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平成28年度電気施設保安制度等検討調査 (配管減肉強度評価等調査) 報告書 平成29年2月 みずほ情報総研株式会社

平成28年度電気施設保安制度等検討調査 (配管減肉強度評価等調 … · 4.1 配管の減肉に関する強度評価の検討 4.1.1 検討概要 火力発電設備、原子力発電設備、石油化学プラント設備の系統配管の一部において、運転

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平成28年度電気施設保安制度等検討調査

(配管減肉強度評価等調査)

報告書

平成29年2月

みずほ情報総研株式会社

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目次

1 はじめに .......................................................................................................................... 1

2 調査目的及び調査内容 .................................................................................................... 2

2.1 調査の背景及び目的 ................................................................................................. 2

2.2 調査内容 ................................................................................................................... 2

3 実施体制 .......................................................................................................................... 4

4 調査結果 .......................................................................................................................... 6

4.1 配管の減肉に関する強度評価の検討 ....................................................................... 6

4.1.1 検討概要............................................................................................................ 6

4.1.2 検討手順............................................................................................................ 6

4.1.3 国内における火力発電設備の配管に適用可能な局部減肉に関する民間規格の

調査 ................................................................................................................... 8

4.1.4 国内における火力発電設備の配管に適用可能な局部減肉に関する代表的民間

規格の選定の検討 ........................................................................................... 19

4.1.5 国内における火力発電設備の配管に対する局部減肉の健全性評価手法に関す

る規格文案の検討 ........................................................................................... 23

4.2 EN 規格と技術基準の技術要素等の比較分析 ....................................................... 27

4.2.1 検討概要.......................................................................................................... 27

4.2.2 欧州における発電設備規格の法体系について ............................................... 28

4.2.3 EN 規格の調査 ............................................................................................... 38

4.2.4 EN 規格と技術基準の技術要素等の比較分析 ................................................ 60

5 おわりに ........................................................................................................................ 70

5.1 配管の減肉に関する強度評価の検討 ..................................................................... 70

5.1.1 まとめ ............................................................................................................. 70

5.1.2 今後の課題 ...................................................................................................... 70

5.2 EN 規格と技術基準の技術要素等の比較分析 ....................................................... 72

5.2.1 まとめ ............................................................................................................. 72

5.2.2 今後の課題 ...................................................................................................... 73

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1 はじめに

みずほ情報総研株式会社は、平成 28 年 8 月 9 日に経済産業省商務情報政策局商務流通保

安グループ電力安全課より「平成 28 年度電気施設保安制度等検討調査(配管減肉強度評価

等調査)」を受託し、「配管減肉強度評価等調査委員会」を立ち上げ、当該委員会のご意見を

踏まえて、調査・検討を行った。

本報告書は、その調査・検討結果を取りまとめたものである。

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2 調査目的及び調査内容

2.1 調査の背景及び目的

電気事業制度改革に伴い、発電事業者は競争環境下での供給責任にさらされる中、高効率

火力発電設備では、クロム鋼等の高強度材や高耐食材を多く使用しながら維持管理すること

で、計画外停止等の低減を図っている。

一方で、系統配管の肉厚の一部は、運転時間の経過と共に減尐する局部減肉が生じること

から、国内外では減肉管理のための定期的な配管肉厚測定や規格の策定等により予防保全対

策が講じられており、クロム鋼等の材料を使用する高温・高圧環境下での寿命低下の予測や

配管の減肉評価に関する研究等が進められている。

電気事業法では、電気事業制度改革や固定価格買取制度(以下、「FIT」という。)等の活

用により、海外で製造される発電設備に対するニーズが高まっており、安全率の見直しも相

まって米国機械学会規格(以下、「ASME 規格」という。)の類似規格として策定された一

般社団法人日本機械学会「発電用火力設備規格基本規定」(以下、「JSME 規格基本規定」

という。)をエンドースすることで、火力発電設備の技術基準の国際整合化が図られている。

今後、我が国では、海外で製造された発電設備を使用される機会が増大することが予想さ

れるが、一方で、配管の減肉評価については、海外では設計時の計算上必要最小厚さも考慮

しながら、許容局部減肉を規定している規格も存在している。

そこで、火力発電設備に係る配管減肉に関する強度評価及び更なる国際整合化に向けた規

制の合理化のための調査を行い、科学的かつ合理的な規制を整備することにより、新規参入

事業者等の拡大に伴う環境変化に対応した保安規制等を検討することを目的とし、本調査を

実施した。

2.2 調査内容

上記調査目的を踏まえ、以下の (1) 及び (2) の項目について調査を実施した。

(1) 配管の減肉に関する強度評価の検討

定期事業者検査における配管の減肉管理については、一般社団法人日本機械学会「発電用

火力設備規格火力設備配管減肉管理技術規格(2009 年版)(JSME S TB1-2009)」(以下、

「JSME 減肉管理技術規格」という。)をエンドースして、設置者には設計時の計算上必要

最小厚さに基づいた寿命評価を求めている。

近年は、発電設備のリプレースや取替えから既存設備の延命化が図られることは十分に予

想され、計画外停止や補修等の頻度を低減させて更なる高効率化を図っていくには、供用期

間中の要求である維持規格(検査、構造評価、補修等)に関する検討が必要と考える。

配管の減肉強度評価については、従来の計算上必要最小厚さを管理する手法に加えて、延

性破壊防止の観点からの減肉強度評価を行うことについて新たな知見が得られていること

から、配管の減肉とその強度評価手法に関する文献や規格(ASME 規格及び欧州の供用評

価規格(FITNET))等を調査し、他法規との整合化及び国際整合化の観点から適切な配管

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の減肉強度評価に係る検討を行い、今後の課題等を整理した。

(2) 欧州統一規格と技術基準の技術要素等の比較分析

欧州と我が国は規格体系が異なることから、欧州の高効率なバイオマスボイラー等を利用

する場合に同等の保安水準が確保できているかの確認が難しい場合がある。

他方で、近年では欧州統一規格(以下、「EN 規格」という。)で製造された発電設備を輸

入したいというニーズが高まっており、一定の保安水準を担保することを前提としながら国

内他法規及び国際規格との整合化を検討するべく、ボイラー及びその附属設備(溶接部を含

む)を対象に、火力発電設備の技術基準と EN 規格の EN12952(水管ボイラー)について、

構成、基本的思想、技術要素及び技術的要件等に関する調査を行い、比較・分析結果を踏ま

えた課題を整理した。

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3 実施体制

本調査を実施するため、火力発電設備に係る構造健全性評価や EN 規格に関する分野に

おける有識者及び事業者等から構成される「配管減肉強度評価等調査委員会」を設置した。

本調査の実施体制を図 3.1 に、委員等名簿を表 3.1 に示す。

図 3.1 本調査の実施体制

経済産業省

商務情報政策局

商務流通保安グループ 電力安全課

配管減肉強度評価等調査委員会

みずほ情報総研株式会社

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表 3.1 配管減肉強度評価等調査委員会 委員等名簿

委員長

西口 磯春 神奈川工科大学大学院 工学研究科 機械システム工学専攻

教授

委員

望月 正人 大阪大学大学院 工学研究科 マテリアル生産科学専攻 教授

水谷 義弘 東京工業大学 工学院 機械系 准教授

木村 一弘 国立研究開発法人物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 上

席研究員

高木 愛夫 一般社団法人火力原子力発電技術協会 理事 技術部長

中井 裕丈 一般財団法人発電設備技術検査協会 検査業務室 技術グルー

プリーダー

三浦 直樹 一般財団法人電力中央研究所 材料科学研究所 構造材料領域

研究参事

今木 圭 電気事業連合会 工務部 副部長

尾崎 宏 東京電力フュエル&パワー株式会社 技術サービス部 電源設

備技術ユニット ボイラ技術担当

志賀 栄一 九州電力株式会社 発電本部 火力運営グループ長

舘 隆一 株式会社東芝 エネルギーシステムソリューション社 京浜事

業所 タービン機器部 参事

伊藤 拓哉 株式会社 IHI エネルギー・プラントセクター ボイラプラント事

業部 ボイラ統括技術部 基本設計グループ 主査

山名 靖久 三菱日立パワーシステムズ株式会社 エンジニアリング本部 エ

ンジニアリング総括部 空間設計部 日立空間設計課 主席技師

中尾 征嵩 テュフ ラインランド ジャパン株式会社 産業サービス部 ビ

ジネスデベロップメント

経済産業省

堀 宏行 経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ

電力安全課 課長補佐(火力担当)

高橋 建多 経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ

電力安全課 火力係長

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4 調査結果

4.1 配管の減肉に関する強度評価の検討

4.1.1 検討概要

火力発電設備、原子力発電設備、石油化学プラント設備の系統配管の一部において、運転

時間の経過とともにその肉厚が減尐する経年劣化事象が生じることが知られている。運転環

境等により、配管の軸方向又は周方向に沿って、ある程度限定された領域に減肉が発生する

場合、又は周方向の全断面においてほぼ一様に減肉が発生する場合がある。この場合におい

て、一般的に、前者を局部減肉、後者を全面減肉ということが多い。国内の火力発電設備を

対象とした減肉管理においては、設計時の計算上必要最小厚さに基づく手法が広く認識され

ている。この手法は、「発電用火力設備の技術基準の解釈」(以下、「火技解釈」という。)や

JSME減肉管理技術規格等でも示されているものであり、減肉領域の大きさにかかわらず、

これらの規格に基づく減肉管理が国内では行われている。この減肉管理方法は、全断面にお

いて減肉が生じる場合だけでなく、局部減肉においても代表的に最も小さい厚さを全面減肉

とみなして評価を行っている。一方で、海外では局部減肉の形状を全面減肉とせずに、より

科学的かつ合理的にその健全性を評価する手法が民間規格に取り込まれており、近年では国

内においても、一部の民間規格の中には海外規格を参照した局部減肉の評価手法が規定され

る動きが見られる。

また、電気事業制度改革や FIT 等の活用により、海外で製造される発電設備を国内に設

置するニーズが高まっている。この状況の中で、材料の許容応力の安全率が 4.0 から 3.5 に

変更されたことにより、結果的により薄い厚さの発電設備の設置が可能となったが、配管減

肉に対する評価手法そのものの見直しに係る具体的な検討はまだ改善の余地がある。

そこで、本調査では、科学的かつ合理的な規制を整備することにより、近年の環境変化に

対応した保安規制等を検討することを目的として、火力発電設備に係る配管減肉に関する強

度評価の調査を行った。

4.1.2 検討手順

国内では、定期事業者検査における火力発電設備の配管の減肉管理について、JSME 減

肉管理技術規格が既に「電気事業法施行規則第 94 条の 3 第 1 項第 1 号及び第 2 号に定める

定期事業者検査の方法の解釈」(平成 23・01・28 原院第 3 号。以下「定期事業者検査の方法

の解釈」という。)でエンドースされており、計測厚さデータ等に基づき、次回定期事業者

検査の時期の検討が行われている。一方で、海外及び国内では、火力発電設備に限定せずに、

圧力機器における局部減肉評価を規定している民間規格が存在している。そのため、本調査

では、JSME 減肉管理技術規格と局部減肉評価を規定している民間規格の適用範囲及び

JSME 減肉管理技術規格に基づく余寿命評価に必要となる計測厚さデータ等の活用可否に

着目して、表 4.1 の 3 つの段階に分けて検討を実施し、最終的には国内における火力発電

設備の配管に適用可能な局部減肉評価手法の提案を行った。

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表 4.1 本調査の手順

手順 実施内容 実施方法

1

火力発電設備に限定せずに、局部減肉状態を考

慮した健全性評価手法を規定する海外及び国

内の代表的な民間規格の調査を行い、その中か

ら、国内における火力発電設備の配管減肉への

適用を念頭に置いて、民間規格を抽出した。

各民間規格と JSME 減肉管理

技術規格を対照し、それぞれの

適用範囲を調査した。

2

抽出した民間規格について、局部減肉状態を考

慮した健全性評価手法について比較し、国内に

おける火力発電設備の配管減肉への適用のた

めの代表的な民間規格を選定した。

抽出した民間規格の中で、

JSME 減肉管理技術規格に基

づく余寿命評価において必要

となる、計測厚さデータや内圧

等の最小厚さ計算に使用する

値を活用することができるか

を調査した。

3

国内における火力発電設備の配管に対する局

部減肉の健全性評価手法の適用検討を行った。

選定した代表的な民間規格を

ベースとした、提案する規格文

案を作成し、また、今後の課題

等を整理した。

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4.1.3 国内における火力発電設備の配管に適用可能な局部減肉に関する民間規格の調査

(1) 調査対象とする民間規格

火力発電設備に限定せずに、局部減肉状態を考慮した健全性評価手法を規定する海外及び

国内の民間規格の中から、国内における火力発電設備の配管減肉への適用可能な民間規格を

抽出することを目的として、局部減肉に関する民間規格及び JSME 減肉管理技術規格を対

象とした「適用範囲」に関する調査を行うため、まずは民間規格の発行及び更新に係る最新

状況を整理した。

配管減肉に関する代表的な既往の調査として、一般財団法人発電設備技術検査協会によっ

て実施された高効率火力発電設備健全性調査が挙げられる。特に、「平成 24 年度高効率火

力発電設備健全性調査」(以下、「平成 24 年度調査」という。)及び「平成 26 年度高効率火

力発電設備健全性調査」(以下、「平成 26 年度調査」という。)の中で実施された配管減肉

に関する民間規格の調査において、特定の発電設備に限定しない、配管減肉の評価手法に着

目した広範な民間規格の文献調査が実施され、国内における配管減肉評価についての提案イ

メージが示された。この提案イメージは、文献調査に加えて、当時の海外での活用実績や、

国内でも高圧ガス保安法やガス事業法における局部減肉状態を考慮した健全性評価手法の

取り込み検討状況等を踏まえて、米国石油協会規格「API 579-1/ASME FFS-1

Fitness-For-Service」(以下、「API 579-1/ASME FFS-1」という。)2009 年版の「Part 5

Assessment of Local Metal Loss」の減肉評価部分をそのまま参照する形でまとめられた。

この平成 24 年度調査及び平成 26 年度調査は、基礎調査という観点で実施されたものであ

った。

しかしながら、本調査を実施するにあたり、先に述べた平成 24 年度調査及び平成 26 年

度調査の基本方針で示された、特定の発電設備に限定せずに、局部減肉状態を考慮した健全

性評価手法について幅広く調査する、という考え方は、本調査において火力発電設備の配管

に対する新たな減肉評価方法の適用を検討する上で、踏襲することができると考えられる。

また、平成 26 年度調査以降、火力発電設備の安全率が 4.0 から 3.5 に見直されるとともに、

JSME 規格基本規定がエンドースされた。

このような制度見直しを踏まえて、本調査において改めて特定の発電設備に限定せずに、

局部減肉状態を考慮した評価手法の最新の民間規格の調査を行い、以下のいずれかに該当す

るものを最新の民間規格の調査対象として抽出した。

平成 24 年度調査又は平成 26 年度調査において調査対象とされた規格で、それ

以降に最新版に発行され、かつ、減肉評価部分に主要な更新があるもの

平成 24年度調査又は平成 26年度調査において調査対象とされていなかったが、

それ以降に発行されたもの

本調査では、平成 24 年度調査及び平成 26 年度調査での検討を踏まえて、表 4.2 に示す

判定項目を満足する以下の 4 つの規格を調査対象として抽出した。

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API 579-1/ASME FFS-1

一般社団法人日本溶接協会規格「圧力設備の供用適性評価方法 -減肉評価

WES2820」(以下、「WES2820」という。)

英国標準協会規格「Guide to methods for assessing the acceptability of flaws

in metallic structures BS7910」(以下、「BS7910」という。)

一般社団法人日本高圧力技術協会規格「信頼性に基づく圧力設備の減肉評価方法

HPIS Z109TR:2016」(以下、「HPIS Z109TR」という。)

なお、WES2820 は、平成 26 年度調査でも調査されたが、平成 26 年度調査の報告書が

まとめられた段階では発行前であったため、本調査では調査対象とした。

以上より、平成 24 年度調査及び平成 26 年度調査結果を基に、火力発電設備に限定せず

に、局部減肉状態を考慮した健全性評価手法に関する代表的な民間規格の発行及び更新に係

る最新状況を整理した。

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表 4.2 配管減肉に関する最新の民間規格の調査 調査対象とする規格の抽出

規格名称 適用対象

既往調査対象*1 調査対象判定項目*1 調査対象

判定*2 平成

24 年度※

平成

26 年度※

最新版の

発行

減肉評価部分の主

要な更新の有無

ASME Sec. I,Appendix IV 内圧を受ける円筒胴又は鏡の球面部分 ○

(記載なし) ○(2013) ○(2015) - -

ASME Sec. VIII, Div.1Appendix 32 内圧を受ける円筒胴又は鏡の球面部分 ○

(記載なし) ○(2013) ○(2015) - -

ASME Code Cases :Nuclear Components N-513 原子力発電所を構成する中庸エネルギーを有する Class2 又は

Class3 の配管 ○(2009) ○(2009) ○(2015) - -

ASME Code Cases :Nuclear Components N-597 原子力発電所を構成する Class1、Class2 及び Class3 の配管 ○(2003) ○(2003) ○(2015) - -

ASME Code Cases :Nuclear Components N-705 93℃以下かつ圧力 1.9MPa 以下の中低エネルギー容器・タンク - ○(2006) ○(2015) - -

ASME Code Cases :Nuclear Components N-806 トレンチにある埋設された直管及びエルボ - ○(2012) ○(2015) - -

ASME B31G-2009 ASME B31.4 等で対象となるパイプライン及び配管 ○(2009) ○(2009) ○(2012) - -

FITNET Fitness for Service*3 一般に認められている設計コードで設計された配管及び圧力容

(記載なし) ○(2008) - - -

API 579-1/ASME FFS-1 耐圧部材 ○(2007) ○(2007) ○(2016) ○ ○

BS7910 Guide to Methods for Assessing the Acceptability of Flaws in Metallic Structures 管及び圧力容器 - ○(2005) ○(2016) ○ ○

RSE-M In-service Inspection Rules for Mechanical Components of PWR Appendix 5.7 Detailed

Analysis of a Volumetric Defect

クラス 1、2 及び 3 の配管並びに容器 - ○(2010) - - -

DNV-RP-F101 Recommended Practice Corroded Pipelines パイプライン - ○(2010) ○(2015) - -

JSME S CA1-2005 発電用設備規格 配管減肉管理に関する規格 一般社団法人日本機械学会 発電用設備の配管 - ○(2005) - - -

JSME S TB1-2007 発電用火力設備規格 火力設備配管減肉管理技術規格(JSME 減肉管理技術規

格) 一般社団法人日本機械学会

発電用火力設備の配管 - ○(2007) - - -

JSME S NG1-2006 発電用原子力設備規格 加圧水型原子力発電所配管減肉管理に関する技術規格

一般社団法人日本機械学会

加圧水型原子力発電用設備の配管 - ○(2006) - - -

JSME S NH1-2006 発電用原子力設備規格 沸騰水型原子力発電所配管減肉管理に関する技術規格

一般社団法人日本機械学会

沸騰水型原子力発電用設備の配管 - ○(2006) - - -

容器・配管の腐食及び疲労割れに関する検査・評価・補修指針 JGA 指-109-07 一般社団法人日本

ガス協会

製造設備の容器、製造設備の配管及びガスホルダー

ただし、埋設物、支持構造物、塗膜及び被覆材を除く

(記載なし) ○(2000) - - -

高圧ガス設備の供用適正評価に基づく耐圧性能及び強度に係る次回検査時期決定基準

KHK/PAJ/JPCA S 0851 (2009) 高圧ガス保安協会 石油連盟 石油化学工業協会

高圧ガス保安法に基づいて設計・製作された高圧ガス設備のう

ち、石油精製プラント及び石油化学プラントの装置に用いる静

機器、配管系及び導管系

○(2009) ○(2009) ○(2014) - -

船舶用配管板厚減肉の設計、点検指針 水及び湿り蒸気配管に生じる流れ加速腐食による配管板厚減

肉対策 一般財団法人日本海事協会

鋼船規則 D 編 12 章に規定する 1 及び 2 類管 ○

(記載なし) ○(2007) - - -

茨城県高圧ガス設備維持基準 圧力容器の外面腐食に対する評価規格 化学プラント配管の外面腐食 - ○(2008) - - -

WES2820 圧力設備の供用適正評価方法-減肉評価 一般社団法人日本溶接協会 圧力容器円筒胴、円錐胴、球形圧力容器、直管、エルボ及びノ

ズル接続部等 -

○(2015

発行前) ○(2015) ○ ○

HPIS Z 107-2TR:2011 リスクベースメンテナンスハンドブック第 2 部-減肉の損傷係数 一般社団

法人日本高圧力技術協会

一般産業用設備の圧力設備 - ○(2011) - - -

ボイラー及び圧力容器安全規則(昭和 47 年労働省令第 33 号) 一般産業用の設備のボイラー - ○(2008) - - -

HPIS Z 109TR:2016 信頼性に基づく圧力設備の減肉評価方法 一般社団法人日本高圧力技術協会 一般に認められた規格によって設計製作された圧力設備 - - ○(2016) - ○

*1:平成 24 年度調査又は平成 26 年度調査で調査対象とされたもの、また、その後に最新版の発行があったもの、規格の中で減肉評価部分において主要な更新があったものを適合とし、表中“○”で示した。また、適合しないものを表中“-”で示し

た。なお、括弧内は発行年を示した。

*2: 以下のいずれかに該当する規格を調査対象として適合とし、表中“○”で示した。また、適合しないものを表中“-”で示した。

・平成 24 年度調査又は平成 26 年度調査において調査対象とされた規格で、それ以降に最新版が発行され、かつ、規格の中で減肉評価部分に主要な更新があるもの

・平成 24 年度調査又は平成 26 年度調査において調査対象とされていないが、それ以降に発行されたもの

*3: 成果は BS 7910:2013+A1:2015 に反映され、FITNET 自体は販売が終了している。

※「平成 24 年度高効率火力発電設備健全性調査報告書(一般財団法人発電設備技術検査協会)」及び「平成 26 年度高効率火力発電設備健全性調査報告書(一般財団法人発電設備技術検査協会)」(上表では、それぞれ“平成 24 年度”、“平成 26 年

度”と表記)を基にみずほ情報総研株式会社が“既往調査対象”を整理し、その上で“調査対象判定項目”を実施 (表中の規格名称は原則として平成 24 年度調査、平成 26 年度調査に従う)

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-11-

(2) 最新の民間規格の調査

(a) 概要

(1)において、火力発電設備に限定せずに、局部減肉状態を考慮した健全性評価手法に関

する代表的な民間規格の発行及び更新に係る最新状況を整理し、最新の 4 つの民間規格を

抽出したが、本節では、この 4 つの民間規格の概要を述べる。なお、評価手法の詳細につ

いては、4.1.4 及び参考資料1を参照されたい。

(b) API 579-1/ASME FFS-1

API 579-1/ASME FFS-1 は、一般産業界で使用される圧力機器を対象とした維持規格と

して、API(米国石油協会)と ASME(米国機械学会)が共同で整備したものであり、2016

年 6 月に最新版が発行された。

Part 4 に全面減肉(general metal loss)評価、Part 5 に局部減肉(local metal loss)評

価の手法がそれぞれ規定されている。どちらも減肉領域がある程度限定されている局部減肉

状態に適用でき、全面減肉評価は、減肉領域における深さ分布が相対的に均一と見なせるも

のと解釈でき、また、局部減肉評価は、減肉領域において深さが有意な分布を有するものと

解釈できる。一般的な評価は、まず Part 4 の評価手法に従うことが推奨されており、Part 4

と Part 5 の使い分けについては、図 4.1 に示すような評価フローが示されている。Part 5

は、Part 4 を用いた評価における局部減肉に対するオプションと解釈できる。なお、API

579-1/ASME FFS-1 2007 年版では、評価フロー中盤での「評価オプション」の前に厚さ平

均化長さ L を用いた判定の分岐があったが、API 579-1/ASME FFS-1 2016 年版ではその反

映の分岐がないことに注意する。

平成 24 年度調査及び平成 26 年度調査の成果として、API 579-1/ASME FFS-1 2007 年

版の概要の整理及び和訳の作成し、API 579-1/ASME FFS-1 2007 年版を参考とした国内の

減肉評価に対する提案イメージが作成された。

API 579-1/ASME FFS-1 2007 年版は、一般社団法人日本溶接協会規格(以下、「日本溶

接協会規格」という。)や一般社団法人日本高圧力技術協会規格(以下、「日本高圧力技術協

会規格」という。)に引用されており、国内においても広く認知されている規格と言える。

適用範囲や評価手法等の詳細は、WES2820 との比較で後述する。

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図 4.1 API 579-1/ASME FFS-1 の局部減肉に関する評価フローの概要1

1 API 579-1/ASME FFS-1 を参考にみずほ情報総研株式会社が作成

部材上の減

肉領域を探

し出す

検査面を決定し厚さプロフィールデー

タを得る

最小厚さ tmin

を求める

(Annex 2C 参

照)

厚さプロフィール

を用いる?

点厚さデータを用いる

一般減肉を確認するための追

加の NDE を実施する

厚さデータから tmm,tam 及び

COV を求める

タイプ B 又は

C 部材?

評価に厚さ

プロフィー

ルを用い

る?

厚さプロフ

ィールを求

める? COV>10%?

評価オプション

厚さ平均化範囲で平均厚さ tam

を求める。

計算に tamを用いる

Part4,レベル 1

又はレベル 2 を

用いて評価

計算に tam=tmmを

用いる

L の範囲の厚さデー

タを用いて tamを求め

計測最小厚さ tmmと減肉長さLを求める

長手、周方向の限界厚さプロフィール

(CTP’s)を求める

CTP’s に対し、s,c 及び tamを求める

レベル3?

No

Yes

Yes

Yes

Yes

No

No

No No No

Yes

Yes (再検査あるいは厚さプロフィールの

再取得が可能な場合のみ)

(点厚さ評価手法を使用)

(詳細厚さ評価手法を使用)

レベル 3 評価 Part5 を用いて

評価

応力解析 局部減肉 板厚平均化 保守的アプ

ローチ

Part4,レベル 2 又はレベル 3 を用いて MAWP を評価

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(c) WES2820

WES2820 は、圧力設備における減肉評価に特化した評価手順を示すものであり、API

579-1 /ASME FFS-1 2007 年版の Part4 及び Part5 を参考に策定された。API 579-1/ASME

FFS-1 を基に 2013 年に石油連盟・石油化学工業協会の供用適正評価基準委員会が作成した

圧力設備の供用適性評価基準について、石油連盟・石油化学工業協会から日本溶接協会に対

して規格化の要請があり、2 年間の規格化活動、パブリックコメント、審議を経て制定され

たものである。

WES2820 の解説によると、以下の点が特徴として挙げられている。

既存の国内規格では、減肉部の最小測定厚さが設計時の計算厚さより小さくなる場合

に、評価の適用範囲外となり、減肉を残したまま当該設備を継続供用することを許容

していない。これに対し、この規格では、API 579-1/ASME FFS-1 などで採用され

ている残存強度係数の考え方を導入することによって、計算厚さを下回る減肉に対し

ても、減肉評価を可能としている。

サプリメンタル荷重が無視できる場合の周方向応力評価について、API 579-1/ASME

FFS-1 Part5 では、仮想荷重を与えて安全側の評価を実施している。これに対し、こ

の規格では、内圧による周方向応力を算定することで精度を高めている。

この規格の制定にあたり、JIS B-8265 など日本の圧力容器規格が古くから ASME

B&PV 規格を規範としていることから、それらを基に設計・製作された圧力設備の

供用適性評価規格も、2007 年に ASME 規格として制定された API 579-1/ASME

FFS-1 Part4 及び Part5 の考え方を基にしている。今後、国内関連法規及び規格の

下で適用されることを前提に、評価手順、厚さ測定方法、減肉特性化、圧力設備の継

続供用可否判定、不合格判定時の処置などに検討が加えられ、規格の利便性の向上を

図っている。

適用範囲や評価手法等については、API 579-1/ASME FFS-1 との比較の形式で後述する。

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図 4.2 WES2820 の局部減肉に関する評価フロー2

2 WES2820 を参考にみずほ情報総研株式会社が作成

評価の開始

部位のタイプ分類 きず又は損傷が発見された部位

a)

「9.1 全面減肉特性化」参照

厚さ測定参照

部位のタイプ分類参照

全面減肉評価 注

a)評価対象設備が常圧タンクの場合には、評価に用いる圧力 p を液

面高さ h に、最高許容圧力 pMAWを最高許容液面高さ hMF に読み

替える。

b)タイプA部位では tam,tFCA,tminを使用して判定を行う。タイプB部

位では pMAW,p を使用して判定を行う(12.1 参照)。

c)タイプB部位の場合は局部減肉評価を適用できないので、全面減

肉評価で不合格と判定されれば適切な処置(箇条 13 参照)を行う。

d)σYは許容圧縮応力の算定に用いる。

全面減肉特性化

平均特性厚さ tmm

厚さ測定

部材の寸法

許容引張応力σa

評価に用いる圧力 p

将来腐れ代 tFCA

計算厚さ tmin

最高許容圧力 pMAWの算定

判定

厚さ測定

局部減肉特性化 厚さ測定データ

圧力設備の最高許容圧力 pMAW,残存強度係数 RSFの算定

軸方向の判定

サプリメンタル荷重

MxMyMT,F,FS

ミーゼス応力σeの算定

降伏応力、又は

0.2%耐力σY

周方向の判定

適切な処置の実施 継続供用可能

評価の終了

局部減肉厚さ t1 ,軸方向減肉長さ s

最小測定厚さ tmm ,周方向減肉長さ c

d)

b)

a)

「10.1a )最高許容圧力」の算定参照

不合格 c)

合格

「9.2 局部減肉特性化」参照

「10.1 b)最高許容圧力の算定」、「10.2 残存強度

係数の算定」参照

「12.2 a)局部減肉評価の判定」参照

「12.2 b)局部減肉評価の判定」参照

「11 サプリメンタル荷重を受ける円

筒胴又は円すい胴減肉部の応力算

定」参照

「13 処置」参照

「8 厚さ測定」参照

不合格

合格

合格

不合格

局部減肉評価

タイプA部位に適用する

(軸方向の判定の準備) (周方向の判定の準備)

(軸/周の両方向の判定を実施)

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(d) BS7910

BS7910 は、英国の金属構造物の欠陥評価手法に関する指針であり、最新版の

BS7910:2013+A1:2015 に、欧州各国が参加したプロジェクトにおいて整備された供用評価

規格 FITNET の内容が反映されている。BS7910 は、様々な欠陥又は劣化事象に対応して

おり、この中で、「10 Assessment for other modes of failure」、「10.3 Environmental effects」

及び「10.3.2 Locally thinned areas」に局部減肉に関する規定があり、内圧を受ける配管

及び圧力容器における局部減肉の評価が「Annex G The assessment of locally thinned

areas (LTAs)」に規定されている。BS7910 Annex G の手法は、ASME B31G 及び

DNV-RP-F101 を参考に整備されたものである。適用範囲や評価手法等の詳細は後述する。

なお、BS7910 及び以降に述べる民間規格は、圧力容器又は球状の機器を対象としたものが

含まれるが、本調査では配管を対象とした部分に着目して整理した。

(e) HPIS Z109TR

「信頼性に基づく圧力設備の減肉評価方法 HPIS Z 109TR:2016」は、一般社団法人日

本高圧力技術協会によって 2016 年に制定された規格であり、検査によってきず又は損傷が

発見された圧力容器、配管及び貯槽等の圧力設備に対して、信頼性に基づく減肉評価の手順

を示すものである。

HPIS Z109TR の解説によると、以下の点が特徴として挙げられている。

・減肉を有する圧力設備の供用適性評価に確率論を利用する信頼性工学的手法を適用

し、検査結果のばらつき、荷重のばらつき、設備の重要性などによって、合理的に継

続供用の可否判断をする方法を整理した。これによって、検査、運転状況のモニタリ

ングなどの日常の設備保全活動と、減肉評価法の安全裕度との関係が明確になる。

・具体的な評価方法として、一次近似信頼性手法を用いた減肉評価方法及び部分安全

係数法を用いた減肉評価方法を記載し、利用者は、必要に応じて使い分けることが可

能である。

附属書において、信頼性工学的手法を適用する意義及び関連する技術情報を詳細に記

載した。専門家でなくても、評価方法の技術的背景及び概要が理解できるように、減

肉配管の破壊試験データなどを含めて記載した。

・評価例として挙げた限界状態関数は、2007 年に ASME 規格として制定された API

579-1/ASME FFS-1 Part5の考え方を基にしている。検査方法や減肉特性化方法は、

API 579-1/ASME FFS-1、WES2820 の既存規格を参照している。

HPIS Z109TR は、想定する破損モードや減肉評価について、活用できる規格や手法とし

て API 579-1/ASME FFS-1、WES2820 を引用する形式で整備されており、具体的な個別

の手法は規定されていない。

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(3) 国内における火力発電設備の配管減肉に適用可能な民間規格の抽出

火力発電設備に限定せずに、局部減肉状態を考慮した健全性評価手法を規定する海外及び

国内の民間規格の中から、国内における火力発電設備の配管減肉への適用可能な民間規格を

抽出することを目的として、(1)及び(2)で整理した民間規格の最新状況を踏まえて、各民間

規格と JSME 減肉管理技術規格の適用範囲を比較対照した。

一般的に、民間規格の整備においては、想定した適用範囲における技術的根拠に基づいて

技術要件が策定され、規格本文に技術要件と適用範囲が併せて規定されることが多い。適用

範囲に複数の条件が規定されている場合は、原則として、全ての条件を満足しないとその規

格を適用することができない。そのため、国内における火力発電設備の配管減肉への適用可

能な民間規格を抽出する上で、対象とする民間規格の適用範囲が、JSME 減肉管理技術規

格と同等の適用範囲を含めているかを重視した。具体的には、以下の各抽出項目を満足する

かどうかを確認し、全ての抽出項目において適合となる民間規格を抽出した。なお、いずれ

の項目においても、同一の規格の中に複数の独立した評価手法が含まれる場合には、尐なく

とも 1 つの評価手法において抽出項目が該当すれば適合とした。

主たる対象設備:JSME 減肉管理技術規格 “第 4 節 適用範囲 火力発電所の

主要配管等で、内部を水または湿り蒸気(二相流)が流れる炭素鋼配管に適用す

る。” の規定を踏まえて、主たる対象設備が火力発電又は一般産業であるものを

抽出対象とした。なお、火力発電設備と原子力発電設備では、設備に対するアク

セス性等の環境又は維持管理に対する規制の考え方等が異なるため、原子力発電

設備を対象とした局部減肉に関する民間規格を除外した。

材料:JSME 減肉管理技術規格 “第 4 節 適用範囲 火力発電所の主要配管等

で、内部を水または湿り蒸気(二相流)が流れる炭素鋼配管に適用する。” の規

定を踏まえて、炭素鋼を対象としたもの又はそれを含む一般的な材料に適用可能

なものを抽出対象とした。

部位:JSME 減肉管理技術規格 “4.4 点検(試験)対象部位 上記 4.3(1)~(3)

の範囲内の減肉の発生の恐れがある下記部位ならびにその下流配管の管外径(D)

の 2 倍以上の範囲とすること。減肉の発生の可能性がある部位:エルボ、オリ

フィス下流部(フローノズル含む)、レジューサ、T 管、制御弁下流部、逆止弁

下流部、曲管。”の規定を踏まえて、減肉の発生する可能性があるエルボ等を対

象としたもの又はそれを含む一般的な部位に適用可能なものを抽出対象とした。

荷重:JSME 減肉管理技術規格の適用範囲においては、荷重に関する明確な規

定はない。しかし、内部流体として水又は湿り蒸気を想定しているため、内圧が

作用する環境であると言える。また、上記の部位のとおり、様々な部位において

減肉の発生の可能性がある。そのため、内圧及び内圧以外の付加荷重を考慮でき

るものを抽出対象とした。

温度:JSME 減肉管理技術規格 “4.3 点検(試験)対象系統範囲 水、蒸気(二

相流)ともに発電ユニット定格負荷時の運転状態を範囲選定の基本とするが、

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個々のユニット運用状況に合せて範囲の追加を行うこと。 (1)主要水系(復水、

主給水):温度 100℃以上の範囲(常用温度) (2)主要二相流(給水加熱器ドレ

ン系統):温度 100℃以上の範囲(常用温度) (3)その他減肉の恐れがある範囲”

の規定を踏まえて、温度 100℃以上を含むもの又は温度の適用範囲が明確に規定

されておらず、広範囲の温度に適用可能なものを抽出対象とした。

局部減肉評価:局部減肉状態を考慮した健全性評価手法を含むものとした。

火力発電設備の配管に適用可能な民間規格を、表 4.3 のとおり上記項目と対応させた結

果、以下の 3 つの規格が抽出された。

API 579-1/ASME FFS-1

WES2820

BS7910

なお、HPIS Z109TR は、全ての項目について適合となったが、減肉評価部分の詳細は規

定されておらず、API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 を引用している形式がとられて

いるため、API 579-1/ASME FFS-1 又は WES2820 に含めることとした。

以上より、国内における火力発電設備の配管減肉に適用可能な民間規格として API

579-1/ASME FFS-1、WES2820 及び BS7910 を抽出した。

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表 4.3 火力発電設備の配管に適用可能な民間規格の抽出

規格名称

抽出項目*1 判定

*7 主たる

対象設備*2

材料*3:

炭素鋼

部位*4:

エルボ等

荷重*5:

内圧かつ付加荷重

温度*6:

100℃以上

局部

減肉

ASME Sec. I,Appendix IV ○一般産業 ○ - - ○ ○ -

ASME Sec. VIII, Div.1Appendix 32 ○一般産業 ○ - - ○ ○ -

ASME Code Cases :Nuclear Components N-513 原子力発電 ○ ○ - - ○ -

ASME Code Cases :Nuclear Components N-597 原子力発電 ○ ○ - ○ ○ -

ASME Code Cases :Nuclear Components N-705 原子力発電 ○ ○ - - ○ -

ASME Code Cases :Nuclear Components N-806 原子力発電 ○ ○ - ○ ○ -

ASME B31G-2009 パイプライン ○ ○ - ○ ○ -

FITNET Fitness for Service*8 ○一般産業 ○ ○ - ○ ○ -

API 579-1/ASME FFS-1 ○一般産業 ○ ○ ○ ○ ○ ○

BS7910 Guide to Methods for Assessing the Acceptability of Flaws in Metallic Structures ○一般産業 ○ ○ ○ ○ ○ ○

RSE-M In-service Inspection Rules for Mechanical Components of PWR Appendix 5.7 Detailed Analysis of a Volumetric Defect 原子力発電 ○ ○ ○ ○ ○ -

DNV-RP-F101 Recommended Practice Corroded Pipelines パイプライン ○ ○ - ○ ○ -

JSME S CA1-2005 発電用設備規格 配管減肉管理に関する規格 一般社団法人日本機械学会 ○発電 ○ ○ - ○ - -

JSME S TB1-2007 発電用火力設備規格 火力設備配管減肉管理技術規格(JSME 減肉管理技術規格)*9 一般社団法人日本機械学会 ○火力発電 ○ ○ - ○ - -

JSME S NG1-2006 発電用原子力設備規格 加圧水型原子力発電所配管減肉管理に関する技術規格 一般社団法人日本機械学会 原子力発電 ○ ○ - ○ - -

JSME S NH1-2006 発電用原子力設備規格 沸騰水型原子力発電所配管減肉管理に関する技術規格 一般社団法人日本機械学会 原子力発電 ○ ○ - ○ - -

容器・配管の腐食及び疲労割れに関する検査・評価・補修指針 JGA 指-109-07 一般社団法人日本ガス協会 ○一般産業 ○ ○ - ○ - -

高圧ガス設備の供用適正評価に基づく耐圧性能及び強度に係る次回検査時期決定基準 KHK/PAJ/JPCA S 0851 (2009) 高圧ガス保安

協会 石油連盟 石油化学工業協会 石油 ○ ○ - ○ - -

船舶用配管板厚減肉の設計、点検指針 水及び湿り蒸気配管に生じる流れ加速腐食による配管板厚減肉対策 財団法人 日本海事協会 船舶 ○ ○ - ○ - -

茨城県高圧ガス設備維持基準 圧力容器の外面腐食に対する評価規格 化学 ○ ○ ○ ○ ○ -

WES2820 圧力設備の供用適正評価方法-減肉評価 一般社団法人日本溶接協会 ○一般産業 ○ ○ ○ ○ ○ ○

HPIS Z 107-2TR:2011 リスクベースメンテナンスハンドブック第 2 部-減肉の損傷係数 一般社団法人日本高圧力技術協会 ○一般産業 ○ ○ - ○ ○ -

ボイラー及び圧力容器安全規則(昭和 47 年労働省令第 33 号) ○一般産業 ○ ○ - ○ - -

HPIS Z 109TR:2016 信頼性に基づく圧力設備の減肉評価方法 一般社団法人日本高圧力技術協会 ○一般産業 ○ ○ ○ ○ ○ -*10

*1: 同一の規格の中に複数の独立した評価手法が含まれる場合、尐なくとも 1 つの評価手法において抽出項目が該当すれば抽出対象として適合とし、表中“○” で示した。

*2: JSME 減肉管理技術規格 “第 4 節 適用範囲 火力発電所の主要配管等で、内部を水または湿り蒸気(二相流)が流れる炭素鋼配管に適用する。” の規定を踏まえて、主たる対象設備が火力発電又は一般産業であるものを抽出対象として適合とし、表中“○” で示した。なお、火力発電設備と原子力発電設備では、設備に対するアクセス性等の環境又は維持管理に対する規制の考え方等が異なると言えるため、原子力発電設備を対象とした局部減肉に関する民間規格を除外した。

*3: JSME 減肉管理技術規格 “第 4 節 適用範囲 火力発電所の主要配管等で、内部を水または湿り蒸気(二相流)が流れる炭素鋼配管に適用する。” の規定を踏まえて、炭素鋼を対象としたもの又はそれを含む一般的な材料に適用可能なものを抽出対象として適合とし、表中“○” で示した。

*4: JSME 減肉管理技術規格 “4.4 点検(試験)対象部位 上記 4.3(1)~(3)の範囲内の減肉の発生の恐れがある下記部位ならびにその下流配管の管外径(D)の 2 倍以上の範囲とすること。 減肉の発生の可能性がある部位:エルボ、オリフィス下流部(フローノズル含む)、レジューサ、T 管、制御弁下流部、逆止弁下流部、曲管。”の規定を踏まえて、減肉の発生する可能性があるエルボ等を対象としたもの又はそれを含む一般的な部位に適用可能なものを抽出対象として適合とし、表中“○” で示した。

*5: JSME 減肉管理技術規格の適用範囲においては、荷重に関する明確な規定はない。しかし、上記*2 のとおり、内部流体として水又は湿り蒸気を想定しているため、内圧が作用する環境であると言える。また、上記*4 のとおり、様々な部位において減肉の発生の可能性がある。そのため、内圧及び内圧以外の付加荷重を考慮できるものを抽出対象として適合とし、表中“○” で示した。

*6: JSME 減肉管理技術規格 “4.3 点検(試験)対象系統範囲 水、蒸気(二相流)ともに発電ユニット定格負荷時の運転状態を範囲選定の基本とするが、個々のユニット運用状況に合せて範囲の追加を行うこと。 (1)主要水系(復水、主給水):温度 100℃以上の範囲(常用温度) (2)主要二相流(給水加熱器ドレン系統):温度 100℃以上の範囲(常用温度) (3)その他減肉の恐れがある範囲”の規定を踏まえて、温度 100℃以上を含むもの又は温度の適用範囲が明確に規定されておらず、広範囲の温度に適用可能なものを抽出対象として適合とし、表中“○” で示した。

*7: 主たる対象設備が火力発電又は一般産業であり、かつ、残りの全ての抽出項目が適合するものを火力発電設備の配管における局部減肉評価の適用性が高いものと判定し、対象規格における評価手法の詳細を比較することとした。

*8: 成果は BS 7910:2013+A1:2015 に反映され、FITNET 自体は販売が終了している。

*9: JSME 減肉管理技術規格との対応の調査であるため、ここでは抽出対象とはせず、参考のため本表に記載した。

*10: HPIS Z 109TR では、減肉評価部分の詳細は規定されておらず、API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 を引用している形式がとられているため、API 579-1/ASME FFS-1 又は WES2820 に含めることとした。

※「平成 24 年度高効率火力発電設備健全性調査報告書(一般財団法人発電設備技術検査協会)」及び「平成 26 年度高効率火力発電設備健全性調査報告書(一般財団法人発電設備技術検査協会)」を基にみずほ情報総研株式会社が各“抽出項目”に対する判定

及びその結果を踏まえた火力発電設備の配管における局部減肉評価の適用に対する判定を実施(表中の規格名称は原則として平成 24 年度調査、平成 26 年度調査に従う)

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4.1.4 国内における火力発電設備の配管に適用可能な局部減肉に関する代表的民間規格の

選定の検討

国内における火力発電設備の配管減肉への適用のための代表的な民間規格を選定するこ

とを目的として、4.1.3 で抽出した API 579-1/ASME FFS-1、WES2820 及び BS7910 のそ

れぞれの民間規格について、評価のために使用するデータ又は評価手法等についての調査

を行った。

ここで、代表的な民間規格の選定の基準を以下に列記する。

JSME 減肉管理技術規格に基づく余寿命評価では、減肉領域における計測厚さ

及び計算上必要最小厚さが用いられる。計算上必要最小厚さは設計式が与えら

れ、配管寸法や内圧等によって算出される。計測厚さ、計算上必要最小厚さ、

配管寸法や内圧等は、評価対象とする減肉領域の基礎情報であるため、局部減

肉状態を考慮した健全性評価において、これらの情報が活用できることが望ま

しい。

評価項目等の詳細を規定せずに、他の規格をそのまま引用することなく、一連

の評価手法が全て含まれることが望ましい。また、適用範囲及び評価手法につ

いて、ある程度広範な領域であることが望ましい。

選定を行う上で、API 579-1/ASME FFS-1、WES2820 及び BS7910 に規定されている、

使用するデータ、適用範囲、部位及び評価手法に着目して比較を行った。概要を以下に述

べる。各項目の詳細については参考資料1を参照されたい。

【使用するデータ】

API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 では、後述するように複数の独立した

評価手法が含まれるが、減肉領域の格子状の各点における座標と計測厚さデー

タを用いて、評価手法に応じて、計測最小厚さ、計測平均厚さ、減肉形状、配

管寸法及び引張強さ等から設計式を用いて得られる許容圧力等を使用する。

BS7910 では、減肉領域の代表厚さ及び減肉の影響を受けない領域における応力

等を使用する。

【適用範囲】

API 579-1/ASME FFS-1、WES2820 及び BS7910 のそれぞれで表記方法が若干

異なるものの、一般に認められた設計・構造規格によって製作されたものであ

ること、繰返し荷重を受けないこと、クリープ温度域でないこと、亀裂状では

ないことなどが、複数の規格において適用範囲とされる主な項目であり、大き

な差異はないと言える。

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【部位】

WES2820 は、API 579-1/ASME FFS-1 を基に作成されているため、部位の整

理方法が両者で類似している。

API 579-1/ASME FFS-1 では、圧力及び付加荷重と要求される厚さに関する設

計式が与えられていて、付加荷重が要求厚さに対して支配的とならない部材を

タイプ A と定義している。また、タイプ A と同様の形状及び荷重であるが、付

加荷重が要求厚さに対して支配的となる可能性がある部材をタイプ B クラス 1

と定義しており、これらの部位のタイプについて、具体例が示されている。

WES2820 では部位のタイプの定義はなく、具体例を用いてタイプ A 及びタイ

プ B に部位が分類されている。具体例を対照すると、概ね API 579-1/ASME

FFS-1 と対応する。例えば、「配管の直管部」や「取付物がないエルボ、曲げ管」

はタイプ A 部位に分類される。

BS7910 における部位は API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 と対応せず、

部位についての記載は荷重との組合せの形式で適用範囲の記載に含まれている。

JSME 配管管理技術規格において減肉の発生の可能性があり、点検(試験)対

象部位として挙げられている例に該当するものは、エルボや曲管であるが、こ

れらに対して API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 は適用可能であると言え

る。

【評価手法】

API 579-1/ASME FFS-1 の局部減肉状態を考慮した健全性評価手法は、Part 4

General Metal Loss の Point Thickness Reading 及び Critical Thickness

Profile 並びに Part 5 Local Metal Loss の 3 つに分類できる。これらは、

WES2820 の全面減肉評価点厚さ評価手法、全面減肉評価詳細厚さ評価手法及び

局部減肉評価手法にそれぞれ対応すると考えられる。API 579-1/ASME FFS-1

の Part 4 General Metal Loss の Point Thickness Reading 又は WES2820 の全

面減肉評価点厚さ評価手法は、減肉領域の厚さデータのばらつきが比較的小さ

い場合に適用可能な手法である。また、そうでない場合は、API 579-1/ASME

FFS-1 であれば Part 4 General Metal Loss の Critical Thickness Profile 又は

Part 5 Local Metal Loss、WES2820 であれば、全面減肉評価詳細厚さ評価手法

又は局部減肉評価手法を適用することとなる。なお、以下では、API 579-1/ASME

FFS-1 及び WES2820 で対応する各評価手法の表記について、WES2820 の表記

を倣うこととする。

API 579-1/ASME FFS-1 の Part 4 全面減肉評価では、主に点厚さデータ及び最

大許容圧力による評価を行う一方、Part 5 局部減肉評価では、詳細厚さデータ

に基づく残存強度係数を用いて軸方向及び周方向の断面に対する判定を行う。

内圧以外の付加荷重を考慮する必要がある場合は、Part 5 局部減肉評価を適用

する必要がある。Part 4 全面減肉評価の Level 1 及び Level 2 において、それぞ

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-21-

れ点厚さ評価手法及び詳細厚さ評価手法が含まれており、Level 2 では許容残存

強度係数 RSFaが導入されている点が主に異なる。

全面減肉評価点厚さ評価手法について、API 579-1/ASME FFS-1 と WES2820

を比較すると、個別の評価式は若干異なるものの、評価全般について API

579-1/ASME FFS-1 の Part 4 全面減肉評価の Level 1 と同等と解釈できる。た

だし、WES2820 全面減肉評価の平均厚さの要求式の右辺において、RSFaに相当

する 0.9が乗じられており、一部Level 2相当の考え方が含まれると解釈できる。

全面減肉評価詳細厚さ評価手法も同様である。

局部減肉評価手法について、API 579-1/ASME FFS-1 と WES2820 を比較する

と、概ね同等の評価手法と言える。ただし、残存強度係数 RSF の算出方法につ

いて、API 579-1/ASME FFS-1 Part5 Level 2 と WES2820 局部減肉評価では、

詳細な断面形状から算出するという考え方がほぼ同等であると言えるが、具体

的な算出方法は異なる。

BS7910 の評価手法は、減肉の影響を受けない領域における応力から減肉領域に

おける応力を算出するものである。考慮する荷重として、内圧以外の付加荷重

を含めることができるという点では、API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820

の局部減肉評価手法に近いと言える一方、評価に用いる厚さは代表厚さであり、

API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 ほど詳細な形状の評価は必要とされな

い。

先に述べた局部減肉状態を考慮した健全性評価手法に必要となる情報の考え方の観点か

ら、各規格の特徴を以下にまとめる。

API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 では、評価に使用するデータに関連し

て、計測厚さデータ及び内圧に基づく簡便な評価手法があり、JSME 減肉管理

技術規格との親和性が比較的高いと言える。また、計測厚さデータ及び内圧に

基づく簡便な評価では要求を満足しない場合又は内圧以外の付加荷重を考慮す

る必要がある場合、応力に基づく詳細な評価手法を適用することができ、評価

手法が考慮する領域が比較的広く、かつ、独立な評価手法を段階的に適用する

ことができる。そのため、評価に使用するデータ及び評価手法が考慮する領域

の観点で、API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 は適切であると言える。

BS7910 に規定されている評価手法は、減肉の影響を受けない領域における応力

から減肉領域における応力を算出するものであり、 API 579-1/ASME FFS-1 及

び WES2820 と比較すると、規格として想定されている条件の範囲が狭い。そ

のため、評価に使用するデータ及び評価手法が考慮する領域の観点で、BS7910

の評価手法単独では適切であるとは言えない。

API 579-1/ASME FFS-1 の Part 4 General Metal Loss 及び Part 5 Local Metal Loss に

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-22-

規定されている評価手法について、それぞれ Annex に参考文献の一覧が示されているとお

り、多くの技術的根拠に基づいて整備された規格である。また、国内でも、例えば、大野

ら(大野、戒田、“局部減肉を有する円筒胴容器の破裂圧力と API/ASME FFS 基準に基づ

く有限要素解析の比較 第 1 報 塑性崩壊評価”、圧力技術 第 49 巻第 2 号、2011 年)や

山口ら(山口、吉田、戒田、“API 579-1/ASME FFS-1 供用適正評価による模擬腐食配管の

残存強度評価”、圧力技術 第 52 巻第 2 号、2014 年)によって、国内で製作された円筒胴

又は配管を対象とした試験結果との比較を通じて、API 579-1/ASME FFS-1 の評価手法の

妥当性確認が行われている。WES2820 は API 579-1/ASME FFS-1 を基に作成されている

ため、これらの技術的な妥当性を含むものと考えられる。このように、API 579-1/ASME

FFS-1 及び WES2820 の局部減肉評価手法は活用可能なものと考えられる。

以上より、評価に使用するデータ及び評価手法が考慮する領域等を踏まえて、火力発電

設備の配管に適用可能な民間規格として API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 を選定し

た。

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-23-

4.1.5 国内における火力発電設備の配管に対する局部減肉の健全性評価手法に関する規格

文案の検討

(1) 検討方針

国内における火力発電設備の配管に対する局部減肉の健全性評価手法の適用検討を目的

として、4.1.4 で選定した代表的民間規格を参考として、規格に類する文書(以下、「規格文

案」という。)を作成することにより、局部減肉の健全性評価手法の適用についての特徴及

び課題等を整理した。

先に述べたとおり、WES2820 は API 579-1/ASME FFS-1 を基に作成されているため、

API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 の局部減肉状態を考慮した健全性評価手法の技術

的内容については、ほぼ同等であるが、全ての内容が完全に一致しているわけではない。

主な特徴の比較を表 4.4 に示す。評価手法等の詳細については、参考資料1を参照された

い。

表 4.4 API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 の比較(局部減肉状態を考慮した健全

性評価手法の技術的内容に関する比較を除く)

API 579-1/ASME FFS-1 WES2820

評価手法の範囲* 比較的広い。 比較的狭い。

評価手法の難しさ* 比較的複雑である。 比較的簡便である。

解説 Annex に技術的根拠となる論文

の一覧が示されているが、本文

の項目に対する解説文書や試算

事例はない。

本文の一部の項目について、解説

が記載されている。また、試算事

例や附属書を含む。

* API 579-1/ASME FFS-1 と WES2820 の比較対照

表 4.4 の比較を踏まえて、規格文案の作成方針を以下のとおりとする。

API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 の局部減肉状態を考慮した健全性評価

手法はほぼ同等であること、相対的に API 579-1/ASME FFS-1 が広範な領域を

カバーしているため、その技術的内容について、API 579-1/ASME FFS-1 を参

考とする。

WES2820 では試算事例等が整備されており、有用な情報であると言えるため、

解説や附属書等の本文以外の情報を含めることとする。

これらを踏まえて、API 579-1/ASME FFS-1 をベースとして、火力発電設備の配管にお

ける局部減肉状態を考慮した健全性評価のための規格文案を作成した。

この規格文案は、4.1.3 において JSME 減肉管理技術規格の適用範囲との対応を通じて抽

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-24-

出され、かつ、4.1.4 において評価に使用するデータ及び評価手法が考慮する領域を根拠に

選定された API 579-1/ASME FFS-1 をベースとしている。また、規格文案の内容は健全性

評価に特化したものであり、JSME 減肉管理技術規格に含まれる具体的な検査範囲や検査

方法はその対象外となる。つまり、規格文案は、JSME 減肉管理技術規格との適用範囲や

使用するデータについての親和性は高いものと言えるが、JSME 減肉管理技術規格よりも

対象とする領域が狭い。そのため、定期事業者検査の方法の解釈から引用されている JSME

減肉管理技術規格の代替ではなく、JSME 減肉管理技術規格による最小厚さを用いた余寿

命評価に基づく次回定期事業者検査の時期を見直す場合に適用されることを想定した位置

づけとする。規格文案の位置づけのイメージ及び規格文案の活用のイメージをそれぞれ図

4.3 及び図 4.4 に示す。

図 4.3 規格文案の位置づけのイメージ

民間規格

省令の解釈

省令

電気事業法

発電用火力設備に関する技術基準を定める省令 電気事業法施行規則

第1章総則 第2章ボイラー及びその附属設備第3章蒸気タービン及びその附属設備第4章ガスタービン及びその附属設備

第5章内燃機関及びその附属設備第6章燃料電池設備第7章液化ガス設備第8章ガス化炉設備第9章可燃性の廃棄物を主な原材料と

して固形化した燃料の貯蔵設備第10章溶接部

発電用火力設備の技術基準の解釈

第11章その他規格等の適用

電気事業法施行規則第94条の3第1項第1号及び第2号に定める定期事業者検査の方法の解釈

例えば、第2章ボイラー及びその付属設備(管及び管台)第12条 における引用

日本工業規格JIS B 8201 (2005)

陸用鋼製ボイラー構造

一般社団法人日本機械学会発電用火力設備規格基本規定(2012年版)

JSME S TA0-2012

最小厚さ

一般社団法人火力原子力発電技術協会火力発電所の定期点検指針

TNS-G1001-2005.4

一般社団法人日本機械学会

発電用火力設備規格火力設備配管減肉管理技術規格

(2009 年版)JSME S TB1-2009

最小厚さ

(事業用電気工作物の維持)第三十九条 (定期安全管理検査)第五十五条

一般社団法人日本機械学会発電用火力設備規格詳細規定(2012年版)

JSME S TA1-2012最小厚さ

設備 管理(減肉管理を含む)

電気事業法

規格文案

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図 4.4 規格文案の活用のイメージ

(2) 規格文案の概要

参考資料1に火力発電設備の配管における局部減肉の評価方法の規格文案を示す。また、

規格文案の構成を図 4.5 に示す。規格文案の特徴を以下に列記する。

「基本方針」、「条件」及び「適用範囲」には、規格文案作成の考え方とその過

程や JSME 減肉管理技術規格との対応を記載した。

評価手順の中の局部減肉状態を考慮した健全性評価手法の詳細は、原則として

API 579-1/ASME FFS-1 を参考とした。

本文及び解説以外に、附属書として付加荷重を受ける内面減肉を有する円筒胴

の断面特性計算手順及び局部減肉評価事例について WES2820 の一部を引用す

る形式で作成した。

適用範囲については、JSME 減肉管理技術規格と API 579-1/ASME FFS-1 の両

方が適用可能な範囲とした。

また、本規格文案の取扱いや技術的内容等に関する留意事項を以下に列記する。

本規格文案は、JSME 減肉管理技術規格の最小厚さを用いた余寿命評価に基づ

く次回定期事業者検査時期を見直す場合に適用されることを想定して作成した

ものである。しかし、現時点での火技解釈や JSME 減肉管理技術規格において

は計測最小厚さが計算上必要最小厚さを下回る状態での運転が認められる旨は

明記されておらず、これが認められる場合という仮定の下で本規格文案を作成

した。

運転時間

厚さ

最小厚さ

前回計測厚さ tn-1

今回計測厚さ tn

規格文案の評価手法に

基づく基準

次回定期事業者

検査時期

規格文案の 活用

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-26-

本規格文案は、JSME 減肉管理技術規格の最小厚さを用いた余寿命評価に基づ

く次回定期事業者検査時期を見直す場合に適用されることを想定して作成した

ものであるが、局部減肉評価手法そのものは、余寿命評価だけではなく、厚さ

計測時点での健全性評価に活用可能である。また、本規格文案での適用範囲に

ついて、JSME 減肉管理技術規格と API 579-1/ASME FFS-1 の両方が適用可能

な範囲に限定したが、局部減肉評価手法は炭素鋼以外の鋼材においても適用可

能と言えるため、本規格文案での適用範囲のみに対して局部減肉評価手法が適

用可能ということではない。

本規格文案は、API 579-1/ASME FFS-1 や WES2820 を参考としており、いず

れも多くの技術的根拠を踏まえて作成されたものであるが、国内の火力発電設

備の配管に対する適用の妥当性、現行の規制体系との関係性や運用面で予想さ

れる課題等に対して追加の検討を踏まえた更新を行った上で、実際に運用され

ることを想定する。

本規格文案において詳細に記載できなかった技術的な要件として、適用可能な

減肉形状(例えば、亀裂状欠陥と区別する際の条件)、破壊靭性等の機械的特性

に関する要求事項や座屈等の内圧支配以外の破損モードの除外等が挙げられる。

作成した規格文案は、JSME 減肉管理技術規格の適用範囲を概ね満足することや、JSME

減肉管理技術規格の余寿命評価においても利用される計測厚さデータや内圧等の情報を活

用して、局部減肉の健全性評価を行うことができることが分かった。そのため、本規格文

案が JSME 減肉管理技術規格の最小厚さを用いた余寿命評価に基づく次回定期事業者検査

時期を見直す場合に適用されると仮定したときに、適用条件という観点では大きな問題が

ないことが分かった。

図 4.5 規格文案の構成

本文及び解説

基本方針

条件

適用範囲

評価手順

レベルa評価、レベルa’評価(点厚さ評価手法)

レベルa評価、レベルa’評価(詳細厚さ評価手法)

レベルb評価、レベルb’評価

附属書A 付加荷重を受ける内面減肉を有する円筒胴の断面特性計算手順

附属書B 局部減肉評価事例

• 本規格文案作成の過程• JSME減肉管理技術規格との対応

• API 579-1/ASME FFS-1と本規格文案の対応

Part 4 Level1ーレベルaPart 4 Level2ーレベルa’Part 5 Level1ーレベルbPart 5 Level2ーレベルb’

• WES2820を引用

規格文案の構成

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-27-

4.2 EN 規格と技術基準の技術要素等の比較分析

4.2.1 検討概要

欧州におけるボイラーに関する技術基準と日本における技術基準では、規格体系や詳細

な要求事項等が異なることから、欧州で製造された高効率なバイオマスボイラー等を国内

で利用するには、同等の保安水準が確保されているかどうかを確認することが難しい場合

がある。

一方で、欧州において EN 規格等で製造された発電設備を日本に導入し、電気事業制度

改革や FIT 等を活用し、発電事業を実施したいというニーズが高まっている。

また、国内においては、「ボイラー及び圧力容器安全規則及び労働安全衛生法及びこれに

基づく命令に係る登録及び指定に関する省令」(平成 28 年厚生労働省令第 149 号)が適用

される予定(平成 28 年 9 月 20 日公布、平成 29 年 4 月 1 日施行)3であり、条件付きにて

海外で製造されたボイラーや圧力容器を国内に導入することが可能となった。

本検討においては、一定の保安水準を担保することを前提としながら、国内他法規及び

国際規格との整合化を検討すべく、ボイラー及びその附属設備(溶接部を含む)を対象に、

火力発電設備の技術基準と EN 規格の EN12952(水管ボイラー)について、構成、基本思

想、技術要素及び技術的要件等に関する調査を実施し、比較・分析結果を踏まえた課題を

整理した。

3 ボイラー及び圧力容器安全規則及び労働安全衛生法及びこれに基づく命令に係る登録及

び指定に関する省令の一部改正(指定外国検査機関関係を除く。)等について[平成 28 年 9

月 30 日基発 0930 第 32 号]

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu

/0000140174.pdf

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4.2.2 欧州における発電設備規格の法体系について

(1) 欧州における発電設備の安全規制体系について

(a) 欧州における技術基準の体系

欧州では、ニューアプローチ決議により、分野別の製品に関する安全指令が策定され、

その整合化の1つとして、欧州圧力機器指令(Directive 97/23/EC Pressure Equipment

Directive)が 1997 年に採択され、2002 年 5 月より強制執行となった。その後 2014 年に

改定され、Directive 2014/68/EU Pressure Equipment Directive(以下「PED」という。)

となり、一部改訂された。この目的は、各国間の技術的障壁の排除であり、圧力機器の EU

加盟国での国内法と整合させることである。つまり、PED に適合した製品については、市

場で流通する製品の安全性が確認されたものであり、EU 域内では流通可能となる。また、

ドイツでは、EU 加盟国として全ての EU 指令に適合することが求められている。

PED では、安全要求事項(Essential Safety Requirement:ESR)が設定されているが、

これは定性的な要求であり、基本的には定量的な要求を行っていない性能規定である。そ

のため、これに整合した様々な技術基準が設けられており、圧力容器については、EN12952

(水管ボイラー)、EN12953(シェルボイラー)及び EN13445(火なし圧力容器)等の EN

規格や、ドイツ圧力容器協会が作成した民間規格である AD-Merkblatter 2000 圧力容器規

格(以下、「AD2000」という。)等が挙げられる。各技術基準の整合性については、Notified

Body(ノーティファイドボディ。以下、「公認検査機関」という。)によって承認される。

また、適合する技術基準については、欧州の技術基準に限らず、ASME 規格や JIS 規格に

ついても適合し、公認検査機関により承認される場合もある。

欧州においては、圧力機器を流通させるためには、欧州圧力機器指令に基づき、設計、

製作及び検査を行い、製造者が CE マーキングを貼付することにより、PED に準拠した製

品であることを示さなければならない。また、この際の検査においては、PED のルールに

則り、第三者機関である公認検査機関が実施しなければならない場合がある。

次頁図 4.6 に発電設備に関する国内及びドイツにおける技術基準体系の比較を示す。

図 4.6 に示すように、日本における発電用火力設備に関する技術基準を定める省令(以

下、「火技省令」という。)が、ドイツでは PED や製品安全法第 14 条に相当し、これらは

選択の余地のない統一的な規格である。また、日本の火技解釈は、ドイツにおける EN12952

や AD2000 等に相当し、これらは選択可能な技術基準である。

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(日本:電気事業法) (ドイツ:EU 指令等)

図 4.6 発電設備に関する国内及びドイツにおける技術基準体系の比較

ここで日本と欧州の相違点として、欧州においては選択可能な技術基準が複数存在し、

また公認検査機関が認承した場合は、ASME規格やJIS規格が適用される可能性があるが、

日本の技術基準は、火技解釈及び JSME 規格基本規定のみであることが挙げられる。火技

解釈の前提において、「省令に定める技術的要件を満たすべき技術的内容は、この解釈に限

定されるものではなく」と明記されており、他の技術基準を排除していないが、他の技術

基準を適用する場合は、個別に設置者が、火技省令が要求する保安水準や技術的根拠を示

す必要があることから、実際には設置者にとってはハードルが高いものもあると考えられ

る。一方で、欧州においては、各国の技術基準障壁を排除する目的で PED や EN 規格が制

定された経緯もあり、PED において最低の安全基準のみを制定し、様々な技術基準が適合

基準と認められている。

以上の点が、国内法令及び欧州指令での技術基準の取り扱いが大きく異なる点の1つで

ある。

(b) 欧州における設置・運用時における法体系

欧州における発電設備の設置、運用、保守等の運用段階における安全規制は、各国の国

内法によって安全規制が行われている。例えば、ドイツにおいては労働社会省が制定する

規則である、Verordnung uber Sicherheit und Gesundheitsschutz bei der Verwendung

von Arbeitsmitteln (Betriebssicherheitsverordnung – BetrSichV):設備使用の安全・労

働衛生に関する規則(以下、「産業安全衛生規則」という。)が制定されており、圧力容器

については、セクション 4 にて詳細に有資格者の設置、使用前検査及び定期検査等につい

て規定されている。また、安全基準として、労働社会省の研究機関である労働安全衛生の

ための連邦工科大学にて「安全のための技術的規制(TRBS)」を策定している。

図 4.7 に発電設備の設置及び運用段階におけるドイツの法体系を示す。

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図 4.7 発電設備の設置及び運用段階におけるドイツの法体系

発電設備の使用前検査及び設置後の定期検査においても条件によっては、公認検査機関

等の第三者機関が実施しなければならない。参考として、表 4.5 にドイツにおける発電設

備の使用前検査及び定期検査の実施者、表 4.6 にドイツにおける蒸気ボイラーの定期検査

間隔を示す。

表 4.5 ドイツ産業安全衛生規則における発電設備の使用前検査及び定期検査の実施者

容量 V 圧力 PS 容量×圧力 PS・V 使用前検査 定期検査

L Bar Bar・L

> 2 0.5 <PS≦ 32 ≦ 200 有資格者 有資格者

≦ 1,000 0.5 <PS≦ 32 200 <PS・V≦1,000 公認検査機関 有資格者

> 1,000 0.5 <PS≦ 32 -

公認検査機関 公認検査機関 ≦ 1,000 0.5 <PS≦ 32 > 1,000

> 2 ≧ 32 -

※ここで有資格者の定義についても、経験年数、スキル、知識維持等について、産業安

全衛生規則に定義あり

表 4.6 ドイツ産業安全衛生規則における蒸気ボイラー定期検査間隔

外観検査 内面検査 強度検査

1 年 3 年 9 年

※設計温度 110℃以上の蒸気ボイラーにおける規定

欧州の発電設備メーカーは、約 8,000 時間(約 1 年)をめどに開放検査を設置者に求め

ており、メーカーが求める保守点検を実施しない場合には、発電設備の安全性について保

証の対象外としている4。

4 平成 27 年度未利用エネルギー等活用調査(発電用火力設備に関する保安技術等動向調査)

報告書(平成 28 年 3 月、みずほ情報総研株式会社)

省令

安全基準

ドイツ労働社会省労働安全衛生法(ArbSchG)

産業安全衛生規則Betriebssicherheitsverordnung– BetrSichV

TRBS:安全のための技術的な規制TRBS1001:TRBSの利用と構成TRBS1111:生死に係る危険評価と技術安全基準TRBS1201 1部:作業装置の試験と監視に必要な装置TRBS1201 2部:蒸気と圧力による危険作業装置の試験

と監視その他

労働安全衛生のための連邦工科大学(BAuA:労働社会省の研究機関)による安全基準

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-31-

また、本調査対象の欧州で製造された小型のバイオマスボイラー等の発電設備について

は、事業者は主に地域熱供給事業を目的として使用しており、発電事業は副業という位置

づけで使用している。また、ドイツの労働安全衛生法では、安全規制の目的が労働者の安

全性の確保であるため、小型のバイオマスボイラー等の発電設備に対しては、電気の安定

供給が義務づけられていない。一方で、日本の電気事業法では事業用電気工作物に対して、

電気事業法第 28条において電気の安定供給の確保を求めており、安全規制の目的が異なる。

(c) 発電設備に関する欧州と日本の検査・点検体系の比較

欧州と日本の安全規制体系と異なる点を以下に整理する。

日本の電気事業法では、設計段階~工事・運転開始段階~設備の運用段階全て

設置者に責任が生じるのに対して、欧州では、設計段階から工事・運転開始段

階までは製造者に責任が生じ、設備の運用段階は設置者に責任が生じる。

日本の電気事業法では、技術基準適合維持義務等の保安活動は基本的に設置者

による自主保安であるが、ドイツでは、発電設備の規模にもよるが、第三者機

関の公認検査機関が、製品認証、溶接安全検査、使用前検査及び定期検査を通

じて技術基準の適合性や産業安全衛生規則等を満たしているかどうかの検査で

確認している。

図 4.8 にドイツと日本における発電設備の検査・点検体系の比較、図 4.9 に日本におけ

る事業用電気工作物の安全規制体系を示す。

※上記の欧州の項目には、製造者、設置者、公認検査機関の三者のみの記載であるが、

工事・運転開始段階でエンジニアリング会社等が関与した場合は、エンジニアリング

会社等が PED への準拠や溶接安全検査に係る責任が生じる。

図 4.8 ドイツと日本における発電設備の検査・点検体系の比較

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出典:総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会電力安全小委員会小型発電設備規

制検討ワーキンググループ(第 1 回)[平成 21 年 8 月 7 日]資料 2 を元にみずほ情報総研

株式会社が加筆・修正

http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90807a03j.pdf

図 4.9 日本における事業用電気工作物の安全規制体系

国 事業者

保安規程に基づく自主保安

技術基準への適合維持義務

保安規程の作成・届出・遵守主任技術者の選任・届出

保安規程変更命令

工事計画変更命令

工事計画の届出

使用前安全管理審査 使用前自主検査

溶接安全管理審査 溶接事業者検査

定期安全管理審査 定期事業者検査

報告徴収

事故報告

立入検査

技術基準適合命令

設計段階

工事・運転

開始段階

設備の運用

段階

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(2) 欧州圧力機器指令の概要

(a) 適用範囲

PED は、最高使用圧力 0.05MPa を超える圧力機器に対する設計、製造及び適合性評価

を示すものである。また、対象となる機器は、容器、配管、安全設備、圧力設備及びこれ

らの組み立て品である。

(b) 重要な安全性要求事項(ESR)

PED の附属書Ⅰでは、安全性に関する重要な要求事項が示されている。具体的には、設

計、製造、材料、ボイラー等の加熱を伴う圧力容器に対する要求事項、製造時の遵守事項、

許容応力等が規定されている。また、許容応力、継手係数、圧力制限装置、静水圧圧力(サ

ージ圧)及び材料特性(曲げ破壊エネルギー)については、定量的な規定が設けられてい

る。

表 4.8 に ESR の目次を示す。

PED の目的は、市場に流通する製品の安全性の担保であることから、国内の法令と異な

り、製造手順、製造の評価、マーキングとラべリング(後述するが、製品が PED に準拠す

ることを示すラべリング)、取扱説明書等について、要求事項として規定している。

(c) 評価テーブル

PED の附属書Ⅱでは、使用する流体の種類(危険流体/その他の流体)、流体の状態(ガ

ス/液体)、容器/配管及び圧力機器のもつ流体エネルギーの大きさ(圧力 PS(bar)と容

積 V(L)又は配管径(DN)の積)に応じ、適合させる評価モジュールのカテゴリーが決

定する。上位のモジュールへの変更は可能である。なお、危険流体の定義であるが、主に

可燃性、爆発性、酸化性、自触媒反応性(自触媒反応とは、化学反応において反応生成物

が、自らその反応を促進する触媒の役割をする反応)及び有毒性等の性質を有する流体と

されている。

以下にカテゴリー別の評価モジュールを示す。また、図 4.10 に PED における適合性カ

テゴリー分類の例を示す。

表 4.7 PED におけるカテゴリーと評価モジュールの関係

カテゴリー 評価モジュール

Ⅰ A

Ⅱ A2、D1、E1

Ⅲ B(設計タイプ)+D、B(設計タイプ)+F、B(製品タイプ)+E、B(製

品タイプ)+C2、H

Ⅳ B(製品タイプ)+D、B(製品タイプ)+F、G、H1

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表 4.8 ESR の目次

章 章タイトル 和訳

1 GENERAL 一般

2 DESIGN 設計

2.1. General 一般

2.2. Design for adequate strength 適切な強度の設計

2.3. Provisions to ensure safe handling and operation 安全な取り扱いと操作を確保するための規

2.4. Means of examination 検査方法(必要なすべての検査ができる設計

となっていることに対する規定)

2.5. Means of draining and venting 排水と換気の方法

2.6. Corrosion or other chemical attack 腐食または他の化学的攻撃

2.7. Wear 摩耗

2.8. Assemblies 組立

2.9. Provisions for filling and discharge 充填及び排出のための規定

2.10. Protection against exceeding the allowable limits

of pressure equipment 圧力装置の許容限度を超える保護

2.11. Safety accessories 安全装置

3 MANUFACTURING 製造

3.1. Manufacturing procedures 製造手順(溶接の形状、方法、非破壊検査、

熱処理、トレーサビリティ等の規定あり)

3.2. Final assessment 最終評価

3.3. Marking and labelling マーキングとラベリング

3.4. Operating instructions 取扱説明書

4 MATERIALS マテリアル

4.1. Materials for pressurised parts shall: 加圧部品の材料への要求

4.2. The pressure equipment manufacturer shall: 圧力機器の製造業者への要求

4.3.

The equipment manufacturer shall take appro

priate measures to ensure that the material

used conforms with the required specification

製造者は、使用する材料が要求仕様に適合す

るように適切な措置を講じなければならな

5

FIRED OR OTHERWISE HEATED PRESSU

RE EQUIPMENT WITH A RISK OF OVER

HEATING AS REFERRED TO IN ARTICLE

4(1)

第 4 条(1)で言及された過熱の危険を伴う、

加熱された、またはその他の加熱された圧力

容器(※1)に対する要求事項

6 PIPING AS REFERRED TO IN ARTICLE

4(1)(c)

第 4 条(1)(c)に参照される配管(※2)に

対する要求事項

7 SPECIFIC QUANTITATIVE REQUIRMENTS

FOR CERTAIN PRESSURE EQUIPMENT 特定の圧力容器の特定の定量要件

7.1. Allowable stresses 許容応力

7.2. Joint coefficients 継手係数

7.3. Pressure limiting devices, particularly for

pressure vessels 圧力制限装置、特に圧力容器用

7.4. Hydrostatic test pressure 静水圧試験圧力

7.5. Material characteristics 材料特性

※1:流体の種類、容量及び圧力により決定する条件

※2:流体の種類、配管口径及び圧力により決定する条件

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・圧力容器に含まれる流体がガス、液化ガスや圧力がかかった溶存ガス又は最高使用温度

において 0.5bar(0.05MPa)を超える飽和蒸気圧を有する液体及びその蒸気である場合

の分類(縦軸が圧力(bar)、横軸が容器の体積(L))を以下の①及び②に示す。

①含まれる流体が Group1(危険流体)の場

②含まれる流体が Group2(その他の流体)

の場合

・過熱(オーバーヒート)により蒸気や 110℃以上の過熱水を生じるリスクのある容器又は

全ての圧力調理器具に関する分類(縦軸が圧力(bar)、横軸が容器の体積(L))を下図

に示す。

図 4.10 PED 附属書Ⅱにおける適合性カテゴリー分類の例

各図とも左側に「Article4 paragraph3(第 4 条 3 項)」と記載があるが、これは、この範

囲(以下、「SEP5」という。)の機器については、メーカーの製品保証により流通が可能な

設備であり、この評価プログラムの対象外の設備である。また、この領域の設備について

は、製造者が品質を担保することを証明する CE マークを貼付することができない。

5 the sound engineering practice の略であり、「健全なエンジニアリング」を示す。

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

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(d) 評価手順

PED の附属書Ⅲでは、附属書Ⅱに示したカテゴリー分類に応じて、A~H 並びに A2、

D1、E1 及び H1 の 13 種類の評価モジュールが規定されている。附属書Ⅲでは、製造者及

び認証機関の役割が詳細に規定されており、原則として設計段階のモジュールと製造段階

のモジュールに分けられている。

表 4.9 に適合性評価モジュールを示す。

(e) CE マーキングと適合宣言

製造者は、全てのカテゴリーでも、製造した圧力機器がPEDに適合したと判断した場合、

CE マーキングを自ら全ての圧力機器に貼付しなければならない。その上で、製造者は、製

品が PED に適合した旨の宣言を書面で行わなければならない。また公認検査機関が検査に

関与する場合、公認検査機関が固有の番号を貼付するか製造者に CE マーキングを貼付させ

なければいけない。

表 4.9 PED の適合性評価モジュール

主な特徴

A 製造業者自身の責任の下に製造される。

A2 製造業者自身の責任であるが、最終評価は公認検査機関によって監視さ

れる。

B(製品タイプ) 製造業者は、公認検査機関による EC 型式検査証明書を作成する。

B(設計タイプ) 製造業者は、公認検査機関による EC 設計検査証明書を作成する。

C2 公認検査機関によって監視される製造について EC 型式検査証明書に適

合するためになされる。

D 製造業者は、承認された品質システムを使用し、かつ、EC 設計検査証明

書又は EC 型式検査証明書のいずれかに従う。

E 製造業者は、承認された品質システムを使用し、かつ、EC 型式検査証明

書に従う。

F 公認検査機関によって調査される各々の圧力機器に関する EC 型式検査

証明書又は EC 設計検査証明書のいずれかに従う。

G 製造業者が公認検査機関を選ぶ。公認検査機関は、各圧力機器について

検査を実施する。

H 製造業者は、各圧力機器について承認された品質システムを使用する。

H1 製造業者は、承認された品質システムを使用する。公認検査機関は、EC

設計検査証明書を発行し、かつ、圧力機器の最終評価に参加する。

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表 4.10 PED1997 年版に対応した適合性評価モジュール表

出典:平成 27 年度未利用エネルギー等活用調査(発電用火力設備に関する保安技術等動向調査)報告書(平成 28 年 3 月,みずほ情報総研株式会

社)

I

A A1 (1) D1 E1H

(型式)H (3)(製品)

G H1(2)

A A1 D1 E1 B1 D B1 F B E B C1 H H B D B F G H1材料 材料の認証 M M M M NB NB NB NB NB NB NB NB NB NB

設計品質保証システム検査 I I I製造品質保証システム検査 I I I I I I最終検査と検査品質保証システム検査

I I I I I I I I

EC設計試験 M M M M I I I I M M I I I IEC型式試験 M M M I I I IEC設計試験認証証明書 I I IEC型式試験認証証明書 I I M M I I溶接士の認証 M TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP溶接及び非破壊試験手法の認証

M TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP

非破壊試験士の認証 M M M M TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TPM M M M M M M M M M M M M M

最終検査及び最終文書検査M M/I M/I M/I M/I I M/I M/I M/I M/I M/I I I M/I圧力試験 M M/I M/I M/I M/I I M/I M/I M/I I M/I I I M/I安全装置設置検査 M M/I M/I M/I M/I I M/I M/I M/I M/I M/I I I M/I適合宣言書 M M M M M M M M M M M M M M適合証明書 I I I

製造とテスト

最終検査

CEマーキング/適合証明書

II

B1+D

カテゴリー

適合性評価モジュールの組み合わせ

モジュール

品質保証システム

設計・型式試験

継手

B+C1 B+D

III

B+F

IV

B1+F B+E

NB:公認検査機関が実施(1)最終検査には監査を伴う(2)設計試験及び最終検査の特別監督を伴う(3)一度限りの容器と機器の製造に対しては、  公認検査機関が各容器及び機器に対し最終検査を実施

I:検査に割り当てられた公認検査機関が実施

M:製造者が実施

TP:第三者検査機関もしくは公認検査機関が実施

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4.2.3 EN 規格の調査

(1) 法令レベルの欧州指令及び国内省令の相違点

表 4.11 に火技省令の要求規定に対する PED の規定の有無、表 4.12 に PED の要求規定

に対する火技省令の規定の有無を示す。

表 4.11 に示すように、火技省令で求めている要求事項は、すべて PED においても規定

されており、法令にて要求している事項については、同等な保安水準にあると考えられる。

一方で、PED は、市場に流通する製品の安全性の担保が目的であることから、溶接継手、

非破壊検査、熱処理等も含む製造面に関する規定を設けているが、日本の電気事業法では

火技省令ではなく火技解釈に規定している。また、欧州では、流体の種類、圧力容器の容

量・配管口径及び圧力に応じるが、公認検査機関の認証が必要となることから、公認検査

機関に関する要求が規定されている。

以上より、欧州においては、安全性の担保として、火技省令で求めている要求事項に加

え、製造面、ユーザビリティ面、さらに公認検査機関等の第三者による検査を加えて、製

品の設計・製造の安全性を担保している。

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表 4.11 火技省令の要求事項に対する PED での規定

火技省令 PED 2014/68/EC

(ボイラー等の材料)

第五条 ボイラー(火気、燃焼ガスその他の高温ガ

ス若しくは電気によって水等の熱媒体を加熱す

るものであって、当該加熱により当該蒸気を発生

させこれを他の設備に供給するもの又は当該加

熱(相変化を伴うものを除く。)により当該水等

の熱媒体を大気圧力における飽和温度以上とし、

これを蒸気タービン若しくはガスタービンに供

給するもののうち、ガス化炉設備(石炭、石油そ

の他の燃料を加熱し、酸素と化学反応させること

によりガス化させ、発生したガスをガスタービン

に供給する容器(以下「ガス化炉」という。)、そ

のガスを通ずることによって熱交換等を行う容

器及びこれらに附属する設備のうち、液化ガス設

備(液化ガスの貯蔵、輸送、気化等を行う設備及

びこれに附属する設備をいう。以下同じ。)を除

く。以下同じ。)を除く。以下同じ。)、独立過熱

器(火気、燃焼ガスその他の高温ガス又は電気に

よって蒸気を過熱するもの(ボイラー、ガスター

ビン、内燃機関又は燃料電池設備に属するものを

除く。)をいう。以下同じ。)又は蒸気貯蔵器(以

下「ボイラー等」という。)及びその附属設備(ポ

ンプ、圧縮機及び液化ガス設備を除く。)に属す

る容器及び管の耐圧部分に使用する材料は、最高

使用温度において材料に及ぼす化学的影響及び

物理的影響に対し、安全な化学的成分及び機械的

強度を有するものでなければならない。

ESR 第 4 条に材料について規定されている。具体

的には、EN 規格等の整合規格において規定された

材料、「European Approval of Materials」に規定さ

れている材料又は公認検査機関によって PED 相当

の要求を満たすと認定されている材料等。また、

ESR 第 2 条において、腐食、摩耗といった化学的な

条件についても要求している。

(ボイラー等の構造)

第六条 ボイラー等及びその附属設備(液化ガス設

備を除く。以下この章において同じ。)の耐圧部

分の構造は、最高使用圧力又は最高使用温度にお

いて発生する最大の応力に対し安全なものでな

ければならない。この場合において、耐圧部分に

生ずる応力は当該部分に使用する材料の許容応

力を超えてはならない。

ESR 第 7 条に、材料に応じて、許容応力の考え方

が規定されている。

A.フェライト鋼:

min (σu/20

2.4;σy/t

1.5)

B.オーステナイト鋼:

1.破断伸び率 30%超の場合 σy/t

1.5

2.破断伸び率 35%超の場合min (σu/t

3;

σy/t

1.2)

※その他、非合金、低合金及びアルミ等について別

途規定あり

(安全弁)

第七条 ボイラー等及びその附属設備であって過圧

が生ずるおそれのあるものにあっては、その圧力

を逃がすために適当な安全弁を設けなければな

らない。この場合において、当該安全弁は、その

作動時にボイラー等及びその附属設備に過熱が

生じないように施設しなければならない。

ESR 第 2 条第 3 項、第 10 項及び第 11 項に過圧防

止装置等、安全装置全体に関する規定されている。

また、2 章定義において、安全装置に関する定義が

行われており、安全弁、圧力逃がし装置、流量制御、

インターロック等が定義されており、これらを活用

した幅広い過圧防止対策が規定されている。

(給水装置)

第八条 ボイラーには、その最大連続蒸発時におい

て、熱的損傷が生ずることのないよう水を供給で

きる給水装置を設けなければならない。

2 設備の異常等により、循環ボイラーの水位又は

貫流ボイラーの給水流量が著しく低下した際に、急

ESR 第 5 条に、蒸気、温水ボイラー、過熱器、再

加熱器、廃熱ボイラー及び廃棄物焼却ボイラー等の

加熱された圧力機器に対して、給水装置を設けるこ

とが規定されている。

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火技省令 PED 2014/68/EC

速に燃料の送入を遮断してもなおボイラーに損傷

を与えるような熱が残存する場合にあっては、当該

ボイラーには、当該損傷が生ずることのないよう予

備の給水装置を設けなければならない。

(蒸気及び給水の遮断)

第九条 ボイラーの蒸気出口(安全弁からの蒸気出

口及び再熱器からの蒸気出口を除く。)は、蒸気

の流出を遮断できる構造でなければならない。た

だし、他のボイラーと結合されたボイラー以外の

ボイラーから発生する蒸気が供給される設備の

入口で蒸気の流路を遮断することができる場合

における当該ボイラーの蒸気出口又は二個以上

のボイラーが一体となって蒸気を発生しこれを

他に供給する場合における当該ボイラー間の蒸

気出口にあってはこの限りでない。

2 ボイラーの給水の入口は、給水の流路を速やか

に自動で、かつ、確実に遮断できる構造でなけれ

ばならない。ただし、ボイラーごとに給水装置を

設ける場合において、ボイラーに最も近い給水加

熱器の出口又は給水装置の出口が、給水の流路を

速やかに自動で、かつ、確実に遮断できる構造で

ある場合における当該ボイラーの給水の入口又

は二個以上のボイラーが一体となって蒸気を発

生しこれを他に供給する場合における当該ボイ

ラー間の給水の入口にあってはこの限りでない。

ESR 第 5 条に、蒸気、温水ボイラー、過熱器、再

加熱器、廃熱ボイラー及び廃棄物焼却ボイラー等の

加熱された圧力機器に対して、入熱、熱のテイクオ

フについて、保護装置を設けることに対する規定が

ある。

(ボイラーの水抜き装置)

第十条 循環ボイラーには、ボイラー水の濃縮を防

止し、及び水位を調整するために、ボイラー水を

抜くことができる装置を設けなければならない。

ESR 第 2 条第 5 項に、圧力容器における水抜き、

ベント機能について規定あり。ただし、循環ボイラ

ーに関する規定ではない。

(計測装置)

第十一条 ボイラー等には、設備の損傷を防止する

ため運転状態を計測する装置を設けなければな

らない。

ESR 第 2 条第 11 項に、温度、圧力の計測について

規定あり。

(溶接部の形状等)

第七十四条 電気事業法施行規則第七十九条第一

号 及び第二号 に掲げる機械又は器具であって、

同規則第八十条に定める圧力以上の圧力を加え

られる部分について溶接をするものの溶接部(溶

接金属部及び熱影響部をいう。以下「溶接部」と

いう。)は、次によること。

一 不連続で特異な形状でないものであること。

二 溶接による割れが生ずるおそれがなく、か

つ、健全な溶接部の確保に有害な溶込み不良

その他の欠陥がないことを非破壊試験によ

り確認したものであること。

三 適切な強度を有するものであること。

四 機械試験等により適切な溶接施工法等であ

ることをあらかじめ確認したものにより溶

接したものであること。

ESR 第 3 条第 1 項に、溶接部の形状について規定

あり。また形状以外には、非破壊検査、熱処理、ト

レーサビリティに関する規定あり。

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表 4.12 PED の要求事項に対する火技省令での規定の有無

章 PED の要求規定 火技省令での規定の有無

1 一般 ―

2 設計 ―

2.1. 一般 ―

2.2. 適切な強度の設計 ○:第六条(構造)

2.3. 安全な取り扱いと操作を確保するための規定 ○:第七条(安全弁)

2.4. 検査方法(必要なすべての検査ができる設計となっ

ていることに対する規定) 規定なし

2.5. 排水と換気の方法 ○:第九条(ボイラーの水抜き装置)

2.6. 腐食または他の化学的攻撃 ○:第五条(材料)

2.7. 摩耗 ○:第五条(材料)

2.8. 組立 規定なし

2.9. 充填及び排出のための規定 規定なし

2.10. 圧力装置の許容限度を超える保護 ○:第七条(安全弁)

2.11. 安全装置 ○:第七条(安全弁)

3 製造 ―

3.1. 製造手順(溶接の形状、方法、非破壊検査、熱処理、

トレーサビリティ等の規定あり)

○:第七十四条(溶接部の形状等)

※溶接の形状のみ規定あり

3.2. 最終評価 規定なし

3.3. マーキングとラベリング 規定なし

3.4. 取扱説明書 規定なし

4 マテリアル ―

4.1. 加圧部品の材料への要求 ○:第五条(材料)

4.2. 圧力機器の製造業者への要求 ○:第五条(材料)

4.3. 機器メーカは、使用する材料が要求仕様に適合する

ように適切な措置を講じなければならない ○:第五条(材料)

5

第 4 条(1)で言及された過熱の危険を伴う、加熱

された、またはその他の加熱された圧力容器(※1)

に対する要求事項

○:第八条(給水装置)

○:第九条(蒸気及び給水の遮断)

6 第 4 条(1)(c)に参照される配管(※2)に対する

要求事項 規定なし

7 特定の圧力容器の特定の定量要件 ―

7.1. 許容応力 ○:第六条(構造)

7.2. 継手係数 規定なし

7.3. 圧力制限装置、特に圧力容器用 ○:第七条(安全弁)

7.4. 静水圧試験圧力 規定なし

7.5. 材料特性 ○:第五条(材料)

※1:流体の種類、容量及び圧力により決定する条件

※2:流体の種類、配管口径及び圧力により決定する条件

※:黄色の網掛けは、火技省令及び火技解釈に存在しない規定項目

※:青の網掛けは、火技省令には存在しないが、火技解釈で規定されている項目

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(2) PED における圧力・容量の関係と労働安全衛生法に対応したボイラーの圧力・伝熱面

積の対比

PED においては、容量及び圧力に応じて評価手順(認証機関、検査システム等)が異な

る点については、日本における労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)に対応したボイ

ラー(以下、「労安ボイラー」という。)と考え方が近いことから、ここでは、PED 及び労

安ボイラーとの区分について比較を行った。

図 4.11 に PED における圧力・容量の関係と労安ボイラーの圧力・伝熱面積の対比を示

す。

労安ボイラーについては、圧力 0.1MPa、伝熱面積 0.5m2、1.0m2、3.0m2 という一定の

閾値があり、この条件に応じて簡易ボイラー、小型ボイラー、ボイラー(小規模ボイラー

を含む)と区分される。小型ボイラーは、図 4.11 の緑の網掛けに示す箇所に該当し、PED

におけるカテゴリはⅠ又は SEP(製造者の責任で流通させることができ、製造者が品質を

担保することを証明する CE マークは貼付しない)に該当する。カテゴリⅠの場合の認証条

件については、製造業者自らの責任の下で製造されることになり、製造者が品質を担保す

ることを証明するために CE マークを貼付する。

また、図 4.11 の黄色の網掛けの部分である容量約 19L 以下は、労働安全衛生法(昭和

47 年法律第 57 号)における小規模ボイラーに該当し、技術基準はボイラーと同様であるが、

管理者の資格としては、ボイラー取扱技能講習を修了した者が取り扱うことができる範囲

である。

※φ25mm のチューブの伝熱面積を 1m2と仮定した場合は容量が約 6.4L、3m2と仮定し

た場合は容量が約 6.4L となる。

※PED における容量とは、熱を受けるチューブ側の容量を示す。

図 4.11 PED における圧力・容量の関係と労安ボイラーの圧力・伝熱面積の対比6

6 PED 及び「ボイラー及び圧力容器安全規則の解説(平成 27 年改訂版)」(一般社団法人日

本ボイラ協会)を参考にみずほ情報総研株式会社が作成

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(3) EN 規格と国内規格の主な設計規定内容の相違点

(a) 検討対象とした EN 規格

本検討において参照した EN12952(水管ボイラー)及び EN12953(シェルボイラー)

を表 4.13 及び表 4.14 に示す。

EN 規格においては、章別で発行年が異なる。そのため、他の EN 規格を参照する場合、

本来は新しい規格が存在している可能性があるが、ここではこれらの規格に記載している

参照元を原文の状態で分析、記載している点に留意する必要がある。

表 4.13 本検討で参照した EN12952(水管ボイラー)

章 発行年 項目

1 2015 General(一般条項)

2 2011 Materials for pressure parts of boilers and accessories(ボイラーと付

属設備の耐圧部の材料)

3 2011 Design and calculation for pressure parts of the boiler(ボイラー耐圧

部のための構造設計)

4 2011 EN12952-4:In-service boiler life expectancy calculations(供用中の

ボイラーの耐用年数計算)

5 2011 Workmanship and construction of pressure parts of the boiler(ボイラ

ー耐圧部の製造と製作)

6 2011

Inspection during construction; documentation and marking of

pressure parts of the boiler(製作時の検査、ボイラー耐圧部のドキュ

メンテーションとマーキング)

7 2012 Requirements for equipment for the boiler(ボイラー設備への要求事

項)

10 2002 Requirements for safeguards against excessive pressure (過圧防護へ

の要求事項)

11 2007 Requirements for limiting devices of the boiler and accessories(ボイ

ラーと付属設備のリミッターへの要求事項)

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-44-

表 4.14 本検討で参照した EN12952(シェルボイラー)

章 発行年 項目

1 2012 General(一般条項)

2 2012 Materials for pressure parts of boilers and accessories(ボイラーと付

属設備の耐圧部材)

3 2002 Design and calculation for pressure parts(耐圧部のための構造設計)

4 2002 Workmanship and construction of pressure parts of the boiler(ボイラ

ー耐圧部の製造と製作)

5 2002

Inspection during construction, documentation and marking of

pressure parts of the boiler(製作時の検査、ボイラー耐圧部のドキュ

メンテーションとマーキング)

6 2011 Requirements for equipment for the boiler(ボイラー設備への要求事

項)

8 2001 Requirements for safeguards against excessive pressure(過圧防止対

策への要求事項)

9 2007 Requirements for limiting devices of the boiler and accessories (ボイ

ラー及び附属装置の制御装置への要求事項)

12 2003 Requirements for grate firing systems for solid fuels for the boiler(ボ

イラー用固形燃料装置への要求事項)

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-45-

(b) EN 規格と国内規格の相違点の整理

表 4.15に国内規格である JSME規格基本規定及び火技解釈と、EN規格であるEN12952

及び EN12953 の規定内容の比較を示す。また、各技術的要求項目について、EN 規格と国

内規格の規定内容について、以下の①~⑭に示す。

以下の①~⑭に示すように、EN 規格と国内規格においては、各項目について技術基準を

設けなければいけないという点については、その考え方は一致しているものの、各項目の

詳細については、異なっていることが分かる。

① 耐圧設計の対象圧力

· 火技解釈及び JSME 規格基本規定は、0MPa を超える圧力を受ける部分を耐圧設計

の対象としている。

· EN 規格では 0.05MPa を超える圧力を適用範囲としている。

② 材料の種類

· 火技解釈及び JSME 規格は、JIS 規格材料、火技解釈材料及び ASME 材料を規定し

ている。

· PED では、EN 規格等の整合規格において規定された材料、「European Approval of

Materials」に規定されている材料又は公認検査機関によって PED 相当の要求を満

たすと認定されている材料等を活用することができる。JIS 規格に相当する EN 規格

材料については、「金属材料データブック JIS と主要海外規格対照」(一般社団法人

日本規格協会)に示されている。しかし、EN 規格材料は、材料の化学的成分や求め

ている降伏応力が JIS 規格材料と異なっている。

· ボイラー等の発電設備の容量及び体積の規模によっては、使用する材料についても

個別で公認検査機関の認証が必要である。

· 以上より、材料を認証する公認検査機関が存在し、厳格に管理されている点や選定

された材料を用いる点については、日本の電気事業法とは異なる。

③ 許容応力

· 火技解釈及び JSME 規格においては、許容応力として実質的に引張強さの 1/3.5 の

値が用いられている。

· EN 規格では、許容応力として一般的に引張強さの 1/2.4 の値は小さいため、実質的

には降伏応力の 1/1.5 の値が用いられている。オーステナイトステンレス鋼において

は、許容応力は同等程度となる可能性があるが、フェライト鋼では、EN 規格での許

容応力の値が大きくなる傾向である。

· また、(2)に許容応力の試算結果を示すが、温度が 300℃以上の領域においては、火

技解釈と EN 規格との許容応力の値の差は最大で 15%程度であり、場合によっては

火技解釈の方が許容応力の値が大きい場合もあり、一概に日本の電気事業法の技術

基準の方が、許容応力が小さい値ということではない。

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-46-

④ 衝撃試験

· 火技解釈のボイラーでは、衝撃試験は要求されていない。

· EN 規格のボイラーでは、衝撃試験が要求されている。

⑤ 部材厚さの規定

· 火技解釈及び JSME 規格基本規定並びに EN 規格はいずれも、設計内圧及び許容応

力を用いた簡易式による部材厚さの算定式による設計が規定されている。

⑥ 疲労解析

· 火技解釈及び JSME 規格基本規定においては、疲労解析の規定はないが、EN12952

では、疲労解析の実施が求められている。

· 具体的には、変動荷重の負荷が想定される箇所については、2,000 回の冷温起動を想

定した疲労評価を行い、設計寿命を評価する必要がある。ただし、その規定には除

外規定があり、温度や負荷荷重の設計荷重に対する比率及び負荷が発生する総数等

により除外される場合がある。

⑦ 耐圧試験圧力

· 火技解釈及び JSME 規格基本規定では、設計圧力の 1.3 倍の試験圧力である。

· EN 規格では、設計圧力の 1.43 倍と最大許容温度における圧力の 1.25 倍の大きい値

である。

⑧ 安全装置、給水装置及び計測装置

· 火技解釈及び JSME 規格並びに EN 規格はいずれも、安全弁、給水装置及び計測装

置について規定されている。

⑨ 溶接継手の効率

· 火技解釈では、溶接継手の種類、RT 試験の有無に応じて溶接継手の効率が決定する。

· JSME 規格基本規定及び EN 規格では、100%非破壊試験を実施した場合は、η=1

であるが、ランダムな場合についてはη=0.85、実施しない場合はη=0.7 となる。

· 火技解釈と JSME 規格基本規定及び EN 規格では条件等が異なるが、ηの値につい

て非破壊試験と関連し決定するという考え方については、同様である。

⑩ 溶接継手の機械試験

· 火技解釈では、溶接継手の機械試験について規定があり、溶接区分と実施すべき機

械試験について示されている。

· JSME 規格基本規定においては、衝撃試験の要否についてのみ規定されている。

· EN 規格では、EN ISO 15614-1 にて機械試験を規定しており、火技解釈より要求項

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-47-

目が多く、各種引張試験、曲げ試験、衝撃試験、マクロ試験及び硬度試験を要求し

ている。

⑪ 溶接後熱処理

· 火技解釈及び JSME 規格基本規定並びに EN 規格を比較すると、温度、保持時間等

も EN 規格の方が低い傾向にある。

⑫ 溶接施工法及び溶接士の資格

· 火技解釈及び JSME 規格基本規定並びに EN 規格はいずれも、溶接施工法について

詳細に規定されている。

· 特に、保安水準を維持する方法として、溶接施工法の規格化や溶接士の資格認定が

行われており、両者の溶接部に対する基本的な保安水準は同等であるものと考えら

れる。

⑬ 非破壊試験検査員

· 火技解釈及び JSME 規格基本規定並びに EN 規格では非破壊検査員の資格は異なる

ものの、それぞれの国において、資格が必要であることは、明記されている。

· 溶接士と同様に、非破壊試験の保安水準を維持する方法として、非破壊試験の資格

認定が行われており、両者の非破壊試験に対する基本的な安全構想は同等である。

⑭ 技術基準適合性の確認方法

· 日本では、技術基準適合性の確認方法については、設置者が技術基準適合性を確認

し、工事計画の届出及び法定事業者検査を行う仕組みである。

· 欧州では、PED に基づく評価モジュールが存在し、容量及び圧力が小さいレベルで

は製造者自身が確認を行い、容量及び圧力が高いレベルになるに従い、第三者機関

である公認検査機関が認証を項目が増える。この技術基準への適合を満たした発電

設備には、製造者が品質を担保することを証明する CE マークを貼付し、欧州各国へ

流通することが可能となる。

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-48-

表 4.15 国内規格及び EN 規格の主な設計規定

国内規格 EN 規格 参考:PED 2014/68/EC

JSME2012 火技解釈 EN12952

(水管ボイラー)

EN12953

(シェルボイラー)

圧力範囲

0MPa を超える圧力 0MPa を超える圧力 0.05MPa を超える範囲、

上限についての制限はな

(加えて容量 2L 以上、

110℃以上の最大設計温

度)

0.05MPa を超える範囲、

上限についての制限はな

(加えて容量 2L 以上、

110℃以上の最大設計温

度)

0.05MPa を超える圧力、

上限についての制限はな

温度範囲 クリープ温度域を含む クリープ温度域を含む クリープ温度域を含む クリープ温度域を含む 温度領域における適用外

範囲はない

定量的な制限については

クリープ温度未満で与え

られ、クリープ温度域につ

いて定量的制限はない

材料の種類 鉄鋼材料及び非鉄金属材

料で、具体的には、JIS 規

格材料(鉄鋼材、非鉄鋼

材)、火技解釈材料及び

ASME 規格材料(鉄鋼材、

非鉄材)等

鉄鋼材料及び非鉄金属材

料で、具体的には、JIS 規

格材料(鉄鋼材、非鉄鋼

材)、火技解釈材料及び

ASME 規格材料(鉄鋼材、

非鉄材)等

EN10028 、 EN10216 、

EN102

17、EN10222 等に規定さ

れている材料である、

P235GH、P235 TR1 等の

適用を推奨

欧州で規定されていない

材料の場合は、欧州材料デ

ータシート(EMDS)が必

EN10028 、 EN10216 、

EN102

17、EN10222 等に規定さ

れている材料である、

P235GH、P235 TR1 等の

適用を推奨

欧州で規定されていない

材料の場合は、欧州材料デ

ータシート(EMDS)が必

EN規格等の整合規格にお

いて規定された材料、

「European Approval of

Materials」に規定されて

いる材料または公認検査

機関によって PED 相当の

要求を満たすと認定され

ている材料等

衝撃試験 衝撃試験は強制要求であ

るが、材料の種類、温度に

応じ、免除規定がある

液化ガス設備においては

衝撃試験が要求されてい

るが、ボイラーでは要求さ

れていない

衝撃試験は強制要求であ

り、評価基準は以下の通り

である

横方向試験:≧27J

縦方向試験:≧35J

衝撃試験は強制要求であ

規定なし

許容引張応力

(鉄鋼材料でクリープ未満

の場合)

min (σu/t

3.5;σy/t

1.5)

以下の許容引張応力のう

ち最小のものを用いる

・室温における規定最小引

・圧延、鍛鋼 min (

σu/20

2.4;σy/t

1.5)

A.フェライト鋼:

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-49-

国内規格 EN 規格 参考:PED 2014/68/EC

JSME2012 火技解釈 EN12952

(水管ボイラー)

EN12953

(シェルボイラー)

σu/20: 材料の室温での引

張強さ

σu/t :材料の設計温度での

引張強さ

σy/t :材料の設計温度での

降伏応力

σyH/t :材料の設計温度で

の降伏応力の上限

σcr/t :材料の設計温度、ラ

イフタイムでのクリープ

破断強度

張強さの 1/3.5

・当該温度における引張強

さの 1/3.5

・室温における規定最小降

伏点の 2/3 又は耐力の 2/3

・当該温度における降伏点

又は耐力の 2/3

min (σu/20

2.4;σyH/t

1.5 𝑎𝑛𝑑

/𝑜𝑟σy/t

1.5;σcr/t

1.25)

・オーステナイト鋼:

1.破断伸び率30%超の場

合 σy/t

1.5

2.破断伸び率35%超の場

合min (σu/t

3;

σy/t

1.2)

.非合金、低合金及びアル

ミ等について別途規定あ

※詳細な設計ルールに基

づく場合との注意書きあ

min (σu/20

2.4;σy/t

1.5)

B.オーステナイト鋼:

1.破断伸び率30%超の場

合 σy/t

1.5

2.破断伸び率35%超の場

合min (σu/t

3;

σy/t

1.2)

.非合金、低合金及びアル

ミ等について別途規定あ

円筒胴の必要厚さ t

P:設計圧力

Di:内径

Do:外径

η:継手効率

σa:許容応力

y:温度係数

C:最小付加厚さ

<ボイラー>

𝑡 =

PDi

2σaη − 2P(1 − y)+ 𝐶

<圧力容器>

t =PDi

2σaη − 1.2P

<ボイラー>

𝑡 =

PDi

2σaη − 2P(1 − y)+ 𝐶

<ボイラー>

t =PDi

(2σa − P)η

<ボイラー>

t =PDi

(2σa − P)η

規定なし

最小部材厚さ 6.35mm 内径 900mm 以下のもの

は 6mm。

内 径 900mm を 超 え

1350mm 以下のものは

8mm。

外径が 900mm 以上は

9.5mm、外径が 300mm 以

下では、最低 6mm

径が 1000mm 以上の場合

(低圧ボイラーを除く):

6mm

径が 1000nn 未満の場合

及び低圧ボイラー:4mm

規定なし

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-50-

国内規格 EN 規格 参考:PED 2014/68/EC

JSME2012 火技解釈 EN12952

(水管ボイラー)

EN12953

(シェルボイラー)

内 径 1350mm を 超 え

1850mm 以下のものは

10mm。

内径 1850mm を超えるも

のは 12mm。

応力解析 規定なし 規定なし 強制要求ではない 強制要求ではない 強制要求ではない

疲労解析 規定なし 規定なし 2,000回の冷温起動を想定

した疲労解析が要求され

ている

EN12953 では疲労解析の

記載はないが、追加的に

EN12952 を準用すること

が規定されている

強制要求ではない

耐圧試験圧力

P:設計圧力

t:板厚

c:腐れしろ

σt σd⁄ :許容応力の温度補

1.5Pσt

σd 1.3P max (1.43P; 1.25P

σt

σd) max (1.43P; 1.25P

σt

σd) max (1.43P; 1.25P

σt

σd)

耐圧試験時の制限

Pm:一次一般膜応力

Pb:一次一般曲げ応力

σy:材料の降伏点

規定なし 規定なし 規定なし 規定なし 規定なし

気圧試験圧力

(記号の説明は”耐圧試験

圧力”の項に同じ)

耐圧試験が実際的でない

場合に適用

1.25Pσt

σd

耐圧試験が実際的でない

場合に適用

1.1P

規定なし 規定なし 規定なし

安全装置 第Ⅲ章ボイラ PG-67~73

において、安全弁に関する

要求事項の規定あり

また、第Ⅴ章配管にボイラ

外部の配管の安全弁につ

いて規定あり

第 15 条に規定あり EN12952-10 に安全弁に

関する規定あり。安全弁の

詳細な仕様は他の規格

(prEN1628-1 等)を参照し

て規定している。

EN12953-6 に安全弁に関

する規定あり

また、EN12953-8 の 4 章

に EN ISO 4126-1 に準拠

した加圧防止のための安

全装置について規定あり

過圧防止装置、温度モニタ

ーに関する条項、安全装置

全体に関する規定あり

サージ圧は最大許容圧力

の 10%超まで

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-51-

国内規格 EN 規格 参考:PED 2014/68/EC

JSME2012 火技解釈 EN12952

(水管ボイラー)

EN12953

(シェルボイラー)

給水装置 第Ⅲ章ボイラ PG-61 にお

いて、給水装置に関する規

定あり

第 16 条に規定あり EN12952-7 にボイラーへ

の給水装置設置について

規定されている。また予備

の給水装置の設置につい

ても規定されている。

EN12953-6 に給水装置に

関する規定あり

また、給水タンクのレベル

が閾値を下回った場合は、

熱供給を停止する規定あ

規定なし

計測装置 第Ⅲ章ボイラ PG-60.1 に

水位計、PG-60.6 に圧力系

について規定

第 17 条に規定あり EN12952-7 にリミッター

と保護システムへの要求

事項を規定している。蒸気

ボイラーに関する要件と

して、水位計や圧力計、温

度計の設置を規定

EN12953-5 に、給水タン

クレベル、圧力、温度につ

いて規定

温度、圧力の計測について

規定あり

溶接継手の効率η

RT:放射線透過試験

UT:超音波深傷試験

RT 試験の割合に応じ、

100%RT:η = 1.0

SpotRT: η = 0.85

行わない:η = 0.7

日本工業規格 JIS B 8201

(2005)「陸用鋼製ボイラ

-構造」の「8.2.3 溶接継

手の効率」に規定されてい

る値

具体的には、継手の種類、

RT 試験の有無により異な

η = 1.0(NDE:100%)

η = 0.85(NDE:10%)

η = 1.0及び

η = 0.85

各溶接継手効率に対し、部

品、継手の形式と溶接場所

に応じて非破壊検査を受

ける溶接長さ割合が、規定

されている

以下の値を超えてはいけ

ない:

機器が非破壊及び破壊検

査の対象となる場合:

η = 1.0

ランダムに非破壊検査の

対象となる場合:

η = 0.85

目視検査のみで非破壊検

査実施しない場合:

η = 0.7

突合せ溶接継手の非破壊

試験

RT:放射線透過試験

UT:超音波探傷試験

MT:磁粉探傷試験

PT:浸透探傷試験

1) 容器の用途、継手の形

式と材料の種類と板厚に

応じて RT、UT、MT 又は

PT が必要な継手を規定

100%RT の例:

・毒性物質を含む場合

・炭素鋼でt>32mm 等

機器に応じて RT 又は MT

が規定されている。また一

部代替試験として UT が

規定されている。

EN 10253-2:2007 を参照

して突合せ溶接継ぎ手の

非破壊試験を規定。

部品、継手の形式と溶接場

所に応じて RT、UT、MT

又はPTの試験割合を規定

非破壊検査について規定

あり

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-52-

国内規格 EN 規格 参考:PED 2014/68/EC

JSME2012 火技解釈 EN12952

(水管ボイラー)

EN12953

(シェルボイラー)

2) RT の代替としての UT

を規定

溶接継手の種類

(長手継手及び周継手)

完全溶込み突合せ両側溶

接、突合せ片側溶接、せぎ

り溶接、両側隅肉重ね溶接

等の継手形状に応じて制

限を規定

一部を除き、突合せ両側溶

接、裏宛て金を使用する突

合せ片側溶接又は初層イ

ナートガスアーク溶接

継手の位置に応じて適用

可能な継手形状、溶接方法

を規定

継手の位置に応じて適用

可能な継手形状、溶接方法

を規定

規定なし

突合せ溶接継手の機械試

衝撃試験の要否のみを規

規定あり。

ただし具体的な試験方法

の規定はない。

EN ISO 15614-1:2004.を

参照して機械試験を規定。

溶接手法の認証に、引張、

継手引張、曲げ、溶接金属

の衝撃試験を要求し、各試

験を EN288 等で規定

再試験の方法についても

規定あり

規定なし

溶接後熱処理温度及び時

間(炭素鋼の場合)

t:板厚

1) 板厚:32mm 超え

2) 温度:595℃以上

3) 時間(h)

t≦50mm:t/25,最小 30 分

50mm<t≦125mm

:2h+(t-50)/100

125<t:2h+(t-50)/100 以上

母材の種類、温度範囲、溶

接部の厚さに応じて保持

時間の規定あり。

1) 板厚:35mm 以上

2) 温度:550~600℃

3) 時間(分)

t≦90mm:1t 分

t>90:90+0.5*(1-t)分

1) 板 厚 :35mm 以 上

60mm 以下

2) 温度:550~600℃

3) 時間(分)

30 分下限、120 分上限で

2t 分

規定なし

溶接士の資格 JSME 規格第Ⅶ章に規定

された溶接士による

法規によって定められた

試験の規定がある。

EN287、EN1418 による

有資格者の従事

EN287、EN1418 による

有資格者の従事

圧力がかかる重大な部分

については、認定された溶

接士が適切な工法で施工

することを要求

危険性に応じた圧力機器

分類において、危険性のあ

る機器のカテゴリー II,

III, IV に分類された機器

については、第三者機関に

よる溶接士の認定とその

工法の認定が要求

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-53-

国内規格 EN 規格 参考:PED 2014/68/EC

JSME2012 火技解釈 EN12952

(水管ボイラー)

EN12953

(シェルボイラー)

非破壊試験検査員の資格 JSME規格第Ⅵ章T-120に

規定する者

JIS Z 2305 、 ISO

9712-2005 等の規格に基

づく資格者

EN473 による有資格者の

従事

EN473 による有資格者の

従事

高い危険性を有する機器

カテゴリーIII,IV に分類

された機器については、加

盟各国における第三者機

関で認定された者による

検査が必要

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-54-

(c) 材料の許容応力や安全率等の試計算と比較分析

ここでは、一般的な欧州の許容引張応力の考え方、圧力容器の肉厚の設計方法と火技解

釈における許容引張応力の考え方、圧力容器の肉厚の設計方法を用いて試計算を行うこと

により、許容応力及び計算板厚の観点で、EN 規格の基準で設計された設備が日本国内での

技術的要求項目を満たすかどうか評価・検討を行った。

(i) 許容引張応力及び計算板厚の算定方法

火技解釈及び EN 規格で用いられている許容引張応力の計算方法、容器の胴の計算板厚

式を表 4.16 及び表 4.17 に示す。

火技解釈では、許容引張応力は、引張強さの 1/3.5(安全率 3.5)と降伏応力の 1/1.5(安

全率 1.5)の値のうち最小のものが許容引張応力となる。この場合、許容引張応力は、引張

強さの 1/3.5(安全率 3.5)が最小となる場合が多い。一方で、EN 規格では、鋼種により異

なるが、バイオマスボイラーで用いられているフェライト鋼は、引張強さの 1/2.4(安全率

2.4)と降伏応力の 1/1.5(安全率 1.5)の値のうち、最小のものが許容応力となる。この場

合、許容応力は降伏応力の 1/1.5(安全率 1.5)が最小となる場合が多い。また、容器の胴

の計算板厚も、火技解釈と EN 規格では異なる計算式を用いている。

表 4.16 各規格における許容応力の計算方法

火技解釈:許容引張応力 EN12952:設計応力

(圧延又は鍛造したフェライト鋼)

・クリープ温度未満

min (σu/t

3.5;σy/t

1.5)

・クリープ温度領域

○当該温度において 1,000 時間に 0.01%

のクリープを生ずる応力の平均値

○当該温度において、100,000 時間にク

リープラプチャーを生ずる応力の最

小値の 0.8 倍

○当該温度において、100,000 時間でク

リープラプチャーを生ずる応力の平

均値

・クリープ温度未満

min (σu/20

2.4;σyH/t

1.5 )

・クリープ温度領域

min (σy/t

1.5;σcr/t

1.25)

ここで、σu/20:材料の室温(20℃)での引張強さ

σu/t :材料の設計温度(t℃)での引張強さ

引張応力、降伏応力

引張応力、降伏応力

降伏応力、クリープ破断応力

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-55-

σy/t :材料の設計温度(t℃)での降伏応力(0.2%耐力)

σyH/t :材料の設計温度(t℃)での上降伏強さ

σcr/t:材料の設計温度、ライフタイムでのクリープ破断強度

表 4.17 各規格における容器の胴の最小厚さの計算方法

火技解釈 EN12952

ボイラー t =PDi

2σaη − 2P(1 − k)+ 𝑎1 t =

PDi

(2σa − P)η+ 𝑐1 + 𝑎1

ここで、P:設計圧力

Di:内径

Do:外径

t:計算上必要となる厚さ

η:継手効率

σa::許容引張応力

k:使用温度に対する係数で、480℃未満の場合は、k=0.4

a1:付け代(火技解釈では 1mm 以上、EN12952 では板厚 30mm を超える場合

は 0mm、板厚 30mm 以下は 0.75mm 以上)

c1:寸法公差

(ii) 許容引張応力の試算

欧州で製造されたバイオマスボイラー等の発電設備に使用されているボイラー・圧力容

器用炭素鋼及びモリブデン鋼鋼板 SB410 及び高温用の低合金鋼である高温圧力容器用合金

鋼鍛造鋼品 SFVAF12 の降伏応力、引張強さ及び温度別の許容引張応力を表 4.18~表 4.21

に示す。

表 4.20 に示すように SB410 では、室温レベルでの許容応力は、火技解釈に比べて EN

規格では 1.5 倍程度大きくなるが、最高使用温度を 300℃程度とした場合は、ほぼ同等の許

容応力となることが分かった。また、400℃を超えるクリープ領域の許容応力については、

火技解釈の値に比べて、EN 規格の許容応力の方が小さい値になることが分かった。また、

低合金鋼である SFVAF12 では、室温レベルでの許容応力は、火技解釈に比べて EN 規格で

は 1.3 倍程度大きくなるが、400℃では逆転して EN 規格の許容応力が小さい値となった。

ただし、400℃以上のクリープ領域では、火技解釈の許容応力が小さい値となることが分か

った。

以上より、欧州で製造されたバイオマスボイラー等の発電設備に用いられている SB410

や高温用低合金鋼である SFVAF12 の許容応力は、室温条件下では、EN 規格における許容

引張応力の値が 1.3~1.5 倍程度高いが、300℃から 400 ℃の温度が高いレベルでの降伏応

力については、大きな差がない結果となった。また、クリープ領域の許容応力においても、

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-56-

EN 規格の許容応力の方が小さい場合もあり、材料により異なる傾向があるものと考えられ

る。

表 4.18 各規格の各温度における降伏応力・引張強さ及び許容応力の試算表

(SB410:ボイラー及び圧力容器用炭素鋼及びモリブデン鋼鋼板)

出典:JIS 材 SB410 の許容引張応力は、平成 28 年 12 月 26 日付けで改正した火技解釈

別表第 1(鉄鋼材料の各温度における許容引張応力)を引用。

:EN 材 の P265GH の降伏応力、引張強さ及び 100,000 時間及び 200,000 時間のク

リープ破断強度(平均値:ISO 6303 に従って算定された値)は EN 10028-2 より

引用。許容応力の値は EN12952 における圧延材の許容応力算定式を用いてみずほ

情報総研株式会社が試算。

規格 材料 温度 許容引張応力

℃ N/mm2

JIS G 3103 SB410 0 -250 118

火技解釈 300 114

350 108

400 90

450 62

500 32

538 17

規格 材料 温度 許容応力

℃ N/mm2

EN 10028-2 P265GH 室温 ≧ 265 410 - 530 171

50 ≧ 256 171

100 ≧ 241 161

150 ≧ 223 149

200 ≧ 205 137

250 ≧ 188 125

300 ≧ 173 115

350 ≧ 160 107

400 ≧ 150 100

<クリープ領域>

規格 材料 温度 許容応力

℃ N/mm2

EN 10028-2 P265GH 400 ≧ 150 132 100

450 69 55

480 42 34

規格 材料 温度 許容応力

℃ N/mm2

EN 10028-2 P265GH 400 ≧ 150 115 92

450 57 46

480 33 26

降伏応力 引張強さ

N/mm2

N/mm2

225 410

降伏応力 引張強さ

降伏応力

200,000時間

クリープ破断強度(平均値)

N/mm2

N/mm2

降伏応力

100,000時間

クリープ破断強度(平均値)

N/mm2

N/mm2

N/mm2

N/mm2

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表 4.19 各規格の各温度における降伏応力・引張強さ及び許容応力の試算表

(SFVAF12:高温圧力容器用合金鋼鍛造鋼品)

出典:JIS 材 SFVAF12 の許容引張応力は、平成 28 年 12 月 26 日付けで改正した火技解

釈別表第 1(鉄鋼材料の各温度における許容引張応力)を引用。

:EN 材 の 13CrMo4-5 の降伏応力、引張強さ及び 100,000 時間及び 200,000 時間

のクリープ破断強度(平均値:ISO 6303 に従って算定された値)は EN 10222-2

より引用(ただし、525℃におけるクリープ破断強度は、520℃の値及び 530℃の

値を平均した値である)。許容応力の値は EN12952 における圧延材の許容応力算

定式を用いてみずほ情報総研株式会社が試算。

規格 材料 温度 許容引張応力

℃ N/mm2

JIS G 3203 SFVAF12 0 -40 138

火技解釈 100 135

150-400 132

450 129

500 95

550 41

600 18

規格 材料 温度 許容応力

℃ N/mm2

EN 10222-2 13CrMo4-5 室温 ≧ 300 460 - 610 192

100 ≧ 282 188

150 ≧ 276 184

200 ≧ 267 178

250 ≧ 241 161

300 ≧ 225 150

350 ≧ 216 144

400 ≧ 209 139

450 ≧ 203 135

500 ≧ 200 133

550 ≧ 197 131

600 ≧ 164 109

<クリープ領域>

規格 材料 温度 許容応力

℃ N/mm2

EN 10222-2 13CrMo4-5 450 ≧ 203 321 135

500 ≧ 200 193 133

550 ≧ 197 99 79

規格 材料 温度 許容応力

℃ N/mm2

EN 10222-2 13CrMo4-5 450 ≧ 203 301 135

500 ≧ 200 172 138

550 ≧ 197 85 68

降伏応力 引張強さ

N/mm2

N/mm2

275 480

降伏応力 引張強さ

N/mm2

N/mm2

降伏応力

100,000時間

クリープ破断強度(平均値)

N/mm2

N/mm2

N/mm2

N/mm2

降伏応力

200,000時間

クリープ破断強度(平均値)

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-58-

表 4.20 火技解釈及び EN12952 における各許容応力値の比較

(SB410:ボイラー及び圧力容器用炭素鋼及びモリブデン鋼鋼板)

設計温度

[℃]

火技解釈の許容引張応力

[N/mm2]

EN 規格(注 1)の許容応力

[N/mm2]

20 118 171(1.45)

100 118 161(1.36)

200 118 137(1.16)

300 114 115(1.01)

400 90 100(1.11)

450 62 55(0.88)

480 44 34(0.77)

(注 1)材料は EN10028-2 規格、許容応力の算定方法は EN12952 を用いて試算。また許

容応力は t≦16mm の値を使用。クリープ領域については、450℃及び 480℃の値は、

100,000 時間を想定したクリープ破断応力より算定した値。( )内の値は、火技解釈の

値を 1.0 とした場合の EN 規格における比率を示す。

表 4.21 火技解釈及び EN12952 における各許容応力値の比較

(SFVAF12:高温圧力容器用合金鋼鍛造鋼品)

設計温度

[℃]

火技解釈の許容引張応力

[N/mm2]

EN 規格(注 2)の許容応力

[N/mm2]

20 138 183(1.33)

100 138 173(1.25)

200 138 160(1.16)

300 138 143(1.04)

400 134 127(0.92)

500 87 110(1.26)

525 51 69(1.35)

(注 2)材料は EN10222-2 規格、許容応力の算定方法は EN12952 を用いて試算。クリー

プ領域については、500℃及び 525℃の値は、100,000 時間を想定したクリープ破断応力

より算定した値。( )内の値は、火技解釈の値を 1.0 とした場合の EN 規格における比

率を示す。

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-59-

(iii) 構造板厚の試計算

表 4.22 に、外径 1.0m、最高使用温度 300℃及び 400℃、最高使用圧力 1MPa と仮定し

た場合の計算上必要となる厚さについて、火技解釈及び EN12952 による計算式を用い、試

算を行った。また、本試算は SB410 を対象に実施した。

本条件において、火技解釈と EN12952 では、計算上必要な厚さの計算式が異なるが、対

象条件の場合の計算上必要な厚さは、許容引張応力の逆数の比率で決定することになる。

そのため、火技解釈で必要となる部材厚さと EN 規格の部材厚さの比率は、許容応力の比

率で決定されることとなる。

表 4.22に示すように、最高使用温度300~400℃の範囲で計算板厚は5.0mm程度になり、

火技解釈の計算板厚の方が大きくなり、EN12952 の計算板厚は、最大で 15%程度厚くなる

ことが分かった。しかし、450℃の条件においては許容応力が逆転することから、EN 規格

の方が、計算板厚は 9mm となり、火技解釈に比べて 10%程度厚い結果となった。

以上より、温度条件により許容応力が異なる結果となり、計算板厚の差は、最大で 15%

程度であり、バイオマスボイラー等の温度が高い領域においては、大きな板厚の差はない

ものと推察される。

表 4.22 火技解釈と EN12952 の計算厚さの比較(SB410)

最高使用

温度

外径

Do

最高使用

圧力 P

溶接効率

η

許容応力

σa

計算厚さ

t

[℃] [mm] [MPa] [MPa] [mm]

300 火技解釈 1,000 1.0 1 114 4.41(1.00)

EN12952 1,000 1.0 1 115 4.33(0.98)

400 火技解釈 1,000 1.0 1 90 5.59(1.00)

EN12952 1,000 1.0 1 100 4.98(0.89)

450 火技解釈 1,000 1.0 1 62 8.14(1.00)

EN12952 1,000 1.0 1 55 9.01(1.10)

※( )内の値は、火技解釈の値を 1.0 とした場合の EN12952 における比率

※火技解釈を用いた計算上必要となる厚さに用いた使用温度に対する係数は、k=0.4 とし

た。

※上記の値は付け代、公称壁厚の許容誤差は考慮していない板厚である。火技解釈の場

合、付け代 1mm を付加する必要があり、EN12952 の場合は付け代として 0.75mm の

他、寸法公差が考慮される。

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-60-

4.2.4 EN 規格と技術基準の技術要素等の比較分析

次頁以降の表に火技解釈と EN 規格(EN12952 及び EN12953)との対比を示す。また、

対比に際しては、「電気事業法に基づく技術基準省令を満たすために必要な技術要素」(平

成 16 年 7 月 27 日付け 16 原企課第 57 号)の別表を活用し、評価を実施した。

次頁以降の表に示すように、EN12952 及び EN12953 においては、電気事業法に基づく

技術基準省令を満たすために必要な技術要素について、一部対象外である項目(丸ボイラ

ー等)が存在するが、EN 規格においても、電気事業法に基づく技術基準省令を満たすため

に必要な技術要素が規定されていることを確認した。

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-61-

発電用火力設備に関する技術基準を定める省

技術要素 技術的要件 発電用火力設備の技術基準の解釈

(準用を除く)

EN12952 での要求内容 EN12953 での要求内容 JSME2012 での要求内容

(ボイラー等の材料)

第五条 ボイラー(火気、燃焼ガスその他の高

温ガス若しくは電気によって水等の熱媒体

を加熱するものであって、当該加熱により当

該蒸気を発生させこれを他の設備に供給す

るもの又は当該加熱(相変化を伴うものを除

く。)により当該水等の熱媒体を大気圧力に

おける飽和温度以上とし、これを蒸気タービ

ン若しくはガスタービンに供給するものの

うち、ガス化炉設備(石炭、石油その他の燃

料を加熱し、酸素と化学反応させることによ

りガス化させ、発生したガスをガスタービン

に供給する容器(以下「ガス化炉」という。)、

そのガスを通ずることによって熱交換等を

行う容器及びこれらに附属する設備のうち、

液化ガス設備(液化ガスの貯蔵、輸送、気化

等を行う設備及びこれに附属する設備をい

う。以下同じ。)を除く。以下同じ。)を除く。

以下同じ。)、独立過熱器(火気、燃焼ガスそ

の他の高温ガス又は電気によって蒸気を過

熱するもの(ボイラー、ガスタービン、内燃

機関又は燃料電池設備に属するものを除

く。)をいう。以下同じ。)又は蒸気貯蔵器(以

下「ボイラー等」という。)及びその附属設

備(ポンプ、圧縮機及び液化ガス設備を除

く。)に属する容器及び管の耐圧部分に使用

する材料は、最高使用温度において材料に及

ぼす化学的影響及び物理的影響に対し、安全

な化学的成分及び機械的強度を有するもの

でなければならない。

1.ボイラー等の材料

(1) 材料の適用範囲について規

定すること。

1.ボイラー等の材料

(1) 適用範囲

ボイラー、独立過熱器、又は蒸

気貯蔵器及びその附属設備に

属する容器及び管の耐圧部分

第 2 条(ボイラー等の材料)

別表第 1(鉄鋼材料の各温度におけ

る許容引張応力)

別表第 2(非鉄材料の各温度におけ

る許容引張応力)

(注記 「火技材」とは、「発電用火

力設備の技術基準の解釈」で規定さ

れている材料を指す。)

水管ボイラーの圧力部及び、圧

力部における溶接部(プレート

等)が適用範囲として規定され

ている。

参照:

Part-2 1 適用範囲

シェルボイラー及び、それらの

付属部品の耐圧部(平たん部等)

が適用範囲として規定されてい

る。

参照:

Part-2 1 適用範囲

JSME 規格第Ⅱ章に記載され

ている材料は、省令第 5 条に規

定する「安全な化学的成分及び

機械的強度を有する」ものであ

り、溶接性、引張強さ、延性、

靱性及び硬度等に優れたもの

である。

(2) 適用範囲に使用可能な材料

を規定すること。

(2) 適用材料(規定材料)

a.規格(例:JIS 材)材料

b.規格材料以外((例:火技材)

の材料

以下の材料が規定されている。

a. EN 規格で規定された材料

b. European approval of

material(EAM)に適合した材料

c. Part-2 3.3.4(特定材料評価)で

規定された評価方法に従い、承

認された材料

参照:

Part-2 3.3 材料仕様

Part-2 4.2 EAM 適合材料の技

術要件 等

以下の材料が規定されている。

a. EN 規格で規定された材料

b. European approval of

material(EAM)に適合した材料

c. Part-2 3.2.4(特定材料評価)で

規定された評価方法に従い、承

認された材料

参照:

Part-2 3.2 材料仕様

Part-2 3.2.3 欧州材料データシ

ート 等

(3) 規定された材料に対する使

用制限を規定すること。

(3) 使用制限

a.最高使用温度

b.最低使用温度

c.各温度の許容引張応力

EN10028-2 等を参照し規定さ

れている。 EN10028-2 では、

最高使用温度は規定されている

が,最低使用温度の規定はされ

ていない。また各温度での 0.2%

耐力が規定されている。

参照:

Part-2 3.3.2 EN 規格

EN10028-2 等を参照し規定さ

れている。 EN10028-2 では、

最高使用温度は規定されている

が,最低使用温度の規定はされ

ていない。また各温度での 0.2%

耐力が規定されている。

参照:

Part-2 3.2.2 一致した EN 規格

(4) 規定材料の使用制限外での

使用を認める場合には、使用

基準を規定すること。

(4) 規定材料(例:JIS 材,火技

材)の使用制限外での使用基準

a.適用条件

b.追加要求

対象外 対象外

(5) 規格材料以外の材料を使用

する場合には、評価基準を規

定すること。

(5) 評価基準

a.評価要領

b.評価項目

a) 基本成分および用途

b) 材料の仕様

① 成分制限

② 寸法制限

③ 形状寸法

c) 製造工程および製造条件

① 製造方法

② 熱処理

③ 検査

d) 化学成分

e) マクロおよびミクロ組織

f) 実用試験

g) 加工性、加工条件

h) 機械的性質

① 引張特性

② 靱性

③ 硬さ

EAM に適合した材料に求めら

れる技術的要件が規定されてい

る 。具 体的な 要件 は、 EN

764-4:2002 を参照している。

参照:

Part-2 4.2 EAM 適合材料の技

術要件 等

EAM に適合した材料に求めら

れる技術的要件が規定されてい

る 。具 体的 な要 件は 、 EN

764-4:2002 を参照している。

参照:

Part-2 3.2.3 欧州材料データシ

ート

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-62-

i) 応力-ひずみ特性

j) 高温および低温引張特性

k) クリープおよびクリープ破

断特性

l) 時効後靱性

m) 溶接性

n) 耐食性

o) 許容引張応力

p) 実機暴露試験

q) その他特性

① 線膨張係数

② 熱伝導率

③ 温度伝導率

④ 縦弾性係数

⑤ 横弾性係数

⑥ ポアソン比

(6) 規格材料以外の材料を使用

する場合には、使用基準を規

定すること。

(6) 規格材料以外(例:火技材)

の材料仕様に対する要求事項

a.製品形態

b.製造方法

c.化学成分

d.熱処理

e.機械的性質

f.高温強度

g.寸法、寸法公差

h.表面仕上げ

i.検査

j.最高使用圧力

k.適用箇所

EAM に適合した材料に求めら

れる技術的要件が規定されてい

る 。具 体的な 要件 は、 EN

764-4:2002 を参照している。

参照:

Part-2 4.2 EAM 適合材料の技

術要件 等

EAM に適合した材料に求めら

れる技術的要件が規定されてい

る 。具 体的 な要 件は 、 EN

764-4:2002 を参照している。

参照:

Part-2 5.6.4 欧州材料データシ

ート

(ボイラー等の構造)

第六条 ボイラー等及びその附属設備(液化ガ

ス設備を除く。以下この章において同じ。)

の耐圧部分の構造は、最高使用圧力又は最高

使用温度において発生する最大の応力に対

し安全なものでなければならない。この場合

において、耐圧部分に生ずる応力は当該部分

に使用する材料の許容応力を超えてはなら

ない。

2.ボイラー等の構造

(1) ボイラー等及びその附属設

備の耐圧部分について、適切

な設計規則、解析または実験

方法、あるいはそれらの組合

せにより、最小必要厚さや寸

法を決定する方法を規定す

ること。

2. ボイラー等の構造

(1)-1 検定水圧試験

(1)-2 耐圧部分の設計規則

a. 容器の胴

a) 形状

b) 寸法

c) 厚さ

d) 継手効率

e) 穴の補強

b. 長方形管寄せ

a) 胴の厚さ

b) 穴の補強

c. 容器の鏡板

a) 形状

b) 厚さ

c) 穴の補強

d. 容器の平板

a) 厚さ

b) 穴の補強

e. 容器のフランジ付き皿形ふ

た板

a) 形状

b) 厚さ

c) 継手効率

f. 容器の管板

第 3 条(ボイラー等の構造) 検定水圧試験の要件が規定され

ている。

参照:

Part-3 12.2 水圧による変形試

Part-3 12.3 水圧による破壊試

検定水圧試験の圧力が規定され

ている。

参照:

Part-3.5.6.4 静水圧試験圧力

第Ⅲ章(ボイラ)、PG-18 に水

圧試験による最高使用運転圧

力検証が規定されている。ま

た、APPENDIX A-22 に最高許

容運転圧力を定めた検定水圧

試験方法について、詳細に規定

されている。

第 6 条(容器の胴) 円筒胴の形状と厚さが規定され

ている。

参照:

Part-3 7 内圧が作用するドラム

とヘッダーの円筒胴

Part-3 7.1 胴部板厚 等

円筒胴の形状と厚さが規定され

ている。

参照:

Part-3 7 内圧下の円筒形シェル

Part-3 7.1 胴部板厚

第Ⅲ章(ボイラ)、PG-16.3(最

小厚さ)、PG-17(複数の方法

による製造)、PG-27(内圧を

受ける円筒状構成材)、PG-33

(穴の補強)、PG-37(強め材

の強さ)、PG-38(補強有効範

囲が重なる場合)、PG-52(リ

ガメント)、PG-80(円筒形の

胴の供用真円度)等に円筒胴の

形状と厚さ等が規定されてい

る。

第 7 条(長方形管寄せ) 矩形断面の管寄せについて、形

状と板厚が規定されている。

参照:

Part-3 9 矩形断面の管寄せ

Part-3 9.3 要求される肉厚

規定なし。 規定なし。

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-63-

a) 構造

b) 厚さ

g. 管及び管台

a) 厚さ

b) 穴の補強

h. フランジ

a) 規格フランジ

b) 厚さ

i. 丸ボイラー

第 8 条(容器の鏡板) 球形鏡と皿形鏡の形状と板厚が

規定されている。

参照:

Part-3 10.2 球形鏡と皿形鏡

Part-3 10.2.3 球形鏡と皿形鏡

の開口部

皿形鏡版の形状と板厚が規定さ

れている。

参照:

Part-3 9.1 開口部のついていな

い皿形鏡版

Part-3 9.1.1 内圧下での皿形鏡

第Ⅲ章(ボイラ)、PG-29 に皿

形鏡版の形状と板厚、、PG-32、

33 に穴の補強が規定されてい

る。

第 9 条(容器の平板) ステーのない平板について、形

状と板厚が規定されている。

参照:

Part-3 10.3 ステーのない平端

Part-3 10.3.2 円形のステーの

ない平板の厚さ

平板の形状と板厚が規定されて

いる。

参照:

Part-3 9.2 平板

第Ⅲ章(ボイラ)、PG-31 にス

テーのない平形ふた板の形状

と板厚、PG-35 に穴の補強が規

定されている。

第 10 条(容器のフランジ付き皿形

ふた板)

規定なし。 規定なし。 第Ⅳ章APPENDIX1-6の図1-6

による。

第 11 条(容器の管板) 管板の形状と板厚が規定されて

いる。

参照:

Part-3 8.3 円筒型シェルの開

口部と枝管の補強

管板の形状と板厚が規定されて

いる。

参照:

Part-3 10. 平板の余裕

Part-3 12.7 管板の厚さ

第Ⅳ章(圧力容器)UHX-9(ボ

ルト締めされる管板)、UHX-12

(U チューブ式管板の設計に

関する規則)、UHX-13(固定管

板の設計に関する規則)及び

UHX-14(遊動管板の設計の関

する規則)に規定されている。

第 12 条(管及び管台) 管台の設計に関する要求事項を

が規定されている。

参照:

Part-3 8.1.4 管台の設計に関す

る要求事項

管の形状と厚さが規定されてい

る。

参照:

Part-3 12. 穿孔されていない

管及び管板

Part-3 12.1 外圧を対象とした

管の厚さ 等

第Ⅲ章(ボイラー)、 PG-27(内

圧を受ける円筒状構成材)及び

第Ⅴ章(配管)に規定されてい

る。

第 13 条(フランジ) フランジについて、EN1092 等

を参照し規定されている。

参照:

Part-3 11.7.2 フランジとボル

フランジについて、EN1092 等

を参照し規定されている。

参照:

Part-3 9.3 フランジの接続部

第Ⅲ章(ボイラ)、PG-42(管

継手、フランジ及び弁について

の一般要求事項)に規定されて

いる。

第 14 条(丸ボイラー) 規定なし。 規定なし。 規定なし。

(2) 設計手法との関連において

必要な場合は、その荷重を考

慮して規定すること。

(2)設計上の配慮事項

a. 過渡条件や熱膨張係数の差

による温度差

b. 通常運転と異常運転中の圧

力と温度の変動

c. 劣化メカニズム

自重と曲げ苛重やボイラー内部

と外部の温度差、金属の損傷等

について配慮し設計するように

規定されている。

参照:

Part-3 5.2 耐圧部の寸法

Part-3 6.2 最大壁間温度差 等

温水ジェネレーターの場合は、

出口と入口の温度差に配慮し設

計するよう規定されている。

参照:

Part-3 5.1 ボイラー

(3) ボイラー等及びその附属設 (3)許容応力策定要領 第 4 条(材料の許容応力) 材料の種類別に許容応力を算出 材料の種類別に許容応力をの求 JSME 規格第Ⅱ章の許容応力

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-64-

備の耐圧部分に使用する材

料の許容応力の策定要領を

規定すること。

a. 許容引張応力

b. 許容圧縮応力

c. 許容せん断応力

d. 鋳造品質係数

する式が規定されている。また

クリープを考慮する必要がある

場合や試験圧力に対しての許容

応力の算出方法も規定されてい

る。

参照:

Part-3 6.3 設計応力

め方が規定されている。クリー

プ温度領域での許容応力値は規

定されていない。

参照:

Part-3 耐圧部の構造及び強度

計算

表に規定された値。

(4) ボイラー等及びその附属設

備の耐圧部分の耐圧試験に

係る要求を規定すること。

(4)耐圧試験

a. 水圧試験

b. 気圧試験

第 5 条(水圧試験) 水圧試験に対する要求が規定さ

れている。

参照:

Part-3 5.7.4 水圧試験

水圧試験に対する要求が規定さ

れている。

参照:

Part-3 5.6.4 静水圧試験圧力

第Ⅲ章(ボイラ)、PG-99 に標

準水圧試験について規定され

ている。

(安全弁)

第七条 ボイラー等及びその附属設備であって

過圧が生ずるおそれのあるものにあっては、

その圧力を逃がすために適当な安全弁を設

けなければならない。この場合において、当

該安全弁は、その作動時にボイラー等及びそ

の附属設備に過熱が生じないように施設し

なければならない。

3.過圧防止

(1) ボイラー等及びその附属設

備は所定の制限値以上の過

圧状態になることを防ぐよ

うすること。

(2) 過圧防止のための装置は予

想される負荷、構造物の内部

流体等に適したものにする

こと。

3.過圧防止

3.1 安全弁

a. 吹出し容量

b. 設置個所・個数

c. 吹出し圧力(設定値)

d. 材料

e. 構造

f. 公称吹き出し量

第 15 条(安全弁)第 2 項第 1 号

第 15 条(安全弁)第 2 項第 2 号、

第 3 号、第 4 号、第 5 号、第 6 号、

第 7 号、第 8 号、第 9 号

第 15 条(安全弁)第 3 項、第 4 項

第 2 号

第 15 条(安全弁)第 3 項、第 4 項

第 3 号、第 4 号、第 5 号、第 6 号、

第 5 項、第 6 項第 4 号

第 15 条(安全弁)第 6 項、第 7 項

蒸気ボイラーについて安全弁の

最小口径が規定されている。ま

た弁や機器の種類に応じて設置

場所が規定されている。安全弁

の 詳 細 な 仕 様 は 他 の 規 格

(prEN1628-1 等)を参照して規

定されている。

参照:

Part-10 5.1 蒸気ボイラー

ボイラーの安全弁の数、取り付

け位置が規定されている。安全

弁そのものの仕様は、prEN ISO

4126-1を参照して規定されてい

る。

参照:

Part-8 4.1 セーフガード(安全

圧力逃し装置)の一般要件

第Ⅲ章(ボイラ)、PG-67(ボ

イラの安全弁の要求事項)、

PG-68(過熱器、再熱器安全弁

の要求事項)、PG-69(安全弁、

安全逃がし弁の証明)、PG-70

(安全弁の容量)、PG-71(取

付け)、PG-72(操作)及び

PG-73(安全弁、安全逃がし弁

の最低要求事項)に規定されて

いる。

(給水装置)

第八条 ボイラーには、その最大連続蒸発時に

おいて、熱的損傷が生ずることのないよう水

を供給できる給水装置を設けなければなら

ない。

2 設備の異常等により、循環ボイラーの水位

又は貫流ボイラーの給水流量が著しく低下

した際に、急速に燃料の送入を遮断してもな

おボイラーに損傷を与えるような熱が残存

する場合にあっては、当該ボイラーには、当

該損傷が生ずることのないよう予備の給水

装置を設けなければならない。

4. その他付帯設備

(1) ボイラー等の損傷を防止す

るための装置を設置するこ

と。

設置する装置は、以下のよう

なものが有り得る。

- 給水装置

- 蒸気及び給水の遮断装置

- ボイラー水抜き装

4.1 給水装置

a. ボイラーへの給水装置設置

b. 予備給水装置設置

c. 対象設備

第 16 条(給水装置)

ボイラーへの給水装置設置につ

いて規定されている。また予備

の給水装置の設置についても規

定されている。

参照:

Part-7 5.1 ポンプの要件

ボイラーへの給水装置設置につ

いて規定されている。予備の給

水装置の設置ついては、明確に

規定されていない。

参照:

Part-6 5.4 給水供給

第Ⅲ章(ボイラ)、PG-61 に給

水装置について規定されてい

る。

(蒸気及び給水の遮断)

第九条 ボイラーの蒸気出口(安全弁からの蒸

気出口及び再熱器からの蒸気出口を除く。)

は、蒸気の流出を遮断できる構造でなければ

ならない。ただし、他のボイラーと結合され

たボイラー以外のボイラーから発生する蒸

気が供給される設備の入口で蒸気の流路を

遮断することができる場合における当該ボ

イラーの蒸気出口又は二個以上のボイラー

が一体となって蒸気を発生しこれを他に供

給する場合における当該ボイラー間の蒸気

出口にあってはこの限りでない。

4.2 蒸気及び給水の遮断装置

a. ボイラー蒸気出口部の流出

遮断装置の設置

b. ボイラー給水入口部の遮断

装置の設置

隔離装置の設置が規定されてい

る。

参照:

Part-7 5.2 隔離装置と水抜き装

ブロー装置の設置を規定されて

いる。

参照:

Part-6 4.6 水抜き装置とブロー

装置 ―

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-65-

2 ボイラーの給水の入口は、給水の流路を速

やかに自動で、かつ、確実に遮断できる構造

でなければならない。ただし、ボイラーごと

に給水装置を設ける場合において、ボイラー

に最も近い給水加熱器の出口又は給水装置

の出口が、給水の流路を速やかに自動で、か

つ、確実に遮断できる構造である場合におけ

る当該ボイラーの給水の入口又は二個以上

のボイラーが一体となって蒸気を発生しこ

れを他に供給する場合における当該ボイラ

ー間の給水の入口にあってはこの限りでな

い。

(ボイラーの水抜き装置)

第十条 循環ボイラーには、ボイラー水の濃縮

を防止し、及び水位を調整するために、ボイ

ラー水を抜くことができる装置を設けなけ

ればならない。

4.3 ボイラー水抜き装置

a.ボイラー水抜き装置の設置

b.対象設備 ―

水抜き装置の設置が規定されて

いる。

参照:

Part-7 5.2 隔離装置と水抜き装

水抜き装置の設置が規定されて

いる。

参照:

Part-6 4.6 排水装置及びブロー

ダウン装置

(計測装置)

第十一条 ボイラー等には、設備の損傷を防止

するため運転状態を計測する装置を設けな

ければならない。

(2) ボイラー等及びその附属設

備が過圧状態になることを

防止するために運転状態を

計測する装置を設けること。

4.4 計測装置

a.設備種類に対する計測装置

a) 計測箇所

b) 計測内容

第 17 条(計測装置)

リミッターと保護システムへの

要求事項が規定されている。蒸

気ボイラーに関する要件とし

て、水位計や圧力計、温度計の

設置を規定されている。

参照:

Part-7 4.5 リミッターと保護シ

ステムへの要求事項

Part-7 5.4 水位計と流量計 等

リミッターの設置を規定してい

る。蒸気ボイラーに関する要件

として、水位計や圧力計、温度

計の設置を規定されている。

参照:

Part-6 5.1 水位表示

Part-6 5.6 リミッタ―装置 等

第Ⅲ章(ボイラ)、PG-60.1 に

水位計、PG-60.6 に圧力計がそ

れぞれ規定されている。

(溶接部の形状等)

第七十四条 電気事業法施行規則第七十九

条第一号 及び第二号 に掲げる機械又は器

具であって、同規則第八十条に定める圧力以

上の圧力を加えられる部分について溶接を

するものの溶接部(溶接金属部及び熱影響部

をいう。以下「溶接部」という。)は、次に

よること。

一 不連続で特異な形状でないものである

こと。

1. 溶接部の形状

(1)溶接部の設計方法について

規定すること。

(2)溶接部の設計因子に関する

必要とする制限を規定する

こと。設計因子には例えば、

継手形状形状・寸法・使用温

度等が有り得る。

1. 溶接部の安全な形状

(1)溶接部の設計

a. 継手形式

b. 開先形状

c. 応力集中防止

a) 食違い

b) 厚さの異なる母材の場合の

こう配

d. 溶接部厚さ、脚長・のど厚

e. 余盛り高さ・形状

第 114 条(ボイラー等の溶接部の形

状)

第 118 条(溶接部の設計)

第 122 条(突合せ溶接による継手面

の食違い

第 123 条(厚さの異なる母材の突合

せ溶接)

第 118 条(溶接部の設計)、別図第

1~4, 6

溶接継ぎ手の形状や、設計上で

の留意点が規定されている。ま

た、厚さの異なる母材の突合せ

溶接に対する制限が規定されて

いる。

参照:

Part-3 Annex-B

Part-5 8.9 溶接継手、接続部と

製品試験板 等

溶接継ぎ手の形状や、設計上で

の留意点が規定されている。ま

た、厚さの異なる母材の突合せ

溶接に対する制限が規定されて

いる。

参照:

Part-4.5.12 溶接部の設計

Part-4.5.16.2 母材の厚さ

基本規定 10.3.114(ボイラ等の

溶接部の形状)、PW-9(溶接継

手設計)等に規定されている。

二 溶接による割れが生ずるおそれがなく、

かつ、健全な溶接部の確保に有害な溶込み不

良その他の欠陥がないことを非破壊試験に

より確認したものであること。

三 適切な強度を有するものであること。

四 機械試験等により適切な溶接施工法等

であることをあらかじめ確認したものによ

り溶接したものであること。

2 溶接部の割れ、欠陥、強度

(1)溶接する母材の要求事項を

規定すること。

2. 溶接による割れ、欠陥、強度

(1)母材に対する規定

a. 溶接する母材の制限

b. 母材区分

第 115 条(ボイラー等の溶接部の割

れ及び欠陥)

第 116 条(ボイラー等の溶接部の強

度)

第 119 条(溶接の制限)

別表第 9(母材の区分)

母材に対して、熱処理等に適し

た材料を使用することが規定さ

れている。また、溶接表面欠陥

や体積欠陥検出のための検査方

法が EN1435 等を参照し規定さ

れている。

参照:

Part-2 3.2 製造に関する材料の

選定

Part-6 9.3 表面不完全部の検出

溶接表面欠陥や体積欠陥検出の

ための検査方法が EN1435 等を

参照し規定されている。

参照:

Part-5 5.5.4 溶接部の非破壊検

査-不完全部の検出技術と許容

範囲

基本規定 10.3.115(ボイラ等の

溶接部の割れ及び欠陥)、基本

規定 10.3.116(ボイラ等の溶接

部の強度)及び PW-5.2 等に規

定されている。

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-66-

(2)溶接材料の要求事項を規定

すること。

(2)溶接材料に対する規定

a. 適用する溶接材料の条件

b. 溶接材料の区分

第 107 条(溶接施工法)第 1 項、

別表第 18(溶接棒の区分)、別表第

19(溶接金属の区分)、別表第 20(溶

加材若しくはウェルドインサート又

は心線の区分)

溶接材料がEN 757:1997等を参

照し規定されている。

参照:

Part-5 8.2 溶接材料

溶接材料が EN12074 等を参照

し規定されている。

参照:

Part-2 4.3 溶接材料

第Ⅲ章(ボイラ)、PW-27(溶

接方法)に規定されている。ま

た、溶接方法の区分に応じて、

QW-251-1~3、QW-252~260、

QW-262~265、QW401~410

を参照する。

(3)溶接部の強度に対する要求

事項を規定すること。

(3)母材と同等以上の強度

第 121 条(溶接部の強度)、第 124

条(溶接部の欠陥等)

EN ISO 15614-1 を参照して規

定されている。

EN ISO 15614-1 を参照して規

定されている。

第Ⅲ章(ボイラ)、PW-27(溶

接方法)に規定されている。

(4)溶接の施工方法について規

定すること。

a. 材料の区分を規定すること。

b. 溶接材料(溶接棒、溶加材、

ウェルドインサート、心線な

ど)の区分を規定すること。

c. 施工方法の区分を規定する

こと。

d. 試験(認定)要領・判定基準

を規定すること。

(4)溶接方法

a. 溶接方法の区分

b. 溶接材料の区分

c. 必要な確認要素

d. 確認要素における確認内容

e. 確認(試験)方法

a) 確認(試験)材区分

b) 確認者

c) 確認(試験)方法

d) 判定基準

f. 溶接施工法

a) 溶接方法の組合せ

第 107 条(溶接施工法)、第 108 条

(判定基準)

第 107 条(溶接施工法)第 1 項、

第 2 項、別表第 7(溶接方法の区分)

第 107 条(溶接施工法)第 1 項、

別表第 18(溶接棒の区分)、別表第

19(溶接金属の区分)、別表第 20(溶

加材若しくはウェルドインサート又

は心線の区分)

第 107 条(溶接施工法)第 1 項、

別表第 8(溶接方法別の確認項目)

第 107 条(溶接施工法)第 1 項、

別表第 10(確認項目の要素の区分)

第 107 条(溶接施工法)

第 107 条(溶接施工法)第 1 項、

別表第 9(母材の区分)、別表第 11

(溶接施工法試験方法及び判定基

準)

第 107 条(溶接施工法)第 1 項

第 107 条(溶接施工法)第 1 項、

別表第 11(溶接施工法試験方法及び

判定基準)、附図第 1(試験片の種類、

数及び採取位置(板の場合))、附図

第 2(試験片の種類、数及び採取位

置(管の場合))、附図第 3(衝撃試

験片の採取位置)、第 107 条(溶接

施工法)第 2 項、別表第 12(衝撃

試験温度)

第 108 条(判定基準)、別表第 11(溶

接施工法試験方法及び判定基準)

第 107 条(溶接施工法)第 1 項、

別表第 7(溶接方法の区分)

溶接施工法の承認方法が EN

ISO 15614-1 等を参照して規定

されている。また、溶接施工試

験についても EN ISO 15614-1

等を参照し規定されている。

参照:

Part-6 6 溶接施工要領書の認証

溶接施工試験について EN ISO

15614-1 を参照し規定されてい

る。

参照:

Part-5 5.6.5 試験要素及び試験

要件

第Ⅲ章(ボイラ)、PW-27(溶

接方法)、第Ⅶ章(溶接正攻法・

溶接技量)等に規定されてい

る。

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-67-

(5)溶接技能者について規定す

ること。

a. 資格区分を規定すること。

b. 試験(認定)要領・判定基準

を規定すること。

c. 資格による作業範囲を規定

すること。

d. 資格の有効期限を規定する

こと。

e. 資格更新の要求事項を規定

すること。

(5)溶接士

a. 溶接士の区分

a) 手溶接士

b) 自動溶接士

b. 確認(試験)方法

a) 溶接方法

b) 溶接姿勢

c) 確認(試験)

d) 確認者

e) 確認(試験)方法

f) 判定基準

c. 作業範囲

d. 有効期限

e. 資格更新要求事項

第 110 条(溶接士)、第 111 条(判

定基準)、第 112 条(技能の認定)、

第 113 条(作業範囲)

第 110 条(溶接士)第 1 項、第 2 項

第 110 条(溶接士)第 1 項、第 2

項第 1 号

第 110 条(溶接士)第 1 項、第 2 項

第 2 号

第 110 条(溶接士)

第 110 条(溶接士)第 1 項、別表

第 9(母材の区分)、別表第 13(手

溶接士の技量試験事項)

第 110 条(溶接士)第 1 項

第 110 条(溶接士)第 1 項、別表

第 14(溶接士技能試験及び判定基

準)、附図第 4(W-3-0r,W-3r,W-4r,

W-13r,W-14 及び W-15r の試験材

の寸法及び取り付け方法並びに試験

片採取位置)

第 111 条(判定基準)、別表第 15(溶

接士の技能の区分の対応)、別表第

16(技術基準の解釈と JIS の資格区

分の対応)、別表第 14(溶接士技能

試験及び判定基準)

第 113 条(作業範囲)、別表第 17(試

験材及び溶接姿勢の区分と作業範

囲)

第 110 条(溶接士)第 3 項

第 112 条(技能の認定)

溶接士の認証について、EN 287

を参照し規定している。

参照:

Part-6 7 溶接士と溶接オペレー

タの認証

溶接士の認証について、EN 287

を参照し規定している。

参照:

Part-4 5.15.3.2 溶接士と溶接

オペレータの認証

第Ⅶ章(溶接正攻法・溶接技量)

QW351~357、361~362、384、

385、QW-401-2、401.5、402

~405、408、409 及び 416 に

規定する区分ごとに、溶接士の

技量について、試験方法が規定

されており、当該試験に適合し

た技能を有する溶接士、または

第Ⅶ章 QW-300.1(2)による溶

接士に溶接を行わせなければ

ならない。

(6)熱処理の要求事項について

規定すること。

(6)溶接後熱処理

a. 熱処理対象

b. 熱処理方法

c. 熱処理条件

a) 保持温度

b) 保持時間

c) 加熱・冷却速度

d) 熱処理範囲

d. 母材、溶接部厚さ

第 126 条(溶接後熱処理)

第 126 条(溶接後熱処理)、別表第

21(溶接後熱処理における温度範囲

及び溶接部の厚さに応じた保持時

間)、別表第 23(溶接後熱処理を要

しないもの)

第 126 条(溶接後熱処理)、別表第

22(溶接後熱処理の方法)

第 126 条(溶接後熱処理)、別表第

21(溶接後熱処理における温度範囲

及び溶接部の厚さに応じた保持時

間)、別表第 22(溶接後熱処理の方

法)

第 126 条(溶接後熱処理)、別表第

22(溶接後熱処理の方法)

第 126 条(溶接後熱処理)、別表第

23(溶接後熱処理を要しないもの)

溶接後熱処理について、同材と

異材の場合の温度範囲や溶接継

手の保持時間を規定している。

また、加熱・冷却の速度や溶接

部の厚さについても規定してい

る。

参照:

Part-5 10.4.3 PWHT 要領

溶接後熱処理について、同材と

異材の場合の温度範囲や溶接継

手の保持時間を規定している。

また、加熱・冷却の速度や溶接

部の厚さについても規定してい

る。

参照:

Part-4 5.16 溶接後熱処理と他

の熱処理

第Ⅲ章(ボイラ)、PW-39(溶

接後熱処理)に規定されてい

る。

(7)溶接部に対する試験検査に

ついて規定すること。

a. 溶接施工前、溶接施工中、溶

接施工後の試験検査について

規定すること。

b. 試験検査対象となる溶接部

(7)検査

a. 溶接前の溶接部の管理

b. 検査対象範囲及び試験の種

c. 検査方法

a) 放射線透過試験

第 125 条(継手の仕上げ)、第 127

条(非破壊試験)、第 128 条(機械

試験)、第 129 条(再試験)、第 130

条(耐圧試験)

第 120 条(開先面)

第 127 条(非破壊試験)第 1 項、

溶接前の表面状況について規定

されている。溶接部の非破壊検

査として、放射線透過試験や超

音波探傷試験が EN 1435 や EN

ISO 17640 等を参照し規定され

ている。また、許容できる不完

溶接前の表面状況について規定

されている。溶接部の非破壊検

査として、放射線透過試験や超

音波探傷試験が部位別に規定さ

れている。また、許容できる不

完全性についても規定されてい

第Ⅲ章(ボイラ)、PW-11(突

合わせ溶接の放射線透過試験

及び超音波探傷試験)、PW-16

(取付け溶接の最低要求事

項)、PW-51(放射線透過試験

の判定基準)、 PW-52(超音波

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-68-

及び溶接部に要求する試験検

査の種類を規定すること。

c. 試験検査要領(方法)・判定

基準を規定すること。

d. 非破壊試験の方法・判定基準

を規定すること。

e. 耐圧試験の方法・判定基準を

規定すること。

f. 試験検査のタイミングにつ

いて規定すること。

g. 試験者の資格要求を規定す

ること。

①撮影方法

②透過度計

③濃度範囲

④判定基準

b) 超音波探傷試験

①探傷方法

②周波数

③基準感度

④接触媒質

⑤走査方法

⑥対比試験片

⑦判定基準

c) 磁粉探傷試験

①磁化方法

②磁粉及び検査液

③磁場の強さ

④標準試験片

⑤判定基準

d) 浸透探傷試験

①試験方法

②試験装置、探傷剤

③判定基準

e) 試験者資格

f) 継手仕上げの制限

g) 機械試験

①機械試験対象範囲及び試験

の種類

②試験方法

②-1 引張試験

・試験片形状、寸法

・試験片数

・試験方法

・判定基準

②-2 曲げ試験

・試験片形状、寸法

・試験片数

・試験方法

・判定基準

②-3 衝撃試験

・試験片形状、寸法

・試験片数

・試験方法

・試験片採取位置

・試験温度

・判定基準

②-4 その他試験方法

・試験片形状、寸法

・試験片数

・試験方法

・判定基準

③再試験

・実施条件

・試験片数

h) 耐圧試験

①試験方法

別表第 24(溶接部の非破壊試験)、

第 128 条(機械試験)第 2 項、別

表第 30(機械試験)、第 129 条(再

試験)、別表第 32(再試験)、第 130

条(耐圧試験)第 127 条(非破壊試

験)第 2 項、第 128 条(機械試験)

第 1 項、第 3 項、第 130 条(耐圧

試験)

第 127 条(非破壊試験)第 2 項第 1

号、第 3 項第 1 号、別表第 25(放

射線透過試験)

第 127 条(非破壊試験)第 2 項第 2

号、第 3 項第 2 号、別表第 26(超

音波探傷試験)

第 127 条(非破壊試験)第 2 項第 3

号、第 3 項第 3 号、別表第 27(磁

粉探傷試験)

第 127 条(非破壊試験)第 2 項第 4

号、第 3 項第 4 号、別表第 28(浸

透探傷試験)

第 127 条(非破壊試験)第 4 項

第 125 条(継手の仕上げ)

第 128 条(機械試験)

第 128 条(機械試験)第 2 項、別

表第 30(機械試験)

第 128 条(機械試験)第 1 項、第 3

項、別表

第 29(溶接部の機械試験板)

別表第 31(継手引張試験、型曲げ試

験、ローラ曲げ試験及び衝撃試験)、

附表第 1(溶接部の最小引張強さ)

対象外

対象外

第 129 条(再試験)、別表第 32(再

試験)

第 130 条(耐圧試験)

全性についても規定されてい

る。

また、機械的試験が EN ISO

15614-1:2004 を参照し規定さ

れている。試験方法として、引

張試験、曲げ試験及び衝撃試験

等が規定されている。さらに、

水圧試験も規定されている。

参照:

Part-6 9 溶接部の非破壊検査

Part-6 6.2.2 機械試験

Part-6 10.2 水圧試験

る。

ま た 、 機 械 的 試 験 が EN

288-3:1993を参照し規定されて

いる。試験方法として、引張試

験、曲げ試験及び衝撃試験等が

規定されている。

参照:

Part-5 5 非破壊検査

Part-5 6 機械試験

探 傷 試 験 の 判 定 基 準 )、

APPENDIX A-260(磁粉探傷

試験)及び A-270(浸透探傷試

験)が規定されている。また、

第Ⅲ章の他、第Ⅵ章(非破壊試

験)に、非破壊試験について詳

細に規定されている。

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-69-

②試験圧力

③代替試験方法

― ― ― 第 105 条(用語の定義) ― ― ―

― ― ― 第 106 条(一般要求事項) ― ― ―

― ― ― 第 109 条(溶接設備) ― ― ―

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-70-

5 おわりに

5.1 配管の減肉に関する強度評価の検討

5.1.1 まとめ

本調査では、火力発電設備に係る配管減肉に関する強度評価及び更なる国際整合化に向け

た規制の合理化のための調査を行い、科学的かつ合理的な規制を整備することにより、新規

参入事業者等の拡大に伴う環境変化に対応した保安規制等を検討し、その調査結果として以

下のとおりまとめた。

火力発電設備に限定せず、局部減肉状態を考慮した健全性評価手法を規定する海外及

び国内の民間規格の中から、局部減肉に関する民間規格及び JSME 減肉管理技術規

格を対象とした「適用範囲」に関する調査を行い、国内における火力発電設備の配管

減肉への適用可能な民間規格として、API 579-1/ASME FFS-1、WES2820 及び

BS7910 を抽出した。

抽出した民間規格の中から、現状の JSME 減肉管理技術規格評価を用いた管理を踏

まえて、使用するデータ及び評価手法が考慮する領域に着目して、火力発電設備の配

管に適用可能な民間規格として API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 を選定した。

以上を踏まえて、WES2820 と比較して広範な評価手法を含む API 579-1/ASME FFS-1

をベースとして、国内における火力発電設備の配管における局部減肉状態を考慮した健全性

評価のための規格文案を提案するとともに、規格文案を作成していく中で得られた局部減肉

の健全性評価手法の適用についての特徴及び今後の課題(5.1.2 参照)を整理した。その結

果、提案した規格文案は、JSME 減肉管理技術規格の適用範囲を概ね満足することや、JSME

減肉管理技術規格の余寿命評価においても利用される計測厚さデータや内圧等の情報を活

用して局部減肉の健全性評価を行うことができることを確認した。そのため、技術面・運用

面での課題はあるものの、設置者が本規格文案の考え方に基づいて JSME 減肉管理技術規

格の最小厚さを用いた余寿命評価に基づく次回定期事業者検査時期を見直す場合には、配管

の減肉強度評価方法の1つとして適用し得るものと考えられる。

5.1.2 今後の課題

(1) 技術面での課題

本調査で提案した規格文案は、JSME 減肉管理技術規格の適用範囲を概ね満足すること

や、また、本規格文案の作成において基にした API 579-1/ASME FFS-1 は、多くの技術的

根拠を踏まえて策定されるとともに、円筒胴や直管を対象としてその評価手法を適用した事

例が主に石油化学分野を中心に発表されており、国内の火力発電設備の配管に対して局部減

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-71-

肉状態を考慮した健全性評価手法を適用する上で活用できると考えられる。しかし、提案し

た規格文案については、例えば、石油化学分野の検証事例では、内圧が支配的となる円筒胴

や直管が対象となるのに対して、火力発電設備の配管では、エルボ等の直管以外での部位で

減肉が確認されているため、今後、評価対象とする部位、環境、荷重条件等、火力発電設備

の配管に特有の検討事項があると考えられることや、実機の計測厚さデータや運転条件等の

具体的な情報の入手が困難であったなどといったことから、実機相当の計測データ及び運転

条件等を用いた評価事例の整備、許容応力の安全率の変更に伴う局部減肉評価への影響等に

ついて、規格文案の実際の管理への適用可否を検討するまでには至らず、技術面で適用の妥

当性の確認について検討の余地が残されているとの指摘があった。そのため、今後、規格文

案の適切性を検証するには、火力発電設備の配管における局部減肉状態を考慮した健全性評

価に関する具体的な運転データ等を蓄積し、既存の民間規格を活用した発電設備の管理や運

用が可能であることを確認することを通じて、必要に応じて更なる検討が期待される。

(2) 運用面での課題

本調査では、規格文案の作成を通じて局部減肉の健全性評価手法の適用に関する検討を行

ったが、技術面での課題が残ったことから規格文案の適切性を検証するまでには至らなかっ

た。そのため、実際に減肉管理を実施している事業者が、API 579-1/ASME FFS-1 の局部

減肉の健全性評価に基づいた規格文案の考え方を健全性評価手法に取り入れる場合には、十

分な保安水準の確保が達成できる技術的根拠を自ら提示することが求められる。そのため、

今後、減肉管理に係る検査方法の合理化を図っていく際には、事業者のニーズを踏まえ、必

要に応じて主に以下の点について更なる検討が必要と考えられる。

安全規制体系の中で、局部減肉状態を考慮した健全性評価手法に係る文書を位置づけ

る際に、「国の内規制定」又は「業界団体等による民間規格の整備とそのエンドース」

といった方法が考えられるが、「国の内規制定」については、安全規制における評価

方法の位置づけが明確になるが、一方で、内規に具体的な方法が規定されることによ

り柔軟な運用を行うことが難しいといった点も否定できない。また、「業界団体等に

よる民間規格の整備とそのエンドース」については、例えば、一般社団法人日本機械

学会発電用設備規格委員会による新たな民間規格を策定し、日本電気技術規格委員会

による審議・承認を経て国が当該規格をエンドースするといった方法が考えられ、事

業者のニーズに即した運用が期待できるが、一方で、民間規格策定団体による当該規

格の維持管理といった負担が大きいといった意見もあげられている。

このように、技術面及び運用面でのそれぞれの課題を挙げたが、局部減肉評価手法の導入

に関する具体的なメリット等を明確にして、事業者のニーズを踏まえながら、検査方法の更

なる合理化の必要性について、必要に応じて更なる検討していくことが望まれる。

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-72-

5.2 EN 規格と技術基準の技術要素等の比較分析

5.2.1 まとめ

本調査では、欧州及び日本の電気事業法に係る安全規制の体系について整理を行い、欧州

のバイオマスボイラー等の発電設備で用いられている欧州指令であるPEDと火技省令を比

較し、また、EN 規格である EN12952(水管ボイラー)及び EN12953(シェルボイラー)

と日本の技術基準である火技解釈の対比を行い、その結果として、以下の状況を確認するこ

とができた。

日本の電気事業法については、設計段階~工事・運転開始段階~設備の運用段階のす

べての段階において設置者に責任が生じるのに対し、欧州では、設計段階~工事・運

転開始段階までは製造者に責任が生じ、設備の運用段階は設置者に責任が生じること

になっている。そのため、欧州と日本の電気事業法では考え方が異なることを確認し

た。

欧州においては、欧州内における安全な製品流通を行うため、発電設備の法令・技術

基準への適用に関する認証は、第三者機関である公認検査機関が検査を実施し、認証

を行う(容量、圧力のレベルが小さい場合は製造者が行うこともある)。また、ここ

での認証を満たした発電設備に対しては、製造者が品質を担保することを証明するた

めに CE マークを貼付し、欧州各国で流通することが可能であることから、公認検査

機関による検査の実施により、PED に示す安全性要求事項を維持しているものと考

えられる。一方で、日本の電気事業法では、設置者による設計段階~工事・運転開始

段階~設備の運用段階の自主保安を想定した技術基準体系となっており、発電設備の

技術基準適合性についても設置者が自ら確認することが求められている。この点につ

いても、欧州と日本の電気事業法では、考え方が異なることが分かった。

技術的要求項目について、火技省令において要求している項目については、PED に

おいて全て要求されていることが分かった。一方で、PED においては、火技省令に

て要求している項目のほか、第三者認証による評価や製造者とは異なる設置者が利用

することを前提としており、最終評価、マーキングや取扱説明書といった項目が、法

令により要求されているなど、火技省令より多くの要求項目がある。

EN 規格である EN12952(水管ボイラー)及び EN12953(シェルボイラー)につい

ては、電気事業法に基づく技術基準省令を満たすために必要な技術要素を十分に満た

している規格であることが分かった。

技術基準レベルにおいて、火技解釈と EN12952(水管ボイラー)や EN12953(シ

ェルボイラー)を比較した結果、対象設計圧力等について火技解釈の方が規定上の要

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-73-

求レベルが高いと考えられる項目もあるが、一方で、衝撃試験の要求、疲労解析の要

求、機械試験の要求事項等、欧州の方が規定上の要求レベルがより詳細な項目もある。

また、火技解釈及び EN 規格ともに許容応力の考え方として、降伏応力に対して安

全率 1/1.5 といった規定があることから、保安水準に大きな差があるとは言い切れな

いと考えられる。

許容応力の値は、日本では引張強さに対して安全率 3.5 であるが、欧州においては安

全率 2.4 である。しかし、欧州における許容応力の値は、引張強さの 1/2.4 ではなく、

一般に降伏応力の 1/1.5 で決まることや、300℃から 400℃の範囲では、EN 規格及

び火技解釈での許容応力は 10%程度の差であり、大きな違いはない。また、クリー

プ温度域においては、材料によっては欧州における許容応力の方が低くなる場合もあ

ることが分かった。そのため、300℃を超えるような設備における許容応力の値につ

いては、大きな差がないことが分かった。

以上より、バイオマスボイラー等の発電設備に係る技術基準は、日本と欧州では、その歴

史や経緯が異なり、保安水準を維持する体系や主体も異なるが、火技省令で要求している技

術的要求項目及び PED で要求している技術的要求項目については、大きく差があるとは言

い切れないことを確認した。しかし、法令や技術基準で求めている要求レベルは、技術項目

毎で異なり、それぞれ比較した場合には、保安水準が高いものがあれば低いものもあり、ト

ータルの規格のパッケージとしてとらえた場合には、安全規制を行う目的が異なるためどち

らの保安水準が高いという比較は難しいことが分かった。日本と欧州の技術基準では、設計

段階~工事・運転開始段階~設備の運用段階とすべての段階での考え方、保安水準を維持す

る体系や主体が異なることを鑑みると、それぞれの技術基準の要求項目の一部を加えたり、

要求内容を入れ替えることにより、同一の保安水準にすることは困難であり、それぞれの技

術基準や材料も含めトータルの規格パッケージとして、評価すべきである。そのため、今後、

日本に欧州の技術基準により設計・製造された発電設備の導入を検討する際には、技術基準

や材料も含め、トータルの規格パッケージとしての導入が可能であるか更なる検討が望まれ

る。

5.2.2 今後の課題

本調査では、EN 規格の発電設備を導入する際には、技術基準や材料も含めて、トータル

の規格パッケージとして検討することを推奨したが、一方で、欧州の技術基準で製造された

発電設備が、電気事業法で要求している保安水準を満たすことを確認する方法が確立してい

ない。そのため、設置者は、参考資料2に示すような受け入れるための条件の検討(発電設

備の規模、発電設備の認証及び定期検査の間隔等)が必要であると行った点に考慮しながら

日本の技術基準に適合した発電設備の導入を行うことが求められる。一方で、欧州の技術基

準で製造された発電設備が、電気事業法に基づく技術基準省令で要求する保安水準を満たす

かどうかを確認する方法については、事業者のニーズを踏まえながら、必要に応じて更なる

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-74-

検討が行われることが望まれる。

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参考資料

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参考資料 目次

1 参考資料1:配管減肉評価に関する参考資料 ................................................................ 1

1.1 API 579-1/ASME FFS-1、WES2820 及び BS7910 の局部減肉評価手法に関する詳

細比較 ...................................................................................................................... 1

1.2 火力発電設備の配管における局部減肉の評価方法の規格文案 ............................. 24

2 参考資料2:欧州の発電設備の導入にあたっての検討項目の例 ................................ 48

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-参 1-

1 参考資料1:配管減肉評価に関する参考資料

1.1 API 579-1/ASME FFS-1、WES2820 及び BS7910 の局部減肉評価手法に関する詳細比

本調査では、国内における火力発電設備の配管減肉への適用のための代表的な民間規格を

選 定 す る こ と を 目 的 と し て 、 米 国 石 油 協 会 規 格 「 API 579-1/ASME FFS-1

Fitness-For-Service」(以下、「API 579-1/ASME FFS-1」という。)、一般社団法人日本溶

接協会規格「圧力設備の供用適性評価方法-減肉評価 WES2820」(以下、「WES2820」と

いう。)及び英国標準協会規格「Guide to methods for assessing the acceptability of flaws

in metallic structures BS7910」(以下、「BS7910」という。)の調査を行った。評価のため

に使用するデータ、適用範囲、部位及び評価手法についての比較した結果を以下に示す。

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-参 2-

表 1.1 API 579-1/ASME FFS-1、WES2820 及び BS7910 の適用範囲の比較

API 579-1/ASME FFS-1 Part4 API 579-1/ASME FFS-1 Part5 WES2820 BS7910 備考

適用範囲 以下の全てを満たす場合に、Level 1

及び Level 2 が適用できる。

a) 一般に認められた規格基準によ

って製作されたもの

b) 減肉領域が滑らかであり、局所的

な応力集中が無視できる場合

c) 繰返し荷重を受けない場合

d) Level 1はタイプAに対して内圧

あるいは外圧が作用する場合、

Level 2 はタイプ A、あるいはタ

イプ B に対して内圧、外圧、付

加荷重が作用する場合

部位のタイプは別表

エロージョン・コロージョン、機械的

損傷等により、次回点検時期より前に

厚さの許容基準を満たさないきずに対

して適用できる。きずの種類としては、

局部減肉領域及び溝状きずである。

以下の全てを満たす場合に、Level 1

及び Level 2 が適用できる。

a) 一般に認められた規格基準によっ

て製作されたもの

b) 十分に靭性が高いもの

c) 繰返し荷重を受けない場合

d) Level 1はタイプAに対して内圧が

作用する場合、Level 2 はタイプ A、

あるいはタイプ B クラス 1 に対し

て内圧、外圧、付加荷重が作用す

る場合

部位のタイプは別表

一般に認められた設計・構造規格

によって製作された圧力設備の耐

圧部に適用する。

減肉評価の対象は、次の a)-d)によ

って生じるきず又は損傷とする。

a) 腐食

b) 磨耗

c) エロージョン

d) 検査によって発見されたきず

又は損傷をグラインダなどを

落ちいて滑らかにしたもの

一般に認められた設計・構造規格によって製作された配

管及び圧力容器の局部減肉に適用する。

炭素鋼で、厚さに対する直径の比がおおよそ 10 を超える

配管及び圧力容器に対して妥当性が確認されている。

以下の荷重と部位の組み合わせに対して適用する。

a) 周方向応力、あるいは軸方向応力、あるいはその両方

の応力が生ずる円筒の局部減肉

b) 周方向応力、あるいは軸方向応力を受けるエルボの局

部減肉

c) 周方向応力を受ける容器あるいは球殻

次の a)-e)によって生じるきず又は損傷に適用する。

a) 内面腐食、外面腐食

b) 母材の腐食、溶接部近傍の腐食

c) 相互作用のある複数の腐食

d) エロージョン

e) グラインディング

・左欄において、規格によ

って適用/非適用の分類方

法が異なるものの、ほぼ

同等と解釈できる項目に

ついて下線で示す。

・一般に認められた設計・

構造規格によって製作さ

れたものであること、繰

返し荷重を受けないこ

と、クリープ温度域でな

いこと、亀裂状ではない

こと等が主な条件であ

る。

・JSME 減肉管理技術規格

において、点検(試験)

対象系統範囲について温

度 100℃以上の範囲(常

用温度)としている。

・JSME 減肉管理技術規格

において、減肉の発生す

る可能性がある部位とし

て挙げられる T 管は、

BS7910 では適用範囲外

となる。

非適用範囲 減肉以外のきずの種類には適用しな

い。

クリープ温度域で運転される機器に

は適用しない。(各材料に対するクリ

ープ温度制限は表 1.2 を参照)

クリープ温度域で運転される機器には

適用しない。(各材料に対するクリープ

温度制限は表 1.2 を参照)

次の圧力設備には適用しない。

1. クリープ温度域で運転される

圧力設備

2. 繰返し荷重を受ける圧力設備

で設計時に疲労設計がされる

もの

3. 外圧を受ける圧力設備

4. 残存厚さが公称厚さの 20%未

満、又は 2.5mm 未満となる圧

力設備

5. 先端の鋭いきずが発見された

圧力設備

1. 最小降伏応力が 555MPa を超えるもの、あるいは引

張強度 Uに対する降伏応力Yの比Y/ Uが 0.93 を

超えるもの

2. 過大な外荷重

3. 繰り返し荷重

4. 亀裂状欠陥

5. 局部減肉と亀裂の組み合わせ

6. 機械的損傷と関連する局部減肉

7. 機械的損傷に起因する減肉

8. 溶接部の製造欠陥

9. 環境誘起割れ

10. リガメントが初期厚さの 20%未満の減肉

11. ノズル、ティー等の応力集中が生じる領域の減肉

12. 機械継ぎ手の局部減肉

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-参 3-

表 1.2 クリープ領域判定のための温度制限

出典:API 579-1/ASME FFS-1

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-参 4-

表 1.3 API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 の部位の比較

API 579-1/ASME FFS-1 WES2820 備考

タイプ A 定義 圧力及び付加荷重と要求される厚さに関する設計式が与えられていて、付加荷重が要求厚さに対して支配的

とならない部材

(以下の具体例で分類) ・API 579-1/ASME FFS-1 の

タイプ A と WES2820 のタ

イプ A はほぼ対応すると解

釈できる。

・左欄において、ほぼ同等と

解釈できる項目について下

線で示す。

・JSME 配管管理技術規格に

おいて点検(試験)対象部

位として挙げられている例

に該当するものは、エルボ、

曲管である。

具体例 ・圧力容器の円筒胴、円すい胴

・球形圧力容器、球形タンク

・球形、楕円形、皿形の鏡板

・配管の直管部

・取付け物のないエルボ、曲げ管

・円筒タンクの胴

・圧力容器の円筒胴、円すい胴

・球形圧力容器、球形タンク

・全半球形、半だ円形、皿型の鏡板

・配管の直管部

・取付物がないエルボ、曲げ管

・常圧タンクの側板

タイプ B 定義 クラス 1

タイプ A と同様の形状及び荷重であるが、付加荷重が要求

厚さに対して支配的となる可能性がある部材

クラス 2

圧力やその他の荷重と要求される厚さに関する

設計式が与えられていない部材

(以下の具体例で分類) ・API のタイプ B クラス 2 と

WES2820 のタイプ B はほ

ぼ対応すると解釈できる。

・左欄において、ほぼ同等と

解釈できる項目について下

線で示す。

具体例 クラス 1

・タイプ A に分類されない円筒胴、円すい胴

・タイプ A に分類されない配管

クラス 2

・圧力容器ノズル、タンクノズル接続部

・円すい移行部の補強領域

・フランジ

・ノズル接続部

・円すい胴と円筒胴の接続部

・フランジ部

※BS7910 における部位は上記分類と対応しない。適用可能な部位と荷重の組み合わせは表 1.1 を参照。

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-参 5-

表 1.4 API 579-1/ASME FFS-1 の評価手法の概要

Part 4 Part 5

Level 1 Level 2 Level 1 Level 2

事前に必要となる主な情報

・減肉形状・内圧・許容応力

・減肉形状・内圧・許容応力

・減肉形状・内圧・許容応力

・減肉形状・内圧・許容応力・付加荷重

その他使用する値・式

- ・許容残存強度係数

・フォリアス係数・残存強度係数(簡易)

・フォリアス係数・残存強度係数(詳細)・応力評価

許容判定 ・必要最小厚さ・必要平均厚さ(あるいは圧力)

・必要最小厚さ・必要平均厚さ(あるいは圧力)

・軸方向断面・周方向断面

・軸方向断面・周方向断面

(簡便) (複雑)

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-参 6-

表 1.5 API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 の評価手法の比較 (全面減肉評価 点厚さ評価手法)

API 579-1/ASME FFS-1 Part4 Level 1

(円筒胴、エルボ等の場合)

API 579-1/ASME FFS-1 Part4 Level 2

(円筒胴、エルボ等の場合) WES2820 全面減肉評価 備考

荷重 及

び部 位

のタ イ

内圧、外圧が作用するタイプ A 内圧、外圧、付加荷重が作用するタイプ A、タイプ B タイプ A、タイプ B

なお、WES2820 は外圧を受ける圧力設備に対

しては適用できない。

・各規格の部位のタイプの定義は表

1.3 の通り。

・適用範囲として外圧を無視すると、

API 579-1/ASME FFS-1 Part4

Level 2 の適用範囲が最も広く、続

いて WES2820 全面減肉評価、API

579-1/ASME FFS-1 Part4 Level

1 となる。

・タイプ A についてはいずれも適用

可能である。

評価 の

流れ

1. 減肉特性形状の決定

2. 判定

1. 減肉特性形状の決定

2. 判定

1. 減肉特性形状の決定

2. 判定

・いずれも同等の流れと解釈できる。

変数等 𝑡𝑚𝑚 :計測最小厚さ

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 :将来腐食代

𝑡𝑚𝑖𝑛 :最小必要厚さ(以下の式)

𝑡𝑚𝑖𝑛 = max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 :周方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 :軸方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑙𝑖𝑚 :限界厚さ(以下の式、ただし配管の場合)

𝑡𝑙𝑖𝑚 = max,0.2𝑡nom, 1.3mm(0.05inches)-

𝑡𝑛𝑜𝑚 :公称厚さ

𝑡𝑎𝑚 :計測平均厚さ

𝑃 :設計内圧

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 :周方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高

許容圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃 :健全機器に対する最高許容圧力

𝐶𝑂𝑉 :変動係数

𝑡𝑚𝑚 :計測最小厚さ

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 :将来腐食代

𝑡𝑚𝑖𝑛 :最小必要厚さ(以下の式)

𝑡𝑚𝑖𝑛 = max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 :周方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 :軸方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑙𝑖𝑚 :限界厚さ(以下の式、ただし配管の場合)

𝑡𝑙𝑖𝑚 = max,0.2𝑡nom, 1.3mm(0.05inches)-

𝑡𝑛𝑜𝑚 :公称厚さ

𝑡𝑎𝑚 :計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑐 :周方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑠 :軸方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑃 :設計内圧

RSFa :許容残存強度係数*

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 :周方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容

圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿 :軸方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容

圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃 :健全機器に対する最高許容圧力

*の例については以下の「その他評価式」の欄を参照のこと。

𝑡𝑚𝑚 :計測最小厚さ

𝑡𝐹𝐶𝐴 :将来腐食代

𝑡𝑚𝑖𝑛 :最小必要厚さ

𝑡𝑎𝑚 :計測平均厚さ

𝐶𝑂𝑉 :変動係数

𝑡𝑆𝐷 :標準偏差

-

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-参 7-

𝑆 :分散

𝑁 :測定点数

𝑡𝑖 :i 個目の計測厚さ

*の例については以下の「その他評価式」の欄を参照のこ

と。

𝑁 :測定点数

𝑡𝑖 :i 個目の計測厚さ

減肉 特

性形 状

の決定

点厚さ評価手法の適用においては、変動係数 COV が 10%

以下であることが条件となる。

𝐶𝑂𝑉 =1

𝑡𝑎𝑚.

𝑆

𝑁;1/0.5

𝑡𝑎𝑚 =1

𝑁∑ 𝑡𝑖𝑁𝑖<1

𝑆 = ∑ (𝑡𝑖 − 𝑡𝑎𝑚)2𝑁

𝑖<1

上式で求めた計測平均厚さ𝑡𝑎𝑚と、計測最小厚さ𝑡𝑚𝑚を用い

る。

(Level 1 と同一) 点厚さ評価手法の適用においては、変動係数

COV が 10%以下であることが条件となる。

𝐶𝑂𝑉 =𝑡𝑆𝐷

𝑡𝑎𝑚

𝑡𝑎𝑚 =1

𝑁∑ 𝑡𝑖𝑁𝑖<1

𝑡𝑆𝐷 = √1

𝑁;1∑ (𝑡𝑖 − 𝑡𝑎𝑚)

2𝑁𝑖<1

上式で求めた計測平均厚さ𝑡𝑎𝑚と、計測最小厚

さ𝑡𝑚𝑚を用いる。

・いずれも同等と解釈できる。

判定 以下の最小厚さに関する要求を満足すること。

最小厚さ:𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max,0.5𝑡𝑚𝑖𝑛, 𝑡𝑙𝑖𝑚-

また、以下の平均厚さ、あるいは圧力に関するいずれかの

要求を満足すること。

平均厚さ:𝑡𝑎𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶

ただし、𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 の算出には P を用いる。

圧力:𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 ≥ 𝑀𝐴𝑊𝑃

ただし、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶の算出には(𝑡𝑎𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を用いる。

以下の最小厚さに関する要求を満足すること。

最小厚さ:𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max,0.5𝑡𝑚𝑖𝑛, 𝑡𝑙𝑖𝑚-

また、以下の平均厚さ、あるいは圧力に関するいずれかの要求

を満足すること。

平均厚さ:𝑡𝑎𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

ただし、𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 の算出には P・RSFaを用いる。

圧力:min[𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟

𝐶,𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿]

𝑅𝑆𝐹𝑎≥ 𝑀𝐴𝑊𝑃

ただし、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶の算出には(𝑡𝑎𝑚

𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿の算出

には(𝑡𝑎𝑚𝑐 − 𝑡𝑠𝑙 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を用いる。

以下の最小厚さ及び平均厚さに関する要求の

いずれも満足すること。

最小厚さ:𝑡𝑚𝑚 − 𝑡𝐹𝐶𝐴 ≥ 0.5𝑡𝑚𝑖𝑛

平均厚さ:𝑡𝑎𝑚 − 𝑡𝐹𝐶𝐴 ≥ 0.9𝑡𝑚𝑖𝑛

・API 579-1/ASME FFS-1 Part4

Level 1 と比較すると、Level 2 で

は許容残存強度係数 RSFaが導入さ

れている点が主に異なる。

・WES2820 全面減肉評価では、最高

許容圧力による判定条件がない。

・WES2820 全面減肉評価は、個別の

評価式は若干異なるものの、評価

全般としては Level 1 と同等と解

釈できる。ただし、WES2820 全面

減肉評価の平均厚さの要求式の右

辺において、RSFa に相当する 0.9

が乗じられており、一部 Level 2

相当の考え方が含まれると解釈で

きる。

その 他

評価式

例えば、直管の場合

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 =

𝑃𝐷𝑜

2(𝑆𝐸:𝑃𝑌𝐵31)+𝑀𝐴

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 =

𝑃𝐷𝑜

4(𝑆𝐸:𝑃𝑌𝐵31)+ 𝑡𝑠𝑙 +𝑀𝐴

直管に対する 𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 , 𝑀𝐴𝑊𝑃𝐶については左記と同一

RSFaの推奨値は 0.9 であるが、設計規格に基づいて変更しても

よい。

- -

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-参 8-

𝑀𝐴𝑊𝑃𝐶 =2𝑆𝐸(𝑡;𝑀𝐴)

𝐷𝑜;2𝑌𝐵31(𝑡;𝑀𝐴)

P :設計内圧

Do :外径

S :許容応力

E :溶接継手効率

YB31 :材料と使用温度で決まる係数

MA :mechanical allowance

tsl :内圧以外の機械荷重により発生する軸方向応力

に対する追加厚さ

ただし、損傷の影響を考慮した最高許容圧力 MAWPr を求

める場合は、将来腐食代を考慮する

上式は API 579-1/ASME FFS-1 ANNEX 2C に記載されて

おり、直管の他、エルボ等についても最高許容圧力の式が

与えられている。

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-参 9-

表 1.6 API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 の評価手法の比較 (全面減肉評価 詳細厚さ評価手法)

API 579-1/ASME FFS-1 Part4 Level 1

(円筒胴、エルボ等の場合)

API 579-1/ASME FFS-1 Part4 Level 2

(円筒胴、エルボ等の場合)

WES2820 全面減肉評価 備考

前提等 内圧、外圧が作用するタイプ A 内圧、外圧、付加荷重が作用するタイプ A、タイプ B タイプ A、タイプ B

なお、WES2820 は外圧を受ける圧力設備に対

しては適用できない。

・適用範囲として外圧を無視すると、

API Part4 Level 2 の適用範囲が

最も広く、続いて WES2820 全面

減肉評価、API Part4 Level 1 とな

る。

・タイプ A についてはいずれも適用

可能である。

評価 の

流れ

減肉特性形状の決定

判定

減肉特性形状の決定

判定

減肉特性形状の決定

判定

・いずれも同等の流れと解釈できる。

変数等 𝑡𝑚𝑚 :計測最小厚さ

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 :将来腐食代

𝑡𝑚𝑖𝑛 :最小必要厚さ(以下の式)

𝑡𝑚𝑖𝑛 = max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 :周方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 :軸方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑙𝑖𝑚 :限界厚さ(以下の式、ただし配管の場合)

𝑡𝑙𝑖𝑚 = max,0.2𝑡nom, 1.3mm(0.05inches)-

𝑡𝑛𝑜𝑚 :公称厚さ

𝑡𝑎𝑚 :計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑐 :周方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑠 :軸方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑃 :設計内圧

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 :周方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高

許容圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿 :軸方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高

許容圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃 :健全機器に対する最高許容圧力

𝐶𝑂𝑉 :変動係数

𝑆 :分散

𝑁 :測定点数

𝑡𝑖 :i 個目の計測厚さ

𝑡𝑚𝑚 :計測最小厚さ

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 :将来腐食代

𝑡𝑚𝑖𝑛 :最小必要厚さ(以下の式)

𝑡𝑚𝑖𝑛 = max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 :周方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 :軸方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑙𝑖𝑚 :限界厚さ(以下の式、ただし配管の場合)

𝑡𝑙𝑖𝑚 = max,0.2𝑡nom, 1.3mm(0.05inches)-

𝑡𝑛𝑜𝑚 :公称厚さ

𝑡𝑎𝑚 :計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑐 :周方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑠 :軸方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑃 :設計内圧

RSFa :許容残存強度係数*

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 :周方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容

圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿 :軸方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容

圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃 :健全機器に対する最高許容圧力

*の例については以下の「その他評価式」の欄を参照のこと。

𝑡𝑚𝑚 :計測最小厚さ

𝑡𝐹𝐶𝐴 :将来腐食代

𝑡𝑚𝑖𝑛 :最小必要厚さ

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 :周方向応力に基づく最小必要厚さ

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 :軸方向応力に基づく最小必要厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑐 :周方向計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑠 :軸方向計測平均厚さ

𝐶𝑂𝑉 :変動係数

𝑡𝑆𝐷 :標準偏差

-

Page 89: 平成28年度電気施設保安制度等検討調査 (配管減肉強度評価等調 … · 4.1 配管の減肉に関する強度評価の検討 4.1.1 検討概要 火力発電設備、原子力発電設備、石油化学プラント設備の系統配管の一部において、運転

-参 10-

*の例については以下の「その他評価式」の欄を参照のこ

と。

𝑁 :測定点数

𝑡𝑖 :i 個目の計測厚さ

減肉 特

性形 状

の決定

詳細厚さ評価手法は、変動係数 COV が 10%を超える場合

に適用される。

𝐶𝑂𝑉 =1

𝑡𝑎𝑚.

𝑆

𝑁;1/0.5

𝑡𝑎𝑚 =1

𝑁∑ 𝑡𝑖𝑁𝑖<1

𝑆 = ∑ (𝑡𝑖 − 𝑡𝑎𝑚)2𝑁

𝑖<1

軸方向断面の減肉特性形状より軸方向長さ s を、周方向断

面の減肉周方向断面の減肉特性形状より周方向減肉長さ c

を Figure 4.10(以下の「図表」の欄を参照のこと)に示

すように求める。

減肉平均化長さ L を次式で求める。

𝐿 = 𝑄√𝐷𝑚𝑙𝑡𝑚𝑙

𝑡𝑚𝑙 = 𝑡𝑛𝑜𝑚 − 𝐹𝐶𝐴ml

𝐷𝑚𝑙 = 𝐷 + 2𝐹𝐶𝐴ml (内面減肉の場合)

𝑅𝑡 =𝑡𝑚𝑚;𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙

𝑡𝑚𝑙

𝑄を Table 4.8(以下の「図表」の欄を参照のこと)を用い

て求める。

軸方向断面の減肉特性形状から、L の範囲内にある軸方向

平均測定厚さ𝑡𝑎𝑚𝑠 を、同様に周方向断面の減肉特性形状か

ら周方向平均測定厚さ𝑡𝑎𝑚𝑐 を Figure 4.19(以下の「図表」

の欄を参照のこと)に示すよう求める。

このとき、𝑡𝑚𝑚を含み、𝑡𝑎𝑚𝑠 及び𝑡𝑎𝑚

𝑐 が最も小さくなるよう

(Level 1 と同一) 詳細厚さ評価手法は、変動係数 COV が 10%を

超える場合に適用される。

𝐶𝑂𝑉 =𝑡𝑆𝐷

𝑡𝑎𝑚

𝑡𝑎𝑚 =1

𝑁∑ 𝑡𝑖𝑁𝑖<1

𝑡𝑆𝐷 = √1

𝑁;1∑ (𝑡𝑖 − 𝑡𝑎𝑚)2𝑁𝑖<1

以下の手順で計測最小厚さ𝑡𝑚𝑚、周方向計測平

均厚さ𝑡𝑎𝑚𝑐 、軸方向計測平均厚さ𝑡𝑎𝑚

𝑠 を求める。

軸方向断面の減肉特性形状より軸方向長さ s

を、周方向断面の減肉周方向断面の減肉特性形

状より周方向減肉長さ c を図 7、図 8(以下の

「図表」の欄を参照のこと)に示すように求め

る。

きず又は損傷が存在する部位の減肉平均化長

さ L を次式で求める。

𝐿 = 𝑄√𝐷𝑡𝑐

𝑡𝑐 = 𝑡 − 𝑡𝐹𝐶𝐴

𝑅𝑡 =𝑡𝑚𝑚;𝑡𝐹𝐶𝐴

𝑡𝑐

𝑄 = 𝑚𝑖𝑛 *1.123√.1;𝑅𝑡

1;𝑅𝑡 0.9⁄/2− 1, 50+ 𝑅𝑡 < 0.9

𝑄 = 50 0.9 ≤ 𝑅𝑡 ≤ 1.0

𝐷 :対象部位の内径

𝑡𝑐 :健全部の測定厚さ

軸方向断面の減肉特性形状から、L の範囲内に

ある軸方向平均測定厚さ𝑡𝑎𝑚𝑠 を、同様に周方向

断面の減肉特性形状から周方向平均測定厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑐 を図 10、図 11(以下の「図表」の欄を参

照のこと)に示すよう求める。

・いずれも同等と解釈できる。

Page 90: 平成28年度電気施設保安制度等検討調査 (配管減肉強度評価等調 … · 4.1 配管の減肉に関する強度評価の検討 4.1.1 検討概要 火力発電設備、原子力発電設備、石油化学プラント設備の系統配管の一部において、運転

-参 11-

に設定する。 このとき、𝑡𝑚𝑚を含み、𝑡𝑎𝑚𝑠 及び𝑡𝑎𝑚

𝑐 が最も小さ

くなるように設定する。

判定 以下の最小厚さに関する要求を満足すること。

最小厚さ:𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max,0.5𝑡𝑚𝑖𝑛, 𝑡𝑙𝑖𝑚-

また、以下の軸方向平均厚さ及び周方向平均厚さ、あるい

は圧力に関するいずれかの要求を満足すること。

軸方向平均厚さ:𝑡𝑎𝑚𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐶

周方向平均厚さ:𝑡𝑎𝑚𝑐 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿

ただし、𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 及び𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 の算出には P を用いる。

圧力:𝑚𝑖𝑛,𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 ,𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟

𝐿- ≥ 𝑀𝐴𝑊𝑃

ただし、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶の算出には(𝑡𝑎𝑚

𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿の

算出には(𝑡𝑎𝑚𝑐 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を用いる。

以下の最小厚さに関する要求を満足すること。

最小厚さ:𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max,0.5𝑡𝑚𝑖𝑛, 𝑡𝑙𝑖𝑚-

また、以下の軸方向平均厚さ及び周方向平均厚さ、あるいは圧

力に関するいずれかの要求を満足すること。

軸方向平均厚さ:𝑡𝑎𝑚𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐶

周方向平均厚さ:𝑡𝑎𝑚𝑐 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿

ただし、𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 及び𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 の算出には P・RSFaを用いる。

圧力:min[𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟

𝐶,𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿]

𝑅𝑆𝐹𝑎≥ 𝑀𝐴𝑊𝑃

ただし、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶の算出には(𝑡𝑎𝑚

𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿の算出

には(𝑡𝑎𝑚𝑐 − 𝑡𝑠𝑙 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を用いる。

以下の最小厚さ、軸方向平均厚さ及び周方向平

均厚さに関する要求のいずれも満足すること。

最小厚さ:𝑡𝑚𝑚 − 𝑡𝐹𝐶𝐴 ≥ 0.5𝑡𝑚𝑖𝑛

軸方向平均厚さ:𝑡𝑎𝑚𝑠 − 𝑡𝐹𝐶𝐴 ≥ 0.9𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐶

周方向平均厚さ:𝑡𝑎𝑚𝑐 − 𝑡𝐹𝐶𝐴 ≥ 0.9𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿

・API Part4 Level 1 と比較すると、

Level 2 では許容残存強度係数

RSFa が導入されている点が主に異

なる。

・WES2820 全面減肉評価では、最高

許容圧力による判定条件がない。

・API Part4 Level 1 と WES2820 全

面減肉評価では、個別の評価式は

若干異なるものの、評価全般とし

ては同等と解釈できる。

その 他

評価式

例えば、直管の場合

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 =

𝑃𝐷𝑜

2(𝑆𝐸:𝑃𝑌𝐵31)+𝑀𝐴

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 =

𝑃𝐷𝑜

4(𝑆𝐸:𝑃𝑌𝐵31)+ 𝑡𝑠𝑙 +𝑀𝐴

𝑀𝐴𝑊𝑃𝐶 =2𝑆𝐸(𝑡;𝑀𝐴)

𝐷𝑜;2𝑌𝐵31(𝑡;𝑀𝐴)

𝑀𝐴𝑊𝑃𝐿 =4𝑆𝐸(𝑡;𝑡𝑠𝑙;𝑀𝐴)

𝐷𝑜;4𝑌𝐵31(𝑡;𝑡𝑠𝑙;𝑀𝐴)

P :設計内圧

Do :外径

S :許容応力

E :溶接継手効率

YB31 :材料と使用温度で決まる係数

MA :mechanical allowance

tsl :内圧以外の機械荷重により発生する軸方向応力

に対する追加厚さ

ただし、損傷の影響を考慮した最高許容圧力 MAWPr を求

める場合は、将来腐食代を考慮する。

上式は API 579-1/ASME FFS-1 ANNEX 2C に記載されて

おり、直管の他、エルボ等についても最高許容圧力の式が

直管に対する 𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 , 𝑀𝐴𝑊𝑃𝐶 , 𝑀𝐴𝑊𝑃𝐿については左記と

同一

RSFaの推奨値は 0.9 であるが、設計規格に基づいて変更しても

よい。

- -

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-参 12-

与えられている。

図表

出典:WES2820

-

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-参 13-

出典:API 579-1/ASME FFS-1

Page 93: 平成28年度電気施設保安制度等検討調査 (配管減肉強度評価等調 … · 4.1 配管の減肉に関する強度評価の検討 4.1.1 検討概要 火力発電設備、原子力発電設備、石油化学プラント設備の系統配管の一部において、運転

-参 14-

表 1.7 API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 の評価手法の比較 (局部減肉評価手法)

API 579-1/ASME FFS-1 Part5 Level 1 API 579-1/ASME FFS-1 Part5 Level 2 WES2820 局部減肉評価 備考

評価の

流れ

1. 減肉特性形状の決定

2. 軸方向断面の判定

3. 周方向断面の判定

1. 減肉特性形状の決定

2. 軸方向断面の判定

3. 周方向断面の判定

1. 減肉特性形状の決定

2. 軸方向断面の判定

3. 周方向断面の判定

・いずれも同等の流れと解

釈できる。

減肉特

性形状

の決定

STEP1

Figure 4.10(以下の「図表」の欄を参照のこと)に示すよ

うに減肉特性形状を決定する。

STEP1

(Level 1 と同一)

軸方向断面の特性化

手順 1

軸方向断面の減肉特性形状から、将来腐食代𝑡𝐹𝐶𝐴を差し引

く。

手順 2

減肉特性形状の各点の厚さから将来腐食代𝑡𝐹𝐶𝐴を差し引い

た厚さ 2 点の全組合せについて、軸方向減肉長さ𝑠𝑖と局部減

肉厚さ𝑡𝑙𝑖を図 16(以下の「図表」の欄を参照のこと)に示す

ように求める。

周方向断面の特性化

手順 1

減肉特性形状の厚さのうち、最小値を𝑡𝑚𝑚とする。

周方向断面は図 17(以下の「図表」の欄を参照のこと)に

示すように、周方向減肉長さ𝑐にわたって、一様な厚さ𝑡𝑚𝑚と

なる減肉に特性化する。

手順 2

周方向断面に圧縮荷重が加わる場合には、座屈評価に用いる

許容圧縮応力を求めるための平均測定厚さを求める。

平均測定厚さは、減肉特性形状において減肉が生じている範

囲の厚さの平均とする。

軸方向

断面の

判定

STEP 2

以下の 2 式のいずれかを用いて、減肉領域から離れた位置

の予測厚さ tc を求める。

𝑡𝑐 = 𝑡𝑛𝑜𝑚 − 𝐿𝑂𝑆𝑆 − 𝐹𝐶𝐴

𝑡𝑐 = 𝑡𝑟𝑑 − 𝐹𝐶𝐴

𝑡𝑛𝑜𝑚 :公称厚さ

𝐿𝑂𝑆𝑆 :減肉領域から離れた位置の一様な減肉量

𝐹𝐶𝐴 :減肉領域から離れた位置の将来腐食代

𝑡𝑟𝑑 :減肉領域から離れた位置の一様な厚さ

STEP2

(Level 1 と同一)

局部減肉評価に用いる最高許容圧力 pMAWを求める。

例えば、圧力設備が JIS B 8265 又は JIS B 8267 に基づい

て設計されている場合は以下の式となる。

設計基準が異なる場合は、該当する設計基準に基づく手法を

用いる。

𝑝𝑀𝐴𝑊 =2𝜎𝑎𝜂(𝑡;𝑡𝐹𝐶𝐴)

𝐷:1.2(𝑡;𝑡𝐹𝐶𝐴)

𝜎𝑎 :許容引張応力

𝜂 :溶接継手効率

・API 579-1/ASME FFS-1

Part5 Level 1 の

STEP8 において示され

る円筒胴の評価箇所が、

エルボ等にも適用でき

るか不明である。

・残存強度係数の算出方法

に つ い て 、 API

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-参 15-

STEP3

最小厚さ tmm、軸方向減肉長さ s、周方向減肉長さ c を求め

る。

STEP4

以下の式を用いて、残存厚さ比 Rt、軸方向長さパラメータ

を求める。

𝑅𝑡 =𝑡𝑚𝑚;𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙

𝑡𝑐

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 :将来腐食代

𝜆 =1.285𝑠

√𝐷𝑡𝑐

𝐷 :内径

STEP5

以下の式を用いて、限界減肉寸法基準を確認する。

満足する場合、STEP6 へ

満足しない場合は Level 1 では許容されない。

𝑅𝑡 ≥ 0.20

𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 1.3mm(0.05 inches) (配管の場合)

𝐿𝑚𝑠𝑑 ≥ 1.8√𝐷𝑡𝑐

𝐿𝑚𝑠𝑑 :構造不連続部までの距離

STEP6

局部減肉と判定される場合は STEP7 へ

溝状きず(グルーブ)かつ以下の式を満足する場合は

STEP7 へ

満足しない場合は Level 1 では許容されない。

𝑔𝑟

(1;𝑅𝑡)𝑡𝑐≥ 0.5

𝑔𝑟 :グルーブ形状の先端の半径

STEP3

(Level 1 と同一)

STEP4

(Level 1 と同一)

STEP5

(Level 1 と同一)

満足しない場合は Level 2 では許容されない。

STEP6

局部減肉と判定される場合は STEP7 へ

溝状きずの場合

1)以下の式を満足する場合は STEP7 へ

𝑔𝑟

(1;𝑅𝑡)𝑡𝑐≥ 0.5

𝑔𝑟 :溝状きず形状の先端の半径

2)以下の式を満足する場合、溝状きずは亀裂状きずと判定さ

れ、局部減肉評価は適用できない。

𝑔𝑟

(1;𝑅𝑡)𝑡𝑐< 0.5

𝑡 :健全部の測定厚さ

𝑡𝐹𝐶𝐴 :将来腐食代

𝐷 :内径

以下の式を用いて、残存厚さ比 Rt、シェルパラメータs、を

求める。

𝑅𝑡 =𝑡𝑙𝑖

𝑡𝑐

𝑡𝑙𝑖 :局部減肉厚さ 図 16

𝑡𝑐 :健全部の測定厚さから将来腐食代を引いたもの

(𝑡 − 𝑡𝐹𝐶𝐴)

𝜆𝑠 =1.285𝑠𝑖

√𝐷𝑡𝑐

𝑠𝑖 :軸方向減肉長さ 図 16

579-1/ASME FFS-1

Part5 Level 2 と

WES2820 局部減肉評

価では、詳細な断面形状

から算出するという考

え方がほぼ同等である

と言えるが、具体的な算

出方法は異なる。

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-参 16-

STEP7

STEP2 の厚さを用いて最高許容圧力 MAWP を求める。

STEP8

軸方向断面の判定

円筒胴の場合、Figure5.6(以下の「図表」の欄を参照のこ

と)を適用し、曲線上あるいは曲線より上に位置する場合、

STEP7 の MAWP による運転が許容される。

Figure5.6 の判定を満足しない場合、以下の式により残存強

度係数 RSF を求める。

𝑅𝑆𝐹 =𝑅𝑡

1;1

𝑀𝑡(1;𝑅𝑡)

𝑀𝑡 :フォリアス係数

Mtは Table 5.2(以下の「図表」の欄を参照のこと)により

求められる。

RSF≧RSFaの場合、STEP7 の MAWP による運転が許容さ

れる。

RSF < RSFaの場合、MAWPrによる運転が許容される。

STEP7

(Level 1 と同一)

STEP8

軸方向断面の判定

Figure5.8(以下の「図表」の欄を参照のこと)に従い、以

下の式により各組み合わせの残存強度係数を求める。

𝑅𝑆𝐹𝑖 =1;(

𝐴𝑖

𝐴0𝑖 )

1;1

𝑀𝑡𝑖(

𝐴𝑖

𝐴0𝑖 )

𝐴𝑖 :長さ siにおける減肉面積

𝐴𝑜𝑖 :長さ si、厚さ tcに対応する面積

𝑀𝑡𝑖 :以下の式で、𝜆 = 𝜆𝑖、𝑠 = 𝑠𝑖として求められるフ

ォリアス係数

𝜆 =1.285𝑠

√𝐷𝑡𝑐

𝑅𝑆𝐹𝑖の最小値を𝑅𝑆𝐹とする。

STEP9

RSF≧RSFaの場合、STEP7 の MAWP による運転が許容され

る。

RSF < RSFaの場合、MAWPrによる運転が許容される。

全ての組み合わせの軸方向減肉長さ𝑠𝑖及び局部減肉厚さ𝑡𝑙𝑖を

用いて残存強度係数 RSFを算出し、その最小値を RSF とする。

𝑅𝑆𝐹 =𝑅𝑡

1;1

𝑀𝑡(1;𝑅𝑡)

𝑀𝑡 :フォリアス係数

円筒胴、配管の直管部、エルボ等の場合は次式となる。

𝑀𝑡 =

(

1.001 − 0.014195𝜆𝑠 + 0.2909𝜆𝑠2

−0.09642𝜆𝑠3 + 0.02089𝜆𝑠

4

−0.003054𝜆𝑠5 + 2.957(10;4)𝜆𝑠

6

−1.8462(10;5)𝜆𝑠7 + 7.1553(10;7)𝜆𝑠

8

−1.5631(10;8)𝜆𝑠9 + 1.4656(10;10)𝜆𝑠

10)

以下の式を満足する場合、軸方向断面の判定を満足する。

𝑝 ≤ min 0𝑅𝑆𝐹

0.9𝑝𝑀𝐴𝑊 , 𝑝𝑀𝐴𝑊1

𝑝 :評価に用いる圧力

周方向

断面の

判定

STEP9

円筒胴、エルボ等の場合は、以下の周方向断面の判定を行

う。

STEP9.1

以下の式を満足する場合、周方向の判定が満足される。

以下の式を満足しない場合、STEP9.2 へ

𝑐 ≤ 2𝑠 .𝐸𝐿

𝐸𝑐/

𝐸𝐿 :長手溶接継手効率

𝐸𝑐 :周溶接継手効率

STEP10

円筒胴、エルボ等の場合は、以下の周方向断面の判定を行う。

まず、Level 1 STEP9 の判定を行う。

満足しない場合、より詳細な評価のため、以下の付加荷重の

評価を行う。

タイプ A 部材のうち、圧力容器の円筒胴、円すい胴、配管

の直管部は、以下の周方向断面の判定を行う。

・付加荷重を考慮する場

合、例えばエルボについ

ては減肉部のミーゼス

応力を簡易的に算出す

る手順が規定されてい

ない。

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-参 17-

STEP9.2

STEP8 で求めた MAWPrを用いて、軸方向応力に基づく最

小必要厚さ𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 を求める。

STEP9.3

以下の式を満足する場合、周方向の判定が満足される。

以下の式を満足しない場合、STEP9.4 へ

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 ≤ 𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙

STEP9.4

MAWPrを以下の式を用いて補正することができる。

なお、右辺の MAWPrは STEP8 で求めた MAWPrである。

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟 = 𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟 (𝑡𝑚𝑚;𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 )

𝜎𝑐𝑚 =𝑃𝑠𝑙

𝑅𝑆𝐹∙𝑐𝑜𝑠𝛼.

𝐷

𝐷0;𝐷+ 0.6/

𝜎𝑙𝑚𝐴 =

𝑀𝑠𝐶

𝐸𝑐∙𝑐𝑜𝑠𝛼.

𝐴𝑤

𝐴𝑚;𝐴𝑓∙ 𝑃𝑠𝑙 +

𝐹

𝐴𝑚;𝐴𝑓+

𝑦𝐴

𝐼𝑋(𝐹 ∙ 𝑦 + (𝑦 + 𝑏) ∙ 𝑃𝑠𝑙 ∙ 𝐴𝑤 +𝑀𝑥) +

𝑥𝐴

𝐼𝑌∙ 𝑀𝑦

/

𝜎𝑙𝑚𝐵 =

𝑀𝑠𝐶

𝐸𝑐∙𝑐𝑜𝑠𝛼.

𝐴𝑤

𝐴𝑚;𝐴𝑓∙ 𝑃𝑠𝑙 +

𝐹

𝐴𝑚;𝐴𝑓+

𝑦𝐵

𝐼𝑋(𝐹 ∙ 𝑦 + (𝑦 + 𝑏) ∙ 𝑃𝑠𝑙 ∙ 𝐴𝑤 +𝑀𝑥) +

𝑥𝐵

𝐼𝑌∙ 𝑀𝑦

/

𝜏 =𝑀𝑇

2(𝐴𝑡:𝐴𝑡𝑓)(𝑡𝑚𝑚;𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)+

𝑉

𝐴𝑚;𝐴𝑓

𝑀𝑠𝐶 =

1;(1

𝑀𝑡𝐶).

𝑑

𝑡𝑐/

1;.𝑑

𝑡𝑐/

𝑀𝑡𝐶 =

1.0:0.1401(𝜆𝑐)2:0.002046(𝜆𝑐)

4

1.0:0.09556(𝜆𝑐)2:0.0005024(𝜆𝑐)

4

𝜎𝑒𝐴 = ,(𝜎𝑐𝑚)

2 − (𝜎𝑐𝑚)(𝜎𝑙𝑚𝐴 ) + (𝜎𝑙𝑚

𝐴 )2 + 3𝜏2-0.5

𝜎𝑒𝐵 = ,(𝜎𝑐𝑚)

2 − (𝜎𝑐𝑚)(𝜎𝑙𝑚𝐵 ) + (𝜎𝑙𝑚

𝐵 )2 + 3𝜏2-0.5

以下の式を満足する場合、周方向断面の判定を満足する。

𝜎𝑐 =𝑝

𝑅𝑆𝐹∙𝑐𝑜𝑠𝛼.

𝐷

𝐷0;𝐷+ 0.6/

A点: 𝜎𝑠𝐴 =

𝑀𝑠𝐶

𝜂∙𝑐𝑜𝑠𝛼{

𝐴𝑤𝑝

𝐴𝑚;𝐴𝑓+

𝐹

𝐴𝑚;𝐴𝑓+

𝑦𝐴

𝐼𝑋,𝐹𝑦 + (𝑦 + 𝑏)𝐴𝑤𝑝 +𝑀𝑥-

}

B点: 𝜎𝑠𝐵 =

𝑀𝑠𝐶

𝜂∙𝑐𝑜𝑠𝛼{

𝐴𝑤𝑝

𝐴𝑚;𝐴𝑓+

𝐹

𝐴𝑚;𝐴𝑓+

𝑦𝐵

𝐼𝑋,𝐹𝑦 + (𝑦 + 𝑏)𝐴𝑤𝑝 +𝑀𝑥- +

𝑥𝐵

𝐼𝑌𝑀𝑦

}

𝜏 =𝑀𝑇

2(𝐴𝑡:𝐴𝑡𝑓)(𝑡𝑚𝑚;𝑡𝐹𝐶𝐴)+

𝐹𝑠

𝐴𝑚;𝐴𝑓

𝑀𝑠𝐶 =

1;(1

𝑀𝑡𝐶).

𝑑

𝑡𝑐/

1;.𝑑

𝑡𝑐/

𝑀𝑡𝐶 =

1.0:0.1401(𝜆𝑐)2:0.002046(𝜆𝑐)

4

1.0:0.09556(𝜆𝑐)2:0.0005024(𝜆𝑐)

4

𝜎𝑒𝐴 = √(𝜎𝑐)2 − (𝜎𝑐)(𝜎𝑠𝐴) + (𝜎𝑠𝐴)2 + 3𝜏2

𝜎𝑒𝐵 = √(𝜎𝑐)2 − (𝜎𝑐)(𝜎𝑠𝐵) + (𝜎𝑠𝐵)2 + 3𝜏2

以下の式を満足する場合、周方向断面の判定を満足する。

𝑚𝑎𝑥,𝜎𝑒𝐴, 𝜎𝑒

𝐵- ≤ 𝐻𝑓 .𝜎𝑎

0.9/

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-参 18-

𝑚𝑎𝑥,𝜎𝑒𝐴, 𝜎𝑒

𝐵- ≤ 𝐻𝑓 .𝑆𝑎

𝑅𝑆𝐹𝑎/

𝐴𝑓 :減肉部の断面積

𝐴𝑚 :円筒胴健全部の断面積

𝐴𝑡 :半径が(D+D0)/2 の円の面積から、円弧の長さが

c、半径が(D+D0)/2 の扇形の面積を除いた面積(減肉領域を

除いた断面の平均の面積、ねじり応力の計算に使用)

𝐴𝑡𝑓 :円弧の長さが c、半径が(D+Df)/2、又は(D+Df)/2

の扇形の面積(減肉領域の断面の平均の面積、ねじり応力の

計算に使用)

𝐴𝑤 :圧力を受ける断面積

𝑏 :圧力を受ける断面の図心から x 軸までの距離

𝐷 :内径

𝐷𝑜 :外径

𝑑 :減肉部の深さ

𝐹 :軸方向荷重

𝐻𝑓 :許容応力の係数

𝐼𝑋 :円筒胴の減肉部断面における x 軸に対する断面二

次モーメント

𝐼𝑌 :円筒胴の減肉部断面における y 軸に対する断面二

次モーメント

𝑀𝑇 :トルク

𝑀𝑥 :Myと直交する方向に受ける曲げモーメント

𝑀𝑦 :Mxと直交する方向に受ける曲げモーメント

𝑀𝑠𝐶 :表面欠陥の円周方向範囲に基づくフォリアス係数

𝑀𝑡𝐶 :貫通欠陥の円周方向範囲に基づくフォリアス係数

𝑝𝑠𝑙 :評価に用いる圧力

𝑆𝑎 :設計コードによる許容応力

𝑉 :自重及び熱荷重によるせん断荷重

𝑥𝐴 :A 点までの x 方向距離

𝑥𝐵 :B 点までの x 方向距離

𝑦 :中立軸の位置

𝑦𝐴 :中立軸から A 点までの距離

𝐴𝑓 :減肉部の断面積

𝐴𝑚 :円筒胴健全部の断面積

𝐴𝑡 :半径が(D+D0)/2 の円の面積から、円弧の長さが

c、半径が(D+D0)/2 の扇形の面積を除いた面積

𝐴𝑡𝑓 :円弧の長さが c、半径が(D+Df)/2、又は(D+Df)/2

の扇形の面積

𝐴𝑤 :圧力を受ける断面積

𝑏 :圧力を受ける断面の図心から x 軸までの距離

𝐷 :内径

𝐷𝑜 :外径

𝑑 :減肉部の深さ

𝐹 :円筒胴又は円すい胴が受ける軸方向荷重

𝐹𝑠 :円筒胴又は円すい胴が受けるせん断荷重

𝐻𝑓 :許容応力の係数

𝐼𝑋 :減肉部を除く円筒胴の x 軸に対する断面二次モー

メント

𝐼𝑌 :減肉部を除く円筒胴の y 軸に対する断面二次モー

メント

𝑀𝑇 :円筒胴又は円すい胴が受けるトルク

𝑀𝑥 :円筒胴又は円すい胴に受ける曲げモーメント

𝑀𝑦 :Mxと直交する方向に受ける曲げモーメント

𝑀𝑠𝐶 :表面欠陥の円周方向範囲に基づくフォリアス係数

𝑀𝑡𝐶 :貫通欠陥の円周方向範囲に基づくフォリアス係

数。ただし、減肉の周方向角度が 360 度の場合、𝑀𝑡𝐶 = 1と

する。

𝑝 :評価に用いる圧力

𝑥𝐵 :y 軸から B 点までの距離

𝑦 :中立軸から x 軸までの距離

𝑦𝐴 :中立軸から A 点までの距離

𝑦𝐵 :中立軸から B 点までの距離

𝛼 :円すい胴の頂角の 1/2(円筒胴の場合は 0)

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-参 19-

𝑦𝐵 :中立軸から B 点までの距離

𝜆𝑐 :長さパラメータ 𝜆𝑐 =1.285𝑐

√𝐷𝑡𝑐

𝜎𝑐𝑚 :周方向応力の最大値

𝜎𝑙𝑚𝐴 :A 点での軸方向応力の最大値.

𝜎𝑙𝑚𝐵 :B 点での軸方向応力の最大値

𝜎𝑒𝐴 :A 点でのミーゼス応力

𝜎𝑒𝐵 :B 点でのミーゼス応力

𝜂 :溶接継手効率

𝜆𝑐 :周方向のシェルパラメータ

𝜎𝑐 :周方向応力

𝜎𝑠 :軸方向応力

𝜎𝑠𝐴 :A 点での軸方向応力

𝜎𝑠𝐵 :B 点での軸方向応力

𝜎𝑒𝐴 :A 点でのミーゼス応力

𝜎𝑒𝐵 :B 点でのミーゼス応力

図表

-

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-参 20-

出典:API 579-1/ASME FFS-1

出典:WES2820

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-参 21-

出典:API 579-1/ASME FFS-1

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-参 22-

表 1.8 BS7910 の評価手法

内容 備考

BS7910 による減肉の評価手法は、局所的な塑性崩壊に基づくものである。

以下の式で表される、降伏荷重に対する負荷荷重の比 Lrと、Lrの限界荷重 Lr,maxを比較して、Lr<Lrmaxのとき、局部減肉領域

領域は許容できるとされる。

𝐿𝑟,𝑚𝑎𝑥 =𝜎𝑌:𝜎𝑈

2𝜎𝑌

𝐿𝑟 =𝑓𝑐𝜎𝑟𝑒𝑓

𝜎𝑌

Y :下降伏応力あるいは 0.2%耐力

U :引張強さ

fc :安全係数

ref :参照応力

ここで、安全係数 fcは設計係数の逆数に等しい。例えば、周方向応力に対する設計係数が 0.72 の配管においては、最小安全係

数は 1.39 となる。また、設計係数が 0.67 の圧力容器においては、最小安全係数は 1.5 となる。

円筒における局部減肉評価のための周方向参照応力refは次式で表される。

𝜎𝑟𝑒𝑓 = *1;.

𝑎

𝐵/1

𝑀

1;.𝑎

𝐵/+ 𝜎2

𝑀 = √1 + 0.62.𝑐12

𝑟𝐵/

a :減肉深さ

B :局部減肉領域から離れた点における厚さ

c1 :局部減肉領域の軸方向の長さの半分

r :外半径

2 :周方向応力

また軸方向参照応力ref1を次式に示す。

𝜎𝑟𝑒𝑓1 = [𝜋.1;

𝑎

𝐵/:2

𝑎

𝐵𝑠𝑖𝑛.

𝑐2𝑟/

.1;𝑎

𝐵/(𝜋;.

𝑐2𝑟/.𝑎

𝐵/)] 𝜎1

・円筒に対しては、周方向応力、軸方向応力、両応力の組合せについて適用可能であり、

曲管に対しては、周方向応力又は軸方向応力のいずれかについて適用可能である。曲管

に対して、周方向応力と軸方向応力が重畳する場合については適用範囲外となる。

・BS7910 に規定されている減肉評価は、応力から参照応力の変換と、参照応力を用いた

局所的な塑性崩壊の判定によるものである。また、評価に用いられる減肉深さは、減肉

領域における深さのうち、最も大きいものである。

・API 579-1/ASME FFS-1 及び WES2820 では、減肉領域における複数の計測厚さデータ

から、計測最小厚さ及び計測平均厚さ又は相対的な位置関係を含めた厚さ形状そのもの

が使用されるとともに、考慮できる荷重として内圧又は付加荷重が含まれる。また、複

数の独立した評価手法から構成され、段階的な適用が可能である。これらと比較すると、

BS7910 で考慮できる項目及び範囲は相対的に小さいと言える。なお、必ずしも一致し

ないが、応力の評価という観点で分類すると、BS7910 は API 579-1/ASME FFS-1 Part

5 Level 2、WES2820 の局部減肉評価と対応する。

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-参 23-

c2 :局部減肉領域の周方向の長さの半分

1 :軸方向応力

周方向応力と軸方向応力が重畳する場合の参照応力は次式による。

𝜎𝑟𝑒𝑓 = 𝑚𝑎𝑥(𝜎𝑟𝑒𝑓1, 𝜎𝑟𝑒𝑓2)𝑓𝑜𝑟 𝜎1 ≥ 0 𝑎𝑛𝑑 𝜎2 ≥ 0

𝜎𝑟𝑒𝑓 = 𝜎𝑟𝑒𝑓2 − 𝜎𝑟𝑒𝑓1 𝑓𝑜𝑟 𝜎1 < 0 𝑎𝑛𝑑 𝜎2 > 0

同様に、下の模式図に示すような曲管について、周方向参照応力ref2及び軸方向参照応力ref1はそれぞれ次式で表される。

𝜎𝑟𝑒𝑓2 = 0.85 [1;

𝑟

2𝑅

1;𝑟

𝑅

] *1;.

𝑎

𝐵/1

𝑀

1;.𝑎

𝐵/+ 𝜎2

𝑀 = √1 + 0.62.𝑐12

𝑟𝐵/

R :曲管の中心線に対する曲率半径

2 :周方向応力

r :外半径

𝜎𝑟𝑒𝑓1 = ,𝜎1 + 0.9 0𝑟2

𝐵𝑅1

2

30

4𝑟

𝜋(𝑟4;(𝑟;𝐵)4)1𝑀𝑖- [

𝜋.1;𝑎

𝐵/:2

𝑎

𝐵𝑠𝑖𝑛.

𝑐2𝑟/

.1;𝑎

𝐵/(𝜋;.

𝑐2𝑟/.𝑎

𝐵/)]

出典:BS7910

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-参 24-

1.2 火力発電設備の配管における局部減肉の評価方法の規格文案

本調査では、国内における火力発電設備の配管に対する局部減肉の健全性評価手法の適用

検討を目的として、API 579-1/ASME FFS-1 をベースとした規格文案の作成を通じ、今後

の課題の整理を行った。以下に、規格文案の詳細を示す。なお、本規格文案の検討方針につ

いては報告書 4.1.5(1)を、本規格文案の概要については報告書 4.1.5(2)を参照されたい。

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-参 25-

火力発電設備の配管における局部減肉の評価方法(案) 本文及び解説

表 1.9 基本方針、条件、適用範囲及び評価手順

本文 解説

基本方針 ・本規格文案は、「社団法人日本機械学会規格 発電用火力設備規格火力設備配管減肉管理技術規格(2009 年版)

(JSME S TB1-2009)」(以下、「JSME 減肉管理技術規格」という。)の最小厚さを用いた余寿命評価に基づく

次回定期事業者検査時期を見直す場合に適用されることを想定して、作成されたものである。

・適用範囲について、JSME 減肉管理技術規格との対応するものとした。

・評価手法について、API 579-1 / ASME FFS-1 の Part 4 Level 1、Level 2 及び Part 5 Level 1、Level 2 の全般

を含むものとした。ただし、Part 4 と Part 5 において前提条件等が必ずしも一致しないため、Part 4 及び Part

5 の全てを網羅するものではない。

・WES2820 を参考に、附属書を併せて作成した。附属書には、厚さの試算例含めた。

・本規格文案と JSME 減肉管理技術規格又は WES2820 との主な相違点等について、解説に記載した。

・減肉は火力発電設備の配管において見られる経年劣化事象の 1 つであり、設置者による検査に

付随して、その評価を正しく行う必要がある。国内においては JSME 減肉管理技術規格に規

定されている最小厚さを用いた余寿命評価に基づいて次回定期事業者検査時期が策定されて

いる。

・火力に限定しない局部減肉評価手法を含む既存の民間規格の中から、火力発電設備の配管減肉

への適用を念頭において、JSME 減肉管理技術規格における「適用範囲」の項目を用いた抽出

を行うとともに、含まれる局部減肉評価に関する手法の汎用性等による選定を行い、最終的に

API 579-1 / ASME FFS-1 ベースとして規格文案を作成することとした。なお、API 579-1 /

ASME FFS-1 を踏まえて国内で作成された WES2820 の評価手法は同等の評価手法を含み、

また、WES2820 においては厚さの試算事例等の有用な情報が記載されているため、WES2820

を併せて参考とすることとした。

・API 579-1 / ASME FFS-1 においては、Level 3 として応力解析による評価手法が与えられて

いるが、手順や判定基準の詳細は規定されていないため、Level 3 に相当する部分は本規格文

案のスコープ外とした。また、API 579-1 / ASME FFS-1 においては、減肉評価を満足しない

場合の措置についても与えられているが、JSME 減肉管理技術規格において措置が規定されて

いるため、これに相当する部分も本規格文案のスコープ外とした。

条件 ・JSME 減肉管理技術規格「第 6 節 点検(試験)実施時期の設定方法と評価」において、最小厚さを用いた余寿

命評価に基づく次回定期事業者検査時期を見直す場合に、本評価を適用することができる。

・本評価を満足しない場合、JSME 減肉管理技術規格に基づき、適切な措置を講ずること。

・減肉は対象部位における厚さの減尐と言える。本規格文案では、厚さが減尐している領域があ

る程度限定されている状態を「局部減肉」状態ということとする。一方で、この局部減肉状態

を評価する様々な手法が民間規格で規定されており、減肉領域の厚さに変動が小さい場合に適

用する手法及びそうではない場合に適用する手法の 2 つに大別できる。前者の代表例は、API

579-1 / ASME FFS-1 の Part 4 の Point Thickness Reading、WES2820 の全面減肉評価の点

厚さ評価手法である。また、後者の代表例は、API 579-1 / ASME FFS-1 の Part 4 の Critical

Thickness Profiles、WES2820 の全面減肉評価の詳細厚さ評価手法、WES2820 の局部減肉評

価手法である。いずれの評価手法も、「局部減肉」状態の評価に適用可能である。このように、

減肉状態と評価手法で局部減肉という用語の解釈が異なることに注意する。

・API 579-1 / ASME FFS-1 においては、減肉領域における厚さデータに対して、将来腐食代を

差し引いたものを使用し、継続運転等を判定するための局部減肉評価手法が規定されており、

この将来腐食代は減肉領域で一様とされている。評価時期の厚さを、API 579-1 / ASME FFS-1

のように一様な将来腐食代を見込むか、その他の方法を用いるかは、本規格文案の使用者の判

断に基づく。

・減肉形状、材料、機械的特性、荷重条件等により、脆性破壊等の破損モードを考慮する必要が

ある場合等、局部減肉評価手法による健全性評価が不適切と考えられる場合は、本規格文案を

適用できない。

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-参 26-

・本規格文案に限らず、国内の材料、使用環境等に適し、技術的根拠に基づく手法であれば、そ

の使用を妨げるものではない。

適用範囲 以下の全ての項目を満たす炭素鋼配管に適用できる。

・以下の 2 つの部位のタイプに適用できる。

・タイプ A

定義:圧力及び付加荷重と要求される厚さに関する設計式が与えられていて、付加荷重が要求厚さに対して支

配的とならない部材

具体例:

・配管の直管部

・取付け物がないエルボ、曲げ管

・タイプ B クラス 1

定義:タイプ A と同様の形状及び荷重であるが、付加荷重が要求厚さに対して支配的となる可能性がある部材

具体例:

・タイプ A に分類されない配管

・一般に認められた規格基準によって製作されたもの。

・減肉領域が滑らかであり、局所的な応力集中が無視できるもの。なお、溝状きずには適用しない。

・繰返し荷重を受けないもの。

・温度が 100℃以上であり、かつ、クリープ温度域ではないもの。クリープ温度域は、炭素鋼で引張強さが 414MP

以下の場合は 343 ℃以上、414MPa より大きい場合は 371 ℃以上である。

・JSME 減肉管理技術規格 “第 4 節 適用範囲 火力発電所の主要配管等で、内部を水または湿

り蒸気(二相流)が流れる炭素鋼配管に適用する。”

・API 579-1 / ASME FFS-1 のタイプ A 部位には、圧力容器の円筒胴、円すい胴、球形圧力容器、

球形タンク等についても具体例として示されているが、JSME 減肉管理技術規格では火力発電

設備の配管を対象としていることから、本規格文案では配管に限定して具体例を示す。

・API 579-1 / ASME FFS-1 では、タイプ B クラス 2 部位として、圧力やその他荷重と要求され

る厚さに関する設計式が与えられていない部材が分類されるが、本規格文案が適用される部位

は、火技解釈に基づいて設計されると想定されるため、本規格文案ではそれを除く。

・タイプ A とタイプ B クラス 1 の判別の基準が、付加荷重が要求厚さに対して支配的となるか

否かであるが、API 579-1 / ASME FFS-1 ではこの判別について具体的に規定されていない。

・API 579-1 / ASME FFS-1 Part 5 では溝状きずを対象としているが、Part 4 では対象としてい

ないため、本規格文案ではそれを除く。

・JSME 減肉管理技術規格 “4.3 点検(試験)対象系統範囲 水、蒸気(二相流)ともに発電ユ

ニット定格負荷時の運転状態を範囲選定の基本とするが、個々のユニット運用状況に合せて範

囲の追加を行うこと。 (1)主要水系(復水、主給水):温度 100℃以上の範囲(常用温度) (2)

主要二相流(給水加熱器ドレン系統):温度 100℃以上の範囲(常用温度) (3)その他減肉の

恐れがある範囲”

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-参 27-

評価手順 ・評価手法について、レベル a、レベル a’、レベル b、レベル b’の計 4 つを有する。評価手法の詳細は後述する。

部位のタイプによって適用できる評価手法を下表に“○”で示す。各部位のタイプに対して、表中の上から適用し、

満足しない場合はそれ以降の行の評価手法を段階的に適用することが推奨されるが、個別に適用することを妨げ

るものではない。

タイプ A タイプ B クラス 1

レベル a ○ -

レベル a’ ○ ○

レベル b ○ -

レベル b’ ○ ○

・レベル a、あるいはレベル a を適用する場合、変動係数 COV を評価する必要がある。

𝐶𝑂𝑉 =1

𝑡𝑎𝑚.

𝑆

𝑁;1/0.5

𝑡𝑎𝑚 =1

𝑁∑ 𝑡𝑖𝑁𝑖<1

𝑆 = ∑ (𝑡𝑖 − 𝑡𝑎𝑚)2𝑁

𝑖<1

𝐶𝑂𝑉 :変動係数

𝑡𝑎𝑚 :計測平均厚さ

𝑆 :分散

𝑁 :測定点数

𝑡𝑖 :i 個目の計測厚さ

COV が 10%以下の場合は点厚さ評価手法、COV が 10%より大きい場合は詳細厚さ評価手法を用いる。

・部位のタイプ、点厚さ/詳細厚さに対応する評価手法と、その参照先を下表に示す。

タイプ A タイプ B クラス 1

レベル a 点厚さ:表 1.10 詳細厚さ:表 1.11 -

レベル a’ 点厚さ:表 1.10 詳細厚さ:表 1.11 点厚さ:表 1.10 詳細厚さ:表 1.11

レベル b 表 1.12 -

レベル b’ 表 1.12

・レベル a 及びレベル a’は、API 579-1 / ASME FFS-1 Part 4 の Level 1 及び Level 2 に対応す

る。また、レベル b 及びレベル b’は、API 579-1 / ASME FFS-1 Part 5 の Level 1 及び Level 2

に対応する。

・部位のタイプと適用できる評価手法の対応については、API 579-1 / ASME FFS-1 に基づく。

・API 579-1 / ASME FFS-1 では、一般的に Part 4 と最初に適用することが推奨されている。ま

た、API 579-1 / ASME FFS-1 Part 4 では、Level 1 を満足しない場合に Level 2 を適用する

ことを認めている。Part 5 でも同様である。そのため、本規格文案においても、段階的な適用

を可能とした。また、API 579-1 / ASME FFS-1 の各評価手法は独立した評価手法と考えられ

るため、段階的な適用だけではなく、個別の適用も可能とした。

・将来腐食代が減肉領域に渡って一様と仮定できる場合は、左記の方法で変動係数を評価するこ

とができる。一方で、一様でない場合は、評価時期における予測厚さを用いて変動係数を評価

すること。

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-参 28-

表 1.10 レベル a 評価、レベル a’評価(点厚さ評価手法)

本文 解説

レベル a レベル a’

評価の流れ 3. 減肉特性形状の決定

4. 判定

3. 減肉特性形状の決定

4. 判定

-

変数等 𝑡𝑚𝑚 :計測最小厚さ

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 :将来腐食代

𝑡𝑚𝑖𝑛 :最小必要厚さ(以下の式)

𝑡𝑚𝑖𝑛 = max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 :周方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 :軸方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑙𝑖𝑚 :限界厚さ(以下の式、ただし配管の場合)

𝑡𝑙𝑖𝑚 = max,0.2𝑡nom, 1.3mm(0.05inches)-

𝑡𝑛𝑜𝑚 :公称厚さ

𝑡𝑎𝑚 :計測平均厚さ

𝑃 :設計内圧

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 :周方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃 :最高許容圧力

𝐶𝑂𝑉 :変動係数

𝑆 :分散

𝑁 :測定点数

𝑡𝑖 :i 個目の計測厚さ

*の例については以下の「その他評価式」の欄を参照のこと。

𝑡𝑚𝑚 :計測最小厚さ

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 :将来腐食代

𝑡𝑚𝑖𝑛 :最小必要厚さ(以下の式)

𝑡𝑚𝑖𝑛 = max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 :周方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 :軸方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑙𝑖𝑚 :限界厚さ(以下の式、ただし配管の場合)

𝑡𝑙𝑖𝑚 = max,0.2𝑡nom, 1.3mm(0.05inches)-

𝑡𝑛𝑜𝑚 :公称厚さ

𝑡𝑎𝑚 :計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑐 :周方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑠 :軸方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑃 :設計内圧

RSFa :許容残存強度係数*

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 :周方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿 :軸方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃 :最高許容圧力

*の例については以下の「その他評価式」の欄を参照のこと

・限界厚さ 𝑡𝑙𝑖𝑚 に関連して、

WES2820 の解説に、“公称厚さ

の 20%の制限は、WRC Bulletin

465 において、公称厚さの 20%

以上の残存厚さがある条件で、

塑性崩壊荷重の評価式の妥当性

が確認されていることによる”

との記載がある。WES2820 で

は適用範囲でこれを除外してい

る の に 対 し て 、 API

579-1/ASME FFS-1 では評価

内の判定でこの考え方を適用し

ている。

判定 以下の最小厚さに関する要求を満足すること。

最小厚さ:𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max,0.5𝑡𝑚𝑖𝑛, 𝑡𝑙𝑖𝑚-

また、以下の平均厚さ、あるいは圧力に関するいずれかの要求を満足すること。

平均厚さ:𝑡𝑎𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶

ただし、𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 の算出には P を用いる。

以下の最小厚さに関する要求を満足すること。

最小厚さ:𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max,0.5𝑡𝑚𝑖𝑛, 𝑡𝑙𝑖𝑚-

また、以下の平均厚さ、あるいは圧力に関するいずれかの要求を満足すること。

平均厚さ:𝑡𝑎𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

ただし、𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 の算出には P・RSFaを用いる。

・レベル a と比較すると、レベル

a’では許容残存強度係数RSFaが

導入されている点が主に異な

る。

・なお、WES2820 全面減肉評価

では、最高許容圧力による判定

条件がない。

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-参 29-

圧力:𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 ≥ 𝑀𝐴𝑊𝑃

ただし、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶の算出には(𝑡𝑎𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を用いる。

圧力:min[𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟

𝐶,𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿]

𝑅𝑆𝐹𝑎≥ 𝑀𝐴𝑊𝑃

ただし、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶の算出には(𝑡𝑎𝑚

𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿の算出には(𝑡𝑎𝑚

𝑐 − 𝑡𝑠𝑙 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を

用いる。

・WES2820 全面減肉評価は、個

別の評価式は若干異なるもの

の、評価全般としてはレベル a

と同等と解釈できる。ただし、

WES2820 全面減肉評価の平均

厚さの要求式の右辺において、

RSFaに相当する 0.9 が乗じられ

ており、一部レベル a’相当の考

え方が含まれると解釈できる。

その他評価式 例えば、直管の場合

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 =

𝑃𝐷𝑜

2(𝑆𝐸:𝑃𝑌𝐵31)+𝑀𝐴

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 =

𝑃𝐷𝑜

4(𝑆𝐸:𝑃𝑌𝐵31)+ 𝑡𝑠𝑙 +𝑀𝐴

𝑀𝐴𝑊𝑃𝐶 =2𝑆𝐸(𝑡;𝑀𝐴)

𝐷𝑜;2𝑌𝐵31(𝑡;𝑀𝐴)

P :設計内圧

Do :外径

S :許容応力

E :溶接継手効率

YB31 :材料と使用温度で決まる係数

MA :mechanical allowance

tsl :内圧以外の機械荷重により発生する軸方向応力に対する追加厚さ

ただし、損傷の影響を考慮した最高許容圧力 MAWPr を求める場合は、将来腐

食代を考慮する。

上式は API 579-1/ASME FFS-1 ANNEX 2C に記載されており、直管のほか、

エルボ等についても同様の式が与えられている。

直管に対する 𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 , 𝑀𝐴𝑊𝑃𝐶については左記と同一

RSFaの推奨値は 0.9 であるが、設計規格に基づいて変更してもよい。

・ 左 記 に 示 し た 式 は API

579-1/ASME FFS-1 ANNEX

2C の例であるが、実際に評価を

行う場合は対象配管の設計コー

ドと対応した式を使用する。

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-参 30-

表 1.11 レベル a 評価、レベル a’評価(詳細厚さ評価手法)

本文 解説

レベル a レベル a’

評価の流れ 減肉特性形状の決定

判定

減肉特性形状の決定

判定

-

変数等 𝑡𝑚𝑚 :計測最小厚さ

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 :将来腐食代

𝑡𝑚𝑖𝑛 :最小必要厚さ(以下の式)

𝑡𝑚𝑖𝑛 = max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 :周方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 :軸方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑙𝑖𝑚 :限界厚さ(以下の式、ただし配管の場合)

𝑡𝑙𝑖𝑚 = max,0.2𝑡nom, 1.3mm(0.05inches)-

𝑡𝑛𝑜𝑚 :公称厚さ

𝑡𝑎𝑚 :計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑐 :周方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑠 :軸方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑃 :設計内圧

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 :周方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿 :軸方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃 :健全機器に対する最高許容圧力

𝐶𝑂𝑉 :変動係数

𝑆 :分散

𝑁 :測定点数

𝑡𝑖 :i 個目の計測厚さ

𝐷 :内径

*の例については以下の「その他評価式」の欄を参照のこと。

𝑡𝑚𝑚 :計測最小厚さ

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 :将来腐食代

𝑡𝑚𝑖𝑛 :最小必要厚さ(以下の式)

𝑡𝑚𝑖𝑛 = max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 :周方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 :軸方向応力に基づく最小必要厚さ*

𝑡𝑙𝑖𝑚 :限界厚さ(以下の式、ただし配管の場合)

𝑡𝑙𝑖𝑚 = max,0.2𝑡nom, 1.3mm(0.05inches)-

𝑡𝑛𝑜𝑚 :公称厚さ

𝑡𝑎𝑚 :計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑐 :周方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑡𝑎𝑚𝑠 :軸方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ

𝑃 :設計内圧

RSFa :許容残存強度係数*

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 :周方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿 :軸方向応力に基づく損傷の影響を考慮した最高許容圧力*

𝑀𝐴𝑊𝑃 :健全機器に対する最高許容圧力

*の例については以下の「その他評価式」の欄を参照のこと。

-

減肉特性形状の

決定

軸方向断面の減肉特性形状より軸方向長さ s を、周方向断面の減肉周方向断

面の減肉特性形状より周方向減肉長さ c を Figure 4.10(以下の「図表」の欄

を参照のこと)に示すように求める。

減肉平均化長さ L を次式で求める。

(レベル a と同一) -

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-参 31-

𝐿 = 𝑄√𝐷𝑚𝑙𝑡𝑚𝑙

𝑡𝑚𝑙 = 𝑡𝑛𝑜𝑚 − 𝐹𝐶𝐴ml

𝐷𝑚𝑙 = 𝐷 + 2𝐹𝐶𝐴ml (内面減肉の場合)

𝑅𝑡 =𝑡𝑚𝑚;𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙

𝑡𝑚𝑙

𝑄を Table 4.8(以下の「図表」の欄を参照のこと)を用いて求める。

軸方向断面の減肉特性形状から、L の範囲内にある軸方向平均測定厚さ𝑡𝑎𝑚𝑠

を、同様に周方向断面の減肉特性形状から周方向平均測定厚さ𝑡𝑎𝑚𝑐 を Figure

4.19(以下の「図表」の欄を参照のこと)に示すよう求める。

このとき、𝑡𝑚𝑚を含み、𝑡𝑎𝑚𝑠 及び𝑡𝑎𝑚

𝑐 が最も小さくなるように設定する。

判定 以下の最小厚さに関する要求を満足すること。

最小厚さ:𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max,0.5𝑡𝑚𝑖𝑛, 𝑡𝑙𝑖𝑚-

また、以下の軸方向平均厚さ及び周方向平均厚さ又は圧力に関するいずれか

の要求を満足すること。

軸方向平均厚さ:𝑡𝑎𝑚𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐶

周方向平均厚さ:𝑡𝑎𝑚𝑐 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿

ただし、𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 及び𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 の算出には P を用いる。

圧力:𝑚𝑖𝑛,𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 ,𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟

𝐿- ≥ 𝑀𝐴𝑊𝑃

ただし、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 の算出には (𝑡𝑎𝑚

𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿 の算出には

(𝑡𝑎𝑚𝑐 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を用いる。

以下の最小厚さに関する要求を満足すること。

最小厚さ:𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max,0.5𝑡𝑚𝑖𝑛, 𝑡𝑙𝑖𝑚-

また、以下の軸方向平均厚さ及び周方向平均厚さ又は圧力に関するいずれかの要求を満

足すること。

軸方向平均厚さ:𝑡𝑎𝑚𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐶

周方向平均厚さ:𝑡𝑎𝑚𝑐 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿

ただし、𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 及び𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 の算出には P・RSFaを用いる。

圧力:min[𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟

𝐶,𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿]

𝑅𝑆𝐹𝑎≥ 𝑀𝐴𝑊𝑃

ただし、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶の算出には(𝑡𝑎𝑚

𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を、𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐿の算出には(𝑡𝑎𝑚

𝑐 − 𝑡𝑠𝑙 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)を

用いる。

・レベル a と比較すると、レベル a’

では許容残存強度係数 RSFa が導入

されている点が主に異なる。

・WES2820 全面減肉評価は、レベル

a と類似しているが、許容圧力に関

する要求はない。

その他評価式 例えば、直管の場合

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 =

𝑃𝐷𝑜

2(𝑆𝐸:𝑃𝑌𝐵31)+𝑀𝐴

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 =

𝑃𝐷𝑜

4(𝑆𝐸:𝑃𝑌𝐵31)+ 𝑡𝑠𝑙 +𝑀𝐴

𝑀𝐴𝑊𝑃𝐶 =2𝑆𝐸(𝑡;𝑀𝐴)

𝐷𝑜;2𝑌𝐵31(𝑡;𝑀𝐴)

𝑀𝐴𝑊𝑃𝐿 =4𝑆𝐸(𝑡;𝑡𝑠𝑙;𝑀𝐴)

𝐷𝑜;4𝑌𝐵31(𝑡;𝑡𝑠𝑙;𝑀𝐴)

P :設計内圧

Do :外径

S :許容応力

直管に対する 𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 , 𝑀𝐴𝑊𝑃𝐶, 𝑀𝐴𝑊𝑃𝐿については左記と同一

RSFaの推奨値は 0.9 であるが、設計規格に基づいて変更してもよい。

・ 左 記 に 示 し た 式 は API

579-1/ASME FFS-1 ANNEX 2C

の例であるが、実際に評価を行う場

合は対象配管の設計コードと対応

した式を使用する。

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-参 32-

E :溶接継手効率

YB31 :材料と使用温度で決まる係数

MA :mechanical allowance

tsl :内圧以外の機械荷重により発生する軸方向応力に対する追加厚さ

ただし、損傷の影響を考慮した最高許容圧力 MAWPr を求める場合は、将来腐

食代を考慮する。

上式は API 579-1/ASME FFS-1 ANNEX 2C に記載されており、直管のほか、

エルボ等についても同様の式が与えられている。

図表

- -

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-参 33-

出典:API 579-1/ASME FFS-1

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-参 34-

表 1.12 レベル b 評価、レベル b’評価

本文 解説

レベル b レベル b’

評価の

流れ

1. 減肉特性形状の決定

2. 軸方向断面の判定

3. 周方向断面の判定

1. 減肉特性形状の決定

2. 軸方向断面の判定

3. 周方向断面の判定

-

減肉特

性形状

の決定

STEP1

Figure 4.10(以下の「図表」の欄を参照のこと)に示すように減肉特性形状を決定す

る。

STEP1

(レベル b と同一)

-

軸方向

断面の

判定

STEP 2

以下の 2 式のいずれかを用いて、減肉領域から離れた位置の予測厚さ tc を求める。

𝑡𝑐 = 𝑡𝑛𝑜𝑚 − 𝐿𝑂𝑆𝑆 − 𝐹𝐶𝐴

𝑡𝑐 = 𝑡𝑟𝑑 − 𝐹𝐶𝐴

𝑡𝑛𝑜𝑚 :公称厚さ

𝐿𝑂𝑆𝑆 :減肉領域から離れた位置の一様な減肉量

𝐹𝐶𝐴 :減肉領域から離れた位置の将来腐食代

𝑡𝑟𝑑 :減肉領域から離れた位置の一様な厚さ

STEP3

最小厚さ tmm、軸方向減肉長さ s、周方向減肉長さ c を求める。

STEP4

以下の式を用いて、残存厚さ比 Rt、軸方向長さパラメータを求める。

𝑅𝑡 =𝑡𝑚𝑚;𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙

𝑡𝑐

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 :将来腐食代

𝜆 =1.285𝑠

√𝐷𝑡𝑐

𝐷 :内径

STEP5

以下の式を用いて、限界減肉寸法基準を確認する。

満足する場合、STEP6 へ

満足しない場合は Level 1 では許容されない。

𝑅𝑡 ≥ 0.20

𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 1.3mm(0.05 inches) (配管の場合)

STEP2

(レベル b と同一)

STEP3

(レベル b と同一)

STEP4

(レベル b と同一)

STEP5

(レベル b と同一)

満足しない場合はレベル b’では許容されない。

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-参 35-

𝐿𝑚𝑠𝑑 ≥ 1.8√𝐷𝑡𝑐

𝐿𝑚𝑠𝑑 :構造不連続部までの距離

STEP6

局部減肉と判定される場合は STEP7 へ

溝状きず(グルーブ)かつ以下の式を満足する場合は STEP7 へ

満足しない場合は Level1 では許容されない。

𝑔𝑟

(1;𝑅𝑡)𝑡𝑐≥ 0.5

𝑔𝑟 :グルーブ形状の先端の半径

STEP7

STEP2 の厚さを用いて最高許容圧力 MAWP を求める。

STEP8

軸方向断面の判定

円筒胴の場合、Figure5.6(以下の「図表」の欄を参照のこと)を適用し、曲線上あ

るいは曲線より上に位置する場合、STEP7 の MAWP による運転が許容される。

Figure5.6 の判定を満足しない場合、以下の式により残存強度係数 RSF を求める。

𝑅𝑆𝐹 =𝑅𝑡

1;1

𝑀𝑡(1;𝑅𝑡)

𝑀𝑡 :フォリアス係数

Mtは Table 5.2(以下の「図表」の欄を参照のこと)により求められる。

RSF≧RSFaの場合、STEP7 の MAWP による運転が許容される。

RSF < RSFaの場合、以下の式による低減した許容最高応力 MAWPrによる運転が許容

される。

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟 = 𝑀𝐴𝑊𝑃𝑅𝑆𝐹

𝑅𝑆𝐹𝑎

STEP6

局部減肉と判定される場合は STEP7 へ

溝状きずの場合

1)以下の式を満足する場合は STEP7 へ

𝑔𝑟

(1;𝑅𝑡)𝑡𝑐≥ 0.5

𝑔𝑟 :溝状きず形状の先端の半径

2)以下の式を満足する場合、溝状きずは亀裂状きずと判定され、局部減肉評価は適用でき

ない。

𝑔𝑟

(1;𝑅𝑡)𝑡𝑐< 0.5

STEP7

(レベル b と同一)

STEP8

軸方向断面の判定

Figure5.8(以下の「図表」の欄を参照のこと)に従い、以下の式により各組み合わせの

残存強度係数を求める。

𝑅𝑆𝐹𝑖 =1;(

𝐴𝑖

𝐴0𝑖 )

1;1

𝑀𝑡𝑖(

𝐴𝑖

𝐴0𝑖 )

𝐴𝑖 :長さ siにおける減肉面積

𝐴𝑜𝑖 :長さ si、厚さ tcに対応する面積

𝑀𝑡𝑖 :以下の式で、𝜆 = 𝜆𝑖、𝑠 = 𝑠𝑖として求められるフォリアス係数

𝜆 =1.285𝑠

√𝐷𝑡𝑐

𝑅𝑆𝐹𝑖の最小値を𝑅𝑆𝐹とする。

STEP9

RSF≧RSFaの場合、STEP7 の MAWP による運転が許容される。

RSF < RSFaの場合、MAWPrによる運転が許容される。

・API 579-1 / ASME FFS-1 Part 5

では、溝状きずを対象としている

が、本規格文案では対象としない

ため、網掛けで示す。

・残存強度係数は、健全な機器の塑

性崩壊荷重に対する減肉を有する

機器の塑性崩壊の比である。

・残存強度係数の算出方法について

は、レベル b では最小厚さに基づ

く残存厚さを用いるのに対して、

レベル b’では減肉部断面を詳細に

領域分割するため、レベル b’の方

が精度は高いと言える。また、レ

ベル b’と WES2820 局部減肉評価

において、減肉部断面を詳細に領

域分割するという考え方は同等で

あるが、具体的な算出方法は厳密

には異なる。

・WES2820 の解説によると、規格ご

とに様々な残存強度係数評価式が

提 案 さ れ て い る が 、 API

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-参 36-

579-1/ASME FFS-1 の評価式の根

拠となった WRC Bulletin 505 や

国内の検討事例等を引用してい

る。

・WES2820 の解説に、“エルボ、曲

げ管に配管の直管部と同様の残存

強度係数を適用する妥当性につい

ては、WRC Bulletin 465 の 4.6.2.3

で確認されている。”との記載があ

る。

・レベル b の STEP8 においては示さ

れると Rt は円筒胴に対するもの

であり、エルボ等の他の部位に適

用する場合は確認が必要である。

周方向

断面の

判定

STEP9

円筒胴、エルボ等の場合は、以下の周方向断面の判定を行う。

STEP9.1

以下の式を満足する場合、周方向の判定が満足される。

以下の式を満足しない場合、STEP9.2 へ

𝑐 ≤ 2𝑠 .𝐸𝐿

𝐸𝑐/

𝐸𝐿 :長手溶接継手効率

𝐸𝑐 :周溶接継手効率

STEP9.2

STEP8 で求めた MAWPrを用いて、軸方向応力に基づく最小必要厚さ𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 を求める。

STEP9.3

以下の式を満足する場合、周方向の判定が満足される。

以下の式を満足しない場合、STEP9.4 へ

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 ≤ 𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙

STEP9.4

MAWPrを以下の式を用いて補正することができる。

なお、右辺の MAWPrは STEP8 で求めた MAWPrである。

STEP10

円筒胴、エルボ等の場合は、以下の周方向断面の判定を行う。

まず、レベル b STEP9 の判定を行う。

満足しない場合、より詳細な評価のため、以下の付加荷重の評価を行う。

𝜎𝑐𝑚 =𝑃𝑠𝑙

𝑅𝑆𝐹.

𝐷

𝐷0;𝐷+ 0.6/

𝜎𝑙𝑚𝐴 =

𝑀𝑠𝐶

𝐸𝑐.

𝐴𝑤

𝐴𝑚;𝐴𝑓∙ 𝑃𝑠𝑙 +

𝐹

𝐴𝑚;𝐴𝑓+

𝑦𝐴

𝐼𝑋(𝐹 ∙ 𝑦 + (𝑦 + 𝑏) ∙ 𝑃𝑠𝑙 ∙ 𝐴𝑤 +𝑀𝑥) +

𝑥𝐴

𝐼𝑌∙ 𝑀𝑦

/

𝜎𝑙𝑚𝐵 =

𝑀𝑠𝐶

𝐸𝑐.

𝐴𝑤

𝐴𝑚;𝐴𝑓∙ 𝑃𝑠𝑙 +

𝐹

𝐴𝑚;𝐴𝑓+

𝑦𝐵

𝐼𝑋(𝐹 ∙ 𝑦 + (𝑦 + 𝑏) ∙ 𝑃𝑠𝑙 ∙ 𝐴𝑤 +𝑀𝑥) +

𝑥𝐵

𝐼𝑌∙ 𝑀𝑦

/

𝜏 =𝑀𝑇

2(𝐴𝑡:𝐴𝑡𝑓)(𝑡𝑚𝑚;𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙)+

𝑉

𝐴𝑚;𝐴𝑓

𝑀𝑠𝐶 =

1;(1

𝑀𝑡𝐶).

𝑑

𝑡𝑐/

1;.𝑑

𝑡𝑐/

𝑀𝑡𝐶 =

1.0:0.1401(𝜆𝑐)2:0.002046(𝜆𝑐)

4

1.0:0.09556(𝜆𝑐)2:0.0005024(𝜆𝑐)

4

・応力評価に必要となるパラメータ

の算出方法は、API 579-1/ASME

FFS-1 には規定されていない。一

方、WES2820 には“付属書 A(規

定)サプリメンタル荷重を受ける

円筒胴の断面特性計算手順”が与え

られている。

・付加荷重を考慮する場合の減肉部

のミーゼス応力を簡易的に算出す

る手順について、エルボ等の他の

部位に適用する場合は確認が必要

である。

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-参 37-

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟 = 𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟 (𝑡𝑚𝑚;𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙

𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 )

𝜎𝑒𝐴 = ,(𝜎𝑐𝑚)

2 − (𝜎𝑐𝑚)(𝜎𝑙𝑚𝐴 ) + (𝜎𝑙𝑚

𝐴 )2 + 3𝜏2-0.5

𝜎𝑒𝐵 = ,(𝜎𝑐𝑚)

2 − (𝜎𝑐𝑚)(𝜎𝑙𝑚𝐵 ) + (𝜎𝑙𝑚

𝐵 )2 + 3𝜏2-0.5

以下の式を満足する場合、周方向断面の判定を満足する。

𝑚𝑎𝑥,𝜎𝑒𝐴, 𝜎𝑒

𝐵- ≤ 𝐻𝑓 .𝑆𝑎

𝑅𝑆𝐹𝑎/

𝐴𝑓 :減肉部の断面積

𝐴𝑚 :円筒胴健全部の断面積

𝐴𝑡 :半径が(D+D0)/2 の円の面積から、円弧の長さが c、半径が(D+D0)/2 の扇形

の面積を除いた面積(減肉領域を除いた断面の平均の面積、ねじり応力の計算に使用)

𝐴𝑡𝑓 :円弧の長さが c、半径が(D+Df)/2、又は(D+Df)/2 の扇形の面積(減肉領域の

断面の平均の面積、ねじり応力の計算に使用)

𝐴𝑤 :圧力を受ける断面積

𝑏 :圧力を受ける断面の図心から x 軸までの距離

𝐷 :内径

𝐷𝑜 :外径

𝑑 :減肉部の深さ

𝐹 :軸方向荷重

𝐻𝑓 :許容応力の係数(自重の場合は 1.0、自重及び熱荷重の場合は 3.0)

𝐼𝑋 :円筒胴の減肉部断面における x 軸に対する断面二次モーメント

𝐼𝑌 :円筒胴の減肉部断面における y 軸に対する断面二次モーメント

𝑀𝑇 :トルク

𝑀𝑥 :Myと直交する方向に受ける曲げモーメント

𝑀𝑦 :Mxと直交する方向に受ける曲げモーメント

𝑀𝑠𝐶 :表面欠陥の円周方向範囲に基づくフォリアス係数

𝑀𝑡𝐶 :貫通欠陥の円周方向範囲に基づくフォリアス係数

𝑝𝑠𝑙 :評価に用いる圧力

𝑆𝑎 :設計コードによる許容応力

𝑉 :自重及び熱荷重によるせん断荷重

𝑥𝐴 :A 点までの x 方向距離

𝑥𝐵 :B 点までの x 方向距離

𝑦 :中立軸の位置

𝑦𝐴 :中立軸から A 点までの距離

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-参 38-

𝑦𝐵 :中立軸から B 点までの距離

𝜆𝑐 :長さパラメータ 𝜆𝑐 =1.285𝑐

√𝐷𝑡𝑐

𝜎𝑐𝑚 :周方向応力の最大値

𝜎𝑙𝑚𝐴 :A 点での軸方向応力の最大値.

𝜎𝑙𝑚𝐵 :B 点での軸方向応力の最大値

𝜎𝑒𝐴 :A 点でのミーゼス応力

𝜎𝑒𝐵 :B 点でのミーゼス応力

図表

-

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-参 39-

出典:API 579-1/ASME FFS-1

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-参 40-

出典:API 579-1/ASME FFS-1

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-参 41-

附属書 A 付加荷重を受ける内面減肉を有する円筒胴の断面特性計算手順

この附属書は、WES2820 の“附属書 A(規定)サプリメンタル荷重を受ける円筒胴の断

面特性計算手順”のうち、内面減肉に対する断面特性の計算式をまとめたものである。

表 1.13 記号とその意味

記号 単位 記号の意味

𝐴a mm2 円筒胴健全部の内面積

𝐴f mm2 減肉部の断面積

𝐴m 円筒胴健全部の断面積

𝐴w mm2 圧力を受ける断面積

𝐴t mm2 半径が(D+Do)/2の円の面積から、円弧の長さが c、半

径が(D+Do)/2の扇形の面積を除いた面積

𝐴tf mm2 円弧の長さが c、半径が(D+Df)/2、又は(Do+Df)/2の扇

形の面積

b mm 圧力を受ける断面の図心から x軸までの距離

d mm 減肉の深さ

𝐼LX mm4 減肉領域の x軸に対する断面二次モーメント

𝐼LY mm4 減肉領域の y軸に対する断面二次モーメント

𝐼X mm4 健全な円筒胴の x軸に対する断面二次モーメント

𝐼Y mm4 健全な円筒胴の y軸に対する断面二次モーメント

𝐼X mm4 減肉部を除く円筒胴の x軸に対する断面二次モーメン

𝐼Y mm4 減肉部を除く円筒胴の y軸に対する断面二次モーメン

R mm 減肉部の外半径

xB mm y軸から B点までの距離

y mm 中立軸から x軸までの距離

yA mm 中立軸から A点までの距離

yB mm 中立軸から B点までの距離

yLX

mm 減肉部図心から x軸までの距離

𝐼X = 𝐼X + 𝐴m𝑦2− 𝐼LX − 𝐴𝑓(𝑦LX + 𝑦)

2

𝐼Y = 𝐼𝑌 − 𝐼𝐿𝑌

𝐼X = 𝐼𝑌 =𝜋

64(𝐷o

4 − 𝐷4)

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-参 42-

𝐼LX = 𝑅3𝑑 *(1 −3

2

𝑑

𝑅+𝑑2

𝑅2−𝑑3

4𝑅3)(θ + sinθcosθ −

2sin2θ

𝜃)

+𝑑2sin2θ

3𝑅2θ(2 − 𝑑 𝑅⁄ )(1 −

𝑑

𝑅+𝑑2

6𝑅2)+

𝐼LY = 𝑅3𝑑 .1 −3

2

𝑑

𝑅+

𝑑2

𝑅2−

𝑑3

4𝑅3/ (𝜃 − 𝑠𝑖𝑛𝜃𝑐𝑜𝑠𝜃)

𝑦LX=

2𝑅𝑠𝑖𝑛𝜃

3𝜃.1 −

𝑑

𝑅+

1

2;𝑑 𝑅⁄/

𝐴t =*0.5𝜋(𝐷:𝐷𝑜);𝑐+(𝐷:𝐷𝑜)

8

𝐴a =

4𝐷2

𝐴m =

4(𝐷o

2 − 𝐷2)

𝐴f =

4(𝐷f

2 − 𝐷2)

𝐴w = 𝐴a + 𝐴f

𝑦 =1

12

sin (𝐷 3;𝐷3)

𝐴m;𝐴

𝑦A = 𝑦 +𝐷𝑜

2

𝑥B =𝐷

2sinθ

𝑦B = 𝑦 +𝐷

2cosθ

𝑏 =1

12

sin (𝐷 3;𝐷3)

𝐴a;𝐴

𝑅 =𝐷

2

𝑑 =𝐷 ;𝐷

2

𝐴tf =𝑐(𝐷 :𝐷 )

8

出典:WES2820

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-参 43-

附属書 B 局部減肉評価事例

この附属書は、WES2820 の解説に記載されている例題の条件に対して、本規格文案の評

価を適用したものである。この附属書に示す例題においては、縦型円筒形の圧力容器を対象

としているため、本規格文案の対象である火力発電設備の配管とは異なるが、ここでは減肉

領域における厚さデータ等を用いて、本規格文案の想定している配管を対象とした評価手法

を適用した場合の事例として示すものである。

共通条件

減肉が一様に生じている場合の事例及び減肉が局部的に生じている場合の事例の計 2 つ

の事例を示す。対象機器の情報などといった共通条件を表 1.14 に示す。

なお、本事例はあくまで例題であり、実在の機器に対する評価事例ではないことや、また、

個別の評価の一部については簡略化していることに注意する。

表 1.14 共通条件

項目 値

内径 D 2000mm

主要構造不連続部から減肉までの距離 ld 1000mm

評価に用いる圧力 p 3.0MPa

評価温度 40℃

許容引張応力a 103N/mm2

溶接継手効率 1.0

計算厚さ tmin 30.0mm

評価温度における材料の降伏応力(又は 0.2%

耐力)Y

225N/mm2

将来腐食代𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 1.0mm

公称厚さ t 32mm

減肉が一様に生じている場合の例

条件

表 1.15 に測定厚さデータを示す。この厚さデータから変動係数 COV を求めると 6.0%と

なる。本対象はタイプ A 機器であるため、点厚さ評価手法が適用できる。以下では、レベ

ル a 評価及びレベル a’評価の点厚さ評価手法を適用する。

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-参 44-

表 1.15 測定厚さデータ 減肉が一様に生じている場合

レベル a 評価 点厚さ評価

レベル a 評価では、以下を満足する必要がある。

最小厚さに関する要求

平均厚さ又は圧力に関するいずれかの要求

最小厚さに関する要求を次式に示す。

𝑡𝑚𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max,0.5𝑡𝑚𝑖𝑛, 𝑡𝑙𝑖𝑚-

ここで、左辺の計測最小厚さ𝑡𝑚𝑚は表 1.15 の測定厚さデータから 27.0mm、将来腐食代

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙は表 1.14 から 1.0mm であるので、左辺の値は 26.0mm となる。

右辺の最小厚さ𝑡𝑚𝑖𝑛は表 1.14 から 30mm、限界厚さ𝑡𝑙𝑖𝑚は 6.4mm となるため、右辺の値

は 15mm となる。

そのため、最小厚さに関する要求を満足する。

平均厚さに関する要求を次式に示す。

𝑡𝑎𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶

ここで、左辺の計測平均厚さ𝑡𝑎𝑚は表 1.15 の測定厚さデータから 30.2mm、将来腐食代

測定位置 厚さ測定値 mm

1 31.92 31.53 30.84 27.05 32.46 27.67 27.08 31.69 30.210 31.811 31.112 30.313 32.014 29.215 30.516 27.417 29.818 30.9

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-参 45-

𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙は同様に 1.0mm であるので、左辺の値は 29.2mm となる。

右辺の周方向応力に基づく最小必要厚さ𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 は、API 579-1/ASME FFS-1 ANNEX 2C の

直管の式で、MA=0、PYB31=0.4 とすると、29.7mm となる。

そのため、平均厚さに関する要求を満足しない。

なお、以下においても API 579-1/ASME FFS-1 ANNEX 2C を便宜上用いるが、いずれ

も同様の仮定を置く。

平均厚さに関する要求を満足しないため、圧力に関する要求を確認する。これを次式に示

す。

𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶 ≥ 𝑀𝐴𝑊𝑃

左辺の𝑀𝐴𝑊𝑃𝑟𝐶は、 API 579-1/ASME FFS-1 ANNEX 2C の直管の式で、MA=0、

PYB31=0.4 とすると、2.9MPa となる。

右辺の𝑀𝐴𝑊𝑃は、将来腐食代を見込んだ健全管に対する最高許容圧力とすると、同様に

3.1MPa となる。そのため、圧力に関する要求を満足しない。

レベル a’評価 点厚さ評価

レベル a’評価では、以下を満足する必要がある。

最小厚さに関する要求

平均厚さ又は圧力に関するいずれかの要求

最小厚さに関する要求は、レベル a 評価と同一である。

平均厚さに関する要求を次式に示す。

𝑡𝑎𝑚 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ max[𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 ]

ただし、𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 , 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿 の算出には P・RSFaを用いる。

左辺はレベル a 評価と同一で 29.2mm となる。右辺は、残存強度係数 RSFa =0.9 を用い

ることにより、26.8mm が得られる。そのため、平均厚さに関する要求を満足する。

なお、圧力に関する要求も満足する。これは、平均厚さに関する要求と同様に、RSFa =0.9

の影響によるものである。

平均厚さに関する要求について、WES2820 の点厚さ評価は、軸方向応力に基づく最小必

要厚さ𝑡𝑚𝑖𝑛𝐿 を考慮しないという点では、レベル a に近いと言えるが、判定に用いる右辺にお

いて、RSFaに相当する 0.9 が乗じられており、この点ではレベル a’に近いと言える。

減肉が局部的に生じている場合の例

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-参 46-

条件

測定厚さデータを表 1.16 に示す。軸方向及び周方向において 60mm 間隔で厚さが測定

されているものとする。

本対象はタイプ A 機器であり、厚さに変動があるため、局部減肉評価手法が適用できる。

以下では、レベル a 評価及びレベル a’評価の詳細厚さ評価手法に加えて、レベル b 評価及

びレベル b’評価を適用する。

表 1.16 測定厚さデータ 減肉が局部的に生じている場合

レベル a 評価及びレベル a’評価 詳細厚さ評価

まず、表 1.16 から計測最小厚さを抽出するとともに、軸方向断面及び周方向断面の特性

形状を決定する。つまり、減肉平均化長さを用いて、軸方向平均測定厚さ及び周方向平均測

定厚さを決定する。

点厚さ評価と同様に、レベル a 評価及びレベル a’評価では、以下を満足する必要がある。

最小厚さに関する要求

平均厚さ又は圧力に関するいずれかの要求

最小厚さに関する要求は、点厚さ評価と同一であるため、満足する。

次に、平均厚さに関する要求を次式に示す。

𝑡𝑎𝑚𝑠 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐶

𝑡𝑎𝑚𝑐 − 𝐹𝐶𝐴𝑚𝑙 ≥ 𝑡𝑚𝑖𝑛

𝐿

周方向減肉特性形状に対する計測平均厚さ𝑡𝑎𝑚𝑠 及び軸方向特性形状に関する計測平均厚

さ𝑡𝑎𝑚𝑐 の両方について評価を行う必要がある。このうち、周方向の要求についてレベル a 評

価を用いると、左辺が 26.9mm、右辺が 29.7mm となり、満足しない。ここで、右辺の周

方向応力に基づく最小必要厚さ𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 の計算には、API 579-1/ASME FFS-1 ANNEX 2C の式

を用いた。

一方で、レベル a’評価を用いると、左辺が 26.9mm、右辺が 26.8mm となり、満足する。

レベル a 評価及びレベル a’評価の結果の相違は、上述の点厚さ評価の事例と同様に、残存

強度係数の影響によるものである。

C1 C2 C3 C4 C5 C6 C7 C8 C9M1 32.0 32.0 32.0 32.0 32.0 32.0 32.0 32.0 32.0M2 32.0 31.9 29.8 29.6 29.8 32.0 31.8 30.1 32.0M3 32.0 30.2 29.3 28.4 28.3 30.2 30.0 27.1 32.0M4 32.0 29.8 29.1 27.1 25.0 29.3 31.3 30.9 32.0M5 32.0 30.1 29.3 27.4 26.8 30.2 31.4 31.0 32.0M6 32.0 31.9 29.5 28.9 28.8 32.0 31.8 30.7 32.0M7 32.0 32.0 32.0 32.0 32.0 32.0 32.0 32.0 32.0

軸方向の測定線

周方向の測定線

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-参 47-

なお、WES2820 の事例では、周方向平均厚さに関する要求を満足しない。本事例では、

API 579-1/ASME FFS-1 ANNEX 2Cの式を用いて周方向応力に基づく最小必要厚さ𝑡𝑚𝑖𝑛𝐶 を

求めているのに対して、WES2820ではこれを 30mmとすることによることが理由である。

レベル b 評価及びレベル b’評価

レベル b 評価及びレベル b’評価では、以下を満足する必要がある。

軸方向断面の判定

周方向断面の判定

まず、軸方向断面の判定において、規格文案の STEP4 より計測最小厚さから残存厚さ比

を求める。STEP7 では最高許容圧力 MAWP3.13MPa が得られる。STEP8 で、残存厚さ比

とフォリアス係数を用いて、残存強度係数 RSF 0.88 が得られる。許容残存応力 RSFaを 0.9

とすると、RSF≦RSFa となるため、MAWP 3.13MPa での運転継続は許容できないと判定さ

れる。この場合、低減した最高許容圧力 MAWPrは 3.07MPa となり、表 1.14 に示した圧

力 p 3MPa での運転は許容される。

レベル b’評価では、残存強度係数 RSF 0.93 が得られる。レベル b 評価では計測最小厚さ

から求めた残存厚さ比から RSF を求めているのに対して、減肉断面の領域を細分化して、

詳細に残存厚さ比を求めているため、精度が向上していると言える。

次に、周方向断面の判定において、レベル b 評価では STEP9.4 の条件を満足する。レベ

ル b’評価では、減肉部の応力評価を行う。WES2820 の解説に記載の局部減肉評価とほぼ同

様の手順であり、応力評価を満足する。

補足

減肉が一様に生じている場合の例では、最小厚さが 30mm、計測最小厚さが 27mm であ

るため、最小厚さに基づく管理が要求される場合、すでにその要求を満足しないこととなる。

しかし、本規格文案の手法の適用が認められると仮定すると、1.0mm の将来腐食代を想定

しても、レベル a’評価の点厚さ評価の要求を満足する。同様に、減肉が局部的に生じてい

る場合の例においても、最小厚さの要求はすでに満足しないが、レベル b’評価の要求を満

足する。条件によっては、より大きな将来腐食代を見込むことができる可能性がある。その

ため、設置者はより柔軟な維持管理ができると言える。

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-参 48-

2 参考資料2:欧州の発電設備の導入にあたっての検討項目の例

(1) 発電設備の規模

日本に導入実績のない発電設備を受け入れる際には、まずは小型の発電設備から受け入れ、

実績や知見が得られた後に、条件の見直しを行うといった考え方があるものと思われる。

発電設備の規模の考え方としては、主に以下の案が考えられる。

· 欧州において、規模が小さく製造者が自ら品質を担保することを証明する CE マーク

を貼付する規模のカテゴリーⅠ程度の規模(圧力×容量=5MPa・L 以下)

· 電気事業法の小型告示1で、ボイラー・タービン主任技術者が不要と評価されている

規模(蒸気ボイラーでは、出力 300kW 未満、最高使用圧力:2MPa 未満、最高使用

温度:250 度)

· 労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)における小型ボイラー程度の規模

(2) 欧州の発電設備の認証

(1)に示すカテゴリーⅠや SEP の規模の場合、技術基準適合性について製造者が行うこと

が可能となっている。また、SEP の範囲では CE マークの貼付は行えない。

欧州においては、上記の条件において流通させることが可能であるが、日本への導入の初

期段階では、上記の条件であっても、公認検査機関の検査を必要とすることも考えられる。

(3) 欧州の発電設備に係る定期検査間隔

本編 4.2.2 章に示すように、欧州においては、発電設備の定期検査間隔が各国の国内法に

定められていることから、想定される定期検査間隔、継続運転時間及び検査すべき項目が各

国によって異なるものと思われる。

以上より、欧州における法令で求められている使用前検査、定期検査等の実態を調査し、

欧州における想定される検査間隔及び検査項目等を把握した上で、国内における定期検査の

あり方について検討を行うことが考えられる。

1 「電気事業法施行規則(平成七年通商産業省令第七十七号)第四十八条第四項第三号ロの

特定の施設内に設置される水力発電設備、第五十二条第一項の表第一号、第四号及び第六号

並びに別表第二の発電所の項第一号下欄の1(1)の小型の水力発電所又は特定の施設内に

設置される水力発電所、同条第一項の表第二号及び第五号並びに別表第二の発電所の項第一

号下欄の1(2)の小型の汽力を原動力とする火力発電所、同条第一項の表第二号及び第六

号の小型のガスタービンを原動力とする火力発電所、第五十六条の表第四号及び第五号の

小型の水力設備又は特定の施設内に設置される水力設備、同表第六号及び第七号の小型の汽

力を原動力とする火力設備及び小型のガスタービンを原動力とする火力設備、第七十九条第

一号及び第九十四条第六号の液化ガスを熱媒体として用いる小型の汽力を原動力とする火

力発電所、別表第二の発電所の項第二号(一)下欄の(1)の小型の水力発電所の発電設備

又は特定の施設内に設置される水力発電所の発電設備並びに同号(一)下欄のの小型の汽力

を原動力とする火力発電所の発電設備」(平成二十七年経済産業省告示第九十九号)

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-参 49-

(4) 製造者の要求する保守・点検項目の検討

欧州の発電設備については、その技術基準適合性については製造者が責任を負うことから、

その設備を安全に運転するための条件については、熟知しているものと思われる。

以上より、製造者の要求する保守・点検項目等を参考に、検査項目等を検討することが考

えられる。

(5) 新たなデータや知見

上記(1)~(4)に示すように、欧州の発電設備の導入条件についての検討項目の提案を行っ

たが、今後運転実績が増え、新たな情報、データ及び知見が得られた場合には、必要に応じ

て順次導入条件の見直しを行うことが望まれる。