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AGING 超高齢社会Jおけこの国のあリを奪える、エイジングの専門情輻サトップペ ジ> AGING INNOVATOR 阻高対応の先耶者たち>質の高い教育で研修医のキャリアップをサポ ト地域医療に貢献できる医師の育成を目指す プロフィ 質の高い教育で研修医のキャリアップをサポート 地域医療に貢献できる医師の育成を目指す 第2回 筑波大学医学医療系循環器内科学教授 青沼和隆氏 筑波大学池域医療教育学教授筑波大学附属病院神栖地域医療教育センター長 家城隆次氏 聞き手:「これからの心臓病医療を考える会」事務局長 阪田英也 構成:同取材班 但本結子 2017/07/11 連載2回の第2回は、 筑波大学地域医療教育センタ ・ステ ション制度を導入した経緯 や専門医制度などについて、 引き続き、 筑波大学医学医療系循環器内科学教授の青沼和 隆氏と、 筑波大学地域医療教育学 教授 筑波大学附属病院神栖地域医療教育センタ 長の家城隆次氏にお話を伺った。 民間の病院に所属しながら 大学と同じ教育を 医師の教育体制やバックアップについてお話が出ました。 筑波大学では、 大学の教 貝を地域医療機関に派遣して教育を行う地域医療教育センタ ・ステ ション制度を導 入されています。 その つである神栖地域医療教育センタ は2010年に整備されまし たが、 この制度が始まった経緯について教えてください。 青沼 先代の筑波大学学長であった山田信博先生が、 茨城県で優秀な医師を地域に定着 させるにはどうすれば良いのかを考え、 2009年に水戸協同病院で地域医療教育セン のシステムを構築されました。 この制度のコアになる部分を最初に担ったのは循環 器領域です。 というのも、 当時、 筑波大学の循棗器内科には渡辺里行先生という優れた 医師がいたのですが、 渡辺先生が水戸教育センタ にいなければ、 筑波大学から人が行 かないのではないかと山田先生と私の意見が 致したため、 渡辺先生を口説いて行って もらったのです。 そこに沖縄県立中部病院出身の徳田安春氏(沖縄臨床研修病院群プロジェクト群星沖縄 理事長)が来てくれ、 2人で教育を始めたところ、 研修医が殺到してこの動きが広がっ ていきました。 当初、 水戸協同病院に医師は20人程しかいませんでしたが、 現在では研 修医を含めて200人を超えるまでになっています。 家城 水戸協同病院の医師が増えたことによって、 高萩市やJA茨城県厚生連などの病院 ともが進んでいます。 筑波 育学 ステ ション この制度によって、 地域の医師不足が解消できますか。 育沼 大学を志向する医師からすれば大学の医局も魅力的で、 先進医療も学べますが、 全ての医師がそうとは限りません。 民間の病院で仕事をしながら勉強をしたいという医 師もいるので、 例えば水戸協同病院に所属してもらい、 そこから関連病院あるいは地域 医療を担う医師として育ってもらうことも つの方法です。 筑波大学がバックアップしていることで教育をはじめ人事交流もでき、 研修医に とっては大きなメリットになりそうです。 青沼 教育センタ という名の通り、 まず教育の質が保障できます。 センタ に行けば 大学と同じような高度な教育も受けられるだけでなく、 大学とは異なる 般の病院だか ら給料も良い。 思いきり働きながらお金も稼ぎ、 かつ高度な知識や技術も得たい人には 魅力ある制度だと思います。 大学というヒエラルキ一社会や薄給を嫌がる医師もリク トできるため、 双方にとってメリットがあり、 うまく展開できています。 家城先生のいる神栖地域医療教育センタ でも同様のことを考えられていますが、 水戸 協同病院と異なるのは、 今後、 神栖地域医療教育センタ では遠隔治療が つの目玉に なるのではないかということです。外科も4Kを使って手術室と筑波大学が繋がり、 遠隔 でも専門的なアドバイスができます。 4Kについて、 もう少しお聞かせください。 青和隆(あおぬまかずたか)氏 1977年山口大学医学部卒業。1982年東京医科歯科 大学大学院 医学研究科内科学修了。同年、米国フロリ ダ州マイアミ心臓研究所(Miami Heart Institute)へ、 Clinical Research Fellowとして留学。1984年11月、 東京医科歯科大学第二内科医員。同年12月、武蔽野赤 十字病院内科副部長。1987年土浦協同病院内科科 長。1991年 横須賀共済病院内科部長。1996年横須賀 共済病院 循環器センター主任部長併任。1999年東京 医科歯科大学医学部臨床助教授。2001年聖マリアン ナ医科大学非常勤講師。2002年東海大学医学部非常 勤講師。2004年筑波大学人間総合科学研究科病慇制 御医学循環器内科講師。2006年より現職 O専門領域 臨床電気生理学 臨床不整脈学 循環器 病学 心臓病 O研究分野 臨床電気生理学 不整脈の非薬物治療 不整脈の薬物 治療 O学会 日本術環器学会理享 日本不整脈心電学会理寧 臨床 電気生理学研究会幹平 日本成人病(生活習憫病)学 会理宇 日本心不全学会評議員 日本臨床生理学会評 議員 Circulation Journal Associate Editor アメリ 力心靡病学会臨床心臓病会員 Journal of Cardiology Associate Editor Journal of Arrhythmia Editor ,n chief Heart Rhythm正会員 家城隆次(いえき りゅうじ)氏 1954年生まれ。1980年筑波大学医学専門群卒業。 1992年東京大学医学部博士取得。2011-2014年3月 公立翌岡病院 内科・救命救急センター総合部 長。同年4月-2015年11月兵庫医科大学胸部腿均学 特任教授。2014年7月-2015年11月兵庫医科大学呼 吸器内科・がんセンター特任教授(兼務)。2016年1 月~筑波大学 医学医療系教授。2016年より現職

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トップページ> AGING INNOVATOR 阻高蔀社会対応の先耶者たち>質の高い教育で研修医のキャリアップをサポート地域医療に貢献できる医師の育成を目指す

プロフィール

質の高い教育で研修医のキャリアップをサポート

地域医療に貢献できる医師の育成を目指す 第2回

筑波大学医学医療系循環器内科学教授 青沼和隆氏

筑波大学池域医療教育学教授筑波大学附属病院神栖地域医療教育センター長 家城隆次氏聞き手:「これからの心臓病医療を考える会」事務局長 阪田英也 構成:同取材班 但本結子

2017/07/11

連載2回の第2回は、 筑波大学地域医療教育センタ ー ・ステーション制度を導入した経緯

や専門医制度などについて、 引き続き、 筑波大学医学医療系循環器内科学教授の青沼和

隆氏と、 筑波大学地域医療教育学 教授 筑波大学附属病院神栖地域医療教育センタ ー

長の家城隆次氏にお話を伺った。

民間の病院に所属しながら

大学と同じ教育を

医師の教育体制やバックアップについてお話が出ました。 筑波大学では、 大学の教

貝を地域医療機関に派遣して教育を行う地域医療教育センタ ー ・ステーション制度を導

入されています。 その一つである神栖地域医療教育センタ ーは2010年に整備されまし

たが、 この制度が始まった経緯について教えてください。

青沼 先代の筑波大学学長であった山田信博先生が、 茨城県で優秀な医師を地域に定着

させるにはどうすれば良いのかを考え、 2009年に水戸協同病院で地域医療教育セン

タ ーのシステムを構築されました。 この制度のコアになる部分を最初に担ったのは循環

器領域です。 というのも、 当時、 筑波大学の循棗器内科には渡辺里行先生という優れた

医師がいたのですが、 渡辺先生が水戸教育センタ ーにいなければ、 筑波大学から人が行

かないのではないかと山田先生と私の意見が一致したため、 渡辺先生を口説いて行って

もらったのです。

そこに沖縄県立中部病院出身の徳田安春氏(沖縄臨床研修病院群プロジェクト群星沖縄

理事長)が来てくれ、 2人で教育を始めたところ、 研修医が殺到してこの動きが広がっ

ていきました。 当初、 水戸協同病院に医師は20人程しかいませんでしたが、 現在では研

修医を含めて200人を超えるまでになっています。

家城 水戸協同病院の医師が増えたことによって、 高萩市やJA茨城県厚生連などの病院

とも田剪が進んでいます。

■筑波大学地域医療教育学 地域医療教育ステーション

この制度によって、 地域の医師不足が解消できますか。

育沼 大学を志向する医師からすれば大学の医局も魅力的で、 先進医療も学べますが、

全ての医師がそうとは限りません。 民間の病院で仕事をしながら勉強をしたいという医

師もいるので、 例えば水戸協同病院に所属してもらい、 そこから関連病院あるいは地域

医療を担う医師として育ってもらうことも一つの方法です。

筑波大学がバックアップしていることで教育をはじめ人事交流もでき、 研修医に

とっては大きなメリットになりそうです。

青沼 教育センタ ーという名の通り、 まず教育の質が保障できます。 センタ ーに行けば

大学と同じような高度な教育も受けられるだけでなく、 大学とは異なる一般の病院だか

ら給料も良い。 思いきり働きながらお金も稼ぎ、 かつ高度な知識や技術も得たい人には

魅力ある制度だと思います。 大学というヒエラルキ一社会や薄給を嫌がる医師もリク

ルートできるため、 双方にとってメリットがあり、 うまく展開できています。

家城先生のいる神栖地域医療教育センタ ーでも同様のことを考えられていますが、 水戸

協同病院と異なるのは、 今後、 神栖地域医療教育センタ ーでは遠隔治療が一つの目玉に

なるのではないかということです。外科も4Kを使って手術室と筑波大学が繋がり、 遠隔

でも専門的なアドバイスができます。

4Kについて、 もう少しお聞かせください。

青和隆(あおぬまかずたか)氏

1977年山口大学医学部卒業。1982年東京医科歯科大学大学院 医学研究科内科学修了。同年、米国フロリダ州マイアミ心臓研究所(Miami Heart Institute)へ、Clinical Research Fellowとして留学。1984年11月、

東京医科歯科大学第二内科医員。同年12月、武蔽野赤十字病院内科副部長。1987年土浦協同病院内科科長。1991年 横須賀共済病院内科部長。1996年横須賀共済病院 循環器センター主任部長併任。1999年東京医科歯科大学医学部臨床助教授。2001年聖マリアンナ医科大学非常勤講師。2002年東海大学医学部非常勤講師。2004年筑波大学人間総合科学研究科病慇制御医学循環器内科講師。2006年より現職

O専門領域臨床電気生理学 臨床不整脈学 循環器 病学 心臓病学O研究分野臨床電気生理学 不整脈の非薬物治療 不整脈の薬物治療O学会日本術環器学会理享 日本不整脈心電学会理寧 臨床電気生理学研究会幹平 日本成人病(生活習憫病)学会理宇 日本心不全学会評議員 日本臨床生理学会評議員 Circulation Journal Associate Editor アメリ力心靡病学会臨床心臓病会員 Journal of Cardiology Associate Editor Journal of Arrhythmia Editor ,n chief Heart Rhythm正会員

家城隆次(いえき りゅうじ)氏

1954年生まれ。1980年筑波大学医学専門群卒業。1992年東京大学医学部博士取得。2011-2014年3月公立翌岡病院 内科・救命救急センター総合診療部長。同年4月-2015年11月兵庫医科大学胸部腿均学特任教授。2014年7月-2015年11月兵庫医科大学呼吸器内科・がんセンター特任教授(兼務)。2016年1月~筑波大学 医学医療系教授。2016年より現職

青沼 詳しくはまた別の機会にお話したいと思いますが、4Kとは、ハイビジョン映像の

4倍以上の解像度を持ち、精密に細部を表示する技術で、この画像処理技術を検査や手

術などに活用した4K医療機器が登場しています。私たちが考えているのは、茨城県内で

まずこの4Kビジョンを用いた遠隔治療補助を導入し、使えるとなれば、僻地医療に取り

組んでいる地域が全国には多数あるので、県外にも広げていきたいと考えています。

現時点では、家城先生と私が中心になって、このシステムが使えるかどうかの検討を始

めているところです。この遠隔治療の効果が実証されて科研黄を獲得できれば、大きな

研究もできるでしょうし、循環器の僻地医療にもフォ ーカスを当てられる。加えて、例

えば神栖済生会病院でできるとなれば、今度はこのシステムで育った医学生が医師と

なって病院に来てくれる可能性もあります。

学ぶ気持ちを持った研修医には

大学との繋がりは大きな魅力

筑波大学附属病院神栖地域医療教育センタ ーの体制や活動状況について教えてくだ

さい。

家城センタ ーの内科系常勤医師のポストは5名ですが、現在は3人のため、新たにセン

タ ーの教員を探しているところです。現在は筑波大学から合計6人の内科系常勤医師が

来ています。この6人はいずれも指導医として教えられる力を備えていますが、神栖地

域医療教育センタ ーは昨年設立されたばかりなので、現在の研修医は2�3人程です。

青沼 来年度から初期研修医や後期研修医が多数集まると考えています。

筑波大学が展開する教育センタ ーは、済生会病院としては珍しい取り組みといえま

すか。

家城病院数が多いので他県のことはわかりませんが、茨城県としては初めてです。

家城先生は筑波大学のご出身であり、やはり水戸協同病院での成功事例を見て、神

栖地域医療教育センタ ーを設立しようと思われたのですか。

家城いいえ、水戸協同病院については知りませんでした。私は兵庫医科大学胸部腫瘍

学特任教授を経て、茨城に戻ってきました。その前は兵庫県の田舎にある公立豊岡病院

で総合診療部長を務めていましたが、いかに医師を確保するかで苦心しました。ただ、

医師を集めるためにはどうするかはわかっていたので、水戸協同の事例は知らなかった

ものの、手法は似ているところが多いと感じます。

例えば、小さい病院に行くと十分な教育を受けられず力もつかない、あるいは研修を終

えた後で大学に戻れないのではないかと不安になる人もいる。一方で、小さい病院を望

む人は、大きい病院はストレスがかかって大変だから、小さいところでのんびりやりた

いという精神的な安定を求める医師もいます。このように研修医は様々な考え方を持っ

ていますが、私たちが求めるのは活気があって懸命に勉強したい人です。

そうした人たちに来てもらうことを考えると、やはり大学との繋がりがあることは大き

く、研修後も戻ってこられるし、共に学んだ仲間もいるという選択肢が残っている方が

研修医にとって安心感があると思います。

研修医は来年度から増えると伺いましたが、筑波大学を行き来するなど、学ぶ機会

を設けているのですか。

家城昨年は日本医科大学、筑波大学、I睫天堂大学などから受け入れました。その中で

筑波大学からの研修医は、2-3カ月の研修期間の後に筑波大学の中で、ロ ーテーション

を組んでいました。例えば内科で研修を受けて、また大学に戻るという形です。本年度

はここに研修医の数をさらに増やして対応したいと思っています。

他大学との連携の中で受け入れ、昨年度からは教育センタ ーができたので研修医の

人数を増やし、後期研修医も受け入れるという流れですね。ところで家城先生は、神栖

堪立医療教育センター長と神栖済生会病院副院長を兼任されています。神栖済生会病院

は医師が定苔しやすい病院でしょうか。

家城先にお話したように、私は茨城に戻ったばかりで神栖済生会病院は短いため、そ

のあたりは詳しくありません。この地域は大都市から遠く、また、鉄道などの公共交通

機関が発達していないので、他の地域から定葎して取り組む医師はあまり多くはないと

O研究分野

病態医化学 呼吸器内科学

O所属学会

日本呼吸器学会日本肺癌学会日本感染症学会

ASCO:Amencan Society of Clinical Oncology 日本

内科学会

O白格

日本内科学会内科専門医 日本癌治療認定医機構•が

ん治療認定医 日本呼吸器学会指導医

、 メンクルヘルスt!•)ワ ー ク、*

思います。現在の神栖済生会病院は医師数も少なく、稼働病床や設備についても不十分

で医師にとって魅力のある病院とは言えません。ただ、神栖市は面白い地域で工業地帯

であるために若い労働人口が多い。茨城の中では最も人口が減少しにくく、しばらくは

増加傾向にあります。人口当たりの医師数はかなり少ないので医療過疎と言えますが、

大企業の支社や工場が多く、経済や文化といった面では過疎ではありません。

また、住民票を移してない人が多いことも特徴です。神栖市の人口は約9万人ですが、

例えば6月頃から工場のプラントを一旦休止して点検整備に入るため、一時的に多いと

きで人口は30万人まで膨らみます。