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1裂果に強い 果実をかたくし、ヘタ下のコルク面積を小さくしたことで高い耐裂果性を実現しました。また、葉が従来品種より大きいため直射日光から果実を守ることもでき、盛夏期の放射状裂果や秋口の裂果にも強くなっています。
3着果力が強い 花質がよく花粉形成も盛んなので、低段から栽培後半まで着果が安定します。
4草勢が強く、栽培後半までスタミナが持続 発根力にすぐれるので初期から草勢が強く、盛夏期でも安定した草勢を維持できます。多収ねらいで草勢を強く作っても高秀品率が維持できるだけでなく、チッソの吸収・消化がよいので異常主茎(メガネ)の発生が少なく、収量と秀品が両立できる品種です。
2秀品出荷率が高い 裂果以外に、チャック・窓あき・乱形・空洞果などの生理障害果の発生が少なくなるように改良しました。特に、従来品種で多かったチャック・窓あき果に関して極めて発生が少なく、A品率向上に大きく貢献できます。
5すぐれた食味 夏秋栽培用桃太郎系品種として十分な甘さと適度な酸味をもち、「桃太郎セレクト」同様にうまみも強く感じる品種です。さらに草勢維持がしやすい品種なので、栽培期間を通じて食味も安定します。
6安定した複合耐病虫性 葉かび病に安定した耐病性(Cf9)を示すほか、青
あお
枯がれ
病にも「桃太郎セレクト」と同程度の耐病性をもちます。そのほかにも半身萎
い
凋ちょう
病、萎凋病レース1とレース2、斑はん
点てん
病、サツマイモネコブ線虫およびトマトモザイクウイルス(Tm-2a型)に複合耐病虫性があります。
品 種 特 性
夏が冷涼な地域で形成されてい
る夏秋トマト産地も、盛夏期は平
野部と変わらない暑さや天候不順
に多く見舞われ、トマトの安定生
産が難しくなってきています。こ
ういった環境要因が引き金となり、
草勢低下・着果数減・裂果などが
発生し、8月以降の高単価期に収
量が大きく落ち込むことが課題と
なっています。
タキイではこのような生産地の
現状を踏まえ、既存品種の課題で
ある盛夏期の〝栽培安定性〞向上
を目標に、新品種開発を進めてき
ました。2015年からは「TT
M
-
111」として、全国の夏秋
主要産地で2年間の試作期間を経
て、このたび「桃太郎ワンダー」と
して発表することになりました。
導入された産地からは「草勢が
強く安定するので、最終収穫段が
1〜2段上がり収量が伸びた」「裂
果に強いだけでなく、変形果など
も少なくA品率が向上した」など、
生産者の評価も聞こえ、今後「桃
太郎ワンダー」が産地の課題解決
の一翼を担えればと願っています。
裂果に強く秀品出荷率が高い!良食味な夏秋栽培用の桃太郎!
タキイ研究農場
横よこ
川かわ
武たけ
弘ひろ
トマト「桃も
も
た
ろ
う
太郎ワンダー」出願名:TTM111
出願中
耐病性 Tm-2a.B.F1.F2.V.Cf9.LS.N
↑生理障害の発生が少なく、着果が安定して収量が 上がりやすい「桃太郎ワンダー」。
発表
2018 タキイ最前線 春種特集号 11
栽培ポイント
水分要求量の多い品種なので、1
段目の着果後から積極的な潅水を必
要とします。また、草勢が強いので、
夏秋栽培での元肥のチッソ成分量は
従来品種より2割程度少なめ、ある
いはロング肥料や有機主体とします。
10a当たり元肥のチッソ成分量は6
〜8㎏程度が目安です。
期間中の潅水量は従来品種より1
〜2割多めを心掛けます。ただし、
しおれに強い品種のため、ポットの
乾き具合を見て水やりが遅れないよ
うに注意してください。生育スピー
ドは早く、肥料切れしやすいので育
苗期後半に薄い液肥を施用します。
定植苗は1段花房開花前が適期で
す。スムーズに活着させるために、
老化苗での定植は避けてください。
初期の発根を促進するには、しっか
り活着が確認できてから、低段のわ
き芽の除去を行うとよいでしょう。
また、生育初期はチッソ過剰に傾
きやすいので、PK液肥も織り交ぜ
て施肥してください。
潅水量は栽培全般を通じて従来品
種より2割程度多めに行います。前
述したように生育スピードが早いの
で、本格的な潅水や追肥を始めるタ
イミングは従来品種より早めとし、
3段花房の開花前が目安です。
追肥量は、10日間で10a当たりチ
ッソ成分1〜2㎏を目安にします。
毎日の潅水ごとに施肥する場合には、
0・1〜0・2㎏を施します。
栽培後半までしっかり草勢を維持
するためには1段目を3果に、それ
以降は4果に必ず摘果するようにし
てください。
葉かび病については耐病性(Cf9)
をもっていますが、(Cf9)を侵す新
レースの発生や、すすかび病やうど
んこ病の発生を防ぐためにも、定期
的な薬剤散布は行ってください。葉
先枯れの発生が見え始めたら、灰色
かび病が発生しやすくなるので、当
該病気の防除も散布ローテーション
に組み込んでください。
※耐病性:Tm-2a=トマトモザイクウイルスTm-2a型、Cf9=葉かび病Cf9※比較の○数字:かたさ、着果性=①悪←⑤基準→⑩良
摘果を徹底する
定期的に薬剤散布
定植後は活着を促進
潅水と肥培管理
積極潅水で追肥主体の
元肥設計
育苗期間は
肥料切れに注意
トマト「桃太郎ワンダー」栽培メモ最適播種期
(産地レベル)夏秋雨よけ栽培、2~4月まき
栽培管理の温度目安
定植時は地温15℃以上を確保する。盛夏期は十分な換気を心掛ける。秋口に気温が下がってきたら、最低気温15℃を目安に夜間ハウスを保温する。
耐病虫性トマトモザイクウイルス(Tm-2a)、青枯病(B)、萎凋病レース1(F1)およびレース2(F2)、半身萎凋病(V)、葉かび病(Cf9)、斑点病(LS)、サツマイモネコブセンチュウ(N)
播種基準(畝幅・条数・株間)
畝幅1.8m、条数2、株間40~45㎝
最適土壌土壌の適応性は高いが、肥沃で作土層が深い圃場がよりよい。作土層が浅い圃場では、深根型の強勢台木「グリーンフォース」での接ぎ木栽培がよい。
栽培管理ポイント 1~2段目はホルモン処理で確実に着果。高温期には週2回のホルモン処理。
基本の施肥設計
(10a当たり)
元肥 チッソ6~8㎏(従来品種の2割減が目安)
栽培要点従来品種より草勢が強いので元肥量を控え、その分早めの追肥を心掛ける。水分要求量が多いので、1段目が着果し始めたら積極的に潅水。追肥
3段花房開花前ごろから開始。チッソ(液肥)1.0~2.0㎏ ⁄ 10日で施肥する。毎日潅水で施肥する場合は、0.1~0.2㎏ ⁄ 日が目安。
台木の選択
従来品種との使い分け
スタミナのある品種なので、深根性台木との組み合わせでもっとも特性を発揮します。肥
ひ
沃よく
な土地、作土層が深い圃ほ
場では「グリーンセーブ」をおすすめします。一方、青枯病の心配がない場合で作土層が浅い圃場では、より発根がすぐれる強勢タイプの「グリーンフォース」がおすすめです。青枯病の強汚染圃場では「B
ビー
バリア」がよいでしょう。
葉かび病や裂果などの大きな問題がなければ、これまで通り「桃太郎8
エイト
」をお使いください。一方で、葉かび病の発生が見られる圃場では、「桃太郎セレクト」との使い分けになります。 「桃太郎ワンダー」は「桃太郎セレクト」よりも水や肥料を欲しがる品種です。肥沃な土壌や多肥傾向の圃場には草勢コントロールがしやすい「桃太郎セレクト」を、やせ地や少肥傾向の圃場には、水や肥料の要求量が多い「桃太郎ワンダー」で使い分けるとよいでしょう。
「桃太郎ワンダー」適作型
3月まきを中心とした夏秋栽培でもっともその品種特性を発揮します。
■「桃太郎ワンダー」適期表栽 培 型
ハ ウ ス半 促 成
夏 秋雨 よ け
ハ ウ ス抑 制
夏秋栽培向け「桃太郎」系大玉トマト特性比較表
果形
果重果色花痕店もち草勢節間長
かたさ
秀品率熟期花数着果性
葉の大小
裂果
耐病性
トマトモザイクウイルス
青枯病
萎凋病 根腐萎凋病
半身萎凋病
葉かび病
斑点病
サツマイモネコブ線虫
レース1
レース2
桃太郎ワンダー
腰高豊円 220 濃桃
極小◎ 強 中
低⑧ 高 早生5 ⑥ 大 少 Tm-2a △ ○ ○ - ○ Cf9 ○ ○
桃太郎8 豊円 220 濃桃小○ 中強中低⑦ 中
高早生 6 ⑤ 中
大中 Tm-2a △ ○ ○ - ○ - ○ ○
桃太郎セレクト 豊円 220 濃桃小○ 中 中
低⑦ 中高早生 6 ⑤ 中
大中少 Tm-2a △ ○ ○ - ○ Cf9 ○ ○
項目
品種名
12 2018 タキイ最前線 春種特集号