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【論 文】 1 国立教育政策研究所紀要 145平成28年3月 学級規模の縮小は中学生の学力を向上させるのか 全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した実証分析Does the class size affect the academic achievement of junior high school students? : an empirical study with “National Assessment of Academic Ability” of Japan 妹尾 1 ・北條 雅一 2 SENOH Wataru and HOJO Masakazu Abstract This paper uses the data of the “National Assessment of Academic Ability” (implemented in FY 2013), a joint project of the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology and the National Institute for Educational Policy Research, and the data of the additional “detailed survey” to verify the effects of class size. As a result of regression analysis using the rates of correct answers for the subjects of Japanese language and mathematics of third-grade lower secondary school students as dependent variables, and the school size and the attributes and socio-economic backgrounds of the students as explanato- ry variables, it became clear that reducing the class size has a significant effect statistically on im- proving academic achievement. The size of the effect was a maximum increase in the correct answer rate of 0.09 in the standard deviation value through reducing the class size by five students. Next, we created the school’s average SES variables using the students’ SES variables, and carried out an es- timate by dividing the sample into schools with a high average SES and schools with a low average SES. As a result, the reduction in the class size in schools with a low average SES was shown to have a significant effect in improving academic achievement, but a significant effect through reduc- tion of the class size was not confirmed in schools with a high average SES. This result is an indica- tion that the effect of class size reduction is greater in schools which are at a disadvantage in terms of socio-economic status, and is interesting from the perspective of equity in education policy. 1 国立教育政策研究所・総括研究官 2 新潟大学・准教授

学級規模の縮小は中学生の学力を向上させるのか...学級規模の縮小は中学生の学力を向上させるのか−全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した実証分析−

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  • 【論 文】

    1

    国立教育政策研究所紀要 第145集 平成28年3月

    学級規模の縮小は中学生の学力を向上させるのか

    −全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した実証分析− Does the class size affect the academic achievement of junior high school students?

    : an empirical study with “National Assessment of Academic Ability” of Japan

    妹尾 渉*1・北條 雅一*2

    SENOH Wataru and HOJO Masakazu

    Abstract

    This paper uses the data of the “National Assessment of Academic Ability” (implemented in FY 2013), a joint project of the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology and the National Institute for Educational Policy Research, and the data of the additional “detailed survey” to verify the effects of class size.

    As a result of regression analysis using the rates of correct answers for the subjects of Japanese language and mathematics of third-grade lower secondary school students as dependent variables, and the school size and the attributes and socio-economic backgrounds of the students as explanato-ry variables, it became clear that reducing the class size has a significant effect statistically on im-proving academic achievement. The size of the effect was a maximum increase in the correct answer rate of 0.09 in the standard deviation value through reducing the class size by five students. Next, we created the school’s average SES variables using the students’ SES variables, and carried out an es-timate by dividing the sample into schools with a high average SES and schools with a low average SES. As a result, the reduction in the class size in schools with a low average SES was shown to have a significant effect in improving academic achievement, but a significant effect through reduc-tion of the class size was not confirmed in schools with a high average SES. This result is an indica-tion that the effect of class size reduction is greater in schools which are at a disadvantage in terms of socio-economic status, and is interesting from the perspective of equity in education policy.

    *1 国立教育政策研究所・総括研究官 *2 新潟大学・准教授

    r-takeshitaテキスト ボックス漆委員提出資料

  • 2

    1.はじめに

    近年、幅広い分野において科学的根拠にもとづく政策立案が求められている。教育政策もその例

    外ではなく、科学的根拠にもとづく教育政策の重要性を指摘し、データの整備やデータの利用可能

    性の向上を求める声も高まってきている(中室, 2015)。本稿が分析対象とする学級規模効果は、教育政策の中でも科学的検証が比較的進展している分野であり、日本のデータを用いた研究が蓄積さ

    れつつある段階であるといえる。しかしながら、日本において、学級規模の縮小が児童・生徒の学

    力や学力以外の部分にどのような影響を与えるのかという点については、先行研究の間で議論が分

    かれていると言わざるを得ない。 本稿は、文部科学省・国立教育政策研究所の共同実施事業「全国学力・学習状況調査(平成 25年度実施分)」及び追加実施された「きめ細かい調査」のデータを用いて、学級規模効果を検証する

    ものである。従来の研究との相違点は、「きめ細かい調査」のデータを使用する点であり、これによ

    り生徒個人の社会経済的背景(SES)の情報を活用することが可能となっている。より具体的には、学級規模が生徒の学力に与える影響を検証する際に、生徒個人の SES を制御した推定を行うことが可能となることで、より信頼性の高い分析結果を得られることが期待される。また、後述する国内

    外の先行研究では、生徒の社会経済的背景によって学級規模の効果が異なることが示されており、

    本稿ではそれらと同様の分析を行うことも可能となっている。 中学 3 年生の国語と数学それぞれの正答率を従属変数、学級規模や生徒の属性、社会経済的背景を説明変数とした回帰分析の結果、学級規模の縮小は学力の向上に対して統計的に有意な効果をも

    つことが明らかとなった。効果の大きさは、学級規模 5 人の縮小によって正答率が最大で 0.09 標準偏差上昇するというものであった。この効果の大きさは、科目や学年が異なるため比較には注意が

    必要であるが、日本の先行研究で報告されている効果と比べるとやや大きく、海外の先行研究で報

    告されている効果に比べると小さい。次に、生徒レベルの SES 変数から学校レベルの平均 SES 変数を作成し、平均 SES が低い学校と高い学校にサンプルを分けて推定を行った。その結果、平均 SESが低い学校において学級規模の縮小が学力の向上に有意な影響を与えているのに対し、平均 SES が高い学校では有意な学級規模効果は確認されないことが明らかとなった。この結果は、社会経済的

    に不利な状況に置かれている学校において学級規模縮小の効果が大きいことを示すものであり、教

    育政策の公平性の観点からも重要な結果であるといえよう。 本稿の構成は以下のとおりである。第 2 節は使用したデータについて、特に「きめ細かい調査」の内容を紹介する。第 3 節は分析手法について解説する。第 4 節は分析結果、第 5 節は結語である。

    2.分析に利用したデータについて

    2.1 「全国学力・学習状況調査」の「きめ細かい調査」について 子供たちの全国的な学力状況を把握するために、文部科学省と国立教育政策研究所は共同事業と

    して、平成 19 年度より「全国学力・学習状況調査」を毎年度実施している。対象学年は、小学校第6 学年と中学校第 3 学年で、国語と算数・数学の 2 教科を基本とした調査が行われている。さらに、この本体調査と併せて、数年に一度は「きめ細かい調査」として、①市町村、学校等における検証

    改善サイクル構築のための信頼性の高いデータの蓄積、②国として市町村、学校レベルの教育格差

    等の状況を把握し、施策の検証・策定に生かす、③抽出調査の精度の維持・向上のために最新のデ

  • 学級規模の縮小は中学生の学力を向上させるのか−全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した実証分析−

    3

    ータを得る、といった観点から追加的な調査が行われることとなった。本分析で利用するのは、平

    成 25 年度に初めて行われた「きめ細かい調査」のデータである。この年度の調査は、本体調査、経年変化分析調査、保護者に対する調査及び教育委員会に対する調査により構成されている。このう

    ち保護者を対象とした調査からは、従来の本体調査ではわからなかった生徒の家庭の社会経済的背

    景(SES)が把握できるようになった。 2.2社会経済的背景(SES)尺度変数の作成 家庭の社会経済的背景(SES)の尺度変数は、本稿と同じ「きめ細かい調査」を使用している垂見 (2014) に従い、家庭の所得、父親学歴、母親学歴の 3 つの要素から作成された合成変数である。家庭の所得は各回答選択肢の中間値を用いた(200 万円未満は 200 万円、1500 万円以上は 1500 万円とした)。父親学歴及び母親学歴は、最終学歴の各回答選択肢を対応する就学年数に換算した数値を

    当てはめた。次に、それぞれの変数を標準化した上で 3 つの変数の平均値を算出し(いずれかの変数が欠損の場合は残りの変数で平均値を算出し、すべての変数が欠損の場合は欠損とした)、その平

    均値を再び標準化した。この変数が本稿で使用する SES 変数となる。

    3.分析手法

    学級規模が生徒の学力に与える影響を検証するため、次の(1)式で与えられる推定モデルを考える。

    𝑦𝑦𝑖𝑖𝑖𝑖 = 𝛼𝛼 + 𝛽𝛽𝛽𝛽𝑆𝑆𝑖𝑖 + 𝛾𝛾𝑋𝑋𝑖𝑖𝑖𝑖 + 𝜖𝜖𝑖𝑖𝑖𝑖 (1) ここで、𝑖𝑖 は生徒、𝑠𝑠 は学校を表している。𝑦𝑦 は国語及び数学の正答率(A 問題と B 問題を合算)を標準化したもの 1)、𝛽𝛽𝑆𝑆 は学級規模、𝑋𝑋 はその他の説明変数である。𝑋𝑋 には、個人レベルの変数として女子ダミー及び SES 変数、学校レベルの変数として学年生徒数(2 乗項と 3 乗項を含む)または学年学級数、へき地ダミーが含まれている。学級規模、学年生徒数、学級数については、前年

    度の数値である。 教育経済学分野の実証研究では、実験的ではない環境から得られたデータを用いて(1)式を推定する際に、学級規模変数 𝛽𝛽𝑆𝑆 の内生性によって引き起こされる問題への対処が重視される。この問題は、分析者には観察されない何らかの要因が学級規模及び正答率の両方と相関を持つことによって β の推定値に偏りが生じうること、及び β の推定値を学級規模の因果効果として解釈できないことを意味する。このような問題に対処するため、教育経済学分野の先行研究では、学級規模が外生

    的に決定される状況を活用してきた。その一つは、学校規模が小さく、1 学年に 1 学級しか存在しない学校(単学級学校)を推定サンプルとする方法である。単学級学校では、学級規模は学年生徒

    数によって決定される。学年生徒数は通学区域の子供の人数によって決定されるため、学級規模変

    数は内生性を持たない外生変数として扱うことができ、最小二乗法(OLS)によって偏りのない β の推定値が得られると考えるのである。また、この手法によって得られた β の推定値は、学級規模が学力に与える因果効果として解釈することが可能となる。この考え方に基づく先行研究に

    Urquiola (2006)、妹尾・篠崎・北條 (2013) がある。 もう一つは、Angrist and Lavy (1999) によって提案された、学級規模の上限ルールが適用されてい

    る状況を活用するものである。日本では、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に

  • 4

    関する法律」(昭和 33 年法律第 116 号、以下、義務標準法という)のもとで 1 学級 40 人の編制基準が示されている。2001 年の義務標準法の改正以降、徐々に学級編制の弾力化がすすめられており、近年では自治体・学校が地域の実情や児童生徒の実態を勘案しながら柔軟な学級編制を行うことが

    可能となってきているが 2)、基本的には 1 学年の人数が 40 の倍数を超えると新たな学級が 1 つ追加され、1 学級当たりの学級規模が小さくなるという状況に変わりはない。このように、1 学級当たりの人数に上限が設定され、そのルールがある程度厳格に守られている状況では、学年生徒数がその

    上限を超えるごとに学級規模の縮小が観察されることとなるが、学年生徒数は外生的に決定される

    ものと考えられるため、ルールに基づく学級編制によって発生する学級規模の変動は外生的なもの

    と考えることができる。こうした分析手法は回帰不連続デザイン(RDD)の一種であり、紙幅の都合上厳密な分析手法を紹介することは避けるが、ルールに基づいて決定される学級規模を実際の学

    級規模の操作変数とする二段階最小二乗法(2SLS)によって、β の一致推定量を得られると同時に、β の推定値を学級規模が学力に与える因果効果として解釈することができる。この考え方に基づいて学級規模効果を検証した先行研究が近年増加している(Akabayashi and Nakamura, 2013; Hojo, 2013; 妹尾・北條・篠崎・佐野, 2014)。 このように、教育経済学における学級規模効果の研究では学級規模変数の内生性に対処すること

    が重要視されているが、教育社会学などの分野では内生性による問題よりも、階層性というデータ

    の性質を重視し、階層内の相関(級内相関)を考慮した推定方法を用いる分析が主流となっている (山崎・藤井・水野, 2009; 藤井, 2010)3)。こうした分析手法は、呼び名は様々あるが、マルチレベル・モデル、階層線形モデル(HLM)、混合効果モデル、変量効果モデル、等と呼ばれている。学級規模効果の検証という文脈においては、学力(正答率)や性別、SES は生徒レベルの変数、学級規模は学校規模の変数となり、階層性を持ったデータとして考えることができる。マルチレベル・モデ

    ルの考え方に基づいて学級規模効果を検証するモデルの一例は次のようなものである。

    𝑦𝑦 = δ0 + 𝛿𝛿1𝑋𝑋 + 𝑟𝑟 (2) 𝛿𝛿0 = 𝜃𝜃00 + 𝜃𝜃01𝛽𝛽𝑆𝑆 + 𝑢𝑢𝑜𝑜 (3)

    ここで 𝑋𝑋 は生徒レベルの説明変数を表している。上のモデルでは、切片𝛿𝛿0のランダム効果のみに学校レベル変数である学級規模が含まれている。もちろん、傾き𝛿𝛿1のランダム効果に学級規模を含むようなモデルも推定可能であるが、以下の分析では(2)式及び(3)式で表される基本的なモデルを推定する。 前節で説明したように、以下の分析で使用するデータは、平成 25 年度「全国学力・学習状況調査」

    に追加された標本調査「きめ細かい調査」のデータである。「きめ細かい調査」の母集団は平成 25年度「全国学力・学習状況調査」で調査当日に調査を実施した学校の回答児童・生徒の保護者であ

    り、標本は、地域規模と学校規模を層とし学校を抽出単位とした層化集落抽出法(層内の抽出法は

    単純無作為集落抽出法)により選ばれている(土屋, 2014)。また、調査の性質上、不完全回答学校や無効回答学校も存在する。したがって以下の推定においては、データセットに含まれているサン

    プリング・ウェイトを使用し、かつ可能な場合はジャックナイフ法を用いて推定値の標準誤差を算

    出することとする。分析に使用する変数の記述統計を表 1 に報告している。

  • 学級規模の縮小は中学生の学力を向上させるのか−全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した実証分析−

    5

    表 1 記述統計

    4.分析結果

    表 2 は(1)式及び(2),(3)式の推定結果を報告している 4)。まず、全学校サンプルを OLS で推定した結果(全学校、OLS)を見ると、学級規模変数の係数推定値は負であるものの、統計的に有意ではない。次に、学級規模変数の内生性に対処するために単学級学校のサンプルを用いた推定結果(単

    学級学校、OLS)を見ると、学級規模変数の係数推定値は負で統計的に有意となっている。また、学級規模の上限ルールを活用して学級規模変数の内生性に対処したモデルの推定結果(全学校、

    2SLS)も学級規模変数の係数推定値は負で統計的に有意である。これらの結果は、学級規模変数の内生性を無視した OLS の係数推定値には上方バイアスが発生していると解釈できる。同様の結果は先行研究においても確認されるものであり(Akabayashi and Nakamura, 2013, Table 3; Angrist and Lavy, 1999, Table 2, 4, 5)、本稿の分析もそれを追認するものである。なお、学級規模変数の効果の大きさに着目すると、全学校、2SLS サンプルの数学の推定結果が最も大きく、学級規模 5 人の縮小が正答率を 0.09 標準偏差上昇させている。この効果の大きさは、対象学年と科目が異なることに注意が必要であるが、Akabayashi and Nakamura (2013) が小学 6 年生の国語の分析結果として報告している効果の大きさ 0.065(Table 5、Panel A の(3)列から算出)よりもやや大きく、Angrist and Lavy (1999) が報告しているイスラエル第 5 学年の Reading comprehension における効果の大きさ 0.18(Table 4 の(2)列から算出)や、STAR データを使用した Krueger (1999) の分析結果 0.24(SAT の percentile scoreに対する効果、Table 8 の(2)列から算出)と比べると小さい。 次に、データの階層性を考慮したマルチレベル・モデルの推定結果を確認する。すべての学校を

    サンプルとした推定結果(全学校、HLM)によると、学級規模変数の係数推定値は負であるが、統計的に有意となっているのは国語のみである。なお、この推定結果における学級規模変数の係数推

    定値を学級規模が正答率に与える因果効果として解釈することは難しい。一方、学級規模が外生的

    に決定されると考えられる単学級学校サンプルの推定結果(単学級、HLM)では、国語、数学ともに学級規模の効果は負で統計的に有意となっており、学級規模の縮小が正答率の向上をもたらして

    いると解釈できる。データの階層性と学級規模変数の内生性の両方を考慮したこの推定結果(単学

    級、HLM)は、学級規模効果の推定値として望ましい性質を有していると考えられるが、一学年一学級という特殊な学校環境であることには注意が必要であろう。

    平均 標準偏差 最小値 最大値 平均 標準偏差 最小値 最大値正答率 0.0227 0.9932 -4.2828 1.4310 0.0334 0.9951 -2.6681 1.9607学級規模 33.864 4.770 1 46 33.8620 4.7709 1 46SES 0.072 1.008 -3.3122 4.0706 0.0712 1.0078 -3.3122 4.0706女子ダミー 0.498 0.500 0 1 0.4976 0.5000 0 1学年生徒数 156.932 67.298 1 353 156.8934 67.2830 1 353学級数 4.466 1.712 1 9 4.4650 1.7120 1 9へき地ダミー 0.020 0.139 0 1 0.0197 0.1389 0 1

    国語(生徒数=24,010) 数学(生徒数=24,023)

  • 6

    学級

    規模

    -0.0

    06-0

    .002

    -0.0

    08**

    -0.0

    09*

    -0.0

    14*

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    18*

    -0.0

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    *-0

    .004

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    09**

    *-0

    .010

    ***

    (0.0

    04)

    (0.0

    05)

    (0.0

    03)

    (0.0

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    (0.0

    08)

    (0.0

    10)

    (0.0

    02)

    (0.0

    03)

    (0.0

    03)

    (0.0

    04)

    SES

    0.30

    3**

    *0.

    388

    ***

    0.31

    4**

    *0.

    374

    ***

    0.30

    4**

    *0.

    390

    ***

    0.29

    3**

    *0.

    373

    ***

    0.30

    3**

    *0.

    360

    ***

    (0.0

    10)

    (0.0

    10)

    (0.0

    33)

    (0.0

    31)

    (0.0

    10)

    (0.0

    11)

    (0.0

    10)

    (0.0

    09)

    (0.0

    25)

    (0.0

    23)

    女子

    ダミ

    ー0.

    363

    ***

    0.05

    7**

    *0.

    312

    ***

    0.08

    70.

    363

    ***

    0.05

    8**

    *0.

    366

    ***

    0.06

    1**

    *0.

    313

    ***

    0.09

    4(0

    .020

    )(0

    .019

    )(0

    .080

    )(0

    .071

    )(0

    .020

    )(0

    .019

    )(0

    .019

    )(0

    .019

    )(0

    .072

    )(0

    .066

    )定

    数項

    0.03

    3-0

    .027

    0.11

    80.

    139

    0.18

    20.

    277

    0.04

    70.

    057

    0.14

    1**

    0.20

    9**

    (0.1

    01)

    (0.1

    12)

    (0.0

    92)

    (0.1

    34)

    (0.1

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    (0.1

    97)

    (0.0

    63)

    (0.0

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    (0.0

    70)

    (0.0

    92)

    R20.

    124

    0.15

    60.

    121

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    124

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    3第

    一段

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    21.4

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    .41

    生徒

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    2402

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    36学

    校数

    369

    369

    156

    156

    369

    369

    369

    369

    156

    156

    国語

    全学

    校,

    OLS

    単学

    級学

    校,

    OLS

    全学

    校,

    2SLS

    全学

    校,

    HLM

    数学

    単学

    級,

    HLM

    注:

    (1)列

    から

    (6)列

    の括

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    標準

    誤差

    はジ

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    イフ

    法に

    よっ

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    れて

    いる

    *, **

    , ***

    はそ

    れぞ

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    有意

    水準

    10%

    ,5%

    ,1%

    で統

    計的

    に有

    意で

    ある

    こと

    を示

    す。

    数学

    国語

    数学

    国語

    数学

    (1)

    (2)

    (3)

    (4)

    (5)

    国語

    数学

    国語

    (6)

    (7)

    (8)

    (9)

    (10)

    表2

    推定結果

  • 学級規模の縮小は中学生の学力を向上させるのか−全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した実証分析−

    7

    表3

    学校平均

    SESによってサンプルを分割した推定結果

    学級

    規模

    -0.0

    14*

    -0.0

    15-0

    .021

    **-0

    .010

    -0.0

    11**

    *-0

    .003

    -0.0

    08**

    -0.0

    00(0

    .008

    )(0

    .023

    )(0

    .009

    )(0

    .026

    )(0

    .003

    )(0

    .003

    )(0

    .003

    )(0

    .004

    )SE

    S0.

    313

    ***

    0.28

    8**

    *0.

    380

    ***

    0.38

    0**

    *0.

    308

    ***

    0.27

    9**

    *0.

    376

    ***

    0.36

    8**

    *(0

    .016

    )(0

    .014

    )(0

    .017

    )(0

    .015

    )(0

    .016

    )(0

    .012

    )(0

    .016

    )(0

    .010

    )女

    子ダ

    ミー

    0.37

    7**

    *0.

    354

    ***

    0.06

    9**

    0.04

    9**

    0.38

    0**

    *0.

    356

    ***

    0.07

    4**

    *0.

    050

    **(0

    .030

    )(0

    .026

    )(0

    .028

    )(0

    .025

    )(0

    .030

    )(0

    .025

    )(0

    .028

    )(0

    .025

    )定

    数項

    0.19

    40.

    181

    0.31

    6*

    0.22

    20.

    125

    0.01

    50.

    113

    0.08

    8(0

    .167

    )(0

    .367

    )(0

    .186

    )(0

    .424

    )(0

    .079

    )(0

    .095

    )(0

    .101

    )(0

    .113

    )R2

    0.11

    30.

    120

    0.12

    10.

    154

    第一

    段階

    F値17

    .72

    3.55

    17.7

    53.

    53生

    徒数

    1205

    511

    955

    1206

    911

    954

    1205

    511

    955

    1206

    911

    954

    学校

    数23

    813

    123

    813

    123

    813

    123

    813

    1

    低SE

    S学校

    高SE

    S学校

    (1)

    (2)

    (3)

    (4)

    (5)

    (6)

    注:

    モデ

    ルの

    定式

    化や

    推定

    方法

    に関

    して

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    を参

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    こと

    。低

    SES学

    校と

    は学

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    下位

    50%

    に位

    置す

    る学

    校,

    高SE

    S学

    校と

    は学

    校平

    均SE

    Sが全

    体の

    上位

    50%

    に位

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    る学

    校で

    ある

    *, **

    , ***

    はそ

    れぞ

    れ,

    有意

    水準

    10%

    ,5%

    ,1%

    で統

    計的

    に有

    意で

    ある

    こと

    を示

    す。

    国語

    数学

    2SLS

    HLM

    国語

    数学

    (7)

    (8)

    低SE

    S学校

    高SE

    S学校

    低SE

    S学校

    高SE

    S学校

    低SE

    S学校

    高SE

    S学校

  • 8

    表 3 は、生徒レベルの SES 変数から学校レベルの平均 SES 変数を作成し、平均 SES が低い学校と高い学校にサンプルを分けて推定を行った結果を報告している。低 SES 学校とは学校平均 SESが全体の下位 50%に位置する学校、高 SES 学校とは学校平均 SES が全体の上位 50%に位置する学校である。推定方法は 2SLS と HLM の両方である。表 3 の結果を見ると、科目を問わず、また推定方法を問わず、学校平均 SES が低い学校に通う生徒において学級規模変数の係数推定値が負で統計的に有意となる一方で、学校平均 SES が高い学校に通う生徒においては学級規模の効果が統計的に有意ではないことが確認される 5)。この結果は、社会経済的に恵まれない背景をもった生徒が通う

    学校において少人数学級の効果が大きいことを示すものであり、教育政策の公平性の観点からも重

    要な推定結果であると考えられる。また、この結果は、米国において少人数学級が貧困層の生徒に

    対してより大きな効果をもつことを報告している Krueger (1999) の分析結果と整合的であるが、日本のデータを用いて地価の高い地域の学校において少人数学級の効果が大きいことを示した

    Akabayashi and Nakamura (2013) の分析結果とは整合的ではない。本稿の分析は生徒レベルの SESの情報から学校レベルの SES を算出しており、地価で代理されるものとは異なる側面を計測していることが結果の差異を生み出したものと推測されるが、詳細な検証については今後の課題としたい。

    5.おわりに

    本稿は、平成 25 年度「全国学力・学習状況調査」に追加された標本調査「きめ細かい調査」のデータを使用して、中学 3 年生を対象に学級規模が学力(正答率)に与える影響を検証した。従来の研究とは異なり、「きめ細かい調査」のデータから生徒の社会経済的背景を計測し、これを説明変数

    として制御した推定を行っている。その結果、幾つかの例外は存在するものの、学級規模の縮小が

    生徒の正答率を向上させる効果があることが明らかとなった。また、少人数学級の学力(正答率)

    向上効果は、SES 尺度が相対的に低い生徒が通う学校において大きいことも明らかとなった。社会経済的に相対的に恵まれない学校において少人数学級の効果が大きいことは、少人数学級の導入と

    いう教育政策を進める上で公平性の観点からも重要であると考えられる。今後の研究の進展はもと

    より、科学的根拠に基づく教育政策の立案を加速させるためにも、データの整備及びデータの質の

    向上とともに、データの利用可能性を高めていくことが必要であろう。 【謝辞】 本稿の執筆に当たり、篠崎武久(早稲田大学理工学術院・教授)、佐野晋平(千葉大学法政経学部・

    准教授)の両氏から有益なコメントを頂いた。また、2名の匿名の査読者からも貴重なコメントを

    頂いた。記して感謝申し上げる。なお当然のことながら、本稿の誤りはすべて筆者らに帰するもの

    である。 【脚注】 1) 正答率に関して、国語の A 問題、B 問題、数学の A 問題では左に歪んだ分布、数学 B 問題は右に歪んだ分布と

    なっている。そのため本分析では、A 問題と B 問題を合算し分布の歪みを補正した上で標準化を行った。また、

    本稿では、きめ細かいデータのみで標準化した推定結果を示している。これとは別に、全データを用いて標準化

    した分析も同時に行った。きめ細かいデータと全データを比較すると、正答率の平均値はほぼ同じ、分散は全デ

  • 学級規模の縮小は中学生の学力を向上させるのか−全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した実証分析−

    9

    ータの方がやや大きいものであった。一方で推定結果は全データを用いても変わらなかった。

    2) 「平成 23 年度において学級編制の弾力化を実施する都道府県の状況について」

    文部科学省・学級編制・教職員定数改善等に関する基礎資料

    http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/hensei/005/1295041.htm(2016 年 2 月 29 日確認)

    3) 教育経済学分野の先行研究においても、データの階層性を無視しているわけではない。経済学分野の実証分析

    において階層性のあるデータを用いる場合には、通常、誤差項にクラスター(本研究では学校)内の任意の相関

    が存在することを許した頑健な標準誤差を算出することで、データの階層性による影響に対処している。

    4) 紙幅の都合上、説明変数から SES 尺度を除外した場合の推定結果を報告していないため、ここで結果の概要を

    報告する。全体的な傾向として、SES 変数を除外すると学級規模変数の係数推定値が絶対値でやや大きくなるこ

    とを確認している。ただし、全学校の HLM 推定において SES 変数を除外すると、学級規模変数の係数推定値は

    ほぼ 0 となる。全学校の HLM 推定では学級規模変数の内生性による影響を排除できないため、このような結果

    になるものと推察される。

    5) 表 3 に報告しているが、「高 SES 学校」サンプルを用いた 2SLS 推定の第一段階において、操作変数の係数が 0

    という帰無仮説に対する F 値が 3.5 程度とやや小さい点には注意が必要である。この F 値が小さい場合、操作変

    数と内生変数の相関が弱く、二段階最小二乗法推定量が一致性を持たない可能性がある(Stock and Yogo, 2005)。

    【参考文献】 Akabayashi, H. and Nakamura, R. (2014), “Can Small Class Policy Close the Gap? An Empirical Analysis of Class Size Effects

    in Japan”, Japanese Economic Review, 65, pp. 253–281.

    Angrist, J. D. and Lavy, V. (1999), “Using Maimonides’ Rule to Estimate the Effect of Class Size on Scholastic Achievement”,

    Quarterly Journal of Economics, 114 (2), pp. 533–575.

    Hojo, M. (2013) “Class-size effects in Japanese schools: A spline regression approach”, Economics Letters, 120 (3), pp. 583–

    587.

    Krueger, A. B. (1999), “Experimental Estimates of Education Production Functions”, Quarterly Journal of Economics, 114 (2),

    pp. 497–532.

    Stock J. and Yogo, M. (2005), “Testing for Weak Instruments in Linear IV Regression”, In Identification and Inference for

    Econometric Models: Essays in Honor of Thomas Rothernberg, ed. Donald W. K. Andrews and James H. Stock, New York:

    Cambridge University Press. pp. 80–108.

    Urquiola, M. (2006) “Identifying Class Size Effects in Developing Countries: Evidence from Rural Bolivia”, Review of Eco-

    nomics and Statistics, 88 (1), pp.171–177.

    妹尾渉・篠崎武久・北條雅一(2013)、「単学級サンプルを利用した学級規模効果の推定」、『国立教育政策研究所紀

    要』第 142 集、pp. 161–173.

    妹尾渉・北條雅一・篠崎武久・佐野晋平 (2014), 「回帰分断デザインによる学級規模効果の推定-全国の公立小中

    学校を対象にした分析-」,『国立教育政策研究所紀要』第 143 集, pp. 89–101.

    垂見裕子 (2014) 「家庭の社会経済的背景(SES)の尺度構成」, 国立大学法人お茶の水女子大学『全国学力・学習

    状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究』第 1 章, 平成 26

    年 3 月.

    土屋隆裕 (2014) 「ウェイトづけ」, 国立大学法人お茶の水女子大学『全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)

    の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究』第 8 章, 平成 26 年 3 月.

    中室牧子 (2015) 『「学力」の経済学』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.

  • 10

    藤井宣彰 (2010) 「沖縄県連結データを用いた指導方法と学級規模の影響に関するマルチレベルモデル分析」, 『地

    方自治体の学力調査と接合したパネルデータを用いた学力の規定要因分析(広島大学)調査研究報告書 3』第 2

    部, 第 3 章.

    山崎博敏・藤井宣彰・水野考 (2009) 「学級規模と指導方法が小学生の学力に及ぼす影響:共分散構造分析とマル

    チレベルモデル分析の適用」, 『広島大学大学院教育学研究科紀要』第 58 号, pp. 9–16.

  • 山口慎太郎のブログ山口慎太郎のブログ

    少人数学級の是非は、教育政策上の最も大きな論点の一つだ。2015年には、財務省と文部科学省の間で、少人数学級の是非を巡って激しい論争が繰り広げられた。財務省の主張は、少人数学級の効果は見られないので、35人学級を廃止し40人学級に戻すべきというものだ。これにより、必要な教職員数が約4,000人減り、人件費の国負担分を年間約86億円削減できるという。一方、文部科学省は、教員の多忙感や、きめ細かい指導といった観点から35人学級の維持を求めた。結局、財務省の提案は世論の支持を得られず、35人学級が続けられることとなった。ひとクラスあたりの児童数・生徒数は少ないほうがいいというのは、多くの人の直感にあっている。私自身、選べるならば、子供は少人数学級で学ばせたいと思う。しかし、実際のところ、少人数学級には子供にとってどのような効果があるのだろうか。

    大規模データで少人数学級の効果を検証

    2019-02-04 少人数クラスで学力は上がるか

    山口慎太郎のブログ 読者になるブログ開設(無料) ログイン ヘルプ

    1/4 ページ少人数クラスで学力は上がるか - 山口慎太郎のブログ

    2020/09/07https://labor-econ.hatenablog.com/entry/2019/02/04/073000

    r-takeshitaテキスト ボックス漆委員提出資料

  • 筆者は、慶應義塾大学総合政策学部の伊藤寛武助教、中室牧子准教授*1とともに、少人数学級の効果を検証した。この研究には、関東地方のある自治体がデータと研究資金を提供してくださった。データは県内の公立学校に通う、小4から中3までのすべての児童・生徒を対象としており、のべ300,000人ほどが調査対象となった規模の大きな調査である。この研究は、経済学の学術誌のひとつ、Japan and World Economyに出版された。論文に対してコメントや質問、そして批判があれば、ぜひ著者らに伝えてほしい。

    Effects of class-size reduction on cognitive and non-cognitive skillsWe estimate the effects of class-size reduction by exploiting exogenous variation caused by Maimonides’ rule, which requires that the maximum class si…

    www.sciencedirect.com

    学力への効果は限定的、非認知能力には影響なし私達の分析では、国語と算数の学力試験の結果と、心理的特性についてのいくつかの指標を利用している。ここで分析している心理的特性は、勤勉さ、自制心、自己肯定感であり、これらは学力向上に有益であると考えられている。なかでも勤勉さは、大人になってからの所得などとも関連があることが知られている。これら心理的特性は、学力によって測られる認知能力と区別して、しばしば非認知能力と呼ばれ、近年の労働経済学で注目されている能力だ。データ分析の結果、少人数学級が学力に与える影響は小さいことがわかった。もう少し具体的に言うと、クラス内の児童数を10人減らすと、学力は偏差値換算で0.5上がるようだ。一方、上で挙げたような非認知能力に対しては、少人数学級はほぼ影響しないことがわかった。われわれの推計値は、日本のデータを使った他の研究と大差無い。もちろん、大きめに出ているものも、小さめに出ているものもあるが、驚くような差ではない。また、我々のデータについては、分析手法を変えても推計値はあまり動かなかった。研究ごとに推計値が多少ばらつくのは、分析手法の違いというよりは、分析対象(地域・学年・教科)が違うためではないかと考えている。

    少人数学級が最善の策か今回のわれわれの研究を含め、日本のデータを使った研究の多くは、少人数学級は学力に対しても、非認知能力に対しても効果が大きくないことを示している。文科省は、少人数学級が、教員の多忙感の解消につながると主張したが、その点について検証するためのデータが容易には得られないため、本当のところはよく分かっていない。

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  • 確かに、現場の教員はかつてないような困難に直面しているし、それに対して十分な人的・経済的リソースが与えられているわけでもない。さまざまな障がいを持った子供たちへ対処しているし、これからは、日本語力が不十分な子供たちへの支援も必要だ。部活動にかかわる負担感も増しているし、近年では事務負担も増える一方だ。こうした問題を解決するための政策的な取り組みがなされるべきではあるものの、その対策として、少人数学級が最善であるかどうかは別の話だ。教員の多忙感の解消のためには、教員の加配や、事務職員、専門スタッフの配置といった手段のほうが、より費用対効果が高いかもしれない。少人数学級は「魔法の杖」ではないのだ。

    *1: 肩書は論文執筆時山口慎太郎 (id:mendota) 1年前

    54

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    2018-06-13 データ ≠ エビデンス一般の人々のみならず、教育の専門家・研究者でも、調査を行え…

    2018-06-11 調査は設計がすべて「この調査、もっと良くすることできませんか?」、「〇〇の効…

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  • ノンテクニカルサマリー

    クラスサイズ縮小の認知能力及び非認知能力への効果印刷

    執筆者 伊藤 寛武 (慶應義塾大学)/中室 牧子 (慶應義塾大学)/山口 慎太郎 (東京大学) 研究プロジェクト 医療・教育サービス産業の資源配分の改善と生産性向上に関する分析ダウンロード/関連リンク ディスカッション・ペーパー:19-E-036 [PDF:821KB] (英語)

    このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

    産業・企業生産性向上プログラム(第四期:2016~2019年度)「医療・教育サービス産業の資源配分の改善と生産性向上に関する分析」プロジェクト

    公立小・中学校における1学級あたりの生徒数(学級規模)は何人程度が望ましいか――学校教員からは学級規模の縮小を求める声は根強いが、その費用対効果を巡って度々財政当局との間で議論となってきた。最近では、2014年秋の財務省の財政制度審議会における問題提起は記憶に新しい。1990年代の後半から、学年の在籍者数が40人を1人でも越えると、生徒を20人と21人の学級に2つにわけるという学級編成の非連続性(これを「マイモニデスの法則」などということもある)に注目して、学級規模が学力に与える因果効果を明らかにしようとした研究は急速に増加したが(Krueger, 1999; Angrist and Lavy, 1999)、中でも日本のデータを用いた研究は結論がわかれており、コンセンサスが得られている状況とは言い難い(Akabayashi and Nakamura, 2014; 妹尾・北條, 2016; 伊藤ほか, 2017)。さらに過去の研究は、学級規模が「学力」に与える効果については検証が行われていても、教育成果として学力と同様に重要である「非認知能力」への効果については十分な検証が行われていないという問題もある。本研究では、関東の自治体から提供された大規模データを利用して、学級規模が学力及び非認知能力に与える因果的な効果を推定することを試みた。このデータには、自治体内の公立小学校・中学校に通う小学校4年生から中学校3年生ののべ約30万人の児童・生徒を対象にした学力テストの結果と質問紙調査から推計された非認知能力(自制心・勤勉性・自己効力感)などの情報が含まれている。学級規模以外にも、学力や非認知能力に影響を与えると考えられる保護者の社会経済的な要因や、それぞれの学校固有の特徴を取り除いた上で分析を行った結果、学級規模の縮小は学力を上昇させる効果があることが明らかになった(Table 1)。具体的には、1学級あたりの生徒数を10人減らすことで、学力は0.01から0.07標準偏差(SD)上昇する。この効果は、通塾していない児童・生徒に対して大きい。学級規模の縮小が、通塾していない生徒・児童に対してわずかに大きいことは、家庭の経済的な資源が不足している子供たちに対して質の高い教育を提供することの重要性が示唆されるという点で重要である。また、他の先行研究を参考にして、さまざまな定式化による推定を行ったが、結果に定式化の差による大きな違いは見られなかった。学力については小さいながらも効果が認められた一方で、学級規模の縮小は、非認知能力を改善する効果は認められなかった。一方、本研究も含め、最近の新しいデータを使った研究ほど、学級規模の縮小の効果はないか、あっても小さいことを示している研究が多い(Angrist, et al, 2017など)。ケニアで行われた実験では、ただ単純に学級規模を89人から半分の42人にした学級に割り当てられた児童と、もともとの習熟度に応じて学級規模を半分にした学級に割り当てられた児童では、後者

    ホーム > 論文 > ノンテクニカルサマリー > 2019年度

    r-takeshitaテキスト ボックス漆委員提出資料

  • にしか学力上昇の効果がなかったことが示されている。この理由は、後者の習熟度別の少人数学級を担当した教員は、生徒の習熟レベルにあわせた指導をしたのに対し、前者の単純な少人数学級を担当した教員にはそうした指導ができなかったからであると指摘されている(Duflo et al, 2011)。近年は、生徒の習熟度に適した指導―"Teaching at a Right Level"―を行うことが有効であることを示した研究が増加していることとも整合的である(例えばMuralidharan, et al 2019)。こうした一連の研究を踏まえれば、学級規模の縮小単体で大きな効果を発揮するとは考えにくく、他の政策との組み合わせたときの効果などにも目を向けることは重要であり、わが国における学級規模に関する政策論争が、学級規模の縮小に効果があるかないかという議論に終始することのないよう注意していく必要がある。

    Table1:クラスサイズ縮小の認知能力・非認知能力への効果

    [ 図を拡大 ]データ単位は生徒。各々のセルは学級規模縮小の効果をwaveごと、もしくは全てのサンプルで推定した値を示している。推定は全て2段階最小二乗法にて行なった。被説明変数には全て学年ごとに平均0分散1にする標準化を行なっている。「***」「**」「*」はそれぞれ、統計的に1%有意、5%有意、10%有意を表す。

    参考文献◾ Akabayashi, H., & Nakamura, R. (2014). Can Small Class Policy Close the Gap? An Empirical Analysis of Class Size Effects in

    Japan. The Japanese Economic Review, 65(3), 253-281.◾ Angrist, J. D., & Lavy, V. (1999). Using Maimonides' rule to estimate the effect of class size on scholastic achievement. The

    Quarterly journal of economics, 114(2), 533-575.◾ Angrist, J. D., Lavy, V., Leder-Luis, J., & Shany, A. (2017). Maimonides rule redux (No. w23486). National Bureau of Economic

    Research.◾ Duflo, Esther, Pascaline Dupas, and Michael Kremer. (2011). Peer Effects, Teacher Incentives, and the Impact of Tracking:

    Evidence from a Randomized Evaluation in Kenya. American Economic Review 101 (5): 1739-74.◾ Krueger, A. B. (1999). Experimental estimates of education production functions. The quarterly journal of economics, 114(2),

    497-532.◾ Muralidharan, K., Singh, A., & Ganimian, A. J. (2019). Disrupting education? Experimental evidence on technology-aided

    instruction in India. American Economic Review, 109(4), 1426-1460.◾ 伊藤大幸, 浜田恵, 村山恭朗, 髙柳伸哉, 野村和代, 明翫光宜, & 辻井正次. (2017). クラスサイズと学業成績および情緒的・行動的問

    題の因果関係. 教育心理学研究, 65(4), 451-465.◾ 妹尾渉・北條雅一 (2016) . 学級規模の縮小は中学生の学力を向上させるのか: 全国学力・学習状況調査 (きめ細かい調査) の結果を

    活用した実証分析. 国立教育政策研究所紀要, (145), 119-128.

  • 独立行政法人経済産業研究所(法人番号 6010005005426)

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  • ノンテクニカルサマリー

    少人数学級はいじめ・暴力・不登校を減らすのか印刷

    執筆者 中室 牧子 (慶応義塾大学) 研究プロジェクト 医療・教育の質の計測とその決定要因に関する分析ダウンロード/関連リンク ディスカッション・ペーパー:17-J-014 [PDF:777KB]

    このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

    産業・企業生産性向上プログラム (第四期:2016~2019年度)「医療・教育の質の計測とその決定要因に関する分析」プロジェクト

    2014年秋、財務省の財政制度審議会で問題提起が行われて以降、少人数学級の効果についてさまざまな議論が行われている。2011年度から実施されている公立小学校1年生の少人数学級(1クラスあたりの生徒数を35人以下とする)には約86億円が支出されているが、財政制度審議会で示された資料によると、少人数学級が実施されたにもかかわらず、いじめ・暴力・不登校などの生徒指導上の問題には大きな変化が見られないという(図表1)。ただし、この表では、学級規模といじめ・暴力・不登校の相関関係がある可能性を窺わせるものの、因果関係があるかどうかまでは不明であり、因果関係があるかどうかが政策形成には特に重要であることは言うまでもない。学級規模と「学力」の因果関係を明らかにした研究はそれなりに存在しており、科目によっては学級規模が学力に与える因果効果があることを報告している研究もあるが、総じて見れば学級規模が学力に与える効果は大きくないという見方が増えてきている。一方、少人数学級がいじめ・暴力・不登校に与える因果効果についての検証は十分に行われているとはいいがたい。学力について分析した過去の研究は、学年の在籍者数が40人を1人でも越えると、生徒を20人と21人の学級に2つにわけるという学級編成の非連続性(これを「マイモニデスの法則」などということもある)に注目して、1人の転校生がやってくることによって学級サイズが小さくなるという偶然の状況を利用して、学級規模が学力に与える因果効果を明らかにしようとしたのである。本稿では、この方法を用いて、学級規模がいじめ・暴力・不登校に与える因果効果を推定することを試みた。データは関東近郊の匿名の自治体に提供された学校レベルのデータを用いる。結果をまとめた図表2をみると、学級規模を縮小させれば、小学校の不登校を減少させる因果効果があることが示された。また、非常勤加配教員の配置も、不登校数の減少に大きく貢献している可能性も示されている。この意味では、現在、不登校生徒数の多い学校や学級に、教員や非常勤加配教員を多く配置するのは有効である。一方で、いじめや暴力の不登校への影響については、小中学校とも統計的に有意な因果効果は確認できず、中学校では非常勤加配教員の配置も同様であった。すなわち、いじめ、暴力、不登校と一括りにされがちな問題ではあるが、それらを解決するための方法は同じではなく、いじめや暴力、あるいは中学校に入学した後に生じた問題を、単純に教員の数を増加させることで解決しようとするのは困難であり、スクールカウンセラーや臨床心理士など、いじめ・暴力・不登校などの問題の解決に適した専門家を配置するなど他の政策オプションと比較する必要がある。こうしたことを踏まえ、下記のような点について更なる議論が行われることを期待する。第1に、「教員数を増加させる」こと以外の政策オプションの検討である。たとえば、平成27年度秋に開催された行政事業レビュー(第1日目「子どもの学力」に関する事業で「義務教育費国庫負担金に必要な経費」)において、文部科学省の行政事業レビューシートを見ると、この事業の成果目標は「小学校(または中学校)、特別支援学校の小学部(または中学部)における教員1人当たり児童生徒数がOECD平均を下回る数」とあるなど、過去、教育行政は子どもの教育成果ではなく、教員数を増加させることを成果目標にしてきているが、「教員数を増加させる」という成果目標が妥当かどうかは今一度確認する必要がある。本稿の結論に従っ

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    r-takeshitaテキスト ボックス漆委員提出資料

  • て言えば、教員数の増加や加配は小学校の不登校の改善には効果がある可能性があるものの、小中学校のいじめ・暴力や中学校の不登校では目立った効果が見られていない。スクールカウンセラーや臨床心理士など、いじめ・暴力・不登校などの問題の解決に適した専門家を配置することとの費用対効果を比較してみることが必要ではないか。第2に、海外では、教員の「量」と「質」はトレード・オフの関係にあるという有力な研究が存在しており、現在の「教員の数を増加させる」ことに重点をおいた政策が、教員の質を低下させる恐れがないかどうかを検証する必要がある。最後に自治体のデータ利用がもたらす可能性である。今回の研究では、自治体によって開示された学校単位のデータを用いた分析を行っており、こうしたデータは「科学的根拠に基づく政策」を実現していく上で、極めて重要である。今後はこのように自治体内部の行政データをどのように研究に利用していくかということについての制度化について議論していく必要があると思われる。

    図表1:財政制度審議会の問題提起

    (出所)平成26年10月27日(月)財務省主計局 文教・科学技術関係資料

    図表2:結果のまとめ①学級規模の効果

    いじめ 暴力 不登校小学校 ▼中学校

    ②学級規模×就学援助ダミーいじめ 暴力 不登校

    小学校中学校 △ △

    (注)1. いじめ・暴力・不登校は図表8, 9のModel 6を元に作成。学力は図表IVの推定結果を元にしている。2. △プラスで統計的に有意、▼マイナスで統計的に有意、 統計的に有意ではないことをあらわす。

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  • Withコロナにおける新たな学びへ

    1 少人数による学級編制 〇 学級での密を回避するため、また、GIGA スクール構想を効果的に実現するために

    も、より丁寧に指導ができる少⼈数による学級編制が必要 〇 そのためには、教員の確保と教室の整備が不可⽋。国による財政措置が必須 2 大学の教職課程の充実(新しい時代の教員養成) 〇 平成 31 年4⽉から新しい教職課程が開始 〇 その中で、「ICT を⽤いた指導法」、「アクティブラーニングの視点に⽴った授業改善」

    などが新規追加 〇 オンラインとオフラインをベストミックスした新しい授業スタイルの実現に向けて、

    求められる教員の資質も変わる 〇 「授業をデザインする⼒」、「ICT を活⽤するスキル」、「フォローする⼒」を重点的に 伸ばすことが必要

    3 教科書と教材の在り方 〇 教育課程の基準である学習指導要領をより具体化し、中⽴性などを担保したうえで、

    全国の授業のベースの部分を標準化するため、教科書を1つにできないか 〇 そうすることで、学習の進度が統⼀され、⾮常時は国において、地上波放送などを活⽤

    した学習動画の配信が可能となる 〇 また、平常時においても、副教材であるデジタルコンテンツの作成が容易となることで、

    地域の特性なども踏まえて幅広く充実し、学校現場は多くの選択肢から最適なものを選択可能となる。

    〇 国による学習プラットフォームの整備もさらに有効なものとなる

    髙島委員提出資料

  • 堀田委員提出資料

    「教育再生実行会議 初等中等教育WGの主な論点(案)」に対する意見

    東北大学大学院情報科学研究科・教授・堀田龍也

    ○ 新型コロナウィルス感染症の拡大による学校の臨時休業期間に「同時双方向型のオン

    ライン指導」を提供できた学校/自治体は,4月 16 日時点で設置者の5%,6月 23 日時

    点で15%に留まった。臨時休業期間における学習保障については,児童生徒や保護者に

    大きな不安が存在し,オンライン教育が実施されない事実は学校教育に対する失望に

    つながった。

    ○ オンライン教育が順調に実施された学校/自治体では,①ICT 環境整備が十分であった

    こと,②授業で日常的に ICT が活用されており児童生徒の基本的な ICT 操作スキルが

    備わっていたこと,③児童生徒が ICT を道具として活用しながら学習を進める経験が

    積み重ねられていたことの3つが揃っていたことが知られている。

    ①はGIGAスクール構想によって解消され,②は学習指導要領総則にすでに示されてお

    り,③についても学習指導要領総則にある「学習の基盤となる資質・能力としての情報

    活用能力」として書き込まれている。このことから,GIGA スクール構想後には,学習

    指導要領の趣旨を踏まえた実践が十分に実施されることが期待される。

    ○ 学習指導要領においては,児童生徒に資質・能力の三つの柱をバランスよく育むことが

    期待されている。このうち,知識及び技能の習得・習熟については個別最適な学びにICT

    の活用が有効であることが知られている。学習ログの取得により,児童生徒自身のリフ

    レクションにつながる学習成果の可視化がなされるほか,授業者である教員に対して

    は個々の児童生徒の学習状況が情報集約されて提供され,これらのデータをもとにし

    た児童生徒に対するきめ細やかな指導が可能となる。今後は,教育データ利活用の基盤

    となる「教育データ標準」の策定を加速するとともに,デジタル教科書・デジタル教材

    の有機的なリンクの早期実現や,国がプロトタイプ開発を進めている「オンライン学習

    システム」が全国の学校で活用できるプラットフォームとして早急に構築されること

    が期待される。

    ○ これらの観点から,対面による指導とオンラインによる指導は二項対立で考えること

    ではない。全人的な発達・成長の場,安全安心な居場所としての学校の役割を前提とし

    つつ,「どのように学ぶか」の多様性の体験の観点からも,オンラインによる指導が有

    効に機能する学習場面ではデジタル教科書・デジタル教材等を積極的に活用して児童

    生徒の自立的な学習を支援し,対面による指導においては集合してこそできる学び方

    を積極的に体験させるようにカリキュラム・マネジメントを行うことが期待される。

  • ○ これまでの指導は,教員による経験と勘に頼った部分があったが,学習ログ等の取得に

    よってデータに基づいたより確かな指導が実現することになる。ただし学級サイズが

    大きい場合,学習状況を把握した教員が児童生徒にきめ細やかな指導を施すことは難

    しくなり,GIGAスクール構想の成果が十分に発揮されない可能性がある。

    ○ 紙の教科書・教材と情報端末を同時使用しながら学習を進めることが多くなっており,

    従来の学習机では机上の物が落下する例が見られることから,十分な広さの学習机が

    提供されることが望ましく,相対的に教室が手狭になっている。また,情報端末に合わ

    せて充電保管庫が教室に設置されるが,このことも相対的に教室を手狭にすることに

    なり,三密を避ける観点からも少人数学級が求められる。

    以上

  • 1

    • 人間としての強み(現実世界を理解し状況に応じて意味付け,倫理観,板挟みや想定外と向き合う力 責任を持って遂行する力など)• 共通して求められるのは,文章や情報を正確に読み解き対話する力,科学的に思考・吟味し活用する力,価値を見つけ生み出す感性と力,好奇心・探求力など

    Society 5.0

    超スマート社会

    「日本の教育2050」でVUCA Worldをたくましく生き抜く人間の育成を!

    Volatility Uncertainty Complexity Ambiguity(変動性) (不確実性) (複雑性) (曖昧性)

    これからの社会の本質的特徴

    30年後(2050年に),社会の中心となって活躍する大人を育てる

    これからの社会を生きる人間に求められる力

    文部科学省「Society 5.0に向けた学校ver.3.0」より

    VUCA World

    ・1学級25人~30人は絶対条件←学校における「3密」回避+個別最適な学びの実現・履修主義(時間管理)から修得主義(内容習得)への転換→学習指導要領における標準授業時数の緩和・学校・家庭におけるシームレスなオンライン授業(学びのプラットフォーム) ・幼・小・中・高におけるICT環境整備・健康で文化的な最低限の生活保障としてのインターネット ・多様な災害に対応した学校の情報環境・発電・蓄電・ICT支援員から「ICT活用教育支援員」への転換と学校への必置(GIGAスクールを単なる環境整備で終わらせない)

    短期的な施策(ウィズコロナ)

    →地域を創造する力

    ・地域・社会の教育力の日常的導入

    ・学力と人格を育む「人間教育としての情報教育」→地域を創造する力・個々の学びを最大化する学校教育→個別最適な学びの実現(AIドリル+「教師支援システム」による複線化,学習科学の活用)・障害・文化・性自認・価値観などの多様な子供たちが,よさを発揮し,共に学び合い,共に生きるインクルーシブな教育・対面とオンラインのハイブリッドな授業←不登校・院内学級等の子供支援,個別最適な学び,内気な子供の新たな活躍の場・「21世紀型能力」への学力観の転換に基づく,授業改善・学校経営改善,小学校からの教科「情報」設置,高校入試改革・SEIUS(Secure Educational Information Utilizing Systems:高機密教育情報利活用システム)による全体最適を図った教育データの収集・分析・利活用の加速化→個別最適な学びの実現+主体的・対話的で深い学びの普遍的実現支援・大規模災害時の安否確認・オンライン授業・校務実施と,平時のワークライフバランスを改善する教職員のテレワーク・地域・社会の教育力の日常的導入(ゲストティーチャー・学習支援員・インターネットを活用した世界中の子供・大人との学び等)

    中・長期的な施策(ポストコロナ)

    学びのニューノーマル

    教師主導の一斉授業による知識偏重の教育(工業社会モデル)からの脱却…高校入試の全面的見直しを含む

    鳴門教育大学大学院 藤村

    藤村委員提出資料

  • 2

    学校経営改善・授業改善に関する補足資料21世紀型能力に基づく授業・学校のパラダイムシフト

    2

  • 33

  • 4

    単なるICT機器整備や,コンピュータやインターネットに関する教育に終わらず,学力と人格を育み,「よりよく生き続けようとし続ける幸福な人間」を育む「人間教育としての情報教育」を!

    漆委員提出資料髙島委員提出資料堀田委員提出資料藤村委員提出資料