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2018 年 9 月 18 日 九州バイオマス発電・フィールドワーク訪問メモ。 NPO 法人農都会議・FW 報告書・事務局長 山本 登 今回は、大型バイオマス・ボイラー型発電所として、大分日田バイオマス発電所、中国木材日 向バイオマス発電所の見学をした。査察の、目的は、これらの発電所が地域の林業育成、バイ オマス燃料の安定確保をどうしているかを見ることである。いずれの発電所も、地域に根ざ し、バイオマス燃料確保には全く問題が無いという。 いずれも、バイオマス発電所の運転は全く問題なく、森林組合、輸送業者、バイオマス発電所 のいずれもが、利益を上げており、Win-Win の関係を構築している。地域にお金が回ってい るのである。 林業がビジネスとして成立していることを実感した。事実、発電所に向かう高速道路からで も、大分、宮崎の森林は見事に整備されていることが確認できる。 グリーン発電大分発電所 大分市日田市天瀬町五馬市 245-4 2013 年 11 月運転開始 発電端 5700KW(送電規模 5000KW)

年9月18 日 九州バイオマス発電・フィールドワーク訪問メモ。2018/09/06  · 2018年9月18日 九州バイオマス発電・フィールドワーク訪問メモ。

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2018 年 9 月 18日

九州バイオマス発電・フィールドワーク訪問メモ。

NPO 法人農都会議・FW 報告書・事務局長 山本 登

⚫ 今回は、大型バイオマス・ボイラー型発電所として、大分日田バイオマス発電所、中国木材日

向バイオマス発電所の見学をした。査察の、目的は、これらの発電所が地域の林業育成、バイ

オマス燃料の安定確保をどうしているかを見ることである。いずれの発電所も、地域に根ざ

し、バイオマス燃料確保には全く問題が無いという。

⚫ いずれも、バイオマス発電所の運転は全く問題なく、森林組合、輸送業者、バイオマス発電所

のいずれもが、利益を上げており、Win-Win の関係を構築している。地域にお金が回ってい

るのである。

⚫ 林業がビジネスとして成立していることを実感した。事実、発電所に向かう高速道路からで

も、大分、宮崎の森林は見事に整備されていることが確認できる。

グリーン発電大分発電所 大分市日田市天瀬町五馬市 245-4

2013 年 11 月運転開始 発電端 5700KW(送電規模 5000KW)

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➢ このバイオマス発電所は、FIT 適用バイオマス発電所としては、グリーン発電会津についで、

全国 2 番目の発電所である。根曲がり材や間伐材、林地残材といった山林未利用材100%を

バイオマス燃料としている発電所です。

➢ グリーン発電大分は、バイオマス燃料である木質チップの原料である間伐材などは、日田木質

資源有効利用協議会(生産・配送業者 38社)から、年間約 7 万トンの安定供給を受けてお

り、価格も 7000 円/と安定しており、供給には将来とも全く問題ない。協議会の 38 社には

「地元地産地消の発電所」として愛着を持たれているとのことである。事実、発電所までの道

路から見る森林はかなり整備されているようにみえる。

➢ 木質チップは、発電所と同じ敷地内にある日本フォレスト株式会社で、木質チップ化されてい

る。約半年の土場での原木乾燥により、水分は木質のチップの水分は 35%近くまで乾燥する

ため、最近ではほとんど乾燥設備を稼働する必要も無いという。原木は杉 95%、ヒノキ 5%の

割合という。

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➢ この大分日田地区モデルとも言うべき仕組みは、これまでその多くが山林に残置されてきた山

林未利用材を、日田地域を中心にした林業者と共に収集し、長期かつ継続的な森林の持続的な

再生の仕組みづくりが機能しているとの説明である。

➢ また昨年度からは、日田市庁舎、市内小中学校等 38 公共施設に当発電所からの電気の供給を

開始し、林業を基軸としたエネルギーの循環モデルを確立した。

➢ 発電稼働率は約 95%前後と高い十分機能しているという。また、バイオマスの幅を広げる意

味で、竹を検討しているが、竹材の輸送問題、発電炉へのクリンカー付着など問題があるとし

ている。再造林の多様化・進度を進める目的として「早生樹」利用拡大も地元の林業関係者と

研究会を組織し研究活動を行っている。

➢ 発電所の廃熱利用の一環として、発電所に隣接する形で建設された株式会社ビヘクトファーム

所有のイチゴ栽培ハウスに供給され、熱源としての化石燃料の大幅削減に寄与し、採算をあげ

ているという。さらに、燃焼灰の有効利用として、肥料への検討を実施しているなど、第一次

産業(農業分野)へのアプローチも継続している。

中国木材日向工場

⚫ 日向工場は、中国木材の代表的製材工場である。総敷地は 130,000 坪、その中に、集成材工場、メイン

工場、製品棟、天乾場が効率的に配置され、一大工場である。

⚫ 工場内を、順番に見学できるようになっており、この見学コースにしたがって、場内バス、専

任の説明員の方に案内された。実に広大な、一環・木製品工場である。

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貯木・土場 製材工場内部

⚫ 日向工場は、中国工業が誇る日向モデルとして 2014 年 6 月から稼働を開始している。主な特

長は以下に示す。

① 充実した港に面した広大な土地が購入でき、かつ拡張中である。

② 杉生産量 26 年連続日本一の宮崎県で、背後 100 キロ圏に豊富な木材資源がある

③ バイオマス発電のためのインフラが充実している。(工場用水、送電線)

④ 比較的従業員の確保が容易にできた。現地雇用 230 名/総従業員 290 名

⑤ 将来の製品の海外への輸出を見据え細島港が外港ルートを確保したコンテナ港である。

⚫ 日向工場のコンセプトは、①山から出てくる証明付き原木を全て受入れる、②原木受け入れから集成

材、製品出荷、バイオマス発電まで同一敷地内で実施可能で配送不要の大幅コストダウンを達成、③バ

イオマス発電の燃料は、工場内発生のオガ粉、バークデマかなう効率的発電である、④広大な敷地に製

品を大量にストックでき、多品種即納を実戦可能である。

⚫ 中国木材のバイオマス発電の歴史は古く、現状、6基、総計 65,690kWの能力である。

① 広島・呉・郷原 H14 1990kW

② 広島・呉 H14 5000kW

③ 茨城・神ノ池 H20 21000kW

④ 宮崎・日向 H27 18000kW

⑤ 佐賀・伊万里 H28 9850kW

⑥ 広島・呉 H29 9850kW

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⑦ いずれもボイラー方式である。

日向バイオマス発電所 日向バイオマス発電所

⚫ 中国工業の今後の大きな取り組みとして、以下を強調していた。

① 杉集成材の生産・販売の拡大

② 日本の木材需要は、世帯数減少・世帯規模縮小により、国内市場は縮小、これからは国産のみでは

だめで、輸出拡大、国産・輸出併用時代となる。

大生黒潮バイオマス発電所

⚫ 大生黒潮バイオマス発電所は、ブルクハルトのバイオマスガス化発電機を 10 台並べて稼働す

るという注目の発電所である。設計施工は、旧洸陽電機、現在のシン・エナジーである。

⚫ 黒潮発電所は、シン・エナジーが、高山バイオマス発電所などでの、ガス化発電機の成功経験

をもとに、設計建設した FIT 適用のバイオマス発電所である。

⚫ しかし、本年 3月の運転開始から、6 ヶ月経過した現在でも、発電機 10台全て同時での安定

稼働はしていない。1 台、1 台、全て日替わりで違う、周りの環境にも大きく左右され、確実

に安定稼働するにはどうしたらよいのか、解析の真最中であり、10台運転をしようと思えば

できるが、安定稼動を確実なものとした後に 10台運転に移行するとのことであった。

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⚫ 堀口社長は、ペレット製造には運転データなどだけでは、不十分で、多分に職人的運転技術が

必要である。運転要員の職人的技術向上には時間がかかっており、今発生しているトラブル

は、必要なステップと考えていると強調する。

⚫ 大生黒潮バイオマス発電所 宮崎県串間市大字西方字山田 1805-15

2018 年 3月運転開始 発電端 2000KW 未満

➢ 串間市は、宮崎のはずれ、ほとんど鹿児島に近い場所にある。この発電所は、ブルクハルトの

バイオマスガス化発電装置(165Kw)を 10台並べて、採算のとれる 2Mw 規模としている点が

特徴である。

堀口社長を囲んで記念撮影

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大生黒潮発電所全景

以上