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https://www.phys.s.u-tokyo.ac.jp/ 東京大学理学部物理学科 〒113- 0033 東京都文京区本郷 7-3-1 TEL: 03-5841-4242 (代表) FAX: 03-5841-4153 《 図について 》 左)すばる望遠鏡Hyper Suprime-Camサーベイで取得された撮像データ(国立天文台提供)。 このデータを元に、弱い重力レンズ解析により三次元質量(ダークマター)地図を再構築した。 右)光弾性を使い可視化された、 高密度粉体系の応力鎖の様子。 実際に力を伝えるのは一部の粒子であり、 それらが鎖状のネットワーク構造をなしていることがわかる。 我々は粉体系に周期的せん断を加え、 粒子運動の可逆性と応力鎖ネットワークの関係を調査している。 進学案内資料 東京大学理学部物理学科 2020 2020

納品用PDF未アウトライン 駒場進学案内...物理がわかれば、世界は違って見えるかもしれない 物理学専攻長、物理学科長 常行 真司 物理学は全ての自然科学の基盤であると同時に、自然科学の最先端にあってダイナミッ

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https://www.phys.s.u-tokyo.ac.jp/

東京大学理学部物理学科

113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1TEL:03-5841-4242 (代表) FAX:03-5841-4153

《 図について 》

左)すばる望遠鏡Hyper Suprime-Camサーベイで取得された撮像データ(国立天文台提供)。このデータを元に、弱い重力レンズ解析により三次元質量(ダークマター)地図を再構築した。

右)光弾性を使い可視化された、 高密度粉体系の応力鎖の様子。

実際に力を伝えるのは一部の粒子であり、 それらが鎖状のネットワーク構造をなしていることがわかる。

我々は粉体系に周期的せん断を加え、 粒子運動の可逆性と応力鎖ネットワークの関係を調査している。

進学案内資料

東京大学理学部物理学科

20202020 進学案内資料 東京大学理学部物理学科

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物理がわかれば、世界は違って見えるかもしれない

物理学専攻長、物理学科長 常行 真司

物理学は全ての自然科学の基盤であると同時に、自然科学の最先端にあってダイナミッ

クに変化し続ける学問です。 歴史を紐解くと、17 世紀には古典力学、18-19 世紀には熱力学、統計力学、電磁気学、流

体力学、そして 20 世紀初頭には相対性理論と量子力学が確立しました。これらは先人たちが自然現象の本質を解き明かし、普遍的な概念や法則としてまとめ上げた、物理学の金字塔です。産業革命は物理学の発展抜きに語れません。

20 世紀には物質の成り立ちを探る原子核物理学や素粒子物理学が発展し、物質の構成要素が原子、原子核、素粒子と順次明らかになりました。磁性や電気伝導のように、原子が集まることで現れる性質を研究する物性物理学も生まれました。これらは半導体や磁気デバイス、レーザー技術と光通信、太陽光発電や蓄電池、医療用 MRI、原子力利用など、現代社会を支える様々な産業技術につながりました。

20 世紀末から今世紀にかけて開発された様々な実験・観測装置は、物理学に新たな展開をもたらしました。たとえば走査プローブ顕微鏡は物質表面の不均一な構造を、ハッブル宇宙望遠鏡はダークマターの存在を明らかにし、カミオカンデ、スーパーカミオカンデによってニュートリノ天文学の幕が開きました。アインシュタインの最後の宿題と言われた重力波も検出されました。最先端の物性計測と理論解析から、次元性やトポロジーで物質の性質が決定的に変わることが明らかになりました。非平衡物理、生物物理、量子情報、AI の利用なども大きく進展しています。物理学は今後も私たちの自然観をより豊かにし、未来社会を切り開く原動力となるでしょう。

理学部物理学科には約 40 名の教授・准教授・講師が、また大学院の物理学専攻には物性研究所、宇宙線研究所、カブリ数物連携宇宙研究機構なども加え約 130 名の教員が在籍し、最先端の研究に取り組んでいます。興味を持てる研究分野が、その中できっと見つかるはずです。自然界の成り立ちや仕組みを理解したいという好奇心と探求心にあふれた方、曇りのない目と柔軟な発想で自然科学の新しい地平を切り拓きたい方、あるいは社会の課題解決に物理学を役立てたい方を、私たちは心から歓迎します。物理学科に進学すれば、そして物理がわかれば、世界は違って見えるかもしれません。

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氏名 専攻分野 研究内容

相原 高エネルギー物理学 高エネルギー素粒子実験を専門としている 高エネルギー加速器研究機構 K K のスーパー フ クトリー uperK K を使った粒子・ 粒子非対称性 CP非 や 間子やタ レ トンの 崩壊の測定をもとに、素粒子の 理論を える新しい素粒子物理法則を探索している。 J-PARCの大強度陽子加速器で発生させたニュートリノ ームを使ってニュートリノの性質の 測定を行っている。さらに、す る望遠鏡を使った ークエネルギーの研究も 進している。

素粒子物理学実験 世 最高エネルギー・LHC加速器を用いた トラス実験において、 理論を超えた新しい素粒子物理学を り拓く研究 物質の質量の起 を う ッ ス粒子の発見や、超対称性粒子の発見にけた研究を行っている。ATLA ルー の超対称性研究の トロニ ムなどを用いた非加速器、 実験を通して、 Dの 検 やAxionやDark negyなど新しい素粒子現象の探索を行う。

正 重力波物理学・相対論実験

宇宙を見る新しい目として重力波 学の発展を目指す。 ・ の サイトで建設が進められている大型 重力波望遠鏡 KAGRA(か ら)の建設、および、将来の宇宙重力波望遠鏡D C GOのための基礎開発研究を 進する。また、それらに用いられる最先端のレーザー干渉計技術を 用した、相対論検 実験や量子光学的手法を用いた 計測研究も行う。

上田正 原子 体、力学、物性理論、機

械学習、物理学と 工知能の 合

原子 体の理論 ース・ インシュタイン凝縮、フェルミ超 動 、 力学、測定理論、物性理論、物理学と 工知能の 合

 晶 ラ マ物理学 ラ マ物理。 ラ マは、大 度、非線形、非平衡で けられる。これらから生じる物理を明らかにするために、 ラ マで観測される ら に を てた研究を行っている。 研究 は高

とともに、T T-2 状トカマク 大 を用いて実験を行っている。さらに、LHD 合研 、T 大 との共同研究も行っている。

田 志 生物物理学 研究 では、超解 鏡など最先端のイ ー ン 技術を開発し、これを用いて 内で まれる生 現象の定量的な計測を行っています。たとえ 、 内の物質 の分子機構の研究を通じて、 内のタンパク質分子重合体である が構造相 移により を していることをして ました。また最 では、非平衡統計力学の ら の定理を 用することで、 内での力学計測が進 でいます。このような物理学的な ロー を通じて、生 とは かという いに迫りたいと えています。

本  物性物理学 次元電子系を とした物性実験。 体 リ ム 度から 機を用いた にいたる 度において、 体 次元電子系や金属 原子 を対象に、量子ホール や超 をはじ

めとする量子現象の解明や新 現象の探索を行っている。 に強 場 の電 性や トンネル 鏡を用いた電子状態の観 などに をもっている。

形正 物性理論 物性理論 凝縮系とくに量子現象が に現れる 電子系の理論。強い相関のある電子系、高 超の理論、 性、 機 体などの 次元 体、 スコピック系、 ・スピン・電 の 合した物

質、 来と なった新しい超 現象など。場の理論的手法、 解、くりこ 、 分法、計算機シミュレーションなどの手法を用いる。

 法称 物性理論、統計力学 物性理論 相関の強い 体系 電子系, ン系, スピン系, ... における 性・強 電性・量子ホール ・超 などの物性および新 現象の理論的研究。平 場 やスピン波理論などの 来的な手法に加えて、場の理論や数理物理学的手法、数値的対 化などを組 合わせて 的にロー する。  統計力学 ・量子統計力学における 解模型の代数構造の研究、およびその量子

・物性への 用。非線形現象・フラクタルなどの数理構造の解明。

金子 系生 学、生物学、非線形動

力学

生 シス ムが たす 的論理を、統計物理、力学系理論の ン を ながら、解明する、に、 分 ミクロ からなる 体 マクロ が まらないと 分の性質が まらない 系 の を

まえて、 、 、発生、分化、進化などの 法則を探り出す。一 で、大 度力学系の に、生 らしい性質や 知過程の基 がいかにして るかにも がある。

統計力学、 理論、機械学習

学の 題の くは 山の 数が に あった 定 題や 程 で 現されます。それらは 山の要素が いに相 用する物理系の性質を る 題とそっくりな構造をしています。こうした観 から物理学の や解析法にもと いて、 通 、組 合わせ 題、機械学習などに現われるさま まな 題を分析したり、 的な 解 ル リ ムを開発する研究を行っています。

物性物理学 体 の電子が りなす 性や超 の新しい 形態の発見を目指している。 ロー として新しい 機化合物結晶を探しだす 、最先端の 合 実験手法で物性を し新量子相を発現させている。 では、 ・超高 ・強 場 における な実験 場 のマクロ及び 共 測定 により 体 の 性 定 ・量子 の物性を電子スピンの 構造と

ら の から明らかにした上で開拓していく。

大学理学 物理学    一氏名 専攻分野 研究内容

宇宙物理学実験・観測的宇宙論

宇宙背景放射の観測を通じた宇宙物理学。初期宇宙の探索により、インフレーション宇宙論の検 と重力場の量子 ら の検出を目指す。宇宙進化の観測により、宇宙の暗黒成分 暗黒エネルギー、暗黒物質、暗黒放射、ニュートリノ の正体を探る。 開発やデータ解析を 使した実験物理学的ロー で、宇宙の素 に迫る。

研 物性物理学 加工技術によって 体や金属、超 体や強 性体などを数ミクロンあるいはそれ以 のサイの な素子にすると、 ルクとは なった性質が出現する。このような 系で発現する物理現象

を扱う分野を スコピック物理と 。この分野の最大の は、量子現象を直 観測し で るにある。 た は スコピック素子における様々な現象、 でも、量子 体 や非平衡現象に

目して研究を行っている。 に、高 度かつ定量的に量子 過程を観測・ し、これまでに能であったような実験に むと同時に、新現象の発見を目指している。

明 強相関量子 体系 電子相関の強い 体系には だ が手にしていない量子状態や素励起が数 く でいる。それらを物質合成と 物性測定を 使して実験的に研究している。これまで行って た研究は、(i) 強相関f電子系の 子 と重い電子超 、(ii)フラストレート 性金属の量子 現象、(iii) イル金属、ノー ルライン 金属、ラッ ン ー 金属における リー 相 ネルンスト や

ホール 等である。

最先端レーザー技術を 使した原子分子物理学実験

最先端レーザー技術を 使した原子分子物理学実験。(1)高強度レーザー電場を用いた 体分子の・ とその 用、(2)非 動論的高次非線形光学過程 光子イオン化や高次高 波発生

など に代 される高強度レーザー物理や原子分子 の超高速現象、( ) 線 の 一 ト秒パルス発生とその 光 、及び原子分子 の電子の超高速 イ ミクスの への 用、(4) 線電子レーザー光を用いた分子構造とその超高速 イ ミクスの観測、( ) 形されたフェムト秒レーザーパルスによる原子分子 の量子過程 。

原子 物理学実験 重イオン原子 実験 重イオン を用いて 定 の ームを生成し 定線から遠く離れたエック原子 の な性質・現象を る。研究 ーマは 高速R ームを用いた新手法の開発

による 定 の 構造、 イ ミクスの研究 R ーム開発と の探索 重イオンの 機構 等である。実験は に理化学研究 加速器研究 設・ 定 ーム生成 を用

いて行っている。

野  光物性物理 ラ ル 分光、レーザー分光を な手法とする 体量子物性の研究。エ シトン、マ ノン等の 体内素励起の観測による電子・スピン系の相 移 イ ミクスの解明や、光による 体電子系の量子相

を目指している。 体的には、 体の電子正 系の 体金属 移及び量子凝縮相の研究、次元量子 体における 光学 、超 体の光による相 及び 数の時 間 イ ミ

クスの観測、時間 間 対称性が破れた系で量子 により発現する な電 光学の研究、非 動論 における光と物質との相 用の解明など。

  宇宙物理学・ 陽系惑星

宇宙物理学と 陽系 惑星に関する理論的および観測的研究。 体的な研究 ーマは、 波 観測データをもとにした銀河 モデルの構 、 ークマターハローの非 対称性の統計的モデル、重力レン 学、 銀河探 による ークエネルギーの性質の解明、銀河系 スト 光 の 検

、スタッ ン 解析による遠 銀河の性質の 定、 線分光観測を用いた ーク リオン探 、陽系 惑星系の 動量の起 と進化、 重惑星系の力学進化。

物性物理 体、 に遷移金属 化物 の 合う電子(相関電子)が 成するエ ックな量子凝縮相を現実の物質の に探索・実現する。同時に相形成の物理を解明する。現 、高 超 、量子スピン体、非 明なスピン・電 、ト ロ カル 体、などに 体的 の がある。 となる物質を ら開拓すると同時に、電子 現象、 物性、量子 ーム ・ などの ローブを 使して、

ノの世 での相関電子の 的・動的 組 化構造を明らかにする。

高 一 ラ マ物理・ 合 ラ マは 電粒子の 合体であり、非線形 系の 型 である。高 ラ マでは が さいので、 平衡から遠い状態にある。また非線形性が に現われ、それが発展して 状態が形成され、これらを して 数の状態間で遷移を起こし、 ら構造を形成していく。高 ラ マは 合発電に 用で るが、その実現は ラ マの振る いの物理的理解および にかかっている。本研究

では、T T-2 状トカマク の か、国内 の大型 合 も使って高 ラ マ の波動現象、 定性、 等の研究を行っている。

内一将 非平衡物理学、実験統計力学、 フトマター、生物物理学

大 度の非平衡現象を する物理法則の理解を目指して、 晶、 体などの フトマターや、 クリ など 生物の を用いた実験研究を展開している。 晶実験では、 に う非平衡 ら の

的統計法則や、 相 イ ミクスを に研究している。生物実験は、 体デ イス等で実験系をデザインし、 生物 がいかなる 同現象を すか、それが物理法則として理解で るか等を ている。 の現象の理解はもとより、現象に らない共通の物理法則を 出すること、そのような 的な から物 を えることを目指し、研究 では にも様々な対象を扱っている。

行 司 物性理論 一原理分子動力学法など基本原理に基 く計算機シミュレーションは、観測や実験からは られない物性 を たり、あるいは実験に先 じた予言を行うことを 能にする。 研究 では にそのような計算物理学的手法を開発しながら、物性物理学の基礎研究を行っている。電子相関の強い系や成分量子系を取り扱うための新しい 一原理電子状態計算手法の開発、超高 など の結晶構造探索と物性予測、 体 の構造・電子状態・化学 機構、 素を む 体の量子

、強 電体の電子物性などが 要な研究 ーマである。

計算物理・物性理論 モン カルロ法などの 的手法、 分に基 く量子 ら の 現、 値分解や ン ルネットークによる 縮、統計的機械学習など計算物理学における新たな手法を開拓している。それら

を 使することでスピン系や ー ハ ー 模型などの強相関系から現実の物質にいたるまで、量子体系に のさま まな状態、相 移現象、 イ ミクスの解明を目指す。最先端スーパコンピュー

タの能力を最大 に かすための並 化手法の研究、次世代シミュレーションのための オー ン ース フト ェ の開発・ 開も進めている。

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氏名 専攻分野 研究内容

 知 量子物性・スピントロニクス

物性研究の大 な を先 するのは、新しい の 造であり、それを 現する量子物質の発見です。この原動力となっているのが、理論的な に基 いた物質探索とその合成であり、世 最高度の物性測定技術です。 の研究 では、こうした の量子物質とそのデ イス構造をデザインし、様々な での な物性及びスピントロニクス測定を ら行うことで、新しい物理現象とその背にある物理法則の解明を進めています。 体的には、ト ロ カル量子物性、 イル 金属、超 、量子スピン 体、 強 性スピントロニクス、エネルギーハー ス ン などの い研究課題を研究 内の最新設 を使って進めています。また、そこで た成 をもとに、 くの の研究 と最先端の共同研究を展開しています。

能 直 生物物理学 系の生物物理。 の 動原理を 線や 動様 に基 レ ルで理解することを目 とし、モデル動物を用いた研究を行う。光 による 動 、カルシ ムイ ー ンやパッ クラン 法による 動測定、コネクトーム解析 電子 鏡 再構 よる 線解析 などを 合的に 用することで、 間の 出力関 を実験的に明らかし、 による

理の 組 を探る。

司 物理学 体、金属、ト ロ カル 体などの結晶 や、その上に形成される原子 、原子 やクラスターなどの ノ ータスケール構造体について、原子 、電子 スピン物性、機能 性などを 的に研究する。 体的には電子 ン 状態、電子・スピン 性、光学 、相 移などを、電子

・ 鏡、 トンネル 鏡・分光法、光電子分光法、 的 端子 ローブ法、分子線エピタシー法、 イオン ーム加工法などの実験手法を 使して研究する。 原子 の超 や リ の

の などを最 発見した。

一 素粒子理論 素粒子の 理論のエネルギースケールを超えたとこ にどのような物理があるのかに があり、に するより基本的な統一理論を目指して研究しています。これまで は、超対称性理論を

とした 模型を超える物理の模型構 、現象論的研究、初期宇宙論への 用といった研究を行なって ました。最新の素粒子実験や宇宙観測の結 にも 目して理論的研究に還元してい たいと

えています。

 将光 物性物理 物質 の電子スピンと光が 起する様々な現象を探 する 量子スピントロニクス フ トニクス に関する研究。スピン 相 用が 起する新たな物理現象の探索・解明を進め、将来的にスピンや光をコ ーレンスの高い 子振動や超 状態などと結合させ、量子技術に展開で る物理を見出す研究を行っている。

場  宇宙物理学実験 宇宙は たく っ の かな世 に見えるが、実は く しい 体現象が 的に することが分かって た。 々はこれら超新星 やブラックホールといった 動 体からの 線・ ンマ線を、 上や宇宙 間の望遠鏡で観測し、宇宙の力学的進化・化学的進化を探っている。世 国の 線宇宙

星の観測した 体データを解析するとともに、 本を 体とした宇宙高エネルギー 星 R MFORC の開発や超 型 星を用いた 光 線観測計 の 、超高エネルギー ンマ線望遠鏡

CTAの開発などを行っている。

生物物理学 研究 では生体モータータンパク質を分子・ ・ 体の つの から ロー し、 の機能 カニ ムを解明すると同時に 体を した生体 動の物理モデルを構 する。 体的な研究

ーマは、1. モーター 分子の 次元的な 動を 度で解析し、 レ ルの 動 カニ ムの解明を行う。2. 内モーター分子の と力を 次元的に測定し、力学状態の時 間的 化を解析する。 .マ ス内モーター分子の 動を解析し、 体内 の 動を明らかにする。4. の 動機能に 的な物理モデルを構 する。

原子 理論 の最も基本的な相 用のひとつである 強い相 用 の り成す物理をさま まな手法を用いて研究しています。強い相 用するク ークと ルーオンが、パイ 間子や 子などハ ロンを

り、 数のハ ロンが まって 々の の りの物質を構成しています。超高 ・超高 度・強い場 場・電場・重力場など の では、 な物質からは もつかない い物性が 強い相用 の性質から かれます。 知の理論から新 現象を探る理論研究を目指しています。

 力 生物物理学 理論 実験

生物物理学 ・進化・発生・ といった 数の要素が関与する イ ミッ クな生物現象について、理論と実験の から解析する。計算機シミュレーショ ン、理論解析、そして構成的生物学実験を統合し、 々の分子の に しな い 的な性質を り出すことにより、生物シス ムの状態とその遷移を す るマクロレ ルの状態論の構 を目指す。

  素粒子理論 量子重力、超 理論、場の量子論、 解な量子系、およびそれに関 する数理物理学が 要な研究トピックスである。より 体的な最 の ーマとしては、M理論に現れるブレーンの定 化、それに関する新しい対称性や 学、また、 ー 理論や 次元 解模型に現れる 次元対称性などがあ

られる。

量子 (理論) 計算 ル リ ムや 理を よく実行するための としてだけではなく、量子力学的に されるす ての を に行うことがで る として量子計算機をとらえる。そして、量子計算機を用いることで現れる量子力学的 を解明することによって、 と 理という 論的な観 から量子力学への基 的理解を深めるとともに、エンタン ル ントなど量子力学 の性質を 理、

通 、 測定、 などへ 用するための理論的研究を行っている。

素粒子論・宇宙論 素粒子理論・素粒子論的宇宙論

氏名 専攻分野 研究内容

山本 智 宇宙物理学、星間化学、分子分光学

国際共同大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMAなどの最先端電波望遠鏡を用いて、恒星と惑星系が生まれる現場での物理過程と物質進化を研究している。また、将来の電波観測を支える検出器技術の開拓も進めている。

湯本潤司 光物性、量子エレクトロニクス

結晶、金属等の凝縮系に高強度レーザー光が照射されると、物質内の電子や原子は、励起状態に遷移するだけでなく、脱離現象も起こす。このような現象は、非線形、非平衡、開放系の物理として扱う必要があり、最も難しい課題のひとつである。この現象を、フェムト秒の時間分解能で、更に、フェムト秒からマイクロ秒の10桁以上の時間スケールで追及し、その知見をレーザー加工などへ発展させる。

横山順一 宇宙論・重力波 初期宇宙論と重力波物理学。 場の量子論、素粒子物理、一般相対論等の基礎理論を用いて初期宇宙の進化を再現する研究と、宇宙背景放射等の観測データから出発して初期宇宙の物理に還元する研究を並行して行っています。 また、KAGRAの稼働にともない、重力波データ解析の基礎研究、また重力波を用いた宇宙論の研究を行っています。

横山将志 素粒子物理学実験 ニュートリノ振動を通じたCP対称性の破れや世代混合などの研究、および陽子崩壊の探索により、素粒子物理の大統一スケールでの物理法則を探る。スーパーカミオカンデや大強度陽子加速器J-PARCを使ったニュートリノ振動の研究や、次世代実験・ハイパーカミオカンデの建設に関わる研究を進めている。

吉田直紀 宇宙物理学 専門は数値宇宙論。大規模なコンピューターシミュレーションを用いて星や銀河、ブラックホールの形成とその共進化を明らかにすること を目指している。暗黒物質の素粒子的性質と宇宙の構造形成とは深く関わっている。様々な理論モデルに対してコンピューターシミュレーションにより定量的な予言を与え、豊富な観測データとの比較によって暗黒物質や暗黒エネルギーの正体に迫る。  新たな計算手法の開発や超高速計算に取り組むとともに、機械学習を用いた大規模観測データ解析や超新星検出などデータサイエンスもすすめている。

HaozhaoLiang

Nuclear theory Our research mainly focuses on the nuclear many-body theories and the relevant interdisciplinarystudies in nuclear physics, nuclear astrophysics, and particle physics.Key topics include: nuclear density functional theory (DFT), structure of exotic nuclei, hiddensymmetries in atomic nuclei, nuclear collective excitations, nuclear weak-interaction processes andr-process nucleosynthesis, etc.

以上 42名

4 5

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2020年度

1限 2限 3限 4限 5限

火 物理実験学

水物理学のための科学英語基礎

1限 2限 3限 4限 5限

月 電磁気学Ⅱ

火 応用数学XC 量子力学Ⅱ

水 現代実験物理学Ⅰ 計算機実験Ⅰ

木 統計力学Ⅰ

金 代数学XC 流体力学 物質科学基礎

1限 2限 3限 4限 5限

月 電磁気学Ⅲ 物理数学Ⅲ

火 量子力学Ⅲ 物理学ゼミナール

水 生物物理学 固体物理学Ⅰ

木 解析学XC 現代実験物理学Ⅱ

金 光学 統計力学Ⅱ 計算機実験Ⅱ

1限 2限 3限 4限 5限

サブアトミック物理学

計算科学概論

火 応用数学XC 一般相対論

水 系外惑星 量子光学

木 固体物理学Ⅱ

プラズマ物理学 自然計算

代数学XC 量子計算科学

1限 2限 3限 4限 5限

場の量子論Ⅱ

連続系アルゴリズム

火 原子核物理学

水 電子回路論

木 解析学XC 固体物理学III

非平衡科学

光学金 普遍性生物学 重力波物理学

電磁気学Ⅰ解析力学(A1ターム)

2年 Aセメスター

3年 Sセメスター

3年 Aセメスター

4年 Aセメスター

4年 Sセメスター

物理数学Ⅱ(A2ターム)

物理学演習Ⅴ(量子力学III・電磁気学III・統計力学II)

特別実験Ⅱ 理論演習Ⅱ

物理学実験Ⅱ

物理学演習Ⅳ(統計力学II A1ターム)

物理学実験Ⅱ

特別実験Ⅱ 理論演習Ⅱ

特別実験Ⅰ 理論演習Ⅰ

特別実験Ⅰ 理論演習Ⅰ

特別実験Ⅰ 理論演習Ⅰ

物理学のための科学英語特論

素粒子物理学

物理学演習Ⅰ

物理学演習Ⅱ

量子力学Ⅰ(A2ターム)

物理学実験Ⅱ

物理学実験Ⅰ

特別実験Ⅱ 理論演習Ⅱ

現代物理学入門

物理数学Ⅰ(A1ターム)

物理学演習Ⅳ(統計力学Ⅰ S2ターム)

物理学実験Ⅰ

物理学演習Ⅲ(量子力学II・電磁気学II)

物理学実験Ⅰ

統計力学特論場の量子論Ⅰ

金 宇宙物理学 生物物理学特論Ⅱ 物質科学基礎

9

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1 2 生 Aセメスター

1.1 学 I :

1. 特 対性理論

1.1 相対性原理

1.2 ローレンツ変

1.3 度の変

1.4 時 間の 学と時 の イアグラ

1.5 固 時間と時間の れ

1.6 ローレンツ

1.7 相対論的エ ル ーと 動量

1.8 エ ル ーと 動量のローレンツ変 と 存則

2. 学と特 対論

2.1 スカラー・ クトル・テン ル

2.2 4元 クトル

2.3 連 の方 式と 4元 流

2.4 4元ポテンシャルとローレンツ ー

2.5 一定 度で 動する点 がつくる

2.6 テン ルと のローレンツ変

3. の の 動

3.1 の の 子の 動方 式

3.2 一様な の 動

3.3 一様な の 動

3.4 一様な の 動

3.5 のラグラン アン

3.6 エ ル ーと 動量の 存則

3.7 点 の自 エ ル ー

1.2 力学 :

1. ラ ラン ン(Lagrangian)力学1.1 想 事と ラン ール(d’Alembert)の定理

1.2 一 化 度と一 化

1.3 一 化 標と一 化 度の関数としての 動エル ー

1.4 ラグラン アン

1.5 ハミルトニアン(Hamiltonian)

1.6 準共 動量

1.7 題

1.8 理的に 価なラグラン アン

1.9 ポテンシャルが 度に依存する (ローレンツ )

1.10 連 のラグラン アン

2. 分 理とラ ラン ン力学2.1 イラー(Euler)方 式

2.2 ハミルトンの原理

2.3 連 の イラー・ラグラン 方 式

2.4 の イラー・ラグラン 方 式

2.5 ラグラン の 定係数法(Lagrange Multi-pliers)

2.6 ロノミック(Holonomic)な を 定係数法で く

2.7 非 ロノミックな の応用

3. ーター(Noether)の 理と ニ ン力学

3.1 動量と 転対 性

3.2 ーターの定理

3.3 の理論の ーターの定理

3.4 ハミルトン 学とル ャンドル(Legendre)変

3.5 相 間とリ ー ル(Liouville)の定理

4. 正

4.1 準変

4.2 ポア ン(Poisson)

5. ン・ (Jacobi)方程

5.1 ハミルトン・ コ 方 式

5.2 作用変数と 変数

5.3 不変量

5.4 量子 説

1.3 力学 I :

1. ン クション

1.1 子と

1.2 から量子

2. シ レ ンガー方程

13

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2.1 シ レ ン ー方 式と 動関数

2.2 確率 と 理量の

2.3 不確定性関係

3. 1 の

3.1 元の に められた 子

3.2 型ポテンシャル

4. 1 の

4.1 自由 子の 動関数:平

4.2 散 問題のいくつかの

5. 力学の

5.1 エルミート 子と 理量

5.2 動関数の 間

5.3 ラックの記法と 子を用いた定式化

5.4 準量子化

6. 動

6.1 和 動子の量子論的 い: 子法

6.2 和 動子の量子論的 い: 動関数

6.3 応用: の量子化

1.4 物理実 学 : 文,

1. 論 (物理実 の 力)

2.

2.1 SI基本単 の定

2.2 表的な 理量の単

2.3 各種の 用単 系と の変

3. の 法

3.1 レー ーの基 と の

3.2 の基 と の

4. 実 の 技術

4.1 実験環境技術

4.2 作製技術

5. 論

5.1 実験

5.2 確率統

5.3 実験 ータの

6. 実 レポー 論文 の 事項

1.5 物理 学 I :

1. 複 論

1.1 和と 性

1.2 複素関数

1.3 則関数の基本的な性質

1.4 多価関数とリーマン

1.5 複素 分:応用

1.6 ルタ関数

1.7 部分分数 、 表

1.8 ンマ関数・ ータ関数・ゼータ関数、 接

1.9 と最 法

1.10

2. 分方程 論

2.1 の存 と一意性

2.2 分により な 分方 式の

2.3 形 分方 式

2.4 Laplace変

1.6 物理 学 II :

1. ー と ー

1.1 フーリエ 数

1.2 フーリエ変

1.3 散フーリエ変

2. 分方程

2.1 動方 式

2.2 伝 方 式

2.3 ラプラス方 式とポア ン方 式

2.4 ラプラス変

3. 多項 と特

3.1 エルミート多項式

3.2 ラ ール多項式

3.3 ル ャンドル多項式 

3.4 ッセル関数

3.5 関数

3.6 スツル -リ ル型固 問題

1.7 物理のための科学英語 : 小野 義正

1. Television テレ 動詞の適切な時制 科学英語とは、日本人英語の欠点と改善策

2. Batteries 句読点の使い方 直接翻訳するな、和文和訳せよ、 主構文

3. Fluorescent Lights 文頭・数字の書き方英語の基本は三拍子、 ラグラフ・ライテ ング

4. Edison vs. Tesla エ ン対テスラ 関係 名詞の制 用法・非制 用法 ラグラフ・リー

ング

5. Radar レー ー 並列構造で書く 読みやすい英語(論文)を書く、論文用英文の み て

6. Refrigerator 数字・記号の表現法 起承転結はやめよう、日本語の構造 vs.英語の構造

7. Heat 名詞 「英語の発想で書く」(Leggett’sTrees)、英語活用メモを作り、英借文する

8. X-rays 冠詞 否定形をやめて、肯定形で書く、 いまいな表現を け、きっ りと書く

9. Color い簡潔な文を書く 辞書の使い方、参考文献

10. Lens, light, and colors レンズ、 、 受動態を避けて能動態で書く; る英語のしゃべり方

11. 30-second Self Introduction 連結語を使うる英語のしゃべり方 

12. Airplane 不必要な単語は省く る英語のしゃべり方 

13. Rust 元素記号の発音の 方 英語口頭発表での注意点

14. Scientific Fraud; 実験ノート( ノート)の書き方 英語のしゃべり方   遺

2 3 生 Sセメスター

2.1 学 II :

1.

1.1 基本法則

1.2 でのMaxwellの方 式

1.3 分 と

1.4 質が るときの

1.5 境 問題

2. と 性的

2.1 基本法則

2.2 子モーメント

2.3 質の 化

2.4 境 問題

2.5 準 的な と

3. Maxwellの方程 と

3.1 質 のMaxwell方 式

3.2 ポテンシャル

3.3 のエ ル ー

3.4 の 動量

4. 波

4.1 平 の基本的性質

4.2 と

4.3 質の 流 に対する応答

4.4 の

2.2 力学 II : 正

1. シ レ ンガー方程 の性質

2. 動

3. ス ン

4. 対 性と

5. 動論

6.

7. 過程

8. EPRの ラ ックス

2.3 現 実 物理学 I : ,

1. 技術 技術、 技術、 理、 発生、

14 15

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2. の 構造量子 動、 子分 、 型 子

3. た実共 、ミ ー ンス ン 転

4. X た実

X の発生、構造 、元素分 、 、X自由 子レー ー

5. レー ー物理学レー ー 学 画 理 学

6. 物理学ラ ン 動 生 の 動、生 分子の X

構造

2.4 実 I :

1. UNIXの

1.1 UNIXコマンド

1.2 C 語プログラミング

1.3 Gnuplotによるグラフ作成

1.4 LaTeXによる文書作成

2. ・ 分・ニ ー ン法

3. 分方程

3.1 初 問題と境 問題

3.2 Euler法・Runge-Kutta法

3.3 法と 法

3.4 Numerov法

3.5 シンプレクテ ック 分法

4. 方程

4.1 理に現れる連 一 方 式

4.2 スの 法・LU分

4.3 列の め方

4.4 法

5.

5.1 列の性質・べき ・指数関数

5.2 Jacobi法・Givens法・Householder法

5.3 列に対する 法・べき 法・Rayleigh-Ritzの方法・Lanczos法

5.4 分 ・一 化 列

5.5 列の ランク

5.6 最 法による 帰分

は https://exa.phys.s.u-tokyo.ac.jp/ja/lectures で

2.5 力学 I :

1. 力学と か

1.1 ミクロとマクロ

1.2 統 学の分

1.3 学の 習

1.4 統 学の基本

2. 1: 論

2.1 基本事項

2.2 な部分からなる系

2.3 ら と 数の法則

2.4 連 変数の

3. 2: 論

3.1 量子 学の 習・確率的な系との対応

3.2 状態数

4. 力学の

4.1 平衡状態とは

4.2 率の原理とミクロカノニカル分

4.3 系のミクロカノニカル分

4.4 カノニカル分 ( )4.5 カノニカル分 の性質5. ニ 分 の応5.1 理想5.2 相互作用する ( 系)5.3 和 動子5.4 性とス ン系6. の6.1 論6.2 Einsteinモ ル6.3 Debyeモ ル7.

7.1 実験事実7.2

8. ラン ニ 分8.1 定と8.2 性質8.3 応用

9. 理

9.1 多 子系の量子 学

9.2 量子理想 の平衡状態

9.3 状態 度

9.4 理想 Fermi

9.5 理想 Bose

2.6 力学 :

1. 様2. の 方程2.1 流 を づける量

2.2 連 の式

2.3 と 動方 式

2.4 エ ル ー方 式

2.5 子の方 式から流 の方 式

2.6 度と 度方 式

3. の表現3.1 ポテンシャル流

3.2 複素 度ポテンシャル

3.3

4. 性

4.1 Reynolds数

4.2 ストークス

4.3 一様 方 流と Kolmogorov則

4.4 フラクタルによる 流の表現

5. 波

5.1 長い

5.2 表

6. 不 性

3 3 生 Aセメスター

3.1 学 :

1. 学の と現 科学

2. 学

3. 波動 学

4. ー 学

5. 学

6. ー 学

7. 学

8. レー ー

3.2 物理 学 III : 法

1. と対 作

1.1 の定 と

1.2 点 と 間

2. 論の 概

2.1 部分

2.2 共

2.3 不変部分 と 子

2.4 準 型と 型

3. の表現

3.1 表現とは か

3.2 表現と指標

4. 力学と 論

5. 対

5.1 対 と

5.2 対 の共

5.3 対 の 表現

6. ー

7. ー

7.1 リー 数の生成子

7.2 単 リー 数とカルタンの標準形

7.3 単 リー 数の分

8. SU(n) Hubbard 型

16 17

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3.3 力学 III :

1. の

1.1 の 子

1.2 ニ ートン 学と リレイ変

1.3 一様な の 子

1.4 Aharonov-Bohm効果

1.5 ス ンを つ 子と の相互作用

2.

2.1 子の散

2.2 散

2.3 散 の

2.4 散 状態の 動関数が たす 分方 式

2.5 Born

2.6 部分 と 相の れ

2.7 共 散

2.8 種 子の散

2.9 Lippmann-Schwinger方 式(散 理論の形式論)

2.10 固 の 子散 と ポテンシャル

3. 多 の 力学的

3.1 リ 原子

3.2 多 子原子

3.3 ルン- ッペンハイマー ( )

3.4 素分子

3.5 ハートリー-フ ック

4. 化

4.1 数表

4.2 フェルミ ン系

4.3 ン系

4.4 の 子

4.5 量子化におけるハートリー-フ ック

3.4 生物物理学 : ,

1. 生 と か 生 生と遺

2. タン ク質の構造と 性

3. タン ク質の 1分

4. 動の分 論

5. ー生

6. 細胞 の分 た

7. の分

8. 科学概論

9. 細胞 の 的性質 1. と

10. 細胞 の 的性質 2. 動 と H-H方程

11. シナプス

12. ッ ーク 理

13. の可 性と記憶

14. 遺 技術 メー ン動 作

15. 理論

3.5 物理学 I :

1. ( )

1.1 子 度とフェルミエ ル ー

1.2 状態 度

2. 1 ポテンシ の

2.1 ポテンシャルが い の

2.2 ロッ の定理

2.3 エ ル ーと 数の関係の表 形式

2.4 本の ンド の状態数

2.5 属と

2.6 クローニッ ・ペニーのモ ル

3. 構造

3.1 間 子と単

3.2 間 子の分

3.3 表的な結 構造

3.4 結 の方 や の表記法

3.5 結 の成り

4. 逆

4.1 子とは

4.2 による結 構造

5. の

5.1 ロッ の定理と リルアン・ ーン

5.2 ポテンシャルが い

5.3 が い の

5.4 グラフェンの 子状態

5.5 カー ンナノチ ー の 子状態

6. 動

6.1 子 動とは

6.2 種原子の 元 子モ ル

6.3 種 の原子からなる 元 子モ ル

6.4 元 子の 動

6.5 フ ノンと量子数の 平

6.6 子 と Debyeの

7. の 動

7.1 子の 度

7.2 動方 式

7.3 効質量

7.4 の 動

8. の

8.1

8.2 流 と伝 子

8.3 伝 と散 構

8.4 ルツマン方 式と 現象

9.

9.1 子と

9.2 不 ドー ング

9.3 p-n接

9.4 効果トラン スタ

9.5 テロ接

3.6 現 実 物理学 II : ,

1. と物質の 作2. と3. の ・実 ータの と4. 対論的 動学

5. 物理学概要

6. 物理実 理

7. 物理実 の

3.7 学 III :

1. 波の1.1 自由 と の性質

2. 波の2.1 ポテンシャルと先進ポテンシャル

2.2 ポテンシャルの多

3. の 波3.1 リエナール- ー ェルトのポテンシャル

3.2 動する 子の作る

3.3 制動

3.4 点 による の散

3.5 チェレンコフ

4. 波の

4.1

4.2 共

4.3 の

5. の 動

6. 波と重力波

3.8 力学 II : 小 正

1.

1.1 序 ラメータと対 性の れ

1.2 相転

1.3 平

1.4 Landau理論

1.5 相転 における 指数と 間 元

1.6 ス ーリング理論とくり み のアイ ア

2. 応答理論

2.1 時間に依存しないときの 形応答

2.2 時間に依存するときの 形応答

2.3 : 率、 伝 度

2.4 現象

3.9 実 II :

1. 対 化と 力学 1.1 ポテンシャル

18 19

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1.2 シ ーテ ング

1.3 対 化による 法

1.4 変分法

1.5 による 元

2. ンテ と 力学

2.1 多 系の統 学

2.2 択アル リズ

2.3 理 のシミ レーション

2.4 疑 数

2.5 ストグラ

2.6 モンテカルロ 分

2.7 マルコフ連 モンテカルロ

3. ・分 動力学

3.1 数え上

3.2 転 列法

3.3 分子動 学法

4. 適化

4.1 最適化問題

4.2 い み法

4.3 最 法・ 法・共 法

4.4 Nelder-Meadの シンプレックス法

4.5 シミ レーテッド・アニーリング

は https://exa.phys.s.u-tokyo.ac.jp/ja/lectures で

4 4 生 Sセメスター

4.1 対論 :

1. 論  理と 対性 理

1.1 価原理

1.2 一 相対性原理

1.3 一 相対論の 理

2. 学的

2.1 スカラーと クトル

2.2 対 間

2.3 テン ル

2.4 量テン ル

2.5 内 とテン ルの

2.6 分

2.7 量テン ルの共変 分とクリストッフェル記号

2.8 リーマンの 率テン ル

3. た の物理

3.1 率テン ル

3.2 の自由 子の 動方 式

3.3 ニ ートン

3.4 と

3.5 アン の 式

3.6 対応原理

3.7 準エ ル ー 動量テン ル

3.8 がった時 におけるエ ル ー 動量テンル

3.9 エ ル ー 動量テン ルの現象論的定

4. 対論

4.1 アインシ タイン方 式

4.2 作用原理

5. 対

5.1 対

5.2 による時間の れと の 方

5.3 シ ルツ ルト時 における 子の 動

5.4 の 日点 動

5.5 の

5.6 シャ ーロ

6. ラックホー

6.1 シ ルツシルト ラック ール

6.2 事象の 平

6.3 標系について

7. 重力波

7.1 の 形化したアインシ タイン方 式

7.2 動変数の ー 自由度

7.3 の伝

7.4 の  

8. 論

8.1 原理とロ ート ン・ ーカー 量

8.2 ルメートル・フリードマン

4.2 ック物理学 :

1. Introduction

2. Interactions and kinematics

3. Particle scattering and form factors

4. Dirac equation and anti-particles

5. Accelerators

6. Weak interaction

7. Strangeness and CP violation

8. Neutrinos

4.3 科学概論 : か

1. 性 の ー テク

2. スー ー ン ータと プ ラ ン

3. と 多

4. ー

5. 性 プ ラ ン と性

6.1 の 要 法

6.2 構造 プ ーション CAE実

7. ス ン 型の 科学

4.4 力学特論 :

1. Introduction Phase Transitions, Crit-ical Phenomena and Universality

2. Meanfield Approximation, VariationalPrinciple and Landau Expansion

3. φ4 Theory and Ornstein-Zernike Form

4. Introduction to Renormalization Group

5. Tensor-Network Renormalization Group

6. General Framework of RenormalizationGroup Fixed Points and Scaling Op-

erators

7. Consequences of Renormalization Group

8. Operator Product Expansion

9. Perturbative Renormalization

10. ε-expansion and Wilson-Fisher FixedPoint

11. Magnetic Anisotropies

12. Berezinskii-Kosterlitz-Thouless Transi-tion

4.5 現 物理学 : , 正

1. 物質 の の と 物性1.1 :トポロ ーと量子 性1.2 動量 間における リー 相1.3 リー 率と量子 ール効果1.4 固 の イル 子1.5 トポロ ーと 子 性1.6 ス ンアイスと モノポール1.7 量子ス ン と

2. 重力波 物理学

2.1 と の発生

2.2 の 方法

2.3 ータ 法

2.4 連 ラック ール の

2.5 連 性子 の

2.6 の し

4.6 の 論 I :

1. Introduction

1.0 About this lecture (Language, Web page,Schedule, Grades,...)

1.1 Course objective and Plan

1.2 QuantumMechanics and Quantum Field The-

ory

1.3 Notation and convention

1.4 Hilbert space and Hamiltonian of (infinitely)many particles

2. Scalar (spin 0) Field

20 21

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2.1 Lagrangian and Canonical Quantization ofScalar Field

2.3 Equation of motion (EOM)

2.4 Solution of the EOM

2.4 Commutation relations of a and a†

2.5 a† and a are the creation and annihilation op-erators

2.6 Vacuum state, one-particle state and n-particle state

3. Lorentz transformation, Lorentz groupand its representations

3.1 Lorentz transformation of coordinates

3.2 Infinitesimal Lorentz transformation and gen-erators of Lorentz group (in the 4-vector ba-sis)

3.A Other (disconnected) Lorentz transforma-tions

3.3 Lorentz transformation of scalar field

3.4 Lorentz transformations of other fields, andrepresentations of Lorentz group

3.5 Spinor Fields

3.6 Spinor bilinears

4. Fermion (spin 1/2) Field

4.1 Lagrangian

4.2 Dirac equation and its solution

4.3 Quantization of Dirac field

5. Interacting Scalar Field

5.1 Outline: what we will learn

5.2 S-matrix, amplitude M ⇒ observables (σ andΓ)

5.3 Interacting Scalar Field: Lagrangian andQuantization

5.4 What is φ(x) ?

5.5 In/out states and the LSZ Reduction Formula

5.6 Heisenberg field and Interaction picture field

5.7 a and a† (again)

5.8 〈0|T (φ(x) · · ·)|0〉 = ?

5.9 Wick’s theorem

5.10 Summary, Feynman rules, examples

4.7 : 生 , 理

1. 科学概

1.1 系 発 までの

1.2 系 方法のまとめ

1.3 系 発 の

1.4 主

2. の

2.1 対象としての系

2.2 度法

2.3 トラン ット法

2.4 マイクロレンズ法

2.5 直接 法

3. の 構造と進化

3.1 系内 の内部

3.2 内部構造と 進化の基

3.3 度 ス

3.4 度 ス

3.5 長 ス

3.6 (スー ーアース、サ プチ ーン)

4. の 成過程と多様性

4.1 原 系 の構造

4.2 原 系 の

4.3 ストの と成長

4.4 形成と

4.5 固 の形成

4.6 ス の形成

4.7 系 系の多様性

5. の

5.1 構造の基

5.2 から る系

5.3 から る系

5.4 ハ タ ル の

5.5 後の

4.8 学 : 野

1. の と

1.1 のモード 度、 のエ ル ー

1.2 、プランクの 式

1.3 自 と

1.4 の

2. と との 作 ( 論)

2.1 子 、 転

2.2 ラ 動

2.3 度 列

2.4 ロッ 方 式

2.5 和と 和

3. の 論

3.1 自由 の量子化

3.2 子数状態

3.3 コ ーレント状態

3.4 スクイーズド状態

3.5 グナー関数

4. 学の

4.1 動子モ ル 

4.2 非 形分 と非 形 受率

4.3 の非 形 学効果

4.4 相

4.5 ラメトリック

5. レー ーの

5.1 共 のモード

5.2 共 の安定性

5.3 発

5.4 各種レー ー

4.9 物理学 II :

1. ラック方程

1.1 確率流 度

2. ン 理論

2.1

2.2 グラフェン

2.3 クライン ラドックス

2.4

3.

3.1 量子 め効果

3.2 量子化コン クタンス

4. の 動

4.1 ール効果

4.2 ラン 準

4.3 数量子 ール効果

4.4 相対論的量子 ール効果

5. 性

5.1 相互作用

5.2 ハ ードモ ル

5.3 ストーナー 性

6.

6.1 クー ー対

6.2 子- 子相互作用

6.3 BCS 伝

4.10 プラ マ物理学 :

0. プラ マと

1. の 動

1.1 一様 の 子ドリフト

1.2 非一様 の 子ドリフト

1.3 時間変化する の 子ドリフト

2. とし のプラ マ

2.1 プラズマの流 方 式

2.2 流 方 式と 子ドリフトの関係

2.3 一流 流 学

2.4 流 学的平衡

3. プラ マ の 過程

3.1 と非 プラズマ

3.2 プラズマ の

3.3 プラズマの 散

4. プラ マ の波動

4.1 非 方分散媒 の 動

4.2 のないプラズマ の 動

4.3 の るプラズマ の 動

5. プラ マの不 性

6. プラ マの 動論

6.1 ラ フ方 式

6.2 プラズマ 動の 動論的効果

6.3 度 間不安定性と非 形理論

 

22 23

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4.11 物理学 : ,

1. 物理法 と 物理

1.1 質量と長

1.2 度と長

1.3 相互作用と 構造定数

1.4 と 構造定数

1.5 プランクス ール

1.6 原子の き

1.7 分子の き

1.8 の

2. の

2.1 自 の 的ス ール

2.2 の 構造

2.3 の 表

2.4 形成

3. ク と

3.1 理法則と初

3.2 型( ス)

3.3 型( )

3.4 (主系列 )

3.5

3.6 性子

3.7 の と基本 理定数

4. 概

4.1 時 と 質

4.2 一 相対論的一様 方 モ ル

4.3 の状態方 式

4.4 アインシ タイン・ド ッター モ ル

4.5 フリードマン・ルメートル方 式

4.6 の 成

4.7 のインフレーション

4.8 ッグ ン元素 成

5. の物理学

5.1 の 生

5.2 動方 式と状態方 式

5.3 の 理量

5.4 の ラメータ・ス ーリング

5.5 内部の

6. の進化と

6.1 の進化

6.2 の

6.3 子 した

6.4 性子

6.5 ラック ール

6.6

7. の ー現象

7.1

7.2

4.12 生物物理学特論 II : , 力,

1. 細胞

1.1 と数

1.2 分子 と ら

1.3 散 と構造

1.4 とノイズ

1.5 置と方

2. 生 システ

2.1 生命の起 に関する理論と実験

2.2 生態系の安定性に関する理論と実験

2.3 進化プロセスに関する理論と実験

2.4 システ に関する理論と実験

3. タン ク質

3.1 タン ク質の構造と 性

3.2 タン ク質のフ ール ング 構

3.3 タン ク質の イナミクスと 能

3.4 タン ク質の分子進化と イン

5 4 生 Aセメスター

5.1 化学物理学 :

1. ン クション 2. 分 の と対 性

3. 分 の4. 分 分 学5. 分 力

6. 化学反応

7. ックス

5.2 物理学 : ,

1. Introduction

2. Basic Concepts

3. Experimental Tools

4. Decay and Cross Sections

5. Dirac Equation

6. Quantum Electrodyamics (QED)

7. Weak Interactions

8. Electroweak Theory

9. Quark Model and QCD

10. Quark Mixing and CP Violation

11. Forefront of Particle Physics

5.3 の 論 II :

1. と の 化1.1 実スカラー の量子論( 習)

1.2 複素スカラー と 存則

1.3 所対 性と ー 原理

1.4

1.5 量子 学

2. 可 ー 理論2.1 と非 ー

2.2 ー 変 と対 性

2.3 量子化

2.4 ー 変 とトポロ ー

2.5 分と Theta項

3. 発 と り

3.1 則化

3.2 り み

3.3 り み 能性

3.4 り み

5.4 物理学 :

1. Introduction

1.1 General properties of nuclei

2. Nuclear force

2.1 Binding energy

2.2 Size of a nucleus

2.3 Wavefunction of deuteron

3. Bulk Properties of Nuclei

3.1 Scattering theory

3.2 Phase shift and nuclear potential

3.3 Equation of state of the nuclear matter

3.4 Alpha decay

4. Microscopic Models of Nuclear Structure

4.1 Hartree-Fock single particle Hamiltonian

4.2 Deformed single particle state

4.3 Spherical Shell model

5. Nuclear reaction

5.1 Compound nuclear reaction

5.2 Direct reaction

5.3 Optical model

6. Recent Topics with radioactive nuclearbeams

6.1 Nuclear astrophysics

6.2 Super heavy element

5.5 論 : 正

1. と

2. システ と

3. と過 応答

4. と ー ック

24 25

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5. 分 と

6. と

7. と タ

8. タ と タ 理

5.6 物理学 III : , 英

1. 性

1.1 イ ンの 性、結

1.2 原子間相互作用

1.3 ス ン

1.4 ハ ード 型

1.5 性

1.6 量子ス ン 性とフラストレーション

2. の

2.1 子相関

2.2 モット と 性

2.3 フェルミ 論

2.4 属 転

2.5 状 化 の 伝

2.6 方的 伝

5.7 科学 :

1. と確率の イナミクス、確率の流れ、平衡状態/非平衡状態、定 状態/非定 状態、定 分

2. 過程Markov 連 、Chapman-Kolmogorov 方式、master 方 式、Fokker-Planck 方 式、Onsager-Machlup関数、Langevin方 式

3. 的 力学流れと 、 学 法則、サイクル基 、Kirchhoffの法則、 形不 学、Onsager相 関係

4. と ン ー生成Shannonエントロ ー、Kullback-Leibler イ

ー ェンス、相互 量、エントロ ー生成、揺ら の定理、 学 法則とメモリ

5. 過程と ラメータの力学学系、 ラント、定 状態と固定点、安定性、化学 応とレート方 式

6. 力学 と 性非 形性と分岐、サドルノード分岐、トランスクリテ カル分岐、 ッチフ ーク分岐、 ップ分岐

7. 科学 様 ック理論、Fisher 列/ 、 散

応方 式、カ ス、生 理

5.8 物性物理学特論 : , 小 文

1. 概論表 科学とは、 、表 科学とナノテクノロー

2. 表 構造表 構造と相転 、 法、 法、動的

3. 表表 状態・トポロ カル表 状態、 ンド分散・原子結 状態 定 法(( ) 子分 法、トン ル分 法、 子エ ル ー 失分 )、子 イナミクス

4. 査プ ー原理 表 構造 察、 所 子状態・表 ンドの 表 子定 、原子マニ レーション

5. 表表 間 の 元 子系、表 子 ンドの 、 元 子系、表 ス ン 、表伝

6. 表 性モーメントと相転 、 性 、表

ナノ 性 、ス ン イナミクス

5.9 普遍性生物学 : , 力

1. 生 システ のマク 理論の可 性

1.1 基本的性質: 多様性、活動性、ロ スト ス、

1.2 性: 定 成長系の 法則

2. 化学反応から複製細胞へ生命における「非平衡性」、少数性制御、区画化、成長のマクロ法則と相(付録:人工複製系構築実験について)

3. 細胞の適応揺らぐ成長系の帰結、ノイズによる環境依存アトラクター選択

4. 細胞ホメオスタシスと適応触媒量制御、多自由度適応系

5. 細胞の記憶: 動的記憶とガラス

6. 細胞分化と発生過程の不可逆性マクロ現象論、分化多能性の表現、相互作用に

よる内部状態の分岐、分化能の喪失とリプログラミング

7. 表現型の進化 (I)進化揺動応答関係、ノイズによる分散と遺伝分散の関係、安定性の進化

8. 表現型の進化 (II)適応進化におけるルシャトリエ原理

9. 発生―進化対応 

10. 多様性の進化表現型変化の遺伝的固定, 共生、種分化、多様性の進化

11. まとめと展望: 生物普遍性の現象論へ

5.10 重力波物理学 : Kipp Cannon, Raffaele Flaminio

1. Review of general relativity and gravita-tional waves

2. Astrophysical sources of gravitationalwaves

3. Signal identification and interpretation

4. Gravitational-wave detectors

5. Gravitational wave astronomy: recent re-sults

5.11 物理のための科学英語特論 : 小野 義正

1. 英語論文作成の概要1. 科学英語とは、日本人英語の欠点と改善策、直接翻訳はするな、和文和訳せよ、英語活用メモをつくり英借文する

2. 英語論文作成の概要2. 英語の発想で書く(Leggett’s Trees)、英語の基本は三拍子、起承転結はやめよう、読みやすい論文を書く、結論を先に、理由を後に、否定文を避けて肯定文で書く

3. 英語論文の構成と作法1. 効率のよい英語論文執筆の進め方、よい英語論文の書き方、基本的な注意、英語論文の構成(IMRAD方式)、英語論文の各項目の書き方 1(表題、著者と所属、著者抄録)

4. 英語論文の構成と作法2. 英語論文の各項目の書き方 2(序論、本論、結果、考察、結論、謝辞、引用文献、図と表)、辞書の使い方

5. 作文技術1. 文頭、数字の使い分け、用語の統一、リスト項目の一貫性(並列構造で書く)、つづりの統一、簡潔な文を書く、受動態を避け能動態を使う、連結語を使う

6. 作文技術2. 不必要な単語を省く、日本人に多い間違いを直す、自動詞と他動詞の取り違え、よく使われる略語、注意すべき単語

7. 文法的事項1. 動詞の適切な時制、主語を明確に、冠詞の使い方、名詞の使い方、和製英語に

注意、スペリングに注意

8. 文法的事項2. 前置詞、句読法、数字・数式の表現法、記号の読み方、元素記号、参考書

9. 英語プレゼンの概要. プレゼンテーション(口頭発表)とは、プレゼンの心構え、英語プレゼンの構成、スライドの効果的な使い方、標準スライド

10. 英語の構造としゃべり方. 英語の構造、英語のしゃべり方、発音のコツ、和製(カタカナ)英語に注意、わかってもらえる英語のしゃべり方(事前準備)

11. 発表のマナー・テクニック.原稿は読むべきか、原稿・メモ作成上の注意、発表練習(リハーサル)、発表時のマナー・テクニック、Non-verbalCommunication、プレゼン当日のコツ

12. 英語プレゼンの実際. 最初の挨拶、プレセンの流れと決まり文句、図表の説明、数字・数式・記号の読み方、グラフ表現、図形

13. 質疑応答・ポスターセッション. 質疑応答(Q&A)の心構え・指針、質問が聞きとれなかったとき・答えられないときの対応、ポスターセッションの利点・発表の技術、プレゼンの注目点と評価のポイント、チェックリスト、Hints fora Successful Conference、参考書

14.(補遺)  論文投稿と査読者対策

26 27

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研究

相原 行

当研究室の は,素粒子物理学を実験的に研

究する高エネルギー物理学である.高エネルギー加

速器研究 構 (KEK)のスーパーBフ クトリーを

使った実験,およ ,大強度陽子加速器 (J-PARC)

とスーパーカミオカンデを使ったニュ トリノ振

動実験を推進している.さらに,すばる望遠鏡を

使ったダークエネルギーの研究や,次世代の大

水チェレンコフ検出器であるハイパーカミオカン

デ計画を推進している.これら世界最 の実験

設 を使って, 分たちの で素粒子や宇宙の

を実験的に解き明かすことを している.

1 ー ーB ク ー の

素粒子物理学は,物質の究極の構成要素である素

粒子の探究とその反 メカニ ムの解明を し

ている.当研究室は,素粒子反 が つ対称性に

して究極の物理法則の を明らかにしようと

している. 子には陽 子,陽子には反陽子とい

うように,すべての粒子には, が の反粒子

が存在する.これら粒子と反粒子は, が で

あること , 子力学的に全く同じ性質を っ

ている.これを CP対称性と呼 が,素粒子に働

く い力 と呼ばれる力では,その対称性がわ

ずかに破れていることが られている.

当研究室は,CP対称性の破れの を 明する

理論として提 された 理論を,最 加

速器 Bフ クトリーを使って検 した.

理論は 2008年ノー ル物理学 に いたが,当研

究室では,さらにその を見 え,次世代加速器

スーパー Bフ クトリーを使って,超対称性理論

など現在の素粒子理論の にある,より 的な

素粒子物理の解明を した実験を 行しようと

している.Belle II( ル ー)と呼ばれるこの実

験に けて進めてきた加速器と測定装置の大幅な

図 1. Belle II( ル ー)測定装置.

図 2. 当研究室で した,Belle II 測定装置の

にあたる 体粒子検出器.

もようやく わり(図 1,2),いよいよ

的なデータ がスタートした.

Bフ クトリーは B 間子の に τ レプトンも

大 に する τ フ クトリーでもある. レ

プトンの 崩壊は,新物理を探索するための 力

な の一つであると えられている.当研究室

では,B 間子と τ レプトンの研究によって新物

理を探求している.

2 ー ー を使った

J-PARC加速器では, を たない,クォーク

とは別種の素粒子である ニュートリノ の実験

を行っている.ニュートリノは, の素粒子のう

ちで性質が最も べられていないものの一つであ

り,現在の素粒子理論を えた物理の がかりを

めていると えられている.J-PARCで った

ニュートリノのビームを,約 300km離れた

の にあるニュートリノ検出器(スーパーカミ

図 3. スーパーカミオカンデ検出器でとらえた,

295km離れた加速器からのニュートリノが反 し

た 象.チェレンコフ光がリング に見えている.

31

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68m

72m

図 4. ハイパーカミオカンデ検出器の概念図.高さ

72m,直径 68mのタンクに超純水を満たし,チェ

レンコフ光を検出することで多様な現象を捉える.

オカンデ)に打ち込み,ニュートリノが飛んで行く

間に別の種類のニュートリノに変わる様子(ニュー

トリノ振動)を観測する. T2K実験と呼ばれるこ

の実験で,我々はこれまで確認されていなかった

種類のニュートリノ振動を発見した(図 3).

また,クォークと同じようにニュートリノでも

CP対称性が破れていることが予想されている.も

しこの予想が正しければ,ニュートリノは,ビッグ

バンから始まった宇宙における物質創成の歴史,す

なわち,宇宙の進化において重要な役割を果たした

可能性がある.ニュートリノ振動実験は,ニュート

リノと宇宙進化の関わりを解明するための実験で

もある.現在,T2K実験ではニュートリノビーム

と反ニュートリノビームでの測定を用いて,ニュー

トリノのCP対称性の破れの探索を進めており,そ

の兆候らしきものを捕まえつつある.

しかし,CP 対称性の破れを確実に測定するた

めには,さらに高統計・高精度の実験を行う必要

がある.ハイパーカミオカンデ検出器(図 4)は,

我々がそのような次世代実験のために提案してき

た,現行のスーパーカミオカンデよりもさらに一

桁大きく,高性能な装置である.ハイパーカミオ

カンデでは,素粒子の大統一理論で予言されてい

る陽子崩壊の探索や,超新星からのニュートリノ

検出など,宇宙と素粒子にわたる幅広い分野で世

界最高の研究が可能となる.2020年から建設が始

まるこのプロジェクトで,我々は今後も新たな物

理の探究を強力に推し進める.

3 すばる望遠鏡を使ったダークエネルギーの研究

近年の宇宙論観測は,宇宙の約 23%と 73%は,そ

れぞれダークマターとダークエネルギーによって

占められていて,物質はわずか 4%を占めるのみで

あり,かつ,宇宙は現在,加速膨張しているとい

う驚くべき発見をもたらした.通常の物質や輻射

(光)だけが存在している宇宙では,宇宙の膨張は

図5. 完成した928メガピクセルCCDカメラ (左).

現在はすばる望遠鏡に取付けられている (右).

図 6. 試験観測で得られたアンドロメダ銀河M31

の画像.拡大すると,230万光年かなたのM31の

星々が一個々々 分離して見分けられる.

減速する一方である.膨張を加速させるためには,

重力とは異なり,宇宙全体に対して斥力として働

く存在が必要であり,これがダークエネルギーで

ある.ダークエネルギーは,アインシュタインの一

般相対論に取って代わる新たな物理法則の存在を

意味しているかもしれない.ダークエネルギーの

研究は,時空の構造とその究極の構成要素を探求

する素粒子物理学のメインテーマとなりつつある.

この不思議なエネルギー,ダークエネルギーの

研究は,現在のところ加速器実験では不可能で,天

文観測によって行う必要がある.当研究室では、す

ばる望遠鏡に搭載した 928 メガピクセル CCD カ

メラ(図 5)を使ったイメージング(図6)により,

ダークエネルギー,原始ブラックホール,活動銀

河核の研究を進めている.素粒子物理と宇宙論と

呼ばれる宇宙の進化を研究する分野との関わりは

ますます深くなってきた.今後,この学際的分野

をおおいに発展させていきたい.

浅井研究室浅井祥仁 教授 石田明 助教 

1 研究の背景この研究室は、素粒子研究をエネルギーフロンティア加速器と小型テーブルトップ実験の両側から研究を行うユニークな研究室です。素粒子を使って、時空や真空をさぐることをテーマに幅広く研究を行っています。2 最近の研究テーマ

(A)ヒッグス粒子の発見と超対称性粒子研究:世界最高エネルギー LHCでの素粒子研究;

2012年 7月についにヒッグス粒子が発見された。この研究に東京大学素粒子物理国際研究センターと当研究室はこの重要な成果をあげた。ヒッグス粒子の発見は、真空はカラではなく、特殊な状態(ヒッグス場に満ちている)にあることの初めての実験的な検証である。ヒッグス場は、素粒子の質量の起源のみならず、その変化(真空の相転移)が宇宙の進化をもたらしたと考えられており、素粒子の研究を通して宇宙誕生の謎にせまる。これから真空の研究が重要になってくる。

LHC(Large Hadron Collider)実験は、ジュネーブ郊外にある円周 27kmの大型加速器(写真)であり 2015年より重心系エネルギー 14TeVの世界最高エネルギーで素粒子実験が再開される。ヒッグス粒子の発見は、新しい原理が背後にあることを示唆している。その最有力候補が超対称性である。超対称性粒子は宇宙の暗黒物質の有力候補でありその発見は宇宙の進化を理解する上でも、また超対称性は時空の構造に密接に結びついた本質的な対称性であり、重力を場の理論に取り込む上でも不可欠である。この様に素粒子物理ばかりでなく、宇宙など多くの関連分野に大きな影響を与えることが期待されている。この超対称性粒子の探索を LHCで行っている。  (B) 小規模実験(テーブルトップ)での標準

理論を超えた素粒子現象の探索; 大きな実験で最先端の素粒子物理を追い求めると同時に、自分の手や頭で「実験する技術や能力」を高める為の小規模な実験を LHC実験と並んで取り組んでいる。アクシオンなどの軽い未知の素粒子探索、レプトン世界の CP破れの探索やポジトロニウム(電子と陽電子で構成される世界で一番軽い原子)を

LHC加速器の写真

用いた高精度の量子電磁気学の検証、新しい光を使った素粒子実験など幅広く行っている。下の写真は自由電子レーザ(サクラ)である。世界最高強度の光を用いた、光同士の散乱実験を行い、ヒッグスで垣間見た真空の構造を探っている。本研究室は、「光を用いた新しい素粒子実験」を目指し、SACLAなどの高輝度 X線を用いた実験や、強力なミリ波(THz波)の光源開発や検出器開発を行ている。

Spring8と SACLA: 世界最強強度X線実験装置

3 今後の展開LHCでヒッグスが発見され、2015年には超対称

性の発見が期待されている。これらは、ただの新粒子の発見でなく、新しい素粒子研究の時代の幕開けである。真空や時空と言ったいままで入れ物だと思われていたものへ研究対象が広がっていくと思われる。これらのトピックスを、別の角度から研究するテーブルトップ実験も展開していく。

32 33

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KAGRA

1.

(

)

2.

1

1916

LIGO , 2015 9

KAGRA

2009 SDS-1

SWIM

LIGO

KAGRA( )

2020

3.

10−23

(

eLISA DECIGO )

2009

SWIM

HP http://granite.phys.s.u-tokyo.ac.jp/

上田研究室

上田正仁教授 中川大也助教

1 研究の背景

近年のナノサイエンスの発展により、原子や分

子、光子を量子 1個のレベルで精密に測定し、制

御することが可能になってきた。当研究室では、こ

のような高い制御性を有する系での量子多体問題

の解明と、その基礎となるナノスケールの熱力学・

統計力学の構築を目指して理論研究を行っている。

2 最近の研究テーマ

【冷却原子気体】

真空中にトラップされた極低温の原子気体は、原

子間相互作用の強さを含むほとんどすべての物質

パラメーターを自在に変化させることができる究

極の人工量子物質であり、様々な物理現象に共通

する普遍的な法則の探究が可能である。例えば、極

低温で実現される巨視的量子現象であるボース・ア

インシュタイン凝縮のダイナミクスには、超新星

爆発や宇宙初期の相転移とも類似した現象が現れ

る。また、原子気体の時間発展を正確に追うこと

で、孤立系がいかに熱平衡状態に至るかという統

計力学の基本的問題を研究することもできる。私

たちは冷却原子気体を題材に、様々な量子多体物

理の解明を目指して研究に取り組んでいる。

最近の研究では、環境への散逸や量子測定の反

作用の影響下にある原子系の非平衡ダイナミクス

および量子多体問題の解明に取り組んでいる。近

年実現された実験技術である量子気体顕微鏡は、多

体波動関数を 1原子のレベルで測定することを可

能にした。また、原子系にはコントロールされた

散逸が導入できるため、冷却原子気体は非平衡開

放系を研究する格好のプラットフォームとなって

いる。このような系において量子測定の反作用が

引き起こす非ユニタリーダイナミクスが従来の多

体物理をいかに変更するかという基本的な問題の

みならず、より広い意味での非平衡開放系におけ

る普遍性や相構造を研究している。最近私たちは、

非平衡開放系の重要なクラスの一つである非エル

ミート系で実現するトポロジカル相の分類を行っ

た。非エルミート系ではエネルギー固有値が複素

数値を取るため、エルミート系には存在しない新

たなギャップ構造とトポロジーが現れる(右下図)。

また、系の大局的性質を捉えるトポロジーの概念

を応用して、凝縮相における渦や単極子の性質の

解明や、人工ゲージ場のもとでの量子ホール状態

の研究にも取り組んでいる。今後は、冷却原子気

体は非平衡量子開放系や人工ゲージ場の原理を検

証する舞台として、様々な分野にまたがる学際的

な研究に発展していくものと期待される。

【量子論・統計力学と情報理論の融合】

私たちは情報をキーワードとして量子論や統計

力学の基礎づけとなる研究を行い、さらに情報理

論と量子論・統計力学を融合することで新たな学問

分野の構築を目指している。例えば、測定やフィー

ドバック制御を伴うもとでの熱力学第二法則や揺

らぎの定理の一般化、量子力学固有の相関である

量子もつれを用いた熱機関、ハイゼンベルグの不

確定性関係の情報論的定式化、量子測定における

情報の流れなどの研究に取り組んでいる。これら

の研究は、量子・熱揺らぎや測定の反作用が無視

できない微小非平衡系の研究の基礎を与えると期

待される。他方で、機械学習や深層学習における

情報処理のプロセスは物理学や統計力学の概念と

密接な関わりがあると期待される。私たちは最近、

物理学の視点からAIや機械学習の理解に取り組ん

でいる。

3 今後の展開

情報(認識)・数学・生命を含む広い視点から、

物理現象の基礎的理解とその普遍性を探究する。

E +

(a) Hermitian

(b) Non-Hermitian

EE F

ReE

ImE

EB

E-

非エルミート系において現れる新たなトポロジカル相。エルミート系ではハミルトニアンのエネルギー固有値は実数であるため絶縁体は実軸上のバンドギャップによって特徴づけられるが [(a)]、非エルミート系においてはエネルギー固有値が複素数になるためバンド構造がある点 EB の周りに巻き付く新たなトポロジカル構造が可能となる [(b)]。Phys. Rev. X 8, 031079 (2018)より転載。Phys. Rev. X 9, 041015 (2019)も参照されたい。

34 35

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岡田研究室

岡田 康志教授 榎 佐和子助教 池崎 圭吾助教

1 我々の目標:生命とは何か

生命の基本単位は細胞だと考えられています。し

かし、細胞の構成成分であるタンパク質や脂肪、核

酸を混ぜ合わせただけでは、生命は生じません。生

命とは何かを物理の言葉で理解することが、生物

物理学の究極の目標です。

2 これまでの研究:見て、測って、物理する

私たちは、生命現象が営まれている現場を自分

の目で見て考えるという姿勢を大事にし、世界最

高速の超解像顕微鏡の開発など、独自のイメージ

ング技術の開発と、それを用いた生命現象の観察・

計測、物理的理解を行ってきました。

たとえば、私たちはこれまで、タンパク質分子

の1個1個が機能する様子を直接観察し、直接操

作する技術を開発し、計測結果を利用して、理論

モデルを構築・検証することで、タンパク質分子

モーターがブラウン運動を整流するブラウニアンラ

チェット機構で動くことを世界で初めて示し、「マ

クスウェルの悪魔」の一種であることを明らかに

してきました。

また、同様のアプローチを脊椎動物の胎児 (初期

胚)に適用し、流体力学に基づく解析・考察によっ

て、左右対称な卵細胞からどのようにして左右非

対称な身体 (たとえば心臓が左にある)が生じるか

という発生学の長年の基本問題 (生物学的な対称性

の破れ)を解決し、教科書を書き換える成果を得ま

した。

左:放射光実験施設 SPring-8での実験の様子 

 右:構築中の顕微鏡光学系

 

3 最近の研究:「生きている」の物理的意味

これまでタンパク質分子 (酵素)の研究は、試験

管の中 (in vitroといいます)で行われてきました。

しかし、細胞の中は、様々なタンパク質分子が満

員電車のような密度で詰め込まれた混雑状態にあ

ります。そのような混雑環境で、タンパク質分子

は in vitroと同様に振る舞うのでしょうか? 

そこで、細胞の中でタンパク質分子 1個 1個が

時に拡散し、時に細胞内の構造物と結合して機能

する様子をリアルタイムに直接見ることが出来る

顕微鏡を構築し、計測を行っています。すると、生

きた細胞の中でのタンパク質分子の反応速度と in

vitroでの反応速度が異なること、死んだ細胞の中

では、環境の混雑具合は変わらないのに、反応速

度が in vitroに近づくことなどが分かってきまし

た。「生きている」細胞は特別なのです!

その結果はどのような物理学で理解されるべき

でしょうか? 従来は、熱力学・統計力学を用いて、

酵素の濃度、基質の濃度、反応による自由エネル

ギー変化などが議論されてきました。では、酵素

分子 1個が基質分子 1個と反応するとき、「濃度」

や「自由エネルギー」などの熱力学量は何を意味

するのでしょう? このような小数分子系に対す

る非平衡物理学の理論が 2000年頃から発展してき

ました。この新しい理論的枠組みを用いて、生き

ている細胞と死んだ細胞の違いが説明できるので

はないかと期待して研究を進めています。

4 今後の展開:未知のフロンティア

このように、独自の発想で開発した顕微鏡を用

いて細胞を観察すると、そこにはまだ誰も見たこ

とがない世界が拡がっていて、細胞の中は従来の

教科書に描かれているものとは全く異なる未知の

世界であることを実感させられます。私たちと共

に、自分の手で実験し、自分の目で見て、自分の

頭で考えることで、未知の世界を探求し、前人未

踏のフロンティアを切り拓いてみませんか?

研究室ホームページ:

http://www.okada-lab.phys.s.u-tokyo.ac.jp/

岡本研究室

岡本 徹 准教授 枡富 龍一 助教

1. 二次元の世界の電子

「二次元の世界」といってもアニメやゲームの

話ではありません。分子、原子、電子、原子核な

どのミクロな粒子の性質がわかっていても、その

集合状態の諸性質を解明することは容易ではあり

ません。「物性物理学」が対象とするのは、こうし

たマクロな物質中に見られる諸現象であり、磁性

や超伝導などがなじみ深いかと思います。私たち

の研究室では、半導体の界面や表面を使って電子

を「二次元の世界」に閉じ込めて、その集団的振

る舞いを研究しています。

2. 半導体表面の二次元電子系と量子ホール効果

これまで、二つのノーベル物理学賞が二次元電

子における発見に対して与えられていますが、い

ずれも半導体デバイスの中に閉じ込められた界面

二次元電子系の電気抵抗に関するものでした。こ

れに対して最近私たちの研究室では、極低温・超

高真空下でへき開して得られた表面に微量の金属

原子を乗せることによって作られる二次元電子系

の研究を行っています。

図1 (a)に表面二次元系で観測された量子ホール

効果の実験例を示します。図1 (b)のように、InSb

へき開表面に微量の鉄原子を蒸着することによっ

て二次元電子を誘起しました。磁場中におかれた

物質に電流を流すと、電流方向だけではなく、電

流および磁場に直交する方向に電圧(ホール電圧)

が生じます。この現象はホール効果として知られ

ていますが、ホール電圧と電流の比、すなわちホー

ル抵抗が完全に量子化された値(物理定数 h/e2を

整数または分数で割った値)を示すのが量子ホー

ル効果です。これは、電子の運動エネルギーが強

磁場中ではランダウ準位と呼ばれるとびとびの値

に量子化されることから生じる、「二次元の世界」

だけで見られる現象です。

界面の二次元系とは対照的に、表面ではマイク

ロプローブで直接 “触れる”楽しみがあります。走

査トンネル顕微鏡を用いると、構造観察だけでは

なく、トンネル電流の電圧依存性から電子状態密

度スペクトルを調べることができます。図1 (c)の

B = 10 Tのグラフは図1 (a)(b)と同じ試料でラ

ンダウ準位を観測した結果です。

左記の研究のほかに、半導体界面の二次元電子

系における電子間相互作用・磁性・量子相転移の研

究や、原子一個分程度の厚さの金属薄膜の超伝導・

磁性の研究なども行っています。詳細については

http://dolphin.phys.s.u-tokyo.ac.jpをご覧下さい。

0

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

0 2 4 6 8

0.2

8

7

6

5

4

3

2

0

1

i = 5

i = 4

(b)

(a)

dI/

dV

(a.

u.)

B = 10 T

B = 0 T

LL0

LL1

E1 E2EF

V (mV)-50-100 500

∆VDOS ∆VDOS

(c)

B (T)

RH

(kΩ

)

ρxx (

)

RH

ρxx

T = 4.2 K

ie2

h

5 nm

図1:(a) 二次元電子系における量子ホール効果。

(b) STM像。ランダムな黒丸が Fe原子。(c) 同一

試料で測定されたランダウ準位。

36 37

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小形研究室

小形 正男 教授、松浦 弘泰 助教

小形研究室では、物性物理学に関する理論的研

究を行っている。

マクロ又はメゾ的なスケールで原子や電子が集

まった場合には、単なるシュレディンガー方程式で

は記述できないような振る舞いをする。たとえば

相転移現象や巨視的な量子コヒーレンス状態の実

現などである。物性物理学、または凝縮系物理学

と呼ばれる分野は、この複雑かつ多様な物理現象

を追求するというところに興味の根源がある。物

質という日常的なものの中に、いろいろな可能性

が含まれており、実験によって検証できる奇妙な

(予想外な)現象をミクロに理解することを通して、

新しい法則や概念を見出すことを目標にしている。

我々の研究室で扱っている対象は、金属・絶縁

体・超伝導・超流動などで、とくに量子効果が目で

見える効果として現れるものに興味を持って研究

している。通常の金属中の電子に関しても、フェル

ミ縮退という極めて量子力学的な状態にあり、さ

らにクーロン相互作用によって 1つの電子の運動

が他の電子に強く相関を持ちつつ運動するという

『強相関』の状態になっている。またスピンによっ

て生じる強磁性 (磁石) なども古典力学の範囲内で

は理論的に理解できないものであり、純粋に量子

力学的効果によるものであることが簡単に示され

る。これらの問題とくに強い相関を持つ電子系な

どを理論的にどのように取り扱ったらよいかとい

う問題は、長年にわたる理論物理学の未解決の問

題になっている。従って、強相関の問題の解明の

ための新しい手法を開発し、それのもたらす特異

な物性を明らかにすることができれば、本質的に

新しい物理の一分野を開拓することに繋がると考

えている。

研究室としては、毎週のセミナーがある以外に

は、各自がほとんど独立して研究を行っている。自

分でこれは面白そうだという問題があれば、それ

を取り上げて日夜徹底的に考える。ただし、よい

問題を探し出すのが最も重要であり、その人のセ

ンスが問われるところである。研究に用いる手法

は問題に応じてさまざまで、問題に適した新しい

手法を開発して用いることになる。具体的には、場

の理論的手法、厳密解、変分法、計算機シミュレー

ションなどの方法を組み合わせて用いている。

最近の研究テーマ

(1) 高温超伝導

高温超伝導という通常の金属と全く異なった特

異な性質を、強相関または強いスピンゆらぎ・電荷

ゆらぎに起因するものと考えて研究している。と

くにモット絶縁体という、強相関特有の状態を深

く考察することによって、新たな理論物理の地平

を目指している。

(2) 新しいトポロジカル状態

スピン軌道相互作用が効いているような物質で

新しい量子状態が生まれており、これについても

微視的な観点からの理論を構築している。たとえ

ば、ディラックノーダルラインなどの新しいトポロ

ジカル物質の開拓、軌道帯磁率の一般論、カイラ

ルソリトン格子のダイナミクスの問題などがある。

(3) 固体中のディラック電子

グラフェンや、ある種の有機導体、Bi(ビスマ

ス)において、電子の運動が相対論的量子力学に

おけるディラック方程式と全く同じ形式で記述さ

れる。こうした固体中のディラック電子では、これ

までにない新しい現象が現れると予想される。最

近は、ディラック電子と量子電磁気学との対応を用

い、興味ある物性を開拓すべく研究を行っている。

(4) 熱応答に関する理論

熱エネルギーは物質中において様々な形態で運

ばれる。我々の研究室では、特異な電子状態・磁

気秩序での熱伝導形態を見極め、微視的な点から

の熱応答理論の構築を行っている。また、温度差

が電圧に変換される現象(ゼーベック効果)の理

論開拓も行っている。

ホームページhttps://sites.google.com/hosi.phys.s.u-

tokyo.ac.jp/homepage

桂研究室

桂 法称 准教授 赤城 裕 助教

1 研究の概要

本研究室では、物性物理学・統計力学の基礎的

な問題に関する理論的研究を行っている。研究内

容は多岐に渡り、実験系の研究者から数学者まで、

幅広い分野の研究者との共同研究を行っている点

も特色である。

•物性理論物質の見せる多彩な相や相転移・臨界現象を、

個々のミクロな構成要素に関する情報だけから説

明することは一般には難しいが、なるべく単純な

原理・原則から出発して理解したいと考えている。

より具体的には、相互作用する多体系(電子系、ボ

ゾン系、スピン系、…)における磁性・強誘電性・

量子ホール効果・超伝導などの物性の発現するメ

カニズムの解明、新奇現象の理論的な提案を目指

したい。同時に新しい理論的手法の開発も積極的

に行いたいと考えている。

•統計力学古典・量子統計力学や場の理論における可解な

模型の解けるメカニズムに興味を持って研究を行っ

ている。多くの場合、これらの背後には何らかの

代数構造が潜んでおり、そのような数学的概念の

探究および物性や量子情報分野への応用を行いた

いと考えている。また非線形・非平衡系の統計力

学にも興味を持っている。

2 最近の研究テーマ

2-1. マグノンのトポロジカル相

ホール効果は、古典的には磁場中の荷電粒子に働

くローレンツ力によって引き起こされる効果で、電

気的に中性な粒子 (たとえば光子やフォノン)では

起こらないと考えられる。しかし、本研究室では磁

性体においてスピン間の相互作用(Dzyaloshinskii-

守谷相互作用)が、電気的に中性な素励起 (マグノ

ン)に仮想的な磁場として働き、ホール効果を引き

起こすことを世界に先駆けて理論的に提案した。こ

のマグノンのホール効果は、熱流のホール効果と

して実際に観測されている。また、最近は電子系

におけるトポロジカル絶縁体の、マグノン系にお

ける対応物を理論的に提案し、そのような系のト

ポロジカル不変量による特徴づけに成功している。

(左)カゴメ格子上の強磁性体2層が反強磁性的

に結合した系。(右) マグノンのバンド構造。赤線

は、境界に局在したエッジ状態を示す。

2-2. Fermi/Bose-Hubbard模型の研究

Hubbard模型は、古くは固体中の相互作用する

電子を記述する理想化された模型として、近年では

光学格子中の原子を記述する基礎的な模型として、

重要な役割を果たしてきた。この模型のハミルトニ

アンは単純であるが、その基底状態や熱力学的性質

を調べることは通常困難であり、一次元や特殊な状

況においてのみ厳密な結果が知られている。本研究

室では、分散のないバンドを持つ Fermi-Hubbard

模型における強磁性の時間反転対称性の破れのあ

る場合への拡張、長岡強磁性の SU(n)対称性のあ

る場合への拡張を行った。また、最近では、スピ

ン自由度を持つ Bose-Hubbard模型における基底

状態の磁性に関する研究も行っている。

2-3. その他

フラストレート伝導系とホール効果/Kitaev 物

質/乱れのあるトポロジカル絶縁体・超伝導体/ 量

子スピン系とエンタングルメント/トポロジカル欠

陥、ソリトン/一次元量子系のサイン二乗変形/格

子フェルミオン系と超対称性の破れ/量子開放系/

非エルミート量子系

3 これからの研究

マグノンなどボゾン系のトポロジカル相におけ

る、熱ホール効果などの輸送現象を (特に電子系と

の違いに着目して) 調べていきたい。また、近年注

目されている機械学習の、物性物理・統計力学へ

の応用を積極的に進めている。更に、非平衡系や

散逸系のダイナミクスについても興味を持ってお

り、特に可解模型の観点からの研究を、意欲的に

行いたいと考えている。

38 39

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樺島研究室樺島祥介教授

はじめに我々の研究室では,統計力学にもとづいて情報通信や機械学習など情報科学に現われるさまざまな問題に取り組んでいます.とはいえ,これだけでは何をやっているかイメージしにくいかもしれません.以下では,どういった観点から研究を行っているのかについてもう少し詳しく説明します.ミクロとマクロをつなぐ簡単な例として,気体について考えてみましょう.高校でも習いますが,理想気体では圧力を p,体積を V,絶対温度を T とすると平衡状態において状態方程式 pV = nRT が成り立ちます ( n,R はそれぞれ物質量,気体定数).現代人である我々は気体が分子という小さな粒子の集合体であることをほぼ疑いなく受け入れています.ところで,集合体ではなくその構成要素である気体分子に目を向けると,古典系ではそれらは F = maという運動方程式に従うはずです(量子系ではシュレディンガー方程式).同じものを見ているのに,これでは見方によって対象を支配する方程式が異なってしまうことになります.これら 2つの方程式がどうやって矛盾なく両立しているのか?こうした問題に取り組んでいるのが統計力学です.

More is different(量は質を変える)気体は気体分子の集合体と書きましたが,このような見方はほとんどすべての物事に当てはまります.物質の究極の構成要素は素粒子ですが,それらがどのように集まって我々の社会ができているかを大雑把に表現してみると

素粒子→原子→分子→細胞→生体組織→生体→社会→...

といった階層性があることがわかります.では,一番左に位置する素粒子の支配法則が解き明かされれば右側に位置するすべての物事がわかるようになるのでしょうか?ここは意見が分かれるポイントですが,おそらく不可能でしょう.なぜなら,階層が一つ上がる毎に下の階層の理論では予想もつかない現象が上の階層で生じ得ることを統計力学の考察は示しているからです.物性物理学の泰斗 P.W.

Anderson はこのことを More is different(量は質を変える)と言い表しています.

我々の研究:情報科学でも More is different

物事をその構成要素に分解して理解しようとする科学の方法は還元論とよばれます.還元論の根底には階層性の連関の中で下部の理論さえ構築できれば上部のことはわかる (はず)とする考えがあります.こうした観点からすると More is different

は否定的な結論です.でも悪いことばかりではありません.More is different は階層毎に質の異なる法則が成り立ってもよい,ということを示唆しているからです.たとえば,情報科学では組み合わせ問題が沢山現れますが,それらをそのまま解いたり分析したりすることは,しばしば,絶望的に難しい作業になります.ところが,問題のアンサンブルや問題サイズを無限に大きくした極限を考えると,記述の階層が変わることにより,そのまま解いた場合にはわからなかった問題の性質や解き方が見えてくることがあります.我々の研究室ではもっぱらこうした研究を行っています.これまでの研究から表現に冗長性(無駄)を持たせることで情報に

ノイズ耐性を与える誤り訂正符号は情報化社会を支える重要な基盤技術です.意外かもしれませんが,数式のレベルでは,一般に,誤り訂正符号は特殊な格子上で定義されたイジング模型(磁性体の数理モデル)とそっくりな形をしています.我々は,この類似性にもとづいて,低密度パリティ検査符号とよばれる高性能な誤り訂正符号の性能を物理の相転移概念をもちいて詳細に分析する方法を与えました.また,そうした相転移描像にもとづいた公開鍵暗号も提案しています.

日下 研究室日下 暁人 准教授 木内 健司 助教

宇宙の始まりと進化の謎に迫るビッグバン宇宙論によれば、宇宙は、高温高密度の原始宇宙から始まり、膨張・冷却を経て現在に至るとされる。では、そもそも高温高密度の原始宇宙はどうやって作り出されたのだろう?そして、宇宙の進化は何に支配されているのだろう?我々は、宇宙最古の光である「宇宙背景放射」の観測を通じて、これらの謎を解き明かすことを目指す。宇宙最古の光 “宇宙背景放射” 高温高密度の原始宇宙は、膨張・冷却を経て、宇宙創成からおよそ 38

万年後にようやく光が直進できるようになる。この瞬間を宇宙の晴れ上がりと呼び、このとき発生して 138億年を経て今もなお地球に降り注ぐ光 (電波)が、「宇宙背景放射」である。これを最先端の電波望遠鏡で精密測定し、原始の宇宙と宇宙進化を解き明かすことが当研究室の研究テーマである。宇宙創成から 10−32 秒後に何が起きたのか インフレーション仮説によれば、宇宙創成 10−32 秒の間に時空の加速度的膨張が起き、高温高密度の原始宇宙が作られた。この仮説の決定的証拠となるのが重力場の量子ゆらぎに起因する「原始重力波」であり、これが宇宙背景放射に特殊なパターンを刻印する。我々が探索するこのパターンが検出されれば、インフレーション宇宙論を証明するだけでなく、重力の量子化の確認という、現代物理学における一大ブレークスルーとなる。“暗黒宇宙”の解明に向けて 我々は、宇宙背景放射の精密測定を通して未知の粒子の探索と宇宙進化メカニズムの解明も目指している。地球に届く過程で、宇宙背景放射は「暗黒物質」による重力レンズ効果の影響を受ける。この効果を測定することで、宇宙進化を探り、それに影響を及ぼす「ニュートリノ」の質量を測定することが出来る。また、すばる望遠鏡などの観測と組み合わせて、現在の宇宙膨張を支配する「暗黒エネルギー」の正体を探る。さらに、「暗黒放射」と呼ばれるニュートリノのように軽く相互作用の弱い未知の粒子が存在する可能性があり、それが宇宙初期の膨張過程に及ぼす微弱な影響を測定することで、その探索を行う。次世代実験当研究室では、国際共同実験である Simons Array、さらに次世代の Simons Observatoryへ参画し、本

図 1:宇宙進化の模式図。横軸が時間で、左側が宇宙初期、右が現在である。

分野における先端研究を担う。Simons Array は2019年 1月に観測を開始し、最終的には 22,000の超伝導検出器を擁する3台の望遠鏡群である (図2)。Simons Observatoryはそれを更に拡張し、2021年の観測開始を目指す。最先端技術を用いた観測研究 多くの実験物理学の分野でそうであるように、我々の分野においても、先端技術が新しい物理を牽引してきた。当研究室では、低温・超伝導技術を駆使して、次世代実験に向けた高感度検出器の研究開発を進める。また、宇宙背景放射のデータ解析においては高性能計算(High-Performance Computation)システムの使用が不可欠であり、そのための並列コンピューティング技法を用いたソフトウェア開発を行う。

図 2:チリアタカマ高地に建設中の Simons Array

望遠鏡群 (手前)。

40 41

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五神-湯本研究室湯本潤司教授 森田悠介助教

1 光物理学の展開光とは何かという問いは、永く人々を捉えてきた。19世紀後半に電磁気学が、20世紀には現代物理学の柱となる量子論、相対論が完成し、光の物理学が一旦完成した。しかし、1960年のレーザーの発明によりもたらされた、強くかつコヒーレントな光が、光の物理学の様相を一変させた。可視光は、テレビや FM放送で使われる超短波帯の電波に比べ周波数は 7 桁も高く、その位相や振幅の自在な制御は不可能であった。しかし、半導体エレクトロニクス技術とレーザー技術の融合により、これが完全に制御可能となった。この革新により、アト秒(10−18 秒)という超短パルス光を発生する技術が確立しつつある。これは、従来は”瞬間”現象として捉えられてきた電子の量子準位間の”遷移”の様子を追跡可能とする。また、16桁以上の周波数純度をもつレーザー光も実現しつつある。これは、“一秒”を定義する高精度の時間基準を与え、物理基本定数の恒常性や一般相対論の効果等、物理学の土台を精密に検証可能とする。当研究室では、このようなレーザーの革新によって始まった新しい物理学の研究に取り組んでいる。例えばレーザー光をもとに発生させた短波長紫外光源と、世界でもトップクラスのエネルギー分解能を有する飛行時間型角度分解光電子分光装置を組み合わせて、物質の非占有バンド構造測定などを進めている。また高いパルスエネルギーを持つ光源を用いた高次高調波発生技術を利用し、応用上も重要な極端紫外光領域における物質の高精度屈折率測定技術の開発などを進めている。これらは、いずれも広い分野の新しい技術の扉を開くものと期待されている。またレーザーの飛躍的発展は、金属、ガラス等、材料の高速な切断や融着を可能にし、産業として重要な技術に成長している。”切断”や”融着”は数百年以上の歴史を持つが、物理現象として捉えると、原子結合の切断、同種あるいは異種の原子同士の結合が基本となる。よりミクロな視点では”非線形”、 ”非平衡” 、”開放系”という、現代物理学の最先端の課題に到達する。当研究室では物質科学、レーザー物理、微細加工技術や分析技術を駆使し、これらの現象を光と物質の相互作用として明

らかにする。さらに産業界が直面する技術課題に対して、学理の構築を通じた解決を目指している。2 光で創る巨視的量子現象レーザーから出てくる光子集団のエントロピー

が非常に小さいことを巧みに利用すると、物質を瞬時に極低温に冷却できる。この手法を用いて、真空中に捕獲した原子気体、半導体中に光励起した電子系を対象として巨視的量子状態を創る実験を進めている。量子統計性と物質に内在する相互作用との競合や、ボース・アインシュタイン凝縮等の量子力学的な相転移に着目し、量子論の本質に迫ることを目指している。現在 100mK代の極低温下での半導体のレーザー照射という世界でもユニークな実験を行い半導体中の光励起した電子系における巨視的量子凝縮相の探求を進めている。3 時空間の対称性制御による新しい量子光学最新の加工技術を駆使すると、光・電磁波の波

長より小さいスケールの人工構造を作ることができる。このようなナノ構造を適切に設計することにより、自然界の物質にない光学特性を示す ”人工材料 ”を創り出せる。当研究室では、最先端の微細加工技術、レーザー加工技術、3Dプリンティング、3次元電磁波解析といったツールを駆使し、局所及び大域的な対称性制御の物理という観点からフォトンを自在に操るための新原理探索とその実証を進めている。現在、テラヘルツから真空紫外までの広い波長領域を対象に、人工キラル構造や、三回回転対称構造によるフォトン操作の研究を進めており、自然界における回転対称性の意味を追求する。参考1. 五神真「原子を光で冷やす-レーザー光が拓く極低温の世界」 イリューム, Vol.11 (2) 4-21(1999)

2. 五神真「光で創る固体の巨視的量子現象」 数理科学, 40-49 (2004)

3. 五神真「加速する光科学の先端研究」 科学 (岩波書店), 76 (10) 1004-1010 (2006)

4. 吉岡孝高,五神真 「励起子」他 理学部ニュース 2011年 9月号、2012年 5月号5. http://www.gono.t.u-tokyo.ac.jp/

6. http://www.ipst.s.u-tokyo.ac.jp/iccpt/index.html

小林研究室

小林 研介 教授 佐々木 健人 助教

1 研究の背景

 物理学の世界では、20世紀前半に量子力学とい

う新しい学問が打ち立てられました。量子力学に

よって、それ以前にはよく分からなかった原子・分

子や光の性質など、私たちの身の回りにある自然

の成り立ちを精密に理解できるようになりました。

例えば、ガラスがなぜ透明なのか、金属がなぜ光

を反射するのか、なぜ電気を流すのか、さらには、

鉄がどうして磁石になるのかなどを理解できるよ

うになったのです。さらに、近年、ナノテクノロ

ジーの発展によって「ナノ物理学」と呼ばれる分

野が生まれました。この分野は、「量子力学に基づ

いて自然現象を理解する」だけでなく、「量子力学

を利用して自然現象を制御する」ことも目標とし

ています。この分野に挑戦することは、量子力学

のもたらす新しい可能性を探求することと言える

でしょう。

ナノ物理学では、「メゾスコピック系」と呼ばれ

る微小な固体素子(電子回路部品)を用いた研究

が活発に行われています。その多くは、半導体や

金属薄膜を微細加工して作られる極小の電子回路

で、典型的な大きさは 1ミクロン(髪の毛の太さ

の約 100分の 1)以下です。しかし、それらはいく

つかの外部パラメータによって制御できるように

設計されている点で、「小さな実験室」とみなすこ

とができます。代表例を図 (a)(b)に示します。こ

のような研究は、量子コンピュータ・スピントロ

ニクス・トポロジカル物性などの幅広い観点から、

現在、世界的に盛んに行われています。

2 最近の研究テーマ

 私たちは、メゾスコピック系の性質を調べる手

法として、「電流ゆらぎ」に注目してきました。電

流ゆらぎは、通常の電流値では得られない、非平

典型的なメゾスコピック素子。(a)電子波干渉計。

(b) カーボンナノチューブ人工原子。

衡状態に対する情報を与えてくれます。私たちは、

数年にわたる技術開発によって、世界最高レベル

の感度を持つ測定系を構築し、様々なメゾスコピッ

ク系に適用してきました。

代表的な成果として、量子系における「ゆらぎの

定理」に関する実験があります。この定理は 1990

年代に発見されたもので、非平衡現象を記述する

ための新しい指導原理です。私たちは、電子の波

動性が顕著に現れる電子波干渉計 [図 (a)]における

電流ゆらぎ測定を通じて、この定理が量子系にお

いても成立することを初めて実証しました。

また、私たちは、電子を一個ずつ制御可能な人

工原子 [図 (b)]において、ただ一つの電子からなる

理想的な近藤効果を実現しました。電流ゆらぎ測

定を行い、理論との精密な比較によって、強相関

極限の量子液体が実現されていることを実証しま

した。この成果は、非平衡量子多体系において行

われたこれまでで最も精密な実験と言えます。

3 今後の展開

 私たちは「ゆらぎ」に注目することで、新現象

を見出すとともに、実験と理論を精密に比較でき

る精密物性物理学を開拓してきました。現在、新

しい取り組みとして、ダイヤモンド中の格子欠陥

の一つである NVセンタを用いてメゾスコピック

系の性質を調べる研究を推進しています。NVセン

タは、量子力学の原理に基づいて磁場を超高感度

に測定できる量子センサとなります。NVセンタを

用いてメゾスコピック系の磁気的な性質を探求し

ていくことは、世界的にも始まったばかりの試み

であり、大きな発展が期待されています。

4 もっと詳しく知りたい方へ

 教科書をほんの一歩踏み出すと、世の中は驚き

と発見に満ちています。物理学の基本原理に興味

のある方・現実の物質を相手に超精密な実験をした

い方・新しい測定技術を開発したい方・「世界で初め

て」に挑戦したい方、一緒に研究しませんか。意欲

に満ちた皆さんの積極的な挑戦に期待します。と

もに考え、議論し、実験を工夫することによって、

一緒に新しい物理学を切り拓いていきましょう。

研究室の見学はいつでも歓迎です。お気軽にご

連絡ください([email protected])。

42 43

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酒井広文研究室

酒井 広文 教授  峰本 紳一郎 助教

1. はじめに

酒井広文 研究室では、最先端レーザー技術を駆

使した原子分子物理学に関する実験を中心とした

研究を行っている。当研究室では、安易に流行を

追うような研究態度を極度に嫌い、自分達が流行

の発信地となるようなオリジナリティーの高い研

究を行うことを目標としている。

2. 研究テーマ

相互に関連する以下のテーマを中心に研究を進

めている。

(1) 回転量子状態を選別した分子の配向制御

超短パルス高強度レーザー光と分子との相互作

用で発現する様々な興味深い物理現象において、分

子の配向依存性を明らかにするためには、配向度

の高い分子試料を生成する技術の開発が不可欠で

ある。分子の頭と尻尾を区別しない分子配列制御

と異なり、分子の頭と尻尾を区別する分子配向制

御における困難は、初期回転量子状態によって分

子配向の向きが異なる点にある。この困難を克服

するために、主として対称コマ分子の量子状態選

択に適した六極集束器やより一般的な非対称コマ

分子の量子状態を選択できる分子偏向器を用いて

特定の回転量子状態を選別することにより、高い

配向度を実現しつつ、分子配向制御の更なる高度

化を進めている。

(2) 全光学的分子配向制御技術の高度化

当研究室は、レーザー光を用いてミクロの世界

の分子を操る研究で世界の先頭を走っている。直

線偏光したレーザー電場と静電場を併用して有極

性分子の頭と尻尾も区別した配向制御の実現に成

功したのを始めとし、レーザー光の偏光を楕円と

し、非対称コマ分子の 3次元配向制御にも成功し

た。最近は、レーザー光のピーク強度付近で急峻

に遮断されるレーザーパルスを整形し、レーザー

電場の存在しない状況下での分子配向制御に成功

したり、静電場を用いずに非共鳴 2波長レーザー

電場のみを用いる全光学的分子配向制御にも成功

した。今後は上述した量子状態選別技術との融合

を図り、全光学的手法で高い配向度をもつ分子試

料を用意して、次に述べる分子内電子の立体ダイ

ナミクス研究に適用する。

(3) 分子内電子の立体ダイナミクスの研究

超短パルス高強度レーザー光と分子の相互作用

により観測される高次高調波発生、非段階的 2重

イオン化、超閾イオン化などは、トンネルイオン

化した電子が光の 1周期以内で再衝突することに

よって起こる超高速現象である。また最近は、搬

送波包絡位相の制御された数サイクルパルスも利

用可能である。本研究室では、(2)で述べた他のグ

ループでは容易に用いることのできない配向した

分子試料を用いることにより、光の 1周期以内で発

現する上記の諸現象に関する「分子内電子の立体

ダイナミクス」を明らかにする研究を進めている。

(4)電子・イオン多重同時計測運動量画像分光装置

を用いた分子中の超高速現象の研究

分子から生成される光電子とイオンの 3次元運動

量を多重同時計測できる装置を最近開発した。(3)

で述べた現象を始めとする様々な現象の詳細なメ

カニズムの解明を目指す。

3. 研究活動

オリジナリティーの高い実験研究を行うために

はお金を出しても手に入らない独自の実験装置を

作る必要があり、当研究室でも実験装置の製作に

は力を入れている。また、研究室では実験データ

の解釈などに関するディスカッションが頻繁に行

われている。一方、実験結果と理論との比較を行

うため、シミュレーションコードの開発にも力を

入れている。

4. メッセージ

当研究室の研究テーマには化学との境界領域に

位置するものもあるが、基本は原子分子と電磁場

との相互作用に関する量子力学であり、当該分野

はまさに物理学を学んだ者の活躍の場である。知

的好奇心に溢れた若い頭脳を歓迎する。

当研究室に関する情報は、ホームページ (http://

www.amo-phys-s-u-tokyo.jp)や年次研究報告で得

られる。また、具体的な質問や見学の申し込みな

どは、酒井広文まで (TEL: 03-5841-8394, E-mail:

[email protected])。

学部学生向けの解説

(1) 酒井広文、Journal of the Vacuum Society of

Japan(真空)Vol. 53, No. 11, 668-674 (2010).

(2) 酒井広文、日本物理学会誌、Vol. 61、No. 4、

263-267(2006).

1

10

“ ”

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2

RI RIBF

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44 45

Page 25: 納品用PDF未アウトライン 駒場進学案内...物理がわかれば、世界は違って見えるかもしれない 物理学専攻長、物理学科長 常行 真司 物理学は全ての自然科学の基盤であると同時に、自然科学の最先端にあってダイナミッ

島野研究室島野 亮 教授 吉川尚孝 助教

固体中では多数の電子が相互作用することによって、量子力学効果が巨視的なスケールで現れることがある。超伝導はその代表例で、一個の電子の運動を考えている限りは予想もつかない面白い現象が発現する。当研究室では、レーザー光を用いた最先端光技術を駆使して、光で物質中に巨視的な量子状態を創り出す、或いは自在に制御することを目標として、様々な量子物質の研究を進めている。最近の主なトピックスを以下に挙げる。1)超伝導のヒッグスモードの観測 目に見える超伝導現象の例として、磁気浮上の実験がある。これは磁束が超伝導体中に侵入できず、欠陥のまわりに固定されてしまうことによる。電磁波が超伝導体に侵入することができないことに起因しているが、これは見方を変えると、本来質量ゼロであった光子が超伝導体中では質量を持つようになることに対応する。この事情は実は、相互作用を媒介するゲージボソンに質量を与える素粒子のヒッグス機構と似ている。ヒッグス機構は2012年にヒッグス粒子の発見によって実証された。となると、超伝導でもヒッグス粒子に相当する粒子(振動)があってしかるべきである。この振動は超伝導という秩序のさざ波のようなものであり、ヒッグスモードと呼ばれる。模式的には図に示すワインボトルの底の様なポテンシャル上での超伝導の秩序変数の動径方向の振動に相当する。その存在は約 50年前に理論的に予言されていたが、2013年我々は最先端のレーザー技術を用いてその明確な観測に世界で初めて成功した。現在、このヒッグスモードの観測を通して、銅酸化物高温超伝導や鉄系超伝導体などの非従来型超伝導体の性質を調べる研究を展開している。2)光による超伝導体の制御 物質に光を照射すると通常は温度が上昇し、低温で発現する超伝導のような量子現象は消失する。しかし、巧みに制御されたレーザー光を用いると、温度上昇を避けて量子相を操作することが可能である。例えば、上述の超伝導体のヒッグスモードを利用すると超伝導体の秩序を量子操作することができる。光照射により超伝導を増強することや、転移温度以上で常伝導体を超伝導体に変化させられる可能性も生まれてきた。様々な光の技術を駆

使して、光による超伝導体の制御、光誘起超伝導の研究を進めている。3)強相関電子系の光応答と相制御 高温超伝導体の舞台は、強い電子間相互作用が物性を支配する系(強相関電子系)である。強相関電子系の特徴は、電荷、スピン、格子間の相互作用が拮抗した結果として状態が決まっていることである。このためそのバランスを僅かに変えただけで電気抵抗や磁性といった物性が劇的に変化することがある。我々は光を用いてこの強相関電子系の性質を調べている。さらに、周波数や位相を制御したレーザー光を用いて、電荷、スピン、格子を選択的に励起する (揺さぶる)ことで、拮抗する電荷、スピン、格子間の相互作用のバランスを崩したり、或いは物質系を極端な非平衡状態に光により到達させ、背後に隠れた対称性を解き明かす研究、非平衡系に現れる新しい物理現象や新物質相の探求、それらがもたらす新規光学現象の探求を進めている。 上記以外にも光と量子物性に関する様々な研究を進めている。詳しくは研究室ホームページ:

http://thz.phys.s.u-tokyo.ac.jp/index.htmをご参照ください。

86420-2

1

0

nJ/cm2

8.5 7.2 6.4

Pump-Probe Delay Time (ps)Ch

an

ge

of

Pro

be

Ele

ctr

ic F

ield

(a

rb.

un

its)

(上)超伝導体の自由エネルギーの模式図。動径方向の振動がヒッグスモード。(下)超伝導体NbTiN

のヒッグスモードの実時間観測。縦軸は超伝導秩序変数に相当する量。)

Tilman Hartwig

1:

1

1.1

1916

1929

1946

(1965 )

7

2 5

5

2013

1

21

1.2

130

46 47

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1.3

2

1995

3000

2009 3

2

” ”

2

2014 3 8.2

Hyper Suprime-Cam

5

Prime Focus Spectrograph

Hyper Suprime-Cam

2:

複数トランジット惑星系KOI-94

-3.0h

-1.5h +1.5h +3.0h

-1.5h +1.5h +3.0h

-3.0h

KOI-94.01

KOI-94.03

(2010年115)

惑星同の

自転軸はこの範囲に存在(2012年810 すばるでの観測による)

3:

KOI-94

高木・北川研究室

高木英典教授 北川健太郎講師 平岡奈緒香助教

固体中の電子多体系が示す新奇な量子電子相の

探索と相形成のメカニズム解明の研究を推進して

いる。遷移金属化合物中の伝導や磁性を支配する

のは遷移金属元素の d, f 軌道を占める電子である。

d, f 軌道は空間的拡がりが小さく、電子はクーロ

ン相互作用により強く相関する。相関電子では電

荷、スピン、軌道 (縮退する軌道のどれを選ぶか)

の自由度がしばしば顔を出し、電荷液晶状態、ス

ピン液体状態といった多彩な状態が出現する。ま

だ見ぬ新しい状態を創りだすために単結晶試料合

成と薄膜形成を行い、新量子状態を明らかにする

ために独自に装置開発した超高圧・強磁場・極低温

複合極限環境を駆使してアプローチしていく。以

下に具体的なプロジェクトの例を挙げる。

y-link z-linkx-link

H ¼ Jx

X

x-

rxjr

xk Jy

X

y-

ryjr

y

k J z

X

z-

rzjr

zk;

H3LiIr2O6

Z2フラックス

x

y

z1/2スピン

遍歴マヨラナ フェルミオン

局在マヨラナフェルミオン

wp ¼

信号強度 (任意単位)

0.40.20.0-0.2 NMRシフト (%)

70 K

30 K

10 K

1.2 K

7Li-NMR

キタエフ蜂の巣格子模型とイリジウム酸化物スピ

ン液体

(1)新しい量子スピン液体とキタエフ系物理

 多体効果としての量子スピン物理においてのマ

イルストーンは、絶対零度まで磁性スピンが量子

的に揺らいだ状態、スピン液体の実現である。1

0年前にキタエフによって二次元の蜂の巣型格子

でスピン液体の厳密解が理論的に示されてからこ

のキタエフ蜂の巣格子模型量子スピン液体の実現

が盛んに模索されてきた。量子スピン液体は一次

元では確立されているが、二次元以上ではこれま

での実験報告例である三角格子物質等では格子模

型に厳密解が存在せず、近似解を絞り込むために

必要な特徴的な素励起(準粒子)の研究さえ困難

であった。当研究室では、キタエフ模型の初の実証

例を目指して2次元蜂の巣格子イリジウム酸化物

H3LiIr2O6 に着目し、磁化率、比熱、核磁気共鳴

測定において少なくとも 50 mKまで液体であり続

ける量子液体物質であることを明らかにした。こ

のスピン液体の発見は東京大学よりプレスリリー

ス(18年2月)されている。

 キタエフ蜂の巣格子模型では、非従来型の異

方的相互作用を導入する必要があるが、 スピンー

軌道相互作用が大きい Ir 酸化物、4f電子系などに

対する実現性が提唱されてきており、当研究室では

それらの蜂の巣格子物質開発に注力してきた。こ

の模型ではスピンハミルトニアンを2種のマヨラ

ナフェルミ粒子として表現することにより一体問

題に帰着した厳密解が得られる(図1)。さらに、

マヨラナ粒子を操作することができればトポロジ

カル量子コンピューティングも可能とされる。た

だし実際には、そのような研究に適した良いキタ

エフ物質はみつかっていない。当研究室では、次

の研究段階としてこの新種のマヨラナ素励起を実

現の正体をつきとめるべく、より純良な結晶を用

いた量子液体研究を推進している。局所的なマヨ

ラナ粒子の挙動は理論的に予測可能であり、原理

的には局所磁化率を核磁気共鳴法によりイメージ

ング可能である。

この目標を実現するために、当研究室が開発し

てきた 初の超高圧域 [4万気圧以上]NMR測定技

術と極小磁化測定技術を駆使してキタエフ系の研

究を推進していく。

(2)スピン軌道相互作用誘起の新奇電子相の開拓

 遷移金属酸化物における電子相探索の舞台は、こ

れまで最も電子相関の強い 3d遷移元素からなる複

合酸化物であった。ところが最近、相関効果の弱

い 5d イリジウム酸化物でもモット絶縁体状態に

なる例が次々と見つかり、大きな謎が投げかけら

れた。我々は、層状 5dイリジウム酸化物 Sr2IrO4

について、Irの強いスピン軌道相互作用により最

外殻の 5d電子が軌道自由度をほぼ完全に回復した

状態(Jeff = 1/2状態)にあることを明らかとし、

スピン軌道相互作用誘起のモット電子固体状態の

出現を提唱した。新奇な電子固体におけるスピン、

電荷、軌道の素励起を探るべく非弾性共鳴 X線散

乱の実験を進めている。

48 49

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1

30

10 ITER

2

TST-2

TST-2 11

16

R a A = R/a

1

TST-2

JT-60U JT-60SA

LHD

JT-60U

NSTX-U

MAST-U

3

TST-2

竹内研究室

竹内 一将 准教授 西口 大貴 助教

1 熱力学が通用しない世界の物理法則を探る

私たちが目にできる大きさの物質や現象のうち、

基礎原理となる物理法則が理解できているものは

どれくらいあるでしょう。熱力学や、それに裏打ち

された統計力学は、熱平衡状態、つまり一定一様

な環境下で行きつく素朴な状態については、深く

強力な物理法則の存在を教えてくれました。一方

で、ふと周りを見回すと、自然現象には熱平衡状

態にないものが無数にあります。水や空気は、地

球規模で巨大な対流を起こしています。空や大地

は、様々な模様で彩られています。そして生物。私

たちの体内では、生体分子が様々な連携プレーで

細胞機能を支えており、細胞は協同して組織を作

り、それが組み合わさって生命個体ができていま

す。そうした個体が集って集団となり、様々な種

が絡み合う生態系をなしています。これらはすべ

て、非平衡な状況で相互作用する自由度が数多く

集まった結果、マクロスケールで非自明な性質が

発現している典型例と言えるでしょう。これだけ

魅力的な現象が散見されるにも拘らず、非平衡現

象を扱う物理法則は発展途上にあり、その構築は

現代科学に課された大きな未解決問題と言えます。

2 竹内研究室のテーマ

竹内研究室では、非平衡現象が織りなす統計物

理法則の理解を目指して、液晶、粉体、コロイド

などのソフトマター、バクテリアなどの生命材料

を活用して、実験研究を展開しています。個別の

現象の理解はもとより、現象に依らない共通の物

理法則を抽出すること、そのような俯瞰的な視点

から物事を捉えることを目指し、研究室単位では

比較的多彩な問題を扱っているのが特徴です。以

下、現在取り組んでいる主なテーマを紹介します。

2.1 液晶が紡ぐ非平衡法則:マクロとミクロ

ある種の液晶は、電圧をかけると対流を起こし、

様々な対流パターンが自己組織的に出現したり、乱

流を示したりします。我々は、この乱流の成長過程

において、「KPZクラス」と呼ばれる非平衡普遍

法則の実験証拠を発見しました。我々の実験系は、

KPZの様々な予言を検証できる現状唯一の系であ

り、当研究室はこのようなマクロ普遍法則の実験

研究で主導的役割を果たしています。最近は、マ

クロ普遍法則を生み出すミクロな素過程にも関心

を向け、液晶のトポロジカルな配向乱れを可視化

して動力学を捉えることに成功しました(図 1)。

2.2 微生物集団の統計法則を探る

普通の物質が多くの分子からできているように、

生き物のように「自ら動く粒子」「増殖する粒子」

の集団を、一種の物質と考えることはできるでしょ

うか。実は最近、こうした研究が世界中で展開さ

れており、「アクティブマター」という分野が生ま

れました。我々は、微小流体実験技術などを使い、

制御された条件下でバクテリアなどの微生物集団

を観察して、集団に生まれる秩序状態や、非平衡

ゆらぎの統計法則を探求しています。高密度のバ

クテリア懸濁液では、通常の流体では起こらない

対流パターン(図 2)や転移現象を見出しました。

細胞サイズの統計法則を調べる研究もしています。

2.3 他にもいろいろ

研究室では他にも、大自由度のカオス現象を扱

う解析手法の開発や、粉体系の粒子運動の可逆性

に関する実験、自ら動くコロイド粒子の実験など、

多くのテーマが走っています。これからも、研究

室メンバーの興味に応じて、出来るかもしれない

面白そうな新テーマに積極的に挑戦していきます。

3 もっと詳しく知りたい方へ

百聞は一見に如かず。ぜひ見学に来てください。

竹内の連絡先はこちら:[email protected]

研究室ウェブサイト:http://labjp.kaztake.org

(より詳しい研究紹介があります)

Takeuchi Lab

100m

Nishiguchi et al. Nature Comm 2018

図 1(左):液晶の配向乱れを司る「トポロジカル欠陥」の可視化。図 2(右):バクテリア懸濁液における自発的な渦秩序形成。柱を立てることで、時計回りの渦と反時計周りの渦が交互に現れる。

50 51

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常行研究室

常行真司教授 明石遼介助教

1 研究の背景

結晶の色や形,電気特性,磁気特性といった物質

の性質 (物性)は,たくさんの電子や原子が集まっ

て初めて生まれる性質です.このような物性の起

源を研究する物性物理学分野において,計算機シ

ミュレーションは実験,理論とならぶ第 3の研究

手法として欠くことのできない重要な手法となっ

ています.

中でも「第一原理電子状態計算」と総称される

手法は,実験データに合致した答えが得られるよ

うに理論モデルのパラメータを調整するのではな

く,物質を構成する原子の原子番号や質量数など

の基本情報から,量子力学の基礎方程式を用いて

物質の構造物性や電子物性を非経験的に計算でき

る,いわば予言力のある研究手法です.そのため

実験や観測が難しい原子レベルでのダイナミクス,

固体中の欠陥や微量不純物が生み出す物性,実験

室での実現が困難な超高圧下の結晶構造,自然界

には存在しない新しい物質や材料,次世代半導体

素子やナノサイエンスの基礎研究など,近年その

応用範囲は大きな広がりを見せています.

2 最近の研究テーマ

現状の第一原理電子状態計算手法には,基礎と

なる電子状態理論や実際の計算量の問題で,様々

な適用限界があることが知られています.そこで

当研究室では,これまで取り扱うことのできなかっ

た物質群や物性のシミュレーションが可能な新し

い基礎理論の構築と,実際のシミュレーションに

使えるプログラム開発を行いながら,物性物理学

の理論研究を行っています.とくに高温超電導体

のような電子相関の強い系を正しく取り扱うため

の相関波動関数を用いた電子状態計算手法,経験

パラメータを用いずに超伝導転移温度を精密に予

測する手法,AI・データ科学と第一原理計算を組

み合わせて複雑な結晶構造を理論的に予測する手

法は,広い応用範囲の期待できる新しい手法とし

て,開発に力を入れています.

最近3年間の具体的な研究テーマ:

[新しい方法論の開発]

・相関波動関数理論を用いた電子状態計算手法

・超伝導密度汎関数理論

・データ同化構造探査手法

・レーザー加工のトランススケールシミュレーショ

ン手法

・熱伝導率・熱膨張率計算の計算手法

[第一原理電子状態計算を用いた物性研究]

・水素を含むイオン伝導体

・新しい超伝導物質

・アモルファス半導体材料

・熱電材料

・非熱的レーザー加工の基礎理論

3 今後の展開

化学,地球惑星科学,生物学など異分野との境

界には,物性物理学としては未開の広大な領域が

広がっています.また実社会に必要とされる新材

料の研究は,物性物理学者にとって魅力的な研究

テーマの宝庫です.我々は原子論・電子論に基づ

く計算機シミュレーションを使って,物性物理学

の観点から,そのような新しい領域の研究に寄与

したいと考えています.

“Data Assimilaon”

Energy

Intensity

2

Experiment

First-Principles Calc.

F R

E R

R

図:ベイズの定理により,不完全な実験データを

利用して結晶構造探索を加速する,データ同化構

造探索手法の概念図

研究室ホームページ

http://white.phys.s.u-tokyo.ac.jp/

藤堂研究室

藤堂眞治 教授 大久保 毅 特任講師 諏訪秀麿 助教

1 研究の背景

現代のスーパーコンピュータの計算能力をもっ

てしても、多体のシュレディンガー方程式を完全

に解くことはできません。そこで、もとの方程式

の中に含まれる、物理的に重要な性質を失うこと

なく、シミュレーションを実行しやすい形へ表現

しなおすことが、計算物理における重要な鍵とな

ります。藤堂研究室では、モンテカルロ法などの

確率的手法、経路積分に基づく量子ゆらぎの表現、

特異値分解やテンソルネットワークによる情報圧

縮、統計的機械学習の手法などを駆使し、量子ス

ピン系から現実の物質にいたるまで、さまざまな

量子多体系に特有の状態、相転移現象、ダイナミ

クスの解明を目指しています。

2 最近の研究テーマ

2.1 強相関系のためのシミュレーション手法

非局所更新法量子モンテカルロ法、連続空間量

子モンテカルロ法、長距離相互作用系に対するオー

ダーN 法、幾何学的カーネル構成法に加え、フラ

ストレートした量子磁性体のためのテンソルネッ

トワークの手法、量子マスター方程式の方法、新

しい最適化手法などの開発も進めています。また、

強相関量子格子模型シミュレーションためのオープ

ンソースソフトウェアALPS、HΦ、TeNeS、計算

物質科学シミュレーションパッケージMateriApps

LIVE!など、さまざまなソフトウェアの開発・公開

を進めています。

Metropolis heat bath BC

モンテカルロ法における幾何学的カーネル構成法

2.2 統計的機械学習の物性物理への応用

計算手法の開発と同時に、物質への応用も積極

的に研究しています。近年、電子の電荷・スピン・

軌道の自由度が複雑に絡み合う 5d電子系が大きく

注目されています。これらの系のダイナミクスを

機械学習に基づいて効率的に計算する手法を開発

し、実験家との共同研究を通じて、新しい物質の

物理を解明しています。また、第一原理電子状態

計算と実験の「データ同化」による結晶構造推定

にも取り組んでいます。

2.3 フラストレートスピン系の新奇秩序

相互作用にフラストレーションが存在するスピ

ン系では、スピンが互いに傾いた非共線的な秩序

が生じます。また、強いスピン揺らぎの結果、絶

対零度まで磁気秩序が生じない「スピン液体」状

態が実現することもあります。モンテカルロ法や

スピンダイナミクス法を用いて古典フラストレー

トスピン系のトポロジカル相転移の可能性やトポ

ロジカル励起のダイナミクスを調べています。ま

た、テンソルネットワーク法を用いて、カゴメ格

子スピン模型やハニカム格子キタエフ模型に現れ

る量子スピン液体状態の性質も調べています。

2.4 新奇な非平衡・非定常状態

レーザー照射の下で現れる光双安定性のような

非平衡系における動的な協力現象を大規模な数値

計算により解析しています。多数のフォトンと多

数の二準位原子の自由度からなる量子マスター方

程式の時間発展演算子の固有値・固有状態から、平

衡系での一次相転移との類似性や相違点について

研究を行っています。また、非エルゴード性を示す

古典調和振動子系を提案し、系における注目粒子

の振る舞いを、分子動力学計算、厳密対角化、解

析計算を用いて調べ、近年注目されている異常拡

散と非エルゴード性との関連を議論しています。

10-6

10-4

10-2

100

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05

Bistable region

Crossing point

ξl ξu

Phot

on n

umbe

r den

sity

n/N

Driving amplitude ξ

N=1N=5

N=10N=15N=20N=25

MF

共振器における光双安定性

藤堂研究室ホームページ:

https://exa.phys.s.u-tokyo.ac.jp/

52 53

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中辻・酒井研究室

中辻 知 教授、酒井 明人 講師、 冨田 崇弘 特任助教、肥後 友也 特任助教

1 はじめに

今、物性分野で重要な発見が相次いでいます。こ

れまでの磁性や超伝導、スピントロニクスといっ

た分野が、トポロジーという概念によって、再び

見直され整理・統合され、多くの新しい物理や現

象の発見に繋がっています。また、素粒子論で発

達した概念が物性分野の実験で初めて確認された

り、宇宙論・量子情報の技術が量子液体や超伝導の

研究でブレークスルーをもたらしたりと、既存の

分野を超えた新しい視点での研究が物性分野に変

革をもたらしています。こうした大きな潮流を先

導しているのは、実は、新しい概念を具現する量

子物質(Quantum Materials)の発見です。その原

動力は、物性の深い理解に基づいた物質探索とそ

の合成であり、世界最高精度の物性測定技術です。

私たちが生み出す量子物質は新しい物理概念を提

供し基礎分野で世界を先導するだけでなく、その

驚くべき機能性ゆえに産業界からも注目を集めて

います。これらの独自の量子物質を用いて、様々な

環境での精密測定を自ら行うことで、新しい物性

とその背後にある物理法則の解明を目指していま

す。

2 主な研究テーマ

1.物質中の相対論的粒子及び新規量子現象

  • ワイル粒子とカイラル異常  • 量子スピンアイスの磁気単極子、フォトン2. トポロジカル磁性体の室温量子伝導

  • ワイル反強磁性体のスピントロニクス  • ベリー曲率と熱・光巨大応答3. 強相関電子系における量子相転移

  • 多極子揺らぎによる異常金属相・高温超伝導

3 最近の研究から

•トポロジカル反強磁性体におけるベリー位相効果ベリー曲率は量子ホール系における整数(チャー

ン数)に相当する量であり、垂直方向の量子伝導

を誘起します。その端緒はTKNN公式 (Thouless-

Kohmoto-Nightingale-den Nijs)として知られ、Thou-

lessはこの功績で 2016年にノーベル物理学賞を受

賞しています。一方、異常ホール効果はゼロ磁場

で発現するホール効果であり、同様のベリー曲率

機構による理解が進んでいたものの、19世紀の

発見以来、強磁性体でしか観測例がありませんで

した。その中、我々は磁性体Mn3Snを用い、世界

で初めて反強磁性状態において巨大異常ホール効

果を観測しました [Nature (2016)]。この物質は強

磁性体の 1/1000の磁化しか持たないため、ベリー

曲率が極端に大きくなる機構の解明が課題でした。

そこで、ベリー曲率は波数空間の仮想磁場であり、

ワイル点を源として現れることに着目し、電子状

態の解明やカイラル異常の研究を行い、物質中に磁

気ワイルフェルミオンがいることをその世界初の

例として明らかにしました [Nat. Mater. (2017)]。

これらの現象はすべて室温で現れることから、ス

ピントロニクスやエネルギーハーベスティングへ

と波及しており、巨大な異常ネルンスト効果や磁

気光学カー効果の発見 [Nat. Phys. (2017), Nat.

Photonics (2018)]、磁気スピンホール効果の発見

[Nature (2019)]などに繋がっています。

図1 Mn3Snの磁気構造とワイル点の概念図

4 おわりに

私たちは、新入生の方には研究を通じて「創造

性」と「発信力」を身に着けていただきたいと思っ

ております。学生の方は、躍動的な分野の潮流を感

じながら、オリジナルな発想のもとに研究を進め、

時に世界の第一線の共同研究者と協力する―その

ために、我々の持つ「国際拠点ネットワーク」や世

界最高の「研究環境」と分野の垣根を超える「研

究連携スキーム」を利用していただければと思っ

ています。理学の基礎の力で世界を変える、その

ような意気込みのある方をお待ちしています。

研究室HP http://nakatsuji-lab.phys.s.u-tokyo.ac.jp

能瀬研究室

能瀬聡直 教授 高坂洋史 講師

分子や細胞、すなわち物質の集合に過ぎない脳

に、なぜ情報処理能力が出現するのでしょうか。こ

の問いは現代科学に残された最大の謎の一つです。

脳・神経系はニューロン同士が配線し回路を構成

することで機能します。したがって、脳の情報処理

の仕組みを解明するには、回路を構成する多数の

ニューロンをシステムとして理解しなければなり

ません。このために、以下の2つの方法論が必要

とされます。1.回路の構造、すなわち神経細胞が

どのように配線しているのか、を解析する。2.回

路活動の時空間ダイナミクス、すなわち神経細胞

がどのようなパターンで活動するのか、を解析す

る。以上の構造とダイナミクスに関する実験デー

タをもとに、回路内の情報の流れを明らかにし、さ

らに背景にある回路の論理を探ることができると

期待されます。従来、神経回路の複雑さから、こ

のような解析は困難でした。しかし、最近の技術

革新により、上記の2つの解析手法に大きな進展

があり、脳の研究を飛躍的に発展させることがで

きるとの機運が高まっています。私達は、こうし

た技術革新を特に適用しやすいショウジョウバエ

の神経系をモデルとして、神経回路の作動原理を

探っています。脳情報処理の機能単位となるよう

な基本回路を見つけ出し、それをモデル化するこ

とで脳を理解するのが目標です。

具体的には、ショウジョウバエ幼虫の運動を制

御する神経回路に着目し、特定の運動パターンを

生む基本回路の仕組みを探っています。ショウジョ

ウバエを用いる大きな利点は、発達した遺伝子操

作技術を用いることで、複雑な脳神経組織のなか

で特定の神経細胞の活動を可視化し、さらに活動

操作することが可能なことです。例えば、カルシ

ウムイメージングという手法を用いると、多数の

神経細胞が活動する様子を系統的に測定すること

ができます(図1)。また、パッチクランプ法は神

経細胞の活動を高い時間分解能で測定することを

可能にします。最近開発された画期的な技術であ

る光遺伝学 (optogenetics) を用いると、光を照射

することで特定の神経細胞の活動を操作すること

ができます。このような活動操作が、神経回路内

の他の神経細胞の活動様式にどのような変化を生

じるかを調べることにより、回路内の情報の流れ

を明らかにできます(図2)。一方、回路の構造の

解析についても、我々も参加する国際的な共同研

究により進められています。コネクトームとよば

れる、神経細胞間の結合様式を電子顕微鏡画像か

らすべて再構築するという手法です。以上のよう

な実験手法を総合的に適用することで、どのよう

な配線をもつ回路のなかを、どのように情報が流

れることで、特定の運動パターンが生成されるの

かを探っています。特に、神経活動操作による特

定の神経細胞群への摂動が、回路全体の活動にど

のような影響を与えるかを系統的に解析し、さら

にモデル化することで、神経回路がシステムとし

てどのように作動し情報処理能力を創出するのか

を理解したいと願っています。構成要素間の相互

作用をリアルタイムに解析可能な基本回路の研究

により、心までも生み出すような脳神経系の創発

システムを理解することが私たちの夢です。

図1:カルシウムイメージングによる神経活動の解析。神経組織内の多数の細胞(上)の活動をイメージングデータから自動抽出し時間経過に伴う変化を系統的に解析する(左下、赤色が活動状態を示す)。クラスタリング解析や次元縮約により回路全体の状態変化を 3 次元空間内で可視化することもできる(右下)。

図2:パッチクランプ法による神経活動測定と光遺伝学による操作。微小電極を神経細胞に注入することで、その活動を電気信号として取得できる。さらに光遺伝学と組み合わせると、他の細胞群の活動操作が測定中の神経細胞の活動に与える影響を調べることができる。この図の場合、光照射 (light ON) により、スパイク生成が抑制されることから、操作対象の神経細胞が抑制的な入力を与えていることが分かる。

54 55

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1

2

3

K

A

B

nm

10 nm

nm

浜口研究室

浜口幸一准教授 永田夏海助教

1 研究概要

私は、素粒子の標準模型を超えたところにどんな

物理があるのか、自然界に存在するより基本的な

統一理論が何なのかが知りたくて研究しています。

2012年、素粒子の標準模型で唯一未発見だった

ヒッグス粒子がついに発見されました。素粒子の標

準模型は非常に素晴らしい成功を収めており、現

在知られている高エネルギー実験の結果のほとん

どを矛盾なく説明する事が出来ています。しかし

ながら自然界には標準模型では説明出来ない現象

があり、標準模型が素粒子物理を記述する究極の

理論であるとは考えられません。

現在の宇宙のエネルギーは約 68%が暗黒エネル

ギー、約 27%が暗黒物質、約 5%が我々の知って

いる通常の物質(主にバリオン)から成っている事

が分かっています。しかし暗黒エネルギーの正体/

起源、暗黒物質の正体/起源、そして物質・反物質

の非対称性の起源(バリオン非対称性の起源)の

いずれもまだ解明されていません。これらの謎は

素粒子の標準模型/標準宇宙論の枠内では説明出来

ず、標準模型を超えた理論が必要となってきます。

さらに宇宙のごく初期にはインフレーションが起

こったと考えられていますが、インフレーション

もまた、標準模型を超えた物理を要求しています。

また標準模型には理論的も不自然な点、不完全

に見える点があります。例えば、自然界の基本的な

スケールが非常に高いエネルギースケール(素朴

にはプランクスケール ∼ 1018 GeV近辺)にある

であろう事を考えると、標準模型の電弱対称性の

破れのスケール(∼ 100 GeV)がそれに比べて何

故そんなに小さいのかが謎のままです(「階層性問

題」)。また強い相互作用を記述する QCDにおけ

る「stron CP問題」も標準模型に残された最重要

問題の一つです。ニュートリノ質量の起源も分かっ

ていません。以上の点からも、(私も含めた)多く

の素粒子物理研究者は、標準模型を超えた、より

基本的な理論が(典型的にはエネルギー 100 GeV

∼ 1 TeV以上のところに)存在し、それが標準模

型の不自然さを解決しているのではないかと考え

てきました。

例えば、標準模型を超えた物理の候補として私

が興味を持っている枠組みの一つが、超対称性理

論です。超対称性理論は、(i)標準模型の不自然さ

の問題を解決する (ii)暗黒物質の候補を含む (iii)

標準模型ではバラバラだった3つの相互作用の強

さが高エネルギーで1つに統一され「大統一理論」

の予言を再現する、などの特長があります。また、

重力も含めた究極の統一理論の最有力候補である

超弦理論も超対称性の存在を要求しています。

これまで私は、超対称性理論やその他の標準模

型を超える物理の枠組みにおいて、模型構築、現

象論的研究、初期宇宙論への応用といった研究を

行なってきました。

2 実験・観測との関連

最新の宇宙観測や素粒子実験の結果にも注目して

理論的研究に還元していきたいと考えています。

• 暗黒物質探索 (特に WIMP 検出を狙った直接

探索実験) の感度も近年飛躍的に向上しています。

• Planck衛星による宇宙背景輻射の測定により標

準宇宙論が詳細に検証され、インフレーションに

関する定量的な情報も明らかになってきました。

• 世界最高エネルギーの衝突実験・LHCからも、

今後も新たな結果が出てくることが期待されます。

• 0νββ実験や、ミューオン異常磁気能率実験にも

注目しています。

3 これまでの研究

• 暗黒物質の模型構築およびその実験・観測による検証に関する研究、• 中性子星の温度観測を用いた素粒子新物理(暗黒物質、アクシオン)探索

の研究、• 宇宙のバリオン非対称性を説明するシナリオ(特に非常に小さなニュートリノ質量の起

源と関連した Leptogenesis シナリオ)の研究、•ミューオンの異常磁気能率を説明出来る超対称性

模型の構築および解析、• 超弦理論、高次元理論に内在するモジュライ粒子が存在する時の初期宇

宙論の研究、• 超対称性理論・超重力理論が予言する粒子「グラビティーノ」を実験的に検証する

方法の提案・解析、およびそれに関連した初期宇

宙論の研究、など

キーワード:標準理論を超えた物理、初期宇宙論、

暗黒物質、宇宙の物質・反物質非対称性(バリオ

ン生成)、インフレーション

4 研究室ホームページ:

http://www-hep.phys.s.u-tokyo.ac.jp/~hama

56 57

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林研究室林 将光 准教授 河口 真志 助教

1 研究の背景電子は「電荷」と自転に相当する角運動量「スピン」を持っています。今日の半導体エレクトロニクスは電子の「電荷」を制御することで大きく発展してきました。一方、電子の「スピン」が生み出す物性、物理は未解明なところが多く、ただその様相は多彩です。たとえば、物質中の電子スピン間の相互作用によって、磁性や超伝導などが発現します。一方、表面の電子状態がバルクと比べて異質な「トポロジカル絶縁体」では、表面だけにスピンの向きに依存した散逸のない電子の流れ「スピン流」が生成され、その特異な伝導が量子演算などに利用できるとして注目されています。このように、固体中では電子が持つスピンが非常に重要な役割を果たしています。一方で光もまた、電子と同様、スピンを有しており、主に情報通信や分光測定などで利用されています。本研究室では、物質中の電子スピンと光が誘起するさまざまな現象を探求する「量子スピントロニクス/フォトニクス」の研究を行っています。

2 最近の研究テーマ(1) スピン軌道相互作用とスピン流物性スピン流とは、スピンの向きによって電子の移動する方向が異なる電子の流れを指します。たとえば、上向きのスピンを持った電子は右向きに、下向きの電子は左向きに動いたとき、右から左にスピン流が生ずることになります。スピン軌道相互作用が大きい物質に電流を流すと、「スピンホール効果」によってスピン流が生成できることが最近

図 1. 光学系実験設備の写真。

の研究で明らかになりました。本研究室ではスピンホール効果などによってスピン流が生成される物理の解明と、スピン流が生み出す新たな物性の探索を行っています。特に、スピン軌道相互作用が大きい物質を原子層レベルで組み合わせた人工へテロ構造では、新たな現象が次々と見つかっており、今後の展開が期待されます。

(2) トポロジカル物質と光スピン変換現象特異な結晶構造を持つ物質や異種物質間の界面、表面では、電子のスピンの向きが移動方向と結合した電子状態が発現することがあります。これらの物質に例えば円偏光を照射すると、スピンの向きが揃ったキャリアが励起・移動するので、スピン偏極した光起電流が発生することが知られています。物質の電子状態と光の相関に関する研究は古くからありますが、近年発見されたトポロジカル絶縁体やワイル半金属など、特異な電子状態を有する物質の光応答は未知の物理が多く、研究が活発化しています。本研究室では、トポロジカル物質を含む人工へテロ構造において、電子スピンと光の相関に着目し、光が誘起する新たな物性や機能性を見出す研究を行っています。

(3) コヒーレント複合粒子の生成量子技術の発展に伴い、物質中の異なる自由度を組み合わせて新たな複合粒子を生成する研究が活発化しています。本研究室ではスピンや光をコヒーレンスの高いな格子振動や超伝導状態などと結合させ、量子技術に展開できる物理の探索を行っています。

図 2. 光ースピン変換現象の模式図と実験結果。

1

X

1962 X

X

( :

1)

(4× 109 T)

1 Chandra Cassiopeia

A X 1682

4000 km s−1

X ( )

( )

2

X

NASA ESA JAXA

X

2005

Chandra (1999 )

NuSTAR (2012 )

XMM-Newton 2000 )

2016 2 17

XRISM 2021

10 keV X

X

X JAXA

10 keV X

X

HP: http://energetic-universe.phys.s.u-tokyo.ac.jp/

58 59

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樋口研究室樋口秀男 教授  茅 元司 助教

「生体分子・細胞・個体の1分子生物物理学」

生物物理学とは,物理学や物理化学を用いて生物の基本原理の理解を目指す学問であり,原子・分子スケールから個体や生態系までの全階層を対象としています.その中で,樋口研は,原子・分子・細胞・個体の各階層に注目し,物理工学,生化学,細胞生物学,基礎医学などとも密接に関係して研究を展開しています(図).具体的な研究テーマを以下に説明します.

1 精製されたタンパク質のメカニズムの解明  生命活動を司る高分子(タンパク質,DNA,RNA)は卓越した機能を有しているのですが,そのサイズは数ナノメーターしかなく,まさに“高性能ナノマシン”です.我々研究室では,小胞輸送や筋収縮,細胞分裂を司るモータータンパク質の運動メカニズムの解明と細胞の動的な骨格であるアクチンと微小管の物理化学的ダイナミックスの解析を行い,定量的な結果を元に理論的な解析も行っています.

2 培養細胞機能の分子レベルの研究 我々の体を守る免疫細胞や我々を脅かすがん細胞はアメーバー様の活発な運動を行います.この運動それ自身がおもしろいだけでなく,運動は細胞の免疫機能や転移能とも関連しています.細胞内のどのような分子が運動に寄与するのか,細胞内ではどのような輸送形態が存在するのか,など細胞の機能の根源に迫りつつ分子機構の解明を行っています.この研究の他に細胞の情報伝達,細胞社会の乱れたガン細胞の診断方法の研究も手がけております.

3 マウス内の細胞の分子機能の理解 細胞実験において用いる培養細胞は,限られた細胞をプラスチックの上で育てるので,マウスなどの個体内の環境とは大きく異なります.した

がって,我々は,生きたマウス内の細胞や分子を観察する方法を開発し,細胞や分子の真の機能を探求してきました.現在は,マウスを傷つけることなく個々の細胞や1分子を観察する方法を開発し,がん化メカニズム・免疫細胞・筋肉の運動メカニズムを調べています.これらの研究が将来分子生物学や基礎医学と合流することで新しい学問に発展することが期待されています.

4 運動機能の普遍的な物理モデル 細胞内の小胞の運動過程は様々なタイプの揺らぎに支配されています.例えば「方向のランダム性」と「反応のランダム性」時間と空間とともに変化しますので,これらの寄与を小胞の運動に取り入れた物理モデルの構築をおこなっています.これらを基礎として,細胞の運動と形の関係やタンパク質分子な運動を理論化する試みを進めています.

福嶋研究室

福嶋 健二 教授 山本 新 助教

1 研究の背景

自然界には 4つの相互作用があることはご存知

でしょう。「電磁気力」、「重力」は身近なものです

ね。「弱い相互作用」にはあまり馴染みがないかも

しれませんが、例えば真空中で中性子は β 崩壊し

て陽子に変化します。それでは「強い相互作用」は

どうでしょうか?原子核を構成する陽子の電磁気

的な反発力を凌駕し、原子核を原子核たらしめて

いる力が、強い相互作用です。

4つの相互作用のなかで、強い相互作用は、自然

界の成り立ちを考えるうえで最も本質的な役割を

果たします。強い相互作用を媒介するグルーオン、

そして強い相互作用をうけるクォークの非摂動的

なダイナミクスが解ければ、多くのことを純粋に

理論から説明することができます。陽子や中性子

といった核子はクォーク 3つの束縛状態だと言われ

ています。けれども核子の質量∼940MeVのうち、

(ヒッグスに由来する)クォークの質量は 10MeV程

度しかありません。ほとんどの質量はクォークと

グルーオンの相互作用エネルギーで説明されるの

です。

強い相互作用の基礎理論は量子色力学 (QCD)と

呼ばれ、長年に亘って研究されてきました。トポロ

ジー的に非自明な励起や θ真空構造など、今日で

は物性分野でも常識となっている物理は、半世紀近

く前にQCD研究からもたらされたものです。最近

では右巻き (スピンと運動量が平行な相関を持つ)、

左向き (反平行な相関を持つ)粒子の性質、すなわ

ちカイラル物質の性質が物性分野でも大きな話題

となっていますが、カイラル物質はまさにQCD研

究者が半世紀近く取り組んできたテーマです。

このように現代的な原子核物理学は、果てしな

く広く深い学問分野なのです。完成した理論を持っ

ている、ということが、その理論が内包する現象

を知っているとは限らない、という当たり前のこ

とを、他のどの分野よりも実感できます。面白い

ことにQCDは「漸近的自由」という特別な性質に

よって、4つの相互作用のなかで唯一破綻のない、

予言能力の極めて高い理論となっています。極論

すれば、理論自身を指導原理として理論研究でき

る唯一の分野、とも言えます。

2 最近の研究テーマ

我々のグループは QCDにまつわる物理を幅広

く研究しています。少し例をあげると、中性子星

の内部の状態方程式は、中性子星の構造を考える

うえでも、また超新星爆発のメカニズムの解明や

連星中性子星系からの重力波の解析のためにも不

可欠なものです。原理的にはQCDから導かれるも

のですが、その計算は難航を極め、まだ世界の誰

も成功していません。我々はこの難問に流行りの

機械学習まで含めた様々な角度からアプローチし

ています。また、米国ではつい最近、Brookhaven

国立研究所で高エネルギー電子イオン散乱実験を

実施していくことが正式決定されました。これは

驚くべき実験で、核子の中の中の細かい様子が全

て分かってしまいます。

核子内部の圧力分布の理論計算の例 (ベクトル粒

子が結合したトポロジカルソリトンで計算した)。

上図は我々の理論計算の一例です。このような

情報がわかると、中心部の圧力とエネルギー密度

からクォーク物質の状態方程式を推定できます。す

ると、中性子星内部にクォーク物質が存在してい

るのかどうか、ということまで分かるのです。

3 今後の展開

現代の高エネルギー原理核理論は壮大な学問で

す。ミクロからマクロまで守備範囲が広く、また

カイラル物質やトポロジー的な特徴付けなど普遍

的な概念に満ち溢れています。今後はQCDで培っ

た知見を光物性など他分野へ輸出していくことも

視野に入れています。

60 61

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1

2

i)

a

b

ii)

ES

1

3

-3

-2

-1

0

1

2

3

-3 -2 -1 0 1 2 3

δX

iGe

n(1

0)

δX iEnv

(a)

∑∑

−−−+

′′−= ′

′′

j

jjmiiim

ki

kj

kj

kj

i

xxDxxxxDx

xxkjiConxxkijCondt

dx

ji)()(

),,(),,(,,

(b)

(a)

(b)

松尾研究室松尾泰 教授 西岡辰磨 助教

1 M理論本研究室の主要な研究テーマである超紐理論は,素粒子の相互作用として現在知られている4つの力の統一理論として,また唯一可能な一般相対論の量子論として活発に研究されている。現在矛盾のない超紐理論は5種類知られており,それぞれ10次元で定義されているが,90年代後半にこれらの5種類の理論は結合定数に関する強弱双対性と呼ばれる対称性で結びついており,一つの根本的な理論の様々なパラメータ領域における実現であると理解されるようになった.この基本理論はM理論と呼ばれており,11次元で定義される量子化された膜の理論であると考えられている.M

理論はまだ定式化も明らかになっていないが、その存在を仮定すると弦理論やゲージ理論の双対性を幾何学的に理解できるのではないかと考えられている。M理論にはM2、およびM5ブレーンと呼ばれる2次元的あるいは5次元的に広がった膜のようなものが基本的な励起として存在していると予想されている。これらのブレーンの定式化や性質の解明を研究室の一つの研究目標にしている。このうち2次元の膜、M2ブレーンについては当研究室で数年前に盛んに研究され大きな研究成果が得られた。2次元膜は3次元のゲージ理論で記述されると考えられていたが、非可換ゲージ対称性を共形対称性を保ちつつどのように導入すべきかがその当時の主な関心事であったが、Bagger

と Lambert により最大の超対称性をもつ Chern-

Simons理論が提案された。この理論はその対称性が通常のリー群ではなく3つの生成子から代数を構成する3代数と呼ばれるもので1970年代に南部陽一郎氏により提案された南部括弧式と呼ばれるものに関連する。当研究室ではその代数を分類することによりその当時知られていなかった多くの模型を考案することに成功した。最近の研究のフォーカスは5次元のブレーンの方に移行している。このブレーンの上には超対称性により自己対称2形式場と呼ばれるものが存在することが知られている。通常のゲージ理論では1形式場により非可換ゲージ対称性が記述されるが、2形式場でどのようにして非可換ゲージ対称性を実現するのかは非自明な問題である。最近、当

研究室で提案された模型ではそのような対称性の導入に成功し、M5ブレーンの一つの模型として考察している。現在、超対称性との関係、自己双対場の作用の問題点、ゲージ理論の双対性との対応などを考察中である。

2 低次元可解模型を用いたゲージ理論の解析2000年代以降、超対称ゲージ理論と低次元可解模型の対応関係が注目を集めてきた。まず、重力とゲージ理論の双対性を検証するため、両方の理論で厳密に計算できる量を比較するという考え方で、非常に長い鎖状に並んだゲージ理論の演算子の列を1次元のスピン鎖と解釈し、異常次元の計算をスピン鎖上で定義される可解模型のハミルトニアンのスペクトルと同一視し、Bethe仮説などを用いた解析が盛んに行われた。一方、ここ5~6年、同じく超対称ゲージ理論の分配関数が2次元可解場の理論 (Liouville方程式など)の相関関数と同一視できるのではないかという提案がなされそれに関連して2次元共形場理論と長距離相関を持つ1次元系(Calogero系) などとの関連が物理と数学の境界領域として盛んに研究された。当研究室では後者の対応関係の証明を行うため、数学者により提案された非線形無限次元対称性の研究を行っている。これは Virasoro代数やその高階スピンの拡張であるW 代数とこの新しい対称性が同等であることを示すことに成功した。また、Bethe仮説などの可解格子系の技術を2次元共形場に応用してスピン鎖の自由度を場の自由度に置き換えるような新しい可解模型について研究を進めている。

62 63

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村尾研究室

村尾美緒 教授 添田彬仁 助教

1 量子情報とは

当研究室は、物理学の中でも最も新しい分野の一

つである量子情報の理論的研究を行っている。量

子情報は、0と 1からなる 2進数の「ビット」を基

本単位とするような古典力学的な状態で表される

従来の情報(古典的情報)に対して、0と1のみな

らず 0と1の任意の重ね合わせ状態を取ることが

できるような量子力学的な状態で表される情報を

指し、量子2準位系の状態で記述される「量子ビッ

ト」を基本単位とする(図参照)。量子情報を用い

ると古典情報とはクラスの違う情報処理が可能と

なるため、古典情報処理の限界を超えるブレーク

スルーの候補として近年注目を集めている。量子

情報処理の例としては、量子計算、量子暗号、量

子計測等が提案されている。

2 当研究室では

計算アルゴリズムや情報処理を効率よく実行する

ための装置としてだけではなく、量子力学的に許

されるすべての操作を自由に行うことができる装

置として量子計算機をとらえ、量子計算機を用い

ることで現れる量子力学的効果に関する理論的研

究を行っている。我々の研究は、情報と情報処理と

いう操作論的な観点から量子力学への基盤的理解

を深める、という基礎科学的なアプローチと、エ

ンタングルメント注 など量子力学特有の性質を情

報処理、情報通信、精密測定、精密操作などに役

立てる、という応用科学的なアプローチの相乗効

果によって発展させていることが特徴である。

最近は、量子ネットワークでつながった小規模

量子計算機からなる分散型量子情報処理の研究や、

量子計算機と乱択アルゴリズムを併用した量子系

の測定・操作アルゴリズム、エンタングルメントを

用いた量子計算の並列化と因果性の解析、トポロ

ジカルな量子系におけるエンタングルメントや量

子相関の解析、関数型量子プログラミングに向け

た高階量子演算の定式化と解析、量子学習の枠組

みによる因果関係の考察など、多岐にわたるテー

マを関連づけながら研究を進めている。

量子情報は数学・計算機科学・情報工学とも関連

が深いため、物理のみならず幅広い視野をもって

研究することが望まれる。量子情報では、いわゆ

る『物理的直感』に反する現象も多く、先入観を

排して論理のみに基づいて緻密に証明を詰めるこ

とが重要となる一方で、発想の転換によって新た

な手がかりをつかむ発想力や独創性も不可欠であ

る。このため、異なる背景を持つ国内外の様々な

研究者との議論を通じて効率良く研究を進める場

合が多い。

当研究室では、柔軟な発想で本質を探求する能

力・自己マネジメント能力・英語で議論を深める

ための能力の指導に重点を置き、世界の第一線で

活躍できる人材の育成を目指している。

z

yx

図:ベクトル表示での古典情報(ビット)と量子情報(量子ビット)との比較。ビットは上向き“0”または下向き“1”のいずれかのベクトルのみをとるが、量子ビットは上向き状態 |0〉 と下向き状態 |1〉 のみならず、これらの任意の量子力学的重ね合わせ状態をとることができるため、球面上どの向きのベクトルもとることができる。

注:エンタングルメントとは複数の部分系からなる量子系において個々の部分系状態の積では表されないような「分離不能な状態」に現れる非局所的相関である。アインシュタインもを悩ませたエンタングルメントは、古典的情報処理にはない量子情報処理独自のリソース(資源)として非常に重要であり、量子情報処理が古典情報処理より優位である鍵であると考えられている。しかし、3粒子間以上の多粒子間エンタングルメントや多準位系・無限準位系のエンタングルメントに関しては研究は発展途上であり、未解決の問題が多く残っている。

研究室ホームページ:

http://www.eve.phys.s.u-tokyo.ac.jp/indexj.htm

諸井研究室

諸井 健夫 教授 中山 和則 助教

1. はじめに

本研究室では、素粒子物理学、特に標準理論を

超えた素粒子理論と、それに基づく宇宙の進化の

理解とを目的として、研究を行っています。標準

理論を超えた素粒子理論や初期宇宙論に関連する

全般が研究対象で、特に主要な研究内容は以下の

通りです:

• 新たな素粒子理論の構築とその検証方法の探求

• 素粒子現象を記述する場の理論の理解

• 初期宇宙の理解と宇宙進化のシナリオの構築

2. 研究の背景

素粒子標準理論は、テラスケール(数 TeV 程度

のエネルギースケール)までの高エネルギー現象

をほとんど正しく説明することができます。しか

しこれは、我々が究極の理論を手に入れたという

ことではありません。むしろ、多くの素粒子物理

学研究者は、標準理論を内包する未知の理論(素

粒子標準模型を超える物理)が存在すると考えて

います。これは根拠の無い期待ではなく、むしろ

標準理論に内在する「不自然さ」を解消するため

にどうしても必要なことなのです。

宇宙の進化を理解する上でも多くの謎が残され

ています。例えば宇宙暗黒物質の起源、宇宙に反

物質がほとんど存在しない理由、宇宙初期に起き

たと考えられるインフレーションのメカニズムな

どについて、素粒子標準理論の枠内での説明は不

可能です。これらの謎を解明し、正しい宇宙理論

を構築するためにも、標準理論を超える新たな物

理が不可欠です。

3. 研究内容

素粒子物理学や初期宇宙論の研究には、場の理

論や重力理論についての理解と、素粒子実験や宇

宙観測実験についての知識とが要求されます。それ

らを総合的に研究しつつ、テラスケール以上のエ

ネルギーにおける素粒子理論を確立し、その知見

を用いて正しい初期宇宙像を構築することが、本

研究室における活動の目標です。

テラスケール以上の物理を考える上で重要なこと

のひとつに、ヒッグス粒子の理解があります。LHC

実験はヒッグス粒子を発見しましたが、その性質

については未知の部分が多く残されています。ヒッ

グス粒子の性質を精密に理解し、そこに含まれる

テラスケールの物理の情報を抜き出すことは重要

な課題です。今後 LHC実験によりヒッグス粒子に

ついての精密測定が進むということもあり、ヒッ

グス粒子に関する理論的研究は、現在力を入れて

いる研究のひとつです。また、LHC 実験により測

定されたヒッグス粒子の質量は、我々の住んでい

る「真空」が実は不安定である可能性を示唆して

います。真空の崩壊、特に真空の崩壊の場の理論

に基づく理解も、現在取り組んでいるテーマのひ

とつです。

また、標準理論を超える新たな物理が必要とさ

れる理由のひとつとして、暗黒物質の存在が挙げ

られます。様々な宇宙観測から暗黒物質が宇宙に

存在することは確定的と言えますが、その素粒子

論的性質はほぼ理解できていません。特に素粒子

標準模型の粒子の中には暗黒物質となり得る粒子

は存在しません。暗黒物質を素粒子論的な観点か

ら理解しようとするとき、素粒子標準模型の拡張

は不可欠です。本研究室では、暗黒物質を含むよ

うな素粒子模型としてどのような可能性があるか

を探求するとともに、暗黒物質探査の新たな実験・

観測的手法についても研究を行っています。

これから先、数年から10年の間には、様々な

高エネルギー実験・宇宙観測の結果が得られると

期待されています。LHC 実験やフレーバー・CP

の破れに関する実験、宇宙背景放射の観測、暗黒

物質の探査実験、高エネルギー宇宙線の観測など、

様々な実験の結果は、素粒子物理学の理解に重要

な知見を与えるでしょう。また理論的には、超対

称性、大統一理論、アクシオン模型など、標準理

論を超える新たな物理の可能性が様々提唱されて

います。本研究室では、それらを視野に入れつつ、

素粒子理論・場の理論・宇宙論について、今後も

研究を進めていきます。

素粒子論研究室ホームページ:

http://www-hep.phys.s.u-tokyo.ac.jp/

個人のホームページ:

http://www-hep.phys.s.u-tokyo.ac.jp/ moroi

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Page 35: 納品用PDF未アウトライン 駒場進学案内...物理がわかれば、世界は違って見えるかもしれない 物理学専攻長、物理学科長 常行 真司 物理学は全ての自然科学の基盤であると同時に、自然科学の最先端にあってダイナミッ

1

10 K

1 mm 0.1 mm

HCOOCH3

NGC1333

IRAS4B HCOOCH3

L1527

CH4

Warm Carbon Chain Chemistry (WCCC)

HCOOCH3

ALMA(Atacama

Large Millimeter/submillimeter Array)

1 THz - 3 THz

100 nm

(HEB)

NbTiN

HEB 0.8 THz 350 K 1.5

THz 490 K

ASTE 10 m 1.5 THz

CH, HD+

2, H2D

+

1

4 6

138

2

3

1

DECIGO

3

KAGRA

(Kipp Cannon )

http://www.resceu.s.u-tokyo.ac.jp/top.php

http://www.resceu.s.u-tokyo.ac.jp/eucd/

http://www.resceu.s.u-tokyo.ac.jp/˜yokoyama/

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Liang 研究室Haozhao Liang 准教授

1 Research backgroundAtomic nuclei, composed of protons and neu-

trons, represent one fundamental hierarchy of mat-ter. As famous for Nihonium (Element 113), Japanis one of the world-leading countries in nuclearphysics. Questions like

• How many different kinds of nuclei exist inthe Universe?

• Where and how are they created?

• How can human being make the best andsafe use of nuclei?

motivate us for chasing deep understandings ofnuclear properties.Theoretical studies in nuclear physics are not

trivial at all, because each atomic nucleus is aquantum system, a many-body system, a finitesystem, as well as an open system. In addition, inatomic nuclei, three fundamental interactions outof four—the strong, weak, and electromagneticinteractions—interplay each other in a large rangeof time and energy scales with the co-existence ofsingle-particle and collective characteristics.Because of these unique features, although mi-

croscopic nuclear theories could be traced backto, e.g., the Nobel Prize work of Yukawa, therestill exist tons of open questions in this field.

2 Recent research themesIn particular, during the past decades, thanks

to the significant progress in quantum many-bodytheories and the worldwide exponential increaseof computational powers, microscopic nuclear the-ories are gradually established, including the abinitio approach, cluster method, shell model, den-sity functional theory (DFT), and so on.The main research theme in our group is nu-

clear DFT, which aims at understanding bothground-state and excited-state properties of thou-sands of nuclei in a consistent and predictive way.Among the microscopic nuclear theories, now, evenin the visible future, only DFT is applicable to al-most the whole nuclear chart.

Research themes in the recent 3 years:

Microscopic foundation of nuclear DFT

• Functional Renormalization Group and DFT

• Inverse Kohn-Shammethod and density func-tional perturbation theory

• Nucleon finite-size effects on nuclear bind-ing

• Relativistic ab initio calculations for finitenuclei

Consistent nuclear database for astrophys-ical nucleosynthesis study

• Nuclear mass and β-decay half-life predic-tions with Bayesian approaches

• Influence of nuclear mass uncertainties onradiative neutron-capture rates

3 Future perspectives

A mid-term goal: Ab initio nuclear DFTOne of our goals in the coming years is to de-

velop an ab initio nuclear DFT, starting from re-alistic nuclear force. Oriented by quantum fieldtheory (QFT), our ideas include (i) the energydensity functional will be derived from the ef-fective action with Legendre transform, (ii) thenon-perturbative nature of nuclear force will behandle by the renormalization group with flowequations, and (iii) the theoretical uncertaintieswill come with the idea of effective field theorywith proper power counting, as illustrated here.

E

k k

A long-term dream: Microscopic understand-ing of quantum many-body tunnelingNuclear fission and fusion, which critically de-

pend on the properties of quantum many-bodytunneling, are still among the most long-standingand most challenging problems in nuclear physics.The relevant studies are crucial not only for nu-clear physics but also for the element cycling inastrophysical nucleosynthesis, the treatment oflong-lived fission products by nuclear power plants.Will modern QFT help? Will machine learning

and quantum computing help? These are ques-tions for young students with dreams.

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