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第6章 厚生経済学の基本定理
市場の作動特性
第1基本定理:効率性命題
第2基本定理:再分配命題
完全競争の前提条件
市場の普遍性の条件すべての財に対して市場が存在し,交換が行われる.
完全競争の条件完全競争が支配している.
生産要素は企業間,産業間で自由に移動できる.
凸環境の条件効用関数,生産関数は他の経済主体の消費量,生産量とは独立である.
限界代替率逓減の法則,限界費用逓増の法則
安定性の条件競争均衡は安定的で,均衡からはずれてもすみやかに均衡が回復される.
余剰分析
消費者余剰
=総支払意思額
-実際の支払額
生産者余剰
=実際の受取額
-受取要求額
総余剰(社会的余剰)
=消費者余剰
+生産者余剰
総余剰は取引による経済厚生の指標
完全競争均衡
=総余剰の最大化
完全競争市場において最も効率的な取引量が実現
租税の効果
納税義務者=生産者
供給曲線の上方シフト
新しい均衡 → 余剰の損失(死荷重損失)消費者余剰:△DE’p**生産者余剰:△AE’p**=△SBp’税収:□p**E’Bp’=平行四辺形AE’BS余剰の損失は△E’EB
D’
S’
A’
t
E
E’p**
p*
p’
x** x*
B
D
S
余剰の損失
A
補助金の効果
生産者への補助金
供給曲線の下方シフト
新しい均衡 → 余剰の損失(死荷重損失)消費者余剰:△DE’p**生産者余剰:△AE’p**補助金:□p’BE’p**=平行四辺形AE’BS余剰の損失は△EE’B
D
A’
S’
s
E’
E
p**p*
p’
x* x**
BD
A
余剰の損失
S
パレート最適の定義
交換経済
効用関数
初期保有ベクトル
実行可能配分
実行可能配分 x,y
のとき,xはyによって支配されるという
実行可能配分xは,他のいかなる実行可能配分によっても支配されないとき, パレート最適(配分),パレート効率的(配分)という
他の配分へ移行することによって,他の人の状態を悪化させることなしに,もはや誰の状態も改善することができなくなっている
他の人の効用を一定水準にとどめ,ある消費者の効用を最大化する実行可能配分を見つければ,それがパレート最適配分になる
交換経済におけるパレート最適条件
限界代替率の均等
2人2財交換経済におけるパレート最適配分の図解
P点では
MRSPA>MRSP
B
A氏が第1財を第2財より,B氏が第2財を第1財より相対的に高く評価している→交換の利益
点Rでは(点Sでも同じ)
MRSRA>MRSR
B
A氏は第2財を提供し第1財と交換したいが,もはや交換のための第2財は残っていない
契約曲線:パレート最適配分の集合
厚生経済学の基本定理
[厚生経済学の第1基本定理]完全競争市場における均衡(完全競争均衡)はパレート最適である
[厚生経済学の第2基本定理]任意のパレート最適な配分は,一括固定税,一括補助金を用いることにより,完全競争市場の均衡によって達成される
基本定理の意義
価格の自動調整機能
価格をシグナルとした分権的意思決定
→無駄のない配分(効率的配分)の達成
アダム・スミスの「見えざる手」
配分は初期保有に強く依存
初期保有における不平等は保存
公正で効率的な資源配分
←再分配+分権的市場
政府は個別主体以上に多くの情報が必要
交換経済における厚生経済学の基本定理の図解
均衡配分Eは契約曲線上にあり,パレート最適である
初期保有がω→競争均衡はE点ある価値判断→望ましい配分はE’点
生産の契約曲線 (効率性軌跡 )
エッジワースのボックス・ダイヤグラム
横の長さを第1要素の全量,縦の長さを第2要素の全量にとる.
左下に企業aの原点,右上に企業bの原点をとり,両企業の等量曲線を描く.
生産の効率性を満たす生産要素配分の集合
内点解では技術的限界代替率が等しい
端点解の場合も前と同様
生産可能性曲線と限界変形率
生産可能性曲線(フロンティア):生産の契約曲線を生産物平面に描き直した曲線
効率的な生産要素配分の下で達成できる最大可能な両財の組み合わせ
生産関数が限界生産物逓減収穫逓減の法則を満たすなら,生産可能曲線は原点に向かって凹
限界変形率(MRT ):生産可能性曲線の接線の傾きにマイナスの符号をつけたもの
a財の生産を1単位増加させたとき,減少させなければならないb財の量を示す
a財の1単位生産増加のために犠牲されるb財の量,b財で測ったa財の機会費用
生産要素の限界生産力で見た異業種間の効率性条件
限界変形率は限界生産物の比に等しい
a財1単位の生産増加
←a産業で第1要素の増加 1/MP1a単位
←b産業で第1要素の減少 1/MP1a単位
←b財MP1b /MP1
a単位の生産減少
第2要素で見ても同じ
MRT MPMP
MPMP
b
a
b
a= =1
1
2
2
費用面で見た効率性条件
a財の追加的1単位に必要な第1要素の量は1/MP1
a
→限界費用MCa=w1/MP1a
MP1b/MP1
a 単位のb財の生産減
w1/MP1aの費用減少
b企業の限界費用
限界変形率は限界費用の比に等しい
生産経済における厚生経済学の基本定理
(0)消費における効率性条件を求め,それが市場均衡において満たされること.
(1)同一産業内の効率性条件を求め,それが市場均衡において満たされること.
(2)異種産業間の効率性条件を求め,それが市場均衡において満たされること.
(3)生産と消費の整合性を保つ効率性条件を求め,それが市場均衡において満たされること.
同一産業内の効率性条件
当該産業が2企業a, bから成るとして
解では,限界生産物は等し い
市場では
完全競争均衡において同一産業内の効率性条件が満たされる
異種産業間の効率性条件(I)
効率性の条件の求め方
解では
市場では
完全競争均衡において産業間の効率性条件が満たされる
異種産業間の効率性条件(II)
MRTを用いた効率性条件
MRT
市場では
さらに
したがって
完全競争均衡において産業間の効率性条件が満たされる
個別企業の利潤最大化と社会全体の利潤の最大化は同値社会全体の利潤最大化Π=Πa+Πb
=paya-w1x1a-w2x2
a+pbyb-w1x1b-w2x2
b
=paya+pbyb-w1x1-w2x2=paya+pbF(ya)-w1x1-w2x2
dΠ/dya=pa+pbF’(ya)=0−F’(ya)=pa/pb
生産と消費の整合性
消費における効率性MRSA=MRSB (=MRS )
生産と消費の整合性MRT =MRS
MRT>MRS のとき(ya0,yb0) 生産, A氏に(yA
a,yAb),B氏に (yB
a,yBb)
Aの配分を固定し,Bのa財を1単位減少させる
MRSB=MRS単位のb財を補償すれば同じ効用水準
元の配分と同一の効用水準を与える2財の全体量
生産可能な2財の量
MRT-MRS だけb財が残る→パレート最適でない
-MRT
生産と消費の整合性と市場
生産と消費の整合性条件
MRT =MRS
完全競争均衡では
生産と消費の整合性条件が成立する