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145 9-1 尿中アルブミン測定は糖尿病(性)腎症の早期診断に有用か? 【ステートメント】 尿中アルブミン測定は糖尿病(性)腎症の早期診断に有用である 1, 2) [推奨グレード A] (合意率 95%) 糖尿病性腎症(腎症)は,慢性的な高血糖状態に起因した細胞・組織障害と腎血行動態異常 の結果生じる腎疾患である.典型的な腎症は,糸球体障害に起因した尿タンパクの増加に伴 い,尿細管障害が進行し,ネフロンの喪失とともに腎機能低下をきたす進行性腎疾患である. 一度低下した腎機能の回復は困難であるため,腎予後の改善には早期診断,早期治療介入に よる腎機能低下の予防が重要となる. 現在,尿中アルブミン測定が腎症の早期診断法として使用されている.これは,微量アル ブミン尿(30~299 mg/gCr)の出現が,その後の顕性アルブミン尿への進行や腎機能低下のリ スクになるとの知見に基づいている 1~3) .2013 年に糖尿病性腎症合同委員会から出された病期 分類も,尿中アルブミン排泄量の程度に基づいたものであり,また,その診断に基づく早期 治療介入により,腎予後や心血管イベント予後が改善することが明らかとなっている 4) .した がって,現時点では定期的な尿中アルブミン測定による早期診断をもとに,治療介入を開始 することが推奨される. 尿中アルブミン測定にはいくつか問題点も提唱されている.尿中アルブミン排泄量は採尿 条件によって変動することから,臨床研究など,より正確な早期腎症の診断が求められる場 合には,複数回の検査による診断が望ましい.また,高血圧患者や肥満患者でも微量アルブ ミン尿が出現することから,疾患特異性の問題も指摘されている.これらの問題に対して, 尿や血液サンプルにおける種々の網羅的解析を用いて,より特異的かつ早期の診断指標の探 索も進められているが,いずれも尿中アルブミンに勝る指標の確立にはいたっていない. また,糖尿病患者のなかには,顕性タンパク尿を伴わずに腎機能が低下する症例が存在し, その有病率が年々増加していること,この病態も高い死亡率と関連することが報告されてい a, b.このような臨床背景もあり,アルブミン尿の程度で規定される古典的な糖尿病性腎症 に,アルブミン尿の増加を伴わない腎機能低下も含めた大きな疾患概念として糖尿病性腎臓 病(diabetic kidney diseaseDKD)が提言されており(ICD-11にも採用),アルブミン尿と独 立した,早期腎機能低下を予測する診断指標の開発が必要との意見も出てきている.この病 態を予測しうる臨床指標として,可溶性 TNFα受容体をはじめとした種々の指標の有効性も 示されているが ce,これらは,いまだ臨床的エビデンスの蓄積が不十分であり臨床応用可能 な段階ではない.この問題の解決には,肥満患者の増加や高齢化,腎硬化症の合併など,糖 尿病患者の臨床背景の変化を考慮した病態解析も求められる. いくつかの問題点が提言されているものの,微量アルブミン尿の出現は腎症の早期診断指 CQ 糖尿病(性)腎症 糖尿病診療ガイドライン 2019 9

糖尿病(性)腎症145 9-1 尿中アルブミン測定は糖尿病(性)腎症の早期診断に有用か? 【ステートメント】 尿中アルブミン測定は糖尿病(性)腎症の早期診断に有用である1,

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    9-1 尿中アルブミン測定は糖尿病(性)腎症の早期診断に有用か?

    【ステートメント】 ● 尿中アルブミン測定は糖尿病(性)腎症の早期診断に有用である 1, 2).

    [推奨グレードA](合意率95%)

    糖尿病性腎症(腎症)は,慢性的な高血糖状態に起因した細胞・組織障害と腎血行動態異常の結果生じる腎疾患である.典型的な腎症は,糸球体障害に起因した尿タンパクの増加に伴い,尿細管障害が進行し,ネフロンの喪失とともに腎機能低下をきたす進行性腎疾患である.一度低下した腎機能の回復は困難であるため,腎予後の改善には早期診断,早期治療介入による腎機能低下の予防が重要となる. 現在,尿中アルブミン測定が腎症の早期診断法として使用されている.これは,微量アルブミン尿(30~299mg/gCr)の出現が,その後の顕性アルブミン尿への進行や腎機能低下のリスクになるとの知見に基づいている 1~3).2013 年に糖尿病性腎症合同委員会から出された病期分類も,尿中アルブミン排泄量の程度に基づいたものであり,また,その診断に基づく早期治療介入により,腎予後や心血管イベント予後が改善することが明らかとなっている 4).したがって,現時点では定期的な尿中アルブミン測定による早期診断をもとに,治療介入を開始することが推奨される. 尿中アルブミン測定にはいくつか問題点も提唱されている.尿中アルブミン排泄量は採尿条件によって変動することから,臨床研究など,より正確な早期腎症の診断が求められる場合には,複数回の検査による診断が望ましい.また,高血圧患者や肥満患者でも微量アルブミン尿が出現することから,疾患特異性の問題も指摘されている.これらの問題に対して,尿や血液サンプルにおける種々の網羅的解析を用いて,より特異的かつ早期の診断指標の探索も進められているが,いずれも尿中アルブミンに勝る指標の確立にはいたっていない. また,糖尿病患者のなかには,顕性タンパク尿を伴わずに腎機能が低下する症例が存在し,その有病率が年々増加していること,この病態も高い死亡率と関連することが報告されている a, b).このような臨床背景もあり,アルブミン尿の程度で規定される古典的な糖尿病性腎症に,アルブミン尿の増加を伴わない腎機能低下も含めた大きな疾患概念として糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)が提言されており(ICD-11 にも採用),アルブミン尿と独立した,早期腎機能低下を予測する診断指標の開発が必要との意見も出てきている.この病態を予測しうる臨床指標として,可溶性 TNFα受容体をはじめとした種々の指標の有効性も示されているが c~e),これらは,いまだ臨床的エビデンスの蓄積が不十分であり臨床応用可能な段階ではない.この問題の解決には,肥満患者の増加や高齢化,腎硬化症の合併など,糖尿病患者の臨床背景の変化を考慮した病態解析も求められる. いくつかの問題点が提言されているものの,微量アルブミン尿の出現は腎症の早期診断指

    CQ

    糖尿病(性)腎症

    糖尿病診療ガイドライン 2019 9

  • 標として,世界的コンセンサスを得ており,現時点では,尿中アルブミン測定を早期診断法として推奨する.今後,複雑化する腎症の成因や病態が明らかとなり,より高感度・特異的な早期診断指標が開発されることも期待される.

    【ステートメント文中に引用した文献の採用基準】 検索用語:diabetic nephropathy,albuminuria,predictを用いた検索に,ハンドサーチを加え抽出したMA/SR,RCT,観察研究のなかで,日本人コホート研究,症例数 1,000 人以上,観察期間 5年以上を基準に採用した. 【推奨グレード判定の説明】 推奨グレード決定のための 4項目のうち,エビデンス総体の確実性および費用対効果は明らかでないが,その他の 2項目(益害バランス,患者の価値観)は,いずれも腎症の早期診断に対する尿中アルブミン測定の有効性を支持している.また,日本人を対象とした観察研究により,尿アルブミン排泄量の増加が,その後の腎症進行リスクとなることが示されていること,すでに現行の腎症病期分類が尿アルブミン排泄量の程度に基づいていること,また現時点で,尿中アルブミン測定に比し,より優れた早期診断法となる指標が抽出されないことから,総合的に強い推奨(推奨グレード A)と判定した. 投票 20 名,賛成 19 名,反対 1名(合意率 95%).

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    推奨グレード決定のための4項目

    判定(はい・いいえ) 判定根拠

    ①エビデンス総体の確実性:推奨決定に影響を与える文献にエビデンスレベルが1+または1のものが含まれているか?

    いいえ アルブミン尿とその他の腎障害マーカーを比較して,糖尿病性腎症の早期診断としての有効性を検討した質の高いRCTやMA/SR は存在しない.

    ②益害バランス:推奨の対象となる行為による益は害を上回るか?

    はい 尿中アルブミン測定を用いた早期診断をもとにした早期治療介入により,腎予後改善が期待できる.測定に伴う害はなく,益は害を上回る.

    ③患者の価値観:患者の価値観は一様か?

    はい 尿中アルブミン測定の有益性に対する患者の価値観は一様と思われる.

    ④費用:費用は正味の利益(益-害)に見合うものか?

    いいえ 令和元年 7月時点,保険診療上可能な尿中アルブミン測定回数は 3ヵ月に一度であり,年間では比較的低コストと考えられる.しかし,日本における費用対効果に関する報告はないため,現時点では,費用は正味の利益に見合うものか否かは不確かである.

  • 9-2 腎機能の評価は何を指標にして行うか?

    【ステートメント】 ● 日常診療における腎機能評価には,簡便性を重視し,酵素法で測定した血清クレアチニン(serum creatinine:Scr)をもとに算出した推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate:eGFR)を用いることを推奨するが f),必要に応じ,イヌリンクリアランス,クレアチニンクリアランス(creatinine clearance:Ccr),あるいは血清シスタチンCをもとに算出した eGFRcys-c を用いる.

    腎機能は糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)で評価され,その評価方法には,主にイヌリンクリアランス,クレアチニンクリアランス,eGFRが用いられる.イヌリンクリアランス測定には煩雑な手技が必要であり,クレアチニンクリアランス(Ccr)測定には 24 時間蓄尿が必要である.日常診療ならびに臨床研究では,より簡便な腎機能評価法である eGFR(血清クレアチニン値を用いた推算式から算出)が広く用いられている.よって,腎症診療においても,eGFRを使用することが推奨されるが,eGFRの問題点も十分に理解し,必要時には,他の腎機能評価法の使用も考慮すべきである.アルブミン尿を伴わない糖尿病患者においても,eGFRの低下を見い出すことで腎障害の存在を早期に発見することが可能である. ①イヌリンクリアランス 点滴静注されたイヌリンの尿中へのクリアランスを測定することで腎機能を評価する. (利点)最も正確に腎機能を評価することができる. (欠点)手技が煩雑であり,日常診療で行うのは困難である. ②クレアチニンクリアランス(Ccr) 24 時間蓄尿を用い,クレアチニンの尿中へのクリアランスを測定することで腎機能を評価する.  Ccr(mL/分)={Ucr(mg/dL)×UV(mL/日)}/{Scr(mg/dL)×1,440(分/日)}   (Ucr:尿中クレアチニン,UV:24 時間尿量,Scr:血清クレアチニン[酵素法]) (利点)血液検査と尿検査のみで比較的正確な腎機能評価が可能である. (欠点)正確な 24 時間蓄尿が必要である.クレアチニンが尿細管で分泌されるため,Ccrは実測 GFRよりも 20~30%高い値となる可能性がある.

    ③推算糸球体濾過率(eGFR) 1)eGFR:血清クレアチニン値用いた算出式により腎機能を推定する f).  eGFR(mL/分/1.73m2)=194×Scr(mg/dL)-1.094×年齢-0.287(女性は×0.739) (利点)血液検査のみで腎機能を推定することができ簡便である.この推算式では,75%の症例が実測 GFR±30%の範囲に入る.

    (欠点)標準的な体表面積(1.73m2)で補正されているため,大柄もしくは小柄な体格の場合には誤差が大きくなる.筋肉量が少ない患者では eGFRは高く推算される.激しい運動や加熱調理した肉の大量摂取で eGFRは低く推算される. 2)eGFRcys-c:血清シスタチン C値を用いて腎機能を推定する g).  男性:eGFRcys-c(mL/分/1.73m2)=104×Cys-C-1.019×0.996 年齢-8

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     女性:eGFRcys-c(mL/分/1.73m2)=104×Cys-C-1.019×0.996 年齢×0.929-8 (利点)シスタチン Cは全有核細胞から分泌されるため,筋肉量や食事内容の影響を受けにくいとされている.標準的な体表面積(1.73m2)で補正されているため,大柄もしくは小柄な体格の場合には誤差が大きくなる.

    (欠点)血清シスタチン C値に影響を及ぼす腎機能低下以外の病態が明らかとなっていない.

    9-3 糖尿病(性)腎症に血糖コントロールは有効か?

    【ステートメント】 ● 血糖コントロールは糖尿病(性)腎症の発症ならびに早期腎症の進行抑制に有効である 5~10).

    [推奨グレードA](合意率100%)

    1 型糖尿病を対象にした DCCT 5),2 型糖尿病を対象とした UKPDS 6),Kumamoto study 7)

    において,HbA1c 9.0%前後よりHbA1c 7.0%前後の血糖コントロールが微量アルブミン尿(早期腎症)の発症阻止あるいは微量アルブミン尿(早期腎症)から顕性アルブミン尿(顕性腎症)への進行阻止に対して有効であることが示された.また厳格な血糖コントロールが大血管症を抑制するかを検証するためにデザインされた ACCORD 8),VADT 9),ADVANCE 10)においても,血糖コントロールは早期腎症の発症・顕性腎症への進行を抑制することが示された.なお,血糖コントロールの末期腎不全への進行に対する抑制効果に関しては,ADVANCEのサブ解析 11)においてその有効性が示されているが,上記を含むいくつかの RCTに対するメタ解析においてはその有効性は明らかでないと報告されている 12, 13).一方,顕性腎症期以降の進行抑制に対する血糖コントロールの有効性に関しては,顕性腎症を有する日本人 2型糖尿病患者 211 例に対する前向きコホート研究において,HbA1c<7.0%の達成が顕性腎症からの寛解および血清クレアチニン値の倍化・末期腎不全への進行の抑制に寄与するとの報告はあるものの 14),大規模な RCT研究の報告がないため,現時点では,臨床的エビデンスが不足しているため明らかではない. 腎機能低下例では,薬物動態の変化や腎における糖新生の低下などにより,低血糖の危険性が高まる.厳格な血糖コントロールが重篤な低血糖の出現,体重増加,致死性不整脈の誘発などから死亡率の増加を招く可能性があると報告されているため 8, h),特に長い糖尿病罹患歴・高齢者・心血管病の既往を有する例では,低血糖が生じないように個々のリスクに応じた血糖コントロールが必要である.現在のところ,腎症の発症・進行抑制効果に対する各糖尿病治療薬間の優劣は臨床試験において示されていないため,個々の糖尿病の病態を考慮し,腎症病期,特に腎機能に応じた糖尿病治療薬(種類・投与量)の選択を行う.しかし,近年,心血管疾患リスクの高い 2型糖尿病患者に対する SGLT2 阻害薬であるエンパグリフロジン,カナグリフロジンあるいはダパグリフロジンの標準療法への追加治療がプラセボ群と比べて,腎機能低下や末期腎不全への進行を含む腎複合エンドポイントに対するリスクを有意に低下しうることが報告され i~l),さらにカナグリフロジンに関しては,顕性アルブミン尿を有する腎症進行症例を対象に腎イベントを一次エンドポイントとした臨床試験においても,その有

    CQ

  • 効性が示されている m).さらに GLP-1 受容体作動薬であるリラグルチド,セマグルチド,デュラグルチドについてもプラセボ群に比較して顕性アルブミン尿の発症および持続を有意に抑制することが示唆された n~p).これらはいずれも血糖コントロールとは独立した腎症の発症・進行抑制効果を有する可能性があるが,今後さらなる臨床的データの蓄積が必要である.また,DPP-4 阻害薬に関しても,血糖の改善とは独立したアルブミン尿減少効果を示すことが報告されているが q, r),腎ハードエンドポイントに対する効果は現時点では明らかではない. 近年,日本人 2型糖尿病患者を対象に,厳格な血糖,血圧,脂質コントロールの有効性を検証した J-DOIT3 試験の結果が報告された 15).この試験では,従来治療群と強化治療群の目標HbA1c値はそれぞれ 6.9%未満と 6.2%未満に設定され,観察期間中の両群の平均HbA1c値は 7.2%と 6.8%であった.結果,より厳格な血糖コントロールを含めた強化治療の有意な腎イベント(二次エンドポイント)抑制効果が示唆された.

    【ステートメント文中に引用した文献の採用基準】 検索用語:intensive glucose control,diabetic complicationであがった文献リストのなかから,RCT,症例数 1,000 例以上,症例数 1,000 例以下でも日本人データであることを基準に採用した. 【推奨グレード判定の説明】 ステートメント 1:推奨グレード決定のための 4項目のうち,益害バランスおよび費用については,益が害を上回るあるいは,正味の利益に見合うか否かは明らかではない.しかし,その他の項目(エビデンス総体の確実性,患者の価値観)は,いずれも血糖コントロールの早期腎症進行抑制に対する有効性を支持するものであるため,総合的に強い推奨(推奨グレードA)と判定した. 投票 20 名,賛成 20 名(合意率 100%).

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    推奨グレード決定のための4項目

    判定(はい・いいえ) 判定根拠

    ①エビデンス総体の確実性:推奨決定に影響を与える文献にエビデンスレベルが1+または1のものが含まれているか?

    はい 質の高いMA/SR(エビデンスレベル 1+あるいは 1)において,血糖コントロールによる早期腎症の進行抑制効果が示されている.

    ②益害バランス:推奨の対象となる行為による益は害を上回るか?

    いいえ 血糖コントロールは早期腎症の進行を抑制する効果を有する.しかし,低血糖は,心血管疾患の発症やそれと関連した死亡率の増加につながるため害が益を上回る可能性もある.

    ③患者の価値観:患者の価値観は一様か?

    はい 血糖コントロールは糖尿病治療の基本であり合併症である腎症抑制効果に対する患者の価値観は一様と思われる.

    ④費用:費用は正味の利益(益-害)に見合うものか?

    いいえ 良好な血糖コントロールを得るためには,多剤併用療法が必要なことも多いため現時点では,費用は正味の利益に見合うものか否かは不確かである.

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    9-4 糖尿病(性)腎症に血圧コントロールは有効か?

    【ステートメント】 ● 血圧コントロールは糖尿病(性)腎症の発症・進行抑制に有効である 16~18).

    [推奨グレードA](合意率100%)

    糖尿病性腎症(腎症)治療における血圧コントロールの重要性は数多くの臨床試験により実証されている.降圧薬の腎症に対する有効性を検討した RCTのなかで,プラセボ群に比し,実薬群において有意な血圧降下が確認されたものを抽出し,血圧低下が腎症に及ぼす影響を検証した. 1 型糖尿病患者を対象に,ラミプリルを第一選択薬とした降圧療法により,目標平均血圧を 92mmHg以下の群と 100~107mmHgの群に分け,腎機能とタンパク尿の推移を 2年間観察した RCTでは,両群間で腎機能低下速度に差はないものの,血圧低値群でタンパク尿の有意な減少を認めた 19). 2 型糖尿病患者を対象とした UKPDS38 では,目標血圧を 150/85mmHg未満と 180/105

    mmHg未満の 2群に分け,6年間観察した結果,最終血圧はそれぞれ 144/82mmHgと 154/87 mmHgとなり,血圧低値群では高値群に比し,尿アルブミン 50mg/L以上の発症が 29%,300mg/L以上の発症が 39%低下した 16).同様に 2型糖尿病患者を対象とした ADVANCE試験では,ペリンドプリルとインダパミド併用治療群とプラセボ群における平均 4.3 年間の観察期間で,最終血圧は,実薬群 134.7/74.8mmHg,プラセボ群 140.3/77.0mmHgとなり,実薬群で,微量アルブミン尿期,顕性アルブミン尿期への進行が有意に減少した 20). 顕性アルブミン尿期ならびに腎不全期(平均 Scr 1.6~1.9mg/dL)の 2型糖尿病患者を対象とした RCTである IDNT試験と RENAAL試験では,腎機能低下や腎死に対する血圧コントロールの有効性が示されている 18, 21).IDNT試験では,プラセボ群に比し,イルベサルタン群で血圧の低下とともに,Scr倍化率が有意に減少した.また RENAAL試験でも,ロサルタン群でプラセボ群と比べて Scr倍化と腎死が有意に抑制された 21).RENAAL試験の post-hoc解析では,腎死あるいは全死亡のリスクは,試験開始時の収縮期血圧が 10mmHg上昇することで 6.7%増大することも示されている 22). この他にも,実薬群で有意な血圧低下が確認され,腎症進行が抑制されたとする報告が多数あるが 17, 23~27),その多くが,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)を用いた試験であり,RAS阻害薬の腎保護に対する付加的影響は除外できない(CQ9-6 参照). 現在,腎症患者の降圧目標は 130/80mmHg未満とされている.近年,日本人 2型糖尿病患者を対象に,厳格な血糖,血圧,脂質コントロールの有効性を検証した J-DOIT3 試験の結果が報告された 15).この試験では,従来治療群と強化治療群の血圧目標値はそれぞれ130/80mmHg と 120/75mmHg に設定され,観察期間中の両群の血圧平均値は123/71mmHgと 129/74 mmHgであった.結果,より厳格な血圧コントロールを含めた強化治療の有意な腎イベント(二次エンドポイント)抑制効果が確認された.

    CQ

  • 【ステートメント文中に引用した文献の採用基準】 検索用語:diabetic nephropathy,hypertension,blood pressure controlで検索し,血圧コントロール目標値が異なる 2群の腎予後を検討した RCT,あるいは,降圧薬の腎症に対する有効性を検証した RCTのなかで,観察期間中に実薬群とプラセボ群での平均血圧に有意な差がみられたものを抽出し,症例数 500 人以上を基準に,日本人データを優先し採用した. 【推奨グレード判定の説明】 推奨グレード決定のための 4項目のうち,費用対効果については明らかではない.しかし,その他の 3項目(エビデンス総体の確実性,益害バランス,患者の価値観)は,いずれも血圧コントロールの腎症進行抑制に対する有効性を強く支持するものであるため,総合的に強い推奨(推奨グレード A)と判定した. 投票 20 名,賛成 20 名(合意率 100%).

    9-5 糖尿病(性)腎症に脂質コントロールは有効か?

    【ステートメント】 ● 糖尿病(性)腎症における脂質異常治療薬(フィブラート,スタチン)は腎機能の低下がない腎症の進行抑制に対して有効である可能性がある 28~30). [推奨グレードB](合意率81%)

    脂質代謝異常は,腎症の進行における増悪因子のひとつと認識されているが,治療介入による脂質コントロールが腎症の進行を抑制するかについて検討した臨床試験の報告は少ない. 2 型糖尿病 9,795 人に対して,プラセボあるいはフェノフィブラートを投与して心血管疾患に対する抑制効果を検証することを主要目的とした 5年間の臨床試験(FIELD)およびそのサブ解析の結果,フェノフィブラートはプラセボに比べて,正常アルブミン尿から微量アルブミン尿への進行あるいは微量アルブミン尿から顕性アルブミン尿への進行の抑制ならびに微

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    推奨グレード決定のための4項目

    判定(はい・いいえ) 判定根拠

    ①エビデンス総体の確実性:推奨決定に影響を与える文献にエビデンスレベルが1+または1のものが含まれているか?

    はい 日本人を対象としたものを含む,質の高い多くの RCT に(エビデンスレベル 1)において,血圧コントロールによる腎症予後改善効果が示されている.

    ②益害バランス:推奨の対象となる行為による益は害を上回るか?

    はい 過度の降圧による心血管リスクの増大という害は存在するが,厳格な血圧コントロールが腎症進行を抑制する報告は多く,益が害を上回る.

    ③患者の価値観:患者の価値観は一様か?

    はい 血圧コントロールによる腎症抑制効果に対する患者の価値観は一様と思われる.

    ④費用:費用は正味の利益(益-害)に見合うものか?

    いいえ 比較的低コストな降圧薬があり,正味の利益に見合う可能性が高い.しかし,良好な血圧コントロールには,多剤併用療法が必要なことも多く,また,日本における費用対効果に関する報告はないため,現時点では,費用は正味の利益に見合うか否かは不確かである.

  • 152

    量アルブミン尿から正常アルブミン尿への寛解を増加することが示唆された 28).一方,フェノフィブラートは,末期腎不全への進行,腎代替療法,腎死に対する影響はプラセボと同等であったが,5年にわたる薬剤投与期間中の eGFRの低下速度はプラセボ群と比較して緩徐となった.なお,フェノフィブラート開始後に血清クレアチニン値は増加するが,薬剤中止後には低下し,その際の eGFRは,フェノフィブラート投与群のほうがプラセボ群より高値を示した.さらに 2型糖尿病を対象にフェノフィブラートの冠動脈疾患に対する進行抑制効果を検証した DAIS試験(38 ヵ月)の参加者 418 例のうち尿中アルブミン測定がなされた 314 人に対してアルブミン尿の進行抑制効果に関してサブ解析が行われている 31).その結果,フェノフィブラートはプラセボと比較してアルブミン尿の進行,特に微量アルブミン尿の発症を有意に抑制した.また,上記両試験と ACCORD試験を合わせたメタ解析においても,フェノフィブラート群はプラセボ群に比べて,腎症の病期の進行を 14%抑制することが示された 32).このように,フィブラート製剤による腎症改善効果の報告はあるものの,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者においては,フィブラート系薬が腎障害リスクとなる可能性があること,添付文書上で慎重投与もしくは禁忌となっていることは留意すべきである. スタチンの腎症抑制効果に関するエビデンスは限定的である.2型糖尿病 2,838 人に対して,

    アトルバスタチン 10mgを 3.9 年間投与したプラセボ比較試験(CARDS)の結果,アトルバスタチン投与群はプラセボ群に比べて,eGFRの年間低下速度を 0.18mL/分/1.73m2 改善し,そのなかでも開始時点で微量アルブミン尿を呈していた患者では年間 0.38mL/分/1.73m2 の改善を認めた 29).しかし,アトルバスタチンのアルブミン尿に対する効果は示されなかった.一方,スタチンの腎症抑制効果を評価した 14 件の RCT 2,866 人に対するメタ解析の結果,2型糖尿病患者においてスタチンは有意にアルブミン尿を低下させると報告されている 30).その他,小規模の検討においてもスタチンのアルブミン尿抑制効果が報告されている 33~35).以上,フィブラートあるいはスタチン薬は腎症の進行を抑制する可能性があるが,脂質コントロールを介した効果か,薬剤自体の効果かについては明らかではない. 近年,日本人 2型糖尿病患者を対象に,厳格な血糖,血圧,脂質コントロールの有効性を検証した J-DOIT3 試験の結果が報告された 15).この試験では,従来治療群と強化治療群の目標 LDL値はそれぞれ 120mg/dL未満(冠動脈疾患の既往がある場合 100mg/dL未満),80mg/dL未満(冠動脈疾患の既往がある場合 70mg/dL未満)に設定され,観察期間中の両群の平均 LDL値は 104mg/dLと 85mg/dLであった.結果,より厳格な脂質コントロールを含めた強化治療の有意な腎イベント(二次エンドポイント)抑制効果が確認された.一方,近年臨床応用されている PCSK9 阻害薬による腎保護効果に関するエビデンスは現時点では報告されていない.

    【ステートメント文中に引用した文献の採用基準】 検索用語:statin,diabetic nephropathy,fenofibrate,lipid control,renal functionで検索したが,本ステートメントを作成するための論文が十分あがらなかったため,2編の RCTのサブ解析と 1編のメタ解析論文を採用した. 【推奨グレード判定の説明】 推奨グレード決定のための 4項目のうち,益害バランス,患者の価値観および費用について

    は,益が害を上回る,価値観は一様,正味の利益に見合うと考えられる.しかし,エビデンス相対の確実性に乏しく,また,脂質コントロールを介した効果か,薬剤自体の効果かについては

  • 明らかではなく,患者により実施すべき行為が異なるため弱い推奨(推奨グレード B)とした. 投票 16 名(COI状態による辞退 4名),賛成 13 名,反対 3名(合意率 81%).

    9-6 糖尿病(性)腎症における血圧コントロールの第一選択薬としてアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬・アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は推奨されるか?

    【ステートメント】 ● 糖尿病(性)腎症における血圧コントロールの第一選択薬として,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が推奨される 36~38).

    [推奨グレードA](合意率93%)

    アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)に代表されるレニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin system:RAS)阻害薬は,糖尿病性腎症(腎症)に有効であることが,基礎研究や臨床試験の両面から示されている.RAS阻害薬と他の降圧薬の腎症に対する有効性を比較検討した臨床試験のなかで,両群間で試験中の平均血圧値に差のないものを抽出し,RAS阻害薬の腎症に対する有効性を検証した. 微量アルブミン尿期の 2型糖尿病患者を対象としたバルサルタンとアムロジピンの比較検討では,24 週間の観察期間中に両群の血圧は同程度に低下したが尿中アルブミン排泄は,バルサルタン群で有意に減少した 39).このような RAS阻害薬の降圧効果と独立した微量アルブミン尿減少効果は,日本人を対象としたカンデサルタンを用いた試験で確認されており 36),日本人だけを対象としたものではないが,メタ解析でも実証されている 37, 38).他の降圧薬でもアルブミン尿減少効果が認められるが,その効果は血圧低下に依存していると考えられている 40). 顕性アルブミン尿期ならびに腎不全期の 2型糖尿病患者を対象とした IDNT試験において,

    イルベサルタン群とアムロジピン群とを比較した際,両群で降圧効果に差は認められなかっ

    CQ

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    153

    推奨グレード決定のための4項目

    判定(はい・いいえ) 判定根拠

    ①エビデンス総体の確実性:推奨決定に影響を与える文献にエビデンスレベルが1+または1のものが含まれているか?

    いいえ 脂質コントロールによる腎症進行抑制効果をみた質の高い RCT や MA/SR(エビデンスレベル1あるいは1+)がない.

    ②益害バランス:推奨の対象となる行為による益は害を上回るか?

    はい 脂質コントロールは腎症の進行を抑制する効果を有し,副作用の頻度が多くないことから,益が害を上回る.しかし,腎機能低下例では副作用に注意が必要である.

    ③患者の価値観:患者の価値観は一様か?

    はい 脂質コントロールによる腎症抑制効果や副作用が多くないこと,また動脈硬化性疾患の抑制に対する患者の価値観は一様と思われる.

    ④費用:費用は正味の利益(益-害)に見合うものか?

    はい フィブラート,スタチンともに,比較的低コストの薬剤であり,脂質コントロールにも優れることから,費用は正味の利益に見合うものと思われる.

  • 154

    たが,イルベサルタン群で有意な複合一次エンドポイント(Scr倍化,末期腎不全,全死亡)の改善がみられている 18).同様の効果は,1型糖尿病を対象にカプトリルの効果を検討したCollaborative試験でも示されている 41). 正常アルブミン尿期の 1型糖尿病患者を対象に,新規アルブミン尿の発症に対するエナラプリルあるいはロサルタンの効果を検討した試験では,RAS阻害薬による腎症発症予防効果は示されなかった 42).一方,2 型糖尿病患者を対象に行われた,BENEDICT試験 23, 43),ROADMAP試験 24)では,それぞれトランドラプリル,オルメサルタンによる血圧非依存的な腎症発症予防効果が示された. 少なくとも,微量アルブミン尿期以降における RAS阻害薬の有効性を示すエビデンスは十分に存在する.現時点で,ACE阻害薬と ARBのいずれかの優位性は示されておらず 44),両剤の効果は同等と考えられる.その他の RAS阻害薬として,レニン阻害薬が臨床応用されているが,腎症治療における第一選択薬としての有用性を示す報告はない.現時点では,腎症治療における血圧コントロールの第一選択薬として,ACE阻害薬あるいは ARBを推奨する.ただし,糖尿病症例を含む観察研究にて,RAS阻害薬使用後に,軽度の Scr上昇であっても,相対的な死亡率を上昇させると報告されており 45),RAS阻害薬開始後の高カリウム血症,腎機能悪化には注意が必要である.

    【ステートメント文中に引用した文献の採用基準】 検索用語:diabetic nephropathy,hypertension,ARB,ACEI,angiotensinで検索し,エビデンスレベルの高い 2編のメタ解析論文,ならびに,RAS阻害薬と他の降圧薬の腎症に対する有効性を比較検討した RCTのなかで,両群間で試験中の平均血圧値に差のない日本人を対象としたものを選択した. 【推奨グレード判定の説明】 推奨グレード決定のための 4項目のうち,正確な費用対効果は不確かであるが,その他の項目(エビデンス総体の確実性,益害バランス,患者の価値観)は,いずれも ACE阻害薬,ARBの腎症に対する有効性を支持しており,総合的に強い推奨(推奨グレード A)と判定した. 投票 15 名(COI状態による辞退 5名),賛成 14 名,反対 1名(合意率 93%).

    推奨グレード決定のための4項目

    判定(はい・いいえ) 判定根拠

    ①エビデンス総体の確実性:推奨決定に影響を与える文献にエビデンスレベルが1+または1のものが含まれているか?

    はい 日本人を対象とした RCT,質の高いMA/SR(エビデンスレベル1あるいは1+)において,ACE阻害薬,ARBによる腎症抑制効果が示されている.

    ②益害バランス:推奨の対象となる行為による益は害を上回るか?

    はい 一部,高カリウム血症,腎機能低下などの害は存在するものの,多くの症例で,ACE阻害薬,ARB による腎症抑制効果が報告されており,益が害を上回る.

    ③患者の価値観:患者の価値観は一様か?

    はい ACE阻害薬,ARBによる腎症抑制効果に対する患者の価値観は一様と思われる.

    ④費用:費用は正味の利益(益-害)に見合うものか?

    いいえ ACE 阻害薬,ARBは比較的低コストであり,費用は正味の利益に見合うと思われるが,日本における費用対効果に関する報告はないため,現時点では,費用は正味の利益に見合うものか否かは不確かである.

  • 9-7 糖尿病(性)腎症に食塩の摂取制限は推奨されるか?

    【ステートメント】 ● 糖尿病(性)腎症に食塩摂取制限は推奨される 46). [推奨グレードB](合意率95%)

    小規模かつ短期的な臨床研究において,糖尿病性腎症(腎症)患者を対象とした食塩摂取制限による血圧低下効果,アルブミン尿減少効果が報告されている.また,腎機能低下やネフローゼ症候群,心機能低下を有する症例では,心不全や難治性浮腫による入院や早期透析導入の回避にもつながるため,特に食塩摂取制限が推奨される. 食塩摂取量増大に伴う血圧上昇,すなわち食塩感受性高血圧は糖尿病や肥満患者で多くみられ,この病態は腎機能障害の進行とともにさらに亢進する 47~49).よって,腎症患者では,食塩摂取制限により降圧効果,尿アルブミン減少効果が期待される.食塩摂取制限が血圧コントロールや腎症進行に及ぼす影響も検証されている.糖尿病患者における食塩摂取制限の効果を検証した 13 件の RCTを用いた系統的レビューのなかで,尿中ナトリウム排泄量から算出した 1日塩分摂取量は,1型糖尿病においては平均 11.9g/日,2型糖尿病においては7.3g/日,対照群に比し食塩制限群で少ない結果であった 46).このような食塩摂取制限により血圧は,1型糖尿病で 7.1/3.1mmHg,2型糖尿病で 6.9/2.9mmHg低下する結果であった.しかしながら,このレビューでは,食塩摂取量を減少させることの意義は示しているものの,血圧改善や腎機能維持を目標とした推奨 1日塩分摂取量までは検証されていない 46).耐糖能障害,2型糖尿病を有する 46 名を対象としたクロスオーバー試験において,食塩制限群(塩分摂取量約 7.0g/日)では,非制限群(塩分摂取量約 10.0g/日)に比し,血圧低下や尿アルブミン減少効果が確認されている 50).また,CKD重症度分類における G4 期の日本人 2型糖尿病患者において食塩摂取量の減少が,1年間の eGFR低下速度の緩和に関与するとの観察研究もある 51).食塩摂取制限の降圧,尿アルブミン減少,eGFR低下抑制といった有益性を示す報告は散見されるが,短期間の検討が多く,塩分摂取量とハードエンドポイントの関連を示した報告はない. また,降圧治療の第一選択薬であるレニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)の効果と,食塩摂取量との関連性が報告されている.腎機能低下を伴う 2型糖尿病を対象としたIDNT試験と RENAAL試験の post-hoc解析において,尿中ナトリウム排泄量が最も少ない群では,ARB投与により,非 ARB投与比べて eGFR低下速度の改善がみられた 52).この効果は尿中ナトリウム排泄量が多い群では消失することから,食塩摂取量は RAS阻害薬の腎保護効果に影響を与えると考えられる 52).また,ACE阻害薬でも,食塩摂取制限と利尿薬の併用により尿アルブミンに対して相加的な効果が観察されている 53). 以上より,腎症における食塩摂取制限には,その降圧作用に加え,RAS阻害薬の腎保護効果増強作用も期待される.しかしながら,極端な食塩摂取制限は全死亡,末期腎不全リスクを増加させる可能性も報告されている 54).特に,RAS阻害薬を使用している腎機能低下症例や高齢者などに食塩摂取制限を指導する場合には,脱水予防や K制限も含めた指導が必要である.

    CQ

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  • 156

    【ステートメント文中に引用した文献の採用基準】 検索用語:diabetic nephropathy,sodium restrictionで検索したなかで,1編のメタ解析論文を選択した. 【推奨グレード判定の説明】 推奨グレード決定のための 4項目のうち,3項目(益害バランス,患者の価値観,費用対効果)は食塩摂取制限の有効性を支持するものであった.食塩摂取制限を強く推奨するための,レベルの高いMA/SRはないものの,一編のMA/SRが,食塩摂取制限による降圧効果やアルブミン尿減少効果といった有益性を支持することから,総合的に弱い推奨(推奨グレード B)と判定した. 投票 20 名,賛成 19 名,反対 1名(合意率 95%).

    9-8 糖尿病(性)腎症にタンパク質の摂取制限は有効か?

    【ステートメント】 ● 顕性腎症期以降において糖尿病(性)腎症の進行抑制に対してタンパク質制限は有効である可能性があるが,臨床的エビデンスは十分ではない 55, 56).

    糖尿病性腎症(腎症)の進行抑制に対するタンパク質摂取制限の有効性については,小規模な介入研究結果 55, 57~68),またいくつかの RCTに対するメタ解析・系統的レビューによる報告があるが 56, 69~71),タンパク質摂取制限の尿タンパク・尿アルブミンの低下あるいは腎機能低下の抑制に対して一定した結論は得られていない.その理由として,試験期間,タンパク質摂取制限量,対象患者の腎症病期,タンパク質摂取制限の達成度が一定していない,各症例間における薬物療法を一律にすることが困難であることなど研究デザイン上の問題点が多く存在することが影響していると考えられる.したがって,腎症の腎機能低下に対する,タンパク質制限の効果は,現在のところ臨床的エビデンスが十分ではないと言わざるを得ない.一方で,腎症に対するタンパク質制限の効果を検証した 13 件の RCTを対象としたメタ解析の結果,タンパク質制限のアドヒアランスの確保(遵守)ができれば,タンパク質制限(0.6~

    Q

    推奨グレード決定のための4項目

    判定(はい・いいえ) 判定根拠

    ①エビデンス総体の確実性:推奨決定に影響を与える文献にエビデンスレベルが1+または1のものが含まれているか?

    いいえ 糖尿病患者における食塩摂取制限の効果を検証したMA/SRがあるが,降圧やアルブミン尿減少減少という異なるエンドポイントに対する短期間のRCTを評価したものである.

    ②益害バランス:推奨の対象となる行為による益は害を上回るか?

    はい 過度の食塩摂取制限による脱水,腎機能悪化の懸念という害はあるものの,食塩摂取制限には降圧効果が期待されることから,益が害を上回る.

    ③患者の価値観:患者の価値観は一様か?

    はい 食塩摂取制限による降圧効果,腎症抑制効果に対する患者の価値観は一様と思われる.

    ④費用:費用は正味の利益(益-害)に見合うものか?

    はい 基本的に食塩摂取制限に費用は必要としない.

  • 0.8g/kg/日)は標準食(1.0~1.6g/kg/日)に比較して eGFRの改善効果があったことが示されていることから,その実施が可能である場合にはその効果を期待できる可能性がある 56).しかし,タンパク質の必要量は,年齢,個々の栄養状態により異なっているため,画一的なタンパク質制限は不適切であり,個々の年齢,病態,リスク,腎機能低下速度,アドヒアランスなどを総合的に判断して行う必要があると考えられる.また,タンパク質制限が腎症の進行を抑制する効果を有するとしても,どの程度のタンパク質制限が腎保護に必要なのか(現在推奨されている顕性腎症期 0.8~1.0g/標準体重 kg/日,GFR<45mL/分/1.73m2 あるいは腎不全期 0.6~0.8g/標準体重 kg/日では不十分なのか),どの時期からそれを施行すべきか,栄養学的安全性など解決すべき課題は多い.

    9-9 貧血治療は糖尿病(性)腎症の進行抑制に有効か?

    【ステートメント】 ● 糖尿病(性)腎症の進行抑制に対する貧血治療の有効性は明らかではない 72).

    糖尿病では,他の原疾患による CKDに比較して貧血の頻度が高いことが知られている s).日本人を対象とした Chronic Kidney Disease Japan Cohort研究においては,貧血(Hb<11.0g/dL)を呈する頻度が,糖尿病性腎症(腎症)では非糖尿病に比べて高いことが示された(30<GFR<45mL/分/1.73m2 では,貧血の罹患率は,非糖尿病 12.1%に対して,糖尿病性腎症で 24.9%と約 2倍).通常,CKDにおける貧血は GFR<30mL/分/1.73m2 から頻度が増加するが,糖尿病性腎症ではそれより早期(GFR<45mL/分/1.73m2)よりその頻度が高くなると考えられる. 顕性腎症を伴う 2型糖尿病患者を対象とした RENAAL研究のサブ解析において,貧血は末期腎不全あるいは死亡に対する独立した危険因子であることが報告されている 73).また,開始時のHb濃度と末期腎不全の発症率との関連を検討した結果,Hb濃度が最も高かった群に比べてHb濃度が低かった群では有意に末期腎不全への移行率が高かった 74).さらに,いくつかの前向きコホート研究において,貧血の進行が末期腎不全,sCrの倍化,GFR低下のリスクとなることが報告されている 75~80). しかし,2009 年 2型糖尿病を対象とした無作為化比較試験である TREATの結果において,2型糖尿病の CKD患者(eGFR 20~60mL/分/1.73m2)に対して,Hb 13g/dLを目標にダルベポエチンアルファを投与した群(目標高値群)は,投与しなかった対照群と比較して,死亡・心血管イベント・末期腎不全への進行は同等であることが報告された 72).さらに,その後に発表された研究において,脳卒中の発症リスクが対照群に比べ,目標高値群(中央値 Hb 12.5g/dL)で 2倍に増加していることが示され t),加えて,目標高値群に投与されたダルベポエチンアルファは月あたり 176μg(中央値)(四分位範囲 104~305μg)と高用量であった.同様に,主に腎症以外の原疾患を含む保存期 CKDおける目標Hb値 9~11g/dLと 13g/dL以上を比較した臨床試験においても高Hb値群における優位性は示されなかった 81~84).また,CHOIR試験の post hoc解析では,高Hb値群で死亡,心筋梗塞,心不全入院,脳卒中の複合的一次エンドポイントのリスクが有意に高いこと 82),さらに高用量 ESAの使用がそのリスク

    Q

    9 糖尿病(性)腎症

    157

  • 158

    と最も関連していたことが示されている 85).このような大規模臨床試験の結果を踏まえ,KDIGOガイドラインでは,erythropoiesis stimulating agent(ESA)使用による保存期 CKD患者に対する腎性貧血の治療は,目標Hb値 10~11.5g/dLとし,Hb 13g/dLへ意図的に上昇させないこととしている.一方,わが国の保存期 CKD患者を対象にした TsubakiharaらのRCT(ダルベポエチンアルファにより目標Hb 11~13g/dLとした群と rHuEPOにより目標Hb 9~11g/dLとした群を比較)の post hoc解析の結果,CKD stage 5 の非糖尿病性腎症患者では目標Hb値 11~13g/dLとした場合に腎生存率が改善することが示されている 86)ことから,「日本腎臓学会の CKD診療ガイドライン 2018」では,保存期 CKD患者の ESA治療における目標Hb値は 11g/dL以上,13g/dL未満が提案されている.以上より,腎症の進行抑制に対する貧血治療の有効性は明らかではないが,種々の観察研究の結果から貧血が腎症の進行リスクである可能性があるため,腎症においても目標Hb値 11g/dL以上,13g/dL未満を目安にしつつ,個々の心血管疾患リスクおよび ESAの過剰投与の回避に留意した貧血治療を行う.なお,腎性貧血の診断には,他の貧血をきたす疾患が除外されることが重要であり,鉄欠乏,ビタミン B12・葉酸欠乏,亜鉛欠乏,血液疾患などの合併の有無についての鑑別診断が必要である.特に腎性貧血時には,しばしば鉄欠乏状態を併発しており,その評価と治療には注意を要するが,同時に消化管・婦人科疾患を含む組織・臓器の出血性病変の有無を含めた精査も適宜行う必要がある(特に比較的急な貧血進行の場合).

    9-10 糖尿病(性)腎症はその他の合併症のリスクファクターとなるか?

    【ステートメント】 ● 糖尿病(性)腎症患者は,心血管疾患の合併率が高く,心血管疾患による死亡の頻度が高い ● GFRの低下とアルブミン尿は,心血管疾患の独立したリスクファクターである u).

    CKDにおいて認められる GFRの低下およびアルブミン尿/タンパク尿は,心血管疾患の発症ならびにそれと関連した死亡率の増加に対するリスクファクターであることが疫学研究の結果示されている v, w).またこの CKDと心血管疾患発症リスクとの関係性は,「心腎連関」として認識されているが,糖尿病性腎症(腎症)においても心腎連関が存在することが示されている.新規に 2型糖尿病と診断された患者を対象とした UKPDSのサブ解析において,腎症の年間進行率は,正常アルブミン尿から微量アルブミン尿 2.0%,微量アルブミン尿から顕性アルブミン尿 2.8%,顕性アルブミン尿から腎不全 2.3%であったのに対して,各病期の心血管疾患を含む年間死亡率は,正常アルブミン尿 1.4%,微量アルブミン尿 3.0%,顕性タンパク尿 4.6%,腎不全 19.2%と腎症病期の進行とともに増加を認めたことが示された x).また,2型糖尿病患者を対象とした ADVANCE試験におけるサブ解析においても,アルブミン尿とeGFRの低下は,腎不全への進行のみならず心血管疾患の発症の独立したリスクファクターであることが示された y).さらに,アメリカの NHANES Ⅲ(the Third National Health and Nutrition Examination Survey)における 15,046 人を対象とした解析結果の報告では,2型糖尿病患者においてアルブミン尿,GFRの低下は,心血管死,非心血管死,全死亡に対する独立したリスクファクターとなっていることも報告されている u).

    Q

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    その他の合併症については,1型および 2型糖尿病患者を対象にした横断的研究の結果,腎機能低下と足病変(皮膚潰瘍,壊疽,切断)の存在には相関関係が認められると報告されている z).また,腎症が網膜症の発症・進行のリスクファクターであるかどうかは明らかではないが,網膜症の合併が腎症の進行と関連することが報告されている AA~AC).

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    m)Perkovic V, Jardine MJ, Neal B et al: Canagliflozin and Renal Outcomes in Type 2 Diabetes and Nephropathy. N Engl J Med 380:2295-2306, 2019

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    9 糖尿病(性)腎症

    163

  • 164

    アブストラクトテーブル

    論文コード 対象 方法 結果

    バイアスリスクは低いか

    (MA/SR,RCT共通)

    臨床疑問に直接答えている

    (MA/SR,RCT共通)

    研究結果はほぼ一致している(MA/SRのみ)

    誤差は小さく精確な結果か

    (MA/SR,RCT共通)

    出版バイアスは疑われない

    (MA/SRのみ)

    1)Katayama  2011 前向きコホート [レベル2]

    2 型糖尿病(1,558人),平均年齢 58.5歳[日本人]

    開始時ACR 30mg/gCr 未満とACR 30~ 150mg/gCr の群でACR 300mg/gCr 以上になるイベント数を比較検討した[平均 8 年間]

    ACR 300mg/gCr以上になる年間発症率 は ACR 30mg/gCr 未満で 0.23%,ACR 30~150mg/gCrの群では1.85%と HR 8.45 であった

    - - - - -

    2)Moriya 2013 前向きコホート [レベル2]

    2 型糖尿病(1,475人),平均年齢 58.5歳[日本人]

    開始時ACR 30mg/gCr 未満とACR 30~150mg/gCr の有無,網膜症の有無がeGFR 低下速度を比較検討した[平均 8年間]

    網膜症を有するACR 30 ~ 150mg/gCrの 群の eGFR 低 下速 度( -1.92 mL/分 /1.73m2/ 年)は他の群に比し2~3倍であった

    - - - - -

    5)DCCT 1993 RCT [レベル1]

    1型糖尿病(一次予防:726人,二次予防:715人)(計1,441人),腎症1~2 期,平均年齢 27歳,アメリカ,カナダ人

    通常インスリン療法[HbA1c 9.1 %](730 人 )vs. 強化インスリン療法[HbA1c 7.2%](711人)[平均 6.5 年間]

    強化インスリン療法により,アルブミン尿期:尿中アルブミン 40mg/24hr 以上(RRR 39 %),顕 性 タ ン パ ク 尿期:尿中アルブミン300mg/24hr 以 上(RRR 54%)への進行を抑制

    はい はい - はい -

    6)UKPDS 1998 RCT [レベル1]

    診断早期 2 型糖尿病(3,867人),Scr 0.92mg/dL, 平 均年 齢 54 歳, 白 人81%,インディアンアジア人10%

    通常治療群(HbA1c 7.9%)vs. 強化治療群(HbA1c 7.0 %)[10 年間]

    強化治療が,細小血管症の発症(RRR 25%)を減らす.アルブミン尿,顕性タンパク尿,Scr の倍加を抑制

    はい はい - はい -

    7)Ohkubo 1995 RCT [レベル1]

    2 型糖尿病(110人),腎症1~2 期,平均年齢 49 歳[日本人]

    通常インスリン療法[HbA1c(JDS)9 . 4 %[HbA1c(NGSP)9.8 %]](55人)vs. 強化インスリン療法[HbA1c(JDS)7.1%[HbA1c(NGSP)7.5%]](55人)[8 年間]

    強化インスリン療法により微量アルブミン尿期(RRR 56%),顕性タンパク尿期(RRR 100%)への進行を抑制

    はい はい - はい -

    8)Ismail-Beigi  2010 RCT [レベル1]

    2 型糖尿病(10,251人 ), 平 均 eGFR 90mL/ 分 /1.73m2,平均 ACR 1.54mg/mmol,平均年齢 62歳,白人 64%,黒人19%,アメリカ人,カナダ人

    強化血糖コントロール 群(5,128 人,HbA1c 7.2 %)vs. 通常血糖コントロール 群(5,123 人,HbA1c 7.6 %)[ 平均 5年間]

    強化血糖コントロール群で腎症発症,顕性腎症への進行を抑制.腎不全への進行,Scr の倍化または eGFR 20mL/ 分/1.73m2 以上の低下に関しては有意な差はなし

    はい はい - はい -

    9)Duckworth  2009 RCT [レベル1]

    2 型糖尿病(1,791人 ),平均血清 Cr(Scr)1.0mg/dL 程度,平均年齢 60 歳,非ヒスパニック系白人63%,ヒスパニック系白人15%,黒人15%,アメリカ

    強 化 血 糖 コ ントロ ー ル 群(892人,HbA1c 6.9 %)vs. 通常血糖コントロール 群(899 人,HbA1c 8.4 %)[平均 5.6 年間]

    強化血糖コントロール群で微量アルブミン尿,顕性腎症への進行を抑制.腎不全への進行,Scr の倍化, 血 清 Cr(Scr)>3mg/dLには有意な差はなし

    はい はい - はい -

    10) ADVANCE  Collaborative Group 2008 RCT [レベル1]

    2 型糖尿病(11,140人),平均 ACR 14~ 15mg/gCr, 平均 eGFR 78mL/ 分/1.73m2,平均年齢66 歳,ヨーロッパ人45%,アジア人37%[東アジア人を含む]

    強化血糖コントロール群(グリクラジド投与を中心とした)5,571 人(HbA1c 6.5%)vs. 通常血糖コントロール群5,569 人(HbA1c 7.3%)[5 年間]

    強化血糖コントロール群で新規腎症発症または腎症の進行を21%抑制

    はい はい - はい -

  • 9 糖尿病(性)腎症

    165

    論文コード 対象 方法 結果

    バイアスリスクは低いか

    (MA/SR,RCT共通)

    臨床疑問に直接答えている

    (MA/SR,RCT共通)

    研究結果はほぼ一致している(MA/SRのみ)

    誤差は小さく精確な結果か

    (MA/SR,RCT共通)

    出版バイアスは疑われない

    (MA/SRのみ)

    16)UKPDS 1998 RCT [レベル1]

    高 血 圧,2 型 糖 尿病(1,148人),尿中アルブミン 50mg/L 以 上16 ~18 %,300 以上 3~ 4%,平均年齢 56 歳,白人 86%,アジア系インド人5%,イギリス

    降 圧 目 標 <15 0 / 8 5 m m H g(758 人 ):カプトプリルまたはアテノロール vs. 降圧目標< 180/105mmHg(390人)アテノロール[8.4 年間]

    最 終 平 均 血 圧 は144/82mmHg vs. 154/87mmHg であった.厳格降圧群は 6 年目で尿中アルブ ミン 50mg/L の発症を 29%低下させ,300mg/L 以上の発症を39%低下さ せ た.Scr,Scr倍化については両群間差はなかった

    はい はい - はい -

    17)Makino 2007 RCT [レベル1]

    正常血圧または高血圧,2型糖尿病(527人),腎症 2 期,平均年齢 61歳,[日本人]

    テルミサルタン80mg(168人)vs. テルミサルタン40mg(172人 )vs. プ ラ セボ(174人)[1.3 年間]

    血圧はテルミサルタ ン 群 で 128/72 mmHg,プラセボ群で132/74mmHgとテルミサルタン群で低下した.腎症 3 期への進行率はテルミサルタン 80mg 群で16.7%,40mg 群で22.6%,プラセボ群49.9%と比べて有意に抑制した.正常血圧症例でも,テルミサルタン 80mg 群で11 %,40mg 群 で21%とプラセボ群44.2%と比べて有意に抑制した.腎症1期への remissionはテルミサルタン80mg 群で 21.2%,40mg で 12.8 % とプラセボ群1.2%と比べて有意に増加した

    はい はい - はい -

    18)Lewis 2001 RCT [レベル1]

    高 血 圧,2 型 糖 尿病(1,715人),腎症3 期,1日尿タンパク平均 2.9g,平均Scr 1.6mg/dL, 平均年齢 59 歳,非ヒスパニック白人73%

    イルベサルタン(579人)vs. アムロジピン(569人)vs. プラセボ(569人)[平均 2.6 年間]

    血圧はプラセボ群144/80mmHg と比べて,イルベサル タ ン 群 140/77 mmHg,アムロジピン群 141/77mmHgと低下した.イルベサルタン群とアムロジピン群では差がなかった.イルベサル タ ン は,Scr 倍化,ESRD,死亡の複合エンドポイントをプラセボと比べて,20%低下させ,アムロジピン群と比べて23%低下させた.Scr 倍 化はプラセボ群と比べて 33%低 下,アムロジピン群と比べて 37%有意に低下させた.ESRD への進行は他の群と比べて 23%低下させたが,有意差はなかった.全死亡については有意差はなかった

    はい はい - はい -

  • 166

    論文コード 対象 方法 結果

    バイアスリスクは低いか

    (MA/SR,RCT共通)

    臨床疑問に直接答えている

    (MA/SR,RCT共通)

    研究結果はほぼ一致している(MA/SRのみ)

    誤差は小さく精確な結果か

    (MA/SR,RCT共通)

    出版バイアスは疑われない

    (MA/SRのみ)

    28)Davis 2011 RCTサブ解析 [レベル3]

    2 型糖尿病(9,795人),eGFR 87mL/分 /1.73m2,ACR 1.1mg/mmol,平均年齢 62 歳,ヨーロッパ,オセアニア

    フィブラート(4,895人 )vs. プ ラ セボ(4,900人)[5 年間]

    フィブラートは Scr 10μmol/L 上昇させるが,中止で改善する.フィブラート群では eGFRの変化について,フィブラート群(-1.19mL/分/1.73m2),プラセボ群( - 2.03mL/ 分/1.73m2)と比べて有意に抑制した.中止後,フィブラート群( - 1.9 mL/ 分/1.73m2), プ ラ セボ群(- 6.9mL/ 分/1.73m2)と有意であった.フィブラートは ACRを 24%低下させ,プラセボ11%と比べて有意に低下させた.さらにプラセボと比べて,腎症進行を14%低下させ,regression を18%増加させた.末期腎不全,透析導入,腎移植,腎死に有意な差はなかった

    - - - - -

    29)Colhoun 2009 RCTサブ解析 [レベル3]

    2 型糖尿病(2,838人),腎症 3 期までScr 1.7mg/dL 以上 は 除 外,eGFR 30 ~ 60mL/ 分/1.73m2 34 %, アルブミン尿 21.5%あり.平均年齢 61歳,白人94%,イギリス

    アトルバスタチン10mg/ 日 vs. プラセボ[3.9 年間]

    アトルバスタチン群は eGFR の 変化を 年 間 0.18mL/分 /1.73m2 改 善 させ,なかでも開始時点でアルブミン尿が認められた患者群では年間 0.38mL/分 /1.73m2 に 改 善させた.しかし,開始時正常アルブミン尿期であった群で は 0.13mL/ 分/1.73m2 改善させたが,有意差はなかった.アトルバスタチンはアルブミン尿の発症を増加させる傾向があるも有意差なし.remission は増加傾向があるが有意なし

    はい はい はい はい はい

    30)Shen 2016 MA [レベル2]

    スタチンの腎症進行抑制に対する効果を検証した14 件のRCT 2,866 人糖尿病患者

    プラセボに対するスタチンのアルブミン尿および腎機能の変化をメタ解析にて評価

    プラセボと比較してスタチン群の 2 型糖尿病患者におけるアルブミン尿および尿中アルブミン排泄率は有意に低下.腎症を伴う2 型糖尿病患者で特にアルブミン尿が減少の程度が大きく,またスタチン開始1~3 年間の有意な減少を認めた.なお腎機能に差を認めなかった

    はい はい はい はい はい

    36)Haneda 2004 RCT [レベル1]

    2型糖尿病(127人),腎症 3期,Scr 1.12 mg/dL,尿タンパク2.6g/ 日,平均年齢63 歳[日本人]

    血圧低下に群間差はなかった.尿タンパク量の変化はカンデサルタン 2mg 群で0.8%増加,4mg 群で18.1%低下,8mg群で 5.8%低下,プラセボ群で32.2 %増加した

    はい はい - はい -

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    9 糖尿病(性)腎症

    論文コード 対象 方法 結果

    バイアスリスクは低いか

    (MA/SR,RCT共通)

    臨床疑問に直接答えている

    (MA/SR,RCT共通)

    研究結果はほぼ一致している(MA/SRのみ)

    誤差は小さく精確な結果か

    (MA/SR,RCT共通)

    出版バイアスは疑われない

    (MA/SRのみ)

    37)Casas 2005 MA [レベル1+]

    73,514 人(73 %が糖尿病),腎症 3 期,GFR 86.9mL/ 分,Scr 113μmol/L, アルブミン尿 600mg/日,[日本人を含む]

    150 の RCTのうち48は ACE阻害薬または ARB vs. プラセボ,77は ACE 阻害薬または ARB vs. その他の降圧薬

    糖尿病患者(4,772人)においてACE阻害薬または ARBは非 RAS 阻害薬に比べ,尿中アルブミン濃度を有意に低下させた.血圧は全体(5,266人)で評価した場合,両群で有意�