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1 第 18 回勉強会「英語の教え方教室」報告 2012(平成 24)年 10 月 20 日(土) 14:00~17:00 大阪女学院大学 教員養成センター 「大阪女学院大学 教職フィールドワーク 課題研究発表」 学生 横田朋子、屋麻戸周子、樋口綾香、中尾実可、川野潤美、髙井楓 教授 中井 弘一 9 月に実施した本学の教職フィールドワーク(英国) に参加した学生の課題研究発表を行い、現場の先生 にも役立つ英語教育情報を提供するとともに、現地資料で作成した教材も紹介した。 学生の新鮮な感覚でまとめた課題研究に対し、参加者の皆様から建設的なコメントをいただいた。 今回は発表学生を除いて 26 名の参加を得た。初めて参加していただいた学校の先生が 4 名おられ、大変あ りがたく思った。参加していただいた先生に喜んでいただけただろうか、納得していただいただろうかと 会が終わってからも、終わるまでと変わらない心配はきなかったが、勉強会の終了後、有志で乾杯を重ね た席で、今日も参加して良かったというお言葉を頂きほっとしているところです。 【報告】 最初に、私の方から「教職フィールドワーク(英国) 2012 Field Experience in Education (UK)」の概 要を説明した。日程は2012年9月10日(月)~9月22日(土)《13日間》で、趣旨、目的は This Fieldwork training abroad aims to contribute to developing the students’ quality of teaching English with richer and broader perspectives and knowledge on English education through the following three major activities; 1. Visiting secondary schools in York to study how English and other subjects are taught in class 2. Observing cities in the UK and making reports on the similarities and diversities between Japanese culture and British culture 3. Making teaching materials with English messages and objects in town and from experiences staying in the UK. 異文化理解の感性を磨くと共に、教材を作成する視野を広げること、そして英国の中学校の授業を 1 日 ゆっくり見て過ごすこと、現地生徒にプレゼンを行うことを通して、将来の教員としての資質能力の基礎 力の育成を図りたいと説明した。 訪問した都市は London, Warwick, Stratford-upon Avon, Oxford, Cambridge, Bath, York それぞれ、趣の異なる都市を訪ねた。

第18回勉強会「英語の教え方教室」報告6 100 Greatest Britons (BBC Poll, 2002)

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第18回勉強会「英語の教え方教室」報告 2012(平成 24)年 10 月 20 日(土) 14:00~17:00

大阪女学院大学 教員養成センター

「大阪女学院大学 教職フィールドワーク 課題研究発表」

学生 横田朋子、屋麻戸周子、樋口綾香、中尾実可、川野潤美、髙井楓

教授 中井 弘一

9 月に実施した本学の教職フィールドワーク(英国) に参加した学生の課題研究発表を行い、現場の先生

にも役立つ英語教育情報を提供するとともに、現地資料で作成した教材も紹介した。

学生の新鮮な感覚でまとめた課題研究に対し、参加者の皆様から建設的なコメントをいただいた。

今回は発表学生を除いて 26 名の参加を得た。初めて参加していただいた学校の先生が 4名おられ、大変あ

りがたく思った。参加していただいた先生に喜んでいただけただろうか、納得していただいただろうかと

会が終わってからも、終わるまでと変わらない心配はきなかったが、勉強会の終了後、有志で乾杯を重ね

た席で、今日も参加して良かったというお言葉を頂きほっとしているところです。

【報告】 最初に、私の方から「教職フィールドワーク(英国) 2012 Field Experience in Education (UK)」の概

要を説明した。日程は2012年9月10日(月)~9月22日(土)《13日間》で、趣旨、目的は

This Fieldwork training abroad aims to contribute to developing the students’ quality of teaching

English with richer and broader perspectives and knowledge on English education through the

following three major activities;

1. Visiting secondary schools in York to study how English and other subjects are taught in class

2. Observing cities in the UK and making reports on the similarities and diversities between

Japanese culture and British culture

3. Making teaching materials with English messages and objects in town and from experiences

staying in the UK.

異文化理解の感性を磨くと共に、教材を作成する視野を広げること、そして英国の中学校の授業を 1 日

ゆっくり見て過ごすこと、現地生徒にプレゼンを行うことを通して、将来の教員としての資質能力の基礎

力の育成を図りたいと説明した。

訪問した都市は

London, Warwick, Stratford-upon Avon, Oxford, Cambridge, Bath, York

それぞれ、趣の異なる都市を訪ねた。

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【学生発表の簡易まとめ】 「街角観察」 イギリスの監視カメラ

� 英国では、犯罪の防止や調査に役立てることが目的。

� 1990 年代頃から監視カメラが増加。

� 現在イギリス市街に設置されている監視カメラ(CCTV)は 420 万台。

� イギリスに住む人は毎日平均 300 回撮影されている。

� ごみのポイ捨て、酔っ払い、暴行など、反社会的行動が見受けられるとモニター室から係員がスピ

ーカーで直接本人に注意を呼びかける事ができる。

日本の監視カメラ

� 2002 年に警視庁が東京都新宿区の歌舞伎町に 50 台設置したことから増加。

� 警察は犯罪の抑止と捜査の両方の目的。

� 犯罪の発生が多い地域を選んで設置している。

� 利用の目的や映像の保存期間を定めた規則を作り、公安委員会がチェックしている。

� 警察が管理する街頭防犯カメラは 2001 年度末で、全国に 791 台。

� 警察の街頭カメラ以外にも公式な統計ではないが、国内に 300 万台以上あるという。

学生達は印象に残ったこととして、防犯カメラのことやタクシーの模様、2階建てバス、英国で見るアジ

アなどのことについて述べた。特に監視カメラの多さには驚いたようであった。

「創作教材」 様々な素材から教材を創り出す体験をさせ、今後の教材開発の視野を拡げることをねらいとしていた。

紹介内容は省略する。こちらで英語のチェックをせずに冊子印刷した。参加された先生は気づかれていた

と思うが、英文に誤りが少なからず見られました。この点は学生の英語力のなさと、教材を作成する意識

での学生の甘さである。しかしながら、教材作成への感性を磨く第一歩となったと思う。

「授業観察」 Learning Support Class (特別支援クラス)

• 教材の工夫

*実験(主題に沿いつつ、生徒を引きつけている)

*身の回りのものを使って勉強する

*生徒一人ひとりに合わせて、レベルの違うものを用意している

• PPT の使用度の割合の多さ

*Math 以外のクラスは PPT を使って、授業を進めていた

*PPT の使用時間と教材の時間の割合は偏りがなかった

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• 生徒へのサポートの仕方

*先生が2人以上で授業をする

*一人一人の生徒の考えを受け止め、シェアする

*生徒の気持ちや状態を受け止め、その状態に合わせながら、授業を進める

普通クラス

<生徒の学習態度の特徴>

l すごく活発的

l 笑顔

l ほとんどの生徒が手を挙げて、発言する

l ノートを取る時には、ボールペンだけを使っている

l 小さいホワイト・ボードを使っている

l 一切寝ない

l 人の話をちゃんと聴く

l 何事にもすごく集中する

l 勉強する事が好き

l 前向きに取り組む

<先生の指導の特徴>

u すごく活発的

u 笑顔

u 生徒に沢山質問をして、生徒に考えを求める

u 怒る時も筋を立てながらフォローをして、短い時間で叱る

u パワーポイントを使った授業が多い

u 説明時間が短い

u 練習問題を沢山させる

u 教科書を家に持って帰らせない

u どのクラスにも共通しているのが、積極的であるということ

u 自分から学ぼうとする姿勢

u 間違えてもいいから発表する

u 学びたいという思いの強さがノートの取り方や宿題の取り組みに出ている。

授業の全体的な特徴

・目標の提示

・協同学習を取り入れた学習スタイル

・実際に体験させて考えさせる授業形式

・予測をさせて自分の考えをまず整理させ実際のデータや正解との比較で更に考えさせる授業

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とまとめた。

フロアーの先生からは、どうして生徒はそれほど積極的なのか、目標を与えた際にまとめとしてその目

標の到達状況を先生はどのように把握しているのか、協同学習が多いがそれだけで学力がつくのかなど、

示唆に富む質問を頂いた。学生の 1 回限りの授業観察では判断できない質問であった。私の方でフォロー

できるところは行った。

学生の発表のうち 5 名が日本語で、最後の一名が英語で行った。今後英語で行えるものを増やしていきた

いと考える。

【私からの創作教材紹介等】 30 分ほど、私からも創作教材を紹介した。

私も監視カメラのことは気になっていた。たまたま現地にいるときに BBC 放送で学校のトイレや更衣室

に CCTV が設置されていることに問題があるのではというニュースが流れていた。現地にいるときに新聞

出記事を探して見つけたので、その全文を紹介した。

TV Cameras in School Toilets METRO September 12, 2012 by HYDEN SMITH HUNDREDS of schools have installed CCTV cameras in

toilets or changing rooms, an investigation has revealed. An estimated 106,000 cameras are in use in secondary schools

and academies in England, Scotland and Wales, privacy watchdogs say.

The group Big Brother Watch found 825 cameras located in changing rooms or bathrooms in 207 schools.

Last night, it said the figures emerged in data from a sample of more than 2,000 schools, so the total number of cameras in communal areas is likely to be much higher.

The group said government proposals for the regulation of CCTV were 'woefully weak' because they would not apply to schools and the Newly created surveillance camera commissioner will have no enforcement or inspection powers.

The report also revealed 54 schools have a ratio of one camera for every 15 pupils or higher, with one for every five students in some cases.

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The full extent of school surveillance is far higher than we had expected and will come as a shock to many parents,' claimed Big Brother Watch director Nick Pickles.

He said the most common reasons for installing them were theft and bullying, even though the only known study carried out in France in 2007 found stealing rose after cameras were brought in.

Headteachers of schools named in the report claimed some of the findings were 'misleading'. The Radclyffe School in Oldham topped the list, with 20 cameras in toilets or changing rooms. But headteacher Hardial Hayer said they were above doors entering toilets, overlooked only

washbasins and were nowhere near cubicles. 'It is misleading to say we have the highest number, it all depends on the design,' he added. 'We are also a much bigger school than the average secondary school. Sibhan Freegard, of parenting website Netmums, said 'everybody realises' cameras are not being

placed in cubicles but in open areas where a lot of bullying and bad behaviour takes place.

Are you for or against CCTV Cameras in school toilets?

その後、調べたことを新たに紹介する。

英国:高性能の閉鎖回線カメラ(CCTV)による街路の監視が過剰であり,国民の権利を侵害しているとの

批判下記の記事が出ている。

High-def CCTV cameras risk backlash, warns UK watchdog BBC: 3 October, 2012

http://www.bbc.com/news/technology-19812385

Powerful CCTV cameras which can track faces from more than half a mile away 'could breach

human rights laws' Daily Mail: 3 October, 2012

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2212051/Powerful-CCTV-cameras-track-faces-half-mil

e-away-breach-human-rights-laws.html

警察が設置する街頭防犯カメラシステムに関する研究会を見るとまたよくわかる。

http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki8/7th_siryou_2.pdf

運用・効果検証に関する考察

英国の犯罪認知件数はわが国の3倍近く、また、テロの脅威が国民の支持率の高さにつながっている。

また、全国警察改善庁の挙げた重要な視点には、透明性や犯罪リスクとプライバシーのバランスがあった。

既存調査によると、英国同様、わが国でも防犯カメラに対する支持率は高いが、プライバシーに関する配

慮を十分認識する必要がある。効果検証結果を適切に公表するとともに、世論調査を行い、防犯カメラに

対する国民の態度を把握することがのぞましいと思われる。

また、

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100 Greatest Britons (BBC Poll, 2002) 100 Greatest Britons was broadcast in 2002 by the BBC. The programme was the result of a vote conducted to determine whom the United Kingdom public considers the greatest British people in history.[1][2] The series, Great Britons, included individual programmes on the top ten, with viewers having further opportunities to vote after each programme.[3] It concluded with a debate. All of the top 10 were dead by the year of broadcast. The 20 Greatest Britons: 1. Winston Churchill, (1874-1965) - Prime Minister (1940-1945, 1951–1955) 2. Isambard Kingdom Brunel, (1806–1859) - Engineer. 3. Diana, Princess of Wales (1961–1997) - First wife of Charles, Prince of Wales, & mother

of Prince William & Prince Harry of Wales. 4. Charles Darwin (1809–1882) - Naturalist; the originator of the theory of

evolution through natural selection & author of 'On the Origin of Species'. 5. William Shakespeare (1564–1616) - English poet & playwright. 6. Sir Isaac Newton (1643–1727) - Mathematician, physicist, astronomer, natural

philosopher, & alchemist. 7. Queen Elizabeth I of England (1533-1603) - Monarch (reigned 1558-1603). 8. John Lennon (1940–1980) - Musician with The Beatles. 9. Vice Admiral Horatio Nelson, 1st Viscount Nelson (1758–1805) - Naval commander. 10. Oliver Cromwell (1599–1658) - Lord Protector. 11. Sir Ernest Shackleton (1874–1922) - Polar explorer. 12. Captain James Cook (1728–1779) - Explorer. 13. Robert Baden-Powell, 1st Baron Baden-Powell (1857–1941) - Boy Scouts & Girl Guides founder. 14. Alfred the Great (849?–899) - King of Wessex (reigned 871–899). 15. Arthur Wellesley, 1st Duke of Wellington (1769–1852) - Military commander, statesman & Prime

Minister 1828–1830 & 1834. 16. Margaret Thatcher, Baroness Thatcher (1925-) - Prime Minister (1979–1990). 17. Michael Crawford (1942-) - Actor & singer. 18. Queen Victoria of the United Kingdom (1819–1901) - Monarch (reigned 1837–1901). 19. Sir Paul McCartney (1942-) - Musician with The Beatles. 20. Sir Alexander Fleming (1881–1955) - Biologist, pharmacologist, discoverer of penicillin.

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英国人の考える偉大な人を想像させることも教材になると紹介。

現物を見せながら、商品のプラスティックバッグに書かれていることも教材になることの紹介。

パラリンピックに対する英国人の反応として、

We will never look at disabled sports in the same manner again!

LORD Coe says the Paralympic Games has changed the perception of disabilities and disability sport forever (Metro, Mon.) ■ I was a sceptic but am now a convert. I'm not ashamed to admit I was wrong. What a fantastic summer it has been. For a small but great nation, we showed. the rest of the world what makes Britain 'Great'. However, I do have one regret - not getting tickets when I had the chance.

Darren Fitch, via Facebook ■ Both the Olympic and Paralympic Games have been absolutely amazing. The athletes have been fantastic, the competition has been great, as has the organisation and amazing atmosphere. The country is in high spirits. There were fantastic out-comes with many medals for GB athletes and, as a bonus, the weather has been kind.

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Gordon Owen, via email ■ What a fantastic Games. Both Team GB and Paralympics GB deserve the highest praise, as indeed do all the volunteers, helpers and the armed forces personnel who stepped in to do the security work so magnificently. Can I also give praise to the Royal Mail and the Post Office for delivering the wonderful gold medal stamps?

Stuart Bentley, Essex ■ I used to look down on those with disabilities but the Paralympics have shown me the disabled are people and are worthy of respect.

Joel Arshad via Facebook ■ I think Channel Four deserves a lot of credit for injecting excitement and perspective into an event that was otherwise taken for granted. It made it mean more to the people than the BBC did for the Olympics.

Geoff Morris, via Facebook ■ For me it's been the best year to see sports. The Paralympics have been so wonderful. To see what courage the athletes have makes me very proud to be British. Congratulations to all those who made it possible. I'm sad it's all finished.

Kay Martin via Facebook ■ A lot of our athletes will probably now lose their disability living allowance if our lovely government gets its way, which will prevent them competing at such a level again.

Elaine Rose, via Facebook ■ It's been so amazing to watch everything. I've been glued to the TV for the past two weeks. It's been incredibly inspirational to people.

Sandra Cockburn, via Facebook ■ Hopefully the Paralympics will instill a civic sense in the public to give extra consideration and space to the old, frail, vulnerable and disabled, instead of trying to bulldoze all and sundry, especially in cities and crowded venues.

Independent Disabled, Glasgow

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トイレットペーパの歴史(ヨーク・キャッスル・ミュージアム) Toilet Paper The first toilet paper appeared in 1857. Called ‘medicated paper’, it was sold as sheets in a flat packet. To avoid embarrassment chemists sold it from under the counter. The first roll of toilet paper was introduced in 1928, followed by soft paper in 1932 and coloured paper in 1957. Alternatives to bought toilet paper included newspaper cut in to squares. Evidence from archaeological digs suggests that sponges, leaves, moss, stone and old clothing cut into squares were used before toilet paper was introduced.

などを紹介した。他の教材は 3月の講習時に再度紹介することとする。

当日、紹介しなかったが、英国滞在時にジャーナルを綴っていた。その二日分を紹介し、今回の勉強会の

報告とする。

現地滞在7日目 ヨーク マナースクール

York で滞在しているB&Bは8:15 から朝食の時間である。しかしながら、8時 30 分にマナー・ス

クールに行くことになっていたので、7:30 に特別にお願いした。パンとヨーグルトだけになったが、そ

れでも助かった。

8 時にタクシーが来て、8 時 20 分に着いた。しばらく受付で待っていると、校長のブライアンと教頭の

マイクが迎えに来てくれた。1年ぶりの再会である。そのままついてこいと言われて、従って行くと図書室

に入った。そこには全スタッフがいた。そこで紹介された。びっくりした。本学生のことを the best of the

best を連れてきてくれたと言われ、これには参った。

それから、我々だけが別室の小会議室に入り、学生を前にして校長が話をしてくれた。学生は一応メモ

を取っていた。少し気合いが入ってきたようだった。それからは、学生はそれぞれ案内役の生徒につれら

れてそれぞれの教室に移動した。

私はしばらく校長と一緒にコーヒーを頂きながら、話をしてそのあと、教頭やリーダーの教員の会議に

出席することになった。これまた驚いた。学校の運営に関する会議に関係者でないものが参加していいも

のか、それにどういう意味があるのか戸惑った。考えても仕方がない。校長のブライアンが参加しろと言う

のだから、でも幹部教員は何でこいつがいるのかと思っているだろうと意識が離れなかった。入学前の子

どもを持つ(10 歳の子ども)保護者会をどのような内容で運営するべきかが一つの議題で、担当の教員がプ

ランを述べていく。それを校長が即座に断を下していく。褒めることも忘れないが、何よりも校長としての

ビジョンがないとダメである。集まった保護者にポストカードを与えて、尋ねたいことがあれば送っても

らうなど、またインターネットで質問を受ける場合は、課題毎のセクション別の@で仕分けするようと校長

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から指示が入る。教員研修をヨークでは市の教育委員会の年 5 回することになっていて(その日は授業な

し)1 日かけていくつかの課題について話し合ったりする。ただ、マナー・スクールは 3 回しかしないそう

である。あとの 2回は保護者との話し合いに当てて、より実際的に対応するようにしている。

いい教員の獲得が校長として一番の仕事で、ヨーク大学の教員志望の学生などを TAとして呼び込み、大

学と連携した教員養成の活動を行うとともに、現場でこれはと思った人物を引き込む努力をしている。大

学の方へは教員の報告だけでなく実際に授業を受け生徒が直接大学当局の先生に報告したりするそうであ

る。校長はマックファンで、iPad を教員に導入し、会議の時にもデータの確認などをしながら話を進めて

いる。カレンダーを見ながらもある。委員会からのメール連絡もその場でそれを見ながら紹介していた。

いくつかの委員会(かなり多いらしいが)それぞれにMLがあり、メールが錯綜するくらい多いそうだ。確か

に教員スタッフは教室にほぼ張り付いている。教科の準備室もあるが、そのためにも連絡網体制が必要な

のだろう。ただ、我々が紹介されたスタッフ・ミーティングは週に 3 回開かれているので、意思疎通を図

るためのコミュニケーションの場を重視している様子がうかがえた。

教員向けのトレーニング・デイが来週用意されているらしく、その中味の検討をしていた。3 班にわかれ

て、bullying policy, behavior management などを discussion するらしい。また、GCSEの問題で 11

年生をどう救うかもかなりの問題になっている。Behavior management は生徒だけでなく教員も含まれ

ている。そこで、「True Colors」を導入してトレーニング・デイに使おうとしている。そのため、教員に

それを使ったストレス発散・意欲の向上を指導する facilitator に数人の教員がなるための研修費用がいる

など、教員の資質向上のための施策に必要な費用の予算も学校独自で校長が判断して取り入れている。

TRUE COLORS(トゥルーカラーズ)は、自分の個性を知り、 お互いの持ち味や違いを活かしたコミ

ュニケーションを実践するプログラム。

リーダー教員の会議のあと、校長と一緒に Learning Walk で教室の授業を見て回った。これは校長が教

員の授業を見て回って、一声かけながら教員の授業観察をすることである。教員評価のための授業観察は

一時間きっちり見ることになっている。組合教員はこの評価のための視察を年 2 回しか受け入れないとし

ているらしいが、だからこうやってそれとは関係なく教室に入り込むことを行っている。校長はその場の

生徒にも、すかさずクイズのような質問を投げかけたりして、うまく応えた生徒には名前を聞いて、その生

徒の名前をみんなの前で言いながら誉めていた。

私の方はこのあとドイツ語の授業を見せてもらった。昼からはまた会議に参加、最後にまた校長と

learning walk に出かけた。これは正式な評価のための観察で、校長はメモを取ったりしている。彼は生徒

がどれだけ授業に involve しているか、engage されているかを一番の評価項目にしていた。生徒が教員の

質問にどう答えようとしているか、その回答に他の生徒はどこまで引き込まれているかをポイントとして

いた。その際、私にもどうこの授業をどう思うかを尋ね、回答するとそれを伝えることにするなどと即座に

言っていた。私の見方が異なると考えていて、それを取り入れることにしていたようだ。観察が終わると

すぐに彼は校長室から授業観察した教員へメールでコメントなどをすぐに送りつけていた。素早い行動で

あった。

放課後、本学生と教頭を交えて授業など全般についてコメントし話し合った。数学の授業では実際にテ

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ニス・コートの長さを測ったりしたことに学生はびっくりしたようだ。教科書(テキスト)を授業で先生が配

り、生徒は教科書を自分では持っていないことにも驚いていた。付け加えると、学校はテキスト会社とライ

センス契約をして、ウエブ上でパスワードを打てば、教科書を自宅で見ることができるようにしている。音

声も出る。バーチャルテキストと言っていた。この方法がいいのかどうかは分からないが、IT 化を押し進

めている。ただし、これを押し進めると教材内容の画一化となり、目の前にいる生徒を意識した教員の個

性的な進め方、工夫した進め方は望めないかも知れない。 教育には生徒一人ひとりに向き合うという原点

の哲学が必要である。

マナースクール2日目+知人宅訪問

9 時半、歩いてヨークセンターまで歩き National Railway Museum をまず訪ねた。日本の新幹線の 0

型が置いてある。何よりもハリーポッターの機関車が設置されている。入り口で寄付金を払った。Great

Court にハリーポッターの機関車があった。学生は熱心に写真を撮っていた。そこらは、市のマーケット、

Shambles を訪ねたりした。昼食を取り、タクシーに乗ってまた、マナー・スクールに向かった。

12 時 45 分ほどに着いた。受付を済ませ待っているとマイクがやって来て、プレゼンのためのコンピュ

ータの確認をすることになった。教室はマック環境でなかった。結局私はプレゼンをしなかったが、学生

は緊張しながらもそれなりにがんばった。英語がさっと出てこないということもあった。もう少しゆっく

りと思うところもあった。改善の余地は多々あったが、英国の中学生を前に授業でプレゼンをすることに

最初、心臓が破裂しそうであったと思う。時間の使い方が頭に入っていないほど緊張していたと思うが、と

にかく頑張った。いい経験になったと確信する。終わったあと、達成感でいい意味での自信を持ったよう

だ。

この二日間のマナー・スクールでの活動は大いなる好結果を彼らに残したようだ。マナー・スクールの

校長教頭をはじめスタッフの理解に感謝する。ヨークの住民がそうアジアの国へ行くことはない。そうい

う意味でアジアの人間が話したことはマナー・スクールにとってもよかったのだろう。

授業が終わって、知人の娘さんが迎えに来てくれた。知人の家まで 30 分弱かけて歩いていった。着くと

奥さんのビブがいろいろともてなしを考えていてくれた。7人も押しかけているのだが、軽食からメインの

食事、チョコレートケーキまで作っていてくれた。学生も感激していたようだ。イラに家の中を紹介して

もらっていた。英国の娘さんお部屋を見ることができたこともよかったであろう。何よりも温かなもてな

しに心が和んだことだろう。7 時頃に知人の知り合いの老夫妻がやって来て学生と楽しく話し合っていた。

私は知人のスティーブが仕事から帰ってきたので、二人でゆっくり話し合った。1年ぶりの再会を確かめ合

った。"meet up"という表現は、「時間をとって落ち合ってともに時間を過ごす」というニュアンスがある。

まさにmeet up であった。

しばらくして、知り合いと学生が話し合っているところに行き、スティーブに英国での child-abuse の

現状や彼がその子どもを救出することにどうがんばっているかの話を当事者として学生に話してもらった。

懸命に学生は耳を傾けていた。とてもいいレクチャーになった。 娘さんのイラも一緒にいてくれ、楽し

い会話の時間をもった。願わくば、学生にもっと積極的に話して欲しいがが、内容が難しくなると仕方がな

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いのかも知れない。ショッピングの話になると元気になった。

9 時くらいまでお邪魔して、そこから車で宿泊しているところまで、2回に分けて送ってもらった。あり

がたいことである。2回目に戻った学生にはイラも同乗して宿泊先まで来てくれて別れを惜しんだ。学生は

感激していたことだろう。

今日の一日は、非常に有意義であった。彼らもささやかなプレゼントを持って来ていたが、知人の奥さ

んも学生一人ひとりに手作りのお土産を用意していてくれた。本当に感謝である。私も私の娘が手作りの

サシェットや妻の手作りのネックレスなどいろいろとお土産を持っていった。喜んでもらって何よりであ

った。

“Yes, we also see you as part of our extended family...the world is big place, but it is also very small

and we have many, many things in common...we understand each other on a deep level!”知人の奥

さんからもらった言葉であった。

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【勉強会終了後、参加者の先生からいただいたコメント・メール】

大阪女学院大学 中井先生

発表の学生の皆さん

こんにちは。

昨日は貴重な発表会に参加させていただけたことを、嬉しく思っています。

ありがとうございました。

発表の感想ということで、率直なところを述べさせていただきます。ピント外れと

思われる部分は無視願います。

【たいへんよかった点】

まず、発表の構成が非常によかったです。「街角観察」「創作教材」「授業観察」と明確に

分けることで、参加者がたいへん理解しやすく、発表者自身にも達成感が味わえるのではないかと

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思いました。特に、「街角観察」については、学校以外の社会文化事情に焦点が当てられ、

監視カメラやタクシーのデザイン、道路標識、大英博物館等、若者ならではの視点が面白かったです。

自分で開拓・研究した内容は、教員になってから、きっと役立つことと思います。

【次回に期待したい点】

時間的に余裕があれば、イギリス訪問の学生の皆さんで、「学校内のこだわり取材」をしたら面白いので

はないでしょうか。日本の学校と対照させながら考えたりすると、もっと面白くなると思います。みなさ

んで分担して取り組んだ後、合体すると、一大プロジェクトになるのではないでしょうか。

例えば、

・「私が気付いたアメリカ英語とイギリス英語の違い」

・「校則はこのように違う」

・「スクールバス等、生徒の通学手段」

・「入学式と卒業式」

・「学校と警察との連携」

本当に、もっとじっくり聞きたかった発表ばかりでした。これから英語学習を始める中学生なんかに見せ

るとユニークで新鮮にうつる内容のものもありました。今後とも、中井先生のご指等の下、自分の「こだ

わり」を大切に、どん欲に学んでいってください。ありがとうございました。

(滋賀県立八幡高等学校)

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中井先生、そして6名の学生のみなさん、発表と詳細な資料をありがとうございました。

簡単ですが、発表の感想を書かせていただきます。

生徒の発表資料が一人15~20分程度で、どの生徒の資料も3部構成になっており、

わかりやすかったです。構成は以下の3つで

①街角観察 ②創作教材 ③授業観察 から成り立っていました。

①「学び」と「気づき」のサイクル

今回の発表は6人の生徒さんとも、「実践発表」になっていたと感じました。その理由として、

①自分が実際にイギリスを歩き回って得た観察や考察を、勉強会の場で発表するという機会が与えられ、

そのような覚悟や視点を持って、英国での研修に取り組まれたこと。

Page 16: 第18回勉強会「英語の教え方教室」報告6 100 Greatest Britons (BBC Poll, 2002)

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②教材を開発するという目的を意識して、問題意識を持ちながら、研修をされたこと。

③また、実際に教材作成に携わったり、自分の「気づき」を言語化することで、問題点を明らかにしたこ

と。

「学び」と「気づき」のサイクルの中で、自分の問題意識を振り返ることは、大変だと思いますが、とて

も有益な体験になったのではないでしょうか?普通に旅行に行くということだけではここまでの「学び」

の深まりはないような気がします。

②なぜイギリスの中学生は授業に対する取り組みが前向きなのか?

横田さんの発表資料の中で、

イギリスの中学生について、「前向きに取り組む」、「一切寝ない」「勉強することが好き」

などの指摘がありました。

日本の生徒との授業態度と比較して考えてみると、イギリスの生徒の学ぶことに対する意欲が非常に感

じられたのですが、その違いは何かが気になりました。

前向きな理由・要因についてはさまざまなことが考えられると思いますが、そのひとつの要因は「実体

験を伴う学び」ではないでしょうか?

歴史の授業で「大量生産」をテーマにした授業があり、担当の先生が、大量生産の概念を理解させるの

に、ある活動を取り入れました。「一定時間内に車の絵をどれだけたくさん描けるか?」という活動で、

クラスの生徒を2グループにわけ、一つのグループは生徒が一人ひとり違う車のパーツを書いていき、完

成させる。もうひとつのグループは一人が1台ずつ車の絵を完成させる。この2つのグループに実際に作

業させることで、生徒に大量生産とはどのようなものかを体感させたそうです。この話を聞いて、学ぶタ

ーゲットを生徒の身近にあるものを使って、実感させるという点がとても感動しました。話を聞くだけで

なく、生徒が自ら体を動かすことで、実感を伴った「学び」ができるというのは素晴 らしいと思います。

この一例だけで、イギリスの教育を総括するのは危険かもしれませんが、少なくとも、講義スタイルの

知識の一方的な伝達よりは優れているように思います。

③「目標の提示」の重要性

樋口さんの授業観察の中で、

「目標の提示」がすべての授業の最初にされているという記述がありました。

三重でも指導主事の先生が研修などの機会があるごとにいっておられたので、印象に残っているのですが、

その先生は「目標の提示」や「生徒がその授業で学ぶことの提示」を黒板に板書してくださいと言われて

いました。

Page 17: 第18回勉強会「英語の教え方教室」報告6 100 Greatest Britons (BBC Poll, 2002)

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生徒の立場で「目標の提示」を考えてみると、大変重要だと思います。授業の最初に、いまから何を勉

強するかがわかります。そして、さらに大事なことは、教師と生徒が目標を明示的に共有することではな

いでしょうか?

自分が今意識をしている「目標の提示」が、このようにイギリスの学校でも同じようになされているの

で、改めてその重要性に気づかせていただいたように思います。

改めて、このような機会を与えてくださった中井先生ありがとうございました。

先生の教材を見させていただき、自分の授業での活用方法を考えたいと思います。

(三重県立名張高等学校)

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中井先生

昨日はありがとうございました!

英国にいきたくなりました。何もかもが教材!というフレーズが一番残りました。

資料、昨日参加希望だった S先生(瀬田工業高校:同期)にも今日、渡しました。

とてもうれしそうで、熟読する!と言っていました。12月に同期や知り合いで伺えるよう

呼びかけを頑張ります。

またいろいろ教えてください。女学院の生徒さんの姿に感動です。私も日々勉強します。

今後ともよろしくお願いします。

(滋賀県立石山高校高等学校)

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中井先生、

土曜日に、大阪女学院大学での勉強会に参加させていただいた、滋賀県立伊香高校の S と申します。その

際は、生徒様の発表や中井先生がたくさんのご経験をシェアしてくださったおかげで、大変勉強になりま

した。

(滋賀県立伊香高等学校)

Page 18: 第18回勉強会「英語の教え方教室」報告6 100 Greatest Britons (BBC Poll, 2002)

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先日はありがとうございました。たくさん勉強させて頂きました。

放課後の部活動で、「いいと言うまで走っておけ。」と言われて、「いつ終わるんだろう。」と思いながら

走り続ける生徒はやる気が起きるでしょうか、また、自分の能力を伸ばすための練習をしようとするでし

ょうか。「○×メートルを何分以内に何本走ること。」など具体的な、今までよりも少し高い目標を提示する

ことは部活動でもやりますよね。学習でも同じですね。でも忙しさにかまけて、もしくは、試験範囲を終

わらせることにばかり気を取られて、その日の授業の目標を提示せずにすぐに授業に入っている自分に気

づかされました。

勉強会後の懇親会で、私たち指導者が知識や経験を共有することについても自分の至らなさに気づかさ

れました。小生にできることは「集中力トレーニング」を核に勉強してきたメンタルトレーニングかもし

れません。(英語は不勉強ですのでご勘弁ください。)教員希望の某大学1・2年生を中心とした学生20

0名ほどに対して半年の講義の終わり頃に90分×2回「生徒の能力アップ法」みたいな感じでお話+実習

してきたことをご紹介することくらいだと思います。機会があったら伝えさせて戴き、いろいろな活用法

をご教示頂ければ幸いです。

今後ともよろしくお願い致します。

(大阪府立枚方津田高等学校)

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土曜日の勉強会、ありがとうございました。

学生さんたちの発表が、とてもよく整理されていたことに、よい刺激をうけることができました。

(大阪府立豊中高等学校)