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2 回公認心理師国家試験講評と解答速報 2019 8 9 日版解答) LEC 公認心理師講座作成担当(文責 神戸威行) 本講評と解答速報について 2019 8 4 日に第 2 回公認心理師国家試験が実施された。本講評では(1)2 回試験の注目点、 (2)LEC 版の解答、 (3)LEC 各講座にて取り扱った内容との適合度、 (4)LEC 公認心理師予想公開模試と 2 回本試験との照合率が高い問題の一例(別紙参照)、 (5)他担当講師からの試験講評(山田講師・池 田講師・藤島講師)、(6)今後に向けた学習上の留意点、(7)次年度(第 3 回本試験)に向けた LEC から の講座・模擬試験予定について説明する。 (注)なお各項目や評価は LEC 独自の判断によるものである。参考程度に留めて頂けたら幸いです。 1. 2 回試験の注目点 ①難易度は確実に上昇している ・前年試験は 16000 字以上読みこませ、時間を多く使わせた試験であったが、本年は「午前試験‥約 15100 字」「午後試験‥約 15300 字」と全体の文字数が減少した点、「迷わせる問題を午前午後とも に前半から中盤に設定」している点には注目したい。 ・試験問題を読み込む分には時間が余る文字量ではあったのだが、難易度も、法令理解のレベルを上げ たことで、全体の文字数が調整されている。 ・受験生にとって解きやすく、配点の高い事例問題をできるだけ後半にして、厳しく迷わせる設問を前 半から中盤に設定している。受験生によっては、前半から中盤に時間を多く使ってしまい、平易な後 半の設問に時間を十分に使えなかった人も多かったように見受ける。難易度は確実に上昇しており、 この傾向は今後も続くものと思われる。 ②合格点は 138 点(60%) 合格率は北海道試験(12 月 16 日)を下回る可能性がある ・この難易度、取り組みづらさであっても合格点は 138 点(60%)で、前年と変わらないだろう。 ・以下は前年度の本試験の合格率である。心理系に関連する他資格(臨床心理士 63.6%、精神保健福 祉士 62.7%)を下回る程度で設定しているとすれば、以下の合格率を下回る程度に設定するのは理 解ができる。ただし、第 2 回受験生の当日の結果次第であるが、上回って欲しいと願っている。今後 に向けては、6 割程度~5 割後半の合格率を見込んで準備しておいた方が良いだろう。 試験日 受験者数 合格者数 合格率 総得点 合格点 9月9日 35020 27876 79.6 230 138 12 月 16 日 1083 698 64.5

第2 回公認心理師国家試験講評と解答速報 · 第2 回公認心理師国家試験講評と解答速報 (2019 年8 月9 日版解答) lec公認心理師講座作成担当(文責

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第 2 回公認心理師国家試験講評と解答速報

(2019 年 8 月 9 日版解答)

LEC 公認心理師講座作成担当(文責 神戸威行)

本講評と解答速報について

2019 年 8 月 4 日に第 2 回公認心理師国家試験が実施された。本講評では(1)第 2 回試験の注目点、

(2)LEC 版の解答、(3)LEC 各講座にて取り扱った内容との適合度、(4)LEC 公認心理師予想公開模試と

第 2回本試験との照合率が高い問題の一例(別紙参照)、(5)他担当講師からの試験講評(山田講師・池

田講師・藤島講師)、(6)今後に向けた学習上の留意点、(7)次年度(第 3回本試験)に向けた LEC から

の講座・模擬試験予定について説明する。

(注)なお各項目や評価は LEC 独自の判断によるものである。参考程度に留めて頂けたら幸いです。

1. 第 2 回試験の注目点

①難易度は確実に上昇している

・前年試験は 16000 字以上読みこませ、時間を多く使わせた試験であったが、本年は「午前試験‥約

15100 字」「午後試験‥約 15300 字」と全体の文字数が減少した点、「迷わせる問題を午前午後とも

に前半から中盤に設定」している点には注目したい。

・試験問題を読み込む分には時間が余る文字量ではあったのだが、難易度も、法令理解のレベルを上げ

たことで、全体の文字数が調整されている。

・受験生にとって解きやすく、配点の高い事例問題をできるだけ後半にして、厳しく迷わせる設問を前

半から中盤に設定している。受験生によっては、前半から中盤に時間を多く使ってしまい、平易な後

半の設問に時間を十分に使えなかった人も多かったように見受ける。難易度は確実に上昇しており、

この傾向は今後も続くものと思われる。

②合格点は 138 点(60%) 合格率は北海道試験(12 月 16 日)を下回る可能性がある

・この難易度、取り組みづらさであっても合格点は 138点(60%)で、前年と変わらないだろう。

・以下は前年度の本試験の合格率である。心理系に関連する他資格(臨床心理士 63.6%、精神保健福

祉士 62.7%)を下回る程度で設定しているとすれば、以下の合格率を下回る程度に設定するのは理

解ができる。ただし、第 2回受験生の当日の結果次第であるが、上回って欲しいと願っている。今後

に向けては、6割程度~5割後半の合格率を見込んで準備しておいた方が良いだろう。

試験日 受験者数 合格者数 合格率 総得点 合格点

9 月 9 日 35020 27876 79.6 230 138

12 月 16 日 1083 698 64.5

③択二問題は第 1 回試験と北海道試験との中間程度の設定であった

・以下の表で注目すべき点は、時間を多く使い、迷いがでやすい択二設題数の推移であろう。第 1回(22

問・26点)→北海道(28問・40点)→第 2 回(24問・34点)という結果であった。

・結果からも視察できるように、第 2 回試験は第 1 回試験と北海道試験の中間設定となった。今後も択

二に限らず受験生に時間もしっかり使わせて、難易度も維持する形を目指すだろう。

試験日 設題 形式 午前 午後 小計 計 配点 配点計

9 月 9 日

知識 択一 50 46 96

116 96

116 択二 8 12 20 20

事例 択一 18 18 36

38 108

114 択二 1 1 2 6

12 月 16 日

知識 択一 46 48 94

116 94

116 択二 12 10 22 22

事例 択一 16 16 32

38 96

114 択二 3 3 6 18

2019 年

知識 択一 49 48 97

116 97

116 択二 9 10 19 19

事例 択一 17 16 33

38 99

114 択二 2 3 5 15

<今後に向けた予測>

・これは今後に向けた私自身(神戸)の予想として考えて頂きたい。択二設定の上限としては「32 問・

48 点」というラインを提示しておきたい。

・国家試験において、知識や事例など「内容レベル」での難易度の調整することは限界があるのだ。その

意味でも試験委員が着目しているのは物理的なレベル(時間や設問設定)での難易度の調整である。

・第 1回試験(知識:事例=164分:76分)→北海道試験(知識:事例=162分:78 分)となり、択二

を増やして対応したことによって、難易度を物理的に上昇させていた。これらの傾向からも、公認心理

師試験は、物凄く計算され尽くして作成された国家試験であることが分かる。

・実際に、「32 問・48点」設定になれば、知識時間:事例時間=2:1(160分:80 分)、知識配点:事例

配点=1:1 となり(ジャストで綺麗な数値になる)、難易度も相当なものになってくるだろう。ただし

一定以上に難易度を上げていかないと、今後少しずつ受験してくるカリキュラムを終えたばかりのフ

レッシュな受験生への対応が、後手になりかねない危険性もあるからだ。上記を物理的な条件として提

示しておきたい。

上限予想

知識 択一 46 46 92

116 92

116 択二 12 12 24 24

事例 択一 15 15 30

38 90

114 択二 4 4 8 24

④基礎心理学に通ずる理論領域へ移行した設問が増えた

・この点はブループリントの追加事項からも明確であった。ある程度予測して学習されていた受験生も

多かったとは思う。例えば、単純な学校における臨床像としての問いではなく、教育心理学や教育臨床

領域を踏まえた設題が増えた点なども注目に値する。例えば「問 25 ピグマリオン効果」「問 27 形成

的評価」「問 94 適性処遇交互作用」「問 145 プログラム学習」などが挙げられる。今回はこれらのブ

ループリント項目追加による移行設問に対応できずに苦戦した受験生も多かった。ちなみに LEC では

上記の全ての問題が「LEC 公認心理師予想公開模試」にて取り扱っていた。模試は各社得意分野があ

るので、今後本試験に臨まれる方はできるだけ多くの模試に触れ、模試ごとの不足領域をカバーする感

覚で取り組まれることをお勧めしたい。

⑤実務的な問いや臨床像の理解に関する問いも増えた

・心理検査に関する問いなどはそうだろう。「HAM-D」「WMS-R」「田中ビネーV」「PARS-TR」「WISC-

Ⅳ」「ベンダー・ゲシュタルト検査」「ウィスコンシンカード分類検査」「コース立方体組み合わせテス

ト」「CBCL」「Conners3」「IES-R」「Vineland-Ⅱ」「VRT」「WPPSI-Ⅲ」「CAARS 日本語版」「新版 K

式発達検査」「日本語版 KABC-Ⅱ」「S-M 社会生活能力検査」「AQ-J」「MPI」「SDS」「STAI」「TEG」

「遠城寺式乳幼児分析的発達検査」「エジンバラ産後うつ病質問票」「HDS-R」「CAPS」「CPT」「MMPI」

「Y-BOCS」「Luria-Nebraska 神経心理学バッテリー」など、どれも臨床の現場でよく使う心理検査で

あり、医療系を中心に十分な臨床経験を積んでいれば確実に解けた問題であったと思われる。また、知

能検査においても Flynn 効果までしっかり理解して取り組んでいることが試された。今後も試験向け

の知識だけでは簡単に解答できないように作問されるものと思われる。

・他にも現場で説明する際にも必要と思われる病態生理の知識、薬理、脳機能に対する問い、臨床像への

理解を問う、やや突っ込んだ理解を試す設問も増えてきている。例えば、「問 57 うつ病にみられる症

状(妄想)」「問 93 ADHDの二次障害」などは好例であろう。今後も一朝一夕ではいかない臨床経験を

試す設問は増加していくものと思われる。上記の問 57・問 93 の両設問においても「LEC 公認心理師

予想公開模試」にて取り扱っており、「(4)LEC 公認心理師予想公開模試と第 2 回本試験との照合率が

高い問題の一例」を参照されたい。

⑥各社の速報解答が分かれた設問が多かった

・表現上で「ひっかけている問い」、知識設問で「根拠の薄い問い」も多く、各社、先生方も悩まれたと

思われる。誰が解いても満点の取りづらい充実した試験であることの証左と言えるだろう。ただし、事

例設問では、リード文の中にヒントや根拠が確実に記載されていた点は着目しておきたい。

・速報解答が分かれた設問は(明らかな間違いを除いて判断:8月 12日時点)「問 16 神経心理学的テス

トバッテリー」「問 24 暴力行為に当てはまる行為」「問 28 反社会性パーソナリティ障害の診断基準」

「問 102 学校における医療機関連携」「問 123 集団式の能力テスト」「問 135 犯罪被害者等基本法」

「問 147 75 歳女性・高齢者・経済的虐待・通報」「問 148 30歳女性・ストレスチェック後の面接」「問

151 50 歳男性・過重労働・不眠・優先される対応」の 9問となっており、慎重に復習されたい。

2. LEC 版の解答 3. LEC 各講座にて取り扱った内容との適合度

・★★は各講座・模試にて内容説明として十分に取り扱った設問(154問中 95問が適合)

・★は各講座・模試にて項目説明を中心に取り扱った設問(154問中 38問が適合)

・全体として 154 問中 133 問が適合(適合率 86.3%)できていた。

・かなりの高適合率であると手前味噌に思うが、次年度もさらに上回るよう努力したい。

番号 問題内容 取扱レベル LEC 版解答

1 公認心理師の業務や資格 ★★ 4

2 ケア会議内での対応・デイケア ★ 4

3 認知心理学 ★★ 3

4 検査法の歴史・A.Binet ★★ 1

5 剰余変数 ★ 2

6 四分位偏差 ★ 5

7 判別分析 ★★ 2

8 プライミング ★★ 4

9 般化 ★★ 3

10 感情混入モデル ★★ 3

11 パーソナリティ障害 ★★ 2

12 神経細胞の生理 ★★ 5

13 傍観者効果 ★ 5

14 乳幼児の社会的参照 ★★ 3

15 ASD の中枢性統合の弱さ ★★ 4

16 神経心理学的テストバッテリー ★★ 4

17 関与しながらの観察 ★★ 4

18 フェルトセンス ★★ 3

19 ライフサイクルと心の健康の関わり ★ 3

20 児童虐待における死亡事例の傾向 ★★ 4

21 マルトリートメント ★ 5

22 心的外傷後ストレス障害 ★★ 2

23 コース立方体組み合わせテスト ★ 5

24 暴力行為に当てはまる行為 ★ 5

25 ピグマリオン効果 ★★ 4

26 いじめの重大事態への対応 ★★ 1

27 形成的評価 ★★ 5

28 反社会性パーソナリティ障害の診断基準 ★★ 5

29 ハインリッヒの法則 ★ 5

30 緊張病に特徴的な症状 ★★ 1

31 オピオイドの副作用 ★ 4

32 保健医療制度 ★ 2

33 ストレスチェック制度 ★★ 2

34 学校における自殺予防教育 ★★ 3

35 公認心理師法 ★★ 2

36 Alzheimer 患者への対応 ★★ 4

37 記憶モニタリングの下位過程 1

38 半構造化面接 ★★ 1

39 保護者対応・思春期クライエント ★ 3

40 育児・介護を行う労働者福祉 ★★ 1

41 右中大脳動脈領域の脳梗塞 ★★ 1

42 児童相談所の業務内容 ★★ 1

43 教育基本法第2条 ★★ 4

44 スクールカウンセラー ★ 4

45 SOAP 診療録 ★★ 4

46 就労継続支援B型 ★★ 2

47 アレキシアサイミア傾向の心身症患者 ★ 2

48 心理面接における沈黙 2

49 多職種チ-ムにおける留意点 ★★ 4

50 公認心理師法 ★★ 4.5

51 緩和ケアにおける家族との関わり ★ 4.5

52 障害者差別解消法 ★★ 3.4

53 生活習慣病 ★★ 2.4

54 二次的外傷性ストレス ★★ 2.3

55 虞犯 ★★ 2.4

56 女性の更年期障害 2.3

57 うつ病(症状) ★★ 1.3

58 公認心理師を養成するための実習 1.3

59 2 歳女児・心理的反応と親子関係 ★★ 4

60 21 歳女性・Vineland-Ⅱ ★★ 4

61 2 歳 2ヶ月男児・新版 K 式 ★ 3

62 31 歳女性・初期対応 ★ 5

63 32 歳女性・インテーク面接・私設 ★★ 5

64 75 歳男性・眠れないことへの助言 2

65 26 歳男性・ひきこもり・保護者対応 ★★ 1

66 4 歳女児・被災者に対する支援上の助言 ★★ 5

67 5 歳男児・児童相談所・初期対応 ★★ 5

68 9 歳男児・担任教師に行う助言 ★ 5

69 17 歳男子・AQ-J ★ 1

70 28 歳男性・悪性症候群 ★★ 2

71 79 歳男性・心理状態の説明 ★★ 4

72 14 歳女子・児童相談所の対応 ★★ 2

73 8 歳男児・行動理解・SC の初期対応 ★ 2

74 35 歳男性・過重労働による健康障害・眠気 ★★ 3

75 23 歳男性・学習性無力感 ★★ 3

76 58 歳女性・他職種連携による支援 ★ 3.4

77 12 歳女児・交通事故後・懸念される行動の説明 2.5

78 生物心理社会モデル ★ 2

79 基本感情・怒り ★ 3

80 1要因分散分析・帰無仮説 ★ 1

81 フラッシュラグ効果 5

82 うつ状態・学習性無力感 ★★ 2

83 視床下部-下垂体系・解剖と生理 ★★ 3

84 記憶障害・外的代償法 3

85 役割取得の発達段階 1

86 ディスレクシア ★★ 1

87 Flynn 効果 ★★ 5

88 1 歳半幼児・認知言語機能・遠城寺式 5

89 認知症高齢者への回想法 ★ 3

90 デイケアでの利用者ミーティングの運営 5

91 ASD ★★ 5

92 解離性障害 ★★ 4

93 ADHD の二次障害 ★★ 1

94 適性処遇交互作用 ★ 3

95 自殺予防に対する対応と判断 ★★ 4

96 生徒指導 ★★ 4

97 大学における合理的配慮 ★★ 4

98 非行の要因・社会的絆理論 1

99 シャインのキャリア・アンカー ★ 2

100 ナルコレプシー ★★ 1

101 妊娠・出産とうつ病との関連 ★★ 5

102 学校における医療機関連携 ★★ 2

103 成年後見制度 ★★ 1

104 労働者の心の健康の保持増進のための指針 ★★ 5

105 校外学習の交通事故・学級会での情報提供 ★★ 3

106 自殺予防・リスク判断 ★ 3

107 公認心理師法第2条 ★★ 1

108 共同注意行動 ★★ 2

109 ニューヨーク縦断研究と 9つの気質 1

110 J.Belsky・親の養育行勣 1

111 I.D.Yalom・集団療法 4

112 心理療法の有効性の研究 ★★ 4

113 更生保護の業務と制度 ★★ 5

114 採用面接・ブーメラン効果 ★ 5

115 糖尿病 ★★ 4

116 ベンゾジアゼピン受容体作動薬の副作用 ★★ 5

117 生活困窮者自立支援制度 ★★ 1

118 児童生徒に対する出席停止措置 1

119 ストレス反応 ★★ 4

120 心理支援を続行できない時 3

121 スーパービジョン ★★ 2

122 準実験的研究法 4

123 集団式の能力テスト ★ 4

124 ギャンブル等依存症 ★ 4

125 医師からのアセスメント依頼 ★★ 4

126 情報提供が秘密保持よりも優先される状況 ★★ 1.5

127 対人魅力 1.4

128 J.Piaget の発達段階説 ★★ 2.4

129 PECS の説明 2.4

130 田中ビネー知能検査V ★ 3.4

131 二次予防の取組 ★★ 1.5

132 知的障害のある子どもへの対応方針 ★★ 2.4

133 物質使用障害 ★ 2.3

134 親権 ★★ 2.3

135 犯罪被害者等基本法 ★★ 1.4

136 実験計画事例・対応のある 1要因分散分析 ★ 1

137 18 歳女性・確証バイアス 2

138 25 歳男性・最も優先度の高い対応 ★★ 5

139 74 歳女性・WMS-R ★★ 4

140 22 歳女性・心理検査後の対応 ★★ 5

141 19 歳男性・社会構成主義からのアプローチ ★ 2

142 47 歳男性・行動変容の段階を考慮した対応 ★★ 2

143 13 歳男子・両親からの心理的虐待 ★★ 4

144 9 歳男児・フラッシュバックによる混乱 ★★ 2

145 中 1数学教科担任・プログラム学習 ★★ 3

146 14 歳男子・教育評価 ★★ 5

147 75 歳女性・高齢者・経済的虐待・通報 ★★ 1

148 30 歳女性・ストレスチェック後の面接 ★★ 1

149 14 歳女子・スクールカウンセラーの対応 ★ 1

150 25 歳女性・DV 被害における心理的判断 ★ 2

151 50 歳男性・過重労働・不眠・優先される対応 ★★ 2

152 58 歳男性・不眠に対する心理的支援 ★ 1.2

153 85 歳身比・地域包括支援センターの対応 ★★ 1.4

154 35 歳男性・休職者への対応と支援 ★★ 2.3

4. LEC 公認心理師予想公開模試と第 2 回本試験との照合率が高い問題の一例

① [本試 25] ピグマリオン効果 ⇔ [模試 21] ピグマリオン効果

② [本試 94] 適性処遇交互作用 ⇔ [模試 21] ピグマリオン効果(解説③)

<模擬試験問題>

問 21 ピグマリオン効果に関する記述として、最も適切なものを 1つ選べ。

① ある調査において、学業成績で教師から望ましい評価を受けた生徒は、望ましくない評価を受

けた生徒より、学業成績とは関連のない性格的特徴や生活行動の面においても、教師から望ま

しい評価を受ける傾向がみられた。

② ある実験において、もともと図工に関して意欲の高い生徒に対して、優れた図工作品を作った

場合に教師がご褒美を与えるという期間を設けたところ、期間経過後に教師からご褒美が与え

られなくなると、生徒の図工に関する意欲は実験開始前よりも低下した。

③ ある実験において、教師が生徒に英語を教えるとき、言語に関わる能力が高い生徒には文法に

沿って読解させていく方法が効果的であったのに対し、言語に関わる能力が低い生徒にはコミ

ュニケーションを中心とした方法が効果的であった。

④ ある調査において、教師が「マンガは読まないほうがいい」という説得的メッセージを生徒に

送ったところ、メッセージを送ったのが生徒から見て魅力ある教師である場合は、魅力がない

問 25 1960 年代の R.Rosenthal の実験で、ある検査の結果、学業成績が大きく向上すると予測さ

れる児童の氏名が教師に伝えられた。実際には、児童の氏名は無作為に選ばれていた。8か

月後、選ばれた児童の学業成績が実際に向上していた。

このような現象を説明する用語として、正しいものを1つ選べ。

① ハロー効果

② プラセボ効果

③ ホーソン効果

④ ピグマリオン効果

⑤ アンダーマイニング効果

問 94 適性処遇交互作用の説明として、正しいものを1つ選べ。

① 学習者の適性は遺伝と環境の相互作用によって形成される。

② 学習成果は教授法などの学習条件よりも学習者の適性によって規定される。

③ 教授法などの学習条件と学習者の適性の組合せによって学習成果が異なる。

④ 困難な学習課題であるほど、学習成果は教授法などの学習条件よりも学習者の適性によって

規定される。

⑤ 容易な学習課題であるほど、学習成果は教授法などの学習条件よりも学習者の適性によって

規定される。

教師の場合に比べて、説得内容が肯定的に受け止められ、生徒に否定的な感情が生じにくかっ

た。

⑤ ある実験において、小学校のクラスから児童を無作為に選び、これらの児童について「今後、

学習成績が顕著に向上するはずである」というメッセージを担任の教師に与えたところ、教師

が成績の伸びを期待したこれらの児童は、他の児童よりも、1 年後の学習成績が大きく向上し

た。

<模擬試験解説>

問 21 正解:⑤(ピグマリオン効果)

<問題の評価と要点>

今年のブループリントに新しく「教師―生徒関係」という項目が加わった。これに伴う予想の一つと

してピグマリオン効果を挙げておきたい。ローゼンタールら(Rosenthal, R. & Jacobson, L.1968)

は、教師が児童・生徒に対してもっているいろいろな期待が、彼らの学習成績を左右することを実証

した。このように意識すると否とにかかわらずこの期待が成就されるように機能することをピグマ

リオン効果と呼ばれている。

<具体的解説>

① × 本選択肢は、ハロー効果(光背効果)に関する記述である。他者がある側面で望ましい(も

しくは望ましくない)特徴をもっていると、その評価を当該人物に対する全体的評価にまで

広げてしまう傾向をさす。

② × 本選択肢は、アンダーマイニング効果に関する記述である。外的報酬による内発的動機づ

けの低下を過剰正当化効果(アンダーマイニング効果)という。逆に外的報酬により内発的

動機づけが高まることもあり、これをエンハンシング効果という。

③ × 本選択肢は、適切処遇交互作用(ATI)に関する記述である。アメリカの教育心理学者であ

るクロンバックは学習者の「適性」と「処遇(指導法)」には交互作用があり、両者の組み

合わせによって学習効果が異なることを明らかにし、これを適切(適性)処遇交互作用と名

付けた。

④ × 本選択肢は、説得の効果に関する記述である。説得の効果は、メッセージの発信者の魅力に

よって影響を受けると考えられている。また、発信者の諸要因として、他にも信頼、発信者

と受信者の距離、発信者の数といった要因も挙げられている。

⑤ ○ 本選択肢が正解である。ピグマリオン効果に関する適切な例と言える。

③ [本試 27] 形成的評価 ⇔ [模試 13] 教育評価

<模擬試験問題>

問 13 教育評価の類型に関する記述ア、イ、ウと、それに該当する評価の名称の組合せとして、最も

適切なものはどれか 1 つ選べ。

ア: 単元学習の指導の途上で指導の軌道修正をしたり、確認したりする評価活動である。児童生

徒がどの内容に関してどこまで目標を達成しており、指導内容のどのような点について軌道

修正が必要であるかなどの評価情報を得ることができる。

イ: 学習指導場面において実際の指導に先立って、児童生徒の状況、実態を把握し、最適の指導

方法等を準備するために行われる評価活動である。この評価を目的としたテストの例として

は、 大学の新人生に対する語学のクラス分けのためのプレースメント・テストがある。

ウ: 単元終了時、学期末、学年末という比較的長期間にどれだけの教育成果が得られたか、どれ

だけ習得目標が達成されたかという点を明らかにするための評価活動である。教育実践や教

育活動を全体として反省的に把握することができる。

ア イ ウ

① 診断的評価 総括的評価 到達度評価

② 診断的評価 到達度評価 形成的評価

③ 診断的評価 形成的評価 総括的評価

④ 形成的評価 総括的評価 診断的評価

⑤ 形成的評価 診断的評価 総括的評価

問 27 形成的評価について、最も適切なものを1つ選べ。

① 一定の教育活動が終了した際に、その効果を把握し判断するために行う評価

② 個人の学力に関する特定の側面をそれ以外の側面と比較して把握し判断するために行う評価

③ 過去と現在の成績を比較して、どの程度学力が形成されたかについて把握し判断するために

行う評価 `

④ 指導前に、学習の前提となるレディネスが形成されているかを把握し、指導計画に活用する

ために行う評価

⑤ 指導の過程で学習の進捗状況や成果を把握し判断して、その情報をその後の指導計画に活用

するために行う評価

<模擬試験解説>

問 13 正解:⑤(教育評価)

<問題の評価と要点>

2019年のブループリントに新たに項目として加わった教育評価に関する設問である。ブルームの教

育評価の 3 類型を出題した。教育評価に関しては、今回は出題しなかったが、教育評価の方法につい

ても復習しておきたい。特に「相対的評価、絶対的評価、個人内評価、ポートフォリオ評価、ルーブリ

ック」については、本設問と同様に出題の予想として挙げておきたい。各用語について整理しておいて

頂きたい。

<具体的解説>

アは、学習活動の過程(途中)で行われる形成的評価の説明である。生徒の理解度を確認し指導計画

の修正や改善を図ることができる。イは、学習活動の前に生徒の現状を診断し、効果的な学習計画の立

案に活かす診断的評価の説明と言える。ウは、単元終了時であったり、学期末、学年末において、学習

の成果を総括的に評価する総括的評価の説明である。ゆえに正解は⑤である。

④ [本試 57] うつ病にみられる症状(妄想) ⇔ [模試 74] 妄想

<模擬試験問題>

問 74 妄想に関する以下の文について、適切な説明となるような選択肢を 1つ選べ。

① 妄想は、根拠が乏しく誤った思考を強固に信じ、訂正が不能な状態のことをいい。思考内容の異

常に分類される。妄想の世界と現実世界を矛盾なく両立させている状況のことを a とい

う。断片的な妄想から、体系化された妄想まであり、一般に認知症やせん妄でみられる妄想は断

片的で変化しやすい。妄想には周囲の状況やそれまでの思考過程とは無関係に現れる一次妄想

と、幻聴から発展した被害妄想や躁状態に伴って出現した b など、病的とはいえ心理過

程を追うことができる二次妄想がある。

② 一次妄想には、妄想着想、妄想気分、妄想知覚がある。妄想着想は、たとえば突然自分が芸能人

と付き合っているという着想が浮かんできて、そのまま強く確信されるような状態をいう。妄想

気分は、周囲の世界がいつもと違って不気味に感じられ、何か不吉なことが起こりそうに感じて

不安や恐怖が感じられる状態をいう。世界が滅びてしまうという感じに至ることがあり、これを

世界没落体験という。妄想知覚は、正常な知覚に対して突然了解不能な意味づけをするものであ

る。

③ 疾患によって出現する妄想の種類には特徴がある。統合失調症では、他者から害を及ぼされると

いう被害妄想がみられる。被害妄想には、他人に見られているという c や毒を盛られて

いるという被毒妄想、他人の何気ない仕草を自分に関係づけて考える関係妄想、誰かにあとをつ

けられているという追跡妄想などがある。

④ 躁うつ病では気分の状態に一致した妄想がみられる場合と、被害妄想など気分とは直接関係し

ない妄想がみられることがある。躁状態では、自分の能力や地位に対する過大評価を背景とし

て、誇大妄想が生じる。誇大妄想には、自分が高貴な家系の生まれであるとする血統妄想や、世

界を変えるような発明をしたという発明妄想などがある。逆にうつ状態では、自分の能力や置か

れている状況に対する悲観的な評価に基づき、微小妄想が現れる。微小妄想には、自分の財産が

なくなってしまって生活できないという貧困妄想や罪深いことをしてしまったという罪業妄想、

不治の病にかかっているという d などが含まれる。

問 57 うつ病にみられることが多い症状として、適切なものを2つ選べ。

① 心気妄想

② 迫害妄想

③ 貧困妄想

④ 妄想気分

⑤ 世界没落体験

a b c d

① 二重見当識 二次妄想 誇大妄想 心気妄想

② 二次妄想 誇大妄想 心気妄想 二重見当識

③ 二重見当識 二次妄想 注察妄想 心気妄想

④ 二次妄想 二重見当識 心気妄想 誇大妄想

⑤ 二重見当識 誇大妄想 注察妄想 心気妄想

<模擬試験解説>

問 74 正解:⑤(妄想)

<問題の評価と要点>

妄想についての知識を問う設題である。スピード合格講座の小テストを改題して出題している。基

本的な知識として、確実に正解したい。現実にそぐわないにもかかわらず現実検討能力が障害されて

いるためにそれと認識できず、現実に即したように改変することもできない信念を妄想とよぶ。妄想

という概念の理解にあたって重要な点は、それが (1) 信念の内容を問題とするものであると同時に、

(2) そのような信念をもつにいたった認識、思考、判断過程の特徴をも問題とするものであることで

ある。信念の内容の特徴としては、現実にそぐわないこと、世間の常識からずれていること、しばし

ば強い*感情や情動に彩られていること、などである。また認識、思考、判断過程の特徴としては、

自分の言動や表象をモニターして現実と比較照合する機能、およびその結果として自分の表象を現

実に即して改編する機能が障害されており、「いきなり結論へジャンプする」ような判断過程が特徴

である。

<具体的解説>

a:二重見当識、b:誇大妄想、c:注察妄想、d:心気妄想であり、正解は⑤となる。

⑤ [本試 18] フェルトセンス ⇔ [模試 102] フォーカシング

<模擬試験問題>

問 102 ユージン・ジェンドリンが創始したフォーカシングに関する次の記述のうち、最も適切なも

のを 1つ選べ。

① 普段の生活では気づかない微細な身体感覚や感情「フェルトセンス」に注目する。

② 認知行動療法の面接プロセスの中から提唱された心理療法である。

③ 眼球運動を用いることで過去の記憶の影響を軽減させることを目指す。

④ 英国の臨床心理学者アイゼンクの思想の影響を受けている。

⑤ 数年以上の実務経験を持つ医師、あるいは公認心理師のみが実施可能である。

<模擬試験解説>

問 102 正解:①(フォーカシング)

<問題の評価と要点>

各心理療法の特徴を、その歴史の観点から出題した問題である。心理療法は多くの出題が想定される

ため、歴史・人名・治療目的など、様々な側面から理解を深めることで、より深く記憶に残らせるこ

とが出来る。

<具体的解説>

① ○ 正解である。フォーカシングでは、フェルトセンスに穏やかな注意を向け続けることによっ

て、カウンセリングの成果をあげることを目的とする。

② × 間違いである。フォーカシングは、パーソンセンタード・カウンセリングの面接プロセスの

研究から提唱されたものである。

③ × この説明文は、EMDR(眼球運動による脱感作および再処理法)に関する説明である。

④ × フォーカシングは、米国の臨床心理学者ロジャーズの影響を受けている。なお、アイゼンク

は行動療法の提唱者である。

⑤ × 間違いである。フォーカシング含む人間性心理学は、医学関係者ではなく、教員等の教育関

係者を中心に広がってきている。

問 18 E.T.Gendlin は、問題や状況についての、まだはっきりしない意昧を含む、「からだ」で体験

される感じに注目し、それを象徴化することが心理療法における変化の中核的プロセスだと

した。この「からだ」で体験される感じを表す用語を1つ選べ。

① コンテーナー

② ドリームボデイ

③ フェルトセンス

④ フォーカシング

⑤ センサリー・アウェアネス

⑥ [本試 93] ADHDの二次障害 ⇔ [模試 93 選択肢⑤] 児童期から青年期の精神障害

<模擬試験問題>

問 118 児童期から青年期にかけての精神医学的な問題に関する記述として、最も適切なものはどれ

か 1つ選べ。

⑤ 素行障害は、他者の基本的人権又は年齢相応の主要な社会的規範・規則を侵害することが反復し

持続する行動様式を特徴とする。これが深刻化すると反抗挑戦性障害や反社会性パーソナリテ

ィ障害につながるとされており、それぞれの診断基準には、15 歳以前に発症した素行障害の証

拠があることが含まれている。

<模擬試験解説>

問 118 正解:①(児童期から青年期の精神障害)

<問題の評価と要点>

児童期から青年期にかけて好発する精神障害については必須の領域であると言えるだろう。LEC で

はスピード合格講座(第 10講:児童・思春期領域特論)にて詳細を解説して取り扱っている。また

医歯薬出版の「精神疾患とその治療」(13章)も参考にされたい。

<具体的解説>

⑤ × 反抗挑戦性障害は児童期の障害であるため、素行障害が深刻化して反抗挑戦性障害とはな

らないため、本選択肢は誤りである。破壊的行動障害(DBDマーチ)についてはしっかりと

復習しておきたい。①注意欠如・多動性障害→(①の 30~45%)②反抗挑戦性障害→(②

の 27~45%)③行為障害→(③の 33%)④反社会性パーソナリティ障害となることが疫学

的に分かっている。

問 93 注意欠如多動症/注意欠如多動性障害〈AD/HD〉の二次障害について、正しいものを1つ選

べ。

① 素行障害が出現しやすい。

② 気分障害の合併率は 5%以下である。

③ ペアレント・トレーニングは効果がない。

④ 精神分析的心理療法は治療の第一選択である。

⑤ 養育環境は二次障害の発症や程度に影響しない。

⑦ [本試 128] J.Piaget の発達段階説 ⇔ [模試 89] J.ピアジェの認知発達理論

<模擬試験問題>

問 89 J. ピアジェの発達理論に関する記述である。A、B、C に当てはまる用語の組合せとして、適切

なものはどれか 1つ選べ。

J. ピアジェは、発達の過程で( A )の概念を子供が獲得していくことについて言及している。

( A )の課題としては、次のような例がある。図のように、同じ長さのひもを 2 本見せた後、

そのうちの1本を丸めてしまう。6歳~12 歳前後の子供は、ひもの長さは同じであることを理解で

き、これをピアジェは ( A )の概念を子供が獲得していることを示していると考えた。そして、

この認知的段階を( B )と呼んだ。一方、それ以前の子供(2歳~6歳ごろ)の判断は、見掛け

に左右され、丸めたほうのひもを短いと考えてしまう。この認知的段階を、ピアジェは( C )

と呼んだ。

A B C

① 調節 具体的操作期 前操作期

② 調節 形式的操作期 感覚運動期

③ 保存 具体的操作期 前操作期

④ 保存 形式的操作期 感覚運動期

⑤ 保存 具体的操作期 感覚運動期

問 128 J.Piaget の発達段階説について、正しいものを2つ選べ。

① 発達段階は個人によってその出現の順序が入れ替わる。

② 感覚運動期の終わり頃に、延滞模倣が生じる。

③ 前操作期に入ると、対象の永続性に関する理解が進む。

④ 形式的操作期に入ると、仮説による論理的操作ができるようになる。

⑤ 具体的操作期に入ると、イメージや表象を用いて考えたり行動したりできるようになる。

<模擬試験解説>

問 89 正解:③(J.ピアジェの認知発達理論)

<問題の評価と要点>

ピアジェは認知機能の発達を 4つの段階に区別している。感覚運動期(0~2歳ごろ)では、感覚と

運動を共応させながら、外界の事象を認識していく時期である。前操作期(2 歳~6 歳ごろ)では、

言葉とイメージの獲得により、シンボルによる思考が可能となる時期である。具体的操作期(6歳~

12 歳ごろ)子どもは具体的な対象については論理的に考えられるようになり、自分の視点とは異な

る視点から物事を考えることができる脱中心化がみられたり、保存概念を獲得し、見かけに惑わされ

ず論理的に思考したりするようになる。形式的操作期(12 歳頃以降)に入ると、具体的な現実世界

にあることだけでなく、抽象的な次元や言葉での論理的思考が可能になり、「もし~なら~となるは

ず」という可能性の世界について、仮説演鐸的思考ができるようになっていく。ピアジェの認知発達

理論は出題が予想され、確実に押さえておきたい領域と言えるだろう。

発達段階 年 齢 内 容

感覚運動的

段 階

生後

2年間

見たり、いじったりする感覚的運動を通して体系的シ

ステムが形成されていく。

前操作の

段 階

2~

7歳

前半では、象徴的思考ができるようになる。また、後

半になると、見かけの変化を本質的な変化と捉えたり、

自分の立場からでしか物事を理解できないなど、直観的、

自己中心的である。数の保存、量の保存はできない。

具体的操作

の段 階

7~

11歳

具体的状況で、論理的な思考ができるようになり、保

存の概念も獲得する。可逆的な操作もできる

形式的操作

の段 階 11歳~

具体的内容から離れて論理的思考が可能になり、順列

の考え方もできるようになる。

<具体的解説>

本設問における保存の概念のテストでは、(1) 相当性確認(2本のひもの長さが同じであることの確

認)→ (2) 変形操作(目の前で形を変える)→ (3) 確認テスト(2本のひもの長さを尋ねる)という

手順を踏む。このことは、具体的操作期から可能(変形した後も長さは変わらないという認識=2本

のひもの長さは同じと判断できるようになる)となり、その前の段階である前操作期までは、見かけ

の長さに左右されてしまうことが指摘されている。上記から A は「保存」、B は「具体的操作期」、

C は「前操作期」が該当することが分かる。そのため③を正解とする。

⑧ [本試 145] プログラム学習 ⇔ [模試 94] プログラム学習

<模擬試験問題>

問 94 プログラム学習法に関する記述として、適切なものはどれか 1つ選べ。

① 反応の一部をなす要素数や手がかり数がどれも均等な各ステップについて学習を進める。

② 正答には賞を、誤答には罰を与え、スモール・ステップの選択反応で学習を進める。

③ 正答の場合は次のステップに、誤答の場合は枝分かれをし、もとの問題に戻って学習を進める。

④ すべての学習者が同じサイズのステップについて、同一時間内で学習を進める。

⑤ すべての学習者が同一に順序、段階づけされた主題について学習を進める。

問 145 中学 1年生の数学教科担任A は、方程式の単元で困難度の異なる計算問題 30 問が印刷さ

れたプリントを授業中に用いることを考えた。その際、最初から少しずつ難しくなるよう

に問題を配置し、生徒が積極的に解答を書き込めるような工夫をした。また、模範解答も用

意した。さらに、授業中には自分のペースで取り組めるような時間を設定することにした。

このプリントを用いたAの授業をプログラム学習の原理に沿ったものにするために必要な

こととして、最も適切なものを1つ選べ。

① グループで答え合わせをする時間を設ける。

② 解答するための1問当たりの制限時間を生徒に設定させる。

③ 1問ずつ解答した直後に、答え合わせをするように指示する。

④ 計算問題が苦手な生徒に対しては、教師が一緒に答え合わせを行う。

⑤ 全ての問題に正しく解答した生徒から休み時間にしてよいと告げる。

<模擬試験解説>

問 94 正解:③(プログラム学習)

<問題の評価と要点>

プログラム学習とは、学習目標の達成のために、系統だった内容を詳細な手順に沿って学習者自身が

学習を進め、反応の正誤を確認できるような学習指導の方法をさす。学習教材は、詳細な学習項目に

分割されており、この項目をフレーム(frame)とよぶ。分割の仕方すなわち学習プログラムには、

スキナーの考案による直線型プログラムと、クラウダーの考案による枝分かれ型プログラムの 2 種

類がある。直線型プログラムでは、学習者が目標に到達する過程を一本の直線と見なし、スモール・

ステップによって学習をスムーズに進めようとする。枝分かれ型プログラムでは、各学習者の反応特

性に応じて、学習の進め方が多様化している。この枝分かれ型プログラムをテキストの形式にしたも

のが、スクランブルド・ブックである。現在では、これら 2種類のプログラムの折衷型も多く用いら

れる。2019年のブループリントに発見学習と同様に新たに入ってきた項目である。今後の出題を踏

まえて学習しておきたい。

<具体的解説>

① × 「均等な各ステップ」が誤りである。各ステップにおける要素や手がかりは、学習の内容や

構造に応じて最も適切な数に設定されるため均等ではない。

② × フィードバックされた正答と回答が一致していれば、そのこと自体が報酬となるが、誤答に

対して負の強化子となるような罰の手続きを用いることはない。

③ ○ 先述した通り、正答の場合には次のステップに進むが、誤答の場合はそのステップの問題に

正答できるようになるまで、繰り返し試行する。

④ × 学習者の適性に応じてステップ数や学習時間が変更されるため、ステップ数や学習時間が

同一ということはない。

⑤ × 学習主題はその内容や構造に応じてあらかじめ順序づけられ、段階づけられている。「すべ

ての学習者」にとって同一であるということはない。

5. 他担当講師からの試験講評(山田講師・池田講師・藤島講師)

[山田講師]

2019 年 8月 4日に実施された第 2回公認心理師国家試験に関して講評する。

第 2回試験は,第 1回試験と同様,154 題が設定されており,午前と午後の部で 77 題ずつ回答を求め

る形式であった。事例問題の比率も,第 1 回試験と同様,全体の 24.7%を占めており,形式の一貫性が

保たれていた。

一方,各問題における内容の傾向も,昨年度と概ね一貫していたと考えられる。午前の部も午後の部

も,前半は心理学に関する幅広い知識の習得を確認するものであり,用語の知識が必要とされるもので

あった。これら用語は,大きく 2つに分類されると考えられた。1つ目は,心理学の用語である。いわゆ

る心理学概論の書籍や講義の中で見られる用語であり,第 2 回試験では,「プライミング」「条件づけ」

「社会的参照」などが出題された。こうした用語は,一致した見解が伴うため,試験問題の素材に選ばれ

易い。言い換えれば,試験は正答が 1 つに決まる素材が選ばれ易いことを念頭に,我々は試験対策を講

じるべきであることを示唆している。2 つ目は,国の施策に関する書類からの出題である。具体的には,

「ストレスチェック」「いじめ」「児童虐待」などの書類から出題された。心理学の用語は,キーワードと

内容が一対一で対応していれば得点に結びつくものが多いが,国の施策に関する用語は,一度全体的に

条文を確認しておかなければならない。国の施策,いわゆる関係行政論は,法律および厚生労働省や文部

科学省が発行している原文を参考に勉強されると良いといえるだろう。

しかしながら,第 1 回および第 2 回試験の傾向を踏まえると,単に,心理学の用語と国の施策が問わ

れているわけではなさそうである。つまり,それぞれの設題には,出題者のメッセージが含まれているよ

うにも感じられる。例えば,問 75の事例問題では,学習性無力感が問われている。この設題から読み取

れるクライエントの状態は,「努力をしても無駄だと感じて意欲を喪失し,欠席が続いている」というも

のであった。この問題では,「自尊感情の低下」という選択肢を棄却する必要性があることから,出題者

のメッセージが含まれているようにも感じられた。すなわち,現在の状態のみならず,これまでの経緯を

踏まえたアセスメントが問われているように感じられた。自尊感情は現在の状態であり,学習性無力感

はこれまでの経緯を含む現象である。これは 1例に過ぎないが,出題者のメッセージ(意図)を考えるこ

とは,より正しい選択肢を選ぶ手段になり得るかもしれない。

[池田講師]

本資料では,2019年 8月 4日に行われた第 2回公認心理師国家試験に関して,講評を述べる。今回の

試験では,昨年度行われた第 1 回公認心理師国家試験と比較して,問題が全体的に難化していた。しか

しながら問題の出題範囲に偏りはみられず,たとえば医療領域だけではなく教育や福祉,司法,産業など

5 領域に満遍なく対応した出題傾向がみられている。事例問題においても,面接者としての態度を問う問

題だけではなく,基礎的な知識を応用して解答するような問題が散見される。このことから,受験者には

幅広い知識が求められていたといえるだろう。

では,例え浅くなってしまっても,満遍なく裾野を広げるような学習の方法が,合格への最短経路とい

えるのだろうか?例えば緊張病に関する出題などは,専門の領域で活動している者にとっては初歩的な

知識かもしれないが,統合失調症に関する専門的な学習の経験が薄いものにとっては見慣れないことば

だったかもしれない。このほかにも PECS や「エジンバラ産後うつ病質問紙」など,テキスト上では見

慣れないことばが含まれる設問もみられている。

それでは,専門的な知識を確実に抑えられるように,深く学習していくことがよいのだろうか?設問

を全体的にみると,一定の割合で基礎的な知識の定着を確認するような設問がみられている。今回の試

験では何問か出題されていた公認心理師法に関する問題などは,受験者の多くのものが一度は目にして

いる知識だろう。冒頭でも触れたように,こうした基礎的な知識を要求するような問題は事例問題にお

いてもみられていた。そのため試験全体として考えれば,見慣れないことばが含まれる設問にはあまり

惑わされずに,基礎的な知識を要求する問題に確実に解答していくことこそが重要であったといえる。

またこうした出題の傾向が今後の試験でも続く可能性を考慮すると,自主学習においてはテキストを

用いて満遍なく基礎的な知識の定着を図る学習の方法が,対策としては有効であると考えられる。その

上で当該年度の出題傾向を高く予測するような模試や講座を受講することが,“難問に惑わされない態度”

を作るための対策としては望ましいだろう。当 LEC の講座では公認心理師受験講座として,テキストを

用いた DVD 講座の設置が予定されている。さらに今年度の対策模試および講座では,出題の傾向に対す

る高い予測の程度が認められた。DVD 講座においてはテキストにある基礎的な知識を確実に抑え,対策

模試,ならびに講座では“惑わされない態度”作りに貢献することで,次年度の受験生にも助力したい。

[藤島講師]

2019 年 8 月 4 日(日)に実施された第 2 回公認心理師試験について,全体的な印象,基礎問題,事例問

題の観点から意見を述べる。

試験の難易度は全体的に向上していたといえる。しかし,出題範囲に関する全体的な傾向は,今回新たに

ブループリントに追加された項目を除いて,あまり変化していないように感じる。出題範囲について,問

題数に差はあるものの,概ねブループリントの範囲であり,学習を進める上でブループリントの確認は,

やはり必須であるだろう。

基礎問題においては,心理学領域における一般的な用語と簡潔な理解があれば,正答可能な問題は多々

みられた。一方で,普段耳にする機会がほとんどないような単語も散見され,そもそもの知識の習得が困

難といえるような問題も存在した。受験者の心情として焦ってしまうのは当然であるが,そのような知

識の習得に努めるのではなく,基礎知識の確かな習得に努めることが,合格につながるといえる。ただ

し,2 回目の試験ではブループリントに新たに追加された項目に関する問題が複数みられた。そのため,

ブループリントの内容の確認,それに関する知識の習得は必要不可欠であるといえる。

事例問題については,公認心理師の役割や業務に関する深い理解があれば,正答できるものは多いと

いえる。しかし,受験者で差がつきやすいのは,知識に基づいて実際にどのような対応をすべきかを答え

る問題であろう。特に,虐待やいじめなどの社会問題については,何がいじめや虐待に該当するかも含

め,広く深い理解が必要であろう。単に知識を身につけるのみではなく,実際に知識を活用し,様々な現

場で活躍することが求められているといえる。しかし,単純な知識の有無が正答につながる問題もみら

れたため,事例問題であっても、知識は必要不可欠であるといえる。第 2回の試験では,心理職の視点か

ら想像が難しい場面に関する問題も出題されており,今後も問題は多様化することが想定される。

問題を振り返ると,幅広い知識と深い理解の両方が求められているように感じられる。しかし,全ての

知識において深い理解が求められているわけではないだろう。深い理解が求められているのは,公認心

理師の業務および活動に関するものが多い。つまり,公認心理師としてアセスメント,面接,コンサルテ

ーション,心理教育をする上で必要な知識を有し,実際に活用できるかどうかが重要だといえる。

最後に,当 LEC の公認心理師試験対策講座および模試について紹介する。第 2回目の公認心理師試験

において,全国模試,直前対策,S合格講座,基礎力 C 模試を提供させていただいた。当 LEC の講座は,

今回のブループリントの変更に対応し,内容を十分にカバーできるものであった。特に,教育評価に関す

る内容などは,当模試を回答していた場合,本試験での回答も容易であったと推測される。次年度も,講

座や模試を開講する予定である。次年度の受験生の一助になれれば,幸いである。

6. 今後に向けた学習上の留意点 7. 第 3 回本試験に向けた LEC からの講座・模擬試験予定

①試験日程が早まる可能性について

・次年度も日程が前倒しになる可能性があり、難易度も引き続き上昇する可能性があるため、早めに受験

準備をしていく必要がある。(5月下旬~6月初旬試験の可能性あり)

②合格に向けて意識を高くもつこと(非効率学習のススメ)

・第 2 回試験を見て理解できたように、十分な臨床経験のない方や、他領域の方には厳しい内容の試験

であったと思われる。やはり、基礎からしっかり時間をかけて勉強して頂きたい。試験に合格するだけ

の知識や理解であるならば、あまた存在する公認心理師の中で生き残ることは難しい。現場を含めて研

鑽し、地道に学んだ分だけ力になるのが心理の良さとも言える。

・国家資格は「受かるか、諦めてやめるか」の 2択しかありません。たとえ他領域であっても、その資格

を取ってどう活かすかは自分次第ですし、周りの言葉は気にする必要はないのです。ただし、取得後は

公認心理師として資質向上を続ける必要性と、職責への自覚を持ち続けることが不可欠であり、その覚

悟がないならやめておいた方が良い試験でもあります。また他領域の方は積極的に先達の心理師と繋

がり、教わったり、一緒に学ぶ機会を多く持つように意識してください(取得後も)。

・公認心理師として学び続けることに価値を見出したとすれば、まず心理師資格の取得までモチベーシ

ョンを保ち続けてください。他社を含めていろいろな教材や講座があり、学ぶ環境は他国家資格と比べ

ても充実していると思われます。上手に組み合わせつつ、試験対策を進めていってください。

③第 3 回本試験に向けた LEC からの講座・模擬試験(予定)

(A)2019 秋~通年「LEC 心理系試験対策基礎講座」

・入門 3講座(心理学入門、臨床心理学概論、精神医学入門)

・発展 5講座(基礎心理学概論、臨床心理学・精神医学①‥概論、臨床心理学・精神医学②

‥アセスメント、臨床心理学・精神医学③‥児童思春期、心理統計法)

(B)2020 冬~春「基礎力チェック模試」「LEC 公認心理師予想公開模試」

・第 2回本試験で大当たりの LEC 模試を次年度も実施予定(動画解説有)

(C)2020 冬~春「公認心理師試験対策必修講座(スピード合格講座)」「総まとめ講座(直前対策)」

・第 3回本試験に向けて、必要なポイントに絞って内容を確認・小テストによる復習

(D)2020 春 「直前対策ライブ講座」…生講義にて本試験に向けた直前対策を実施

★LEC 講座・模試を活用して第3回公認心理師国家試験の合格をつかみ取りましょう★