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1 建物緑化の評価について 独立行政法人建築研究所 住宅・都市研究グループ 上席研究員 加藤真司

建物緑化の評価について - GRIPSup/2012/files/pdf/03.pdf · コンジョイント分析 トラベルコスト法 (事前評価) cvm(仮想市場評 価法) ・評価対象が極めて広い。存

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建物緑化の評価について

独立行政法人建築研究所住宅・都市研究グループ 上席研究員

加藤真司

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研究の背景

屋上緑化面積の推移

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3

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

施工面積(㌶)

年度

全国の毎年度屋上緑化施工面積

*東京23区の屋上緑化整備率は2%以下

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建物緑化推進上の課題(事業者へのアンケート調査から)

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建物緑化にかかる現行制度とその課題

1.建物緑化は、現行制度では緑化率という設置面積でしか評価されない。例) 都市緑地法による緑化地域制度

開発許可制度における条例地区計画条例 など

2.建物緑化の機能には、都市景観の向上や生物多様性の確保といった緑の質も含まれるが、こうした質について評価されてはいない。

3.質を維持するために適切な維持管理が不可欠であるにもかかわらず、こうした管理者の努力は評価されてはいない。

4.屋上緑化のうち約4割が公開されていない。

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研究目的

本研究では、建物緑化推進に資するために、建物緑化の便益の事前評価手法の検討を行うとともに、併せて、建物緑化の特性を明らかにし、建物緑化の社会的便益が効果的に発揮できる制度提案を行うことを目的とした。

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建物緑化の機能の分類

直接的利用価値

都市農地活用

間接的利用価値

都市景観の改善

身近な緑とのふれ合いによる都市住民のストレスの緩和

ヒートアイランド現象の緩和

屋内温熱環境改善効果(省エネルギー)

CO2の削減

商業施設における誘客効果

雨水の一時貯留

建物や管理組織のイメージアップ

コミュニティ醸成機能

存在価値

生物多様性の向上

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種類 個別計測法 総合計測法 特徴

顕示選好法

トラベルコスト法(事後評価)

ヘドニック価格法代替法

・客観的データに基づくため結果の信頼性は高い。

・市場データに反映されない対象の場合には評価できない。

表明選好法

コンジョイント分析トラベルコスト法(事前評価)

CVM(仮想市場評価法)

・評価対象が極めて広い。存在価値も評価可能。

・質問内容による影響(バイアス)が生じやすく信頼性が低い。

特徴 ・具体性があるが二重計上の恐れあり。

・影響項目を具体的に示せないが、二重計上の恐れなし。

費用便益分析手法の整理

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建物緑化の事前評価を行うために想定すべき基本指標の候補

1.建物緑化の規模(面積)

2.建物緑化の質(意匠デザイン性、自然度など)

3.立地条件(基盤条件、周辺立地条件)

4.利用形態

5.その他

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1、被験者に、建物緑化のある状態とない状態の写真を提示し、居住地の近くに写真のような建物緑化が整備されたと仮定して、この建物緑化に幾ら負担金を支払うかを尋ねる。

2、支払い意志額(WTP)は、1世帯あたりかつ1か月あたりの負担金を尋ねる。

3、屋上緑化、壁面緑化それぞれについて、規模の異なる複数の事例について同じ質問を行う。

CVM(仮想市場評価法)によるWEBアンケート調査の設計

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(屋上緑化 9事例)

15㎡, 80 ㎡, 150㎡, 200㎡, 400㎡, 800㎡, 1,000㎡, 1,500㎡, 1,800㎡

(壁面緑化 8事例)

30㎡, 100㎡, 150㎡, 220㎡, 350㎡, 400㎡, 480㎡, 630㎡

アンケート調査において使用した写真事例

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【without】 【with】

屋上緑化(見かけ上150㎡)の整備前と整備後の比較

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【without】 【with】

写真-2 壁面緑化(見かけ上400㎡)の整備前と整備後の比較

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【without】 【with】

屋上緑化(見かけ上1,500㎡)の整備前と整備後の比較

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【without】 【with】

写真-4 壁面緑化(見かけ上30㎡)の整備前と整備後の比較

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【without】 【with】

壁面緑化(見かけ上400㎡)の整備前と整備後の比較

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【without】 【with】

壁面緑化(見かけ上630㎡)の整備前と整備後の比較

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18設計した質問票

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プレ調査の実施

目的: 設定したアンケート調査の妥当性のチェックのため

実施時期: 2009年 2月10日~ 2月16日

被験者: 東京都内勤務者

被験者数: 130名 回収票103票

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被験者

事業反対理由 WTP(支払意思額:円)

No. 0 10 20 50 100 200 500 1,000 2,000

1 ― 1 1 1 1 1 1 0 0 0

2 ― 1 1 1 1 1 1 1 0 0

3 ― 1 0 0 0 0 0 0 0 0

4 ― 1 0 0 0 0 0 0 0 0

5 ⅳ 0 0 0 0 0 0 0 0 0

6 ― 1 0 0 0 0 0 0 0 0

7 ― 1 1 1 1 1 1 1 1 0

8 ― 1 1 1 1 1 0 0 0 0

9 ― 1 0 0 0 0 0 0 0 0

10 ⅱ 0 0 0 0 0 0 0 0 0

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

52 ― 1 1 1 1 1 0 0 0 0

WTP(支払意思額)集計表

WTP

(円)0 10 20 50 100 200 500 1,000 2,00

0

賛同者数

46 38 31 29 27 16 7 3 1

賛同率%

100 82.6 67.4 63.0 58.7 34.8 15.2 6.5 2.2

プレ調査結果(面積800m2の屋上緑化)のローデータ

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面積(m2) WTP平均値 面積(m2) WTP平均値

15 142.7 30 72.1

80 192.8 100 107.3

150 205.0 150 120.0

250 176.1 250 145.1

360 271.0 350 167.2

800 286.2 400 153.3

1,000 284.6 480 167.2

1,500 358.6 630 179.6

2,300 349.8

3,300 329.8

屋上緑化 壁面緑化

屋上緑化と壁面緑化のWTP(支払意思額)平均値(円/月・世帯)

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y = 35.903Ln(x) - 54.038

R2 = 0 .973

y = 42.219Ln(x) + 5 .2463

R2 = 0 .8547

0

100

200

300

400

500

600

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500

事業規模(㎡)

WTP平均値(円/月・世帯)

WTP平均値と建物緑化の面積規模の関係

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実施時期:2010年2月4日~2月15日

実施対象者:仙台市、東京23区、名古屋市、大阪市、福岡市に居住する成人

被験者数:各都市100名

CVM本調査の実施

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主な都市の屋上緑化のWTP平均値

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主な都市の壁面緑化のWTP平均値

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都市名 屋上緑化 壁面緑化

仙台市 y=24.345 ln(x)+272.22 y=16.607 ln(x)+112.19

東京23 区 y=23.189 ln(x)+267.79 y=28.187 ln(x)+86.233

名古屋 y=16.584 ln(x)+309.0 y=25.937 ln(x)+86.755

大阪市 y=16.425 ln(x)+292.23 y=11.453 ln(x)+159.96

福岡市 y=11.838 ln(x)+309.83 y=12.084 ln(x)+162.64

各都市のWTP平均値の回帰式

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WTP平均値

社会的便益費用(円/㎡・年) ※建物緑化の1年間1㎡単位あたりの便益

=WTP平均値(円/月・世帯)×1/3×π×(WTPの及ぶ範囲ℓ〔m〕× /2)2

×人工密度(人/㎡)÷世帯人口(人/世帯)×12月÷建物緑化面積(㎡)

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屋上緑化300㎡+壁面緑化200㎡を新設する事例(名古屋市内)

総便益(屋上緑化) WTP平均値=16.584 ln(300㎡)+309.0=403.6円

403.6円×1/3×π×(475.7m×√2/2)2×0.00679人/㎡÷ 2.37人/世帯×12月=1,643,199円/年

(壁面緑化) WTP平均値=25.937 ln(200㎡)+86.755=224.2円224.2円×1/3 ×π×(395.9 m×√2/2)2×0.00679 人/㎡÷ 2.37人/世帯×12月

=632,236円/年

1,643,199+632,236≒2,275,435 合計 2,275,435円/年

総コスト(屋上緑化) 300㎡×6,335円= 1,900,500円/年(壁面緑化) 200㎡×8,450円= 169,000円/年

合計 2,069,500円/年

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CVMに使用した写真画像に含まれる要素

1.緑化面積

2.意匠デザイン性

3.現地基盤条件(建物形状、周辺状況など)

4.その他(調査測定上のバイアス)

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屋上緑化のWTP平均値(東京23区内居住者対象)

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面積(㎡) WTP平均値(A) 回帰式によるWTP平均値(B)

乖離量(C)A-Bの絶対値=バラツキ

基点からのBの増加量(D)

15 413.54 370.16 43.38 0

80 410.96 406.02 4.94 35.86

150 387.19 419.49 32.30 49.33

200 372.29 425.65 53.36 55.49

400 411.39 440.50 29.11 70.34

800 442.08 455.35 13.27 80.19

1,000 503.75 460.13 43.62 89.97

1,500 487.63 468.81 18.82 98.65

1,800 490.05 472.72 17.33 102.56

面積に応じて増加したWTPと、回帰式からのバラツキの抽出(屋上緑化)

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S1(面積に応じて増加したWTP総量)=536.11S2(回帰式からのバラツキの絶対値の総量)=256.13

*h=1として計算↓

S1とS2の面積の相対比較から、建物緑化の面積がWTPに与える影響度=67.67%その他(意匠デザイン性、現地基盤条件、調査バイアス)の影響度

=32.33%

S1

S2

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35デザインを統一した場合(芝生のみ)のCVM調査の実施

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屋上緑化のデザインを芝生に統一した場合のWTP平均値回帰式

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面積(㎡) WTP平均値(A) 回帰式によるWTP平均値(B)

乖離量(C)A-Bの絶対値

基点からのBの増加量(D)

15 426.99 377.17 49.82 0

80 404.02 419.58 15.56 42.41

150 394.08 435.51 41.43 58.34

200 407.99 442.80 34.81 65.63

400 441.99 460.36 18.37 83.19

800 483.72 477.93 5.79 100.76

1,000 498.42 483.58 14.84 106.41

1,500 513.47 493.85 19.62 116.68

1,800 518.57 498.47 20.10 121.30

面積に応じて増加したWTPと、回帰式からのバラツキの抽出(芝生のみ)

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S3

S4

面積に応じて増加したWTPと回帰式からのバラツキの比較(芝生のみ)

S3(面積に応じて増加したWTP総量)= 634.07S4(回帰式からのバラツキの絶対値の総量:現地基盤条件、調査バイアス)= 192.54

この結果と先に求めたS1とS2の算定結果から、相対的な影響度を求めると以下になる。

【各要素の影響度】

面積 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67.67 %意匠デザイン性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11.78 %その他(現地基盤条件、調査バイアス) ・・ 20.55 %

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屋上緑化による物理的環境改善効果の算定

(単位:円/㎡・年)

1.建物の省エネルギー効果 302.4円

2.ヒートアイランド現象緩和効果 1.5円

3.二酸化炭素固定効果 2.4円

4.大気浄化効果(SO2,NOx) 7.4円

5.雨水貯留効果 457.3円

合 計 771.0円

*総合計測法のCVMで求めた便益の内訳の抽出

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アメニティ向上等7,836円/㎡・年

物理的環境改善効果771円

約8,607円/㎡・年

屋上緑化の便益とコストの比較

面積1,000㎡の屋上緑化(東京23区)の場合の1㎡あたりの値

建設費用 1,854円

維持管理費 2,269円

廃棄費用 2,212円

6,335円/㎡・年

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被験者に与えた情報の種類

(プラスの情報とマイナスの情報の差)

① 総合効用説明書

② ネガティブ説明書

(情報の質の差)

③ アメニティ向上機能説明書

④ 物理的環境改善機能説明書

⑤ 生物多様性確保機能説明書

CVM調査において、被験者に与える情報の影響の検証調査

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説明書の画面(抜粋)

総合効用説明書

建物緑化の効用を網羅的に説明したもの

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説明書の画面(抜粋)

ネガティブ説明書

説明ポイント

・一般に言われているほど建物緑化はヒートアイランド現象緩和には役立たない。

・断熱性能の良い建物では建物緑化の冷房効率向上は期待できない。

・維持管理が適切になされていない建物緑化はかえって都市景観を阻害する。

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アメニティ向上機能説明書

説明ポイント

・自然環境の乏しい都市内で安らぎや癒しの空間の形成

・都市の景観の向上

・散策の場や子供の遊び場の提供

・菜園として活用

説明書の画面(抜粋)

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物理的環境改善機能説明書

説明ポイント

・都市のヒートアイランド現象の緩和

・建物緑化を施した建物の熱効率の改善

・CO2の固定

・大気の浄化や雨水の貯留、騒音の低減

説明書の画面(抜粋)

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説明書の画面(抜粋)

生物多様性確保機能説明書

説明ポイント

・都市の自然環境の確保

・緑地のネットワーク化が図られ、生物多様性が確保される

・環境学習の場の提供

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与えた情報によるWTP平均値の比較(屋上緑化)

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与えた情報によるWTP平均値の比較(壁面緑化)

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物理的環境改善グループとネガティブグループの違い

屋上緑化 16.1~23.1%

壁面緑化 21.2~32.3%

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与えた情報の違いによるWTP平均値の比較(屋上緑化)

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51建物緑化の形態に関する階層図

独立行政法人 建築研究所 Building Research Institute

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宣伝効果のWEBアンケート調査の実施

目的:宣伝効果に有効な建物緑化の形態を導く、また加えてその宣伝効果量を把握する。

対象:東京23区内居住者300人※男女比及び年齢構成は国勢調査(2005)の比率に合わせた。

実施時期:2010年 1月 8日~1月11日

調査方法: AHP(階層分析法)+CVM

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屋上緑化 壁面緑化

※ 企業の取組姿勢を示すこれらの建物緑化について、どちらにより強いメッセージを感じるか?という質問

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54広場型 森林型

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55緑化パネル型 壁面登攀型 緑のカーテン型

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機能向上施設

水面・ビオトープ 菜園 花壇

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説明施設

緑化効果表示設備 緑化機能代替設備 環境共生シンボル施設

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イベント

体験農業 緑化説明会 苗木・花等の配布

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Q)民間企業が社会貢献として整備する緑化について、あなたは屋上緑化と建物緑化のどちらに強いメッセージ性を感じますか?

(屋上緑化) (壁面緑化)

屋上 かなり やや 同じ やや かなり 壁面屋上 屋上 壁面 壁面

◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

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広場型 森林型緑化パネル

型緑のカーテン

型壁面登攀型

機能向上施設 0.078 0.113 0.063 0.060 0.063 0.378

説明施設 0.057 0.083 0.046 0.044 0.046 0.276

イベント 0.072 0.104 0.058 0.055 0.057 0.346

0.207 0.300 0.167 0.159 0.166

総合的重要度 0.508 0.492 1.000

壁面緑化屋上緑化総合的重要

重要度の総合表

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機能向上施設 重要度

水面・ビオトープ 0.133

菜園 0.115

花壇 0.130

小計 0.378

説明施設 重要度

効果表示設備 0.085

シンボル設備 0.106

機能代替 0.085

小計 0.276

イベント 重要度

体験農業 0.133

緑化説明会 0.100

苗木等配布 0.112

小計 0.346

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重要度

重要度の比較

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※ 2008年3月調査実施。407の管理者に対して依頼し、うち回答は99。(内訳は、自主的民間29、義務的民間24、自主的公共31、義務公的共15)

建物緑化の設置目的(複数回答設問から)

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X軸(受益者)

Y軸(費用)

省エネ・社員利用

都市景観向上・ヒートアイランド現象緩和など

▲ ▲建物管理者 一般市民

民間建築物における受益者と負担者の乖離

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35%

26%

13%

11%

5% 4% 4% 2% 宣伝

誘客(商業)

社員利用

学校校庭

緑化実験

緑化資材紹介

園芸療法

物理的環境改善

民間施設の建物緑化導入の動機※ 2009年2月に、自主民間の28事例に対して調査

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建物緑化の誘客効果を調査した「なんばパークス」のケーススタディ

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大規模複合商業施設(レストランや服飾専門店、映画館等の各種テナントを有する。)

建築面積 25,500㎡ (屋上はテラス状)

屋上公園 11,500㎡ うち緑地が 5,300㎡

なんばパークスの諸元

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キャニオン部

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テラス状の屋上庭園

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貸し農場

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森の中の休憩場所

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植栽の専門家による管理

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属性

①居住地(市区町村まで) ②利用交通機関 ③列車の場合の居住地の最寄り駅 ④行程(片道)に要した時間(到達所要時間) ⑤性別 ⑥年齢

行動動態

⑦来訪頻度 ⑧同行者 ⑨何人で来訪したか ⑩来場目的 ⑪今日の利用テナント ⑫今日はなんばパークス以外のどこかに行ったか ⑬それはどこか? ⑭なんばパークスの魅力 ⑮なんばパークスを最初に知った情報源⑯なんばパークスに緑が多いと思うか? ⑰来訪前からここの緑を知っていたか? ⑱なんばパークスへの要望⑲~21緑化による来訪動機。

アンケート調査(2009年11月)

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問-19; なんばパークスにはパークスガーデンの緑があるが、ここには緑がなくても来たか?

1.建物緑化があったから来た。2.いくらかは建物緑化が影響している。3.緑はあってもなくとも関係なく来た。

問-20; なんばパークスに来た動機のうち、建物緑化の占める割合(緑の影響度)は数字で例えると何%ぐらいか?

問-21; 本日のなんばパークスでの総消費額(予定額も含む)はいくらか?

最も知りたい設問

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アンケート風景

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アンケート被依頼者 597名

うち拒否者 387名

回答者 210名

うち無効票が7名

有効票は203票(男性84人、女性119人)

回答率は34.0%

アンケート結果

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• 回答の得られた203名の建物緑化の影響度の平均値は18.3%。

• 被験者iが示した建物緑化の影響度をgi(%:質問-20の回答)とし、各被験者の消費額をCi(円:質問-21の回答)、総被験者数をNとすれば、緑地の存在による一人あたりの経済効果GE(円)は、次式にて求めることができる。

・ こうして得られた緑地の存在による一人あたりの経済効果GEは、利用客1人当たり1155.2円となる。

建物緑化による誘客客効果の算定

N

i

ii C

g

NGE

1 100

1

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1.公表年間利用客数は約2,920万人/年(2007年4月~2008年3月)屋外の緑地が快適に利用できた日は年間100日間。

3.下式から、年間売上高は9,241,600,000円と推計2,920万人×100日÷365日×1155.2円=9,241,600,000円

4.小売企業における売上高営業利益率は小売業平均で2.1%のため、なんばパークススの建物緑化による年間利益は194,073,600円と算定。

9,241,600,000円×0.021=194,073,600円

4.「なんばパークス」の推計整備費 約690,000千円推計維持管理費51,750千円/年

5.「なんばパークス」のケースで整備・維持管理費を誘客効果による利益と比較すると、1年間に得られる純利益約142百万円(194,073,600

円-51,750,000円[年間維持管理費])によって、整備費の690百万円を償還することになる。

建物緑化の誘客効果の評価

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建物緑化の影響度と被験者の属性や動態との関係

建物緑化の影響度 × 年齢 ⇒ 無関係

〃 × 性別 ⇒ 女性がわずかに高い

〃 × なんばパークスからの距離 ⇒ 無関係

〃 × 来訪グループ人員数 ⇒ 無関係

〃 × 当日の消費額 ⇒ 無関係

*参考 建物緑化の限界効用逓減性の調査⇒ 周辺の建物緑化の設置状況は評価額に影響しない。

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本調査から導かれた建物緑化の特性

1.建物緑化の便益は主として面積規模に応じて増加するが、意匠デザイン性といった緑の質も少なからず影響する。

2.建物緑化の便益は、都市のアメニティ向上や生物多様性の確保などの受益者の知識や環境意識に立脚した効果が大半を占める。

3.このため、受益者への適切な情報の提供が、受益者の評価に大きく影響する。

4.受益者は、必ずしも事業者が意図した情報提供の通りには情報をとらえない。

5.受益者の属性や居住地周辺の環境は、受益者の緑化への指向度とほとんど関連性はない。

6.受益者の緑化への指向度は、個人差が著しい。

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今後の都市緑化行政に望まれる基本的姿勢

〔都市緑化行政の従来の理解〕

都市住民は等しく緑を愛し、都市の一定量の緑地が確保されれば満足する。

〔実際の緑化特性〕

都市住民の緑に対するニーズは個人差が大きく、しかもその満足度は著しくかけ離れている。

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建物緑化制度への提言

・ 屋上緑化の公開性の確保

・ 現制度の緑化率のみで評価されている状況に対して、意匠デザイン性を含む建物緑化の質の評価の実施

・ 適切かつ継続的な維持管理の実施の担保

・ 建物緑化の設置にあたって、情報提供するための説明施設等の設置やイベント開催等の付帯的事項についての評価

建物緑化のような都市の環境インフラは、21世紀の地球環境時代にお

いて求められてきたものであり、建物緑化に限らず、上記のようにその質が問われるべき性格のものである。よって、質の確保と持続性が確保できる制度提案が真に求められる。