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平成25年度アジア産業基盤強化等事業 (国内外企業の新興国市場獲得の実態に係る調査) 新興国イノベーション研究会 報告書 20142月28日

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平成25年度アジア産業基盤強化等事業(国内外企業の新興国市場獲得の実態に係る調査)

新興国イノベーション研究会

報告書

2014年2月28日

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目次

第Ⅰ章 本調査について

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の必要性

第2節 調査のスコープとアプローチ

第Ⅱ章 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因と日本企業の課題

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因

第2節 「新興国から発想したイノベーション」を生み出す上での日本企業の課題

第Ⅲ章 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けた方向性

第1節 日本企業が取り組むべき事項と取り組みが進んでいない原因

第2節 日本企業を動かすアプローチと施策の考え方(割愛)

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【本調査仕様書より】

新興国を中⼼に世界の市場は急速に拡⼤しており、この成⻑市場の獲得に向けて、世界各国が激しい競争を繰り広げている。外国企業の中には、現地ニーズに適合した製品を現地で新たに開発することで市場を獲得する動きも出てきている。こうした中、我が国企業が新興国の成⻑を取り込み、日本経済の活性化に繋げることが今後ますます重要になる。

本事業は、国内外企業の新興国市場獲得の実態を把握するとともに、日本企業と他国企業の事例とを⽐較して課題を抽出し、解決策を検討することを目的とする。

調査の背景と目的

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第Ⅰ章 本調査について

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の必要性

第2節 調査のスコープとアプローチ

第Ⅱ章 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因と日本企業の課題

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因

第2節 「新興国から発想したイノベーション」を生み出す上での日本企業の課題

第Ⅲ章 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けた方向性

第1節 日本企業が取り組むべき事項と取り組みが進んでいない原因

第2節 日本企業を動かすアプローチと施策の考え方(割愛)

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� 今後、中間層以上の人口における8割は新興国になり、世界経済のGDP・消費における今後の成⻑の約6割が新興国で生じるようになるなど、世界市場の「主戦場」が新興国市場に移りつつある一方、欧米中韓企業に比べ、日本企業は新興国市場におけるシェアが小さく、出遅れた位置にある

� 先進国に比べ、新興国市場は競争が激しく利益を持続させることが難しい市場である事が明らかになっており、こうした中で業績を向上させていくには、イノベーション志向の製品戦略を取る事が有効である事が指摘

されている

� 更に、近年「ジュガードイノベーション」と呼ばれるような新興国特有の市場環境・ニーズに対応する中で発想された製品・サービスと、それらが先進国へ逆流していく「リバースイノベーション」という動きに注目が集まっており、新興国から発想したイノベーションが、新興国だけでなく先進国でも役⽴つという議論も出てきている

• リバースイノベーションに取り組む先駆的企業であるGEのイメルト会⻑は、新興国特有の環境やニーズに合わせ、費用対効果を劇的に変えるイノベーションが求められており、それは先進国でも新しい市場になりうる。急速に台頭するローカル企業に先⾏されれば、先進国企業は滅ぼされかねない、と主張している

• 既に、欧米先進企業・中小ベンチャー、ローカル企業は、「新興国から発想したイノベーション」に取り組みはじめている。新興国社会の課題解決にも貢献するという観点から、既存の⾼額な製品を押し売りして短期的利益を求めるのではない、「損して得取れ」の戦い方をとることで、最終的に大きな成功を生み出している企業もある

� 一方で日本企業は、韓国企業等と比べて現地ニーズを汲み取る重要性に鈍い事に加え、海外、特に新興国を巻き込んだイノベーション活動を⾏っていない傾向にある。しかし日本企業には元来、社会貢献の思想を忘れずイノベーションを産み出してきた歴史があり、そんな⽇本が「新興国から発想したイノベーション」の流

れに出遅れてよいのか、問うべき時が到来している。

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の必要性 サマリ

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今後、中間層以上の人口における8割は新興国になり、世界経済のGDP・消費における今後の成⻑の約6割が新興国で生じるようになるなど、世界市場の「主戦場」が新興国市場に移りつつある一方・・・(次頁続く)

台頭する新興国と日本企業のシェア(1/2)

*1 経済産業省「通商⽩書2013」より。元データはIMF「World Economic Outlook、April 2013」。

*2 経済産業省「通商⽩書2013」。中間層以上とは、世帯年間可処分所得が5,000ドル以上の人口を指す

先進国40%

中国26%

ASEAN6%

南⻄アジア

5%

中東4%

ロシア・CIS6%

中南米9%

アフリカ4%

2012〜2018年計25.9兆ドル

約60%

今後の名目GDP増加の地域別シェア*1

0億人

10億人

20億人

30億人

40億人

50億人

60億人

2010 2015 2020

先進国 中国 ASEAN 南⻄アジア

中東 ロシア・CIS 中南米 アフリカ

世界の中間層以上の人口予測*1

新興国シェア81%

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(続き)欧米中韓企業に比べ、日本企業は新興国市場におけるシェアが小さく、出遅れた位置にある。

台頭する新興国と日本企業のシェア(2/2)

ASEAN+BRICS諸国における主な消費財の日米欧中韓企業シェア比較*

0%5%

10%15%20%25%30%35%

2008 2009 2010 2011 2012

米国EU

中国

パーソナルケア(化粧品・ベビー用品・バス用品等)

日本韓国

0%5%

10%15%20%25%30%35%

2008 2009 2010 2011 2012

白物家電(冷蔵庫・洗濯機・電⼦レンジ等)

米国

EU

中国

日本

韓国

* Euromonitorデータよりアクセンチュア分析

0%5%

10%15%20%25%30%35%

2008 2009 2010 2011 2012

AV・情報機器(テレビ、携帯電話、PC等)

米国

EU中国

日本

韓国

加工食品(パン・乳製品・菓⼦・冷凍⾷品等)

0%

3%

6%

9%

12%

15%

2008 2009 2010 2011 2012

米国EU

中国

日本韓国

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この20年間、⽇本企業は事業の選択と集中によって、売上を犠牲にし利益率重視の経営を⾏う=主戦場から逃げる「縮⼩均衡」の状態に陥っており、新興国進出についても、薄利になりがちなボ

リュームゾーン獲得には積極的ではなかったものと思われる。

(参考)新興国出遅れの遠因

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

0

100

200

300

400

500

600

1990

年度

1991

年度

1992

年度

1993

年度

1994

年度

1995

年度

1996

年度

1997

年度

1998

年度

1999

年度

2000

年度

2001

年度

2002

年度

2003

年度

2004

年度

2005

年度

2006

年度

2007

年度

2008

年度

2009

年度

2010

年度

2011

年度

2012

年度

(売上高:兆円) (利益率:%)

日本企業(⾦融・保険除く)の総売上⾼・利益率推移*

売上高トレンド

利益率トレンド

* 財務省「法人企業統計調査」を元に、⽇本銀⾏「企業物価指数(2010年基準)」によって売上を実質化した上で算出

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先進国に⽐べ、新興国市場は競争が激しく利益を持続させることが難しい市場である事が明らかに

なっており、こうした中で業績を向上させていくには、イノベーション志向の製品戦略を取る事が有効で

ある事が指摘されている。

新興国市場のパフォーマンスとイノベーションの有効性

新興国市場における利益持続の難しさ*1

� 新興国の利益の持続速度についての研究によれば、新興国は競争が激しく、市場平均から超過した利益が

平均に収束する速度が先進国よりも早い=利益を持続することが難しい事が明らかになっている

*1 Glen J, Lee K and Singh A (2002). “Corporate Profitability and the Dynamics of Competition in Emerging Markets: A

Time Series Analysis”、7カ国、合計339社の1980〜1995年の業績を分析した結果に基づく

*2 業界平均を上回る利益が翌期に減る係数を⽰す。例えば新興国市場平均では、超過ROAが10%の場合、翌期には2.7%になる

イノベーションの有効性*3

� 中国内で活動する企業に対する研究によれば、新規性の高い製品投入を目指すイノベーション重視の製品戦略を取っている企業ほど、製品のパフォーマンスに好影響

がある事が判明している

0.00.10.20.30.40.50.6

新興

国平

Bra

zil

Indi

a

Jord

an

Kor

ea

Mal

aysi

a

Mex

ico

Zim

babw

e

先進

国平

均 UK

Fra

nce

Ger

man

y

Japa

n

Can

ada

US

市場平

均から超

過した

総資

産利益率

(ROA)の

持続性係

数*2

(調査結果イメージ*4)

製品

のパ

フォ

ーマ

ンス

評価

(投資対

効果・売上

・利益・シェ

アへの印象

b=.39, p<.001

製品戦略におけるイノベーション重視の度合い*3 Zhou, Kevin Zheng (2006), “Innovation, Imitation, and New Product Performance: The Case of China,” Industrial Marketing

Management, 中国内の298企業のマネジメント層に対するヒアリング調査に基づく

*4 切⽚が不明のため、厳密に正確なグラフではない

*5 Imperial College Business「China Now a Source of Innovation」

競争を激しくする要因� 市場が成⻑しており魅⼒的

� 低価格でシンプルなものが多く参入障壁が低い� 競争政策が未整備� 多分野に進出する複合ローカ

ル企業が多い

超過利益率10%の場合

4年後に0.1%を切る

超過利益率10%の場合

6年後に0.1%を切る

中国では、市場が急速に成⻑しリスク

を取りやすい事や、起業家精神の高

さなどから、国内外の企業が競ってより

重大なイノベーションに取り組み始め

ている*5(中欧国際工商学院叶恩华教授/Yip, George S.)

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先進国先進国

9

更に、近年「ジュガードイノベーション」と呼ばれるような新興国特有の市場環境・ニーズに対応する中で発想された製品・サービスと、それらが先進国へ逆流していく「リバースイノベーション」という動きに注目が集まっており、新興国から発想したイノベーションが、新興国だけでなく先進国でも役⽴つという議論も出てきている。

新興国から発想したイノベーション

新興国

先進国

新興国の市場に対応する中で発想された

製品・サービス

消費者ニーズ

新興国から発想したイノベーションに関する定義

市場環境

リバースイノベーション

⇒ 新興国で最初に採用され、先進国

へと逆流してくるイノベーション

� ダートマス大学教授のビジャイ・ゴビンダラジャンが提唱し、GEイメルト会⻑が最初に⽀持した

⇒ 限られた資源を用いて、独創性と

機転から効果的な解決策を生み

出し、厳しい制約条件を克服する

イノベーション

� ケンブリッジ大学フェローのナヴィ・ラジュらが提唱

ジュガードイノベーション(≒フルーガルイノベーション)

逆流

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リバースイノベーションに取り組む先駆的企業であるGEのイメルト会⻑は、新興国特有の環境やニーズに合わせ、費用対効果を劇的に変えるイノベーションが求められており、それは先進国でも新しい市場になりうる。急速に台頭するローカル企業に先⾏されれば、先進国企業は滅ぼされかねない、と主張している。

新興国から発想したイノベーション ― GEの⾒解

新興国発想のイノベーションに取り組むGEイメルト会⻑の主張*1

① 新興国には先進国と異なる環境・ニーズがあり、それに合わせて機能を50%に絞る代わりに、15%の超低価格を実現する製品が求められている

② こうした新興国の厳しい環境を乗り越える工夫によって生まれた

イノベーション(≒ジュガードイノベーション)は、劇的な低価格、

用途の応用により、先進国でもまったく新しい市場を形成しうる(≒リバースイノベーション)

③ これにGEが素早く先回りで対応しなければ、代わりに急速に台頭するローカル企業(Emerging Giants)がイノベーションを起こし、GEは滅ぼされかねない。だから、この流れは選択肢の一つではない。⽣き残るために不可⽋な酸素なのだ

(③参考)Fortune Global 500の企業国籍予測*2

0%

25%

50%

75%

100%

2000 2010 2025

先進国

新興国(中国以外)

中国

新興国企業シェア46%新興国では、「費用対効果」を劇的に変えるイノベー

ションを、「スピード」感を持って実現しなければならない

(①参考)新興国で求められるイノベーション

機能

コスト

先進国ハイエンド

先進国ローエンド

新興国で必要な製品

コスト

低減

ニーズ

対応

*1 Harvard Business Review「How GE Is Disrupting Itself」

*2 McKinsey Global Institute「Urban world: The shifting global business landscape」

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既に、欧米先進企業・中小ベンチャー、ローカル企業は、「新興国から発想したイノベーション」に取り組みはじめている。新興国社会の課題解決にも貢献するという観点から、既存の高額な製品を押し売りして短期的利益を求めるのではない、「損して得取れ」の戦い⽅をとることで、最終的に⼤きな成

功を生み出している企業もある。

新興国から発想したイノベーション ― 欧米先進企業(米GE)

GE Healthcare携帯型超音波診断装置 「Vscan」

開発のきっかけ

� インドではGE製品に対する不満が多く出ていた

• GEの製品は、⾼く、不要な機能が多く、要望に迅速に答えてくれないと言われていた

� バンガロールのマニパル病院からアイデアが提起された

• “診察器具が聴診器と体温計だけというインドの田舎で、携帯電話のように使える診察器具があれば、大きな需要があるのではないか”

発売後の反響

� 2010年に企画発祥の地インドと米国、カナダ、欧州等で認可され発売、今や日本を含む先進国や途上国、合わせて100以上の国で使われるようになった

開発体制� 新興国含め5カ国で役割分担して開発を推進

• インドで製品仕様を定義

• ノルウェーでコアの情報通信技術を開発

• フランスでユーザーインターフェースを設計

• アメリカでシステムインテグレーション

• 中国で生産設計

開発成果

� 世界初の携帯できる超音波診断装置

• 2009年5月、超音波で簡単に体内の状態をビジュアル化でき、触診、聴診、体温測定に加わる新しい診察手段を提供する革新的デバイスVscanを発表

• 1,000万円は下らない従来の大きな超音波診断装置を、 スマートフォンサイズに小型化した上で、約1/10まで価格を低減させた

• iPodのようなデザインで使い方が簡単、かつバッテリー駆動なので、地方や救急救命の現場で活躍

製品外観

出典:GE’s Technology white paper、http://www3.gehealthcare.co.jp/

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(続き)

新興国から発想したイノベーション ― 中小ベンチャー企業(英DataWind)

DataWind超格安タブレット端末 「Aakash/UbiSlate」

開発のきっかけ

� インド⼈材開発省は、地⽅部の教育⽔準向上を目指し、インターネットに接続できる超低価格デバイスを2.2億人の全ての学生に届ける事を目指した構想を発表し、英DataWind社が開発を受注

発売後の反響

� 一般販売を開始した所、2013年に100万台以上を売り上げ、インド市場のトップシェアを獲得

� その後、メキシコ、ニカラグア、ウルグアイ等の新興国に横展開し、更に米国での販売も開始された

開発成果 製品外観*

� わずか35ドルの世界最安タブレット端末「Aakash(市販名:UbiSlate)」を開発

• 部品の中で最もマージン率が⾼いタッチスクリーンを⾃主開発してコストを抑制。更に、データ圧縮技術とクラウドでデータ処理を補完する事で処理能⼒を押さえ、ハードウェアコストを削減

• NGO等と連携したり、社会的アプリケーションのコンテストを開催することによって必要な教育ソフトウェアを安く調達。さらに、プリインストールアプリケーションやコンテンツオファーによる広告収入で損益分岐点を引き下げた

出典:http://juggly.cn/、http://thenextweb.com/、http://en.wikipedia.org/

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(続き)

新興国から発想したイノベーション ― ローカル企業(中Yadea)

中国の電動⾃転⾞

市場環境

� 1990年台から⼤都市にガソリン⼆輪⾞登録規制が広まる

• 150以上の都市が、大気汚染・交通事故防止の観点から、ナンバープレートの発⾏を競売化したり、区域内通⾏禁⽌、特別課税などを課し始めた

電動⾃転⾞の誕⽣

� 緩い規制により、多様な製品を作る余地が生まれた

• 99年に国家規格にて「電動⾃転⾞」が定義されたが、ある程度の違反は許す緩い規制だった

• そのため⾃転⾞の延⻑である電動アシスト⾃転⾞から、電動スクーターまで様々な製品が該当した

� 製造の簡単さから多様なローカルメーカーが参入

• ガソリン⼆輪⾞に⽐べ、製造が簡単なため多数のローカルメーカーが手がけ始め、商品ラインナップが増加した

• 中国の特殊な事情から始まったため、暫くの間、海外メーカーは殆ど参入しなかった

電動⾃転⾞市場の成⻑

� 利便性の⾼さから、若者や⼥性ユーザーの⽀持を受けた

• 最高時速20キロ〜程度は出て⼿に⼊れにくくなったバイクの代わりとして十分機能したことに加え、免許・ヘルメットが不要で、かつ数万円から購入できたため、正に機能は1/2、価格は1/10だった

� 結果、ガソリン⼆輪⾞市場を追い抜くほど急速に普及した

• Yadea、AIMA等、台頭した大手メーカーはガソリン⼆輪⾞の中国最大手レベルの生産台数を達成(大⻑江集団と並ぶ300万台級。日本企業ではスズキの世界販売を超える)

� 欧州を中⼼に、年間50万台以上輸出されるようになり、海外への普及も始まっている

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

19992000200120022003200420052006200720082009

ガソリン…

電動自…

中国⼆輪⾞需要の推移*2

(万台)

*1 http://www.yadea-jp.com/より*2 みずほコーポレート銀⾏「⽇系企業に求められる新興国戦略の⽅向性--⽇系⼆輪⾞業界の新興国戦略を踏まえて」

Yadea社製品外観*1

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アクセンチュアの2013年の調査によれば、欧州企業の経営層は、10年以内に中国のイノベーション⼒が欧州を超えると⾒ており、またビル・ゲイツ⽒も中国発のイノベーションが世界に波及していく⾒通

しを示している。

(参考)欧米エグゼクティブの中国のイノベーションに対する視点

「10年後には中国がイノベーションの点で欧州を超える」と考える欧州企業経営層の割合*1

29%

16%

55%

欧州

がリ

ード

し続

ける

欧州

と対

等に

なる

欧州

が後

塵を

拝す

*1 Accenture「Unlocking the Industrial Opportunities in Europe」*2 新浪财经「博鳌论坛把脉中国经济新坐标」

中国は貧しい

世界の人々を豊かに、

健康にする革新的な技術開発を

産み出すようになってきた。

そして私は、今後それを他の

国々にもたらすようになる事すら

期待している。

従って「中国夢(チャイナ・ドリーム)」はただ中国国⺠のものであるだけでなく、世界中の人々に

恩恵をもたらすものになるだろう*2

(ビル・ゲイツ、13年4月ボアオ・アジア・フォーラムにて)

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一方で日本企業は、韓国企業等に比べて現地ニーズを汲み取る重要性に鈍い事に加え・・・ (次頁続く)

「新興国から発想したイノベーション」に出遅れる日本(1/3)

* GE「Global Innovation Barometer 2013」。日本100社を含む約3,000社のアンケート調査による。

現地ニーズに合わせたローカライズが必要と考える企業の割合*

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

日本

イギリス

オーストリア

アメリカ

ロシア

サウジアラビア

イスラエル

カナダ

シンガポール

スウェーデン

ドイツ

インド

トルコ

中国

ポーランド

アラブ⾸⻑国連

南アフリカ

韓国

ブラジル

メキシコ

2012年調査

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

イギリス

ロシア

中国

オーストリア

スウェーデン

アメリカ

イスラエル

シンガポール

オランダ

日本

アイルランド

カナダ

トルコ

インド

南アフリカ

ドイツ

サウジアラビア

マレーシア

ブラジル

アラブ⾸⻑国連

邦ナイジェリア

メキシコ

ポーランド

ベトナム

韓国

2013年調査

2012年時点では、日本企業は調査国で最低の値だった

2013年に日本企業は世界平均に近づいたが韓国企業は更に上を⾏く強い危機感を示している

経済産業省「新中間層獲得戦略」発表日本語版「リバースイノベーション」発売

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(続き)海外、特に新興国を巻き込んだイノベーション活動を⾏っていない傾向にある。(続く)

「新興国から発想したイノベーション」に出遅れる日本(2/3)

* OECD「OECD Science, Technology and Industry Scoreboard 2013」各国がOECDのオスロ・マニュアル(イノベーションに関するデータ収集ガイドライン)に準じて収集した結果。日本は科学技術政策研究所「全国イノベーション調査」における5,000社弱のサンプル調査によるイノベーション活動とは、「革新的な製品・サービス、または業務の改善を目的としたプロセスの開発に必要とされる設計、研究開発、市場調査などの取り組み」を指す

0% 20% 40% 60% 80%

SloveniaUK

AustriaEstonia

SlovakiaFinland

LuxembourgIsrael

BelgiumSweden

CzechHungaryNorwayFrancePolandIreland

South AfricaSwitzerlandNetherlands

New ZealandPortugal

JapanRussia

GermanyTurkey

AustraliaSpain

ItalyChileBrazil

連携先に国外企業・機関含む

連携先が国内企業・機関のみ

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

1991

1993

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

2009

2011

米国

EU

日本

(%)

イノベーション活動に取り組む企業のうち国外企業・機関と連携している⽐率*

各国/域内の特許申請のうち、BRICS諸国との共同発明が占める割合の推移*

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(続き)しかし日本企業には元来、社会貢献の思想を忘れずイノベーションを産み出してきた歴史があり、そんな⽇本が「新興国から発想したイノベーション」の流れに出遅れてよいのか、問うべき時が

到来している。

「新興国から発想したイノベーション」に出遅れる日本(3/3)

*1 http://www.nissinfoods.co.jp/product/p_5690.html?bl_cd=1*2 http://kagakukan.toshiba.co.jp/manabu/history/1goki/1955cooker/index_j.html

新興国イノベーターであった日本

�新興国であった日本は、自国市場のニーズから社会を変えるイノベーションを産み出し、世界へと普及させてきた

日本の経営思想の根幹=社会への貢献

�⽇本企業は、元来⾃社利益だけでなく、社会への貢献を

強く意識しながら発展してきた

三⽅良し

松下水道哲学

三菱

三綱領

�商いを売り手の都合だけでするのではなく、買い手を満足させ、さらに地域社会の発展や福利の増進に貢献しなければならないとする近江商人達の経営思想

�貧しい幼少期を過ごしたパナソニック創業者松下幸之助の、⽔道⽔のように良質なものを超低価格で消費者に⾏き渡らせ、人々を幸せにすることが産業の使命であるという思想

�岩崎⼩弥太が⽰し、三菱グループに受け継が

れる3つの経営理念であり、そのうちの⼀つ「所期奉公」において、事業の究極の目的は国・社会への貢献であり、そのためにベストを尽くす事が最優先であるとした

インスタントラーメン*1

�東洋文化である麺食によって戦後の⾷糧不⾜を解決するため安藤百福氏が発明

�⾃宅裏庭の⼩屋で、ありふれた道具を使って研

究。妻の天ぷらから「油熱乾燥法」を発想

� その後発明したカップ麺と合わせ、世界の食を大きく変えた

炊飯器

�東芝から相談を受けた協⼒会社の社⻑三並

義忠⽒が、⽔の蒸発で電源が切れるアイデアを

着想して発明

� かまどに薪をくべて⽕をかける⻑時間の作業を無

くし、寝ている間に炊けるようになり家事労働を大幅削減

�米食文化のある国に広く普及

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第Ⅰ章 本調査について

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の必要性

第2節 調査のスコープとアプローチ

第Ⅱ章 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因と日本企業の課題

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因

第2節 「新興国から発想したイノベーション」を生み出す上での日本企業の課題

第Ⅲ章 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けた方向性

第1節 日本企業が取り組むべき事項と取り組みが進んでいない原因

第2節 日本企業を動かすアプローチと施策の考え方(割愛)

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最終財に近い製造業、B2Cのサービス業企業が、今後の利益の源泉と⾒込まれる新興国の中間層に対し、どのようにIdeation(研究・企画)、Product/Service Development(開発)を⾏っているかを調査する。

調査のスコープ

新興国特有の市場環境・ニーズに対応する中で発想される製品・サービスの開発・イノベーション

製造

素材

資本財

消費財

加工品・部品

素材

� 今後の新興国消費の主⼒となる中間層

をターゲットとしたビジネスを主に調査

� 低所得者層向けビジネスについても中間層の前哨戦として部分的に含む

誰が(対象業種)=最終財に近い製造業+B2Cのサービス業

誰に(対象顧客)=今後の新興国消費の主役「中間層」+α

どうやって(対象業務)=Ideation+Development

調査対象

中間財 最終財

サービス B2C(教育・飲食・小売など)

B2B(法務・リース・技術サービスなど)

富裕層5.1億人

中間層28.6億人

低所得者層13.4億人

* 経済産業省「通商白書2010」

新興国27カ国の所得別人口*(2020年予測)

製造 サービス

企画

製品開発・試作

生産設計

製造

販売

企画

商品サービス開発

業務設計

店舗・サービス運営

販売

Ideation

Product/ServiceDevelopment

研究 研究

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第Ⅱ章で「新興国から発想したイノベーション」の成功要因を事例から把握し、⽇本企業の課題を整理。その上で第Ⅲ章で促進に向けた支援策を検討する。

調査のアプローチ

[海外企業ヒアリング/データ収集]

[日本企業ヒアリング/データ収集]

第2節日本企業の課題

第1節日本企業が

取り組むべき事項と取り組みが進んでいない原因

企業が取り組むべき事項

第ⅡⅡⅡⅡ章「新興国から発想したイノベーション」の成功要因と日本企業の課題

• 新興国から新しい製品・サービスを発想していくにはどうすればよいか?

•日本企業が新興国から新しい製品・サービスを生み出せない理由は何か?

• 新興国から発想したイノベーションを作るために企業は何をすべきか、なぜ出来ていないのか

20

第1節「新興国から発想したイノベーション」

の成功要因

第ⅢⅢⅢⅢ章「新興国から発想したイノベーション」

促進に向けた方向性

製造 サービス

日本企業

海外企業

事例取り組みが

進んでいない原因

第2節日本企業を動かす

アプローチと施策の考え方

企業を動かすアプローチ

施策の考え方

•日本企業を動かすために政府は何が出来るか

ヒアリング等に基づく企業の課題

課題の関係性・構造

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第Ⅰ章 本調査について

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の必要性

第2節 調査のスコープとアプローチ

第Ⅱ章 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因と日本企業の課題

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因

第2節 「新興国から発想したイノベーション」を生み出す上での日本企業の課題

第Ⅲ章 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けた方向性

第1節 日本企業が取り組むべき事項と取り組みが進んでいない原因

第2節 日本企業を動かすアプローチと施策の考え方(割愛)

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� ヒアリングに基づくと、「新興国から発想したイノベーション」を生み出すに当たっては①Ideationの段階で4つ、②Product/Service Developmentの段階で2つの成功要因が存在している。

• ①ではA)人のインサイダー化、B)現地ニーズの直視、C)常識破りの発想奨励、D)大胆で迅速な意思決定、②ではE)コストの現地水準化、F)技術・ノウハウ差別化が成功要因になる

� 一方、日本企業は成功要因を必ずしも十分実現できている訳ではなく、ヒアリングに基づいて課題を整理すると、特にイノベーションの発端となる①Ideationの部分に弱点が多い事が明らかになった。

• ⽇本企業の意識として、他国と⽐べて技術開発・ビジネスモデル偏重で、①Ideationに関連する消費者の理解や⼈材惹きつけ、社内⽂化醸成、イノベーションPJTへの投資等を重視しない傾向が明らかになっている。これには、日本社会全体のリスクテイクを避ける傾向も影響しているとみられる。

• 意識だけでなく日本企業の実態としても、欧米と比べて現地人活用が進んでいない、本社方針を押し付けがち、英語対応が遅れている、現地向け製品の開発を現地で⾏わない、などの状況がある。

• 日本企業自身も、欧米企業と比較すると②Product/Service Developmentに当たる低コスト化では互角だが、言語対応、現地ニーズの把握、現地人材活用など①Ideationの成功要因に関連する項目で欧⽶が勝ると認識している。

� 以上を整理すると、⽇本企業は新興国において成功原因を十分実現できない悪循環に陥っており、背景には⽇本の組織マネジメントや⼈材、開発組織、経営管理等の問題があると想定され、この悪循環を好循環に変えるためには、背景にある真因を逆転させるべく企業自身がすべき事と、そこで政府が支援できる事は何か、という視点で方向性を考えていく必要がある。

第Ⅱ章 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因と日本企業の課題 サマリ

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第Ⅰ章 本調査について

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の必要性

第2節 調査のスコープとアプローチ

第Ⅱ章 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因と日本企業の課題

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因

第2節 「新興国から発想したイノベーション」を生み出す上での日本企業の課題

第Ⅲ章 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けた方向性

第1節 日本企業が取り組むべき事項と取り組みが進んでいない原因

第2節 日本企業を動かすアプローチと施策の考え方(割愛)

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ヒアリングに基づくと、「新興国から発想したイノベーション」を生み出すに当たっては、①Ideationの段階で4つ、②Product/Service Developmentの段階で2つの成功要因が存在している。

「新興国から発想したイノベーション」の成功要因

開発

ステ

ップ

6つ

の成

功要

①Ideationニーズを汲み取って発想する

②Product/ServiceDevelopment

現実の製品・サービスに落としこむ

B)現地ニーズの直視

D)大胆で迅速な意思決定

C)常識破りの発想奨励

A)人のインサイダー化

E)コストの現地水準化

F)技術・ノウハウ差別化

• コア技術や生産プロセス、ノウハウ、ITインフラなどによって、競合が真似できないよう差別化

• 現地生産・調達、設計共通化などを通じ現地のコスト水準に追いつく

• 思い込みに囚われず、現地調査やパートナーの声から新興国の実情を確かめ把握する

• 失敗や変化を恐れず、⺟国での常識の枷を外して発想する文化を作る

• 意思決定層がイノベーションに伴うリスクを果敢に取り、素早く決断する

• 本社社員が異⽂化に慣れると共に、現地人材を社内に取り込み現地の感覚を取り込む

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成功要因の活⽤事例 ― デンソー

企画開発体制

� 海外企業含めた主要⾃動⾞部品メーカーの中で唯⼀、ASEAN地域に本格的な開発拠点を設置

• ASEANでは⾃動⾞メーカーすら所有していない風洞実験装置も設置

� 現地人材約80名を含む90名の開発チームを擁する

• 必ず日本人と現地人の両方を含むチーム体制を組み、ニーズの汲み取りと⾼度技術活⽤の両方を実現

� タイで地域最適製品の企画に取り組み、コア技術開発は日本で実施、⾞種対応設計や評価をタイで実施する体制

• 将来的には新興国向け先進製品の商品企画、⾞種対応設計、評価もタイで担えるようにする方針

A)人のインサイダー化

デンソー タイテクニカルセンターASEAN向けローカルフィット製品開発 「アジアならではプロジェクト」

市場調査

� 日系メーカーが市場を占めるASEANで、日系メーカーの求めるローカルフィット製品の開発を進める「アジアならではプロジェクト」を展開中

� ⼀例として、各国のユーザー1,000人に詳細なアンケート調査を定期実施し、細かなニーズの違いを定量的に分析

• 外注ではなく、自社エンジニアがスーパーの駐⾞場などで直接ヒアリングしニーズを深堀り

B)現地ニーズの直視

活動成果

� バイク向けアイドリングストップ機能

• 3秒停⾞すると作動し、0.2秒で復帰するアイドリングストップ装置が市販されていたが、発⾞時の⼀瞬のもたつきがユーザーの不満になっていたため、渋滞による停⾞か右左折のための停⾞かを判別し、⾃動調整する機能を検討し、現地発信の商品企画として提案

• その際、完璧な⾃動化を⾏おうとすると、複雑なシステムが必要になり高額になるため正解率8割程度を目指し、残りは手動キャンセルボタンでユーザー側に委ねることで低価格化を目指した。完璧を求められないASEANだからこそ企画できた

� 吹き出し口削減・オート機能付きカーエアコン

• 市場調査で、5つあるエアコンの吹き出しパターンのうち、ASEANでは顔周りと足元しか使用されず、吹き出しパターンは2つで十分であることが判明

• 一方で、ASEANユーザの価値観として”友達に自慢できる”事が重要であり、むやみに機能を減らさないでほしいという意⾒が多かった

• そのため、吹き出しパターンを削減(5⇒2)する引き換えとして、簡易オート機能を搭載し、⾼級感をカバーした

C)常識破りの

発想奨励E)コストの現地水準化

D)大胆で迅速な意思決定

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成功要因の活⽤事例 ― LIXIL

*1 http://inax.lixil.co.jp/company/news/2010/060_eco_1214_742.html

LIXIL循環型無水トイレシステム「エコ・サニテーション」

ベトナムでの成功

� 日本のコア部材を活用して品質で差をつけつつ、現地人材にデザインを任せて現地ニーズを取り込み、現地生産も進めることでコストを落として⽔洗トイレのトップシェアを獲得

• 進出当初、ライバルメーカーは1年で⽔漏れが起きるような製品だったが、日本のコア技術を活用して10年持つ品質を実現

• 日本のシンプルなデザインは受けなかったため、設計・デザインは原則現地人化。現在は日本人1名ベトナム人10名の体制となっている

• 現地生産を進めることで、日本の1/5〜1/10程度の価格を実現し、都市のマスユーザーを獲得

農村ニーズの発⾒

� インフラが整っていない農村部では、近代的なトイレが普及しておらず衛⽣問題が発⽣している事を発⾒

• 野外に足置き場としてレンガ2つが埋め込まれ、便落とし口として穴があけられているだけのトイレが一般的で、周囲を汚染し、感染症の原因となり、乳幼児の命を奪う状況が発生していた

• 水洗トイレに必要な水や電気が無いことに加え、人々が便器の必要性⾃体を理解していない状況だった

開発成果

� 循環型無水トイレシステム「エコ・サニテーション」

• 床下に設置した装置内で屎尿(しにょう)を乾燥、バクテリアで発酵分解することで、水が必要ない循環型無水トイレを開発

• 日本で基礎構造を開発した後、ベトナムの現地大学と連携し、使い方を踏まえた改善や、コスト低減、マーケティング調査などのフィージビリティスタディを実施中

各国への展開

� インドネシア、ケニア等の同様の問題を抱える新興国への展開に向けて、各国でフィージビリティスタディを開始

� 日本の農村部での活⽤も⾒据えて徳島県でも実証中

F)技術・ノウハウ差別化

E)コストの現地水準化

A)人のインサイダー化

B)現地ニーズの直視

• 汚れが付着しにくく、かつ電気や水を使わず使用ルールが簡単な構造で、価格は農村部の方たちの1 か月分の生活費を目指している エコ・サニテーション概念図*1

E)コストの現地水準化

B)現地ニーズの直視

C)常識破りの

発想奨励

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成功要因の活⽤事例

企画開発戦略

� インドで意図的なリバースイノベーションを狙う方針を示し、下記3点を原則化

• 中規模都市と農村部をターゲット市場に

• ⼿頃な価格とシンプルさ両⽴

• 先進国、新興国の両市場のニーズに合う製品開発

海外製造業X社

企画開発体制

� インドに本社に次ぐ規模の研究開発拠点を設置

• 現地に所属する研究員のうち、極少数を除く全員が現地人材

• エンジニアや営業などの分野の垣根を取り払ったチームで企画開発を実施。更に知財対応、試験場等の機能も有し、企画から製品化まで一か所で完結させることができる

• 企画内容を製品化して市場に投入する権限を持たせ、迅速な意思決定を実現

開発成果

� ⼀台で複数⽤途に対応する新型医療機器

発売後の反響

D)大胆で迅速な意思決定

C)常識破りの

発想奨励A)人の

インサイダー化

• 利⽤者を巻き込んでインドの現場を調査し、色々な機器を導入する余裕が無い事を踏まえて従来は⽤途ごとに異なる機器が必要だったところを、一台で対応可能にした

• また不安定な電⼒供給に対応して少ない電⼒でも稼働を可能にし、更に⼩型化・軽量化・低価格化も実現

21% 22%26%

2010年 2011年 2012年

� インドで発売後、国内シェア向上に貢献

� その後、ヨーロッパやオセアニア等の地域でも販売され、今ではドイツなどインド国外での売上が過半を占めるまでに成⻑

インドにおける当該製品シェア

B)現地ニーズの直視

E)コストの現地水準化

製品発売

C)常識破りの

発想奨励

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成功要因の活⽤事例

企画開発体制

� 米国研究所

• 70以上の⺠族が住む多文化都市に研究所を設置して調査フィールドに活用することで、世界中の様々な⺠族の肌や髪の特徴を研究。中でもアフリカ系⼈種の研究に注⼒

� アフリカ研究所

• 現地のリアルな生活習慣を調査し、消費者のニーズや美を保つための理想的⾏動、肌

や髪のトラブルの原因につながる⽣活⾏動等

について研究

• 施設内に世界の様々な浴室や化粧室等の設備があり、消費者が私物の化粧品等を普段通りに使用する様子や新製品を使う様子を観察することで、商品のリアルな使われ⽅や新製品の臨床に関する実験を実施

� 南アフリカ開発チーム

• 殆どのスタッフが現地の人材で南アフリカ開発チームの幹部に製品開発や企画の権限あり

開発成果

�アフリカ人向け化粧品

• 先進国のブランドラインと基礎技術をベースに、商品化の決定、市場調査、成分の現地化、臨床実験、マーケティング等全てを南アフリカのチームが担当

• 白人と異なる⿊⼈の肌質や、肌を明るくしたいというニーズに応えるため、成分をローカライズ

• ブランド⼒を維持しつつ現地の消費者の⼿に届く価格設定を実現するため、製品の低コスト化とパッケージの小型化を実施

�アフリカ人向けヘアケア製品

• 南アフリカの⼥性のニーズ調査結果から、製

品に特定の機能が求められている事が判明

• この機能を実現するために向いている天然成分を採用し、ニーズに答える製品を発売

• 企画当初からアフリカ系アメリカ人、アフリカ人をターゲットと設定し商品を展開

B)現地ニーズの直視

A)人のインサイダー化

D)大胆で迅速な意思決定

E)コストの現地水準化

海外製造業Y社

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成功要因の活⽤事例

海外製造業Z社

企画開発体制

� 市場調査を専門にする部隊があり、企画・開発に基礎情報をインプットしている

• 例えば、ユーザーは何時間屋外にいるのか、屋内にいるのか、どのような仕事をしているのか、直面している悩みはなにか、などを調査している

� 他国製品をインドに導入する際には、特定のエリアにおいてテストマーケティングを⾏い、ローカルフィットのニーズを⾒極めて反映させていてる

� 北部と南部でも嗜好が異なるため、地域ごとに開発センターを置いている

開発成果

� インド発化粧品ブランド

• インドの研究所で開発された特定の化粧品ジャンルでは世界初となる製品

• その後多数の競合が参入したが、今もインドの当該市場の半分以上を独占し、年率20%以上のペースで成⻑

• 更に、アジア・アフリカ等40カ国にも展開中

新興国に向けたイノベーションの考え方

� インドでは先進国と⽐べて利益率が低くなりがちで、特に新しいイノベーションを産み出す際にはマージン確保が難しい事

があるが、まずはブランド価値を打ち⽴てる事を再優先とし、利益は後からついてくると考えるようにしている

� コストに⾒合うだけの商品は出さない。競合製品よりも優れた費⽤対効果があるものでなければ選んではもらえない。た

だし時には、現時点では競合に負けていても、将来的に伸びる⾒込みがあれば、リスクを取って市場に出すことも重要

D)大胆で迅速な意思決定

B)現地ニーズの直視

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成功要因の活⽤事例

海外非製造業X社

業務横断で消費者を調査� マーケティング、オペレーション、財務など機能横断のチームを現地人材で作り、街中に出て人々がどこへ⾏くか、どのような環境で⽣活しているか等を観察

� 上層部が直接スポンサーする事で素早い意思決定を実現

原則ローカル中心の意思決定� 主軸となる商品についてはグローバルから提供され、これらのレシピ等を変更する際には承認が必要

� 一方、ローカル側はローカルニーズに合わせた商品開発・試作品開発・消費者テスト・量産化の権限を持つ

新興国向けKIOSK店舗の導入

� 新興国進出の際にはあまり投資が⾏えないため、

従来なかった極端に小さな店舗で絞った商品だけを販売する手法を取ることで大規模進出の足掛かりとした

• 扱う商品は収益性の高い製品に絞った

• 中南米に進出際に出店したのがきっかけとなり、以降アジアにも普及し、シンガポールへの導

入を経て中国でも採用

現地に即した商品開発への挑戦� 2013年6月には、中国に合わせた食材を使ったローカルフィット商品も投入

持続可能な利益の確保� 模倣防止

• 店舗形態・オペレーションや、商品は特にローカル競合企業にどうしても模倣されやすいが、オペレーションの効率性や品質といった“中身”については真似することは難しいため、意識的に強化している

D)大胆で迅速な意思決定

B)現地ニーズの直視

F)技術・ノウハウ差別化

C)常識破りの

発想奨励

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成功要因の活⽤事例

各国に開発権限を移譲� 各国に10人ほどの地域開発チームを置き、新商品の企画や試作品の調理、味つけの検証等を⾏って

いる

• 大きな研究機関や開発チームを設けるよりも、小さくても権限を持った開発チームを数多くの地域に設置することを重視

� 独自の予算を持ち、アイデアがあれば試作品をつくって2か⽉程度複数の地域でテストマーケティングする権限を有する

• 例えばアフリカでは、北部・南部を含めた5店舗で新商品を試すことができる

個別化とのバランス� 本社に各地域の商品開発に関する情報をまとめることを専門とするスタッフを配置

• いいアイデアがあれば他国の拠点にも紹介したり、ブランドイメージを崩してしまうような企画があれば企画の中止を促す指示を与えたりする等の役割を担っている

D)大胆で迅速な意思決定

B)現地ニーズの直視 アフリカへのローカルフィット

� アフリカのローカルフードを導入

• サイドメニューとしてアフリカのローカルフードをセットにした商品を発売

• アフリカ南部は水気が多いものを好むのに対し、北部ではより乾燥したものを好むため、地域によって⽔分の配合量を変える等の工夫を⾏った結果、売上の半分を占める⼈気商品と

なった

� 店舗設計の工夫

• アフリカでは識字率が低く、メニューを理解できない消費者が多いため、掲載する商品数を犠牲にし、メニューボードに全商品の写真を表示している

• アフリカは気候が暑く日差しが強いため、水分量の多いメニューを増やし、できるだけ多くの客

が涼しい店内で飲食できるようイートインスペースを広くしている

C)常識破りの

発想奨励

海外非製造業Y社

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中小企業・サービス業についても、過去の調査で今回の成功要因に近似した事項が「海外展開の際に効果のある取り組み」とされており、大きく要因が変わることはないと想定。

(参考)中小企業・サービス業の場合の成功要因

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50%

低価格品の充実

現地向けの商品開発

現地人材の活用

アフターサービスやメンテナンスの強化

研究開発を通じた製品差別化

情報発信による認知度向上

商社等の活用

販売代理店の活⽤

試供品や試作品の提供

当該地域経験者日本人の採用

その他

フランチャイズの活用

製造業 非製造業

(サービス業等)

A

C

E

B D

F

A

海外販路の開拓にあたって効果のある取り組み(製造業・非製造業の中小企業対象調査)

* 経済産業省/三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成23年度海外展開による中⼩企業の競争⼒向上に関する調査」。中小企業3,671社へのアンケート調査に基づく。

関連する成功要因

D)大胆で迅速な意思決定

F)技術・ノウハウ差別化C)常識破りの

発想奨励

E)コストの現地水準化

A)人の

インサイダー化

B)現地ニーズの直視

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第Ⅰ章 本調査について

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の必要性

第2節 調査のスコープとアプローチ

第Ⅱ章 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因と日本企業の課題

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因

第2節 「新興国から発想したイノベーション」を生み出す上での日本企業の課題

第Ⅲ章 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けた方向性

第1節 日本企業が取り組むべき事項と取り組みが進んでいない原因

第2節 日本企業を動かすアプローチと施策の考え方(割愛)

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一方、日本企業は成功要因を必ずしも十分実現できている訳ではなく、ヒアリングに基づいて課題を整理すると、特にイノベーションの発端となる①Ideationの部分に弱点が多い事が明らかになった。

日本企業の課題

B)現地ニーズの直視

A)人のインサイダー化

D)大胆で迅速な意思決定

C)常識破りの発想奨励

③ ニーズの情報を提供してくれる現地機関(研究機関、NGO等)との連携が上手く出来ない

④ 地方部や新・新興国の市場データや規制情報等が入手しにくい

① 新興国市場を⼗分理解し、企画やマネジメントが出来る⽇本⼈社員が

少ない

② 主体的に企画化し推進できる⾼度な現地⼈材の獲得・育成や、組織内

での登用が出来ていない

⑤ ⽇本国内のルールを重視しすぎる等の理由から、大胆なやり方が認められない環境がある

⑥ ニーズに近い現地側に企画の権限が無く、スピーディーに対応できない

⑦ 手堅い短期的な利益が重視され、不確定要素の多い挑戦が認められない

①Ideation

②Pro

duct/

Service

Development

E)コストの現地水準化 ⑧ ⾃社基準に叶う現地サプライヤが⾒つからない

F)技術・ノウハウ差別化

⑨ 転職率が⾼い等の理由から、技術が競合に流出しやすい

⑩ 新興国で⽇本企業に不利な標準規格が導⼊されつつある

� 多くの企業から課題が挙げられ、日本企業の弱点となっている

⇒政策的支援の必要性高い

� 比較的課題が少ない

日本企業の弱点

開発の中身に係る事については企業の努⼒であり、

支援して欲しいことはあまり思いつかない(部素材)

日本企業が直面する課題成功要因

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⽇本企業の意識として、他国と比べて技術開発・ビジネスモデル偏重で、①Ideationに関連する消費者の理解や人材惹きつけ、社内文化醸成、イノベーションPJTへの投資等を重視しない傾向が明らかになっている。これには、日本社会全体のリスクテイクを避ける傾向も影響しているとみられる。

日本企業の課題 ― イノベーションに重要な能⼒についての⽇本企業の意識

* GE「Global Innovation Barometer 2013」

0% 20% 40% 60% 80% 100%

ベトナム中国インド

マレーシアナイジェリアイスラエル

サウジアラビアアイルランド

シンガポールアラブ⾸⻑国連邦

韓国アメリカ

スウェーデントルコ

オーストラリア南アフリカ

カナダオランダイギリスロシア

ブラジルメキシコ

ポーランドドイツ日本

イノベーションのために重視する企業能⼒* 社会全体がイノベーションに伴うリスクを許容していると思うか*C

関連する成功要因

D)大胆で迅速な意思決定

F)技術・ノウハウ差別化C)常識破りの

発想奨励

E)コストの現地水準化

A)人の

インサイダー化

B)現地ニーズの直視

新興国での新しい

チャレンジは数字が

確約出来るもので

はないが、明確な

収益を示せないと

中々本社に認めら

れない(電機)

-30% -20% -10% 0% 10%

新しいビジネスモデルの考案

新たな技術の開発

最適なビジネスパートナーとの連携

消費者の理解と市場動向の予測

常識や⼀般通念への挑戦

社内外からのデータ発掘

リスクテイクとリスク管理

イノベーティブな人材の惹きつけ

イノベーションのパイプライン管理

⻑期のイノベーションProjectへの投資

イノベーションを育む社内環境・文化

成功率が低いProjectの早期排除

イノベーティブなProjectへの投資集め

イノベーション活動への明確な予算

日本企業が重視

日本企業回答と海外平均との差分

B

C

F

A

D

C

F

B

D

D

D

D

D

B

自社含め多くの日本企業はマーケティングの基礎を理解せず営業と混同しており、消費者をデータを基にして分析し、仮説を⽴てて改善していく事が身についていないため、従来のやり方が通

用しない新興国市場で勝てなくなっている(電機)

新興国現地はチャレンジ精神旺盛

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意識だけでなく日本企業の実態としても、欧米と比べて現地人活用が進んでいない、本社方針を押し付けがち・・・(次頁続く)

日本企業の課題 ― 日本企業の組織状況(1/2)

現地法⼈の経営職にしめる⺟国⼈⽐率*1、2 駐在員が本社向けミッションを担う度合い*2

77%

48%

41%

34% 33%30% 30%

26% 25% 23%18%

14%

日本

イタリア

ドイツ

スウェーデン

オランダ

フランス

フィンランド

スイス

ノルウェー

英国

デンマーク

米国

*1 Harzing A K. (2001) “Who‘s in charge? An empirical study of executive staffing practices in foreign subsidiaries” Human Resource

Management、日本601社を含む11カ国2627社へのアンケート調査に基づく。

*2 Harzing, A.W.; Noorderhaven, N.G. (2008) Headquarters-subsidiary relationships and the country-of-origin effect, in: Feldman, M.P. &

Santangelo, G.D. (2008) New Perspectives in IB Research - Progress in International Business Researchの4カ国約150社のアンケートに基づく

� 日本の現地法人の経営職ポストの大半は日本人

4.91

4.19 4.05 3.94

5.73

4.65 4.75

4.34

日本 ドイツ 英国 米国

本社方針の浸透

本社との連絡役

� 日本企業の駐在員は本社に向いて仕事をしている傾向

(1-7点評価の平均)

A A

関連する成功要因

D)大胆で迅速な意思決定

F)技術・ノウハウ差別化C)常識破りの

発想奨励

E)コストの現地水準化

A)人の

インサイダー化

B)現地ニーズの直視

テナントのアパレル企業を⾒ると、出来るだけ現地人に任せて現地に合わせた商品を売っている企業ほど良く売れている(不動産)

内向きな日本の組織構造は、現地社員が定着しにくい原因の一つになっている(産業機械)

C

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(続き)英語対応が遅れている、現地向け製品の開発を現地で⾏わない、などの状況がある。

日本企業の課題 ― 日本企業の組織状況(2/2)

* Harzing, A.W.; Noorderhaven, N.G. (2008) Headquarters-subsidiary relationships and the country-of-origin effect, in: Feldman, M.P. &

Santangelo, G.D. (2008) New Perspectives in IB Research - Progress in International Business Researchの4カ国約150社のアンケートに基づく

海外⼦会社における社内公⽤語の⽐率*

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

日本ドイツ英国米国

英語

公用語無し

英語以外

� 日本は現地法人にも日本語対応を求める傾向が強い

製品のうち現地で開発された割合*

19%

27%

39%

30%

日本ドイツ英国米国

� 日本企業は現地向け製品の現地開発が進んでいない

A A B

関連する成功要因

D)大胆で迅速な意思決定

F)技術・ノウハウ差別化C)常識破りの

発想奨励

E)コストの現地水準化

A)人の

インサイダー化

B)現地ニーズの直視

開発部門は図面からして日本語で、国際化が最も遅れた部署の一つ

(電子機器) 日本で全て開発しているが、ニーズを実感しない本社開発部隊は腰が重め。また⼈事異動も多く新興国への専門性が蓄積されない

(電機)

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日本企業自身も、欧米企業と比較すると②Product/Service Developmentに当たる低コスト化では互角だが、言語対応、現地ニーズの把握、現地人材活用など①Ideationの成功要因に関連する項目で欧⽶が勝ると認識している。

日本企業の課題 ― ⽇本企業の⾃⼰認識

60% 40% 20% 0% 20% 40% 60%

言語対応

現地国へ展開するための戦略⽴案

現地ニーズの把握・情報収集

現地人材の活用

現地国企業との連携

規制や標準化などの現地向け対応

現地国向け研究開発への⼒の⼊れ⽅

技術情報・ノウハウの流出対策

低コスト化への対応

欧米企業が優れている 日本企業が優れている

* 経済産業省「我が国企業の研究開発投資効率に係るオープン・イノベーションの定量的評価等に関する調査」。日本企業907社へのアンケート調査に基づく。

新興国への進出に際し、欧米企業と日本企業のどちらが優れていると思うか*

A

B

A

B

F

E

関連する成功要因

D)大胆で迅速な意思決定

F)技術・ノウハウ差別化C)常識破りの

発想奨励

E)コストの現地水準化

A)人の

インサイダー化

B)現地ニーズの直視

フィリップスはデザイン性とブランド作りが上手く、サムスンはマーケティングに⻑けているなど、日本企業は機能以外の面でマーケットに答えるという点で負けている。例えばサムスンがインバーター技術を導入した際、「デジタルインバーター」という名称で差別化。自社の方が性能が優れていたにも関わらず、大敗を喫した例がある。

(電機)

欧米競合は新興国に合わせた

製品を手に入れるため、現地企業ごと買収しセカンドブランド化する事すら始めている

(産業機械)

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組織マネジメント

39

以上を整理すると、⽇本企業は新興国において成功要因を⼗分実現できない悪循環に陥っており、

背景には日本の組織マネジメントや⼈材、開発組織、経営管理等の問題があると想定され…(続く)

Ideationにおける日本企業の課題構造(仮説)

Ideationに関する日本企業の悪循環イメージ

関連する成功要因

D)大胆で迅速な意思決定

F)技術・ノウハウ差別化C)常識破りの

発想奨励

E)コストの現地水準化

A)人の

インサイダー化

B)現地ニーズの直視

新興国市場のシェア

新興国へのリソース投資

現地ニーズを踏まえた発想

現地ニーズに適した製品・サービス投入

大胆・迅速な意思決定

市場におけるブランド⼒

現地人材・パートナー活用

ーー

ー ーー

実績が上がらず積極投資が困難

市場にブランドが浸透しない

優秀な現地人材が採用・定着しない

適切なパートナーと連携できない

原資が割り当てられないので意思決定が進⾏しない

現地の情報・ニーズが分からず発想が出ない

現地ニーズに適した製品・サービスを

企画開発できないリスクを取れず現地ニーズに合った

製品・サービスを投入できないユーザーに支持されずシェアが取れない

A

C

B

D

悪循環

業務が縦割り・属人的

現地人材活用を⾒越した

⼈事制度が未整備

現地人材のキャリアパスが不明確で

待遇も良くないため

働きにくい

暗黙知が多く機能横断的な

連携が難しい

本社人材

日本人以外との仕事経験が少ない

⾔葉・⽂化を理解せず

関係構築できない

日本人側が海外人材と働く事に抵抗が強く

やり方も分からない

日本人側が現地の⾔葉・⽂化を理解せず

関係を築けない

開発組織

技術固執・プロダクトアウト思考

新興国の現場と開発機能が遠い

経営管理

新興国関連の意思決定プロセスが⻑い

イノベーションの為のバッファを与えない

開発者が新興国の現場ニーズに疎く

手元の技術・製品を売ることばかり考えている

現地法人から本社の意思決定層までの

稟議が⻑い

更に短期的収益が重視され

中⻑期のリスクが⾼い

投資が忌避される

←日

本側

新興

国側

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組織マネジメント 本社人材 開発組織 経営管理

40

この悪循環を好循環に変えるためには、背景にある原因を逆転させるべく企業自身がすべき事と、そこで政府が支援できる事は何か、という視点で方向性を考えていく必要がある。

悪循環から好循環へ

Ideationに関する日本企業の好循環イメージ

関連する成功要因

D)大胆で迅速な意思決定

F)技術・ノウハウ差別化C)常識破りの

発想奨励

E)コストの現地水準化

A)人の

インサイダー化

B)現地ニーズの直視

新興国市場のシェア

新興国へのリソース投資

現地ニーズを踏まえた発想

現地ニーズに適した製品・サービス投入

大胆・迅速な意思決定

市場におけるブランド⼒

現地人材・パートナー活用

++

+ ++

成果が出ているため積極投資が可能

市場にブランドが浸透

優秀な現地人材が定着し、

適切なパートナーとも連携できる

投資姿勢のため意思決定がしやすい

現地の情報・ニーズが豊富に集まり、発想に繋がる

現地ニーズに合った製品・サービスが

企画開発されるリスクを取って現地ニーズに合った製品・サービスを投入できるユーザーに支持され

シェアが高まる

A

C

B

D

好循環

オープンで横連携が盛んな組織

現地人材活用を⾒越した⼈事制度

キャリアパスがクリアかつ処遇も公平で

現地人材が働きやすい

社内のリソースが可視化されており

かつ連携が歓迎される

現地人材との仕事経験が豊富

⾔葉・⽂化を理解し

関係構築できる

日本人側が海外人材と働く事に抵抗が無く

働き⽅も理解している

日本人側が現地人材とスムーズに

やりとり出来てネットワークも持っている

マーケットイン思考

新興国の現場と開発機能が近い

シンプルな意思決定プロセス

イノベーションの為の別予算

開発者が新興国の現場ニーズに詳しく

マーケットから製品を発想できる

新興国に向けた発想が稟議の途中で潰されない

またリスクのある取り組みでも受け入れられる

←日

本側

新興

国側

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第Ⅰ章 本調査について

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の必要性

第2節 調査のスコープとアプローチ

第Ⅱ章 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因と日本企業の課題

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因

第2節 「新興国から発想したイノベーション」を生み出す上での日本企業の課題

第Ⅲ章 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けた方向性

第1節 日本企業が取り組むべき事項と取り組みが進んでいない原因

第2節 日本企業を動かすアプローチと施策の考え方(割愛)

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� 先進的な国内外企業では、Ideationの実現を妨げる原因を取り除く様々な取り組みが始まっており、 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けては、こうした取り組みを広く日本企業に広げていく必要がある。

� 一方現状、前述の取り組み導入が進んでいない背景には、ヒアリングの結果やデータを踏まえると経営層や実務者層の「やりたくない・急いでいない(忌避・先送り)」、「出来ない(能⼒不

足)」といった事情があるものと想定される。

� 日本企業に新興国に向けた企画・開発の必要性を広め、⾏動を促進するには、経営側に「危機感・損得・手軽さ」を、実務者側には「面白さ・実現可能性」を発信し、組織の上下両方から働きかける事が有効なのではないか。

� これを踏まえ、スパイラル的に社会的関⼼度と実践事例を増やし、「新興国から発想したイノベー

ション」が当たり前に⾏われる状態を産み出すため、⽇本企業の組織の上下両側に対し、それぞ

れに適したチャネルを活用してメッセージの拡散を狙う2つの施策を検討したい。

• 経営層に向けて「儲かる」「他社もやっている」「損するかも」という意識を広めるため、経営者に影響⼒があり、かつ新興国に向けたイノベーション促進が利益になる企業(銀⾏、メディア等)と共同で、

「新興国イノベーション⼒指標」や⾒本市などの段階的な施策を面的に展開し戦略的に「空気」を創る。

• 新興国からニーズを集め、⽇本企業等が資⾦や技術などを出し合って解決するプロジェクトを形成するクラウドファンディング・クラウドソーシングプラットフォームを構築。政府のサポートを組み合わせて実現を後押しし、成功事例をネットで拡散。中堅社員に「面白そう」「出来るかも」という意識を広める。

第Ⅲ章 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けた方向性

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第Ⅰ章 本調査について

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の必要性

第2節 調査のスコープとアプローチ

第Ⅱ章 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因と日本企業の課題

第1節 「新興国から発想したイノベーション」の成功要因

第2節 「新興国から発想したイノベーション」を生み出す上での日本企業の課題

第Ⅲ章 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けた方向性

第1節 日本企業が取り組むべき事項と取り組みが進んでいない原因

第2節 日本企業を動かすアプローチと施策の考え方(割愛)

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先進的な国内外企業では、Ideationの実現を妨げる原因を取り除く様々な取り組みが始まっており、 「新興国から発想したイノベーション」促進に向けては、こうした取り組みを広く日本企業に広げていく必要がある。

新興国市場に向けたIdeationを妨げる原因と日本企業が取り組むべき事項(1/2)

業務が縦割り・属人的

現地人材活用を⾒越した

⼈事制度が未整備

日本人以外との仕事経験が少ない

⾔葉・⽂化を理解せず

関係構築できない

技術固執・プロダクトアウト思考

新興国の現場と開発機能が遠い

新興国関連の意思決定プロセスが⻑い

イノベーションの為のバッファを与えない

現地⼈材のキャリアパスが不明確で待遇も悪く、働きにくい

組織内に暗黙知が多く、機能

横断的な連携も難しい

日本人側が海外人材と働く事

に抵抗が強くやり方も分からない

⽇本⼈側が現地の⾔葉・⽂化を理解せず、関係を築けない

企画・開発者が新興国の現場

ニーズに疎い

現地法人から本社の意思決定

層までの稟議が⻑い

新興国に向けたイノベーション創出のために

企業が取り組むべき事項

D)大胆で迅速な意思決定

C)常識破りの発想奨励

①Ideation

成功要因

B)現地ニーズの直視

A)人のインサイダー化

Ideationの実現を妨げる原因

企画・開発者が手元の技術・製

品を売ることを中心に考えている

短期的収益が重視され中⻑期のリスクが高い投資が忌避される

現地競合に対し競争⼒ある報酬を設定し、更に現地採⽤の社員にも本社管理職と連続したキャリアパスを

設定し、所属・国籍問わず世界共通で評価。

②オープンで横連携が盛んな組織

①現地人材活用を⾒越した⼈事制度

③現地人材との仕事経験が豊富

④⾔葉・⽂化を理解し

関係構築できる

⑥マーケットイン思考

⑤新興国の現場と開発機能が近い

⑦シンプルな意思決定プロセス

⑧イノベーションの為の別予算

部署間や外部機関・企業との連携を推奨し、連携を⽀援する機能を設け、連携時の利益配分・権利処

理等の⼿続き等を形式化する

企画・開発に携わる若⼿・中堅の⽇本⼈社員と新興

国人材との接点を増やし早期に抵抗感を無くすと共

に、多文化対応の研修や、ビジネス実践の場を与える

企画・開発に携わる若⼿・中堅の⽇本⼈社員に翻訳無しでコミュニケーション出来るように英語・現地語学

習と現地の人間関係ネットワークを構築するよう促す

現地法人が企画を発案出来るようにしたり、日本側の企画担当者を現地に⻑期で派遣する仕組みを導

入する

開発プロセスの変更や⼈事交流によって、営業・マー

ケティングと企画・開発が共同で製品・サービスを開発

する体制を構築する

新興国向け製品・サービス開発の意思決定については、中間管理職の決裁を省き、最終意思決定者が

判断を下す仕組みを作る

新興国向け製品・サービス開発に対し、先進国向けとは別の投資回収額・期間などを設定した専用の予算

枠を設定したり、CSR予算と連携させる

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(続き)

新興国市場に向けたIdeationを妨げる原因と日本企業が取り組むべき事項(2/2)

実践事例

店⻑候補で採⽤した全正社員と全役員の賃⾦体系を統⼀する「世界同⼀賃⾦」を導⼊。更に各国の人材情報を統⼀データベースに集積し、共通の評価制度のもと所属国関係なく異動可能な仕組みを構築

ファーストリテイリング

事業部門・R&D部門から意⾒を集めて今後⾃社に役⽴つ技術を持つベンチャーを発掘し、資⾦とオフィスを貸与するTechnology to Business(TTB)という部門を米国と上海に設置

シーメンス

リバースイノベーションを起こす事をミッションとして、独自に企画の権限を与えられた上級幹部直轄の組織Local Growth Team(LGT)を導入。⼀つの独⽴会社のように、他事業の影響を受けず単独でP/L責任を負う。世界中の拠点で⼗数個のプロジェクトを実⾏中

GE

インドのフィリップス・イノベーション・キャンパスでは、エンジニアや営業などの分野の垣根を取り払ったチームで企画開発を実施。知財対応、テストセンター等の機能も有し、企画から製品化まで一か所で完結させている

フィリップス

ベトナムにASEAN向けの洗濯機、冷蔵庫の研究開発拠点を設置。ASEANの現地人材を採用し、製品企画・開発・生産まで一気通貫で出来る体制を整えた

パナソニック

1年間、社員に「その国の言語や文化について知り尽くして、現地人のようになる」事をミッションとして、⼀切の本業から離れて現地で⾃由に活動させる「地域専門家制度」を20年以上前から導⼊

サムスン

自社社員を新興国等のNGOや企業、政府機関等へ最大1年間派遣し、現地の課題を発掘して自社技術・サービスを活用して解決する取り組みを99年に世界初導⼊。その後他社でも同様の取り組みが広がる

アクセンチュア

②オープンで横連携が盛んな組織

①現地人材活用を⾒越した⼈事制度

③現地人材との仕事経験が豊富

④⾔葉・⽂化を理解し

関係構築できる

⑥マーケットイン思考

⑤新興国の現場と開発機能が近い

⑦シンプルな意思決定プロセス

⑧イノベーションの為の別予算

CSR活動の一環で、ケニアで09年より栄養添加・現地風味付けのチキンラーメンを現地大学と共同開発し、給⾷として配布。製品の拡販が⾒込まれたため、13年に同⼤学と合弁会社を設⽴、本格的な事業展開に切り替えた(次頁参考)

日清食品

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新興国から発想したイノベーションは短期的な収益化が難しい場合も多いため、CSR、非営利の活動を⼊り⼝として新興国の社会課題を解決する事業・製品を産み出すきっかけにしている事例もあ

る。

(参考)CSR予算の戦略的活⽤

日清食品CSR活動「Oishiiプロジェクト」からのアフリカ参入

CSR活動「百福士プロジェクト」

� 創業50年を契機に、社会活動に熱心だった創業者・安藤百福の遺志をついで、今後50年間に、合計100の社会貢献活動を⾏う事を目指すプロジェクトを開始

• 江⼾時代から、外交使節団の代表を「正使」といい、正使の下で働く人を「副使」と呼んだ故事に習い、安藤百福の志を継ぐ人(社員)を「百福士」と名づけた

CSRから事業化へ

� ケニア・近隣国市場の急拡⼤に気づき、 2013年より開発した商品を本格的に市場へ投⼊する⽅針に切り替えた

• 市場は5年後に5億⾷に成⻑する⾒込み

• ジョモケニヒャッタ⼤学の認知度・信頼性を活⽤するため、3割の出資を受けて合弁、新⼯場設⽴

アフリカ事業化⾃⽴⽀援「Oishiiプロジェクト」

� 2008年より、百福⼠プロジェクトの第⼀弾として、アフリカでCSRプロジェクトを開始

• アフリカの⼈々が、インスタントラーメンの原料を⾃国で調達し、ニーズに合うフレーバーを開発し、その生産まで⾏えるようにする事で産業を育成する事が目的

• ⾃社陸上競技部に出⾝選⼿の多いケニアから活動をスタート

開発成果

� 地元のジョモケニヒャッタ大学と、ケニア人の味覚にあったチキンラーメンを共同開発

• ケニアで調達可能な素材を優先的に使い、栄養バランス、麺の⻑さ、フレーバー等を研究

• 地元の焼⾁料理であるニャマチョマ味を新たに開発

� ⼤学に⽣産設備を寄贈し近隣学校の給⾷として無償配布

• 1日に1000食のチキンラーメンを生産

出典:http://www.nissinfoods-holdings.co.jp/

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一方現状、前述の取り組み導入が進んでいない背景には、ヒアリングの結果やデータを踏まえると経営層や実務者層の「やりたくない・急いでいない(忌避・先送り)」、「出来ない(能⼒不⾜)」といった事情があるものと想定される。

日本企業の取り組みが進んでいない理由―ヒアリング(1/2)

②オープンで横連携が盛んな組織

①現地人材活用を⾒越した⼈事制度

③現地人材との仕事経験が豊富

④⾔葉・⽂化を理解し関係構築できる

� 現地人のマネジメントの報酬を日本と揃えようとすると、物価水準の調整が難しい事や、新卒から叩き上げた日本人社員側からの抵抗感が阻害要因になる。自社の場合は、それでもトップが決断したお陰で導入出来た(建材)

� ⽇本⼈駐在員が⽴ち上げを担当してきた経緯があり、制度や感情⾯のしがらみを整理しないといけない(教育サービス)

� 海外事業が一定規模になるまでは、当面検討しない方針(教育サービス・出版)

� 社内連携については、一部の部署は国内重視の思想があったり、⼯数不⾜から海外に対する興味が低いため、横連携を難しくしている(電機)

� 各々で特に問題なく回っている業務については、他の良いところを取り入れる、あるいは連携するといったことが必要だと理解してもらう事が難しい(教育サービス)

� 中国やインドと共同開発を推進しているが、文化やものの考え方が異なり、価値観の統一に困難を感じている(建機)

� 将来のために体制づくりをするより、現在の事業拡大、スピードの確保の方が優先(服飾)

� 国内事業のための人材育成を優先している。海外に回すだけの人材が足りないため、日本人には国内にいてもらいたい(百貨店)

� マネジメント層で議論すると、反対意⾒はないが、やり⽅で議論が起きて進まない(産業機械)

� インターンシップや駐在体験については⾏っているが、拡大には適当な人材が不⾜している。また帰任後の適正配置・適正処遇の仕組みも無く、受入れ側にも余裕が無い(電機)

� 毎日の仕事が優先。出向前の社員でさえ、言語学習に割く時間を確保するのは難しいので⾏っていない(百貨店)

� まず赴任させることが優先事項であり、⻑期的な準備については、エネルギーが投入されていない(教育サービス)

� 過去に実施したが、即効性が無いためやめてしまった。複数年にわたる計画でなら成功するかもしれない(電機)

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(続き)

日本企業の取り組みが進んでいない理由―ヒアリング(2/2)

⑥マーケットイン思考

⑤新興国の現場と開発機能が近い

⑦シンプルな意思決定プロセス

⑧イノベーションの為の別予算

� 特に基礎的な研究開発については、海外進出に取り組み始めたばかりで、社内でのニーズもそれほど高まっていないので、具体的な対応はまだ議論が始まっていない(建材)

� 現地人に任せようとしても、現地人材のレベルが低く任せることができない。まずは人材の教育が優先(百貨店)

� 新興国での開発には取り組み始めている。ただ、相互の文化の認識、技術レベルの向上はすぐには進められず、時間がかかっている(建機)

� 営業・マーケティングは現地市場に密着しているが、企画・開発はグローバル商品戦略から考える傾向があるため、なかなかマーケットニーズからの思考は難しい(医療機器)

� 現地でのマーケティング機能が未整備なので日本からの出張ベースでマーケティングを実施しているが、経験⼈材が不⾜し、現地でのマーケティング能⼒が⾜りていない(電機)

� 過去に各国で決裁していたことがあるが、その際に秩序なく決裁が⾏われていたため、過去の失敗の悪いイメージが強く残っており、実施するのが難しい(産業機械)

� 任せられるだけの十分なローカルスタッフが育っていない(自動⾞)

� 一つ一つの案件にかかるコストやその期待成果が大きく、開発・生産・販売・保守の多方面の検討が必要なため、自然と段階的な決定プロセスとなってしまう(電機)

� 確度の低いビジネスプランでも試験的にチャレンジする企業文化の変革が必要だとは思っているが浸透していないため、色々な場⾯でのトップメッセージで事業部門上層部の意識改⾰を実施中(電機)

� 現地への権限移譲は完了しているものの、⽇本側のサポートが必要な開発の場合には日本の承認も必要となり、短期に利益が出せる企画・開発が優先され、⻑期的なテーマに予算を回してもらえない現状がある(建材)

� 現地側に予算意識が低い⼈材が多いためまかせられない(食品)

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日本企業の取り組みが進んでいない理由―関連データ(1/3)

0% 20% 40% 60% 80%

現地人社員の育成

グローバル⼈事処遇制度

本社とのコミュニケーション

日本人派遣者の育成

現地法人への権限移譲

経営理念の共有化

現地⼈幹部の理念理解

技術、ノウハウ移転

研究開発機能の移転

資本の現地調達化

その他 2008 2010 2012

現地法人のグローバル経営を進展させるための主要な経営課題*

� グローバル⼈事制度に関する課題認識は⾼まって

いるが、現地への権限移譲については、そもそも必要だという認識も少ない

0% 20% 40% 60% 80%

特になし

給与に関する共通基準

グローバル共通の業績評価

昇進昇格に関する共通基準

持ち株制度

その他 2008 2010 2012

外国人経営幹部のためのグローバルな⼈事制度*

� またグローバル⼈事制度の導⼊実態はほぼ進展し

ておらず、「忌避・先送り・能⼒不⾜」の状況が⽰唆される

* 日本在外企業協会「海外現地法人のグローバル経営化に関するアンケート調査分析」

①現地人材活用を⾒越した⼈事制度

⑦シンプルな意思決定プロセス

①現地人材活用を⾒越した⼈事制度

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日本企業の取り組みが進んでいない理由―関連データ(2/3)

③現地人材との仕事経験が豊富

④⾔葉・⽂化を理解し

関係構築できる人事部門が抱える人事課題*1

�近年ようやくグローバル⼈材の育成を課題と捉える

日本企業が増えてきた

グローバル人材マネジメントの阻害要因*2

� しかし、ノウハウ不⾜やリソース不⾜(=経営⾯で

の優先課題と思われていない)という、 「能⼒不足」や「先送り」が発生している

③現地人材との仕事経験が豊富

④⾔葉・⽂化を理解し

関係構築できる

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

2009 2010 2011 2012

次世代幹部候補の育成 優秀な人材の確保・定着従業員の能⼒開発・キャリア開発 賃⾦・評価制度の改訂

従業員のモチベーション向上 グローバル人材の登用・育成

組織風土の変革 従業員のメンタルヘルス対策その他

60%

38%

32%

20%

18%

18%

16%

12%

8%

8%

6%

6%

社内にノウハウがない

本社⼈事部の⼈員不⾜

本社⼈材の能⼒不⾜

現法⼈材の能⼒不⾜

本社トップの理解不⾜

現法⼈事部の⼈員不⾜

現地の規制・習慣

ノウハウの入手手段がない

現法トップの理解不⾜

コスト

現法従業員の賛同獲得

その他

*1 日本生産性本部「人事部門が抱える課題とその取組に関するアンケート調査結果概要」*2 プライスウォーターハウスクーパース「グローバル人材マネジメントサーベイ2010」

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日本企業の取り組みが進んでいない理由―関連データ(3/3)

43%

39%

38%

33%

29%

28%

17%

16%

13%

妥当な連携先が⾒つからない

自社で開発したいマインドがある

費用がかかる

外部との連携に慣れていない

技術の流出に懸念している

知財の問題がある

必要な技術はグループ内で揃う

関連会社との連携を重視

連携拠点が不⾜している

外部と連携したR&Dを進められない理由*1

54%

48%

44%

43%

33%

32%

29%

13%

10%

4%

上層部の要求

テーマ⽴案が難しい

リスクへの懸念

製品サイクルの短期化

事業部の要求

R&D費の縮小

担当者の業務増加

担当者の水準低下

成果評価への懸念

その他

研究開発における短期化圧⼒の原因*2

�自前主義のマインドや、連携慣れが不⾜し「やりたくない(忌避)」と考えたり、費⽤に⾒合わないと

「先送り」したり、うまく連携先が⾒つからず「出来

ない(能⼒不⾜)」という状況が起きている

�経営層や現場が、短期利益が⾒えにくい挑戦的なR&Dにリスクを取って取り組む事を「忌避」している

*1 経済産業省「我が国企業の研究開発投資効率に係るオープン・イノベーションの定量的評価等に関する調査」*2 経済産業省「イノベーション創出に関する我が国企業の中⻑期的な研究開発に関する実態調査」

②オープンで横連携が盛んな組織

⑧イノベーションの為の別予算

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(参考)日本企業の取り組みが進んでいない理由―有識者コメント

昔に比べて経営層の人材が現地に足を運ばなくなったことで、現地のニーズがつかめなくなっている。会社はグローバル化しているのに、人材はグローバル化していないという現象が起きている

日本企業によるイノべーション実現

が難しい背景には、日本人技術者のプライドの高さもあるのではないか

アジアの現地法人には、業績を上げたのに本社に評価されない人材も多い。そうした人材が新興国イノベーションに挑戦できるような環境をつくることも重要なのではないか

海外事業で売上をあげる戦線を縮⼩すれば決算を⿊字にすることができ、そうした取り組みを⾏った経営者が評価されるため、結果として新興国の市場を獲得しようという挑戦には至らず、引きこもり現象が発生している

多くの中堅・中小企業は新興国に拠点がなく、自社にとって可能性のあるマーケットに気づくことができない