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P.S. Mitsubishi Construction Co., Ltd. 技報 第 3 号 (2005 年)
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支間長 64mを有するPC単純箱桁橋の施工
-川関高架橋-
大阪支店 土木工事統括部技術部 花房禎三郎 大阪支店 土木工事統括部 PC 工事部 石山徹 大阪支店 土木工事統括部 PC 工事部 森下大次郎
概要:本橋は那智勝浦道路事業(和歌山県新宮~那智勝浦町)の一部工事であり,那智勝
浦町に建設予定のインターチェンジに隣接する橋梁である.本工事は 6 径間連続PRC中空
床版橋と単純PC箱桁からなる.このうち箱桁橋は支間長 63.947mとPC単純箱桁橋としては
国内最大クラスの規模となる.本橋の施工に当たっては主方向 PC 鋼材定着部の検討,支点
横桁部温度応力解析等の各種検討を行った. Key Words:PC 箱桁橋,ひび割れ,温度応力解析,FEM 解析
1.はじめに
本橋は 6 径間連続PRC中空床版橋と単純 PC 箱桁橋から構成され,単純箱桁橋は支間長 63.947m,桁高 3.7m
と PC 単純箱桁橋としては国内最大クラスの規模となる.単純箱桁橋は那智川,県道の上空となり,施工は支柱とトラ
スを併用した支保工施工により行った.施工において横桁部マスコンクリートの温度ひび割れ,主ケーブルの端部定
着の集中によるコンクリートへの影響等が懸念されたため検討を行った.本稿では本工事で行った施工時における各
種検討について報告を行う
2.工事概要
工 事 名 那智勝浦道路 川関高架橋(A1~P7)上部工事 (発注:近畿地方整備局 紀南河川国道事務所) 工事場所 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町川関地内 構造形式 PRC6 径間連続中空床版橋(A1~P6),PC 単純箱桁橋(P6~P7) 橋 長 A1~P6:168.4m (支間 [email protected]+27.015),P6~P7:65.5m (支間 63.947) 有効幅員 10.25m~15.25m(P1~P4 の中空床版橋区間で変化) 斜 角 A1: 90°00′00″,P6,P7: 70°30′00″ 工 期 平成 16 年 3 月 11 日~平成 17 年 11 月 30 日
図-1 橋梁一般図
森下大次郎
郎 石山徹 花房禎三郎
P.S. Mitsubishi Construction Co., Ltd. 技報 第 3 号 (2005 年)
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3.各種施工検討
(1) 定着部 FEM 解析
1) 解析条件
主方向 PC 鋼材は 12S15.2(全 38 本)を使用し,P7 側は隣接工区の施工が先行するため緊張は P6 側からの片
引きとなる.支点部に定着部が集中して配置され,主ケーブル緊張時に横桁に大きな引張応力が発生すると考えら
れる.このため 3 次元立体FEM解析により,主ケーブル定着による支点横桁に発生する応力の検討を行った.検討
では斜角(70.5°)を考慮したモデル化を行い,また当初の鋼材配置と分散配置をした場合の 2ケースの検討(図-2参
照)を行った.この分散配置ではウェブ厚,下床版厚等の部材厚について下部工等へ影響を与えることから元設計の
寸法と変わらないように配慮した.
図-2 検討定着配置 2) 解析結果
解析の結果,図-3に示すように定着部側の横桁外面に水平方向,箱桁内部の横桁内面に鉛直方向の 2箇所に著
しい引張力が発生する結果となった.それ以外のウェブ側面等については発生する引張応力が小さく追加の補強鉄
筋は必要とならなかった.
横桁外面の定着部側 箱桁内部の横桁内面 (解析モデルは施工順序変更による緊張切欠きを考慮) (上図は上床版を取り除いて描画)
図-3 主要な引張力発生方向
図-3 位置での発生する引張応力度をそれぞれ CASE1(当初配置)と CASE2(分散配置)の結果を図-4 および図-5に示す.結果としては CASE2 の分散配置によって発生応力が小さくなることが確認できた.また斜角の影響により左
右で応力度に差が出る結果となった.
CASE NO.
検討 CASE1(当初配置) 検討 CASE2(分散配置)
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図-4 横桁外面の発生応力度(水平方向)
図-5 横桁内面の発生応力度(鉛直方向) 3) 定着部の補強
解析結果より,引張応力が小さくなり補強鉄筋量も少なくなるため,
主ケーブルは CASE2 の分散配置とすることにした.図-4 に示すよ
うに FEM 解析で緊張力を集中荷重で入力しているため,定着位置
近傍の表面に局部的に大きな引張応力が発生する.この局部的な
定着部引張応力については定着工法所定の補強を行い,横桁の
補強鉄筋としては引張応力と引張応力面積から換算した引張力が
一番大きくなる断面中心位置を照査断面とし,この照査断面の引張
応力発生域に補強鉄筋を配置した.補強鉄筋についてはコンクリ
ート打設時の施工性,既設の鉄筋配置を考慮して D25ctc125 配置
を目安に配置を行った.図-6 に P6 側横桁の補強量を示す. P6 側は緊張側のため定着切欠きがあり,またアンカーバータイ
プの落橋防止装置が配置されるため,補強鉄筋との干渉により配
置ができない.このため P6 側については横締め PC 鋼材(床版横
締めと同じ1S28.6)を追加し,この横締めPC鋼材の緊張力をFEM解析で荷重考慮することで水平方向の引張応力を鉄筋配置可能な
まで低減した.P7 側(デッドアンカー側)は固定側のため緊張力は
減少するが安全側のため P6 側と同じ補強鉄筋量とした.P7 側も落
橋防止装置が配置されるが,定着切欠きがなく鉄筋配置が可能で
あったため横締め緊張力を考慮せず鉄筋のみで補強を行った.
FEMOS : POST-PROCESSOR FOR F.E.M 川関高架橋 P6-P7
NORMAL MODE
Y
Z
COMBINE CASE
-20 .00
-10 .00
-5 .00
-4 .00
-3 .00
-2 .00
-1 .00
0 .00
1 .00
2 .00
3 .00
4 .00
5 .00
6 .00
7 .00
8 .00
9 .00
10 .00
STRESS Y MIN=-15.43 MAX=9 .65
FEMOS : POST-PROCESSOR FOR F.E.M NORMAL MODE
XY
Z
CASE NO.1
-20.00
-10.00
-5.00
-4.00
-3.00
-2.00
-1.00
0.00
1.00
2.00
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
STRESS Y MIN=-23.64 MAX=8.18
CASE1(当初配置) CASE2(分散配置)
FEMOS : POST-PROCESSOR FOR F.E.M 川関高架橋 P6-P7
NORMAL MODE
Y
Z
COMBINE CASE
-1 .50
-1 .00
-0 .50
0 .00
0 .50
1 .00
1 .50
2 .00
2 .50
3 .00
3 .50
4 .00
4 .50
5 .00
STRESS Z MIN=-1 .16 MAX=4 .09
FEMOS : POST-PROCESSOR FOR F.E.M NORMAL MODE
X Y
Z
CASE NO.1
-1.50
-1.00
-0.50
0.00
0.50
1.00
1.50
2.00
2.50
3.00
3.50
4.00
4.50
5.00
STRESS Z MIN=-1.26 MAX=4.01
CASE2(分散配置) CASE1(当初配置)
図-6 定着部補強量(P6 側横桁側面図) (補強量は鉄筋応力値を 180N/mm2 として算出)
3.48N/mm2 9.65N/mm2※
2.16N/mm2 8.18N/mm2※
4.09N/mm2 4.01N/mm2
※載荷点のため要素表面のみ大きい引張応力が発生
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(2) 支点横桁温度応力解析
1) 解析条件
支点横桁は幅(直角方向)6.1m,横桁厚(橋軸方向)2.5m,高さ 3.2m(1 回目コンクリート打設高さ)のマスコンクリー
トとなるため温度応力ひび割れの発生が予想されるため温度応力解析を行った. 解析モデルは打設順序を考慮し
(打設位置については(3) コンクリート打設時の検討を参照),斜角についても考慮している.解析モデルと境界条件
を図-7 に示す.
図-7 解析モデルおよび境界条件 2) 解析結果
解析の結果,大きな引張応力が発生する位置を表-1および図-8 に示す.結果としては横桁とウェブと接合部
である断面変化と隅角部に応力が集中する結果となった.
各位置について温度応力によるひび割れが懸念される
ため鉄筋による補強を検討した.このときの補強量の算
出は定着部 FEM 解析と同様に,発生する引張応力度と
面積から引張力に換算し必要補強量を求めている.また
先の定着部の補強鉄筋と当初設計の鉄筋を含めた鉄筋
を既設鉄筋と考え,これに不足する鉄筋を追加で配置を
した.
図-8 解析結果(ひび割れ指数コンター図)
位置 着目部位 応力方向
F 1 次コンクリート下端(ウェブ側) 橋軸方向
G 1 次コンクリート上端(打継目) 橋軸方向
I ウェブ・横桁接合部 橋軸方向
B 1 次コンクリート上端(打継目) 直角方向
E 1 次コンクリート下端(偶角部) 直角方向
C 1 次コンクリート(隅角部) 鉛直方向
D 1 次コンクリート(中央部) 鉛直方向
養生マット(上床版打設打設後5日間)熱伝達率 = 5W/m2℃⇒13W/m2℃
CL
側枠木枠(上床版打設3日後脱枠)熱伝達率 = 8W/m2℃⇒13W/m2℃
CL
断熱温度境界
上床版の底版木枠(上床版打設3日後脱枠)熱伝達率 = 8W/m2℃⇒13W/m2℃
底版木枠(上床版打設5日後脱枠)熱伝達率 = 8W/m2℃⇒13W/m2℃
CL CL
F : 橋軸方向引張力E : 直角方向
引張力
D : 鉛直方向引張力
B : 直角方向引張力
C : 鉛直方向引張力
I : 橋軸方向引張力
G : 橋軸方向引張力
表-1 温度応力解析結果
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(3) コンクリート打設時の検討
コンクリート打設は 2 回に分けて行った.1 リフト目(1 次コンクリート)は上床版付け根までウェブを立ち上げ,1 次コ
ンクリート硬化後,残りの上床版部分(2 次コンクリート)を打設した(図-9 参照).その時 1 次コンクリートは支保工支柱を
支点とした連続梁としての挙動を示すと考えられ,2 次コンクリート自重を支保工と共に負担することになる.したがっ
て,設計計算で想定している以上の応力が局部的に発生する可能性があるため,この対策と温度および収縮による
初期ひび割れの抑制を兼ね 1 次コンクリート硬化直後に一部主ケーブルに対し緊張(1 次緊張)を行った.この時の緊
張力は温度応力解析で初期材令時に横桁以外に発生する引張応力と道路橋施工便覧を参考に,コンクリートに
0.5N/mm2 程度のプレストレスを導入することを目安に決定した. 2 次コンクリート打設後の本緊張は 1 次緊張の状態から継ぎ足し緊張を行っている.この継ぎ足し緊張については
1 次緊張力が小さいこと(本緊張の約 1/10),そして本緊張作業時のジャッキセットを確実に行うことにより施工上問題
なく,また設計上は構造系完成後に緊張となるが,1 次と 2 次コンクリート打設段階毎に主桁応力度を照査し,必要な
プレストレスが構造系完成後のコンクリートに導入されることを確認した. その他に 2 次コンクリート(上床版)は 1 次コンクリート(ウェブ)との界面拘束や打設直後の収縮の影響によるひび
割れが予想され,膨張コンクリートを使用することによりひび割れを抑制した.
図-9 コンクリート打設位置 (4) たわみ管理
たわみ管理は支柱,トラス,枠組み支保工(図-10参照)および1次コンクリートの剛性を考慮したフレーム解析により
1 次および 2 次コンクリート打設時のたわみ計算を行い型枠の上越し量を設定した. 表-2 にCLライン主要点での計画高と実測値を示す.他の測点も含め橋面施工前の実測値はいずれも設計値に対
し規格値(±20mm)を満足する結果となった. 表-2 橋面出来形高さ (mm)
設計値 実測値 C2 20 998 20 983 (-15) C4 21 205 21 201 ( -4) C6 21 420 21 408 (-12)
C2~C6 は支間長の 4 等分点(C4:支間中央)
図-10 支保工側面図
KCL
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5.まとめ
(1) コンクリートのひび割れ
ひび割れについては打設直後から脱枠時,緊張時,支保工解体時と各段階を,経過を追って観察を行ったが,外
面と箱桁内部を含めてコンクリートにひび割れの発生は確認されず,入念な施工はもとより,各種検討による補強効
果によりひび割れの発生を抑制することができたと考える.
(2) おわりに
支保工施工の単純桁は設計計算においては一括施工すること条件で計算を行っており,断面方向の分割施工に
よる影響は一般的に考慮されていない.このため橋梁規模・架設条件にもよるが施工状況に合わせ支保工の影響を
考慮し,施工計画の段階から桁のたわみ・応力度などを検討する必要があると思われる.このときに 1 次コンクリート打
設直後に1次緊張を行うことは有効と考えるが,このときの最適な緊張力の決定には
1)支保工および 1 次コンクリートの剛性を考慮したモデル化
2)分割緊張行う場合は 1 次緊張と本緊張で導入したプレストレスによるコンクリート応力の検討
等を考慮する必要があり,また 2 リフト(上床版)打設直後の初期収縮ひび割れについても影響を詳細に判定する
必要があると思われる.本橋においては初期収縮の影響など,検討が不十分な点もあり課題が残るが,本報告が今
後の同種橋梁の参考となれば幸いである.
謝辞
本工事は国土交通省の総合評価方式におけるVE提案によって受注した直轄工事となります.本報告書の箱桁施
工部については“河川,県道上空の架設期間短縮”について VE 提案をしていますが,この単純箱桁橋については無
事提案工期内に施工を終了しました.(写真 1 および 2 参照)
また VE 提案とは別に,受注後に A1~P6 径間の6径間中空床版橋の詳細な検討を行った結果,施工順序を変更
することで工事着手を前倒しする提案を行い,当初の工事期間 20 ヶ月を約 16 ヶ月に短縮予定であり安全を第一に
鋭意施工中です. 最後となりますが,本橋の施工では,国土交通省近畿地方整備局 紀南河川国道事務所の方々には日頃より多大
なご支援を頂いており,関係各位に心よりお礼申し上げます.
写真-1 支保工組立時(P6 側より撮影) 写真-2 支保工撤去後(写真右側が P6 橋脚)