10
207 第3節 農業経営体と農業就業者の動向 (農業経営体は引き続き減少) 農業経営体 の数は、一貫して減少していますが、平成 22(2010)年においては、平 成 17(2005)年と比べて 16%減少し 167 万9千経営体となりました 2 。このうち、販売 農家 3 の数は、平成 17(2005)年と比べて 33 万2千戸(17%)、1年当たり6万6千戸 減少し、163 万1千戸となりました(図2- 40)。販売農家の数は、平成 17(2005)年 に自給的農家 4 や土地持ち非農家 5 を合わせた数を下回る状況になっていましたが、平成 22(2010)年には、さらに 64 万戸下回っています。このように、自給的農家や土地持 ち非農家数が増加する一方、販売農家数が大きく減少した理由としては、高齢化、後継者 不足による離農や、小規模農家の集落営農 6 への参加、大規模経営体への農地の権利移転 等により、販売農家の定義を満たさない農家が増加したこと等が考えられます。 また、販売目的で農作物を作付・栽培及び家畜を飼養した農家の数について、品目別 に平成 17(2005)年から平成 22(2010)年にかけての推移をみると、水稲作付農家 が 140 万 戸 か ら 116 万 戸 (17 % 減 )、 露 地 野 菜 作 付 農 家 が 44 万 戸 か ら 37 万 戸 (15 % 減)、果樹栽培農家が 28 万戸から 24 万戸(12%減)、乳用牛飼養農家が2万7千戸から 2万2千戸(19%減)、肉用牛飼養農家が8万戸から6万5千戸(19%減)、豚飼養農家 が6千戸から4千戸(32%減)となっています 7 図2-40 主副業別販売農家数等の推移 資料:農林水産省「農林業センサス」 0 100 200 300 200 100 300 万戸 297.1 119.6 95.4 82.0 86.4 77.5 163.9 265.1 127.9 69.5 67.8 79.2 90.6 169.8 233.7 123.7 59.9 50.0 78.3 109.7 188.1 196.3 109.1 44.3 42.9 88.5 120.1 208.6 163.1 88.3 38.9 36.0 89.7 137.4 227.1 副業的農家 準主業農家 主業農家 自給的農家 土地持ち非農家 平成 2 年 (1990) 7 (1995) 12 (2000) 17 (2005) 22 (2010) (1) 農業経営体の動向 1、3~6 [用語の解説]を参照 2 農林水産省「農林業センサス」 7 農林水産省「農林業センサス」(組替集計)

第1部 第3節 農業経営体と農業就業者の動向 (1) …第3節 農業経営体と農業就業者の動向 208 平成22(2010)年の販売農家について、主副業別にみると、主業農家1は36万戸(対

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207

第1部

第2章

第3節 農業経営体と農業就業者の動向

(農業経営体は引き続き減少)農業経営体1の数は、一貫して減少していますが、平成 22(2010)年においては、平

成 17(2005)年と比べて 16%減少し 167 万9千経営体となりました 2。このうち、販売農家 3 の数は、平成 17(2005)年と比べて 33 万2千戸(17%)、1年当たり6万6千戸減少し、163 万1千戸となりました(図2- 40)。販売農家の数は、平成 17(2005)年に自給的農家 4 や土地持ち非農家 5 を合わせた数を下回る状況になっていましたが、平成22(2010)年には、さらに 64 万戸下回っています。このように、自給的農家や土地持ち非農家数が増加する一方、販売農家数が大きく減少した理由としては、高齢化、後継者不足による離農や、小規模農家の集落営農 6 への参加、大規模経営体への農地の権利移転等により、販売農家の定義を満たさない農家が増加したこと等が考えられます。

また、販売目的で農作物を作付・栽培及び家畜を飼養した農家の数について、品目別に平成 17(2005) 年から平成 22(2010) 年にかけての推移をみると、 水稲作付農家が 140 万戸から 116 万戸(17%減)、 露地野菜作付農家が 44 万戸から 37 万戸(15%減)、果樹栽培農家が 28 万戸から 24 万戸(12%減)、乳用牛飼養農家が2万7千戸から2万2千戸(19%減)、肉用牛飼養農家が8万戸から6万5千戸(19%減)、豚飼養農家が6千戸から4千戸(32%減)となっています 7。

図2-40 主副業別販売農家数等の推移

資料:農林水産省「農林業センサス」

0

100

200

300

200

100

300

万戸 297.1

119.6

95.4

82.0

86.4

77.5

163.9

265.1

127.9

69.5

67.8

79.2

90.6

169.8

233.7

123.7

59.9

50.0

78.3

109.7

188.1

196.3

109.1

44.342.9

88.5

120.1

208.6

163.1

88.3

38.936.0

89.7

137.4

227.1

副業的農家

準主業農家主業農家

自給的農家

土地持ち非農家

販売農家

平成 2年(1990)

7(1995)

12(2000)

17(2005)

22(2010)

(1) 農業経営体の動向

1、3 ~ 6 [用語の解説]を参照 2 農林水産省「農林業センサス」7 農林水産省「農林業センサス」(組替集計)

Page 2: 第1部 第3節 農業経営体と農業就業者の動向 (1) …第3節 農業経営体と農業就業者の動向 208 平成22(2010)年の販売農家について、主副業別にみると、主業農家1は36万戸(対

第3節 農業経営体と農業就業者の動向

208

平成 22(2010)年の販売農家について、主副業別にみると、主業農家 1 は 36 万戸(対平成 17(2005)年比7万戸減、16%減)、準主業農家 2 は 38 万9千戸(同 5 万 4 千戸減、12%減)、副業的農家 3 は 88 万3千戸(同 20 万 8 千戸減、19%減)となっています 4。平成 17(2005)年から平成 22(2010)年にかけて、主業農家がどのように類型異動したかをみると、平成 17(2005)年時点で主業農家だった農家のうち、4万8千戸が準主業農家、8万3千戸が副業的農家、5万5千戸がその他(自給的農家、土地持ち非農家等)へと変化しています(図2- 41)。一方、準主業農家、副業的農家、その他から主業農家になった農家はそれぞれ5万6千戸、3万4千戸、2万7千戸となっています。このことから、主業農家の減少は、多くの主業農家が高齢化等により副業的農家、自給的農家、土地持ち非農家等になったことが主な要因であることがうかがえます。

(経営規模の拡大は一定程度進展)販売農家が減少するなか、販売農家1戸当たり経営耕地面積は、平成 22(2010)年に

は全国 2.0ha、北海道 21.5ha、都府県 1.4ha となり、5年前の平成 17(2005)年と比べてそれぞれ 0.2ha(12%)、2.8ha(15%)、0.1ha(9%)増加しています(図2―42)。この増加について、分母となる販売農家数、分子となる経営耕地面積の変化に分けて要因を分析してみると、北海道、都府県のどちらにおいても、経営耕地面積が減少し、販売農家数がさらに大きく減少するなか、1戸当たりの経営耕地面積が増加するという状況になっています(図2- 43)。

なお、1農業経営体(販売農家に組織経営体での農業法人、集落営農組織を加えたもの)当たりの経営耕地面積についてみると、平成 22(2010)年には全国 2.2ha、北海道 23.5 ha、都府県 1.6 ha となり、5年前と比べてそれぞれ 0.3ha(16%)、3.4ha(17%)、0.2ha

(14%)増加しています 5。

図2-41 主副業別販売農家数の類型異動(平成 17 (2005)~平成 22(2010)年(概数値))

資料:農林水産省「農林業センサス」(組替集計)を基に農林水産省で作成 注:1)その他は、自給的農家、土地持ち非農家等を含む   2)平成 22(2010)年は概数値

主業農家42.9 万戸→36.0 万戸(▲6.9 万戸)

準主業農家44.3 万戸→38.9 万戸(▲5.4 万戸)

副業的農家109.1 万戸→88.3 万戸(▲20.8 万戸)

その他 その他

その他

13.4 万戸

13.6 万戸

6.2 万戸

32.1 万戸

2.1 万戸

6.6 万戸

2.7 万戸

5.5 万戸

3.4 万戸8.3 万戸

5.6 万戸4.8 万戸

1 ~ 3 [用語の解説]を参照4、5 農林水産省「農林業センサス」

Page 3: 第1部 第3節 農業経営体と農業就業者の動向 (1) …第3節 農業経営体と農業就業者の動向 208 平成22(2010)年の販売農家について、主副業別にみると、主業農家1は36万戸(対

209

第1部

第2章

図2-43 販売農家1戸当たり経営耕地面積の増加要因

資料:農林水産省「農林業センサス」を基に農林水産省で作成 注:販売農家のうち経営耕地のある農家1戸当たりの経営耕地面積について、基準年 (t-1) と比較年 (t) の2点間の   変化を(⊿s)として、次の式により要因分解した。   (s:1戸当たり経営耕地面積、F:販売農家数、S:経営耕地面積)

⊿s=st-st-1=St St-1

          Ft-Ft-1

  =1          1   1   2・(St-St-1)・(Ft

+Ft-1):経営耕地面積要因

   +1           1   1    2

・(St+St-1)・(Ft-Ft-1

):販売農家数要因

0

-1

1

2

34

11.88ha/ 戸↓ [+2.07ha/ 戸 ]13.95ha/ 戸

平成2(1990)~7(1995)年

13.95ha/ 戸↓ [+2.03ha/ 戸 ]15.98ha/ 戸

7(1995)~ 12(2000)

15.98ha/ 戸↓ [+2.70ha/ 戸 ]18.68ha/ 戸

12(2000)~ 17(2005)

18.68ha/ 戸↓ [+2.80ha/ 戸 ]21.48ha/ 戸

17(2005)~ 22(2010)

ha /戸 (北海道)

ha /戸

1.10ha/ 戸↓ [+0.05ha/ 戸 ]1.15ha/ 戸

平成2(1990)~7(1995)年

1.15ha/ 戸↓ [+0.06ha/ 戸 ]1.21ha/ 戸

7(1995)~ 12(2000)

1.21ha/ 戸↓ [+0.09ha/ 戸 ]1.30ha/ 戸

12(2000)~ 17(2005)

1.30ha/ 戸↓ [+0.12ha/ 戸 ]1.42ha/ 戸

17(2005)~ 22(2010)

(都府県)

2.17販売農家数要因

0

-0.2

0.2

0.4

2.423.22 3.32

▲0.10 ▲0.40 ▲0.52 ▲0.53

0.13 0.150.22 0.25

▲0.08 ▲0.09 ▲0.13 ▲0.13

経営耕地面積要因

販売農家数要因

経営耕地面積要因

2.07 2.032.70 2.80

1戸当たり経営耕地面積の増加量

0.05 0.060.09 0.12

1戸当たり経営耕地面積の増加量

図2-42 販売農家 1戸当たりの経営耕地面積の推移

資料:農林水産省「農林業センサス」 注:販売農家のうち経営耕地のある農家1戸当たりの経営耕地面積。ただし、昭和 60(1985)年以前は、   総農家1戸当たりの経営耕地面積

昭和 35年(1960)

40(1965)

50(1975)

60(1985)

平成 2(1990)

7(1995)

12(2000)

17(2005)

22(2010)

012

0

5

10

15

20

25

0.8

3.5

0.9

4.16.8

10.111.9

14.016.0

18.721.5

0.9 1.0 1.3 1.4 1.5 1.6 1.8 2.0

0.8 0.8 1.1 1.1 1.2 1.2 1.3 1.4

全国

北海道(右目盛)

都府県

ha

ha

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第3節 農業経営体と農業就業者の動向

210

経営耕地面積規模別の販売農家数の割合について、平成 17(2005)年から平成 22(2010)年までの変化をみると、北海道では3ha 未満層、3~ 10ha 層で低下する一方、20ha 以上層で引き続き上昇しています(表2- 23)。また、都府県では1ha 未満層で低下する一方、3ha 以上層は上昇しています。しかし、平成 22(2010)年において、1ha 未満層の割合は 57%、3ha 未満層の割合は 91%と依然として大きな割合を占めています。

なお、経営部門別に販売農家1戸当たりの平均経営規模(全国)の推移をみると、畜産では、1戸当たり飼養頭羽数が大きくふえ、野菜、果樹でも相当程度の規模拡大がみられる一方、稲作ではそのテンポが緩やかになっています(表2- 24)。

(単位:万戸、%)平成2年(1990)

7(1995)

12(2000)

17(2005)

22(2010)

道海北

3.0ha 未満 2.1(23.7)

1.6(21.9)

1.3(20.9)

1.0(18.9)

0.8(18.1)

3.0 ~ 10.0 3.4(39.2)

2.6(35.0)

2.0(31.5)

1.4(27.6)

1.0(22.6)

10.0 ~ 20.0 1.6(18.3)

1.5(20.0)

1.3(20.4)

1.1(20.9)

0.9(21.0)

20.0 ~ 30.0 0.7(8.6)

0.7(9.7)

0.7(10.4)

0.6(11.7)

0.6(13.0)

30.0 ~ 50.0 0.6(7.2)

0.7(8.9)

0.6(10.2)

0.6(12.1)

0.6(14.1)

50.0ha 以上 0.3(2.9)

0.3(4.5)

0.4(6.6)

0.5(8.9)

0.5(11.2)

県府都

1.0ha 未満 175.3(60.8)

155.7(60.4)

135.8(59.7)

110.9(58.0)

89.7(56.5) 144.4

(91.0)1.0 ~ 3.0 100.5

(34.8)88.3(34.3)

77.3(34.0)

65.8(34.4)

54.7(34.5)

3.0 ~ 5.0 10.0(3.5)

10.1(3.9)

9.9(4.4)

9.4(4.9)

8.6(5.4)

5.0 ~ 10.0

2.6(0.9)

3.0(1.2)

3.6(1.6)

4.0(2.1)

4.3(2.7)

10.0 ~ 20.0

0.5(0.2)

0.8(0.3)

0.9(0.5)

1.2(0.7)

20.0 ~ 30.0 0.1(0.1)

0.2(0.1)

30.0ha 以上 0.1(0.0)

0.1(0.1)

表2- 23 経営耕地面積規模別販売農家数の推移

資料:農林水産省「農林業センサス」 注:1)( )内は構成比   2) 1.0ha 未満(都府県)、3.0ha未満(北海道)は、経営耕地なしの農家数を含む

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211

第1部

第2章

(稲作では主業農家の割合が低位)主業農家については、全販売農家数に占める割合では2割程度となっていますが、農業

産出額(農業粗収益)、農業所得 1 ではそれぞれ7割程度を占めていると推計されます。しかしながら、品目別に農業総産出額の主副業別農家割合をみると、畑作物、野菜、花

き、畜産では主業農家が8~9割を占めているのに対し、米では4割程度と依然として低い状況です(図2- 44)。品目別に主副業別農家数の割合をみても、水稲では、主業農家の割合が他の品目と比べて特に低く2割となっています。さらに、主副業を含めた販売農家における農業就業人口 2 の平均年齢については、水稲作付販売農家では 66.6 歳と他の品目より高くなっています。すなわち、稲作においては、小規模・兼業・高齢農家が生産の多くを支えている実態にあり、今後、農業経営の持続性を考慮した対応が必要な状況にあります。

1、2 [用語の解説]を参照

表2- 24 農家1戸当たりの平均経営規模 ( 経営部門別)の推移(全国)

昭和 35年

(1960)

40

(1965)

50

(1975)

60

(1985)

平成7

(1995)

12

(2000)

17

(2005)

22

(2010)

規模拡大率(倍)

(平成22/昭和35年)

水稲(a) 55.3 57.5 60.1 60.8 85.2 84.2 96.1 105.1 1.9

野菜(a) 8.6 7.4 8.7 9.8 14.8 55.0 53.4 64.4 7.5

果樹(a) 20.1 - 36.1 37.8 46.0 56.8 60.7 64.3 3.2

乳用牛(頭) 1.1 2.0 6.9 16.0 27.4 34.2 38.1 44.0 40.0

肉用牛(頭) 1.2 1.3 3.9 8.7 17.5 24.2 30.7 38.9 32.4

養豚(頭) 2.4 5.7 34.4 129.0 545.2 838.1 1,095.0 1,437.0 598.8

採卵鶏(羽) - 27 229 1,037 20,059 28,704 33,549 44,987 1,666.2

ブロイラー(羽) - 892 7,596 21,400 31,100 35,200 38,600 44,800 50.2

資料:農林水産省「農林業センサス」、「家畜の飼養動向」、「畜産統計」、「畜産物流通統計」注: 1) 水稲は、昭和60(1985)年以前は水稲収穫農家の水稲収穫面積、平成7(1995)年は販売農家のうち水稲収穫農家の水

稲収穫面積、平成12(2000)年以降は販売農家のうち販売目的で水稲を作付した農家の水稲作付面積。ただし、昭和35(1960)年は稲の値。平成22(2010)年は組替集計

2) 野菜は露地野菜の面積であり、昭和60(1985)年以前は野菜収穫農家の野菜収穫面積、平成7(1995)年は販売農家のうち野菜収穫農家の野菜収穫面積、平成12(2000)年以降は販売農家のうち販売目的で野菜を作付した農家の野菜作付面積。なお、平成12(2000)年以降は自給用に野菜を作付ける農家が対象外となり連続しない。

3) 果樹は露地果樹の面積であり、昭和60(1985)年以前は果樹栽培農家の果樹栽培面積、平成7(1995)年は販売農家のうち果樹栽培農家の果樹栽培面積、平成12(2000)年以降は販売農家のうち販売目的で果樹を栽培した農家の果樹栽培面積。なお、果樹栽培面積には、未成園を含む。

4) 採卵鶏は、成鶏めす(種鶏を除く)の飼養羽数であり、種鶏のみの飼養者を除く。また、平成7(1995)年は成鶏めす羽数300羽未満の飼養者を除き、平成12(2000)年以降は成鶏めす羽数1千羽未満の飼養者を除く。

5) 乳用牛は経産牛、ブロイラーは肉用若鶏の値 6) 採卵鶏及びブロイラーの規模拡大率は、昭和40(1965)年との比較 7) 養豚、採卵鶏については、平成17(2005)年は平成16(2004)年の値、平成22(2010)年は平成21(2009)年の値  8) ブロイラーの平成22(2010)年は平成21(2009)年の値

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第3節 農業経営体と農業就業者の動向

212

図2-44 主な品目別農業産出額、農家数の農家類型別割合(平成22(2010)年)図2-44 主な品目別農業産出額、農家数の農家類型別割合(平成22(2010)年)

品目 農業産出額(千億円) (%)

18.0 22.3

0.7 0.90.7 0.8

20.3 25.3

6.8 8.4

3.3 4.1

7.1 8.8

4.4 5.5

5.1 6.3

小麦大豆

野菜

果樹

花き

乳用牛

肉用牛

主業農家38.1%

準主業農家26.2%

副業的農家35.7%

87.668.4

79.7 9.0 11.3

21.014.864.2

78.4 11.4 10.1

3.93.592.6

79.2 10.3 10.5

5.24.989.9

12.0 19.65.5 6.9

(産出額ベース)

0 20 40 60 80 100%

水稲

小麦

大豆

野菜

果樹

花き

乳用牛

肉用牛

18.7

48.8 19.2 32.0

46.526.027.5

40.9 21.8 37.3

43.025.331.8

49.9 20.5 29.6

10.78.980.3

44.1 21.7 34.2

15.910.373.8

27.9 53.4

(販売農家数ベース)主業農家 準主業農家 副業的農家

平均年齢66.6歳

59.8歳

65.4歳

63.8歳

60.8歳

62.1歳

56.2歳

62.7歳

57.9歳

資料:農林水産省「農林業センサス」(平成22(2010)年、組替集計)、「平成21年経営形態別経営統計(個別経営)」(組替集計)、「平成 21 年生産農業所得統計(概算)」を基に農林水産省で作成

 注:1) 販売目的で農作物を作付け・栽培及び家畜を飼養した農家数について、主副業別の割合の推計をしたもので、自給的農家、土地持ち非農家等の割合は除く。

   2) 平均年齢は農業就業人口の年齢

主業農家38.1%

準主業農家26.2%

副業的農家35.7%

87.668.4

79.7 9.0 11.3

21.014.864.2

78.4 11.4 10.1

3.93.592.6

79.2 10.3 10.5

5.24.989.9

12.0 19.65.5 6.9

18.7

48.8 19.2 32.0

46.526.027.5

40.9 21.8 37.3

43.025.331.8

49.9 20.5 29.6

10.78.980.3

44.1 21.7 34.2

15.910.373.8

27.9 53.4

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213

第1部

第2章

(農業経営体は今後も減少の見込み)農林水産省が平成 22(2010)年3月に策定した「農業構造の展望」によれば、我が国

全体で少子・高齢化が進むなかで、平成 32(2020)年の販売農家数は、現状のすう勢のままでは 111 万戸、主業農家数は 23 万戸とさらに減少すると見込まれています。

このため、今後、戸別所得補償制度に加え、平成 21(2009)年に行われた農地制度の見直しにより創設された「農地利用集積円滑化事業」の活用等を通じて担い手への利用集積等を進めていく必要があり、これらの効果も加味すれば、販売農家 121 万戸、主業農家 24 万戸にとどまると見込まれています。また、主業農家1戸当たりの経営耕地面積は、平成 21(2009)年の 5.1ha から平成 32(2020)年には 7.7ha 程度になると見込まれています。

(集落営農は増加)集落営農は、高齢化等により担い手が不足している地域において、地域農業を維持して

いくために必要な取組です。集落営農の数は、平成 17(2005)年以降大きく増加し、近年、ほぼ横ばいで推移していましたが、平成 23(2011)年には前年に比べ 1,066 増加し1万 4,643 となっています(図2- 45)。農業地域別にみると、東北、九州、北陸、近畿、中国で多くなっています。

平成 22(2010)年に新たに組織化された集落営農の多くは、戸別所得補償モデル対策 1 によるものと考えられますが、今後ともその組織化、法人化、農地の維持・管理の活動等を支援していくことが重要です。なお、戸別所得補償制度を契機とした集落営農からの脱退、集落営農の解散、集落営農から農地の返還を求めるなどといったいわゆる貸しはがしについては、事例としては存在するものの、全国的には拡がっていない状況です。

今後、集落営農については、「農業構造の展望」によれば、生産条件の不利な中山間地域を中心に、その組織化が漸次進み、平成 32(2020)年にはその数が2万程度まで増加すると見込まれています。

1 戸別所得補償モデル対策については、第 1節 戸別所得補償制度の本格的な実施を参照

図2-45 農業地域別集落営農数の推移

資料:農林水産省「集落営農実態調査」

3,417

東北 北陸 関東・東山北海道 中国東海 近畿 九州・沖縄0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

四国

1,624

2,997

396289 283

1,9122,089

2,257

463

936 994753790

859

1,5851,771

2,048

1,5861,759

1,840

193378 358

1,551

2,5682,587

平成17(2005)年平成22(2010)年平成23(2011)年

集落営農

全国平成 17(2005)年 10,063   22(2010)   13,577   23(2011)   14,643

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第3節 農業経営体と農業就業者の動向

214

なお、既にみてきたように、販売農家数は平成 17(2005)年から平成 22(2010)年の5年間で大きく減少していますが、都道府県別に集落営農への取組と過去5年間の販売農家の減少率との関係をみると、全耕地に占める集落営農の経営耕地面積の割合(集落営農の耕地面積カバー率)の大きさと、販売農家数の減少度合いには大きな相関がみられます(図2- 46)。すなわち、小規模・高齢農家等の個別経営が集落営農に参加し、販売農家としての要件を満たさなくなったという事情も、販売農家数の減少要因となっていることが考えられます。

(集落営農の目的・活動内容は多様)集落営農の活動目的をみると、「所得を上げて地域農業の担い手となるため」45%、「地

域の生産調整の実施主体となるため」63%となっています(図2- 47)。また、92%の組織が「地域の農地の維持管理のため」を目的としており、今後とも集落営農のこのような目的・機能に着目した取組を推進していくことが必要です。なお、組織形態別にみると、法人では「所得を上げて地域農業の担い手となるため」が 59%と、任意組織より相当程度高くなっています。

図2-46 集落営農の耕地面積カバー率と販売農家減少率(都道府県別)

資料:農林水産省「農林業センサス」、「平成 21年耕地面積 (7月 15日現在 )」、「平成 21 年集落営農実態調査」を基に   農林水産省で作成 注:1) 集落営農の耕地面積カバー率=集落営農の経営耕地面積/耕地面積×100   2) 販売農家数減少率は、平成 22(2010)年と平成 17(2005)年を比較

(集落営農の耕地面積カバー率)

長野

石川 秋田

滋賀宮城

福岡

佐賀

0-50

-40

-30

-20

-10

0

福井

5040302010

広島

富山

y = -0.5801x -11.533

R² = 0.7922(販売農家減少率)

図2-47 集落営農の活動目的別集落営農数の割合(平成 22(2010)年、複数回答)

資料:農林水産省「集落営農活動実態調査」0 20 40 60 80 100

地域の農地の維持管理のため

地域の生産調整の実施主体となるため

所得を上げて地域農業の担い手となるため

90.494.691.5

65.655.662.9

39.959.4

45.2

全国法人任意組織

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215

第1部

第2章

集落営農の活動内容についてみると、農業生産面では、今後、新たな農産物の生産を予定している組織は4割で、具体的な作物としては「主食用米以外の米」16%、「野菜類」10%、「雑穀・いも類・豆類(大豆を除く)」4%等となっています 1。また、農業生産以外の事業に取り組んでいる組織は3割で、具体的な取組としては「消費者等への直接販売」22%が最も多く、次いで「農産物の加工」6%、「都市住民との交流」5%等となっています(図2- 48)。このように、集落営農では経営の複合化・多角化により、経営の安定化を目指すものも多くなっています。

1 農林水産省「集落営農活動実態調査」(平成 22(2010)年6月公表)

なお、農林水産省(農林水産政策研究所)が全国 76 の集落営農組織を対象に行った定点調査によると、野菜等の複合経営部門は、法人組織の 57%が導入しているのに対し、任意組織では 22%にとどまり、59%では今後も導入の予定がない状況にあります(表2- 25)。また、直売・農産加工等の多角化部門についても、法人組織の 50%が導入しているのに対し、任意組織では 11%にとどまっています。

図2-48 農業生産以外の事業に取り組んでいる集落営農数割合

資料:農林水産省「集落営農活動実態調査」

現在取り組んでいる

0

5

10

15

20

25

30

消費者等への直接販売

農産物の加工

都市住民との交流

農家レストラン

その他

主な取組内容(複数回答)

18.7 平成 20(2008)年

平成 22(2010)年

27.5

12.7

21.8

4.4 5.6 5.0 4.7

0.3 0.92.6 3.6

表2-25 集落営農組織の複合部門・多角部門への取組状況(平成 21(2009)年度)

資料:農林水産政策研究所「水田作地域における集落営農組織等の動向に関する分析結果」(平成 22(2010)年 10月公表) 注:近年立ち上げられた集落営農組織を中心とした 76組織を対象に実施

実数(組織) 構成比(%)

総数 導入している

導入する予定あり

導入する予定なし

総数 導入している

導入する予定あり

導入する予定なし

平成 20(2008)年度以降に導入

平成 20(2008)年度以降に導入

76 27 3 15 34 100.0 35.5 3.9 19.7 44.7

法人組織

法人組織

30 17 1 6 7 100.0 56.7 3.3 20.0 23.3

任意組織

任意組織

46 10 2 9 27 100.0 21.7 4.3 19.6 58.7

76 20 3 21 35 100.0 26.3 3.9 27.6 46.1

30 15 2 7 8 100.0 50.0 6.7 23.3 26.7

46 5 1 14 27 100.0 10.9 2.2 30.4 58.7

複合部門

多角部門

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第3節 農業経営体と農業就業者の動向

216

事 例  集落営農の多様な取組

(1) 地方公共団体による推進集落営農に関しては、機械の共同利用、作業の共同化を行い、コス

トを削減し、所得向上を目指すということ、地域農業を維持・発展させるということを基本に、各地の事情に応じた様々な取組が行われています。

例えば、広島県では、任意組織の段階を経ることなく法人設立を進め、集落営農法人の経営発展を推進しています。

また、島根県では、県土の8割を占める中山間地域を守るため、地域社会の維持・発展にも貢献する集落営農の組織づくりを進めており、農業生産のみならず、集落機能の維持にも資する取組を推進しています。

島根県

広島県

岡山県

山口県

集落営農に関する特徴的な取組

広島県

○土地条件に恵まれないなか、安定的な生産構造に転換するため、集落型法 人の設立と経営の高度化を推進○県単独の集落営農法人化啓発・促進事業、集落法人設立円滑化事業等によ り、法人の設立促進費を助成するほか、集落型法人のネットワーク化、専 門家による相談活動等を支援

島根県

○県土の8割を中山間が占めており、それら地域の農地を守り、地域社会の 維持・発展を図るとの理念のもとに、地域貢献型集落営農を推進○このため、県等では、集落営農の経営発展のための野菜等の少量多品目生 産や高齢者の外出支援サービス等の地域維持活動への取組を支援

(2) 高齢者の役割に配慮した集落営農

岩手県矢や

巾はば

町ちょう

の室むろおか

岡営農組合では、従来から地域の農作業受託組織として活動してきましたが、地域農業の担い手として安定的に農地を引き受けられるようにするため、平成 17(2005)年に法人化しました。組織内に、機械作業、転作、加工等の部会を設けたほか、機械作業は、時間に余裕のある定年退職者等が担当することにより、各構成員の役割分坦を明確にし、経営の効率化を図っています。

また、組合員外の分も含めて水稲育苗に取り組んでいるほか、女性や高齢者を中心とした園芸部門では、ピーマン、ミニトマト等の栽培にも取り組み、年間を通じて安定した作業機会を確保しています。

岩手県

秋田県

矢巾町

活躍する高齢者

中山間地域での法面の草刈り(島根県雲南市)

広島県集落法人連絡協議会の様子