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「農研機構」は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネームです。
令和元年12月17日埼葛地域6次産業化研修会「お米の加工(もち・あられ・米粉)研修会
お米の科学~理屈がわかれば
加工のコツがわかる~
農研機構・食品研究部門
食品製造工学ユニット
上級研究員 奥西 智哉
「農研機構」は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネームです。
籾摺り
籾摺り籾殻を取り除いて玄米にすること。重量で80%、容量で約50%の玄米が得られる。
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精米
精米玄米から糠を除いて精白米にすること。臼に入れた籾を杵で搗く方式が、古くから農村で利用されてきた。重量で91-92%(精米歩合い)の精白米が回収される。
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米と小麦の違い
米 小麦外側 糠(ぬか:柔らかい) 衾(ふすま:強靭)内側(デンプン) 硬い 脆い精米・精麦 粒が得られる 粉が得られる
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玄米の構造
表層種皮・果皮は外界とのバリア機能を持ち、水を通しにくい。糊粉層・亜糊粉層、胚芽は米糠として取り除かれて利用される場合が多い。
内相デンプン貯蔵細胞にぎっしりとデンプンが詰まっており、硬い。通導組織はないが、異なる形や配列が物質の移動に関係していると考えられている。
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米細胞の構造
●細胞(70-100μm)
細胞壁はヘミセルロース(アラビノキシラン)が主成分。他にセルロース。●アミロプラスト(10-30μm)
デンプン粒。内部にデンプン小粒を多数含む。(複粒デンプン)●デンプン小粒(5μm)
“デンプン粒“と呼ばれることが多い。角ばった形が特徴的。(糯米は角がない)●細胞間物質ペクチンが主成分。細胞同士を結着。●タンパク顆粒プロラミン主体のPB-Iとグルテリン主体の
PB-II。いずれも米粒外層ほど多く含まれるが、PB-Iが顕著。プロラミンは消化性に乏しい。(PB:プロテインボディ)
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米単粒でん粉(平均4.8μm)
小麦でん粉(小麦粉)
大粒(10~35μm)90%(重量)
小粒(1~10μm)
デンプンの形状・大きさの違い
複粒でん粉
米胚乳細胞
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ロール製粉
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シフター ピン
衝撃式(ピン)製粉
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プレードライナー
ファン
気流製粉
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杵
臼
胴搗き製粉
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ピン粉砕機 気流粉砕機ロール粉砕機 胴搗粉砕機
鋭く剪断された状態
表面に凹凸のあるクラスター状
岩肌のような荒い表面
滑らかな表面に小さな粒子が付着
背景:多様な米粉の製造法
小麦粉のサイズ
●粉粒子サイズ大 サイズ小
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Particle size
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乾式(粉砕前原料水分14%)<粉砕時の発熱が大きい>
湿式(粉砕前原料水分30%)<余分なエネルギーが気化熱に>
吸収吸着
表面糊化?
米粉の損傷デンプン
庄子ら、食科工、(2012)より作図
原料米 風選機 石抜き 精米 研磨
色彩選別 洗米 脱水 製粉
金属探知機 袋詰め 製品篩
浸漬
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Wet milling Dry milling
30
sec
30
sec
スポンジケーキの気泡の形成卵を泡立てて、その気泡を利用する。小麦粉は、均一になるまで混ぜるだけで、こねまわさない。
→グルテンをあまり形成させない。(こねるとグルテンが形成される。)→米粉もそのまま利用できる。
卵+砂糖 泡立て 粉を加えて混ぜる。混ぜすぎてはいけない。
型に流し込んで焼く。
スポンジ台の基本的な作り方の流れ
絞り出しクッキー配合製菓用米粉 80g無塩バター 60gきび砂糖 40g塩 ひとつまみ卵黄 1個分生クリーム 小さじ2
米粉はグルテンがないので、混ぜすぎても大丈夫
作り方①バターをクリーム状に練る。
②きび砂糖と塩を加えてよく混ぜる。
③卵黄、生クリームを順に入れそのつどよく混ぜる。
④米粉を加え、粉っぽさがなくなるまでよく混ぜる。⑤絞り袋に入れ絞り出す。⑥オーブンで10分ほど焼く。
桑原奈津子著 かんたん、おいしい米粉のお菓子(主婦と生活社)より
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糊化・老化水の存在下、デンプンを加熱することにより、デンプン懸濁液が、加熱によって次第に粘稠性を示し、透明な糊液となる。この現象を“糊化(こか)=gelatinization”と呼ぶ。
糊化したデンプンを低温に保存すると、水和しているデンプン分子の脱水を伴う再結晶化が起こり、透明な糊液は白濁し硬くなる。この現象を“老化(ろうか)”=retrogradation“と呼ぶ。
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糊化・老化(ミクロ模式図)
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糊化/老化の評価粘度計:RVA(ラピッドビスコアナライザー)
デンプン懸濁液中のパドルを回転させトルクを測定する。温度上昇に従い、トルクの上昇が開始する(糊化温度)。十分に膨潤したデンプンは粘度が高い(最高粘度)が、同時に崩壊も始まる(ブレークダウン)。温度低下プログラム中に粘度が上昇する(コンシステンシー)。
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糊化/老化の違い
アミログラフによるデンプンの評価
区分 原料米 種類 用途生 粉 製 品(β型)
粳米 上新粉(上用粉) 団子、すあま、柏餅、草餅、外郎、かるかんまんじゅう等
糯米 白玉粉 糯団子、しるこ、求肥、大福餅もち粉(求肥粉) 〃
糊 化 製 品(α化型)
粳米 みじん粉(並早粉)
和菓子
上南粉 和菓子乳児穀粉(α化米粉)
乳児食、重湯
糯米 寒梅粉(焼きみじん粉)
押菓子、豆菓子、製菓用、糊用、重湯用
らくがん粉(春雪粉)
らくがん
みじん粉(上新粉)
和菓子
道明寺 桜餅、おはぎ餅上南粉 玉あられ、桜餅、椿餅、おこし、天ぷら
衣用等
伝統米粉の製法
うるち生粉
みたらし団子・上新粉・ぬるま湯を加え、捏ねてまとめる。・蒸す/茹でる/杵つき(コシ)
うるちアルファ化粉
粟おこし・蒸して乾燥して、粗砕(イラ粉)・カリカリとした硬い食感
もち生粉
白玉団子・白玉粉(寒晒し粉)・粘りが少なくコシが強い・粒子が細かくツルリとした食感
もちアルファ化粉
高級打ちもの・寒梅粉・粘性が高く、嵩がある・
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デンプン(澱粉)多数のα-グルコース分子(水溶性)がα-1,4あるいはα-1,6グリコシド結合によって重合した天然高分子(不溶性)である。
α-D-glucose炭素(C)は表記されていない。交点が炭素原子である。
β-1,4結合多糖はセルロース(木材等の植物繊維の主成分)
α-1,4結合α-1,6結合多糖:デンプン
デンプンはその構造によってアミロースとアミロペクチンに分けられる。
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アミロース
多数のα-グルコース分子がα-1,4結合した直鎖状高分子化合物。熱水には可溶。アミロース含量が高い米は硬い米飯になる。
α-1,4結合多糖:アミロース
グルコース残基とヨウ素反応DP(重合度) らせん数 着色
12 2 無色15 2.5 褐色25 3.5 赤色30 5 紫色45 9 青色
植物種によるデンプン重合度植物種 DP(重合度) 分布(地上デンプン)穀類 1,000 300-15,000(地下デンプン)イモ類 5,000 1,000-20,000
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アミロース含量と米品種
アミロース含量は、品種に固有である。気候条件の影響もうける。(冷害、高温障害:アミロース↑)
アミロース含量もち米 0% もちもち低アミロース米 10%前後 ミルキークイン中アミロース米 15-20% コシヒカリ高アミロース米 25%以上 外国産米 パラパラ
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アミロペクチン
多数のα-グルコース分子がα-1,4結合した主鎖にα-1,6分枝鎖が25残基に1つ程度付加。巨大分子で分子量は10,000-100,000。クラスター構造を持つ。
α-1,4結合
α-1,6結合
餅を搗く
1.糯米を蒸す糯=アミロペクチンのみ要求水量が少ない(デンプンの形)
2.餅を搗く糯米内部(柔らかい)と外部(固い)を均一に気泡を追い出す
糯米品種開発には、“硬化性”が重視される。
餅が膨らむ理由
水→水蒸気(1000倍)
気泡:膨張(少し)
アミロペクチンの粘り
日本の餅(もち)粘って、伸びる
韓国のトッポギ(うるち)歯切れがよい
餅を搗くしっかりと気泡を追い出す
あられ:デンプンを糊化状態のまま製品化。
品質要因:冷ます=デンプン老化(硬い)保存=水分低下(ガリガリ)
米ゲル
米粒に水を加えて炊飯・糊化させ、高速せん断撹拌して製造。
せん断力=ずれる力→デンプンがちぎれているだろう。
ミネラル
Fe、Mg、Pは糊粉層に含量が高い。
リン酸基結合イノシトール=フィチン酸フィチン酸は強いキレート作用を示す。(フィチン)
:抗がん作用が期待されている。?乳幼児のミネラル欠乏に留意すべき。
Mg PFe
ビタミン
ビタミンB群(B1=thiamine→):補酵素*パーボイル処理*高圧加工で精白部に移行(信州大・藤田教授)
ビタミンE(トコフェロール):抗酸化活性
トコトリエノール(単子葉):抗酸化活性は40倍:血管新生阻害作用(東北大・宮澤教授)
B1 E
各種成分
イノシトール:脂肪肝・高脂血症治療薬成分
オリザノール:高脂血症治療薬(コレステロール吸収抑制):更年期障害治療薬:化粧品素材(紫外線吸収)
ポリフェノール:抗酸化活性
アントシアニン(紫黒米):pH、金属イオンで発色制御
タンニン(赤米):整腸作用(収斂)、血圧低下
グルテンフリー
グルテンフリーダイエット(1) (2) (3)
(1)グルテン:小麦タンパク質が加工によってできたもの。セリアック病等のアレルギー疾患の原因にもなる。
(2)フリー:自由。無料。成分として入っていないことを表す。
(3)ダイエット:1)で用いられることが多い。日本では圧倒的に2)の意味。Oxford dictionary [diet]
1) the food that a person, community, etc habitually eats and drinks(人々が普段飲食する“食事“)
2) a limited variety or amount of food that a person is allowed to eat and drink(種類や量を制限された“食事療法”)
セリアック病
小麦・大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する免疫反応が引き金になって起こる自己免疫疾患である。欧米での罹患率は1%程度と報告されているが、日本での頻度は不明である。
1)海外市場は大きい。米国内患者数(2010年)
セリアック病 230万人、小麦アレルギー 150万人、グルテン感受性 2000万人程度
2)家族を含めるとさらに市場は大きくなる。同じ家族でも、症状が同じとは限らない。(2キッチン)
3)グルテンフリー食品は品質が良くない。品質向上の技術開発余地と、それによる市場拡大が見込める。
○小麦粉に水を加えてこねるとグルテンが形成され、弾力やつながりのある「生地」ができる。
生の状態で成型できる。
→製パン・製麺に関係
○パン発酵時の二酸化炭素を保持することができる。
→パンが膨らむ。
グルテンとは何か?
グリアジン(粘着力) グルテニン(弾力) グルテン(伸展性)
混捏