono 2008; Kunhamu et al. 2009)。特に、リンの内部
循環については荒廃地造林におけるアカシアの成長を理解する上で重要であると考えられる。
マンギウムアカシア林のリターフォールによるリン供給量は、1.6–3.3 kg P ha-1 と窒素と比較し
て少なく(Majalap 1999; Hardiyanto and Wicaksono 2008; Kunhamu et al. 2009)、落葉前のリンの
再吸収が、窒素の再吸収と比べて卓越していたことが報告されている(Kadir et al. 1998; Björck
2002; Hardiyanto and Wicaksono 2008)。マンギウムアカシア造林による土壌中の可給態リンに
ついて焦点を当てた研究例はほとんど存在しないが、熱帯における他の窒素固定木の造林地で
は、造林後に土壌中の易分解性有機態リンが高い例(Zou et al. 1995; Binkley et al. 2000)や、レ
ジンに吸着されるような可溶性無機態リンが低い例(Binkley et al. 2000; Siddique et al. 2008)な
どが報告されており、リン可給性の定義の違いにより研究事例で結論が大きく異なる。
以上に述べたように、マンギウムアカシア造林に伴う荒廃地の土壌回復効果と、窒素以外の
元素の内部循環に対する理解を深める上で、リターフォールによって供給される養分と表層土
壌の化学性との関係を明らかにすることが重要である。
1.2.3 湿潤熱帯における窒素とリンの可給性と獲得
窒素とリンは、カリウムとともに植物の主要な養分である。どちらも植物にとって必須元素
であるが、その森林生態系への給源は大きく異なり、窒素は主に降水と窒素固定、リンは鉱物
風化が給源になっている。リンについては、初期では鉱物由来のカルシウム結合型(Appetite)
リンが優占するが、土壌の生成プロセスの進行とともに全リン量では減少傾向をたどりながら
各画分の存在割合が変わり、最終的に可給性がきわめて低いFe-Al結合型リンが優占する経過を
たどるモデルが提示されている(Walker and Syers 1976)。1960年代に行われたIBPの調査結果
は、1980年代ごろに全球的な解析が行われるようになった(例えば、Vitousek and Sanford 1986;
Vogt et al. 1986)。その結果、Walker and Syers(1976)のモデルは肯定され、一般に熱帯の風化
が進んだ土壌では、リンに対する制限が大きくなることが明らかになった。一方で熱帯の天然
生林における窒素は、特にアフリカでは胸高断面積の数割を占める(Hedin et al. 2009)マメ科
植物による窒素固定という移入経路があることと、分解による供給が大きいことによって、温
帯のような制限要因となりにくいことが1990年代の一連の研究で集約された(Matson and
Vitousek 1990; Vitousek and Howarth 1991; Martinelli et al. 1999)。様々な生成年代の土壌に成立
第1章 序論
9
する森林を比較したハワイ諸島での一連の研究では、高緯度地域と低緯度地域の比較でみられ
る窒素とリン制限の違いが、土壌生成期間の違いによって引き起こされていることが実証的に
示された(Vitousek 2004)。しかし、これは天然生の生態系を対象として様々な条件を含んだ
データに対するメタ解析の一般的な傾向を示すものであり、さらに気候帯の中での局所的な養
分欠乏の状況は異なる。たとえば、湿潤熱帯においても、標高が上がるにつれて、養分の制限
がリンから窒素に変化することが報告されている(Tanner et al. 1998; Graefe et al. 2010; Unger et
al. 2010)。また、熱帯の低地でも顕著な養分欠乏、特にリン欠乏になりやすい場所は不均一に
分布する。ブラジルのテラフィルメ(Terra Firme)やカーティンガ(Caatinga)、マレー地域の
ケランガス(Kerangas)と呼ばれる、砂質で養分保持能力の低い土壌で特にリン欠乏が起こり
やすく、概して樹高の低い森林が成立する(Cuevas and Medina 1988; 太田・久馬 2001)。
窒素とリンは、土壌中で植物に利用できる形態に変わる過程も異なっている。窒素は主とし
て有機物の無機化によって生成される土壌溶液中のアンモニウムイオンや硝酸イオンが植物に
利用される。リンについては、土壌溶液中のリン酸イオンが容易に粘土鉱物に固定されてしま
うため、土壌中の比較的分解されやすい有機、無機リン結合体から、主に共生微生物を介して
生成される酵素や酸によって分解された生成物を利用していると考えられているが、不明な点
が多い。
土壌からの養分可給性に応じて、天然林では環境に適合した森林が成立するが、人工林で期
待されるバイオマス生産を満たすためには、植物が要求する養分量と可給性のバランスが重要
となる(Attiwill and Adams 1993)。先に述べた窒素とリンの可給性に関する一般性は自然条件
の森林生態系で起こることであり、荒廃地など人為による影響が大きい場所では全ての養分が
欠乏する条件となりうる。熱帯人工林においては、可給態養分の管理が、特に貧栄養な場所に
おいてより生産性に大きく影響を及ぼす(Nykvist 1997; Zech and Drechsel 1998)。同じような
養分条件であっても養分要求の大きな樹種にとっては欠乏が起こりうるし、逆に養分要求の小
さな樹種にとっては貧栄養な場所であっても成長の制限にならない場合があり、それらは成長
の段階によっても異なる。窒素固定を行い、荒廃地における成長が可能なマンギウムアカシア
は、少なくとも窒素に対する制限が他樹種より少ない可能性がある。また、アカシア造林によ
る荒廃地の回復効果を考えるにおいて、有機物の供給のみならず、土壌からどれだけ養分を要
求し吸収するかについて考慮する必要がある。
1.2.4 熱帯の植物による窒素、リン利用の違い
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
10
生態系への給源のみならず、植物生理においても窒素とリンとでは利用される経路が異なる
が、それぞれの化学量を比較した場合に相互の関係性が示唆されている。植物の葉内で窒素が
利用される代謝経路は、主にタンパク質の合成、特に光合成の暗反応において触媒として働く
酵素、リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RubisCO)の生成におい
てである(Chapin et al. 2002; Lambers et al. 2008; Reich et al. 2009)。リンはアデノシン三リン酸
(ATP)等の核酸やヌクレオチドの生成に利用される(Matzek and Vitousek 2009)。葉重量当
たりの窒素濃度や、葉面積当たりの窒素濃度は、最大光合成能と正の相関を持っていることが
メタ解析データから全球的な傾向として証明され(Wright et al. 2004)、植物による光合成への
窒素資源の投資をモデル化する試みが深化しつつある(Hikosaka and Osone 2009)。Liebigに
よって有名になった養分最小律(Sprengel 1828)の考え方からすると、主要養分はそれぞれ独
立しており、いずれかの養分が制限を受けた場合、それ以上の成長が制限されることになる。
しかし、最近の研究では、特に熱帯地域において複数養分の制限が起こり、Liebigの考え方で
は説明できない事象が起こることが報告され始めている(Kaspari et al. 2008; Graefe et al.
2010)。さらに、葉中の窒素濃度と光合成速度との関係においても、葉中のリン濃度が関与し
ていることが文献値のメタ解析から示唆されている(Reich et al. 2009)。このように、窒素と
リンは異なる合成過程を経て代謝物質を構成するが、ATPはRubisCOとともに光合成の過程で
利用されるなど、それぞれの元素は代謝の中で交互に関係し合う。
そのような元素間の関係性を捉えるには、化学量比(stoichiometry)を用いた解析が有効であ
り、陸域生態系においてもここ10年で急速に発展した(Sterner and Elser 2002)。海洋の植物プ
ランクトン中のC:N:P比は資源となるCO2分圧と栄養塩濃度に規定されるため、常に海水中の元
素比(モル比で106:16:1)を示すことが1950年代に明らかにされている(Redfield 1958)。陸域
生態系においても、主要な化学量比が一定の値をとるのではないかという仮説が近年多くの研
究者によって試みられ、植物体や微生物バイオマスなどのコンパートメント毎に実証されてい
る。とくに最近では、植物体、特に葉のN:P比が、森林グループ毎の養分利用戦略や生育環境の
養分可給性の違いを表す重要な指標となりうることから、特に注目されている(Aerts and
Chapin 1999; Güsewell 2004)。近年、地球温暖化など全球的問題の環境影響を調べるために、
葉の生理と環境変動に対する生物圏へのフィードバックに関する世界中のデータを集約して、
化学量比の解析を試みる研究が盛んになっている(Hedin 2004)。このような研究手法の発展
には、インターネットによって、数々の文献データベースが整備されていることも大きく寄与
第1章 序論
11
している。
全球的データの解析から、自然植生の葉のN:P比は緯度と反比例の関係にあることがわかって
おり(McGroddy et al. 2004; Reich and Oleksyn 2004; Kerkhoff et al. 2005)、それらは温帯と熱帯
での気象条件の違い、植物群落を構成する属や種の違い、窒素とリンの可給性の違いが理由で
あると考えられた。熱帯林のみに焦点を当てた研究例では、N:P比に緯度は影響せず、土壌中の
リン可給性や種構成が影響していることがわかった(Townsend et al. 2007)。窒素固定を行うマ
メ科植物については、アカテツ科(Sapotaceae)に続いて高い葉のN:P比を示した。アマゾン盆
地一円で葉の養分濃度を比較した結果では、元素濃度毎に科、属、種といった植物の違いと、
土壌や気象といった立地条件の違いのそれぞれの寄与率が明らかにされている(Fyllas et al.
2009)。
また、熱帯の植物リター中のN:P比は、葉のN:P比よりも大きい値となる傾向にある
(McGroddy et al. 2004; Yuan and Chen 2009a)。これは、落葉前の再吸収が、窒素と比べて、リ
ンにおいて選択的に行われているためであったが、再吸収の度合いも葉中の濃度と同様に、植
物や土壌条件によって異なる(Hättenschwiler et al. 2008; Richardson et al. 2008; Siddique et al.
2008; Yuan and Chen 2009a)。また、植物体内での養分の分配に応じて、器官ごとに異なるN:P
比を取ることも明らかになっている(Kerkhoff et al. 2006)。しかし、植物リター中のN:P比を
包括的に研究した例は、現時点では極めて少ない(Yuan and Chen 2009b)。リターに含まれる
N:P比によってリターの分解速度は影響を受けるため(Lisanework and Michelsen 1994; Xuluc-
Tolosa et al. 2003; Güsewell and Gessner 2009)、物質循環の観点でも植物体やリターのN:P比は重
要である。
このように、植物体や落葉の窒素、リン濃度やN:P比を比較することによって、近年、様々な
植物の養分利用や異なる土壌の養分可給性への植物の応答が、より明確に理解されるように
なってきている。窒素の循環量が大きく、リンの利用効率が高いと予想されるマンギウムアカ
シアにおいても、生葉や落葉中のN:P比を比較することによって他樹種との養分利用の違いを明
示することが期待できる。
1.3 本論文の目的
本研究は、主要な熱帯造林樹種であるマンギウムアカシアが荒廃地の土壌回復に有効である
と期待されていることから、マンギウムアカシアの荒廃地における土壌回復機能を養分利用お
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
12
よびリター供給特性の面から明らかにすることを目的とする。
荒廃地では、人為的な土地利用改変等により植被や堆積有機物層が失われ、土壌有機物が分
解を受けて減少し、受食性の高い状態となっている。造林によって表層土壌が保護され、リ
ターの供給によって堆積有機物層を再生することが可能となるが、その際、供給されるリター
フォールの量およびリター中の養分含有量が、土壌回復機能の大小に影響する要因となりう
る。また、湿潤熱帯の荒廃地のような貧栄養な条件下では、養分、特に可給態リンが不足した
条件でも成長できる性質が必要である。
従って、マンギウムアカシアが荒廃地の土壌回復に有効であるならば、その養分利用特性と
して、1)養分含量の高いリターを大量に土壌に供給すること、2)リンの吸収能力が高く、
樹体内でのリン利用効率が高いこと、が予想される。
そこで本研究では、マンギウムアカシアの養分利用特性と土壌回復機能を明らかにするた
め、次の仮説を検証する。
・マンギウムアカシア林の土壌は、他樹種の林分の土壌と比べて表層土壌の養分量が多い。
・マンギウムアカシア林の土壌回復機能は、リターフォールによる大量の養分供給による。
・マンギウムアカシアは、貧栄養、特にリン不足の土壌条件下でも旺盛に成長するための養分
利用特性を有している。
1.4 本論文の試験地と構成
試験地は、マレーシアサバ州サンダカン近郊に試験的に植えられた、マンギウムアカシアを
含む各種人工林を対象とした。本試験地を選んだ理由は、1)湿潤熱帯地域にあり水ストレス
が少なく、生産量がポテンシャルに近い林分のデータを得られることが期待されること、2)
早生樹造林地では伐採されてしまうため高齢林分が残されていないが、実験林であるため比較
的高齢林分のデータが得られリターフォール生産量とそれに伴う表層土壌への養分移動量のポ
テンシャルデータが期待できること、3)ベースとなるサバ森林研究所に近く、月2回という
集約的なリターフォールの測定や、養分添加したイングロースコア法の適用といった実験的な
手法を用いることが出来ること、4)極めて近い場所に天然生林があり、土壌と植物の応答に
関する比較データが得られること、が挙げられる。
各章の構成は以下の通りである。各章間の関連性を図1.1に示した。
第2章では、伐倒試験を行って樹体内の養分量を測定した既存の研究例からマンギウムアカ
シアの養分利用効率に関するメタ解析を行なう。地上部バイオマス中の窒素及びリン利用効率
第1章 序論
13
を、土壌養分およびマンギウムアカシアの樹種特性の2つの要因から解析する。
第3章から第6章では、第2章で得られたマンギウムアカシアの窒素及びリン利用に関する
一般的傾向が、試験林分内での土壌"植物間および植物内での物質動態から土壌回復機能にど
のように反映されるかについて、個別プロセス毎に検証していく。第3章では、試験地の土壌
の概況を示し、各種人工林の堆積有機物及び表層土壌の理化学性の関係から、人工林の樹種の
違いが表層土壌に及ぼす影響について考察する。第4章では、マンギウムアカシア林分と、近
接する他2樹種の林分と比較し、リターフォールによって供給される養分量の大小を比較す
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
14
マレーシアサバ州における物質動態プロセスの検証
Fig. 1.1 Structure of this thesis
図1.1 本論文の構成
土壌ー植物間の物質動態の解明
既存データの解析による特性の抽出
樹体内の養分利用プロセス解明
§4マンギウムアカシア人工林と他2樹種のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
§6マンギウムアカシアと他2樹種のリターフォールの質と再吸収
§3各種人工林下の堆積有機物と土壌の化学性
§7 総合考察
§1 序論
§5養分添加による細根成長と養分の要求
§2メタ解析によるマンギウムアカシアの地上部バイオマス中の窒素リン蓄積特性
る。また、第3章で示した表層土壌のデータと比較し、リターフォールによって表層土壌がど
の程度影響を受けていたかについて検討を行う。第5章では、リターフォールを測定した3林
分で、養分添加したイングロースコア法を用いて、土壌中の養分濃度と3林分の養分要求の特
性を考察する。第6章では、第4章で得たリターフォールの結果から導いた、リターフォール
中の成分濃度と生葉に含まれる成分濃度とを比較し、N:P比を用いて3林分での落葉前の再転流
の違いを比較する。また、データベースから集めた熱帯人工林のリターフォールデータのメタ
解析を行い、それぞれの種の養分利用の違いが、マンギウムアカシアとその他樹種間での系統
的な違いに基づいているかどうかを検証する。
最後に、第7章では、本研究から得られた結果を総括した上で、マンギウムアカシアの養分
吸収、利用の特徴と熱帯の荒廃地造林における有効性との関係について考察する。また、今
後、マンギウムアカシアを利用した持続的な熱帯造林を進める上で、本研究で得られた知見か
ら予想されることと、より望ましい利用法について論じる。
第1章 序論
15
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
16
第2章 メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素
とリンの蓄積特性:植物および土壌要因の影響評価
2.1 はじめに
養分利用効率は単位養分当りのバイオマス生産量で定義され(Hirose 1975; Kumar et al. 1998;
Kimaro et al. 2007)、植物の種類や土壌養分の可給性によって変化する。貧栄養な土壌で林業生
産を行なう場合、限られた資源から効率的な生産を行なうことができる樹種がより適してお
り、各樹種の養分利用効率はその点において重要な指標となる。
マメ科植物であるマンギウムアカシアは窒素固定を行なうため、窒素蓄積量当りのバイオマ
ス生産は他樹種と比べて小さいと予想される。一方でリンについては、貧栄養土壌で生育が可
能であることを考慮すると、他の植物よりも利用効率が高い可能性がある。このような養分利
用効率の違いを、アカシア属4種およびマメ科のGliricidia sepiumと比較した結果では、アカシ
ア属内でも養分利用効率が元素及び種によってかなり異なっていることがわかっている
(Kimaro et al. 2007)。しかし、Kimaro et al. (2007)の研究はマメ科の多目的樹種内の比較であ
り、マンギウムアカシアがマメ科植物以外と比較して養分の利用様式が異なっていたかどうか
は、明らかにされていない。
マンギウムアカシアは苗木試験で、リン制限下において利用効率を高めることが明らかにさ
れている(Vadez et al. 1995; Ribet and Drevon 1996; Nguyen 2006)。そこで、アカシアの成木に
おいても土壌中の可給態養分量に応じて養分利用効率が変化することが予想される。
樹種の特性同様、立地条件も養分利用効率に影響を及ぼすが、その寄与は元素間で異なるこ
とが考えられる。アマゾン盆地一円の天然生林で比較的サンプルが得られやすい生葉中の元素
濃度を比較し、立地条件と系統(科、属、種)およびその他の要因のそれぞれの寄与率を解析
した結果では、窒素濃度は系統の寄与が4割弱で立地条件の寄与は2割程度であったのに対
し、リン濃度は樹木の系統の寄与は2割程度で、5割以上が立地条件からの寄与である結果が
示された(Fyllas et al. 2009)。
これまで、成木のバイオマス量およびバイオマス中の養分蓄積量は、大規模な伐倒調査が必
要であることから一部の報告例に限られており、苗木試験で得られる結果と成木での結果が一
致するかどうかはほとんどわかっていなかった。1990年代後半から、国際林業研究センター
(CIFOR)による人工林の生産性に関するプロジェクト(Nambiar et al. 2004; Nambiar 2008)や
(社)海外産業植林センターの報告書(海外産業植林センター 2001, 2002, 2003)などで、
第2章 メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素とリンの蓄積特性
17
アカシア林を含む比較的多くの林分データが蓄積されている。それらの調査の多くでは土壌条
件のパラメータも得られており、地上部バイオマス中の養分利用効率における、植物要因と土
壌要因の寄与を明らかにすることが可能である。
本章では、文献データのメタ解析によって、マンギウムアカシアの地上部バイオマスの養分
利用効率が、異なる養分条件下でどのように変化し、植物要因の影響と土壌要因の影響のそれ
ぞれがどのように寄与しているかを検討した。また、第1章で示した、マンギウムアカシア林
の土壌は他樹種の林分の土壌と比べて表層土壌の養分量が多い、という仮説がメタデータでの
比較で成り立つのかどうかを検証した。
2.2 方法
2.2.1 熱帯樹木の地上部バイオマスと養分蓄積量に関するデータセット
地上部バイオマスと養分蓄積量に関するデータセットは、CIFORプロジェクトにおける比較
論文(Yamada et al. 2004)のデータを元に、検索から得られたプロジェクト以外の熱帯造林に
関する文献値の結果を加えた(付表2.1)。ただし、引用情報から元文献に当たれないデータ
や、値がはっきりしないデータは除いている。また、針葉樹のデータは2点しかなかったため
除外した。土壌データは最表層(多くが 0–10 cm)の濃度の数値を用いた。マンギウムアカシ
ア林分の調査事例であるNykvist et al.(1996)およびNykvist and Sim(2009)の土壌データは、
文献では 0-50 cmの積算値しか示されていなかったが、10cm毎の層別積算値の比率(Nykvist私
信)から容積重の概算値1.2を用いて算出した。可給態リンの値は抽出法がまちまちであったり
示されていない場合があったが、可給態リン濃度(Available phosphorus)として示された値を
そのまま比較した。全リン量が示されていた場合は、解析から除外した。
マンギウムアカシアと他の樹木との養分蓄積の違いを比較するため、マンギウムアカシア、
その他の窒素固定種(トクサバモクマオウ(Casuarina equisetifolia)以外はマメ科)、その他の
広葉樹の3つの森林グループに分け比較を行った。それぞれのグループでの地上部バイオマス
データ数は、マンギウムアカシア13点、その他の窒素固定種25点、その他の広葉樹35点の、合
計73点であった。土壌データについては、そのうち合計で最大55点を解析に用いた。葉のバイ
オマス量および窒素、リン濃度、あるいは窒素、リン蓄積量のデータがあるものについては、
それぞれ、不足パラメータを計算値から求めた。葉以外の地上部バイオマス中の養分蓄積量
データについては、地上部全体から葉データを引くことによって求めた。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
18
2.2.2 統計解析 地上部バイオマスと地上部窒素、リン蓄積量の関係を解析した。両方の軸に誤差を伴ってい
るためII型回帰(標準主軸法、SMA回帰)を用いた。正規性と残差の均一性を保証し地上部バ
イオマスの違いによる影響を正しく評価するため、両軸ともに10を底とする常用対数で変換し
た値を比較した。3つのグループ間の傾きと切片を、再サンプリング法を用いて分散分析を
行った(Warton et al. 2006)。SMA回帰は、(S)MATR version 2.0を用いた(Falster et al. 2012)。
次に、養分利用効率を地上部バイオマス量/地上部養分蓄積量と定義し、樹種を単位として
一元配置の分散分析および、Tukey-Kramer法による多重比較を行った。データが3林分以下で
ある樹種については、その他マメ科(Fabaceae)、その他ユーカリ類、その他広葉樹で1グルー
プとした。養分利用効率は常用対数値を用いた。
地上部バイオマス中の養分利用効率と土壌因子との関係を検討した。地上部バイオマス量か
ら地上部養分蓄積量を除した値の常用対数値を、地上部の養分利用効率と定義した。地上部バ
イオマス中の窒素およびリン利用効率について、グループ間の違いおよび土壌中の全窒素濃度
もしくは可給態リン濃度を固定効果として、バイオマス量をランダム効果とする線形混合モデ
ルから要因の寄与を解析した。解析にはJMP 6.0.3を用い、ランダム効果の計算は、制限最尤法
(REML)を用いた。
2.3 結果
2.3.1 地上部バイオマス量と地上部養分蓄積量との関係
地上部バイオマス量と地上部の窒素およびリン蓄積量とのII型回帰の結果は、グループ間で傾
きの差は見られず、共通の傾きを仮定すると切片に有意差が見られた(図2.1)。地上部バイオ
マス量と窒素蓄積量との関係では傾きが0.728であり、1より有意に小さかった。切片はマンギ
ウムアカシア、その他の窒素固定種、その他の広葉樹でそれぞれ、1.232、1.231、1.029であっ
た。多重比較の結果、マンギウムアカシアおよびその他の窒素固定種はその他の広葉樹と比較
して、切片が有意に大きかった(P < 0.01)。マンギウムアカシアを含め窒素固定を行なう植物
はその他の植物と比べて、有意にバイオマス中の窒素蓄積量が大きかった。
第2章 メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素とリンの蓄積特性
19
地上部バイオマス量とリン
蓄積量との関係においてもグ
ループ間で傾きの差は見られ
ず、傾きが0.763であり、こち
らも傾きが有意に1より小さ
かった。切片はマンギウムア
カシア、その他の窒素固定
種、その他の広葉樹でそれぞ
れ、-0.280、-0.021、0.006で
あった。マンギウムアカシア
は、その他の窒素固定種およ
び、その他の広葉樹に対して
有意に切片が小さかった(P
< 0.01)。マンギウムアカシ
アは、他の2グループと比較
して有意にバイオマス中のリ
ン蓄積量が小さかった。
2.3.2 窒素、リン利用
効率の樹種間比較 種ごとの養分蓄積様式の違
いをみるため、4林分以上のデータが得られた種について個別に窒素利用効率、およびリン利
用効率を比較した。林分数が少ない種についてはユーカリ類やその他窒素固定種、その他広葉
樹とした。
窒素利用効率は一元配置の分散分析の結果、樹種間で有意に異なり、マンギウムアカシアを
含むマメ科植物およびその他の広葉樹が低く、グランディスユーカリ(Eucalyptus grandis)、
およびその他のユーカリ類で高かった(図2.2)。リン利用効率も樹種間で有意に異なり、マン
ギウムアカシアとその他広葉樹との間ではマンギウムアカシアが有意に利用効率が高かった。
2.3.3 窒素、リン利用効率のグループ間および土壌因子の影響
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
20
1 10 10010
100
1000
Aboveground biomass (Mg ha-1)
Accu
mul
ated
N (k
g ha
-1)
1 10 1001
10
100
Aboveground biomass (Mg ha-1)
Accu
mul
ated
P (k
g ha
-1)
Fig. 2.1 Relationship between the aboveground biomass and the nitrogen (a) and phosphorus (b) accumulation of tropical timber trees.Squares show non-N2-fixing broadleaves. Open circles indicate N2-fixers except A. mangium, and closed circles denote A. mangium. About 2.1a, solid line represents SMA regression of A. mangium (log y = 1.232 + 0.728 log x), dotted line represents that of other N2-fixers (log y = 1.231 + 0.728 log x) and dashed line represents that of non-N2-fixing broadleaves (log y = 1.029 + 0.728 log x). About 2.1b, solid line represents SMA regression of A. mangium (log y = 0.006 + 0.763 log x) and dashed line represents that of non-N2-fixers (log y = -0.280 + 0.763 log x).
図2.1 熱帯造林木の地上部バイオマスと窒素、リン蓄積量との関係
(b)
(a)
採録したデータの立地条件の
違いを確認するため、全窒素お
よび可給態リン濃度を一元配置
の分散分析を用い、2.3.2項の比
較で用いた図2.2中の樹種間で比
較した。全窒素濃度については
樹種間の違いが見られなかった
(P > 0.05)。可給態リン濃度に
ついては、樹種間の違いがあっ
た(P = 0.019)。メタデータ中
のKumar et al. (1998)のデータ
は混牧林地(Silvopasture)の
データを含んでおり(付表
2.1)、混牧林地のリン濃度は高
かった。混牧林地のデータを除
外した場合、可給態リン濃度に
ついても樹種間で違いが無かっ
た(P > 0.05)。
表層土壌中の全窒素濃度と森
林グループ間の違いを固定効果
として、地上部バイオマスの窒
素利用効率への寄与を線形混合
モデルによって解析した(表
2.1)。バイオマスのサイズに
よって窒素、リンともに利用効率が変化したため(図2.1)、バイオマス量をランダム効果とし
て線形モデルに組み込んだ。土壌全窒素濃度の影響は有意ではなく、グループの違いに有意差
があった(P <0.01)。マンギウムアカシアおよびその他の窒素固定種(それぞれ切片が、
2.241と2.247)は、その他広葉樹(切片が2.449)と比べて有意に地上部の窒素利用効率が低
かった(P <0.01; 図2.3a)。次に、表層土壌中の可給態リン濃度とグループの違いを要因とし
て、地上部バイオマスのリン利用効率への寄与を比較した(表2.1)。可給態リン濃度およびグ
第2章 メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素とリンの蓄積特性
21
Fig. 2.2 Nitrogen use efficiency (NUE) and phosphorus use efficiency (PUE; log10 transfered) in the aboveground biomass between tropical plantation speciesDifferent characters indicate significant differences between species according to a host-hoc Tukey's HSD test (P < 0.05). The top, bottom and the line through the middle of the box correspond to the 75th, 25th and 50th (median) percentiles. Whiskers extend from upper and lower quartiles ±1.5 × (interquartile ranges). Horizontal lines indicate the average of all data.
図2.2 熱帯造林木の地上部バイオマス中の窒素及びリン利用効率
A. m
angi
um
A. a
uric
ulifo
rmis
L. le
ucoc
epha
la
C. e
quet
icifo
ria
Oth
er F
abac
eae
E.gr
andi
s
Oth
er b
road
leav
es
E. s
pp
C C C C BC A AB C
A AB AB AB BABABAB
ループの違いの両固定効果が有意であり
(いずれもP <0.05)、交互作用はみられ
なかった。表層土壌の可給態リン濃度と
地上部のリン利用効率は反比例の関係に
あり、交互作用が有意でなかったためグ
ループ間で傾き一定であると仮定した
(図2.3b; 傾き -0.019)。マンギウムアカ
シアはその他広葉樹グループとくらべると
有意に切片が大きく(それぞれ、3.883と
3.465)、切片の差から、可給態養分が同
じ条件下でマンギウムアカシアはその他広
葉樹に対してリン利用効率が平均100.418
倍、すなわち2.6倍高かった。
2.3.4 地上部バイオマス中の養
分蓄積における葉とその他の部
位との関係 地上部バイオマス中の窒素およびリン
蓄積の違いに対する、葉および幹と枝を
含むそれ以外の部位の影響を比較した。
葉バイオマスと葉中の窒素蓄積量との関
係はいずれも正の相関があり(P <
0.01)、グループ間で傾きの差はなかった
(図2.4a)。切片は、アカシアおよび窒素
固定種が非窒素固定種に対して有意に大きかった(P < 0.001)。葉バイオマスと葉中のリン蓄
積量との関係についても、いずれも正の相関が有りグループ間で傾きの差が無かったが、切片
の差も無かった(P = 0.13; 図2.4b)。葉の窒素濃度およびリン濃度は一元配置の分散分析結果
から樹種間でいずれも有意差があり(表2.2)、マンギウムアカシアを含む窒素固定樹種で有意
に窒素濃度が高かった。リン濃度はアカシア2種およびユーカリ類がその他の窒素固定種に対
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
22
表2.1 窒素及びリン利用効率に対する土壌要因と森林グループの影響Table 2.1 Effects of soil parameters and forest groups on N and P use efficiencyNUEFixed Factor DF Denominator DF F PSoil Total N(%) 1 53.02 3.335 0.073Forest group 2 53.03 20.27 <0.001N ! Group 2 53.08 1.019 0.368PUEFixed Factor DF Denominator DF F PSoil avairable P (mg kg-1) 1 46.11 4.966 0.031Forest group 2 46.26 4.181 0.021N ! Group 2 46.03 1.317 0.278
0 5 10 15 20 25
2.8
3
3.2
3.4
3.6
3.8
4
4.2
abov
egro
und
biom
ass
PUE
(log1
0 ba
se)
Avalable P (mg kg-1)
0.1 0.2 0.3 0.4Total N (%)
1.8
2
2.2
2.4
2.6
2.8
abov
egro
und
biom
ass
NUE
(log1
0 ba
se)
Fig. 2.3 Relationship between total nitrogen and available P in top soils, and the nitrogen (a) and phosphorus (b) use efficiency in aboveground biomass of tropical timber trees.Squeres show non-N2-fixing broadleaves. Open circles indicate N2-fixers except A. mangium and closed circles denote A. mangium. About 2.3a, solid line represents regression of A. mangium (y = 2.241), dashed line represents that of other N2-fixers (y = 2.247) and dotted line represents that of non-N2-fixers (y = 2.449). About 2.3b, solid line represents regression of A. mangium (y = 3.883 - 0.019 x) and dotted line represents that of non-N2-fixers (y = 3.465 - 0.019 x).*1: measured by Mehlich-1, *2: measured by Sibbessen
図2.3 熱帯造林地の表層土壌の全窒素、可給態リン濃度と地上部バイオマスの窒素、リン利用効率との関係
(a)
(b)*1*1
*2*2
*2 *2
*1
Available
して低く、窒素固定種の中でも結果
が異なっていた。
葉以外の地上部バイオマスと窒素
蓄積量との関係も葉と同様に、いず
れも正の相関があり(P < 0.01)、
グループ間で傾きの差はなかった
(図2.5a)。切片についてもバイオ
マス全体および葉同様に、アカシア
および窒素固定種が非窒素固定種に
対して有意に大きかった(P <
0.001)。葉以外の地上部バイオマ
スとリン蓄積量との関係は、非窒素
固定種に正の相関が見られなかった
(P = 0.18; 図2.5b)。グループ間の
傾きの差は無く、切片はアカシア
(-0.476)がその他窒素固定種
(-0.186)および非窒素固定種
(-0.127)より低かった。窒素につ
いては、葉および葉以外の地上部バ
イオマス両方が、リンについては葉
以外の地上部バイオマスが地上部全体の養分利用効率に寄与していた。
2.4 考察 メタデータの比較において、マンギウムアカシアが他樹種より表層土壌の養分量が大きいと
いう仮説は証明されなかった。これは、植生による影響以上に採録したデータの試験地間の変
動が大きかったためであると考えられた。メタデータ内の全窒素の最小値、最大値は9倍の違
いが、可給態リンは測定法の違いがあるものの実に170倍の違いがあった。さまざまな樹種の
林床下における有機物(リターフォール)供給速度は異なっていたが、土壌の持つ有機物保持
容量も試験地間で異なっていたと考えられる。Kumar et al. (1998)の混牧林地データを除いた
場合は樹種間での有意差が無かったことから、いずれの樹種もさまざまな養分状態の林分を含
第2章 メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素とリンの蓄積特性
23
0.1 1 10
10
100
Leaf biomass (Mg ha-1)
Accu
mul
ated
N (k
g ha
-1)
0.1 1 10
1
10
Leaf biomass (Mg ha-1)
Accu
mul
ated
P (k
g ha
-1)
(a)
(b)
Fig. 2.4 Relationship between the leaf biomass and the nitrogen (a) and phosphorus (b) accumulation of tropical timber trees.Squares show non-N2-fixing broadleaves. Open circles indicate N2-fixers except A. mangium, and closed circles denote A. mangium. About 2.4a, solid line represents SMA regression of A. mangium (log y = 1.468 + 0.910 log x), dotted line represents that of other N2-fixers (log y = 1.474 + 0.910 log x) and dashed line represents that of non-N2-fixing broadleaves (log y = 1.306 + 0.910 log x). About 2.4b, solid line represents SMA regression of the common regression (log y = 0.125 + 0.839 log x) .
図2.4 熱帯造林木の葉バイオマスと葉中の窒素、リン蓄積量との関係
んだデータを採録したと考えられる。その上で、マンギウムアカシアの窒素とリンの地上部で
の蓄積様式について検討を
行った。
2.4.1 地上部の窒素利
用効率 マンギウムアカシアを含む
窒素固定を行なう樹木は、そ
の他の広葉樹と比較して系統
的に多くの窒素を地上部バイ
オマス中に蓄積していた(図
2.1a)。また、表層土壌中の全
窒素濃度は、地上部バイオマ
スの窒素利用効率に影響して
いなかった(図2.3a)。マメ科
植物は、窒素固定を行なう場
合でも、土壌中の窒素可給性
が高く窒素固定を行なわない
場合でも、常に生葉中の窒素
濃度が高い傾向にあることか
ら、系統的に窒素の要求が大
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
24
1 10 10010
100
1000
Aboveground biomass except leaf (Mg ha-1)
Accu
mul
ated
N (k
g ha
-1)
1 10 1001
10
100
Aboveground biomass except leaf (Mg ha-1)
Accu
mul
ated
P (k
g ha
-1)
Fig. 2.5 Relationship between the aboveground biomass except leaf and the nitrogen (a) and phosphorus (b) accumulation of tropical timber trees.Squares show non-N2-fixing broadleaves. Open circles indicate N2-fixers except A. mangium, and closed circles denote A. mangium. About 2.5a, solid line represents SMA regression of A. mangium (log y = 0.808 + 0.875 log x), dotted line represents that of other N2-fixers (log y = 0.849 + 0.875 log x) and dashed line represents that of non-N2-fixing broadleaves (log y = 0.587 + 0.875 log x). About 2.5b, solid line represents SMA regression of A. mangium (log y = -0.476 + 0.798 log x) and dotted line represents that of other N2-fixers (log y = -0.127 + 0.798 log x). The regression for non-N2-fixing broadleaves was not significant (P = 0.18).
図2.5 熱帯造林木の葉以外の地上部バイオマスとその窒素、リン蓄積量との関係
(a)
(b)
表2.2 熱帯造林木の葉の窒素、リン濃度およびN:P比Table 2.2 Leaf N and P concentrations of tropical plantation trees
Species n
Acacia mangium 13 26.4 (±1.38) bcd 1.00 (±0.131) b 28.4 (±3.17) ab
Acacia auriculiformis 5 24.4 (±2.22) bc 0.71 (±0.211) b 37.7 (±4.91) a
Casuarina equisetifolia 5 18.2 (±2.22) d 1.06 (±0.211) ab 20.4 (±4.91) abc
Eucalyptus grandis 4 15.6 (±2.48) d 0.93 (±0.236) b 18.5 (±7.76) abc
Eucalyptus spp. 11 16.4 (±1.50) d 1.01 (±0.142) b 17.1 (±3.31) bc
Leucaena leucocephala 6 37.9 (±2.03) a 1.49 (±0.192) ab 32.1 (±4.48) ab
Other Fabaceae 8 29.6 (±1.76) ab 1.84 (±0.167) a 17.4 (±4.15) bc
Other non-N2-fixing broadleaves 16 20.5 (±1.24) cd 1.40 (±0.118) ab 14.8 (±2.93) c
leaf N (mg g-1) leaf P (mg g-1) leaf N:P
Numbers in parentheses indicate standard error of the mean (SEM). Different letters indicate inter-species differencesof leaf concentrations according to one-way ANOVA and Tukey's HSD post hoc test (P < 0.05).
きい森林グループであることが指摘されている(McKey 1994; Vitousek et al. 2002)。また、マ
ンギウムアカシアのバイオマス中の窒素蓄積量の測定例ではバイオマス中の窒素量の50%以上
が窒素固定由来であり、12年生林分で地上部バイオマス中の窒素蓄積量1997 kg N ha-1のうち
1136 kg N ha-1が空中窒素由来であることが示されている(Mercado et al. 2011)。本章の結果か
ら、葉のみならず地上部バイオマス全体でも、窒素固定植物はその他広葉樹と比べて窒素を多
く蓄積していることが確認された(図2.1a)。
地上部バイオマスと窒素蓄積量との関係(図2.1a)は傾きが1より小さかったため、サイズ
の小さい植物ほどバイオマス中の窒素濃度が高くなる傾向があった。これは樹木のサイズが大
きくなるほど窒素濃度の比較的低い木部の割合が大きくなるためであると考えられる。また、
このことから利用効率の値による単純比較(図2.2)のみでは、樹種間の利用効率の系統的な差
は判断できないと考えられる。
土壌中の全窒素濃度が地上部バイオマスの窒素利用効率に影響していなかった理由は、今回
の結果のみでは明確な結論を導くことは出来ない。アマゾン盆地一円で生葉中の元素濃度を比
較した研究例においても、塩基類等を指標とした貧栄養なプロットと富栄養なプロット間で生
葉中の窒素濃度を頻度分布で比較した結果、土壌の肥沃度の違いによって分布に違いが見られ
なかった(Fyllas et al. 2009)。熱帯の樹木は土壌条件によらず一定量の窒素を蓄積し、窒素固
定植物は特に窒素の蓄積量が大きい可能性が考えられる。湿潤熱帯においては、土壌中の窒素
現存量の大小があるにせよ、堆積有機物の分解から恒常的に窒素が供給される系が成り立って
いるため、バイオマス中に一定量以上の窒素が蓄積されているという可能性が考えられる。今
回の解析は全窒素濃度という、出来るだけ多くの林分から統一した基準で得られる土壌パラ
メータを用いて窒素利用効率に対する土壌因子の影響を解析した。成長に直接影響する可給態
窒素での比較は現時点の得られたデータで比較することは困難であるが、可給態窒素を土壌因
子のパラメータとした場合、土壌の窒素可給性が窒素利用効率に影響を及ぼす可能性が残され
ている。
2.4.2 地上部のリン利用効率 マンギウムアカシアはその他の広葉樹と比較して、バイオマス中に蓄積されたリン量が有意
に少なかった(図2.1b)。これはすべての窒素固定樹木に見られる傾向ではなく、マンギウム
アカシア以外の窒素固定種グループはその他の広葉樹グループとリン蓄積量に有意な違いがな
かった。また、マンギウムアカシア以外の種は、ユーカリ以外の非窒素固定広葉樹と比べてリ
第2章 メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素とリンの蓄積特性
25
ン利用効率が高くなかった(図2.2b)。マンギウムアカシアは、他のグループと比較した場
合、より少ない地上部のリンを利用して等しい地上部バイオマス生産を可能にしていた。仮に
地下部についても地上部と同様の傾向であったとすれば、マンギウムアカシアはリン吸収量自
体が他の森林グループと比べて少なかったといえる。苗木試験で示されたような低リン下での
リン利用効率の上昇(Vadez et al. 1995; Ribet and Drevon 1996; Nguyen et al. 2006)が成木につい
ても示され、他樹種と比較して系統的にリン利用効率が高かったことから(図2.1b、図2.3b)、
マンギウムアカシアはリン制限のある立地条件に対応しうる能力を持っていることが示され
た。すなわち仮説で提示した、マンギウムアカシアは貧栄養、特にリン不足の土壌条件下でも
旺盛に成長するための養分利用特性を有していることが検証された。本章の結果は苗木で示さ
れたリン欠乏耐性(小島 2004; 村松・助野 2009)が、成木においてもリンの蓄積量が少な
いという特徴となって表れることを示した。
地上部バイオマスとリン蓄積量との関係(図2.1b)も傾きが有意に1より小さかった。その
ため、窒素利用効率、リン利用効率は樹木のサイズが大きくなるにつれて、大きくなる傾向に
あり、利用効率の絶対値による単純な比較ができないことがわかった。マンギウムアカシア
は、地上部バイオマスのデータが幅広い範囲から入手することが出来たため、バイオマスのサ
イズの違いを加味しても他樹種より窒素利用効率が低くリン利用効率が高い傾向にあったと判
断された(図2.1)。一方でグランディスユーカリは、窒素利用効率及びリン利用効率の平均が
他樹種より有意に大きかったが、地上部バイオマスが大きいデータしか得られなかったため、
本研究の結果のみで他樹種との系統的な違いがあると判断するには至らなかった。樹種として
の傾向を判断するには地上部バイオマスが小さい個体のデータが必要である。
土壌中の可給態リン濃度は、全窒素濃度と比べ一律の基準で測定された値ではなく、抽出手
法によって値の大小が変わりうる。従って、得られた回帰式(図2.3b)は同一の抽出法で得ら
れた値とは異なる結果であった可能性が高い。マンギウムアカシアの林分では8林分がBray I法
で抽出され、可給態リン濃度の比較的低い4林分がSibbesen(イオン交換樹脂)法、もっとも
可給態リン濃度の高い2林分がMehlich-1法(0.05M塩酸+0.0125M硫酸抽出)で抽出されていた
(附表2.1)。Sibbesen法およびMehlich-1法で得られた値は、Bray I(0.025M塩酸+0.03Mフッ化
アンモニウム抽出)法で抽出した場合より、フッ素酸化物による鉄アルミ結合体リンの抽出が
なされないため、小さな値になることが予想される。従って、図2.2bにおいて、Bray I法で測定
された以外の数点が、実際には現行の散布図よりXの値がより大きかった可能性が大きい。ま
た、その他広葉樹グループにおいては2点が対数で示したリン利用効率で4以上であり、いず
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
26
れも可給態リン濃度が5mg kg-1以下であった。このうち1点はMehlich-1法で測定され、残り1
点については抽出法が記載されていなかった(附表2.1)。仮にこの2点の可給態リン濃度が他
の抽出法を用いた場合より高かった場合、回帰式の傾きの絶対値はより大きくなる。このよう
に、可給態リン濃度を統一した基準で測定した値を比較した場合、回帰式の決定係数が低く
なったり、回帰の傾きが変化したりする可能性がある。一方で、森林グループ間のリン利用効
率に対する影響は、土壌条件の違いを考慮しても有意であると判断された(表2.1)。したがっ
て、地上部バイオマス中のリン利用効率にはグループ間の違いが有意に影響しており、表層土
壌の可給態リン濃度も影響している可能性が示された(図2.3b)。これはFyllas et al.(2009)の
リンに対する生葉の応答の解析結果とも矛盾しない結果であった。
マンギウムアカシアの苗木において、添加するリン量が少なくなるにつれ、リン利用効率が
高くなる傾向は示されていたが(Vadez et al. 1995; Ribet and Drevon 1996; Nguyen et al. 2006)、
本章の結果は成木で可給態リン濃度が少なくなるにつれリン利用効率が高くなる傾向にある可
能性を初めて示した。さらに、他の2つの森林グループも可給態リン濃度とリン利用効率との
関係に負の関係があったことから、マンギウムアカシアのみならず、他の森林グループでも可
給態リン濃度がリン利用効率に影響している可能性が示された。マンギウムアカシアとその他
広葉樹のリン利用効率を比較すると、マンギウムアカシアが平均で約2.6倍高く、土壌の影響を
考慮しても可給態リン濃度一定条件では常にマンギウムアカシアのリン利用効率が高いことが
示された。
本章の結果は地上部のみであり、地下部バイオマスについては不明である。地下部バイオマ
スの大半は直径2mm以上の根であり、Nykvist and Sim(2009)によるマンギウムアカシアの結
果やKumar et al.(1998)によるアウリカリフォルミスアカシアの結果では、大きな根でリン濃
度が高い傾向は見られず、地下部バイオマスにおいても地上部と同様の傾向にあると考えられ
る。
2.4.3 葉と葉以外の地上部の養分利用効率への影響 窒素については、葉とそれ以外の器官とで窒素利用効率の傾向は変わらず、マンギウムアカ
シアを含む窒素固定種で窒素利用効率が低かった(図2.4a, 図2.5a)。葉の窒素濃度はマンギウ
ムアカシアを含む窒素固定種で高く(表2.2)、また枝や材中の窒素濃度も高かったためである
と考えられる。窒素固定植物の葉中の窒素濃度は系統的に高いことが指摘されているが
(McKey 1994)、本試験の結果もこの考えを裏付けるものであった。一方でリンについては、
第2章 メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素とリンの蓄積特性
27
葉中のリン利用効率は3つのグループ間で違いが無かった(図2.4b)。このことから、地上部
バイオマス中のリン利用効率のグループ間の違い(図2.1b)は、葉以外の器官が主に寄与してい
たと考えられた。採録したデータの葉バイオマスの割合は地上部バイオマス全体に対し平均で
7.6%であり、その他の器官の蓄積と比較すると量的に少ない。そのため、リン利用効率に対す
る葉の影響が少なかったと考えられた。マンギウムアカシアの葉のリン利用効率は他樹種に比
べ有意に高くなかったことから、葉以外の器官のリン蓄積量が少なかったと判断された。
2.5 まとめ 熱帯人工林の成木を用いた解析から、マンギウムアカシアが窒素固定を行わない広葉樹と比
較し、同じ地上部バイオマスで比べた場合、系統的に地上部の窒素蓄積量が大きく、リン蓄積
量が少ないことが示された。窒素については表層土壌中の全窒素濃度に関わらず、窒素利用効
率が低いことが示され、リンについては土壌中の可給態リン濃度が少なくなるにつれ、いずれ
の森林タイプもリン利用効率が高くなる傾向が示された。マンギウムアカシアは土壌中の可給
態リン濃度にかかわらず、窒素固定を行なわない広葉樹と比べリン利用効率が2.6倍高いという
傾向が示された。
以上の結果から、マンギウムアカシアの地上部バイオマス中のリン蓄積量は樹種特性として
少ない傾向にあり、リン利用効率が高かったと考えられた。マンギウムアカシアの地上部バイ
オマス中のリン利用効率が高かったのは、葉以外の器官へのリンの蓄積量が少なかったためで
あった。
本章では、マンギウムアカシアの地上部バイオマス中の窒素蓄積量が多く、リン蓄積量が少
ないという傾向から、窒素とリンの養分利用効率が異なることが示された。次章以降は、本章
で示された傾向が、マンギウムアカシアの植物−土壌間および植物内での物質移動から、土壌回
復機能にどのように反映されるか個別のプロセス毎に検証する。
本章のメタデータからは、樹種間で表層土壌中の全窒素および可給態リン濃度が有意に異な
ることはなく、マンギウムアカシア林下の土壌が他樹種より良いという結果は得られなかっ
た。これは収録したデータが土壌、土地利用履歴、林齢などの点で多様な条件下にあり、土壌
条件のデータ間(試験地間)の変動が第1章で紹介したような造林後の樹種の違いを検出でき
ないほど大きかったためと考えられた。このような樹種の違いが土壌に及ぼす影響を明らかに
するためには、同じような初期条件を持つ土壌で造林後の影響を比較する必要がある。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
28
次に、マンギウムアカシアの土壌回復機能が高いとした場合、リターフォール量およびリ
ターフォール中の養分量が他樹種より多いことが予想される。本章の結果から、窒素について
は単位バイオマス中の蓄積量が多くリターフォール中にも多くの窒素が含まれることが予想さ
れる。ところがリンについてはバイオマス中の蓄積量が少ないため、リターフォール中のリン
量が少ない可能性がある。マンギウムアカシアのリターフォール中の養分含有量と土壌回復機
能との関係を明らかにする必要がある。
窒素固定を行なうマメ科植物はリンが制限要因になっていると一般的に考えられているが
(Harwood 2011)、多年生の木本では必ずしもリンを多量に必要としない(Vitousek et al.
2002)。本章の結果からもマンギウムアカシアが少なくとも地上部生産に必要とするリン量は
他樹種より少ないことがわかった。しかし、マンギウムアカシアはフォスファターゼ活性が高
く(小島 2004;; Lee et al. 2006)リン獲得能が高いと予想される。また、窒素に関しては窒素固
定によって土壌条件に関わらず確保が可能であるが、他樹種よりもバイオマス当りの蓄積量が
大きいため窒素要求が少ないかどうかは不明である。このため、マンギウムアカシアの窒素と
リンの要求を、実験的に明らかにする必要がある。
純一次生産のうちバイオマス中の養分利用効率を本章で示したが、純一次生産の一部である
リターフォールの養分当りの乾重で示される養分利用効率も、養分利用の指標として重要であ
る。また、リターフォールの画分毎の濃度や、生葉と落葉の養分濃度を比較することにより、
マンギウムアカシアの養分の分配や、落葉前の窒素とリンの移動、再転流の様式が明らかにな
る。本章で、マンギウムアカシアは地上部バイオマスの窒素利用効率が低く、リン利用効率が
高い傾向が明らかになったが、再吸収の様式も窒素とリンで異なることが予想される。
以上で示した点について、本章で明らかにされたマンギウムアカシアの窒素とリンの蓄積傾
向が、図1.1で示したマンギウムアカシア林での土壌−植物間の物質動態(第3章、第4章)お
よびマンギウムアカシア樹体内での養分利用プロセス(第5章、第6章)にどのように反映さ
れるかをマレーシアサバ州の試験林内で対照樹種と比較しながら検証して行く。
第2章 メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素とリンの蓄積特性
29
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
30
付表2.1 熱帯造林木の地上部バイオマスと養分蓄積量および土壌化学性Appendix 2.1 List of aboveground biomass, nutrient accumulation and soil chemical propertiesNo. Species name Family N-fix Stand age Aboveground DM Aboveground N Aboveground P Aboveground K
year Mg-1 ha-1 Kg-1 ha-1 Kg-1 ha-1 Kg-1 ha-1
1 Acacia mangium Fabaceae y 3.8 44.5 290.0 9.3 354.02 Acacia mangium Fabaceae y 3.8 22.1 152.0 5.0 256.03 Acacia mangium Fabaceae y 10 77.7 432.0 13.7 283.04 Acacia mangium Fabaceae y 10 44.6 223.0 6.8 279.05 Acacia mangium Fabaceae y 9 109.2 452.0 19.2 133.36 Acacia mangium Fabaceae y 9 189.5 661.0 14.3 191.27 Acacia mangium Fabaceae y 1.2 17.7 192.4 5.8 73.48 Acacia mangium Fabaceae y 2 46.3 311.4 16.3 99.29 Acacia mangium Fabaceae y 10 241.1 962.0 24.3 208.1
10 Acacia mangium Fabaceae y 1 17.2 146.4 7.5 94.511 Acacia mangium Fabaceae y 7 150.8 593.0 16.0 357.012 Acacia mangium Fabaceae y 5 64.9 363.3 21.2 247.913 Acacia mangium Fabaceae y 6 77.1 388.0 18.3 250.214 Acacia auriculiformis Fabaceae y 8 326.4 958.3 30.9 386.215 Acacia auriculiformis Fabaceae y 5 183.5 1538.7 112.7 622.816 Acacia auriculiformis Fabaceae y 7 140.5 997.6 49.4 478.217 Acacia auriculiformis Fabaceae y 7 51.2 198.5 7.1 144.218 Acacia auriculiformis Fabaceae y 1 6.0 79.3 4.3 37.019 Acacia auriculiformis Fabaceae y 7 136.1 556.0 33.4 230.420 Casuarina equisetifolia Casuarinaceae y 5.5 191.0 560.0 119.0 210.021 Casuarina equisetifolia Casuarinaceae y 8 95.6 243.4 9.4 75.222 Casuarina equisetifolia Casuarinaceae y 5 35.9 219.2 21.4 37.623 Casuarina equisetifolia Casuarinaceae y 7 33.7 181.2 6.8 65.624 Casuarina equisetifolia Casuarinaceae y 4 105.3 592.0 15.3 220.025 Leucaena leucocephala Fabaceae y 5.5 46.9 370.0 39.0 not available26 Leucaena leucocephala Fabaceae y 5.5 30.2 210.0 23.0 not available27 Leucaena leucocephala Fabaceae y 8 22.8 117.7 2.7 33.528 Leucaena leucocephala Fabaceae y 5 65.8 584.1 46.2 161.629 Leucaena leucocephala Fabaceae y 7 63.5 434.2 50.0 166.430 Leucaena leucocephala Fabaceae y 4 71.8 669.0 17.5 296.031 Dalbergia cochinensis Fabaceae y 15 104.0 525.0 9.2 278.032 Pterocarpus marsupium Fabaceae y 8 66.1 305.2 9.1 252.333 Falcataria moluccana Fabaceae y 8 183.5 622.8 16.2 279.534 Stryphnodendron microstachyum Fabaceae y 4.5 2.5 19.2 4.0 not available35 Albizia guachapele Fabaceae y 4.5 10.3 95.9 12.6 not available36 Dipteryx panamensis Fabaceae y 4.5 29.1 177.3 29.9 not available37 Pithecellobium elegans Fabaceae y 4.5 33.2 241.4 49.1 not available38 Albizia procera Fabaceae y 5.5 119.7 540.0 102.0 370.039 Eucalyptus globulus Myrtaceae n 7 148.1 466.5 52.4 339.340 Eucalyptus globulus Myrtaceae n 8 256.9 465.8 68.7 309.541 Eucalyptus globulus Myrtaceae n 8 275.0 521.0 55.9 not available42 Eucalyptus grandis Myrtaceae n 7 320.7 517.6 26.0 273.643 Eucalyptus grandis Myrtaceae n 7 140.3 332.4 38.2 182.744 Eucalyptus grandis Myrtaceae n 8 133.8 249.2 17.8 189.045 Eucalyptus grandis Myrtaceae n 12 324.3 463.2 46.4 233.646 Eucalyptus natural hybrids Myrtaceae n 8 114.3 293.8 44.8 110.747 Eucalyptus nitens Myrtaceae n 11 195.2 563.7 51.7 328.548 Eucalyptus spp. Myrtaceae n 6 115.5 214.1 34.7 65.049 Eucalyptus tereticornis Myrtaceae n 7 64.0 178.6 42.4 229.950 Eucalyptus urophylla Myrtaceae n 7 44.0 106.0 8.0 48.051 Eucalyptus camaldulensis Myrtaceae n 6 94.7 218.0 5.9 152.052 Eucalyptus camaldulensis Myrtaceae n 15 78.9 304.0 6.2 321.053 Eucalyptus robusta Myrtaceae n 4 62.5 282.0 19.7 174.054 Eucalyptus grandis Myrtaceae n 7 33.7 106.0 22.3 89.055 Eucalyptus grandis Myrtaceae n 7 141.9 232.0 28.1 271.056 Eucalyptus tereticornis Myrtaceae n 7 43.5 92.0 8.3 85.057 Eucalyptus robusta Myrtaceae n 5.5 66.9 200.0 78.0 105.058 Ailanthus triphysa Simaroubaceae n 8 40.5 260.2 15.8 84.659 Artocarpus heterophyllus Moraceae n 8 82.0 317.2 16.6 290.960 Artocarpus hirsutus Moraceae n 8 58.9 308.5 30.2 422.061 Emblica officinalis Phyllanthaceae n 8 68.9 235.1 18.6 152.362 Ailanthus triphysa Simaroubaceae n 7 19.4 188.9 21.4 141.263 Ailanthus triphysa Simaroubaceae n 5 19.8 111.2 17.0 39.764 Swietenia macrophylla Meliaceae n 17 94.0 516.0 25.9 337.065 Swietenia macrophylla Meliaceae n 49 121.0 954.0 34.1 388.066 Jacaranda copaia Bignoniaceae n 4.5 46.6 185.0 46.4 not available67 Vochysia guatemalensis Vochysiaceae n 4.5 27.3 148.0 32.3 not available68 Callophylum brasiliense Guttiferae n 4.5 18.8 88.6 12.0 not available69 Terminalia amazonia Combretaceae n 4.5 32.5 141.4 30.6 not available70 Virola koschnyi Myristicaceae n 4.5 25.7 128.0 20.6 not available71 Hieronyma alchorneoides Euphorbiaceae n 4.5 35.9 158.2 37.8 not available72 Vochysia ferruginea Vochysiaceae n 4.5 31.1 130.6 35.0 not available73 Genipa americana Rubiaceae n 4.5 18.2 106.3 22.5 not available
第2章 メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素とリンの蓄積特性
31
No. Site Local site Soil type / Rock Soil depth Organic C Total N Available P Exchangeable K P extractioncm % % mg kg-1 mg kg-1 method
1 Sabah, Malaysia Mengdolong W4 Acrisols/ Podozols 0-50 3.19 0.25 5.70 0.1 Sibbesen (resin)2 Sabah, Malaysia Mengdolong W5 Acrisols/ Podozols 0-50 2.83 0.16 5.55 0.1 Sibbesen (resin)3 Sabah, Malaysia Mengdolong W4 Acrisols/ Podozols 0-50 0.95 0.18 9.20 0.0 Sibbesen (resin)4 Sabah, Malaysia Mengdolong W5 Acrisols/ Podozols 0-50 0.87 0.18 11.10 0.0 Sibbesen (resin)5 Madang, Papua New Guinea not available 0-30 Not available Not available Not available Not available Not measured6 Sumatra, Indonesia Tomang Podosols/ Ultisols 0-10 2.64 0.23 5.77 33.7 Bray I7 Sumatra, Indonesia Tomang Podosols/ Ultisols 0-10 2.64 0.23 5.77 33.7 Bray I8 Sumatra, Indonesia Tomang Podosols/ Ultisols 0-10 2.64 0.23 5.77 33.7 Bray I9 Sumatra, Indonesia Sodong Podosols/ Ultisols 0-10 3.10 0.24 5.35 61.1 Bray I
10 Sumatra, Indonesia Sodong Podosols/ Ultisols 0-10 3.10 0.24 5.35 61.1 Bray I11 Sumatra, Indonesia Riau Typic Hapludult 0-10 2.49 0.26 3.40 136.5 Bray II12 Guangdong, China quartzose sandstone 0-20 1.96 0.07 26.00 32.8 Mehlich-113 Guangdong, China not available 0-20 1.96 0.07 26.00 32.8 Mehlich-114 Kerala, India Woodlot acidic oxisols 0-15 1.68 0.15 11.07 53.1 Bray I15 Kerala, India Silvopasture 7 yr acidic oxisols 0-15 4.51 0.29 23.92 65.4 Bray I16 Kerala, India Silvopasture 5 yr acidic oxisols 0-15 4.23 0.22 16.93 68.4 Bray I17 South Vietnam Chromic Acrisols 0-10 1.12 0.12 10.80 791.7 Citric acid 1%18 South Vietnam Chromic Acrisols 0-10 1.12 0.12 10.80 791.7 Citric acid 1%19 South Vietnam Vung Tau Ferric Acrisols 0-50 Not available Not available Not available Not available Not measured20 Lajas Valley, Puerto Rico not available 0-3 1.90 0.18 10.00 330.0 Not available21 Kerala, India Woodlot acidic oxisols 0-15 1.15 0.11 12.93 23.8 Bray I22 Kerala, India Silvopasture 5 yr acidic oxisols 0-15 3.06 0.21 20.04 57.3 Bray I23 Kerala, India Silvopasture 7 yr acidic oxisols 0-15 3.65 0.28 24.33 58.5 Bray I24 Toa Baja, Puerto Rico calcareous sands 0-20 Not available Not available Not available Not available Olsen25 Lajas Valley, Puerto Rico not available 0-3 2.20 0.26 9.00 340.0 Not available26 Lajas Valley, Puerto Rico not available 0-3 2.10 0.23 8.00 330.0 Not available27 Kerala, India Woodlot acidic oxisols 0-15 1.87 0.17 8.07 21.5 Bray I28 Kerala, India Silvopasture 5 yr acidic oxisols 0-15 3.45 0.26 17.31 59.8 Bray I29 Kerala, India Silvopasture 7 yr acidic oxisols 0-15 3.96 0.27 22.10 75.0 Bray I30 Toa Baja, Puerto Rico calcareous sands 0-20 Not available Not available Not available Not available Olsen31 Sakaerat Thailand not available 0-10 1.83 0.18 2.90 Not available Not available32 Kerala, India Woodlot acidic oxisols 0-15 1.34 0.12 12.00 19.1 Bray I33 Kerala, India Woodlot acidic oxisols 0-15 1.39 0.13 10.47 48.3 Bray I34 La selva, Costa Rica not available 0-5 4.09 0.35 13.30 Not available Olsen35 La selva, Costa Rica not available 0-5 3.00 0.33 12.00 Not available Olsen36 La selva, Costa Rica not available 0-5 2.97 0.32 12.20 Not available Olsen37 La selva, Costa Rica not available 0-5 3.90 0.35 9.53 Not available Olsen38 Lajas Valley, Puerto Rico not available 0-3 1.80 0.18 6.00 280.0 Not available39 Canate, Chile not available 0-30 Not available Not available Not available Not available Not measured40 Western Australia Manjimup Ferralsols? 0-30 Not available Not available Not available Not available Not measured41 Western Australia Manjimup Ferralsols 0-10 4.98 0.23 Not available Not available Not measured42 Brazil Sao Miguel Arcanjo not available Not available Not available Not available Not available Not available Not measured43 Brazil Sao Paulo oxisols 0-10 1.52 0.18 Not available 15.6 Not measured44 Melmoth, South Africa not available Not available Not available Not available Not available Not available Not measured45 Brazil Mogi Guacu not available Not available Not available Not available Not available Not available Not measured46 Kondi, Congo Arenosols 0-5 0.85 0.06 Not available 11.7 Not measured47 Canate, Chile not available 0-30 Not available Not available Not available Not available Not measured48 Tchissoko, Congo Arenosols 0-10 0.95 0.05 Not available 11.7 Not measured49 Kerala India Kayapoovam not available 0-20 0.59 0.08 0.15 14.1 Not available50 Guangdong, China not available 0-10 0.83 0.07 0.75 9.9 Mehlich-151 Ladkrating Thailand not available 0-30 2.04 0.20 3.56 Not available Not available52 Sakaerat Thailand not available 0-10 1.87 0.19 2.83 Not available Not available53 Toa Baja, Puerto Rico calcareous sands 0-20 Not available Not available Not available Not available Olsen54 Kerala, India Surianelli not available 0-10 4.09 0.25 Not available Not available Not measured55 Kerala, India Vattavada not available 0-10 5.23 0.45 Not available Not available Not measured56 Kerala, India Punnala not available 0-10 4.36 0.29 Not available Not available Not measured57 Lajas Valley, Puerto Rico not available 0-3 1.50 0.14 11.00 330.0 Not available58 Kerala, India Woodlot acidic oxisols 0-15 1.53 0.12 9.93 23.8 Bray I59 Kerala, India Woodlot acidic oxisols 0-15 1.41 0.09 9.33 23.8 Bray I60 Kerala, India Woodlot acidic oxisols 0-15 1.40 0.10 8.67 45.9 Bray I61 Kerala, India Woodlot acidic oxisols 0-15 1.46 0.12 12.73 19.1 Bray I62 Kerala, India Silvopasture 7 yr acidic oxisols 0-15 3.78 0.25 19.81 62.5 Bray I63 Kerala, India Silvopasture 5 yr acidic oxisols 0-15 2.10 0.19 20.04 39.5 Bray I64 Luquillo, Puerto Rico Sabana Typic Tropohumults Not available Not available Not available Not available Not available Not measured65 Luquillo, Puerto Rico El Verde Tropeptic Haplorthox Not available Not available Not available Not available Not available Not measured66 La selva, Costa Rica not available 0-5 4.87 0.37 11.20 Not available Olsen67 La selva, Costa Rica not available 0-5 3.33 0.31 9.35 Not available Olsen68 La selva, Costa Rica not available 0-5 3.82 0.35 14.40 Not available Olsen69 La selva, Costa Rica not available 0-5 3.71 0.38 11.10 Not available Olsen70 La selva, Costa Rica not available 0-5 3.28 0.36 12.80 Not available Olsen71 La selva, Costa Rica not available 0-5 3.61 0.33 12.65 Not available Olsen72 La selva, Costa Rica not available 0-5 4.22 0.36 8.04 Not available Olsen73 La selva, Costa Rica not available 0-5 4.12 0.35 11.13 Not available Olsen
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
32
No. Leaf N conc. Leaf P conc. Leaf K conc. Leaf dry matter Leaf N Leaf P Leaf K Litarature cited(%) (%) (%) (Mg ha-1) (Kg ha-1) (Kg ha-1) (Kg ha-1)
1 3.19 0.110 1.64 2.42 77.00 3.10 40.00 Nykvist et al. 19962 3.12 0.140 1.55 1.55 49.00 2.20 24.00 Nykvist et al. 19963 2.05 0.110 1.15 1.5 31.00 1.50 18.00 Nykvist and Sim 20094 2.29 0.090 0.99 1.6 37.00 1.10 15.00 Nykvist and Sim 20095 2.46 0.096 1.05 4.6 113.30 4.40 48.10 Yamada et al. 20046 2.76 0.085 1.42 4.1 113.00 3.50 58.30 Yamada et al. 20047 2.86 0.056 0.73 4.84 138.50 2.70 35.10 Hardiyanto et al. 20048 2.32 0.069 0.10 6.84 159.00 4.70 6.70 Hardiyanto et al. 20049 2.66 0.104 0.87 4.7 125.00 4.90 40.90 Hardiyanto et al. 2004
10 2.59 0.090 1.12 3.64 94.20 3.30 40.80 Hardiyanto et al. 200411 2.85 0.090 1.47 5.4 153.00 5.00 79.00 Nurwahyudi & Tarigan 200412 2.38 0.133 1.49 6.2 147.25 8.26 92.55 Xu et al. 199813 2.75 0.131 1.61 5.3 145.62 6.95 85.58 Xu et al. 199814 2.47 0.077 0.73 8.95 221.33 6.89 64.89 Kumar et al. 199815 2.72 0.114 1.36 19.18 522.08 21.87 261.42 Kumar et al. 199816 2.32 0.081 1.08 11.1 257.41 8.99 120.10 Kumar et al. 199817 2.27 0.030 0.48 1.91 43.43 0.57 9.18 Vu et al. 200418 Not available Not available Not available Not available Not available Not available Not available Vu et al. 200819 2.41 0.055 0.69 5.1 123.00 2.80 35.00 Yamada et al. 200420 1.56 0.157 0.48 13.2 205.92 20.72 63.23 Wang et al. 199121 1.59 0.067 0.46 5.7 90.46 3.82 26.11 Kumar et al. 199822 2.25 0.095 0.89 1.75 39.45 1.66 15.59 Kumar et al. 199823 1.87 0.153 0.47 3.4 63.44 5.20 15.98 Kumar et al. 199824 1.81 0.056 0.62 13.1 237.11 7.36 81.61 Parotta 199925 3.25 0.202 1.63 1.7 55.25 3.43 27.71 Wang et al. 199126 3.36 0.172 1.43 1.1 36.96 1.89 15.73 Wang et al. 199127 4.74 0.060 0.41 1.28 60.63 0.77 5.22 Kumar et al. 199828 4.01 0.189 1.09 1.11 44.50 2.10 12.12 Kumar et al. 199829 4.05 0.171 1.39 4.1 166.09 7.01 57.07 Kumar et al. 199830 3.32 0.100 1.09 2.5 83.00 2.49 27.30 Parotta 199931 2.24 0.079 0.97 3.4 76.00 2.70 33.00 Yamada et al. 200432 2.89 0.138 2.43 3.43 99.23 4.73 83.45 Kumar et al. 199833 3.06 0.092 0.86 5.05 154.38 4.65 43.33 Kumar et al. 199834 2.35 0.230 0.87 0.2 4.70 0.46 1.74 Montagnini 200035 4.09 0.230 1.34 0.54 22.09 1.24 7.24 Montagnini 200036 2.48 0.200 1.09 3.22 79.86 6.44 35.10 Montagnini 200037 3.28 0.200 1.02 1.21 39.69 2.42 12.34 Stanley & Montagnini 199938 3.28 0.304 1.50 3.2 104.96 9.73 48.00 Wang et al. 199139 2.07 0.116 0.62 14.6 302.20 16.90 90.40 Yamada et al. 200440 1.21 0.056 0.48 20.4 246.80 11.40 97.30 Yamada et al. 200441 1.20 0.068 0.00 21.5 259.00 14.60 Yamada et al. 200442 0.98 0.051 0.30 25.9 253.50 13.20 77.50 Yamada et al. 200443 1.79 0.159 0.65 3.2 57.30 5.10 20.90 Yamada et al. 200444 2.69 0.105 0.57 4.3 115.80 4.50 24.50 Yamada et al. 200445 0.79 0.059 0.47 26.8 211.30 15.80 126.40 Yamada et al. 200446 2.50 0.165 0.56 2.6 65.10 4.30 14.60 Yamada et al. 200447 1.57 0.092 0.52 21.6 338.80 19.80 113.00 Yamada et al. 200448 1.48 0.103 0.31 3.8 56.30 3.90 11.90 Yamada et al. 200449 1.85 0.114 1.10 2.1 38.90 2.40 23.00 Yamada et al. 200450 Not available Not available Not available Not available Not available Not available Not available Yamada et al. 200451 1.80 0.113 1.07 1.5 27.00 1.70 16.00 Yamada et al. 200452 2.00 0.083 1.21 2.4 48.00 2.00 29.00 Yamada et al. 200453 1.51 0.062 0.61 7.1 107.21 4.37 43.17 Parotta 199954 Not available Not available Not available Not available 58.10 4.20 16.90 Yamada et al. 200455 Not available Not available Not available Not available 82.00 5.40 42.00 Yamada et al. 200456 Not available Not available Not available Not available 20.70 1.30 14.50 Yamada et al. 200457 0.87 0.134 0.52 5.6 48.72 7.50 29.01 Wang et al. 199158 2.85 0.125 0.68 4.08 116.16 5.10 27.87 Kumar et al. 199859 2.15 0.110 1.26 7.78 167.04 8.56 97.87 Kumar et al. 199860 1.73 0.132 1.68 11.95 206.38 15.77 201.12 Kumar et al. 199861 2.40 0.128 0.82 4.43 106.45 5.67 36.19 Kumar et al. 199862 2.85 0.166 1.22 2.05 58.32 3.40 24.91 Kumar et al. 199863 2.76 0.123 0.48 1.8 49.68 2.21 8.59 Kumar et al. 199864 1.83 0.082 0.77 6 110.00 4.90 46.00 Lugo 199265 1.71 0.077 0.80 7 120.00 5.40 56.00 Lugo 199266 2.68 0.180 0.58 2.23 59.76 4.01 12.93 Montagnini 200067 1.73 0.140 1.01 4.03 69.72 5.64 40.70 Montagnini 200068 0.99 0.075 0.35 5.89 58.31 4.42 20.62 Montagnini 200069 1.65 0.160 0.72 3.61 59.57 5.78 25.99 Montagnini 200070 1.57 0.120 0.63 4.19 65.78 5.03 26.40 Montagnini 200071 2.21 0.210 0.77 2.87 63.43 6.03 22.10 Stanley & Montagnini 199972 1.79 0.150 0.60 3.62 64.80 5.43 21.72 Stanley & Montagnini 199973 1.98 0.270 1.82 1.26 24.95 3.40 22.93 Stanley & Montagnini 1999
Itaric numbers are caltulated value.
第2章 メタ解析によるマンギウムアカシアのバイオマス中の窒素とリンの蓄積特性
33
ReferencesHardiyanto E, Wicaksono A (2008) Inter-rotation site management, stand growth and soil properties
in Acacia mangium plantations in south Sumatra, Indonesia. In: Nambiar E (ed) Site management and productivity in tropical plantation forests: Proceedings of Workshops in Piracicaba (Brazil) 22-26 November 2004 and Bogor (Indonesia) 6-9 November 2006. Cifor, Jakarta, pp 107-122.
Hardiyanto E, Anshori S, Sulistyono D (2004) Early results of site management in Acacia mangium plantations at PT Musi Hutan Persada, South Sumatra, Indonesia. In: Nambiar E, Ranger J, Tiarks A, Toma T (eds) Site management and productivity in tropical plantation forests: proceedings of workshops in Congo July 2001 and China February 2003. CIFOR, pp 93-108.
Kumar BM, George SJ, Jamaludheen V, Suresh T (1998) Comparison of biomass production, tree allometry and nutrient use efficiency of multipurpose trees grown in woodlot and silvopastoral experiments in Kerala, India. Forest Ecol Manage 112:145-163.
Lugo AE (1992) Comparison of tropical tree plantations with secondary forests of similar age. Ecol Monogr 62:1-41.
Montagnini F (2000) Accumulation in above-ground biomass and soil storage of mineral nutrients in pure and mixed plantations in a humid tropical lowland. Forest Ecol Manage 134:257-270.
Nurwahyudi, Tarigan M (2004) Logging residue management and productivity short-rotation Acacia mangium plantations, Riau province, Sumatra, Indonesia. In: Nambiar E, Ranger J, Tiarks A, Toma T (eds) Site management and productivity in tropical plantation forests: Proceedings of Workshops in Congo July 2001 and China February 2003. CIFOR, Jakarta, pp 109-120.
Nykvist N, Sim B (2009) Changes in carbon and inorganic nutrients after clear felling a rainforest in Malaysia and planting with Acacia mangium. J Trop Forest Sci 21:98-112.
Nykvist N, Liang S, Malmer A (1996) Effects of tractor logging and burning on biomass production and nutrient accumulation in Acacia mangium plantations in Sabah, Malaysia. J Trop Forest Sci 9:161-183.
Parrotta JA (1999) Productivity, nutrient cycling, and succession in single-and mixed-species plantations of Casuarina equisetifolia, Eucalyptus robusta, and Leucaena leucocephala in Puerto Rico. Forest Ecol Manage 124:45-77.
Stanley WG, Montagnini F (1999) Biomass and nutrient accumulation in pure and mixed plantations of indigenous tree species grown on poor soils in the humid tropics of Costa Rica. Forest Ecol Manage 113:91-103.
Vu DH, Le T, Nguyen T, Pham T (2008) Site management and productivity of Acacia auriculiformis plantations in South Vietnam. In: Nambiar E (ed) Site management and productivity in tropical plantation forests: Proceedings of Workshops in Piracicaba (Brazil) 22-26 November 2004 and Bogor (Indonesia) 6-9 November 2006. CIFOR, Jakarta, pp 123-139.
Vu DH, Pham V, Pham T, Ho V, Nguyen T, Ha MD, Nguyen TT (2004) Site management and productivity of Acacia auriculiformis plantations in South Vietnam. In: Nambiar E, Ranger J, Tiarks A, Toma T (eds) Site management and productivity in tropical plantation forests: Proceedings of Workshops in Congo July 2001 and China February 2003. CIFOR, Jakarta, pp 121-138.
Wang D, Bormann FH, Lugo AE, Bowden RD (1991) Comparison of nutrient-use efficiency and biomass production in five tropical tree taxa. Forest Ecol Manage 46:1-21.
Xu D, Yang Z, He Q (1998) Above ground biomass production and nutrient cycling of middle age plantation of Acacia mangium. Forest Res 11:599-606. (In Chinese with English summary)
Yamada M, Toma T, Hiratsuka M, Morikawa Y (2004) Biomass and potential nutrient removal by harvesting in short-rotation plantations. In: Nambiar E, Ranger J, Tiarks A, Toma T (eds) Site management and productivity in tropical plantation forests: proceedings of workshops in Congo July 2001 and China February 2003. CIFOR, Jakarta, pp 213-226.
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
34
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
3.1 はじめに 第1章で述べたように、土壌は樹木の生産性を決定する要因の一つである。それと同時に、
樹木からリターフォールや根の滲出物を介して有機物の供給を受け、特に表層土壌の性質は土
地利用が変わることによって変化する。人為的な土地利用の改変によって劣化した土壌に対し
て、造林に伴う炭素の固定効果によって、生産性を回復させる効果が期待されている(例えば
Fisher 1995)。近年においては京都議定書中で森林土壌中の炭素量(有機物量)の算出に関す
る取り扱いが示されている。議定書3条2項では、森林以外の土地利用を行っていた場所にお
いて新規植林をおこなった場所を炭素吸収源として算出する場合、土壌への炭素蓄積量を透明
かつ検証可能な方法で測定することが求められている。温帯林に関しては、90年代後半以降、
造林による炭素蓄積への影響に関連する成果が次々に報告されている(例えばSakai et al. 2010;
Wei et al. 2010)。
湿潤熱帯では、1980年代頃から盛んになった熱帯造林の土壌への影響が近年になってようや
く調べられるようになり、2000年代後半になって、報告例が急激に増加した。特に、マメ科早
生樹造林による土壌回復効果は、窒素を中心に各地で確かめられている(表1.2)が、その効果
は第1章で述べたように土地利用履歴、斜面位置や母材などの土壌の性質(Wei et al. 2010)、
気候区分、造林後の期間(林齢)によって影響を受ける(Fisher and Binkley 2000)。成長が旺
盛な草地のように多量の有機物が供給される条件と比較すれば、造林による有機物蓄積の効果
が現れない事例も報告されている(Yamashita et al. 2008)。植生による土壌への影響に関する
研究は、初期状態から同一の手法を用いて時系列的にモニタリングすることが理想である
(Yanai et al. 2003)が、現実には非常に困難であるため、比較的似通った土地利用履歴があり
比較可能な林分を初期状態と仮定して、その変化が調べられている。
本章では、試験地として設定した湿潤熱帯環境下の二次林から転換された数種の人工林下に
おいて堆積有機物と土壌の化学性を比較し、人工林タイプの違いによってどの元素が影響を受
けやすいか、どの程度まで影響が及ぶのかについて検討する。特に、バイオマス中に窒素を多
く含むマンギウムアカシア林の表層土壌で、窒素をはじめとする各種養分濃度が高いかどうか
検証を行う。同時に、本研究を行った試験地の詳細な情報を記載する。
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
35
3.2 方法
3.2.1 試験地の位置と表層地質 本論文の試験は、ボルネオ島北部に位置する、マレーシアサバ州東部にあるサンダカン市近
郊のサバ森林局が持つ試験林にて行なった(図3.1)。本章では、3カ所の試験地から6種の人
工林および皆伐地の堆積有機
物と表層土壌を採取し、その
化学性を比較した。Gum
Gum森林保護区はサンダカン
中心部からおよそ28 km、
Lungmanis 森林保護区内の
Kolapis A試験地はおよそ60
km、Segaliud-Lokan森林保護
区はおよそ80 kmの地点に位
置する。いずれの試験地も、
サンダカンからラナウ-コタ
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
36
Fig. 3.2 Mean monthly rainfall (mm) and temperature (°C) at the Sandakan airport
図3.2 サンダカンの月平均降水量と平均気温 観測期間は1961-90年
!"#
$%&
'"( )*(
'"+ !,# !,-
),.
/%*
012
345
6%1
78
9:
98
;:
:
7::
9::
;::
<::
8::'"-"+=>"?@/"#A"B"#?@C$@DEEF'"-"+=>"?@/"#A"B"#?@GH
6°00’N
5°00’N
118°00’E
10 20 30 40 km
Sandakan
Kolapis Station●
●
●Lahad Datu
Danum Valley FR
Kinabatangan river
●
●
Segaliud-Lokan FR
Gum Gum FR
Kabili-Sepilok FR
To Kota Kinabalu
Fig. 3.1 Location of the research stations
図3.1 試験地の位置
キナバルに向かうラブックロード(Jalan Labuk)沿いに位置している。
Gum Gum森林保護区は平坦に近いゆるやかな波状地で、季節的な大雨によって低い部分は滞
水するような沖積地に位置する。海からの距離が近く、標高も数10 m程度である。Kolapis A試
験地とSegaliud-Lokan森林保護区は5–20%の勾配のある波状地にあり、Segaliud-Lokan森林保護
区が最も勾配が大きかった。いずれの試験地も、気圧センサー付きGPS計の値で、標高100m以
下に位置していた。
各試験地の土地利用の履歴は、サバ州森林局の公開データベース(Conservation Areas
Information and Monitoring System; Sabah Forestry Department 2012)に、詳細に記されている。
Gum Gum 森林保護区は1920年代から60年代にかけて数度にわたって択伐が入っている。造林試
験が開始されたのは1964年からであった。Lungmanis 森林保護区はもともとSegaliud-Lokan 森林
保護区の一部であり、1961年に原生林としての保護区に指定され、1984年に利用目的の森林保
護区として再指定されている。Segaliud-Lokan 森林保護区は1984年に原生林(virgin jungle
forest)から経済林(commercial forest)として指定され、一部地域は民間会社に伐採権が与えら
れ、一部はDeramakot 森林保護区として制定され持続的な天然林利用のさまざまな試みがなさ
れている。元々の植生は、ホワイトセラヤ(Parashorea tomentella)やボルネオテツボク
(Eusideroxylon zwageri)を代表とする低地フタバガキ林であった。
試験地の地質は、第三紀の中新生前期に形成されたメランジュ(泥岩と岩塊の混合体)、あ
るいは中新生後期に形成された堆積岩であり、前者はGarinono Formation、後者はSandakan
Formationと定義されたグループが分布している(Hutchinson 2005)。FAO(1974)の土壌図で
は、ボルネオ島北部はAcrisolが一面に分布しているとされている。実際には、ボルネオ島北部
は、部分的に母材が超塩基性岩(Proctor et al. 1988; Kitayama and Aiba 2002)や石灰岩由来の土
壌が分布して、母材の影響を受けた特殊な土壌が分布する。また、砂質なポドソル状土壌(ケ
ランガス)がスポット状に分布しており、一部はGum Gum森林保護区のそばに広がるKabili-
Sepilok保護林内にも分布している(Dent et al. 2006)。本研究を行った試験地は、粘土含量の大
きい堆積岩が主な母材であった(付表3.1)。
3.2.2 気温と降水量
本試験地を含むボルネオ島は、Köppenの気候区分では、平均月降水量60 mm以下の月が見ら
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
37
れない湿潤熱帯気候下にある(Walsh and Newbery 1999; 付図3.1)。サンダカン中心部から約10
kmの地点にあるサンダカン空港(北緯5.9度、東経118.1度、高度13 m)の1961–1990年の年平均
気温と年平均降水量は、27.0 ℃と3010 mmであった(国立天文台 2002; 図3.2)。長期気象デー
タの解析から、ボルネオ島北東部は、長期間の平均値に表れない長期的乾燥(月降水量<100
mm)がボルネオ島西部に比べて、比較的頻繁に起こっていることが明らかにされている
(Walsh and Newbery 1999)。
3.2.3 表層土壌と堆積有機物のサンプリングと分析 各試験地には、成長差を比較するために、外来種を多く含む多様な樹種が小さい面積で試験
的に植えられている。そのなかで、3試験地から13林分をプロットとして選んだ(表3.1)。各試
験地を構成する人工林プロットは、Gum Gum試験地では、マンギウムアカシア(Acacia
mangium)、マホガニー(Swietenia macrophylla)、フープパイン(Araucaria cunninghamii)、カ
リビアマツ(Pinus caribaea)、カプール(Dryobaranops lanceolata)であった。Kolapis A試験地
では、マンギウムアカシア、マホガニー、フープパイン、カリビアマツ、および二次林伐採区で
あった。Segaliud-Lokan試験地では、マンギウムアカシア、カプール、ファルカタ(Falcataria
moluccana)であった。各試験地の代表的な土壌断面1カ所の断面記載と分析値を記した(付図
3.2–3.4; 付表3.1)。
表層土壌と堆積有機物は2002年8月から10月にかけて、各プロットからサンプリングを行っ
た。それぞれのプロットから、ランダムに6地点を選び、その中心点で50 cm × 50 cmの方形枠
内の堆積有機物を採取した。各地点において2 m × 2 mの四隅から、コアサンプラー(Split tube
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
38
表3.1 堆積有機物と土壌サンプリングプロットの詳細Table 3.1 Description of the forest floor amd the surface soil survey plotsResearch station Dominant species Year planted Plot size (m2) Soil type Profile surveyGum-Gum Acacia mangium Willd. 1982 20 ! 50(5°52´N, 117°55´E) Swietenia macrophylla King. 1968 25 ! 50
Araucaria cunninghamii Sweet. 1975 40 ! 40 Alisol Appendix 3.1Pinus caribaea MOR. 1975 40 ! 40Dryobalanops lanceolata Burck 1992 25 ! 30
Kolapis-A Acacia mangium Willd. 1989 100 ! 140 Alisol Appendix 3.2(5°45´N, 117°39-40´E) Swietenia macrophylla King. 1970 50 ! 100 Alisol executed
Araucaria cunninghamii Sweet. 1975 not available**Pinus caribaea MOR. 1975 not available**Open site (Secondary forest) 2002* 100 ! 200** Alisol executed
Segaliud-Lokan Acacia mangium Willd. 1990 40 ! 40 Alisol executed(5°38´N, 117°32-33´E) Dryobalanops lanceolata Burck 1991 40 ! 40 Cambisol executed
Falcataria moluccana (Miquel) Barneby & Grimes 1989 40 ! 40 Alisol Appendix 3.3*Clear Cutted year** Soil samples were taken from approximately 40 ! 40 m2 area.
sampler、Eijkelkamp社、オランダ)を用いて0-30 cmの土壌を採取し、0-5 cm、5-15 cm、15-30
cmの深度毎に分割した。いずれの地点も緻密な土壌であったため、採取による目立った圧密は
みられなかった。四隅から採取した土壌は、それぞれの深度毎に混合し、1サンプルとした。
Kolapis試験地のマンギウムアカシア林とマホガニー林はプロット面積が大きかったため、斜面
位置に応じてそれぞれ3つと2つの小プロットにわけてサンプリングしたが、小プロット間で
化学性に有意な違いが認められなかったためそれぞれ1つのプロットとして解析に用いた。
いずれの試料も風乾し、堆積有機物についてはミルで粉砕、土壌については2 mmの篩にか
けた。pH(H2O)は1 : 2.5の割合でのガラス電極法、有機炭素はWalkley-Black法による湿式灰化、
全窒素はケルダール法で測定した。土壌については、可給態リンをBrayII法によって抽出し、比
色法で測定した。交換性カルシウム、マグネシウム、カリウムは1N酢酸アンモニウムで抽出
し、原子吸光法で測定した。堆積有機物は硝酸、過塩素酸による湿式灰化後、全カルシウム、
マグネシウム、カリウム量を原子吸光法で求めた。土壌については各サンプル毎に分析を行
い、堆積有機物については各プロットでの混合試料を分析に供した。試料の処理と分析はサバ
森林研究センターの化学研究室に委託して行った。
統計解析は、樹種間と試験地間での違いを区別するため、Gum Gum試験地とKolapis試験地で
共通の樹種を測定した8林分を選んで、試験地(2カ所)と樹種(4樹種)を要因とした2元
配置の分散分析を、各層位ごとに行った。分散の正規性と等分散性を確保するためBox-Cox変
換(Box and Cox 1964)を行った。pHについては水素イオン濃度に換算後、分散分析を行っ
た。樹種の影響が有意で、かつ試験地間の影響より強いと思われる項目に対して、樹種間で
Tukey-Kramer法による多重比較を行った。分析はJMP 6.0.3(SAS Institute)を用い、Box-Cox変
換のパラメータもソフトウェアが計算した値を用いた。
3.3 結果
土壌断面調査の結果から、Segaliud Lokan試験地のカプール林を除いて、薄い表層と赤黄色の
次表層を持つAlisols様の形態を示していた。Segaliud Lokan試験地のカプール林は、次表層以下
が塩基を多く含む赤褐色の土色を呈しており、Cambisolsに分類された。土壌15-30 cmの有機炭
素、全窒素、交換性カリウム濃度の分布はそれぞれ、2.40–5.08 mg g-1、0.55–0.95 mg g-1、0.08–
0.17 cmolc kg-1となっており比較的均質であった(表3.2)。一方交換性カルシウム、マグネシウ
ム濃度は土壌15-30 cmの最低値と最高値の比は、それぞれ22倍、9倍であり、プロット間の違い
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
39
が大きかった。
堆積有機物量は、いずれの試験地においてもマンギウムアカシア林が818–1004 g m-2と最も多
く、堆積有機物中の窒素含有量も12–16 g m-2と最大であり、最も少ない林分の2倍以上の蓄積
があった(表3.3)。
土壌化学性パラメータについて分散分析の結果を比較すると、有機炭素、全窒素、交換性カ
リウムについてはF値、P値の違いから、ほとんどの層位で試験地間の影響より樹種間の影響が
大きく、有意な違いが認められた(表3.4)。また、pH(H2O)についても、表層5cm以下では樹
種の影響が大きいことがわかった。可給態リンは試験地間の違いがより大きく、交換性カルシ
ウムとマグネシウムは樹種と試験地間の違いが同程度有意に影響していた。
堆積有機物量および養分含有量について同様に比較すると、樹種間のみに有意差が認めら
れ、試験地間による違いは認められなかった(表3.5)。
次に、分散分析の結果から樹種の影響が大きかった有機炭素、全窒素、カリウムについて、
堆積有機物中の含有量と、土壌0-5 cm、5-15 cm、15-30 cm中の濃度を、Gum Gum試験地と
Kolapis試験地のデータを用いて4樹種間で比較した(図3.3a、3.3b)。また、土壌pHについて
も樹種間で比較した(図3.3b)。有機炭素、全窒素、カリウムとも、マンギウムアカシアが堆
積有機物中では含有量が大きく、土壌においても5-15 cmの層位まで4樹種中フープパイン林と
並んで最も濃度が高かった。堆積有機物中の有機炭素は、フープパインで最も少なかったが、
土壌中ではマンギウムアカシア林と同程度に濃度が高く、有機炭素が4樹種中最も低濃度だっ
たカリビアマツ林土壌と比較すると5-15 cmまで有意に濃度が高い結果となった。いずれの元素
も、樹種間の差は表層0-5 cmが最も顕著であり、土壌15-30 cmでは多重比較による平均値の有
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
40
表3.2 各種人工林の堆積有機物量とその養分蓄積量Table 3.2�Averages of the dry mass and the accumulated nutrient at the forest floor of the plantationsResearch station sp.
Gum Gum Am 1003.7 (±142.4) 301.6 (±42.8) 12.85 (±1.82) 1.74 (±0.25) 9.73 (±1.38) 1.90 (±0.27)Gum Gum Sm 857.7 (±44.5) 263.6 (±13.7) 8.66 (±0.45) 1.26 (±0.07) 18.72 (±0.97) 2.14 (±0.11)Gum Gum Ac 762.5 (±84.5) 275.6 (±30.5) 7.78 (±0.86) 1.20 (±0.13) 14.96 (±1.66) 2.75 (±0.30)Gum Gum Pc 716.3 (±68.7) 245.9 (±23.6) 5.80 (±0.56) 1.51 (±0.14) 4.97 (±0.48) 1.74 (±0.17)Gum Gum Dl 601.5 (±61.4) 191.0 (±19.5) 6.19 (±0.63) 1.14 (±0.12) 7.98 (±0.81) 1.85 (±0.19)Kolapis Am 1316.1 (±96.1) 388.3 (±29.6) 15.99 (±1.17) 3.96 (±0.42) 8.50 (±0.66) 2.03 (±0.15)Kolapis Sm 1079.7 (±104.2) 315.8 (±29.4) 14.20 (±1.38) 2.01 (±0.22) 19.95 (±2.08) 3.24 (±0.32)Kolapis Ac 643.6 (±70.9) 210.0 (±23.1) 4.44 (±0.49) 1.05 (±0.12) 8.35 (±0.92) 1.76 (±0.19)Kolapis Pc 898.3 (±75.0) 346.7 (±28.9) 7.01 (±0.58) 1.10 (±0.09) 8.46 (±0.71) 1.80 (±0.15)
Segaliud-Lokan Am 818.2 (±98.1) 290.9 (±85.4) 11.78 (±1.41) 1.60 (±0.19) 6.34 (±0.76) 1.50 (±0.44)Segaliud-Lokan Dl 596.0 (±74.0) 187.2 (±23.3) 4.71 (±0.58) 1.06 (±0.13) 15.65 (±1.94) 2.06 (±0.26)Segaliud-Lokan Fm 398.2 (±48.3) 125.4 (±15.2) 5.14 (±0.62) 1.20 (±0.15) 4.42 (±0.54) 0.70 (±0.08)
Numbers in the parenthesis indicate standard errors.Abbrebiations of species indicate; Am: Acacia mangium, Sm: Swietenia macrophylla , Ac: Araucaria cunninghamii , Pc: Pinus caribea, Dl:Dryobalanops lanceolata, Fm: Falcataria moluccana.
Ca Mgg m-2
Dry Mass Organic Carbon Total Nitrogen K
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
41
表3.3 各種人工林の表層土壌の理化学性Table 3.3�Averages of the soil properties of the research plotResearch station sp.
0-5cmGum Gum Am 0.99 (±0.02) 3.58 (±0.85) 4.79 (±0.06) 18.35 (±0.69) 2.45 (±0.11)Gum Gum Sm 1.06 (±0.04) 5.07 (±0.49) 5.21 (±0.12) 15.07 (±1.00) 2.15 (±0.12)Gum Gum Ac 0.98 (±0.04) 8.90 (±1.59) 5.11 (±0.07) 15.20 (±1.03) 1.92 (±0.16)Gum Gum Pc 0.91 (±0.06) 3.65 (±0.78) 5.18 (±0.10) 14.80 (±0.52) 1.85 (±0.05)Gum Gum Dl 1.09 (±0.03) 0.95 (±0.09) 5.03 (±0.05) 12.00 (±0.88) 1.82 (±0.12)
Kolapis Am 0.86 (±0.02) 2.44 (±0.51) 4.53 (±0.05) 17.07 (±0.59) 2.33 (±0.07)Kolapis Sm 0.96 (±0.04) 4.92 (±0.68) 4.66 (±0.06) 15.20 (±0.77) 1.95 (±0.07)Kolapis Ac 0.85 (±0.02) 29.53 (±3.73) 4.58 (±0.03) 19.98 (±0.42) 1.85 (±0.08)Kolapis Pc 1.13 (±0.02) 4.15 (±1.03) 5.18 (±0.04) 12.78 (±0.62) 1.63 (±0.07)Kolapis Open 0.83 (±0.11) 7.12 (±0.34) 5.25 (±0.08) 13.40 (±0.59) 1.57 (±0.04)
Segaliud-Lokan Am 0.95 (±0.03) 3.05 (±0.47) 4.42 (±0.02) 12.83 (±0.75) 1.55 (±0.08)Segaliud-Lokan Dl 1.08 (±0.02) 4.87 (±0.76) 5.28 (±0.15) 11.03 (±0.42) 1.33 (±0.03)Segaliud-Lokan Fm 1.05 (±0.02) 3.43 (±0.58) 4.58 (±0.08) 11.80 (±0.84) 1.53 (±0.07)
5-15cmGum Gum Am 0.74 (±0.05) 4.83 (±2.90) 4.89 (±0.04) 8.20 (±0.56) 1.40 (±0.04)Gum Gum Sm 0.87 (±0.07) 1.12 (±0.19) 4.61 (±0.13) 6.32 (±0.48) 1.25 (±0.05)Gum Gum Ac 0.84 (±0.05) 5.80 (±2.30) 5.01 (±0.07) 8.28 (±0.76) 1.35 (±0.12)Gum Gum Pc 0.94 (±0.02) 1.20 (±0.26) 4.97 (±0.08) 6.02 (±0.24) 0.97 (±0.04)Gum Gum Dl 0.92 (±0.06) 1.02 (±0.33) 4.88 (±0.06) 5.78 (±0.55) 1.12 (±0.09)
Kolapis Am 0.76 (±0.03) 2.48 (±0.32) 4.75 (±0.04) 8.99 (±0.48) 1.41 (±0.06)Kolapis Sm 0.92 (±0.04) 4.73 (±1.24) 4.79 (±0.04) 6.95 (±0.30) 1.08 (±0.09)Kolapis Ac 0.80 (±0.06) 24.27 (±3.95) 4.68 (±0.05) 10.42 (±0.86) 1.28 (±0.05)Kolapis Pc 0.97 (±0.03) 4.10 (±0.85) 5.11 (±0.06) 6.53 (±0.36) 1.10 (±0.04)Kolapis Open 0.96 (±0.05) 6.67 (±0.93) 4.96 (±0.07) 8.35 (±0.63) 1.03 (±0.04)
Segaliud-Lokan Am 0.99 (±0.04) 2.48 (±0.40) 4.56 (±0.02) 5.73 (±0.21) 0.77 (±0.03)Segaliud-Lokan Dl 0.96 (±0.03) 2.48 (±0.82) 4.94 (±0.06) 5.07 (±0.25) 0.83 (±0.05)Segaliud-Lokan Fm 0.98 (±0.03) 2.00 (±0.45) 4.70 (±0.10) 3.70 (±0.43) 0.75 (±0.03)
15-30cmGum Gum Am 1.02 (±0.07) 3.10 (±0.84) 4.72 (±0.03) 3.57 (±0.38) 0.83 (±0.06)Gum Gum Sm 0.90 (±0.06) 1.03 (±0.23) 4.71 (±0.06) 3.03 (±0.27) 0.82 (±0.05)Gum Gum Ac 0.97 (±0.07) 8.53 (±5.52) 4.91 (±0.09) 4.63 (±0.33) 0.92 (±0.09)Gum Gum Pc 1.16 (±0.03) 3.88 (±2.12) 4.78 (±0.06) 2.72 (±0.29) 0.67 (±0.05)Gum Gum Dl 1.04 (±0.06) 1.75 (±0.89) 4.61 (±0.04) 3.45 (±0.41) 0.80 (±0.07)
Kolapis Am 0.91 (±0.05) 3.02 (±1.15) 4.61 (±0.04) 4.62 (±0.35) 0.94 (±0.05)Kolapis Sm 1.10 (±0.04) 6.30 (±2.53) 4.78 (±0.04) 4.08 (±0.37) 0.76 (±0.06)Kolapis Ac 1.03 (±0.04) 13.62 (±3.04) 4.80 (±0.03) 5.08 (±0.38) 0.92 (±0.05)Kolapis Pc 1.09 (±0.03) 3.83 (±1.15) 4.92 (±0.06) 4.55 (±0.37) 0.95 (±0.09)Kolapis Open 1.19 (±0.05) 4.67 (±0.75) 4.75 (±0.09) 4.92 (±0.74) 0.72 (±0.07)
Segaliud-Lokan Am 1.00 (±0.06) 1.17 (±0.22) 4.56 (±0.06) 4.22 (±0.38) 0.68 (±0.06)Segaliud-Lokan Dl 1.05 (±0.08) 2.80 (±1.06) 4.91 (±0.05) 3.73 (±0.15) 0.67 (±0.06)Segaliud-Lokan Fm 1.08 (±0.08) 3.33 (±2.29) 4.63 (±0.06) 2.40 (±0.43) 0.55 (±0.02)
Numbers in the parenthesis indicate standard errors.Abbrebiations of species indicate; Am: Acacia mangium, Sm: Swietenia macrophylla , Ac: Araucaria cunninghamii , Pc:Pinus caribea, Dl: Dryobalanops lanceolata, Fm: Falcataria moluccana, Open: an open land coverted from a secondaryforest in 2002.
Bulk densitykg dm-3
Organic Carbon Total NitrogenOrganic matter kg m-3
pH(H2O)mg g-1 mg g-1
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
42
表3.3 (続き) 各種人工林の表層土壌の理化学性Table 3.3 (cont.)�Averages of the soil properties of the research plotResearch station sp.
0-5cmGum Gum Am 23.73 (±0.92) 0.34 (±0.09) 6.88 (±1.86) 3.48 (±0.75)Gum Gum Sm 15.67 (±0.98) 0.27 (±0.04) 5.60 (±0.99) 3.36 (±0.22)Gum Gum Ac 10.07 (±0.63) 0.16 (±0.02) 5.82 (±1.60) 2.67 (±0.30)Gum Gum Pc 20.39 (±2.12) 0.23 (±0.03) 4.59 (±0.38) 3.28 (±0.17)Gum Gum Dl 13.61 (±1.60) 0.18 (±0.01) 3.62 (±0.72) 2.87 (±0.39)Kolapis Am 8.63 (±0.50) 0.31 (±0.03) 3.60 (±0.53) 1.91 (±0.16)Kolapis Sm 11.44 (±0.87) 0.18 (±0.01) 3.67 (±0.36) 1.97 (±0.15)Kolapis Ac 13.09 (±0.71) 0.16 (±0.01) 0.57 (±0.16) 0.85 (±0.14)Kolapis Pc 7.06 (±0.54) 0.28 (±0.07) 6.47 (±1.20) 3.31 (±0.90)Kolapis Open 12.55 (±1.22) 0.61 (±0.05) 2.54 (±0.18) 1.17 (±0.08)
Segaliud-Lokan Am 8.61 (±0.65) 0.22 (±0.01) 0.81 (±0.23) 1.11 (±0.12)Segaliud-Lokan Dl 10.18 (±0.57) 0.21 (±0.02) 6.80 (±1.08) 1.84 (±0.34)Segaliud-Lokan Fm 10.32 (±1.35) 0.15 (±0.00) 2.21 (±0.44) 1.23 (±0.16)
5-15cmGum Gum Am 9.60 (±0.82) 0.15 (±0.01) 3.60 (±0.95) 2.60 (±0.42)Gum Gum Sm 5.39 (±0.64) 0.13 (±0.01) 2.31 (±0.29) 2.35 (±0.17)Gum Gum Ac 3.52 (±0.61) 0.11 (±0.01) 4.89 (±1.45) 2.53 (±0.42)Gum Gum Pc 7.49 (±0.34) 0.10 (±0.01) 1.89 (±0.23) 1.92 (±0.16)Gum Gum Dl 4.84 (±0.55) 0.10 (±0.01) 2.15 (±0.51) 1.73 (±0.28)Kolapis Am 3.25 (±0.18) 0.17 (±0.01) 2.88 (±0.41) 1.84 (±0.16)Kolapis Sm 3.45 (±0.44) 0.15 (±0.03) 1.63 (±0.29) 1.15 (±0.12)Kolapis Ac 3.49 (±0.78) 0.12 (±0.00) 0.15 (±0.02) 0.71 (±0.11)Kolapis Pc 2.83 (±0.25) 0.17 (±0.03) 4.69 (±0.83) 1.92 (±0.26)Kolapis Open 8.08 (±0.60) 0.19 (±0.02) 1.17 (±0.18) 0.59 (±0.06)
Segaliud-Lokan Am 2.88 (±0.22) 0.15 (±0.02) 0.41 (±0.13) 0.67 (±0.07)Segaliud-Lokan Dl 5.15 (±0.50) 0.15 (±0.03) 3.99 (±0.56) 1.33 (±0.26)Segaliud-Lokan Fm 5.02 (±0.25) 0.10 (±0.01) 0.90 (±0.23) 0.83 (±0.14)
15-30cmGum Gum Am 3.32 (±0.31) 0.13 (±0.01) 1.62 (±0.37) 2.27 (±0.34)Gum Gum Sm 2.06 (±0.27) 0.11 (±0.01) 0.99 (±0.18) 1.82 (±0.19)Gum Gum Ac 1.70 (±0.23) 0.12 (±0.01) 3.16 (±1.54) 2.38 (±0.39)Gum Gum Pc 3.30 (±0.29) 0.08 (±0.01) 1.24 (±0.29) 1.60 (±0.17)Gum Gum Dl 3.04 (±0.22) 0.08 (±0.01) 0.62 (±0.27) 1.22 (±0.14)Kolapis Am 1.38 (±0.16) 0.13 (±0.01) 1.39 (±0.21) 1.19 (±0.11)Kolapis Sm 1.18 (±0.16) 0.09 (±0.01) 0.89 (±0.17) 0.75 (±0.12)Kolapis Ac 1.06 (±0.20) 0.09 (±0.01) 0.14 (±0.01) 0.70 (±0.20)Kolapis Pc 1.53 (±0.15) 0.17 (±0.03) 2.56 (±0.78) 1.36 (±0.34)Kolapis Open 3.77 (±0.70) 0.13 (±0.04) 0.50 (±0.12) 0.27 (±0.04)
Segaliud-Lokan Am 1.91 (±0.18) 0.15 (±0.03) 0.38 (±0.06) 0.47 (±0.06)Segaliud-Lokan Dl 3.26 (±0.37) 0.16 (±0.02) 1.77 (±0.23) 1.08 (±0.19)Segaliud-Lokan Fm 2.99 (±0.29) 0.09 (±0.01) 0.49 (±0.16) 0.52 (±0.10)
Numbers in the parenthesis indicate standard errors.Abbrebiations of species indicate; Am: Acacia mangium, Sm: Swietenia macrophylla , Ac: Araucariacunninghamii , Pc: Pinus caribea, Dl: Dryobalanops lanceolata, Fm: Falcataria moluccana, Open: an openland coverted from a secondary forest in 2002.
Available P Exchangeable K Exchangeable Ca Exchangeable Mgmg kg-1 cmolc kg-1 cmolc kg-1 cmolc kg-1
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
43
表3.4 2試験地4樹種を要因とした、土壌パラメータへの二元配置分散分析の結果
Tabl
e 3.
4 R
esul
ts o
f tw
o-w
ay a
naly
sis o
f var
ianc
e ap
plie
d fo
r the
soil
para
met
ers b
etw
een
the
plan
tatio
n sp
ecie
s and
the
site
sSo
il de
pth
dfF
PF
PF
PF
PF
PF
PF
P0-
5cm
Spec
ies
316
.4<
0.00
110
.4<
0.00
117
.1<
0.00
12.
620.
059
8.82
< 0.
001
14.9
< 0.
001
8.96
< 0.
001
Site
s1
38.4
< 0.
001
0.22
0.64
4.62
0.03
676
.1<
0.00
10.
870.
3632
.2<
0.00
137
.42
< 0.
001
Spec
ies !
Site
s3
5.44
0.00
25.
890.
001
0.44
0.73
24.6
< 0.
001
1.47
0.23
14.3
< 0.
001
3.75
0.01
65-
15cm
Spec
ies
38.
75<
0.00
15.
600.
002
8.48
< 0.
001
6.46
< 0.
001
2.81
0.04
716
.7<
0.00
14.
400.
007
Site
s1
0.64
0.43
0.00
130.
970.
200.
6655
.7<
0.00
14.
170.
046
29.7
< 0.
001
39.2
< 0.
001
Spec
ies !
Site
s3
6.26
< 0.
001
2.44
0.07
31.
720.
177.
00<
0.00
11.
380.
2634
.5<
0.00
16.
68<
0.00
115
-30c
mSp
ecie
s3
5.6
0.00
24.
130.
011.
640.
195.
010.
004
2.48
0.06
94.
290.
008
2.00
0.12
Site
s1
0.00
130.
9714
.7<
0.00
12.
220.
1439
.2<
0.00
10.
400.
536.
030.
017
49.2
< 0.
001
Spec
ies !
Site
s3
2.44
0.07
31.
190.
322.
280.
089
0.73
0.53
6.32
< 0.
001
9.94
< 0.
001
3.13
0.03
2 B
old
num
ber i
ndic
ates
sign
ifica
nt d
iffer
ence
s (P
< 0
.05)
.
Ex-M
gpH
(H2O
)O
CTN
Avai
labl
e-P
Ex-K
Ex-C
a
表3.5 2試験地4樹種を要因とした、堆積有機物パラメータへの二元配置分散分析の結果
Tabl
e 3.
5 R
esul
ts o
f tw
o-w
ay a
naly
sis o
f var
ianc
e ap
plie
d fo
r the
par
amet
ers o
f for
est f
loor
bet
wee
n th
e pl
anta
tion
spec
ies a
nd th
e si
tes
dfF
PF
PF
PF
PF
PF
PSp
ecie
s3
8.91
< 0.
001
3.60
0.01
937
.6<
0.00
116
.4<
0.00
139
.5<
0.00
15.
830.
002
Site
s1
3.17
0.08
2.35
0.13
0.66
0.42
1.81
0.18
0.29
0.59
0.01
10.
9154
Spec
ies !
Site
s3
2.08
0.11
3.33
0.02
610
.2<
0.00
18.
03<
0.00
18.
41<
0.00
15.
270.
003
Bol
d nu
mbe
r ind
icat
es si
gnifi
cant
diff
eren
ces (P
< 0
.05)
.
Ex-M
gD
ry M
ass
OC
TNEx
-KEx
-Ca
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
44
Fig. 3.3a Differences in organic carbon (OC) and total nitrogen (TN) accumulations in the forest floor and those concentrations in the surface soils between 4 speciesError bars indicate the standard error of the mean. Different letters indicate significant differences between species according to a host-hoc Tukey's HSD test (P < 0.05). No significant differences were observed in total nitrogen at 15-30 cm. Abbreviations of species indicate; Am: Acacia mangium, Sm: Swietenia macrophylla, Ac: Araucaria cunninghamii, Pc: Pinus caribea
図3.3a 有機炭素、全窒素の堆積有機物中含有量と表層土壌濃度の4樹種間での違い
Am Sm Ac Pc
0
5
10
15
20
OC (mg g-1 )
Am Sm Ac Pc
0
5
10
15
20
OC (mg g-1 )
Am Sm Ac Pc
0
5
10
15
20
OC (mg g-1 )
Am Sm Ac Pc
0
5
10
15
20
TN
(g m
-2)
Am Sm Ac Pc
0
1
2
3
TN
(m
g g
-1)
Am Sm Ac Pc
0
1
2
3
TN
(m
g g
-1)
Am Sm Ac Pc
0
1
2
3
TN
(m
g g
-1)
bc ab a b cbc
a bc caba b ba
a a aa
a ab bab
OC TN
Am Sm Ac Pc
0
100
200
300
400OC (g m-2)
Fo
rest
Flo
or
So
il 1
5–30 c
mS
oil 5
–15 c
mS
oil 0
–5 c
m
a a b b
ca abbc
aba ab b
a a aa
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
45
Fig. 3.3b Differences in K accumulations in the forest floor and exchangeable K concentrations and pH (H2O) in the surface soils between 4 species
Error bars of K indicate the standard error of the mean. Different letters indicate significant differences between species according to a host-hoc Tukey's HSD test (P < 0.05). The top, bottom, the line through the middle of the box of pH, and closed circle correspond to the 75th, 25th and 50th (median) percentiles and average. Error bars of pH extend from the 10th to 90th percentile. Abbreviations of species indicate; Am: Acacia mangium, Sm: Swietenia macrophylla, Ac: Araucaria cunninghamii, Pc: Pinus caribea
図3.3b 堆積有機物中のカリウム含有量と表層土壌の交換性カリウム濃度、および土壌pH (H2O)の4樹種間での違い
Am Sm Ac Pc
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Ex-K
(cm
ol c
kg
-1)
Am Sm Ac Pc
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Ex-K
(cm
ol c
kg
-1)
Am Sm Ac Pc
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Ex-K
(cm
ol c
kg
-1)
Am Sm Ac Pc
0
10
20
30
40
K (
mg g
-1)
ca b
aba cbc
ba abab
J
J J
J
Am Sm Ac Pc
4
4.4
4.8
5.2
5.6
pH
(H
2O
)
J JJ
J
Am Sm Ac Pc
4
4.4
4.8
5.2
5.6
pH
(H
2O
)
JJ
J J
Am Sm Ac Pc
4
4.4
4.8
5.2
5.6
pH
(H
2O
)
ba bb
aba bab
aba ba
K
pH (H2
O)
Fo
re
st
Flo
or
So
il 1
5–
30
cm
So
il 5
–1
5 c
mS
oil
0–
5 c
m
bc
a a aa
意差は認められなかっ
た。マンギウムアカシ
ア土壌はいずれの深さ
においても、最もpHが
高いカリビアマツと比
較して有意にpHが低
かった。
堆積有機物中の養分
含有量と土壌0-5 cmの
養分濃度とを全ての調
査林分で比較すると、
全窒素のみ有意な正の
相関が見られた(図
3.4; r = 0.61; P =
0.035)。他の元素につ
いては有意な関係はみ
られなかった。
3.4 考察 堆積有機物中の各種
成分は、立地条件の影
響を受けず樹種によって規定されていた(表3.4)。土壌中では、植生の影響よりも元の土壌中
に含まれる物質の存在量に影響されるため、鉱物風化が主な給源であるリン、カルシウム、マ
グネシウムでは樹種の影響よりも試験地間の影響の方が強かった。しかし、特に最表層では有
機物供給によって規定される有機炭素、全窒素、および移動しやすい元素であるカリウムは試
験地間の違いによる影響よりも、樹種の違いによる影響をより強く受けていた。pH(H2O)も樹
種間による違いが影響していたが、これは有機物によって生成される有機酸や、窒素無機化の
際に生成する硝酸が影響しているものと考えられた。本研究では、窒素固定樹種であるマンギ
ウムアカシア林のpH(H2O)が低い傾向にあり、この考えと矛盾しなかった。マンギウムアカシア
林による土壌の酸性化はKolapis Aの他のマンギウムアカシア林で行われた研究例でも指摘され
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
46
100 150 200 250 300 350 400 45010
12
14
16
18
20
22
OC in forest floor (g m-2
)
OC
in
to
p s
oil
0-5
cm
(m
g g
-1)
0 5 10 15 201.0
1.5
2.0
2.5
3.0
TN in forest floor (g m-2
)
TN
in
to
p s
oil
0-5
cm
(m
g g
-1) r = 0.61
P = 0.035
0 1 2 3 4 50
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
K in forest floor (g m-2
)
K in
to
p s
oil
0-5
cm
(cm
ol c
kg-1
)
0 5 10 15 20 250
2
4
6
8
10
Ca in forest floor (g m-2
)
Ca
in
to
p s
oil
0-5
cm
(cm
ol c
kg-1
)
0 1 2 3 40
1
2
3
4
5
Mg in forest floor (g m-2
)
Mg
in
to
p s
oil
0-5
cm
(cm
ol c
kg-1
)
Fig. 3.4 Relationship between nutrient accumulation in forest floor and nutrient concentration in top soil (0-5 cm) at 12 sites. Error bers indicate the standard error of the mean (SEM) for both axes.
図3.4 堆積有機物中の養分含有量と表層土壌(0-5 cm)中の養分濃度との関係
ている。実験室内で行なった土壌と堆積有機物を用いた滴下試験から、堆積有機物から供給さ
れるDOC中の物質が分解及び無機化過程を経て有機酸や硝酸を生成し、酸性化に影響していた
と結論づけられている(Majalap 1999)。さらに、マンギウムアカシア造林後3.8年と10年目の
土壌を比較した結果でも、有意なpH(H2O)の低下が確認された(Nykvist and Sim 2009)。本研
究の結果も、堆積有機物中の窒素含有量が大きいことが酸性化に寄与していた可能性がある。
堆積有機物中の有機炭素、全窒素、カリウム量および、表層0-5 cmのそれぞれの濃度は4樹
種間での大小の順番に対応関係がみられた(図3.3ab)。さらに、堆積有機物中の量と表層0-5
cmの濃度との関係を全てのプロット間で比較した結果、全窒素においては有意な正の相関が
あった(図3.4)。これは有機炭素やカリウムでは分解を受けたり溶脱されることによって、堆
積有機物中の樹種間の明瞭な差が、土壌中では希釈されてしまうのに対し、全窒素は有機物分
解(微生物呼吸)を受けた後も不動化作用により、ある程度の分解段階まで比較的残存するた
めであると考えられた。リター分解に伴う窒素動態は、溶脱期、不動化期、無機化期に区分さ
れ、不動化期においては窒素は微生物成長に伴って保持される(大園・武田 2006)。場合に
よっては落葉外部から窒素が取り込まれることによって窒素現存量の純増加が起こりうる。実
際にマレーシアサラワク州でおこなわれた湿潤熱帯林を構成する15樹種のリターの分解試験に
おいて、炭素減少分による相対的な窒素濃度増加だけでなく窒素量自体の増加が確認されてい
る(Hirobe et al. 2004)。マンギウムアカシアは分散分析で比較した4樹種の中では、最も堆積
有機物量が大きく、かつ含まれている窒素量も大きかった。そのため、特に表層土壌において
は他3樹種と比較して有意に全窒素濃度が高かった。Hirobe et al. (2004)によれば、リンにつ
いても窒素と同様に不動化が起こることが示されている。本研究では、堆積有機物中のリンの
データが得られなかったが、窒素同様、有機物分解が行なわれている間も堆積有機物中に留
まっていた可能性がある。
第1章で述べたように、マンギウムアカシアによる土壌への影響に関する研究は、特に2000
年代後半になって数多く発表されている(Fisher 1995; Bernhard-Reversat 1996; Majalap 1999; Li et
al. 2001; Garay et al. 2004; Jang et al. 2004; Xue et al. 2005; Kimaro et al. 2007; Macedo et al. 2008;
Yamashita et al. 2008; Kunhamu et al. 2009; Wang et al. 2010)。これらの研究の多くが、マンギウ
ムアカシアの窒素を多く含んだ有機物の供給によって土壌窒素の蓄積が促され、表層土壌の窒
素条件を改善することを報告している。Jang et al. (2004)やMacedo et al. (2008)の研究例で
は、マンギウムアカシア林土壌の全窒素濃度の上昇が、30 cmの深さまで起こっていることが報
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
47
告されている。一方で本研究では、全窒素濃度の上昇は、表層15 cmまでの範囲であった。この
違いは、土壌タイプ、A層の厚さ、植栽前の植生や施業履歴、林齢などによる影響、対照区の状
態(二次林、生産力の大きい草地、裸地など)の違いによるものであると考えられる。本試験
地は、植栽前は二次林であり、Jang et al. (2004)およびMacedo et al. (2008)の研究例と比較
して土壌劣化が進んでいない場所であったため、植生による影響が15cm深までであったと考え
られる。実際に、二例の研究では、マンギウムアカシア林とかなり土壌劣化の進んだ場所との
比較を行っている。
堆積有機物量がマンギウムアカシア林で大きかった理由として、1)リターフォール量が大
きい、2)分解速度が遅いという二つの理由が考えられる。1)については次章で詳細な検討
を行う。2)については、分解試験の研究事例でマンギウムアカシアの葉リターの分解が他樹
種より遅いという事例が示されている(Majalap 1999; Li et al. 2001)。
地上部リターフォールと並んで、地下部リターフォールも土壌条件の改善にかなり貢献して
いることが予想される。本研究では、フープパイン林において、堆積有機物中の有機炭素量が
少なかったにもかかわらず土壌中の有機炭素濃度が高かった(図3.3a)。これはKolapis試験地
のフープパイン林において、大半が細根からなる有機物量が大きく、そこから鉱質土壌に有機
物が供給されたためと考えられた(表3.3)。フープパイン林の細根生産については第5章で詳
しく検討する。
3.5 まとめ 各種の湿潤熱帯人工林における堆積有機物と土壌の比較の結果、堆積有機物中の養分含有量
は樹種の違いによって規定され、土壌中においても有機炭素、全窒素、カリウム、pHについて
は特に表層において、試験地間の土壌の違いによる影響より樹種の違いによる影響を強く受け
ていることが明らかとなった。そのうち全窒素は、堆積有機物中の窒素含有量の違いが、表層
土壌中の窒素濃度の違いとして有意な影響を及ぼしていた。それらの違いは、地上部、地下部
からの有機物生産とそれに伴う供給量、および有機物中に含まれる元素含有量の樹種間での違
いによって影響されることが示唆された。逆に、有機物によって影響を受けにくいリン、カル
シウム、マグネシウムは、樹種の影響より試験地間の違いによる影響の方が強かった。
マンギウムアカシア林下の土壌は他樹種の土壌と比べて表層土壌の養分量が多いという仮説
は、土壌中の有機炭素、全窒素、交換性カリウムで対照樹種よりも濃度が高かったことから、
これら元素について肯定された。表層土壌においてこれらの元素濃度が高かった理由は、有機
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
48
物からの供給量が大きいことが示唆された。次章では、堆積有機物を供給するリターフォール
量の樹種間での違いと土壌への影響について検討する。
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
49
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
50
付表3.1 土壌断面の理化学性
App
endi
x Ta
ble
3.1
Phys
ico-
chem
ical
pro
perti
es o
f the
soil
prof
iles
Res
earc
h st
atio
nH
oriz
onpH
(H2O
)O
rgan
ic C
Tota
l NAv
aila
ble
PC
aM
gK
Na
Ex-a
cid
ECEC
CEC
Ex-A
lC
lay
Silt
Sand
Text
ure
mg
g-1m
g g-1
mg
kg-1
cmol
c kg-1
cmol
c kg-1
cmol
c kg-1
cmol
c kg-1
cmol
c kg-1
cmol
c kg-1
cmol
c kg-1
cmol
c kg-1
%%
%(F
AO
)G
um G
umA
h3.
9211
.81.
45.
834.
381.
720.
110.
063.
159.
4215
.71
2.74
3127
42C
L( A
r. cu
nnin
gham
ii)E
3.76
5.0
0.8
1.90
2.23
1.40
0.09
0.05
7.99
11.7
716
.99
7.45
3826
36C
LEB
3.60
3.1
0.6
0.83
0.99
1.47
0.12
0.07
12.4
515
.11
22.6
211
.28
5029
21C
Bt1
3.63
2.6
0.6
0.55
0.51
2.02
0.15
0.09
12.3
715
.14
21.9
411
.41
5331
17C
Bt2
4.25
1.2
0.6
0.72
0.52
3.80
0.20
0.13
11.4
416
.08
22.5
810
.69
5333
14C
Bg
4.14
0.5
0.5
0.17
1.96
6.16
0.21
0.19
7.30
15.8
220
.26
7.09
5229
19C
Cg
4.62
1.3
0.6
1.92
7.19
13.9
30.
240.
421.
9323
.71
25.5
31.
5557
397
C
Kol
apis
AA
h3.
8745
.64.
116
.74
3.21
2.46
0.44
0.06
5.82
12.0
028
.09
4.98
4428
28C
( A. m
angi
um)
AE
4.42
11.3
1.4
4.34
1.96
1.83
0.18
0.03
5.15
9.15
17.2
44.
5840
3029
CB
t14.
396.
11.
11.
480.
751.
170.
150.
038.
2910
.40
22.8
17.
5652
3019
CB
t24.
572.
70.
92.
270.
172.
050.
140.
038.
7611
.16
18.7
97.
9250
3218
CB
w1
4.77
3.4
0.8
2.36
0.21
2.39
0.13
0.04
7.96
10.7
320
.19
7.17
5026
23C
Bw
24.
862.
60.
80.
720.
904.
130.
170.
069.
0814
.34
22.5
78.
3458
2616
CB
C5.
000.
20.
60.
553.
1410
.49
0.21
0.11
14.7
128
.67
33.1
513
.81
5026
24C
Sega
liud-
Loka
nA
h4.
7416
.11.
719
.88
2.73
0.95
0.29
0.06
1.65
5.68
14.6
81.
4723
1166
SCL
( F. m
oluc
cana
)A
E4.
726.
50.
812
.24
0.73
0.36
0.13
0.02
2.78
4.02
8.28
2.37
246
70SC
LE
4.71
2.6
0.4
2.49
0.38
0.29
0.17
0.02
4.24
5.09
9.89
3.72
2713
61SC
LB
t14.
831.
40.
30.
920.
170.
250.
090.
016.
186.
7012
.16
5.56
3413
54SC
LB
t24.
621.
00.
21.
240.
170.
180.
080.
026.
386.
829.
495.
8838
1547
SCB
t34.
891.
10.
21.
070.
240.
150.
160.
026.
887.
459.
636.
0642
1444
CB
w1
4.94
1.2
0.2
0.72
0.09
0.14
0.08
0.03
6.63
6.98
13.5
95.
8944
1442
CB
w2
5.05
1.0
0.2
1.07
0.09
0.13
0.09
0.03
6.77
7.12
13.5
76.
1745
1243
C
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
51
00
.tt It
cp
cr,
11
ti
Figure 1. Northern Borneo: rainfall regimes and perhumidity index (Danum data revised; otherwise after Walsh (1996a)).
App
endi
x Fi
g. 3
.1 N
orth
ern
Bor
neo:
rain
fall
regi
mes
and
per
hum
idity
inde
x (W
alsh
and
New
bery
199
9; F
igur
e 1.
With
per
mis
sion
from
the
Roy
al S
ocie
ty)
付図3.1 ボルネオ島北中部の降水量の分布 都市名の下は年平均降水量(観測記録の最大幅での平均)および相対湿度指数(月降水量に応じ
スコア化した指数、大きいほど湿潤)
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
52
Ah E Bt1
EB
Bt2 Bg BCg
付図3.2 Gum Gum 試験地の土壌断面 (フープパイン林)
App
endi
x Fi
g. 3
.2 S
oil p
rofil
e un
der t
he A
rauc
aria
cun
ning
ham
ii pl
anta
tion
in th
e G
um G
um F
R
Cla
ssifi
cati
on
Hap
lic
Ali
sol
(Alu
mic
, H
yper
dyst
ric,
Pro
fondic
, C
layic
)
Loca
tion
Gum
Gum
Fore
st R
esea
rve
Alt
itude
0-3
0m
(G
PS
)
Physi
ogra
phy
Undula
ting
Lan
dfo
rmS
lope.
Mid
dle
slo
pe.
Slo
pe
5.5
° (1
0%
)
Par
ent
mat
eria
lT
ertu
ary s
edim
enta
ry r
ock
. S
and R
ock
. All
uvia
l se
dim
ents
.
Veg
itat
ion
Fore
st p
lanta
tion
Pro
file
des
crip
tion
Ah
0-9
,11 c
m
Bro
wn (
10Y
R 4
/3.5
mois
t);
man
y s
ubro
unded
str
ongly
wea
ther
d s
andst
one
med
ium
gra
vel
s; s
trong fi
ne
and m
ediu
m s
uban
gula
r blo
cky s
truct
ure
; m
any fi
ne
and m
ediu
min
ters
titi
al;
man
y v
ery fi
ne,
man
y fi
ne,
few
med
ium
and v
ery f
ew c
oar
se r
oot;
few
was
te o
f ea
rthw
oam
; ab
rupt
wav
y b
oundar
y.
E9,1
1-2
3 c
m
Bro
wn (
10Y
R 4
/4 m
ois
t);
man
y s
ubro
unded
str
ongly
wea
ther
d s
andst
one
med
ium
and
coar
se g
ravel
s; s
trong m
ediu
m a
nd c
oar
se s
uban
gula
r blo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne
and c
om
mon fi
ne
chan
nel
; fe
w v
ery fi
ne,
few
fine,
ver
y f
ew m
ediu
m a
nd v
ery f
ewco
arse
root;
cle
ar a
nd s
mooth
boundar
y.
EB
23-3
9 c
m
Dull
yel
low
ish b
row
n (
10Y
R 5
/4 m
ois
t);
few
subro
unded
str
ongly
wea
ther
d s
andst
one
med
ium
and c
oar
se g
ravel
s; s
trong m
ediu
m a
nd c
oar
se s
uban
gula
r blo
cky s
truct
ure
;m
any v
ery fi
ne
and v
ery f
ew fi
ne
chan
nel
; dom
inan
t fa
int
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
few
ver
y fi
ne,
ver
y f
ew fi
ne,
ver
y f
ew m
ediu
m a
nd v
ery f
ew c
oar
se r
oot;
gra
dual
and
smooth
boundar
y.
Bt1
39-5
7 c
m
Dull
yel
low
ish b
row
n (
10Y
R 5
/4 m
ois
t);
ver
y f
ew s
ubro
unded
str
ongly
wea
ther
dsa
ndst
one
med
ium
gra
vel
s; m
oder
ate
coar
se a
nd v
ery c
oar
se s
uban
gula
r blo
cky
stru
cture
; m
any v
ery fi
ne,
ver
y f
ew m
ediu
m a
nd f
ew fi
ne
chan
nel
; dom
inan
t fa
int
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
ver
y f
ew v
ery fi
ne,
ver
y f
ew fi
ne
and v
ery f
ew m
ediu
m r
oot;
cle
aran
d s
mooth
boundar
y.
Bt2
57-9
0 c
m
Dull
yel
low
ish b
row
n (
10Y
R 5
/4 m
ois
t);
man
y fi
ne
and m
ediu
m f
aint
dif
fuse
bro
wn
mott
ling;
few
subro
unded
str
ongly
wea
ther
d s
andst
one
med
ium
and c
oar
se g
ravel
s;m
oder
ate
coar
se a
nd v
ery c
oar
se a
ngula
r blo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne
and v
ery f
ewfi
ne
chan
nel
; ab
undan
t fa
int
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
ver
y f
ew v
ery fi
ne
root;
cle
ar a
nd
smooth
boundar
y.
Bg
90-1
15 c
m
Gra
yis
h o
live
(7.5
Y 6
/2 m
ois
t);
man
y fi
ne
pro
min
ent
clea
r yel
low
ish b
row
n (
10Y
R5/8
) m
ott
ling;
wea
k c
oar
se a
ngula
r blo
cky s
truct
ure
; co
mm
on v
ery fi
ne
chan
nel
; fe
wfa
int
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
ver
y f
ew v
ery fi
ne
and v
ery f
ew fi
ne
root;
cle
ar a
nd
smooth
boundar
y.
BC
g115-1
45(+
) cm
Oli
ve
gra
y (
2.5
GY
6/1
mois
t);
abundan
t fi
ne
and m
ediu
m p
rom
inen
t sh
arp b
row
n(7
.5Y
R 4
/6)
mott
ling;
mas
sive
stru
cture
; co
mm
on v
ery fi
ne
chan
nel
.
第3章 各種熱帯人工林下の堆積有機物と土壌の理化学性
53
Ah AE Bt1
Bt2 Bt3
Bt4
BC
付図3.3 Kolapis A 試験地の土壌断面 (マンギウムアカシア林)
App
endi
x Fi
g. 3
.3 S
oil p
rofil
e un
der t
he A
caci
a m
angi
um p
lant
atio
n in
the
Kol
apis
A st
atio
n
Cla
ssifi
cati
on
Hap
lic
Ali
sol
(Alu
mic
, P
rofo
ndic
, C
layic
)
Loca
tion
Kola
pis
A
Alt
itude
35-7
3m
(G
PS
)
Physi
ogra
phy
Undula
ting
Lan
dfo
rmS
lope.
Low
er s
lope.
Slo
pe
11°
Par
ent
mat
eria
lT
ertu
ary s
edim
enta
ry r
ock
. S
and R
ock
. P
artl
y u
ltra
bas
ic r
ock
Veg
itat
ion
Fore
st p
lanta
tion
Pro
file
des
crip
tion
Ah
0-3
cm
Dar
k b
row
n (
7.5
YR
3/3
mois
t);
moder
ate
fine
and m
ediu
m s
uban
gula
rblo
cky s
truct
ure
;m
any m
ediu
m a
nd c
oar
se i
nte
rmid
eate
; m
any v
ery fi
ne
and fi
ne,
few
med
ium
and v
ery
few
coar
se r
oot;
cle
ar s
mooth
boundar
y.
AE
3-8
cm
Bro
wn (
7.5
YR
4/4
mois
t);
moder
ate
med
ium
and c
oar
se s
uban
gula
r blo
cky s
truct
ure
;m
any v
ery fi
ne
and c
om
mon fi
ne
chan
nel
; co
mm
on v
ery fi
ne
and fi
ne,
few
med
ium
and v
ery f
ew c
oar
se r
oot;
cle
ar s
mooth
boundar
y.
Bt1
8-3
1 c
m
Bro
wn (
7.5
YR
4/6
mois
t);
man
y fi
ne
dis
tinct
shar
p o
range
mott
les;
str
ong c
oar
se a
nd
med
ium
angula
rblo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne,
man
y fi
ne
and f
ew m
ediu
m c
han
nel
;m
any f
aint
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
ver
y f
ew v
ery fi
ne,
few
fine,
ver
y f
ew m
ediu
m a
nd
ver
y f
ew c
oar
se r
oot;
gra
dual
and s
mooth
boundar
y.
Bt2
31-6
8 c
m
Bro
wn (
7.5
YR
4/6
mois
t);
man
y fi
ne
dis
tinct
shar
p o
range
mott
les;
moder
ate
coar
sean
d m
ediu
m a
ngula
rblo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne
and c
om
mon fi
ne
chan
nel
; m
any
fain
t cl
ay c
uta
n i
n p
edfa
ces;
ver
y f
ew m
ediu
m r
ounded
har
dir
on-m
angan
ese
nodule
;ver
y f
ew v
ery fi
ne,
few
fine,
ver
y f
ew m
ediu
m a
nd v
ery f
ew c
oar
se r
oot;
abru
pt
andw
avy b
oundar
y.
Bt3
68-8
6,9
5 c
m
Bro
wn (
7.5
YR
4/4
mois
t);
man
y fi
ne
dis
tinct
shar
p o
range
mott
les;
abundan
tsu
bro
unded
str
ongly
wea
ther
d s
andst
one
med
ium
and c
oar
se g
ravel
s; m
oder
ate
coar
sean
d m
ediu
m a
ngula
rblo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne
and f
ew fi
ne
chan
nel
; ab
undan
tfa
int
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
ver
y f
ew m
ediu
m r
ounded
har
dir
on-m
angan
ese
nodule
;ver
y f
ew v
ery fi
ne,
few
fine,
ver
y f
ew m
ediu
m a
nd v
ery f
ew c
oar
se r
oot;
cle
aran
dw
avy b
oundar
y.
Bt4
86,9
5-9
4,1
50(+
)
Gra
yis
h r
ed (
2.5
YR
6/2
mois
t) a
nd B
right
bro
wn (
7.5
YR
5/6
mois
t);
man
y fi
ne
dis
tinct
shar
p a
nd m
any m
ediu
m p
rom
inen
t cl
ear
ora
nge
mott
les;
man
y s
ubro
unded
str
ongly
wea
ther
d s
andst
one
med
ium
and c
oar
se g
ravel
s; w
eak m
ediu
m a
ngula
rblo
cky
stru
cture
; m
any v
ery fi
ne
and f
ew fi
ne
chan
nel
; ver
y f
ew v
ery fi
ne,
few
fine,
ver
y f
ewm
ediu
m a
nd v
ery f
ew c
oar
se r
oot;
abru
pt
andir
regula
r boundar
y.
BC
95-1
50(+
) cm
Dar
k b
row
n (
10Y
R 3
/3 m
ois
t) d
om
inan
t, 2
.5G
Y 6
/1, 7.5
Y 6
/2, an
d 7
.5Y
R 5
/8 m
ixtu
re;
Dar
k r
eddis
h b
row
n (
10R
3/3
mois
t) i
n r
ock
; fe
w s
ubro
unded
str
ongly
wea
ther
dsa
ndst
one
med
ium
gra
vel
s; w
eak m
ediu
m a
nd v
ery c
oar
se a
ngula
rblo
cky s
truct
ure
;m
any v
ery fi
ne
and c
om
mon fi
ne
chan
nel
; fe
w v
ery fi
ne,
ver
y f
ew fi
ne
(only
in r
edm
atri
x)
root.
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
54
Ah AE E Bt1 Bt2 Bt3 Bw2
Bw1
付図3.4 Segaliud-Lokan 試験地の土壌断面 (ファルカタ林)
App
endi
x Fi
g. 3
.4 S
oil p
rofil
e un
der t
he F
alca
tari
a m
oluc
cana
pla
ntat
ion
in th
e Se
gaiu
d-Lo
kan
FR
Cla
ssifi
cati
on
Hap
lic
Ali
sol
(Alu
mic
, H
yper
dyst
ric,
Cla
yic
)
Loca
tion
Seg
aliu
d-L
okan
Fore
st R
eser
ve
Alt
itude
35-7
3m
(G
PS
)
Physi
ogra
phy
Roll
ing
Lan
dfo
rmS
lope.
Mid
dle
slo
pe.
Slo
pe
14°
(26%
)
Par
ent
mat
eria
lT
ertu
ary s
edim
enta
ry r
ock
. S
and R
ock
.
Veg
itat
ion
Fore
st p
lanta
tion
Pro
file
des
crip
tion
Ah
0-6
cm
Dull
yel
low
ish b
row
n (
10Y
R 4
/3 m
ois
t);
wea
k fi
ne
and c
oar
se s
uban
gula
r blo
cky
stru
cture
; co
mm
on fi
ne
inte
rmid
eate
; m
any v
ery fi
ne,
few
fine,
few
med
ium
and v
ery
few
coar
se c
han
nel
; m
any v
ery fi
ne,
man
y fi
ne,
com
mon m
ediu
m a
nd f
ew c
oar
se r
oot;
man
y w
aste
of
eart
hw
oam
; ab
rupt
wav
y b
oundar
y.
AE
6-1
4 c
m
Yel
low
ish b
row
n (
10Y
R 5
/6 m
ois
t);
com
mon fi
ne
dis
tinct
dif
fuse
red
dis
h o
range
mott
ling;
wea
k m
ediu
m a
nd c
oar
se a
ngula
r blo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne,
com
mon
fine
and c
om
mon m
ediu
m c
han
nel
; m
any v
ery fi
ne,
com
mon fi
ne,
few
med
ium
and
ver
y f
ew c
oar
se r
oot;
cle
ar s
mooth
boundar
y.
E14-3
1 c
mB
right
yel
low
ish b
row
n (
10Y
R 6
/5 m
ois
t);
man
y fi
ne
dis
tinct
cle
ar r
eddis
h o
range
mott
ling;
wea
k c
oar
se a
ngula
r blo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne,
ver
y f
ew fi
ne
and v
ery
few
med
ium
chan
nel
;
Bt1
31-5
5 c
mB
right
yel
low
ish b
row
n (
7.5
YR
6/7
mois
t);
com
mon fi
ne
fain
t dif
fuse
gra
yis
h y
ello
wm
ott
ling;
moder
ate
coar
se a
ngula
r blo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne,
ver
y f
ew fi
ne,
ver
yfe
w m
ediu
m a
nd v
ery f
ew c
oar
se c
han
nel
; ab
undan
t fa
int
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
Bt2
55-7
8 c
mB
right
bro
wn (
7.5
YR
6/8
mois
t);
few
fine
and m
ediu
m f
aint
dif
fuse
yel
low
ish g
ray
mott
ling;
moder
ate
coar
se a
ngula
r blo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne,
ver
y f
ew fi
ne
and
ver
y f
ew m
ediu
m c
han
nel
; ver
y f
ew c
oar
se v
ughs;
man
y f
aint
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
Bt3
78-9
5 c
mO
range
(7.5
YR
6/6
mois
t);
man
y fi
ne
and m
ediu
m f
aint
dif
fuse
yel
low
ish g
ray
mott
ling;
moder
ate
coar
se a
ngula
r blo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne,
few
fine
and v
ery
few
med
ium
chan
nel
; m
any f
aint
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
Bw
195-1
18 c
mO
range
(7.5
YR
7/6
mois
t);
man
y fi
ne
and m
ediu
m p
rom
inen
t cl
ear
yel
low
ish g
ray
(7.5
Y 7
/1)
mott
ling;
wea
k c
oar
se a
ngula
r blo
cky s
truct
ure
; m
any v
ery fi
ne,
ver
y f
ewfi
ne
chan
nel
; m
any f
aint
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
Bw
2118-1
60(+
) cm
Ora
nge
(7.5
YR
7/6
mois
t) a
nd L
ight
gra
y (
7.5
Y 7
/1 m
ois
t) a
nd R
eddis
h b
row
n (
2.5
YR
4/8
mois
t);
man
y fi
ne
and m
ediu
m p
rom
inen
t dif
fuse
gra
y m
ott
ling a
nd c
om
mon
med
ium
pro
min
ent
clea
r re
d m
ott
ling;
moder
ate
ver
y c
oar
se a
ngula
r blo
cky s
truct
ure
;m
any v
ery fi
ne,
ver
y f
ew fi
ne
chan
nel
; co
mm
on f
aint
clay
cuta
n i
n p
edfa
ces;
第4章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工
林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
4.1 はじめに リターフォールは森林生態系の養分循環の根幹を担う経路であり、リターから供給される養
分の循環は森林生態系の持つ大きな特徴の一つである。古くは100年以上前から堆積有機物中
の養分について調べられ(Ebermayer 1876)、生産生態学が主流であった1970年代から80年代
にかけて、世界中の森林の一次生産と養分プール及びその移動について調べられた(Attiwill
and Adams 1993)。混交林やアグロフォレストリーなど多様な形式の造林方法に注目が集まる
今日、リターフォールによって移動する養分量は自個体はもちろん、その養分を享受する他の
植物の成長に大きな影響を及ぼし、あらためてその役割の重要性が認識されている(Tang et al.
2010)。特に、表層土壌への有機物供給効果は、林床植生や植栽される植物の初期成長を促進
する。第1章で紹介した、モリシマアカシアとグローブルスユーカリ(Eucalyptus globulus)の
11年生の混交林の例では、モリシマアカシアのリターがグローブルスユーカリのリターと比べ
窒素を2倍以上含むことなどによってグローブルスユーカリの成長が促進され、グローブルス
ユーカリのバイオマス量は単一林と比較して2倍であったことが報告されている(Forrester et
al. 2004; Forrester et al. 2005)。
貧栄養で強酸性の土壌に対する耐性を持ったマンギウムアカシアは、人為的な攪乱で荒廃し
た土壌を回復させる機能と、郷土樹種などの他樹種を植える際の保護樹としての機能に大きな
期待を寄せられている(Kamo et al. 2002; Norisada et al. 2005; Abdu et al. 2008; Yang et al.
2009)。現在、多くの海外造林プロジェクトでマンギウムアカシアの保護樹としての有効性が
検証されている(JIRCAS 2007; Abdu et al. 2008; Sakai et al. 2009)。マンギウムアカシアに期待
される主要な効果は強光や高温に対する被陰効果であるが、窒素の供給と土壌改善効果にも期
待が寄せられている(Khanna 1997; Schroth et al. 2001)。他の湿潤熱帯のマメ科早生樹で、年
200 kg ha-1以上もの多量の窒素がリターフォールによって供給されることが数例報告されている
が(Binkley et al. 1992; Swamy and Proctor 1997; Jamaludheen and Kumar 1999)、マンギウムアカ
シアのリターフォールと含まれる各種養分量について調べられた事例は、現在まで限られてい
る。マンギウムアカシア林のリターフォールによる窒素供給量は年100 kg ha-1を超える報告例が
第4章 人工林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
55
あるが(Bernhard-Reversat 1996; Majalap 1999; Hardiyanto and Wicaksono 2008)、リン供給量
は、年1.6–3.3 kg P ha-1と窒素と比較して少ないという報告がある(Majalap 1999; Hardiyanto and
Wicaksono 2008; Kunhamu et al. 2009)。
前章では、各種人工林下の土壌と堆積有機物中の各元素間の関係を調べた。その中で、マン
ギウムアカシア林の表層土壌において、全窒素濃度が他樹種より高いことを示した。それら
は、堆積有機物中の窒素含有量と有意な比例関係にあったことを示した。この違いは、リター
フォール中の窒素供給量に対応していることが予想される。これまで、マンギウムアカシアの
リターフォール、堆積有機物量、土壌の関係を、各種養分も含めて包括的に調査した事例は第
1章で紹介したMajalap (1999)の研究に限られている。さらに、マンギウムアカシアは主にパ
ルプ生産目的で10年以下の短伐期で収穫されるため(Srivastava 1993)、林齢の高い林で調査さ
れた例がほとんどない。しかし、土壌改良や製材生産(Groome 1991; Harwood 2011)、肥料木
として活用する際には、早生樹のより高齢な林での養分循環の理解がリターフォール生産のポ
テンシャルを考える上で重要となる。
本章では、マンギウムアカシアのリターフォール量が大きく、特にリターフォール中の窒素
量が大きいため表層土壌中の窒素濃度が高くなるという第1章で示した仮説を検証するため、
Gum Gum試験地の比較的均質な土壌条件に生育する21年生マンギウムアカシア、および35年生
のマホガニーと28年生のフープパイン林のリターフォール中の養分量を比較し、湿潤熱帯人工
林の有機物及び養分供給機能を評価することを目的とした。さらに、これまでほとんど情報の
限られていた他元素の挙動、特にリンの量に着目し、表層土壌の各元素濃度との関係を考察し
た。他の2樹種については、マメ科以外の広葉樹と、針葉樹であることと、リターフォールお
よび関連する比較データが入手しやすいことから選んだ(Brasell et al. 1980; Lugo et al. 1990;
Lugo 1992; Bubb et al. 1998; Cuevas and Lugo 1998)。同時に、近隣の熱帯低地一次林や過去の同
一種のデータと比較して、本試験地と調査林分の特徴を考察した。
4.2 方法
4.2.1 林分の概況
第3章で解析を行った試験地のうち、Gum Gum試験地(北緯5°52’、東経117°54’)のマンギ
ウムアカシア林および、土壌条件がほぼ等しいマホガニー林とフープパイン林をリターフォー
ル調査の対象試験地とした(図4.1)。Gum Gum試験地は、かつて低地フタバガキ林が広がって
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
56
おり、1920年から60年代にかけ
て、数度にわたって択伐が行わ
れてきた(Sabah Forestry
Department 2012)。造林は1967
年から開始された。サバ州でマ
ンギウムアカシア林が、オース
トラリアからごく初期に導入さ
れた地でもある(大嶋 1986)。
測定期間中の降水量と気温は、
Global Historical Climatology
Networkに収録された、約20 km
離れたサンダカン空港の統計
データを利用したが(地点番号
50596491, National Climatic Data
Center 2012)、本データはサバ
州政府の統計情報と基本的に同
一である。測定期間中の年平均
降水量は2572 mm、年平均気温
は27.9 $であった。測定期間中
の月平均気温の変動範囲は±1.5
$以下であった。測定期間中に、エルニーニョ南方震動(ENSO)のような極端な乾燥はおこ
らなかった。試験地は、第3章で示したように、緩やかに傾斜した沖積地にあり標高は40 m以
下であった。土壌型はHaplic Alisol (Alumic, Hyperdystric, Profondic, Clayic; 付図 3.2; IUSS
Working Group WRB 2007)であった。
リターフォールは設定当所21年生のマンギウムアカシア林、35年生のマホガニー林、28年生
のフープパイン林の3林分で3年間測定した。各林分の概況を表4.1に示した。それぞれの林分
は1kmの範囲で近接していた。マホガニーは中南米原産のセンダン科の広葉樹、フープパイン
は日本のスギと似通った針葉を持つ、オーストラリアおよびパプアニューギニア原産のナンヨ
ウスギ科の針葉樹である。
第4章 人工林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
57
A. mangium S.macrophylla
Ar. cunninghamii Litter traps
Fig. 4.1 Landscape of the each plot
図4.1 各プロットの状況
4.2.2 リターフォールのサンプリングと分析
リターフォールの回収は、2002年3月から2005年2月まで、3年間行った。月2回、1日と15
日に回収を行った。リタートラップは、1 m × 1 mの方形枠をPVCパイプで作り、ポリエチレン
ネットを取り付けた。トラップはプロットにランダムに配置し、少なくとも0.01 haに1個以上
設置した(表4.1)。湿潤熱帯天然林のリターフォール研究例において、0.64 haあたり10個以上
のリタートラップで、変動係数が一定に収束することが示されている(Finotti et al. 2003)。リ
ターは回収後、70 ℃で恒量になるまで乾燥した。乾燥後に、主要樹種落葉、他樹種落葉、枝
(<根元径20mm)、生殖器官、その他の5画分に分けた(Cuevas and Lugo 1998)。主要樹種
落葉は、マンギウムアカシアでは偽葉(Phyllodes)を示し、フープパインでは、日本スギの針
葉と同様な形態である、最終分岐枝に付随した針葉を表している。根元径で20 mm以上の枝
は、リタートラップによる回収では値の変動が大きいため、解析から除外した。サンプルは、
小型ミル(A11、IKA、ドイツ)で破砕したあと、自動メノウ乳鉢(RT-100、Retsch、ドイツ)
で粉砕した。全Cと全Nは乾式燃焼法(NC-22F、住友化学、日本)で測定した。P、K、Ca、
Mg、Fe、およびMnについては、硝酸、過塩素酸による湿式分解後(山崎 1997)、ICP-AES
(Optima 4300、ParkinElmer、アメリカ)によって定量した。主要樹種落葉については、C、N
は毎月、湿式分解分析サンプルは隔月のサンプルを分析した。その他の画分については3月か
ら2月までの1年間の混合サンプルを分析した。トラップの破壊による未測定値については、
前後の回収による値を平均して推定値とした。
4.2.3 土壌と堆積有機物データ 第3章で示した、土壌と堆積有機物の結果と、リターフォールからの供給量との比較を行っ
た。サンプリング及び分析手法は第3章と同じである。
4.2.4 統計解析 リターフォールの全有機物供給量を、反復測定分散分析を用いて分析した。樹種と年を固定
効果とし、各リタートラップをランダム効果とした。分散分析で有意な結果が得られた項目に
ついて、TukeyのHSD法を用いて多重比較を行った。リターフォールの各画分中の元素量につい
ても、同様に反復測定分散分析を行った。樹種と年、および樹種にネストさせたリターフォー
ルの画分の3つを固定効果とし、各リタートラップをランダム効果とした。ランダム効果の計
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
58
第4章 人工林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
59
表4.1 リターフォール測定をした3プロットの林分概況
Tabl
e 4.
1 St
and
cond
ition
s at t
he th
ree
site
sSi
teYe
ar p
lant
edPl
ot si
zeN
o. o
f tre
esM
ean
DB
HM
ean
heig
htSt
em v
olum
eSt
em b
iom
ass
Bas
al a
rea
Litte
r tra
ps(n
o. h
a-1)
(cm
)(m
)(m
3 ha
-1)
(Mg
ha-1
)(m
2 ha-1
)(n
o. p
lot-1
) A
. man
gium
1982
20 m
��5
0 m
560
30.0
24.8
443
222
4012
S. m
acro
phyl
la
1968
25 m
� 5
0 m
600
35.5
23.9
614
319
5912
Ar.
cunn
ingh
amii
1975
40 m
� 4
0 m
731
30.7
33.9
779
249
5416
Stem
bio
mas
s was
cal
cula
ted
from
vol
umes
and
mea
sure
d w
ood
dens
ities
.
表4.2 3年間の年平均リターフォール量と年平均養分供給量及び、養分供給量への林分および測定年の影響
Tab
le 4
.2 M
ean
annu
al fl
uxes
of e
lem
ents
in li
tterf
all o
ver 3
yea
rs a
nd e
ffec
ts o
f site
and
yea
r on
annu
al e
lem
ent f
lux
in li
tterf
all
Site
Y
ear
Dry
Mas
s
Tota
l C
Tota
l N
Tota
l P
Tota
l Ca
Tota
l Mg
Tota
l K
Tota
l Fe
Tota
l Mn
– M
g ha
-1 yr
-1 –
– kg
ha-1
yr-1
–
20
02
12.8
a (0
.39)
6.9a
(0.2
1)
22
3a (6
.1)
3.
4a (0
.12)
137a
(4.3
)
26a
(0.8
)
38a
(1.0
)
1.1b
(0.0
3)
5.
1a (0
.17)
A. m
angi
um
2003
13
.5a
(0.6
1)
A
7.4a
(0.3
3)
A
220a
(9.0
) A
3.
7a (0
.15)
C
11
6b (4
.7)
B
26a
(1.0
) C
41
a (1
.7)
B
1.3ab
(0
.05)
B
3.
9b (0
.16)
A
20
04
13.0
a (0
.73)
7.1a
(0.3
9)
20
7a (1
1.0)
2.7b
(0.1
8)
95
c (4
.9)
23
a (1
.1)
46
a (2
.4)
1.
3a (0
.07)
3.2c
(0.1
5)
20
02
12.9
a (0
.42)
6.8a
(0.2
2)
13
2b (3
.2)
15
.6a
(0.5
4)
17
9b (4
.5)
50
a (1
.5)
10
7a (3
.9)
1.
7a (0
.05)
0.4a
(0.0
26)
S. m
acro
phyl
la
2003
14
.1a
(0.4
2)
A
7.4a
(0.2
2)
A
153a
(4.3
) B
10
.0b
(0.3
7)
A
252a
(7.
6)
A
53a
(1.3
) A
73
b (3
.5)
A
1.9a
(0.0
7)
A
0.1b
(0.0
02)
C
20
04
12.5
a (0
.62)
6.5a
(0.3
2)
12
6b (4
.9)
7.
5c (0
.40)
189b
(6.9
)
40b
(1.5
)
72b
(5.0
)
1.8a
(0.0
6)
0.
2b (0
.009
)
20
02
7.4a
(0.2
8)
4.
0a (0
.15)
94a
(3.6
)
9.2a
(0.3
5)
10
2a (
3.9)
36a
(1.3
)
45a
(1.6
)
0.6a
(0.0
2)
2.
7a (0
.10)
A. c
unni
ngha
mii
2003
6.
2a (0
.31)
B
3.
4a (0
.16)
B
72
b (3
.6)
C
7.8a
(0.3
6)
B
86a
(4.3
) C
31
b (1
.5)
B
43a
(2.0
) B
0.
5a (0
.02)
C
2.
6a (0
.13)
B
20
04
6.4a
(0.2
9)
3.
4a (0
.15)
80ab
(3
.8)
8.
6a (0
.39)
91a
(4.3
)
38a
(1.8
)
35b
(1.6
)
0.6a
(0.0
3)
2.
6a (0
.13)
Fixe
d fa
ctor
df
F
P F
P F
P F
P F
P F
P F
P F
P F
P Si
te
2 12
4.62
<
0.00
1 12
2.21
<
0.00
1 21
8.00
<
0.00
1 19
8.08
<
0.00
1 26
4.71
<
0.00
1 96
.14
< 0.
001
143.
79
< 0.
001
369.
22
< 0.
001
328.
52
< 0.
001
Yea
r 2
2.84
0.
065
3.31
0.
042
7.70
<
0.00
1 10
7.44
<
0.00
1 29
.22
< 0.
001
12.0
2 <
0.00
1 29
.63
< 0.
001
6.04
0.
004
108.
27
< 0.
001
Site
! Y
ear
4 4.
08
0.00
5 4.
67
0.00
2 8.
34
< 0.
001
66.0
1 <
0.00
1 42
.47
< 0.
001
23.4
4 <
0.00
1 31
.17
< 0.
001
8.27
<
0.00
1 62
.34
< 0.
001
Yea
r ind
icat
es th
e m
easu
rem
ent p
erio
d fr
om M
arch
of t
hat y
ear t
o Fe
brua
ry o
f the
nex
t yea
r. N
umbe
rs in
par
enth
eses
indi
cate
stan
dard
err
or o
f the
mea
n (S
EM).
Diff
eren
t ca
pita
l let
ters
indi
cate
sign
ifica
nt in
tra-s
ite d
iffer
ence
s acc
ordi
ng to
repe
ated
mea
sure
s AN
OV
A a
nd a
pos
t hoc
Tuk
ey’s
HSD
test
(P <
0.0
1). D
iffer
ent s
mal
l let
ters
in
dica
te si
gnifi
cant
intra
-ann
ual d
iffer
ence
s acc
ordi
ng to
repe
ated
mea
sure
s AN
OV
A a
nd a
pos
t hoc
Tuk
ey’s
HSD
test
(P <
0.0
1)
算は、制限最尤法(REML)を用いた。3林分の土壌中の元素濃度、堆積有機物中の元素量につ
いては、一元配置の分散分析を行い、有意差がある項目についてTukey-HSD法による多重比較
をおこなった。すべての解析はJMP 6.0.3を用いた。
4.3 結果
年平均リターフォール量は、マンギウムアカシア(12.8–13.5 Mg ha-1 yr-1)とマホガニーで同
程度(12.5–14.1 Mg ha-1 yr-1)であり、フープパインで前2樹種の半分程度(6.2–7.4 Mg ha-1
yr-1)であった(表4.2)。3年間の測定での年変動は有意ではなかった。リターフォールによ
る年間炭素供給量は、乾重と同様の結果であった。
年間窒素供給量は、マンギウムアカシアが最も大きく(207–223 kg N ha-1 yr-1)、次いでマホ
ガニー(126–153 kg N ha-1 yr-1)、フープパイン(72–94 kg N ha-1 yr-1)の順であった。対照的
に、年間リン供給量はマンギウムアカシアが最も小さく(2.7–3.7 kg P ha-1 yr-1)、フープパイン
(7.8–9.2 kg P ha-1 yr-1)、マホガニー(7.5–15.6 kg P ha-1 yr-1)の順で大きかった。年間の塩基及
び鉄供給量はマホガニーで最大であり、少なくとも他樹種の1.5倍の量であった。年間マンガン
供給量は鉄と異なる傾向を示した。すなわち、マホガニーで非常に小さく(0.1–0.4 kg Mn ha-1
yr-1)、マンギウムアカシア(3.2–5.1 kg Mn ha-1 yr-1)ではフープパイン(2.6–2.7 kg Mn ha-1
yr-1)よりも大きかった。
フープパイン林分では、ほとんどのリターフォールが主要樹種落葉に区分された(図4.2)。
この理由は、フープパインの針葉が日本のスギのように最終分岐枝についており、枝と葉の分
離が難しいからである(Bubb et al. 1998)。他の2林分では、主要樹種落葉の占める割合は元素
によって異なっていた。主要樹種落葉の年間平均窒素供給量はマンギウムアカシア、マホガ
ニー、フープパインでそれぞれ124、93,80kg N ha-1 yr-1であった。これらの値は有意に異なっ
ていたが、リターフォールの合計値の窒素量(表4.2)に比べると、林分間の差が小さかった。
主要樹種落葉の年間平均リン供給量は、リターフォールの合計値と異なりフープパイン(8.4 kg
P ha-1 yr-1)がマホガニー(5.9 kg P ha-1 yr-1)より大きく、マンギウムアカシア(1.1 kg P ha-1
yr-1)ではリターフォールの合計値のうち、1/3の量しかなかった。その他の画分は、マンギウ
ムアカシアとマホガニーにおいて、C(16–27%)、N(10–24%)、P(10–27%)、K(24–
32%)供給量で比較的大きな割合を占め、生殖器官はリン供給量で2樹種とも21%と比較的大
きな割合を占めた。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
60
第4章 人工林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
61
AM SM AC0123456
C (M
g ha
-1 y
r-1)
Species leaves
Other leaves
Fine wood
Reproductive parts
Miscellaneous
AM SM AC0
50
100
150
200
N (k
g ha
-1 y
r-1)
AM SM AC02468
1012
P (k
g ha
-1 y
r-1)
AM SM AC0
50
100
150
200
250
Ca
(kg
ha-1
yr-1
)
AM SM AC0
10
20
30
40
50
Mg
(kg
ha-1
yr-1
)
AM SM AC0
10203040506070
K (k
g ha
-1 y
r-1)
AM SM AC0
0.5
1
1.5
2
2.5
Fe (k
g ha
-1 y
r-1)
AM SM AC0
1
2
3
4
Mn
(kg
ha-1
yr-1
)
A B A A B B B C C CA A A B Aa d c d b a d b c b a b b b b
B B B A BA A A A A C B C B Ca d c c b a c b b b a b b b b
B B A A A A B C C BC A B B Aa d d c b a c b b bc a b b b b
A B A A A B B C C BB A B B Aa c b c b a d b cdbc a b b b b
A B A A B A B C C CB A B B Aa d c cd b a d b cd c a b b b b
A B A A A B B C C CC A B B Ba c c c b a d c cd b a b b b b
A B B A B C B C B BB A A A Aa d c cd b a b b b b a b b b b
C B B B B B B B B BA A A A Aa c c c b a b b b b a b b b b
Fig. 4.2 Mean annual nutrient flux of five litterfall fractions.AM, SM, and AC indicates A. mangium, S. macrophylla and Ar. cunninghamii, respectively. Error bar indicates standard error of the mean (SEM). Different capital letters indicate significant differences between species in a post hoc Tukey’s HSD test (P < 0.01). Different small letters indicate significant differences between fractions in a post hoc Tukey’s HSD test (P < 0.01). With permission from Springer Science+Business Media.
図4.2 3林分におけるリターフォール5画分中の年養分供給量
マホガニーでは、雨期の終わりである3月から数ヶ月間、極端にリターフォールに伴う養分
供給量が大きく、その他の期間では供給量が小さかった(図4.3)。とくに、リンについては、
年間の供給量では非常に小さいマンギウムアカシアよりも月供給量が小さい月が数ヶ月間あっ
た。マンギウムアカシアの供給量は7-8月にピークがあったが、マホガニーほど顕著ではなかっ
た。フープパインでは、他の2樹種と比べるとさらにピークが明瞭ではなかった。
リターフォールによる供給量、堆積有機物中の元素含有量、表層0-5cm土壌の元素濃度の比較
を行った(図4.4)。リターフォール中の窒素供給量、堆積有機物の窒素含有量、表層土壌中の
窒素濃度はいずれも、マンギウムアカシア>マホガニー>フープパインの順であり、リター
フォール中の窒素供給量と表層土壌中の窒素濃度は有意な正の相関があった(r= 0.99、P =
0.005)。他の元素には、そのような関係がみられるものがなかった。リターフォール中の炭素
量はフープパインと比べて、他の2樹種で2倍大きかったが、堆積有機物中では3樹種ともほ
ぼ同じ量であった。リターフォールのカルシウム供給量は堆積有機物中の含有量と樹種間の順
位が同じであった。しかし表層土壌のカルシウム濃度とは一致しなかった。マグネシウムとカ
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
62
Fig. 4.3 Monthly rainfall, and C, N, and P fluxes in litterfall at the three sites during the measurement period.Rainfall data were obtained from GHCN-Monthly 2. With permission from Springer Science+Business Media.
図4.3 測定期間中の降水量と、リターフォールから供給される炭素、窒素、リン量の月変化
M M J S N J M M J S N J M M J S N J0
100
200
300
400
500
600
700
Rai
nfal
l (m
m)
M M J S N J M M J S N J M M J S N J0
500
1000
1500
2000
2500
3000
C fl
ux in
litte
rfall
(kg-1
ha-1
)
S. macrophylla A. mangium A. cunninghamii
M M J S N J M M J S N J M M J S N J0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
N fl
ux in
litte
rfall
(kg-1
ha-1
)
M M J S N J M M J S N J M M J S N J0
1
2
3
4
5
6
7
P fl
ux in
litte
rfall
(kg-1
ha-1
)
2002 20042003 2005 2002 20042003 2005
第4章 人工林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
63
0
4000
8000
Forest floor(kg ha-1)
AM
SM
AC
0102030Concentrationin soil (mg g-1)
Org
anic
CTo
tal N
0
100
200
Forest floor(kg ha-1)
Ca
0
4000
8000
Flux in litterfall (kg ha-1 yr-1)
04812
0
100
200
Flux in litterfall (kg ha-1 yr-1)
02040M
g
050100
02040
0102030
0
100
200 0
100
200
aa
ba
bc
ca
b
ba
cc
ab
ba
b
AM
SM
AC
02040
Bray II P (mg g-1)
0-5
cm
5-15
cm
15-3
0 cm
AM
SM
AC
0.0
0.2
0.4
0.6
AM
SM
AC
0246
AM
SM
AC
024
AM
SM
AC
051015
Ex. cationin soil (cmolc kg-1)
aab
ba
aa
aa
aa
aa
ba
a
aa
aa
aa
aa
a
aa
aa
abb
ab
c
Fig.
4.4
Nut
rient
flux
es th
roug
h lit
terfa
ll, n
utrie
nts o
n th
e fo
rest
floor
, and
nut
rient
con
cent
ratio
n in
the
surfa
ce so
il.A
M, S
M, a
nd A
C in
dica
tes A
. man
gium
, S. m
acro
phyl
la a
nd A
r. cu
nnin
gham
ii, re
spec
tivel
y. F
luxe
s in
litte
rfall
are
3-ye
ar a
vera
ges.
Erro
r bar
s in
dica
te th
e sta
ndar
d er
ror o
f the
mea
n (S
EM).
Diff
eren
t let
ters
indi
cate
sign
ifica
nt in
tra-s
ite d
iffer
ence
s acc
ordi
ng to
AN
OV
A a
nd p
ost h
oc T
ukey
’s
HSD
test
(P <
0.0
1). T
otal
P v
alue
s on
the
fore
st flo
or w
ere
not a
vaila
ble.
With
per
miss
ion
from
Spr
inge
r Sci
ence
+Bus
ines
s Med
ia.
図4.4 3林分におけるリターフォールから供給される養分量、堆積有機物中の養分含有量、表層土壌(0-5 cm)の養分濃度
リウムは、リターフォール供給量では樹種間で有意差があったが、堆積有機物および表層土壌
では有意な差がなかった。
4.4 考察
4.4.1 リターフォールに含まれる養分量 マンギウムアカシア林とマホガニー林のリターフォール量は、同じ樹種でのこれまでの測定
例に比べて大きく、フープパイン林は原産地のオーストラリア、クイーンズランド州の測定例
(Brasell et al. 1980; Bubb et al. 1998; 表4.3)と同程度であった。マンギウムアカシア林のリター
フォール量は若年生の林分(Saharjo and Watanabe 2000; Bouillet et al. 2008a)よりかなり大き
く、10年生前後の林分(Lim 1988; Bernhard-Reversat 1993; Majalap 1999; Kamo et al. 2008;
Kunhamu et al. 2009)と比べて若干大きかった。リターフォール量が大きかった理由の一つとし
て、試験期間中に枯死し林分全体の14 %を占めた枯死木の寄与が挙げられる(加茂 私信)。
早生樹の成長は早い時期にピークがあり、やがて低下する(West 2006)。試験地近郊
(Kolapis)のマンギウムアカシア林の年間材バイオマス成長量のピークは、4.5年と見積もられ
た(Kamo and Jamalung 2005)。インドネシアのマンギウムアカシア林の年成長量のピークも4–
6年であった(Heriansyah et al. 2007)。これらの結果と、試験地における枯死木割合の大きさ
から、本試験地の20年生以上のマンギウムアカシア林はすでに成熟していることが示唆され
た。しかし、林分としてかなり成熟しているにもかかわらず、残存木は他2樹種を上回る肥大
成長をしていることを示していた(表4.4; 表4.5)。もう一つの可能性として、立地の肥沃度が
影響している可能性がある。若年生の林分でもリターフォールの生産量が大きい場合がある
(Hardiyanto and Wicaksono 2008)。マホガニー林のリターフォール量は、10年以下の若年生の
林分を含んでいない既存の報告と比べても、かなり大きい(Lugo 1992; Cuevas and Lugo 1998;
Isaac and Nair 2006)。マホガニーの結果は、肥沃な沖積土壌がもたらした影響かもしれない。
これら2林分の12–14 Mg ha-1 yr-1という値は、低緯度地域における天然生林の値(Vogt et al.
1986)や、南米のデータセット(平均8.61±1.91 Mg ha-1 yr-1; Chave et al. 2010)と比較しても上限
値に近かった。人工林は天然林のような複数樹種が構成する森林より生産量が少なくリター
フォールも少ない傾向にあることが指摘されているが(Binkley et al. 1992; Parotta 1999; Tang et
al. 2010)、これら2樹種は天然林並みのリターフォール生産があり、高林齢による効果によっ
て熱帯林の中でも大きなリターフォール生産となった可能性が示された。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
64
マンギウムアカシア林のリターフォール中の窒素量は、リターフォール量では同程度であっ
たマホガニー林と比べてもかなり大きく(表4.2)、リターフォール中の窒素量が大きいという
仮説を支持した。その理由は、バイオマス中の窒素蓄積量が他樹種より多く(図2.1)、リター
フォール中においても窒素濃度が高かったことによる。マンギウムアカシアによる窒素固定量
は、条件によって異なるものの窒素量全体の50%前後が固定された窒素であるという報告が多
く(Galiana et al. 2002; Bouillet et al. 2008b; Mercado et al. 2011)、12年生のマンギウムアカシア
林では、リターや地下部バイオマスなどを全て含んだ窒素固定量が年平均で100 kg N ha-1 以上
であった(Mercado et al. 2011)。第1章で紹介したように、McKey(1994)の表現では、マメ
科植物は「窒素要求性の生活形態」をとっていると称されている。さらに、本試験地の表層土
壌の窒素濃度(2.45 mg g-1; 表3.3)は、マンギウムアカシア林の中では良い条件にあった(図
2.3)。熱帯土壌においても土壌条件が良い場合は再吸収率が低いことが指摘されており
(Martínez-Sánchez 2005)、本マンギウムアカシア試験地においても再吸収率が低かったと予想
される。各樹種の養分要求および養分の再吸収率については、それぞれ第5章、第6章で詳し
く検討する。
これまでに発表された熱帯人工林のリターフォールデータ(Binkley et al. 1997)と比較して
も、マンギウムアカシアのリターフォール中の窒素量は全体の上位5%の範囲に入り、マホガ
ニーも平均以上であった。年 200 kg N ha-1以上のリターフォール中の窒素量は、マメ科樹種に
よる熱帯造林地でも何点か報告されている(Binkley et al. 1992; Swamy and Proctor 1997;
Jamaludheen and Kumar 1999)。マンギウムアカシア林は、他の林分に比べて窒素供給量の年間
値が大きかっただけでなく、マホガニーと比べて毎月均等にリターフォールを落とした(図
4.3)。マンギウムアカシアはリターフォールにより窒素を表層土壌に効果的に供給していた。
第4章 人工林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
65
表4.3 本研究と文献値から得られた3樹種のリターフォール量と養分供給量Table 4.3 Litterfall amounts and accompanying annual nutrient flux for the three study species based on the literature and the present studySpecies Study site Stand age Soil type Dry mass N P K Reference
(Mg ha-1 yr -1 ) (kg ha-1 yr-1 ) (kg ha-1 yr-1 ) (kg ha-1 yr-1 )A. mangium Pahang, Malaysia 4 N.A. 8.6-9.3 N.A. N.A. N.A. Lim 1988
Pointe Noire, Congo 5-7 Arenosols 9.7 170 N.A. N.A. Bernhard-Reversat 1993, 1996Sumatra, Indonesia 6-7 N.A. 5.9-6.0 N.A. N.A. N.A. Saharjo & Watanabe 2000Sabah, Malaysia 7-10 Alisols 11.9 155 3.1 55.7 Majalap 1999São Paulo, Brazil 1.5-2.5 Ferralsols 6.1 90 N.A. N.A. Bouillet et al. 2008ab
Sakaerat, Thailand 12-13 Acrisols /Podozols 7.5-9.8 N.A. N.A. N.A. Kamo et al. 2008
Sumatra, Indonesia 2-4 Acrisols 9.4-12.5 137.3-146.6 1.6-3.0 17.8-27.3 Hardiyanto & Wicaksono 2008Kerala, India 9 Acrisols 5.7-11.2 42.1-82.9 1.8-3.3 36.2-71.9 Kunhamu et al. 2009Sabah, Malaysia 20-22 Alisols 12.8-13.5 206-224 2.7-3.4 38-45 This study
S. macrophylla Laquillo, Puerto Rico 17, 49 Acrisols /Ferralsols 10.0-10.7 33-43 1.1-4.5 5.0-5.2 Lugo 1992
Laquillo, Puerto Rico 26 Acrisols 9.8 74.3 2.7 74.3 Cuevas & Lugo 1998Kerala, India N.A. N.A. 6.4 68 4.2 26 Isaac & Nair 2006Sabah, Malaysia 34-36 Alisols 12.7-14.1 128-153 7.6-15.6 73-106 This study
Ar. cunninghamii Queensland, Australia 42-44 Krasnozems 5.1-12.7 78-109 9-13.1 37.0-66.8 Brasell et al. 1980
Queensland, Australia 10-62 Krasnozems /Podzolic soil 6.0-10.9 28.1-60.6 4.4-6.2 N.A. Bubb et al. 1998
Sabah, Malaysia 27-29 Alisols 6.4-7.5 74-95 8.0-9.3 35-45 This study
同じ樹種を調査した既存の文献値と比べて、マンギウムアカシア林のリターフォール中の窒
素量は大きかったが、リン量は同程度であった(表4.3)。葉重量あたりの窒素濃度は、
Bernhard-Reversat(1993, 1996)が報告した値(17 mg g-1)に近く、リターフォール乾重量は他
の研究事例よりも大きかった。そのために、本研究のリターフォール中の窒素量が非常に大き
い値となった。年間窒素供給量は、林齢との関係はみられなかった(表4.3)。ハワイでファル
カタを調べた事例では、6年目で年 240 kg N ha-1 を超えていた(Binkley et al. 1992)が、同林分
の14–16年目ではそれより少ない値になった(年 141 kg N ha-1; Binkley and Ryan 1998)。いずれ
の測定でも、落葉の窒素濃度はそれぞれ13、15 mg g-1と同程度であった。インドのモンスーン
地帯におけるマンギウムアカシアリターフォール中の窒素濃度は、6–9 mg g-1と低かったが、表
層土壌中の窒素濃度も0-15cmで0.07–0.42 mg g-1と、本試験地の次表層(5–15 cm; 1.2–1.4 mg
g-1、表3.3)より1オーダー低い値であった(Kunhamu et al. 2009)。一般に土壌中の養分量が
少ない場合は落葉前の再吸収率が高くなるため(Hättenschwiler et al. 2008; Richardson et al.
2008)、各研究事例でのリターフォール中の窒素濃度の違いは、主に土壌中の窒素濃度の違い
が起因しているものと思われた。結果として、リターフォールの生産と窒素濃度の両方が、リ
ターフォールによる窒素供給量を規定していると考えられた。
リターフォールによるリン供給量は、リターフォール量や窒素供給量が大きかったことを考
慮すると非常に小さかった。既存の文献においても、リンの供給量が少ないことが報告されて
いたが(Majalap 1999; Hardiyanto and Wicaksono 2008; Kunhamu et al. 2009)、マンギウムアカシ
ア林の表層土壌(0–5 cm)中の可給態リン濃度は23.73 mg kg-1であり(表3.3)、メタ解析を行
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
66
表4.4 測定期間中の胸高断面積成長Table 4.4 Basal area increment
Basal area Basal areaSpecies increment* Relative growth rate*
(m2 ha-1 yr -1) (m2 m-2 yr -1)A. mangium -0.545 -0.0126(A. mangium for living trees) 1.636 0.0406S. macrophylla 1.491 0.0224Ar. cunninghamii 1.309 0.0216*: July 2002 to April 2005
表4.5 測定期間中の残存木の個体成長Table 4.5 Growth of individual trees (living trees)
Species DBH SE Basal area SE H SE
(cm) (cm2) (m)A. mangium 1.6 0.226 a 93.4 14.978 a -1.67 0.521 b
S. macrophylla 1.0 0.127 a 68.4 10.580 a -0.84 0.355 ab
Ar. cunninghamii 0.9 0.682 a 49.5 35.262 a 0.44 0.516 b
*: July 2002 to April 2005
Mean increment* of individual trees
なったマンギウムアカシア林分と比較して高い部類にあった(図2.3)。次表層以下の土壌でも
特にリン濃度が低くなく、土壌条件が理由ではないと考えられた(表3.3)。考えられる理由と
して落葉前の再吸収が窒素と比べてリンで卓越しており(Kadir et al. 1998; Björck 2002;
Hardiyanto and Wicaksono 2008)、生殖器官に優先的に再分配されていたことが挙げられる。具
体的なデータは第6章で詳しく述べる。熱帯人工林のリターフォールデータ(Binkley et al.
1997)との比較では、マンギウムアカシア林のリターフォール中のリン量は平均以下であり、
他の2林分は平均以上であった。マホガニー林は、年間値で見ればリンの供給量が大きいと言
える。しかし、原産地のプエルトリコでも見られるように(Lugo 1992; Cuevas and Lugo
1998)、養分供給のほとんどが雨期の終わりである2月から4月に集中している。Palm
(1995)はアグロフォレストリーにおいて、作物に対して養分を放出するタイミングが重要で
あると強調した。マホガニー林で見られるような極端な一時期の養分供給は、半減期が1年以
内(Li et al. 2001)という分解速度の速い湿潤熱帯地域では継続的な養分供給という点で目的に
そぐわないであろう。
葉以外の他の画分も、マンギウムアカシア林とマホガニー林では、ある程度の割合を占めて
いる(図4.2)。Cuevas and Lugo (1998)もいくつかの造林種で主要樹種落葉以外の画分が、リ
ターフォールによる窒素とリン供給量の50%以上を占めていたという報告をしている。
本研究の結果を、同じような土壌条件にある近接した熱帯一次林のリターフォールデータと
比較した。Dent et al. (2006)は、本試験地から約5km離れたKabili-Sepilok保護林において、
4ヵ所の養分条件が異なる一次林でリターフォールを測定した。4カ所のうち、最も肥沃で
あった沖積地の林分が、本試験地と最も近い土壌条件であったため(付表4.1)、1920年代に伐
採が入る以前の元の植生に近い場所であると仮定した。2年間の測定から、沖積地のリター
フォール量は年 7.7 Mg ha-1であり、フープパイン林と同程度、マンギウムアカシア、マホガニー
林よりは少ない値であった。リターフォールによる窒素供給量(年 103 kg N ha-1)はフープパイ
ン林より若干大きいが、他の2林分より小さかった。より貧栄養な3カ所の一次林の窒素供給
量は、フープパイン林と比較してもかなり小さかった(年 47.6–56.9 kg N ha-1)。リターフォー
ルによるリン供給量は、マンギウムアカシア林を除くと、沖積地の一次林の値(年 5.41 kg P
ha-1)より大きく、カリウム供給量についても、いずれの林分も沖積地の一次林の値(年 29.9
kg K ha-1)と同程度かより大きかった。主要樹種落葉と細枝による養分供給量は、3つの人工
林の値は天然林に対して、窒素で80–140%、リンで30–160%、カリウムで80–190%となった。
第4章 人工林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
67
養分循環でみれば、熱帯人工林は天然林よりも多くリターフォールを生産し、それに伴い林床
に養分を供給しうることがわかった。単一樹種からなる森林は生物多様性の高い森林と比べて
リターフォール量とそれに伴う養分供給量が少ない傾向にあることが指摘されている(Brasell
et al. 1980; Binkley et al. 1997; Tang et al. 2010)。しかし、本研究で調査した成熟した林分ではマ
ンギウムアカシア林におけるリンを除いて、単一樹種人工林においても同様に、林床に豊富な
可給態養分源を供給していることを示した。
4.4.2 リターフォールに含まれる養分量が土壌化学性に及ぼす影響 前章では、さまざまな人工林土壌を比較したが、本章ではリターフォールを測定した3林分
の土壌に限定してリターフォールとの関係を検討した。解析に当たって、次表層の土壌化学性
が似通っていること(表3.3)と地形条件が同じであるため、3林分の表層土壌の土壌条件は均
質であると仮定した。
本章の結果から、マンギウムアカシア林ではリターフォールからの窒素供給量が大きく、堆
積有機物中の窒素量と、表層土壌の窒素濃度の結果が、リターフォールからの窒素供給量と比
例していることが明らかになった(図4.4)。第3章で示したように、堆積有機物中の窒素量と
表層土壌の窒素濃度とは、有意な正の相関があり(図3.4)、マンギウムアカシア林は他の林分
より、いずれの試験地でも堆積有機物中の窒素量が大きかった(表4.2)。それゆえ、年 200 kg
ha-1を超えるリターフォールからの大きな窒素供給が、堆積有機物中の窒素と、表層土壌の窒素
濃度を高めているものと推察された。近接の沖積地の一次林の次表層土壌中(5–20 cm)に含ま
れる全窒素濃度(1.0 mg g-1; Dent et al. 2006, 付表4.1)は、本試験地の次表層土壌中の全窒素濃
度と同等であり(5-15 cmにおいて1.2–1.4 mg g-1; 表3.3)、最表層土壌中の全窒素濃度は、沖積
地の一次林の値(1.6 mg g-1; Dent et al. 2006)と本研究のフープパイン林表層の全窒素濃度(1.9
mg g-1; 表3.3)とで近い値であった。両林分の、リターフォールからの窒素供給量はほぼ等し
かった。ゆえに、リターフォールによる窒素供給量の大小は、表層土壌の窒素濃度に直接影響
している可能性が高いと考えられた。
本章で扱った3林分の比較では、土壌中の窒素濃度を高める効果は、0-5 cmのみという結果
となったが、第3章で示したように2つの試験地のデータで比較すれば、15 cmまでの有意な影
響が確認された。本研究のマンギウムアカシア林土壌は、Jang et al.(2004)やMacedo et al.
(2008)の研究例のように、アカシア造林によって土壌の深い層位の窒素濃度には影響を及ぼ
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
68
していなかったが、リターフォールによる莫大な窒素が供給されることで、分解されやすい可
給態窒素プールを多量に供給していると言える。それゆえ、マンギウムアカシアの成熟した林
は、若齢林より窒素を多く供給する点で土壌条件の改善に有利であると言えるだろう。地上部
リターフォールと並んで、第3章のフープパイン林で示唆されたように地下部リターフォール
も土壌条件の改善にかなり貢献していることが予想される。というのも、地下部の細根生産量
はかなり多く、しかも回転速度がかなり速いからである(Noguchi et al. 2007)。しかし、この
ような地下部の生産量や機能について、特に熱帯林では、まだ情報の蓄積が進んでいない
(Graefe et al. 2008; Jourdan et al. 2008)。
その他の元素(C、P、Ca、Mg、K)では、リターフォールと土壌との間に有意な関係はみら
れなかった。マンギウムアカシア林における土壌中のBray II法による可給態リン濃度は3林分
中もっとも大きかったにもかかわらず、リターフォールによるリン供給量は最も小さかった
(図4.4)。第3章で示した結果では、他の試験地においてはマンギウムアカシア土壌の可給態
リン濃度が、他の樹種よりも高くはなかった(表4.3)。マンギウムアカシアの地上部バイオマ
ス中のリン蓄積量は他樹種より少ない傾向があったが(図2.1b)、土壌中の可給態リン濃度は
試験地間差の影響が強く(表3.5)、リターによる供給および根の吸収を介した樹木の影響は本
研究では明らかに出来なかった。
比較した3林分において、Bray II法で測定された可給態リン濃度はリターフォール中のリン
量との関係がみられなかった。可給態リン濃度の測定法は様々な抽出法が提案されているが、
それぞれが可給態リン全体の中の一部でしかないため、未だに手法に対する議論が定まってい
ない(Tiessen and Moir 2008)。第3章で紹介したSegaliud Lokan試験地に近いDeramakot 森林保
護区で土壌中のリンの画分を逐次分析した結果では、全リン量は250–270 mg kg-1であり、8–9
割を難分解性の無機態リンが占め、比較的利用しやすい重炭酸可溶のリンは無機態で1%、有
機態で2–4%しか存在しなかった(Imai et al. 2010)。リターフォール中のリンと土壌の可給
態リンは、10種の人工林の落葉のC/P比と表層土壌の重炭酸可溶リンとの間に負の相関が見ら
れた例があった(Cuevas and Lugo 1998)。一方でハワイにおけるファルカタ林とユーカリ林の
比較例では、ファルカタ林でイオン交換樹脂吸着態リンが少なく、リン制限条件であったにも
かかわらず、両種の成長は変わらなかった(Binkley et al. 2000)。Bray I法抽出リンと樹木成長
との相関が樹種によって異なっていた報告もある(Watanabe et al. 2009)。土壌中の可給態養分
プールと植物の要求は、特にリンにおいては共生微生物がつくる細胞外酵素や有機酸によって
獲得能力が拡大すること、酵素や酸によって獲得可能になるリン量は抽出法による量と一致し
第4章 人工林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
69
ないこと、獲得可能なプールと植物側の要求のバランスなど、様々な条件がからむために一致
しない結果が生じうる。本研究では、アカシア林のpHがカリビアマツ林と比べると有意に低く
(平均で0.6、図3.3b)、リンの可給性に影響を及ぼしていた可能性が考えられる。低活性粘土
が優占する変異荷電主体の土壌では低pH条件下でリン吸着量が増大し、可給性が減少するが
(岡島 1984)、本試験地はCECが高かったために(付表 3.1)永久荷電粘土が優占していたと
考えられ変異荷電粘土の効果は低いと思われる。根圏からの有機酸の放出は、むしろリンの可
給性を高める働きをする(Vance 2001)。しかし最近の研究では、酸性土壌下の鉄アルミ結合
体リンの可給性を高めるプロセスとして、土壌の酸性化よりも細根から放出される有機酸に
よってキレート化されることが有効であると述べられており(Lambers et al. 2008; He et al. in
press)、植生の影響がどの程度リンの可給性の向上に影響するか今だ不明な点が多い。可給態
養分と植物要求との関係は、第5章で詳しく述べる。
カルシウムは比較的動きにくい元素である。リターフォールから供給されるカルシウムと、
堆積有機物中の含有量とを比較すると、他元素がすべて堆積有機物中で減少しているにもかか
わらず、カルシウム量はほぼ等しい値であった。プエルトリコの26年生の林分では、堆積有機
物中のカルシウム量(Lugo et al. 1990)は、リターフォールから供給される量(Cuevas and Lugo
1998)と比べ、2倍の量の蓄積があった。リターフォールから供給されるカルシウムは、他の
元素よりも長く堆積有機物中に留まるようである。植物組織中ではカルシウムは細胞膜の外側
に多く分布し、組織内での移動は細胞膜外のアポプラスト輸送が主体であるため師管への移動
が起こりにくい(Lambers et al. 2008)。カルシウムは一度組織内に吸収されると不動化しやす
い傾向にある。ボルネオの一次林における構成樹種15種の落葉分解試験の測定例では、数樹種
で、カルシウムは分解開始から数ヶ月間、重量当たりでほぼ100 %を保っていた(Hirobe et al.
2004)。しかし、種間の比較では樹種毎にかなり分解の過程が異なっていた。カルシウムの移
動については第6章においても改めて論じる。
マホガニーによるリターフォールからのマンガン供給量は、他2樹種と比べてかなり少な
かった。それにより、マホガニーの堆積有機物は分解が抑制され、表層土壌の化学性に影響を
及ぼしている可能性がある。鉄やマンガンといった金属元素は、リターや溶存炭素の分解過程
に触媒のように働き、分解を促進することが明らかにされている(Berg et al. 2000; Davidson et
al. 2003)。また、植生の違いによって土壌中の特定の元素の濃度分布が変わってくることもわ
かっている。ユーカリ林と草地を比較した研究例では、ユーカリ林では草本の根系が到達不可
能な土壌中のより深い層位からマンガンを吸収し、リターによって移動することによって、表
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
70
層土壌のマンガン濃度を高めることが報告されている(Jobbágy and Jackson 2004)。マンガン
のような触媒的効果を持つ元素が、吸収(uplifting)の範囲およびリターフォール中を介して移
動する量の大小によって、堆積有機物の分解速度や養分動態に変化を与えるかもしれない。
4.5 まとめ 本章では、マンギウムアカシアを含む近接する3林分で、リターフォール中に含まれる養分
量の比較を行った。マンギウムアカシア林はマホガニー林とともに、リターフォールの乾重が
年間12 Mg ha-1を超え、世界の湿潤熱帯林と比較しても大きい部類にあった。マンギウムアカシ
ア林はさらに窒素濃度も高かったため、窒素供給量が年200 kg ha-1を超え上限値に近かった。
主要樹種落葉はそのうちの50 %以上を占めていたが、その他の画分も大きな割合を占めてい
た。リターフォールからの多量の窒素供給によって表層土壌の窒素濃度が高められていたと考
えられ、本章の仮説が支持された。また、先行研究によって事例が積み重ねられてきたアカシ
ア造林による土壌窒素の上昇が、リターフォールからの窒素供給によるものであることが裏付
けられた。一方、リターフォールからのリンの供給量は、他2樹種と比較して極めて少ないこ
とが新たな知見として得られた。マンギウムアカシアは窒素の供給能力が優れていたが、リン
については異なっていた。マホガニーは窒素とマンガンを除いて、リターフォールからの養分
供給量が最も大きかった。しかし、3~5月の一時期にリターフォールを落としてしまうた
め、継続的な養分供給という面では問題があった。フープパインを含め、3種の人工林からの
養分供給は、近隣の熱帯一次林と比較しても同等かそれ以上の供給量があることが示された。
本章の結果から、マンギウムアカシアが多量のリターフォールを供給し、窒素循環の点では
土壌回復機能が優れていると結論づけることができた。しかし、他元素については同程度のリ
ターフォール量があるマホガニー林と比較すると供給量が少なく、特にリンは極端に少なかっ
た。リターフォール中の窒素以外の元素は、表層土壌の化学性との関係が見られなかった。
急速な土壌の窒素条件の回復といった目的には、マンギウムアカシアはきわめて有用な樹種
であるといえる。しかしながら、単一樹種のリターフォールは、マンギウムアカシアのリン
や、マホガニーのマンガンなど特定の養分の量が極めて少ないといったことが起こりうる。表
層土壌においてリターフォールからのリン供給による影響は明らかでなかったが、堆積有機物
の質に影響を及ぼし、物質循環の速度を変える可能性がある。マンギウムアカシアは肥料木と
して大きな能力をもっているが、養分バランスには注意を払う必要がある。
次章以降は、マンギウムアカシアの窒素とリンの吸収と、樹体内での移動について検討をお
こなう。
第4章 人工林のリターフォールを介した養分動態と土壌への影響
71
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
72
付表4.2 リターフォール画分毎の養分供給量に対する、林分、年、各林分にネストしたリターフォール画分を要因とした反復測定分散分析の結果
App
endi
x 4.
2 Ef
fect
s of s
ite, y
ear a
nd fr
actio
n on
the
annu
al e
lem
ent f
lux
in e
ach
litte
r fra
ctio
n
Fixe
d fa
ctor
dfF
PF
PF
PF
PF
PF
PF
PF
PF
PSi
tes
225
4.66
< 0.
001
256.
07<
0.00
153
9.99
< 0.
001
391.
73<
0.00
138
1.58
< 0.
001
178.
04<
0.00
125
4.21
< 0.
001
702.
24<
0.00
183
1.09
< 0.
001
Year
21.
880.
154
2.15
0.11
74.
870.
008
70.8
0<
0.00
118
.24
< 0.
001
6.86
< 0.
001
18.7
9<
0.00
14.
150.
163
35.0
3<
0.00
1Si
te !
Yea
r4
2.70
0.03
03.
030.
017
5.27
< 0.
001
43.4
9<
0.00
126
.51
< 0.
001
13.3
8<
0.00
119
.76
< 0.
001
5.68
< 0.
001
20.1
7<
0.00
1Fr
actio
n12
724.
51<
0.00
174
8.42
< 0.
001
933.
26<
0.00
197
7.24
< 0.
001
1293
.22
< 0.
001
1334
.19
< 0.
001
567.
03<
0.00
116
47.6
0<
0.00
112
74.6
2<
0.00
1Fr
acio
n !
Year
244.
85<
0.00
15.
13<
0.00
16.
04<
0.00
150
.07
< 0.
001
14.4
5<
0.00
17.
76<
0.00
127
.36
< 0.
001
5.95
< 0.
001
7.88
< 0.
001
Rep
eate
d m
easu
res A
NO
VA w
as u
sed
for t
hree
yea
rs o
f ele
men
t flu
x in
the
litte
rfal
l fra
ctio
ns.
KFe
Mn
Dry
Mas
sC
NP
Ca
Mg
付表4.1 Kabili-Sepilok保護林内の3タイプの一次林 (Dent et al. 2006) とGum Gum試験地(付表3.1)との土壌理化学性の比較
0–5
cm5–
20 c
m0–
5 cm
5–20
cm
0–5
cm5–
20 c
mA
h (0
-9 c
m)
E (9
-23
cm)
pH (w
ater
)4.
6 (0
.3)
4.5
(0.3
)4.
5 (0
.3)
4.8
(0.3
)4.
1 (0
.3)
4.7
(0.3
)3.
923.
76So
lubl
e P
(mg
kg–1
)7.
79 (2
.69)
3.08
(1.0
5)4.
64 (1
.34)
2.
70 (1
.14)
9.
23 (6
.39)
4.04
(1.7
2)26
.78.
7To
tal N
(%)
0.16
(0.0
6)0.
10 (0
.02)
0.09
(0.0
2)0.
06 (0
.02)
0.10
(0.0
4)0.
05 (0
.02)
0.14
0.8
Ca
(meq
. %)
1.57
(2.2
9)0.
40 (0
.44)
0.07
(0.0
5)0.
03 (0
.03)
0.23
(0.1
1)0.
10 (0
.08)
4.38
2.23
Mg
(meq
. %)
1.77
(1.3
2)1.
12 (1
.12)
0.23
(0.1
1)0.
09 (0
.07)
0.75
(0.6
3)0.
12 (0
.12)
1.72
1.4
K (m
eq. %
)0.
32 (0
.15)
0.18
(0.0
8)0.
14 (0
.05)
0.08
(0.0
3)0.
22 (0
.22)
0.0
7 (0
.04)
0.11
0.09
ECEC
(meq
. %)
8.16
(2.7
2)7.
89 (2
.86)
4.28
(1.1
8)3.
50 (1
.69)
4.24
(1.9
6)1.
90 (0
.88)
9.42
11.8
Cla
y (%
)
34.7
(9.6
)19
.8 (5
.6)
14.5
(4.7
)38
Silt
(%)
24.9
(7.2
)12
.4 (4
.2)
10.3
(3.6
)26
Sand
(%)
40.4
(14.
7) 6
7.8
(7.7
) 75
.4 (6
.2)
36Fo
rest
stru
ctur
e an
d sp
ecie
s ric
hnes
sSt
em d
ensi
ty (h
a–1)
941
1,34
31,
656
Mea
n ba
sal a
rea
(m2 tr
ee–1
)0.
037
0.02
90.
017
Spec
ies N
o.43
436
819
Bas
al a
rea m
2/h
a34
.817
38.9
4728
.152
App
endi
x 4.
1 M
ean
(sta
ndar
d er
rors
of m
eans
) for
soil
phys
icoc
hem
ical
pro
perti
es a
t the
thre
e ty
pes o
f for
ests
in K
abili
-Sep
ilok
FR (D
ent e
t al.
2006
) and
Ar.
cunn
ingh
amm
ipl
ot a
t Gum
Gum
FR
(App
endi
x 3.
1)
Allu
vial
fore
stSa
ndst
one
fore
stH
eath
fore
stG
um G
um (A
r.cun
ning
ham
ii)
第5章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工
林の養分添加による細根成長
5.1 はじめに
湿潤熱帯の代表的な土壌である、AcrisolsやFerralsolsは有機物の分解が速く、強い風化と溶脱
作用を受けているため、一般には貧栄養であるとされている(Sanchez 1976; Jordan 1985)。一
方、森林生態系においては、窒素の可給性については温帯よりも高いことが、様々な研究から
明らかになっている(Vitousek et al. 2002; Vitousek 2004)。これは、有効土層が厚いことと、窒
素固定による系外からの継続的な供給およびリターからの供給、分解が大きいことによると考
えられている。一方、リンについては、系外からのインプットが少ないため、土壌の生成期間
が長いほど制限要因に成りやすくなる(Walker and Syers 1976)。このような養分の制限は、湿
潤熱帯の中でも、土壌母材や標高などによって大きく異なることがわかっている(Cuevas and
Medina 1988; Matson and Vitousek 1990; Tanner et al. 1998; Graefe et al. 2010; Unger et al. 2010)。熱
帯人工林においては、可給態養分の管理が、特に貧栄養な場所ではより生産性に大きく影響を
及ぼす(Nykvist 1997; Zech and Drechsel 1998)。Nykvist(1997)によればマレーシアサバ州南
西部の貧栄養な二次林で、伐採で持ち出される幹と樹皮だけで生態系全体の19%のカルシウム
が集積し、バイオマス全体では生態系全体の49%にも達していたことが報告されている。第1
章で述べたように、天然林では環境に適合した森林が成立するが、人工林からの十分な生産を
期待するためには植物が要求する養分に対して可給態養分を十分に満たす必要がある(Attiwill
and Adams 1993)。
植物側の養分制限を測定する手法としては施肥試験が一般的であるが、実際の造林地での試
験を行う場合は、結果を得るまでに時間がかかるという問題点がある。施肥試験の代替法とし
て、Cuevas and Medina (1988)が提案したイングロースコア法は、異なる環境下での養分制限
を検出するのに有用な方法であると考えられている。Raich et al.(1994)によれば、養分添加し
たイングロースコア法を用いることによって、大規模な施肥試験と相違ない結果をより迅速に
得ることができるとしている。過去の研究では、養分可給性が異なる立地条件下での細根成長
からみた成長応答を比較する研究が多く見られた(Vogt and Persson 1991; Sundarapandian et al.
1999; Tateno et al. 2004; Fujimaki et al. 2005)。ところが、同じ立地条件下の異なる樹種が示す養
分要求を調べるのに応用された例はほとんどなく(Valverde-Barrantes et al. 2007)、養分添加に
第5章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林の養分添加による細根成長
73
よる熱帯人工林の細根成長について書かれた文献も少ない(Jourdan et al. 2008)。異なるタイ
プの人工林が、養分添加に対してどのように細根成長を促すか明らかにすることによって、そ
れぞれの人工林が示す養分要求の強弱と、特定元素に対する養分要求の有無を理解することが
可能となる。
窒素やリンといった養分の要求は、樹種によって異なることが予想される。早生樹は一般的
に養分要求が大きいと考えられるが、マメ科樹種は窒素固定によって窒素をまかなうことが出
来るため、リンに対する要求がより大きいと考えられている(Harwood 2011)。成長期間全体
で見ると、マンギウムアカシアは、単位バイオマス量あたりの窒素蓄積量が他樹種より大きく
(図2.1a)、リターフォールで落とす窒素量も多い(表4.2)。従って、一次生産に必要な窒素
の絶対量が他樹種より大きい。多量の窒素吸収の大半が窒素固定からまかなわれているのか、
あるいは土壌からの吸収も多いのか検証が必要である。逆に、単位バイオマス当りのリン蓄積
量は少なく(図2.1b)、さらにリターフォール中のリン量も少ない(表4.2)。そのため、一般
的に考えられているマメ科樹木の窒素およびリン要求が正しいのかどうか検証する必要があ
る。
さらに、植物はある程度成長した時点ですでに吸収した養分を再転流して利用することが可
能であるため、ある時点での養分要求は成長期間全体の要求と異なることがありうる。第4章
において、マンギウムアカシア林の土壌中の全窒素濃度が他の林分と比較して高く、リター
フォール中の窒素の再吸収率が低いことが示唆された。そのため、本試験地における窒素制限
は少なく、Harwood(2011)が示したようなリン制限がより大きいという結果が予想される。
イングロースコア法による養分要求の測定結果は、試験開始時点での養分要求を表すことにな
る。したがって、マンギウムアカシアは窒素添加と比べ、リン添加に対して顕著な細根成長を
示すと予想される。
早生樹以外についても広葉樹は針葉樹とで異なり、広葉樹は窒素に対する要求が大きい可能
性がある。というのも、温帯の広葉樹と針葉樹を比較すると、広葉樹の方が窒素をより多く消
費し、窒素利用効率が低いとされているからである(Inagaki et al. 2004; McGroddy et al.
2004)。逆に、針葉樹は養分要求が小さいことが予想される(Inagaki et al. 2004; Reissmann and
Wisnewski 2004)。
マンギウムアカシアの養分要求の特徴を他2樹種との比較から明らかにするため、第4章で
リターフォールによる養分供給量が明らかになったGum Gum試験地の3林分で、養分添加によ
る細根成長への影響を5ヶ月間測定した。これまでの養分添加したイングロースコア法を用い
た研究例(Cuevas and Medina 1988; Raich et al. 1994; Gress et al. 2007; Graefe et al. 2010)と同様、
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
74
植物が要求する可給態養分が
存在する場合に細根成長が増
大する、と仮定して試験を行っ
た。試験においてマンギウムア
カシアは、リン添加によって最
も大きな細根成長を示し窒素
添加に対してはリン添加のよう
な応答を示さない、また、残
りの2樹種に関して窒素に対す
る要求はフープパインよりもマ
ホガニーの方が大きいという仮
説を検証した。
5.2 方法
第3章、第4章と同じGum
Gum試験地の3林分で、イング
ロースコア法(Cuevas and
Medina 1988; Vogt and Persson
1991; Raich et al. 1994)を用い
て、細根成長を測定し、NとP
制限の評価を行った。1mm
メッシュのポリエチレン製ネットに湿重でおよそ100 gのバーミキュライトを詰め(図5.1a)、
NとPの水溶液に24時間浸した。水溶液は、N添加用として0.1 M NH4NO3溶液、P添加用として
0.1 M KH2PO4溶液、および、NP添加用としてそれらの混合溶液を用いた。対照区として、バー
ミキュライトを純水に浸した(図5.1b)。1林分につき、それぞれの処理区で6反復用意し、
合計24個のバッグを埋めた。バーミキュライトは試験地の土壌と土性が異なるものの、NとPを
ほとんど含んでおらず、高い陽イオン交換容量(CEC)を持ちリンを吸着、固定してしまわな
いため、このような養分添加試験での利用に適している(Raich et al. 1994、Gress et al. 2007)。
処理の反復数や水溶液の濃度は、Cuevas and Medina (1988)の手法に基づいた。
第5章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林の養分添加による細根成長
75
(a) (b)
(c)
(d) (e)
(f)
Fig. 5.1 Procedure of the root-ingrowth core experiment
図5.1 イングロースコア試験(a) バーミキュライト100gをメッシュバックに詰める(b) 養分の添加(24時間)(c) イングロースコアを土壌に密着させながら設置(写真提供 稲垣善之博士)
Fig. 5.1 (cont.) Procedure of the root-ingrowth core experiment
図5.1 イングロースコア試験(続き)(d) 設置後約5ヶ月後にイングロースコアを掘り取り(e) 現地でハサミを用いて丁寧に根を切断(f) バーミキュライトと根を分別(写真提供 稲垣善之博士)
CN P N+P
イングロースコアは2002年10月1日と3日に
設置をした。直径5 cm深さ10 cmのコアを
オーガーで掘りとり、イングロースコアを掘
りとった穴に密着させた(図5.1c)。深さ10
cmはおよそ試験地土壌のAh層に一致し、土
壌断面からの観察ではほとんどの細根がその
層位に分布していた。プロット内の任意の6
地点に、対照区(C)、N添加区(N)、P添
加区(P)、混合添加区(NP)のセットを埋
設した。埋設時に採取した土壌から細根を洗
い出し、乾式燃焼法で炭素窒素濃度の測定を
行った。イングロースコアはおよそ5ヶ月後
の2003年3月6日に回収した。第4章で示した
ように、測定期間中に極端な乾燥はみられ
なかった。イングロースコアに貫入した根
は、現場ではさみを用いて注意深く切断し
た(図5.1e)。サバ森林研究所内にて、ピン
セットを用いてバーミキュライトと根を分
離した(図5.1f)。根サンプルは70℃で3日間乾燥後、乾重を求めた。マンギウムアカシア林の
サンプルからは、根粒数の計測もおこなった。
NとPおよび混合添加の細根成長および、マンギウムアカシアの根粒数への効果は一般化線形
モデル(GLM)を用いて評価した。誤差分散は細根成長についてはガンマ分布を、根粒数につ
いてはポアソン分布を仮定し、リンク関数を対数とした。窒素とリンの添加を主効果とした完
全モデルから、AICを比較して最適モデルを選択した。統計解析は、R version 2.12.1(R
Development Core Team 2012)を用いた。
5.3. 結果
測定期間中の細根成長は、対照区において、マンギウムアカシア林で平均62 g m-2、マホガ
ニー林で平均24 g m-2、フープパイン林で平均100 g m-2であった。第3章で測定した表層0-30 cm
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
76
A. mangium S. macrophylla Ar. cunninghamii0
2500
5000
7500
10000O
rgan
ic m
atte
r (g
m-2
)
A. mangium S. macrophylla Ar. cunninghamii0
50
100
150
Fine
-roo
t pro
duct
ion
in th
e co
ntro
l plo
ts (g
m-2
)
Soil 0-10 cm
Soil 0-30 cm
(a)
(b)
Fig. 5.2 (a) Organic matter stock in the surface soil (0-30 cm; Table 2.3) and (b) fine-root production in the control plot (n = 6)Error bars indicate the standard error of the mean.
図5.2 (a)表層土壌中の有機物量(表2.3より算出)と、(b)対照区における細根生産量(n = 6)
0
50
100
150
200
250
300
350
0
50
100
150
200
250
300
350
0
50
100
150
200
250
300
350
C N NPP C N NPPC N NPP
Fine
root
ingr
owth
(g m
!")
A. mangium S. macrophylla Ar. cunninghamii
の土壌中の有機物現存量は、それぞれ平均値で、2298、1433、4642 g m-2であり(表3.3より算
出)、林分間で有機物現存量と細根成長量との間に対応関係があった(図5.2)。また、埋設前
の細根中の窒素濃度はマンギウムアカシアにおいて19.6 mg g-1と、他樹種の値(マホガニーと
フープパインでそれぞれ、8.4、9.7 mg g-1)より2倍以上高かった。(表5.1)。
N、P添加に伴う、イングロースコア中の細根成長量は、マンギウムアカシア林のみ対照区に
比較して増加した(図5.3)。モデルの比較では、マンギウム林ではN+Pのモデルが、マホガ
ニー林とフープパイン林では帰無モデル
が、それぞれ最も低いAIC値を示した
(表5.2)。従って、マンギウム林では、
窒素とリンの両方が細根
成長の制限要因となって
おり、マホガニー林と
フープパイン林ではいず
れの元素も細根成長の制
限要因とは言えなかっ
た。マンギウム林の根粒
数はN区とN+P区が対照
区よりも多く(図
5.4)、一般化線形モデ
ルの比較では、Nのみの
モデルが最も低いAIC値
第5章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林の養分添加による細根成長
77
表5.2 GLMを用いた、N、P添加に伴う細根成長のモデル選択結果Table 5.2 Results of the model selection for fine-root ingrowth applied N and P using GLMA.mangium
ModelNulldeviance df
Residualdeviance df AIC
null 12.72 23 12.72 23 280.67Nitrogen 12.72 23 11.06 22 279.04Phosphorus 12.72 23 9.71 22 275.7Nitrogen + Phosphorus 12.72 23 7.94 21 272.56Nitrogen + Phosphorus + Nitrogen:Phosphorus 12.72 23 7.92 20 274.51S.macrophylla
ModelNulldeviance df
Residualdeviance df AIC
null 33.91 23 33.91 23 213.11Nitrogen 33.91 23 33.82 22 215.03Phosphorus 33.91 23 33.2 22 214.5Nitrogen + Phosphorus 33.91 23 33.2 21 216.49Nitrogen + Phosphorus + Nitrogen:Phosphorus 33.91 23 31.28 20 216.78Ar. cunninghamii
ModelNulldeviance df
Residualdeviance df AIC
null 10.49 23 10.49 23 263.04Nitrogen 10.49 23 10.42 22 264.87Phosphorus 10.49 23 10.25 22 264.44Nitrogen + Phosphorus 10.49 23 10.15 21 266.2Nitrogen + Phosphorus + Nitrogen:Phosphorus 10.49 23 9.96 20 267.72The bold model indicate the model with lowest AIC
表5.1 イングロースコア埋設時土壌中の細根中の窒素濃度
A.mangium S. macrophylla Ar. cunninghamii
N (mg g-1) 19.6 8.4 9.7
Table 5.1 Nitrogen concentraitons in fine-root at each plot beforethe root-ingrowth core experiment
Fig. 5.3 Fine-root ingrowth after application of nitrogen, phosphorus, or both nitrogen and phosphorus at the three sites during the measurement period (mean ± s.e.).C, N, P, and NP on the x-axis indicate control, nitrogen, phosphorus, and both nitrogen and phosphorus applications, respectively.
Each group consisted of six replicates.
図5.3 窒素とリン添加に対する3樹種のイングロースコア内での細根成長
を示した(表5.3)。したがっ
て、根粒数の増加は窒素添加の
みが有意な正の影響を及ぼし、
リン添加による影響は認められ
なかった。
5.4 考察 第3章で行った土壌サンプリ
ングにおいて、目視による観察
から有機物画分中の大半が生根
であったため、図5.2に示した
関係から、5ヶ月間のイング
ロースコア中での細根成長はほ
ぼ細根現存量を反映していたと
考えられた。そのため、コア内
に詰めたバーミキュライトと試
験地土壌の土性の違いによる樹
種間の細根生産の違いに対して、大きな影響は無かったと考えられた。
マンギウムアカシア林では、養分添加によって有意に細根成長が増大した。しかしながら、
他の2林分では、養分添加による有意な細根成長は見られず、マホガニーとフープパインの養
分要求の違いは検出されなかった。本試験地の最表層の全窒素濃度は熱帯造林地土壌のメタ
データと比較してもおよそ平均値(2.18 mg g-1)程度有り(図2.3、表3.3)、比較的窒素の制限
が弱い条件にあった。さらに、地上部バイオマスの窒素利用効率に対し表層土壌の全窒素は有
意な要因ではなく、植物間での窒素利用の違いが主要因であった(図2.3)。マホガニーとフー
プパインが必要とする量以上の窒素が利用可能であったため、これら2樹種の窒素利用の違い
を検出できなかったものと考えられた。さらに、本試験地の可給態リン濃度は熱帯造林地の中
でも高い方にあり(図2.3、表3.3)、過去に熱帯で行われた実験的研究例で報告されているよう
な、特定元素の制限(Cuevas and Medina 1988; Tanner et al. 1998; Ostertag 2001; Kaspari et al. 2008;
Graefe et al. 2010; Unger et al. 2010)は本調査地では確認できなかった。
マンギウムアカシア林で、リン添加による有意な細根成長が起こったことは、リンが主要な
制限要因であるという仮説を支持した。特に、本試験では水溶性の可給態リンを施用したた
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
78
表5.3 GLMを用いた、N、P添加に伴うマンギウムアカシアの根粒数のモデル選択結果Table 5.3 Results of the model selection for nodule number of A. mangium applied N and P using GLMNodules
ModelNulldeviance df
Residualdeviance df AIC
null 598.1 23 598.1 23 680.95Nitrogen 598.1 23 346.6 22 431.69Phosphorus 598.1 23 597.8 22 682.64Nitrogen + Phosphorus 598.1 23 433.2 21 433.18Nitrogen + Phosphorus + Nitrogen:Phosphorus 598.1 23 345.7 20 434.61The bold model indicate the model with lowest AIC
Fig. 5.4 Number of nodules per root weight at the A. mangium site during the measurement period (mean ± s.e.).C, N, P, and NP on the x-axis indicate control, nitrogen, phosphorus, and both nitrogen and phosphorus applications, respectively. Each group consisted of six replicates.
図5.4 窒素とリン添加に対するマンギウムアカシアの細根重量あたりの根粒数の増加
0
50
100
150
200N
odul
es p
er ro
ot w
eigh
t (n
mg!")
C N NPP
め、菌根等を介する必要がなく、細根の成長によってリン獲得能力を高めたものと考えられ
る。一方、仮説と異なり、窒素添加によっても細根成長が有意に増加した。本試験地の3林分
は窒素制限が弱く、最表層に関してはマンギウムアカシア林の全窒素と可給態リンは、他の2
林分と同等か若干高く(図4.4)、また、リターフォール中の窒素量は2林分よりかなり大き
かった(表4.2)。さらに、細根中の窒素濃度がマンギウムアカシアで2倍以上高いこと(表
5.1)も、その給源が窒素固定であるか吸収であるかは明らかでないが、植物内に十分な窒素が
存在していたことを示唆している。したがって、林床から有機物分解によって供給される可給
態窒素量はかなり大きいことが予想され、かつ植物内にも多くの窒素が存在していたであろう
にもかかわらず、マンギウムアカシアは窒素とリン添加の両方に有意な細根成長を示した。本
試験の結果は、マンギウムアカシアが成長過程が進んだ段階にあり再転流によっても窒素を利
用しうる状態にあるにもかかわらず、それらをあまり利用せず、土壌からの窒素源を積極的に
利用していることを示していた。
21年生のマンギウムアカシア林は5年前後とされる年成長量のピークを過ぎており(Kamo
and Jamalung 2005)、林分全体では枯死分によって材積成長が減少傾向にある(表4.4)。バイ
オマスサイズも十分に大きかったため(表4.1)、窒素及びリン利用効率も若齢林分と比べれば
高く、それぞれの養分要求量も成長初期と比べ低下していたはずである(図2.1)。ところが、
マンギウムアカシアの残存木だけ見れば、年成長量のピークには達していないと思われる他の
2林分と比べて平均値では材積成長量が大きかった(表4.5)。細根生産量自体はフープパイン
林より少なかったものの、養分添加による新たな窒素、リン源に対し有意な細根成長を示す結
果となった。
一般的に、マメ科植物は、根粒の維持のため、より多くのリンを必要としていると考えられ
れている。しかし、第1章で紹介したように、これは農業作物に当てはまることであり、樹木
や天然生の草本には当てはまらない事例が述べられている(Vitousek et al. 2002)。実際に、マ
ンギウムアカシアを使って、窒素固定によって獲得した窒素源で育った苗と、尿素添加によっ
て窒素源を得た苗を比較した例では、リンの要求量は両者で変わらず(Ribet and Drevon
1996)、第2章の結果においてもマンギウムアカシアの地上部バイオマス中のリン蓄積量は他
のグループより少なかった。このことから、マンギウムアカシアはマメ科草本のように極端に
リンを必要としているわけではないと考えられた。一方、マメ科植物は窒素に対する要求が他
の植物よりも大きく(McKey 1994; Vitousek et al. 2002; Houlton et al. 2008)、第2章では、マン
ギウムアカシアを含む窒素固定種が系統的に非窒素固定種より多くの窒素を地上部バイオマス
第5章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林の養分添加による細根成長
79
に蓄積していたことを示した。このことから、マンギウムアカシアは成熟期に至っても、窒素
に対してはリン以上に要求が大きかったものと判断された。養分要求、特に窒素要求が大きい
ことは、早生樹としての成長の速さや光合成生産と関係しているかもしれない。この点は総合
考察で詳しく述べる。
南米やアフリカなどの低地湿潤熱帯林では、一般に可給態窒素が豊富で可給態リンが少ない
条件で、マメ科植物は林冠木を形成するほど優占している(Hedin et al. 2009)。Houlton et al.
(2008)は、多くの研究例でマメ科植物の土壌の酸性フォスファターゼ活性が他樹種より有意
に高かったことから、可給態リン制限環境下で窒素固定を行う種が優占する理由を、多量に獲
得した窒素資源を利用してフォスファターゼを生産しリン獲得を有利にしているという説明を
した。その見方からすると、本試験において窒素とリンの両方が制限要因であったという結果
も理解しうる結果となる。すなわち、マンギウムアカシア林下の土壌中には多量の可給態窒素
が存在し、マンギウムアカシアは吸収や窒素固定によって獲得する窒素資源の多くを呼吸や光
合成に利用するものと思われる。さらに、その一部をリン獲得に投資する必要があるため、窒
素とリンの両方を必要としていたと解釈される。マンギウムアカシアのフォスファターゼ活性
は、他樹種と比べ高いことが示されている(小島 2004; Lee et al. 2006)。さらに、最新の研究
ではリン制限が極めて強い乾燥地に生えるアカシア類が主に有機酸の生成によって、可給性が
極めて低いFe結合型リンを吸収できる事例が示されている(He et al. in press)。マンギウムアカ
シアによる有機酸の放出はリター分解からの寄与が示唆されているのみであり(Majalap
1999)、細根からの放出は今後の検証が必要である。現時点では有機態、無機態とも通常の植
物では獲得困難な形態のリンに対し、マンギウムアカシアは細胞外酵素や有機酸を生産するこ
とによって、獲得を有利な条件にしている可能性があると考えられる。マンギウムアカシアが
獲得した可給態窒素の一部は、細胞外酵素を構成する基質や、有機酸を合成する酵素の一部と
して用いられたと考えられた。
通常、窒素条件がよい場所ではマメ科植物は根粒を付けないことが多く(たとえばYoneyama
et al. 1993)、窒素添加のみによってマンギウムアカシアの根粒が増加した理由は本試験の結果
のみでは明らかではない。マメ科植物は根粒のオートレギュレーション(autoregulation)機能
を持ち、はじめに付けた根粒を優先的に増大させ、さらなる根粒の感染を抑制している
(Suzuki et al. 2008; Wall and Berry 2008)。オートレギュレーション機能は、根圏の養分バラン
スに応じてフィードバックが起こる(Wall and Berry 2008)。これまでに明らかにされた研究例
から、二つの可能性を検討した。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
80
一つ目は、盛んな可給態窒素の吸収によって、根圏の回りだけ可給態窒素が少なかった可能
性が考えられる。通常、マメ科植物を使った実験系では根粒を形成するためにはリンが必要と
される。温帯のハンノキの一種(Alnus incana)の水耕実験では、リン添加によって根粒数が増
加し、窒素添加で根粒数が減少した(Gentili and Huss-Danell 2003)。また、マンギウムアカシ
アの水耕栽培の試験結果では、リン制限下では根粒数が制限され、水耕液中のリン濃度が上昇
するにつれて一定の閾値まで根粒数も増加した(Ribet and Drevon 1996)。しかし、自然条件下
では実験系ほどリン不足にならない場合が多く(Vitousek et al. 2002)、本試験地の表層土壌の
可給態リン濃度も比較的高かったことから(表3.3b)、根粒形成に対するリン制限は無かった
ものと考えられる。気耕栽培でマンギウムアカシアに感染する根粒菌(Bradyrhizobium)と菌根
菌(Glomus intraradices)を接種した条件下で、異なる濃度でリン添加した例では、葉のリン濃
度で差があった以外は根粒数や樹木成長などの差が見られなかった(Weber et al. 2005)。自然
条件下においては通常菌根菌に感染し有機態リンの獲得が可能な条件にあるため、水耕試験の
結果と異なり根粒形成のための最低限のリンが得られていたのかもしれない。そして、より獲
得しやすい水溶性のリンが添加されたイングロースコア内には、細根の伸長成長で積極的に確
保しにいった可能性がある。一方で、窒素についてはリターフォールから供給される窒素量が
多く可給態窒素の給源が豊富に存在していたが、盛んな吸収も行われていたと考えられる。実
際に、他の2樹種と異なり、マンギウムアカシアは窒素添加に対して細根成長を示していた。
そのため、根圏の回りにだけ窒素が少ない状態があったのではないかと思われる。Wall and
Berry(2008)によれば、根圏外のN:P比が根粒のオートレギュレーション機能に影響し、無機
態窒素濃度が高い場合でもリン濃度が高ければ、根粒の成長阻害をおさえる働きをするとして
いる。本試験においては、窒素の添加により根圏の低い窒素濃度が是正されることによって、
根粒の成長を促した可能性が考えられた。実際に、マンギウムアカシアを用いた気耕試験で無
機態窒素を添加した例では、高濃度の窒素添加(硝酸態、アンモニア態とも4.9mM以上)では
根粒形成が抑制されたが、低濃度のアンモニア態窒素添加(0.4mM NH4Cl)では無添加区より
有意に根粒数が増加した(Weber et al. 2007)。
二つ目は、当初想定していなかったことが実験系でおこっていた可能性、すなわち、イング
ロースコアの実験系、具体的には硝酸アンモニウムを添加したバーミキュライト中で、鉄など
の金属元素の可動化が起こった可能性がある。マンギウムアカシアに感染するBradyrhizobium
は、各種金属元素の中でも鉄が不足するとほとんど根粒を形成せず、乾物生産をも抑制する
(Lesueur and Diem 1997)。具体的な機構については検証が必要であるが、バーミキュライト
第5章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林の養分添加による細根成長
81
環境に起因する鉄などの金属元素の可動化によって根粒の形成が促進された可能性も棄却でき
ない。
いずれの要因にしても、根粒の形成は宿主および根系の養分獲得条件によって左右されてい
ると考えられ、現象を正確に理解するためにはフィールドで起きる現象を実験系で得られた情
報(Lesueur and Diem 1997; Weber et al. 2005; Weber et al. 2007)からさらに検証していく必要が
ある。
本試験は、比較的雨の多い時期の1回測定であり、その時期特有の成長を反映した結果と
なっている可能性は否定できない。湿潤熱帯環境下での細根生産の季節性はほとんど情報がな
いが、地上部成長については温帯のような明瞭な季節性や、成長の休止期が起こりにくいと考
えられる。ブラジルの若干の乾期を伴う湿潤地でのユーカリ(Eucalyptus saligna)林では、乾期
に若干成長を落とすが、年中細根生産がおこなわれていた(Jourdan et al. 2008)。本試験の対
象樹種に関する情報は得られなかったため地上部生産から細根生産を推定した。マメ科植物は
葉を短期間に展開し短期間に落とすことで、光合成能力を最大限に発揮する傾向がある
(McKey 1994)。マンギウムアカシアの葉と枝の寿命は130日前後で、同条件で測定されたボ
ルネオテツボクやフタバガキの一種(Shorea roxburghii)の寿命(最短230日)と比較しても際
だって短かかった(Tong and Ng 2008)。リターフォールは、季節による大小があるものの年間
を通じて生産があるため(図4.3)、細根に関しても十分な生産があったと考えられる。フープ
パインについてもリターフォール生産に季節変化が見られなかったこと、土壌中の有機物量に
対応した細根生産があったことから、測定期間中に細根生産が少なかったとは考えにくい。マ
ホガニーでは、測定の終了後に極端なリターフォールのピークがあった(図4.3)。デンドロ
メータによるマホガニーの形成層の成長を測定した結果、乾期のはじまりから雨期の終わりを
通じて成長が行われ、同時に測定されたセドロ(Cedrela odorata)のような成長の休止期は観
察されなかった(Dünisch et al. 2003)。したがって、地上部と地下部の成長が同期していない
可能性があるものの、いずれの樹種も測定期間中に成長を休止していた可能性は少ないと考え
られた。樹種間の結果の違いについては、それぞれの樹種の細根生産の季節性に関する理解を
より深めていく必要があろう。
5.5 まとめ 本試験によって、リンについては仮説の通りマンギウムアカシアの制限要因であることが明
らかになった。ところが、窒素については仮説と異なりリンと同様に制限要因であることがわ
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
82
かった。リンだけでなく、窒素施肥もマンギウムアカシア造林には有効である(Paudyal and
Majid 2000; CAB International 2005)。さらに、特定元素を欠乏させた培地でマンギウムアカシ
ア苗を育てた場合、窒素欠乏下では苗が育たないものの、リン欠乏下では生育したという結果
も報告されている(小島 2004; 村松・助野 2009)。本研究の結果、自然条件のマンギウム
アカシア林では、窒素とリン両方が制限条件であることが示唆され、土壌条件によっては窒素
がより制限要因になっている可能性が示された。この結果は、マンギウムアカシアをはじめと
するマメ科植物にとって、リンが制限要因である(Harwood 2011)という一般的な考え方に反
しないものの、より検討を促す知見であると考えられる。また、本試験の設定ではマホガニー
とフープパインの窒素利用の違いは検出されず、マホガニーがより窒素に反応するという仮説
は支持されなかった。
その上で、マンギウムアカシアの地上部バイオマスのリン利用効率が高いにも関わらず、リ
ン要求が大きい理由については疑問が残る。次章では、土壌中の窒素とリンについて同様の要
求を示したマンギウムアカシアが、樹体内で窒素とリンをどのように移動、転流させているの
か、その違いを明らかにする。
第5章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林の養分添加による細根成長
83
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
84
第6章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工
林のリターフォールの質と落葉前の再転流
6.1 はじめに
森林生態系のリターフォール量は、第4章で示したように森林の純一次生産の一部という点
と林床へ供給する可給態養分源という点で重要であるが、リターフォールの質も、再吸収過程
での樹木の養分利用効率(Vitousek 1982)を示す点と堆積有機物中の分解過程を規定する点で
重要である。窒素とリンは植物生産を規定する養分であり、植物体やリター中の窒素とリンの
バランスは、土壌の養分可給性(Richardson et al. 2008)、植物体内での養分の分配(Kerkhoff
et al. 2006)などによって決定され、堆積有機物の分解速度に大きな影響を及ぼす(Lisanework
and Michelsen 1994; Xuluc-Tolosa et al. 2003; Güsewell and Gessner 2009)。近年、広域データのメ
タ解析によって、植物体のN:P比は1)緯度が低くなるのに比例して大きくなる(McGroddy et
al. 2004; Reich and Oleksyn 2004; Kerkhoff et al. 2005)、2)成長に伴って大きくなる(Güsewell
2004)、3)窒素とリンの器官への分配割合の違いによって変化する(Kerkhoff et al. 2006)こ
となどが明らかになっている。熱帯に限定すれば、緯度よりも土壌のリン可給性、さらに種や
属の違いによって影響される(Townsend et al. 2007)ことや、窒素よりもリンの再吸収が大きい
ことによって、葉リターのN:P比が生葉のN:P比より大きくなること(McGroddy et al. 2004;
Hättenschwiler et al. 2008; Yuan and Chen 2009a)が明らかになっている。
窒素固定を行う早生樹は、混交林やアグロフォレストリーなど、隣接して植える種の成長を
促進するための肥料木の目的でも利用されている(Forrester et al. 2006によって要約)。第4章
で示したように、大きいところで年 200 kg ha-1以上の窒素を林床に供給していることが複数の
研究例から報告され(Binkley et al. 1992; Swamy and Proctor 1997; Jamaludheen and Kumar
1999)、本研究のマンギウムアカシア林においても窒素供給量が非常に大きいことが明らかと
なった。過去の研究例では、第1章で紹介したように、窒素固定を行う植物が特異的なリンの
利用をおこなう事例が報告されている。マンギウムアカシアは、水耕やポット試験でリン不足
の条件にさせると、リン利用効率を上昇させる結果が報告されている(Vadez et al. 1995; Ribet
and Drevon 1996; Nguyen et al. 2006)。また、熱帯の窒素固定植物は他の種よりも高いリン獲得
能力を持っていることを示す事例が報告され(Khanna 1997; Houlton et al. 2008)、マンギウムア
第6章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールの質と落葉前の再転流
85
カシアの苗木および実際の林地においても、他樹種より高いフォスファターゼ活性が確認され
ている(小島 2004; Lee et al. 2006)。
第4章では、マンギウムアカシアのリターフォールを介して多量の窒素が供給されるのと対
照的に、リンの供給量が極端に少ないことが明らかとなった。その理由として、窒素の再吸収
率が低く、リンの再吸収率が高い可能性が考えられた。しかし、富栄養な土壌条件を考慮する
と、窒素の再吸収率が低いことは妥当であるが、リンの再吸収率が高いのは妥当ではない。そ
のため、リターフォールのリン濃度が低かった要因としては、生葉のリン濃度自体が低かった
可能性も考えられる。過去の研究例では、マンギウムアカシアの若齢林分(4年以下)におい
て、リンの落葉前の再吸収が窒素よりも卓越していたことが報告されている(Kadir et al. 1998;
Björck 2002; Hardiyanto and Wicaksono 2008)。それらの研究事例では、主に貧栄養な土壌条件
を理由とされていた。本試験地のような富栄養な土壌条件下でリンの再吸収率が高かったとす
れば、マンギウムアカシア固有の性質であることが証明できる。本試験条件では、土壌条件が
比較的均質な人工林の比較対象林分があり、比較可能な一次林データも存在する(Dent et al.
2006)。そのため、マンギウムアカシアの窒素とリン循環に対するより詳細な情報が得られる
ことが期待できる。その際に、Townsend et al. (2007)が示したように、生葉や落葉のN:P比は
地域内での樹種特性を示すパラメータとして有用であると考えられる。
この章では、マンギウムアカシアのリターフォール中の窒素量が多い理由が窒素の再吸収率
が低いためであるのか、また、リン量が少ない理由が生葉中の濃度であるのか、再吸収による
ものであるのかを検証することを目的とした。さらに、それがマンギウムアカシア固有の性質
であるかどうかをメタデータから検証した。第4章で扱ったマンギウムアカシアを含む3樹種
のリターフォール5画分を生葉の窒素、リン濃度と比較して、それぞれの元素の各植物器官で
の分配と再転流の違いを比較した。手法としては、3年分のリターフォールデータから各年の
各画分毎の加重平均濃度を求め、生葉と落葉中の養分濃度の比較、及びリターフォールのそれ
ぞれの画分間のN:P比の比較を行った。N:P比については、過去の研究事例を集約してメタ解析
を行い、窒素固定をおこなう造林木と非窒素固定のもので系統的な違いが表れるかどうかを検
証した。
6.2 方法
6.2.1 試料のサンプリング
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
86
試験は、第4章と同じGum Gum試験地の3林分で行った。第4章で示したリターフォール
データを用い、濃度を算出した。各種成分の年平均濃度は、単純平均値ではリターフォール量
が少ない時期のサンプル中の濃度によってバイアスを受けるので、各種成分の年供給量を年リ
ターフォール量で除して求めた加重平均値を用いた。第4章と同じく、3月から翌年2月を1
年の区切りとした。
生葉サンプルは2008年7月に、各林分5個体から、スリングショットを用いて採取した。試料
の処理と分析は、第4章で示したリターフォールサンプルと同様に行った。
リターフォールデータを用いて、落葉の養分利用効率を求めた(Vitousek 1982)。これは、
落葉中の養分量に対する落葉乾重、すなわち濃度の逆数で表される。落葉の養分利用効率は、
第2章で示した地上部バイオマスの養分利用効率と併せ、純一次生産の一部としての養分利用
の指標であると同時に、葉の老化、脱落過程において、どの程度の養分が植物本体に保持され
るかを表す指標となる。
6.2.2 リターフォールの養分供給量に関するデータセット
インド国ケララ州森林研究所のK.V. Sankaran博士が集約した、世界の熱帯および亜熱帯の人
工林のリターフォールデータセット(Binkley et al. 1997)をもとに、新規にデータセットを作成
した。元のデータセットにはヒマラヤ付近の亜熱帯データが多く含まれていたため、フープパ
インの比較データ(Bubb et al. 1998)を加える目的で緯度26度以下のデータに限定し、1997年
以降に出版されたデータを追加した。選んだデータは1年以上リターフォールを回収し、窒素
とリンの分析値があるものに絞った。解析に当たって、人工林を窒素固定植物、非窒素固定広
葉樹、針葉樹の3つのグループに分けた。針葉樹の熱帯造林地のデータは27地点得られたが、
先行研究のメタ解析(McGroddy et al. 2004)では熱帯一次林にほとんど分布していないという
理由で熱帯域の針葉樹が含まれていなかった。温帯針葉樹の落葉は熱帯林の落葉よりN:P比が有
意に小さかった(McGroddy et al. 2004)。そこで、先行研究の値と比較するために針葉樹を独
立のグループとした。データは、画分がきちんと示されていない文献があったため、リター
フォール全量を用いた。複数年に測定が渡った場合は、リターフォールの質と量の変化や、N:P
比は成長に伴って変化する(Güsewell 2004)と考えられていることから、各年毎のデータを解
析に用いた。
6.2.3 統計解析
第6章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールの質と落葉前の再転流
87
リターフォールの窒素とリン供給量の解析は、両方の軸に誤差を伴っているため、通常のI型
回帰でなく、II型回帰(標準主軸法、SMA回帰)を用いた。正規性と残差の均一性を保証する
ため、窒素供給量とリン供給量ともに常用対数(log10)で変換した値を比較した。3つのグ
ループ間の傾きと切片を、再サンプリング法を用いて分散分析を行った(Warton et al. 2006)。
SMA回帰は、(S)MATR version 2.0を用いて解析した(Falster et al. 2012)。リターフォール中の
年平均元素濃度および、生葉の元素濃度の樹種間での違いは一元配置の分散分析と、それに伴
うTukey法による多重比較によって解析した。
6.3 結果
6.3.1 3林分のリターフォールの元素濃度
マンギウムアカシア林のリターフォールの窒素濃度は、他樹種落葉を含むすべての画分で他
の2樹種の1.4–3.3倍であった(表6.1)。マホガニーとフープパインのリターフォール中の窒素濃
度は、生殖器官を除いてほぼ同等であった。対照的に、マンギウムアカシアのリターフォール
中のリン濃度は、主要樹種落葉、細枝、その他の画分で低く、主要樹種落葉では0.16 mg g-1
と、他樹種の12–22%の濃度であった。さらに、マンギウムアカシア林の他樹種落葉中のリン濃
度(0.95 mg g-1)と比較しても低かった。一方、生殖器官中の濃度(1.61 mg g-1)は、マンギウ
ムアカシアの落葉よりも10倍リン濃度が高かった。マンギウムアカシアの落葉中の塩基類
(Ca、Mg、K)と鉄濃度は、マホガニーの落葉中の濃度と比べていずれもおよそ半分であっ
た。フープパインの針葉中の塩基と鉄濃度は、マホガニーと同等かやや低かった。細枝と生殖
器官中の塩基類および鉄濃度は林分間で明確な傾向が見られなかった。マンガン濃度は、マホ
ガニーの他樹種落葉以外の画分で他樹種と比較して極端に低かった。
マンギウムアカシアの落葉の窒素利用効率は他樹種の70%程度であったが、リン利用効率は
マホガニーの4.6倍、フープパインの8.2倍と圧倒的に高かった(表6.1)。マンギウムアカシアの
塩基類の利用効率は他樹種に比べて1.3倍から2.5倍の範囲にあった。フープパインの養分利用効
率は、リン、鉄、マンガンを除いてマホガニーの養分利用効率とほぼ等しかった。
N:P比は他樹種落葉と生殖器官を除いてマンギウムアカシア林で大きく、主要樹種落葉は特に
大きかった(N:P = 108)。マホガニーとフープパインのリターフォール中のN:P比は、マホガ
ニーの他樹種落葉(35)を除いて、対照的に小さい傾向(6–17)にあった。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
88
第6章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールの質と落葉前の再転流
89
Element Site
Speciesleaves
(mg g-1)
Otherleaves
(mg g-1)
Fine woods
(mg g-1)
Reproductive parts
(mg g-1)
Miscellane-ous
(mg g-1)Total
(mg g-1) NuUEN A. mangium 17.4a 23.4a 13.0a 33.8a 14.4a 16.6a 58
(0.24) (2.09) (0.36) (2.26) (0.40) (0.45)S. macrophylla 11.7b 17.3ab 7.1b 15.6b 6.2c 10.4c 86
(0.19) (2.77) (0.05) (1.08) (0.71) (0.23)Ar. cunninghamii 12.5b 14.9b 4.7c 10.0b 8.7b 12.3b 80
(0.43) (1.63) (0.56) (0.90) (0.53) (0.36)P A. mangium 0.16b 0.95a 0.22b 1.61b 0.24b 0.25b 6238
(0.020) (0.053) (0.030) (0.187) (0.010) (0.021)S. macrophylla 0.74ab 0.50a 0.85a 2.43a 0.50a 0.84a 1352
(0.305) (0.170) (0.058) (0.124) (0.033) (0.186)Ar. cunninghamii 1.32a 0.80a 0.27b 0.66c 0.55a 1.28a 758
(0.040) (0.096) (0.088) (0.070) (0.008) (0.032)Ca A. mangium 10.8b 15.8a 8.37a 6.2a 5.2a 8.9b 93
(1.57) (1.16) (0.43) (0.67) (0.90) (0.98)S. macrophylla 20.7a 14.4a 9.8a 5.7a 7.1a 15.7a 48
(0.96) (3.46) (1.03) (0.58) (2.06) (1.19)Ar. cunninghamii 14.3b 14.7a 4.8b 5.8a 9.3a 13.9a 70
(0.23) (1.40) (0.35) (0.70) (0.77) (0.17)Mg A. mangium 2.18b 4.47ab 1.29b 2.74a 1.44b 1.91c 459
(0.07) (0.26) (0.16) (0.12) (0.13) (0.09)S. macrophylla 4.39a 2.87b 3.18a 2.74a 1.35b 3.58b 228
(0.21) (0.50) (0.11) (0.19) (0.24) (0.21)Ar. cunninghamii 5.39a 5.21a 1.61b 2.21a 2.49a 5.24a 186
(0.36) (0.39) (0.16) (0.21) (0.11) (0.32)K A. mangium 3.14a 4.75a 1.46b 5.61a 3.67b 3.17b 318
(0.29) (0.05) (0.11) (0.31) (0.07) (0.18)S. macrophylla 6.01a 3.61a 4.94a 5.96a 9.30a 6.37a 167
(1.63) (0.60) (0.92) (0.12) (0.13) (0.93)Ar. cunninghamii 6.27a 3.96a 1.67b 3.84b 2.63c 6.09a 160
(0.42) (0.087) (0.65) (0.22) (0.13) (0.43)Fe A. mangium 0.10b 0.18a 0.06a 0.15a 0.08b 0.09b 9784
(0.007) (0.012) (0.005) (0.019) (0.008) (0.005)S. macrophylla 0.20a 0.16a 0.04b 0.05b 0.03c 0.14a 4993
(0.009) (0.043) (0.003) (0.004) (0.001) (0.002)Ar. cunninghamii 0.08b 0.14a 0.06a 0.07b 0.27a 0.08b 12430
(0.003) (0.052) (0.004) (0.018) (0.016) (0.003)Mn A. mangium 0.45a 0.27a 0.12a 0.19a 0.15b 0.31a 2221
(0.050) (0.029) (0.055) (0.014) (0.040) (0.046)S. macrophylla 0.01b 0.52a 0.02b 0.02c 0.02c 0.02b 73895
(0.001) (0.135) (0.013) (0.011) (0.012) (0.006)Ar. cunninghamii 0.40a 0.66a 0.14a 0.16c 0.31a 0.39a 2514
(0.016) (0.194) (0.009) (0.026) (0.027) (0.016)N:P ratio A. mangium 108 25 58 21 59 66
S. macrophylla 16 35 8 6 13 12
Ar. cunninghamii 9 9 17 15 16 10
Table 6.1 Volume-weighted mean concentration of major nutrients, the N:P ratio in each fraction of litterfall andthe nutrient-use efficiency (NuUE) in leaf litterfall at three sites. Numbers in parentheses indicate standard error ofthe mean (SEM). Different letters indicate significant inter-site differences according to one-way ANOVA andTukey’s HSD post hoc test (P < 0.05). NuUE indicates leaf litterfall mass per objective nutrient in leaf litterfall(Vitousek 1982)
表6.1 3樹種のリターフォール各画分中の主要成分の加重平均濃度、N:P比および落葉の養分利用効率(Vitousek 1982)
マンギウムアカシアの落葉中の窒
素濃度は、計測期間中ほぼすべての
月でフープパインの針葉リターより
も濃度が高かった(図6.1a)。マホ
ガニーは、他の2樹種と異なり、
2002年と2004年の5月に窒素とリン
濃度の際だったピークが見られた。
マホガニーは、常緑広葉樹であり、
雨季と乾季の差が明瞭でない湿潤熱
帯条件下にありながら90%のリター
フォールを雨期の終わりに落とし
(図4.3 ; Lugo 1992; Cuevas and Lugo
1998)、5月はリターフォールの
ピークの終わりであった。マンギウ
ムアカシアは7月、フープパインは
8月に不明瞭なリターフォールの
ピークがあったが、窒素濃度は特に
その前に温帯林でみられるような極
端な低下を示さなかった。窒素とは
対照的に、リン濃度はほぼすべての月で、フープパイン>マホガニー>マンギウムアカシアの
順に低かった(図6.1b)。マホガニーの葉のリン濃度も窒素濃度と同様に2002年と2004年の5月
に際だったピークが見られた。同様に、マンギウムアカシアとフープパインではリターフォー
ルのピーク前後でリン濃度の極端な濃度の変化は見られなかった。落葉のN:P比はすべての計測
回で、マンギウムアカシアの葉で最も大きく、最大値は2004年9月の323であった(図6.1c)。
N:P比の季節的なパターンはいずれの樹種でも明瞭ではなかった。落葉のN:P比は、フープパイ
ンでは6-20の範囲にあり、マホガニーでは15–58の範囲にあった。
6.3.2 生葉と落葉の比較
7月に採取した生葉の元素濃度と、7月の落葉の元素濃度の3年分の平均値を比較した(表
6.2)。生葉の窒素濃度、リン濃度とも、マンギウムアカシアが最も高く、フープパインが最も
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
90
M A M J J A S O N D J F M A M J J A S O N D J F M A M J J A S O N D J F0
100200300400500600700
Rai
nfal
l (m
m)
BBBBBBBB
BBBB
BB
BB
BBBB
BBBBBBBB
BB
BBBB
BBB
BB
BBBB
BB
BBBBBBBB
BBBBBBBBBBBB
BBBB
BBBBBBBBBBBBBB
BB
BB BBBBB BBBB
BB BB BB BBB B BBBB BBBB B BBBBBBBB
J JJ J
JJ
JJJ
JJ
JJJJJBJBBJBJJBJBBJB
JJBJBBJBJJJJJBJBBJBBJBBJB
JJJJJJJJ JJ J
BJBBJBBJBBJBBJBJJJ JJ
JBJBBJBJBJB
JBJBJBJB
JBBJBBBBJBBBBJBBBBJBBJJBBJBBBBJBBJJBBJBBJJJ JJJ
JJ
JJJJ
JJ
BBJBBBBJBBBBJBBBBJBBJ J JJ J JBJ J JBBJ J JBJ J JBJ J JBJ J JJ J JBJ J JBBJ J JBJ J J BJBBJBBJBBJBBJB
JJJ
JJ
J JJ JBBBBBB
BB BBBBB
J JJJJJ J
J BBBBJ
H HH HJ JH HJ JJ JH HJ JH HJ JH HJ J
HH
H HH HH HH HH HH HH HJH HJJH HJJH HJJH HJH HH H
HHHH HH
HH
HH
HJHJJHJJHJHJHJJHJHJHJJHJJHJJHJJHJJHJ
HH
HHHJ JHJ JJ JHJ JJ JHJ JJ JHJ JHJ JHJ J HHHH HH
HH
HH
HH HHHHHHBBHBBBBHBBBBHBBBBHBBBBHBBBBHBBHBBHBBBBHBB
HH
H HH HH HH H
HHHH
HH
HH
HH
HH
HHHH
HJHJJHJJHJJHJHHBBHBBBBHBBBBHBBBBHBBBBHBBBBHBBHH
HH
000
555
101010
151515
20202020
252525
303030
N c
once
ntra
tion
in s
peci
esle
af lit
terfa
ll (m
g g-1
)BB A. mangium JJ S. macrophylla HH Ar. cunninghamii
BBBBBB BB
BBBB
BB
BB BB
BB BBBBBBBB
BB
BBBB BBBBB BBB
JJ
JJ
JJ
JJJBJBBJBJBJB J
BJBJ
JJ JJ
JJ
JJ JJ
JJ
J
JJJJ
JJJJ
JJ
JHH
HHHH
HH
HH HHH HH H
HH
HH
HH HH
HH HHJHJJHJJHJJHJJHJJHJ
HH
HH
HH
HHHH
BB BB BB BB BBBB000
0.50.50.5
111
1.51.51.5
222
2.52.52.5
P co
ncen
tratio
n in
spe
cies
leaf
litte
rfall
(mg
g-1)
BB
BB
BB
BB
BBBB
BB
BB BB
BBBB
BB
BB
BB
BB
BBBB
BB
JJJJJ JJ JJ JJ JJ JJ JJ JJ JJ JJ
JJJ JJ JJ JJ
J
JJ
J J JHJHJHJHJHHJHJH
HJHJHH HH HH H
JHJH H
JHJH HH H
JHJH HH HJHJH HH HJHJJHJJHJJHJJHJ H
JHJH H
JHJH HHH HJHJJHJJHJJHJJHJJHJ HHHH HH H H H HH H000
505050100100100150150150200200200250250250300300300350350350
N:P
ratio
in s
peci
esle
af li
tterfa
ll (m
ass
basi
s)
2002 2003 2004 2005
a
b
d
c
Fig. 6.1 Monthly changes in N (a) and P (b) concentrations in species leaf litterfall, N:P ratio (c) and rainfall (d). With permission from Springer Science+Business Media.
図6.1 主要樹種落葉中の窒素、リン濃度およびN:Pの月変化と測定期間中の月降水量
低かった。特に窒素濃度は、他2樹種の1.5−2.4
倍であった。窒素の落葉中濃度と生葉中濃度の
比(L/F比)は、マンギウムアカシア(0.74)が
他の二樹種(0.84と1.15)に比べて小さかった。
リン濃度のL/F比はより顕著であり、マンギウム
アカシア(0.27)は他の2樹種(0.83と1.69)と
比べてかなり小さかった。CaとMgのL/F比はすべ
ての樹種で1を超え、マンギウムアカシアとマホ
ガニーのCaのL/F比は、それぞれ2.7と1.87であっ
た。フープパインの生葉では鉄濃度が高くL/F比
が0.03という結果となったが、他樹種の生葉の鉄
濃度より有意に高くはなかった。マホガニーの
生葉のマンガン濃度は他樹種と有意な違いはな
く、落葉のマンガン濃度が低いことによってL/F
比を小さくしていた。
マンギウムアカシアでは、落葉のN:P比(81)
が生葉(29)に比べて極端に大きかったが、他
の2樹種では落葉のN:P比はマホガニーで24、
フープパインでは12であり、生葉値(マホガニー
で23、フープパインでは17)と比べると同等か落葉の方が小さかった。
6.3.3 熱帯造林木の窒素とリンのバランス
熱帯造林木のリターフォール中のN量とP量を、広域で比較した(図6.2)。熱帯造林木のリ
ター(n = 101)の平均N:P比は25.1(S.E. = 1.7, 最小= 4.1, 最大 = 91)であった。平均N:P比は各
グループ間で有意に異なっており、窒素固定植物が最も大きく(平均 = 43.4, S.E. = 3.8, n =
24)、非窒素固定植物が中庸であり(平均 = 1.1, S.E. = 1.5, n = 50)、針葉樹で最も小さかった
(平均 = 16.4, S.E. = 2.1, n = 27)。リターフォール中のリン量と窒素量の関係を、グループ毎に
SMA回帰にあてはめた(図6.2)。いずれのグループも、回帰は有意であった(すべて、R2 =
第6章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールの質と落葉前の再転流
91
表 6.2 生葉と落葉の主要成分濃度と落葉/生葉比 生葉は 2008 年 7 月の採取、落葉は 2002-4 年の 7 月の平均値。 Table 6.2 Element concentrations in fresh leaves and leaf litterfall and the ratio of leaf litterfall concentration to that in fresh leaves Fresh leaves were collected in July 2008. Leaf litterfall was the average of samples in July 2002–2004. Numbers in parentheses indicate standard error of the mean (SEM). Different letters indicate significant inter-site differences according to one-way ANOVA and Tukey’s HSD post hoc test (P < 0.05). The L/F ratio was calculated as the concentration in leaf litterfall divided by that in fresh leaves
Element Site Fresh leaves
(mg g-1)
Leaf
litterfall
(mg g-1)
L/F ratio
N A. mangium 29.4 a (0.95) 21.8 0.74
S. macrophylla 19.2 b (0.51) 16.1 0.84
Ar. cunninghamii 12.3 c (0.36) 14.2 1.15
P A. mangium 1.01 a (0.066) 0.27 0.27
S. macrophylla 0.82 ab (0.049) 0.68 0.83
Ar. cunninghamii 0.71 b (0.097) 1.20 1.69
Ca A. mangium 3.37 b (0.50) 9.10 2.70
S. macrophylla 10.8 a (1.26) 20.3 1.87
Ar. cunninghamii 11.2 a (1.66) 12.4 1.10
Mg A. mangium 1.92 b (0.23) 2.18 1.14
S. macrophylla 3.24 a (0.28) 4.24 1.31
Ar. cunninghamii 3.84 a (0.42) 4.45 1.16
K A. mangium 9.63 b (0.81) 4.34 0.45
S. macrophylla 16.21 a (0.83) 6.99 0.43
Ar. cunninghamii 7.61 b (0.94) 6.13 0.81
Fe A. mangium 0.16 a (0.015) 0.089 0.56
S. macrophylla 0.19 a (0.069) 0.16 0.84
Ar. cunninghamii 2.28 a (2.09) 0.065 0.03
Mn A. mangium 0.10 a (0.011) 0.39 3.90
S. macrophylla 0.11 a (0.006) 0.011 0.10
Ar. cunninghamii 0.15 a (0.033) 0.19 1.27
0.61–0.69、P < 0.001)。回
帰の傾きの違いはグループ
間で有意でなかったため
(P > 0.05)、共通の傾き
(0.731)を仮定して切片を
比較したところ、切片はグ
ループ間で有意に異なった
(P < 0.001)。切片の多重
比較の結果、N:P比は対数
を取ったすべての範囲で、
窒素固定植物>非窒素固定
植物>針葉樹という順番
で、有意に異なっていた
(P < 0.01)。
6.4 考察
6.4.1 マンギウムア
カシアの窒素、リン動態と養分要求 リターフォール中の濃度と再吸収の結果から、マンギウムアカシアの養分利用は窒素とリン
で根本的に異なっていた。マンギウムアカシアのリターフォール中の窒素濃度は、他樹種に比
べてすべての画分で高かったにもかかわらず、落葉のリン濃度はフープパインの12%、マホガ
ニーの22%でしかなかった(表6.1)。マンギウムアカシアの落葉のリン濃度は同一林分内の他
樹種落葉に比べてかなり低かった。他樹種落葉は林分内の下層植生由来と考えられる。土壌中
の可給態リン濃度は、マンギウムアカシア林で表層では他の2林分より高く(図3.3)、熱帯人
工林の中でも濃度が高かった(図2.3)。そのため、マンギウムアカシアの落葉のリン濃度が低
いのは、土壌条件によるものではなく、樹種固有の性質によるものと考えられた。マンギウム
アカシアの生殖器官中のリン濃度は落葉中の濃度の10倍であり、マンギウムアカシアはリンを
葉から生殖器官へ、他樹種よりも積極的に再転流しているものと考えられた。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
92
Fig. 6.2 Relationship between P and N flux in litterfall of tropical plantation forests.P and N fluxes were base-10 log-transformed. Circles and solid line (log N = 1.402 + 0.731 log P) indicate non-N2-fixers, squares and dotted dashed line (log N = 1.723 + 0.731 log P) represent N2-fixers and triangles and dashed line (log N = 1.255 + 0.731 log P) denote conifers. The lines are the results of SMA regressions assuming a common slope. The intercepts were significantly different (P < 0.001). Dotted circles indicate results of the present study. The remainder of the data originated from the data set of K.V. Sankaran (published in Binkley et al. 1997)
図6.2 熱帯造林木のリターフォール中のリンと窒素量との関係
1 10
10
100
N in
litte
rfall
(kg
N h
a-1 y
-1)
P flux in litterfall (kg P ha-1 y-1)
A.mangium
S. macrophylla
Ar.cunninghamii
落葉前の窒素とリンの再転流を推定する手法として、これまで提案された他の手法と比べ、
N:P比を比較することがよりよい指標となりうると考えた。指標の例として、先行研究では葉の
乾重ではなく、カルシウムをベースにした計算方法が提案されている。というのも、落葉の過
程で葉の乾重自体が減少する可能性があり、カルシウムは比較的葉内に留まっているため、対
象元素の濃度(乾重当たり)より対象元素をカルシウム濃度で割った値のほうが、落葉前後の
再吸収率をより正確に見積もることが出来ると考えられたからである(Vitousek and Sanford
1986; Cuevas and Lugo 1998)。しかし、カルシウムのL/F比はマンギウムアカシアとマホガニー
で1から大きく離れており、乾重の減少を考慮しても、落葉時にカルシウムがそのまま留まって
いると考えるには大きすぎる値であった。実際には、カルシウムは葉内で濃縮していた可能性
がある。Fife et al. (2008)によれば、オーストラリアの地中海性気候下で5種の樹木の葉中カ
ルシウム濃度を測定したところ、成長するに伴って窒素、リン、カリウム濃度が減少したにも
かかわらず、カルシウム濃度は増加し続け、落葉中で最大値となった。カルシウムは第4章で
示したようにアポプラスト輸送されるため、師管への移動が起こりにくいことが寄与している
可能性がある。一般的に用いられる再吸収率計算のための分母(カルシウム濃度、リター重
量、葉面積)は、いずれも葉が老化する過程で値が変化しうることが示されている(van
Heerwaarden et al. 2003)。そのため、窒素とリンの落葉過程での再転流の指標として直接の値
であるN:P比を用いる方が、より誤差要因が少ない解析が出来ると考えた。本研究では7月に
採取した生葉と、同じ月の落葉の平均値を比較することで窒素とリンの再転流の違いを比較し
た。これは、マホガニーを除いてはリターフォールのピークが明瞭でなく(図4.3)、温帯落葉
樹で見られるような落葉前の濃度低下のピークはいずれの樹種も明瞭でなかったからである
(図6.1)。月2回のリターフォールのデータと異なり、1回限りの生葉データは、季節変化に
よって標準的な値が得られていない可能性が残されている。しかしながら、マンギウムアカシ
アの生葉を5年にわたって毎月サンプリングした半島マレーシアでの試験例をみると、最も林
齢が高い7年生の林分で、窒素とリンの変動幅はそれぞれ、1.14–1.19%、0.15–0.19%と小さ
く、N:P比は年間にわたって6–8と安定した値であったことが報告されている(Majid et al.
1998)。さらに他の2樹種、特にフープパインは最終分岐枝を用いたが、スリングショットに
よる樹高の高い木からのサンプルであったため葉齢等不明である。しかし窒素、リン、カリウ
ム濃度は葉分析を目的とした文献値の範囲内にあり(N: 6.5-13.9 mg g-1, P: 0.67-5.13 mg g-1, K:
6.41-10.5 mg g-1; Bubb et al. 1998; Specht and Turner 2006)、マンギウムアカシアについてもメタ
解析データ(表2.2)の平均値と比較して窒素において若干高い程度であり、マホガニーの生葉
第6章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールの質と落葉前の再転流
93
についても文献値と比較して妥当な値であった。以上の理由から、本研究では再吸収率の代わ
りに生葉と落葉のN:P比を比較することによって、窒素とリンの再転流の違いの検出を試みた。
マンギウムアカシアの葉のN:P比は生葉の29から落葉の81と大きく増加した。他の2樹種で
は、そのような上昇は見られなかった。マホガニーの結果は、7月の落葉のN:P比が24で、年加
重平均が16であることを考えると、リターフォールのピークが起こる時期(3–5月)のN:P比
はより小さい可能性がある。しかし、樹種間の値の違いは、季節変動と比べても明確に異なっ
ていた。これまでに、落葉時のN:P比の上昇は、リンの可給性が低い天然生の森林で報告されて
いる(McGroddy et al. 2004; Hättenschwiler et al. 2008; Richardson et al. 2008)。本研究で得られた
マンギウムアカシア落葉の年平均N:P比(108)は、McGroddy et al.(2004)がメタ解析で収集
したリターフォールデータや、貧栄養なフランス領ギアナの天然生一次林(Hättenschwiler et al.
2008)の最高値よりも高く、N:P比の最大値(323; 図6.1)はそれらの報告値から3倍大きかっ
た。葉の老化過程において、大半のリンが選択的に再転流されたのであろうと考えられた。一
方、湿潤熱帯林であっても肥沃な場所では、再吸収率はかなり低いことが報告されている
(Martínez-Sánchez 2005)。
3林分の次表層の土壌条件は比較的均一であった(表3.3)。表層の窒素可給性は、第4章で
示したリターフォールの窒素供給量の違いからマンギウムアカシア林でかなり高いと推察され
た。Arai et al. (2008)はマンギウムアカシアの表層から、二次林と比べてN2O放出量が雨期に
8倍大きいことを示し、無機態窒素の可給性が極めて高いことを示唆している。本試験地から
約5km離れたKabili-Sepilok保護林内で測定されたリターフォールの分析値(Dent et al. 2006)か
ら、N:P比を試算した。Dent et al. (2006)の4つの試験地のうちで本試験地と土壌条件(付表
4.1)が似通っていた沖積地の一次林の落葉N:P比は19であり、ほかの3試験地の落葉N:Pが約40
であったのと対照的に、かなり小さかった。そのため、本試験地では多くの植物種にとってリ
ンの制限が小さかったと考えられた。マンギウムアカシアで確認されたような落葉時のN:P比の
上昇は、貧栄養な湿潤熱帯一次林でしか報告されておらず、貧栄養な場所に適合した種が引き
起こしたものである(Kitayama and Aiba 2002; Hättenschwiler et al. 2008)。このような極端なリ
ンの再転流は、これまでにもマンギウムアカシアの4年生以下の若年生林分で報告されており
(Kadir et al. 1998; Björck 2002; Hardiyanto and Wicaksono 2008)、いずれもリン欠乏と判断され
る土壌条件下での結果であった。本研究を行ったマンギウムアカシア林は熱帯造林地のなかで
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
94
リンが豊富である立地条件(図2.3、表3.3)にもかかわらず、リンの選択的な再吸収を行ってい
た。
マンギウムアカシアの生葉、リターフォールともに窒素濃度が高いのは、これまで示したよ
うに土壌中の窒素条件が良く窒素要求が高いからであろう。マンギウムアカシアは、多量の窒
素を吸収するか固定するかして、それを林床にリターフォールで大量に戻す一方で、リンのみ
を選択的に再吸収していた。このような2つの養分利用の違いが、生葉から落葉への際だった
N:P比の上昇を引き起こした。マンギウムアカシアの窒素とリン利用は、他の二樹種と明確に異
なっており、落葉のリン濃度が低い理由は、生葉のリン濃度が特に低いわけではなくリンの選
択的な再吸収によるものであることが示された。
6.4.2 マンギウムアカシアリター中の窒素とリンのバランスおよびその
利用
解析に用いたデータセット(付表6.1)の中で同じ樹種を扱った過去の研究例を選び、窒素と
リンの年間供給量のデータからリターフォールのN:P比を検討した(表6.3)。年間の養分供給
量をリターフォール量で割ると1年間の加重平均濃度となり、季節的な量と質の変化を考慮し
た比較が可能となる。本研究では3樹種とも林齢が異なっていたが、リターフォールのN:P比は
同じ樹種を扱った過去の研究例の範囲内にあった。既存のデータを含めて検討すると、マンギ
ウムアカシアのリターフォールのN:P比は広い範囲の値(25–91)をとり、対して、マホガニー
(16–30)とフープパイン(8–11)のN:P比の範囲は狭かった。本研究においても、マンギウム
アカシアの落葉のN:P比は広い範囲を示した(図6.1)。その理由として、マンギウムアカシア
のリターフォールに含まれる窒素の範囲(年83–224 kg ha-1; 表4.3の間伐林以外の値)が、リン
の範囲(年1.6–3.7 kg ha-1)およびリターフォール量の範囲と比べて広いことが挙げられる。
第6章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールの質と落葉前の再転流
95
表6.3 本研究と文献値から得られた3樹種のリターフォール中のN:P比Table 6.3 N:P ratios in litterfall for the three study species based on the literature and from the present studySpecies Study site Stand age Soil type N:P ratio in N:P ratio in Reference
total litterfall leaf litterfallA. mangium Sabah, Malaysia 7–10 Alisols 50 56 Majalap 1999
Sumatra, Indonesia 2–4 Acrisols 49–91 Hardiyanto & Wicaksono 2008Kerala, India 9 Acrisols 25 Kunhamu et al. 2009Sabah, Malaysia 20–22 Alisols 59–77 87–128 This study
S. macrophylla Laquillo, Puerto Rico 17, 49 Acrisols /Ferralsols 29–30 30–33 Lugo 1992
Laquillo, Puerto Rico 26 Acrisols 28 Cuevas & Lugo 1998Kerala, India not available not available 16 Isaac & Nair 2006Sabah, Malaysia 34–36 Alisols 8–17 8–32 This study
Ar. cunninghamii Queensland, Australia 42–44 Krasnozems 11 6–10 Brasell et al. 1980
Queensland, Australia 10–62 Krasnozems /Podzolic soil 8–10 Bubb et al. 1998
Sabah, Malaysia 27–29 Alisols 9–10 9–10 This study
熱帯人工林のリターフォールの平均N:P比(25.1)は、熱帯一次林のリターフォールの値
(28.3; McGroddy et al. 2004)や人為の影響を受けた森林も含んだ熱帯林のリターフォールの平
均値(27.3; Yuan and Chen 2009b)と比べ、若干小さかった。しかしながら、McGroddy et al.
(2004)の値は熱帯の針葉樹を含んでいなかったため、本データセットから針葉樹を除いて集
計した場合、平均N:P比は28.0(S.E. = 2.1, n = 74)となり McGroddy et al. (2004)の値と近い結
果となった。従って、リターフォールのN:P比の解析に用いたデータセットは、一次林の結果と
大きく異なるものでないと考えた。McGroddy et al. (2004)は温帯の針葉樹の平均リターN:P比
を11.7と報告しており、温帯の広葉樹と変わらないという結果を示した。本データセットでの
熱帯針葉樹の平均リターN:P比は16.4であり、熱帯での全体平均からすると小さい値であった。
それゆえに、熱帯の針葉樹は、温帯の針葉樹と同様に広葉樹に比べて落葉の窒素利用効率が高
い(Inagaki et al. 2004)可能性が考えられる。実際に、Pinus elliottiiとPinus taedaの養分要求は
低いことが報告されており(Reissmann and Wisnewski 2004)、第5章の結果の通り、養分添加
試験ではフープパインは養分添加による細根成長の促進を示さなかった。
窒素固定樹種は非窒素固定樹種と比べてN:P比が系統的に大きかった。生葉のN:P比は、施肥
(Tobita et al. 2010; Ostertag 2010)や、水分条件、高CO2条件下(Tobita et al. 2010)で、最小値
から最大値を比べると約2倍の範囲内で変動することが報告されている。一方、落葉のN:P比に
ついては、環境操作による影響は報告例がない。施業の際の影響は、実験系と比べ造林後の期
間に応じて緩和されるものと予想される。さらに、熱帯林落葉の平均N:P比は今回集めた様々
な条件下での人工林のデータセットと天然林の結果(McGroddy et al. 2004; Yuan and Chen
2009b)とを比べても、大きな違いは確認されなかった。従って、窒素固定樹種と非窒素固定樹
種との平均落葉N:P比の有意な違い(図6.2)は、グループ間の違いが主たる要因であり、熱帯
一次林の生葉のN:P比が分類上の科間で異なっていたこと(Townsend et al. 2007)をリターでも
裏付ける結果であったと考えられた。これらのグループ間での違いは、窒素固定樹種の生葉と
リター双方で窒素濃度が高いことが影響していたことによると考えられた。
メタデータ中の窒素固定樹種の中でリターフォールのN:P比を比較した場合に置いても、本研
究のマンギウムアカシアのN:P比は大きい方に分布していた(図6.3)。マンギウムアカシア
は、窒素固定能に加えて、効率的なリン再吸収を行っていることが、N:P比が大きい原因となっ
ているのであろうと考えられた。さらに、リンを効率的に再転流させることが可能なことか
ら、第2章で示したような高い養分利用効率を維持させることが可能であると推察される。小
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
96
島(2004)は3種の熱帯人工林
樹種を比較し、ギンネム
(Leucaena leucocephala)と比
べてマンギウムアカシアとファ
ルカタがリン欠乏の状態での砂
耕栽培で生育可能であり、後者
の2樹種がリン欠乏耐性を持っ
ていることを示した。同じ土壌
条件下で同年齢で比較した研究
例(Jamaludheen and Kumar
1999)では、マンギウムアカシ
アの近縁種であるアウリカリ
フォルミスアカシアとファルカ
タのリターフォール中のN:P比(それぞれ53と48)が、ギンネムのリターフォール中のN:P比
(20)より大きいことが示されている。今後、他樹種においてもリターフォールのデータが整
備されることによって、種としてのリン効率に対する理解が深まることが期待できる。
6.5 まとめ
比較的均質な土壌条件下で3樹種のリターフォール中の養分濃度および生葉と落葉中のN:P比
を比較することによって、マンギウムアカシアがリンを選択的に再吸収し、生殖器官などに再
転流していることがわかった。それと対照的に窒素はあまり回収を行なわず、濃度の高いリ
ターを落としていることが明らかになった。本試験地のマンギウムアカシアの落葉の平均N:P比
は過去の報告例と比較しても、上限に近い値であった。マンギウムアカシアのリターフォール
中のN:P比は他の窒素固定樹種と比較しても大きい傾向にあった。これらの結果から示されるマ
ンギウムアカシアの養分再吸収の特徴は、高いリン利用効率やリン制限下でのリン欠乏耐性と
関わっている可能性が示唆された。第1章で提示した貧栄養、特にリン不足の土壌条件下での
成長を促す養分利用特性を有しているという仮説が支持された。
第6章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールの質と落葉前の再転流
97
102030405060708090
100
N:P
ratio
in li
tterfa
ll
2 4 6 8Frequency
Fig. 6.3 Histogram of N:P ratios in total litterfall of N2-fixers (n = 24).
Closed bars indicate the N:P ratios in A. mangium litterfall from this study. With permission from Springer Science+Business Media.
図6.3 窒素固定木(n = 24)のリターフォールのN:P比の頻度分布
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
98
付表6.1 熱帯造林地のリターフォールからの養分供給量
App
endi
x 6.
1 Li
st o
f nut
rient
flux
thro
ugh
litte
rfal
l by
tropi
cal p
lant
atio
ns
Site
Latit
ude
Alti
tude
Mea
nan
nual
rain
fall
Fore
st ty
pe /
Spec
ies
Age
Litte
rfal
l mas
sN
flux
P flu
xN
:Pra
tioC
itatio
n (m
)(m
m)
(Mg
ha-1
yr-1
)(k
g ha
-1 y
r-1)
(kg
ha-1
yr-1
)A
fric
aTa
nzan
ia
5º S
1480
1060
Cup
ress
us s
p.18
5.2
372.
019
Lund
gren
197
8*Ta
nzan
ia
5º S
1480
1060
Pinu
s pa
tula
16–2
06.
233
1.3
25Lu
ndgr
en 1
978*
Ivor
y co
ast
5º N
50
2095
Term
inal
ia>2
58.
315
68.
518
Ber
nhar
d-R
ever
sat 1
975*
Ivor
y co
ast
5º N
70
1735
Term
inal
ia>2
58.
610
84.
027
Ber
nhar
d-R
ever
sat 1
975*
Nig
eria
7º
N
low
1330
Pinu
s ca
riba
ea4
1.9
70.
418
Egun
jobi
& F
aseh
un 1
972*
Nig
eria
7º
N
low
1330
Pinu
s ca
riba
ea7–
96.
027
0.6
45Eg
unjo
bi &
Onw
eluz
o 19
79*
Nig
eria
7º
N
low
1140
Tect
ona
gran
dis
5–7
8.4–
10.0
9110
.09
Egun
jobi
197
4Et
hiop
ia8º
N
2360
1019
Cup
ress
us lu
sita
nica
285.
023
1.5
15Li
sane
wor
k &
Mic
hels
en 1
994
Ethi
opia
8º N
24
2010
19Eu
caly
ptus
glo
bulu
s40
5.8
211.
218
Lisa
new
ork
& M
iche
lsen
199
4Et
hiop
ia8º
N
2450
1019
Juni
peri
us p
roce
ra40
6.5
614.
214
Lisa
new
ork
& M
iche
lsen
199
4N
iger
ia
10º N
61
012
50Pi
nus
cari
baea
7–8
3.1
130.
622
Kad
eba
& A
duay
i 198
5N
iger
ia
10º N
61
012
50Pi
nus
cari
baea
9–10
3.7
170.
724
Kad
eba
& A
duay
i 198
5Se
nega
l 13
º N
low
1590
Tect
ona
gran
dis
45.
838
6.0
6M
ahei
t & D
omm
ergu
es 1
960*
Sene
gal
13º N
lo
w15
90Te
cton
a gr
andi
s8
4.7
443.
015
Mah
eit &
Dom
mer
gues
196
0*Se
nega
l 14
º N
low
300
Euca
lypt
us s
pp.
52.
418
0.9
20B
ernh
ard-
Rev
ersa
t 198
2*Se
nega
l 14
º N
low
460
Euca
lypt
us sp
p.8
3.1
190.
727
Ber
nhar
d-R
ever
sat 1
982*
Sene
gal
14º N
-
-Eu
caly
ptus
cam
aldu
lens
is-
2.9
200.
922
Ber
nhar
d-R
ever
sat 1
987
Oce
ania
and
Haw
aii
Que
ensl
and,
Aus
tralia
26º S
816
09Pi
nus
ellio
ttii
146.
523
1.5
16M
aggs
198
5Q
ueen
slan
d, A
ustra
lia26
º S10
0-30
011
88Ar
auca
ria
cunn
ingh
amii
106.
037
5.3
7B
ubb
et a
l. 19
98Q
ueen
slan
d, A
ustra
lia26
º S10
0-30
011
88Ar
auca
ria
cunn
ingh
amii
146.
128
4.4
6B
ubb
et a
l. 19
98Q
ueen
slan
d, A
ustra
lia26
º S10
0-30
011
88Ar
auca
ria
cunn
ingh
amii
6211
.861
6.2
10B
ubb
et a
l. 19
98Q
ueen
slan
d, A
ustra
lia17
º S76
015
60Ar
auca
ria
cunn
ingh
amii
40–4
28.
279
9.4
8B
rase
ll et
al.
1980
Que
ensl
and,
Aus
tralia
17º S
700
2100
Arau
cari
a cu
nnin
gham
ii40
–42
11.9
109
10.4
10B
rase
ll et
al.
1980
Que
ensl
and,
Aus
tralia
17º S
700
2100
Flin
ders
ia b
rayl
eyan
a44
6.4
709.
18
Bra
sell
et a
l. 19
80H
awai
i 19
º N
480
4600
Euca
lypt
us s
alig
na6
7.9
30–4
0>3
.311
Bin
kley
et a
l. 19
92H
awai
i 19
º N
480
4600
Falc
atar
ia m
oluc
cana
618
.024
0>9
.525
Bin
kley
et a
l. 19
92H
awai
i 19
º N
480
4600
Euca
lypt
us s
alig
na14
–16
10.3
105
4.8
22B
inkl
ey &
Rya
n 19
98H
awai
i 19
º N
480
4600
Falc
atar
ia m
oluc
cana
14–1
69.
514
16.
223
Bin
kley
& R
yan
1998
Sout
h an
d So
uthe
ast A
sia
Java
, Ind
ones
ia7º
S
435-
580
4770
Agat
his
dam
mar
a35
5.8
381.
821
Bru
ijnze
el 1
985
Java
, Ind
ones
ia7º
S
435-
580
4770
Pinu
s m
erku
sii
1210
.055
3.7
15B
ruijn
zeel
198
5Su
mat
ra, I
ndon
esia
4º S
60
-200
1890
-333
0Ac
acia
man
gium
210
.014
51.
691
Har
diya
nto
& W
icak
sono
200
8Su
mat
ra, I
ndon
esia
4º S
60
-200
1890
-333
0Ac
acia
man
gium
39.
413
72.
360
Har
diya
nto
& W
icak
sono
200
8Su
mat
ra, I
ndon
esia
4º S
60
-200
1890
-333
0Ac
acia
man
gium
412
.514
73.
049
Har
diya
nto
& W
icak
sono
200
8
第6章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールの質と落葉前の再転流
99
Sab
ah,
Mal
aysi
a5
º N
lo
w2
97
5A
caci
a m
an
giu
m7
–1
011
.91
55
3.1
50
Maj
alap
19
99
Sab
ah,
Mal
aysi
a5
º N
<
40
25
72
Aca
cia
ma
ng
ium
20
12
.82
23
3.4
66
Th
is s
tud
y
Sab
ah,
Mal
aysi
a5
º N
<
40
25
72
Aca
cia
ma
ng
ium
21
13
.52
20
3.7
59
Th
is s
tud
y
Sab
ah,
Mal
aysi
a5
º N
<
40
25
72
Aca
cia
ma
ng
ium
22
13
.02
07
2.7
77
Th
is s
tud
y
Sab
ah,
Mal
aysi
a5
º N
<
40
25
72
Sw
eite
nia
ma
cro
ph
ylla
34
12
.91
32
15
.68
Th
is s
tud
y
Sab
ah,
Mal
aysi
a5
º N
<
40
25
72
Sw
eite
nia
ma
cro
ph
ylla
35
14
.11
53
10
.01
5T
his
stu
dy
Sab
ah,
Mal
aysi
a5
º N
<
40
25
72
Sw
eite
nia
ma
cro
ph
ylla
36
12
.51
26
7.5
17
Th
is s
tud
y
Sab
ah,
Mal
aysi
a5
º N
<
40
25
72
Ara
uca
ria
cu
nn
ing
ha
mii
27
7.4
94
9.2
10
Th
is s
tud
y
Sab
ah,
Mal
aysi
a5
º N
<
40
25
72
Ara
uca
ria
cu
nn
ing
ha
mii
28
6.2
72
7.8
9T
his
stu
dy
Sab
ah,
Mal
aysi
a5
º N
<
40
25
72
Ara
uca
ria
cu
nn
ing
ha
mii
29
6.4
80
8.6
9T
his
stu
dy
Ker
ala,
In
dia
8º
N
40
16
19
Ma
ng
ifer
a i
nd
ica
-8
.78
84
.22
1Is
aac
& N
air
20
06
Ker
ala,
In
dia
8º
N
40
16
19
Art
oca
rpu
s h
eter
op
hyl
lus
-7
.38
63
.42
5Is
aac
& N
air
20
06
Ker
ala,
In
dia
8º
N
40
16
19
An
ace
rdiu
m o
ccid
enta
le-
7.2
88
1.7
52
Isaa
c &
Nai
r 2
00
6
Ker
ala,
In
dia
8º
N
40
16
19
Ali
an
thu
s tr
iph
ysa
-3
.86
43
.51
8Is
aac
& N
air
20
06
Ker
ala,
In
dia
8º
N
40
16
19
Art
oca
rpu
s h
irsu
tus
-6
.56
53
.91
7Is
aac
& N
air
20
06
Ker
ala,
In
dia
8º
N
40
16
19
Sw
iete
nia
ma
cro
ph
ylla
-6
.46
84
.21
6Is
aac
& N
air
20
06
Bin
h D
uo
ng
, V
ietn
am11
º N
8
02
50
0A
caci
a a
uri
culi
form
is2
6.7
86
2.2
39
Vu
et
al.
20
08
Bin
h D
uo
ng
, V
ietn
am11
º N
8
02
50
0A
caci
a a
uri
culi
form
is3
6.2
80
2.1
38
Vu
et
al.
20
08
Nil
gir
is,
Ind
ia11
º N
1
50
02
00
0-2
50
0Tec
ton
a g
ran
dis
16
8.5
16
11
0.1
16
Geo
rge
& V
arg
hes
e 1
99
0a
Nil
gir
is,
Ind
ia11
º N
1
50
02
00
0-2
50
0Tec
ton
a g
ran
dis
18
10
.11
91
11
.71
6G
eorg
e &
Var
gh
ese
19
90
a
Nil
gir
is,
Ind
ia11
º N
1
50
02
00
0-2
50
0Tec
ton
a g
ran
dis
20
10
.72
01
12
.21
6G
eorg
e &
Var
gh
ese
19
90
a
Nil
gir
is,
Ind
ia11
º N
1
50
02
00
0-2
50
0E
uca
lyp
tus
glo
bu
lus
10
8.5
58
4.6
13
Geo
rge
& V
arg
hes
e 1
99
0b
Nil
gir
is,
Ind
ia11
º N
-
11
55
Eu
caly
ptu
s g
lob
ulu
s1
21
.93
11
.32
4V
enk
atar
aman
an e
t al
. 1
98
3
Nil
gir
is,
Ind
ia11
º N
-
11
55
Aca
cia
mea
rnsi
i1
20
.92
20
.54
4V
enk
atar
aman
an e
t al
. 1
98
3
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
56
9A
caci
a a
uri
culi
form
is8
–9
12
.72
03
3.8
53
Jam
alu
dh
een
& K
um
ar 1
99
9
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
56
9A
lia
nth
us
trip
hys
a8
–9
-7
23
.62
0Ja
mal
ud
hee
n &
Ku
mar
19
99
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
56
9A
rto
carp
us
het
ero
ph
yllu
s8
–9
-5
93
.11
9Ja
mal
ud
hee
n &
Ku
mar
19
99
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
56
9A
rto
carp
us
hir
sutu
s8
–9
-3
80
.84
8Ja
mal
ud
hee
n &
Ku
mar
19
99
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
56
9C
asu
ari
na
eq
uis
etif
oli
a8
–9
-6
11
.25
1Ja
mal
ud
hee
n &
Ku
mar
19
99
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
56
9E
mb
lica
off
icin
ali
s8
–9
-8
04
.81
7Ja
mal
ud
hee
n &
Ku
mar
19
99
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
56
9L
euca
ena
leu
coce
ph
ala
8–
9-
12
06
.02
0Ja
mal
ud
hee
n &
Ku
mar
19
99
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
56
9P
ara
seri
an
thes
fa
lca
tari
a8
–9
9.2
17
83
.74
8Ja
mal
ud
hee
n &
Ku
mar
19
99
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
56
9P
tero
carp
us
ma
rsu
piu
m8
–9
3.4
59
1.5
39
Jam
alu
dh
een
& K
um
ar 1
99
9
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
50
7A
caci
a m
an
giu
m9
11
.28
33
.32
5K
un
ham
u e
t al
. 2
00
9
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
50
7A
caci
a m
an
giu
m9
9.2
67
3.1
22
Ku
nh
amu
et
al.
20
09
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
50
7A
caci
a m
an
giu
m9
8.2
59
2.2
27
Ku
nh
amu
et
al.
20
09
Ker
ala,
In
dia
11
º N
6
02
50
7A
caci
a m
an
giu
m9
5.7
42
1.8
23
Ku
nh
amu
et
al.
20
09
Kar
nat
aka,
In
dia
13
º N
58
51
99
0Tec
ton
a g
ran
dis
54
–5
611
.41
43
17
.68
Sw
amy
& P
roct
or
19
97
Kar
nat
aka,
In
dia
13
º N
85
91
99
0A
caci
a a
uri
culi
form
is9
–11
17
.52
97
14
.42
1S
wam
y &
Pro
cto
r 1
99
7
Kar
nat
aka,
In
dia
13
º N
81
01
99
0E
uca
lyp
tus
tere
tico
rnis
18
–2
08
.66
89
.47
Sw
amy
& P
roct
or
19
97
Utt
ar P
rad
esh
, In
dia
24
º N
-
13
00
-16
50
Po
pu
lus
del
toid
es3
1.4
11
0.3
40
Tan
do
n e
t al
. 1
99
1
Utt
ar P
rad
esh
, In
dia
24
º N
-
13
00
-16
50
Po
pu
lus
del
toid
es5
1.9
22
0.5
40
Tan
do
n e
t al
. 1
99
1
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
100
Utta
r Pra
desh
, Ind
ia24
º N
-13
00-1
650
Popu
lus d
elto
ides
72.
928
0.7
43Ta
ndon
et a
l. 19
91U
ttar P
rade
sh, I
ndia
24º N
-
1300
-165
0Po
pulu
s del
toid
es9
2.5
230.
731
Tand
on e
t al.
1991
Taiw
an24
º N
1400
-180
0>2
000
Cha
mae
cypa
ris o
btus
a40
5.7
508.
36
Cha
ng e
t al.
2007
Meg
hala
ya, I
ndia
25º N
12
5021
49Pi
nus k
esiy
a7
6.7
5112
.44
Das
& R
amak
rishn
an 1
985
Meg
hala
ya, I
ndia
25º N
12
5021
49Pi
nus k
esiy
a15
8.1
6113
.94
Das
& R
amak
rishn
an 1
985
Meg
hala
ya, I
ndia
25º N
12
5021
49Pi
nus k
esiy
a22
9.0
6515
.44
Das
& R
amak
rishn
an 1
985
Utta
r Pra
desh
, Ind
ia26
º N
-97
0Po
pulu
s del
toid
es10
3.0
215.
04
Sing
h 19
98U
ttar P
rade
sh, I
ndia
26º N
-
970
Popu
lus d
elto
ides
102.
826
4.0
7Si
ngh
1998
Chi
na26
º N
480-
560
1982
Cun
ning
ham
ia la
nceo
lata
16–2
25.
743
1.0
43W
ang
et a
l. 20
07 (N
P is
leaf
onl
y)C
entr
al A
mer
ica
and
Car
ibbe
anPu
erto
Ric
o 18
º N
625-
680
3807
Pinu
s car
ibae
a26
14.3
744.
019
Cue
vas &
Lug
o 19
98Pu
erto
Ric
o 18
º N
625-
680
3807
Hib
iscu
s ela
tus
2613
.713
57.
717
Cue
vas &
Lug
o 19
98Pu
erto
Ric
o 18
º N
625-
680
3807
Euca
lypt
us sa
ligna
2613
.267
2.5
27C
ueva
s & L
ugo
1998
Puer
to R
ico
18º N
62
5-68
038
07Pi
nus e
lliot
tii26
11.4
492.
818
Cue
vas &
Lug
o 19
98Pu
erto
Ric
o 18
º N
625-
680
3807
Euca
lypt
us c
f. pa
tent
iner
vis
2611
.161
2.8
22C
ueva
s & L
ugo
1998
Puer
to R
ico
18º N
62
5-68
038
07K
haya
nya
sica
2610
.888
3.1
28C
ueva
s & L
ugo
1998
Puer
to R
ico
18º N
62
5-68
038
07Sw
eite
nia
mac
roph
ylla
269.
874
2.7
28C
ueva
s & L
ugo
1998
Puer
to R
ico
18º N
62
5-68
038
07Te
rmin
aria
ivor
ensi
s26
9.2
944.
123
Cue
vas &
Lug
o 19
98Pu
erto
Ric
o 18
º N
625-
680
3807
Her
nand
ia so
nora
269.
014
67.
519
Cue
vas &
Lug
o 19
98Pu
erto
Ric
o 18
º N
625-
680
3807
Anth
ocep
halu
s chi
nens
is26
8.1
553.
317
Cue
vas &
Lug
o 19
98Pu
erto
Ric
o 18
º N
200-
230
3920
Pinu
s car
ibae
a4
2.1
140.
720
Lugo
199
2Pu
erto
Ric
o 18
º N
550-
600
3920
Pinu
s car
ibae
a18
15.7
862.
534
Lugo
199
2Pu
erto
Ric
o 18
º N
170
3920
Swei
teni
a m
acro
phyl
la17
11.9
331.
130
Lugo
199
2Pu
erto
Ric
o 18
º N
200
3920
Swei
teni
a m
acro
phyl
la49
8.2
431.
529
Lugo
199
2Pu
erto
Ric
o 18
º N
low
1600
Cas
uari
na e
quis
etifo
lia8
8.6
105
2.2
49Pa
rrot
ta 1
999
Puer
to R
ico
18º N
lo
w16
00Eu
caly
ptus
robu
sta
85.
442
1.1
38Pa
rrot
ta 1
999
Puer
to R
ico
18º N
lo
w16
00Le
ucae
na le
ucoc
epha
la8
9.7
193
4.5
43Pa
rrot
ta 1
999
* ci
ted
in V
itous
ek (1
984)
Ref
eren
ces
Ber
nhar
d-R
ever
sat F
(198
7) C
ompa
rativ
e st
udy
of n
utrie
nt c
yclin
g in
an
Acac
ia se
yal c
omm
unity
and
in a
pla
nted
Euc
alyp
tus s
tand
in S
eneg
al. A
cta
Oec
olog
ica
8:3–
16
Bru
ijnze
el L
A (1
985)
Con
tent
of l
itter
fall
in c
onife
rous
fore
st p
lant
atio
ns in
cen
tral J
ava,
Indo
nesi
a. J
Trop
Eco
l 1:3
53–3
72
Egun
jobi
JK (1
974)
Litt
erfa
ll an
d m
iner
aliz
atio
n in
a te
ak (
Tect
ona
gran
dis)
stan
d. O
ikos
25:
222–
226
Bin
kley
D, R
yan
MG
(199
8) N
et p
rimar
y pr
oduc
tion
and
nutri
ent c
yclin
g in
repl
icat
ed st
ands
of E
ucal
yptu
s sal
igna
and
Alb
izia
falc
atar
ia. F
or E
col M
anag
e 11
2:79
–85
Bra
sell
HM
, Unw
in G
L, S
tock
er G
C (1
980)
The
qua
ntity
, tem
pora
l dis
tribu
tion
and
min
eral
-ele
men
t con
tent
of l
itter
fall
in tw
o fo
rest
type
s at t
wo
site
s in
tropi
cal A
ustra
lia. J
Eco
l 68:
123–
139
Cue
vas E
, Lug
o A
E (1
998)
Dyn
amic
s of o
rgan
ic m
atte
r and
nut
rient
retu
rn fr
om li
tterf
all i
n st
ands
of t
en tr
opic
al tr
ee p
lant
atio
n sp
ecie
s. Fo
r Eco
l Man
age
112:
263–
279
Bub
b K
A, X
u ZH
, Sim
pson
JA, S
affig
na P
G (1
998)
Som
e nu
trien
t dyn
amic
s ass
ocia
ted
with
litte
rfal
l and
litte
r dec
ompo
sitio
n in
hoo
p pi
ne p
lant
atio
ns o
f sou
thea
st Q
ueen
slan
d, A
ustra
lia. F
or E
col
Man
age
110:
343–
352
Cha
ng S
C, W
ang
CP,
Fen
g C
M, R
ees R
, Hel
l U, M
atzn
er E
(200
7) S
oil f
luxe
s of m
iner
al e
lem
ents
and
dis
solv
ed o
rgan
ic m
atte
r fol
low
ing
man
ipul
atio
n of
leaf
litte
r inp
ut in
a T
aiw
anC
ham
aecy
pari
s fo
rest
. For
Eco
l Man
age
242:
133–
141
Bin
kley
D, D
unki
n K
A, D
eBel
l D, G
yan
MG
(199
2) P
rodu
ctio
n an
d nu
trien
t cyc
ling
in m
ixed
pla
ntat
ions
of
Euca
lypt
us a
nd A
lbiz
ia in
Haw
aii.
For S
ci 3
5:39
3–40
8
Das
AK
, Ram
akris
hnan
PS
(198
5) L
itter
dyn
amic
s in
Kha
si p
ine
(Pin
us k
esiy
a R
oyle
ex
Gor
don.
) of n
orth
-eas
tern
Indi
a. F
ores
t Eco
l Man
age
10:1
35–1
53
第6章 マンギウムアカシアおよびマホガニー、フープパイン人工林のリターフォールの質と落葉前の再転流
101
Geo
rge
M, V
arg
hes
e G
(1
99
0b
) N
utr
ien
t cy
clin
g i
n E
uca
lyp
tus
glo
bu
lus
pla
nta
tio
n.
II.
Lit
ter
pro
du
ctio
n a
nd
nu
trie
nts
ret
urn
. In
d F
ore
ster
11
6:9
62
–9
68
Isaa
c S
R,
Nai
r M
A (
20
06
) L
itte
r d
yn
amic
s o
f si
x m
ult
ipu
tpo
se t
rees
in
a h
om
egar
den
in
So
uth
ern
Ker
ala,
In
dia
. Ag
rofo
r S
yst
67
:20
3–
21
3
Lu
go
AE
(1
99
2)
Co
mp
aris
on
of
tro
pic
al t
ree
pla
nta
tio
ns
wit
h s
eco
nd
ary
fo
rest
s o
f si
mil
ar a
ge.
Eco
l M
on
og
r 6
2:1
–4
1
Mag
gs
J (1
98
5)
Lit
ter
fall
an
d r
etra
nsl
oca
tio
n o
f n
utr
ien
ts i
n a
ref
erti
lize
d a
nd
pre
scri
bed
bu
rned
Pin
us
elli
ott
ii p
lan
tati
on
. F
or
Eco
l M
anag
e 1
2:2
53
–2
68
Maj
alap
N (
19
99
) E
ffec
ts o
f A
caci
a m
ang
ium
on
so
ils
in S
abah
. D
isse
rtat
ion
, D
epar
tmen
t o
f P
lan
t an
d S
oil
Sci
ence
, T
he
Un
iver
sity
of
Ab
erd
een
Sin
gh
B (
19
98
) B
iom
ass
pro
du
ctio
n a
nd
nu
trie
nt
dy
nam
ics
in t
hre
e cl
on
es o
f P
op
ulu
s d
elto
ides
pla
nte
d o
n i
nd
og
ang
etic
pla
ins.
Pla
nt
So
il 2
03
:15
–2
6
Vit
ou
se,
PM
(1
98
4)
Lit
terf
all,
nu
trie
nt
cycl
ing
an
d n
utr
ien
t li
mit
atio
n i
n f
ore
sts.
Eco
log
y 6
5:2
85
–2
98
Wan
g Q
, W
ang
S,
Hu
ang
Y (
20
08
) C
om
par
iso
ns
of
litt
erfa
ll,
litt
er d
eco
mp
osi
tio
n a
nd
nu
trie
nt
retu
rn i
n a
mo
no
cult
ure
Cu
nn
ing
ha
mia
la
nce
ola
ta a
nd
a m
ixed
sta
nd
in
so
uth
ern
Ch
ina.
Fo
r E
col
Man
age
25
5:1
21
0–
12
18
Ku
nh
amu
TK
, K
um
ar B
M, V
isw
anat
h S
(2
00
9)
Do
es t
hin
nin
g a
ffec
t li
tter
fall
, li
tter
dec
om
po
siti
on
, an
d a
sso
ciat
ed n
utr
ien
t re
leas
e in
Aca
cia
ma
ng
ium
sta
nd
s o
f K
eral
a in
pen
insu
lar
Ind
ia?
Can
J
Fo
r R
es 3
9:7
92
–8
01
Har
diy
anto
EB
, W
icak
son
o A
(2
00
8)
Inte
r-ro
tati
on
sit
e m
anag
emen
t, s
tan
d g
row
th a
nd
so
il p
rop
erti
es i
n A
caci
a m
an
giu
m p
lan
tati
on
s in
so
uth
Su
mat
ra,
Ind
on
esia
. In
: N
amb
iar
SE
K (
ed)
Sit
e
man
agem
ent
and
pro
du
ctiv
ity
in
tro
pic
al p
lan
tati
on
fo
rest
s: p
roce
edin
gs
of
wo
rksh
op
s in
Pir
acic
aba
(Bra
zil)
22
–2
6 N
ov
emb
er 2
00
4 a
nd
Bo
go
r (I
nd
on
esia
) 6
–9
No
vem
ber
20
06
. C
IFO
R,
Jak
arta
, p
p
10
7–
12
2
Vu
DH
, P
ham
VT
, P
ham
TH
, H
o V
P, N
gu
yen
TB
, H
a M
D,
Ng
uy
en T
T (
20
04
) S
ite
man
agem
ent
and
pro
du
ctiv
ity
of
Aca
cia
au
ricu
lifo
rmis
pla
nta
tio
ns
in s
ou
th V
ietn
am.
In:
Nam
bia
r E
KS
, R
ang
er J
,
Tia
rks
A, T
om
a T
(ed
s) S
ite
man
agem
ent
and
pro
du
ctiv
ity
in
tro
pic
al p
lan
tati
on
fo
rest
s: p
roce
edin
g o
f w
ork
sho
ps
in C
on
go
Ju
ly 2
00
1 a
nd
Ch
ina
Feb
ruar
y 2
00
3.
CIF
OR
, B
og
or,
pp
12
1–
13
7
Ven
kat
aram
anan
C,
Hal
do
rai
B,
Sam
raj
P, N
alat
wad
mat
h S
K,
Hen
ry C
(1
98
3)
Ret
urn
of
nu
trie
nt
by
th
e le
af-l
itte
r o
f b
lueg
um
(E
uca
lyp
tus
glo
bu
lus)
an
d b
lack
wat
tle
(Aca
cia
mea
rnsi
i) p
lan
tati
on
s
of
Nil
gir
is i
n T
amil
Nad
u.
Ind
Fo
rest
er 1
09
:37
0–
37
8
Geo
rge
M, V
arg
hes
e G
(1
99
0a)
Lit
ter
pro
du
ctio
n a
nd
nu
trie
nts
ret
urn
in
an
ag
e se
ries
of
teak
(Tec
ton
a g
ran
dis
Lin
n.
F)
pla
nta
tio
n.
J T
rop
Fo
rest
ry 6
:31
8–
32
3
Tan
do
n V
N,
Pan
dey
MC
, R
awat
HS
, S
har
ma
DC
(1
99
1)
Org
anic
pro
du
ctiv
ity
an
d m
iner
al c
ycl
ing
in
pla
nta
tio
ns
of
Po
pu
lus
del
toid
es i
n T
arai
reg
ion
of
Utt
ar P
rad
esh
. In
d F
ore
ster
11
7:5
96
-60
8
Jam
alu
dh
een
V,
Ku
mar
BM
(1
99
9)
Lit
ter
of
mu
ltip
urp
ose
tre
es i
n K
eral
a, I
nd
ia:
var
iati
on
s in
th
e am
ou
nt,
qu
alit
y, d
ecay
rat
es a
nd
rel
ease
of
nu
trie
nts
. F
or
Eco
l M
anag
e 11
5:1
–11
Par
rott
a JA
(1
99
9)
Pro
du
ctiv
ity,
nu
trie
nt
cycl
ing
, an
d s
ucc
essi
on
in
sin
gle
- an
d m
ixed
-sp
ecie
s p
lan
tati
on
s o
f C
asu
ari
na
eq
uis
etif
oli
a,
Eu
caly
ptu
s ro
bu
sta
, an
d L
euca
ena
leu
coce
ph
ala
in
Pu
erto
Ric
o.
Fo
r E
col
Man
age
12
4:4
5–
77
Sw
amy
HR
, P
roct
or
J (1
99
7)
Fin
e li
tter
fall
an
d i
ts n
utr
ien
ts i
n p
lan
tati
on
s o
f A
caci
a a
uri
culi
form
is,
Eu
caly
ptu
s te
reti
corn
is a
nd
Tec
ton
a g
ran
dis
in
th
e C
hik
mag
alu
r d
istr
ict
of
the
wes
tern
Gh
ats,
Ind
ia.
J T
rop
Fo
rest
Sci
10
:73
–8
5
Kad
eba
O, A
du
ayi
EA
(1
98
5)
Lit
ter
pro
du
ctio
n,
nu
trie
nt
recy
clin
g a
nd
lit
ter
accu
mu
lati
on
in
Pin
us
cari
ba
ea M
ore
let
var
. H
on
du
ren
sis
stan
ds
in t
he
no
rth
ern
Gu
nie
a sa
van
na
of
Nig
eria
. P
lan
t S
oil
86
:19
7–
20
6
Lis
anew
ork
N,
Mic
hel
sen
A (
19
94
) L
itte
rfal
l an
d n
utr
ien
t re
leas
e b
y d
eco
mp
osi
tio
n i
n t
hre
e p
lan
tati
on
s co
mp
ared
wit
h a
nat
ura
l fo
rest
in
th
e E
thio
pia
n h
igh
lan
d.
Fo
r E
col
Man
age
65
:14
9–
16
4
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
102
第7章 総合考察
7.1 本研究の結果の総括 本研究は、荒廃地回復の有効性が期待されるマンギウムアカシア人工林を対象にして、特に
窒素とリンに着目した養分利用の樹種特性と、土壌への有機物ならびに養分供給に関する理解
を深めることを目的とした。第1章では、熱帯造林のおかれている現状、マンギウムアカシア
の生理生態学的特徴、その土壌への影響、湿潤熱帯における窒素とリンの可給性と、その利用
様式についてこれまでの研究を精査した。第2章では、メタデータの解析から熱帯造林木の窒
素とリンの地上部バイオマス当りの利用効率を比較し、マンギウムアカシアの樹種特性と土壌
条件との関係を切り分けた。第3章以降は、マレーシアサバ州の試験林分内での物質循環を検
討した。第3章、第4章では土壌−植物間の物質移動と、マンギウムアカシアの養分利用特性と
の関係を考察した。第3章では各種人工林下の堆積有機物と土壌の化学性を比較した。第4章
ではリターフォール量とリターフォールによって介される養分供給量を比較し、第3章の土壌
の化学性への影響を考察した。第5章、第6章ではマンギウムアカシアによる窒素とリンの要
求と再転流について検討した。第5章では、養分添加したイングロースコア法を用いて、細根
の成長から各樹種の窒素、リン要求の違いを検討した。第6章では、第4章で示したリター
フォールに含まれる養分濃度と、生葉の濃度を比較し、窒素とリンの再吸収の違いを検討し
た。
これらの結果から、以下の項目が明らかになった。
マンギウムアカシアの地上部バイオマス中の窒素利用効率は、土壌の条件に関わらず非窒素
固定種より低かった。リン利用効率については平均で2.6倍マンギウムアカシアが非窒素固定種
より高かった。リン利用効率は、マンギウムアカシア、その他の窒素固定種、非窒素固定種の
いずれの森林グループも土壌中の可給態リン濃度と反比例していたが、森林グループの違いに
よる効果との交互作用は無く、いずれの土壌条件においてもマンギウムアカシアが非窒素固定
種より高かった。マンギウムアカシアの葉中のリン蓄積量は他グループと異ならなかったこと
から、リン利用効率が高いのは葉以外の器官(材や枝)のリン蓄積量が少ないことが寄与して
いた。
3試験地とも、マンギウムアカシア林の土壌が他樹種林分下の土壌より表層土壌の窒素濃度
が高かったこと、13林分の比較で堆積有機物中の窒素量と表層土壌の窒素濃度との間に有意な
第7章 総合考察
103
相関があったこと、リターフォール中の窒素量と堆積有機物および表層土壌の窒素濃度との関
係が有意であったことから、マンギウムアカシア林が土壌への有機物供給、特に窒素供給能力
が非常に大きいことが実証された。特にマンギウムアカシア林のリターフォール量と窒素供給
量は熱帯林の中でも有数の値であった。ただし、土壌に影響が及ぶ深さは、本研究では15cm深
までであった。リンを含む他の元素については、リターフォール中の養分量と表層土壌の濃度
との対応関係がなかった。
養分添加によるイングロースコア試験では、マンギウムアカシア林で窒素およびリン添加
よって細根成長の促進が確認された。これは、他2樹種が養分添加に無反応であったことと対
照的であった。リンについては従来考えられていたように制限要因であった。ところが、窒素
についてもリンと同じように制限要因であり、これは仮説と反する結果であった。Gum Gum試
験地のマンギウムアカシアはリターフォールによってもたらされる可給態窒素プールが世界で
も有数な値であるにもかかわらず、窒素をさらに要求しているという事実が明らかにされた。
また、根粒量については、リン添加では有意な影響がなく窒素添加によって増加した。明確な
理由は明らかに出来なかったが、根圏の養分バランスが根粒形成にとって特殊な条件になって
いる可能性が示唆された。
本試験地のリターフォールのN:P比は、マンギウムアカシアの落葉で極端に大きかった。既存
のリターフォールデータの中で比較すると、他樹種と比べより広い範囲の値を取ることがわ
かったが、いずれの研究事例においても非窒素固定樹種の平均より大きかった。標準主軸法回
帰の結果から、窒素固定樹種のリターのN:P比は、その他のグループと比較して系統的にN:P比
が大きかった。生葉と落葉のN:P比を比較すると、他の2樹種がほぼ同じ値であったのに対し、
マンギウムアカシアでは落葉で約3倍大きかった。これは、マンギウムアカシアでは落葉前の
再吸収が、窒素と比較するとリンで選択的に起こっていることによるものであった。このよう
な、窒素に比べてリンの再吸収が大きくなる事例は、極めて貧栄養な湿潤熱帯林や養分制限の
大きい山地林で報告されている(Kitayama and Aiba 2002; Hättenschwiler et al. 2008)。ところ
が、本試験のマンギウムアカシア林は、試験地の土壌条件が特にリンで富栄養であったにも関
わらず、他樹種と全く異なる選択的なリンの再吸収を行っていることが明らかとなった。
本研究の結果から得られた、マンギウムアカシアの養分利用の特徴と、荒廃地造林における
マンギウムアカシアの有効性との関連について考察する。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
104
本研究から、マンギウムアカシアは窒素とリンで全く異なる利用様式を取っていることがわ
かった。すなわち、窒素については細根吸収と窒素固定によって多くの量を確保していること
が示唆され、再吸収をそれ
ほど行なわず多くを循環さ
せていた。逆にリンについ
ては積極的に獲得した少量
のリンを、出来る限り効率
的に樹体内で再転流させ循
環にはほとんど廻さないこ
とが明らかとなった。
本研究の結果は、従来考
えられていたマメ科早生樹
林ではリンが制限要因であ
るという考えを否定するも
のではなかった。ただし、
成木において他樹種より少
ないリン量でバイオマス生
産を行ない、かつ樹体内で
リンをより選択的に転流し
ていることが明らかとな
り、土壌中でのリンの獲得
能力が高いという特徴とと
もに、再吸収によって効率
的にリンを利用しているこ
とで荒廃地での生存を有利
にしているものと思われ
た。すなわち、マンギウム
アカシアは荒廃地でもある
程度の森林の成立が可能で
あるが、リンの条件が良い
場合により大きなバイオマ
ス生産が可能であると考え
第7章 総合考察
105
1 10
100
1000
abov
egou
nd b
iom
ass
NU
E MAI (aboveground biomass Mg-1 ha-1 year-1)
1 10
100
1000
10000
abov
egro
und
biom
ass
PUE
MAI (aboveground biomass Mg-1 ha-1 year-1)
(b)
(a)
Fig. 7.1 Relationship between the Mean Annual Increment (MAI) and the nitrogen (a) and phosphorus (b) use efficiency of tropical timber trees.Open circles indicate N2-fixers except A. mangium, and closed circles denote A. mangium. Open
squares denote non-N2-fixing broadleaves except Eucalyptus and closed squares denote
Eucalyptus. Solid line represents SMA regression for all. Dotted line represents that of other-N2-
fixers and bold dotted dashed line represents that of Eucalyptus and dotted dashed line represents that of non-N2-fixing broadleaves except Eucalyptus. The regression parameters are indicated in
the Table 7.1. All data are used from appendix 2.1.
図 7.1 熱帯造林木の年平均バイオマス成長量と窒素、リン利用効率との関係
表 7.1 年平均バイオマス成長量と窒素、リン利用効率とのSMA回帰パラメータおよび検定
Group Slope Intercept R2 P
Nitrogen use Total 0.6348 1.7132 0.21 < 0.001
efficiency Acacia mangium > 0.100
other N2-fixers 0.5479 1.7007 0.14 0.064
Eucalyptus 0.5479 1.9787 0.32 0.011
non-N2-fixing broadleaves 0.5479 1.8741 0.77 < 0.001
Phosphorus use Total 1.0996 2.3702 0.17 < 0.001
efficiency Acacia mangium > 0.100
other N2-fixers 1.1299 2.3179 0.11 0.099
Eucalyptus > 0.100
non-N2-fixing broadleaves > 0.100
Table 7.1 Parameters and significances for the SMA regressions between mean annual increment and nitrogen andphosphorus use efficiency
られた。通常の植物は、養分不足に対して脆弱である代わりに必要以上の養分に対しては要求
を示さない。外部の養分条件の違いに対して、養分利用効率を変化させることによって対応す
るが、その対応には限界がある。また、植物は可給態養分の大小に応じて再吸収率を変化させ
る。マンギウムアカシアは、可給態リン量の多少に関わらず他樹種より常にリン利用効率が高
く(表2.1)、本試験地のような比較的養分条件が良い場合でもリンの大半を再吸収していた。
また、マンギウムアカシアは年平均成長量(Mean annual increment; MAI)、窒素、リン利用効
率との関係に、マンギウムアカシア以外の窒素固定種や非窒素固定種といった他の森林グルー
プと異なり、相関がなく養分利用効率が一律であった(図7.1、表7.1)。従って、マンギウムア
カシアは通常の植物と異なり、リン資源量に関わらず常に効率的な利用を行ないさまざまな環
境に対応しているのではないかと考えられた。
一方で、窒素についてもリンと同じように制限要因であることが明らかとなった。このこと
は、これまで指摘されてこなかった知見である。生葉と落葉の窒素濃度は高く(表2.2、表
6.2)、リターフォール中の窒素供給量は世界の森林の中でも最大値に近い値であった(表
4.2)。にもかかわらず、根圏ではさらなる窒素を要求していた(図5.3)。これらの結果を考慮
すると、生葉の窒素濃度が高く葉の寿命が極めて短いという性質(Tong and Ng 2008)から、マ
ンギウムアカシアが葉の生産のために他樹種と比べて相当多くの窒素が必要であることが理解
できる。マンギウムアカシアは光合成生産を高いレベルで維持するために、高い窒素濃度の葉
を常に生産し続ける必要が有るのだろう。そのため、窒素固定でも数10−100kg N ha-1 year-1以上
の窒素を獲得する(Galiana et al. 2002; Bouillet et al. 2008b; Mercado et al. 2011)が、それ以上に
窒素を必要としていたものと考えられる。熱帯の樹木のリンの利用に関しては不明な点が多い
が、窒素ほど常に供給し続けなければならない条件に有るのではないと考えられる。熱帯の樹
木にはリン獲得の不確実性に対応するため、現在のリン要求とは関係なくリン獲得を行ない貯
蔵する傾向があり、植物体内の移動で調節ができる可能性が指摘されている(Ostertag
2010)。マンギウムアカシアはリン利用の調節機能が極めて発達しているために、荒廃地土壌
での成長を有利にしていると考えられた。
高濃度の窒素を含むリターフォールを多量に生産することによって、マンギウムアカシアは
表層土壌の窒素濃度を高める機能が確かめられた。窒素の給源は半分程度が窒素固定による生
態系外からの純増分であると推察され(Mercado et al. 2011)、有機物および窒素供給の点でマ
ンギウムアカシアは荒廃地の土壌回復に有効であると判断された。その他の元素についてはリ
ターフォールの供給量と表層土壌との関係が明らかでなかった。地上部のリン蓄積量は同じ地
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
106
上部バイオマス当りでは他樹種よ
り少なく、その傾向は葉以外の
器官で顕著だった。そのため、
同じサイズの樹木で比較する場
合、集材等で系外に持ち出され
るリン量がより少ないととらえる
ことが出来る。バイオマス量に左
右されるが、他樹種よりリン吸
収量も少ない可能性がある。年
間リン吸収量は年間リン蓄積量
とリターフォール中のリン量との
合計であり、マンギウムアカシア
の年当りの地上部バイオマス中の
リン蓄積量は、統計的には他の
樹種との間で差がなかったが平
均値は低い方であった(図
7.2)。リターフォール中のリン
量は盛んな再吸収により本試験
で測定した樹種以外と比較しても少ないと予想され、したがってその合計値である年間リン蓄
積量も少ないと考えられた。塩基類についても、同程度のリターフォール量のマホガニーと比
べ半分程度であり(表4.2)、吸収量が少ない可能性がある。その分、他の植物が利用可能な養
分が、土壌中に残されているととらえることが出来る。実際にマンギウムアカシアはリター
フォールから供給する塩基量がマホガニーよりも少ないにもかかわらず、表層土壌中の交換性
塩基濃度は他樹種と変わらなかった(図4.4)。以上の点において、マンギウムアカシアによる
土壌回復機能の有効性が示された。
7.2 マンギウムアカシアの湿潤熱帯環境下における成長戦略 本研究によって明らかとなったマンギウムアカシアの養分利用に関する特性は、一般的に窒
素の可給性が高く、リンの可給性が低い湿潤熱帯条件下において、成長に有利にはたらくと考
えられる。マンギウムアカシアは強光下でのみ他樹種との競争に強いという結果が示されてお
り(Osunkoya et al. 2005)、成長を有利にするためには光条件に制限がない状態で光合成能を
第7章 総合考察
107
A. m
angi
um
A. a
uric
ulifo
rmis
L. le
ucoc
epha
la
C. e
quet
icifo
ria
Oth
er F
abac
eae
E.gr
andi
s
Oth
er b
road
leav
es
E. s
pp
MAI
for N
itrog
en
( kg
ha-1
yea
r-1)
MAI
for P
hosp
horu
s ( k
g ha
-1 y
ear-1
)
A A A A A A A A
AB A ABC BC ABC BC BC C
Fig. 7.2 Mean annual increment (MAI) for nitrogen and phosphorus in the aboveground biomass between tropical plantation speciesDifferent characters indicate significant differences between species according to a host-hoc Tukey's HSD test (P < 0.05). The top, bottom and the line through the middle of the box correspond to the 75th, 25th and 50th (median) percentiles. Whiskers extend from upper and lower quartiles ±1.5 ! (interquartile ranges). Horizontal lines indicate the average of all data.
図7.2 熱帯造林木の地上部バイオマス中の年間窒素蓄積量およびリン蓄積量
十分に発揮する必要がある。本研究で示されたようなマンギウムアカシアの養分利用の特質、
特に窒素の回転が早くて大きい性質は、最大光合成能が高い特徴(Maruyama et al. 1997)に必
要な条件である。さらに、光合成能を十分に発揮するために水分の制限がないことが必要で、
水分消費が大きい(Sá et al. 1999; Inagaki et al. 2008)といった特徴と関連している可能性があ
る。今回測定した3樹種の生葉のδ13C値(稲垣ら 未発表)は、マンギウムアカシアが平均
で-34.6‰と、マホガニーやフープパインの値(平均-31.5および-29.3‰)と比べて低かった。さ
らにマンギウムアカシアの値は植物全体の中でも下限値に近い値であり(Lambers et al.
2008)、高い光合成能と低い水利用効率を裏付けていた。葉内の窒素は、主に光合成の暗反応
で触媒となるRubisCO酵素の生産に使われるが(Chapin et al. 2002; Lambers et al. 2008)、葉中
の窒素濃度と最大光合成速度との間に有意な正の相関を持っていることがさまざまな事例から
明らかになっており(Wright et al. 2004; Hikosaka and Osone 2009)、光合成と窒素の関係に対し
て葉のリン濃度が影響しているという報告もされている(Reich et al. 2009)。したがって、光
と水が十分で、かつリンが不足している典型的な湿潤熱帯条件下においてマンギウムアカシア
の成長量が大きいのは、高濃度の窒素を含む葉による高い光合成生産と効率的なリン利用が主
要な要因となっていると考えられた。
リン利用が効率的であるのは、養分利用戦略として考えた場合にフォスファターゼ生産が比
較的大きく(小島 2004; Lee et al. 2006)、リン獲得において有利であることと一見すると矛盾
しているようにも見える。というのも、通常獲得した養分が十分である場合、再吸収率が低く
なるからである(Martínez-Sánchez 2005; Richardson et al. 2008)。マンギウムアカシアは、アー
バスキュラ菌根菌および外生菌根菌、根粒菌、および菌根を助けるシュードモナス属等のバク
テリアと複雑な共生関係を築いている(Aggangan et al. 2010)。そのような共生関係が、本研究
で示したようなリン利用戦略を促しているのかもしれない。マンギウムアカシアは共生微生物
の働きによってリン獲得機能が卓越しているが、宿主であるマンギウムアカシアは獲得機能が
高くないかわりにリンの調節機能が卓越していると考えられる。宿主からのリンの供給が十分
であったため、第5章ではリン添加によって根粒が増加しなかった可能性も考えられる。
そのような、マンギウムアカシアのリン調節機構は、共生微生物との相互作用によって成り
立っている可能性がある。マンギウムアカシアを通気された水耕栽培で育て、人工的に根粒を
接種した試験においては、根粒の機能が十分発揮される範囲内ではある程度リンの獲得が制限
されていても他のマメ科樹種よりバイオマス全体のリン利用効率が高くなることが示されてい
る(Ribet and Drevon 1996)。さらに、根粒菌と菌根菌の両接種試験では、無接種区では基質の
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
108
リン濃度が高い場合でも地上部成長が促進されなかったが、両菌の接種がいずれも有意に成長
を促した(Weber et al. 2005)。このような共生微生物の影響を考慮したマンギウムアカシアに
よる組織内でのリンの輸送や利用は、宿主と共生微生物の養分要求と成長を切り分けることに
よって、今後より理解が深まるのではないかと予想される。
7.3 本研究の意義
ここ数年で熱帯の早生樹人工林の生産性に関する研究が、国際林業研究センター(CIFOR)
による熱帯人工林の生産性に関するプロジェクト(Site management and productivity in tropical
plantation forests)とそれに関連する成果によって、大きく発展した(Nambiar et al. 2004;
Nambiar 2008; Binkley et al. 2010)。本研究は、それらの成果をはじめ多くの先行研究の測定例
を元にメタ解析によって一般的な傾向を導き、その結果に基づいてマンギウムアカシアの養分
利用に関する新たな知見を得た。
マンギウムアカシアのバイオマス及びリターフォール中の窒素の蓄積についてはある程度窒
素固定研究による知見があった(Galiana et al. 2002; Bouillet et al. 2008b; Mercado et al. 2011)
が、バイオマス中のリンの蓄積が少なく、リターフォールのN:P比が大きいことは本研究によっ
てはじめて包括的に理解された。湿潤熱帯のリン不足な立地条件下における植物の適応は天然
生林で知見が得られており(Kitayama and Aiba 2002; Hättenschwiler et al. 2008)、マンギウムア
カシアの落葉中のリン濃度が窒素濃度と比較して低いことも指摘されていたが(Kadir et al.
1998; Björck 2002; Hardiyanto and Wicaksono 2008)、単一樹種のマンギウムアカシアがリンが豊
富な土壌条件下においてもリン利用効率が高かったことは新たな知見である。
単一林の機能が多様性の高い森林に劣る懸念はリターフォール量について指摘されていたが
(Brasell et al. 1980; Binkley et al. 1997; Tang et al. 2010)、本研究の結果は生産性が高く、成熟し
た林分では人工林においても天然林以上のリターフォール生産をすることを示した。マンギウ
ムアカシアを含む窒素固定を行うマメ科の人工林については、多くの研究で土壌の窒素条件を
高めることが報告されてきたが、本研究ではマンギウムアカシアが生産するリターフォール中
の窒素量が、表層土壌中の窒素濃度を高めることを明らかにした。特に、本研究で示されたリ
ターフォールに伴う窒素供給量は、林齢が大きい影響も加わり世界の報告例の中でも有数の量
であった。他の2樹種についても、窒素についてはマンギウムアカシアほどの供給量はない
が、近接する天然林と比べて同等もしくはそれ以上の窒素供給効果があることを示した。この
ことから、ことリターフォールによる養分供給に関しては、人工林が持つ機能が天然林と遜色
第7章 総合考察
109
が無く、さらにマンギウムアカシアはより高い窒素供給能力を持つことが明らかとなった。リ
ターフォールからの年間窒素供給量が、表層土壌中の窒素濃度と有意な比例関係があること
は、造林によって短期間で劣化した土壌を回復させる際に十分な窒素供給がなされていること
の裏付けとなり、荒廃地の回復を行う際の尺度となりうる。本研究の結果は、マメ科樹木の造
林と土壌中の窒素改善を追った先行研究のプロセス部分を補う意義があったと考える。
マンギウムアカシアのリターフォールが供給する養分は、窒素に対して、リンの量は極めて
少なく、リン施肥としては効果が低いことが明らかとなった。また、マホガニーでは、リター
フォール中のマンガン量が極めて少ないことが本研究から明らかとなり、単一樹種のリターに
は特定の養分が著しく少ない量しか含まれない事例が示された。リターフォール中の特定養分
が少ない事例はこれまで指摘されていなかった懸念であり、今後単一林について考慮すべき問
題点を新たに提示することとなった。
はじめにメタ解析で示したバイオマス中の窒素とリンの利用効率の違いを受け、根系での窒
素とリンの要求および落葉前の再転流の特異性を明らかにした。熱帯の窒素固定木は全球的な
窒素循環においても重要な意義を持っており、窒素固定植物のリン動態が特異的であることも
様々な研究例から示唆されてきた。本研究の結果から、マンギウムアカシアのリン利用が効率
的であることによって、湿潤熱帯での成長を有利にしていることが示唆された。フォスファ
ターゼ生産の点から、熱帯のマメ科植物が繁殖に有利である可能性を指摘した研究例(Houlton
et al. 2008)があるが、マンギウムアカシアのリンの再吸収について樹種固有の生理的特徴であ
ることを示したのは本研究が初めてである。さらに、窒素可給性が高いにもかかわらず、窒素
添加に対して有意な細根成長を示した結果から、マンギウムアカシアがリンとは対照的に、莫
大な量の窒素を循環させることによって高い成長を維持していることが示唆された。このよう
に、マンギウムアカシアが窒素とリンで全く異なる利用、循環を行っているという事実は、本
研究によって初めて包括的に理解された知見である。これらの知見は、リン欠乏環境下できわ
めて良い成長を示すマンギウムアカシアの成長戦略の理解と、マンギウムアカシアの熱帯造林
における機能活用を進める上で大きな貢献を果たすことが期待できる。
7.4 成果の応用 今後、マンギウムアカシアを利用した持続的な熱帯造林を進める上で、本論文の成果を活用
してより持続的な生産を目指すことができると考える。アグロフォレストリーを含む混交林と
単一林に分けて考えてみたい。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
110
7.4.1 アグロフォレストリーを含む混交林 本研究において、マンギウムアカシア、マホガニー、フープパインのいずれの樹種も、リター
フォールから湿潤熱帯一次林並みか、それ以上の養分供給機能があることが示された。特に、
マンギウムアカシアは年間の窒素供給量が200 kg N ha-1を超え、農業活動における施肥量並みの
窒素を供給していた。また、同じバイオマス量当りではマンギウムアカシアのリン吸収量は他
種より少なく、その分同じ場所に植栽される他樹種が利用できるリンが確保される可能性があ
る。リターフォールによる効果は、アカシアではリンの供給が、マホガニーではマンガンの供
給と落葉の時期が集中する問題があるものの、いずれの樹種も、林床に養分を供給する機能に
ついては効果が高いと考えられた。さらに、窒素を多量に含む有機物を供給する点で、マンギ
ウムアカシアの混交林での利用はとりわけ有効であると考えられた。ただし、養分バランスを
考えた際に単一樹種の施用は問題があり、リターを他樹種のものと混交してマルチのように施
用したり、もしくは残存木のアカシアとそれ以外の樹種を配置することが望ましい。特に、生
葉と落葉のN:P比が低い針葉樹は、混交の際に有効な選択枝であると考えられる。また、マンギ
ウムアカシアは水、養分に対する要求が大きく、特にリンについては根系での獲得能力が高い
と考えられる。バイオマス全体で見るとリン吸収の総量が少ないとしても、根圏での競争力に
長けている可能性がある。近接して他種を植える場合は、窒素を含む水、養分を競合関係にな
らないように十分に供給することが必要である。
機能の異なる樹木の混交をすることによって正の交互作用を目指す試みは、第1章でも述べ
たようにさまざまな事例を試行錯誤している段階にある。養分だけではなく、光環境、すなわ
ち樹木の配置や樹形というもう一つの大きな要因を考慮する必要があるものの、本研究で示し
たマンギウムアカシアの特異的な養分利用をはじめ、さまざまな植物の機能に関する知見を深
めそれらを組み合わせることによって、より合理的な組み合わせによる混交林やアグロフォレ
ストリーを展開することが期待できる。
7.4.2 単一林に残る問題とその改善策 第1章で述べたように、マンギウムアカシアの単一林は通常の人工林が抱える問題に加え、
N2O、NOの放出が懸念されている。本研究でアカシア林ではリターフォールによる窒素供給量
が極めて大きく、吸収などを含めた窒素の動態が非常に大きいことが示され、その大きな循環
がマンギウムアカシアの窒素利用特性に基づくものであることを示唆した。さらに、リター
フォールからのリンの供給が少ないため、広域で窒素とリンの循環を大幅に改変してしまう可
能性がある。ここで、極めて平均的な熱帯林が存在していたことを想定し、それがマンギウム
第7章 総合考察
111
アカシアの一斉林に置き換わったことによって、リターフォールからの窒素とリンの供給量に
どの程度の差が生じるか、検討を試みた。
アカシアの造林面積890万haのうち、マンギウムアカシアは210万haである(FAO 2006)。こ
れを、仮に平均的な熱帯林から転換されたものとして考える。熱帯林の落葉中の窒素とリンの
平均濃度は12.5 mg g-1と0.4 mg g-1である(Yuan and Chen 2009b)。本研究の結果を用いて考える
と、マンギウムアカシアの落葉中の濃度は窒素とリンでそれぞれ、17.4 mg g-1、0.16 mg g-1であ
り、落葉量が等しければ平均的な森林と比べると窒素で140%、リンで40%の供給量となる。
閉鎖された森林では落葉量は大きく異ならず、本試験でも3樹種の落葉量は年 6.0–9.0 Mg ha-1
の範囲にあったため、仮に平均的な落葉量の値をマンギウムアカシアの値(年 7.1 Mg ha-1)で
一定であるとする。造林面積から考えると平均的な森林からマンギウムアカシアへの一斉林化
によって、世界中で見ると窒素は年間で73 Gg N多く、リンは年間で3.6 Gg P少なく供給される
こととなる。この値は非常に概略的な推定であるが、全体の48%を構成するリターフォールの
他の画分の存在や、アカシア全体の造林面積が890万haであり統計値に樹種名まで記録されてい
なかったこと、および他のアカシアで類似的な性質を持つ可能性を考慮に入れると、窒素とリ
ンの供給量の差は実際にもっと大きい可能性がある。窒素は窒素固定による系外からの移入量
の増大、リンは系内での分配の変化という違いがあるが、堆積有機物の質を広域で変えてしま
うことによりさまざまな物質循環プロセスへの影響が懸念される。
まず考えられるのは、落葉の分解速度の低下である。実験系において、リター中のN:P比が高
いと分解速度が遅くなることが証明されている(Güsewell and Gessner 2009)。次に、堆積有機
物と表層土壌での養分バランスを大きく改変しうるため下層植生や土壌微生物、土壌動物の種
構成(多様性)への影響が懸念される。すなわち、マンギウムアカシアの堆積有機物中におい
て、生物群集構成が、窒素が多くリンが少ない環境下に適した種構成に変わっており、さらに
表層への養分供給が窒素偏重になる可能性がある。熱帯域の流出水中の窒素流出量は相当な量
があると予想されるが、現時点では知見がほとんど得られていない。このような大規模な生態
系への影響は、様々な生態系サービスの量と質の低下を招きかねない。これまで言われている
単一林の問題点にさらなる問題点を加えることになるが、大面積の一斉林には様々な欠点が存
在するのは確かである。
これを補うためには、間伐などによって積極的に他種の下層植生の導入を促進して堆積有機
物中の化学量比を調節する改善策が考えられる。農業分野においては、無機態窒素を多量に吸
収することによってN2Oを生成するプロセスである硝化を抑制する効果がある牧草(Brachiaria
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
112
humidicola)が存在することがわかっている(Subbarao et al. 2009)。アカシアのリターから過
剰に供給される窒素を、吸収によって調節するような機能を持つ林床被覆を促進しN:P比を調節
することによって、極端な元素濃度と化学量比による負の効果を軽減できる可能性がある。
7.5 今後の課題 本論文において、マンギウムアカシアの生理的特質における新たな知見が得られたが、それ
によって様々な新しい疑問が生じたため、今後の研究の発展のための方向性を記したい。
本論文で示されたような熱帯樹木による効率的なリン利用は、小島(2004)の研究例を除い
てほとんど検討されていない。他種、他属でもこのようなリンの選択的な再吸収が起こりうる
のかという点を調べることにより、遺伝的な性質に対する理解が深まる。最近の研究では、リ
ン制限の極めて大きいオーストラリアの乾燥地帯に生えるアカシア4種が、マンギウムアカシ
ア同様リンの選択的な再吸収によって、生葉と比べ落葉のN:P比が極端に上昇する例が示されて
いる(He et al. 2011)。また、湿潤熱帯林ではJamaludheen and Kumar (1999)によって、アウ
リカリフォルミスアカシアやファルカタの落葉のN:P比が高いことが示唆された。特に、アウリ
カリフォルミスアカシアはマンギウムアカシアと極めて近縁の種であり、同じような養分利用
特性を示すことが予想されるが、データが少なく本研究では結論が得られなかった。耐乾性や
耐凍性といったストレス耐性に関する遺伝子研究が進んでいるが(たとえばTaji et al. 2002)、
低リン耐性、特にこのような特異的な養分移動をもたらす遺伝子についても今後の研究が期待
される。低リン耐性に関する知見を発展することによって、将来、砂質で貧栄養な場所の森林
再生に大きく貢献できるかもしれない。また、マンギウムアカシアやアウリカリフォルミスア
カシアは葉面積あたりの重量の大きい偽葉を展開し、葉面積あたりの窒素量も大きい
(Novriyanti et al. 2010)。葉の形態的な特徴が、窒素とリンの利用の違いに関与している可能
性が考えられる。偽葉内の窒素が構造系に利用される割合は不明だが、アウリカリフォルミス
アカシアの偽葉の窒素濃度と最大光合成速度との間には、通常の葉をもつ植物(Wright et al.
2004)同様に正の相関が有るため(Emas and Cole 1997)、大半が光合成等の代謝系で利用され
ていると予想される。
窒素に関しては、大量の窒素をあまり再吸収せずに落葉で落とす一方、根圏では窒素を要求
していることが明らかになった。熱帯地域は、温帯に比べ窒素の可給性が高いことがわかって
いるが、窒素固定を行う必要がないと思われる環境下で、窒素固定を行なうマメ科樹種が中南
米や熱帯アフリカで優占種を構成しているのは長年にわたる疑問であり、現在でもさまざまな
第7章 総合考察
113
説が提唱されている(McKey 1994; Vitousek et al. 2002; Houlton et al. 2008; Hedin et al. 2009)。
Hedin et al. (2009)は、自然生態系では植物が窒素固定を土壌からの窒素可給性に応じて調節
することによって、長期間の過剰な窒素移入と流出を防いでいる可能性をモデルによって示し
ている。根粒形成のオートレギュレーション機構は、本研究の結果で示したように養分の条件
に応じて複雑な反応を示す。本研究で示された、窒素条件が良い中でさらに窒素を獲得しよう
としていたという結果がオートレギュレーション機構が機能した上で起こっているのか、それ
が、人工林、特に早生樹人工林に特有のものであるのかという点について興味が注がれる。
リンの循環に関して、マンギウムアカシアでは効率的に再吸収がなされていることが明らか
となり、地上部でのリン蓄積量自体が同じバイオマスで比べると他樹種より少ないこと示され
た。この傾向は、土壌条件を加味しても樹種固有の特性であることがわかった。マンギウムア
カシアの堆積有機物では、平均的な熱帯林と比較して窒素過多となり、リン量が少ない状態に
なっていると考えられる。そのため、マンギウムアカシアの林床下へのリン添加の影響によっ
て、微生物代謝にも大きく影響する可能性がある。Mori et al. (2010)は実験室内で培養したマ
ンギウムアカシア林の土壌にリン添加することによってN2O放出量を増大させることを示した
が、実際の林地においてはリンの添加が可給態窒素の吸収をも促し、逆にN2O放出量を低下さ
せる事例を示している(森ら 2010)。また、マンギウムアカシアの堆積有機物に無機態リンを
添加して分解過程を調べた研究では分解速度に有意な変化はなかったが(Baggie et al. 2004)、
森ら (2010)の例のように様々な生物活動による要因によって影響を受けている可能性があ
る。本研究では、土壌中の含有量と、リターフォールによる循環量との比較が出来ず、物質収
支の観点からマンギウムリター中のリン量が少ないことの評価が出来なかった。土壌中の可給
態リンを含め湿潤熱帯の窒素固定樹木下のリン動態は、明らかになっていないことが多いが、
湿潤熱帯林の持続的生産を維持するための物質循環プロセスの中核を担っている可能性が高い
と思われる。
本研究において、複合的な共生関係が宿主の特異的な養分利用に影響を及ぼす可能性が示唆
された。実際に、宿主と共生微生物で養分要求が異なることが、効率的なリンの再吸収や高い
酸性フォスファターゼ生産と関係しているのかどうかは、今後、植物生理的な手法で実証する
必要がある。その際に、効率的な養分の再吸収を行うコストと、共生微生物に投資するコスト
との関係を考慮する必要があるだろう。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
114
要旨 湿潤熱帯アジアにおいてマメ科の外来早生樹であるマンギウムアカシアは、造林樹種と
して一定の成功を収めたが、その一斉造林についてはさまざまな問題点が指摘されている。
現在では、有機物供給量が大きく貧栄養土壌でも生育するといった生理的特性から、荒廃
地土壌の回復や複層林やアグロフォレストリーでの保護樹としての利用が期待されている。
従来、マメ科早生樹はリンが成長の制限要因になっていると考えられていたが、マンギウム
アカシアの貧栄養土壌での成長やリン欠乏耐性等の結果との関係を整理する必要がある。
今後、さまざまな新しい熱帯林の利用管理のあり方が問われる中、マンギウムアカシアの
養分循環特性の理解を深めることにより、早生樹一斉林の持つ問題の軽減手法や、この樹
種が持つ機能をより生かす施業方法の提案に繋がることが期待できる。
本研究は、荒廃地回復の有効性が期待されるマンギウムアカシア人工林を対象にして、荒
廃地における土壌回復機能を養分利用およびリター供給特性の面から明らかにすることを
目的とした。メタ解析からマンギウムアカシアの持つ窒素とリン利用効率の樹種特性を明
らかにし、それらの特性と土壌-植物間の物質移動との関係、およびマンギウムアカシアに
よる窒素とリンの要求と体内での再転流について検討した。
第1章では、マンギウムアカシアの持つ諸特性と土壌への影響に関する既往の研究を精
査し、アカシア造林によって土壌の窒素濃度を高める傾向があることと、苗木試験でリン
の利用効率が高いことを提示した。また、熱帯土壌の窒素およびリン可給性と、一般的な
熱帯植物の養分利用のそれぞれの特質を整理した。その上で、(1)マンギウムアカシア
は窒素固定による多量の窒素の取り込みとリンの効率的利用が示唆され、リンが従来考え
られてきたような制限要因であるかどうかの検証の必要性、(2)アカシア造林に伴う荒
廃地の土壌回復効果と、窒素以外の内部循環に対する理解を深めるため、リターフォール
と表層土壌との関係を明らかにすることの重要性、(3)熱帯人工林における養分要求へ
の理解を深めることの重要性、(4)植物の養分利用の違いを表すためのツールとしてN:P
比の有効性への期待、を指摘した。
第2章では、メタデータの解析から熱帯造林木の地上部バイオマス当りの窒素およびリ
ン利用効率を比較し、マンギウムアカシアの樹種特性と土壌特性の2要因での比較を行っ
た。その結果、マンギウムアカシアは非窒素固定広葉樹と比べ、窒素利用効率が低く、リ
ン利用効率が高いことがわかった。土壌中の全窒素量は窒素利用効率に影響しなかった
が、土壌中の可給態リン量が大きくなるのにともなってリン利用効率は低くなる傾向が見
られた。しかし可給態リン量の多少に関わらず、マンギウムアカシアは非窒素固定広葉樹よ
りリン利用効率が高かった。したがって、土壌の影響を考慮してもマンギウムアカシアは樹
要旨
115
種特性としてリン利用効率が高いと考えられた。マンギウムアカシアのリン利用効率が高い
のは葉以外の器官(材や枝)のリン蓄積量が少ないことが寄与していた。
第3章では、3つの試験地でマンギウムアカシアを含む7種の湿潤熱帯造林木の土壌
(及び伐採地土壌)の化学性と、堆積有機物中の養分含有量との関係について述べた。堆
積有機物中の養分蓄積は樹種の違いによって影響され、土壌中の有機炭素、全窒素、カリ
ウム、pH(H2O)といった項目は樹種の影響をより受けやすく、15cmの深さまで影響してい
たことがわかった。マンギウムアカシア下の土壌では有機炭素、全窒素、カリウムの濃度
が高く、堆積有機物中の含有量も高かった。窒素については、すべての林分の比較で堆積
有機物中の蓄積が表層土壌における濃度と有意に相関を持っていることが明らかとなっ
た。このことから、マンギウムアカシアが有機物の供給によって、土壌中の窒素濃度を高め
ていることが示唆された。
第4章では、近接するマンギウムアカシア林と他2林分のリターフォールおよびリター
フォール中の養分量と、直下の土壌の性質との関係について述べた。3年間のリター
フォール測定の結果、21年生のマンギウムアカシア林と35年生のマホガニー林ではリター
フォールの乾重が熱帯林の中でも大きく、マンギウムアカシア林ではさらに窒素濃度も高
かったため、窒素供給量が年 200 kg N ha-1を超えることがわかった。リターフォールから
の多量の窒素供給が、堆積有機物を介して表層土壌の窒素濃度を高めていたと考えられ
た。しかし、リン供給量は他2樹種と比較して極めて少なかった。またマホガニーではマン
ガン供給量が極めて少なかった。それらを除けば、熱帯人工林は3林分ともに近隣の熱帯
一次林と比較しても同等かそれ以上の養分供給が有ることが示された。これらのことか
ら、湿潤熱帯人工林のリターフォールによる養分供給は一次林と遜色がなく、マンギウム
アカシア林は窒素を供給する能力が特に高いことが示された。しかし、単一樹種のリター
フォールには特定元素が極端に少ない場合がある、という欠点が示された。また、窒素以
外の元素ではリターフォール中の供給量と表層土壌濃度との関係がみられなかった。
第5章では、リターフォール測定を行った3林分における、イングロースコア法を用いた
窒素とリン添加に対する細根成長について述べた。ここでは、養分添加したイングロース
コア内への細根の侵入を、樹木の養分要求と解釈した。マンギウムアカシア林では、窒素
とリン両方の添加に対し細根成長の促進を示したが、他の2樹種では細根成長の促進が認
められなかった。また、マンギウムアカシアは窒素添加区のみで根粒数を増加させ、リン
添加に対する反応は認められなかった。第3章の結果から3樹種の土壌の全窒素とリン条
件は次表層でほぼ同様であり、第4章の結果からマンギウムアカシア林ではリターフォー
ル及び堆積有機物から供給される可給態窒素量が豊富であることが示唆された。これらの
ことから、根圏での窒素とリン添加に対して3樹種中マンギウムアカシアのみが要求を示
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
116
したことにより、リンに対する要求は通説の通りであったが、窒素については土壌中の窒
素条件が良いにも関わらず、マンギウムアカシアはさらなる窒素を要求していたことが示さ
れた。
第6章では、リターフォールを測定した3林分の生葉とリターフォール中の窒素および
リン濃度との関係について、N:P比を用いた解析結果について述べた。マンギウムアカシア
の落葉中のリン濃度は極めて低く、生殖器官のリン濃度はその10倍であった。マンギウム
アカシアでは、N:P比が生葉(29)と比べて落葉(81)で2倍以上大きかったが、他の2
樹種は等しいか若干生葉の方が大きかった。全球的な熱帯造林地のリターフォールデータ
を検証し、窒素固定樹種が系統的にN:P比が大きいことが確認された。マンギウムアカシア
の値は窒素固定樹種グループの中でもN:P比が大きく、リン欠乏耐性との関係が示唆され
た。以上より、マンギウムアカシアは落葉前にリンのみを選択的に再吸収し、生殖器官に
分配していることが示された。そして、第5章の結果と併せると、葉に含まれる高濃度の窒
素をあまり再吸収せず落葉させるにも関わらず、さらに細根では窒素を要求し多大な量を循
環しているのと対照的に、リンについては選択的に再吸収を行うことで極めて効率的に利
用していることが明らかとなった。
第7章では、第2章から第6章の結果を総括した。本研究の結果は、従来考えられてい
たマメ科早生樹ではリンが制限要因であるという考えを肯定するものであった。ただし、
マンギウムアカシアは実際の林地においてリン再転流を極めて効率的に行っていることが明
らかになり、リン利用の調節機構の発達によって荒廃地での生存を可能にしているものと
思われた。さらに、窒素固定によって多量の窒素を確保しうる条件にもかかわらず土壌中
の窒素に対して要求を示したことについては、窒素濃度の高い葉を短期間に回転させる特
徴と併せ、光合成能が高いこととの関係が示唆された。
本研究で得られた知見から、マンギウムアカシアはリターフォールからの有機物と窒素
供給能力によって表層土壌の窒素濃度を高める機能があり、リンの調節機能が卓越してい
ることから荒廃地における成長と土壌回復機能の有効性が示された。マンギウムアカシア
は、混交林やアグロフォレストリーにおける肥料木として、リターによる窒素供給量が大き
い点や、樹木からのリン吸収の総量が少ない点において、優れた機能を持っていることが確
認された。一方、一斉林については、全世界で200万ha以上の面積にわたりリターフォール
による窒素とリン供給のバランスを改変し生態系に影響を及ぼす可能性が示唆された。そ
れに対し、窒素吸収の大きい草本を同時に植えることで過剰な窒素を調節するという改善
策を提示した。複数の機能を持つ樹木を組み合わせることによって、マンギウムアカシアの
リターの持つ欠点である特定養分欠乏を解消し、マンギウムアカシアを多目的樹種として
活用することが望ましいと考えられた。
要旨
117
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
118
謝辞 本研究は、主に私が国際農林水産業研究センター(JIRCAS)から、国際プロジェクト「熱帯
林再生のためのアグロフォレストリー技術の開発」実行のため、マレーシアサバ州サンダカン
に有るサバ森林研究センターに長期派遣されている間の研究成果をまとめたものである。この
間、多くの人たちの多大なるご協力、ご支援、ご指導を頂き、本論文にまとめあげた研究を遂
行する事が出来た。私を支えてくださった多くの方々に心から感謝を申し上げる。
本研究をまとめるにあたり、東京大学大学院農学生命科学研究科の丹下健教授から、暖かい
ご指導とご助言、励ましを賜った。同研究科の松下範久准教授、大手信人准教授、益守眞也講
師、 同アジア生物資源環境研究センターの小島克己教授、 則定真利子助教からも貴重なご助言
をいただいた。
サバ森林研究所のカウンターパートであるJupiri Titinさん、Lee Ying Fah所長、Noreen Majalap-
Leeさん、Jaffirin Laponganさん、Nasrah Yusopさん、Lenim Jamalungさんをはじめとする多くの
スタッフの方々から、研究とサンダカンでの生活の双方でのご支援、ご協力をいただいた。
Jalimah Bidinさん、Liza Minsuanさん、Petronella AnthonyさんにはJIRCASプロジェクトの試料調
整やデータ入力に大きな貢献をしていただいた。
共同研究者である、元森林総合研究所の加茂皓一さん、森林総合研究所の稲垣善之さん、山
田毅さん、宮本和樹さんには、研究計画から本論文の主要部分を構成する原著論文作成に至る
まで、多くのご指導ご助言ご協力をいただいた。当時の立地環境研究領域長であられた太田誠
一京都大学教授からは、海外で長期研究を行うきっかけを作って頂き、湿潤熱帯土壌の見方と
海外生活の心得をご教授いただいた。同時期にJIRCASプロジェクトに参加された横田明彦さ
ん、太田敬之さん、横田康裕さん、宮本基杖さん、安部久さん、高橋和規さん、野口正二さん
からは暖かい励ましとご支援、熱帯林問題の様々な視点からの切り口をご教唆いただいた。
JIRCASの林業部長であられた、鈴木皓史さん、中島清さん、現九州支所長中村松三さん、当時
の海外協力研究科長であられた小林繁男京都大学教授からは様々な研究上のご配慮とご支援を
いただいた。
養分動態研究室長三浦覚さん、九州支所森林生態系グループ長石塚成宏さんには本論文に専
念する環境を与えて頂くとともに、草稿の作成にあたり有益なご助言を頂いた。養分動態研究
室長であられた、高橋正通さん、金子真司さんには本研究をまとめるにあたってのさまざまな
ご助言、ご配慮を頂いた。養分動態研究室に在席した平井敬三さん、阪田匡司さん、野口享太
郎さん、森下智陽さん、長倉淳子さん、橋本徹さん、古澤仁美さん、鵜川信さん、佐野哲也さ
ん、南光一樹さん、藤井一至さん、九州支所森林生態系グループの重永英年さん、釣田竜也さ
謝辞
119
ん、野宮治人さん、安部哲人さん、金谷整一さん、荒木眞岳さん、香山雅純さん、山川博美さ
んからは様々な形でご協力を頂き、論文執筆を支えて頂いた。
熱帯造林木のリターフォール量およびバイオマス量に関するメタデータを収集するにあた
り、国際連携推進拠点の藤間剛さんに多くの便宜をはかって頂いた。リターフォールのメタ
データを作成するにあたり、インド国ケララ州森林研究所のK. V. Sankaran博士から過去の文献
中の生数値データを提供して頂いた。スウェーデン農科大学のNils Nykvist名誉教授からは論文
中のデータの詳細な情報を教えて頂いた。また同大学のUlrik Ilstedt准教授からMaria Björckさん
の修士論文情報を頂いた。
私が最初に研究生活をはじめることになった森林総合研究所九州支所旧土壌研究室で、研究
者としての基礎になった技術や知識を教えて頂いた酒井正治さんをはじめ、大貫靖浩さん、小
林政広さん、伊藤江利子さんには研究生活上のご助言や励ましをいただいた。
最後に、大学での教育の機会を与えて頂いた両親、私のサンダカンでの生活とその後の研究
生活を支えてくれている、妻聡美と、南実、陽紀、(故)実祈、和輝の4人の子供たちに心か
ら感謝する。
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
120
引用文献
Abdu A, Tanaka S, Jusop S, Majid N, Ibrahim Z, Sakurai K (2008) Rehabilitation of degraded tropical
rainforest in Peninsular Malaysia with a multi-storied plantation technique of indigenous dipterocarp
species. Japanese Journal of Forerst Environment 50:141–152.
Aerts R, Chapin III FS (1999) The mineral nutrition of wild plants revisited: a re-evaluation of processes
and patterns. Advances in Ecological Research 30:1–67.
Aggangan NS, Moon HK, Han SH (2010) Growth response of Acacia mangium Willd. seedlings to
arbuscular mycorrhizal fungi and four isolates of the ectomycorrhizal fungus Pisolithus tinctorius
(Pers.) Coker and Couch. New Forests 39:215–230.
Arai S, Ishizuka S, Ohta S, Ansori S, Tokuchi N, Tanaka N, Hardjono A (2008) Potential N2O emissions
from leguminous tree plantation soils in the humid tropics. Global Biogeochemical Cycles
22:GB2028.
Attiwill PM, Adams MA (1993) Nutrient cycling in forests. New Phytologist 124:561–582.
Baggie I, Rowell DL, Robinson JS, Warren GP (2005) Decomposition and phosphorus release from
organic residues as affected by residue quality and added inorganic phosphorus. Agroforestry
Systems 63:125–131.
Berg B, Johansson M, Meentemeyer V (2000) Litter decomposition and organic matter turnover in
northern forest soils. Forest Ecology and Management 133:13–22.
Bernhard-Reversat F (1993) Dynamics of litter and organic matter at the soil-litter interface in fast-
growing tree plantations on sandy ferralitic soils (Congo). Acta Oecologica 14:179–195.
Bernhard-Reversat F (1996) Nitrogen cycling in tree plantations grown on a poor sandy savanna soil in
Congo. Applied Soil Ecology 4:161–172.
Binkley D, Dunkin KA, DeBell D, Ryan MG (1992) Production and nutrient cycling in mixed
plantations. Forest Science 38:393–408.
Binkley D, Giardina C, Bashkin MA (2000) Soil phosphorus pools and supply under the influence of
Eucalyptus saligna and nitrogen-fixing Albizia falcataria. Forest Ecology and Management
128:241–247.
Binkley D, Laclau J-P, Stape JL, Ryan MG (2010) Applying ecological insights to increase productivity
in tropical plantations. Forest Ecology and Management 259:1681–1683.
Binkley D, Oʼconnell AM, Sankaran KV (1997) Stand development and productivity. In: Nambiar EKS,
Brown A (eds) Management of Soil, Nutrients and Water in Tropical Plantation Forests. ACIAR,
Canberra, pp 419–442.
引用文献
121
Binkley D, Ryan MG (1998) Net primary production and nutrient cycling in replicated stands. Forest
Ecology and Management 112:79–85.
Björck M (2002) Analysis of foliar nutrients in predicting productivity of Acacia mangium forest
plantations in Sabah, Malaysia. MSc Thesis. Department of Forest Ecology, Swedish University of
Agricultural Sciences.
Bouillet J-P, Laclau J-P, Gonçalves JLDM, Moreira MZ, Trivelin PCO, Jourdan C, Galiana A (2008a)
Mixed-species plantations of Acacia mangium and Eucalyptus grandis in Brazil. In: Nambiar EKS
(ed) Site Management and Productivity in Tropical Plantation Forests: Proceedings of Workshops in
Piracicaba (Brazil) 22-26 November 2004 and Bogor (Indonesia) 6-9 November 2006. CIFOR,
Jakarta, pp 157–172.
Bouillet J-P, Laclau J-P, Gonçalves JLDM, Moreira MZ, Trivelin PCO, Jourdan C, Silva EV, Piccolo MC,
Tsai SM, Galiana A (2008b) Mixed-species plantations of Acacia mangium and Eucalyptus grandis
in Brazil 2: nitrogen accumulation in the stands and biological N2 fixation. Forest Ecology and
Management 255:3918–3930.
Box G, Cox D (1964) An analysis of transformations. Journal of the Royal Statistical Society. Series B
(Methodological) 26:211–252.
Brasell HM, Unwin GL, Stocker GC (1980) The quantity, temporal distribution and mineral-element
content of litterfall in two forest types at two sites in tropical Australia. Journal of Ecology 68:123–
139.
Bubb KA, Xu ZH, Simpson JA, Saffigna PG (1998) Some nutrient dynamics associated with litterfall and
litter decomposition in hoop pine plantations of southeast Queensland, Australia. Forest Ecology and
Management 110:343–352.
CAB International (2005) The forestry compendium (CD-ROM). Commonwealth Agricultural Bureau
International, Wallingford.
Chave J, Navarrete D, Almeida S, Álvarez E, Aragão LEOC, Bonal D, Châtelet P, Silva-Espejo JE, Goret
J-Y, von Hildebrand P, Jiménez E, Patiño S, Peñuela MC, Phillips OL, Stevenson P, Malhi Y (2010)
Regional and seasonal patterns of litterfall in tropical South America. Biogeosciences 7:43–55.
Chapin FS III, Matson PA, Mooney HA (2002) Principles of Terrestrial Ecosystem Ecology. Springer,
New York.
Cossalter C, Pye-Smith C (2003) Fast-Wood Forestry –Myths and Realities. CIFOR, Jakarta. 54 pp.
Available at http://www.cifor.org/nc/online-library/browse/view-publication/publication/1257.html.
Accessed 16 Apr 2012.
Cuevas E, Lugo AE (1998) Dynamics of organic matter and nutrient return from litterfall in stands of ten
tropical tree plantation species. Forest Ecology and Management 112:263–279.
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
122
Cuevas E, Medina E (1988) Nutrient dynamics within amazonian forests II: fine root growth, nutrient
availability and leaf litter decomposition. Oecologia 76:222–235.
Davidson EA, Chorover J, Dail DB (2003) A mechanism of abiotic immobilization of nitrate in forest
ecosystems: the ferrous wheel hypothesis. Global Change Biology 9:228–236.
Dent DH, Bagchi R, Robinson D, Majalap-Lee N, Burslem DFRP (2006) Nutrient fluxes via litterfall and
leaf litter decomposition vary across a gradient of soil nutrient supply in a lowland tropical rain
forest. Plant and Soil 288:197–215.
Dünisch O, Montóia VR, Bauch J (2003) Dendroecological investigations Swietenia macrophylla King
and Cedrela odorata L. (Meliaceae) in the central Amazon. Trees - Structure and Function 17:244–
250.
Eamus D, Cole S (1997) Diurnal and seasonal comparisons of assimilation, phyllode conductance and
water potential of three Acacia and one Eucalyptus species in the wet–dry tropics of Australia.
Australian Journal of Botany 45:275–290.
* Ebermayer E (1876) Die gesammte Lehre der Waldstreu mit Rücksicht auf die chemische Statik des
Waldbaues: Unter Zugrundlegung der in den Königl. Staatsforsten Bayerns angestellten
Untersuchungen. Springer. (Cited from Attiwill and Adams (1993))
Falster D, Warton D, Wright IJ (2012) SMATR: standardized major axis tests and routines. Version 2.0.
http://bio.mq.edu.au/ecology/SMATR/. Accessed 16 Apr 2012.
FAO (1974) FAO–Unesco Soil map of the world. UNESCO, Paris.
FAO (2006) Global planted forests thematic study: results and analysis. Del Lungo A, Ball J, Carle J
(eds.) Planted forests and trees working paper 38 FAO, Rome http://www.fao.org/docrep/012/
j9429e/j9429e00.pdf. Accessed 16 Apr 2012.
FAO (2010) Global forest resource assessment 2010: key findings. FAO, Rome http://foris.fao.org/
static/data/fra2010/KeyFindings-en.pdf. Accessed 16 Apr 2012.
Fife D, Nambiar EKS, Saur E (2008) Retranslocation of foliar nutrients in evergreen tree species
planted in a Mediterranean environment. Tree Physiology 28:187–196.
Finotti R, Freitas SR, Cerqueira R, Vieira MV (2003) A method to determine the minimum number of
litter traps in litterfall studies. Biotropica 35:419–421.
Fisher RF (1995) Amelioration of degraded rain forest soils by plantations of native trees. Soil
Science Society of America Journal 59:544–549.
Fisher RF, Binkley D (2000) Ecology and Management of Forest Soils. Wiley, New York.
Fölster H, Khanna P (1997) Dynamics of nutrient supply in plantation soils. In: Nambiar EKS,
Brown A (eds) Management of Soil, Nutrients and Water in Tropical Plantation Forests. ACIAR,
Canberra, pp 339–378.
Forrester DI, Bauhus J, Khanna PK (2004) Growth dynamics in a mixed-species plantation of
Eucalyptus globulus and Acacia mearnsii. Forest Ecology and Management 193:81–95.
引用文献
123
Forrester DI, Bauhus J, Cowie AL (2005) Nutrient cycling in a mixed-species plantation of
Eucalyptus globulus and Acacia mearnsii. Canadian Journal of Forest Research 35:2942–2950.
Forrester DI, Bauhus J, Cowie AL, Vanclay J (2006) Mixed-species plantations of Eucalyptus with
nitrogen-fixing trees: a review. Forest Ecology and Management 233:211–230.
Fujii K, Hayakawa C, Hees PAW, Funakawa S, Kosaki T (2010) Biodegradation of low molecular
weight organic compounds and their contribution to heterotrophic soil respiration in three
Japanese forest soils. Plant and Soil 334:475–489.
Fujimaki R, McGonigle T, Takeda H (2005) Soil micro-habitat effects on fine roots of
Chamaecyparis obtusa Endl.: a field experiment using root ingrowth cores. Plant and Soil
266:325–332.
Fyllas NM, Patiño S, Baker TR, Bielefeld Nardoto G, Martinelli LA, Quesada CA, Paiva R, Schwarz
M, Horna V, Mercado LM, Santos A, Arroyo L, Jiménez EM, Luizão FJ, Neill DA, Silva N,
Prieto A, Rudas A, Silviera M, Vieira ICG, Lopez-Gonzalez G, Malhi Y, Phillips OL, Lloyd J
(2009) Basin-wide variations in foliar properties of Amazonian forest: phylogeny, soils and
climate. Biogeosciences 6:2677–2708.
Galiana A, Balle P, NʼGuessan Kanga A, Domenach A (2002) Nitrogen fixation estimated by the 15N
natural abundance method in Acacia mangium Willd. inoculated with Bradyrhizobium sp. and
grown in silvicultural conditions. Soil Biology and Biochemistry 34:251–262.
Garay I, Pellens R, Kindel A, Barros E, Franco AA (2004) Evaluation of soil conditions in fast-growing
plantations of Eucalyptus grandis and Acacia mangium in Brazil: a contribution to the study of
sustainable land use. Applied Soil Ecology 27:177–187.
Gentili F, Huss-Danell K (2003) Local and systemic effects of phosphorus and nitrogen on nodulation and
nodule function in Alnus incana. Journal of Experimental Botany 54:2757–2767.
Graefe S, Hertel D, Leuschner C (2008) Estimating fine root turnover in tropical forests along an
elevational transect using minirhizotrons. Biotropica 40:536–542.
Graefe S, Hertel D, Leuschner C (2010) N, P and K limitation of fine root growth along an elevation
transect in tropical mountain forests. Acta Oecologica 36:537–542.
Gress S, Nichols T, Northcraft C, Peterjohn W (2007) Nutrient limitation in soils exhibiting differing
nitrogen availabilities: what lies beyond nitrogen saturation? Ecology 88:119–130.
Groome J (1991) Acacias in South East Asia—prospects for economic returns from commercial
plantation. In: Sheikh A, Paridah M, Lim M, Nor Aini A, Ahmad S, Doraisingam M (eds) Recent
developments in tree plantations of humid/subhumid tropics of Asia. Universiti Pertanian Malaysia,
Serdang. pp 601–611.
Güsewell S (2004) N : P ratios in terrestrial plants: variation and functional significance. New Phytologist
164:243–266.
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
124
Güsewell S, Gessner MO (2009) N : P ratios influence litter decomposition and colonization by fungi and
bacteria in microcosms. Functional Ecology 23:211–219.
Hardiyanto EB, Wicaksono A (2008) Inter-rotation site management, stand growth and soil properties in
Acacia mangium plantations in South Sumatra, Indonesia. In: Nambiar EKS (ed) Site Management
and Productivity in Tropical Plantation Forests: Proceedings of Workshops in Piracicaba (Brazil)
22-26 November 2004 and Bogor (Indonesia) 6-9 November 2006. CIFOR, Jakarta, pp 107–122.
Harwood C (2011) Strengthening the tropical Acacia plantation value chain: the role of research. Journal
of Tropical Forest Science 23:1–3.
He H, Bleby TM, Veneklaas EJ, Lambers H (2011) Dinitrogen-fixing Acacia species from phosphorus-
impoverished soils resorb leaf phosphorus efficiently. Plant, Cell & Environment 34:2060–2070.
He H, Bleby TM, Veneklaas EJ, Lambers H (in press) Arid-zone Acacia species can access poorly soluble
iron phosphate but show limited growth response. Plant and Soil.
Hedin LO (2004) Global organization of terrestrial plant-nutrient interactions. Proceedings of the
National Academy of Sciences of the United States of America 101:10849–10850.
Hedin LO, Brookshire ENJ, Menge DNL, Barron AR (2009) The nitrogen paradox in tropical forest
ecosystems. Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics 40:613–635.
Heriansyah I, Miyakuni K, Kato T, Kiyono Y, Kanazawa Y (2007) Growth characteristics and biomass
accumulations of Acacia mangium under different management practices in Indonesia. Journal of
Tropical Forest Science 19:226–235.
Hikosaka K, Osone Y (2009) A paradox of leaf-trait convergence: why is leaf nitrogen concentration
higher in species with higher photosynthetic capacity? Journal of Plant Research 122:245–251.
Hirobe M, Sabang J, Bhatta BK, Takeda H (2004) Leaf-litter decomposition of 15 tree species in a
lowland tropical rain forest in Sarawak: dynamics of carbon, nutrients, and organic constituents.
Journal of Forest Research 9:347–354.
Hirose T (1975) Relations between turnover rate, resource utility and structure of some plant populations:
a study in the matter budgets. Journal of the Faculty of Science, University of Tokyo 3:355–407.
Houlton BZ, Wang Y-P, Vitousek PM, Field CB (2008) A unifying framework for dinitrogen fixation in
the terrestrial biosphere. Nature 454:327–330.
Hutchison CS (2005) Geology of north-west Borneo: Sarawak, Brunei and Sabah. Elsevier, Amsterdam.
Hättenschwiler S, Aeschlimann B, Coûteaux M-M, Roy J, Bonal D (2008) High variation in foliage and
leaf litter chemistry among 45 tree species of a neotropical rainforest community. New Phytologist
179:165–175.
Imai N, Kitayama K, Titin J (2010) Distribution of phosphorus in an above-to-below-ground profile in a
Bornean tropical rain forest. Journal of Tropical Ecology 26:627–636.
引用文献
125
Inagaki M, Kamo K, Yamada T, Titin J (2008) Soil water conditions according to landscape position and
aboveground vegetation in an Acacia mangium plantation in Sabah, Malaysia. Japan Agricultural
Research Quarterly 42:69–76.
Inagaki Y, Miura S, Kohzu A (2004) Effects of forest type and stand age on litterfall quality and soil N
dynamics in Shikoku district, southern Japan. Forest Ecology and Management 202:107–117.
Isaac SR, Nair MA (2006) Litter dynamics of six multipurpose trees in a homegarden in Southern Kerala,
India. Agroforestry Systems 67:203–213.
IUSS Working Group WRB (2007) World Reference Base for Soil Resources 2006, first update 2007.
World Soil Resources Reports No. 103, FAO, Rome.
Jamaludheen V, Kumar BM (1999) Litter of multipurpose trees in Kerala, India: variations in the amount,
quality, decay rates and release of nutrients. Forest Ecology and Management 115:1–11.
Jang YH, Lee DK, Lee YK, Woo SY, Abraham ERG (2004) Effects of Acacia auriculiformis and Acacia
mangium plantation on soil properties of the forest area degraded by forest fire in Mt. Makiling,
Philippines. Journal of Korean Forestry Society 93:315–323.
JIRCAS (2007) Agroforestry Approach to the Rehabilitation of Tropical Lands by Using Nurse Trees.
JIRCAS, Tsukuba.
Jobbágy EG, Jackson RB (2004) The uplift of soil nutrients by plants: biogeochemical consequences
across scales. Ecology 85:2380–2389.
Jordan CF (1985) Nutrient Cycling in Tropical Ecosystems. Wiley, Chichester.
Jourdan C, Silva EV, Gonçalves JLM, Ranger J, Moreira RM, Laclau JP (2008) Fine root production and
turnover in Brazilian Eucalyptus plantations under contrasting nitrogen fertilization regimes. Forest
Ecology and Management 256:396–404.
Kadir WR, van Cleemput O, Zaharah AR (1998) Nutrient retranslocations during the early growth of two
exotic plantation species. In: Schulte A, Ruhiyat D (eds) Soils of Tropical Forest Ecosystems:
Characteristics, Ecology and Management. Springer, Berlin, pp 132–136.
Kadir WR, Hamzah A, Sundralingam P (1988) Effect of nitrogen and phosphorus on the early growth of
three exotic plantation species in Peninsular Malaysia. Journal of Tropical Forest Science 1:178–
186.
海外産業植林センター(2001)開発途上国人工林環境影響調査事業 平成12年度調査報告書. 海
外産業植林センター、東京
海外産業植林センター(2002)開発途上国人工林環境影響調査事業 平成13年度調査報告書. 海
外産業植林センター、東京
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
126
海外産業植林センター(2003)開発途上国人工林環境影響調査事業 平成14年度事業報告書. 海
外産業植林センター、東京
Kamo K, Jamalung L (2005) Potential carbon storage in Acacia mangium Willd. plantation in a wet
lowland area in tropical Malaysia. In: Tanaka R, Cheng LH (eds) Lignocellulose: materials for the
future from the tropics. Proceedings of 3rd USM-JIRCAS Joint International Symposium 9–11
March 2004, Penang, Malaysia: JIRCAS Working Report 39:7–12.
Kamo K, Vacharangkura T, Tiyanon S, Viriyabuncha C, Nimpila S, Doangsrisen B (2002) Plant species
diversity in tropical planted forests and implication for restoration of forest ecosystems in Sakaerat,
Northeastern Thailand. Japan Agricultural Research Quarterly 36:111–118.
Kamo K, Vacharangkura T, Tiyanon S, Viriyabuncha C, Nimpila S, Duangsrisen B, Thaingam R, Sakai M
(2008) Biomass and dry matter production in planted forests and an adjacent secondary forest in the
grassland area of Sakaerat, northeastern Thailand. Tropics 17:209–224.
Kaspari M, Garcia MN, Harms KE, Santana M, Wright SJ, Yavitt JB (2008) Multiple nutrients limit
litterfall and decomposition in a tropical forest. Ecology Letters 11:35–43.
Kerkhoff AJ, Enquist BJ, Elser JJ, Fagan WF (2005) Plant allometry, stoichiometry and the temperature-
dependence of primary productivity. Global Ecology and Biogeography 14:585–598.
Kerkhoff AJ, Fagan WF, Elser JJ, Enquist BJ (2006) Phylogenetic and growth form variation in the
scaling of nitrogen and phosphorus in the seed plants. American Naturalist 168:E103–122.
Khanna PK (1997) Nutrient cycling under mixed-species tree systems in southeast Asia. Agroforestry
Systems 38:99–120.
Kimaro AA, Timmer VR, Mugasha AG, Chamshama SAO, Kimaro DA (2007) Nutrient use efficiency
and biomass production of tree species for rotational woodlot systems in semi-arid Morogoro,
Tanzania. Agroforestry Systems 71:175–184.
Kitayama K, Aiba SI (2002) Ecosystem structure and productivity of tropical rain forests along altitudinal
gradients with contrasting soil phosphorus pools on Mount Kinabalu, Borneo. Journal of Ecology
90:37–51.
小島克己 (2004) 熱帯樹木の環境ストレス応答. 日本林学会誌 86:61–68.
国立天文台編 (2002) 理科年表. 丸善、東京.
Konda R, Ohta S, Ishizuka S, Heriyanto J, Wicaksono A (2010) Seasonal changes in the spatial structures
of N2O, CO2, and CH4 fluxes from Acacia mangium plantation soils in Indonesia. Soil Biology and
Biochemistry 42:1512–1522.
引用文献
127
Kumar BM, George SJ, Jamaludheen V, Suresh T (1998) Comparison of biomass production, tree
allometry and nutrient use efficiency of multipurpose trees grown in woodlot and silvopastoral
experiments in Kerala, India. Forest Ecology and Management 112:145–163.
Kunhamu TK, Kumar BM, Viswanath S (2009) Does thinning affect litterfall, litter decomposition, and
associated nutrient release in Acacia mangium stands of Kerala in peninsular India? Canadian
Journal of Forest Research 39:792–801.
Laclau J-P, Bouillet J-P, Gonçalves JLDM, Silva EV, Jourdan C, Cunha MCS, Moreira MR, Saint-André
L, Maquère V, Nouvellon Y, Ranger J (2008) Mixed-species plantations of Acacia mangium and
Eucalyptus grandis in Brazil 1: growth dynamics and aboveground net primary production. Forest
Ecology and Management 255:3905–3917.
Lambers H, Chapin FS, Pons TL (2008) Plant Physiological Ecology, Second Edition. Springer, New
York.
Lee YK, Lee DK, Woo SY, Park PS, Jang YH, Abraham ERG (2006) Effect of Acacia plantations on net
photosynthesis, tree species composition, soil enzyme activities, and microclimate on Mt. Makiling.
Photosynthetica 44:299–308.
Lesueur D, Diem H (1997) The requirement of iron for nodulation and growth of Acacia mangium.
Canadian Journal of Forest Research 27:686–692.
Lim M (1988) Studies on Acacia mangium in Kemasul forest, Malaysia I: biomass and productivity.
Journal of Tropical Ecology 4:293–302.
Lisanework N, Michelsen A (1994) Litterfall and nutrient release by decomposition in three plantations
compared with a natural forest in the Ethiopian highland. Forest Ecology and Management 65:149–
164.
Li Z, Peng S, Rae DJ, Zhou G (2001) Litter decomposition and nitrogen mineralization of soils in
subtropical plantation forests of southern China, with special attention to comparisons between
legumes. Plant and Soil 229:105–116.
Liu S, Zhang F, Chen Z, Meng X (2002) Effects of varied fertilization strategy with N, P, K nutrients on
the growth of Acacia mangium saplings. Forest Research 15:163–168. (英文要旨付き中国語)
Lugo AE (1992) Comparison of tropical tree plantations with secondary forests of similar age. Ecological
Monographs 62:1–41.
Lugo AE (1997) The apparent paradox of reestablishing species richness on degraded lands with tree
monocultures. Forest Ecology and Management 99:9–19.
Lugo AE, Cuevas E, Sanchez MJ (1990) Nutrients and mass in litter and top soil of ten tropical tree
plantations. Plant and Soil 125:263–280.
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
128
Macedo MO, Resende AS, Garcia PC, Boddey RM, Jantalia CP, Urquiaga S, Campello EFC, Franco AA
(2008) Changes in soil C and N stocks and nutrient dynamics 13 years after recovery of degraded
land using leguminous nitrogen-fixing trees. Forest Ecology and Management 255:1516–1524.
Majalap N (1999) Effects of Acacia mangium on soils in Sabah. Dissertation, Department of Plant and
Soil Science, The University of Aberdeen.
Majid NM, Mohd. Azani A, Paudyal BK (1998) Foliar sampling guidelines for different aged Acacia
mangium plantations in Peninsular Malaysia. Journal of Tropical Forest Science 10:431–437.
Majid NM, Paudyal BK (1999) Growth response of Acacia mangium plantation to N, P, K fertilisation in
Kemansul and Kerling, Peninsular Malaysia. Journal of Tropical Forest Science 11:356–367.
Martinelli LA, Piccolo MC, Townsend AR, Vitousek PM, Cuevas E, McDowell W, Robertson GP, Santos
OC, Treseder K (1999) Nitrogen stable isotopic composition of leaves and soil: tropical versus
temperate forests. Biogeochemistry 46:45–65.
Martínez-Sánchez JL (2005) Nitrogen and phosphorus resorption in a neotropical rain forest of a nutrient-
rich soil. Revista de Biología Tropical 53:353–359.
Maruyama Y, Toma T, Ishida A, Matsumoto Y, Morikawa Y, Ang L, Yap S, Iwasa M (1997)
Photosynthesis and water use efficiency of 19 tropical trees species. Journal of Tropical Forest
Science 9:434–438.
Matson P, Vitousek P (1990) Ecosystem approach to a global nitrous oxide budget. Bioscience 40:667–
672.
Matzek V, Vitousek PM (2009) N:P stoichiometry and protein:RNA ratios in vascular plants: an
evaluation of the growth-rate hypothesis. Ecology Letters 12:765–771.
McGroddy ME, Daufresne T , Hedin LO (2004) Scaling of C: N: P stoichiometry in forests worldwide:
implications of terrestrial Redfield-type ratios. Ecology 85:2390–2401.
McKey D (1994) Legumes and nitrogen: the evolutionary ecology of a nitrogen-demanding lifestyle. In:
Sprent JI, McKey D (eds) Advances in Legume Systematics, Part 5: the Nitrogen Factor. Royal
Botanic Gardens, Kew, pp 211–228.
Mercado Jr. AR, Noordwijk M, Cadisch G (2011) Positive nitrogen balance of Acacia mangium woodlots
as fallows in the Philippines based on 15N natural abundance data of N2 fixation. Agroforestry
Systems 81:221–233.
Moran EF, Brondizio ES, Tucker JM, da Silva-Forsberg MC, McCracken S, Falesi I (2000) Effects of soil
fertility and land-use on forest succession in Amazonia. Forest Ecology and Management 139:93–
108.
引用文献
129
Mori T, Ohta S, Ishizuka S, Konda R, Wicaksono A, Heriyanto J, Hardjono A (2010) Effects of
phosphorus addition on N2O and NO emissions from soils of an Acacia mangium plantation. Soil
Science and Plant Nutrition 56:782–788.
森大喜・太田誠一・石塚成宏・根田遼太・Wicaksono A,・Heriyanto J,・Hardjono A (2010) リン施
用がAcacia mangium林におけるN2O発生に及ぼす影響. (第121 回日本森林学会大会運営委
員会編 第121回日本森林学会大会学術講演集.日本森林学会,つくば). pp 93.
村松拓・助野真一 (2009) Acacia mangiumの養分欠乏症状. (第120回日本森林学会大会運営委員
会編 第120回日本森林学会大会学術講演集. 日本森林学会, 京都). pp 600.
Nambiar EKS, Ranger J, Tiarks A, Toma T (Eds) (2004) Site Management and Productivity in Tropical
Plantation Forests: Proceedings of Workshops in Congo July 2001 and China February 2003.
CIFOR, Jakarta.
Nambiar EKS (2008) Site Management and Productivity in Tropical Plantation Forests: Proceedings of
Workshops in Piracicaba (Brazil) 22-26 November 2004 and Bogor (Indonesia) 6-9 November
2006. CIFOR, Jakarta.
National Climatic Data Center (2012) Global historical climatology network data base, version 2. http://
www.ncdc.noaa.gov/ghcnm/. Accessed 16 Apr 2012.
Nguyen NT, Mohapatra PK, Fujita K (2006) Elevated CO2 alleviates the effects of low P on the growth of
N2-fixing Acacia auriculiformis and Acacia mangium. Plant and Soil 285:369–379.
Noguchi K, Konôpka B, Satomura T, Kaneko S, Takahashi M (2007) Biomass and production of fine
roots in Japanese forests. Journal of Forest Research 12:83–95.
Norisada M, Hitsuma G, Kuroda K, Yamanoshita T, Masumori M, Tange T, Yagi H, Nuyim T, Sasaki S,
Kojima K (2005) Acacia mangium, a nurse tree candidate for reforestation on degraded sandy soils
in the Malay Peninsula. Forest Science 51:498–510.
Novriyanti E・渡辺誠・幸田秀穂・竹田貴彦・橋床泰之・小池孝良 (2010) アカシアおよびユーカ
リ苗の光合成の特性と窒素利用効率. (第121回日本森林学会大会運営委員会編 第121回日本
森林学会大会学術講演集. 日本森林学会, つくば). pp 504.
Nykvist N (1997) Total distribution of plant nutrients in a tropical rainforest ecosystem, Sabah, Malaysia.
Ambio 26:152–157.
Nykvist N, Sim B, Malmer A (1996) Effects of tractor logging and burning on biomass production and
nutrient accumulation in Acacia mangium plantations in Sabah, Malaysia. Journal of Tropical Forest
Science 9:161–183.
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
130
Nykvist N, Sim B (2009) Changes in carbon and inorganic nutrients after clear felling a rainforest in
Malaysia and planting with Acacia mangium. Journal of Tropical Forest Science 21:98–112.
大島顕幸 (1986) 東マレーシア・サバ州における造林事業の現段階. 熱帯林業 7:12–20.
大園享司・武田博清 (2006) 森林生態系における分解系の働き. (武田博清・占部城太郎編 地球
環境と生態系. 共立出版, 東京). pp 96–119.
太田誠一・久馬一剛 (2001) 熱帯林の土壌生態. (久馬一剛編 熱帯土壌学. 名古屋大学出版会, 名
古屋). pp 264–299.
岡島秀夫 (1984) 酸性土壌と養分の保持能. (田中明編 酸性土壌とその農業利用−特に熱帯にお
ける現状と将来−. 博友社, 東京). pp 169–193.
Ostertag R (2001) Effects of nitrogen and phosphorus availability on fine-root dynamics in Hawaiian
montane forests. Ecology 82:485–499.
Ostertag R (2010) Foliar nitrogen and phosphorus accumulation responses after fertilization: an example
from nutrient-limited Hawaiian forests. Plant and Soil 334:85–98.
Osunkoya OO, Othman FE, Kahar RS (2005) Growth and competition between seedlings of an invasive
plantation tree, Acacia mangium, and those of a native Borneo heath-forest species, Melastoma
beccarianum. Ecological Research 20:205–214.
Palm CA (1995) Contribution of agroforestry trees to nutrient requirements of intercropped plants.
Agroforestry Systems 30:105–124.
Paudyal BK, Majid NM (2000) The relationship between growth and foliar nutrient concentrations in
Acacia mangium seedlings. Journal of Tropical Forest Science 12:62–76.
Parrotta JA (1999) Productivity, nutrient cycling, and succession in single-and mixed-species plantations
of Casuarina equisetifolia, Eucalyptus robusta, and Leucaena leucocephala in Puerto Rico. Forest
Ecology and Management 124:45–77.
Proctor J, Lee YF, Langley AM, Munro WRC, Nelson T (1988) Ecological studies on Gunung Silam, a
small ultrabasic mountain in Sabah, Malaysia I: environment, forest structure and floristics. Journal
of Ecology 76:320–340.
R Development Core Team (2012) R: A Language and Environment for Statistical Computing. Vienna.
Raich JW, Riley RH, Vitousek PM (1994) Use of root-ingrowth cores to assess nutrient limitations in
forest ecosystems. Canadian Journal of Forest Research 24:2135–2138.
Ravishankara A, Daniel JS, Portmann RW (2009) Nitrous oxide (N2O): The dominant ozone-depleting
substance emitted in the 21st century. Science 326:123–125.
引用文献
131
Redfield A (1958) The biological control of chemical factors in the environment. American Scientist
46:205–221.
Reich PB, Oleksyn J (2004) Global patterns of plant leaf N and P in relation to temperature and latitude.
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 101:11001–
11006.
Reich PB, Oleksyn J, Wright IJ (2009) Leaf phosphorus influences the photosynthesis-nitrogen relation: a
cross-biome analysis of 314 species. Oecologia 160:207–212.
Reissmann CR, Wisnewski C (2004) Nutritional aspects in pine plantations. In: Gonçalves JLM,
Benedetti V (eds) Forest Nutrition and Fertilization. Institute of Forest Research and Study,
Piracicaba, Saõ Paulo, pp 141–170.
Ribet J, Drevon J-J (1996) The phosphorus requirement of N2-fixing and urea-fed Acacia mangium. New
Phytologist 132:383–390.
Richardson SJ, Allen RB, Doherty JE (2008) Shifts in leaf N:P ratio during resorption reflect soil P in
temperate rainforest. Functional Ecology 22:738–745.
Sá TDA, De Oliveira VC, De Araújo AC, Junior SB (1999) Spectral irradiance and stomatal conductance
of enriched fallows with fast-growing trees in eastern Amazonia, Brazil. Agroforestry Systems
47:289–303.
Sabah Forestry Department (2005) Forestry in Sabah, Commemorative edition, Sandakan.
Sabah Forestry Department (2012) Conservation areas information and monitoring system. http://
www.forest.sabah.gov.my/caims/. Accessed 16 Apr 2012.
Saharjo BH, Watanabe H (2000) Estimation of litter fall and seed production of Acacia mangium in a
forest plantation in South Sumatra, Indonesia. Forest Ecology and Management 130:265–268.
Sakai A, Visaratana T, Vacharangkura T, Thai-ngam R, Tanaka N, Ishizuka M, Nakamura S (2009) Effect
of species and spacing of fast-growing nurse trees on growth of an indigenous tree, Hopea odorata
Roxb., in northeast Thailand. Forest Ecology and Management 257:644–652.
Sakai H, Inagaki M, Noguchi K, Sakata T, Yatskov MA, Tanouchi H, Takahashi M (2010) Changes in soil
organic carbon and nitrogen in an area of Andisol following afforestation with Japanese cedar and
Hinoki cypress. Soil Science and Plant Nutrition 56:332–343.
Sanchez PA (1976) Properties and Management of Soils in the Tropics. Wiley, New York.
Schroth G, Lehmann J, Rodrigues MRL, Barros E, Macêdo JLV (2001) Plant-soil interactions in
multistrata agroforestry in the humid tropics. Agroforestry Systems 53:85–102.
Siddique I, Engel VL, Parrotta JA, Lamb D, Nardoto GB, Ometto JPHB, Martinelli LA, Schmidt S
(2008) Dominance of legume trees alters nutrient relations in mixed species forest restoration
plantings within seven years. Biogeochemistry 88:89–101.
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
132
Specht A, Turner J (2006) Foliar nutrient concentrations in mixed-species plantations of subtropical
cabinet timber species and their potential as a management tool. Forest Ecology and Management
233:324–337.
* Sprengel C (1828) Von den Substanzen der Ackerkrume und des Untergrundes (About the substances in
the plow layer and the subsoil). Journal für Technische und Ökonomische Chemie 2 (Cited from,
van der Ploeg RR, Böhm W, Kirkham MB (1999) On the origin of the theory of mineral nutrition of
plants and the Law of the Minimum. Soil Science Society of America Journal 63:1055-1062).
Srivastava PBL (1993) Silvicultural practices. In: Awang K, Taylor D (eds) Acacia mangium growing and
utilization. Winrock International and FAO Bangkok. Bangkok, pp 113–147.
Sterner RW, Elser JJ (2002) Ecological Stoichiometry: the Biology of Elements from Molecules to the
Biosphere. Princeton University Press, Prinston, New Jersey.
Subbarao G, Nakahara K, Hurtado M, Ono H, Moreta D, Salcedo A, Yoshihashi A, Ishikawa T, Ishitani
M, Ohnishi-Kameyama M, others (2009) Evidence for biological nitrification inhibition in
Brachiaria pastures. Proceedings of the National Academy of Sciences 106:17302–17307.
Sundarapandian SM, Chandrasekaran S, Swamy PS (1999) Variations in fine root biomass and net
primary productivity due to conversion of tropical forests into forest plantations. Tropical Ecology
40:305–312.
Suzuki A, Hara H, Kinoue T, Abe M, Uchiumi T, Kucho K-I, Higashi S, Hirsch AM, Arima S (2008)
Split-root study of autoregulation of nodulation in the model legume Lotus japonicus. Journal of
Plant Research 121:245–249.
Swamy HR, Proctor J (1997) Fine litterfall and its nutrients in plantations of Acacia auriculiformis,
Eucalyptus tereticornis and Tectona grandis in the Chikmagalur district of the western Ghats, India.
Journal of Tropical Forest Science 10:73–85.
Taji T, Ohsumi C, Iuchi S, Seki M, Kasuga M, Kobayashi M, Yamaguchi-Shinozaki K, Shinozaki K
(2002) Important roles of drought- and cold-inducible genes for galactinol synthase in stress
tolerance in Arabidopsis thaliana. Plant Journal 29:417–426.
Tang J-W, Cao M, Zhang J-H, Li M-H (2010) Litterfall production, decomposition and nutrient use
efficiency varies with tropical forest types in Xishuangbanna, SW China: a 10-year study. Plant and
Soil 335:271–288.
Tanner EVJ, Vitousek PM, Cuevas E (1998) Experimental investigation of nutrient limitation of forest
growth on wet tropical mountains. Ecology 79:10–22.
Tateno R, HIshi T, Takeda H (2004) Above- and belowground biomass and net primary production in a
cool-temperate deciduous forest in relation to topographical changes in soil nitrogen. Forest Ecology
and Management 193:297–306.
引用文献
133
Tiessen H, Moir JO (2008) Characterization of available P by sequential extraction. In: Carter M,
Gregorich E (eds) Soil Sampling and Methods of Analysis. Second Edition. CRC Press, Boca
Ration, FL, pp 293–336.
Tobita H, Uemura A, Kitao M, Kitaoka S, Utsugi H (2010) Interactive effects of elevated CO2,
phosphorus deficiency, and soil drought on nodulation and nitrogenase activity in Alnus hirsuta and
Alnus maximowiczii. Symbiosis 50:59–69.
Tong PS, Ng FSP (2008) Effect of light intensity on growth, leaf production, leaf lifespan and leaf
nutrient budgets of Acacia mangium, Cinnamomum iners, Dyera costulata, Eusideroxylon zwageri
and Shorea roxburghii. Journal of Tropical Forest Science 20:218–234.
Townsend AR, Cleveland CC, Asner GP, Bustamante MMC (2007) Controls over foliar N: P ratios in
tropical rain forests. Ecology 88:107–118.
Unger M, Leuschner C, Homeier J (2010) Variability of indices of macronutrient availability in soils at
different spatial scales along an elevation transect in tropical moist forests (NE Ecuador). Plant and
Soil 336:443–458.
Vadez V, Lim G, Durand P, Diem HG (1995) Comparative growth and symbiotic performance of four
Acacia mangium provenances from Papua New Guinea in response to the supply of phosphorus at
various concentrations. Biology and Fertility of Soils 19:60–64.
Valverde-Barrantes OJ, Raich JW, Russell AE (2007) Fine-root mass, growth and nitrogen content for six
tropical tree species. Plant and Soil 290:357–370.
Vance CP (2001) Update on the state of nitrogen and phosphorus nutrition symbiotic nitrogen fixation and
phosphorus acquisition: plant nutrition in a world of declining renewable resources. Plant
Physiology 127:390–397.
van Heerwaarden LM, Toet S, Aerts R (2003) Current measures of nutrient resorption efficiency lead to a
substantial underestimation of real resorption efficiency: facts and solutions. Oikos 101:664–669.
van Hees PAW, Jones DL, Finlay R, Godbold DL, Lundström US (2005) The carbon we do not see–the
impact of low molecular weight compounds on carbon dynamics and respiration in forest soils: a
review. Soil Biology and Biochemistry 37:1–13.
Vitousek PM, Howarth RW (1991) Nitrogen limitation on land and in the sea: how can it occur?
Biogeochemistry 13:87–115.
Vitousek PM (1982) Nutrient cycling and nutrient use efficiency. American Naturalist 119:553–572.
Vitousek PM, Sanford Jr R (1986) Nutrient cycling in moist tropical forest. Annual Review of Ecology
and Systematics 17:137–167.
Vitousek PM (2004) Nutrient Cycling and Limitation: Hawaiʼi as a Model System (Princeton
Environmental Institute Series). Princeton University Press. Prinstion, New Jersey.
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
134
Vitousek PM, Cassman K, Cleveland C, Crews T, Field CB, Grimm NB, Howarth RW, Marino R,
Martinelli L, Rastetter EB, Sprent JI (2002) Towards an ecological understanding of biological
nitrogen fixation. Biogeochemistry 57/58:1–45.
Vogt KA, Grier CC, Vogt D (1986) Production, turnover, and nutrient dynamics of above- and
belowground detritus of world forests. Advances in Ecological Research 15:303–377.
Vogt KA, Persson H (1991) Measuring growth and development of roots. In: Techniques and Approaches
in Forest Tree Ecophysiology. CRC Press, Boca Ration, FL, pp 477–501.
Walker T, Syers J (1976) The fate of phosphorus during pedogenesis. Geoderma 15:1–19.
Wall L, Berry A (2008) Early interactions, infection and nodulation in actinorhizal symbiosis. In:
Pawlowski K, Newton WE (eds) Nitrogen-fixing Actinorhizal Symbioses. Springer, Dordrecht, pp
147–166.
Walsh R, Newbery D (1999) The ecoclimatology of Danum, Sabah, in the context of the worldʼs
rainforest regions, with particular reference to dry periods and their impact. Philosophical
Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences 354:1869–1883.
Wang F, Li Z, Xia H, Zou B, Li N, Liu Z, Zhu W (2010) Effects of nitrogen-fixing and non-nitrogen-
fixing tree species on soil properties and nitrogen transformation during forest restoration in
southern China. Soil Science and Plant Nutrition 56:297–306.
Warton DI, Wright IJ, Falster DS, Westoby M (2006) Bivariate line-fitting methods for allometry.
Biological Reviews 81:259–291.
Watanabe Y, Masunaga T, Fashola OO, Agboola A, Oviasuyi PK, Wakatsuki T (2009) Eucalyptus
camaldulensis and Pinus caribaea growth in relation to soil physico-chemical properties in
plantation forests in Northern Nigeria. Soil Science and Plant Nutrition 55:132–141.
Weber J, Ducousso M, Tham FY, Nourissier-Mountou S, Galiana A, Prin Y, Lee SK (2005) Co-
inoculation of Acacia mangium with Glomus intraradices and Bradyrhizobium sp. in aeroponic
culture. Biology and Fertility of Soils 41:233–239.
Weber J, Tham F, Galiana A, Prin Y, Ducousso M, Lee SK (2007) Effects of nitrogen source on the
growth and nodulation of Acacia mangium in aeroponic culture. Journal of Tropical Forest Science
19:103–112.
Wei X, Shao M, Fu X, Horton R (2010) Changes in soil organic carbon and total nitrogen after 28 years
grassland afforestation: effects of tree species, slope position, and soil order. Plant and Soil
331:165–179.
West PW (2006) Growing Plantation Forests. Springer, Berlin.
引用文献
135
Wright IJ, Reich PB, Westoby M, Ackerly DD, Baruch Z, Bongers F, Cavender-Bares J, Chapin T,
Cornelissen JHC, Diemer M, others (2004) The worldwide leaf economics spectrum. Nature
428:821–827.
Xue L, Wu M, Xy Y, Li Y, Qu M (2005) Soil nutrients and microorganisms in soils of typical plantations
in south China. Acta Pedologica Sinica 42:1017–1023. (英文要旨付き中国語)
Xuluc-Tolosa F, Vester H, Ramirez-Marcial N, Castellanos-Albores J, Lawrence D (2003) Leaf litter
decomposition of tree species in three successional phases of tropical dry secondary forest in
Campeche, Mexico. Forest Ecology and Management 174:401–412.
Yamada M, Toma T, Hiratsuka M, Morikawa T (2004) Biomass and potential nutrient removal by
harvesting in short-rotation plantations. In: Nambiar EKS, Ranger J, Tiarks A, Toma T (eds) Site
Management and Productivity in Tropical Plantation Forests: Proceedings of Workshops in Congo
July 2001 and China February 2003. CIFOR, Jakarta, pp 213–226.
Yamamoto K, Sulaiman O, Kitingan C, Choon LW, Nhan NT (2003) Moisture distribution in stems of
Acacia mangium, A. auriculiformis and hybrid Acacia trees. Japan Agricultural Research Quarterly
37:207–212.
Yamashita N, Ohta S, Hardjono A (2008) Soil changes induced by Acacia mangium plantation
establishment: comparison with secondary forest and Imperata cylindrica grassland soils in South
Sumatra, Indonesia. Forest Ecology and Management 254:362–370.
山崎慎一 (1997) 全量分析分解方法. (土壌環境分析法編集委員会編 土壌環境分析法. 博友社, 東
京). pp 278–288.
Yanai RD, Currie WS, Goodale CL (2003) Soil carbon dynamics after forest harvest: an ecosystem
paradigm reconsidered. Ecosystems 6:197–212.
Yang L, Liu N, Ren H, Wang J (2009) Facilitation by two exotic Acacia: Acacia auriculiformis and
Acacia mangium as nurse plants in South China. Forest Ecology and Management 257:1786–1793.
Yoneyama T, Muraoka T, Murakami T, Boonkerd N (1993) Natural abundance of 15N in tropical plants
with emphasis on tree legumes. Plant and Soil 153:295–304.
Yuan Z, Chen HYH (2009a) Global-scale patterns of nutrient resorption associated with latitude,
temperature and precipitation. Global Ecology and Biogeography 18:11–18.
Yuan Z, Chen HYH (2009b) Global trends in senesced-leaf nitrogen and phosphorus. Global Ecology and
Biogeography 18:532–542.
Zech W, Drechsel P (1998) Nutrient disorders and nutrient management in fast growing plantations. In:
Schulte A, Ruhiyat D (eds) Soils of Tropical Forest Ecosystems: Characteristics, Ecology and
Management. Springer, Berlin, pp 99–106.
マレーシアサバ州におけるマンギウムアカシア人工林の養分利用と荒廃地回復機能に関する研究
136
Zou X, Binkley D, Caldwell BA (1995) Effects of dinitrogen-fixing trees on phosphorus biogeochemical
cycling in contrasting forests. Soil Science Society of America Journal 59:1452–1458.
* 原著に当たることが出来なかった
引用文献
137