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インドネシアのスマートシティの現況– 2017 年 9 月
Copyright 2017 © JETRO. All rights reserved.
禁無断転載 1
2017 年 9月
JETRO ジャカルタ事務所作成
インドネシアのスマートシティの現況
はじめに
スマートシティのインドネシア語は Kota Cerdas(コタ・チェルダス)で、知的都市を意味す
る。インドネシアにおけるスマート化の先駆けは、2010 年に始められた国営電力会社 PLN の
スマートメーターである。スマートメーターはプリペイド式で、使用量が支払い額を超えそう
になると警告音が出る仕組みとなっており現在も使われている。より広義のスマートシティ計
画が頻繁に取り上げられるようになったのは 2015年頃からである。
スマートシティ計画が浮上した背景には、インフラ整備の遅れがある。都市は社会活動と経済
活動が並走している。人口増加は交通、電力、水、医療、教育及び環境等のインフラ需要増に、
経済拡大は交通、金融、物流面からインフラ需要増につながる。スマートシティは、インフラ
需要増に伴う歳出を情報通信(ITC)によって緩和するのが目的である。インドネシアのスマー
トシティプレーヤーは交通、教育、地域経済を司る自治体と金融、情報通信、物流を提供する
公社で、自治体と公社の連携した取り組みとなる。民間が主導するスマートシティ計画は、民
間工業団地や住宅団地で実施されているが、それらは自治体と公社の連携の下に実行されてい
る。
以下に、インドネシアでのスマートシティ事例を紹介する。
1.自治体主導スマートシティの例―ジャカルタスマートシティ
2015 年ジャカルタ州政府の情報通信局(Dinas Komunikasi Informasi dan Kehumasan DKI
Jakarta)が Jakarta Smart City ポータルサイト(smartcity.jakarta.go.id)の運用を開始し
た。ポ-タルサイトはデータプラットフォームで、誰でもアクセスし利用できる。立ち上げ当
初はポータルサイト開発に Indosat Ooredoo、Hewlett Packard Enterprise、NetApp、Cisco
などが、アプリ開発に Qlue などが関わった。
双方向の情報流通機能があり、州政府は道路と公共交通機関の情報を提供し、利用者は交通手
段を選び、また、州政府は河川水位の情報を提供し、住民は自主的に防衛する。一方、利用者
はポータルサイトに情報を提供し、アプリを使ってデータを利用する。ユニークな取り組みの
一例として、40 年継続している PT Food Security Tjipinan Jaya Jakarta の食品価格安定プロ
グラムの市場データをプラットフォームに公開し、消費者の購買に選択肢を与えている。また、
官民連携コタ文化財地区再開発に関する情報を公開し、観光振興ツールとしている。加えて、
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土地利用と付随する土地権利区分、建築規制(建ぺい率・容積率)やインフラ整備計画等の行
政データも公開を始めた。この様に、基本構想はオープンデータとユーザードリブンである。
州政府は 2025 年を目標に、ポータルサイトを利用した行政サービス、生活環境、流通経済、環
境の改善を設定し、達成のために民間によるデータ利用技術を積極的に取り入れている。
Jakarta Smart City の Web サイトに記された、ジャカルタスマートシティからの Benefit(利
益)は以下を想定している。
市民の自主的住環境改善 例)交通手段の多様化による移動時間短縮(Human
Framework)
情報通信を活用した新規産業と雇用の創出(Creative City)
市民の教育レベルの向上と才能の発掘(Knowledge City、Learning City)
2017 年 8 月現在、Jakarta Smart City Portal に接続しているアプリは以下の 9 種類で、今後
増加すると予想される。
Jakarta Smart City Portalに接続しているアプリの種類
1 Nodeflux データ分析
2 Zomato レストラン検索
3 Ragunan Zoo ラグナン動物園ガイド
4 Trafi 公共交通機関検索
5 GO-FOOD 食品オンラインショッピング
6 Info Pangan Jakarta 食品市場価格データ
7 Waze 交通情報とルート検索
8 iJakarta ソーシャルメディア
9 Qlue ポータルサイトにデータ提供
ジャカルタスマートシティは今後、州政府最大の課題が交通渋滞であることから、バイクと自
動車中心交通モードからMRT・LRT・BRT・鉄道を利用するモードへの転換が優先課題となる
だろう。そのためジャカルタ首都圏の交通計画の更新が行われており、内容は本レポートの後
半に記す。
2.自治体主導スマートシティの例―バンドンスマートシティ
ジャカルタスマートシティと同時期の 2015 年、バンドンスマートシティ計画がスタートした。
バンドンスマートシティは建築家リトワン市長が推進役となり、以下の点を目標にしている。
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市行政の高効率化と政府と、納税者の距離感を短縮
地域の個性を活かした地域社会と経済を活性化
地方分権化を促進
基本構想はジャカルタと似て、オープンデータ・ユーザードリブンである。ポータルサイトを
中心とするバーチャル地域作りのみを核とせずに、市街緑化や景観など物理的な都市再開発に
関する情報を公開している。物理的なバンドン再開発では、市長の建築家としての手腕に注目
が集まっており、ジャカルタと差別化を図る市長の意思が見える。
ITC でのバンドンスマートシティの入口は portal.bandung.go.id で、行政発信の案内と地域の
リアルタイムデータにアクセスでき、利用者のニーズに応えるアプリも利用できる。
その一環として、地産品をフェイスブックで国内外に販売するサービス、公共料金の支払い・
立体駐車場等に使える多目的 IC カード(Smart card)の導入、市内を監視するコマンドセン
ター、観光促進などが実行されている。その中でもバンドン再開発として、バンドンチャイナ
タウンの再生、アウトレットが並ぶ City Walk の再開発がメディアで取り上げられている。
3.官民連携 Smart City―流通改善の例:JABABEKA Industrial Estate
JABABEKA Industrial Estateは 1990 年代に民間資金で開発が開始され、現在は敷地面積
5600ha、1650 の工場、昼間人口 120 万人、従業員数 73 万人を擁するインドネシア最大の工
業団地である。地区内には住宅地、商業地区、学校、病院なども存在し、一つの都市を形成し
ている。
JABABEKA は 2000 年以降、先進的なプログラムを実行している。主なものとして、環境に優
しい工業地帯 (EcoIndustry) を目指し、廃棄物再利用プログラム JababECO を自治体と共
同で展開したり、物流の合理化で Dry port を導入したりしている。また旅客交通改善としてジ
ャカルタ間シャトルバスサービスを開始し、将来に向けて LRT とMRTの誘致などを行ってい
る。2017 年に各取組みを統合し、2022 年を目標とした Smart and Sustainable City 計画を
開始した。
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4.他の Smart City の例
MEIKARTA:
Loppo グループが Cikarang で開発中の敷地面積 600ha の新都市。ITC インフラを充実
させ、交通機関を提供する高機動性や、Commandセンターの設置による安全環境やイ
ンフラ高利便性を目指すほか、ITC 企業を誘致するシリコンバレー計画が含まれる。
Bumi Serpong Damai:
住民コンパニオンサービス(Companion for BSD residents)として OneSmile App
を介し、各種オンラインの支払い、公共交通スケジュールと道路状況の配信、日常品オ
ンラインショッピング、航空券・鉄道・バスの予約などのサービスを提供している。今
後は GPS トラッキング、CCTV画像配信が追加される予定。
Summarekon:
バンドン高速鉄道駅予定地近くに建設中の住宅団地 Gudebage は Environment、
Economy、 Governance、Living、Mobility、People についてバンドンスマートシテ
ィ構想の一部を具現化するプロジェクトと位置付けられている。
Alam Setra:
Alam Sutera Command Center (ASCC) を設立し、域内道路状況の監視、救急セン
ター、資産管理サービス、域内シャトルバスのサービスを提供している。
Makassar Smart City:
Makassar は 2016 年、Tempo 紙スマートシティインデックス(Indonesia Kota
Cerdas Indek)で 1 位に選ばれた。高架環状道路、公共交通機関、新港、LRT、廃棄物
発電の導入を計画している。
Surabaya Smart City:
行政面では、ポータルサイトで市政府の見える化を準備中である。民生面では e-
SIMBADA による生活情報配信、E-SDM による E-Monitoring(CCTV による市内監
視)、E-office(業務支援)、E-Health(病院診療所情報)、E-Permit(許認可取得支
援) 、E-Dishub(交通情報)のサービスが開始される。
5.JABODETABEK交通計画
JABODETABEK は敷地面積 6392km2、9 自治体をカバーした人口 3170 万人から成るジャカ
ルタ首都圏の呼び名である。JABODETABEK 現在の最大の課題は交通渋滞の解消であり、
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Smart City 化を進める要因である。ここでは運輸省陸運総局首都圏交通機構による
JABODETABEK 次世代交通計画 2016 年版を紹介する。
2016 年時、首都圏での交通手段の割合はモーターバイク 74%、自動車 24%、公共交通 2%で
ある。この状態でジャカルタ内 Mobility 指標として、平均移動速度は時速 10km である。同機
構の報告では、交通インフラ処理能力に対して交通量の比 VCR(Volume Capacity Ratio)は
1 以上で過負荷を示している。これを解消するため次世代交通計画では、ピーク時平均移動速度
の目標を時速 30km とし、歩行許容距離を 500m に、また自動車から公共交通へ移動手段を変
更する。交通需要を受け入れる公共交通は、以下の9種類である。加えて道路交通課金制度
(Electric Road Pricing、ERP)の導入も、新規の交通計画に含まれている 。
表 1 公共交通の種類
表 2 公共交通料金
mode 料金
1 Mass Rapid Transport (MRT) Rp 1500+Rp 300/km
2 Light Rail Transit (LRT) MRT に準ずる
3 Commuter Line (鉄道通勤線) Rp 2000(25km まで) + Rp 1000/10km
4 Greater Jakarta BRT (首都圏バス) Rp 10,000
5 TransJakarta (バス) Rp 3,500
交通機関 状況
1 Light Rail Transit (LRT), Jakarta Government / JAKPRO 1期建設中
2 Light Rail Transit (LRT), Ministry of Transportation /Adhi Karya 1期建設中
3 Light Rail Transit (LRT), Jababeka 建設中
4 Mass Rapid Transit (MRT), PT. MRT 1期建設中
5 Airport Railway (CL dan Ekspress), PT. KAI 建設中
6 Jakarta – Bandung High-speed Train (KCIC) 建設中
7 Automatic People Mover system (APMS), Soekarno-Hatta Airport 建設中
8 Commuter Line (CL), PT. KCJ 一部建設中 稼働中
9 Bus Rapid Transit (BRT), PT. Transjakarta 稼働中
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【免責事項】当該資料作成には、できる限り正確を期すよう努力しておりますが、その正確性を保証するものではありませ
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インドネシアのスマートシティの現況
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日本貿易振興機構(ジェトロ)ものづくり産業部 環境・インフラ課
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