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あさひかわ緩和ケア講座 2015

2015第3講 疼痛マネジメント 配布資料 (1) - …...第2段階のオピオイド コデ イン トラマ ドール 指定されて いる (100倍散は されていな

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あさひかわ緩和ケア講座 2015

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第2講 がん疼痛マネジメント

旭川医科⼤学病院緩和ケア診療部 中⻄ 京⼦

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がん疼痛の特徴

• どのがんでも発⽣する• 進⾏がん患者の90%が疼痛を経験する• 70〜80%は適切な鎮痛剤使⽤で緩和できる• 痛みは⾝体的苦痛だけでなく、⼼理的、社会的、

スピリチュアルな⾯にも影響を及ぼし、患者のQOLを著しく低下させる

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がん疼痛は急性痛と違う!!

転んで打撲 運動後の筋⾁痛

急性痛時間が経てば基本的には消えていく痛み

急性痛時間が経てば基本的には消えていく痛み

がん疼痛増強しながら続いていく痛み

がん疼痛増強しながら続いていく痛み

お産の痛み

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Cancer pain relief (WHO)

• がん疼痛は治療可能であり治療されるべき• がん疼痛の評価と治療はチームアプローチに

よって最善の結果が得られる• がん疼痛治療の主軸は薬物療法である• ⾮オピオイド鎮痛薬、オピオイド鎮痛薬、

鎮痛補助薬を、痛みの機序に応じて適切に組み合わせることで、おおむね良好な鎮痛が得られる

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本⽇の講義内容

• この講義を受けた後、以下のことができるようになる– がん患者の痛みの評価

• 痛みのパターン・強さ・性状が評価できる

– がん疼痛の薬物治療• 評価をもとに、薬物療法を⾏う

– がん疼痛の⾮薬物療法・ケア

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評価項⽬• どこが/いつから痛いか:• 痛みの性質:• 痛みのパターン:• 痛みの程度:• ⽣活への⽀障:• 増悪因⼦・軽快因⼦:• 鎮痛治療の効果・副作⽤:

• 診察、画像:

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痛みの部位と経過を聞く

• 「どこが痛みますか?」と部位を確認し、⾝体診察を⾏う– 痛みの原因となる病変があることを、必要に応じ画

像検査などを⽤いて評価する– 新しく出現した症状は、新しい病変や合併症の出現

の可能性を考える必要がある

• 「いつから痛みますか?」– がん患者の痛みがすべてがんによる痛みとは限らない

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がん患者に⽣じる痛みの原因

• がん⾃体に起因する痛み– 内臓や神経の破壊・虚⾎・圧迫・牽引

• がん治療に伴って⽣じる痛み– 術後痛、化学療法や放射線治療の有害事象

• 消耗や衰弱によって⽣じる痛み– 筋⾁や関節の萎縮・拘縮、褥創

• がんとは直接関係のない痛み– 変形性関節症、胃潰瘍や胆⽯などの偶発症

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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痛みの性状と分類

痛みの部位

痛みの範囲

痛みの特徴と随伴症状

治療

痛みの表現

⾻、筋⾁、⽪膚 内臓 神経

ピンポイントで限局的

局所ではなく、広範囲であいまいなことが多い

神経の⽀配領域

動かすと痛みが悪化する、圧痛がある

悪⼼・嘔吐、発汗を伴うことがある

感覚鈍⿇、感覚過敏、運動⿇痺を伴うことがある

鎮痛薬が有効、レスキューを活⽤、体動時痛には鎮痛薬以外の治療も必要

鎮痛薬が有効鎮痛薬に加えて、鎮痛補助薬が必要なことがある

うずくような、ズキズキ、ヒリヒリ、鋭い痛み

重い痛み、鈍い痛み、ズーンとした痛み、押されるような

ビリビリ、電気が⾛るような、しびれる、じんじん、焼けるような

体性痛 内臓痛神経障害性

疼痛侵害受容性疼痛

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鋭い ズキズキ

脈打つような(ズキンズキン)

ヒリヒリ うずくような しみるような

鈍い 重い ズーン ギューッ

圧迫されたような

電気が走るような(ビリビリ) キリキリ

ビーンと走るような

正座をした後のしびれるような ジンジン

締めつけられるような 針で刺すような チクチク

チリチリ ビリビリ ひきつるような

突っ張るような

焼けるような

こるような 筋肉がけいれんするような

体性痛

内臓痛

神経障害性疼痛

・・・筋れん縮

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痛みのパターンを聞く

• 痛みはパターンから、持続痛と突出痛に分けられる

一日中ずっと痛い 時々痛くなる

10

0

10

0

10

0

持続痛 突出痛持続痛+突出痛

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持続痛と突出痛の問診パターン(持続痛か、突出痛か)の確認

いいえ はい

持続痛突出痛の種類を確認どういうときに痛くなりますか?

動くときなど、痛みが出るときに、

きっかけはありますか?

何もしていないのに、突然痛みが

強くなりますか?

薬の切れ⽬に痛くなりますか?

体動時痛 発作痛 薬の切れ⽬の痛み

今いたいですか? じっとしていても痛いですか?

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痛みの強さを聞く

• Numerical Rating Scale (NRS)– 症状の程度を数値化して聞く

痛み 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

全くなかった

これ以上耐えられないほど

ひどかった

症状が全くないときを0、

これ以上ひどい症状が考えられないときを

10とすると、今日の(症状の)強さは

どれくらいになりますか?

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤⼀部改変

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⽣活の⽀障・満⾜度を聞く

今の治療で満⾜されていますか?

⽣活にどのような⽀障がありますか?

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理学所⾒(診察)

• 視診– ⽪膚転移、帯状疱疹、褥瘡など

• 姿勢– 悪性腸腰筋症候群(下肢を伸ばすと痛い)

• 触診– 痛覚過敏、異常感覚、アロディニア– 叩打痛、圧痛– 運動神経の状態

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理学所⾒(診察)

• 単純X線写真:腸閉塞の所⾒など

• CT・PET:腫瘍の⼤きさ・位置・浸潤の状態、⾻転移、神経叢との関係など

• MRI:頭蓋内病変、椎体転移の脊髄圧迫の状況など

• ⾻シンチグラフィー:⾻転移

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評価項⽬

• どこが/いつから痛いか:• 痛みの性質:• 痛みのパターン:• 痛みの程度:• ⽣活への⽀障:• 増悪因⼦・軽快因⼦:• 鎮痛治療の効果・副作⽤:

• 診察、画像:

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本⽇の講義内容

• この講義を受けた後、以下のことができるようになる– がん患者の痛みの評価

• 痛みのパターン・強さ・性状が評価できる

– がん疼痛の薬物治療• 評価をもとに、薬物療法を⾏う

– がん疼痛の⾮薬物療法・ケア

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鎮痛薬の使い⽅に関する5原則

• 経⼝的に (by mouth)• 時刻を決めて規則正しく (by the clock)

– 痛みが出てから鎮痛薬を投与する頓⽤⽅式だけでは、痛みが消失した状態を維持できない

• 除痛ラダーに沿って (by the ladder)– 患者の⽣命予後の⻑短に関わらず、痛みの程度に

応じて躊躇せず必要な鎮痛薬を選択する• 患者ごとの個別的な量で (for the individual)• その上で細かい配慮を (with attention to

detail)

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WHO三段階除痛ラダー

±鎮痛補助薬

⾮オピオイド鎮痛薬

弱オピオイドコデイン

トラマール

強オピオイドモルヒネ

オキシコドンフェンタニル

±⾮オピオイド鎮痛薬

第三段階

第⼆段階

第⼀段階

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WHO三段階除痛ラダー

IASP Pain Clinical Updates 2005

継続的な評価を繰り返しながら順番に上がっていく「階段⽅式」

痛みが徐々に増強する場合

適切なフロアを即時に選択する「エレベーター⽅式」

痛みが放置されていた場合強い痛みが急激に出現した場合

中等度から強度の痛みに用いる

オピオイド

軽度から中等度の痛みに用いる

オピオイド

非オピオイド

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤改変⼀部改変

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がん疼痛治療のアルゴリズム

アセトアミノフェンまたはNSAIDsの開始

オピオイドの導入

残存・増強した痛みの治療

持続痛の治療 突出痛の治療

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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アセトアミノフェン

• 消化管障害や腎機能障害を⽣じにくい• アルコール多飲者や肝機能障害のある患者

では肝不全に注意が必要• 内服薬、坐薬、注射薬がある• 常⽤量(投与経路によらずほぼ同様)

– 1回300〜1,000mgを投与– 1⽇最⼤投与量は4,000mg– 投与間隔は4〜6時間以上– 腎不全患者では投与間隔を8時間以上あける

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⾮ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)

• NSAIDsは、鎮痛効果、作⽤時間、副作⽤などを考慮して薬剤を選択する

• 胃潰瘍の予防– ミソプロストール、プロトンポンプ阻害薬または⾼

⽤量H2ブロッカーを併⽤する• レスキュー薬の指⽰

– 痛みの悪化に備えて準備をしておく• 1⽇最⼤投与量を超えない範囲でNSAIDsを追加• アセトアミノフェン• オピオイド

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⾮オピオイド鎮痛薬の特徴

剤型

主な商品名

鎮痛の作⽤機序

抗炎症作⽤

副作⽤

経⼝剤、坐剤、注射剤 経⼝剤、坐剤、注射剤

ボルタレン、ロキソニン、ナイキサン、ハイペン、セレコックス、ロピオン

カロナール、アセリオ

COX阻害によるPG産⽣の抑制 中枢神経系に作⽤するといわれている

あり なし

消化性潰瘍腎機能障害⾎⼩板抑制作⽤

肝機能障害

NSAIDs アセトアミノフェン

⽤量 最⾼⽤量は順守する 2.4g-4g/⽇

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がん疼痛治療のアルゴリズム

アセトアミノフェンまたはNSAIDsの開始

オピオイドの導入

残存・増強した痛みの治療

持続痛の治療 突出痛の治療

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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オピオイド

• オピオイド受容体と親和性を有する物質の総称で、モルヒネ様の薬理作⽤を発揮する

• わが国で使⽤できるオピオイドのうち、がん疼痛治療薬として推奨されている代表的なもの– コデイン、トラマドール– モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、

タペンタドール、メサドン

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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オピオイド導⼊のポイント

• 時刻を決めて、定時に投与• ⾮オピオイド鎮痛薬を継続するか、中⽌

するかは、個々の症例において判断する• 体格が⼩さい、⾼齢者、全⾝状態が不良

などの場合には少量から開始する• 患者の状態や、副作⽤などを考慮して

オピオイドの種類を選択する

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第2段階のオピオイド

• 軽度から中等度の痛みに– ⾮オピオイド鎮痛薬の定時投与によって

痛みが⼗分に緩和されない場合、第2段階のオピオイド(コデイン、トラマドール)投与により、良好な鎮痛効果が得られる可能性がある

• 第2段階のオピオイドをスキップして、第3段階へ– 低⽤量の第3段階オピオイドを、コデインやトラマ

ドールの代わりに⽤いてもよい

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第2段階のオピオイド

コデイン

トラマドール

指定されている(100倍散はされていない)

便秘、悪⼼、眠気などモルヒネと同等

指定されていない

便秘が少ないかも、悪⼼が多いかも

⿇薬指定 副作⽤

なるべく避ける

投与量を減量または投与間隔をあける

腎障害時の使⽤

オピオイド作⽤(モルヒネに代謝されて鎮痛効果を発揮)

オピオイド作⽤+SNRI作⽤

鎮痛機序

速放性製剤のみ

種類

6時間

半減期

1⽇4~6回投与

投与法

2時間

60〜300mg/⽇

投与量

75〜300mg/⽇

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コデイン

• アヘンから抽出される天然のオピオイド• 体内でモルヒネに変化して効⼒を発揮• 主な副作⽤はモルヒネとほぼ同様• コデイン120mg=経⼝モルヒネ20mg• 鎮痛⽤量のコデインを投与する際には、

服薬負担の⼩さい10%散または20mg錠を⽤いる

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トラマドール

• 第2段階のオピオイド• μオピオイド受容体への結合と、セロトニン

およびノルアドレナリンの再取り込み阻害作⽤により、鎮痛効果を発揮する

• 経⼝投与では、1回25mg、1⽇2〜4回から開始し、400mg/⽇まで増量できる

• 重篤な副作⽤として、セロトニン症候群や痙攣がある

• ⿇薬処⽅せんは不要

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WHO第3段階オピオイド

モルヒネ フェンタニル オキシコドン

剤型 末、錠、徐放剤坐剤、注射剤

貼付剤、注射剤バッカル/⾆下錠

徐放剤、速放散注射剤

活性代謝産物 M-6-G (オキシモルフォン)

腎障害の影響 +++ ー ±便秘

吐き気眠気・傾眠

せん妄呼吸抑制掻痒感

+++++++++

++

±±±±+ー

++++++±

他の薬剤とのCYPの競合 ー CYP3A4

CYP2D6 CYP3A4

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WHO第3段階オピオイドの剤型と製剤

経口

非経口

速放性製剤

徐放性製剤

注射剤

坐剤

貼付剤

オプソ・モルヒネ(錠・散)

オキノーム

イーフェン・アブストラル

モルヒネ注

フェンタニル注

オキファスト注・パビナール注

アンペック坐薬

デュロテップMTパッチフェンタニル3日用テープ

フェントステープ・ワンデュロパッチ

MSコンチン・カディアン・パシーフピーガード・MSツワイスロン・モルペス

オキシコンチンオキシコドン徐放カプセル

タペンタ

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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モルヒネ

• 剤形が豊富であり、経⼝(速放性・徐放性製剤)、静注、⽪下注、経直腸など様々な投与経路の変更に対応が可能

• 各投与経路間の換算⽐が確⽴している• 腎障害がある場合には、活性代謝産物で

あるM-6-Gが蓄積して、傾眠や呼吸抑制などが⽣じやすい

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オキシコドン

• 経⼝製剤(速放性製剤・徐放性製剤)と、注射剤がある

• 活性代謝産物は微量しか⽣成されず、腎機能障害による影響を受けにくい

• 主として肝臓のチトクロームP-450(CYP)により代謝される– 薬物相互作⽤に関して薬剤師と相談すること

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フェンタニル

• 注射剤、経⽪吸収型貼付剤、⼝腔粘膜吸収剤、⾆下錠がある

• 経⽪吸収型貼付剤– 24時間型と72時間型がある– 増量や減量の際の調節性は劣る– このためオピオイド経⼝剤や注射剤の投与に

よって安定した鎮痛効果が得られている場合に使⽤を考慮する

• 他のオピオイドに⽐して便秘、眠気などの副作⽤の頻度が低い

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レスキューに⽤いるフェンタニル製剤

• ⼝腔粘膜吸収剤(バッカル錠)と⾆下錠• Rapid Onset Opioid (ROO)

– 速放性製剤よりも鎮痛効果の発現がやや速い

• 定時投与されているオピオイドの量とレスキューに⽤いるフェンタニル製剤の1回量との間には相関性が乏しい

• 必ず最低⽤量(50μgまたは100μg)から開始• 効果と副作⽤を⾒ながら1回量を漸増する• 1⽇あたりの使⽤回数に制限がある

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レスキュー薬の⽐較速放性製剤 効果発現

時間効果持続時間

利点 注意点

経⼝モルヒネ(オプソなど)オキシコドン(オキノーム)

30-40分 4時間前後 • 定期投与薬のタイトレーションに向いている

• ⽬安の⽤量がある• 最⾼⽤量の制限がな

• 便秘の増悪• 狭義の突出痛には

⼗分に対応できない

⾮経⼝フェンタニル(バッカル錠:イーフェン、⾆下錠:アブストラル)

15-30分 1-2時間 • 内服困難でも使⽤可能

• 便秘になりにくい• より速く効くので、

狭義の突出痛や体動時痛によい

• タイトレーションが必要

• 最⾼⽤量、回数制限がある

• ⾼価になる

• ROOは、コントロールできていない持続痛の治療には適さない• 狭義の突出痛の診断を適切にしたうえで使⽤する

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レスキュー薬の⽐較

次回の突出痛には同じ投与量を使⽤する

痛みが消失

痛みが残存

追加投与が複数回必要な場合

開始期

⽤量調節期

維持期

次回の突出痛には同じ投与量を使⽤する

痛みが消失

痛みが残存

追加投与が必要な突出痛が複数回ある場合

開始期

⽤量調節期

維持期

ベースラインの1/8〜1/4

60分後以降の痛みの残存の有無

ベースラインを増量(→レスキューも増量)

同⼀⽤量を追加投与

開始時の投与量100μg

30分後以降の痛みの残存の有無

次回の突出痛には⼀段階増量を検討する

同⼀⽤量以下を追加投与

フェンタニル⼝腔粘膜吸収製剤の場合 モルヒネ・オキシコドン経⼝剤の場合

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メサドン

• NMDA受容体拮抗作⽤を有するオピオイド• 半減期が⻑く、その個⼈差も⼤きいため、

タイトレーションが難しく、がん疼痛治療の専⾨家(有資格者)によってのみ使⽤されるべきオピオイドである

• QT延⻑による致死的な不整脈を⽣じるリスクがある

• モルヒネと⽐較して、腎機能低下例において安全に使⽤できる

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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タペンタドール

• μオピオイド受容体への結合と、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作⽤により、鎮痛効果を発揮する

• 経⼝モルヒネとの等鎮痛⽤量換算⽐は、モルヒネ1に対してタペンタドール2.5-3.3

• 他の第3段階オピオイドと⽐較して便秘や悪⼼・嘔吐を⽣じにくい

• がん疼痛治療における位置づけは確⽴されていない

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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オピオイドの選択法

• 内服が負担 経⼝剤を避ける

• 緊急性 注射剤を選択

• 便秘、悪⼼ フェンタニルを選択

• せん妄 モルヒネを避ける

• 腎機能障害 モルヒネを避ける

• 呼吸困難 モルヒネ???

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経⼝投与での開始量

• モルヒネの場合は20〜30mg/⽇– 徐放性製剤:12時間または24時間ごと– 速放性製剤:4時間ごと

• オキシコドンの場合は10〜20mg/⽇– 徐放性製剤:12時間ごと– 速放性製剤:6時間ごと

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⾮経⼝投与での開始量

• 持続静注・⽪下注– モルヒネの場合は10〜20mg/⽇– オキシコドンの場合は10〜20mg/⽇– フェンタニルの場合は0.2〜0.3mg/⽇

• 経直腸投与– モルヒネ坐薬を1回5〜10mg 1⽇3回

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レスキュー薬

• 痛みの増強や突出痛に備えて、追加(頓⽤)で使える鎮痛薬も準備しておく

• 定時使⽤しているオピオイドと同じ種類のオピオイドを使⽤するのが基本??

• 1回量の⽬安– 内服・坐薬は1⽇量の10〜20%(約1/6量)– 持続注射では1時間量を早送り

• 内服は1時間以上あけて、持続注射では15〜30分以上あけて繰り返し使⽤可

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オピオイド導⼊時に注意すること• オピオイド導⼊の際には、副作⽤への対策を

⾏うことが重要• オピオイドの主な副作⽤

– 便秘– 悪⼼・嘔吐– 眠気– せん妄・幻覚– ⼝渇– 掻痒感– 排尿障害– ...

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モルヒネの薬理作⽤

鈴⽊ 勉、武⽥⽂和:オピオイド治療-課題と新潮流、鎮痛薬・オピオイドペプチド研究会、2000(25-34)⼀部改変

モル

ヒネ

の50

%鎮

痛⽤

量に

対す

る各

作⽤

の⽐

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便秘

• ほとんどの患者に⽣じるため、オピオイド開始時にあらかじめ下剤を併⽤する

• 耐性が⽣じないため、オピオイド使⽤中は継続的な対策が必要

• ⽔分・⾷物繊維の摂取を促す• 下剤には、便を軟らかくする浸透圧下剤と、

腸蠕動を亢進させる⼤腸刺激性下剤がある• 便秘の状況により下剤を使い分ける

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悪⼼・嘔吐

• オピオイド投与初期や増量時にみられる• 出現頻度は30%程度で、継続使⽤により1〜2週間

で耐性を⽣じるが、⼀旦出現すると継続投与が困難になることが多く、予防対策が⼤切

• 制吐薬をオピオイドと同時に開始し、1〜2週間で漸減・中⽌可– プロクロルペラジン 1回5mg 1⽇3回– ハロペリドール 1回0.75〜1mg 1⽇1回– メトクロプラミド 1回5〜10mg 1⽇3回– トラベルミン 1回1錠 1⽇3回– オランザピン 1回2.5mg〜 1⽇1回

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眠気

• オピオイド開始時や増量時は、眠気や軽い傾眠が⾒られることが多い

• 「眠気は⼼地よい感じですか?それとも不快な感じですか?」と聞き、不快であれば対応を検討する

• 対応⽅法– オピオイドの減量や種類・投与経路の変更– 他の薬剤の⾒直し– 他の原因がないかを検索

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がん疼痛治療のアルゴリズム

アセトアミノフェンまたはNSAIDsの開始

オピオイドの導入

残存・増強した痛みの治療

持続痛の治療 突出痛の治療

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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残存・増強した痛みの治療

• オピオイドを開始しても痛みが残存する場合、持続痛か突出痛かを区別する– 持続痛の場合には、定時オピオイドの増量– 突出痛の場合には、レスキューを使⽤

• 持続的な痛みがコントロールできていない場合と、持続的な痛みはコントロールできているが突出痛がある場合を区別して対応することが重要

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がん疼痛治療のアルゴリズム

アセトアミノフェンまたはNSAIDsの開始

オピオイドの導入

残存・増強した痛みの治療

持続痛の治療 突出痛の治療

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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持続痛の治療アルゴリズム

痛み (+)

痛み (-)

眠気 (-)

眠気 (+)

眠気 (+)

眠気 (-) Goal

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タイトレーション

痛い!眠気なし

痛み (-)眠気 (-)

痛みなし眠い!

Goal!

増量

減量

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持続痛の治療アルゴリズム

痛み (+)

痛み (-)

眠気 (-)

眠気 (+)

眠気 (+)

眠気 (-) Goal

オピオイド増量

オピオイド減量

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オピオイド増量の実際• 傾眠が⽣じない範囲でオピオイドを増量

– オピオイドの投与量に絶対的な上限はない• 増量幅

– 経⼝モルヒネ換算120mg/⽇以下の場合には50%ずつ– 120mg/⽇以上・体格が⼩さい・⾼齢者・全⾝状態が不良な場

合には30%ずつ例) 80㎎ ⇒ 120㎎(50%)増し

⇒ 100㎎(30%)増し– 前⽇に使⽤したレスキュー使⽤量の合計量を

上乗せしてもよい例) 1⽇20mg定期投与+レスキューを1⽇4回使⽤している

2.5mg×4=10mgを追加20mg/⽇+10mg=30mg/⽇

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持続痛の治療アルゴリズム

痛み (+)

痛み (-)

眠気 (-)

眠気 (+)

眠気 (+)

眠気 (-) Goal

オピオイド増量

オピオイド減量

オピオイドの種類変更

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オピオイドの種類変更

• ⼗分な鎮痛が得られない、副作⽤のために継続できないなどの理由から、オピオイドの種類を変更すること

• 現在のオピオイドと等⼒価となるように新しいオピオイドの投与量を調整

• 中等量(経⼝モルヒネ換算120mg/⽇)以上のオピオイドが使⽤されている場合には専⾨家にコンサルテーションする

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オピオイド鎮痛⼒価換算⽐

モルヒネ経口薬

60mg/日

モルヒネ坐薬

40mg/日

モルヒネ注射液

30mg/日

フェンタニル貼付剤

25μg/時

フェンタニル注射液

0.6mg/日

オキシコドン注射液

30mg/日

オキシコドン経口薬

40mg/日

==

= =

タペンタドール経口薬

200mg/日=

トラマドール経口薬

300mg/日

コデイン経口薬

180mg/日

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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各オピオイドの換算の⽬安経⼝モルヒネ 60mg

余宮きのみ:がん疼痛緩和の薬がわかる本. 医学書院, 2013 (⼀部改変)

経⼝トラマドール

経⼝コデインリン酸塩

経⼝オキシコドン

フェンタニルパッチ

モルヒネ坐剤

モルヒネ持続静注・⽪下注

オキシコドン注

フェンタニル注

約300mg

約360mg

約40mg

約0.6mg

約40mg

約30mg

約30mg

約0.6mg

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先⾏オピオイドと導⼊オピオイドの変更のタイミング

徐放性経⼝剤から注射剤へ

余宮きのみ:がん疼痛緩和の薬がわかる本. 医学書院, 2013 (⼀部改変)

次の内服時間に注射を開始

12時間徐放性経⼝剤から貼付剤へ

内服と同時に貼付し、次回から内服を減量または中⽌

24時間徐放性経⼝剤から貼付剤へ

内服の12時間後に貼付し、次回から内服を減量または中⽌

注射剤から貼付剤へ 貼付6〜12時間後に、注射剤を減量または中⽌

注射剤から経⼝剤 or 注射剤へ

貼付剤中⽌または減量6~12時間後に経⼝剤または注射剤を開始

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持続痛の治療アルゴリズム

痛み (+)

痛み (-)

眠気 (-)

眠気 (+)

眠気 (+)

眠気 (-) Goal

オピオイド増量

オピオイド減量

鎮痛補助薬

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鎮痛補助薬

• びりびりした痛みやじんじんした痛みなどの神経障害性疼痛で有効な可能性がある

• がんに起因する神経障害性疼痛に対する有効性は不確実である– 副作⽤(眠気が多い)もあるので、鎮痛効果と

副作⽤とのバランスをとりながら使⽤する

• ⼗分なエビデンスと保険適応がない薬剤が多い– 病院・地域の専⾨家の意⾒にしたがって使⽤

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がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(緩和医療学会)神経障害性疼痛

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鎮痛補助薬の選択⽅法

発作的な痛み 抗けいれん薬アロディニアを伴う プレガバリン、NMDA受容体拮抗薬⾻転移の体動時痛 NMDA受容体拮抗薬筋攣縮を伴う 筋弛緩作⽤のある薬剤(バクロフェン、クロナゼパム)

不眠がある 眠気のでやすい抗けいれん薬抗うつ薬、ケタミン

眠気が不快 抗不整脈薬、イフェンプロジル不安が強い 抗不安作⽤のあるクロナゼパムなど

内服困難 ケタミン注、リドカイン注

痛みの性質

随伴症状

投与経路

状態の特徴 選択する薬剤

余宮きのみ:がん疼痛緩和の薬がわかる本. 医学書院, 2013 (⼀部改変)

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鎮痛補助薬の選択⽅法

⼀般名 剤型 Naチャンネル阻害

Caチャンネル阻害

NMDA受容体阻害

GABA抑制系の活

性化

下⾏疼痛抑制系の活性化

抗けいれん薬

カバペンチン 内服 ◎プレガバリン 内服 ◎バルプロ酸Na 内服 ○ ◎クロナゼパム 内服 ◎カルバマゼピン 内服 ◎

筋弛緩薬 バクロフェン 内服 ○ ◎

抗うつ薬アミトリプチリン 内服 ◎ ◎クロミプラミン 注射 ◎ ◎デュロキセチン 内服 ◎ ◎

NMDA受容体拮抗薬

ケタミン 注射 ◎イフェンプロジル 内服 ◎

抗不整脈薬メキシレチン 内服 ◎リドカイン 注射 ◎

• 2剤⽬は作⽤機序の違う薬剤を選択する

余宮きのみ:ここが知りたかった緩和ケア. 南⼭堂, 2011 (⼀部改変)

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鎮痛補助薬

• 最初は少量から開始– 有効性が不明確な上に、眠気の副作⽤をもつ薬剤が多いため副作⽤

を最⼩限に抑えるため

• 患者への説明が⼤切– 最初は、効果が不⼗分である可能性– 効果は個⼈差がある、少しでも効果があったか評価することが重要

• 効果を評価する– 1種類を⼗分量まで、眠気が許容できる範囲で漸増し、効果を判定

する– 効果のない薬剤を漫然と投与しない

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放射線治療

• 痛みの原因となる責任病巣が明確な場合、適応について早期から⼗分に検討する– 痛みの原因となる病巣を画像診断で明確に把握

することが重要

• 局所制御や根治も視野に⼊れた設定が可能– 適応・治療⽬標、治療の内容については、専⾨家

にコンサルテーションする

• ⾻転移による痛みの緩和と、⾻折の予防に対する放射線治療の有⽤性は証明されている

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神経ブロック

• 膵臓がんによる上腹部痛や背部痛、⾻盤内臓がんによる肛⾨痛や会陰部痛、胸壁の痛みなどで適応になる場合が多い

• 適応となる痛みが出現した全ての場合で、早期に専⾨家と相談する– 全⾝状態が悪化してからでは、ブロック処置を

⾏うことができないことがある– 出⾎傾向や感染症がある場合には施⾏できない

ことがある

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がん疼痛治療のアルゴリズム

アセトアミノフェンまたはNSAIDsの開始

オピオイドの導入

残存・増強した痛みの治療

持続痛の治療 突出痛の治療

PEACE project 緩和ケア研修会プレゼンテーション資料より引⽤

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突出痛の種類

1.予測できる突出痛

不随意な誘因があるもの

誘因なし

3.切れ⽬の痛み

体動時痛 嚥下・排尿・排便 体動による神経圧迫

不随意な体動(咳嗽など)

蠕動痛、膀胱けいれんなど

不随意な体動による神経圧迫

何の誘因もなく⽣じる発作痛

鎮痛薬の切れ⽬に出現する痛み

体性痛 内臓痛 神経障害痛

痛みの出にくい動作、環境、コルセット予防レスキュー痛みの病態に応じた薬剤(⾮オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬)

痛みの病態に応じた薬剤(⾮オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬)

鎮痛補助薬が必要なことが多い

定期鎮痛薬の増量

対処法

2.予測できない

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突出痛の治療エッセンス

• 定期的にオピオイドを投与されていても、70%の患者が突出痛を経験する

• 突出痛のタイプは主に3つ– 体動時痛

– 発作痛

– 鎮痛薬の切れ際の痛み突出痛のタイプに適した対応が必要

• レスキューの使⽤法を患者・家族に指導

予防レスキュー(レスキューの⽤量は適切か?)⾻転移:⾻転移部固定、放射線、ビスホスホネート

鎮痛補助薬の検討定期投与薬の増量投与間隔の短縮

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放射線治療

• ⾻転移による痛みの緩和と⾻折予防に対する放射線治療の有⽤性は証明されている

• 実際の放射線治療– 外照射– アイソトープ治療

• ストロンチウム• 放射性ヨード(甲状腺がんの⾻転移の場合のみ)

• 放射線の量や範囲は、状況によって判断– ⾻折や脊髄圧迫のリスク– 併⽤治療や期待される⽣存期間などへの配慮

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ビスホスホネート製剤

• ビスホスホネート製剤も、⾻転移による痛みおよび⾻折の予防に効果がある– ゾレドロン酸 4mgの点滴投与(4週毎)など

• 重篤な副作⽤として顎⾻壊死がある– 投与前に顎⾻壊死を⽣じるリスクの有無に

ついて、⻭科または⼝腔外科にコンサルト

• 多くの場合で、放射線治療など他の治療との併⽤が可能

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レスキューの必要性の説明

• レスキューの使⽤により「鎮痛薬の必要量を早く⾒積もることができること」、「突出痛による苦痛へ対応できること」を説明する

• レスキューを使いこなせるようになれば、「⾃分で痛みへの対応ができる感覚」が⾼まり、⽣活や治療への意欲が増すことが期待できる

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本⽇の講義内容

• この講義を受けた後、以下のことができるようになる– がん患者の痛みの評価

• 痛みのパターン・強さ・性状が評価できる

– がん疼痛の薬物治療• 評価をもとに、薬物療法を⾏う

– がん疼痛の⾮薬物療法・ケア

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がん疼痛の⾮薬物療法・ケア

• 痛みの増悪因⼦/軽快因⼦からケアを⾒出す– どのような時に痛みが強くなり、どのような時に痛

みが軽くなるだろうか?

• 薬物治療以外の痛みを緩和する⽅法は?– 患者・家族が答えを知っている(医療者はそれを聞

き出すのが仕事)– より良いケアの⽅法を⼀緒に考える

• 薬物療法と並⾏して⾏う

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痛みの閾値に影響する因⼦

不快 不眠

疲労 不安

恐怖 怒り

悲しみ うつ状態

倦怠感 孤独感

内向的心理状態

社会的地位の喪失

症状緩和 睡眠

周囲の人々の共感

理解 休憩

人とのふれあい

気晴らしとなる行為

不安減退

気分高揚 鎮痛薬抗不安薬抗うつ薬

これらを高めるケアを考える

Twycross著、武田文和訳. 末期患者の診療マニュアル第2版 1991

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疼痛マネジメントのケア例

• マッサージをする• 温罨法/冷罨法• 軽い運動を取り⼊れる/できるだけ安静にする• 環境の調整

– 痛みが増強する動きを避ける(電動ベッドなど)• 装具や補助具の利⽤

– コルセット、頸椎カラー、歩⾏器の使⽤など• ひとりで抱え込まない

– 患者も家族も医療従事者も

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TAKE HOME MESSAGE!• 進⾏がん患者の90%が疼痛を経験し、鎮痛薬を

適切に使⽤することで、がん疼痛の70〜80%は緩和することができる

• 疼痛治療はWHOのガイドラインにもとづいて⾏い、鎮痛薬の定期投与の開始と同時にレスキューの指⽰、副作⽤予防を⾏う

• 鎮痛薬の効果が⼗分でないとき、オピオイドスイッチや鎮痛補助薬を使⽤し、適応があれば放射線治療や神経ブロックを⾏う

• 薬物療法と並⾏して、患者に適したケアが⽋かせない