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アジア科学技術協力の戦略的推進 地域共通課題解決型国際共同研究 事後評価 「ユビキタス情報社会を支える通信基盤技術」 機 関 名: 九州大学 代表者名: 安元清俊 実施期間: 平成 18 年度~平成 20 年度

アジア科学技術協力の戦略的推進 地域共通課題解決 …...・IIT Bombay 各研究チームに日本側 責任者1名、インド側 責任者1名を置く IIT Delhi・Univ

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アジア科学技術協力の戦略的推進

地域共通課題解決型国際共同研究

事後評価

「ユビキタス情報社会を支える通信基盤技術」

機 関 名: 九州大学

代表者名: 安元清俊

実施期間: 平成 18 年度~平成 20 年度

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目次

Ⅰ.国際共同研究の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅱ.経費

1.所要経費 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

2.使用区分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

Ⅲ.研究成果

1.研究成果の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

(1)採択時コメント等に対する対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

(2)共同研究における目標とそれに対する結果及び達成度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

(3)当初計画通りに進捗しなかった理由(計画変更があれば) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

(4)研究成果の科学的・技術的価値について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

(5)研究成果の波及効果について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

(6)研究成果の発表状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

2.共同研究体制

(1)国外参画機関との役割分担及び連携体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24

(2)国際共同研究体制(ネットワーク)の確立状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

(3)実施期間終了後における取組の継続性・発展性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

3.研究成果:サブテーマ毎の詳細

(1)サブテーマ1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27

(2)サブテーマ2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49

(3)サブテーマ3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73

(4)サブテーマ4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・89

(5)サブテーマ5 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・124

(6)サブテーマ6 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・147

(7)サブテーマ7 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・168

Ⅳ.自己評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・190

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1

Ⅰ.国際共同研究の概要

■プログラム名: アジア科学技術協力推進戦略・地域共通課題解決型国際共同研究

■課題名: ユビキタス情報社会を支える通信基盤技術

■機関名: 九州大学大学院システム情報科学研究院

■代表者名(役職): 安元 清俊(九州大学名誉教授)

■共同研究機関名:

国内: 九州大学大学院システム情報科学研究院

佐賀大学理工学部

北海道大学大学院情報科学研究科

東京工業大学大学院理工学研究科

大阪大学大学院工学研究科

国外: Department of Electronics and Telecommunication Engineering, Jadavpur University, India

Department of Electrical Engineering, Indian Institute of Technology (IIT) Madras, India

Department of Electrical Engineering, Indian Institute of Technology (IIT) Bombay, India

Department of Physics, Indian Institute of Technology (IIT) Delhi, India

Department of Electronics and Telecommunication Engineering, Indian Institute of Technology

(IIT) Kharagpur, India

Department of Electronic Science, University of Delhi, India

■共同研究機関代表者名(役職):

国内: 相川 正義 (教授) 佐賀大学理工学部

小柴 正則 (教授) 北海道大学大学院情報科学研究科

水本 哲弥 (教授) 東京工業大学大学院理工学研究科

丸田 章博 (准教授) 大阪大学大学院工学研究科

国外: Bhaskar Gupta (Professor) Jadavpur University

Krishnamurthy Giridhar (Professor) IIT Madras

Girish Kumar (Professor) IIT Bombay

Anurag Sharma (Professor) IIT Delhi

Ranjan Gangopadhyay (Professor) IIT Kharagpur

Enakshi Sharma (Professor) University of Delhi

■実施期間:3年間

■実施経費: 86,7百万円(間接経費込み)

1.課題概要

(1)研究の目的

ユビキタス情報社会の実現へ向けて、情報通信の一層のパーソナル化、高速・大容量化への要請が

高まってきている。これらの社会的要請に応えるためには、パーソナル化に柔軟に対応できる無線通信と

高速・大容量の通信を可能にする光通信の連携を図りながら、両通信技術の高度化を進める必要がある。

本課題では、アジアにおける情報通信先進国インドの拠点大学と協力して、無線通信システム及び光通

信システムの高度化に求められる基盤技術について、アンテナ、電波の送受信方式・回路・装置、電波

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伝搬特性、光ファイバ、光導波路、光デバイス、及び光信号処理方式・回路など情報通信の物理層の視

点から原理実証を行い、両通信システムの高度化への道筋をアジアから発信し、国際標準の創出を目指

す。

(2)内容

無線通信に関しては、➀パーソナル化に対応できる小型、広帯域、高機能アンテナの開発、➁アダプ

ティブアレーアンテナ技術を利用したメッシュ無線LANの構築、➂アンテナと送受信機能モジュールの

一体集積化技術、の開発に取組む。一方、光通信に関しては、光波長多重通信とネットワークの全光化

に必須の技術として、➃光ファイバグレーティングおよび光導波路の高度利用、➄フォトニック結晶ファイ

バの高度利用、➅非線形効果を利用した光集積デバイス、➆全光光信号処理回路の構成法、について

研究開発を行う。

(3)実施体制

九州大学を代表機関とし、国内5大学、インド6大学の参画を得て、大学間国際共同研究として実施す

る。上記7つの研究テーマのそれぞれに対して、国内の1大学とインドの1大学がチームを組み研究を推

進する。日本とインドから各7名ずつ選定した研究責任者で構成する研究運営委員会を組織し、内外の

学協会組織や産業界へ向けて研究成果の国際標準化を目指した情報発信を行う。この情報発信を効果

的に行うために、年1回の公開研究フォーラムを開催するとともに共同研究の Website を設置する。また、

周辺アジア諸国との将来の連携を見据えて、中国研究機関の若手研究者を学術研究員として雇用す

る。

ユビキタス情報社会を支える通信基盤技術

課題の実施内容

研究成果の情報発信 学術団体・産業界関係研究機関

アジア発国際標準の創生を目指す

パーソナル化・マルチメディア化を支える無線通信技術

携帯情報機器用の小型・高性能アンテナの開発

アダプティブアレーアンテナを用いた屋外運用無線LANシステムの構築技術

平面アレーアンテナおよび発振器と送受信機能モジュールへの展開

光波長多重化と全光化システムを支える光通信技術

光ファイバグレーティングと光導波路の高度利用に関する研究フォトニック結晶ファイバの高度利用のための基盤技術非線形効果を利用した光集積デバイスに関する研究半導体光増幅器を用いた高次光信号処理機能の創成

Push-Push oscillator

Planar array antenna

送受信機能モジュール

アダプティブアレーアンテナとメッシュ無線LAN

APAP

AP

AP

AP

AP

AP

APAP

無線通信

小型・高性能アンテナ

GaInAsPInPInP

光集積デバイスの偏波効果

光通信

フォトニック結晶導波路

λ

λ

λ

光ファイバグレーティング

フォトニック結晶ファイバ

全光信号処理回路

・・・

非線形光集積デバイス

T

ユビキタス情報社会を支える通信基盤技術

課題の実施内容

研究成果の情報発信 学術団体・産業界学術団体・産業界関係研究機関関係研究機関

アジア発国際標準の創生を目指す

パーソナル化・マルチメディア化を支える無線通信技術

携帯情報機器用の小型・高性能アンテナの開発

アダプティブアレーアンテナを用いた屋外運用無線LANシステムの構築技術

平面アレーアンテナおよび発振器と送受信機能モジュールへの展開

光波長多重化と全光化システムを支える光通信技術

光ファイバグレーティングと光導波路の高度利用に関する研究フォトニック結晶ファイバの高度利用のための基盤技術非線形効果を利用した光集積デバイスに関する研究半導体光増幅器を用いた高次光信号処理機能の創成

光ファイバグレーティングと光導波路の高度利用に関する研究フォトニック結晶ファイバの高度利用のための基盤技術非線形効果を利用した光集積デバイスに関する研究半導体光増幅器を用いた高次光信号処理機能の創成

Push-Push oscillator

Planar array antenna

送受信機能モジュール

アダプティブアレーアンテナとメッシュ無線LAN

APAP

AP

AP

AP

AP

AP

APAP

無線通信

小型・高性能アンテナ

Push-Push oscillator

Planar array antenna

送受信機能モジュール

Push-Push oscillator

Planar array antenna

Push-Push oscillator

Planar array antenna

送受信機能モジュール

アダプティブアレーアンテナとメッシュ無線LAN

APAP

AP

AP

AP

AP

AP

APAP

APAP

AP

AP

AP

AP

AP

APAP

APAP

AP

AP

AP

AP

AP

APAP

無線通信

小型・高性能アンテナ小型・高性能アンテナ

GaInAsPInPInP

光集積デバイスの偏波効果

光通信

フォトニック結晶導波路フォトニック結晶導波路

λ

λ

λ

光ファイバグレーティング

λ

λ

λλλλ

λλ

λλ

光ファイバグレーティング

フォトニック結晶ファイバフォトニック結晶ファイバ

全光信号処理回路

・・・

全光信号処理回路

・・・

・・・

非線形光集積デバイス

TT

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3

2.採択時コメント

本提案は、インドの研究者と連携し、無線通信システム及び光通信システムの高度化に求められる基

盤技術を情報通信の物理層の視点から究明し、ユビキタス情報社会の構築と通信技術におけるアジア発

の国際標準の創出を目指すというものであり、当該分野の研究でトップレベルにあるわが国と、一定の実

力を有するインドとの間のイコールパートナーシップでの共同研究により、成果の期待できる取組みと言

える。

ただし、インドとの基礎研究分野での交流ネットワーク環境作りとしても評価できるが、多数の項目から成

る共同研究の進め方、インド側のコーディネートやプロジェクト管理などについて整理した上で進める必

要がある。標準化への道が見えていないとの意見もあり、進め方については一層の戦略が求められる。研

究を進める中でアジアの多くの国々を含めていくことを期待する。

日本側参画機関

・九州大学

・北海道大学

・東京工業大学

・大阪大学

・佐賀大学

IIT: Indian Institute ofTechnology

インド側参画機関

・IIT Delhi・IIT Kharagpur・IIT Madras・IIT Bombay・Jadavpur University・University of Delhi

共同研究統括:九州大学 研究代表者 安元清俊

研究運営委員会 日本側:7名インド側:7名で構成

各研究チームに日本側責任者1名、インド側責任者1名を置く

国際標準化を目指した情報発信国際標準化のための連携・支援

日本、インド、アジア諸国の関係研究機関・学協会組織・産業界

研究フォーラム

光通信研究チーム

光ファイバグレーティングおよび光導波路・九州大学・IIT Delhi・Univ. of Delhi

フォトニック結晶ファイバ・北海道大学・IIT Delhi

導波路型光スイッチ素子・東京工業大学・IIT Delhi

全光信号処理回路・大阪大学・IIT Kharagpur

無線通信研究チーム

小型・高性能アンテナ・九州大学・Jadavpur Univ.

無線LANシステム・九州大学・IIT Madras

送受信機能モジュール・佐賀大学・IIT Bombay

各研究チームに日本側責任者1名、インド側責任者1名を置く

日本側参画機関

・九州大学

・北海道大学

・東京工業大学

・大阪大学

・佐賀大学

IIT: Indian Institute ofTechnology

インド側参画機関

・IIT Delhi・IIT Kharagpur・IIT Madras・IIT Bombay・Jadavpur University・University of Delhi

インド側参画機関

・IIT Delhi・IIT Kharagpur・IIT Madras・IIT Bombay・Jadavpur University・University of Delhi

共同研究統括:九州大学 研究代表者 安元清俊

研究運営委員会 日本側:7名インド側:7名で構成

各研究チームに日本側責任者1名、インド側責任者1名を置く

国際標準化を目指した情報発信国際標準化のための連携・支援

日本、インド、アジア諸国の関係研究機関・学協会組織・産業界日本、インド、アジア諸国の関係研究機関・学協会組織・産業界

研究フォーラム

光通信研究チーム

光ファイバグレーティングおよび光導波路・九州大学・IIT Delhi・Univ. of Delhi

フォトニック結晶ファイバ・北海道大学・IIT Delhi

導波路型光スイッチ素子・東京工業大学・IIT Delhi

全光信号処理回路・大阪大学・IIT Kharagpur

無線通信研究チーム

小型・高性能アンテナ・九州大学・Jadavpur Univ.

無線LANシステム・九州大学・IIT Madras

送受信機能モジュール・佐賀大学・IIT Bombay

小型・高性能アンテナ・九州大学・Jadavpur Univ.

無線LANシステム・九州大学・IIT Madras

送受信機能モジュール・佐賀大学・IIT Bombay

各研究チームに日本側責任者1名、インド側責任者1名を置く

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Ⅱ.経費

1.所要経費

(間接経費を含む) (単位:百万円)

所要経費

研 究 項 目 担当機関等 研 究

担当者 H18

年度

H19

年度

H20

年度 合計

1. 携帯情報機器用の小型・高

性能アンテナの開発

2. アダプティブアレーアンテナ

を用いた屋外運用無線LANシ

ステムの構築技術に関する研

3. マイクロ波ミリ波帯における平

面アレーアンテナおよび発振

器と送受信機能モジュールへ

の展開

4. 光ファイバグレーティングおよ

び光導波路の高度利用に関す

る研究

5. 光通信システムにおけるフォト

ニック結晶ファイバの高度利用

のための基盤技術

6. 非線形効果を利用した光集積

デバイスに関する研究

7. 半導体光増幅器を用いた高

次光信号処理機能の創成

九州大学

九州大学

佐賀大学

九州大学

北海道大学

東京工業大学

大阪大学

吉富邦明

安元清俊

賈 洪廷

赤岩芳彦

古川 浩

牟田 修

相川正義

田中高行

西山英輔

安元清俊

賈 洪廷

Florence

Y. Chan

小柴正則

齊藤晋聖

水本哲弥

丸田章博

3.9

3.9

3.9

6.5

3.9

3.9

2.9

3.9

3.9

3.9

6.6

3.7

3.9

3.1

3.9

3.9

3.9

6.5

3.9

3.9

2.8

11.7

11.7

11.7

19.6

11.5

11.7

8.8

所 要 経 費 (合 計) 28.9 29.0 28.8 86.7

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2.使用区分

(単位:百万円)

サブテーマ

サブテーマ

サブテーマ

サブテーマ

サブテーマ

サブテーマ

サブテーマ

7 計

設備備品費 0 0 0 0 1.8 0.8 4.0 6.6

試作品費 0 0 0 0 0 0 0 0

消耗品費

(H18 年のみ) 0.8

1.4 2.5 0.2 1.7

2.6

0.2 9.4

人件費 0 0 0 10.8 0 0 0 10.8

その他経費

(18 年のみ)/

業務実施費

(H19、H20)

1.6

3.6

1.6

6.0

0.5

6.0

2.3

4.8

1.3

4.0

0.4

5.2

0.8

1.8

8.5

31.4

間接経費 1.8 2.7 2.7 5.4 2.7 2.7 2.0 20.0

計 7.8 11.7 11.7 23.5 11.5 11.7 8.8 86.7

※備品費の内訳(購入金額5百万円以上の高額な備品の購入状況を記載ください)

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Ⅲ.研究成果

1.研究成果の概要

ユビキタス情報社会の実現へ向けて、情報通信の一層のパーソナル化、高速・大容量化への要請が

高まってきている。これらの要請に応えるためには、パーソナル化に柔軟に対応できる無線通信と高速・

大容量の通信を可能にする光通信の連携を図りながら、両通信技術の高度化を進める必要がある。無

線通信では、各種携帯情報機器の小型化に伴うアンテナの小型化、ソフトウェア無線、超広帯域

(UWB)無線、無線アドホック、MIMO 無線など多様な無線システムに対応できるように広帯域化、マルチ

バンド化、マルチビーム化、指向性制御、適応制御を含めたアンテナの高性能化、機能化、及び知能化

が重要な課題となっている。また、情報通信のマルチメディア化、多次元ネットワーク化などの進展に伴

い、これらのアンテナ機能を有効に活用したユーザーフレンドリな無線 LAN システムの構築に対する期

待も大きい。一方、光通信においては、高速化・大容量化を支える基盤技術として波長多重 (WDM)通

信技術と光ファイバネットワークの全光化技術の開発が緊急の課題となっている。WDM 技術では数ナノ

メートル間隔で光波長を分波する光分波デバイス、広帯域分散補償デバイス、広帯域光ファイバ増幅器、

全光化技術では光の振幅、位相、波長、光路を光で制御する光信号処理デバイス及び光スイッチング

素子の開発が求められている。

このような背景の下に、無線通信と光通信の高度化のための重要課題として以下の7つのサブテーマ

を設定し、日本側5研究機関とインド側6研究機関の協力により、国際共同研究を推進した。

A. 無線通信技術に関する研究

(1)携帯情報機器用の小型・高性能アンテナの開発

(九州大学、Jadavpur University)

(2)アダプティブアレーアンテナを用いた屋外運用無線LANシステムの構築技術に関する研究

(九州大学、IIT Madras)

(3)マイクロ波ミリ波帯における平面アレーアンテナおよび発振器と送受信機能モジュールへの展開

(佐賀大学、IIT Bombay)

B. 光通信技術に関する研究

(4) 光ファイバグレーティングおよび光導波路の高度利用に関する研究

(九州大学、IIT Delhi、University of Delhi)

(a) ファイバグレーティングの特性解明と光波長多重通信デバイスへの応用

(b) フォトニック結晶導波路の特性解明と光集積回路への応用

(c) 光回路の基本構成要素である方形断面光導波路の偏波効果の解明

(5) 光通信システムにおけるフォトニック結晶ファイバの高度利用のための基盤技術

(北海道大学、IIT Delhi)

(6) 非線形効果を利用した光集積デバイスに関する研究

(東京工業大学、IIT Delhi)

(7) 半導体光増幅器を用いた高次光信号処理機能の創成

(大阪大学、IIT Kharagpur)

サブテーマ (1)、(2)、及び (3) では、構造の 適化による従来型の小型アンテナの特性改善と性能

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7

の向上、アンテナに対する適応制御を利用した新しい無線 LAN システムの構築、及び半導体回路とア

ンテナ系を一体化した高機能・知能アンテナと送受信モジュールの開発に取組んだ。またサブテーマ

(4)、(5)、(6)、及び (7)では、光 DWDM システムに利用するファイバグレーティングの 適化と性能の向

上、フォトニック結晶導波路の特性解明と極微小光集積デバイスへの応用、全光化技術に必要な光集

積デバイスの偏波効果の解明と評価、フォトニック結晶ファイバの広帯域性、分散制御性、高非線形性

の解明と全光ファイバ型デバイスへの応用、3次の非線形効果を利用した導波路型全光スイッチング素

子及び2次の非線形効果を利用した導波路型全光波長変換素子の開発、半導体光増幅器、マッハ-ツ

ェンダ干渉計、及び光スイッチング回路を組み合わせた全光光信号処理回路の構成に取り組んだ。

アジア発の国際標準の創出を目指す国際共同研究の第1フェーズとして、これまで通信技術の分野

で学術交流が十分では無かった日本とインドの拠点大学の間に強固な研究ネットワークを構築し、研究

活動を通してアジア発の国際イニシアティブを発揮すると共にその成果を国内外に情報発信することも本

プロジェクトの重要な目的である。

各研究チームは、担当するサブテーマにおいて設定した研究目標に対して、3.で詳述するような成

果を上げている。これらの研究成果は、プロジェクト全体として、国際的に評価の高い学術雑誌で 73 編

の論文、無線通信や光通信の分野でインパクトの高い国際会議で 105 編の論文として公表され、フォー

ラム等で127 件の論文として口頭発表されている。理論的な研究成果に対しては理論モデルの正確さと

応用性の観点から、技術的な研究成果に対しては技術の新規性と実用化技術への発展性の観点から、

いずれも関係学会において高い評価を得ている。また、研究ネットワークの構築と研究成果の情報発信

に関しては、各研究チーム内での個別の研究者交流に加えて、研究運営委員会及びプロジェクトチー

ムが主催する公開の共同研究フォーラムとワークショップを開催すると共に、ホームページや講演会を通

してプロジェクトに関する積極的な広報活動を行った。

(1)採択時コメント等に対する対応

・提案書では9つのサブテーマを提示して、それらを代表機関(九州大学)が担当するテーマと国内共

同研究機関が担当するテーマに区分していたが、採択された後、このサブテーマの区分を修正し、無

線通信と光通信の技術分野による再区分を行った。

・上記の修正に並行して、提案書におけるサブテーマ (1)-3、(1)-4、及び (1)-5 を1つのサブテーマ

に集約し、「サブテーマ(4) 光ファイバグレーティングおよび光導波路の高度利用に関する研究」の中

の3つの小研究項目に区分した。平成18年度の業務実施計画書を提出した時点から、この区分を用

いている。

・提案が採択された後、上記サブテーマ (4) の研究担当者として、外国人研究員 Florence Y. M.

Chan を採用した。

・研究責任者の定年退職に伴い、「サブテーマ(1) 携帯情報機器用の小型・高性能アンテナの開発」

の研究責任者を、平成20年度から吉富邦明(九州大学 准教授)と交代した。

(2)共同研究における目標とそれに対する結果及び達成度

共同研究の目標は、通信技術の分野においてアジア発の国際標準の創出を目指す国際共同研

究の第1フェーズとして、無線通信と光通信の高度化に求められる基盤技術を学術的に究明し、国際

標準への展開が期待できる成果を得ること、また、共同研究の活動を通して、日本とインドの間に強固

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8

な研究ネットワークを構築すると共にプロジェクトのプレゼンスを内外に情報発信することである。

この目標に対して、上記の研究成果の概要で述べたように、また、「(6)研究成果の発表状況」及

び「3.研究成果:サブテーマ毎の詳細」において後述するように、設定した7つのサブテーマの全般

に亘って、将来の国際標準への展開が期待できる質の高い研究成果を上げることができた。また、共

同研究を通して日本側研究機関、インド側研究機関、及び相互の周辺の研究機関の学術交流を進

め、参画機関間の研究ネットワーク及び周辺の研究機関を含んだ研究者コミュニティを構築した。日

本側研究者とインド側研究者が共著した原著論文は46件である。更に、プロジェクトチームが主催し

た公開研究フォーラム及びワークショップにおける研究討議、それらのダイジェストの内外研究機関へ

の送付、インパクトの高い国際会議における研究成果の発表、その他の様々な広報活動により、プロ

ジェクトのプレゼンスを内外に情報発信した。以上により、共同研究の当初の目標を達成した。

(3)当初計画通りに進捗しなかった理由

該当なし

(4)研究成果の科学的・技術的価値について

研究内容は、無線通信と光通信及び理論的研究から実験的研究、と多岐に亘っているので、サブ

テーマ毎に研究成果の科学的・技術的価値を要約する。

サブテーマ(1)に関して、開発した4セグメント円形マイクロパッチアンテナ、誘電体アンテナ、2重

スロット付き方形パッチアンテナ、変形方形パッチアンテナ、及び誘電体共振器アンテナは、携

帯機器用の小型アンテナとして有望である。更に 適化を行って性能の改善を行うことにより、実用ア

ンテナとして供用されるであろう。また、フォトニック結晶や3次元グレーティングを反射板あるいは透

過板に用いたときのアンテナ効果を理論的に究明した結果は、今後、フォトニック結晶アンテナの開

発に利用されるであろう。

サブテーマ(2)では、アダプティブアレーアンテナをアクセスポイントに導入してアクセス回線と中

継回線で共用する技術及び無線通信における高効率パケット転送技術を提案し、その理論的な

根拠を明らかにすると共に、実証実験によりその有効性を検証した。これらの新規技術を無線

中継システムに導入することにより、システム構築コストを低く抑えながらシステムスループ

ットを大幅に改善した屋外無線 LAN を実現することが期待できる。国際標準化の観点からは、

大きな期待が持てる技術的成果であると言える。 サブテーマ(3)では、マイクロ波ミリ波帯における簡易で経済的な高周波発振器として、多素子

Gunn Diode を用いた第2次高調波発振回路を提案し、その実証に初めて成功した。この MIC 技術

は、各種の高周波半導体素子を用いた IC チップの複合化によってテラヘルツに至る超高周波発振

源を実現するための要素技術となることが期待される。また、平面アンテナ、発信器、変調器を一体複

合化した送信モジュールの構成法とデバイス技術を提案した。アンテナと MIC をインテグレーション

してモジュール化するという新規概念は、無線通信技術の今後の進展に大きく貢献するものである。

サブテーマ(4)の成果は、理論的な側面から、光通信デバイスの進展に学術的に貢献するもので

ある。非対称 2 重コアファイバを利用したファイバグレーティングの波長スイッチング機能、波長チュー

ニング機能、チャネル Add/Drop 機能を理論的に検証したが、これらの実験的検証は今後の課題で

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9

ある。また、フォトニック結晶導波路及び方形断面を持った 3 次元光導波路のモード解析と伝搬解析

のために開発された様々な手法は、規範的な解法として、光集積回路、フォトニック結晶回路、プラズ

モニック導波路、及びシリコン細線導波路の設計に幅広く利用されていくであろう。

サブテーマ(5)においては、フォトニック結晶ファイバの線形及び非線形領域における特性評価,

適化,設計のための強力な計算手法を開発し、ラマン増幅器の利得平坦化のためのポンプ光の波

長配置とパワー分布の 適条件、希土類元素を添加した分散補償機能を有するフォトニック結晶ファ

イバ増幅器及びレーザの 適設計などに関して、世界のトップデータと言える結果を提示した。その

成果は、フォトニック結晶ファイバの特異な性質を解明するという学術的側面に加えて、光通信システ

ムにおけるフォトニック結晶ファイバの実用化へ向けた先導的な役割を果たしている。

サブテーマ(6)では、フォトニックネットワークシステムのキーデバイスとなる全光スイッチングデバイ

スとして、GaInAsP/InP で形成した DFB 導波路型全光スイッチングデバイスを提案し、その高速動作

特性を理論と実験により検証した。理論の成果は、非線形効果による動的な屈折率変化を持った周

期構造導波路中の短パルスの伝搬という複雑な現象の解明に対して学術的な貢献をするものである。

また、提案したデバイスを試作し、光双安定動作、しきい値動作、反転ゲート動作などの基本的なデ

バイス動作が実証されたことにより、今後の実用化研究への展開が期待できる。

サブテーマ(7)では、フォトニックネットワークに必須の全光信号処理デバイスとして、半導体光増

幅器を回路網構成した全光デバイスを提案し、それを設計するための汎用的なシミュレーションコード

を開発した。また、開発したコードを用いて、全光波長変換器、全光変調フォーマット変換器を構成し、

その動作を実証実験により検証した。特に、NRZオンオフ変調方式とRZ二相位相偏移変調方式の間

の変調フォーマット変換器は、光ファイバ通信に関する国際会議で高い評価を受け、フォトニックネッ

トワークのメトロ網と広域網を接続するゲートウェイノードのコア技術として期待されている。

(5)研究成果の波及効果について

プロジェクトの研究テーマは、理論的研究と実験的あるいは技術的研究からなる。上記(4)で述べ

たように、理論的研究の成果は、無線通信と光通信技術の学問的基盤をなす電波科学と光科学の進

展に貢献するものであり、学術研究における引用を通じて関連分野に普及していくであろう。また、実

験的あるいは技術的研究の成果は、無線通信及び光通信システムにおける高度化技術の実現性

を検証したものであり、共同研究の第2フェーズとして実用化へ向けた個別研究を展開することによ

り、高度情報化社会を支える通信基盤技術として発展していくであろう。なかでも、サブテーマ

(2)の成果は実用化に近い段階にある。現在、実機上でのフィージビリティの検討を行うために商用

機を目標にした装置の開発が進められており、実用化に成功すれば、大きな社会的経済的波及効果

が期待できる。また、サブテーマ(5)に関しては、北海道大学とインドの General Glass & Ceramic

Research Institute の研究チームが、JST と DST の支援による 2009 年度プログラム “Strategic

Japanese-Indian Cooperative Programme on Multidisciplinary ICT” へ課題提案を行い、「高出力ファ

イバ増幅器ならびにレーザのための希土類添加ダブルクラッド偏波保持フォトニック結晶ファイバの設

計と作製」に関する国際共同研究プロジェクトが採択された。本プロジェクトの成果を第2フェーズへ

展開する取組みの一つである。

共同研究体制の下で、研究フォーラムとワークショップを日本とインドで交互に8回開催した。プロジ

ェクトメンバーの相互訪問、相互の大学の博士研究員及び大学院学生との研究交流を通して、両国

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の学術交流の活性化に貢献した。研究交流の波及効果として、サブテーマ(5)の北海道大学の研究

チームで活躍したインド出身の博士研究員がサブテーマ(7)を担当した IIT Kharagpur の助教授に

任用されたことを上げることができる。インドの ICT 産業やバイオ産業の 近の目覚しい発展が、米印

間の若手研究者の人的交流効果によりもたらされたものであることを考えると、本プロジェクトで築いた

研究ネットワークがそのような日印間の人的交流に貢献することを期待したい。

(6)研究成果の発表状況

【ワークショップ、国際会議の開催】(19件)

1. プロジェクトチームが主催したワークショップ等

(1) 第1回共同研究フォーラム (2006 年 12 月 10 日、学士会館、東京都)

参加者数: 約45名

主な参加者: 宇佐見正士、吉松 勇、美野真司、秦 正治、福島誠治、藤井輝也、小柴正則、

水本哲弥、丸田章博、相川正義、赤岩芳彦、古川 浩、石井元速、賈 洪廷、安元清俊、

Florence Chan、Bhskar Gupta、Krishnamurthy Giridhar、Prasanta Datta、Kwai-Man Luk、

Le-Wei Li、Taras Kushta

(2) 第2回共同研究フォーラム (2007 年 7 月 5 日、九州大学、福岡市)

参加者数: 約60名

主な参加者: 美野真司、竹田大輔、金谷晴一、吉田啓二、齊藤晋聖、水本哲弥、丸田章博、

相川正義、赤岩芳彦、賈 洪廷、安元清俊、Bhskar Gupta、Anurag Sharma、Enakshi Sharma、

Ranjan Gangopadhyay、Prasanta Datta、Mangalpady Shenoy、Kwai-Man Luk、Le-Wei Li、

Wee Sang Park、Dong Chul Park、Hyo Joon Eom、Hung-chun Chang、Arokiaswami Alphones

(3) 第3回共同研究フォーラム (2007 年 12 月 13 日、IIT Delhi、ニューデリー、インド)

参加者数: 約65名

主な参加者: 山内潤二、水本哲弥、齊藤晋聖、丸田章博、相川正義、田中高行、牟田 修、

賈 洪廷、安元清俊、Ajoy Ghatak、Bhskar Gupta、Anurag Sharma, Enakshi Sharma、

Krishna Thyagarajan、Arun Kumar、Mangalpady Shenoy、Prasanta Datta、Ravendra Varshney

(4) 第4回共同研究フォーラム (2008 年 7 月 3 日、東京工業大学、東京都)

参加者数: 約40名

主な参加者: 荒木純道、植之原裕行、水本哲弥、齊藤晋聖、丸田章博、吉富邦明、田中高行、

牟田 修、賈 洪廷、安元清俊、Bhskar Gupta、Krishnamurthy Giridhar、Anurag Sharma、

Enakshi Sharma、Krishna Thyagarajan、Arun Kumar、Mangalpady Shenoy、Ranjan

Gangopadhyay、Prasanta Datta

(5) 第5回共同研究フォーラム (2008 年 12 月 19 日、Jadavpur University、コルカタ、インド)

参加者数: 約60名

主な参加者: 小柴正則、水本哲弥、吉富邦明、田中高行、牟田 修、安元清俊、Bhskar Gupta、

Krishnamurthy Giridhar、Anurag Sharma, Enakshi Sharma、Bishnu Pal、Mangalpady Shenoy、

Ravendra Varshney、Ranjan Gangopadhyay、Prasanta Datta、Baidyanath Biswas、Pradip Saha

(6) 2007 Japan-Indo Workshop on Microwaves, Photonics, and Communication Systems

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(2007 年 7 月 6 日、九州大学、福岡市)

参加者数: 約60名

主な参加者: 田口光雄、福迫 武、矢加部利幸、横田光広、西本昌彦、森田長吉、吉田啓二、

吉富邦明、赤岩芳彦、牟田 修、安元清俊、Bhskar Gupta、Anurag Sharma, Enakshi Sharma、

Ranjan Gangopadhyay、Prasanta Datta、Subal Kar、Kwai-Man Luk、Wee Sang Park、

Dong Chul Park、Le-Wei Li、Arokiaswami Alphones、Vladimir Yachin、Hyo J. Eom、

Young-Ki Cho、Hung-chun Chang

(7) 2007 Indo-Japan Workshop on Recent Advances in Optics and Photonics

(2007 年 12 月 14 日、IIT Delhi、ニューデリー、インド)

参加者数: 約60名

主な参加者: 水本哲弥、丸田章博、賈 洪廷、安元清俊、Anurag Sharma、Ajoy Ghatak,

Enakshi Sharma、Krishna Thyagarajan、Mangalpady Shenoy、Ravendra Varshney、Bhskar Gupta、

Kehar Singh、Prasanta Datta、Mukul Paul、Ashish Dwivedi

(8) 2008 Japan-Indo Workshop on Microwaves, Photonics, and Communication Systems

(2008 年 7 月 4 日、東京工業大学、東京都)

参加者数: 約40名

主な参加者: 水本哲弥、丸田章博、吉富邦明、田中高行、牟田 修、賈 洪廷、田口光雄、

福迫 武、若林敏雄、坂本隆英、安元清俊、Keren Li、Bhskar Gupta、Krishnamurthy Giridhar、

Anurag Sharma、Enakshi Sharma、Krishna Thyagarajan、Arun Kumar、Mangalpady Shenoy、

Ranjan Gangopadhyay、Prasanta Datta

(9) Microwaves Seminars (2008 年 9 月 16 日~17 日、IIT Bombay、ムンバイ、インド)

参加者数: 8名、主な参加者: 田中高行、安元清俊、Girish Kumar

2. プロジェクトチームが協力したワークショップ等

(10) Sixth Asia-Pacific Engineering Resear Forum on Microwaves and Electromagnetic Theory

(2006 年 8 月 20 日~21 日、復旦大学、上海、中国)

参加者数: 約100名

主な参加者: 粟井郁雄、矢加部利幸、佐藤源之、石田健一、宮本徳夫、前田 洋、渡辺仰基、

田口光雄、福迫 武、賈 洪廷、安元清俊、Ja-Qiu Jin、Shanjia Xu、Kwai-Man Luk、

Chi-Hou Chan、Zhi-Qi Meng、Bing-Zhong Wa、Zhi-Ning Chen、Dong Chul Park、

Young-Ki Cho、Dong Il Kim、Xiao-Ying Zhao

(11) Workshop on Physics and Technology of All Optical Communication Component and Devices

(2007 年 10 月 11 日~16 日、IIT Kharagpur、カラプール、インド)

参加者数: 約200名、

主な参加者: 水本哲弥、迫田和彰、安元清俊、Ajoy Ghatak、Claudio Porzi、Prasanta Datta、

Solomon Saltiel、Velonica Toccafondo、Tomasz Rogowski、Asit Datta、Sukhdev Roy、

Stefano Fallali、Dhruba Biswas、Partha Chaudhuri、Gopal Bhar、Pran Ganguly

(12) Seventh Asia-Pacific Engineering Resear Forum on Microwaves and Electromagnetic Theory

(2008 年 10 月 24 日~25 日、福岡工業大学、福岡市)

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参加者数: 約60名、

主な参加者: 内田一徳、前田 洋、渡辺仰基、松島 章、奥野洋一、西本昌彦、田中雅宏、

横田光広、田口光雄、安元清俊、Bhaskar Gupta、Chi Hou Chan、Meng Huang、Ya-Qiu Jin、

Hun-chun Chang、Hyo Joon Eom、Dong Il Kim、Dong Chul Park、Wee Sang Park、

Sungtek Kahng

(13) International Workshop on Frontiers in Electronics, Information and Communication Engineering

(2008 年 12 月 20 日、Jadavpur University、コルカタ、インド)

参加者数: 約150名

主な参加者: 水本哲弥、吉富邦明、牟田 修、安元清俊、Bhaskar Gupta、Anurag Sharma、

Enakshi Sharma、Baidyanath Biswas、Pradip Saha、Bishnu Pal、Prasanta Datta、Amiya Mallick、

Samik Chakraborty、Jibendu Roy、Jayanta Ghosh、Rowdra Ghatak、Salil Sanyal、Manoj Mitra、

Siddhartha Datta

3. プロジェクト実施期間中にインドで開催された国際会議

(14) Eighth International Conference on Optoelectronics, Fiber Optics and Photonics

(2006 年 12 月 13 日~16 日、ハイデラバード、インド)

プロジェクトチームからの参加者: 齊藤晋聖、Shailendra Valshney、安元清俊、Ajoy Ghatak、

Anurag Sharma、Enakshi Sharma、Bishnu Pal、Ranjan Gangopadhyay、Prasanta Datta、Krishna

Thyagarajan、Arun Kumar、Mangalpady Shenoy、Ravendra Varshney

(15) International Conference on Computers and Devices for Communications

(2006 年 12 月 18 日~20 日、コルカタ、インド)

プロジェクトチームからの参加者: 水本哲弥、安元清俊, Bhaskar Gupta、Ranjan Gangopadhyay、

Prasanta Datta

(16) 19th World Wireless Research Forum (WWRF2007)

(2007 年 11 月 5~7 日、チェンナイ、インド)

プロジェクトチームからの参加者: 古川 浩、Krishnamurthy Giridhar

(17) IEEE Applied Electromagnetics Conference

(2007 年 12 月 19 日~20 日、コルカタ、インド)

プロジェクトチームからの参加者: 吉富邦明、賈 洪廷、Bhaskar Gupta

(18) Ninth International Conference on Optoelectronics, Fiber Optics and Photonics

(2008 年 12 月 14 日~17 日、ニューデリー、インド)

プロジェクトチームからの参加者: 水本哲弥、齊藤晋聖、Shailendra Valshney、安元清俊

Ajoy Ghatak、Anurag Sharma、Enakshi Sharma、Bishnu Pal、Ranjan Gangopadhyay、

Prasanta Datta、Krishna Thyagarajan、Arun Kumar、Mangalpady Shenoy、Ravendra Varshney

(19) First International Conference on Computer Communication, Control and Information

Technology (2009 年 2 月 6 日~7 日、フーグリー、インド)

プロジェクトチームからの参加者: 安元清俊、Bhaskar Gupta

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【研究成果発表等】(計313件)

1. 受賞: 該当なし

2. 原著論文: 国内 92件、 海外 221件

3. 特許出願: 該当なし

【主要雑誌への研究成果発表】(54件)

1. K. Saitoh, T. Fujisawa, T. Kirihara, and M. Koshiba, “Approximate empirical relations for

nonlinear photonic crystal fibers,” Optics Express, Vol. 14, No. 14, pp. 6572-6582, July 2006.

2. K. Saitoh, N. J. Florous, T. Murao, and M. Koshiba, “Design of photonic band gap fibers with

suppressed higher-order modes: Towards the development of effectively single mode large

hollow-core fiber platforms,” Optics Express, Vol. 14, No. 16, pp. 7342-7352, Aug. 2006.

3. K. Saitoh, M. Koshiba, and N. A. Mortensen, “Nonlinear photonic crystal fibers: Pushing the

zero-dispersion towards the visible,” New Journal of Physics, Vol. 8, 207, pp. 1-9, Sept. 2006.

4. N. J. Florous, K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Fluidic sensors based on photonic

crystal fiber gratings: Impact of the ambient temperature,” IEEE Photonics Technology Letters,

Vol. 18, No. 21, pp. 2206-2208, Nov. 2006.

5. M. Aikawa, E. Nishiyama, and T. Tanaka, “Advanced utilization of microwave resonant fields and

its applications to Push-Push Oscillators and reconfigurable antennas,” IEICE Transctions on

Electronics, Vol. E89-C, No. 12, pp. 1798-1805, Dec. 2006.

6. 田中高行, 相川正義, “ガンダイオード装荷コプレーナ線路共振器を用いた K 帯 Push-Push 発

振器,” 電子情報通信学会論文誌 C, Vol. J89-C, No. 12, pp. 1003-1010, 2006 年 12 月.

7. 西山英輔、久富亮治、相川正義, “ビーム切換制御機能を有するマイクロストリップアレーアンテ

ナ,” 電子情報通信学会論文誌 C, Vol. J89-C, No. 12, pp. 1011-1018, 2006 年 12 月.

8. Y. Tsuchida, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Design of single-moded holey fibers with large-mode-

area and low bending losses: The significance of the ring-core region,” Optics Express, Vol. 15,

No. 4, pp. 1794-1803, Feb. 2007.

9. D. Zhang and H. Jia, “Numerical analysis of leaky modes in two-dimensional photonic crystal

waveguides using Fourier series expansion method with perfectly matched layer,” IEICE

Transactions on Electronics, Vol. E90-C, No. 3, pp. 613-622, Mar. 2007.

10. N. J. Florous, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Numerical modeling of cryogenic temperature sensors

based on plasmonic oscillations in metallic nanoparticles embedded into photonic crystal fibers,”

IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 19, No. 5, pp. 324-326, Mar. 2007.

11. K. Sasaki, S. K. Varshney, K. Wada, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Optimization of pump spectra

for gain-flattened photonic crystal fiber Raman amplifiers operating in C-band,” Optics Express,

Vol. 15, No. 5, pp. 2654-2668, Mar. 2007.

12. S. K. Varshney, Y. Tsuchida, K. Sasaki, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Measurement of chromatic

dispersion and Raman gain efficiency of a hole-assisted fibers: Influence of bend,” Optics Express,

Vol. 15, No. 6, pp. 2974-2980, Mar. 2007.

13. T. Murao, K. Saitoh, N. J. Florous, and M. Koshiba, “Design of effectively single-mode air-core

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14

photonic bandgap fiber with improved transmission characteristics for the realization of ultimate

low loss waveguide,” Optics Express, Vol. 15, No. 7, pp. 4268-4280, Apr. 2007.

14. S. K. Varshney, K. Saitoh, M. Koshiba, and P. J. Roberts, “Analysis of a realistic and idealized

dispersion compensating photonic crystal fiber Raman amplifier,” Optical Fiber Technology, Vol.

13, No. 2, pp. 174-179, Apr. 2007.

15. S. K. Varshney, N. J. Florous, K. Saitoh, M. Koshiba, and T. Fujisawa, “Numerical investigation

and optimization of photonic crystal fiber for simultaneous dispersion compensation over S+C+L

wavelength bands,” Optics Communications, Vol. 274, No. 1, pp. 74-79, June 2007.

16. K. Mishina, S. M. Nissanka, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “All-optical modulation format conversion from NRZ-OOK to RZ-QPSK using parallel

SOA-MZI OOK/BPSK converters,” Optics Express, Vol. 15, No. 11, pp. 7774-7785, June 2007.

17. K. Saitoh, N. J Florous, T. Murao, and M. Koshiba, “Realistic design of large-hollow-core

photonic band-gap fibers with suppressed higher order modes and surface modes,” IEEE/OSA

Journal of Lightwave Technology, Vol. 25, No. 9, pp. 2440-2447, Sept. 2007.

18. K. Saitoh, N. J. Florous, T. Murao, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Photonic bandgap fiber

filter design based on nonproximity resonant coupling mechanism,” IEEE Photonics Technology

Letters, Vol. 19, No. 19, pp. 1647-1549, Oct. 2007.

19. V. Yachin and K. Yasumoto, “Method of integral functionals for electromagnetic wave scattering

from a double-periodic magnetodielectric layer,” Journal of Optical Society of America A, Vol. 24,

No. 11, pp. 3606-3617, Nov. 2007.

20. Y. Higa and H. Furukawa, “Experimental evaluations of wireless multihop networks associated

with Intermittent periodic transmit,” IEICE Transactions on Communications, Vol. E90-B, No.

11, pp. 3216-3223, Nov. 2007.

21. 比嘉征規, 古川 浩, “線トポロジー型無線マルチホップネットワークにおける高効率中継伝送

方式,” 電子情報通信学会 論文誌 B, Vol. J90-B, No. 12, pp. 1225-1238, 2007 年 12 月.

22. 田中高行, 堤誠典, 相川正義, “90ºハイブリッド回路移相器を用いた Ku 帯 Push-Push VCO,”

電子情報通信学会論文誌 C, Vol. J90-C, No. 12, pp. 894-902, 2007 年 12 月.

23. F. Y. M. Chan and K. Yasumoto, “Design of wavelength tunable long-period grating couplers

based on asymmetric nonlinear dual-core fibers,” Optics Letters, Vol. 32, No. 23, pp. 3376-3378,

Dec. 2007.

24. K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Dispersion, birefringence, and amplification

characteristics of newly designed dispersion compensating hole-assisted fibers,” Optics Express,

Vol. 15, No.26, pp. 17724-17735, Dec. 2007.

25. 金清敏幸, 比嘉征規, 古川 浩, “無線 LAN マルチセル環境下での VoIP 伝送特性,” 電子情

報通信学会論文誌 B, Vol. J91-B, No. 1, pp. 14-21, 2008 年 1 月.

26. S. K. Varshney, K. Sasaki, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Design and simulation of 1310 nm and

1480 nm single-mode photonic crystal fiber Raman lasers,” Optics Express, Vol. 16, No. 2, pp.

549-559, Jan. 2008.

27 K. Iizawa, S. K. Varshney, Y. Tsuchida, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Bend-insensitive lasing

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15

characteristics of single-mode, large-mode-area ytterbium-doped photonic crystal fiber,” Optics

Express, Vol. 16, No. 2, pp. 679-591, Jan. 2008.

28. K. Saitoh, N.J. Florous, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Tunable photonic crystal fiber couplers

with a thermo-responsive liquid crystal resonator,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology,

Vol. 26, No. 6, pp. 663-669, Mar. 2008.

29. S. Bhunia, D. Sarkar, S. Biswas, P. P. Sarkar, B. Gupta, and K. Yasumoto, “Reduced size small

dual and multi-frequency microstrip antennas,” Microwave and Optical Technology Letters, Vol.

50, No. 4, pp. 961-965, April 2008.

30. J. E. McElhenny, R. K. Pattnaik, J. Toulouse, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Unique characteristic

features of stimulated Brillouin scattering in small-core photonic crystal fibers,” Journal of

Optical Society of America B, Vol. 25, No. 4, pp. 582-593, Apr. 2008.

31. T. Murao, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Structural optimization of air-guiding photonic bandgap

fibers for realizing ultimate low loss waveguides,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology,

Vol. 26, No. 12, pp. 1602-1612, June 2008.

32. S. K. Varshney, K. Saitoh, N. Saitoh, Y. Tsuchida, M. Koshiba, and R. K. Sinha, “Strategies for

realizing photonic crystal fiber bandpass filters,” Optics Express, Vol. 16, No. 13, pp. 9459-9467,

June 2008.

33. Y. Tsuchida, K. Saitoh, and M. Koshiba, “A design method for single-polarization holey fibers

with improved beam quality factor,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, Vol. 26, No. 14,

pp. 2162-2167, July 2008.

34. S. M. Nissanka, K. Mishina, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “Wavelength conversion characteristics of SOA-MZI based all-optical NRZ-OOK to

RZ-BPSK modulation format converter,” IEICE Transactions on Communications, Vol. E91-B,

No. 7, pp. 2160-2164, July 2008.

35. K. Yasumoto and K. Watanabe, “Analysis of discontinuities in two-dimensional photonic crystal

waveguides using Floquet modes concept,” International Journal of Microwave and Optical

Technology, Vol. 3, No. 3, pp. 357-403, Aug. 2008.

36. 藤井大樹, 牟田 修, 赤岩芳彦, “アンテナ素子当たりの 大送信電力が制限された SDMA シ

ステムにおける 適重み係数の決定法とその特性評価,” 電子情報通信学会論文誌 B, Vol.

J91-B No. 9, pp. 972-979, 2008 年 9 月.

37. M. Skorobogatiy, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Full-vectorial coupled mode theory for the

evaluation of macro-bending loss in multimode fibers, application to the hollow-core photonic

bandgap fibers,” Optics Express, Vol. 16, No. 19, pp. 14945-14953, Sept. 2008.

38. Z. Varallyay, K. Saitoh, J. Fekete, K. Kakihara, M. Koshiba, and R. Szipocs, “Reversed

dispersion slope photonic bandgap fibers for broadband dispersion control in femtosecond fiber

lasers,” Optics Express, Vol.16, No.20, pp. 15603-15616, Sept. 2008.

39. 東坂悠司, 丸田一輝, 比嘉征規, 古川 浩,“無線マルチホップネットワークにおける経路予約

型周期的間欠送信,” 電子情報通信学会論文誌 B, Vol. J91-B, No. 10, pp. 1287-1298, 2008

年 10 月.

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16

40. K. Kawasaki, T. Tanaka, and M. Aikawa, “K-band second harmonic oscillator using mutually

synchronized Gunn diodes embedded on slot line resonators,” IEICE Transactions on Electronics,

Vol. E91-C, No. 11, pp. 1751-1756, Nov. 2008.

41. S. K. Varshney, K. Saitoh, K. Iizawa, Y. Tsuchida, M. Koshiba, and R. K. Sinha, “Raman

amplification characteristics of As2Se3 photonic crystal fibers,” Optics Letters, Vol. 33, No. 21,

pp. 2431-2433, Nov. 2008.

42. 牛嶋優, 西山英輔, 相川正義, “ダイオードの非線形結合を用いた広帯域円偏波切換マイクロ

ストリップアンテナ,” 電子情報通信学会論文誌 B, Vol. J92-B, No. 1, pp. 280-286, 2009 年 1

月.

43. F. Y. M. Chan, K. Yasumoto, and E. K. Sharma, “Analysis of cladding modes in an asymmetric

dual-core fiber,” Microwave and Optical Technology Letters, Vol. 51, No. 2, pp. 507-510, Feb.

2009.

44. F. Y. M. Chan, K. Yasumoto, and P. Shum,“Coupled-mode analysis of Bragg- reflection filters

based on asymmetric nonlinear dual-core fibers,” Journal of Optical Socity of America A, Vol. 26,

No.3, pp. 489-496, Mar. 2009.

45. K. Yasumoto, “Semi-analytical approach for a specific microstructured fiber,” PIERS Online, Vol.

5, No. 1, pp. 95-100, 2009.

46. K. Watanabe and K. Yasumoto, “Accuracy improvement of the Fourier series expansion method

for Floquet-mode analysis of photonic crystal waveguides,” Progress In Electromagnetics

Research, PIER 92, pp. 209-222, 2009.

47. V. Jandieri, K. yasumoto, and B. Gupta, “Directivity of radiation from a localized source coupled

to electromagnetic crystals,” Journal of Infrared, Millimeter and Terahertz Waves, Online Paper

No.: DOI 10.1007/s10762-009-9524-4, June 2009.

48. L. Lolit Kumar Singh, B. Gupta, K. Yoshitomi, and K. Yasumoto, “New single layer wideband

rectangular patch antenna,” to be published in Asian Journal of Physics, Vol. 19, No. 2, 2009.

49. K. Yoshitomi, “A study on the excitation and the input impedance of an antenna,” to be published

in Asian Journal of Physics, Vol. 19, No. 2, 2009.

50. S. K. Varshney, K. Saitoh, M. Koshiba, B. P. Pal, and R. K. Sinha, “Design of S-band

Erbium-doped dual-core photonic crystal fiber amplifiers with ASE supression,” IEEE/OSA

Journal of Lightwave Technology, Vol. 27, No. 11, pp. 1725-1733, Nov. 2009.

51. K. C. Patra, R. Singh, E. K. Sharma, and K. Yasumoto, “Analysis of transmission characteristics

of long period gratings in tapered optical fibers,” Applied Optics, Vol. 48, No. 31, pp. G95-G100,

Nov. 2009.

52. S. K. Varshney, K. Saitoh, R. K. Sinha, and M. Koshiba, “Coupling characteristics of multicore

photonic crystal fiber-based 1×4 power splitters,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology,

Vol. 27, No. 12, pp. 2062-2068, Dec. 2009.

53. K. Watanabe and K. Yasumoto, “Numerical Modeling of Photonic Crystal Circuits Using Fourier

Series Expansion Method based on Floquet Mode” in Microwave and Millimeter Wave Techniques

to be prined in December 2009, IN-TECH, Vienna.

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17

54. V. Janidieri, K. Yasumoto, A. Sharmna, and H. Chauhan, “Modal analysis of specific

microstructured optical fibers using a model of layered cylindrical arrays of circular rods,” to be

published in IEICE Trans. Electronics, Vol. E93-C, No. 1, Jan. 2010. 【学会などでの発表実績】(88件)

1. Y. Higa and H. Furukawa, “Experimental evaluations of wireless multihop network associated

with the Intermittent periodic transmit,” IEEE VTS Asia Pacific Wireless Communication

Symposium (APWCS 2006), Aug. 2006.

2. H. Jia and K. Yasumoto, “Guiding modes of two-dimensional photonic crystal waveguides with a

defect chain,” 2006 China-Japan Joint Microwave Conference, Aug. 2006.

3. H. Jia and K. Yasumoto, “Coupled cavity waveguides of photonic crystal consisting of magnetized

ferrite medium,” 2006 Joint 31st International Conference on Infrared and Millimeter Waves and

14-th International Conference on Terahertz Electronics, Sept. 2006.

4. H. Jia and K. Yasumoto, “Coupled cavity waveguides consisting of two-dimensional

electromagnetic crystals formed by rectangular cylinders,” 2006 International Symposium on

Antennas, Propagation and EM Theory, Oct. 2006.

5. N. J. Florous, K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Thermo-optical sensitivity analysis of

highly-birefringent photonic crystal fibers with elliptically elongated air holes: Towards

polarimetric-sensing fiber platforms,” Optical Fiber Sensors Conference (OFS 18), Oct. 2006.

6. K. Saitoh, N. J. Florous, T. Murao, and M. Koshiba, “Realization of large hollow-core photonic

band-gap fibers with suppressed higher-order modes,” IEEE LEOS Annual Meeting (LEOS 2006),

Oct. 2006.

7. S. Mine, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “Study on beam controllable antenna by orthogonal

excitation,” International Symposium on Antennas and propagation (ISAP), Nov. 2006.

8. S. Chakraborty, U. K. Dey, S. Panda, B. Gupta and K. Yasumoto, “Parasitically loaded broad

band microstrip antennas for proposed IEEE 802.15.3a (UWB) communication systems,” 2006

Asia Pacific Microwave Conference, Dec. 2006.

9. K. Yasumoto and H. Jia, and B. Gupta, “Radiation from a dipole source located in photonic

crystals,” International Conference on Computers and Devices for Communications, Dec. 2006.

10. E. Nishiyama and M. Aikawa, “Polarization controllable microstrip antenna using beam lead PIN

diodes,” 2006 Asia-Pacific Microwave Conference (APMC), Dec. 2006.

11. M. Tsutsumi, T. Tanaka, and M. Aikawa, “A Ku-band Push-Push VCO using phase shifters,”

2006 Asia-Pacific Microwave Conference (APMC), Dec. 2006.

12. S. K. Varshney, K. Saitoh, N. J. Florous, and M. Koshiba, “A novel photonic crystal fiber design

for identical dispersion compensation over S+C+L wavelength bands,” International Conference

on Optoelectronics, Fiber Optics and Photonics (PHOTONICS 2006), Dec. 2006.

13. K. Sasaki, S. K. Varshney, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Optimizing the gain-profile of a realistic

dispersion compensating photonic crystal fiber Raman amplifier by genetic algorithm,”

International Conference on Optoelectronics, Fiber Optics and Photonics (PHOTONICS 2006),

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18

Dec. 2006.

14. T. Mizumoto, J.-K. Seo, K. Tamura, and Y. Akano, “All-optical switching in a GaInAsP DFB

waveguide,” International Conference on Computer and Devices for Communication

(CODEC-06), Dec. 2006.

15. K. Saitoh, N. J. Florous, T. Murao, and M. Koshiba, “Design of large hollow-core photonic

band-gap fibers with suppressed higher-order modes,” Optical Fiber Communication

Conference/National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC 2007), Mar. 2007.

16. T. Murao, K. Saitoh, N. J. Florous, and M. Koshiba, “Single-mode air-guiding photonic bandgap

fiber with improved broadband transmission characteristics: The benefits of an anti-resonant core

design,” Optical Fiber Communication Conference/National Fiber Optic Engineers Conference

(OFC/NFOEC 2007), Mar. 2007.

17. K. Saitoh, H. Nagano, N. J. Florous, and M. Koshiba, “Enhancement of the stimulated Brillouin

scattering of higher-order acoustic modes in hole-assisted fibers,” Optical Fiber Communication

Conference/National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC 2007), Mar. 2007.

18. N. J. Florous, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Inline cryogenic temperature sensor based on the

excitation of localized plasmonic oscillations in metallic nanoparticles embedded into photonic

crystal fibers,” Optical Fiber Communication Conference/National Fiber Optic Engineers

Conference (OFC/NFOEC 2007), Mar. 2007.

19. Y. Tsuchida, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Large-mode-area single-mode holey fiber with low

bending losses: Towards high power beam delivery systems,” Optical Fiber Communication

Conference/National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC 2007), Mar. 2007.

20. K. Mishina, S. M. Nissanka, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “All-optical NRZ-OOK to RZ-QPSK error-free conversion at 10.7Gsymbol/s using

parallel SOA-MZI OOK/BPSK converters in a MZI configuration,” Optical Fiber Communication

Conference & Exposition (OFC/NFOEC 2007), Mar. 2007.

21. H. Furukawa, “On the path diversity effect of FIR filter array,” IEEE Vehicular Technology

Conference 2007 Spring, April 2007.

22. Y. Touzaka, Y. Higa and H. Furukawa, “Evaluations of wireless multihop network incorporating

intermittent periodic transmit and packet forwarding path reservation,” IEEE Vehicular

Technology Conference 2007 Spring, April 2007

23. S. K. Varshney, Y. Tsuchida, K. Sasaki, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Experimental demonstration

of Raman gain efficiency and chromatic dispersion of hole-assisted fiber: Influence of bend,”

Conference on Lasers and Electro-Optics/Quantum Electronics and Laser Science Conference

(CLEO/QELS 2007), May 2007.

24. K. Saitoh, N. J. Florous, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Tunable photonic crystal fiber

couplers infiltrated with highly-thermo-responsive liquid crystal substances,” Conference on

Lasers and Electro-Optics/Quantum Electronics and Laser Science Conference (CLEO/QELS

2007), May 2007.

25. N. J. Florous, K. Saitoh, T. Murao, and M. Koshiba, “Radiation dose enhancement in photonic

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19

crystal fiber Bragg gratings: Towards photo-ionization monitoring of irradiation sources in harsh

nuclear power reactors,” Conference on Lasers and Electro-Optics/Quantum Electronics and

Laser Science Conference (CLEO/QELS 2007), May 2007.

26. K. Saitoh, N. J. Florous, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “All-fiber integrated assemblies based

on the resonant tunneling effect in multi-core photonic band-gap fibers,” Conference on Lasers

and Electro-Optics/Quantum Electronics and Laser Science Conference (CLEO/QELS 2007),

May 2007.

27. K. Mishina, S. M. Nissanka, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “All-optical NRZ-OOK to RZ-QPSK conversion using parallel SOA-MZI OOK/BPSK

converters,” Conference on Lasers and Electro-Optics/the Quantum Electronics and Laser

Science Conference (CLEO/QELS 2007), May 2007.

28. E. Nishiyama and M. Aikawa, “Circular polarization controllable microstrip antenna,” IEEE

Antennas and Propagation Society International Symposium, June 2007.

29. Y. Arima, T. Tanaka, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “Microstrip array antenna integrating

Push-Push Ocsillator and PSK modulator,” IEEE Antennas and Propagation Society International

Symposium, June 2007.

30. N. J. Florous, K. Saitoh, S. K. Varshney, Y. Tsuchida, T. Murao, and M. Koshiba, “Inline

cryogenic temperature sensors based on photonic crystal fiber Bragg gratings in infiltrated with

noble gases for harsh space applications,” Conference on Lasers and Electro-Optics/

International Quantum Electronics Conference (CLEO/Europe-IQEC 2007), June 2007.

31. S. K. Varshney, K. Sasaki, K. Saitoh, N. J. Florous, and M. Koshiba, “1.3 μm photonic crystal

fiber Raman laser,” Conference on Lasers and Electro-Optics/International Quantum Electronics

Conference (CLEO/Europe-IQEC 2007), June 2007.

32. K. Yasumoto, H. Jia, and B. Gupta, “Analysis of radiation from a dipole source coupled to

woodpile photonic crystals,” 2007 URSI International Symposium on Electromagnetic Theory,

July 2007.

33. K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Resonant coupling in photonic crystal fibers,”

Opto-Electronics and Communications Conference/International Conference on Integrated

Optics and Optical Fiber Communication (OECC/IOOC 2007), July 2007.

34. S. K. Varshney, K. Saitoh, N. J. Florous, and M. Koshiba, “A simple and practical design

approach to realize band-pass photonic crystal fiber filters,” Opto-Electronics and

Communications Conference /International Conference on Integrated Optics and Optical Fiber

Communication (OECC/IOOC 2007), July 2007.

35. N. J. Florous, K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Fluidic sensors based on photonic

crystal fiber gratings: An emerging technology for realizing ultra-low thermo-responsive sensing

platforms,” Integrated Photonics and Nanophotonics Research and Applications/Slow and Fast

Lights Topical Meetings (IPNRA/SL 2007), July 2007.

36. T. Mizumoto, Y. Akano, K. Tamura, and M. Yoshimura, “(Invited) DFB waveguide all-optical

switching devices employing pump-induced refractive index change in GaInAsP,” International

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Conference on Materials for Advanced Technologies 2007 (ICMAT 2007), Symposium-D, July

2007.

37. S. M. Nissanka, K. Mishina, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “Wavelength conversion characteristics of SOA-MZI based all-optical NRZ-OOK to

RZ-BPSK modulation format converter,” 12th Optoelectronics and Communications Conference

/16th International Conference on Integrated Optics and Optical Fiber Communication

(OECC/IOOC2007), July 2007.

38. H. Jia and K. Yasumoto, “Radiation from a striate antenna located in photonic crystals,” 2007

International Symposium on Antennas and Propagation, Aug. 2007.

39. D. Zhang, K. Yasumoto, and H. Jia, “Analysis of microcavities on two-dimensional photonic

crystals,” 2007 International Symposium on Antennas and Propagation, Aug. 2007.

40. S. Chakraborty, B. Gupta, D. R. Poddar, and K. Yasumoto, “Reactive loading of dielectric

rectangular waveguide antenna for better impedance matching,” 2007 International Symposium on

Antennas and Propagation, Aug. 2007.

41. D. Fujii, O. Muta, and Y. Akaiwa, “A weight optimization method under constraint of the

maximum power for an antenna element in SDM systems,” IEEE VTS Asia Pacific Wireless

Communication Symposium (APWCS 2007), Aug. 2007.

42. K. Maruta, Y. Tohzaka, Y. Higa, and H. Furukawa, “Bidirectional traffic handlings in wireless

multihop networks incorporating intermittent periodic transmit and packet forwarding path

reservation,” IEEE VTS Asia Pacific Wireless Communication Symposium (APWCS 2007), Aug.

2007.

43. Z. Li and H. Furukawa, “An enhanced vector coding and its application to delay spread MIMO

channels,” IEEE VTS Asia Pacific Wireless Communication Symposium (APWCS 2007), Aug.

2007.

44. T. Tanaka, M. Tsutsumi, and M. Aikawa, “A wideband Push-Push VCO using common phase

shifter,” International Symposium on Antennas and propagation (ISAP), Aug. 2007.

45. Y. Tazaki, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “Beam steering microstrip antenna with varactor diode,”

International Symposium on Antennas and propagation (ISAP), Aug. 2007.

46. S. Feng, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “A wideband dual circularly polarized array antenna by

using microwave multi layer technology,” International Symposium on Antennas and propagation

(ISAP), Aug. 2007.

47. K. Yasumoto and H. Jia, “Dispersion characteristics of coupled cavity waveguides on two-

dimensional photonic crystals,” International Conference on Electromagnetics in Advanced

Applications, Sept. 2007.

48. F. Y. M. Chan and K. Yasumoto, “Design of long-period grating couplers based on asymmetric

dual-core fibres,” International Conference on Electromagnetics in Advanced Applications, Sept.

2007.

49. K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Broadband dispersion compensating hole-assisted

fibers,” European Conference on Optical Communication (ECOC 2007), Sept. 2007.

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50. T. Tanaka, M. Tsutsumi, and M. Aikawa, “A wideband Push-Push VCO using a phase shifter in

the common feedback loop,” 37th European Microwave Conference 2007 (EuMC 2007), Oct.

2007.

51. K. Kawasaki, T. Tanaka, and M. Aikawa, “A novel K-band Push-Push Oscillator using slot ring

resonator embedding Gunn diodes,” 37th European Microwave Conference 2007 (EuMC 2007),

Oct. 2007.

52. M. Yoshimura and T. Mizumoto, “Short pulse propagation in DFB waveguides,” 13th Microoptics

Conference (MOC’07), Oct. 2007.

53. Z. Li and H. Furukawa, “Imbalanced power allocation to compensate for interblock interference

for block signal transmissions associated with pseudo-inverse matrix equalizer,” 19th World

Wireless Research Forum (WWRF2007), Nov. 2007.

54. K. Yoshitomi, “A study on current sources used in finite-difference time-domain antenna

analysis,” IEEE Applied Electromagnetics Conference, Dec. 2007.

55. H. Jia, K. Yasumoto, and B. Gupta, “Emission characteristics of a line source covered by an

electromagnetic crystal embedded in a magnetized ferrite slab,” IEEE Applied Electromagnetics

Conference, Dec. 2007.

56. F. Y. M. Chan and K. Yasumoto, “Design of switchable and wavelength tuneable Bragg-reflection

filters based on grating-assisted nonlinear dual-core fibres,” 5th Workshop on Fibers and Optical

Passive Components, Dec. 2007.

57. Y. Tsuchida, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Single-polarization photonic crystal fibers based on

resonant coupling phenomenon,” IEEE/LEOS Winter Topicals Conference 2008, Jan. 2008.

58. S. K. Varshney, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Evaluation of induced form-birefringence and PMD

in dispersion-compensating hole-assisted fibers,” Optical Fiber Communication Conference/

National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC 2008), Feb. 2008.

59. T. Murao, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Structural optimization of ultimate low loss air-guiding

photonic bandgap fibers,” Optical Fiber Communication Conference/National Fiber Optic

Engineers Conference (OFC/NFOEC 2008), Feb. 2008.

60. T. Tominaga, O. Muta, and Y. Akaiwa, “A least mean square based algorithm to determine

transmit and receive weights in eigenbeam MIMO systems,” IEEE Vehicular Technology

Conference 2008 Spring, May 2008.

61. K. Saitoh, K. Kakihara, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Nonlinear enhancement and dispersion

management in bismuth microstructured fibers with a filled slot defect,” Conference on Lasers

and Electro-Optics/Quantum Electronics and Laser Science Conference (CLEO/QELS 2008),

May 2008.

62. F. Poli, D. Passaro, A. Cucinotta, S. Selleri, L. Vincetti, L. Rosa, K. Saitoh, Y. Tsuchida, S. K.

Varshney, and M. Koshiba, “Polygonal large-mode-area leakage channel fibers with reduced

mode distortion,” First Mediterranean Photonics Conference, June 2008.

63. M. Bhattacharya, B. Gupta, K. Yasumoto, and H. Jia, “Neural network modeling of scattering

parameters from a conducting post in rectangular waveguide,” Progress In Electromagnetics

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Symposium, July 2008.

64. Y. Ushijima, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “Wide band switchable circularly polarized microstrip

antenna using double-balanced multiplier,” IEEE Antennas and Propagation Society International

Symposium, July 2008.

65. S. K. Varshney, K. Saitoh, R. K. Sinha, and M. Koshiba, “Theoretical design of multi-core

photonic crystal fiber based 1×4 power splitters,” Opto-Electronics and Communications

Conference/Australian Conference on Optical Fiber Technology (OECC/ACOFT 2008), July

2008.

66. Y. Tsuchida, K. Saitoh, S. K. Varshney, L. Rosa, and M. Koshiba, “Design of single-mode leakage

channel fibers with large-mode-area and low bending loss,” Opto-Electronics and

Communications Conference/Australian Conference on Optical Fiber Technology (OECC/

ACOFT 2008), July 2008.

67. L. Rosa, K. Saitoh, Y. Tsuchida, S. K. Varshney, M. Koshiba, F. Poli, D. Passaro, A. Cucinotta,

S. Selleri, and L. Vincetti, “Single-mode large-mode-area leakage channel fibers with octagonal

symmetry,” Integrated Photonics and Nanophotonics Research and Applications/Slow and Fast

Lights Topical Meetings (IPNRA/SL 2008), July 2008.

68. K. Sakamoto, R. Shimizu, O. Muta, and Y. Akaiwa, “Co-channel interference suppression by

dynamic channel assignment based on reuse partitioning in OFDMA systems using multiple

antenna reception,” IEEE VTS Asia Pacific Wireless Communication Symposium (APWCS 2008),

Aug. 2008.

69. K. Yasumoto and K. Watanabe,” Numerical modeling of two-dimensional photonic crystal circuits

using Fourier modal method based on Floquet modes,” 2008 China-Japan Joint Microwave

Conference, Sept. 2008.

70. F. Y. M. Chan and K. Yasumoto, “Coupled-mode analysis of a metal-coated planar waveguide

with a corrugated long-period grating,” 2008 China-Japan Joint Microwave Conference, Sept.

2008.

71. F. Poli, L. Vincetti, D. Passaro, A. Cucinotta, S. Selleri, L. Rosa, K. Saitoh, Y. Tsuchida, S. K.

Varshney, and M. Koshiba, “Fundamental and high-order mode bending loss in leakage channel

fibers,” European Conference on Optical Communication (ECOC 2008), Sept. 2008.

72. L. Lolit Kumar Singh, B. Gupta, Y. Yoshitomi, and K. Yasumoto, “Quad and tri frequency band

cross slot rectangular patch antenna,” 2008 International Symposium on Antennas and

Propagation, Oct. 2008.

73. K. Yoshitomi, B. Gupta, and L. Lolit Kumar Singh, “A study on cross slot rectangular patch

antenna,” 2008 International Symposium on Antennas and Propagation, Oct. 2008.

74. V. Yachin and K. Yasumoto, “Numerical analysis of three-dimensional gratings using the method

of integral functionals,” 2008 International Symposium on Antennas and Propagation, Oct. 2008.

75. K. Kawasaki, T. Tanaka, and M. Aikawa, “A harmonic synchronized oscillator using Gunn diodes

embedded on slot line resonators,” XXIX General Assembly of the International Union of Radio

Science, Oct. 2008.

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76. K. Yasumoto and V. Jandieri, “Directivity of radiation from a localized source embedded in

photonics crystals,” 2008 International Conference on Fiber Optics and Photonics, Dec. 2008.

77. F. Y. M. Chan, P. Shum, K. Yasumoto, and E. K. Sharma, “Modal analysis of asymmetric

dual-core fibers,” IEEE PhotonicsGlobal@Singapore 2008, Dec. 2008.

78. K. Mitsunaga, K. Maruta, Y. Higa and H. Furukawa, “Application of directional antenna to

wireless multihop network enabled by IPT forwarding,” International Conference on Signal

Processing and Communication Systems, Dec. 2008.

79. K. Saitoh and M. Koshiba, “Microstructured optical fibers: From design to applications,”

International Conference on Fiber Optics and Photonics (PHOTONICS 2008), Dec. 2008.

80. S. K. Varshney, K. Saitoh, Y. Tsuchida, M. Koshiba, and R. K. Sinha, “Amplification

characteristics of As2Se3 photonic crystal fibers,” International Conference on Fiber Optics and

Photonics (PHOTONICS 2008), Dec. 2008.

81. S. K. Varshney, K. Saitoh, M. Koshiba, and B. P. Pal, “Erbium-doped, bend-insensitive, S-band

photonic crystal fiber amplifiers,” International Conference on Fiber Optics and Photonics

(PHOTONICS 2008), Dec. 2008.

82. V. Yachin and K. Yasumoto, “Analysis of metallic three-dimensional gratings using the method of

integral functionals,” 1st International Conference on Computer Communication, Control and

Information Technology, Feb. 2009.

83. S. M. Nissanka, A. Maruta, S. Mitani, K. Shimizu, T. Miyahara, T. Aoyagi, T. Hatta, A. Sugitatsu,

and K. Kitayama, “All-optical format conversion from NRZ-OOK to RZ-QPSK using integrated

SOA three-arm-MZI wavelength converter,” Optical Fiber Communication Conference &

Exposition (OFC/NFOEC 2009), Mar. 2009.

84. K. Kawasaki, T. Tanaka, and M. Aikawa, “V-band 8th harmonic Push-Push oscillator using

microstrip ring resonator,” 2009 IEEE MTT-S International Microwave Symposium, June 2009

85. M. Sasaki, O. Muta, and Y. Akaiwa, “Performance evaluation of OFDM transmission for radio

relaying in measured outdoor channels at 2.4GHz-band,” 2009 IEEE VTS Asia Pacific Wireless

Communication Symposium (APWCS 2009), Aug. 2009.

86. I. Takamatsu, S. M. Nissanka, A. Maruta, K. Shimizu, T. Miyahara, T. Aoyanagi, A. Sugitatsu,

and K. Kitayama, “All-optical XOR gate using integrated SOA three-arm-MZI wavelength

converter,” 35th European Conference and Exhibition on Optical Communication (ECOC2009),

Sept. 2009.

87. K. Yasumoto, V. Janidieri, and B. Gupta, “Electromagnetic scattering by cylindrical arrays of

circular rods,” 2009 International Conference on Microwave Technology and Computational

Electromagnetics (ICMTCE 2009), Nov. 2009.

88. K. Yasumoto, V. Janidieri,, and B. Gupta, “Scattering of electromagnetic plane waves from

layered cylindrical arrays of circular rods,” accepted for the 2009 International Symposium on

Microwave and Optical Technology (ISMOT 2009), Dec. 2009.

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2.共同研究体制

(1)国外参画機関との役割分担と連携体制

7つのサブテーマのそれぞれに対して、日本側の1研究機関とインド側の1研究機関が参画して、研

究チームを編成した。各研究チームには日本側とインド側に研究責任者を置き、研究代表者は各研

究責任者と緊密に連絡を取りながら、課題研究の進展を図った。この連携を円滑に行うために、IIT

Delhi の Anurag Sharma 教授がインド側の研究責任者の代表を担当した。

各研究チームは、研究の進捗状況に関する平時の情報交換を主に電子メールや相互訪問で行い

ながら、6ヶ月毎に開催した共同研究フォーラムにおいて担当テーマに関する成果を発表した。共同

研究フォーラムでは、発表された成果に対して、一般参加者を含めた研究討議を行った。

各研究チームでは、担当テーマに関して得意な部分で専門的な知識を提供することを基本として、

日本側とインド側の役割分担を決めた。したがって、連携の形は研究チーム毎に異なっている。例え

ば、インド側機関が実験に関して豊富な経験があるテーマでは、インド側が実験部分を担当し、日本

側機関は理論の部分を担当した。逆に、インド側機関のシミュレーション技術が優れているテーマでは、

日本側機関は実験部分を担当した。

イコールパートナーシップの考えに基づき、事前に国際共同研究における各研究機関の分担内容

と研究資源の利用方法について合意文書を交わして、研究資源の提供を以下のように分担した。

1) 国内機関

・日本側機関の研究用備品及び消耗品の購入

・日本で開催した共同研究フォーラムに参加するインド側研究者の招聘旅費

・日本側研究者の国内旅費及び外国旅費

・日本とインドで開催した共同研究フォーラムのダイジェストの印刷製本費

・日本側機関の人件費

・人的資源(博士研究員、研究スタッフ)

・インド側研究者が訪問したときの居室と研究資材の提供

2) 国外機関

・インド側機関の研究用備品及び消耗品の購入

・インド側研究者の国内旅費及び外国旅費

・インド側機関の人件費

・人的資源(博士研究員、研究スタッフ)

・日本側研究者が訪問したときの居室と研究資材の提供

各サブテーマの日本側研究責任者とインド側研究責任者をメンバーとする研究運営委員会を設け

て、2006 年 7 月にプロジェクトが発足して以降6ヶ月毎に、合計5回の研究運営委員会を開催した。研

究運営委員会では、サブテーマ毎に共同研究の進捗状況や共同研究を進める上で生じた問題点に

ついて報告を受け、それらについて審議した。また、研究フォーラムの開催地と開催時期についても

審議した。なお、2008 年 12 月 19 日に開催した 後の研究委員会では、今後の共同研究の継続性に

ついて意見交換を行った。

3) 研究運営委員会の開催

委員会メンバー: 安元清俊(委員長)、赤岩芳彦、相川正義、小柴正則、水本哲弥、丸田章博、

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吉富邦明、賈 洪廷、Anurag Sharma(インド側代表委員)、Bhaskar Gupta、

Girish Kumar、Krishnamurthy Giridhar、Krishna Thyagarajan、Bishnu Pal、

Arun Kumar、Enakshi Sharma、Ranjan Gangopadhyay,

第1回研究運営委員会: 2006 年 12 月 10 日、学士会館、東京都

出席者: 安元清俊、赤岩芳彦、相川正義、小柴正則、水本哲弥、丸田章博、賈 洪廷、

Bhskar Gupta、Krishnamurthy Giridhar、Prasanta Datta(代理)

第2回研究運営委員会: 2007 年 7 月 5 日、九州大学、福岡市

出席者: 安元清俊、赤岩芳彦、相川正義、齊藤晋聖(代理)、水本哲弥、丸田章博、賈 洪廷、

Bhskar Gupta、Anurag Sharma、Enakshi Sharma、Ranjan Gangopadhyay、

Mangalpady Shenoy(代理)

第3回研究運営委員会: 2007 年 12 月 13 日、IIT Delhi、ニューデリー

出席者: 安元清俊、牟田 修(代理)、相川正義、齊藤晋聖(代理)、水本哲弥、丸田章博、

賈 洪廷、Bhskar Gupta、Anurag Sharma、Enakshi Sharma、Prasanta Datta(代理)、

Krishna Thyagarajan、Arun Kumar、Prasanta Datta(代理)、Ravendra Varshney (代理)

第4回研究運営委員会: 2008 年 7 月 3 日、東京工業大学、東京都

出席者: 安元清俊、牟田 修(代理)、田中高行(代理)、齊藤晋聖(代理)、水本哲弥、

丸田章博、吉富邦明、賈 洪廷、Bhskar Gupta、Krishnamurthy Giridhar、

Anurag Sharma、Enakshi Sharma、Krishna Thyagarajan、Arun Kumar、

Ranjan Gangopadhyay

第5回研究運営委員会: 2008 年 12 月 19、Jdavpur 大学、コルカタ

出席者: 安元清俊、牟田 修(代理)、田中高行(代理)、小柴正則、水本哲弥、吉富邦明、

Bhskar Gupta、Krishnamurthy Giridhar、Anurag Sharma、Enakshi Sharma、Bishnu Pal、

Ranjan Gangopadhyay、Mangalpady Shenoy(代理)

(2)国際共同研究体制(ネットワーク)の確立状況

7つのサブテーマに対する個別の研究チームとして、九州大学と Jadavpur 大学、IIT Madras、IIT

Delhi、及び Delhi 大学の間、北海道大学と IIT Delhi の間、東京工業大学と IIT Delhi、大阪大学と

IIT Kharagpur の間、佐賀大学と IIT Bombay の間で国際共同研究のネットワークを構成し、更に、共

同研究フォーラムと研究運営委員会の活動を通して、日本側5研究機関とインド側6研究機関の全体

に亘るネットワークを構築した。このネットワークの活動を支援するため、九州大学にプロジェクトのホ

ームページを開設した。

アジア発の国際標準の創出を目指す国際共同研究活動として、プロジェクトの趣旨と研究内容につ

いてアジアの国々の理解と支援を得ることは非常に重要である。このため、中国、香港、韓国、台湾、

シンガポールの主要研究機関における研究者を共同研究フォーラム及びワークショップに招聘し、ア

ジア地域における研究者間ネットワークの構築を図った。また、研究代表者は、以下の会議に出席し

て、プロジェクトの広報活動を行った。

1. 第6回アジア太平洋工学研究フォーラム(2006 年 8 月 20 日~21 日、復旦大学 上海、中国)

基調講演: ”Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies

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Supporting Fully Ubiquitous Information Society”

2.IEEE AP-S Fukuoka Chapter、IEEE AP-S Japan Chapter、及び電子情報通信学会アンテナ・伝播

研究会の共催による特別講演(2008 年 1 月 24 日、てぃるる沖縄、那覇市)

講演題目: インドの大学との共同研究について

3.International Workshop on Frontiers in Electronics, Information and Communication Technology

(2008 年 12 月 20 日、Jadavpur 大学、コルカタ、インド)

Chief Guest スピーチ: 日本とインドの科学技術協力の必要性

4.Academy of Technology(2008 年 12 月 22 日、Hoogly, West Bengal, インド)

特別講演: Why we need Indo-Japan Collaboration in Communication Technology

(3)実施期間終了後における取組の継続性・発展性

日本側研究機関とインド側研究機関は、本プロジェクトを通信技術におけるアジア発の国際標準の

創出を目指す日印国際共同研究の第1フェーズとして捉え、共同研究を推進した。その結果、通信技

術の分野で交流実績の少なかった日本とインドの拠点大学の12研究グループが、共同研究を通して

関連技術の方向性を揃える取り組みを行い、共通の学術的基盤の下に強固な研究ネットワークを構

築した。

共同研究の第2フェーズでは、今回のプロジェクトで得た学術的成果を実用化技術へ展開する取り

組みが求められる。そのためには、研究テーマの焦点を絞って、日本とインドの産業界も取り込んだ研

究体制が必要である。したがって、第2フェーズでは、構築したネットワークを活用してサブテーマ毎に

共同研究プロジェクトを計画することになるだろう。各研究チームは、実施期間終了後における共同研

究の取組みについて独自に検討を進めている。

実施期間終了後における共同研究の継続性に関連して、今回のプロジェクトの参画機関と支援機

関の間で3件の共同研究を計画し、JST と DST の支援による 2009 年度プログラム 「Strategic

Japanese-Indian Cooperative Programme on “Multidisciplinary Research Field, which combines

Information and Communication Technology with Other Fields (Multidisciplinary ICT) “」へ課題提案

を行った。プロジェクトに参画した日本とインドの研究機関は共同研究の継続に関して共に強い意欲

を持っている。日本側とインド側の研究者は、第2フェーズの共同研究の実現に向けて、JST、日本学

術振興会、DST、DOT 等が支援する国際共同研究プログラムについて緊密に情報交換することを

約束している。

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3.研究成果:サブテーマ毎の詳細

(1)サブテーマ1

1.研究題目

携帯情報機器用の小型・高性能アンテナの開発

2.研究機関

九州大学システム情報科学研究院

Jadavpur University, India

3.研究者

安元清俊、吉富邦明、賈 洪廷 (九州大学)

Bhaskar Gupta (Jadavpur University)

4.研究の目的

携帯電話、多様な無線 LAN システムへの応用を目的として、小型で広帯域、高利得、複数周波数

動作などの機能を持ったアンテナの開発に取組む。対象とするアンテナの基本構造は、円形パッチ

アンテナ、方形パッチアンテナ、誘電体アンテナ、誘電体共振器アンテナ、フォトニック結晶等の周期

構造を反射板あるいは透過板に用いたアンテナである。放射素子と給電系を含む構造をスペクトル

領域法、モーメント法、有限要素法、時間領域有限差分法等を用いて数値解析し、それぞれのアンテ

ナ構造における利得、周波数帯域、指向性の得失を明らかにする。その結果を基にして、アンテナの

使用目的に応じた構造の 適化を図る。 適化の方法には、Jadavpur University の研究グループ

が開発したニューラルネットワークのアルゴリズムと市販されているシミュレータを用いる。 終的には、

適化を行った構造について、アンテナを試作して実証実験を行う。

5.期待される結果

小型化、高利得化、広帯域化、多周波数化の観点から 1 GHz ~10 GHz の周波数域において有

望なアンテナの構造とその動作特性が提示され、また、フォトニック結晶や3次元グレーティングをア

ンテナの反射板あるいは透過板に利用するときの設計指針が明らかになる。

6.研究の方法

九州大学と Jadavpur University で協議して、小型、・高利得、・広帯域、多周波数動作が期待で

きるアンテナとして、円形マイクロパッチアンテナ、誘電体アンテナ、スロット付き方形パッチアンテナ、

誘電体共振器アンテナの開発を行うこと、及び、アンテナの指向性や偏波の制御、周波数の弁別を

目的として、フォトニック結晶や3次元グレーティングをアンテナの反射板あるいは透過板に用いたとき

の放射特性を理論的に究明することを決めた。解析モデルなどの理論的側面は主に九州大学が担

当し、アンテナの試作は主に Jadavpur University が担当した。試作したアンテナの実証実験と性能

評価は両大学が協力して行った。したがって、本サブテーマの成果は両大学の共同成果である。

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7.主要な成果

7.1 九州大学と Jadavpur University の共同成果

7.1.1 パッチアンテナの性能向上と小型アンテナの開発

(A)接地導体板にW型スロットを付与した4セグメント円形マイクロパッチアンテナ[8]

放射指向性を劣化させることなく、10GHz 帯において広帯域化が可能な小型アンテナとして、接

地導体板にW型スロットを設けた4セグメント円形マイクロパッチアンテナを提案し、その性能を評価し

た。モーメント法を用いて放射特性の解析を行い、図-1 に示すように、提案したアンテナ構造の 適

化を行った。半径16mm の円形パッチを4つのセグメントに等分割し、各セグメントを 2mm だけ離して

配置している。基板は、比誘電率が 2.4ε =r 、厚さが1/16 inch のテフロン( PTFE )である。接地導

体版に 5.5mm の線幅で切ったW型スロットの大きさは、その全面積が円形パッチの面積の約3倍にな

るように調整した。円形パッチの一つのセグメントを特性インピーダンス 50Ω の同軸線路で給電した。

給電点の位置は ( 8.5 , 8.5 )− −mm mm である。残りの3つのセグメントは、寄生素子として働く。このとき、

円形パッチにはz

110TM モードが励振される。

提案したアンテナの試作と実証実験を Jadavpur 大学で行った。試作したアンテナのリターンロスと

放射パターンの測定結果を図-2と図-3に示している。標準的な円形マイクロパッチアンテナの比帯

図-1. 接地導体板に W 型スロットを持つ4セグメント円形マイクロパッチアンテナ.

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域は10GHz 帯において約 3% 程度である。これに対して、円形パッチを4つのセグメントに分割するこ

とにより、図-2(a) に示すように比帯域を約 7.5% に増加させることができ、更に、接地導体版にW型

のスロットを設けることで、同図(b) に示すように比帯域を13% まで増加させることができる。3つ寄生

セグメントと接地導体版のW型スロットは放射パターンには大きな影響を与えず、図-3 に示すように、

通常の円形マイクロパッチアンテナと同様な良好な放射パターンを得ることができる。提案したアンテ

ナは IEEE 802.15.3a (UWB) 標準の広帯域ワイレスシステムに適合していると言える。

(B) 小型誘電体ロッドアンテナ[16][22]

方形導波管 (WR-90) で励振する小型誘電体アンテナを提案した。導波管内部に挿入した誘電

体ロッドの端面にピラミッド型のテーパー部分と金属ポストから成るリアクティブ素子を装荷してインピ

ーダンス整合をとる方法を検討した。金属ポストのインピーダンス特性を計算する方法を開発し、それ

を利用して、ポストの大きさと位置を 適化した。提案したアンテナの構造を図-4 に示す。誘電体ロッ

ドには比誘電率が 2.4 のテフロンを用いて、その長さは10GHz で共振するように決めている。図-5

では、リアクティブ素子を装荷したときのリターンロス特性について測定値と計算値を示し、リアクティ

ブ素子を装荷しない場合と比較している。リアクティブ素子を装荷してインピーダンス整合をとることに

図-2. 4セグメント円形マイクロパッチアンテナのリターンロスの測定結果. 実線: リターン

ロス、破線: 反射係数の位相角(度).

(a) スロットが無い接地導体板の場合

[GHz]f

°

Ret

urn

Loss

[dB

]

°

Phas

e[d

egre

e]

(b) W 型スロット付き接地導体板の場合

°

Phas

e[d

egre

e]

Ret

urn

Loss

[dB

]

[GHz]f

図-3. 4セグメント円形マイクロパッチアンテナの指向性利得の測定結果. 実線: E 面内

指向性、破線: H 面内指向性、θ : アンテナに対する仰角.

(a) スロットが無い接地導体板の場合 (b) W 型スロット付き接地導体板の場合

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より、リターンロスを約 13dB− 改善することができた。また、E面放射パターンとH面放射パターンを

図-6 と図-7に示して、リアクティブ素子を装荷したことによる放射パターンの改善効果を測定と計算

から検証した。図-8は 提案したアンテナの交差偏波特性を示している。これらの結果から、10GHz

帯において、リターンロスが 20.4dB− 、前後比が18dB 、ビーム幅がE面で 30° およびH面で 36° 、

交差偏波レベルが 30dB− の小型誘電体アンテナが実現できることを理論と実験により確認した。

(a) (b)

図-4. 小型誘電体アンテナの構造と概観.

図-5. 誘電体アンテナのリターンロス特性.

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(C) 2重スロット付き方形パッチアンテナ[3][17]

放射指向性を劣化させることなく、多周波動作が可能な小型アンテナとして、同軸給電された2重ス

ロット付き方形パッチアンテナを提案し、その性能を検討した。電磁界シミュレータによる放射特性の

図-6. 誘電体アンテナの E 面放射パターン.

図-7. 誘電体アンテナのH面放射パターン.

図-8. 誘電体アンテナの交差偏波特性.

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解析を行い、提案したアンテナ構造の 適化を行った。図-9 に4種類の方形パッチアンテナの構造

を示し、表-1にそれぞれのアンテナの放射特性の計算結果を示している。Antenna I は従来型の方

形パッチアンテナである。Antenna II は Antenna I と同じ構造をしているが、給電点の位置を 適化

することにより、 2.468GHz と 3.057GHz の2つの周波で動作することができる。この場合の周波数比

は約1.24 である。Antenna III では、この周波数比を改善し更にパッチの大きさを低減するため、パッ

チの片側から2つのスロットを切り込んでいる。その結果、1.239GHz と 2.46GHz の2つの周波数(周

波数比: 2.0 )で約 25dB− の良好なリターンロス特性を持ったアンテナが得られる。Antenna III の構

造の特性は2つのスロットの大きさと位置及び給電点の位置に強く依存しており、これらを Antenna IV

に示すように 適化すると、1.24GHz 、1.468GHz 、 2.473GHz 、及び 3.436GHz の4つの周波数で

の動作が可能になる。2つのスロットを切り込んだことにより、パッチの大きさを従来型の85% まで低

減することができる。Antenna III については、それを試作して、リターンロス特性とH面放射パターン

を測定し、理論計算の結果と良く一致することを確認した。1.21 GHz と 2.36 GHz において良好な放

射パターンが得られ、交差偏波レベルは 15dB− 以下である。

図-9. 4つのパッチアンテナの構造と同軸給電の位置; 1.5875h mm= 2.4ε =r .

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(D) 様々な形状のスロットを付与した変形方形パッチアンテナ[5][6][23][24][42][49][52]

スロットを付与した方形パッチアンテナには、小型化、高利得化、広帯域化、及び多周波数動作の

観点から、種々の改善効果が期待できる。しかしながら、その放射特性は、方形パッチの大きさ、スロ

ットの形状と位置、給電点の位置に強く依存している。 適なスロットの形状と位置、給電点の位置を

明らかにするため、図-10 に示すような U-スロット、I-スロット、L-スロット、クロススロットを付与した9

種類の方形パッチアンテナを提案し、理論と実験により動作特性と性能を評価した。インピーダンスの

帯域幅を大きくするためには、低誘電率の基板が有効であることが知られている。ここでは、コストを下

げ製作を容易にするため、簡単な空気誘電体基板 ( 1.0)rε ≈ を使用した。理論解析では、九州大学

が FDTD 法による独自のシミュレーションを行い、Jadavpur 大学はモーメント法(MoM)に基づく IE3D

シミュレーションソフトを使用した。提案したアンテナを九州大学と Jadavpur 大学が分担して作製し、

九州大学において実証実験を行った。

検討の結果、提案した9種類の方形パッチアンテナに対して以下の知見を得た。それぞれのアンテ

ナの動作特性と性能を表-2 及び表-3 にまとめている。

(A1) U 字とバー型のスロットを持つ長方形パッチ

パッチは同軸線プローブ(内部導体の半径 3mm または 3.5mm)で給電する。シミュレーション結果

はインピーダンス帯域幅がそれぞれ47.4%および49.9%であった。内径の大きなプローブが入手できな

いため、シミュレーションだけを行った。

(A2) 2つの U スロットを持つ長方形パッチ

インピーダンス帯域幅 45%および 大利得 9.94dBi が得られた。この値は従来報告されているアン

テナのものと同程度だが、基板の厚さは本提案の方が薄くなっている。放射パターンには一部ゆがみ

が見られた。

(A3-A6) I スロットおよび L スロットアンテナ

単一の I-スロット、2つの I-スロットまたは L-スロットを持つアンテナはインピーダンス帯域幅が凡そ

25%-30%で、放射パターンも良好であった。2 つのスロットを持つアンテナの基板の厚さは単一のスロッ

Resonant frequency (GHz)

Return loss (dB)

10dB Bandwidth(MHz) %

Frequency ratio

Antenna I 3.06 18.98 50 ---

Antenna II (a) 2.468

(b) 3.057

24.81

19.81

30

52

---

1.24

Antenna III (a) 1.239

(b) 2.46

24.50

24.88

6

27

---

2.0

Antenna IV

(a) 1.24

(b) 1.468

(c) 2.473

(d) 3.436

12.16

10.78

11.81

11.35

5

5

22

19

---

1.18

1.99

2.77

表-1. 図-9 に示す4つのアンテナの放射特性の計算結果.

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図-10. 様々な形状のスロットを付与した変形方形パッチアンテナ.

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トを持つアンテナの厚さの約 2 倍になることが分かった。I-スロットおよび L-スロットによって主要な共

振周波数の近くに第二、第三の共振が誘導され、その結果、インピーダンス帯域幅が増大している。

(A7-A8) クロススロットアンテナ

クロススロットアンテナは 6 つ、5つ、4つ、あるいは3つの動作周波数帯を持つ。動作周波数帯の数

は給電点の位置に依存する。偏波と放射パターンは動作周波数に依存する。

(A9) 非対称クロススロットアンテナ

クロススロットの片側をパッチの端まで切り込むと、指向性利得が改善される。図-11 に示すように、

A7 の対称なクロススロットの場合、正面方向で利得の低下が見られるが、非対称なスロット形状を導

入することにより、この利得の低下は解消される。

表-2. アンテナ A1-A6 の中心周波数、 大利得、インピーダンス帯域幅.

Antennas Type Center frequency

and peak gain Simulation (Exp.)

Impedance band width BW Simulation

(Experiment)

Substrate thickness (Probe radius)

fc=1.772GHz (---) 9.08dB i (---)

BW=0.845GHz, 47.7% (---)

16.5mm (3mm) A1 (U and bar slot)

fc=1.784GHz (---) 8.9dBi (---)

BW=0.891GHz, 49.9% (---)

17.85mm (3.5mm)

A2 (Double U-slot) fc=7.088 (6.945)GHz9.25 (7.64)dBi

BW=3.225GHz, 45.5% (3.21GHz, 46.2%)

4.5mm (0.6mm)

A3 (Single I-slot) fc=2.743 (2.705)GHz11.04 (10.65)dBi

BW=0.595GHz, 21.7% (0.57GHz, 21.1%)

6mm (0.6mm)

A4 (Double I-slot) fc=2.064 (1.995)GHz10.27 (11.84)dBi

BW=0.595GHz, 28.8% (0.53GHz, 26.6%)

11mm (0.6mm)

A5 (Single L-slot) fc=2.403 (2.360)GHz9.92 (10.16)dBi

BW=0.575GHz, 23.9% (0.52GHz, 22.0%)

7mm (0.6mm)

A6 (Double L-slot) fc=1.873 (1.775)GHz9.67 (10.67)dBi

BW=0.575GHz, 30.4% (0.45GHz, 25.4%)

13mm (0.6mm)

表-3. アンテナ A7 と A8 の中心周波数、 大利得、インピーダンス帯域幅. .Antenna 7-1 (Quad frequency bands, feed point F1)

Frequency Simulation(Exp.)

1.973GHz(1.90GHz)

2.589GHz(2.56GHz)

3.227GHz(3.17GHz)

3.77GHz (3.53GHz)

Gain Simulation(Exp.)

10.32dBi (11.94dBi)

2.01dBi (5.05dBi)

10.0dBi (8.87dBi)

1.73dBi (2.20dBi)

Antenna 7-2 (Tri frequency bands, feed point F2)

Frequency Simulation(Exp.)

2.02GHz (1.94GHz)

2.64GHz (2.58GHz)

3.22GHz (3.12GHz)

Gain Simulation(Exp.)

10.43dBi (11.72dBi)

1.5dBi (2.96dBi)

8.5dBi (8.87dBi)

Antenna 8-1 (Hexa frequency bands, feed point F1)

Frequency Simulation(Exp.)

1.14GHz (1.13GHz)

1.95GHz (1.88GHz)

2.63GHz (2.57GHz)

3.15GHz (3.06GHz)

3.42GHz (3.53GHz)

3.92GHz (4.06GHz)

Gain Simulation(Exp.)

6.4dBi (6.48dBi)

10.09dBi (12.05dBi)

1.87dBi (5.02dBi)

9.33dBi (6.33dBi)

11.36dBi (8.78dBi)

-1.65dBi (2.51dBi)

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Antenna 8-2 (Penta frequency bands, feed point F2)

Frequency Simulation(Exp.)

1.14GHz (1.15GHz)

1.93GHz (1.87GHz)

2.63GHz (2.52GHz)

3.45GHz (3.55GHz)

3.99GHz (4.11GHz)

Gain Simulation(Exp.)

7.84dBi (5.75dBi)

10.24dBi (11.83dBi)

2.0dBi (3.79dBi)

11.3dBi (8.83dBi)

2.35dBi (5.22dBi)

Antenna 8-3 (Quad frequency bands, feed point F3)

Frequency Simulation(Exp.)

1.87GHz (1.85GHz)

2.52GHz (2.47GHz)

3.54GHz (3.56GHz)

4.06GHz (4.06GHz)

Gain Simulation(Exp.)

9.85dBi (11.45dBi)

-1.99dBi (2.12dBi)

9.29dBi (7.77dBi)

3.46dBi (3.06dBi)

Antenna 8-4 (Tri frequency bands, feed point F4)

Frequency Simulation(Exp.)

1.96GHz (1.92GHz)

2.62GHz (2.62GHz)

3.2GHz (3.17GHz)

Gain Simulation(Exp.)

10.2dBi (11.28dBi)

2.06dBi (6.71dBi)

3.17dBi (5.13dBi)

(E) 誘電体共振器アンテナ

放射素子に高誘電率の誘電体共振器を用いれば、アンテナの小型化することができる。そのような

小型アンテナとして、コプレーナ線路で給電した誘電体共振器アンテナを提案し、その特性を理論的

に評価した。提案したアンテナの構造と大きさ及び給電部の構造を図-12 と図-13 に示す。直方体の

誘電体共振器は、コプレーナ線路の先端部のスロットを介して励振される。有限要素法を用いて設計

したアンテナのリターンロスと周波数 4.5GHz における指向性利得を図-14 及び図-15 に示す。

4.5GHz の近傍において良好なリターンロス特性と指向性が得られていることが分かる。

図-11. 指向性利得の比較; (a) 対称クロススロット (A7)、周波数:3.61GHz 及び (b)

非対称クロススロット (A9)、周波数:3.39GHz..

(a) (b)

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37

7.1.2 フォトニック結晶を装荷したアンテナの放射特性の解明

フォトニック結晶は、離散的な散乱体を電磁波の波長程度の間隔で2次元的あるいは3次元的に配

列して構成した人工的な結晶構造である。格子要素となる散乱体の形状と大きさ、格子定数、散乱体

図-12. コプレーナ線路で給電したスロット結合誘電体共振器アンテナ;

rd10.2 , 7.89 , 20.0, 100 ,ε= = =a = d = mm b mm h mils rs 10.2ε = .

図-13. 誘電体共振器アンテナの給電部の構造(長さの単位は mm).

図-14. 誘電体共振器アンテナのリターンロス.図-15. 誘電体共振器アンテナの指向性

利得; 周波数:4.5GHz.

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と背景媒質の屈折率比を適切に設定すれば、特定の方向に伝搬する特定の周波数帯域の電波だけ

を通過させ、他の電波の伝搬を遮断することができる。ここでは、フォトニック結晶のこのような性質を

利用して鋭い指向性を持った高利得アンテナを実現することを目的とし、フォトニック結晶を透過板あ

るいは反射板用いたアンテナの放射特性を理論的に究明した。

(A) 2次元フォトニック結晶と線状波源[4][18]

2次元フォトニック結晶で挟まれた線状波源と座標系を図-17に示す。フォトニック結晶は、自由空

間中に周期 h で配列された誘電体円柱の多層アレイで構成されている。上側の円柱の半径を 1r 、

比誘電率を 1rε 、層間の距離を 1d 、層数を 1N とし、下側の円柱のそれらを 2r 、比誘電率を 2rε 、層間

の距離を 2d 、層数を 2N とする。線状波源は座標原点に置かれており、上側の結晶から 1t 、下側の結

晶から 2t だけ距離を隔てた位置にある。誘電体円柱と線状波源は z 方向に無限に長いものと仮定し

ている。放射電磁波の波長を / 0.49h λ = に設定し、下側の結晶が反射板として、上側の結晶が透過

板として働くようにそれぞれの結晶の格子定数を決め

た。 1 2 ,d d h= = 1 0.13 ,r h= 1 9.8,rε = 1 13N =

及び 2 0.1 ,r h= 2 15.0,rε = 2 20N = に選んだとき、

設定した波長に対して、上側の結晶は 90ϕ = ° 、

8ϕ = ° 及び 172ϕ = ° の方向に伝搬する電磁波だ

けを透過させる性質を持ち、下側の結晶は全ての方

向に伝搬する電磁波を遮断する性質を持っている。

ϕ は x 軸の正方向から見た方位角である。このよう

な2つのフォトニック結晶で挟まれた線状波源の放射

電磁波を、スペクトル領域における格子和の手法と一

般化散乱行列の方法を用いて解析した。

上側の結晶の層数 1N と位置 1t を変化させたときの

放射パターンの計算結果を図-17に示す。下側の結

晶の層数と位置はそれぞれ 2 0.5t h= 及び 2 20N =

と一定にしている。 1N が増加するにつれて、上側の結晶の角度選択性が強くなり、 90ϕ = ° 方向に

単峰性の鋭い放射ビームが形成される。また、位置 1t を変化させることにより、上側の結晶の透過窓と

なっている 8ϕ = ° 及び 172ϕ = ° の方向にビームを放射させることも可能である。このような放射特

性は、下側の結晶のバンドギャップ特性と上側の結晶の透過窓の特性、及び 1 2t t+ の幅を持った共

振器構造における空間高調波の多重散乱により実現されるものである。また、図-16において結晶格

子に磁化フェライト円柱を用いたとき、外部磁界を変化させることにより、放射パターンを電子的に制

御できることを明らかにした。

図-16. 2つの2次元フォトニック結晶で挟ま

れた線状波源と座標系.

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(B) Woodpile 型3次元フォトニック結晶とダイポール波源[9][14]

3次元フォトニック結晶として、平行円柱アレイの円柱軸を隣り合う層毎に 90° 回転させて積層した

Woodpile 結晶を対象にする。図-18(a) は、誘電体円柱を自由空間中に配置したピラー型の

Woodpile 結晶に挟まれたダイポール波源を示している。上側の円柱の半径を 1r 、比誘電率を 1rε 、

層間の距離を 1d 、層数を 1N とし、下側の円柱のそれらを 2r 、比誘電率を 2rε 、層間の距離を 2d 、層

数を 2N とする。円柱の間隔は x 方向及び z 方向に共に h である。ダイポールは x 軸に平行に座標原

点に置かれており、上側の結晶から 1t 、下側の結晶から 2t だけ距離を隔てた位置にある。同図(b)は、

比誘電率が srε の誘電体スラブ中の空気孔で構成したエアホール型のWoodpile 結晶を示す。

図-18(b)に示すエアホール型の結晶について、下側の結晶の層数 2N を変化させたときの放射パ

ターンの計算結果を図-19に示す。角度θ は y 軸の正方向から見た方位角である。放射電磁波の波

長を / 0.239h λ = に設定し、ダイポールの位置と上側の結晶の層数はそれぞれ 1 2t t h= = 及び

1 4N = と一定にしている。同図(a) は 2 10N = に対する結果で、E面とH面において半値幅が 1° 程

度の極めて鋭いビームが形成されることが分かる。ビームの方向は、結晶パラメータ h 、 1d 、 2d 、 1r 、

2r 、 srε 、及び結晶に対するダイポールの位置 1t と 2t に依存している。 2N を更に増やしても、放射

パターンは殆ど変化しない。一方、 2 4N = に減らすと放射パターンは、同図(b)のように変化する。下

側の結晶による電磁波の遮断効果が十分でないため、放射波は下方に漏れることになり、その結果、

上方におけるビームパターンも乱れる。比較のため、他のパラメータの値を同じにして、下側の結晶だ

けを完全導体に置き換えたときの結果を同図(c)に示している。この場合、図(a)とは全く異なったブロ

ードな放射パターンになる。したがって、図-19(a)の放射パターンは、フォトニック結晶を反射板に用

1 1(a) N =0, t =0.5h 1 1(b) N =2 t 0.5h, = 1 1(c) N =10, t 0.5h=

1 1N =13, t(e) =h 1 1f N =13, t( ) =1.5h1 1(d) N =13, t 0.5h=

図 -17. 図 -16 に 示 す 線 状 波 源 の 放 射 パ タ ー ン . 1 2 ,d d h= = 1 0.13 ,r h=

2 0.1 ,r h= 1 9.8,rε = 2 15.0,rε = 2 0.5 ,t h= 2 20,N = / 0.49h λ = .

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いたときに得られる固有のパターンであることが分かる。このような放射パターンは、前述したように、

下側の結晶のバンドギャップによるリアクティブな完全反射と 1 2t t+ の幅を持った共振器構造におけ

る空間高調波の多重散乱により実現されるものである。

(C) Woodpile 型3次元フォトニック結晶とパッチアンテナ[15]

Woodpile型フォトニック結晶とパッチアンテナの構造を図-20 に示す。フォトニック結晶は、厚さ 4hで比誘電率が 1 11.4rε = の誘電体スラブ内に空孔円柱の周期的アレイを直交して4層配置した構造

を持つ。円柱の半径は 1 0.45r h= 、一つのアレイ上の円柱間の距離は h で、直交するアレイ間の z 方

向の分離距離も h である。第1層と第4層のアレイ面は誘電体スラブの上下の面から 0.5h だけ離れた

位置にある。誘電体基板の比誘電率を 2.625srε = 、マイクロパッチの大きさを12.92 0.864h h× とすれ

ば、このパッチは波長 / 0.24h λ = の電磁波に対して 100TM モードで共振する。誘電体基板の厚みを

2 0.018t h= として、マイクロパッチに対する共振器モデルを用いて、パッチの上方 1t の位置に置か

れたフォトニック結晶を透過して放射される電磁波の放射指向性を計算した。放射パターンの計算結

図-18. 直交多層円柱アレイで構成した Woodpile フォトニック結晶と電気的ダイポール波源.

(a) ピラー型 Woodpile フォトニック

結晶と電気的ダイポール波源

(b) エアホール型 Woodpile フォトニック

結晶と電気的ダイポール波源

図-19. 図-18 (b) に示すエアホール型 Woodpile フォトニック結晶に挟まれた電気的ダイポール波源の放射パターン. 1 2 ,d d h= = 1 2 0 .45 ,r r h= = 11.4 ,srε = 1 4 ,N = 1 2 ,t t h= = / 0.239 :h λ =

2( ) 10,a N = 2( ) 4,b N = ( )c 下側のフォトニック結晶を完全導体に置き換えた場合.

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果を図-21 に示す。角度θ 及びϕ はそれぞれ y の正方向及び x の正方向から見た方位角である。

図中の ( 90 )θ ϕ = °E 等は 90ϕ = ° の面内における ( )θ θE の分布を表す。同図(b) に示すように、固

定した 2t に対して 1t を 適に選んだとき、パッチに対する正面方向( 0θ = ° )に鋭い放射ビームが放

射さる。交差偏波成分も抑圧されていることが確認できる。

(D)フォトニック結晶と結合した放射素子の指向性の合成法について[4][48]

フォトニック結晶と結合した放射素子の指向性は、フォトニック結晶の構造パラメータ及び波源を挟

んだ2つのフォトニック結晶板の相対距離に強く依存している。所望の放射指向性を実現する方法を

図-16 に示す2次元フォトニック結晶と線状波源のモデルを用いて考察した。

図-16 に示す放射構造をスペクトル領域で観測すると、孤立した線状波源は基本周期が h の空間

高調波成分を上下対象に放射する周期的な線状波源に変換され、上下のフォトニック結晶は一般化

反射行列と透過行列を持った平面境界に置き換えることができる。放射された空間高調波成分はこ

れらの平面境界で多重反射され、その一部が外部領域に透過して放射に寄与する空間高調波成分

図-20. Woodpile 型フォトニック結晶と結合したマイクロパッチアンテナ.

図-21. 図-20 に示すマイクロパッチアンテナの放射パターン.

1(b) 0.33t h= 1(a) 0.35t h=

θ θ

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を 作 り 出 す 。 ス ペ ク ト ル 領 域 に お い て Lattice Sums の 手 法 ( Electromagnetic Theory and

Applications for Photonic Crystals, Ed. K. Yasumoto, CRC Press, New York,. pp.123-190, 2005) を

用いれば、上部の半空間における遠方放射界を次のように表すことができる。

exp( )( , ) 2 exp ( , )

4z

h ikE i T k

k

π ρρ ϕ π ϕ

λ ρ= −

⎛ ⎞⎜ ⎟⎝ ⎠

(1)

ただし、

{ }1 2 11,002,00 1,00

sin 2 sin 2 sin( , )( , ) e ( , ) e ( , ) 1 e ( , )]

( , )ikt i kt i ktF k

T k D k R k R kD k

ϕ ϕ ϕϕϕ ϕ ϕ ϕ

ϕ+ += ⎡ ⎤⎣ ⎦ (2)

1 21,00 2,00

2 ( )sin( , ) 1 e ( , ) ( , )i k t tD k R k R kϕϕ ϕ ϕ+= − (3)

であり、 1,00 ( , )R k ϕ と 1,00 ( , )F k ϕ は上側のフォトニック結晶の基本波成分に対する一般化反射係数と透

過係数を、 2,00 ( , )R k ϕ は下側のフォトニック結晶の一般化反射係数を表す。これらの反射係数とと透

過係数は、フォトニック結晶の構造パラメータに依存した固有の周波数特性と角度スペクトル特性を

持っている。すなわち、特定の周波数帯域と特定の角度ϕ の範囲において阻止域(Stop-band)ある

いは通過域(Transmission-band)が存在する。阻止域では、 1,00 ( , ) 1R k ϕ ≈ 、 2,00 ( , ) 1R k ϕ ≈ 、

1,00 ( , ) 0F k ϕ ≈ であり、逆に、通過域では、 1,00 ( , ) 0R k ϕ ≈ 、 2,00 ( , ) 0R k ϕ ≈ 、 1,00 ( , ) 1F k ϕ ≈ となる。

式(1)-(3) から、放射指向性は次の2つの要因で決まることが分かる。

(i) 1,00 ( , ) 1R k ϕ ≈ 及び 2,00 ( , ) 1R k ϕ ≈ で、 ( , ) 0D k ϕ ≈ が満たされるとき この場合、上側と下側のフォトニック結晶がミラーとして働き、2つのフォトニック結晶で挟まれた空

間はファブリペロ型共振器を構成する。線状波源から放射された電磁波は ( , ) 0D k ϕ ≈ のとき共振

条件を満たすことになり、この条件を満たす特定の角度の方向に強い放射が起きる。もちろん、

( , ) 0D k ϕ ≈ の共振条件が満たされていても、その角度の方向で 1,00 ( , ) 0F k ϕ ≈ であれば、外部空

間への放射は生じない。したがって、 1,00 ( , )F k ϕ が有限の値を持っていることが必要である。

1,00 ( , ) 1R k ϕ ≈ 及び 2,00 ( , ) 1R k ϕ ≈ のとき、 1 ( , )1,00 ( , ) eiP kR k ϕϕ ≈ 、 2 ( , )

2,00 ( , ) eiP kR k ϕϕ ≈ と表せば、フ

ァブリペロ共振のための位相条件は次のように与えられる。

1 21 2( , ) 2 ( ) sin ( , ) ( , ) 2 ( 0,1, 2, )P k k t t P k P k n nϕ ϕ ϕ ϕ π= + + + ≈ = L (4)

(ii) 1,00 ( , ) 0R k ϕ ≈ 及び 1,00 ( , ) 1F k ϕ ≈ が満たされるとき

式(4)の共振条件が満たされない場合、 ( , )D k ϕ は有限な値をとる。この場合は、上側のフォトニッ

ク結晶において 1,00 ( , ) 0R k ϕ ≈ 及び 1,00 ( , ) 1F k ϕ ≈ を満たす通過域(Transmission band)を透過窓

((Transmission window)として、線状波源からの一次波が特定の方向に放射される。すなわち、放射

指向性は上側フォトニック結晶の特性に依存して決まる。

上記の検討結果から、フォトニック結晶と結合した放射素子の指向性を設計する手順を以下のよう

に要約することができる。

①使用波長 λ に対して、所望の角度方向で 1,00 ( , ) 1R k ϕ ≈ になり、 1,00 ( , )F k ϕ が有限の値を持つよ

うなフォトニック結晶のパラメータを設計する。

②次に、式(4)の共振条件を満たすように、 1 2t t+ の大きさを決定する。

③共振条件を利用しない場合は、所望の角度方向に透過窓が存在するようにフォトニック結晶のパラ

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メータを設計する。

④これらの性質は、ファイブリペロ型フォトニック結晶共振器の大きさ 1 2( )t t+ と上下のフォトニック結

晶の反射および透過スペクトルだけによって決まるものであり、放射素子の形状には関係しない。

ここでは、線状波源という無指向性の放射素子について検討したが、放射素子が指向性を持って

いる場合は、上述のフォトニック結晶共振器に固有の放射パターンに放射素子の指向性を掛け合わ

せたものが全体の放射パターンになる。上記の設計指針により、図-17、図-19、及び図-21 に示した

特徴的な放射パターンが説明できることを確認した。

(E) 放射電磁波の周波数と偏波を弁別する3次元グレーティングの解析[1][25][26][40][50]

アンテナから放射された電磁波の周波数と偏波を弁別するデバイスとして、金属や誘電体で構成し

た多層3次元グレーティングの反射および透過特性を理論的に考察した。3次元グレーティングに関

して、さまざまな解析手法が提案されているが、それらは、金属グレーティングと誘電体グレーティング

に対して異なった定式化を必要とする。これに対して、本研究では、グレーティングの等価分極電流

に対する積分汎関数をフーリエモード解析するという斬新な手法を提案した。この手法によれば、金

属グレーティングや誘電体グレーティングを一つの定式化の下で統一的に取り扱うことができる。提案

した手法を、厚みを持った金属板に周期的に空孔を開けた構造、誘電体スラブに厚みを持った金属

パッチを周期的に埋め込んだ構造、多層交叉ストリップグレーティングなど、様々なグレーティングの

散乱問題に適用して、その有効性を実証した。一例として、厚さ L の金属板に設けた周期的な (a)

C 型開口及び (b) 方形リング状開口に垂直に入射した電磁波の反射電力スペクトルと透過電力スペ

クトルの計算結果を図-22 に示している。電界はy 方向に偏波している。波長 λ が開口の周囲長に

共振したときに電磁波は透過し、それ以外の波長ではほぼ完全に反射されることが分かる。

図-22. 厚さ L の金属板に設けた周期的な (a) C 型開口及び (b) 方形リング状開口の

反射電力スペクトルと透過電力スペクトル. 電界が y 方向に偏波した電磁波が金属板に

垂直に入射した場合. 実線:反射電力, 点線:透過電力.

(a) (b)

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8.まとめと今後の課題

小型・高性能アンテナとして、(A) 接地導体板にW型スロットを付与した4セグメント円形マイクロパ

ッチアンテナ、(B) 小型誘電体ロッドアンテナ、(C) 2重スロット付き方形パッチアンテナ、(D) 様々な

形状のスロットを付与した変形方形パッチアンテナ、(E) 誘電体共振器アンテナを提案した。アンテナ

(A)-(D) については、実際にアンテナを試作して、その優れた特性を検証した。しかし、実用アンテナ

として供用するには、広帯域化の観点から更に改良が必要と思われる。現在、広帯域化のための

適設計について検討を進めている。アンテナ (E) に関しては、小型化の観点から、接地導体版の大

きさを低減することが必要である。この点については、アンテナを試作して実証実験を行う予定である。

フォトニック結晶や3次元グレーティングをアンテナの反射板あるいは透過板に用いたときの放射特性

に関しては、放射特性を支配する結晶パラメータとグレーティングの構造を理論的に解明することが

できた。今後は、その効果を実用アンテナにおいて検証することが必要になるだろう。

9.研究成果の発表

学術雑誌 (6件)

[1] V. Yachin and K. Yasumoto, “Method of integral functionals for electromagnetic wave scattering

from a double-periodic magnetodielectric layer,” Journal of Optical Society of America A, Vol. 24,

No. 11, pp.3606-3617, Nov. 2007.

[2] T. Balakrishnan, G Ravikanth, A Vengadarajan, and B. Gupta, “Ultra wideband microstrip line

fed rectangular slot antenna,” Defense Science Journal, pp. 899-902, Nov. 2007.

[3] S. Bhunia, D. Sarkar, S. Biswas, P. P. Sarkar, B. Gupta, and K. Yasumoto, “Reduced size small

dual and multi-frequency microstrip antennas,” Microwave and Optical Technology Letters, Vol.

50, No. 4, pp. 961-965, April 2008.

[4] V. Jandieri, K. Yasumoto, and B. Gupta, “Directivity of radiation from a localized source coupled

to electromagnetic crystals,” Journal of Infrared, Millimeter and Terahertz Waves, Online Paper

No.: DOI 10.1007/s10762-009-9524-4, June 2009.

[5] K. Yoshitomi, “A study on the excitation and the input impedance of an antenna,” to be

published in the Special Issue of Asian Journal of Physics, Vol. 19, No. 2, 2009.

[6] L. Lolit Kumar Singh, B. Gupta, K. Yoshitomi, and K. Yasumoto, “New single layer wideband

rectangular patch antenna,” to be published in the Special Issue of Asian Journal of Physics, Vol.

19, No. 2, 2009.

国際会議の論文(査読付)(22 件)

[7] T. Balakrishnan, S. Sai Gunaranjan, A. Vengadarajan, and B. Gupta, “A broad band stepped

probe capacitively coupled microstrip patch for surveillance radar application,” Proc. of the 2006

IEEE International Conference on Electro/Information Technology, pp. 535-538, Sep. 2006.

[8] S. Chakraborty, U. K. Dey, S. Panda, B. Gupta and K. Yasumoto, “Parasitically loaded broad

band microstrip antennas for proposed IEEE 802.15.3a (UWB) communication systems,” Proc. of

the 2006 Asia Pacific Microwave Conference, Vol. 3, pp. 1983-1986, Dec. 2006.

[9] K. Yasumoto and H. Jia, and B. Gupta, “Radiation from a dipole source located in photonic

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45

crystals,” Proc. of the International Conference on Computers and Devices for Communications

(CODEC-06), pp. 81-84, Dec. 2006.

[10] T. Balakrishnan, A. K. Singh, and B. Gupta, “Development of planar IFF antenna array for

airborne application,” Proc. of the International Conference on Computers and Devices for

Communication (CODEC-06), Dec. 2006 (CD-ROM, Abstract p.57).

[11] S. Chakraborty, B. Gupta, and D. R. Poddar, “Ultra wide band spiral dielectric antenna for

polarization independent omni directional applications,” Proc. of the International Conference on

Computers and Devices for Communication (CODEC-06), Dec. 2006 (CD-ROM, Abstract p.75).

[12] S. Chakraborty, A. Sarkar, T. Chakraborty, and B. Gupta, “Neural network model for the

estimation of fringe effect in open-ended microstrip lines and microstrip patch antennas,” Proc.

of the International Conference on Microwaves, Antenna, Propagation and Remote Sensing

(ICMARS 2006), Dec. 2006 (Abstract p.4).

[13] T. Balakrishnan, G. Ravikanth, A. Vengadarajan, and B. Gupta, “A wide band proximity coupled

antenna with slot in the microstrip feed and the ground plane,” Proc. of IEEE Region 10

Conference, Dec. 2006 (CD-ROM, Abstract p.71).

[14] K. Yasumoto, H. Jia, and B. Gupta, “Analysis of radiation from a dipole source coupled to

woodpile photonic crystals,” Proc. of the 2007 URSI International Symposium on Electromagnetic

Theory, Paper No. EMTS-74, July 2007.

[15] H. Jia and K. Yasumoto, “Radiation from a striate antenna located in photonic crystals,” Proc. of

the 2007 International Symposium on Antennas and Propagation, pp. 1450-1453, Aug. 2007.

[16] S. Chakraborty, B. Gupta, D. R. Poddar, and K. Yasumoto, “Reactive loading of dielectric

rectangular waveguide antenna for better impedance matching,” Proc. of the 2007 International

Symposium on Antennas and Propagation, pp. 394-397, Aug. 2007.

[17] K. Yoshitomi, “A study on current sources used in finite-difference time-domain antenna

analysis,” Proc. of the IEEE Applied Electromagnetics Conference, Paper No. CEM-06, Dec.

2007.

[18] H. Jia, K. Yasumoto, and B. Gupta, “Emission characteristics of a line source covered by an

electromagnetic crystal embedded in a magnetized ferrite slab,” Proc. of the IEEE Applied

Electromagnetics Conference, Paper No. EMM-02, Dec. 2007.

[19] S. Chakraborty and B. Gupta, “Development of novel microstrip antennas for use in mobile and

wireless communication systems at Jadavpur University in the present decade,” Proc. of the

IEEE Applied Electromagnetics Conference, Paper No. MTA-01, Dec. 2007.

[20] B. Gupta, S. Chakraborty, P. Mukherjee, and S. Biswas, “Applications of artificial intelligence

techniques in microstrip component and antenna design at Jadavpur University in the present

decade,” Proc. of the IEEE Applied Electromagnetics Conference, Paper No. MTA-11, Dec.

2007.

[21] S. Chakraborty, S. Mandal, and B. Gupta, “Neural network modeling for the fast estimation of

superstrate loading effect on rectangular microstrip patch antennas,” Proc. of the IEEE Applied

Electromagnetics Conference, Paper No. ATT-22, Dec. 2007.

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46

[22] M. Bhattacharya, B. Gupta, K. Yasumoto, and H. Jia, “Neural network modeling of scattering

parameters from a conducting post in rectangular waveguide,” Proc. of the PIERS 2008 in

Cambridge, pp. 275-278, July 2008.

[23] L. Lolit Kumar Singh, B. Gupta, Y. Yoshitomi, and K. Yasumoto, “Quad and tri frequency band

cross slot rectangular patch antenna,” Proc. of the 2008 International Symposium on Antennas

and Propagation, Paper No. 1644908, Oct. 2008.

[24] K. Yoshitomi, B. Gupta, and L. Lolit Kumar Singh, “A study on cross slot rectangular patch

antenna,” Proc. of the 2008 International Symposium on Antennas and Propagation, Paper No.

1644908, Oct. 2008.

[25] V. Yachin and K. Yasumoto, “Numerical analysis of three-dimensional gratings using the method

of integral functionals,” Proc. of the 2008 International Symposium on Antennas and Propagation,

Paper No. 1644960, Oct. 2008.

[26] V. Yachin and K. Yasumoto, “Analysis of metallic three-dimensional gratings using the method of

integral functionals,” Proc. of the 1st International Conference on Computer Communication,

Control and Information Technology, pp. 10-19, Feb. 2009.

[27] K. Yasumoto, V. Janidieri, and B. Gupta, “Electromagnetic scattering by cylindrical arrays of

circular rods」,” Proc. of the 2009 International Conference on Microwave Technology and

Computational Electromagnetics (ICMTCE 2009), pp. 312-315, Nov. 2009.

[28] K. Yasumoto, V. Janidieri,, and B. Gupta, “Scattering of electromagnetic plane waves from

layered cylindrical arrays of circular rods,” accepted for the 2009 International Symposium on

Microwave and Optical Technology (ISMOT 2009), Dec. 2009.

フォーラム・ワークショップ等の発表論文(25件)

[29] S. Nath, S. Mitra, and B. Gupta, “Time modulated linear array with optimized excitation and time

sequences,” National Seminar on Devices, Circuits & Communication, Dec. 2006.

[30] T. Balakrishnan, A. K. Singh, A.Vengadarajan, and B. Gupta, “A light weight, broad band, high

power, low side lobe linear microstrip patch antenna array,” National Conference on Radar

Technology and Signal Processing Techniques, Dec. 2006.

[31] S. Chakraborty, S. Panda, B. Gupta, and D. R. Poddar, “Investigations on dielectric pyramidal

horn antenna for wireless base station application,” Proc. of the National Seminar on Emerging

Trends in Wireless Communication, pp.49-52, Dec. 2006.

[32] B. Gupta and S. Chakraborty, “Miniaturized antennas with high performance in use for mobile

wireless terminals – Recent development work at Jadavpur University,” Digest of the 1st

Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication

Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 23-32, Dec. 2006.

[33] K. Yasumoto, H. Jia, and B. Gupta, “Radiation from localized sources coupled to photonic

crystals,” Digest of the 1st Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

33-37, Dec. 2006.

Page 49: アジア科学技術協力の戦略的推進 地域共通課題解決 …...・IIT Bombay 各研究チームに日本側 責任者1名、インド側 責任者1名を置く IIT Delhi・Univ

47

[34] B. Gupta, S. Chakraborty, and K. Yasumoto, “Development of neural network model of dielectric

waveguide antenna,” Digest of the 2nd Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

21-26, July 2007.

[35] H. Jia, K. Yasumoto, and B. Gupta, “Radiation of current sources located in two-dimensional

electromagnetic crystals,” Digest of the 2nd Research Forum of Japan-Indo Collaboration

Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information

Society, pp. 27-32, July 2007.

[36] B. Gupta, P. Mukherjee, and S. Biswas, “Element failure detection and correction in antenna

arrays,” Digest of 2007 Japan-Indo Workshop on Microwaves, Photonics, and Communication

Systems, pp. 37-40, July 2007.

[37] K. Yoshitomi, “A study on the excitation and the input impedance of an antenna,” Digest of 2007

Japan-Indo Workshop on Microwaves, Photonics, and Communication Systems, pp. 41-46, July

2007.

[38] S. Bhunia, B. Gupta, P. P. Sarkar, and K. Yasumoto, “Novel compact dual and multi frequency

microstrip antennas,” Digest of the 3rd Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

35-42, Dec. 2007.

[39] B. Gupta, I Bhattacharyya, A. K. Bandyopadhyay, and K. Yasumoto, “Correction of phase errors

in situ for large parabolic antennas – An artificial intelligence approach,” Digest of the 3rd

Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication

Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 43-45, Dec. 2007.

[40] H. Jia and K. Yasumoto, “A novel formulation of electromagnetic scattering problems from

two-dimensional periodic structure consisting of inhomogeneous media and perfect conductors”

Digest of the 2007 Indo-Japan Workshop on Recent Advances in Optics and Photonics, pp.

21-26, Dec. 2007.

[41] V. Yachin and K. Yasumoto, “Numerical analysis of layered crossed gratings with arbitrary

crossing angle using method of integral functionals,” Digest of the 2007 Indo-Japan Workshop on

Recent Advances in Optics and Photonics, pp. 5-10, Dec. 2007.

[42] L. L. K. Singh, B. Gupta, K. Yasumoto and K. Yoshitomi, ”Development of novel compact

broadband and multifrequency patch antennas on air substrate,” Digest of the 4th Research

Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies

Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 7-20, July 2008.

[43] K. Yoshitomi, B. Gupta, and L. L. K. Singh, “Study on cross slot rectangular patch antenna,”

Digest of the 4th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 21-26, July

2008.

[44] H. Jia, K. Yasumoto, and B. Gupta, “A study of electromagnetic radiation from a two-dimensional

striated antenna embedded in electromagnetic crystals,” Digest of the 4th Research Forum of

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48

Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting

Fully Ubiquitous Information Society, pp. 27-31, July 2008.

[45] S. Basu, B. Gupta, and A. K. Mallick, “Study of sinusoidal amplitude distribution along linear

arrays,” First Indian Conference on Trends in Modern Engineering Systems, July 2008.

[46] S. Chkraborty, A. Roy, B. Gupta, and B. K. Sarkar, “Compact foldable type trans-receive

antenna design in 2-3 GHz band,” Conference on Advances in Space Science and Technology,

Kharagpur, July 2008.

[47] S. Chakraborty and B. Gupta, “Estimation for the shift in resonance frequency of superstrate

loaded microstrip patch antennas with neural network model,” Digest of the 2008 Japan-Indo

Workshop on Microwaves, Photonics, and Communication Systems, Paper No. WS-A1, July

2008.

[48] V. Jandieri, K. Yasumoto, and B. Gupta, “Directivity of radiation from a localized source coupled

to electromagnetic crystals,” Proceedings of the 7th Asia-Pacific Engineering Research Forum

on Microwaves and Electromagnetic Theory, pp. 23-29, Oct. 2008.

[49] K. Yoshitomi, B. Gupta, and L. Lolit Kumar Singh, “Study on Slotted Rectangular Patch

Antenna,” Digest of the 5th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

14-19, Dec. 2008.

[50] H. Jia, K. Yasumoto, and B. Gupta, “Scattering properties of planar arrays of circular cylinders

coated by magnetized ferrite and its application as reflector and controller of antennas,” Digest

of the 5th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication

Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 20-28, Dec. 2008.

[51] V. Yachin and K. Yasumoto, “Numerical analysis of layered crossed-gratings using the method of

integral functionals,” Digest of the International Workshop on Frontiers in Electronics,

Information and Communication Engineering, Dec. 2008.

[52] K. Yoshitomi, B. Gupta, and L. L. K. Singh, “Resonant frequency of slotted rectangular patch

antenna,” Digest of the International Workshop on Frontiers in Electronics, Information and

Communication Engineering, Dec. 2008.

[53] A. Sarkar, S. Chakraborty, T. Chakraborty, and B. Gupta, “An investigation on wide rectangular

microstrip antenna with multiple feeds,” Digest of the International Workshop on Frontiers in

Electronics, Information and Communication Engineering, Dec. 2008.

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49

(2)サブテーマ2

1.研究題目

アダプティブアレーアンテナを用いた屋外運用無線LANシステムの構築技術に関する研究

2.研究機関

九州大学システム情報科学研究院

Indian Institute of Technology (IIT) Madras

3.研究者

赤岩芳彦、古川 浩、牟田 修 (九州大学)

Krishnamurthy Giridhar (IIT Madras)

4.研究の目的

無線 LAN システムはその標準化(IEEE802.11 シリーズ)を受けて、導入が急速に進展している。こ

れまでは屋内・構内での使用が主であったのに対して、今後は屋外、さらには移動体を含んだ公衆サ

ービスが重要になるものと思われる。屋外公衆無線 LAN システムが展開されると、データに加えて無

線 IP による電話サービスを、これまでの携帯電話(セルラー)システムよりもはるかに安価に提供でき

る可能性がある。しかしながら、その実現のためには技術的に解決すべき課題が多くある。 大の課

題は、無線 LAN に与えられた限られた電波資源の制約のなかで、面的に拡がる多数のユーザーに

対して高安定・高品質でサービスを提供しながら、システム構築コストを低く抑えることである。より具

体的には、多数のアクセスポイント(AP)を有しながら、できるだけ有線(工事)コストを抑えたシステム

を構築する必要がある。そのためには、無線端末から有線ネットワークへ、あるいはこれとは逆方向の

トラフィックを有線伝送路の敷設を 低限にしながら運ぶシステム技術が重要となる。

この問題の解決策として、有線回線(光ファイバー)に接続された AP と複数の中継局(RS: Relay

Station)を無線中継により接続する無線中継システムが注目されている。このシステムでは、無線中継

のために新たな周波数帯を割り当てるか、または中継回線とアクセス回線とで同一の周波数帯を共用

する必要がある。システムコストの点からは後者が望ましい。いずれにしても、中継回線とアクセス回線

の双方の周波数利用効率を高めることが重要である。システムの周波数利用効率は、特にマルチセ

ルシステムでは 周波数リユース効率に強く依存する。そのため、同一チャネル干渉を抑圧/除去する

技術が低コストかつ高効率の屋外無線 LAN においては重要な役割を果たす。本研究の目的はアダ

プティブアレーアンテナ(AAA)技術を無線中継システムのアクセス回線と中継回線の両方に適用する

ことで、低コストかつ高効率の屋外無線 LAN を構築することである。

5.期待される結果

本研究において、AAA 技術と高効率パケット転送プロトコルを無線中継システムに導入することで、

システム構築コストを低く抑えながら屋外無線 LAN を実現することが期待できる。AAA により同一チャ

ネル干渉を抑圧し、かつパケット転送技術と併用することで、システムスループットの大幅に改善する

ことができる。

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50

6.研究の方法

AAAシステムをアクセスポイント(AP)に導入し、アクセス回線と中継回線の両方で利用する。移動局

は 寄りの AP に接続し、多ユーザーと同じ周波数を用いて空間分割に多重される。指向性アンテナ

を RB と AP の双方で用いる。AAA の特性は利用する周波数帯の電波伝搬特性に依存するため、無

線 LAN で用いられる 2.4GHz 帯の屋外伝搬特性を測定する。アクセス回線および中継回線の伝搬路

特性を測定することにより、種々のトラフィック量の下でのスループットおよびパケット誤り率のようなシ

ステムの特性を評価する。伝送特性を改善させるために、AAA の重み係数 適化手法を開発する。

また、メディアアクセス(MAC)層の技術として、音声、データなどのマルチメディア信号を仮定して、動

的チャネル割当方式を開発する。無線 LAN におけるその他の重要な課題として、システムスループッ

トを 大化する高効率のパケット伝送プロトコルを開発する。我々の独自も開発したパケット転送プロト

コルである周期的間欠送信法 (IPT: Intermittent Periodic Transmit)の改良を行う。 終的に、多数の

AP を面的に配置し、同一チャネル干渉が存在する場合のシステムの特性を評価する。

7.主要な成果

7.1 九州大学と IIT Madras の共同成果

7.1.1判定帰還伝搬路追従技術を用いた OFDMA システムのための適応リソース割り当て方式[46],[49]

直交周波数分割多重 (OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing) に基づく多元接続

方式である OFDMA (Orthogonal frequency division multiple access)は次世代の無線通信システムに

おけるアクセス方式として検討されている。これらのシステムでは, 移動速度の異なる多数のユーザー

に対して多様なサービスを提供する必要がある。高速移動環境におけるフェージング変動を補償す

るために、判定帰還伝搬路追従(DDCT: Decision-Directed Channel Tracking)技術が OFDM システ

ムに対して検討されている。DDCT は過去のシンボル判定値を利用して現在のチャネル状況を推定

するパイロットレス型の伝搬路追従技術である。DDCT アルゴリズムの詳細は[40]に記載されている。

DDCT を OFDMA に適用する場合、DDCT の効果は割り当てられたリソースの状況に依存するため、

適切なリソース割当技術と併用することが重要となる。この目的のために、DDCT を採用した OFDMA

システムのための適応リソース割当技術を提案する。提案方式の詳細を以下に示す。

(a) 参照方式 1 (b) 参照方式 2 (c) 参照方式 3 (d) 提案方式 図-1. OFDMA システムのためのリソース割り当て手法.

Preamble

freq

uenc

y

RB allocated to interest user

time

Preamble

freq

uenc

y

time

DDCT is carried out with all former numbered data symbols

Preamble

freq

uenc

y

time

DDCT is carried out with all former numbered data symbols

Preamble

freq

uenc

y

time

RBs in use Null RBRB allocated to MSs moving at high speed

RB allocated to MSs moving at low speed

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51

図-1 は下り回線 OFDMA フレームの例を示す。各リソースブロック(RB)は複数のサブキャリアおよび

シンボルからなる。プリアンブルシンボルは後続のデータシンボルのための初期チャネル推定値を求

めるために用いる。高速フェージング環境下におけるフェージング変動に対処するために、判定帰還

形伝搬路追従技術(DDCT: Decision-Directed Channel Tracking)を OFDM に適用することが検討さ

れている。この方式では、判定値を利用することで、伝搬路特性の時間的な変動に追従したパラメー

タ推定を行う。しかしながら、OFDMA では、RB が図-1(a)のように割り当てられた場合、ヌル RB からチ

ャネル情報が得られないため、高速移動時には DDCT の特性が劣化する。これは OFDMA システム

では DDCT の特性が十分に得られないことを意味している。この問題を解決するために、端末の移動

速度を考慮したリソース割当技術を提案する。図-1(d)のように、提案方式では、高速移動端末に対し

て、DDCT の効果が大きいフレーム前方の RB を優先的に割り当てる。一方、DDCT の必要性の低い

低速移動端末にはその他の RB を割り当てる。提案方式ではチャネル SINR と端末の移動速度の両方

を考慮しているので、従来の SINR のみに基づくリソース割当方式と比べてスループット特性の改善が

期待される。以後、図-1(a)(b)の方式を方式(reference method) 1,2 と呼ぶ。

方式 1 と 2 の違いは、方式1では自分の RB のデータのみを利用するのに対して、方式2では他ユ

ーザー用のデータを含めた全データシンボルを DDCT 計算に利用することである。方式2は方式1よ

り良い特性を示すが、計算量は方式1よりも増大する。提案方式の計算量は方式2より低くなることは

明らかである。これに加えて、図-1(c)の方式 3 (reference method 3)を検討する。方式 3 では、端末の

移動速度に関わらず、フレーム前方の RB から優先的に割り当てる。したがって、方式 1 と 2 に比べて、

DDCT の特性を改善することができる。しかしながら、方式 3 では、フレーム前方にトラフィックが集中

するため、マルチセル環境を想定した場合、他セルからの同一チャネル干渉による特性劣化が予測

される。

提案方式を用いた OFDM システムの特性を計算機シミュレーションにより評価する。サブキャリアの

変復調方式として、QPSK、同期検波を用いる。遅延広がり 1.025 ・ sec の 2 波独立レイリーフェージン

グ、加法性白色ガウス雑音(AWGN: additive white Gaussian noise)を仮定する。受信アンテナ本数を 2

とする。OFDM 有効シンボル長、ガード区間長をそれぞれ 89.6 ・ sec, 11.2 ・ sec とする。シャドーイン

グの標準偏差を 6dB、伝搬定数を 4 とする。平均保留時間を 5sec とする。シングルセルの下り回線を

考える。端末の発呼、終呼はポアソン分布に従い、端末はセル内に一様に分布するものと仮定する。

図-2 に OFDM フレーム構成を示す。各 RB は Ns シンボル、Nc サブキャリアからなる。全サブキャリ

アは周波数領域で 8 つの RB に、時間領域で 4 つの RB に分け

られている。フレーム当たりのシンボル総数は 25 である。検討の

簡単化のために、全ユーザーの 80%が低速移動端末( 大ドッ

プラー周波数 7Hz)であり、20%が高速移動端末( 大ドップラー

周波数 397Hz)と仮定する。端末移動速度は基地局において理

想的に検出され、各RBのSINR情報は通信を開始する前にテス

ト信号を送信し得ることができると仮定する。スループットは正し

く受信された(BER が 10-2 以下である)ビット数と送信時間の比で

定義される。

提案方式を用いた OFDMA システムのスループット特性を図

time

Preamble

freq

uenc

y

1st group2nd group

3rd group4th group

Resource Block

図-2. OFDMA フレーム構成.

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52

-3 に示す。DDCT および 2 ブランチの受信ダイバーシチを用いている。比較のために、図-1(a)-(3)に

示す方式 1-3 を用いる場合のスループット特性も示す。方式 1, 2 では、RB のグループの1つをランダ

ムに選択し、グループ内の所要値を満たす RB において も SINR のよいものを通信チャネルとして割

り当てる。一方、方式 3 では、フレーム前方の RB の中で も SINR がよいものが常に割り当てられる。

図-3 から、DDCT と提案方式を用いる場合、方式 1, 2 と比べて、OFDMA のスループット特性を改善

できることがわかる。図-3(b)は高速移動端末に対するスループット特性を示す。これは高速移動端末

の受信成功データのビット数を計測して、スループットを求めたものである。図-3(b)より、提案方式を

用いることで、方式 1, 2 に比べて、高速移動端末のスループットを改善できることを確認できる。

方式 3 が提案方式に匹敵する特性を示すが、トラフィックがフレーム前方に集中するため、マルチ

セル環境では、他セルからの同一チャネルの増加により特性が劣化することが考えられる。

0

2

4

6

8

10

12

14

5 10 15 20

Thr

ough

put [

Mbp

s]

Offered Traffic [erl]

Proposed methodReference method 3Reference method 2Reference method 1w/o DDCT

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

5 10 15 20

Thr

ough

put [

Mbp

s]

Offered Traffic [erl]

Proposed methodReference method 3Reference method 2Reference method 1w/o DDCT

(a) 全ユーザーに対するスループット特性 (b) 高速移動端末に対するスループット特性

図-3. OFDMA システムにおける2ブランチダイバーシチ受信時のスループット特性.

7.2 九州大学の成果

7.2.1 アダプティブアレーアンテナ技術

(A) 固有ビーム MIMO システムにおける送受信ウェイトの LMS アルゴリズムに基づく決定法[13][25][27]

種々の MIMO 通信方式の中で、理論上 大容量を実現するのが固有ビーム MIMO(E-MIMO)で

ある。E-MIMO では送受信ウェイトとして伝搬路自己相関行列の固有ベクトルを用いるため、ウェイト

決定のために特異値分解や固有値分解などの行列計算が用いられる。本研究では、よく知られた単

純な反復法である LMS アルゴリズムに基づいた E-MIMO 送受信ウェイト決定法を提案した。

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53

Wt Wr

s1

s2

so1

so2

n1

nNr

H・・・

・・・

H

Wr

・・・

・・・s’1

s’2

weightcontrol

Transmitter

Virtual channel and receiver

ss

s’s’

図-4. 提案方式を用いた SDMA システムの構成.

本方式で用いる E-MIMO システムにおける送受信器の構成を図-4 に示す。提案方式は、LMS ア

ルゴリズムを用いることにより 適な送受信ウェイトを求めることを特長とする。提案方式では、送信側

において仮想的な伝搬路と受信器を考え、仮想受信器における受信信号と送信信号との誤差を

小化するように反復計算を行うことで 適なウェイトを求める。ここで、仮想受信における受信信号 s′

は次式で与えられる。

sHWHWsHWWs tHH

ttr ==′ (1)

ここで、 H は伝搬路行列、 tW は送信ウェイト行列、 rW は受信ウェイト行列を表す。

LMS アルゴリズムによる E-MIMO 送受信ウェイトの決定法について説明する。本稿では、送受信の

双方で伝搬路行列 H が既知であると仮定する。E-MIMO において 大容量を得るためには tW が

HH Hの固有ベクトルを列ベクトルとして持つ行列であればよい。提案方式では、伝搬路行列のラン

クの数だけ存在する固有ベクトルを LMS アルゴリズムにより逐次的に求める。以下では簡単のために、

22× の E-MIMO を用いて説明する。式(1)を行列の成分を用いて書き直すと次式となる.

[ ] ⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡=⎥

⎤⎢⎣

⎡⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡=⎥

⎤⎢⎣

⎡′′

∗∗

∗∗

2

121

2

1

2

1

2221

1211

2221

1211

2

1

ss

ss

wwww

wwww

ss

ttH

Ht

Ht

tt

ttH

tt

tt wwHHww

HH (1)’

ここで, ( )Tttt ww 21111 ,=w および ( )T

ttt ww 22122 ,=w である. 1tw と 2tw はそれぞれ、データストリーム 1s 、

2s に対応する送信ウェイトベクトルとなる. まず、データストリーム 1s に対応するウェイト 1tw を求める。

ここで、 1111 sHwHw tHH

ts = となれば 111 =tHH

t HwHw となり、 1tw は HH Hの固有ベクトルの1つと

なる。したがって、LMS アルゴリズムの誤差信号 1e を 11111 sHwHw tHH

tse −= と定義する。e1 の2乗誤

差を 1tw に関して微分することで、第1重みベクトルを得るための更新式は次式で与えられる。

( ) ( ) [ ]21111 4

1 eEmm ttt www ∇−=+μ (2)

期待値計算を除いて整理すると以下が得られる。

( ) ( )( )

( ) ( )memm

mm Htt

∗−=+ 1121

11 1 rHr

ww μ (3)

ここで、mはLMSアルゴリズムの反復回数に対応する整数である。μ はステップサイズである。 ( )m1r

は受信信号であり、 ( ) 111 )(H smm tω=r で与えられる。

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54

第1重みベクトルが決定した後、データストリームs2に対応する第2重みベクトル 2tw の 適化を考

える。第1ベクトルの場合と同様に、第2データストリームの誤差信号は次式で定義される。

11222222 ssse tHH

ttHH

t HwHwHwHw −−= (4)

ここで、 1tw は式(3) により求めた 適値とする。式(4)において、第一項及び第二項 2tw は HH H

がの固有ベクトルとなる条件を表し、第三項は 1tw と 2tw が直交する条件を表す。したがって 02 =e と

なれば、 2tw が第2固有ベクトルとなることが分かる。e2 の2乗誤差を 2tw に関して微分することで、次

式を得る。

( ) ( )( )

( ) ( ) ( ) )21(1 2

12112222

22 smmemm

mm tH

ttHH

tt HwwwHrHr

ww −+=+ ∗μ

ここで、 ( ) ( ) ( )( )22112 smsmm tt wwHr += である。 適重み行列 tW は2つの反復式を更新することにより得ら

れる。本研究の方式はランクが3以上の場合にも適用できる。例えばランクが3の場合、 1tw と 2tw を定

ベクトルとして扱い、 3tw が 1tw と 2tw の双方に直交する固有ベクトルとなるように誤差関数を定義す

ればよい。ランクが4以上の場合にも同様にして拡張できる。

図-5. 固有値の分布. 図-6. ビット誤り率特性. 図-7. チャネル容量特性.

計算機シミュレーションにより特性評価を行う。変調方式をQPSKとする。伝搬路として準静的レイリ

ーフェージングモデルを用い、送信アンテナ間、受信アンテナ間それぞれのフェージング相関は無相

関であると仮定している。図-5に提案方式およびSVDによって求めた第一固有値、第二固有値の分

布を示す。 22× のMIMOに関して送受信ウェイトを求め、伝搬路行列とウェイトから固有値を計算して

いる。第一固有値についてはSVDよりも若干小さい場合があるが、提案方式はSVDとほぼ同一の固有

値を求めることができることが分かる。図-6は 2×tN のE-MIMO通信におけるBER特性である。伝搬

路行列のランクが2であるのでデータストリーム数を2とする。各固有パスは、BER 小化基準(電力制

御後のSN比を等しくするに基づき、送信側で固有パスの大きさ(固有値)の逆数を乗算することで電

力制御されている。図-7より、LMSにより送受信ウェイトを求める方式が、SVDとほぼ同等の特性を有し

ていることが分かる。図-7はデータストリームが2つの場合のMIMOチャネル容量特性である。チャネ

ル容量は、2つの固有パスの受信SNRとシャノンの通信路容量 ( )SNRC += 1log2 [bit/s/Hz]を用い

て各固有パスでの容量を計算し、その総和をとることで求める。各固有パスへの電力配分は注水定理

(Water Filling Theorem)に基づき行った。図-7より、提案方式がSVDと同等の特性を実現できている

ことが分かる。

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(B)アンテナ当たりの 大送信電力が制限された AAA システムにおける重み係数 適化法[4][9][26-28][34]

AAAを送信側で用いる場合、送信重み係数は総送信電力一定の制約の下で 適化される。この

場合、各送信アンテナの出力電力は制限されないため、総送信電力と同じ出力を可能とする電力増

幅器を各アンテナに設置する必要がある。設置コストの観点からは、素子毎の増幅器の 大出力を

低く抑えることが求められる。したがって、アンテナ素子当たりの送信電力を増幅器の 大出力を超え

ないように制限することが重要となる。

この問題を解決するために、アンテナ素子毎の 大送信電力を制限した AAA システムにおける重

み係数の 適化手法を提案する。この方式では、重み係数は各アンテナの信号電力の制約の下で、

送信信号と受信信号の誤差を 小にするように 適化される。本検討では、拡張内点ペナルティ関

数法を用いることで、上述の制約付き 適化問題を非制約 適化問題に変換する。

K 個のアンテナを有する基地局 AAA と1アンテナを有する移動局からなる SDM システムを考える。

送 信 信 号 の 平 均 電 力 を 1 と し (i.e., ]1|[| 2 =ixE ) 、 ユ ー ザ ー 信 号 間 の 相 関 は 無 相 関 と す る

( ]0[21

=ii xxE )。総送信電力が thP 以下となるための条件は次式で与えられる。

th

N

iji pw ≤∑

=1

2|| ( )Kjj ≤≤∀ 1   (5)

ここで、 ijw はアンテナ1の送信重みを示す。アンテナ当たりの送信電力が thp 以下となる条件は次式

で与えられる。

∑∑= =

≤N

ith

K

jji Pw

1 1

2|| (6)

図-4 と同様に、受信側での平均 2 乗誤差を推定するために、送信機に仮想伝搬路および仮想受信

機を設置する。送信重みは式(5)(6)の制約の下で送信信号と仮想受信機の受信信号との 2 乗誤差を

小とすることにより 適化される。送信信号ベクトルと仮想受信機の受信信号 Y との誤差は次式の

ように与えられる。

YXe ˆ−= nWXHWWX ˆˆˆ Hr

Ht

Hr −−= (7)

ここで、 TNee ],[ 1 L=e である。2つの電力制約の下で 2 乗誤差を 小化する問題は次式の制約付き

小化問題として定式化される。

Minimize [ ]2||)(|| WeE

Subject to 0)( 0)(1

2

1 1

2≤−=≤−= ∑∑∑

== =

N

ithjij

N

i

K

jthji pwhPwg WW (8)

ここで、 W は ]ˆ,[ rt WWW = で定義される N×(N+K) 複素行列である。拡張内点ペナルティ関数法

により上記の問題を以下の非制約 小化問題に変換する。

Minimize [ ] { })()()( 2 WWWe Ψ+Φ+ rE (9)

ここで、

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56

⎪⎪⎩

⎪⎪⎨

>−

≤−=Φ

εε

ε

ε

)()(2

)()(

1

)(

2 WW

WWW

gifg

gifg

  

     , ∑

=

=ΨK

jj

1

)()( WW ψ

⎪⎪⎩

⎪⎪⎨

>−

≤−=

εε

ε

εψ

)()(2

)()(

1

)(

2 WW

WW

W

jj

jj

j

hifh

hifh

  

     (10)

)0(<ε と )0(>r は非制約問題の設計パラメータである。式(9)は 急降下法により 小化される。 W

は次式で更新される。

{ }[ ])()()()()1( 2 WWWeWW W Ψ+Φ+∇−=+ rmm μ (11)

ここで、μ は更新速度を調整するためのステップサイズである。

提案アルゴリズムを用いた SDM システムの特性を計算機シミュレーションにより評価する。総送信

電力により正規化されたアンテナ素子毎の平均送信電力の上限値を次式で定義する。

th

th

Pp

=γ , 11≤≤ γ

K. (12)

複数のγ の値に関して、受信 SNIR 対ビット誤り率特性を図 8 に示す。ユーザー数が1の場合、SINR

は SNR と同じ値となる。図-8 に示すように、アンテナ素子毎の電力制限のない場合と比べて、通信品

質の劣化を約 0.6~1.5dB 程度に抑えることができることを示した。

0 2 4 6 8 10

10-1

10-3

10-4

10-2

Bit

Err

or R

ate

Number of Users=1

Number of Users=2

Number of Users=3

γ=0.3

γ=0.25

γ=1.0

Total Permissible Transmit Power per User to Noise Power Ratio (SNR ) [dB]max

図-8. ビット誤り率特性(K=4).

(C) AF 無線中継システムにおける共通パイロット信号を利用した AAA の重み係数 適化法[42][44][47]

Amplified-and-forward (AF)型の無線中継のシステムモデルを図-9 に示す。AF 型のシステムでは、

中継局(RS)は移動局(基地局)からの信号を増幅し、基地局(移動局)に転送する。本検討では、AF 無

線中継の上り回線に着目する。図-9 に示すように、上り回線において、複数の RS からの信号を空間

的に多重し、基地局における分離を容易にするために、指向性アンテナからなる基地局 AAA を用い

る。i 番目の RS のアンテナと基地局の i 番目のアンテナの指向性のメインローブがお互いに対面する

ように向けられているものとする。一般的には、AAA の重み係数は受信参照信号を観測することで

適化される。無線中継システムでは、各 RS は他の RS とは異なる固有の参照信号を送信する必要が

ある。しかしながら、AF 型無線中継システムでは, 中継局固有の参照信号系列を用いることはシステ

ムおよびハードウェアの簡易化の点から望ましくない。

本検討では、中継局固有の参照信号系列を必要としない受信重み係数の 適化の手法として,

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57

全中継局で共通の参照信号を利用する方式を提案する。提案方式では、移動局から送信された共

通参照信号を中継局毎に異なるタイミングで送信する。基地局は、図-10に示すように異なるタイミン

グで受信された共通参照信号間の相関が低いことを利用し、重み係数の 適化を行う。ここで、タイミ

ングオフセット時間長は参照信号系列長よりも短くする必要がある。

図-9. AF 型無線中継のモデル. 図-10. 各データストリームの受信タイミング.

提案する重み係数の 適化アルゴリズムを以下に示す。

i) i 番目のRSから送信された信号をBSのi番目の指向性アンテナで受信する。RSとBSの指向性アンテ

ナのメインローブはそれぞれ対面する方向に向けられているものとする。BSにおいて、共通参照信号

を検出する。

ii) 各アンテナにおいて受信された信号を共通参照信号を観測することで個別に同期検波する。

iii) i 番目のアンテナにて受信されたi番目の系列を一時的に復調する。復調した系列を擬似的な参

照シンボル系列とみなして、AAAの重み係数 適化に利用する。

iv)上記で求めた疑似参照シンボル系列と受信信号値との2乗誤差を 小とするように基地局AAAの

重み係数を決定する。

提案方式の特性を計算機シミュレーションにより評価した。直接波1波と反射波8波が到来する見通

し内通信環境を仮定し、仲上ライス分布に基づくチャネルモデルを用いた。幾つかの文献に基づきラ

イス係数をK=10dBとし、反射波は角度広がり5度の中に一様に分布するものとした。4x4パッチアンテ

ナの指向性パターンを図-11に示す。パッチアンテナの利得は18dBiである。送信信号フレームは⑥

シンボルのプリアンブルと1018シンボルのデータからなる。全端末から共通の参照信号が送信される

と仮定する。

DATA SEQUENCE

Common reference sequence (preamble)

DATA SEQUENCE

DATA SEQUENCE

DATA SEQUENCE

•••

1st Antenna

2nd Antenna

3rd Antenna

N-th Antenna

RS #i …

BSMS

RS #N

BS antenna #i

図-12. 提案送信重み最適化法を用いた

AAA システムの BER 特性(64QAM 時).

□ Proposed△ Conventional▲ Conventional + DF

図-11. 4x4 パッチアンテナの指向性パターン.

-40

-35

-30

-25

-20

-15

-10

-5

00

30

60

90

120

150

180

-150

-120

-90

-60

-30

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58

提案方式における各アンテナのCINRに対するビット誤り率特性を図-12に示す。参照信号部は

QPSK、データ信号部は64QAMとする。プリアンブル長は6シンボルとする。RS数を6とし、各RSから送

信される共通参照信号は1シンボルずつ異なるタイミングで受信されるものとする。第1RSと第6RS間の

タイミングオフセットは5シンボルとしている。比較のために、判定帰還を用いた従来のAAAのBER特

性を示す。図-12から、提案方式はCINRが19dBよりも以下の場合に、従来方式よりも優れたBER特性

を示すことがわかる。CINRが19dBから減少するにつれて、判定誤りが増加するために、提案方式の

BER特性は劣化する。提案方式は判定帰還推定を用いる従来方式よりも良い特性を示し、共通参照

信号を用いるAF無線中継におけるAAAの重み係数 適化に有効であることが確認できる。

(D) 2.4GHz 対における屋外電波伝搬特性の測定とリンクレベル特性の評価[30][39][42][44][48]

2.4GHz 帯の屋外電波伝搬特性の測定を行った. 伝搬路特性の測定に用いた受信機の構成を図

-13 に示す. 受信機側に6本の指向性アンテナを設置した. IEEE802.11b のアクセスポイント(AP)から

送信された 2.4GHz の信号を受信し、ダウンコンバータにて中間周波数に変換した後、12 ビットの AD

変換器を用いて PC 上に測定データを記録した。それらのデータを用いて、2.4GHz 帯の伝搬路特性

を求めた。IEEE802.11bシステムでは、プリアンブル、ヘッダ、データユニットよりフレームが構成されて

いる。本検討では、既知のプリアンブル信号を観測することにより伝搬路特性を測定した。プリアンブ

ル部とデータ部は 11 チップの Barker 系列によりスペクトル拡散されている。ここで、Barker 系列は{+1,

-1, +1, +1, -1, +1, +1, +1, -1, -1, -1}で与えられ、鋭い自己相関特性を示す。伝搬路特性は広帯域

に拡散されたプリアンブル信号を観測することで得られる。測定には、図-14 に示すように、6 本の指

向性パッチアンテナからなる円形アレイアンテナ配置を用いた。パッチアンテナの指向性パターンを

図 15 に示す。

図-16. 各指向性アンテナ素子での受信信号より得られた実測インパルス応答値(6 ブランチ). (a) アンテナ#1, #4 (b) アンテナ#2, #3 (c) アンテナ#5, #6

図-13. 受信機のブロック図. 図-14. 円形パッチ

アンテナアレイ. 図-15. 2.4GHz 帯の指向性ア

ンテナの放射パターン.

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59

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

0 5 10 15 20 25 30 35

Ave

rage

Bit

Err

or R

ate

EB/N0 [dB]

1 MHz (w/o AAA)10 MHz5 MHz1 MHz

図-17. 実測インパルス応答を用いた屋外伝搬下における AAA を用いたシングルキャリアシ

ステムのビット誤り率特性.

送受信アンテナ間の各伝搬路のインパルス応答測定結果を図-16(a)-(c)に示す。アンテナ間隔を

d=50cm とする。送受信機間に障害物はないとする(見通し内環境の伝搬路特性を測定した)。送信機

における指向性アンテナは図-14 におけるアンテナ1に対面しているものとする。それらの図に示すよ

うに、インパルス応答には直接波と遅延波が観測される。また、指向性アンテナを用いているため、ア

ンテナ2-6の受信信号電力はアンテナ1より低くなることがわかる。2.4GHz 帯の実測伝搬路特性を

用いた計算機シミュレーションにより、AAA を用いたシングルキャリアシステムのビット誤り率を評価し

た。基地局では、6本の指向性アンテナを有する AAA を用いて、他の中継局(RS)からの同一チャネル

干渉を抑圧する。RS 数は6とする。RS からの信号は対応する指向性アンテナ1~6により受信される。

AAA の重み係数を定めるための参照シンボル数は 128 とする。AAA を用いたシングルキャリアシステ

ムの誤り率特性を図-17 に示す。Eb/N0 はビット当たりのエネルギー対雑音電力密度比を表す。帯域

幅の異なる QPSK 信号を伝送することを仮定する。信号帯域幅を 1, 5, 10MHz とする。この図から、

LOS 環境におけるシングルキャリアシステムの BER 特性が AAA を用いることで、AAA を用いない場

合と比べて改善されることがわかる。信号帯域幅が狭帯域になるにつれて、符号間干渉が減少し、

BER 特性が改善される。この結果はマルチキャリア伝送を用いることで通信品質を改善できることを示

している。例えば、中継伝送における帯域幅が 20MHz であるとき、20 キャリアのマルチキャリア伝送を

行うことで中継伝送を達成することができる。

7.2.2 無線中継システムのための高効率パケット転送プロトコル

(A) 周期的間欠送信[1-3][5][6][8][10][15][19][21][23][24][30][39][41][42][45][50][51]

WLL を実現するために、我々研究室では高効率パケット中継

法、周期的間欠送信法(IPT : Intermittent Periodic Transmit)を

提案している。IPT では送信源ノードにおいてパケットは周期的

に間欠送信し、中継ノードでは受信後即中継する。図-18 は送

信周期を P1 および P2 に設定した場合の IPT の動作例を示して

いる。このように、送信周期を設定することで、パケットの同時送

信を行うノード間の間隔を意図的に決定できることがわかる。この

SourceNode

DestinationNode

IntermediateRelay Node

P1

P2

図-18. IPT 転送プロトコル.

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60

ため、中継経路が必要とする周波数リユース間隔と同時送信を行うノード間の間隔が等しくなるように

送信周期を設定することで中継伝送効率を 大化することができる。

(a) IPT 転送の実験的評価

IPT の効果を実環境でも確認するために、テストベットを開発し実環境においてその評価を行った。

各テストベットには無線インターフェースとして IEEE802.11b 準拠の無線 LAN を装着した。実際の

WLL システムでは、中継回線用とアクセス回線用とで少なくも2台の無線インターフェースが必要とな

る。しかしながら、今回の検討では IPT の実環境での効果確認を目的としたため、各テストベットには

中継回線用のインターフェースのみを装着した。

図-19および図-20に示すノード配置を用いて実験を行った。二次元上にノードを配置した実験を

シナリオ1とし、三次元上にノードを配置した実験をシナリオ2とする。評価パラメータとして、送信源ノ

ードで設定した送信周期に対するパケット損失率とスループットを用いる。図-21にそれぞれのシナリ

オで実験結果を示す。図-21より、どちらのシナリオにおいても送信周期がある値を超えたところで、

パケット損失率が大幅に改善していることがわかる。これにより IPT が実環境でも適切に動作すること

がわかる。

(b) IPT 転送のためのその他の技術

IPT を二次元平面上ノード配置や上下回線双方向トラフィック環境で動作させるためには、何かしら

の工夫が必要となる。我々は、IPT をこのような環境でも動作させるために新たに2つのプロトコル、経

路予約および双方向 IPT、を提案した。

・ ・ ・ ・ ・

4F

3F

2F

1F

Source node

Destination node

70.2m

5m

15m

・ ・ ・ ・ ・

4F

3F

2F

1F

Source node

Destination node

70.2m

5m

15m

図-19. シナリオ 1 のノード配置. 図-20. シナリオ 2 のノード配置.

図-21. スループットおよびパケット損失率

(シナリオ 1, 2).

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61

i) 経路予約を用いた IPT 転送

IPT を二次元平面上でも効果的に動作させるための

新たなプロトコルとして中継経路予約(図-22)を提案す

る。なお、当該プロトコルと IPT を組み合わせた方式を

経路予約型 IPT(PR-IPT : Path Reservation-IPT)と呼

ぶ。IPT では適切な送信周期を設定することで、中継

経路内の干渉を完全に取り除くことが可能であるが、

中継経路外からの干渉を取り除くことができない。この

ため、二次元平面ノード配置ではうまく動作しないとさ

れてきた。中継経路予約では、事前に中継経路外のノ

ードを送信待機状態とすることで、使用する中継経路

を予約する。これにより、中継経路外からの干渉を取り

除くことができ、IPT をいかなる環境でも効果的動作さ

せることが可能となる。

ii) 双方向 IPT 転送

TCP トラフィックを想定した場合、TCP 層の ACK パ

ケット(TCP-ACK)が発生するため、中継ネットワークに

は双方向にトラフィックが流れることになる。IPT ではこ

のような双方向トラフィックをそのまま収容することができないという問題がある。このため、本プロジェ

クトでは、双方向型 IPT を提案する。双方向型 IPT では、上り回線のパケットを下り回線のパケットをト

リガとしたポーリングで送信することで、中継経路内の同時送信間隔を維持する。これにより、双方向ト

ラフィック環境でも IPT を効果的に動作させることが可能となる。

図-23に示すように、ノード A からノード B に向けて TCP トラフィックが発生した場合を考える。ノー

ド A はノード B へ向けてパケットを間欠送信市、ノード B はデータパケットを受信するとすぐに

TCP-ACK を返信する。各中継ノードは下り回線のパケットを受信した時のみバッファに登録している

パケットを FIFO により送信することで、トラフィックの向きによらず、送信源ノードで設定した送信周期

により送信タイミングが決定される。

送信周期はデータパケット長に適した値に設定される。TCP-ACK パケットはデータパケットよりも短

いため、この送信周期を用いた場合は効率が劣化してしまう。このため、本研究ではいくつかの

TCP-ACK をアグリゲーションして送信する。これにより、TCP-ACK パケットの送信割合が減少するた

め、効率の劣化を抑制することができる。

iii) 計算機シミュレーション

経路予約と双方向型 IPT を評価するために、計算機シミュレーションを行った。シミュレーション条

件を表-1に示す。評価サイトとして、大学のフロアをモデル化したものを用いる。フロアプランとノード

配置を図-24に示す。中継経路は 小伝搬損ルーティングにより構築し、得られた中継経路も図24

内に記載している。無線インターフェースとして IEEE802.11a 準拠の無線 LAN を想定し、本実験では

中継回線のみを評価する。評価パラメータとして総システムスループットと平均パケット遅延を用いる。

以下に本検討で比較した 2 方式をまとめる。

従来方式 – すべてのパケットを連続送信法により送信する。連続送信法とは IPT において送信周期

SourceNode

DestinationNode

Pausing Node

Reserved Path

図-22. 経路予約.

SourceNode

A

DestinationNode

B

IntermediateRelay Node

DATA Packet

Overheard Packet

TCP-ACK Packet

DATA Packet

Blank SpaceTCP-ACK Packet

図-23. 双方向 IPF 転送プロトコル.

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62

を 0 に設定した場合と等価である。

提案方式 [経路予約(Path Reservation: PR)+TCP-ACK Aggregation を用いた双方向 IPT] – 下り回

線のトラフィックかつ 50 パケット以上のバーストでパケットが生起した場合のみ中継経路予約と双方向

IPT を適用し、それ以外の場合は連続送信法により送信する。なお、TCP-ACK のアグリゲーション数

を変化(0, 4, 8, および 16)させて評価を行った。

図-25にシミュレーション結果を示す。横軸にはシステム全体で発生させた負荷の合計を示してい

る。 図-25より、アグリゲーション数を 0 とした提案方式は従来方式と比較して悪い特性を示している

ことがわかる。これは、TCP-ACK パケットがデータパケットよりも非常に短く、これにより効率が劣化す

るためだと考えられる。一方で、アグリゲーション数を増加させることで提案方式の特性は上昇し、アグ

リゲーション数を 16 とした場合では、従来方式と比較して 16%程度スループット特性が改善しているこ

とがわかる。これはアグリゲーションを行うことで、TCP-ACK を中継する際の効率を向上させることが

できるためだと考えられる。

(c) 指向性アンテナを用いた IPT 転送

中継伝送効率をさらに向上させるために、WLL の中継インターフェースに指向性アンテナを適用

する。指向性アンテナを使用することで、干渉を与えるエリアを限定することができるため、周波数の

利用効率を高めることができる。しかしながら、指向性アンテナを使用した場合、二つの問題が発生

PR+BiIPT+Aggregation 8PR+BiIPT+Aggregation 16

Conventional methodPR+BiIPTPR+BiIPT+Aggregation 4

2

3

4

5

6

7

2 4 6 8

Total offered load [Mbps]

Agg

regat

ed end-

to-en

d th

rough

put

[Mbps]

スループット特性

0

2

4

6

8

10

12

14

16

2 4 6 8

Total offered load [Mbps]

Aver

age

dela

y [se

c]

Conventional methodPR+BiIPTPR+BiIPT Aggregation 4PR+BiIPT Aggregation 8PR+BiIPT Aggregation 16

遅延特性

図-25. スループットおよび遅延特性.

1 2 3 40 5 6 7 8 9

10

11

12

70.2m

42m

terminalterminal

Access Point(Node X)

Core Node Base Node

Building penetration loss : 12dB

Node X

Forwarding path

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

10

11

12

13

21

19

14 16

17

22

23

20

15

18

Corridor

Courtyard

図-24. 実験系の概要.

表-1. シミュレーション条件.

Channel Model propagation coefficient: α=2 (within five meter) 3.3(otherwise) shadowing: 12dB a wall

SINR 10dB

Radio IF IEEE802.11a

Transmission Mode Basic

Data packet size 1500 byte

Traffic Model Originating packets are assumed to be Poisson arrival. The length of a packet burst is log-normally distributed with means of 20 for downlink [11].

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63

することが知られている。一つは送受信に使用するアンテナを適切に決定する必要があるという問題

であり、もう一つは隠れ端末問題の影響が大きくなる点である。これらの問題を解決するために、本検

討では新しいルーティング法とパケット中継法を提案する。

本検討では、一つのノードは複数の指向性アンテナを装備し、均等に角度オフセットを与えて配置

したアンテナシステムを想定する。送受信の際は複数のアンテナの中から一つ選択する。

i) ルーティングプロトコル

中継経路と使用するアンテナの選択は指向性アンテナを適用した場合に大きな問題となる。提案

するルーティング法では、 小伝搬損ルーティングを基本とし、ルーティング期間中に使用する指向

性アンテナを切り替える。これにより、各ノードの位置情報なしに、送受信に使用する 適な指向性ア

ンテナと中継経路を同時に決定することが可能となる。

ii) パケット転送プロトコル

指向性アンテナを用いた WLL においても高い中継伝送効率を達成できるパケット中継法として、

FA-IPT(Fast Antenna Selection IPT forwarding)を提案する。FA-IPT は IPT を基本とし、それに送受

信アンテナのスケジューリングを適用したものである。

各ノードは下り回線のパケットを受信したときにのみ、バッファ内のパケットを FIFOで送信する。各ノ

ードのバッファには、双方向のパケットがともに登録されており、双方向 IPT と同様の原理で双方向の

パケットを多重することができる。このように、上り回線のパケットはすべて下り回線のパケットをトリガと

したポーリング方式で送信されるため、各ノードは常に受信アンテナとして上り方向の指向性アンテナ

を選択しておくことで、下り回線のパケットを待ち受ける。下り回線のパケットを送信したノードは、次ホ

ップのノードに上り回線のパケットがある場合は下り方向のアンテナを選択したまま、上り回線のパケッ

トが送信されるのを待ち受ける。このように、アンテナを高速で切り替えることにより、指向性アンテナを

用いた場合でも無線マルチホップ中継を可能にする。またFA-IPTはIPTを基本としているため、高い

中継伝送効率を達成することも可能となる。

iii) 計算機シミュレーション

FA-IPT の効果を確認するために、計算機シミュ

レーションを行った。また、本評価では無指向性ア

ンテナを用いた連続送信を比較方式する。シミュレ

ーション条件を表-1 に、評価サイトも図-24に示す。

提案ルーティングプロトコルによって得られた中継

経路と送受信指向性アンテナは紙面の都合上割愛

する。詳細は文献[15]に述べている。なお、図-26

に本評価で使用したアンテナシステムと各アンテナ

の指向性特性を示している。

図-27にシミュレーション結果を示す。横軸はシステム全体に与えた総負荷を示しており、縦軸はシ

ステム全体で得られた総スループットおよびパケット損失率を示している。図-27より、FA-IPT を使用

した場合は比較方式と比べて 14.1%高いスループットを示していることがわかり、パケット損失率をほぼ

0にすることができることがわかる。本結果により、提案方式を使用することで指向性アンテナを使用し

た WLL において高い中継伝送効率を達成できることがわかる。

A1

A0A3

A4 A5

A2

図-26. 指向性アンテナの特性.

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64

図-27. スループットおよびパケット損失率特性.

(B) 遅延広がりを有する MIMO チャネルのための無線中継伝送方式[7][11][12][17][18][20][26][32][33][36][38]

遅延広がりを有するMIMOチャネルのための無線中継伝送方式として、ベクトル符号化に着目し検

討を行った。詳細を以下に示す。

(a) ベクトル符号化

図-28. ベクトル符号化を用いたシステムの構成.

ベクトル符号化システム構成を図-28 に示す。チャネル行列の相関行列 HHH を固有値分解するこ

とで、固有ベクトル iEr

を得る。この固有ベクトルを用いた符号分割多重を行うことで、遅延広がりを有

するSISO伝搬路上での直交伝送を実現できる。ベクトル符号化方式における受信信号は次式で表さ

れる。

∑−

=

+=1

0

N

i

Hiiif nHESR rrr

λ

ここで、 iEr

は HHH の固有ベクトルであり、λi は iEr

の固有値を表す。ベクトル符号化を行うシステムが

無歪み伝送システムと等価となることは明らかである。

(b) ベクトル符号化の MIMO 伝送への適用

7.2.1(A)において述べたように、E-MIMO システムは理論的な 大容量を達成することができる。こ

の方式では、ベクトル符号化と同様に、伝搬路相関行列の固有ベクトルを送受信アンテナの重み係

数として用いる。すなわち、伝搬路行列を特異値分解することで固有ベクトルを得ることができる。しか

しながら、一般的には、E-MIMO システムでは、符号間干渉がないこと(無歪みであること)を仮定して

いる。MIMO 伝搬路において符号間干渉量が増加するにつれて、E-MIMO システムの特性は劣化す

ることが知られている。本検討の目的は、E-MIMO システムにベクトル符号化を適用することで、遅延

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65

広がりを有する MIMO チャネルでのスループットを 大化させることである。ベクトル符号化 MIMO 直

交伝送を実現するためには、E-MIMO におけるアンテナ重み係数とベクトル符号化における送受信

フィルタのインパルス応答の同時 適化が必要となる。

E-MIMO とベクトル符号化の重み係数 適化手法を以下に示す。ベクトル符号化を用いた 2×2

MIMO システムを図-29 に示す. )(1 JXr

と )(2 JXr

はそれぞれアンテナ 1, 2 から送信される j 番目の送

信符号ブロックを示す。Hij はアンテナ j, i 間の SISO チャネル行列を示す。 )(1 JRr

と )(2 JRr

は受信アン

テナ 1, 2 における j 番目の受信符号ブロックを示す。Kij は送信アンテナ j、受信アンテナ i 間の 大

遅延を示す。2×2MIMO 伝送は次式で与えられる。

MIMOMIMOMIMO XHR

XX

HHHH

RR

rr

r

r

r

r

⋅=

⎥⎥⎦

⎢⎢⎣

⎡⋅⎥

⎤⎢⎣

⎡=

⎥⎥⎦

⎢⎢⎣

2

1

2212

2111

2

1

ここで、 MIMOXr

, MIMOH and MIMORr

は MIMO 送信ベクトル, 遅延広がりを有する MIMO チャネル行列、

MIMO 受信ベクトルを表す。 MIMOH は遅延広がりを有する 4 つの SISO チャネル行列からなる。 MIMOH

を特異値分解することでベクトル符号化を行う。ベクトル符号化 MIMO 伝送を用いることで、従来の

MIMO 伝送に比べて伝送特性が大幅に改善され、ベクトル符号化 SISO 伝送と比べてスループット特

性を大きく改善できることは明らかである。

7.3 IIT Madras の成果

7.3.1 無線 LAN のための位相フィードバックビットが制限された 4x2 MIMO 方式[22][31] 時空間符号化および Layered Space-time 型復号化と送信機への位相フィードバックを組み合わせ

た方式を検討した。検討システムでは、4 つの送信機と 2 つの受信機を用いる。時空間符号化を各グ

ループ内で用い、干渉抑圧を受信機で実行する。干渉抑圧のために、(a) 簡易干渉抑圧法、 (b)

小 2 乗誤差規範に基づく干渉抑圧、(c) QR 型の干渉抑圧の3つの手法を検討した。よく知られる 4x2

の MIMO システムにおいて、我々の提案する位相フィードバック方式と、4x2 の CIOD 方式、4x2 のビ

ームフォーミング方式と特性比較を行った。ビームフォーミング方式においては、ビームフォーミング

ベクトル(アンテナ重み係数)を量子化した場合と量子化しない場合の特性評価を行った。提案方式

が良い特性を示し、IEEE802.11n 無線 LAN に適していることを示した。

7.3.2 パイロットレス伝搬路追従 – OFDM システムのための判定帰還形伝搬路追従技術[40]

高速移動環境(高速フェージング環境)においては、フェージング変動を補償するために、伝搬路

変動への追従(トラッキング)が必要となる。高速な伝搬路特性の変動に対処するために、パイロットシ

図-29. ベクトル符号化を用いた 2x2MIMO.

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ンボルを用いない伝搬路追従技術である判定帰還形伝搬路追従(DDCT:Decision Directed Channel

Tracking)について検討した。DDCT では、外れ値による大きな誤差が生じる場合に推定特性が劣化

する。外れ値の存在下におけるこの問題への対策として、Huber の M 推定(HM 推定)のようなロバスト

推定技術を検討した。検討では、高速フェージング下でロバストな伝搬路推定を可能にする強力な

DDCT 技術を開発した。伝搬路推定/トラッキングを高速フェージング下での時間周波数符号化

OFDM システムに対して評価した。OFDM システムにおける計算機シミュレーションにより、提案方式

が従来のチャネル推定法と比べて高速フェージング下において優れた特性を示すことを明らかにし

た。

DDCT アルゴリズムを以下に示す。以下の議論では、太字はベクトルまたは行列を示す。( )H と( )-1

はエルミート転置と逆行列をそれぞれ示す。n 番目の送信 OFDM シンボルを FSA nn = と表すと、j 番

目のアンテナにおける n 番目の受信 OFDM シンボルは次式で表される。

njnjnnj ,,, NhAb +=

ここで、 nS は N×N の対角行列であり、その対角成分が各サブキャリアで伝送された複素参照/デー

タシンボルを表す。F は N×N DFT 行列の 初の Lp 列を表す(N×Lp 行列を表す)。Lp は OFDM シン

ボルのガード区間長を表す。 nj ,h と nj ,N は j 番目のアンテナ、n 番目のシンボルに対応する N×1 チャ

ネルインパルス応答と N×1 雑音ベクトルを表す。

本検討では、プリアンブルシンボルの後でデータシンボルが伝送されると仮定している。受信側で

は、伝搬路パラメータをプリアンブルを観測することで推定し、時間的なチャネル変動を後述のパイロ

ットレス DDCT アルゴリズムを用いて推定する。

i) まず、OFDM の既知のプリアンブルを用いて初期チャネル推定を実行する。先頭シンボル(プリア

ンブル)に対応するチャネルインパルス応答推定値を次式で表す。

1,1

11,ˆ

jH

j bSFh −=

ここで、 a はa の推定値を表す。

ii) 時間的なチャネル変動は DDCT 技術を用いて追従する。反復重み付け 小 2 乗法(IRLS:

iterative re-weighted least square) と呼ばれる反復法を用いて、HM 影響関数から得られる連立方

程式を解くことで追従させる。IRLS アルゴリズムを以下のステップ 3-8 で述べる。

iii) (n-1)番目の OFDM シンボルでのチャネル推定値を n 番目のシンボルのおける反復計算の初期推

定値(すなわち、 )(1,

)0(,

ˆˆ knjnj −= hh )として用いる。ここで, kは(n-1)番目のシンボルに対する反復計算での

反復回数を表す。

iv) n 番目の OFDM シンボルの m 番目のサブキャリアにおける受信(軟判定)複素データは次式のよ

うに与えられる。

)1(,

,)(, ˆ

ˆ−

=pnm

nmpnm H

bS (ダイバーシチ受信無し)

( )22

1)1(

,,

2

1 ,,)1(

,,)(, ˆ

ˆˆ

∑∑

=−

=

∗−

=

jp

nmj

j nmjp

nmjpnm

H

bHS (ダイバーシチ受信有り)

ここで、p は IRLS の計算における反復番号を表す。

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67

v) )(ˆ pnS の硬判定値を )( p

nS と表記すると、送信および受信 OFDM シンボルのレプリカがそれぞれ

FSA )()( pn

pn = 、 )1(

,)( ˆ −p

njp

n hA のように与えられる。従って、受信信号とそのレプリカとの残留誤差が次式の

ように計算される。

)1(,

)(,

)(,

ˆ −−= pnj

pnnj

pnj hAbr

vi) チャネルインパルス応答の推定値は次式で与えられる。

( )( ) ( ) njpnj

Hpn

pn

pnj

Hpn

pnj ,

)(,

)(1

)()(,

)()(,

ˆ bWAAWAh−

=

ここで、 )(,pnjW は N×N 実数対角行列を表し、その対角成分は次式の HM 推定器に対する重み関数

により与えられる。

⎪⎭

⎪⎬⎫

⎪⎩

⎪⎨⎧

=)/,max( )(

,

)(, σβ

βpnj

pnj r

diagW .

ここで、σ は雑音の標準偏差を表す。max( ) は 大値を与える関数である。β は外れ値に対する

ロバスト性を表すパラメータである。すなわち、β を増加すると、 )(,pnjW は単位行列に近づく。β を適切

な値に設定することで、外れ値の存在下でのチャネル推定精度を改善させることができる。

vii) p 番目の反復計算において、チャネル周波数応答の一時推定値を )(,

)(,

ˆˆ pnj

pnj hFH = により得る。

viii) 上記の反復計算を残留誤差が十分に小さくなり正確なチャネル推定値が得られるまで継続す

る。

7.3.3 狭帯域干渉下における無線 LAN システムのためのロバストターボ復号方式[40]

ライセンス不要の周波数帯で稼働する無線 LAN システムには、Bluetooth やその他の無線 LAN シ

ステムからの同一チャネル干渉波が到来し、スループット特性に大きな影響を与える。そのような同一

チャネル干渉波はガウス測定モデルを混入させた“thick tailed”分布としてモデル化される。

本検討では、そのような同一チャネル干渉にロバストである強力なターボ復号法を開発した。種々

の方法が考えられるが、我々はターボ復号の LLR(対数尤度比)の計算において、ロバスト推定に基

づく M 推定を用いることを考えた。具体的には、”hand-crafted” LLR 計算方式を開発し、混入ガウス

モデルの効果を示した。

8. まとめと今後の課題

共同研究成果として、判定帰還伝搬路追従技術を用いる OFDMA システムのための適応リソース

割当技術を提案した。提案方式では、高速移動ユーザーには OFDMA フレーム前方のリソースブロッ

ク(RB)を優先的に割り当て、低速移動ユーザーにはその他の RB を割り当てる。計算機シミュレーショ

ンにより、提案方式が高速フェージング環境における OFDMA システムのスループット特性を改善す

るのに有効であることを示した。マルチセル環境においては、チャネル再利用分割のような動的周波

数割り当て技術を併用することが重要となる。同一チャネル干渉下における(マルチセルシステムで

の)提案方式の特性を明らかにし、方式の改善を図ることが今後の課題である。

屋外無線 LAN において高い周波数利用効率を達成するために、AAA 技術をアクセス回線と中継

回線の両方に適用した。個別の研究成果として、AAA システムにおける簡易な重み係数 適化方式

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を開発した。加えて、AF 型の無線中継システムにおいて、RS 固有の参照信号を必要としない共通参

照信号を利用した AAA の重み係数 適化手法を開発した。さらに、2.4GHz 帯の屋外電波伝搬特性

を測定し、測定した伝搬路特性を用いて AAA の特性を評価した。

我々が独自に開発した無線中継用パケット転送プロトコルである周期的間欠法(IPT)を改良し、さら

に特性を改善させた。無線 LAN のテストベッドシステムを開発し、実験によりスループットを評価するこ

とにより、提案プロトコルの実用性を検証した。実験結果から、提案プロトコルが実環境における種々

の検討シナリオにおいて有効であり、システムのスループット特性を改善可能であることを示した。さら

に、IPT 方式にパス予約および双方向プロトコルを導入することで、様々な環境において適用可能と

なることを示した。また、遅延広がりを有する MIMO チャネルのためのベクトル符号化方式を開発し、

その原理を示した。ベクトル符号化を用いる方式では、計算量が増加することが問題となる。計算量を

大幅に増加させることなく、無線中継伝送のスループットを改善させることのできる MIMO 伝送手法を

開発することが今後の課題である。

9. 研究成果の発表

学術雑誌 (5件)

[1] Y. Higa and H. Furukawa, “Experimental evaluations of wireless multihop networks associated

with Intermittent periodic transmit,” IEICE Transactions on Communications, Vol. E90-B, No.

11, pp. 3216-3223, Nov. 2007.

[2] 比嘉征規, 古川 浩, “線トポロジー型無線マルチホップネットワークにおける高効率中継伝送

方式,” 電子情報通信学会 論文誌 B, Vol. J90-B, No. 12, pp. 1225-1238, 2007 年 12 月.

[3] 金清敏幸, 比嘉征規, 古川 浩, “無線 LAN マルチセル環境下での VoIP 伝送特性,” 電子情

報通信学会論文誌 B, Vol. J91-B, No. 1, pp. 14-21, 2008 年 1 月.

[4] 藤井大樹, 牟田 修, 赤岩芳彦, “アンテナ素子当たりの 大送信電力が制限された SDMA シ

ステムにおける 適重み係数の決定法とその特性評価,” 電子情報通信学会論文誌 B, Vol.

J91-B No. 9, pp. 972-979, 2008 年 9 月.

[5] 東坂悠司, 丸田一輝, 比嘉征規, 古川 浩,“無線マルチホップネットワークにおける経路予約

型周期的間欠送信,” 電子情報通信学会論文誌 B, Vol. J91-B, No. 10, pp. 1287-1298, 2008

年 10 月.

国際会議の論文(査読付) (11 件)

[6] Y. Higa and H. Furukawa, “Experimental evaluations of wireless multihop network associated

with the Intermittent periodic transmit,” Proc. of the IEEE VTS Asia Pacific Wireless

Communication Symposium (APWCS 2006), pp. 234-238, Aug. 2006.

[7] H. Furukawa, “On the path diversity effect of FIR filter array,” Proc. of the IEEE Vehicular

Technology Conference 2007 Spring, pp. 1501-1505, April 2007.

[8] Y. Touzaka, Y. Higa and H. Furukawa, “Evaluations of wireless multihop network incorporating

intermittent periodic transmit and packet forwarding path reservation,” Proc. of the IEEE

Vehicular Technology Conference 2007 Spring, pp. 212-216, April 2007

[9] D. Fujii, O. Muta, and Y. Akaiwa, “A weight optimization method under constraint of the

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maximum power for an antenna element in SDM systems,” Proc. of the IEEE Asia Pacific Wireless

Communication Symposium (APWCS 2007), Aug. 2007.

[10] K. Maruta, Y. Tohzaka, Y. Higa, and H. Furukawa, “Bidirectional traffic handlings in wireless

multihop networks incorporating intermittent periodic transmit and packet forwarding path

reservation,” Proc. of the IEEE VTS Asia Pacific Wireless Communication Symposium (APWCS

2007), Aug. 2007.

[11] Z. Li and H. Furukawa, “An enhanced vector coding and its application to delay spread MIMO

channels,” Proc. of the IEEE VTS Asia Pacific Wireless Communication Symposium (APWCS

2007), pp. 134-138, Aug. 2007.

[12] Z. Li and H. Furukawa, “Imbalanced power allocation to compensate for interblock interference

for block signal transmissions associated with pseudo-inverse matrix equalizer,” Proc. of the 19th

World Wireless Research Forum (WWRF2007), Nov. 2007.

[13]T. Tominaga, O. Muta, and Y. Akaiwa, “A least mean square based algorithm to determine

transmit and receive weights in eigenbeam MIMO systems,” Proc. of the IEEE Vehicular

Technology Conference 2008 Spring, May 2008.

[14] K. Sakamoto, R. Shimizu, O. Muta, and Y. Akaiwa, “Co-channel interference suppression by

dynamic channel assignment based on reuse partitioning in OFDMA systems using multiple

antenna reception,” Proc. of the IEEE VTS Asia Pacific Wireless Communication Symposium

(APWCS 2008), Aug. 2008.

[15] K. Mitsunaga, K. Maruta, Y. Higa and H. Furukawa, “Application of directional antenna to

wireless multihop network enabled by IPT forwarding,” Proc. of the International Conference on

Signal Processing and Communication Systems, Dec. 2008.

[16] M. Sasaki, O. Muta, and Y. Akaiwa, “Performance evaluation of OFDM transmission for radio

relaying in measured outdoor channels at 2.4GHz-band,” Proc. of the 2009 IEEE VTS Asia

Pacific Wireless Communication Symposium (APWCS 2009), Aug. 2009.

フォーラム・ワークショップ等の発表論文 (35件)

[17] Z. Li and H. Furukawa, “Application of eigencode division multiplexing to MIMO systems,”

IEICE Tech. Rep., RCS2006- 125, pp. 121-126, Aug. 2006.

[18] 古川 浩, “固有符号分割多重伝送における繰り返し復号によるブロック間干渉除去,” 電子情

報通信学会技術報告書, RCS2006-130, pp. 151-156, 2006 年 8 月.

[19] 東坂悠司, 比嘉征規, 古川 浩, “経路予約型周期的間欠送信を適用した無線マルチホップネ

ットワークの特性評価,” IEICE Tech. Rep., vol. 106, no. 360, RCS2006-169, pp. 71-76, 2006

年 11 月.

[20] H. Furukawa, “On the path diversity effect of FIR filter array,” IEICE Technical Report, Vol. 106,

No. 360, RCS2006-173, pp. 95-100, Nov. 2006.

[21] Y. Akaiwa, H. Furukawa, and O. Muta, “Outdoor wireless local area networks with adaptive array

antenna systems,” Digest of the 1st Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

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70

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

42-45, Dec. 2006.

[22] K. Giridhar, “Enhanced closed loop spatial multiplexing with linear decoding for wireless LAN and

MAN,” Digest of the 1st Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.42-45, Dec.

2006.

[23] 金清敏幸, 比嘉征規, 古川 浩, “無線 LAN マルチセル環境下での VoIP 伝送特性,” 電子情

報通信学会技術報告書, Vol. 106, No. 479, RCS2006-208, pp. 79-84, 2007 年 1 月.

[24] 丸田一輝, 東坂悠司, 比嘉征規, 古川 浩, “TCP トラフィックを想定した経路予約型周期的間

欠送信,” 電子情報通信学会技術報告書, Vol. 106, No. 478, RCS2006-194, pp. 111-116, 2007

年 1 月.

[25] 冨永孝由樹, 牟田 修, 赤岩芳彦, “固有ビーム MIMO システムにおける送受信ウェイトの LMS

アルゴリズムに基づく決定法,” 電子情報通信学会技術研究報告, RCS2006-230, pp. 81-85,

2007 年 1 月.

[26] 小寺康平, 古川 浩, “MMSE 適応制御 FIR フィルタアレイ,” 電子情報通信学会技術報告書,

RCS2006-256, pp. 87-90, 2007 年 3 月.

[27] Y. Akaiwa, H. Furukawa, and O. Muta, “Outdoor wireless local area networks with adaptive array

antenna systems, PartII,” Digest of the 2nd Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project

on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society,

pp.33-39, July 2007.

[28] D. Fujii, O. Muta, and Y. Akaiwa, “A weight optimization method under constraint of the

systems,” Digest of the 2007 Japan-Indo Workshop on Microwaves, Photonics, and

Communication Systems, pp.1-5, July 2007.

[29] 藤井大樹, 牟田 修, 赤岩芳彦, “空間分割多重方式におけるアンテナ素子当りの 大送信電

力制限下での 適重み決定法,” 電子情報通信学会 技術研究報告,RCS2007-38, pp. 53-58,

2007 年 7 月.

[30] Y. Akaiwa, H. Furukawa and O. Muta, “Outdoor wireless local area networks with adaptive array

antenna systems, PartIII,” Digest of the 3rd Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project

on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society,

pp.30-34, Dec. 2007.

[31] G. Wodajo, T. Venkatachalam, and K. Giridhar, “New 4x2 MIMO scheme with limited phase

feedback for W-LAN,” Digest of the 3rd Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society,

pp.30-34, Dec. 2007.

[32] 小寺康平,古川 浩, “適応フィルタアレイの計算量削減に関する一検討,” 電子情報通信学会

技術研究報告, Vol. 107, No. 438, pp. 49-54, Jan. 2008.

[33] 李 照,古川 浩, “擬似逆行列等化が適用されたブロック変復調システムにおける送信信号電

力の不均一配置法によるブロック間干渉除去,” 電子情報通信学会技術研究報告, Vol. 107,

No. 438, pp. 157-161, Jan. 2008.

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[34] 清水良一, 坂元一光, 牟田 修, 赤岩芳彦, “モバイル WiMAX 準拠のシステムにおける同一チ

ャネル干渉軽減法の検討,” 電子情報通信学会 技術研究報告, RCS2007-227, pp. 245-250,

2008 年 3 月.

[35] 藤井大樹, 牟田 修, 赤岩芳彦, “アンテナ素子当たりの 大電力が制限された SDMA システム

における 適重み係数の決定法とその特性評価,” 電子情報通信学会総合大会 BS-1-7, 2008

年 3 月.

[36] K. Kotera and H. Furukawa,“On the path selection effect of estimated channel for adaptive filter

array equalizer,” General conference of IEICE, pp. 407, Mar. 2008.

[37] 坂元一光, 清水良一, 牟田 修, 赤岩芳彦, “OFDMAシステムにおける再利用分割に基づく動

的チャネル割当を用いた同一チャネル干渉軽減法の検討,” 電子情報通信学会総合大会

B-5-45, 2008 年 3 月.

[38] Z. Li and H. Furukawa, “Imbalanced power allocation with iterative demodulation to reduce IBI

for block signal transmissions associated with pseudo-inverse matrix equalizer,” 電子情報通信

学会総合大会, pp. 488, Mar. 2008.

[39] Y. Akaiwa, H. Furukawa, and O. Muta, “Outdoor wireless local area networks with adaptive array

antenna systems, PartIV,” Digest of the 4th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project

on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society,

pp. 32-38, July 2008.

[40] P. Ranjitha and K.Giridhar, “Pilotless channel tracking for space frequency coded OFDM

systems,” Digest of the 4th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

39-44 , July 2008

[41] 光永 圭, 比嘉征規, 古川 浩, “指向性周期的間欠送信法による高効率無線マルチホップ中

継,” 電気関係学会九州支部連合大会, No. 11-2A-14, 2008 年 9 月.

[42] Y. Akaiwa, H. Furukawa, and O. Muta, “Outdoor wireless local area networks with adaptive array

antenna systems, PartV,” Digest of the 5th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project

on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society,

pp. 38-44, Dec. 2008.

[43] A. Ayyar and K. Giridhar, “Robust turbo decoding in interference limited WLAN systems,”

Digest of the 5th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 45-49, Dec.

2008.

[44] O. Muta, H. Furukawa, and Y. Akaiwa, “Performance evaluation of outdoor wireless LAN system

employing adaptive array antenna techniques,” Proc. of the International Workshop on Frontiers

in Electronics, Information and Communication Engineering, Dec. 2008.

[45] H. Nishimoto, D. Kinoshita, Y. Higa, K. Kotera, K. Oosaki, and H. Furukawa, “ショートレンジ無

線バックホールで形成された広域 WiFi ブロードバンド空間での車型リアルアバターの制御,” 電

子情報通信学会技術研究報告, Vol. 108, No. 345, AN2008-59, pp. 41-46, 2008 年 12 月.

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[46] K. Sakamoto, O. Muta, Y. Akaiwa, and K. Giridhar, “An adaptive resource allocation method for

OFDMA systems employing pilotless channel tracking techniques,” IEICE Technical Report,

2009 年 3 月.

[47] 藤井大樹, 佐々木元晴, 牟田 修, 赤岩芳彦, “Amplify-and-Forward 無線中継における共通

参照信号系列を利用した基地局アダプティブアレイアンテナの受信重み係数 適化法,” 電子

情報通信学会技術研究報告, 2009 年 3 月.

[48] 佐々木元晴, 藤井大樹, 牟田 修, 赤岩芳彦, “2.4GHz 帯 屋外実伝搬環境下におけるマルチ

キャリア無線中継の伝送特性評価,” 電子情報通信学会技術研究報告, 2009 年 3 月.

[49] O. Muta, K. Sakamoto, Y. Akaiwa, and K. Giridhar, “An adaptive resource allocation method for

OFDMA systems employing decision-directed channel tracking,” General Conference of IEICE,

2009 年 3 月.

[50] 比嘉征規, 光永 圭, 小寺康平, 西本 寛, 木下大輔, 大崎邦倫, 古川 浩, “PicoMesh -ピコ

セルラのための無線マルチホップ中継機能を有する無線バックホールシステム,” 電子情報通信

学会技術研究報告, Vol. 108, No. 445, RCS2008-263, pp. 331-336, 2009 年 3 月.

[51] 光永 圭, 比嘉征規, 古川 浩, “無線マルチホップネットワークにおける指向性周期的間欠送

信法,” 電子情報通信学会技術研究報告, Vol. 108, No. 445, RCS2008-263, pp. 301-306, 2009

年 3 月.

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(3)サブテーマ3

1.研究題目

マイクロ波ミリ波帯における平面アレーアンテナおよび発振器と送受信機能モジュールへの展開

2.研究機関

佐賀大学理工学部

Indian Institute of Technology (IIT) Bombay

3.研究者

相川正義、田中高行、西山英輔(佐賀大学)

Girish Kumar(IIT Bombay)

4.研究の目的

ユビキタス社会構築の基盤技術の一つであるワイヤレス送受信モジュール化技術について、その

簡易化・経済化ならびに高性能化を主な目的としたマイクロ波機能回路および高性能平面アレーア

ンテナの研究を行う。マイクロ波機能回路は主として佐賀大学が担当し、平面アンテナについては IIT

Bombay と佐賀大学が連携して高性能化や高機能化の研究を進める。さらにそれらを機能複合化(マ

イクロ波インテグレイション)したマイクロ波ミリ波帯送受信モジュール構成法の検討も双方の連携の下

で推進する。

5.期待される成果

簡易で小型なマイクロ波ミリ波帯送受信モジュールの実現を目的として、その核となるマイクロ波帯

発振器ならびに高性能平面アレーアンテナを実現する。

経済的かつ簡易な高周波発振器を実現するために、Push-Push 発振原理に基づいた高次高調波

発振回路を検討する。具体的には、比較的低価格な X 帯 HEMT や Gunn diode を用いて第2次〜4

次高調波の Push-Push 発振器の高性能化を図ると共に、4 次以上の高次高調波発振回路の実現性

を検証する。さらに、RF 直接変調器の検討を行い、発振器・アンテナ等との機能複合化により安価で

高性能の送受信モジュールの実現が期待される。

さらに、平面アレーアンテナについては、高利得・広帯域化を中心とした高性能化の基礎検討を行

う。主に、スタック構造等による効果を検証すると共に、基本機能を確認する。具体的には、平面アレ

ーアンテナの高利得化と偏波切換え等の機能アンテナの検討を行い、それらを実現する。さらに上記

発振器の研究成果を踏まえて簡易な構成の送受信モジュールの実現が期待される。

6.研究の方法

本課題に取り組む準備として、高性能平面アレーアンテナに関しては、提案する素子アンテナの特

性や電磁界分布を FDTD 法と電磁界シミュレータで正確に求めている。さらに実験結果と比較して、

その動作原理と広帯域・高利得特性を確認している。また、発振回路と機能モジュールに関しては、4

次高調波を出力とする Push-Push 発振器と RF 変調器、アンテナと変調器の一体化について検討を

進めている。Push-Push 発振器と RF 変調器の基本動作は、シミュレーションと実験により確認済みで

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74

ある。また、マイクロ波インテグレーションを前提とした両平面回路構造のアンテナも考案し、良好な特

性を検証している。

7.主要な成果

7.1 佐賀大学と IIT Bombay の共同成果

7.1.1 発振変調機能複合化送信モジュールの研究[11][26][28]

本研究では、マイクロストリップアンテナ、Push-Push 発振器、PSK 変調器を同一基板上に配置した

簡易な構成の送信モジュールの検討を行った。 Push-Push 発振器は、低コストで高周波発振を実現

できる。ここでは第2次高調波信号を出力としており、低周波回路用の安価なデバイスを用いて高い

周波数信号を発生している。PSK変調器は簡易な構成のRF直接変調器である。このモジュールにお

いては、両平面回路技術を用いることで簡易な構成となっており、各セクション間の接続を容易に行う

ことができる。

(A) Push-Push 原理[2][22][25]

Push-Push 発振器は 2 つの同じ副発振器、共振器、電力合成回路から成る。2 つの副発振器は 1

つの共振器を共有していることにより、同じ周波数、逆位相で発振する。さらに同相合成回路により基

本波および奇数次高調波 0 0 0( , 3 , 5 , )f f f L は打ち消しあって出力されず、第 2 高調波を含む偶数次

高調波 0 0 0(2 , 4 , 6 , )f f f L が合成され出力される。

(B) 回路構成[11][26][28]

図-1に提案する送信モジュールの構成図を示す。このモジュールは、Push-Push 発振器、PSK 変

調器、マイクロストリップアレーアンテナから成る。 Push-Push 発振器と PSK 変調器、はマイクロストリッ

プ線路によって接続される。 PSK 変調器とマイクロストリップアレーアンテナはスロット線路によって接

続される。このように各セクションの接続のために種類の異なる線路を用いているが、両平面回路技

術を用いることで構成が簡易でコンパクトになっている。

Sub-oscillator1 Sub-oscillator2

Push-Push oscillator

PSK modulator

Microstrip array antenna

Microstrip line

Slot line

図-1. K 帯簡易送信モジュール構成.

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75

(C) モジュールの各構成要素[2][14][[23][24][33]

(a) Push-Push 発振器

Push-Push 発振器は、その高調波を出力とするので、比較的低い周波数用の半導体デバイスや共

振器を用いることができる。そのため特にミリ波・サブミリ波の領域において、高い周波数の発振器を

実現するための大きな利点を持っている。その結果、安価なミリ波発 振器を容易に実現できる。その

上、その位相雑音特性はその半導体デバイス間の相互結合により比較的良好である。K 帯で発振器

のシミュレーションを行ったところ、周波数が 20.57 GHz で+10.72 dBm の出力が得られ、Push-Push

発振が確認された。基本波と第3次高調波の抑圧は、それぞれ -48.17 dBc と -63.41 dBc であった。

このように Push-Push 発振器の原理を用いることで理想的に不要波の抑圧を十分に行うことができ,

良好な結果が得られた。

(b) PSK 変調器

PSK 変調器は半波長スロットリング、スロット線路、マイクロストリップ線路、二つのスイッチングダイオ

ードで構成される。マイクロストリップ線路とスロットリングの内導体はスルーホールを介して接続される。

変調パルスがワイヤと CPW 線路を用いてスイッチングダイオードに入力される。

PSK 変調器の基本動作を図-2に示す。図中の矢印は電界を表す。搬送信号は変調パルスの極性

に応じてスロット線路に沿って伝搬する。正の電圧パルスがスロットリングの内導体に入力されると

diode #1 が ON、 diode #2 が OFF となる。この条件における PSK 変調器の動作を図-2(a)に示す。

ダイオードに入力されるパルスの極性が逆の場合、ダイオードの状態(ON,OFF)は 図-2(b)に示すよ

うに変化する。従って、PSK 変調が簡易な構成の回路で容易に実現できる。

PSK 変調器についてシミュレーションを行った。シミュレーションモデルを図-3 に示す。シミュレーシ

ョンでは ON 状態のダイオードは導線に置き換えている。シミュレーションの結果、20GHz の周波数に

おいて、S11()は -14.1 dB、 S21()は -4.8 dB であった。 S21 と S31 の特性はほぼ同じであった。ス

イッチングダイオードの状態に応じた S21 の位相は設計周波数である 20GHz で逆位相となっており、

PSK 変調が理論的に確認された。

(c) マイクロストリップアレーアンテナ

このモジュールにおいては、8素子のマイクロストリップアレーアンテナを作成した。アンテナ素子と

マイクロストリップ線路は基板の表面にあり、スロット線路は裏面に形成される。入力ポートからのRF信

Input

Output

#1

: Schematic electric field

Input

Output

#2

: Schematic electric field

(a) #1-ON, #2-OFF (b) #1-OFF, #2-ON

図-2. PSK 変調器の基本動作.

port 1

Short pin

Microstrip line

Slot line

port 2 port 3

Impedance transformer

図-3. PSK 変調器の特性解析回路パターン.

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号はスロット線路−マイクロストリップ線路直列分岐において逆位相で分配され、マイクロストリップ線路

−スロット線路並列分岐において同位相で分配される。分配された RF 信号はすべてのアンテナ素子

に同相入力される。図-4に 20GHz における8素子アレーアンテナの放射パターン(シミュレーション)

を示す。このアンテナは鏡面対称励振であるため,その相補性効果により交差偏波成分が大変低く

抑えられている。また、その簡易な構成による給電線における損失の抑制も見込まれ、良好な結果が

得られている。

-40

-30

-20

-10

0

Rel

ativ

e Po

wer

[dB

]

-180 -120 -60 0 60 120 180

Angle [deg.]

co-polar cross-polar

-40

-30

-20

-10

0

Rel

ativ

e Po

wer

[dB

]-180 -120 -60 0 60 120 180

Angle [dB]

co-polar c ross-pola r

(a) E-plane (b) H-plane

図-4. アレーアンテナ放射パターン(20GHz).

以上、本研究では、マイクロストリップアレーアンテナ、Push-Push 発振器、PSK 変調器を同一基板

上に配置した送信モジュールを提案した。各々の構成要素の特性について検討を行ったところ良好

な結果が得られた。これらの構成要素を組み合わせたモジュールによって、低コストで良好な特性を

得ることが見込まれる。

7.1.2 20GHz スペースフェッドマイクロストリップアンテナアレー[32]

マイクロストリップアレーアンテナは、その平面性、プリント基板技術による製作の容易さ等の理由で

しばしば採用されている。しかしながら効率は低い。マイクロストリップリフレクトアレーは、プリントアレ

ーとパラボラアンテナの利点を組み合せることで高い利得を実現している。そのリフレクトアレーでは、

給電アンテナの位置がその放射面の前にあるので、利得の減少を招いていた、リフレクトアレーに関

わる問題を軽減するために、スペースフェッドマイクロストリップアンテナが提案された。この研究では

K 帯である 20GHz での動作原理と設計方法について検討を行っている。

(A) 理論[20][32]

配列素子は誘電体基板上にプリントされる。一つのマイクロストリップアンテナが給電アンテナとなり、

配列素子は給電アンテナに対して半波長の整数倍の高さの位置に配置される。高さの 低限度はλ

/2である。給電アンテナは接地板を有する基板にプリントされる.図-5 に示すように、自由空間内の

放射を通して配列素子に放射される。給電素子からのパス長の違いにより、開口面の振幅分布はコ

サインカーブである。これは低サイドローブ特性をもたらす。

図-6 はスペースフェッドアレーからの放射を表す。配列素子は給電素子によって寄生的に励振さ

れる。各配列素子に誘起される電流はブロードサイド方向に主ビームを得るためには同相でなければ

ならない。しかしながら、給電素子から配列素子までのパス長における違いは放射面にわたって正方

形状の位相誤りを引き起こす。位相誤りの訂正が必要であるが、それは配列素子の共振長を変えるこ

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とで行われる。配列素子の長さは、配列中心からの距離が長くなるに従って短くなる。全体的な配列

の利得は給電素子の利得に依存する。 大利得は給電素子が空気の基板上にあるときに得られる。

(B) シミュレーション結果[32]

ここでは、素子数を変えてスペースフェッドアレーのシミュレーション行った結果を示す。配列素子

は、厚さ 0.8 mm、 比誘電率 2.15、 誘電正接 0.001 の誘電体基板で覆われている。給電素子は 厚

さ 0.8 mm の接地板を有する基板にプリントされる。その比誘電率は 2.15、誘電正接は 0.001 である。

給電素子と配列素子は方形マイクロストリップアンテナを用いている。配列素子の中心間の間隔は

λ/2= 7.5 mm、設計周波数は 20GHz である。シミュレーションは無限に広い接地板を仮定して行われ

た。単一の方形マイクロストリップアンテナの利得は 6.15 dB である。

(a) 2 × 2 スペースフェッドアレー

図-7 に、配列素子を 2×2 の方形に配置した4素子スペースフェッドアレーを示す。給電素子の長

さは 4.1mm である。給電は中心から 0.75mm の点で同軸線路により行われる。給電素子から配列素子

までの高さは 7.6 mm (Δ≈ λ/2) である。 給電素子より上の配列素子に誘起される電流は、給電素子

と配列素子は λ/2 の長さ分だけ離れているので、給電素子の電流より遅れを生ずる。従って、給電素

子の上の素子の長さは、その位相遅れのために λ/2 より短くしなければならない(容量性)。すべての

4つの配列素子は給電素子からの距離は同じで,配列素子の長さは 5.9 mm である。配列開口は

13.4 mm x 13.4 mm である。 入力インピーダンスの帯域幅 (VSWR < 1.5)は 19.8 - 21 GHz (7.3%.) で

あった。 大利得は20 GHz で13.5dB であった。テーパー状の放射により、-17 dB という低いサイド

ローブレベルが得られた。従来の給電線を用いた 2×2 平面マイクロストリップアレーアンテナについ

ても設計・シミュレーションを行ったが、 大利得は 20 GHz で 12.8 dB であった。このように、高周波

において、スペースフェッドアレーアンテナは給電線の損失が低効率をもたらす平面型アレーアンテ

ナより良い結果をもたらしている。

図-5. スペースフェッドアレー

アンテナ構成.

図-6. スペースフェッドアレーアンテ

ナからの放射.

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図-7. 2×2 素子スペースフェッドアレーアンテナ. 図-8. 3×3 素子スペースフェッドアレーアンテナ.

(b) 3 × 3 スペースフェッドアレー

図-8 に配列素子を 3×3 の方形に配置した 9 素子スペースフェッドアレーを示す。給電素子の長さ

は 4.25mm である。給電は中心から 0.85mm の点で同軸線路により行われる。給電素子から真上の配

列素子の長さは 6.5 mm (0.43λ) である。これは 位相遅れを補償するために λ /2 より少し短い。給電

素子から配列素子までのパス長は配列中心から離れるにしたがって増加する。これは配列素子を短く

する(容量性)することで補償される。中心の素子に隣接する配列素子の長さは 6.4 mm である。コー

ナー部の素子の長さは 6.3 mm、 配列開口は 21.4 mm x 21.4 mm である。給電素子から配列まで

の高さはΔ=λ である。この結果、各配列素子の電流は同相で、ブロードサイド方向に 大ビームをも

たらす。シミュレーション結果を表-1にまとめている。配列の高さが λ のときに 大利得 16.27 dB、E

面の 3 dB ビーム幅は 26.6º であった。

(c) 4 x 4 スペースフェッドアレー

この配列は 2 x 2 配列を拡張したものである。給電素子の長さは 4.25 mm である。配列の中心の

周りの配列素子の長さは 6.5 mm、さらに離れた位置の配列素子の長さは 6.4 mm、コーナー部の素

子の長さは 6.3 mm である。 配列開口は 28.9 mm x 28.9 mm である。配列の高さが λ のときに 大

利得 17.35 dB が得られた。E 面の 3 dB ビーム幅は 23.6º であった。

(d) 5 x 5 スペースフェッドアレー

この配列は 3 x 3 配列を拡張したものである。給電素子の長さは 4.4 mm である。給電は中心から

0.9mm の点で同軸線路により行われる。給電素子から真上の配列素子の長さは 6.6 mm である。配

列の中心の周りの配列素子の長さは 6.5 mm、さらに離れた位置の配列素子の長さは 6.35 mm であ

る。対角線上にある素子の長さは配列中心からコーナーに向かって6.25mm, 6.15 mmである。配列開

口は 36.25 mm x 36.25 mm である。配列の高さが λ のときに 大利得 18.7 dB が得られた。E 面の

3 dB ビーム幅は 21.1ºであった。

表-1. スペースフェッドアレーアンテナの特性(解析結果).

Array Type Array Height (Δ) From

Feed Patch (mm)

Gain (dBi) Side Lobe Level

(dB) in E-Plane

Impedance Bandwidth for

VSWR < 1.5 (GHz)

2x2 7.6≈λ/2 13.5 -17.0 19.8 to 21

3x3 15.2≈λ 16.27 -12.8 19.84 to 20.6

4x4 15≈λ 17.35 -11.35 19.85 to 20.25

5x5 15.1≈λ 18.7 -14.2 19.75 to 20.75

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以上、スペースフェッドマイクロストリップアンテナアレーについて検討を行った。設計周波数は20

GHz である。このアレーアンテナの利点として、良好な放射効率、製作の容易さ、低サイドローブであ

ることが挙げられる。配列によって占められる平面エリアは従来のマイクロストリップアレーより少なくで

きる。これは占有体積の増加によってなされる。このアレーアンテナはK帯において従来の平面マイク

ロストリップアンテナに代わるものとして有効である。

7.2 佐賀大学の成果

7.2.1 移相器を用いた Ku 帯 Push-Push VCO の研究[4][9][26]

マイクロ波ミリ波発振器はワイヤレス LAN,RF センサ、移動通信,ITS などの現代のワイヤレス通信

に欠かせないものである。しかしながら、位相雑音の改善、コストの低減、高い安定性の実現、高出力

化、高周波化など多くの課題を抱えている。Push-Push 発振器はそれらの解決のために有効な手段

である。ここでは、正帰還型 Push-Push 発振器[4]を電圧制御発振器(VCO)に拡張することを試み、

初めて帰還型 Push-Push VCO を提案する。この VCO では帰還部に移相器を用いて周波数可変化

を実現している。この移相器はバラクタダイオードを用いた 90ºハイブリッド回路から成り、発振周波数

はバラクタダイオードのバイアス電圧により変化する。試作回路では、15GHz 帯で同調帯域幅は

390MHz (比帯域 2.6%)、位相雑音が 1MHz 離調時に-100.2 dBc/Hz であるという良好な結果が得ら

れた。

(A) 正帰還型 Push-Push 発振器[12][15][29]

図-9 に正帰還型 Push-Push 発振器の回路構成を示す。マイクロストリップ線路を誘電体基板の片

面に形成し、スロット線路がもう片面に形成される。RF アンプはマイクロストリップ線路側に取り付けら

れる。発振周波数はスロット線路、マイクロストリップ線路、RF アンプの電気長によって決まる。正帰還

ループの発振信号はスロット−ストリップ T 分岐 (part α) で二つのループに分配される。スロット線路

は平衡型線路であるので、スロット−ストリップT分岐は逆位相分配器として動作する。増幅器の非線

Via hole Output

Input

A

A' A-A'Varactor diode

Slot line

Microstrip line

0@f0 π@f0

A A’

output(2f0)

slot linemicrostrip line

λg/4@f0

λg/4@f0

RF amp.

A-A’ cross section

dielectric substrate

α

β

図-9. 正帰還型 Push-Push 発振器の回路構成. 図-10.π/2 ハイブリッド回路を用いた移相器.

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形性により、二つのループの信号において、基本波信号と奇数倍高調波は逆位相、偶数倍高調波は

同位相となる。ストリップ-スロットT分岐 (part β) は、偶数倍高調波に対しては同相合成回路であり、

同位相高調波信号(偶数倍波)は出力ポートに伝送される。一方、逆位相高調波(基本波と奇数倍

波)はストリップ−スロット結合伝送線路の直交モードにより、図-9 の part α 側に伝送される。

(B) 90ºハイブリッド回路を用いた移相器[4][9]

ここで提案している VCO では、de Ronde が提案したマイクロストリップ−スロット結合線路を用いた

90º ハイブリッド回路によって構成される移相器が採用される。この回路は図-9 の Push-Push 発振器

と一体的に製作可能である。また、回路面積もブランチライン型ハイブリッドに比べて小型にすること

ができると共にその動作帯域幅も広帯域であることが知られている。図-10 はその 90º ハイブリッド回路

を用いた反射型移相回路の構成図である。90º ハイブリッド回路に入力した信号は 90º 位相差で等分

され、それぞれの信号はバラクタダイオードで反射される。それぞれの反射信号は入力ポートでは逆

相、出力ポートでは同相となるために、入力された信号はほぼ出力ポートに伝送される。連続した位

相の変化が反射位相を変えるバラクタダイオードの可変容量によって得られる。バラクタダイオードは

MA46H200-1088(M/A COM)が用いられる。8GHz で、制御電圧が 0〜16V において位相変化量は

約 80º である。その挿入損失(S21)は -2.0dB 以下、反射損失(S11)は -20 dB 以下となっている。

(C) 移相器を用いた Push-Push VCO[4][9]

帰還型 Push-Push 発振器の 2 つの正帰還ループ中に可変移相器を組み込んだ Push-Push VCO

について検討した。図-11 に、提案する Push-Push VCO の回路構成を示す。マイクロストリップ線路

を誘電体基板の片面に形成し、スロット線路がもう片面に形成される。RF アンプとバラクタダイオード

がマイクロストリップ線路側に取り付けられる。また、バイアス電圧を分離するために、帰還ループ中に

コンデンサを挿入している。発振周波数を決める帰還ループに移相器が挿入され、バラクタダイオー

ドのチューニング電圧によって周波数が制御される。

正帰還型 Push-Push 発振器は負性抵抗型 Push-Push 発振器と比べて広帯域 VCO に適している。

負性抵抗型発振器では VCO 化する場合、その負性抵抗あるいは周波数を決める共振器を可変化し

なければならない。一方、正帰還型発振器では、その帰還ループの長さを変えることのみで周波数可

変化をおこなうことができる。

(D) 実験結果[4][9]

前節で示した Push-Push VCO を設計・試作し、評価・検討を行った。アンプには HEMT (Fujitsu

FHX35LG)を用いた。基板の大きさは 37mm×80 mm である。出力電力スペクトルを図-12 に示す。制

御電圧 0〜7.5 V における Ku 帯の同調帯域幅は 390 MHz(15.02 〜 15.41 GHz :比帯域 2.6%)、出

力電力は-1.17〜+0.17 dBm である。位相雑音は 1 MHz 離調時で-96.2 〜 -100.2 dBc/Hz であり、

100 kHz 離調時では-72.0 〜-77.2 dBc/Hz である。これらの結果、簡易な構成で比較的広帯域な

周波数可変 Push-Push VCO を実現することができた。

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以上、反射型移相器を用いた Ku 帯 Push-Push VCO を提案した。この移相器は 90ºハイブリッド回

路とバラクタダイオードによって構成される。試作回路では、15GHz 帯で同調帯域幅は 390MHz(比帯

域 2.6%)、 大出力電力+0.17 dBm であるという良好な結果が得られた。

7.2.2 ガンダイオードを装荷したスロットリング共振器を用いた高調波発振器[5][18][27][31]

マイクロ波ミリ波発振器は、すべてのマイクロ波ミリ波回路において必要なものである。マイクロ波ミリ

波発振器では、高周波化、低雑音化、回路小型化、高効率化、温度特性の安定化がなど要求される。

これまで多くのガンダイオードを用いた発振器について報告されている。それらの発振器は高出力と

低位相雑音を比較的低いコストで実現している。一方、高調波発振器は低周波用の比較的安価なデ

バイスを用いてはるかに高い周波数を発生できる利点がある。従って、低コストで発振周波数を拡張

するのに非常に有効である。そこで、我々は、ガンダイオードを用いた高調波発振器について研究を

進めてきた。この研究においては、共振器の同調高調波電磁場とガンダイオードの利点を利用した高

調波発振器の新しい設計方法を提案している。それらは、不要な高調波を抑圧する一方で同期共振

電磁場により、必要な高調波を強める働きをしている。

この研究では、共振器の共振モードについて詳しい検討を行い、効果的に第2次高調波を出力と

して得る発振回路を提案している。ここではガンダイオードを装荷したリング状のスロット共振器を用い

て発振器を実現している。その回路構成は大変簡易で必要な面積もきわめて小さい。K帯で提案する

発振器を設計・製作を行ったところ、所望の第2次高調波周波数で高出力が得られた。また、位相雑

音および不要波の抑圧についても良好な結果が得られた。このガン高調波発振器の概念はより高い

周波数の発振器の実現にも有効である。

(A) 1/2波長能動共振器を用いた第n次高調波発振器[1][16][22]

これまで、能動共振器を用いた高調波発振器の概念を報告している。この能動共振器には負性抵

抗が埋め込まれており、負性抵抗は不要波を抑圧し、所望の高調波を強める働きをする。共振器の

適当な位置に出力回路を形成することで、所望の高調波信号を効率よく取り出すことができる。図-13

に上記の高調波発振器の概念に基づく、高調波発振器に用いるガンダイオードと半波長線路共振器

( 0n f )を用いた基本発振器を示す。ここで、 0f はガンダイオードの基本発振周波数でありnは整数で

ある。共振器の両端にはガンダイオードの低インピーダンス特性による境界条件を有する。二つのガ

f0 2f 3f 4f 5ff0 2f0 3f0 4f0 5f0

desired signalOutput

DC bias for varactor diode

Capacitor

RF amplifierSlot line

Varactor diode

図-11. π/2 ハイブリッド移相器を用い

た Push-Push VCO.

図-12. 発振電力スペクトル( 50GHz スケ

ール).

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ンダイオードは 0n f の周波数で同調し、そのn次高調波の整数倍の高調波信号のみが共振器におい

て共振する。不要な基本波 ( 0f ) と奇数次高調波は能動共振器の境界条件によって抑圧される。出

力回路は図-13に示される中心点“1”に取り付けられるので、 0n f 高調波信号のみが出力される。第

2n次高調波信号は 点“1”がヌル点になるので出力されない。

図-13. Gunn diodeと半波長線路共振器を用いた第 n次高調波発振器.

(B) 回路構成[5][18][27]

図-14に提案する第2次高調波発振器全体の回路構成を示す。4つの基本第2次高調波発振器を

組み合わせた構成である。表面では、Gunn diodeを装荷した4つの半波長 (at 2 0f ) スロットリング共

振器が形成されている。ガンダイオードのバイアス回路は図-2(a)に示すように表面に形成される。マ

イクロストリップ線路を用いた出力回路は図-2(b)に示すように裏面に形成される。Gunn diodeへの直

流電圧はワイヤとスロットリング共振器の中心導体を通じて供給される。バイアス回路は一つで済むの

で回路の小型化が実現できている。バイアス電圧の給電点はスロットリング共振器の中心であるが、

高周波信号はスロットに沿って分布するためバイアス回路は高周波信号には全く影響を与えない。図

-2(c)に示すように、スロットリング共振器は出力回路のマイクロストリップ線路と点1~4で結合する。こ

れらの結合点で第2次高調波の電圧は 大である。基本波と奇数次高調波は能動共振器の境界条

件により結合点で抑圧される。4つの結合点は4倍波に対してはnull点であるので出力されない。出力

ポートにおいて、結合点からの所望の第2次高調波信号は同相であるので効率よく合成される。

(a) 表面 (b) 裏面 (c) 全体回路構成

図-14. Gunn diodeを用いた第2次高調波同期発振器.

(C) 測定結果[5][18][27]

提案した第2次高調波発振器の製作と測定を行った。所望の第2次高調波周波数は19GHzである。

本回路で用いたGunn diodeはMG49618-11 (Microwave Device Technology) である。使用した誘電

体基板は、厚さは0.8 mm, 0.001である。スペクトラムアナライザ(Agilent 8565EC)を用いて測定を行っ

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た。測定時にGunn diodeに印加した電圧と電圧印加時の電流はそれぞれ 9.0V と 250mA である。

出力電力は所望周波数である第2次高調波(19GHz)で +5.75dBm の高出力を得ることができた。不

要波である基本波と第3次高調波の抑圧度はそれぞれ-39.92dBcと-34.08dBcであり十分な抑圧がで

きている。これらの結果より第2次高調波を効果的に発振させることができ、共振器端の境界条件によ

って基本波や第3、4次高調波を効果的に抑圧することができた。位相雑音は1MHz離調時で

-111.7dBc/Hz、100MHz離調時で-82.5dBc/Hzであり比較的良好な結果が得られている。

以上、ガンダイオードを用いた第n次高調波発振器の構成法を提案した。能動高調波共振電磁場

と同調発振器を用いることで、高出力の所望の高調波信号を得ることができ、不要波を十分抑圧する

ことができた。さらにより多くの基本発振器を用いることで更なる高出力が期待できる。また、このガン

ダイオード第2次高調波発振器の構成法はサブミリ波帯への高周波発振応用にも大変有望なもので

ある。

7.2.3 ダイオードの非線形結合を用いた広帯域円偏波マイクロストリップアンテナ[1][17]

本研究では、構造が簡易なパッチ型のマイクロストリップアンテナにおいて一点給電円偏波の広帯

域化ならびにその左旋・右旋の切り替え機能の実現法を提案している。提案するアンテナは、パッチ

の中央に十字スロットを設けて、その中央部にスター状に4つのダイオードを装荷した構造(二重平衡

型乗算器:Double-Balanced Multiplier)をとっており、それぞれの非線形領域を利用することで直交共

振姿態に位相差π/2 を実現することにより、円偏波を広帯域に励振させている。また、これはバイア

ス電圧の正負の切り替えによって円偏波の左旋・右旋の切り替えも可能となる。今回提案したアンテ

ナの試作を行った結果、約14%という従来よりも大幅な広帯域特性の実現と共に、バイアス電圧の極

性による偏波の切り替えも実現した。

(A) アンテナの基本構成

ここで提案する直交円偏波切り替え機能を有する機能アンテナは、マイクロストリップアンテナに半

導体デバイスや個別回路素子、あるいはMMIC やLSI 等の各種集積回路である「機能エレメント」を

直接一体的に組み込むという高周波回路構成法に基づいた提案である。提案するアンテナの基本構

成を図-15に示す。本アンテナは、パッチ型のマイクロストリップアンテナのパッチ上に十字スロットを

設けて、4つのダイオードをその中央部にスター状に配置 (二重平衡型乗算器) し、装荷している。

使用している基板はテフロングラスであり、 その比誘電率 rε は2.15、厚さh は0.8mmである。 アン

テナのサイズは、設計周波数を3.8GHzとして接地板は gl =48mm、アンテナ素子は fl =24mmとして特

性の検討を行っている。ダイオードはAeroflex社のSilicon Schottky Barrier Diode(MSS30 154-B10B)

を使用している。4つのダイオードの接続点eは、 ビアホールを介してグラウンド面と結合している。従

って、バイアスTeeによってRF信号に重畳したバイアス電圧を4つのダイオードに印加することが可能

である。また、バイアス電圧の大きさによってダイオードの線形領域または非線形領域のいずれでも

動作が可能であり、今回提案したアンテナはダイオードの非線形領域を利用して広帯域な円偏波を

励振させる。

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(B) アンテナの動作原理

前述の通り、提案するアンテナの中央にスター状に接続した4つのダイオードを装荷し、給電点より

高周波信号に重畳した適切なバイアス電圧を印加することでアンテナに生じる2つの共振モード

(Mode1, Mode 2)は、互いに直交し、位相差を±π/2とすることができる。そして、RF信号に重畳した

パッチの導体電圧Vcを0Vに近い正値の電圧値と設定したならば、Mode1の位相はMode2よりもπ/2

だけ進む。なぜならば、ダイオードの極性によってa-c間のダイオードの導通度がb-d 間よりもやや高

く、電気長が短かくなるからである。ゆえに、左旋の円偏波 (Left Hand Circular Polarization ; LHCP)

となる。一方、Vcの極性を逆に反転するならば、上と同様の原理によってMode1の位相はMode2よりも

π/2だけ遅れる。その結果、右旋の円偏波 (Right Hand Circular Polarization; RHCP) となる。

(C) 軸比特性

提案したアンテナにおいて、給電点より0V近傍の正バイアス電圧を印加したとき、軸比が3dB以下

となるのは概ね3.0~3.4GHzである。前述の原理通り、その円偏波は左旋(LHCP)が励振されたことが

確認できる。一方、0V 近傍の負バイアス電圧を印加したとき、正バイアス電圧時と同様に右旋円偏

波(RHCP)となる。正バイアス電圧(Vc=0.23V)の時、3.3GHzのあたりでやや劣化が見られるが軸比の

良値は0.34dBであり、 負バイアス電圧(Vc=−0.23V)の時の軸比の 良値は約0.23dBである。また

動作比帯域は、14%という広帯域な特性を確認することができた。

以上、直交円偏波切り替え機能を有する機能アンテナを提案し、 実験によってその広帯域な基本

動作を確認した。 提案したアンテナは、マイクロストリップアンテナのパッチ上に十字のスロットを設け

てその中央部にスター状に接続した4つのダイオードを装荷した構造(二重平衡型乗算器:Double

Balanced Multipliers) となっている。 このアンテナの特徴は、ダイオードの非線形領域を利用して広

帯域な円偏波を励振させ、さらにダイオードへの印加バイアス電圧の極性によって、直交円偏波の切

り替えも併せて可能であることである。提案したアンテナについて、アンテナの試作と測定を行い、特

性の検討を行った。

0V 近傍のバイアス電圧Vc を印加することで円偏波励振を確認し、その広帯域特性 (約14%) を

確認した。即ち、ダイオードの非線形性結合で±π/2 位相差となる2つの直交共振モードが励振さ

れ、広帯域にわたって円偏波を励振できることを実証することができた。さらに、ダイオードに掛かるバ

イアス電圧の極性による円偏波の偏波切り替えにも成功した。1点給電型の円偏波切り替えアンテナ

は多く発表されているが、今回、提案したダイオードの非線形領域を利用した円偏波アンテナは、

我々が知る限りでは初めてである。

図-15. アンテナの構成.

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8. まとめと今後の課題

簡易で経済的な高周波発振器として、Push-Push 発振原理に基づいた高調波発振回路構成法に

ついて検討を行った。具体的には、 HEMT を用いて Ku 帯正帰還型 Push-Push 発振器の周波数可

変化を検討した結果、広帯域 VCO を達成した。さらに、Gunn Diode を用いた第 2 次高調波

Push-Push 発振器の検討を進め、4 素子による第2次高調波発振動作を確認した。

平面アンテナについては、円偏波切換え平面アレーアンテナを中心に検討を行った。十字形スロ

ットにダイオードを装荷し、それぞれの偏波で3dB帯域が約10%の広帯域特性を確認した。また、高

利得のSpace Fed Microstrip Array Antennaを実現した。さらに、簡易送受信機能モジュール構成の

基礎検討を行い、発振と変調機能を平面アンテナに複合化した送信機能モジュールの構成法が示さ

れた。また、8次高調波発振器を考案し、基本的な動作を確認している。

9. 研究成果の発表

学術雑誌 (6件)

[1] M. Aikawa, E. Nishiyama, and T. Tanaka, “Advanced utilization of microwave resonant fields and

its applications to Push-Push Oscillators and reconfigurable antennas,” IEICE Trans. Electron.,

Vol. E89-C, No. 12, pp. 1798-1805, Dec. 2006.

[2] 田中高行, 相川正義, “ガンダイオード装荷コプレーナ線路共振器を用いた K 帯 Push-Push 発

振器,” 電子情報通信学会論文誌 C, Vol. J89-C, No. 12, pp. 1003-1010, 2006 年 12 月.

[3] 西山英輔、久富亮治、相川正義, “ビーム切換制御機能を有するマイクロストリップアレーアンテ

ナ,” 電子情報通信学会論文誌 C, Vol. J89-C, No. 12, pp. 1011-1018, 2006 年 12 月.

[4] 田中高行,堤誠典,相川正義, “90º ハイブリッド回路移相器を用いた Ku 帯 Push-Push VCO,” 電

子情報通信学会論文誌 C, Vol. J90-C, No. 12, pp. 894-902, 2007 年 12 月.

[5] K. Kawasaki, T. Tanaka, and M. Aikawa, “K-band second harmonic oscillator using mutually

synchronized Gunn diodes embedded on slot line resonators,” IEICE Trans. Electron., Vol.

E91-C, No. 11, pp. 1751-1756, Nov. 2008.

[6] 牛嶋優, 西山英輔, 相川正義, “ダイオードの非線形結合を用いた広帯域円偏波切換マイクロ

ストリップアンテナ,” 電子情報通信学会論文誌 B, Vol. J92-B, No. 1, pp. 280-286, 2009 年 1

月.

国際会議の論文(査読付)(13件)

[7] S. Mine, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “Study on beam controllable antenna by orthogonal

excitation,”Proc. of the International Symposium on Antennas and propagation (ISAP), Singapore,

Nov. 2006.

[8] E. Nishiyama and M. Aikawa, “Polarization controllable microstrip antenna using beam lead PIN

diodes,” Proc. of the 2006 Asia-Pacific Microwave Conference (APMC), pp. 77-80, Yokohama,

Japan, Dec. 2006.

[9] M. Tsutsumi, T. Tanaka, and M. Aikawa, “A Ku-band Push-Push VCO using phase shifters,”

Proc. of the 2006 Asia-Pacific Microwave Conference (APMC), pp. 627-630, Yokohama, Japan,

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Dec. 2006.

[10] E. Nishiyama and M. Aikawa, “Circular polarization controllable microstrip antenna,” Proc. of the

IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium, pp. 5195-5198, Honolulu,

USA, June 2007.

[11] Y. Arima, T. Tanaka, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “Microstrip array antenna integrating

Push-Push Ocsillator and PSK modulator,” Proc. of the IEEE Antennas and Propagation Society

International Symposium, pp.3344-3347, Honolulu, USA, June 2007.

[12] T. Tanaka, M. Tsutsumi, and M. Aikawa, “A wideband Push-Push VCO using common phase

shifter,” Proc. of the International Symposium on Antennas and propagation (ISAP), pp. 664-667,

Niigata, Japan, Aug. 2007.

[13] Y. Tazaki , E. Nishiyama, and M. Aikawa, “Beam steering microstrip antenna with varactor

diode,” Proc. of the International Symposium on Antennas and propagation (ISAP), pp.712-715,

Niigata, Japan, Aug. 2007.

[14] S. Feng, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “A wideband dual circularly polarized array antenna by

using microwave multi layer technology,” Proc. of the International Symposium on Antennas and

propagation (ISAP), pp. 892-895, Niigata, Japan, Aug. 2007.

[15] T. Tanaka, M. Tsutsumi, and M. Aikawa, “A wideband Push-Push VCO using a phase shifter in

the common feedback loop,” Proc. of the 37th European Microwave Conference 2007 (EuMC

2007), pp. 747-750, Munich, Germany, Oct. 2007.

[16] K. Kawasaki, T. Tanaka, and M. Aikawa, “A novel K-band Push-Push Oscillator using slot ring

resonator embedding Gunn diodes,” Proc. of the 37th European Microwave Conference 2007

(EuMC 2007), pp. 755-758, Munich, Germany, Oct. 2007.

[17] Y. Ushijima, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “Wide band switchable circularly polarized microstrip

antenna using double-balanced multiplier,” Proc. of the IEEE Antennas and Propagation Society

International Symposium, 330.9, pp. 1–4, San Diego, USA, July 2008.

[18] K. Kawasaki, T. Tanaka, and M. Aikawa, “A harmonic synchronized oscillator using Gunn diodes

embedded on slot line resonators,” Proc. of The XXIX General Assembly of the International

Union of Radio Science (2008 URSI General Assembly), CP1.2, Oct. 2008.

[19] K. Kawasaki, T. Tanaka, and M. Aikawa, “V-band 8th harmonic Push-Push oscillator using

microstrip ring resonator,” Proc. of the 2009 IEEE MTT-S International Microwave Symposium

Digest, pp. 697-700, June 2009.

フォーラム・ワークショップ等の発表論文 (14 件)

[20] G. Kumar, P.N. Chine, and A. A. Deshmukh, “Space fed microstrip antenna arrays,” Digest of

the 1st Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication

Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 46-51, Dec. 2006.

[21] E. Nishiyama, T. Tanaka, and M. Aikawa, “Reconfigurable microstrip antennas with switchable

slots,” Digest of the 1st Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 52-57, Dec.

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2006.

[22] T. Tanaka, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “Microwave and millimeter wave Push-Push Oscillators

with simple structure,” Digest of the 1st Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

58-64, Dec. 2006.

[23] S. Feng, E. Nishiyama, and M.Aikawa, “Circularly polarized microstrip array antenna by using

hybrid multi layer circuits,” ITE Technical Report,BCT2007-21, pp. 83-86, Kumamoto, Japan,

Jan. 2007.

[24] 小川内哲朗,西山英輔,相川正義, “PSK 変調機能を有するマイクロストリップアレーアンテナ,”

映像情報メディア学会技術報告,BCT2007-22, pp. 87-90, 2007 年 1 月.

[25] T. Tanaka, E. Nishiyama and M. Aikawa, “Novel K-band Push-Push Gunn oscillators using

double-sided MIC technology,” Digest of the 2nd Research Forum of Japan-Indo Collaboration

Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information

Society, pp.40-45, July 2007.

[26] T. Tanaka, E. Nishiyama, M. Aikawa, and G. Kumar, “Microwave module integrating microstrip

array antenna, Push-Push Oscillator and PSK modulator and A Ku-Band Push-Push VCO using

phase shifters,” Digest of the 3rd Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

15-21, Dec. 2007.

[27] 川崎健吾, 田中高行, 相川正義, “第 2 次高調波多素子 Gunn diode 発振器の検討,” 映像情

報メディア学会技術報告, BCT2008-9, 2008 年 1 月.

[28] 有馬慶人, 田中高行, 西山英輔, 相川正義, “発振変調機能複合化送信モジュールの研究,”

映像情報メディア学会技術報告, BCT2008-17, 2008 年 1 月.

[29] T. Tanaka, E. Nishiyama, and M. Aikawa, “A novel K-band harmonic oscillator using slot ring

resonator embedding Gunn diodes and a wideband Push-Push VCO using a phase shifter in the

common feedback loop,” Digest of the 4th Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

45-51, July 2008.

[30] K. Kawasaki, T. Yoshida, T. Tanaka, and M. Aikawa, “A mutually synchronized harmonic Gunn

oscillator,” 電気関係学会九州支部連合大会,03-2A-04(International Session in English),

2008 年 9 月.

[31] T. Tanaka, K. Kawasaki, E. Nishiyama, M. Aikawa, and G. Kumar, “A harmonic synchronized

oscillator using slot line resonators embedding Gunn diodes,” Digest of the 5th Research Forum

of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting

Fully Ubiquitous Information Society, pp. 29-32, Dec. 2008.

[32] R. Bhide, G. Kumar, and T. Tanaka, “Space-fed microstrip antenna arrays at 20 GHz,” Digest of

the 5th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication

Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 33-37, Dec. 2008.

[33] 板場章浩, 西山英輔, 相川正義,”偏波切換え機能を有する平面アレーアンテナ,” 電子情報

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通信学会技術研究報告, AP2008-170, 2009 年 1 月.

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(4)サブテーマ4

1.研究題目

光ファイバグレーティングおよび光導波路の高度利用に関する研究

2.研究機関

九州大学システム情報科学研究院

IIT Delhi、University of Delhi

3.研究者

安元清俊、賈 洪廷、Florence Y. M. Chan (九州大学)

Anurag Sharma、Arun Kumar、Krishna、Thyagarajan (IIT Delhi) Enakshi Sharma (University of Delhi)

4.研究の目的

光通信システムにおけるファイバグレーティングおよび光導波路の高度利用を目的として、IIT

Delhi および University of Delhi の研究グループと協力し、(1)各種ファイバグレーティングの特性解

明と光波長多重通信デバイスへの応用、(2)フォトニック結晶導波路の特性解明と光集積回路への応

用、(3)光回路の基本構成要素である方形断面光導波路の偏波効果の解明、に関する理論的な研究

に取組む。(1)においては、長周期ファイバグレーティングの光フィルタおよび光ファイバ増幅器の利

得平坦化デバイスへの応用、短周期ファイバグレーティングを利用したブラッグ反射型光フィルタの性

能の向上、グレーティングを装荷したファイバ型方向性結合器の動作特性と設計法、について究明す

る。(2)では、フォトニック結晶導波路と通常の光導波路の結合効率を改善する方法、フォトニック結晶

を利用した微小光共振器の共振周波数の正確な計算方法、フォトニック結晶導波路からなる微小方

向性結合器の性能評価と設計理論、フォトニック結晶導波路を利用した光回路の入出力特性の解析

法、フォトニック結晶ファイバの正確なモード解析を可能にする準解析的は手法、について検討する。

(3)に関しては、埋め込み型光導波路やリブ型光導波路等の方形断面を持った3次元光導波路のモ

ード解析と伝搬解析のための種々の解析的手法及び準解析的数値解法の開発に取り組む。また、そ

の結果を利用して、3次元光導波路の不連続部で発生する偏波効果の評価、3次元光導波路で構成

したブラッグ反射型フィルタの特性の解明、微小リング共振器における共振周波数の偏波依存性の

解明、金属薄膜中の表面プラズモン効果を利用した偏光分離デバイスの提案と特性の解明を行う。

5.期待される結果

ファイバグレーティングを利用した光フィルタや Add/Drop 回路では、通常、長周期グレーティング

あるいは短周期グレーティングを施した2本のシングルモードファイバ間の結合が利用される。これに

対して、本研究では、非対称2重コアファイバに長周期グレーティングあるいは短周期グレーティング

を施した1本のファイバによるこれらの機能の実現に取り組む。動作特性と設計法を明らかにすること

により、従来のデバイスに比べてコンパクトな新規デバイスへの展開が期待できる。

フォトニック結晶導波路を利用すれば、光集積回路の大きさを光の波長のオーダーまで極小化す

ることが可能である。そのためには、フォトニック結晶導波路からなる光回路素子の特性及びそれらを

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接続した光回路全体の入出力特性を正確に評価して、実用デバイスの設計に必要なデータを提供

できる理論的な手法が不可欠である。時間領域有限差分法に代表される種々の直接的な数値シミュ

レーション技法が開発されているが、それらの技法で得られた結果の妥当性は解析的な手法による

規範的な結果あるいは実際に設計したデバイスの測定結果との比較を通して検証される。したがって、

解析的な手法及び準解析な手法の開発に対する要求は強い。本研究は、これらの要求に応えるもの

である。

方形断面光導波路の偏波効果の解明に関する研究でも上記と同様な成果が期待できる。更に、

金属薄膜と光導波路の結合を積極的に利用することにより、偏波依存型の新規デバイスの開発に理

論的な側面から貢献できる。

6.研究の方法

研究計画の全ては、理論的な研究である。ファイバグレーティングを利用した光デバイスに関して

は、豊富な研究経験を持つ University of Delhi との共同研究として取り組む。また、フォトニック結晶

導波路と3次元光導波路の解析モデルに関しては、九州大学と IIT Delhi がそれぞれの独自の解析

モデルを用いて理論の展開を図り、解析結果の検証を両者で協力して行った。

7.主要な成果

7.1 九州大学と University of Delhi の共同成果

7.1.1 光ファイバグレーティングおよび光導波路の高度利用に関する研究

(A) 長周期グレーティングと Bragg グレーティングを縦続装荷した非対称2重コアファイバ[5][12][13][26]

ファイバグレーティングの構造を図-1 に示す。2つのコアの半径を 1r 及び 2r 1 2( )r r< とする。

コア2はファイバの中心にあり、コア1は中心から距離 d だけ偏心している。コア1の位置は、

0LP ( 1)m m > クラッドモードの電界分布の2番目のピークの近傍に選んでいる。このとき、2つのコアの

間の直接的な結合は無視できる程に小さくなる。セクション1のコアにはピッチ 1Λ 及び長さ 1L の長周

期グレーティング ( LPG ) が装荷され、セクション2のコアにはピッチ 2Λ 及び長さ 2L の Bragg(短周

期)グレーティング ( FBG ) が装荷されている。コア1を入力ポートとして、 01LP コアモードが入射する

ものとする。この入射波は、セクション1における LPG を介して共振波長 0λ の近傍で 0LP ( 1)m m > ク

ラッドモードと強く結合し、 1L の長さを伝搬した後、 0LP m クラッドモードに変換される。セクション2では、

この 0LP m クラッドモードがコア2の FBG を介して波長 0λ の近傍でコア2を逆方向に伝搬する(反射

波) 01LP コアモードと結合する。その結果、Bragg 反射された波長 0λ の近傍の光はセクション1のコ

ア2から出力されることになる。このように、非対称2重コアファイバ、長周期グレーティングと Bragg グ

レーティングの縦続接続を利用することで、 0λ の近傍での反射型の波長選択特性が期待できる。

提案したファイバグレーティング構造の波長選択特性を結合モード理論により評価した。2つのコア

の屈折率を 1.4530coren = 、共通のクラッドの屈折率を 1.440cladn = 、コア半径を 1 3.0r mμ= 、

2 3.6r mμ= 、コア間の距離を 32d mμ= 、クラッド半径を 62.5 mμ に仮定した。結合させるクラッドモ

ードを 06LP モードに選び、それぞれのグレーティングを介してコアモードと共振する波長を

0 1.550 mλ μ= に設定したとき、位相整合条件を満たすグレーティングのピッチが 1 305.8 mμΛ =

及び 2 536.10nmΛ = に決まる。グレーティングの屈折率変調度は -4LPG : 8.5×10 及び

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-4FBG :8.5×10 に選んだ。このようなパラメータの下で、グレーティング長を 1 4.6L cm= 、 2 2.6L cm=

に設計したときの入力ポートから出力ポートへの反射電力スペクトルを図-2(a) に示す。設定した波長

0 1.550 mλ μ= を中心として、非常に急峻で狭帯域の反射特性が得られる。しかし、セクション2に装

荷した一様な Bragg グレーティングの特長として、無視できない多数のサイドローブが発生している。

このサイドローブを抑圧する方法を検討し、グレーティングの屈折率変調度のガウス型のアポダイゼ

ーションを施すのが有効であることを確認した。アポダイゼーションの効果はグレーティング長 2L に亘

るガウス分布の半値幅 w に大きく依存する。図-2(b) に示すように、 0.4w = に選んだとき、サイドロー

ブは 40dB− 以下に抑えられ、波長 0 1.550 mλ μ= を中心として平坦な特性を持った急峻な反射特性

を実現できた。

提案した非対称2重コアファイバグレーティングティング結合器には以下のような応用が期待できる。

光スイッチング

光ファイバに強いポンプ光が入射すると、相互位相変調効果により、コアの屈折率はポンプ光強度

図-1. 長周期グレーティング (LPG) と Bragg グレーティング

(FBG) を縦続して装荷した非対称2重コアファイバ.

図-2. 非対称2重コアファイバの出力ポートにおける反射パワー電力の波長スペクトル、

:w ガウス型アポダイゼーションの半値幅.

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に依存して変化する。このときのコアの屈折率は次のように与えられる。

1 1 22 /NL NLeffn n bn P A= +

ここで、 1n はコアの線形屈折率、 2NLn は非線形係数、 P はポンプパワーのピーク値、 effA はコアの実

効面積、 b はポンプ光の偏光状態に関係した係数を表す。 b は、通常、1/3~1 の値である。以下の

応用例では、 1b = 及び 6 2

2 7 10 /NLn m W−= × を仮定した。図-3 はコア1にポンプ光を入射する構

成を示す。ポンプ光を入射することにより、セクション1において信号光のコアモードとクラッドモードの

位相整合条件を制御することができる。コア2における信号光の反射スペクトルの計算結果を図-4 に

示す。ポンプ光はセクション2におけるコア2の位相整合条件には影響しないので、反射光の中心波

長は 0 1.550 mλ μ= である。ポンプ光を強くしていくと、セクション1において信号光のコアモードとクラ

ッドモードは位相整合しなくなり、コア1へ入射した信号光はセクション2のコア1から出射する。

2.0P W= の場合、コア2からの反射光に対して 30dB− の消光比を得ることができる。したがって、図

-3 の構成は Bragg 反射型光スイッチング機能を持つことが分かる。

図-4. 非対称2重コアファイバの反射スペクトルのポン

プパワー 1( )P 依存性: 1 0 , 1 , 2P W W W= .

図-3. 光スイッチング機能を持った非対称2重コアファイバの構成.

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93

波長チューニング

図-5 はポンプ光をコア2に入射する構成を示す。この場合、ポンプ光は、セクション1における信号

光のコアモードとクラッドモードの結合には影響しないが、セクション2において コア2の Bragg 反射

の中心波長を変化させる。その結果、図-6 に示すように、コア2からの反射光の中心波長はポンプ光

の強度に比例して長波長側に遷移する。波長-電力感度は 0.0132 nm/W になる。このように、

図-5 の構成には光波長可変 Bragg 反射型フィルタの機能が期待できる。

ファイバ型 Add/Drop 回路

図-7 に示すように、提案した非対称2重コアファイバグレーティングティング結合器の先に Section 1

と同じ LPG を接続すれば、Add/Drop 回路の機能が期待できる。ポート1に入射した光のうち、FBG

で選択された波長の光はポート3から drop されるが、その他の波長成分は Section 2 をクラッドモー

ドとして伝搬した後、Section 3 において再びコア1のコアモードと結合して、ポート2へ通過する。一方、

ポート4から入射した特定の波長の光は、Section2 において逆方向に伝搬するクラッドモードに変換さ

れた後、Section 3 においてコア1のコアモードに変換されてポート2に出力される。その具体的な特性

評価は今後の課題である。

図-5. 波長選択機能を持った非対称2重コアファイバの構成.

図-6. 非対称2重コアファイバの反射スペクトルのポンプ

パワー 2( )P 依存性: 2 0W, 10W, 20WP = .

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94

(B) 長周期グレーティング付きテーパー状ファイバの特性の評価[16][54][57]

長周期グレーティングファイバの帯域阻止特性の広帯域化及び平坦化を目的として、テーパー状

ファイバに長周期グレーティングを施した構造を提案し、結合モード理論を用いてその特性を評価し

た。図-8 に、提案するファイバの構造を示す。ファイバの軸方向に z 軸を選んだとき、コアの半径

( )coa z とクラッドの半径 ( )cla z は z の関数としてそれぞれ次のように変化しているものと仮定する。

00

1 0( ) , ( ) ( )co cocl

bza z a a z a zz a

= − =

ここで、 0a と 0b は 0z = におけるコアとクラ

ッドの半径で、z1 ( /cm mμ ) はテーパーの角度θ

を決めるパラメータである。角度θ 小さいとき、コア

モードとクラッドモードの伝搬定数は z の関数とし

て緩やかに変化する。したがって、一定のグレー

ティングピッチ Λ に対して、コアモードはファイバ

軸上の異なった場所で局所的に複数のクラッドモ

ードと位相整合することになる。この状況を考慮に

入れて、多モード間結合モード方程式を定式化し、

ルンゲクッタ法を用いて数値解析した。数値計算

に用いたパラメータを表-1に示す。

計算した透過スペクトルの一例を図-9 に示して

いる。図-9 (a) の一様なファイバの場合には、クラ

ッドモードとの多数の鋭い共振特性が見られるが、

同図(b) のテーパー状ファイバでは、結合する複

数のクラッドモードが競合する結果、共振特性は

平坦化され広帯域になっていることが分かる。

θ

図-8. 長周期グレーティングを施した

テーパー状ファイバ.

表-1. テーパー状ファイバのパラメータ.

Fiber Parameters Core refractive index (n1) Cladding refractive index (n2) Core radius (ao) Cladding radius (b0)

1.458 1.45 4.6μm 62.5μm

Grating Parameters Refractive index modulation Δn 1x10-4

図-7. 非対称2重コアファイバグレーティング結合器を

利用した Add/Drop 回路の模式図.

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95

7.2 九州大学と IIT Delhi の共同成果

7.2.1 フォトニック結晶導波路の特性解明と光集積回路への応用

(A) フォトニック結晶ファイバに対する解析的モデル[10][18][64]

ファイバ断面に周期的に空孔を配置したフォトニック結晶ファイバは、通常の単一モー

ドファイバに比べて光の閉じ込め効果と非線形性が強く、単一モード伝送域が広いなどの特徴を持

っている。この特徴を生かして、光ファイバ通信、ファイバレーザ、非線形光デバイス、高感度光セン

サなどへの様々な応用が図られている。フォトニック結晶ファイバのモード伝送特性の解析では、一般

に、有限要素法、多極展開法、有限差分法などが利用されるが、これらの直接的な数値解法は繁雑

な数値アルゴリズムと多大な計算時間を必要とすることが知られている。 近、実効屈折率法や変分

法などの近似的解析手法が提案され、解析の簡易化が進められている。しかしながら、これらの近似

解法には、計算したモード界の信頼性や近似の適用条件はそれほど明確にされていない。このような

状況のもとで、「周期的な円柱の多層円筒面アレイの散乱理論」を提案し、この理論を用いてフォトニ

ック結晶ファイバのモードを解析した。提案した手法は、空孔の配置にある種の制限が付くが、準解析

的な手法であり、モード界を厳密に解析することができる。

図-10に対象とする円柱の多層円筒面アレイの構造を示す。半径 ( 1,2, , )d Nν ν = L の N 層の同心

円筒面上のそれぞれに M 個の円柱が対称的に配列されている。1つの円筒面上に配置された M 個

の円柱は全て同じでなければならないが、異なった円筒面上の円柱は同じである必要はない。また、

各円筒面における円柱の位置は、円筒面に沿って任意の角度 νθ だけ回転しているものとする。

図-9. ピッチ 700 mμΛ = 、長さ 12.7cm の長周期グレ

ーティングの透過スペクトル. (a) 一様なファイバ、(b)

テーパー状ファイバ( 1 100,z = 40, 24cm/ mμ ).

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96

解析では、まず、孤立した1つの円柱のT-マトリックスを基にして、1つの円筒面上に配置された

M 個の円柱の集合T-マトリックスを求める。次に、この集合T-マトリックスに円筒関数の加法定理

を適用して、1層の円筒面アレイに対する反射行列と透過行列を計算する。円筒波動関数を基底関

数としてこれらの行列を多段接続すれば、 N 層の同心円筒面アレイに対する一般化反射行列を求め

ることができる。フォトニック結晶ファイバのモード解析は、この一般化反射行列に関係した固有値問

題に帰着される。

d1=3 mμ λ ( )mμ Present method

Variational Method

Errors in Variational Method

r/d1=0.1

0.50 0.55 0.60 0.75 1.00 1.10 1.20 1.50

1.461576 1.458947 1.456847 1.452292 1.447015 1.445172 1.443380 1.438052

1.461443 1.458789 1.456664 1.452019 1.446564 1.444645 1.442771 1.437179

1.3300e-004 1.5800e-004 1.8300e-004 2.7300e-004 4.5100e-004 5.2700e-004 6.0900e-004 8.7300e-004

r/d1=0.13

0.50 0.55 0.60 0.75 1.00 1.10 1.20 1.50

1.461426 1.458763 1.456627 1.451938 1.446343 1.444340 1.442362 1.436318

1.461326 1.458649 1.456497 1.451752 1.446043 1.443984 1.441946 1.435705

1.0000e-004 1.1400e-004 1.3000e-004 1.8600e-004 3.0000e-004 3.5600e-004 4.1600e-004 6.1300e-004

表-2. 図-11 に示すフォトニック結晶ファイバの基本モードの伝搬定数;

1 3d mμ= 、 2 13d d= 、 3 12d d= 、 1 2 3r r r r= = = .

図-10. M 個の円柱が対称的に配置された N層の同心円筒面アレイの断面.

図-11. 3層の六方格子アレイからなる

フォトニック結晶ファイバ.

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応用例として、図-11 に示すような3層の六方格子アレイからなるフォトニック結晶ファイバの基本モ

ードの伝搬定数を計算した。3層アレイの内部領域はシリカであり、外部領域は Fundamental

Space-Filling Mode の実効屈折率 fsmn で満たされている。実際のフォトニック結晶ファイバでは空孔

の配列は多層に亘っているが、電磁界がコアの近傍に集中していることを考慮に入れて、 4ν > の領

域を fsmn を持った一様媒質で置き換える方法が一般に採られる。 1 3d mμ= 、 2 13d d= 、 3 12d d= 、

1 2 3r r r r= = = に対して計算したモード伝搬定数 / kβ の厳密解を表-2 に示し、IIT Delhi の A.

Sharma による変分法の計算結果と比較している。変分法の結果が厳密解に非常に良く一致している

ことが分かる。これは、A. Sharma がモード電界の / 3π 回転対称性を考慮に入れた試験関数を採用

しているためであると言える。

7.3 九州大学の成果

7.3.1 フォトニック結晶導波路の特性解明と光集積回路への応用

(A) フォトニック結晶導波路と通常の光導波路の接続部の構造解析[47]

フォトニック結晶導波路を光集積回路に応用するためには、モードフィールドパターンが異なった

通常の光導波路と効率良く結合させる工夫が必要である。単純な突合せ接続では 60%程度の結合効

率しか得られない。この難点を克服するため、フォトニック結晶を構成する円柱列のうち通常の光導波

路に近接した3~4個の円柱の誘電率を調整して接続する方法を提案し、その有効性を確認した。解

析では、2次元導波路モデルを採用し、九州大学で開発したフーリエ級数展開法を用いた。

提案した導波路の接続モデルの縦断面を図-12 に示す。フォトニック結晶導波路は、屈折率 bn を

持つ背景媒質中の半径 a の円柱空気孔の正方格子で構成されており、格子定数は h である。幅 bwの欠陥層が導波領域である。このフォトニック結晶導波路の左右に通常の2次元光導波路が接続され

ている。光導波路のコアの屈折率 coren はフォトニック結晶の背景媒質の屈折率 bn と同じに仮定してい

る。まず、全ての格子要素が空気孔からなる一様なフォトニック結晶導波路をそのまま光導波路に接

続した場合の入出力特性を図-13 に示す。構造パラメータの値は、 3.40coren = 、 3.16cladn = 、 w h= 、

3.40bn = 、 1 2 3 1.0n n n n= = = = 、 0.475r h= 、 1.5bw h= 、 0.05t h= に選んでいる。図中の /h λ

は波規格化波長で、 Λ はフーリエ級数の仮想周期を表す。出力ポートへの電力透過率は 64% 以下

になっている。次に、接続部に近接した3つの円柱の誘電率を 1 2.9n = 、 2 2.7n = に選び、 3n を変

化させたときの結果を図-14 に示す。仮想周期は 8.5hΛ = に選んでいる。他のパラメータの値は図

-13 と同じである。図-13 に比べて、電力透過特性が改善されていることが分かる。特に、 3 2.7n = の

場合には、フォトニック結晶導波路の伝搬帯域に渡って、90% を超える電力透過率を得ることができる。

導波路が無損失で、構造が対称であることから、入力ポートにおける光導波路との結合効率は 95%程

度になっていると見積もることができる。また、接続部における分離距離が 0 0.05t h< < の範囲で変

わっても、図-14 に示す電力透過特性は殆ど変化しないことを確認した。接続部に近接した3つの空

気孔を液晶で満たせば、屈折率 1n 、 2n 、及び 3n の値を電界で制御することが可能である。

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(B) フォトニック結晶共振器の共振周波数の正確な計算方法[23]

フォトニック結晶共振器は微小光集積回路を構成するときの基本要素の一つであり、その共振周波

数を正確に評価することが求められる。ここでは、フーリエ級数展開法を用いた共振周波数の計算方

法を提案し、2次元フォトニック結晶の点欠陥に対する結果を説明する。

対象とする2次元フォトニック結晶の断面と計算モデルを図-15 に示す。自由空間中に格子定数 hで配置された誘電体円柱の (2 1) (2 1)x yL L+ × + 正方格子において、中央にある円柱の半径と誘電

率だけが他の円柱と異なっている。この中央の円柱部分が結晶格子の点欠陥として働く。中央の円

柱の半径と誘電率を 0r 及び 0rε とし、他の円柱のそれらを r 及び rε とする。フォトニック結晶

の上下を厚さw の吸収層(PML)で挟み、 y 方向に周期Λ の仮想周期を導入する。吸収層を

導入したのは、仮想周期境界からの反射波を抑圧するためである。解析手順は以下の通りである。

i) 図-15(a) の構造を微小区分間隔 xΔ で y 軸に平行にスライスして、 x 方向に不均一な誘電率分布

を階段近似する。その結果、図-15(a) の構造は、 x 方向に幅が xΔ の (2 1)yL + 層平行スラブ導波

路を縦続接続した構造に置き換えられる。

図-12. 通常の光導波路とフォトニック結晶導波路の接続の2次元モデル.

図-13. 一様なフォトニック結晶導波路と光

導波路を接続した場合の電力透過特性.

Λ :フーリエ級数の仮想周期

図-14. 接続部に近接した3つの円柱の屈

折率(図-14)を調整して光導波路と接続し

た場合の電力透過特性.

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99

ii) フーリエ級数展開法を用いて、 (2 1)yL + 層平行スラブ導波路の各区分区間における固有モード

の伝搬定数と電磁界分布を計算する。

iii) 隣り合う区間の接続面で電磁界の境界条件を適用して、任意の1区間における電界の固有モード

振幅に対する散乱行列を求める。電磁界をフーリエ級数で展開しているので、境界条件の適用は

容易である。

iv) 上記の散乱行列を接続して、 x 方向の1周期に亘る散乱行列を計算する。更に、この散乱行列を

xL 回だけ接続して、 x 方向に xL 層を持ったフォトニック結晶に対する一般化反射行列 xLR を計

算する。散乱行列の接続は漸化式を利用して容易に行うことができる。

(v) 点欠陥を含む領域 ( / 2 / 2)h x h− ≤ ≤ に対して、上記と同じ計算を行い、反射行列 R と透過

行列 T を計算する。

以上のようにして計算した反射行列と透過行列を図-15(b) の接続モデルに用いれば、次の関係を

得る。

( / 2) ( / 2) ( / 2), ( / 2) ( / 2) ( / 2)h h h h h h+ + − − + −⋅ − + ⋅ − ⋅ − + ⋅a = T a R a a = R a T a (1)

( / 2) ( / 2), ( / 2) ( / 2)x xL Lh h h h− + + −⋅ − ⋅ −a = R a a = R a (2)

ここで、 ( / 2)h+ ±a 及び ( / 2)h− ±a はそれぞれ / 2x h= ± の面における固有モードの前進波及

び後進波の振幅ベクトルを表す。式(1) と (2)から、図-15(a)示す点欠陥を持ったフォトニック結晶共

振器の共振周波数は次の方程式の根として与えられる。

det[ ( ) ] 0xL + −R R F I = (偶モード: ( /2) = ( / 2)h h+ − −a a ) (3)

det[ ( ) ] 0xL − +R R F I = (奇モード: ( /2) = ( / 2)h h+ −− −a a ) (4)

式(3)、 (4) を満たす共振周波数は一般に複素数 0 0 iω ω σ+=% となり、共振器の Q 値は

0 / 2Q ω σ= から計算される。

具体的な例として、 0.2 ,r h= 11.56,rε = 0 0r = を仮定し、 低次の TE-偶モードの共振周

波数を計算した。これは、中央の円柱を完全に取り除いた場合に対応している。点欠陥を取り囲む結

図-15. 中央に点欠陥を持った2次元フォトニック結晶と解析モデル: (a) 吸収層(PML)と仮想

周期 Λ 、(b) フォトニック結晶の接続モデルと固有モード振幅ベクトル.

(b) (a)

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晶の大きさ (2 1) (2 1)x yL L+ × + を変化させて計算した共振器の Q 値を図-16(a) に示して、有限差

分時間領域法(FDTD 法)で数値計算した結果と比較している。PML の厚さは w h= 、仮想周期の大

きさは /h 20Λ = で、フーリエ級数の打ち切り項数 M を共振周波数 0ω が5桁まで収束するように選ん

だ。得られた Q 値は、 3 3× 結晶の場合を除いて、FDTD 法の結果よりも小さくなることが分かる。図

-1b(b) と (c) には、 7 7× 結晶及び 9 9× 結晶に対する共振周波数 0ω の収束状況を仮想周期 /hΛ

の関数として示している。PML を挿入しない場合、 0ω は仮想周期 /hΛ の大きさによって激しく変動し

て3桁の計算精度しか得られないが、PML を挿入することにより、 /h > 10Λ に対して 0ω の値5桁まで

収束していることが確認できる。

(C) 結合キャビティフォトニック結晶導波路の分散特性の解析[19-21][24]

図-17 に結合キャビティ・フォトニック結晶導波路の縦断面と座標系を示す。フォトニック結晶は、 x方向に周期 h で配列した半径 jr の円柱の多層アレイで構成されている。構造は2次元的で z 方向に

一様である。層間の間隔は jd で、各層の円柱の位置は x 方向に jw だけ変位している。 jd と jw の

選び方により、様々な構造のフォトニック結晶を表すことができる。例えば、 jd h= 、 0jw = のとき、

正方格子が得られ、 3 / 2jd h= 、 ( ) 0.5j evenw h= 、 ( ) 0j oddw = のときは、正三角形格子とな

る。図-17(a) の結晶は比誘電率 rε の背景媒質中に空気孔を配列したエアホール型結晶で、図

-17(b) の結晶は比誘電率 rε の円柱を自由空間中に配列したピラー型結晶である。それぞれの結

晶の中央部には ( 1)P − 個の円柱が周期的に欠落した欠陥層が存在し、この層はアレイ周期が Ph

となっている。また、欠陥層の円柱の半径 0r は他の円柱の半径とは異なっている。結晶が完全で欠

陥層が存在しないとき、フォトニックバンドギャップ (PBG) と呼ばれる周波数帯域内の光は結晶中を

伝搬することができない。しかし、欠陥層が存在すると、 Ph の周期で配列された半径 0r の円柱列が

結合キャビティ導波路として働き、光は、欠陥層内に強く閉じ込められた状態で x 方向に伝搬する。

このような結合キャビティ導波路の伝送特性調べるため、図-17 に示す導波路の導波モードの伝送帯

域、単一モード条件、モード分散特性を解析した。

導波モードの解析には、九州大学で開発した準解析的手法を用いた。まず、円柱のTマトリックス、

図-16. 共振器の Q 値及び共振周波数 0ω の収束状況: 0.2 ,r h= 11.56,rε = 0 0r = , w h= .

[1] P. R. Villeneuve, S. Fan, and J. D. Joannopoulos, Phys. Rev. B., vol. 34, no.11, pp. 7837-7842,

Sept. 1996.

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101

散乱波に対する格子和、及び空間高調波に対する一般化散乱行列を用いて、図-17 に示す欠陥層

の内部から上下のフォトニック結晶を見たときの、一般化反射行列 0RI と 0RU を求める。この反射

行列は h を基本周期とする空間高調波を基底関数としている。一方、欠陥層における散乱波は Ph を

基本周期とする空間高調波になる。基本周期の異なった2つの空間高調波成分を整合させるために、

空間高調波に対する分解及び合成の原理を利用した。具体的な検討例として 2P = 及び

10.0rε = を仮定し、正三角形格子から成るピラー型結晶の TM モードについて考察した。

計算した分散曲線を 図-18 に示す。 β は導波モードの伝搬定数である。欠陥層以外の円柱の

半径は 0.2 ( 0)jr h j= ≠ で、欠陥層の円柱の半径を 0 0.05 , 0.20 , 0.30r h h h= と変えている。実線は

偶モード、破線は奇モードを表す。結晶が完全な場合には、 0.298 / 0.468h λ< < の帯域内にPBGが

存在する。欠陥層を挿入することにより、このPBG内に単一モードの伝送域を得ることができる。図中

のモード番号 05 1M − 等は 0 0.05r h= に対する1番目のモード等を意味する。この図から、欠陥層に

おける円柱の半径を調整することにより、伝搬モードの伝送帯域と分散特性を制御できることが分る。

特に、 0 0.3r h= の場合には、共振波長の近傍に局在した Slow Wave が存在する。図-18 と同じ結晶

構造において、欠陥層の円柱の半径を 0 0.10r h= に選び、円柱の変位量 0w を変えて計算した分散

曲線を図-19 に示す。伝搬モードの主要な特性は 0w の値に余り影響されないことが分かる。

(a) エアホール型結晶 (b) ピラー型結晶

図-17. 2次元フォトニック結晶で構成した結合キャビティ導波路の断面と座標.

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102

(D) フロケモードを用いた2次元フォトニック結晶導波路のフーリエモード解析[8][11][17][30]

フォトニック結晶導波路を光集積回路に応用するためには、モードフィールドパターンが異なった

通常の光導波路との接続問題やフォトニック結晶導波路の様々な不連続問題の解析が必要である。

通常は、ビーム伝搬法、平面波展開法、時間領域有限差分法などの直接的な数値解法が用いられ

ることが多いが、有限の計算領域を設定して数値解析を行うので、その精度は計算領域の端部にお

けるフォトニック結晶導波路の終端条件に大きく依存することになる。フォトニック結晶導波路の固有

モードは通常の光導波路の固有モードの重ね合わせで構成されており、伝搬速度と固有インピーダ

ンスが異なった多数のモードの全てに対して理想的な吸収条件を満たすような終端条件を実現する

のは非常に困難である。この難点を克服するため、ここでは、周期構造系の固有モードであるフロケ

モードを利用してフォトニック結晶導波路の不連続問題をフーリエモード解析する方法を開発した。

初に、解析法の基本的な考えを説明し、次に、具体的な応用例を示して、その有効性を確認する。図

-20 に一様な2次元フォトニック結晶導波路の一例を示す。

図-18.ピラー型正三角形格子に対する TM

モ ー ド の 分 散 曲 線 ; 0 0w = 及 び

0 0.05 , 0.20 ,r h h= 0.30h , 0.2 ( 0)jr h j= ≠ .

図-19. ピラー型正三角形格子に対する

TM モ ー ド の 分 散 曲 線 ; 0 0.1 ,r h=

0.2 ( 0)jr h j= ≠ .

図-20. 一様なフォトニック結晶導波路. 図-21. 不連続部を持ったフォトニック結晶導波路.

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103

このような導波路構造を取り扱う場合、構造を微小区分間隔 xΔ で y 軸に平行にスライスして、 x 方

向に不均一な誘電率分布を階段近似する。その結果、導波路は、 x 方向に幅が xΔ の多層平行スラ

ブ導波路を縦続接続した構造に置き換えられる。したがって、フーリエ級数展開法で計算したステッ

プ不連続面における散乱行列を多段接続することにより、フォトニック結晶の対称な1周期 (a) あるい

は (b) に対する一般化散乱行列 を導くことができる。この一般化散乱行列の固有値と固有ベクトル

を計算すれば、フーリエ級数展開法のフーリエモード振幅とフォトニック結晶導波路の固有モードであ

るフロケモードの振幅の間の接続公式を導くことができる。

図-21 に示すようにフォトニック結晶導波路に不連続部が存在する場合は、導波路構造を3つの区

間に分割する。区間 I と III は一様なフォトニック結晶導波路を構成するので、その電磁界はフロケモ

ードの振幅を使って表現される。一方、遷移区間 II の電磁界はフーリエモード振幅を使って表される。

両者の電磁界は、接続面 1x x= と 2x x= において、上記の接続公式を用いて接続することがで

きる。導波路の入出力端における電磁界がフロケモードで表現されているので、入出力部における整

合条件は自動的に満たされる。

提案した手法を、光導波路とフォトニック結晶導波路の接続問題ならびにフォトニック結晶導波路フ

ィルタ、微小共振器付きフォトニック結晶方向性結合器、クランク回路、微小共振器付クランク回路、

分岐回路などの基本的なフォトニック結晶回路素子の入出力特性の解析に適用して、その有効性と

計算精度を検証した。

7.3.2 光回路の基本構成要素である方形断面光導波路の偏波効果の解明

(A) 吸収境界(PML)を利用したフーリエ級数展開法による方形断面光導波路の数値解析

フーリエ級数展開法を用いた方形断面光導波路の解析において、仮想的な周期境界による不要

反射の影響を抑圧するため、PML を導入した数値解析コードを開発した。図-22 に方形光導波路

の断面と座標系を示す。断面が a b× の方形光導波路を x方向に xΛ 、 y 方向に yΛ の大きさを持っ

た周期的境界で取り囲み、周期境界の内側には x方向に幅が xw 、 y 方向に幅が yw の PML を

挿入している。PML 内において複素空間座標変数を導入し、マクスウェルの方程式を満たすベクト

ル波動方程式を x 方向と y 方向に関してフーリエ級数で展開する。その結果、 x 方向と y 方向の

展開の打ち切り項数をそれぞれ (2 1)M + 及び (2 1)N + とするとき、固有モードを決定する

[2(2 1)(2 1)]M N+ + [2(2 1)(2 1)]M N× + + 次元の行列方程式を導くことができる。解析例として、

2a λ= 、b λ= 、 10x y λΛ = Λ = 、 x yw w λ= = 、及び 10M N= = に対して得られた基本導波

モード及び高次放射モードの伝搬定数を表-3 に示す。この導波路の主モードは電界の水平成分

( xE )を主成分に持つモードである。基本導波モードは PML を導入しても殆ど影響を受けないが、

周期境界近傍において有限の界振幅を持った放射モードは PML の吸収効果によって大きな減衰を

受ける。この減衰効果は、高次の放射モードに対して顕著に現れる。 5x λ= 及び 5y λ= の面内に

おける基本導波モードの xE の規格化強度分布を図-23 に示す。この強度分布は、PML の有無に

関係なく同じあることを確認した。したがって、方形断面光導波路等の3次元光導波路の不連続部に

おいて放射波が発生する場合、周期境界面からの放射波の反射を抑圧して基本導波モードの伝搬

特性を正しく解析するためには、PML を付与した周期境界が有効であることが分かる。

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104

伝搬モードの区分 伝搬定数の実部 ( / )r kβ 伝搬定数の虚部 ( / )i kβ

基本導波モード 1.506340584 0 1番目の射モード 1.449659392 0 47番目の放射モード 1.421937807 0

PML 無し

197番目の放射モード 1.337832769 0

基本導波モード 1.506341764 0.7351831517×10 6− 1番目の射モード 1.449890646 0.2184304036×10 3− 47番目の放射モード 1.435530358 0.7657780729×10 2−

PML 付き

197番目の放射モード 1.376124412 0.1524736030×10 1−

表-3 図-22 に示す方形断面光導波路の伝搬定数の計算結果; 2 /k π λ= . 2 , , 10 , , 10, 3, 10x y x y Ma b w w q M Nλ λ λ λ σ= = Λ = Λ = = = = = = = .

図-22. 周期的境界で囲まれた方形断面光導波路と座標系.

(a) 5y λ= (b) 5x λ=

図-23. (a) 5x λ= 及び (b) 5y λ= の面内における基本導波モードの xE

の規格化強度分布. パラメータの値は表-3 に同じ.

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105

(B) 方形グレーティングを装荷したリブ型光導波路の光フィルタ特性の平坦化[35][40][52]

方形グレーティングを装荷したリブ型光導波路の構造と座標系を図-24 に示す。グレーティングの

1周期は 2L z= Δ である。 このような導波路を帯域反射型光フィルタとして利用する場合、図-24(a)

あるいは (b) に示す形で入力導波路及び出力導波路に接続される。同図(a) では、入出力導波路

の高さははグレーティングの突起部の高さ 1b に等しく、グレーティングは凹型グレーティングとして働く。

一方、同図(b) でングとして働く。これらの2つの構造のリブ型光導波路の反射特性をフーリエ級数展

開法によりフルベクトル解析した。電界の主成分が x 方向に偏波した基本導波モードに対する結果を

図-25 に示す。 1000gN = はグレーティングの総周期数である。いずれの構造においても、

1.482 1.490λ< < の波長域にブラッグ反射による阻止域が現れるが、その波長特性は平坦ではない。

同図(a)の凹型グレーティングは右上がりの特性を示し、同図(b)の凸型グレーティングは右下がりの特

性を示す。このような特性になるのは、基本導波モードに対する入出力導波路の実効屈折率とグーテ

ィング付き導波路の実効屈折率が一致していないためである。リブ型光導波路では、コア ( )fn と上部

カバー領域 ( )cn の屈折率差が大きいので、グレーティング領域の実効屈折率は入出力導波路のそ

れとは大きく異なる。入出力導波路の高さ 1b と 2b を変化させてブラッグ反射の阻止域の波長特

性を計算した結果、これらの導波路高を入出力導波路の実効屈折率がグーティング付き導波路の実

効屈折率に等しくなるように選んだとき、ほぼ平坦な波長特性が実現できることを確認した。

図-24. 方形グレーティングを装荷したリブ型光導波路の構造と座標系.

(a) 凹型グレーティング (b) 凸型グレーティング (c) 導波路の断面

(a) 凹型グレーティング (b) 凸型グレーティング

図-25. 方形グレーティングを装荷したリブ型光導波路の反射係数の波長特性:.

1 2 0.25 ,2 1.5 , 1.2 , 1.55, 1.45, 1.0, 1000f s c gz ma b m b m n n n Nμμ μ Δ == = = = = = = .

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106

(C) 金属クラッドとグレーティングを装荷した光導波路の偏波分離機能[31]

提案する光導波路は5層の平面型導波路である。その構造と座標系を図-26 に示す。中心に位置

する厚さが 3t の層がコアであり、厚さが 2t 及び 4t の中間層はクラッド、その外側にある2つの層は

金属薄膜である。コアの下側の境界には振幅 2h 、周期 Λ の長周期グレーティングが長さ L に亘っ

て装荷されている。コアとクラッドの厚さ及び屈折率 3n 、 2n 、 4n は電界が y 方向に偏波した 0TE

モードと電界が x z- 面内に偏波した 0TM モードがコアモードとして伝搬するように選んでいる。これ

らのコアモードはクラッド領域において x 方向に急激に減衰するので、金属薄膜の影響は無く、3層

平面導波路のコアモードと同じである。導波路の入力端 0z = から入射した 0 0TE (TM ) コアモー

ドは長周期グレーティングを通して5層平面導波路の TE (TM ) ( 1, 2, )m m m = L クラッドモードと結合

する。クラッドモードは、 x 方向の導波路全体に広がった界分布を持っているので、金属薄膜の影響

を強く受ける。金属薄膜中には表面プラズモンと TM 型の固有モードが存在するので、クラッドモード

はこの表面プラズモンと結合する。一方、 クラッドモードに対して、金属薄膜は低損失の誘電体として

働く。このような金属薄膜の性質により、長周期グレーティングを介したコアモードとクラッドモードの結

合には強い偏波依存性が現れる。この偏波依存性は偏光分離デバイスへの応用が期待できる。

提案した5層平面導波路の偏光分離特性を結合モード理論を使って解析した。グレーティングの

周期 Λ は、 0 0TE (TM ) コアモードが 1 1TE (TM ) クラッドモードと位相整合するように決めた。計

算結果の一例として、入力端 0z = から入射した 0 0TE (TM ) モードが、クラッドモードとの結合を経

て、出力端 z L= に 0 0TE (TM ) モードとして透過する透過電力の波長特性を図-27 に示す。金属の

屈折率の値には実測データを利用した。同図(a) は金属薄膜が銀の場合である。波長 1.450 mλ μ=

において、 0TE モードに対して 31.5dB− の消光比を得ることができる。このときの 0TM モードの伝

搬損失は 1.5dB− である。同図(b) に示すように、金属薄膜にアルミニウムを用いることにより、 0TMモードの伝搬損失を低減することができる。 3.9L mm= のとき、波長 1.486 mλ μ= において、 0TE モ

ードに対して 35.8dB− の消光比、 0TM モードに対して 0.27dB− の伝搬損失を実現できる。また、結

合長を 7L mm= に選べば、波長 1.577 mλ μ= において、 0TM モードに対して 36dB− の消光比を

得ることができる。図(b) に示す “air” は金属薄膜を空気層に置き換えたときの結果である。この場

合、 0TE モードと 0TM モードの波長分離度が良くないため、偏光分離に必要な消光比を得るのは

難しい。

図-26. 長周期グレーティングを装荷した5層平面導波路.

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107

(D) 3次元光導波路の不連続部における偏波効果の数値解析

方形断面の光導波路の不連続部で生じる偏波効果について理論的に検討した。図-28 にシング

ルモードファイバと埋め込み型導波路の接続部の構造、図-29 に2平行埋め込み型導波路から成る

方向性結合器の励振部の構造を示す。これらの構造では、導波路の不連続面において、垂直方向

に偏波したモードと水平方向に偏波したモードの間にモード結合が発生する。我々は、7.3.2 (A) で

述べたフーリエ級数展開法を用いてこの問題を数値解析し、直交した偏波間のモード変換の大きさを

評価した。その結果、導波路がシリカガラス系の材料で構成されている場合、直交する偏波へのパワ

ー変換率は 0.1% 以下になり、実用上は無視できることを確かめた。

7.4 University of Delhi の成果

7.4.1光ファイバグレーティングおよび光導波路の高度利用に関する研究

(A) 長周期グレーティングを利用したエルビウム添加ファイバの利得制御[38]

長周期グレーティングによるクラッドモードとの結合を利用してエルビウム添加ファイバの利得を制

御する方法を提案した。結合モード理論による解析を行い、その有効性を確認した。図-30 に示すよ

(a) 金属薄膜が銀 (Ag) の場合 (b) 金属薄膜がアルミニウム (Al)の場合

図 -27. 長 周 期 グ レ ー テ ィ ン グ と 金 属 薄 膜 を 装 荷 し た 5 層 平 面 導 波 路 の 偏 光 分 離 特 性 :

2 4 3 31.50, 1.53, 2 , 20 ;n n n t m h nmμ= = = = = 2 4 2 4( ) 5 , 71 , 3.1 , ( )a t t m m L mm b t tμ μ= = Λ = = =6 , 76 , 3.9 , 7m m L mm mmμ μ= Λ = = .

図-28. シングルモードファイバと埋め込み型

導波路の接続.

図-29. 2平行埋め込み型導波路(方向性結

合器)の励振.

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108

うに、エルビウム添加ファイバのコアに長周期グレーティングが装荷されている。グレーティングのピッ

チは、波長 1530nmλ = の信号光に対して、 10LP コアモードが 0mLP クラッドモードと位相整合するよ

うに選ぶ。ポンプ光の波長は 980nmλ = である。ポンプ光パワーに対してグレーティングの長さ L を

適切に設定したとき、ポンプ光により信号光の透過強度を制御することができる。

(B) 長周期グレーティング付エルビウム添加ファイバにおける増幅自然放出の評価[45]

エルビウム添加光ファイバ増幅器は、光波長多重通信における基幹デバイスである。 1.53 mλ μ=

の波長の近傍で凡そ 40nm 幅の増幅域を持っているが、2つの欠点を持っている。一つは、増幅の利

得特性が帯域内で一様ではないこと、もう一つは、増幅自然放出光の影響で信号対雑音比が劣化す

ることである。前記(A)で述べたように、エルビウム添加光ファイバに長周期グレーティングを施して利

得を制御すれば、帯域内の利得を平坦化することが可能である。長周期グレーティングは、増幅自然

放出光の抑圧にも有効であると考えられる。

このことを理論的に実証するために、長周期グレーティングを施したエルビウム添加ファイバに対し

て、信号光、クラッドモード、ポンプ光、及び増幅自然放出光を考慮に入れた結合モード方程式を定

式化した。増幅自然放出光には信号光の波長成分を含んだ前進波と後進波が混在するので、信号

光成分にも前進波と後進波を考えなければならない。定式化した結合モード方程式を4次のルンゲ・

クッタ法を用いて解き、長周期グレーティングの下での増幅自然放出光の振舞いを調べた。

全長 4m のエルビウム添加ファイバの先端より 50cm の位置からピッチ 267 mμΛ = のグレーティング

を長さ 340cm に亘って施したファイバについて解析した。ポンプ光の電力は 500mW 、波長は

980nmλ = である。まず、信号光が存在しない状態で得られた増幅自然放出光のスペクトルを図-31

に示す。(a)は前進波成分、(b)は後進波成分を表している。点線は長周期グレーティングが無い場合、

実線は長周期グレーティング施した場合の結果である。次に、信号光として3つの波長成分が存在す

る場合の出力スペクトルを図-32 に示す。各信号光の入射電力は100nW である。図-31 から、長周期

グレーティングの効果により、増幅自然放出光が抑圧されスペクトルが平坦化されていることが分かる。

また、その結果として、図-32 に示されるように、信号光の3つの波長成分に対する出力はほぼ一定に

なっている。

図-30. 長周期グレーティングを装荷したエルビウム添加ファイバ.

信号光: 1530nmλ = , ポンプ光: 980nmλ = .

Periodic Grating

Core

Ambient

Cladding

Jacket

Erbium Doping

980nm

~ 1530nm

Periodic Grating

Core

Ambient

Cladding

Jacket

Erbium Doping

980nm

~ 1530nm

L

Jacket

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109

7.4 IIT Delhi の成果

7.4.1 フォトニック結晶導波路の特性解明と光集積回路への応用

(A) フォトニック結晶ファイバに対する準解析的モデル[58][65]

フォトニック結晶ファイバの簡便な解析方法として、実効屈折率法 (Effective Intex Method) が知ら

れている。空孔が周期的に配列されたクラッド領

域を Fundamental Space-Filling Mode のモード

屈折率 fsmn に等しい実効屈折率を持った一様な

クラッドに置き換える方法である。このため、モード

伝搬定数に対しては十分に正確な結果を与える

が、実効屈折率法で計算したモード界分布には

空孔の配列に依存した対称性が反映されていな

い。しかし、フォトニック結晶ファイバの励振や接続

の問題を取り扱うとき、モード界分布の正確な計

算が必要になる。

実効屈折率法の上記の難点を解決し、モード

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

1.52 1.53 1.54 1.55 1.56 1.57

Wavelength (μm)

Outpu

t Pow

er (d

Bm)

1.53μm 1.56μm1.54μm

図-32. 3つの波長成分をもった信号光の出力スペクトル;各信号光の入射電力:

100nW 、破線:長周期グレーティングなし、実線:長周期グレーティング付き.

(b)

-90

-70

-50

-30

-10

10

1.5 1.52 1.54 1.56 1.58 1.6

Wavelength (μm)

Forw

ard

ASE

Pow

er (d

Bm

)

-90

-70

-50

-30

-10

10

1.5 1.52 1.54 1.56 1.58 1.6

Wavelength (μm)

Forw

ard

ASE

Pow

er (d

Bm

)

(a) 図-31. 増幅自然放出光のスペクトル; (a) 前進波成分 及び(b) 後進波成分、破線:長

周期グレーティングなし、実線:長周期グレーティング付き.

図-33. フォトニック結晶ファイバの解析モデル.

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110

伝搬定数とモード界分布を正確に解析する方法として、フォトニック結晶ファイバに対する変分法を提

案した。この解析モデルでは、コアの近傍に配列された空孔については具体的な構造を考慮に入れ、

コアから十分に離れた空孔に対してだけ実効屈折率法を適用する。また、変分法における試験関数

には、空孔の配列に関係した空間対称性を持つ試験関数を採用する。図-33 にフォトニック結晶ファ

イバの解析モデルを示す。格子定数 Λ で配列された円形空孔の正三角形格子アレイにおいて中央

の空孔が欠落しており、この部分がコアとなる。欠落した空孔を中心にして半径が Λ 、 3Λ 、 2Λ の3

層の円形リング上にはそれぞれ6個の空孔が配置されている。空孔の直径を d とするとき、

2 / 2r d> Λ + の領域は上記の fsmn で置き換える。変分法における試験関数として、以下の関数を採

用して解析を行った。

2 21( , ) exp( ) exp{ ( * ) }(1 cos 6 )r r A rψ φ α α σ φ= − − − − Λ + (5)

ここで、 A 、α 、 1α 、及びσ は、変分解析により決定されるモードパラメータである。

2.3 mμΛ = 、 / 0.5d Λ = として、計算で得られた基本モードの電界分布とモード伝搬定数 / kβ を図

-34 及び図-35 に示す。電界分布には、コアの近傍の空孔の配置を反映した / 3φ π= の回転対称性

が現れていることが分かる。また、モード伝搬定数は、実行屈折率法及び誘電要素法 (FEM) の結果

に良く一致している。

次に提案した解析モデルを用いて、フォトニック結晶ファイバの接続損失を評価した。図-36 は、同

種のフォトニック結晶ファイバを接続した場合で、一方のファイバが他方に対して角度θ だけ回転した

場合の接続損失を示している。 2 mμΛ= である。一方、図-37 は、通常のシングルモードファイバ

(SMF28) とフォトニック結晶ファイバを接続した場合の損失を、空孔のピッチ Λ の関数として示してい

る。いずれの例でも、使用波長は 1.550 mλ μ= である。このように、提案したモデルを用いれば、フォト

ニック結晶ファイバの接続損失を簡便に評価することができる。

図-35. 基本モードのモード伝搬定数.図-34. コアの近傍における基本モード

の電界分布 1.550 mλ μ= .

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111

7.4.2 光回路の基本構成要素である方形断面光導波路の偏波効果の解明

(A) 集積光導波路のモード解析[2][6][9][14]

光導波路のモード解析及び伝搬解析のための様々な手法が開発されているが、解析アルゴリズム

の平易化、計算の効率化と計算時間の短縮、計算精度の向上などの観点から、波動伝搬に関する解

析的手法を援用した準解析的手法に対する要求は強い。ここでは、これらの要求に応えるために、変

分法とモーメント法を用いたモード解析の新しい方法、及び従来のビーム伝搬法を改良した広角ビー

ム伝搬法について検討した。

(a) 変分法を利用したモード解析

方形断面を持った光導波路の近似解析では、モード界の表現に変数分離解を採用する。しかし、

この変数分離解はマクスウェルの方程式を満足していないので、モードカットオフ近傍での伝搬定数

や電界分布を正しく計算できない。この難点を克服するため、変数分離解を電磁界の変分表現に代

入して、導波路断面内における電磁界分布がマクスウェルの方程式を近似的に満足するように 適

化する方法を提案した。提案した手法を用いて、図-38 に示すリブ型光導波路のモード解析を行った。

基本モードの伝搬定数を図-39 に示す。提案した手法で計算した伝搬定数が有限要素法 (FEM) で

計算した精密な結果と良く一致していることが分かる。波路断面内における電界分布についても同様

に良好な結果が得られた。

図-36. 2つのフォトニック結晶ファイバ

の接続損失.

図-37. シングルモードファイバ(SMF28) と

フォトニック結晶ファイバの接続損失.

図-38. リブ型導波路の断面.

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112

(b) ウエーブレット-ガラーキン法を用いたモード解析

モード解析にガラーキン法を適用する場合、計算効率と精度は採用する基底関数に大きく依存す

る。通常、基底関数にエルミート・ガウス関数を用いることが多いが、この場合、解くべき行列方程式が

密になり、また、行列要素を数値積分で計算することが必要になる。この研究では、基底関数にガウス

型ウエーブレットを用いたガラーキン法によるモード解析コードを開発した。この手法の利点は、行列

方程式が疎であり、更に、簡単に行列要素を計算できるということにある。開発したコードを用いて、拡

散型平面光導波路のモード解析を行った。ガウス関数型の屈折率分布

2 2 22

2

2 exp( / ) for 0( )

for 0ss

c

n n n x w xn x

n x⎧⎪⎨⎪⎩

+ Δ − ≥=

< (6)

を持った平面導波路に対して、次のガウス型ウェーブレットを用いた。

2 2( ) /[ ( ) ] 1/e e for ( ) ( ) ( 0, 1, 2, )( )

0 elesewhere

x i x c m x c

ii m x x i m x i

xϕ− − Δ Δ − −⎧⎪

⎨⎪⎩

− Δ < < + Δ = ± ±=

L (7)

採用した。ここで、 sn は基板の屈折率、 cn はカバー層の屈折率、 nΔ は屈折率変化のピーク値、 xΔ

は隣接するウェーブレット間の距離、 m は一つのウエーブレット内におけるサンプリング点の数を表す。

nc = 1.0、ns = 2.177、Δn = 0.043、λ = 1.3 μm に対して計算した結果、 14i = ± までの 35N = 個のウ

ェーブレットを用いて 4m = に選んだ場合、厳密解にほぼ一致する伝搬定数を得ることができた。

0TM モードに対して、提案した手法による計算時間をウェーブレットの個数(基底関数の数)の関数と

して図-40 に示し、基底関数にエルミート・ガウス関数を用いたときと比較している。 4m = である。記

号 “TGW”は提案した手法の結果を表し、”HG” はエルミート・ガウス関数を用いた場合の結果であ

る。提案した手法を用いることにことにより、大幅に計算時間が短縮されていることが分かる。

図-39. 基本モードの規格化伝搬定数とリブの厚さ h の関係.

波長: 1.55 μm, ncore=3.477, nclad=1.444, W=0.8 μm. 実線:有限

要素法(FEM), 破線:提案した手法 (IVopt(Optimized)).

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113

(B) 光導波路の伝搬解析のための広角ビーム伝搬法[3][4][15]

(a) スカラー2次元広角ビーム伝搬法

フレネル近似や近軸近似を基にしたビーム伝搬法は、伝搬光の角度スペクトルが広がるにつれて

計算精度が低下することが知られている。この研究では、近軸近似を用いないで、波動方程式に

Split-Step アルゴリズムを適用して光導波路の伝搬解析を行う有限差分広角ビーム伝搬法を開発した。

この手法の計算式は以下のように要約される。

3( ) ( ) ( ) (( ) )z z z z O zΦ + Δ = Φ + ΔPQ P (8)

ここで、 ( )zΦ は横方向の座標軸に関するサンプリング点での電界の振幅とその微分を要素とする縦

ベクトルで、 z は導波路の伝搬方向に沿った位置座標を、 zΔ はその差分ステップサイズを表わす。

P は、屈折率 rn を持った参照媒質中の伝搬を記述する定数行列で、 ( )zQ は、 z 方向に変化する屈

折率分布を記述する疎な行列である。行列 P は、演算子 22 2 2/rk n x+ ∂ ∂ に対して、高次の差分表

現を用いて計算される。手法の特徴は、 2 2/ x∂ ∂ を近似する中心差分に関係した3重対角行列を対角

化することにより、行列 P を解析的に求めたことにある。その結果、従来のビーム伝搬法に比べて、計

算時間を 1/10 程度に短縮することができた。

(b) スカラー3次元広角ビーム伝搬法

前記 (a) の手法を3次元の伝搬解析に拡張した。この場合、演算子 22 2 2 2 2/ /rk n x y++ ∂ ∂ ∂ ∂ の

差分表現が必要になる。そのため、 x -座標と y -座標に関するサンプリング点での電界の振幅とその

微分を要素とする縦ベクトルとして ( )zΦ を定義する。その結果、行列のサイズは 2 2N N× と大きくなる

が、行列 P を解析的に求めることに成功した。ここで、 N は x -座標と y -座標に関するサンプリング点

の数である。開発した計算コードを用いて、屈折率が 1.446cln = のクラッドに囲まれた屈折率が

1.450con = で断面が 5μm × 5μm の方形導波路を伝搬する基本モードの伝搬解析を行った。方形

導波路のチルト角を 30o、伝搬長を 30μm として計算した結果、サンプリング点が 64 64× の場合でも、

電界分布の重なり積分で定義される伝搬誤差が 0.01% 以下であることが確認された。

図-40. 基底関数にガウス型ウエーブレットを用いたときとエルミート・ガウス

関数を用いたときの計算時間の比較. 解析対象はガウス関数型の屈折率分

布を持った拡散型平面導波路の 0TM モードである.

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114

(c) セミベクトル3次元ビーム伝搬法

コアとクラッドの比屈折率差が大きくなると、その境界における電界の不連続性の影響が顕著に現

れる。この場合、伝搬光の偏波の状態を考慮に入れた取り扱いが求められる。セミベクトルビーム伝搬

法では、次の波動方程式に基づいて伝搬解析を行う。

( )22 22 202 2 2

1( , , ) 0xx x

xn EE E

k n x y z Ez x n x y

∂∂ ∂ ∂+ + + =

∂ ∂ ∂ ∂⎡ ⎤⎢ ⎥⎣ ⎦

(9)

( )22 22 202 2 2

1( , , ) 0yy y

y

n EE Ek n x y z E

z y n y x

∂∂ ∂∂+ + + =

∂ ∂ ∂ ∂

⎡ ⎤⎢ ⎥⎣ ⎦

(10)

ここで、 ( , , )n x y z は導波路の屈折率分布を表す。提案した新しい3次元ビーム伝搬法では、 2xn E と

2 2(1/ ) ( ) /xn n E x∂ ∂ 及び 2yn E と 2 2(1/ ) ( ) /yn n E y∂ ∂ がコアとクラッドの境界面で連続であることを考慮

に入れて、演算子 x∂ ∂ 及び y∂ ∂ に対して高次の差分化を行った。その結果、式(1) と同様な計算

式が定式化され、行列 P も解析的に求めることができた。開発した計算コードを用いて、屈折率が

3.1693cln = のクラッドに囲まれた屈折率が 3.5con = で断面が 5 5m mμ μ× の方形導波路を伝搬する

準TE0 モードの伝搬解析を行った。 0.1443x y mμΔ = Δ = 、 0.0625z mμΔ = 、 1 mλ μ= に選び、導

波路のチルト角を 30° 、伝搬長を 20 mμ として計算したときの伝搬誤差を図-41 に示す。スカラービー

ム伝搬法の結果と比べて、伝搬誤差が大幅に改善されていることが分かる。

(C) プラズモニック導波路の解析[7][55][66]

光領域において金属と誘電体の境界面に存在する表面プラズモンを利用して導波する構造

をプラズモニック導波路と呼んでいる。プラズモニック導波路はサブ波長サイズでの光の閉じ込めが

図-41. 比屈折率差が大きな方形断面導波路を伝搬する準TE0 モー

ドの伝搬誤差. Semivectorial: セミベクルビーム伝搬法, Scalar: スカ

ラービーム伝搬法. 3.5con = , 3.1693cln = , 1 mλ μ= , 導波路の断

面サイズ: 5 5m mμ μ× , 導波路のチルト角: 30° .

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115

可能なので、ナノフォトニクス回路への様々な応用が期待されている。しかし、表面プラズモンがTM

型の波動であるあるために、プラズモニック導波路は偏波依存性が非常に強く、そのモード解析は一

般に容易ではない。この研究では、方形断面の導波路に対する準解析的な手法として開発した

Kumar の方法を用いて、2つの代表的なプラズモニック導波路のモード解析を行った。Kumar の方

法は、変数分離解を基にした摂動法である。

(a) 方形断面を持ったプラズモニック導波路

金属中に設けた方形断面の空孔を導波領域とするプラズモニック導波路の基本モードを解析した。

金属の材質は金で、空孔の大きさは 300 200nm nm× である。 x -方向に偏波したモードと y -方向に

偏波したモードの実効屈折率 2effn の実部と虚部を、それぞれ図-42(a) 及び (b) に示している図中の

“EIML” と “EIMS” は等価屈折率法による解析結果である。“EIML”では y -方向に関する等価屈

折率を基準にし、“EIMS” では x -方向に関する等価屈折率を基準にして計算している。“SVM” が

Kumar の方法による結果である。図-42 から、強い偏波依存性があること、また、”EIMS” の結果が

Kumar の方法による結果と良く一致していることが分かる。

(a)

(b)

図-42. 断面が 300 200nm nm× 方形空孔を伝搬する x-偏波モードと y-偏波

モードの実効屈折率 2effn の(a) 実部と(b) 虚部. 空孔の背景媒質は金である.

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(b) 誘電体ストリップを装荷した結合表面プラズモン・ポラリトン導波路

誘電体ストリップを装荷した金属薄膜導波路は、曲がりによる損失が小さい導波路として光集積回

路への応用が期待されている。この研究では、方向性結合器への応用を目的として、図-43 に示すよ

うに2つの誘電体ストリップを金属薄膜に装荷した結合表面プラズモン・ポラリトン導波路のモード解析

を行った。Kumar の方法を用いて、基本偶モードと奇モードの伝搬定数を計算し、方向性結合器の

結合長を評価した。その結果、装荷誘電体にポリマーとし、ストリップ間の距離を S ~ 50nm に選んだと

き、結合長が 2 mμ ~ 7 mμ になることを明らかにした。結合表面プラズモン・ポラリトン導波路を用いれ

ば、数ミクロンサイズの方向性結合器を設計することが可能である。Kumar の方法による解析結果が

有限要素法による数値シミュレーションの結果と一致することも確認した。

(D) 微小リング共振器の共振波長の偏波依存性[39]

微小リング共振器は、光通信のチャネル・アッド/ドロップフィルタに利用される主要デバイスである。

その重要なデバイスパラメータは共振波長である。この共振波長は強い偏波依存性を持っている。本

研究では、方形断面を持った3次元光導波路に対する準解析的な手法を提案し、それを用いて、図

-50 に示す突起型導波路からなる微小リング共振器の共振波長の偏波依存性を解明した。導波路に

垂直方向に関して等価屈折率を導入して、リング共振器を2次元スラブ導波路の一様曲がり構造に置

き換え、エアリー関数を用いて準解析的に共振波長 mλ を求めることができる。その結果は、FDTD

法を用いた3次元解析の結果に良く一致することを確認した。上部カバー層とコアの屈折率差が大き

くなるにつれて、準TEモードと準TMモードの共振波長に顕著な差異が現れる。

図-44. 方形断面をもった突起型導波路からなる微小リング共振器.

図-43. 誘電体ストリップを装荷した結合表面プラズモン・ポラリトン導波路の断面図.

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8.まとめと今後の課題

光波長多重通信用のファイバ型デバイスとして、非対称2重コアファイバと長周期グレーティング及

び短周期グレーティングを組み合わせたフィルタを提案し、光波長スイッチング、光波長チューニング、

チャンネル Add/Drop の機能が実現できることを理論的に明らかにした。実用デバイスの設計のた

めには、入出力ポートにおいて2つのシングルモードファイバと2重コアを低損失で接続する必要があ

る。これには、2重コアファイバとシングルモードファイバの接続において利用されているテーパーファ

イバを用いた接続技術が利用できると考えている。また、長周期グレーティングが、光フィルタの阻止

帯域の広帯域化と平坦化、エルビウム添加ファイバの利得平坦化と増幅自然放出光の抑圧に有効で

あることを理論的に検証した。なかでも、長周期グレーティングを施したテーパー状ファイバは、チャー

ピングを施したファイバグレーティングに似た透過スペクトルを示しており、広帯域光フィルタへの応用

が期待できる。そのためには、阻止帯域とテーパー構造の関係を詳細に検討し、チャーピング付ファ

イバグレーティングとの得失を明らかにする必要がある。

フォトニック結晶導波路及び方形断面を持った3次元光導波路のモード解析と伝搬解析に有効な

種々の準解析的手法及び数値解法を提案し、応用例を示して、提案手法の有効性を明らかにした。

フロケモードを用いたフォトニック結晶回路のフーリエモード解析法は、現時点では、2次元回路しか

適用されていない。等価屈折率法の考えを利用すれば、3次元回路を2次元回路で近似することがで

きる。しかし、回路の入出力特性をカットオフの近傍まで含めて正確に評価するためには、3次元回路

への適用が求められる。そのためには、計算機メモリーの低減や並列計算の導入など数値計算上の

工夫が必要である。また、光集積デバイスの小型化の観点から、フォトニック結晶導波路の他に、金属

の表面プラズモン効果を利用したプラズモニック導波路やコアと上部クラッドの高屈折率差を利用した

シリコン細線導波路など、新しい導波路構造が提案されている。本研究で開発した各種の解析手法

をこれらの新しい導波路に応用し、伝搬特性の解析を通して、新規デバイスの設計に有用な知見を

提供することは、今後の重要な課題である。

9. 研究成果の発表

学術雑誌 (18 件)

[1] D. Zhang and H. Jia, "Numerical analysis of leaky modes in two-dimensional photonic crystal

waveguides using Fourier series expansion method with perfectly matched layer," IEICE Trans.

Electron., Vol. E90-C, No. 3, pp. 613-622, Mar. 2007.

[2] A. Sharma and S. Barai, “Improved optimal variational method to analyze optical rib waveguide,”

Optics Communications, Vol. 271, No. 1, pp. 81-86, Mar. 2007.

[3] D. Bhattacharya and A. Sharma, “Split step non-paraxial finite difference method 3D scalar wave

propagation,” Optical and Quantum Electronics, Vol. 39, No. 7, pp. 623-626, May 2007.

[4] A. Sharma, D. D. Bhattacharya, and A. Agrawal, “Analytical computation of the propagation

matrix for the finite-difference split-step non-paraxial method,” Optical and Quantum

Electronics, Vol. 39, No. 10-11, pp. 865-876, Aug. 2007.

[5] F. Y. M. Chan and K. Yasumoto, “Design of wavelength tunable long-period grating couplers

based on asymmetric nonlinear dual-core fibers,” Optics Letters, Vol. 32, No. 23, pp.

3376-3378, Dec. 2007.

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[6] A. Sharma and J. P. Meunier, “On the scalar modal analysis of optical waveguides using

approximate methods,” Optics Communications, Vol. 281, No. 4, pp. 592-599, Feb. 2008.

[7] A. Kumar and T. Srivastava, “Modeling of a nanoscale rectangular hole in a real metal,” Optics

Letters, Vol. 33, No. 4, pp. 333-335, Feb. 2008.

[8] K. Yasumoto and K. Watanabe, “Analysis of discontinuities in two-dimensional photonic crystal

waveguides using Floquet modes concept,” International Journal of Microwave and Optical

Technology, vol. 3, no. 3, pp. 357-403, Aug. 2008.

[9] S. Barai and A. Sharma, “Empirical relations for the propagation characteristics of diffused

channel waveguides,” Applied Optics, Vol. 47, No. 29, pp. 5348-5353, Oct. 2008.

[10] K. Yasumoto, “Semi-analytical approach for a specific microstructured fiber,” PIERS Online, Vol.

5, No. 1, pp. 95-100, 2009.

[11] K. Watanabe and K. Yasumoto, “Accuracy improvement of the Fourier series expansion method

for Floquet-mode analysis of photonic crystal waveguides,” Progress In Electromagnetics

Research, PIER 92, pp. 209-222, 2009.

[12] F. Y. M. Chan, K. Yasumoto, and E. K. Sharma, “Analysis of cladding modes in an asymmetric

dual-core fiber,” Microwave and Optical Technology Letters, Vol. 51, No. 2, pp. 507-510, Feb.

2009.

[13] F. Y. M. Chan, K. Yasumoto, and P. Shum, “Coupled-mode analysis of Bragg- reflection filters

based on asymmetric nonlinear dual-core fibers,” Journal of Optical Socity of America A, Vol. 26,

No.3, pp. 489-496, Mar. 2009.

[14] S. Barai and A. Sharma, “Wavelet-Galerkin Solver for the Analysis of Optical Waveguides Using

Galerkin Method,” Journal of the Optical Society of America A, Vol. 26, No. 4, pp. 931-937,

April 2009.

[15] D. Bhattacharya and A. Sharma, “Three-Dimensional Finite Difference Split-Step Non-Paraxial

Beam Propagation Method: New Method for Splitting of Operators,” Applied Optics, Vol. 48, No.

10, pp. 1878-1885, April 2009.

[16] K. C. Patra, R. Singh, E. K. Sharma, and K. Yasumoto, “Analysis of transmission characteristics

of long period gratings in tapered optical fibers,” Applied Optics, Vol. 48, No. 31, pp. G95-G100,

Nov. 2009.

[17] K. Watanabe and K. Yasumoto, “Numerical Modeling of Photonic Crystal Circuits Using Fourier

Series Expansion Method based on Floquet Mode” in Microwave and Millimeter Wave

Techniques, to be prined in December 2009, IN-TECH, Vienna.

[18] V. Janidieri, K. Yasumoto, A. Sharmna, and H. Chauhan, “Modal analysis of specific

microstructured optical fibers using a model of layered cylindrical arrays of circular rods,” to be

published in IEICE Trans. Electronics, Vol. E93-C, No. 1, Jan. 2010.

国際会議の論文(査読付)(16件)

[19] H. Jia and K. Yasumoto, “Guiding modes of two-dimensional photonic crystal waveguides with a

defect chain,” Proc. of the 2006 China-Japan Joint Microwave Conference, pp. 70-73, Aug.

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119

2006.

[20] H. Jia and K. Yasumoto, “Coupled cavity waveguides of photonic crystal consisting of magnetized

ferrite medium,” Proc. of the 2006 Joint 31st International Conference on Infrared and Millimeter

Waves and 14-th International Conference on Terahertz Electronics, p. 38, Sept. 2006.

[21] H. Jia and K. Yasumoto, “Coupled cavity waveguides consisting of two-dimensional electro-

magnetic crystals formed by rectangular cylinders,” Proc. of the of 2006 International Symposium

on Antennas, Propagation and EM Theory, pp. 723-726, Oct. 2006.

[22] D. Bhattacharya and A. Sharma, “A new split-step non-paraxial finite-difference method for 3-D

wave propagation,” Proc. of the XVI International Workshop on Optical Waveguide Theory and

Numerical Modelling, p. 24, April 2007.

[23] D. Zhang, K. Yasumoto, and H. Jia, “Analysis of microcavities on two-dimensional photonic

crystals,” Proc. of the 2007 International Symposium on Antennas and Propagation, pp. 824-827,

Aug. 2007.

[24] K. Yasumoto and H. Jia, “Dispersion characteristics of coupled cavity waveguides on two-

dimensional photonic crystals,” Proc. of the International Conference on Electromagnetics in

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[25] F. Y. M. Chan and K. Yasumoto, “Design of long-period grating couplers based on asymmetric

dual-core fibres,” Proc. of the International Conference on Electromagnetics in Advanced

Applications, pp. 849-851, Sept. 2007.

[26] F. Y. M. Chan and K. Yasumoto, “Design of switchable and wavelength tuneable Bragg-reflection

filters based on grating-assisted nonlinear dual-core fibres,” Proc. of the 5th Workshop on

Fibers and Optical Passive Components, Paper No. TH2B-1, Dec. 2007.

[27] S. Barai and A. Sharma, “Emprical relations for the propagation characteristics of integrated

optical diffused channel waveguides,” Proc. of the XVII International Workshop on Optical

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[28] D. Bhattacharya and A. Sharma, “A semi-vectorial split-step non-paraxial method for wave

propagation,” Proc. of the XVII International Workshop on Optical Waveguide Theory and

Numerical Modelling, p. 24, June 2008.

[29] D. Bhattacharya and A. Sharma, “A new scheme for splitting of operators in the 3D finite

difference split-step non-paraxial method,” Proc. of the XVII International Workshop on Optical

Waveguide Theory and Numerical Modelling, p. 25, June 2008.

[30] K. Yasumoto and K. Watanabe,” Numerical modeling of two-dimensional photonic crystal circuits

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Microwave Conference, pp. 3-8, Sept. 2008.

[31] F. Y. M. Chan and K. Yasumoto, “Coupled-mode analysis of a metal-coated planar waveguide

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Conference, pp. 566-570, Sept. 2008.

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dual-core fibers,” Proc. of the IEEE PhotonicsGlobal@Singapore 2008, pp. C324-C326, Dec.

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2008.

[33] K. Yasumoto and V. Jandieri, “Directivity of radiation from a localized source embedded in

photonics crystals,” Proc. of the 2008 International Conference on Fiber Optics and Photonics,

Paper No. MC2-AI1, Dec. 2008.

[34] A. Sharma and H. Chauhan, “A new analytical model for the field of microstructure optical

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Modelling (OWTNM’09), Jena, Germany, April 2009.

フォーラム・ワークショップ等の発表論文(33件)

[35] T. Miyamoto, M. Momoda, and K. Yasumoto, “Numerical analysis on lamellar grating type 3-D

periodic optical waveguides with sinusoidal surface using Fourier series expansion method,” Proc.

of the 6-th Asia-Pacific Engineering Research Forum on Microwaves and Electromagnetic

Theory, pp. 110-116, Aug. 2006.

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Digest of the 1st Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 65-71, Dec.

2006.

[37] M. S. Shishodia and A. Sharma, “A bi-directional wave propagation method for simulation of

reflection from single and multiple discontinuities,” Digest of the 1st Research Forum of

Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting

Fully Ubiquitous Information Society, pp. 83-86, Dec. 2006.

[38] R. Singh and E. K. Sharma, “Attenuation control in long period gratings written in Erbium doped

fibers,” Digest of the 1st Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 102-105, Dec.

2006.

[39] D. Gupta and A. Kumar, “Performance evaluation of integrated-optic microring resonators for

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Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

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dominant mode in lamellar grating type 3-D periodic waveguides,” IEICE National Convention,

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[41] F. Y. M. Chan and K. Yasumoto, “Design of Grating Couplers Based on Dual-Core Fibers,”

IEICE Technical Report, OFT2007-12, May 2007.

[42] F. Y. M. Chan and K. Yasumoto, “Design of Grating Couplers Based on Dual-Core Fibers,”

Digest of the 2nd Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 84-89, July

2007.

[43] D. Bhattacharya and A. Sharma, “Non-paraxial methods for 2-D and 3-D beam propagation,”

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Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 47-51, July

2007.

[44] S. Barai and A. Sharma, “Modal analysis of integrated optical waveguides: Recent developments,”

Digest of the 2007 Japan-Indo Workshop on Microwaves, Photonics, and Communication

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Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting

Fully Ubiquitous Information Society, pp. 57-61, July 2007.

[46] A. Kapoor, G. Jain, and E. K. Sharma, “Er-LiNbO3 waveguide: simplified gain calculations for

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photonic crystal waveguides based on the Fourier modal analysis,” Digest of the 3rd Research

Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies

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[48] R. Singh, K. C. Patra, and E. K. Sharma, “Characteristics of long period grating with coupling

from the core-mode to multiple cladding modes,” Digest of the 3rd Research Forum of

Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting

Fully Ubiquitous Information Society, pp. 60-64, Dec. 2007.

[49] R. Kumar and A. Sharma, “Influence of radius to period ratio and index contrast on TE band

structure of photonic crystal waveguide,” Digest of the Indo-Japan Workshop on Recent

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[50] D. Bhattacharya and A. Sharma, “Semi-vectorial non-paraxial method for 3D beam propagation,”

Digest of the 3rd Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 101-105, Dec.

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[51] D. Gupta and A. Kumar, “A simple method for accurate sensitivity evaluation of microring

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Digest of the 4th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

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[56] A. Kapoor and E. K. Sharma, “Long period grating refractive index sensor: Optimal design for

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[57] K. C. Patra, E. K. Sharma, and K. Yasumoto, “Understanding the transmission characteristics of

long period gratings in tapered optical fibers,” Digest of the 5th Research Forum of Japan-Indo

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[58] A. Sharma and H. Chauhan, “Variational analysis of index-guiding microstructured fibers,”

Digest of the 4th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 53-57, July

2008.

[59] K. Yasumoto, K. Watanabe, and H. Jia, “Analysis of two-dimensional photonic crystal circuits

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[60] D. Bhattacharya and A. Sharma, “Non-paraxial propagation in 3D: New method of splitting of

operators,” Digest of the 2008 Japan-Indo Workshop on Microwaves, Photonics, and

Communication Systems, Paper No. WS-D1, July 2008.

[61] K. Yasumoto, “Theoretical approach to electromagnetics of photonic crystals – Lattice Sums

technique –,” International Workshop on Progress in Electromagnetic Theory and Microwave

Technology, University of Electronic Science and Technology of China, Oct. 2008.

[62] K. Yasumoto and V. Jandieri, “Directivity of radiation from a localized source placed in photonic

crystals,” IEICE Technical Report, OPE2008-98, pp. 47-51, Oct. 2008.

[63] K. Yasumoto, “Modeling and analysis of scattering, guidance and radiation in photonic crystals,”

Proceedings of the Workshop on “Physics and Technology of All Optical Communication

Components and Devices”, pp. 167-176, Oct. 2008.

[64] K. Yasumoto and A. Sharma, “Semi-analytical approach for a specific microstructured fiber

formed by layered cylindrical arrays of circular rods,” Digest of the 5th Research Forum of

Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting

Fully Ubiquitous Information Society, pp. 63-69, Dec. 2008.

[65] A. Sharma and H. Chauhan, “Splice losses in microstructured optical fibers,” Digest of the 5th

Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication

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123

Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 59-62, Dec. 2008.

[66] T. Srivastava and A. Kumar, “Theoretical analysis of single and coupled dielectric loaded surface

plasmon polariton waveguides,” Digest of the 5th Research Forum of Japan-Indo Collaboration

Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information

Society, pp. 70-76, Dec. 2008.

[67] A. Kumar, “Single mode-multimode-single mode optic devices,” Digest of the 2008 Japan-Indo

Workshop on Microwaves, Photonics, and Communication Systems, Paper No. WS-P1, July

2008.

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124

(5)サブテーマ5

1.研究題目

光通信システムにおけるフォトニック結晶ファイバの高度利用のための基盤技術

2.研究機関

北海道大学北海道大学大学院情報科学研究科

Indian Institute of Technology (IIT) Delhi

3.研究者

小柴正則、齊藤晋聖 (北海道大学)

Bishnu Pal、Krishna Thyagarajan、Arun Kumar、Ravendra Varshney (IIT Delhi)

4.研究の目的

フォトニック結晶ファイバ(PCF:Photonic Crystal Fiber)は、エンドレス単一モード伝送、ハイパワー

伝送、高非線形性、サイズ可変実効コア断面積、スーパーコンティニューム光発生、広帯域分散制御

性といった特異な特徴を有しており、内外ともに活発な研究が続けられている。PCF は、その導波原

理から、大きく二種類に大別される。一つは、全反射によって光を導波させる屈折率導波型 PCF であ

り、ま一つは、フォトニックバンドギャップ効果によって光を低屈折率コアに閉じ込め、導波させるフォト

ニックバンドギャップファイバである。本研究は、光通信システムにおけるフォトニック結晶ファイバの高

度利用のための基盤技術を確立することを目的としている。具体的には、まず、フルベクトル有限要

素 法 ( FV-FEM : Full-Vectorial Finite Element Method ) と 遺 伝 的 ア ル ゴ リ ズ ム ( GA : Genetic

Algorithm)に基づく数値シミュレーションツールを用いたフォトニック結晶ファイバの線形ならびに非

線形領域における特性評価、 適化、設計のための強力な計算手法を開発する。続いて、フォトニッ

ク結晶ファイバのパッシブならびにアクティブ領域における広帯域特性、分散制御性、高非線形性に

ついて、また、フォトニック結晶ファイバ型ラマン増幅器の利得平坦化のためのポンプ光の波長配置

ならびにパワー分布の 適条件について詳細に研究調査を進める。さらに、エルビウム、イッテルビウ

ム、あるいはツリウムを添加した分散補償機能を有するフォトニック結晶ファイバ増幅器ならびにレー

ザの 適設計法を開発する。

5.期待される成果

PCF は、その設計の自由度が大きく、これまでにない先進的な光部品実現の可能性を秘めている。

その特異な性質と優れた性能のために、光の導波特性に特定の機能を柔軟に導入できる。本研究に

よって、PCF の物理特性の理解が深まり、フォトニック結晶技術に基づく種々のファイバ型デバイスの

新しい応用分野が広がるものと期待される。パッシブならびにアクティブ光モジュールは、情報通信技

術(ICT:Information and Communication Technology)分野における多くの光システムを構成するため

の基盤となるものである。本研究による成果については、国際的に評価の高い学術誌に論文として公

表するとともに、インパクトの高い国際会議にも積極的に参加し、論文発表を通じて研究成果を社会

に還元する。本研究を推進することによって、光通信システムにおける PCF の高度利用のための基盤

技術の確立に先導的役割を果たしていく.

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6.研究の方法

PCF の線形ならびに非線形領域における特性評価, 適化、設計のための強力な計算手法を開

発するために,フルベクトル有限要素法(FV-FEM:Full-Vectorial Finite Element Method)と遺伝的

アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)に基づく数値シミュレーションツールを導入する。この GA を搭

載した高精度FV-FEMソルバーを用いて、PCFの 適構造パラメータを探索する。続いて、PCFのパ

ッシブならびにアクティブ領域における広帯域特性、分散制御性、高非線形性について、また,PCF

型ラマン増幅器の利得平坦化のためのポンプ光の波長配置ならびにパワー分布の 適条件につい

て詳細に研究調査を進める。さらに、エルビウム,イッテルビウム,あるいはツリウムを添加した分散補

償機能を有するフォトニック結晶ファイバ増幅器ならびにレーザの 適設計法を開発する。なお、実

験的検証を行うために、ファイバメーカーとの連携を図る.

7.主要な成果

7.1 北海道大学と IIT Delhi の共同成果

7.1.1 S バンド動作エルビウム添加二重コア単一モードフォトニック結晶ファイバの設計[34][74][80]

大きなコア断面積を有し、曲げに強く、S バンドで動作するエルビウム添加二重コア単一モードフォ

トニック結晶ファイバ(PCF:Photonic Crystal Fiber)増幅器の 適設計を行った。この増幅器では、増

幅自然放出(ASE:Amplified Spontaneous Emission)が、位相整合波長(PMW:Phase Matching

Wavelength)と呼ばれる波長よりも長波長側で抑圧されており、ポンプ波長 980 nm におけるラマン利

得係数も非常に小さくなっている。数値シミュレーションの結果、ファイバ長 7.2 m で 50 dB 以上の利

得が得られ、平均利得も、帯域 70 nm にわたって 27 dB が得られることを明らかにしている。

(A) ファイバの設計

図-1 は、二重コア PCF の断面構造を示している。ファイバの構造パラメータは、空孔直径 d、空孔

ピッチΛ、空孔リング数 N である。背景媒質はシリカであり、その屈折率の波長依存性については、セ

ルマイヤーの分散式を数値シミュレーションに取り入れることによって考慮している。エルビウムイオン

は中心コアの半径Λ/2 の範囲に添加されている。クラッド領域の 2 リング目、3 リング目、あるいは 4 リ

ング目の空孔を小さくすることによって、リングコアを形成している。このリングコア内の空孔直径 d’’ を

適切に設定することによって、中心コアとリングコアを伝搬するモードの実効屈折率を、特定の波長

PMW で一致させることができる。この PMW を境にして、基本スーパーモードの光パワーは、トンネル

効果によってリングコアに移行する。リングコア領域にはエルビウムが添加されていないので、PMW よ

りも短波長側ではすべての信号が増幅され、PMW よりも長波長側ではすべての信号が抑圧される。

中心コアとリングコアとの位相整合は、ある特定の空孔直径 d’’ に対して生じる。この d’’ の値を大き

くすると、リングコアの実効屈折率は小さくなり、PMW は短波長側にシフトする。一方、d’’ の値を小さ

くすると、リングコアの実効屈折率は大きくなり、PMW は長波長側にシフトする。したがって、PCW の

構造パラメータを適切に設定することによって、1.525 μm よりも短波長領域で PMW が生じるようにフ

ァイバを設計することができる。これによって、1.53 μm よりも長波長領域における信号増幅を回避で

きることになる。数値シミュレーションの結果、4 リング目をリングコアとし、d/Λ = 0.45、d’/Λ = 0.122、Λ

= 5.0 μm とすることによって、直線ファイバの PMW がおよそ 1.52 μm となることが明らかになった。な

お、エルビウムイオンと信号光との重なりの程度を重畳ファクタ Γ で定義することにする。

図-2 は、フルベクトル有限要素法によって算出された直線 PCF に対する重畳ファクタ Γ の波長依

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存性を示したものである。ここでは、リングコアの位置を3通り考え、2リング目をリングコアとした場合を

リングコア(2)、3 リング目をリングコアとした場合をリングコア(3)、4リング目をリングコアとした場合をリン

グコア(4)としている。リングコア(2)に対する重畳ファクタは直線的に小さくなっており、リングコア(3)に

対する重畳ファクタは緩やかに小さくなっている。リングコア(2)、(3)に対する重畳ファクタは、波長

1.53 μm において、それぞれ 31%、17.5%である。リングコア(4)に対する重畳ファクタは、波長 1.51 μm まで 71%を維持しているが、波長が PMW に近づくと小さくなり始め、波長 1.53 μm では 2%以下に

まで急激に小さくなり、さらに波長が長くなるとほとんど零になっている。このことは,基本スーパーモ

ードの光パワーの 98%以上がリングコア(4)に移行していることを意味している。

図-1. エルビウム添加 PCF の断面構造. ここに d は空孔直径,

d’’はリングコア領域の空孔直径, Λは空孔ピッチである.

図-2 には、3 種類のリングコアに対する波長 1.53μm でのモード分布(電界の x 成分)も示してある。

4 リング目にリングコアを形成したとき、光はこのリングコアによく閉じ込められている。リングコアを中心

図-2. リングコアの位置を 3 通り, すなわち, 2 リング目(一点鎖線), 3 リング目(破線), 4 リング目

(実線)とした場合の重畳ファクタの波長依存性. リングコア(4)の場合, 波長が PMW よりも長くな

ると重畳ファクタは急激に小さくなり, ASE を抑圧できることを示している.

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コアからさらに遠ざけることもできるが、こうすると曲げに敏感になり、d’ の値の精密な制御が必要にな

る。実効コア断面積を大きくすると、誘導ラマン散乱(SRS:stimulated Raman scattering)を引き起こす

ポンプ光パワーの閾値が高くなるので、ポンプ光波長における実効コア断面積が大きくなるようにファ

イバ設計を行うと、SRS を抑圧できることになる。数値シミュレーションの結果、d/Λ = 0.45,d’/Λ = 0.12,

N = 7,Λ = 5.0μm としたPCFのラマン利得係数が、ポンプ光波長980nmにおいて1.55×10−4 W−1m−1

となることが明らかになった。次に、リングコアを 4 リング目に形成することを前提として、高利得を維持

したまま、曲げに強いファイバの設計を行うこととする。

(B) 曲げに強いファイバの設計

従来、S バンドで動作するエルビウム添加ファイバ増幅器の分布 ASE を抑圧する場合、ファイバの

曲げ損失がよく利用されてきた。しかし、ファイバを曲げ半径 3cm、あるいはそれ以下で巻くことは一

般に難しい。一方、PCF は、幾何学的なパラメータを調整することによって伝搬損失を適宜変えること

ができる。実際、曲げ半径 Rb を 5 cm 以下としても、曲げ耐性に優れたファイバを設計できる。ここでは、

S バンド全体で信号増幅が可能で、ASE を抑圧した曲げに強いファイバの設計を行うことにする。既に

述べたように、4 リング目にリングコアを配置し、空孔ピッチを大きくすることによって、S バンド全域にわ

たって大きな重畳ファクタを実現し、波長 1.53μm 以上では重畳ファクタを 2%以下に小さくすることが

できるが、こうしたファイバは曲げに弱い。エルビウム添加 PCF(EDPCF)を 50cm という大きな曲げ半

径で曲げると、PMW は短波長側にシフトする。したがって、この問題は、リングコア領域における空孔

の大きさを変えることによって解決できる。リングコア領域における空孔直径を大きくすると、PMWは長

波長側にシフトするので、リングコア領域における空孔直径を大きくし、PMW と重畳ファクタの計算を

行うことにする。これ以外のファイバパラメータはこれまでと同じ、すなわち、d/Λ = 0.45、N=7、Λ = 5μm

とし、d’/Λ = 0.1424、0.142 とすると、曲げ半径を 5cm とした場合の PMW は、それぞれ 1.525μm、

1.51μm となった。

図-3 は、3 種類のファイバ、すなわち、直線ファイバ(実線)、前述した二つの異なる PMW に対応す

る空孔直径 d’を有する曲げ半径 5cm のファイバに対する重畳ファクタを示したものである。ファイバを

曲げると、重畳ファクタは小さくなり、空孔直径 d’ = 0.71μm,0.712μm に対して、それぞれ短波長側、

長波長側にシフトしている。空孔直径 d’ = 0.712μm の場合(PMW はおよそ 1.525 μm、破線)、重畳フ

ァクタは、黒丸で示してあるように、波長 1.53μm で 30%以上になっている。一方、d’ = 0.71μm の場合

(PMW はおよそ 1.52μm)、重畳ファクタは 1%以下である。こうした 30%という大きな重畳ファクタは、

空孔リング数を減らし、ファイバの漏れ損失を増大させることによって補償することができる。実際、リン

グ数を6とし、ファイバを曲げていない場合と曲げた場合の漏れ損失を評価し、波長1.53μm 以上で、

漏れ損失が増大することを確認した。ただし、損失のレベルは、それほど大きくはない。したがって、

漏れ損失が増大するように、さらに空孔リング数を減らすか、PMW を 1.52μm 以下とし、ファイバを曲

げることによって光パワーの 99%以上がリングコアに移行するように設計することが考えられる。

(C) 利得の解析

後に、S バンドで動作するように設計された EDPCF 増幅器(EDPCFA)の利得特性を、ファイバを

曲げていない場合と曲げた場合について、エルビウム添加ファイバ増幅器に対する通常のレート方程

式を解いて調べることにする。S バンド EDPCFA の数値シミュレーションを行うために、エルビウムイオ

ン濃度を 1.5×1025 m−3、入力信号光パワーを −40 dBm/ch とし、波長 980nm、光パワー100 mWのポンプ光を信号光と同じ方向に伝搬させるものとする。また、利得スペクトルの計算においては、フ

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ァイバの固有の損失を無視し、添加領域のホストガラスに Er-Al2O3-SiO2 を想定するとともに、こうした

ガラスの放出ならびに吸収断面積を考慮する。

ファイバ増幅器の長さを決定するために、d/Λ = 0.45、d’/Λ = 0.122、N = 7,Λ = 5.0μm とした直線

PCF を取り上げ、ポンプ光を一つ、信号光を一つ(波長 1.52 μm)とし、ASE がある場合とない場合に

ついて考える。ファイバ長 7.2m の場合、ピーク利得は 56 dB であり、ポンプ光パワーはポンプ光の固

有の閾値 1.4 mW 近くにまで低下する。次に、ファイバ長を 7.2 m に固定し、前述した異なる EDPCF

構造に対する利得スペクトルと ASE スペクトルを計算する。このとき、信号チャネル数を 15 とし、これら

は波長 1.46μm から 1.53μm までの範囲に波長間隔 5 nm で配置されているものとする。また、ASE

波長数は 101 とし、これらは、波長 1.45μm から 1.55μm までの範囲に、波長間隔 1 nm(周波数間

隔 125 GHz)で配置されているものとする。数値シミュレーションには、前方ならびに後方に伝搬する

ASE 波が考慮されている。70 nm の広い S バンド(1.46 -1.53μm)全域にわたる平均利得は 27 dB、

波長 1.52μm における正味のピーク利得は 55.1 dB になっている。

図-3. 曲げていない場合(実線)と曲げた場合(破線と一点鎖線)の EDPCF に対する重畳

ファクタの波長依存性. 空孔直径 d’ の値は, 重畳ファクタの変化が異なるような二つの近

接した PMW を与えるように調整されている.

図-4. 曲げ半径 5 cm で曲げた長さ 7.2 m の EDPCF の利得スペクトル。ここに、(i) 実

線は、d/Λ = 0.45、d’/Λ = 0.142、N = 7 の場合、(ii) 一点鎖線は、d/Λ = 0.45、d’/Λ =

0.1424、N = 7 の場合、(iii) 破線は、d/Λ = 0.45、d’/Λ = 0.1424、N = 6 の場合の結果で

あり、前方ならびに後方に伝搬する ASE 波長数は 101 である。正味 50 dB 以上のピー

ク利得が得られている。

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さらに、曲げ半径 5 cm で曲げた EDPCF の利得スペクトルと ASE スペクトルを、それぞれ図-4、図

-5に示す。曲げを加えた3種類のEDPCFの正味の利得は、すべて50 dBになっている。実線は、d/Λ

= 0.45,d’/ Λ = 0.142,N = 7 とした場合の結果であり、対応する重畳ファクタのスペクトル変化は図-3

に示してある。図-4 から、正味の利得は、波長 1.53μm において 2 dB 以下まで小さくなっており、1.53

μm より長い波長領域においては利得が得られないことがわかる。このとき、重畳ファクタは波長 1.51

μm 以上で小さくなるので、ピーク利得の中心波長は 1.52 μm ではなく、1.51μm になっている。いま、

d/Λ = 0.45,d’/Λ = 0.1424,N = 7 とした EDPCF を考え、d’ の値を、PMW が 1.525μm となるように調

整すると、破線で示してあるように、波長 1.53μm における利得は 40 dB になる。この波長に対応する

重畳ファクタはおよそ30%であり、波長1.54μm では2%以下に小さくなり、波長1.53μm 以上の信号に

対して高利得増幅が期待される。しかし、一点鎖線で示してあるように、ファイバの漏れ損失を増強す

ることによって、この利得レベルを 30 dB 以下に低減することができる。ただし、この利得はかなり高い

ものであり、空孔リング数を減らすか、あるいは図-4 に実線で示すような別個のファイバ設計を行う必

要がある。前方 ASE パワーは波長 1.525μm でほとんど零になり、ASE 雑音を完全に抑圧できると予

測される。

ここでは、大きな実効コア断面積を有する二重コア単一モード EDPCF の設計を行った。曲げに強

い EDPCF を実現するための設計指針を、重畳ファクタならびに利得特性とともに示した。曲げ半径 5

cm で曲げた EDPCF において、正味のファイバ利得 50 dB 以上が期待できる。

7.2 北海道大学の成果

7.2.1 非線形フォトニック結晶ファイバの分散制御[3]

フォトニック結晶ファイバ(PCF:Photonic Crystal Fiber)は、その強い導波路分散のために、シリカ

の材料分散による極限波長 1.3μm よりもはるかに短い零分散波長 λ0 を実現でき、非線形光学に新

たな展開をもたらすものと期待されている。導波路分散が強いために、空孔直径 d、空孔ピッチΛ、空

孔リング数 N を調整することによって、ある程度の多モード動作はあるとしても、零分散波長を可視域

にまで広げることができる。ここでは、零分散波長 λ0、カットオフ波長 λc、漏れ損失といった諸量と構

図-5. 曲げ半径 5 cm で曲げた長さ 7.2 m の EDPCF の ASE スペクトル. (i) 実線は, d/Λ = 0.45, d’/Λ = 0.142, N = 7 の場合, (ii) 一点鎖線は, d/Λ = 0.45, d’/Λ = 0.1424, N = 7 の場

合, (iii) 破線は, d/Λ = 0.45, d’/Λ = 0.1424, N = 6 の場在の結果である.

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造パラメータ d,Λ,N との間の関係を詳細に研究調査する。結果として、空孔直径を d ~ 500 nm、

空孔ピッチをΛ ∼ 700 nm とすると,零分散波長はλ0 ~ 700 nmになること,また、この零分散波長よりも

長波長側では単一モード動作することを明らかにしている。

(A) 材料分散と導波路分散との競合

図-6 に示すような PCF の線形ダイナミクスや応答は、一般に、時間的調和モードの枠内で調べるこ

とができる。マクスウェルの方程式から導出される波動方程式を解くことによって、波束の時空間線形

ダイナミクスに関するすべての情報を含んだ分散関係式が与えられ、これは非線形ダイナミクスを研

究するための重要な初期データとなる。

パルス波形のダイナミクスと発展は、多くの場合、いわゆる分散パラメータによって評価される。光フ

ァイバの分野においては、群速度分散の評価に、通常、ps nm−1km−1 という単位で表される分散パ

ラメータ D が用いられる。群速度分散があると、パルス中の異なる周波数成分は異なる速度で伝搬す

ることになるので、パルスは D の符号によって圧縮したり、広がったりする。このため、D (λ0) = 0 のよう

に定義される零分散波長 λ0 は、一般に、パルスダイナミクスと関係し、とりわけスーパーコンティニュ

ーム光発生と密接に関係する。零分散波長に近い高強度の超短ナノ秒からフェムト秒パルスでファイ

バをポンピングすると、長時間あるいは長距離にわたって、その高強度が維持されるので、非線形相

互作用が著しく大きくなる。

有限な群速度分散は、ホスト媒質の分散特性のみならず、角周波数 ω に依存する屈折率 n(ω) の

大きな空間変化によって引き起こされる光の強い横方向局在にも起因するものである。シリカの屈折

率の周波数変化はそれほど大きくはない(少なくとも透明領域においては)ので、屈折率の周波数依

存性を無視して、分散パラメータに対する純粋な導波路の寄与分 Dw を定義することができる。屈折

率の周波数依存性を無視することによって、波動方程式はスケール不変となる。このことは、ある一つ

の幾何学的大きさに対する結果がわかっていれば、スケーリング則によって、異なる大きさに対する結

果を容易に導けることを意味するので、理論的な立場からすると、大変便利なものである。誘電体そ

れ自身に対しては、単純な均質空間の分散関係から材料分散 Dm を定義すると、直感的にもわかるよ

うに、分散パラメータは二種類の分散の単純な和として与えられ、実際、D = Dw + Dm とする近似が

広く用いられている。この近似は零分散特性を定性的に理解するのに有用であるが、定量的に正確

な結果を得るには、波動方程式の自己無撞着な解や精密な摂動理論が必要になる。ここでは、波動

方程式の完全に自己無撞着な解を用いることにする。なお、屈折率については、空孔領域に対して、

周波数無依存の値 n = 1 を用い、シリカに対しては、通常のセルマイヤーの分散式を用いる。

図-7は、PCFの典型的な分散特性を示したものである。波長λ ~ 1.3 μm以下におけるシリカの強い

負の材料分散 Dm は、通常のファイバでは導波路分散 Dw の寄与が小さいために、λ ≤ 1.3 μm にお

いて、全分散を負とする傾向にある。しかしながら、PCF の場合は、これとは対照的で、空孔とシリカと

からなるクラッドが導波モードに強い正の導波路分散 Dw を与えるので、零分散波長 λ0 を 1.3 μm よ

りもはるかに短く、可視域にまでシフトさせる傾向にある。

導波路分散は、空孔直径 d と空孔ピッチΛ の値を変えると大きく変わるので、材料分散が固定され

ていれば、導波路分散と材料分散との兼合いによって、短波長帯で零分散となるようなファイバ設計

が可能となる。

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(B) 空気中におけるシリカ片-究極的な極限

零分散波長は、空孔直径を大きくするか、あるいは空孔ピッチを小さくすることによって短波長側に

移動させることができる。いま、d/Λ → 1 の極限を考えると、空気によって周囲を囲まれた一つのシリカ

片が残ることになる。こうした極限の問題はこれまで議論されてきたところであり、Knight ら(IEEE

Photonics Technology Letters, Vol. 12, No. 7, pp. 807-809, July 2000)によって報告された零分散波

長に関する結果を、図-8 に再掲する。一般に、シリカ片は、零分散波長を一つもつ特殊な場合を除

いて、二つの零分散波長をもつか、あるいは全くもたない。PCF は、全体として、これと同じパターンに

なるので、零分散波長を二つもっていることは、スーパーコンティニューム光発生に興味ある応用をも

たらすことになる。図-8 の結果は、シリカ系 PCF の究極的な極限である 500 nm にまで、零分散波長

を移動させることができることを示している。ただし、破線で示しているように、空気とシリカとの大きな

図-7. 左軸:構造パラメータ d/Λ = 0.7, Λ = 700 nm, N = 10 のPCFに対する分散パラメータの

波長依存性. 実線は, 波動方程式を自己無撞着に数値解析して算出された全分散を示しており,

破線は, 導波路分散と材料分散の和として与えられる近似的な全分散を示している. 点線は, 純

粋な導波路分散を示しており, 一点鎖線は, シリカの材料分散を示している, 右軸:基本モードと

第1高次モードに対する漏れ損失の波長依存性, 高次モードの漏れ損失は, 動作波長に対して

急峻に増加しており, このため, 高次モードのカットオフ波長は漏れ損失によって支配される.

Wavelength [ μm]

Dis

pers

ion

[ps/

nm/k

m]

Lea

kage

loss

[dB

/km

]high−order mode

fundamental mode

10−3

1

103

106

−1000

−800

−600

−400

−200

0

0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6

200

図-6. 三角格子状に周期配列された空孔から一つの空孔を取り除いて形成される欠陥

部をコアとし, その周囲のフォトニック結晶クラッド領域にN = 4の空孔リング数を有する

PCFの断面. フォトニック結晶クラッド領域における空孔の半径はd , 周期はΛである.

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屈折率差は、一般に、零分散波長における単一モード動作を妨げることになる。そこで、次に、PCF

のフォトニック結晶クラッドの概念がこうした問題を回避するのに、どの程度利用できるかについて検

討する。

(C) モードフィルタとしてのフォトニック結晶クラッド

既に、Birks ら(Optics Letters, Vol. 22, No. 13, pp. 961-963, July 1997)によって明らかにされてい

るように、PCF のフォトニック結晶クラッドは、高次モードがコア領域に局在するのを妨げるモードフィ

ルタとしての役割をもっており、こうしたエンドレス単一モード特性と呼ばれる現象は、その後、詳細に

研究されてきた。 近、Mortensen (Optics Letters, Vol. 30, No. 12, pp. 1455-1457, June 2002)によ

って報告されているように、エンドレス単一モード特性は純粋に幾何学的効果によるものであり、ファイ

バ媒質の屈折率によらず、d/Λ ≤ 0.42 の構造に対して、エンドレス単一モード特性が得られる。したが

って、フォトニック結晶クラッドは導波モードの数を制限するように働き、同時に、導波モードは、空気

中のシリカ片に対して観測される材料分散を、ある程度感じることになる。

零分散波長と空孔ピッチとの関係は、無限に大きいフォトニック結晶クラッドを有する PCF に対して、

Lægsgaard ら(Journal of Optical Society of America B, Vol. 20, No. 10, pp. 2037-2045, Oct. 2003)

によって調べられ、定性的には、図-8 と同様な結果が得られることが明らかにされている。ここでは、

有限なフォトニック結晶クラッドを有する PCF に対する零分散波長と空孔ピッチとの関係を調査する。

特に、コア領域を取り囲む空孔リング数を変えたことによる効果を調べるとともに、可視域に零分散波

長をもつ単一モードPCFの可能性を探索するために、カットオフ特性と漏れ損失特性についても調べ

ることにする。

この調査を行うに当っては、波動方程式を有限要素法に基づいて数値的に解いており、計算法の

詳細については,Koshiba (IEICE Transactions on Electronics, Vol. E85-C, No. 4, pp. 881-888, Apr.

2002)によって報告されている。また、カットオフ波長や漏れ損失の評価については、Saitohら

(Optics Express, Vol. 13, No. 26, pp. 10833-10839, Dec. 2005)、Koshibaら(Optics Communications,

λ 0[μ

m]

m][μFiber diameter

0.5

1.0

1.5

2.0

0.5 1.0 1.5 2.0

図-8. 空気中におけるシリカ片に対する零分散波長とファイバ直径との関係. 破線はカット

オフ波長を示しており, 青色で塗りつぶした領域は多モード動作領域を表している.

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Vol. 253, No. 1-3, pp. 95-98, Sept. 2005)の論文、さらには、これらの論文の参考文献による。

λ 0[μ

m]

d /Λ =0.90 0.350.40

0.450.50

0.55

1.0

1.5

2.0

0.5 1.0 1.5 2.00.5

0.600.65

0.700.80

λ 0[μ

m]

d /Λ =0.90 0.350.40

0.450.50

0.55

1.0

1.5

2.0

0.5 1.0 1.5 2.00.5

0.600.65

0.700.80

Λ [μm]

λ 0[μ

m]

d /Λ =0.90 0.350.40

0.450.50

0.55

1.0

1.5

2.0

0.5 1.0 1.5 2.00.5

0.600.65

0.700.80

a

b

c

図-9. 規格化空孔直径 d/Λ の値を変えた場合の零分散波長 λ0 と空孔ピッ

チΛ との関係. パネル(a), (b), (c) における空孔リング数は, それぞれ N = 6,

8, 10 である. 漏れ損失が 0.1 dB km−1 よりも大きい領域は赤色で塗りつぶし

てある. また, 単一モード領域は青色で塗りつぶしてある.

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広範囲にわたる数値シミュレーションの結果を、図-9 にまとめて示す。まず、第一に、零分散波長と

空孔ピッチとの関係は、空気中におけるシリカ片に対する図-8 に示した結果と定性的に似ていること

がわかる。特に、空孔リング数 N = 10 に対する結果は,Lægsgaard ら(Journal of Optical Society of

America B, Vol. 20, No. 10, pp. 2037-2045, Oct. 2003)によって報告された結果と完全に一致してい

る。一方、フォトニック結晶クラッドの空間的広がり、すなわち、N × Λ は、漏れ損失が 0.1 dB km−1より

も大きくなる赤色で塗りつぶした領域からもわかるように、漏れ損失に大きな影響を及ぼす。一方、リン

グ数 N は、カットオフ波長にはほとんど影響しない。これは、カットオフとモードフィルタリングは、フォト

ニック結晶クラッドの空間的広がり N × Λ よりも、空孔間のシリカ領域の幅、すなわち、Λ-d の値に支

配されるためである。

さて、規格化空孔直径を d/Λ ~ 0.7 とすると、波長 λ ~ 700 nm まで一つの零分散波長をもち、それ

より長波長側では単一モード PCF を実現できることがわかる。これは、円形空孔を三角格子状に配列

したフォトニック結晶クラッドを有するシリカ系 PCF の究極的な極限であると考えられる。こうした結果

は、例えば、Knight ら(IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 12, No. 7, pp. 807-809, July 2000)

によって実験的に明らかにされている。実際には、Folkenberg ら(Optics Letters, Vol. 28, No. 20, pp.

1882-1884, Oct. 2003)によって報告されているように、現実の PCF のカットオフ波長は、理想的なフ

ァイバよりも少し短くなるので、ここで述べた極限は、若干、可視域に移動する。こうした傾向は、おそ

らく、現実の PCF には散乱損失が存在し、これによってフォトニック結晶クラッドに弱いながらも導波さ

れる高次モードが抑圧されるためであると考えられる。零分散波長を、さらに可視域にまで移動させる

には、高次モードを導波しやすくするか、あるいは、クラッドのあらゆるところで空孔直径を変えるという、

より複雑な設計が必要となる。

ここでは、カットオフ波長と漏れ損失とに重点を置いて、シリカ系 PCF における零分散波長 λ0 につ

いて研究調査を行った。空孔直径 d と空孔ピッチΛ とを広範囲にわたって変化させ、 も短い零分散

波長 λ0 ~ 700 nm を実現し、これより長波長側では単一モード動作となるような空孔直径と空孔ピッチ

の値を特定した。ここで示した零分散波長マップは、可視域でのスーパーコンティニューム光発生に

向けて、より短い零分散波長を有する非線形 PCF 設計のための重要な初期データになるものと期待

される。

7.3 IIT Delhi の成果

分散補償、分散 小化、超高速伝送への応用を念頭に置いて、新しいブラッグファイバを提案し、

その理論解析を行った。また、光波が周期的な微細構造体を伝搬するときの構造乱れの効果に関す

る研究調査を行った。

(A) ソリッドコアブラッグファイバにおける非線形パルス伝搬

1978 年に初めて提案されたブラッグファイバは、その内部に 1 次元フォトニックバンド構造を構成し

ており、短波長領域での零分散、分散補償、メトロ系ファイバ等、種々の応用が提案されてきた。しか

しながら、ブラッグファイバを伝搬する非線形パルスの振る舞いには、まだ未解明の部分が多い。ここ

では、ソリッドコアフォトニックバンドギャップブラッグファイバを伝搬する非線形パルスの詳細な理論解

析の結果を示す。具体的には、非線形領域におけるソリッドコアブラッグファイバを伝搬する高強度短

パルスに与える各種パルスパラメータやファイバ特性の影響について研究調査を行った。実際に、ス

プリットステップ法を用いて非線形シュレディンガー方程式を解き、分散低減ブラッグファイバ(DDBF)

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中のスーパーコンティニューム光発生を理論的に評価した。その結果の1つを図-10 に示す。

3.5 次ソリトンに対応するハイパボリックセカント型パルスを長さ 0.7 m の DDBF 内を伝搬させること

によって、 142 nm の帯域にわたって変動量が 15 dB 以下で、25 dB 帯域幅が約 150 nm のパルス

を発生させることができる。パルス伝搬のダイナミクスに関する解析結果から、パルスは、 初、異常

分散領域を伝搬するので、群速度(GVD)効果と自己位相変調(SPM)効果が支配的であることがわ

かる。その後、高次ソリトンが分解し始め、個々の基本ソリトンの周波数成分が伝搬パルスの周波数ス

ペクトルを広げることになる。同時に、分散波が発生し、それが原パルスから離れて移動し始め、エネ

ルギーの散逸を引き起こす。全パルスが正常分散領域に入ると、パルスは崩壊し、パルスの広がりは

止まる。平坦で広帯域なスーパーコンティニューム光を得るための DDBF の 適な長さは,ソリトン周

期を z0、ソリトン次数を N として、z0/(N‐1)よりも長いことが必要である。DDBF の長さが適当でないと、

出力パルスの周波数スペクトルの平坦性が損なわれる.ここで提案したソリッドコアブラッグファイバは

比較的大きい実効モード面積(~55 µm2)を有しているために、スーパーコンティニューム光源のよう

なデバイス実現のための非線形パルス伝搬を想定した場合、典型的な実効モード面積が 1~2 µm2

程度のフォトニック結晶ファイバに比べて、光源からのパワー結合が容易になる。また、このソリッドコ

アブラッグファイバは、内付け化学的気相堆積法(MCVD)といった既に確立されたファイバ製造技術

に適合していることにも注意すべきである。このため、ブラッグファイバ(分散低減ブラッグファイバ)は、

サブマイクロメートル波長領域における多様な分散特性の影響下で非線形光学効果を観測するため

の経済的にも魅力的な技術プラットフォームになるものと期待される。

(B) 分散補償のための大きな負分散を呈する全固体チャープクラッドブラッグファイバの設計

分散補償ファイバ(DCF)としての利用が可能な全固体分散補償ブラッグファイバ(DCBF)として、

周囲をチャープクラッド層によって囲まれた高屈折率コアからなる新型ファイバ(図-11)を提案し、そ

の設計を行った。Cバンドの波長1550 nmで、約-6000 ps/(km・nm) の大きな負分散が得られた。

また、ブラッグファイバのLバンドDCFとしての可能性に関する検討を行った(図-12)。さらに、効果的

な分散補償を行うため、市販のファイバの分散スロープと整合させるように、ここで提案したファイバの

適構造についても検討した。

(C) 超広帯域短パルス伝搬のための新型チャープクラッドブラッグファイバ

新しいファイバ構造として、ブラッグファイバと同様な全固体フォトニックバンドギャップ(PBG)ファイ

バを初めて報告した。ここでは、全固体型で、再現可能な微細構造ファイバ(MOF)の作製を念頭に

置いて、材料をソフトガラスとし、クラッドの屈折率が線形チャープしたファイバ設計を行った。このブラ

ッグファイバのようなチャープ構造を有するファイバ(CBLF)は、超広帯域伝送が可能であり(図-13)、

動作波長帯にわたって分散のレベルを低減できる(図-14)。ここで示した結果は、バンドギャップファ

イバの設計に有用であり、短パルス光伝搬、ファイバレーザ、ブラッグファイバ型デバイスのための特

殊ファイバの設計にも応用できると期待される。

(D) 異なる入力配置で乱れがある円筒状媒質内の光閉じ込め

入力ビームの形や大きさが、対称性に乱れがある円筒状媒質内の光の局在状態に与える影響に

ついて研究調査を行った。数値解析の結果から、光局在は入力ビームの形には依存しないこと、また、

乱れのある構造中の局在状態が導波路内を伝搬するような振る舞いを示すことを明らかにした(図

-15~図-17)。ここで示した結果は、作製過程で残留乱れが避けられない微細構造ファイバの応用に

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役立つものと期待される。さらに、入力ビームの大きさは、局在状態において、その強度を増強するの

で、こうした特徴は、ランダムレーザのような光デバイスの実現にも利用できるものである。

図-10. 3 種類の異なる長さを有する DDBF に異なる次数のソリトンパルスを

入力した場合の距離 z0/(N −1) における周波数スペクトル. 半値全幅は,

FWHM = 100 fs であり, また, ソリトン周期は, z0 = 1.32 m である.

1580 1585 1590 1595 1600 1605 1610

-9000

-8000

-7000

-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

Dis

pers

ion

(ps/

km-n

m)

Operating wavelength (nm)

図-12. EDFA の L バンドにおける分散の振る舞い.

Radial coordinate ( r )

Ref

ract

ive

inde

x

図-11. 提案した DCBF の屈折率分布.

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0 .8 1 .0 1 .2 1 .4 1 .6 1 .8 2 .0 2 .2

0

5

10

15

20

25

30

Con

finem

ent L

oss

(dB

/km

)

W aveleng th (m icron s)

B ra g g f ib e r C B L F

1540 1560 1580 1600 16206.0

6.5

7.0

7.5

8.0

8.5

9.0

9.5

10.0

Dis

pers

ion

(ps/

Km

-nm

)

Wavelength (nm)

B C D

図-14. 記号 B で示したブラッグファイバ, 記号 C で示したチャープ比 CR = 1.0~1.2の CBLF, 記号 D で示した CR = 1.20~1.0 の CBLF の分散.

Bal

listic

Tr

ansp

ort

Loca

lized

R

egim

e

図-15. 乱れのある媒質を 500μm 伝搬したときのセカントハイパボリックビーム

のバリスティックモードから局在モードへの遷移.

図-13. 伝送帯域は約 66%, チューニング幅は約 300 nm に拡大するチャープファイバ.

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8.まとめと今後の課題

PCF の線形ならびに非線形領域における特性評価, 適化,設計のための強力な計算手法を開

発した。ここでは、任意の断面形状を有する PCF の解析が可能な辺要素と節点要素とを組み合わせ

た曲辺要素型フルベクトル有限要素法(FV-FEM:Full-Vectorial Finite Element Method)に基づく数

値シミュレーションツールを導入するとともに、遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)を搭載し

た高精度 FV-FEM ソルバーを用いて、PCF の 適構造パラメータを探索した。具体的には、PCF の

パッシブならびにアクティブ領域における広帯域特性、分散制御性、高非線形性について、また、

PCF 型ラマン増幅器の利得平坦化のためのポンプ光の波長配置ならびにパワー分布の 適条件に

ついて詳細に研究調査を行った。さらに、エルビウム、イッテルビウム、あるいはツリウムを添加した分

-20 0 20 40 60 80 100

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

Transverse dimension (micron)

Am

plitu

de (a

.u)

B C D E

図-16. 幅の異なるセカントハイパボリック入力ビームの局在状態。記号 B で示した

実線は広い入力ビーム(FWHM = 15 μm)に対応する。また、記号 E で示した一

点鎖線は も狭い入力ビーム(FWHM = 7.5 μm)に対応する。

-20 0 20 40 60 80 100

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

Am

plitu

de (a

.u)

Transverse dimension (micron)

E F G

図-17. 異なるサンプル長におけるセカントハイパボリックビームの局在状態の安定性.

記号 G で示したものは も長い距離 70 mm 伝搬した場合に対応する. また, 記号 E, F

で示したものは, より短い, それぞれ 700 μm, 7 mm 伝搬した場合に対応する.

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散補償機能を有するフォトニック結晶ファイバ増幅器ならびにレーザの 適設計法を開発した。

今後は、開発した 適設計法を用いて、「高出力ファイバ増幅器ならびにレーザのための希土類

添加ダブルクラッド偏波保持フォトニック結晶ファイバの設計と作製」を行うために、インドの研究機関

General Glass & Ceramic Research Institute との共同研究を推進する。

9. 研究成果の発表

学術雑誌 (35 件)

[1] K. Saitoh, T. Fujisawa, T. Kirihara, and M. Koshiba, “Approximate empirical relations for

nonlinear photonic crystal fibers,” Optics Express, Vol. 14, No. 14, pp. 6572-6582, July 2006.

[2] K. Saitoh, N. J. Florous, T. Murao, and M. Koshiba, “Design of photonic band gap fibers with

suppressed higher-order modes: Towards the development of effectively single mode large

hollow-core fiber platforms,” Optics Express, Vol. 14, No. 16, pp. 7342-7352, Aug. 2006.

[3] K. Saitoh, M. Koshiba, and N. A. Mortensen, “Nonlinear photonic crystal fibers: Pushing the

zero-dispersion towards the visible,” New Journal of Physics, Vol. 8, 207, pp. 1-9, Sept. 2006.

[4] B. P. Pal, S. Dasgupta, M. R. Shenoy, and A. Sysoliatin, “Supercontinuum generation in a Bragg

fiber: A new proposal,” Optoelectronics Letters, Vol. 2, pp. 342-344, Sept. 2006.

[5] N. J. Florous, K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Fluidic sensors based on photonic

crystal fiber gratings: Impact of the ambient temperature,” IEEE Photonics Technology Letters,

Vol. 18, No. 21, pp. 2206-2208, Nov. 2006.

[6] Q. Wu, P. L. Chu, H. P. Chan, and B. P. Pal, “A Y-junction polymer optical waveguide

interleaver,” Optics Communications, Vol. 267, No. 2, pp. 373-378, Nov. 2006.

[7] V. Karthik, S. S. Rao, M. R. Shenoy, Prerana, and B. P. Pal, “Determination of optical properties

of a turbid medium using fiber optic transmission experiment,” Asian Journal of Chemistry, Vol.

18, No. 5, pp. 3344-3347, Supplement, 2006.

[8] Y. Tsuchida, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Design of single-moded holey fibers with

large-mode-area and low bending losses: The significance of the ring-core region,” Optics

Express, Vol. 15, No. 4, pp. 1794-1803, Feb. 2007.

[9] N. J. Florous, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Numerical modeling of cryogenic temperature sensors

based on plasmonic oscillations in metallic nanoparticles embedded into photonic crystal fibers,”

IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 19, No. 5, pp. 324-326, Mar. 2007.

[10] K. Sasaki, S. K. Varshney, K. Wada, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Optimization of pump spectra

for gain-flattened photonic crystal fiber Raman amplifiers operating in C-band,” Optics Express,

Vol. 15, No. 5, pp. 2654-2668, Mar. 2007.

[11] S. K. Varshney, Y. Tsuchida, K. Sasaki, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Measurement of chromatic

dispersion and Raman gain efficiency of a hole-assisted fibers: Influence of bend,” Optics Express,

Vol. 15, No. 6, pp. 2974-2980, Mar. 2007.

[12] R. K. Varshney, A. Singh, K. Pande, and B. P. PaL, “Side-polished fiber-based gain-flattening

filter for erbium-doped fiber amplifiers,” Optics Communications, Vol. 271, No. 2, pp. 441-444,

Mar. 2007.

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[13] T. Murao, K. Saitoh, N. J. Florous, and M. Koshiba, “Design of effectively single-mode air-core

photonic bandgap fiber with improved transmission characteristics for the realization of ultimate

low loss waveguide,” Optics Express, Vol. 15, No. 7, pp. 4268-4280, Apr. 2007.

[14] S. K. Varshney, K. Saitoh, M. Koshiba, and P. J. Roberts, “Analysis of a realistic and idealized

dispersion compensating photonic crystal fiber Raman amplifier,” Optical Fiber Technology, Vol.

13, No. 2, pp. 174-179, Apr. 2007.

[15] S. K. Varshney, N. J. Florous, K. Saitoh, M. Koshiba, and T. Fujisawa, “Numerical investigation

and optimization of photonic crystal fiber for simultaneous dispersion compensation over S+C+L

wavelength bands,” Optics Communications, Vol. 274, No. 1, pp. 74-79, June 2007.

[16] K. Saitoh, N. J Florous, T. Murao, and M. Koshiba, “Realistic design of large-hollow-core

photonic band-gap fibers with suppressed higher order modes and surface modes,” IEEE/OSA

Journal of Lightwave Technology, Vol. 25, No. 9, pp. 2440-2447, Sept. 2007.

[17] S. Dasgupta, B. P. Pal, and M. R. Shenoy, “Nonlinear spectral broadening in solid core Bragg

fibers,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, Vol. 25, No. 9, pp. 2475-2484, Sept.

2007.

[18] K. Saitoh, N. J. Florous, T. Murao, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Photonic bandgap fiber

filter design based on nonproximity resonant coupling mechanism,” IEEE Photonics Technology

Letters, Vol. 19, No. 19, pp. 1647-1549, Oct. 2007.

[19] R. K. Varshney, B. Nagarazu, A. Singh, B. P. Pal, and A. K. Kar, “Design and realization of an

all-fiber broadband tunable gain equalization filter for DWDM signals,” Optics Express, Vol. 15,

No. 21, pp. 13519-13530, Oct. 2007.

[20] B. P. Pal, S. Ghosh, R .K. Varshney, S. Dasgupta, and A. Ghatak, “Loss and dispersion tailoring

in 1D photonic band gap Bragg reflection waveguides: Finite chirped claddings as a design tool,”

Optical and Quantum Electronics, Vol. 39, No. 12, pp. 983-993, Oct. 2007.

[21] S. Dasgupta, A. K. Ghatak, and B. P. Pal, “Analysis of Bragg reflection waveguides with finite

claddings: An accurate matrix method formulation,” Optics Communications, Vol. 279, No. 1, pp.

83-88, Nov. 2007.

[22] K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Dispersion, birefringence, and amplification

characteristics of newly designed dispersion compensating hole-assisted fibers,” Optics Express,

Vol. 15, No.26, pp. 17724-17735, Dec. 2007.

[23] S. K. Varshney, K. Sasaki, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Design and simulation of 1310 nm and

1480 nm single-mode photonic crystal fiber Raman lasers,” Optics Express, Vol. 16, No. 2, pp.

549-559, Jan. 2008.

[24] K. Iizawa, S. K. Varshney, Y. Tsuchida, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Bend-insensitive lasing

characteristics of single-mode, large-mode-area ytterbium-doped photonic crystal fiber,” Optics

Express, Vol. 16, No. 2, pp. 679-591, Jan. 2008.

[25] K. Saitoh, N.J. Florous, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Tunable photonic crystal fiber

couplers with a thermo-responsive liquid crystal resonator,” IEEE/OSA Journal of Lightwave

Technology, Vol. 26, No. 6, pp. 663-669, Mar. 2008.

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141

[26] J. E. McElhenny, R. K. Pattnaik, J. Toulouse, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Unique characteristic

features of stimulated Brillouin scattering in small-core photonic crystal fibers,” Journal of

Optical Society of America B, Vol. 25, No. 4, pp. 582-593, Apr. 2008.

[27] T. Murao, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Structural optimization of air-guiding photonic bandgap

fibers for realizing ultimate low loss waveguides,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology,

Vol. 26, No. 12, pp. 1602-1612, June 2008.

[28] S. K. Varshney, K. Saitoh, N. Saitoh, Y. Tsuchida, M. Koshiba, and R. K. Sinha, “Strategies for

realizing photonic crystal fiber bandpass filters,” Optics Express, Vol. 16, No. 13, pp. 9459-9467,

June 2008.

[29] Prerana, M. R. Shenoy, and B. P. Pal, “Method to determine optical properties of turbid media,”

Applied Optics, Vol. 47, No. 17, pp. 3216-3220, June 2008.

[30] Y. Tsuchida, K. Saitoh, and M. Koshiba, “A design method for single-polarization holey fibers

with improved beam quality factor,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, Vol. 26, No.

14, pp. 2162-2167, July 2008.

[31] M. Skorobogatiy, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Full-vectorial coupled mode theory for the

evaluation of macro-bending loss in multimode fibers, application to the hollow-core photonic

bandgap fibers,” Optics Express, Vol. 16, No. 19, pp. 14945-14953, Sept. 2008.

[32] Z. Varallyay, K. Saitoh, J. Fekete, K. Kakihara, M. Koshiba, and R. Szipocs, “Reversed

dispersion slope photonic bandgap fibers for broadband dispersion control in femtosecond fiber

lasers,” Optics Express, Vol.16, No.20, pp. 15603-15616, Sept. 2008.

[33] S. K. Varshney, K. Saitoh, K. Iizawa, Y. Tsuchida, M. Koshiba, and R. K. Sinha, “Raman

amplification characteristics of As2Se3 photonic crystal fibers,” Optics Letters, Vol. 33, No. 21,

pp. 2431-2433, Nov. 2008.

[34] S. K. Varshney, K. Saitoh, M. Koshiba, B. P. Pal, and R. K. Sinha, “Design of S-band

Erbium-doped dual-core photonic crystal fiber amplifiers with ASE supression,” IEEE/OSA

Journal of Lightwave Technology, Vol. 27, No. 11, pp. 1725-1733, Nov. 2009.

[35] S. K. Varshney, K. Saitoh, R. K. Sinha, and M. Koshiba, “Coupling characteristics of multicore

photonic crystal fiber-based 1×4 power splitters,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology,

Vol. 27, No. 12, pp. 2062-2068, Dec. 2009.

国際会議の論文 (査読付)(39件)

[36] N. J. Florous, K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Thermo-optical sensitivity analysis of

highly-birefringent photonic crystal fibers with elliptically elongated air holes: Towards

polarimetric-sensing fiber platforms,” Proc. of the Optical Fiber Sensors Conference (OFS 18),

Cancun, Mexico, Oct. 2006.

[37] K. Saitoh, N. J. Florous, T. Murao, and M. Koshiba, “Realization of large hollow-core photonic

band-gap fibers with suppressed higher-order modes,” Proc. of the IEEE LEOS Annual Meeting

(LEOS 2006), Montreal, Canada, Oct. 2006.

[38] S. K. Varshney, K. Saitoh, N. J. Florous, and M. Koshiba, “A novel photonic crystal fiber design

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142

for identical dispersion compensation over S+C+L wavelength bands,” Proc. of the International

Conference on Optoelectronics, Fiber Optics and Photonics (PHOTONICS 2006), Hyderabad,

India, Dec. 2006.

[39] K. Sasaki, S. K. Varshney, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Optimizing the gain-profile of a realistic

dispersion compensating photonic crystal fiber Raman amplifier by genetic algorithm,” Proc. of

the International Conference on Optoelectronics, Fiber Optics and Photonics (PHOTONICS

2006), Hyderabad, India, Dec. 2006.

[40] Prerana, V. Karthik, M. R. Shenoy, and B. P. Pal, “Optical properties of a homogenous mixture of

two turbid media,” Proc. of the International Conference on Optoelectronics, Fiber Optics and

Photonics (PHOTONICS 2006), Hyderabad, India, Dec. 2006.

[41] S. Dasgupta, A. Ghatak, and B. P. Pal, “Analysis of Bragg reflection waveguides with finite

cladding,” Proc. of the International Conference on Optoelectronics, Fiber Optics and Photonics

(PHOTONICS 2006), Hyderabad, India, Dec. 2006.

[42] A. Singh, R. K. Varshney, B. P. Pal, and B. Nagarazu, “Side-polished fiber based tunable gain

flattening filter for EDFA,” Proc. of the International Conference on Optoelectronics, Fiber

Optics and Photonics (PHOTONICS 2006), Hyderabad, India, Dec. 2006.

[43] K. Saitoh, N. J. Florous, T. Murao, and M. Koshiba, “Design of large hollow-core photonic

band-gap fibers with suppressed higher-order modes,” Proc. of the Optical Fiber Communication

Conference/National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC 2007), Anaheim, USA,

Mar. 2007.

[44] T. Murao, K. Saitoh, N. J. Florous, and M. Koshiba, “Single-mode air-guiding photonic bandgap

fiber with improved broadband transmission characteristics: The benefits of an anti-resonant core

design,” Proc. of the Optical Fiber Communication Conference/National Fiber Optic Engineers

Conference (OFC/NFOEC 2007), Anaheim, USA, Mar. 2007.

[45] K. Saitoh, H. Nagano, N. J. Florous, and M. Koshiba, “Enhancement of the stimulated Brillouin

scattering of higher-order acoustic modes in hole-assisted fibers,” Proc. of the Optical Fiber

Communication Conference/National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC 2007),

Anaheim, USA, Mar. 2007.

[46] N. J. Florous, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Inline cryogenic temperature sensor based on the

excitation of localized plasmonic oscillations in metallic nanoparticles embedded into photonic

crystal fibers,” Proc. of the Optical Fiber Communication Conference/National Fiber Optic

Engineers Conference (OFC/NFOEC 2007), Anaheim, USA, Mar. 2007.

[47] Y. Tsuchida, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Large-mode-area single-mode holey fiber with low

bending losses: Towards high power beam delivery systems,” Proc. of the Optical Fiber

Communication Conference/National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC 2007),

Anaheim, USA, Mar. 2007.

[48] S. K. Varshney, Y. Tsuchida, K. Sasaki, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Experimental demonstration

of Raman gain efficiency and chromatic dispersion of hole-assisted fiber: Influence of bend,” Proc.

of the Conference on Lasers and Electro-Optics/Quantum Electronics and Laser Science

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143

Conference (CLEO/QELS 2007), Baltimore, USA, May 2007.

[49] K. Saitoh, N. J. Florous, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Tunable photonic crystal fiber

couplers infiltrated with highly-thermo-responsive liquid crystal substances,” Proc. of the

Conference on Lasers and Electro-Optics/Quantum Electronics and Laser Science Conference

(CLEO/QELS 2007), Baltimore, USA, May 2007.

[50] N. J. Florous, K. Saitoh, T. Murao, and M. Koshiba, “Radiation dose enhancement in photonic

crystal fiber Bragg gratings: Towards photo-ionization monitoring of irradiation sources in harsh

nuclear power reactors,” Proc. of the Conference on Lasers and Electro-Optics/Quantum

Electronics and Laser Science Conference (CLEO/QELS 2007), Baltimore, USA, May 2007.

[51] K. Saitoh, N. J. Florous, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “All-fiber integrated assemblies based

on the resonant tunneling effect in multi-core photonic band-gap fibers,” Proc. of the

Conference on Lasers and Electro-Optics/Quantum Electronics and Laser Science Conference

(CLEO/QELS 2007), Baltimore, USA, May 2007.

[52] N. J. Florous, K. Saitoh, S. K. Varshney, Y. Tsuchida, T. Murao, and M. Koshiba, “Inline

cryogenic temperature sensors based on photonic crystal fiber Bragg gratings in infiltrated with

noble gases for harsh space applications,” Proc. of the Conference on Lasers and

Electro-Optics/International Quantum Electronics Conference (CLEO/Europe-IQEC 2007),

Munich, Germany, June 2007.

[53] S. K. Varshney, K. Sasaki, K. Saitoh, N. J. Florous, and M. Koshiba, “1.3 μm photonic crystal

fiber Raman laser,” Proc. of the Conference on Lasers and Electro-Optics/International

Quantum Electronics Conference (CLEO/Europe-IQEC 2007), Munich, Germany, June 2007.

[54] K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Resonant coupling in photonic crystal fibers,” Proc.

of the Opto-Electronics and Communications Conference/International Conference on

Integrated Optics and Optical Fiber Communication (OECC/IOOC 2007), Yokohama, Japan,

July 2007.

[55] S. K. Varshney, K. Saitoh, N. J. Florous, and M. Koshiba, “A simple and practical design

approach to realize band-pass photonic crystal fiber filters,” Proc. of the Opto-Electronics and

Communications Conference /International Conference on Integrated Optics and Optical Fiber

Communication (OECC/IOOC 2007), Yokohama, Japan, July 2007.

[56] N. J. Florous, K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Fluidic sensors based on photonic

crystal fiber gratings: An emerging technology for realizing ultra-low thermo-responsive sensing

platforms,” Proc. of the Integrated Photonics and Nanophotonics Research and

Applications/Slow and Fast Lights Topical Meetings (IPNRA/SL 2007), Salt Lake City, USA,

July 2007.

[57] S. Dasgupta, S. Ghosh, R. K. Varshney, A. K. Ghatak, and B. P. Pal, “Analysis of chirped Bragg

reflection waveguide with finite cladding,” Proc. of the International Conference for Materials and

Advanced Technologies (ICMAT 2007), Singapore, Republic of Singapore, July 2007.

[58] K. Saitoh, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Broadband dispersion compensating hole-assisted

fibers,” Proc. of the European Conference on Optical Communication (ECOC 2007), Berlin,

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144

Germany, Sept. 2007.

[59] M. R. Shenoy, Prerana, and B. P. Pal, “A novel technique for determination of optical properties

of a turbid medium,” Proc. of the OSA Conference on Frontiers in Optics (FiO 2007), San Jose,

USA, Sept. 2007.

[60] Y. Tsuchida, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Single-polarization photonic crystal fibers based on

resonant coupling phenomenon,” Proc. of the IEEE/LEOS Winter Topicals Conference 2008,

Sorrento, Italy, Jan. 2008.

[61] S. K. Varshney, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Evaluation of induced form-birefringence and PMD

in dispersion-compensating hole-assisted fibers,” Optical Fiber Communication

Conference/National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC 2008), San Diego, USA,

Feb. 2008.

[62] T. Murao, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Structural optimization of ultimate low loss air-guiding

photonic bandgap fibers,” Proc. of the Optical Fiber Communication Conference/National Fiber

Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC 2008), San Diego, California, USA, Feb. 2008.

[63] K. Saitoh, K. Kakihara, S. K. Varshney, and M. Koshiba, “Nonlinear enhancement and dispersion

management in bismuth microstructured fibers with a filled slot defect,” Proc. of the Conference

on Lasers and Electro-Optics/Quantum Electronics and Laser Science Conference

(CLEO/QELS 2008), San Jose, USA, May 2008.

[64] B. Nagaraju, M. C. Paul, M. Pal, A. Pal, R. K. Varshney, B. P. Pal, S. K. Bhadra, G. Monnom,

and B. Dussardier, “Design and realization of an inherently gain flattened Erbium doped fiber

amplifier,” Proc. of the Conference on Lasers and Electro-Optics/Quantum Electronics and

Laser Science Conference (CLEO/QELS 2008), San Jose, USA, May 2008.

[65] F. Poli, D. Passaro, A. Cucinotta, S. Selleri, L. Vincetti, L. Rosa, K. Saitoh, Y. Tsuchida, S. K.

Varshney, and M. Koshiba, “Polygonal large-mode-area leakage channel fibers with reduced

mode distortion,” Proc. of the First Mediterranean Photonics Conference, Ischia, Napoli, Italy,

June 2008.

[66] S. K. Varshney, K. Saitoh, R. K. Sinha, and M. Koshiba, “Theoretical design of multi-core

photonic crystal fiber based 1×4 power splitters,” Proc. of the Opto-Electronics and

Communications Conference/Australian Conference on Optical Fiber Technology (OECC/

ACOFT 2008), Sydney, Australia, July 2008.

[67] Y. Tsuchida, K. Saitoh, S. K. Varshney, L. Rosa, and M. Koshiba, “Design of single-mode

leakage channel fibers with large-mode-area and low bending loss,” Proc. of the Opto-

Electronics and Communications Conference/Australian Conference on Optical Fiber

Technology (OECC/ACOFT 2008), Sydney, Australia, July 2008.

[68] L. Rosa, K. Saitoh, Y. Tsuchida, S. K. Varshney, M. Koshiba, F. Poli, D. Passaro, A. Cucinotta,

S. Selleri, and L. Vincetti, “Single-mode large-mode-area leakage channel fibers with octagonal

symmetry,” Proc. of the Integrated Photonics and Nanophotonics Research and Applications/

Slow and Fast Lights Topical Meetings (IPNRA/SL 2008), Boston, USA, July 2008.

[69] W. Y. Chan, K. X. Chen, H. P. Chan, R. Kumar, R. K. Varshney, and B. P. Pal, “A flat-top

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145

pass-band planar optical waveguide interleaver using Y-junction structure,” Proc. of the

Opto-Electronics and Communications Conference/Australian Conference on Optical Fiber

Technology (OECC/ACOFT 2008), Sydney, Australia, July 2008.

[70] B. Nagaraju, R. K. Varshney, B. P. Pal, A. Singh, G. Monnom, and B. Dussardier, “Design and

realization of a side-polished single-mode fiber optic high-sensitive temperature sensor,” Proc.

of the International Conference on Photonics, Devices and Systems, Prague, Czech Republic,

Aug. 2008.

[71] F. Poli, L. Vincetti, D. Passaro, A. Cucinotta, S. Selleri, L. Rosa, K. Saitoh, Y. Tsuchida, S. K.

Varshney, and M. Koshiba, “Fundamental and high-order mode bending loss in leakage channel

fibers,” Proc. of the European Conference on Optical Communication (ECOC 2008), Brussels,

Belgium, Sept. 2008.

[72] K. Saitoh and M. Koshiba, “Microstructured optical fibers: From design to applications,” Proc. of

the International Conference on Fiber Optics and Photonics (PHOTONICS 2008), Delhi, India,

Dec. 2008.

[73] S. K. Varshney, K. Saitoh, Y. Tsuchida, M. Koshiba, and R. K. Sinha, “Amplification

characteristics of As2Se3 photonic crystal fibers,” Proc. of the International Conference on Fiber

Optics and Photonics (PHOTONICS 2008), Delhi, India, Dec. 2008.

[74] S. K. Varshney, K. Saitoh, M. Koshiba, and B. P. Pal, “Erbium-doped, bend-insensitive, S-band

photonic crystal fiber amplifiers,” Proc. of the International Conference on Fiber Optics and

Photonics (PHOTONICS 2008), Delhi, India, Dec. 2008.

フォーラム・ワークショップ等の発表論文 (6件)

[75] M. Koshiba, K. Saitoh, and S. K. Varshney, “Dispersion compensating photonic crystal fiber

Raman amplifiers: Design issues and challenges,” Digest of the 1st Research Forrum of Japan-

Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully

Ubiquitous Information Society, pp. 72-78, Gakushi-kaikan, Tokyo, Japan, Dec. 2006.

[76] S. K. Varshney, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Design and simulation of photonic crystal fiber

Raman lasers,” Digest of the 2nd Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on

Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp.

52-56, Kyushu University, Fukuoka, Japan, July 2007.

[77] M. R. Shenoy, S. K. Pandit, Prerana, and B. P. Pal, “A novel method to determine optical

scattering properties of a liquid through a fiber optic probe in conjunction with a reflector,”

Digest of the 2007 Japan-Indo Workshop on Microwaves, Photonics, and Communication

Systems, pp. 124-127, Kyushu University, Fukuoka, Japan, July 2007.

[78] S. K. Varshney, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Bend insensitive lasing characteristics of yetterbium

-doped single-mode photonic crystal fiber,” Digest of the 3rd Research Forum of Japan-Indo

Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully

Ubiquitous Information Society, pp. 54-59, Indian Institute of Technolgy Delhi, New Delhi, India,

Dec. 2007.

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[79] S. K. Varshney, K. Saitoh, and M. Koshiba, “Power coupling characteristics of multi-core

microstructured fibers,” Digest of the 4th Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project

on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society,

pp. 69-74, Tokyo Institute of Technology, Tokyo, Japan, July 2008.

[80] K. Saitoh, S. K. Varshney, M. Koshiba, and B. P. Pal, “Erbium-doped depressed-cladding

photonic crystal fibers for S-band optical amplification,” Digest of the 5th Research Forum of

Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting

Fully Ubiquitous Information Society, pp. 77-83, Jadavpur University, Kolkata, India, Dec. 2008.

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(6)サブテーマ6

1.研究題目

非線形効果を利用した光集積デバイスに関する研究

2.研究機関

東京工業大学大学院理工学研究科

Indian Institute of Technology (IIT) Delhi

3.研究者

水本哲弥 (東京工業大学)

Krishna Thyagarajan、Mangalpady Rajaram Shenoy、Anurag Sharma(IIT Delhi)

4.研究の目的

高速・大容量の通信システムにとって、光ファイバ通信を中心とするフォトニック技術は重要な基盤

技術として欠くことのできない存在となっている。現在の光ファイバ通信は、受信した光信号を O/E 変

換によって電気信号に変換し、適当な信号処理を行った後に再度E/O変換によって光信号に変換し、

光ファイバを通して伝送される。このようなシステムでは、光信号の高ビットレート化、多重化とともに、

いっそうの高速化を図ろうとする場合に O/E、E/O 変換速度がシステムのボトルネックとなりつつある。

この問題を解決するために、電気信号に変換する必要のない光信号を光信号のままハンドリングする

フォトニックネットワークシステムの進展が期待されている。この全光システムにおいて、全光スイッチン

グデバイスは、100Gbit/s を超えるビットレートの光信号をハンドリングするキーデバイスとなり、超高速

動作が求められる。このようは背景のもと、物質と光波の非線形な相互作用は高速・全光スイッチング

デバイスや、光パラメトリック発振器などへの応用が期待でき、フォトニック技術への展開が注目を集

めている。

これまでに、本研究課題を担当する東京工業大学グループは、GaInAsP 分布帰還(DFB)導波路

型全光スイッチングデバイスにおいて、光双安定動作、しきい値動作、反転ゲート動作などの実証を

行ってきた。このデバイスは、1 次の回折格子が GaInAsP ハイメサ導波路の側壁に形成されており、こ

れによって発生する光波の帰還作用と光強度に依存した屈折率変化によってスイッチング動作する。

従来の動作実証は、多くの場合、ナノ秒オーダーのパルスに対する応答が観測されているにすぎ

ず、本来求められているピコ秒あるいはサブピコ秒の動作は、非常に限られた状況でのみ検証されて

いるにすぎない。

このデバイスが高速に動作するためには、高速に応答する物理現象を用いる必要がある。すなわ

ち、光強度依存屈折率変化が高速であることが第一条件であり、東京工業大学グループがこれにつ

いて検討を着手している。また、デバイス構造に起因する動作速度制限要因についても検討する必

要がある。そこで本研究では、周期構造がもたらす帯域制限が短パルス光の伝搬におよぼす影響、

及び動的な屈折率変化と光パルス伝搬の相互作用によるプローブ光の応答を明確化し、DFB 導波

路型全光スイッチングデバイスの動作速度を明らかにすることを研究の目的とする。

一方、光パラメトリック発振(OPO)は広い波長範囲にわたる光波の発生が可能であり、非線形光学

の応用として注目されている。電界印加により、安定で長い伝搬長にわたって周期的に分極反転構

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148

造を形成することが可能となり、これを用いて光パラメトリック発振を行う研究も活発化している。周期

分極反転構造によって長い相互作用長にわたって疑似位相整合をとることが可能となるため、高い波

長変換効率を実現することができる。本研究では、周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)を用いた実

用的な光パラメトリック発振器を設計し、連続波及びパルス波の発生について特性の明確化を行うこ

とを目的とした。

また、2 次高調波発生やパラメトリックダウンコンバージョンなど、導波路中の非線形相互作用にお

いては、導波路の伝搬特性、特に波長分散特性が大きな影響をもつ。IIT Delhi グループは、導波路

構造を適切に変化させることによって、非線形相互作用の大きさと帯域の観点で導波路構造の 適

化を研究している。本研究では、屈折率の異なる多層構造でクラッドを形成したブラッグ反射導波路

(BRW)中の非線形相互作用を検討し、ブラッグ反射導波路の特異な分散特性を利用することによっ

て、相互作用の高効率化と動作帯域の関係を明確化する。

5.期待される成果

本研究課題の目的は、DFB 導波路型全光スイッチングデバイス、周期分極反転導波路による光パ

ラメトリック発振器、ブラッグ反射導波路における非線形効果など、光導波路中の非線形効果による物

質と光波の相互作用を明確化することにある。

東京工業大学と IIT Delhiの研究グループは、周期構造導波路中の短パルス伝搬の振舞いや DFB

導波路中の 3 次非線形光学効果によってプローブ光が受けるポンプ光の変調効果を理論的に明ら

かにするために、DFB 導波路型全光スイッチングデバイスの時間応答を中心に共同で検討する。実

験的な検討は東京工業大学グループが中心となって実施する。この研究によって、ピコ秒・サブピコ

秒で動作する超高速光スイッチングデバイスの開発が進展するものと期待される。

一方、IIT Delhi グループは、周期分極反転ニオブ酸リチウム導波路における光パラメトリック発振と、

ブラッグ反射導波路中の非線形相互作用について検討を行う。この研究成果は、低しきい値で高効

率なパラメトリック光発振の研究進展につながることが期待される。また、ブラッグ反射導波路の分散

特性を制御することによって材料分散による波長依存性を打ち消し、広い波長範囲にわたって速度

整合を達成することが可能となる。この成果は、高帯域にわたる高効率な 2 次高調波発生や光パラメ

トリック発振の進展に寄与することが期待される。

本研究課題「非線形効果を利用した光集積デバイスに関する研究」の成果は、いずれも光導波路

中の媒質と光波の非線形相互作用を利用するデバイス開発につながるものであり、結果として通信技

術の基盤をささえ、高機能化を促進する効果が期待できる。

6.研究の方法

周期構造中の短パルス光伝搬特性と、動的な屈折率変化と光パルス伝搬の相互作用によるプロー

ブ光の応答を、東京工業大学グループが実デバイスの特性測定を行うとともに、IIT Delhi グループと

共同でFDTD法とモード結合法による理論解析を進めて、DFB導波路型全光スイッチングデバイスの

動作速度を明らかにした。さらに、IIT Delhi の研究グループは、PPLN を用いた実用的な光パラメトリッ

ク発振器を設計し、連続波及びパルス波発生の特性を明確化するとともに、ブラッグ反射導波路の特

異な分散特性を利用して、非線形相互作用の効率と動作帯域の関係を明らかにした。

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149

7.主要な成果

7.1 東京工業大学の成果

7.1.1 非線形 DFB 導波路型全光スイッチングデバイスの開発

分布帰還(DFB)構造を有する導波路中に光強度に依存して屈折率が変化する媒質を含めると、

光強度によって透過率を制御する全光スイッチングデバイスが構成できる。化合物半導体GaInAsPで

ハイメサ導波路を形成し、導波路側壁に垂直回折格子を形成して DFB 導波路を形成する(図-1)。

GaInAsP(バンドギャップ波長 λg = 1410 nm)導波層の厚さは 450 nm であり、上クラッド層として厚さ

300 nm の InP を設けている。1 次の垂直回折格子を形成することで大きなグレーティング結合係数が

得られ、これによって大きな on/off 消光比と低スイッチングパワーで動作する全光スイッチを実現する

ことができる。

本研究で用いた垂直回折格子型 DFB 導波路の製作プロセスを図-2 に示す。大きな結合係数

を得るために、回折格子の凸部と凹部の幅が等しく(デューティ比=0.5)、1 次の垂直回折

格子を再現性よく GaInAsP ハイメサ導波路に形成するため、電子ビーム露光によるパターニン

グと反応性イオンエッチングの条件を探索した。図-3 に、電子ビーム露光で形成した垂直回

折格子のレジストパターンを示す。(a)は露光量不足、(c)は露光量過多の場合で、(b)の露光

条件が最適である。また、このレジストパターンをリフトオフ法によって Ti マスクに置換し、

CH4 / H2 の混合ガスで反応性イオンエッチング(RIE)を行った。なお、CH4 / H2 と O2 による

エッチングプロセスを交互に繰り返すサイクルエッチングによって深いエッチングを行い、ハ

イメサ導波路を形成した。製作した垂直回折格子型 DFB 導波路の SEM 写真を、図-4 に示す。

グレーティング結合係数の大きさは、導波路幅の変調度によって制御することができる。

図-2. 垂直回折格子型 DFB 導波路製作プロセス.

図-1. 垂直回折格子をもつ DFB 導波路.

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製作したハイメサ垂直回折格子 DFB 導波路において、全光スイッチング動作を実証した。典型的

な全光双安定動作を、図-5 に示す。プローブ光およびポンプパルスは、いずれも波長 1550.64 nm で

あり、DFB ストップバンドの長波長端に設定してある。ポンプパルスが入力する前は、プローブ光の透

過出力が低レベルにあるが、ポンプパルスが入力するとプローブ光の出力が高レベルに遷移し、ポン

プパルスが通過した後も透過出力は高レベルを保っている。プローブ光パワーを一時的に減少させ

ると、透過光レベルは初期の低レベルにリセットされる。図-5 は、ナノ秒オーダーのポンプパルスによ

って動作が示されており、必ずしも目的とする超高速動作とは言えないが、大きなグレーティング結合

係数によって、約 10dB の高い on/off 消光比が得られている。

(a) (b) (c) 図-3. 電子ビーム直接描画による垂直回折格子マスクパターン形成. (a)露光量不足, (b) 適露

光, (c)露光量過多.

図-4. 製作したハイメサ垂直回折格子 DFB 導波路.

200 400 600 800

5

10

15

0Time [ns]

Inpu

t [m

W]

λ=1550.64nmTM-mode

Off Off

setpulse

resetpulse

200 400 600 800

0.5

1

1.5

0Time [ns]

Out

put [

mW

]

On On

(a)

(b)

200 400 600 800

5

10

15

0Time [ns]

Inpu

t [m

W]

λ=1550.64nmTM-mode

Off Off

setpulse

resetpulse

200 400 600 800

0.5

1

1.5

0Time [ns]

Out

put [

mW

]

On On

(a)

(b)

図-5. ハイメサ垂直回折格子 DFB 導波路における全光双安定動作.

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151

7.2 DFB 導波路全光スイッチングデバイスの時間応答計測[5][6]

(A) GaInAsP の光強度依存屈折率変化の測定

ポンプ光によって GaInAsP 導波路中に誘起される屈折率変化を、サブピコ秒の時間分解能を有す

るループミラー干渉計で測定した。バンドギャップ波長 λg = 1200、1300、1410 nm の GaInAsP 組成に

おいて、屈折率変化係数は、それぞれ –0.5× 10-12, –1× 10-12 and –4× 10-12 cm2/W という値が得ら

れている。なお、測定によって得られた値は、図-6 に示すように、2 準位モデルで計算した理論予測

値と比較的よく一致している。

ここで も重要な点は、屈折率変化がピコ秒オーダーの時間幅をもつポンプパルスに追随して発

生しており、ピコ秒以下の応答速度が期待できるという点である(図-7)。このように高速な屈折率変化

を利用することによって、超高速なデバイスの実現が期待できる。しかし、ポンプ光強度があるレベル

以上になると、キャリア生成によるものと思われる遅い変化が発生する。たとえば、λg =1410 nm の

GaInAsP においては、約 20 MW/cm2 以上のポンプ光強度で時定数 100 ps 以上の屈折率変化が観

測される。

(B) DFB 導波路型全光スイッチングデバイスにおける時間応答

GaInAsP DFB 導波路にパルス状ポンプ光を入射し、これによってプローブ光が受ける透過率変化

の時間応答を測定した。立ち上がり時間 3.3 ps、立下り時間 3.9 ps のポンプパルスを、偏波面保存フ

ァイバを介してプローブ光と同期して DFB 導波路に入射させた。プローブ光は時間幅 500 ps で、ポン

プパルス光に比べるとはるかにゆっくりと強度が変化し、CW 光とみなすことができる。

図-6. λg = 1200、1300、1410 nm の GaInAsP の光強度依存屈折率係数(測定値).

1.1 1.2 1.3 1.4 1.510-13

10-12

10-11

Experiment Theory

Bandgap wavelength [μm]

|n2|

[cm

2 /W]

50 100 1500

100

200

300

Pow

er [a

u]

Probe(1546.2nm)

Pump(1530nm)18.9MW/cm2

Time [ps]50 100 1500

100

200

300

Pow

er [a

u]

Probe(1546.2nm)

Pump(1530nm)18.9MW/cm2

Time [ps]

図-7. GaInAsP におけるパルス状ポンプ光に対する屈折率変化時間応答.

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152

図-8. DFB 導波路におけるプローブ光透過率変調機構.

ポンプ光入射によって導波路中に負の屈折率変化が誘起されると、DFB 導波路の透過率波長特

性は短波長側にシフトする。したがって、図-8 に示すように、プローブ光の波長をストップバンドの長

波長端に設定すると、プローブ光透過率の急激な変化を通してDFB導波路の時間応答を観測するこ

とができる。ポンプ光の入射によって、プローブ光の透過率が増加し、屈折率変化が瞬時に起これば、

ポンプ光と同じような時間応答特性が期待できる。

1540 1550 1560-40

-30

-20

-10

0

Wavelength[nm]

Tran

smitt

ance

[dB

]

Probe

1540 1550 1560-40

-30

-20

-10

0

Wavelength[nm]

Tran

smitt

ance

[dB

]

Probe

100 200 3000

2000

4000

6000

Time[ps]

Pow

er [

a.u.

]

Probe (1552nm)

Pump (1530nm)

100 200 3000

2000

4000

6000

Time[ps]

Pow

er [

a.u.

]

Probe (1552nm)

Pump (1530nm)

(a) (b)

図-9. (a) 測定に用いた DFB 導波路の透過率波長特性と (b) 測定された透過プローブ光応答.

測定に用いた DFB 導波路の透過率波長特性を、図-9(a)に示す。プローブ光の波長を DFB 構造

によるストップバンドの長波長端 1552 nm に設定した。このプローブ光に、波長 1530 nm のポンプパル

スを同期させて DFB 導波路に入力し、透過プローブ光をサブピコ秒の時間分解能を有するストリーク

カメラで測定した(図-9(b))。ポンプ光に誘起された GaInAsP 導波路の屈折率変化により、プローブ光

の透過率が変調され、透過出力光パワーが時間的に変化する様子が観測された。プローブ光の立ち

上がり時間は、ポンプ光の立ち上がり時間 3.3 ps に比べてわずかに短く 3.1 ps であった。 これに対し

てプローブ光の立下り時間は 6.1 ps であり、ポンプ光の立下り時間 3.9 ps に比べて遅い応答が観測さ

れた。屈折率の変化は十分高速であるので、立下りの応答速度は DFB 構造の共振器効果によるもの

と考えられる。

透過プローブ光の立下り時間に広がりが観測されたが、このスイッチングデバイスはピコ秒オーダ

ーの応答速度を有するといえる。より詳細に動作速度限界を議論するためには、周期導波路におけ

る短パルス伝搬の解析も含めて、理論的な検討が必要である。

さらに、DFB ストップバンドの短波長端にプローブ光波長を設定した場合、ポンプ光入力によって

屈折率が減少してストップバンドが短波長側にシフトすると、プローブ光の透過率が低下する。これを

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153

利用することによって、ポンプ光に対して逆極性のプローブ応答となる反転ゲート動作がピコ秒ポンプ

パルスで示されている(図-10)。

図-10. ピコ秒ポンプパルスによって制御される全光反転ゲート動作.

7.2 東京工業大学と IIT Delhi の共同成果

7.2.1 周期構造導波路を伝搬短パルス波の時間応答解析

(A) モデル化

DFB 導波路型全光スイッチングデバイスの時間応答を十分に理解するため、理論的な検討を行っ

た。図-1 に示す 3 次元導波路で形成されるデバイスを、図-11 に示すように、y 軸方向に均一な 2 次

元導波路としてモデル化した。ここで、垂直回折格子によって形成される周期構造を表現するために、

低屈折率と高屈折率の 2 種類の屈折率を有する平板状媒質を積層に配置して表現する。導波路の

等価屈折率を neff = 3.248 とし、高屈折率および低屈折率媒質は、これに対して±Δn の屈折率差を与

えている。周期構造の周期はΛ=0.24 μm としている。

Finite Difference Time Domain (FDTD)法を用いて解析を行った。伝搬方向のグリッドサイズは、

解の収束性から Δz =0.02 ・m と設定した。また、周期構造区間の伝搬長は L=350.4μm としている。さ

らに、入出力端に、それぞれ長さ 50μm 及び 10 μm の等価屈折率 neff なる均一な導波路を接続する。

図-11. 2 次元周期構造導波路による DFB 導波路のモデル化.

周期構造は、前進波と後退波の結合係数(グレーティング結合係数) κ によって特徴づけられる。

以降、本研究では κ とグレーティング領域長 L の積 κL によって周期構造を特徴づける。κL はブラ

ッグ波長における反射率に対応する。

解析においては、入射パルスの時間波形として、式(1)に示すように半値全幅 Δt のガウス波形を

仮定し、入力パルスの中心波長を周期構造のブラッグ波長 λB = 1.535 μm に一致させた(図-12)。

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154

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛⎟⎠⎞

⎜⎝⎛

Δ−=

2

exp)(t

ttE (1)

図-12. κL=2.3 の周期構造導波路の透過率波長特性.

(B) 短パルス伝搬の周期構造反射率に対する依存性[7][11]

κL=0.2、0.6、2.3 の周期構造導波路中を、時間幅 Δt =1.5 ps のパルス光が伝搬する場合の時間

波形を 図-13 に示す。κL=0.2、0.6、2.3 の周期構造に対して、透過パルスのピーク透過率は、それ

ぞれ 0.97、0.92 、0.22 となる。 κL の増大と共に、反射率が増加するためピーク透過率は減少する。

(a) κL=0.2 (b) κL= 0.6

(c) κL= 2.3

図-13. κL= (a) 0.2、(b) 0.6、(c) 2.3 の周期構造における時間幅 Δt = 1.5 ps のパルス伝搬波形.

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155

(C) パルス幅依存性[15]

κL=2.3の周期構造において、パルス時間幅を Δt=0.5 ps、1.5 ps、4.0 psと変化させた場合につい

て、反射および伝搬時間波形の依存性を、図-14 及び図-15 に示す。いずれの図においても、横軸

はパルスの前縁が周期導波路に入射した時刻からの経過時間を表す。また、z は導波路入射端 z=0

を起点とする伝搬距離を表す。周期構造は z=50 μm から z=400.4 μm にわたって形成されており、50

μm ごとの位置において時間波形を観測した結果を図に示している。

図-15 の透過波形で観測されるように、入射パルスは伝搬とともにピーク強度が低下している。これ

は、分布帰還によって入射側に反射されるためであり、入射パルスの時間幅が広い方が反射の影響

が強く表れる。入力パルス幅に対するピーク透過率を表-1 に示す。参考として、パルスのスペクトル幅

ΔλFWHM も示してある。κL=2.3 の周期構造は、中心波長 λB で半値全幅全幅 4.4 nm のストップバンド

をもつ。したがって、入射パルスのスペクトル幅がストップバンドのスペクトル幅に比べて狭い場合には、

強い反射を受けて透過率は大きく減少する。

(a) Δt =0.5ps (b) Δt =1.5 ps

(c) Δt =4.0 ps

図 14 時間幅 Δt = (a) 0.5 ps, (b) 1.5 ps, (c) 4.0 ps のパルスに対する周期構造の反射応答.

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156

(a) Δt =0.5ps (b) Δt =1.5 ps

(c) Δt =4.0 ps

図-15. 時間幅 Δt = (a) 0.5 ps, (b) 1.5 ps, (c) 4.0 ps のパルスに対する周期構造の透過応答.

表-1. 入射パルス幅に対するピーク透過率.

パルス幅 (ps) スペクトル幅

ΔλFWHM (nm) ピーク透過率

0.5 14 0.56

1.5 3.5 0.22

4.0 1.8 0.05

特に強い反射特性をもつ図-15 (b)と(c)を見ると、透過波形に多重ピークが観測される。もしこれが

パルス広がりによるものであるとしたら、DFB 導波路全光スイッチングデバイスの高速動作を妨げるも

のとなる。

この解析結果では、前進波と後退波が重畳されて表示されているために、多重ピーク発生の原因

が明確には理解できない。そこで、多重ピークが現れる原因を、モード結合法を用いて解明した。入

射パルス波形を構成する波長成分に分解し、各波長成分に対して独立に周期構造による結合モード

方程式を解き、前進波と後退波の応答を求める。波長成分ごとに得られた前進波、後退波の応答を

時間と場所ごとに重ね合わせることによって、前進および後退して伝搬する光波電磁界を求めた。

結果を図-16 に示す。図-16(a)が前進波、(b)が後退波の伝搬の様子を示す。横軸は時間経過を表

し、奥行き方向が伝搬位置に対応する。なお、波形は周期構造長 L を 16 分割した位置で観測した結

果を示している。パルスが伝搬するにつれて、次第に後退波に変換され、前進波のピーク強度が低

下する様子が観測される。伝搬とともに分布的に反射波が生じるため、パルスの伝搬にともなう時間

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157

遅れが反射位置によって重畳される。その結果、反射パルスは時間広がりをもつようになる。

ここで、多重ピークが発生する原因が次のように考えられる。周期構造のストップバンド内に対応す

る入射スペクトルは図-17(a)に示すように強く反射されるが、ストップバンド帯域外のスペクトル成分は、

ほとんど反射されずに透過する(図-17(b))。透過端では、ストップバンド帯域外の成分が残って観測

される。ここで、図-17(b)に示されるように、ストップバンド帯域外のスペクトル成分のみが伝搬すると、

多重ピークを持つ時間波形が形成される。したがって、前進波が伝搬するにつれて図-16(a)の多重ピ

ークが現れる理由は、ストップバンド帯域外のスペクトル成分のみが伝搬するようになるためである。

(a) (b)

図-16. 結合モード解析による (a)前進波及び (b)後退波の伝搬波形.

(d) 短パルスポンプ光による CW プローブ光変調

GaInAsP 導波層の光強度依存屈折率係数を n2=-5× 10-10 cm2/W と仮定し、CW プローブ光を短

パルスポンプ光とともに周期構造に入射することによって、プローブ光が受ける変調効果を FDTD 法

によって解析した。

図-17. 周期構造の (a)ストップバンド帯域内及び(b)帯域外のスペクトル成分のみを

仮定した伝搬波形.

(b) (a)

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158

0.43 mW の CW プローブ光と、1.5 ps のパルス幅をもつポンプパルス(ピーク光パワー4.3 mW)を入

射させた。プローブ光の波長は、周期構造のストップバンド中心波長と一致する 1.535μm とし、ポンプ

パルスの中心波長はストップバンドの帯域外にくるように 1.57μm とした。κL=2.3 と 1.1 の周期構造に

対して計算した結果を、図-18 に示す。κL=2.3、1.1 は周期構造を形成する屈折率変調度Δn = 0.1 %

と 0.05 %にそれぞれ対応している。

図-18(a)と(b)を比べると、κL の小さい図(b)の方がプローブ光は大きな変調を受けている。この理由

は、κL=1.1 の方がストップバンドの帯域が狭いため、ポンプ光によって生ずる屈折率変化が同じ場合

には、透過率変化の大きなバンド端近くまで変調がかかるからである。さらに、いずれの DFB 導波路

においても、変調を受けたプローブ光には、ポンプ光の時間幅と比較して著しい時間広がりが観測さ

れないが、パルス状の主応答の後に、ゆっくりとした時間変化をもつ成分がわずかに観測される。同

様の成分が、図-9(b)に示す実験結果でも観測されている。ただし、このゆっくりとした変化は、主応答

の振幅に比べて 10%以下の大きさであるため、1.5 ps 程度の時間幅をもつポンプ光に対して、十分追

随するスイッチング応答が期待できる。

なお、図-9(b)の実験結果は、ピコ秒オーダーの時間応答観測が目的であったため、スイッチング

パワーを正確に計測することができず、スイッチングパワーについて図-18 の解析結果と比較すること

はできない。しかし、図-5 に示されるように、mW オーダーのポンプ光ピークパワーで全光スイッチング

動作が実験的に得られている。したがって、バンドギャップ波長 1410 nm の GaInAsP をコア層として用

いた場合、波長 1550nm において、ピークパワーmW オーダーのパルス光で全光スイッチング動作が

可能であるといえる。

7.3 IIT Delhi の成果

7.3.1 周期分極反転ニオブ酸リチウムにおける光パラメトリック発振[10]

(A) パラメトリック発振

光パラメトリック発振はパラメトリック増幅と呼ばれる非線形効果の一つである。パラメトリック増幅は、

周波数 ωp の高パワーポンプ光から信号光 ωs およびアイドラ光 ωi, へ光パワーが遷移することによ

って発生する。ここで、ωp=ωs+ωi.なる周波数関係が成り立つ。この過程は、非線形媒質中に入力さ

(a) (b)

図-18. (a) κL=2.3 及び(b) κL=1.1 の周期構造における短パルスポンプ光(時間幅 1.5 ps)による

全光スイッチング応答. プローブ光パワーは 0.43 mW(CW), ポンプ光ピークパワーは 4.3 mW,

導波層の屈折率係数 n2=-5× 10-10 cm2/W を仮定している.

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159

れるポンプ周波数 ωpの光子が、エネルギーと運動量を保存しながらポンプ光に比べて低エネルギー

の二つの光子に分離する過程とみなすこともできる。

パラメトリック増幅過程を記述する結合方程式から、生成される光波は位相不整合量 Δk=kp−ks−ki

に強く依存するということがわかる。位相不整合があると、伝搬にともなって相互作用する光波間の位

相差が蓄積し、信号光とアイドラ光の間のパワーフローが変化する。位相整合状態 Δk=0 で媒質中の

相互作用が一方向に進み、光波伝搬とともに変換光強度が指数関数的に増大する。これに対して、

位相不整合状態、すなわち Δk≠0 の場合、相互作用は振動的に発生する。伝搬方向に沿って観測

した場合に、ある区間においては変換光強度が増大するが、次第に逆過程が強くなり、変換光強度

が減少するようになる。したがって、高効率な光波変換を発生させるためには、位相整合条件 Δk=0

を実現することが重要になる。位相整合を実現するためにはいくつかの方法があるが、その中でも疑

似位相整合の手法が多くの利点をもっている。

(B) 周期分極反転ニオブ酸リチウムにおける擬似位相整合

疑似位相整合は、非線形結晶中の主軸(例えばz軸)が、周期的に反転する構造中で実現される。

周期的に主軸を反転させることによって、非線形効果に関与するテンソル要素 dij が周期的に変調さ

れる。運動量保存の方程式は、分極反転の周期 Λ を用いて次のように表される。

2p p s s i ik n k n k n π

= + +Λ

(1)

次に記すエネルギー保存および運動量保存の方程式を、媒質のセルマイヤーの方程式とともに満足

する解を求めると、温度、ポンプ光波長、周期などの与えられた条件のもとで発生する信号光とアイド

ラ光の波長を求めることができる。

エネルギー保存 1 1 1

p s iλ λ λ= + (2)

運動量保存 1p s i

p s i

n n nλ λ λ

= + +Λ

(3)

疑似位相整合は、LiNbO3 や KDP といった強誘電体結晶を用いて実現することができる。ここで、ニオ

ブ酸リチウム LiNbO3 は、大きな非線形感受率をもつ結晶としてよく知られている。LiNbO3 の非線形係

数は d33 =~30 pm/V と非常に大きく、ポンプ光、信号光、アイドラ光を結晶中の異常光となるように

偏波設定することによって、パラメトリック増幅過程が発生する。結晶 z 軸方向に電界を印加すると、自

発分極の方向が反転する。したがって、結晶に周期的に反転する電界を印加することによって、分極

が周期的に反転する構造を作り込むことができる。その結果、非線形係数の符号も周期的に反転した

構造が形成され、疑似位相整合が実現できる。この手法は、周期分極反転構造として知られている。

周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)は、疑似位相整合を用いて高効率な変換過程に利用され

ている。周期分極反転ニオブ酸リチウムの周期、ポンプ光の波長、温度を変化させることによって得ら

れる同調特性を、それぞれ図-19、20、21 に示す。

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160

図-19 分極反転周期による信号光/アイドラ光の同調特性.

図-20. ポンプ光波長による信号光/アイドラ光の同調特性.

図-21. 温度による信号光/アイドラ光の同調特性.

(C) 設計指針

光パラメトリック発振器を設計する上で重要な点は、しきい値ポンプ光強度と変換効率であり、これ

らがポンプ光および信号光を閉じ込める共振器パラメータを決定する際に評価すべき特性となる。IIT

Delhi 研究グループは、Guha の方法に従ってこれらの設計を行った。Guha の解析手法は、ポンプ光

の減衰や変換光の吸収といった、現実的に発生する要因も含めて定式化することができる。

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161

(D) 信号光及びポンプ光のビームウエスト

光パラメトリック発振で、共振条件を満足する単一の連続(CW)光を発生させるために、先ず信号

光及びポンプ光のビームウエストを決定する必要がある。それによって、変換効率としきい値ポンプパ

ワーが影響を受ける。文献によると、単一共振パラメトリック過程における変換効率としきい値に関して、

信号光及びポンプ光のフォーカシングよる影響が詳細に定式化されている。信号光が共振器の中で

共振条件を満足する場合、信号光の光波電界は基本横モードすなわちガウス波として考えることがで

きる。一方、発生するアイドラ光の界分布は未知である。このモデルは、結合モード方程式の簡略化さ

れた解を与え、ポンプ光及びアイドラ光の電界を決定することができる。周期分極反転ニオブ酸リチウ

ムを用いた光パラメトリック発振を実現するために 適な構造を設計するために必要となるシミュレー

ション結果を後述する。

(E) 適反射率

内部損失とポンプ光パワーを与えると、共振器中で信号光が十分に増強されて高い出力として得

られるように共振器鏡の反射率 R が定まる。共振器鏡反射率に対する出力信号光特性を、図-22 に

示す。この図からわかるように、出力が 大となる 適な反射率Rが存在する。ポンプ光パワーを増大

させると、 適反射率が低下することが図から読み取れる。これは、レーザについても同様である。共

振器の内部損失が高い場合には、同じポンプ光パワーに対して、得られる出力信号光パワーは減少

する(図-23)。

図-22. 共振器反射鏡反射率と出力信号光パワーの関係. 共振器の内部損失は 1%を仮定.

図-23. 共振器反射鏡反射率と出力信号光パワーの関係. 共振器の内部損失は 10%を仮定.

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162

(F) 共振器パラメータの決定

光線パラメータを記述する ABCD 行列法によって、共振器パラメータ(共振器鏡の曲率、共振器長、

凸レンズ焦点距離)を決定した。ここで、共振器鏡は入出力で同一であり、対称構造を仮定している。

CW 光パラメトリック発振の共振器パラメータを、次のように決定した。

ポンプ光波長 = 1.064 μm、ポンプ光・ビームウエスト = 62 μm

信号光波長 = 1.42 μm、信号光・ビームウエスト = 72 μm

PPLN 結晶長 = 5 cm、グレーティング周期 = 27.4 μm

共振器鏡の曲率半径 = 10cm、共振器長 = 22.4 cm.

(G) PPLN-OPO における出力特性の共振器鏡曲率依存性[8]

数値シミュレーションにより、周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)を用いたナノ秒光パラメトリック

発振(OPO)の動的解析を行った。回折効果、ウォークオフ現象、ポンプ光減衰、及び断面分布を考

慮して非線形結合モード方程式を数値積分によって解き、ナノ秒 OPO 過程のモデル化がなされてい

る。ナノ秒 OPO 過程の時空間ダイナミクスのシミュレーションで、OPO 出力パルスの空間的な界分布

と変換効率に対して共振器鏡の曲率半径が与える効果を考察した。

さらに、OPO 過程におけるしきい値ポンプエネルギーをレーザの場合と同様に定義し、共振器鏡の

曲率と共振器長及び結晶長が与える影響について考察した。シミュレーションでは、波長 1064nm の

ポンプ光を仮定している。

長さ 5 cm の周期分極反転ニオブ酸リチウム結晶を用いた光パラメトリック発振器の構成を、図-24

に示す。反射鏡 1 は、ポンプ波長に対して透過率 100%、信号光波長に対して反射率 100%をもつダイ

クロイックミラーである。出力側の反射鏡 2 は、入力ポンプ光エネルギーに応じて 適化する必要があ

る。なお、共振器長は10 cm、ポンプパルス持続時間は25 ns、ポンプビームウエストは100 μm であり、

ウォークオフと吸収損失は無視できるとしている。

図-24. 単一共振光パラメトリック発振器の構成.

凸型、平面、凹型形状の 3 種類の共振器鏡に対して、入力ポンプエネルギーに対する OPO 出力

強度をプロットすると、図-25 のように変化する。図からわかるように、OPO 過程のしきい値は共振器鏡

の曲率にほとんど影響されない。一方、ポンプエネルギーに対する出力エネルギーの傾きと OPO 効

率は、3 種類の共振器鏡によってわずかに異なる。我々の解析結果では、ナノ秒 OPO において、す

べてのポンプ入力レベルに対して平面鏡が も高い効率の共振器を形成することがわかった。OPO

しきい値の 5 倍のポンプ光入力に対しては、変換効率の計算値は 19.43 %であった。

Pump

Focusing lens Mirror 1 Mirror 2

PPLN crystal

f R1 R2

L

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163

解析によると、しきい値入力レベル近傍を除いて、共振器鏡の曲率は出力パルスの空間的な界分

布と時間的な波形にほとんど影響を与えないことが明らかになった。

7.3.2 ブラッグ反射型導波路における非線形相互作用

(A) 2 次高調波発生[1][2]

導波路型デバイスにおいて、高効率で動作帯域の広い 2 次高調波発生(SHG)のために重要なこ

とは、広い波長範囲にわたってポンプ光とそのポンプ光に対応する高調波の間の位相整合を図り、

非線形分極と高調波導波光の分布重なりを 大に保つことである。特定の波長において位相整合を

図るためには、疑似位相整合(QPM)が も適した方法である。すなわち、QPM を用いれば、伝搬方

向に非線形係数を空間的に適当な周期的変調することによって、任意のモード間で位相整合を図る

ことが可能である。

しかし、ポンプ光の波長を位相整合波長から変化させると効率が著しく減少する。これを防ぐため

には、導波路に適当な分散性をもたせて、位相整合条件のずれを補償する必要がある。ブラッグ反

射型導波路(BRW)を用いることによって、異なる波長においても位相整合条件を満足することが可能

になる。

図-26. PPGaN コアをもつ BRW. 図-27. 変換効率の波長依存性.

図-25. ポンプ入力エネルギーに対する OPO 出力エネルギーの変化。反射鏡は, (a)平

面形状, (b)凸型形状(Roc = 20 cm), (c)凹型形状(Roc = -20 cm)である. 挿入図は、しき

い値近傍の振様子を拡大して示している.

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164

図-26 に示す周期分極反転 GaN(PPGaN)をコア層とする対称 BRW について、解析を行った。ポン

プ光は BRW モードで伝搬し、全反射モードとして伝搬する高調波と疑似位相整合していると考える。

クラッド領域は、Al0.01Ga0.99N (屈折率 n1)と Al0.40Ga0.60N(屈折率 n2)の周期積層構造で形成

したブラッグ反射層であり、ポンプ光は特異な位相速度分散特性をもつ BRW モードとして伝搬する。

この分散特性は、広い波長範囲にわたって材料分散をほぼ完全に打ち消すことができる。相互作用

長 1 cm の場合、位相整合波長 1550 nm の近傍の 33 nm の波長範囲で、22 %/W 以上の効率をもつ

(図-27)。材料の透明領域であれば、他の波長範囲においても同様の考え方にしたがって設計する

ことができる。

(B) 光パラメトリック過程[3]

BRW の光パラメトリック増幅過程および自発パラメトリックダウンコンバージョン過程において、BRW

の分散特性を適当に制御することによって所望の帯域幅を得ることができる。高屈折率導波路コアで

導波路構造の変形によって適切な分散制御を行うと、位相整合あるいは位相不整合状態を自在に制

御可能である。

IIT Delhi グループの検討結果によると、群速度整合(GVM)を用いて平坦な利得特性をもち、十分

高帯域なパラメトリック相互作用が可能である。これは BRW の構造による分散制御効果を活かした特

徴であり、イオン性結晶、半導体、有機材料などの任意の材料系、任意のポンプ波長に対して適用可

能である。従来の QPM が、 適条件でも 3 dB 帯域幅がΔλFWHM = 40 nm であったのに対して、BWR

構造を用いることによってΔλFWHM = 125 nm まで拡大できることが明らかになった。

(C) 自発パラメトリックダウンコンバージョン[4]

自発パラメトリックダウンコンバージョンにおいて、BRW を用いることによってポンプ光に対しては広

い波長帯域で、信号光に対しては狭帯域の選択性をもつタイプ 0 の高効率 GaN/AlxGa1-xN 非線形相

互作用が可能であることが明らかになった(図-28 及び図-29)。

長さ 20 mm の BRW において、信号の中心波長 λs = 1550 nm の近傍 1 nm の狭い波長範囲に観

測ウインドウを設定すると、約 1.18 × 109 pair /s / mW/μm のフォトンフラックスが得られる。一方、

通常の導波路では、約 2.88×109 pairs/s /mW/μm である。位相整合条件が満足される 800 nm の

ポンプ波長において、通常導波路の方が高いフォトンフラックスが得られるが、BRW を用いる場合に

はポンプ光波長が位相整合波長から変化しても、比較的高い効率を得ることができ、広帯域な動作

図-28. ポンプ光波長に対する依存性 . 図-29. 信号光波長に対する依存性.

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165

に特徴がある。ポンプ光波長が中心波長 800 nm から 0.5 nm 変化した場合、通常の導波路ではフォト

ンフラックスはほぼ 0 に低下してしまうが、BRW では約 6 nm 離調した場合でも、信号光スペクトル幅 1

nm 以下で高い変換効率をもつ。

8.まとめと今後の課題

本研究課題では、光導波路中の非線形相互作用について研究を行った。検討テーマは、分布帰

還導波路型全光スイッチングデバイスと疑似位相整合非線形パラメトリック相互作用である。それぞれ

について得られた結論を、次にまとめて述べる。

GaInAsP/InP で形成される DFB 導波路型全光スイッチングデバイスは、その動作にポンプ光誘起

屈折率変化と周期導波路構造による光帰還を用いている。東京工業大学グループが導波路コアに

用いる GaInAsP の屈折率変化を測定した結果、ピコ秒以下の応答速度をもつことが明らかになった。

また、これを用いたデバイス動作として、光双安定動作、反転ゲート動作などの基本的なデバイス動

作も実験的に実証できた。

さらに、高速な屈折率変化を利用して構成する DFB 導波路型の全光スイッチについて、東京工業

大学と IIT Delhi の研究グループが共同でその動作速度を解明するために、理論的な研究を行った。

すなわち、非線形効果として光強度による動的な屈折率変化を考慮し、周期構造導波路中の短パル

ス伝搬を理論解析した。FDTD 法とモード結合理論を用いた解析によって、周期構造中の短パルス

伝搬について、周期構造の反射率(グレーティング結合係数)に対する依存性、入射パルス時間幅に

対する依存性を解明した。また、光強度に依存した動的な屈折率変化を考慮した FDTD 解析によっ

て、DFB 導波路型スイッチングデバイスは、1.5 ps の時間幅をもつガウス波形ポンプ光によって全光

制御した場合でも、信号光の著しい波形劣化なく動作できるという結果を得た。

一方、IIT Delhi の研究グループは、主に光波発生(波長変換)の応用に焦点をあて、疑似位相整

合導波路における光非線形相互作用を理論的に研究した。特に、周期分極反転ニオブ酸リチウム導

波路を用いた光パラメトリック発振器の設計に注力し、実デバイスで問題となる内部損失の影響、共振

器構造の 適化などを明確化した。また、ブラッグ反射型導波路中の非線形現象を利用した 2 次高

調波発生について検討した。その結果、BWR の特異な分散特性を制御することによって、BWR の分

散特性を用いて材料の分散特性を補償することが可能であり、高いパラメトリック効率が広いポンプ波

長範囲で実現できることを明らかにした。

9.研究成果の発表

学術雑誌 (4件)

[1] R. Das and K Thyagarajan, “A high efficiency scheme for phase matched SHG in GaN based

Bragg reflection waveguide,” IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 19, No. 19, pp.

1526-1528, Oct. 2007.

[2] R. Das and K. Thyagarajan, “Broadening of the phase-matching bandwidth in quasi- phase-

matched second harmonic generation using GaN based Bragg reflection waveguide,” Opt. Lett.,

Vol. 32, No. 21, pp. 3128-3130, Nov. 2007.

[3] R. Das and K Thyagarajan, “Broadband parametric amplification in Bragg reflection waveguides,”

J. Modern Optics, Vol. 55, No. 2, pp. 273-279, Jan. 2008.

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166

[4] K. Thyagarajan, R. Das, O. Alibart, M. de Micheli, D. B. Owstrosky, and S. Tanzilli, “Increased

pump acceptance bandwidth in spontaneous parametric down conversion process using Bragg

reflection waveguides,” Opt. Express, Vol. 16, No. 6, pp. 3577-3582, Mar. 2008.

国際会議の論文 (査読付)(4件)

[5] T. Mizumoto, J.-K. Seo, K. Tamura, and Y. Akano, “All-optical switching in a GaInAsP DFB

waveguide,” Proc. of the International Conference on Computer and Devices for Communication

(CODEC-06), Kolkata, India, OLT-27, p. 187, Dec. 2006.

[6] T. Mizumoto, Y. Akano, K. Tamura, and M. Yoshimura, “(Invited) DFB waveguide all-optical

switching devices employing pump-induced refractive index change in GaInAsP,” Proc. of the

International Conference on Materials for Advanced Technologies 2007 (ICMAT 2007),

Symposium-D, Singapore, DA-2-IN4, July 2007.

[7] M. Yoshimura and T. Mizumoto, “Short pulse propagation in DFB waveguides,” Proc. of the

13th Microoptics Conference (MOC’07), Takamatsu, Japan, H83, pp. 300-301, Oct. 2007.

[8] S. Goyal, M. R. Shenoy, and K. Thyagarajan, “Effect of cavity mirror curvature on the output

characteristics of a PPLN based nanosecond OPO,” Proc. of the Int. Conf. on Fiber Optics and

Photonics (PHOTONICS 2008), New Delhi, India, WF1-C2, Dec. 2008.

フォーラム・ワークショップ等の発表論文 (7件)

[9] T. Mizumoto, J. Seo, K. Tamura, and Y. Akano, “Pump-induced index change in GaInAsP

waveguides and its applications to all-optical switching devices,” Digest. of the 1st Forum of

Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting

Fully Ubiquitous Information Society, pp. 79-82, Gakushi-kaikan, Tokyo, Dec. 2006.

[10] G. Sharma and S. Goyal, “Study of optical parmetric oscillator based on periodically poled lithium

niobate,” B.Tech Project Dissertation, IIT Delhi, May 2007.

[11] T. Mizumoto, M. Yoshimura, K. Tamura, and Y. Akano, “Pulse propagation in periodic

waveguide,” Digest of the 2nd Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 62-67,

Kyushu University, Fukuoka, July 2007.

[12] T. Mizumoto and M. Yoshimura, “Fast all-optical switching in a GaInAsP DFB

waveguide,“ Digest of the 3rd Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural

Communication Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 65-71, Indian

Institute of Technology Delhi, New Delhi, Dec. 2007.

[13] S. K. Chawla and S. S. Khalon, “Study of all-optical switching devices based on semiconductor

DFB structures,” B.Tech Project Report, IIT Delhi, May 2008.

[14] T. Mizumoto, M. Yoshimura, T. Hagiwara, M. Shenoy, and K. Thyagarajan, “All-optical

switching behavior of a GaInAsP DFB waveguide,” Digest of the 4th Forum of Japan-Indo

Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully

Ubiquitous Information Society, pp. 104-109, Thokyo Institute of Technology, Tokyo, July 2008.

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167

[15] T. Mizumoto, M. Yoshimura, T. Hagiwara, M. Shenoy, and K. Thyagarajan, “GaInAsP-based

DFB waveguide all-optical switching device,” Digest of the 5th Forum of Japan-Indo

Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully

Ubiquitous Information Society, pp. 93-93, Jadavpur University, Kolkata, Dec. 2008.

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168

(7)サブテーマ7

1. 研究題目

半導体光増幅器を用いた高次光信号処理機能の創成

2. 研究機関

大阪大学大学院工学研究科

Indian Institute of Technology (IIT) Kharagpur

3. 研究者

丸田章博 (大阪大学)

Ranjan Gangopadhyay、Prasanta Kumar Datta (IIT Kharagpur)

4. 研究の目的

本研究では、光バースト/パケット交換に基づく将来のフォトニックネットワークの実現に必要な半導

体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier : SOA)を用いた高次光信号処理機能の創成を目指

した研究開発を行う。まず、単体のSOAおよびマッハ・ツェンダー干渉計(Mach-Zehnder

Interferometer : MZI)構造の2個のSOA、スイッチング回路網構成した多数のSOAのレート方程式

に基づくシミュレーションコードを構築する。次に、波長変換器、光スイッチとしての動作に加え、全光

アナログ-ディジタル、ディジタル-アナログ変換、全光シリアル-パラレル、パラレル-シリアル変換、

変調フォーマット変換などの高次光信号処理デバイスの提案を行い、上記のシミュレーションモデル

を駆使してデバイス設計を行う。SOAの物理モデルおよびシミュレーションコードの開発は、主にイン

ド工科大学カラグプール校で行い、シミュレーションによるデバイス設計は計算機リソースの豊富な大

阪大学において行う。高次光信号処理デバイスの提案については、両者で共同して行う。また、得ら

れた研究成果については、学術論文としての公開に加えて、特許申請を視野に入れて研究活動を展

開する。

5. 期待される成果

半導体光増幅器を用いた全光デバイス設計のための汎用的なシミュレーションコードを開発するこ

とにより、波長変換器、全光スイッチ、全光論理ゲート、全光変調フォーマット変換器などの設計に用

いることができる。また、開発したコードを用いて、波長変換器、全光変調フォーマット変換器などの新

たな全光信号処理デバイス構成法の提案することができる。

6. 研究の方法

半導体光増幅器を用いた全光デバイス設計のための汎用的なシミュレーションコードを開発には、

レート方程式に基づく解析理論とレート方程式のルンゲ・クッタ法を用いた数値シミュレーションを用い

る。また、新たに提案する全光信号処理デバイス構成法については、原理確認実験によって提案方

式の妥当性を検証する。

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169

7. 主要な成果

7.1 大阪大学と IIT Khragpur の共同成果

7.1.1 SOAの物理モデルおよびシミュレーションコードの開発 - スプリット・ステップ双方向モデリ

ングによるSOAの定常状態解析[9][10[12]

我々の研究グループでは、これまでに、いくつかの条件下における利得および進行波方程式の近

似的な解析解を用いた定常状態解析および SOA 中の高速なパルス伝搬について報告してきた。し

かし、従来のモデルは近似的な解析解であったので、適用範囲に制限があり、種々の SOA の応用に

対してそのままの形で適用するには制限がある。各種の応用および SOA それ自体について多くの

SOA のモデルがこれまでに提案されている。ここでは、バルク形の InGaAsP-InP SOA の定常状態特

性の解析法としてスプリット・ステップ双方向数値モデリングを示す。数値シミュレーション法としては

ASE 雑音の位相情報を無視した半波モデルを用いた。この数値モデルはより広範囲に適用可能であ

る。すなわち、異なる SOA に対して入力パラメータを変化させることができ、その応用についてシミュレ

ーションすることができる。また、時間に依存するモデルを用いることによって、SOA の定常状態およ

び動的な動作の両方を予測することができる。ただし、定常状態特性について調べるには、時間スパ

ンを長くとる必要がある。

ここでは、動作波長が 1.55μm の古典的なダブルヘテロ構造のバルク形 InGaAsP-InP SOA をモデ

ルとして考える。信号の位相のみを考慮する半波モデルでは、信号は電界として取り扱い、ASE は光

子密度として取り扱う。また、デバイスは常に300 Kの一定の温度に保たれているとし、すべてのパラメ

ータについて温度依存性はないものと仮定する。 我々はこのモデルを、相互利得圧縮(Cross-Gain

Compression : XGC)を用いた再生器に SOA を応用する際のシミュレーションに用いることを予定して

いる。XGC を用いた再生器では、信号波長における利得がポンプ光の電力によって変化する。

(A) SOA の数値モデル

SOA の数値シミュレーションモデルとして、Occhi ら(IEEE J. Selected topics in Quantum Electron.,

Vol. 9, pp. 788-797, 2003)および Durhuus ら(IEEE J. Lightwave Technol., Vol. 10, pp. 1056-1065,

1992)の提案したモデルを採用することにする。この方法は、SOA の活性領域を M 個の小さなセクショ

ンに分けて、各セクション毎に進行波アプローチを適用することによって、活性領域にわたる光の伝搬

を解く方法である。図-1 にスプリット・ステップ双方向モデルの概略図を示す。

Lj は j-番目のセクションの長さである。信号と雑音は z 方向にのみ伝搬し、その伝搬方向は SOA の断

面に対して垂直であるとする。F と A はそれぞれ信号の電界と ASE 雑音の光子密度を表す。+ (z の正

方向)と– (z の負方向)のサインは信号および ASE 光子密度の両方に対して、前進波および後進波を

それぞれ表す。R1 と R2 はそれぞれ SOA の左右の端面における電力反射率を表す。Pin と Pout はそ

図-1. 入出力光ビームと SOA を M 個のセクションに分割した概略図.

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れぞれ入力電力と出力電力を表す。ここでは、K 個の信号と Q 個の ASE 成分が活性領域を伝搬し

ているものとする。すなわち、Fk は周波数ωk の信号の複素電界を表し、Aq は中心周波数をωq とし、

スペクトル幅Δωq の ASE 雑音の強度を表す。セクションの境界面における反射はないものとすると、信

号および雑音に対する境界条件は次式で表される。

左側の端面において

0, 1 0,( ) ( ) ( )ink k kF t R F t F t

++ −= +

0, 1 0,( ) ( )q qA t R A t+ −=

右側の端面において

, 2 ,( ) ( ) ( )inM k M k kF t R F t F t

−− += +

, 2 ,( ) ( )M q M qA t R A t− += (1)

ここで、in

kF+

およびin

kF−

それぞれ左側および右側端面における活性導波路の基本モードに結合す

る k-番目の信号電界の複素包絡線であり、 t は時間である。in

kF+

およびin

kF−

は次式で与えられる。

1( ) (1 ) ( ) kiin ink kF t R P t e φ ++ +

= −

2( ) (1 ) ( ) kiin ink kF t R P t e φ−− −

= − (2)

ここで、in

kP+

およびin

kP−

は入力電力を表し、 ±kφ はそれぞれ左側および右側端面における k-番目の

信号の位相を表す。このとき、SOA の 2 つの端面における出力信号と ASE の電力は次式で与えられ

る。

2

2 ,( ) (1 ) ( )outk M kP t R F t

+ += −

2

1 0,( ) (1 ) ( )outk kP t R F t

− −= −

2 ,( ) (1 ) ( )outq M qP t R A t wd

+ += −

1 0,( ) (1 ) ( )outq qP t R A t wd

− −= − (3)

空間的に一様な電荷密度 Nj と、一定の利得と屈折率の各セクションにおいて一様に分布したバイア

ス電流 Ij を考えると、両サイドの量から各セクションを通過する 2K 個の信号と 2Q 個の ASE 成分を

次式で計算することができる。

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171

kjikjkj

g

jkj eGtF

vL

tF ,,,1, )()( φ+

−+ =+

kjikjkj

g

jkj eGtF

vL

tF ,,,,1 )()( φ−−

− =+

,

,', 1, ,

,

( 1)( ) ( )

ln( )j q

j j j qj q j q j q se

g j q

L L GA t A t G A

v G+ +

−+ = +

,

,'1, , ,

,

( 1)( ) ( )

ln( )j q

j j j qj q j q j q se

g j q

L L GA t A t G A

v G− −−

−+ = + (4)

ここで、 ,j kG および ,j kφ は SOA の活性領域の長手方向に伝搬する k-番目の信号の利得と位相回転

を表す。,j qseA′ は SOA 導波路の基本モードに結合する周波数 qω におけるトータルの自然放出光雑

音強度であり、 vg は群速度である。利得 ,j kG は

, ,( )1

j k m j kj j

tot j

gL

SjG e

αε

Γ−

+= (5)

で与えられる。ここで、 ,j kΓ は閉じ込め係数であり、次式に示すようにキャリア密度と波長に対して線

形に変化するものと仮定する。

0 0

0 0 0 0

, 0, ,

( ) ( )j k k jN N

N NNλ λ

λ λλ

Γ Γ Γ Γ

Γ Γ

∂Γ ∂ΓΓ = Γ + − + −

∂ ∂ (6)

εtot

(= εCH

+ εSHB

) はトータルの非線形利得圧縮係数であり、Sj は j-番目のセクションにおける全光

子密度である。また、αj は内部損失係数であり、次式に示すように波長に対して線形に変化するもの

とする。

0

0

0 ( )j kα

αλ

αα α λ λλ

∂= + −

∂ (7)

,j kmg は次式で表される材料利得である。

32 ))(())((),( NbNaNg zNzNm λλλλλ −+−= λ < ( )z Nλ

= 0 λ ≥ ( )z Nλ (8)

ここで、

2))()(()(

3NN

Nga

pz

pN λλ −

=

3))()(()(

2NN

Ngb

pz

pN λλ −

=

)()( 00 NNaNg p −=

)()( 000 NNbNp −−= λλ

)()( 000 NNzN zz −−= λλ (9)

である。gp(N) は利得ピークに依存するキャリア密度であり、N0 は透明状態でのキャリア密度である。

また、 λp(N) はピーク利得が 大となる波長であり、 λz(N) はキャリア密度に依存するバンド端の波

長である。 j-番目のセクションを通過する際の、k-番目の信号の位相シフトは

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0 0

0, 0 ( ) ( )p pgj k j k p j j r j

n nn L L N N Lc c c N

ω ωφ ω ω ∂

= + − + −∂

(10)

で与えられる。ここで、ωp0 は利得が 大となる波長に相当する角周波数であり、n0 は実効屈折率、

ng は群屈折率, ωk は k-番目の信号の角周波数である。 n N∂ ∂ はキャリア密度に対する屈折率変

化である。 Nr は参照キャリア密度であり、活性領域における自由キャリア密度の平均値に近い

値である。c は真空中での光速である。各セクションにおけるキャリア密度の変化に対するレ

ート方程式は

qj

Q

qjqgkj

K

kjkgj

j

jj SNgvSNgvNReVI

tN

,1

,1

),(),()( ∑∑==

−−−=∂

∂ωω (11)

で与えられる。ここで、,, (1 )

j kj k m tot jg g Sε= + はトータルの利得係数であり、 ( )jNR はトータルのキャリ

ア再結合率であり、一般的には次式で与えられる。

32)( CNBNANNR ++= (12)

ここで、A は線形再結合係数、B はトータルの自然再結合係数、C はオージェ再結合係数である。

ここでは、一様に分布した電流 Ij = I/M を考える。 Sj,k は j-番目のセクションにおける k-番目の信

号の平均光子密度 である。

)()ln(

)1( 2

,

2

,1,−+

− +−Γ

= kjkjjkg

jkj FF

GwdvG

Sωh

(13)

上式において、閉じ込め係数の添え字を省略している。 h は規格化されたプランクの定数である。

Sj,q は j-番目のセクションにおける q-番目の ASE 成分の平均値である。

, ,

, 1, ,

2 21ln( ) ln( ) ln( )

j q j qj se j sejj q j q j q

j j j q g

L A L AGS A A

G G G vω+ −−

′ ′⎡ ⎤⎛ ⎞⎛ ⎞− Γ= + + −⎢ ⎥⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟⎢ ⎥⎝ ⎠⎝ ⎠⎣ ⎦ h

(14)

トータルの自然放出光強度は , ,

/ 2j q j qse se qA Rβ ω′ = h で与えられる。ここで、

,j qse q spR rω≈ Δh であり、rsp

は次式で与えられる。

( ) ( )sp g c c v vr QE E E f E f E= − E > Eg

= 0 E ≥ Eg

(15)

バンドギャップエネルギーを計算するために、キャリア密度変化によるバンドギャップ収縮を考慮し、

0( ) ( )g g gE N E E N= − Δ を考える。ここで、 20 (1.35 0.775 0.149 )gE e y y= − + は収縮がない場合の

バンドギャップエネルギーであり、 1/3( )g gE N eK NΔ = は収縮エネルギーである。 y は活性領域におけ

る砒素の質量率であり、E は光子エネルギーである。fc および fv はそれぞれ伝導帯(Conduction

Band : CB)および価電子帯(Valence Band : VB)におけるフェルミ-ディラック関数であり、 Ec および

Ev はそれぞれのバンド端から測った CB および VB における電子とホールの状態エネルギーである。

また、Q は次式で与えられる。

3 220

3 3 2 20

( )224 2 3

g gr

e g

E En e mQc m Eπ ε

+ Δ⎛ ⎞= ⎜ ⎟ + Δ⎝ ⎠h h (16)

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173

ここで、 e hhr

e hh

m mmm m

=+

であり、 2(0.11 0.31 0.09 )e y yΔ = + − はスピン軌道分離エネルギーである。以

下で示すシミュレーションに用いたパラメータを表-1 にまとめておく。

表-1. SOA の材料と寸法のパラメータ.

シンボル パラメータ 値 単位

Γ0 閉じ込め係数 0.3

α0 共振器損失 6000 m-1

A 非放射性再結合係数 2.35x108 s

-1

B 放射性再結合係数 2.5x10-17

m3s

-1

C オージェ再結合係数 5.24x10-41

m6s

-1

Y SOA 活性領域における砒素の質量含有率 0.892

β 導波路の基本モードに結合する ASE 雑音の割合 0.05

T 温度(ケルビンスケール) 300 K

N SOA 活性領域の屈折率 3.47

εtot トータルの非線形利得圧縮係数 4.5x10-23

m3

N0 透明領域におけるキャリア密度 0.85x10

24 m

-3

A0 微分利得係数 2.75x10-20

m2

b0 2x10

-26 m

3.μm

λz0 1660 nm

z0 -2.5x10

-27 m

3.μm

λ0 透明領域のバンド端波長 1582 nm

vg 群速度 8.3x107

ms-1

R1, R2 SOA の左右の端面における電力反射率 10

-6

D SOA 活性領域の厚さ 0.250 μm

w SOA 活性領域の幅 3.7 μm

(B) シミュレーション結果

SOA のモデリングに必要なパラメータは文献に掲載されている値を用いた。入力光がない場合の、

異なるデバイス長に対するSOA活性領域の長さ方向に沿った定常状態のキャリア密度分布を図-2(a)

に示す。キャリア密度の分布は SOA の長さ方向に対して対称である。このことは、活性領域内の ASE

雑音も対称な分布となっているからである。入力光がない場合の活性領域内における ASE 電力の前

進波成分と後進波成分を図-2(b)に示すが、これらは明らかに対称である。また、図-2 より、デバイス

長が長くなると端面付近のキャリア密度が減少することがわかる。これは、ASE 成分の増幅も増えるた

めに、自由キャリア密度が減少するからである。

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174

1460 1480 1500 1520 1540 1560 1580 1600 1620-40

-35

-30

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

Wavelength [nm]

Out

put s

pect

ra [d

Bm

]

500 um750 um1000 um

1460 1480 1500 1520 1540 1560 1580 1600 1620-10

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

40

Wavelength [nm]

Sm

all S

igna

l Gai

n [d

B]

250 um500 um750 um

(a) (b)

図-2. 長さの異なる SOA 中における長さ方向のキャリア密度分布 (a) ASE 雑音量の分布 (b).

すべての場合において電流密度は 10.8x107A/m2 である.

図-3. 長さ0.5, 0.75, 1mm のSOAの自然放出光ス

ペクトル出力. すべての場合において電流密度は

10.8x107A/m2 である.

図-4. 長さ 0.25, 0.5, 0.75mm の SOA の小信号利

得. すべての場合において入力電力は -30 dBm

であり, 電流密度は 10.8x107A/m2 である.

さらにデバイス長を増やしていくと、図-2 から分かるとおり、ASE が飽和するので、端面付近でのキャリ

ア密度はほぼ一定となる。図-3 には、3 種類の異なるデバイス長に対する ASE のスペクトルを示す。

デバイス長が短いほど帯域幅が広くなり、デバイス長が長くなると、帯域幅が狭くなる。これは、デバイ

ス長が長いほど大きなモード利得を有するからである。また、デバイス長が長くなると、利得ピークが長

波長側にシフトしている。このことは、ASE により SOA が飽和することによって、活性領域内のキャリア

密度が減少して、スペクトルの波長ピークが赤色シフトするからである。 図-4 には、3 種類の異なるデ

バイス長に対する小信号利得応答を示す。 信号は SOA に左側の端面から入射し、増幅される。入

力電力が小さい場合には、利得曲線は出力の ASE スペクトルに従う。それゆえに、デバイス長を長く

すると、利得スペクトルの帯域幅は減少するとともに、ピーク利得は増加し、さらに、赤色シフトする。よ

り長いデバイス長に対しては、利得ピークの増加は生じない。

(b) (a)

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175

7.2 大阪大学の成果

7.2.1 半導体光増幅器を含むマッハ・ツェンダー干渉計の変調フォーマット変換器への応用

将来の光ネットワークにおいては、ネットワーク規模とビットレートに応じて異なる種類の変調フォー

マットが選択的に用いられるであろう。例えば、 コストの安いオン・オフ・キーイング(On-Off Keying :

OOK)方式をメトロ網(Metropolitan Area Networks : MAN)で用いる一方で、先進的な位相シフト・キー

イング(Phase Shift Keying : PSK)方式を広域網(Wide Area Networks : WAN)や大洋横断海底ケーブ

ル網で用いることが望ましいといえる。 図-5に示すとおり、MANとWANをつなぐゲートウェイノードに

おける全光変調フォーマット変換が異なる種類の変調フォーマットをトランスペアレントに接続するキ

ーテクノロジーとなる。

図-5. MANとWANをつなぐゲートウェイノードにおける全光変調フォーマット変換.

半導体光増幅器を含むマッハ・ツェンダー干渉計(SOA-MZI)の全光信号処理への応用に関する3

年 間 に わ た る プ ロ ジ ェ ク ト に お い て 、 SOA-MZI 波 長 変 換 器 を 用 い た 全 光 NRZ-OOK/RZ

(Return-to-Zero)-BPSK(Binary PSK) 変換を開発し、その波長変換特性について調べてきた。また、

2つのSOA-MZI OOK/BPSK変換器をパラレルに用いた全光NRZ-OOK/RZ-QPSK(Quaternary PSK)

変換器を開発した。このOOK-QPSK変換器はネットワーク・コーディングへの応用のための全光XOR

ゲートに応用することもできる。

図-6. NRZ-OOK/RZ-BPSK変換の概略図.

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(A) OOK-BPSK 変換[4][5][8][13]

(a) 変換の原理

図-6にNRZ-OOK/RZ-BPSK変調フォーマット変換の概略図を示す。基本的な構成は、それぞれ

のSOAにおけるバイアス電流のレベルを除いて、従来のSOA-MZI波長変換器とほとんど同じである。

出力電力調整用 SOA#2のバイアス電流はSOA#1の電流に比べて少ない。波長 0λ のNRZ-OOK信

号光はMZI の上側のアームに制御光として入力される。波長 1λ のRZ-クロックパルスと波長 2λ のCW

光はMZI の両アームに、それぞれプローブ光およびアシスト光として入力される。SOA#1では波長

0λ の制御光の振幅によってキャリア密度が変化し、SOA#1通過後のプローブパルスの位相と振幅が、

それぞれXPMとXGMによって変化する。SOA#1通過後のXPMによる出力プローブパルスの位相変化

量がπ となるように、制御光の電力を調整する。制御パルスがない場合には、SOA#1通過後において

もプローブパルスの位相は変化しない。SOA#1中でのXGMによって、位相変調を受けた出力プロー

ブ信号は、OOKデータ信号が "0" か "1" かによって異なるピーク強度レベルとなっている。

MZIの下側のアームは、変換されたRZ-BPSK信号のピーク強度レベルを調整するために用いられ

る。SOA#2とSOAを用いた位相シフタの電流レベルは、下側アームでの総位相シフト量がπ となるよう

に調整される。下側アームの出力ピーク電力は、出力ポートでの同位相および逆位相の干渉によっ

て、 RZ-BPSK信号が等しいピーク強度レベルとなるように調整される。このようにして強度変調された

NRZ-OOKデータ信号は、RZ-BPSK信号に変換される。 後に、 波長 1λ のプローブ光のみが光帯

域通過フィルタを通過し、波長 0λ の制御信号入力に対応した波長 1λ の変調フォーマット変換された

RZ-BPSK 信号が得られる。 1λ は任意の波長に選ぶことができるので、所望の波長に変換された

RZ-BPSK信号を得ることができる。 アシスト光は、周波数チャープや振幅揺らぎを生じさせるキャリア

の急激な変動を抑圧するために入射される。変換されたRZ-BPSK信号は3dBの受信感度改善が得ら

れる従来のバランス受信器で受信することができる。この場合、受信器の電気段で簡単なデコーダが

用いることになる。

図-7. SOAの利得スペクトル.

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177

図-8. NRZ-OOK/RZ-BPSK変換のための実験系 .

(b) 変換実験

実験で用いたSOAの利得スペクトルを図-7に示す。利得スペクトルを測定するために、SOA には

400 mAの電流を流し、CW光を入射した。 SOA 1 およびSOA 2の3 dB利得レンジはそれぞれ1523.0

nmから1570.2 nm、1529.0 nmから1565.0 nmであった。原理的には、波長変換はSOAの利得スペクト

ルには依存しない。しかし、SOAの利得が小さくなると、変換されたBPSK信号の光出力も小さくなる。

このことから、変換されたBPSK信号の消光比が小さくなり、OSNRが悪化する。それゆえに、実用的に

は、SOAの利得スペクトルはOOK/BPSK変調フォーマット変換器の動作波長範囲 を決定する重要な

要素である。

図-8に実験系を示す。 モノリシックに集積されたSOA-MZI波長変換器は、MZIの両アームに長さ

2300 μ mのSOAが配置されており、SOAの活性層は引っ張り歪みバルク構造である。制御光として用

いるNRZ-OOKデータ信号はニオブ酸リチウム (LN) 変調器で、波長1548.1 nmのCW光をビットレー

ト10.7 Gb/s, 符号長 1231 − のPRBSで変調して生成した。一方、デューティー比50% のRZ クロック

パルスはLN変調器でCW光を変調して生成した。また、波長1551.4 nmのCW光をアシスト光として用

いた。それぞれの入力光の偏波は 偏波制御器(Polarization Controller : PC)を用いて 適化されて

いる。RZプローブパルスの波長を1530 nmから1569 nmまで約5 nm間隔で変化させ、変調フォーマット

および波長変換実験を行った。SOA 1の駆動電流は400 mAであった。MZIの下側のアームにおける

プローブパルスの位相は、SOA 2への注入電流を固定した後で、位相シフタを用いて調整している。

EDFA 4によって増幅した後、変換されたRZ-BPSK信号を 1 ビット遅延干渉計とバランス受信器を用

いて復調した。

OBPF4直後で観測された波長1530.33 nmおよび1546.12 nm、1555.75 nm、1569.59 nmの変換され

たRZ-BPSK信号光スペクトルを図-9に示す。チャープのないRZ-BPSK 信号に特徴的なキャリア成分

の抑圧された対称なスペクトルが観測された。波長 1530.33 nm で観測されたスペクトルは非対称で

あるが、これは実験で用いたEDFA2の波長特性に起因するものである。変換されたBPSK 信号の出

力光電力は上記の各波長に対して、それぞれ -27.1 dBm、 -23.7 dBm、-21.72 dBm、-22.6 dBmで

あった。また、各波長に対してバランス受信された信号波形を図-18に示す。すべての波長に対して

明確なアイ開口が 観測された。

図-10 には、上記の波長に対して測定されたビット誤り率(Bit Error Rate : BER) を示す。BERカー

ブが直線になっていることから変調フォーマットおよび波長変換が正常に動作していることが確認され、

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178

すべての波長に対してエラーフリー動作が確認できた。各波長に対してBERが910−となる受信感度

を 図-11 に示す。波長1530.33 nmにおいて、 大パワーペナルティ3.45 dBが観測された。このパワ

ーペナルティはEDFA4の雑音特性に起因するものと考えられる。

(a)1530.33 nm (b)1546.12 nm

(c)1555.75 nm (d)1569.59 nm

図-9. 変換されたBPSK信号の光スペクトル.

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図-18. バランス受信器で観測された信号波形.

図-10. ビット誤り率. 図-11. BER=

910−における受信電力.

EDFA特性の影響を除いて変換されたRZ-BPSK信号の品質の波長依存性を評価するために、 1

ビット遅延干渉計の前でRZ-BPSK信号の受信OSNRを測定した。受信OSNRを測定するために、

EDFA4 にCW光を入力し、可変光減衰器を用いて入力電力を -20 dBm から -45 dBm まで変化さ

せて、光スペクトラムアナライザを用いて受信OSNRを測定した。 NRZ-OOK / RZ-BPSK変調フォー

マット変換を行ったすべての波長について、この測定を行った。OSNRの測定結果を図-12に示す。波

長1530 nm付近では、他の波長に比べて受信OSNRの明らかな劣化が観測された。このことは1530

nmで生じた3.45 dBのパワーペナルティがEDFA4の雑音特性によって生じたことを示している。 図

-13はBERが910−となるときの受信OSNRを各波長に対して示している。測定された 大OSNRペナル

ティは 1530 nmから1569 nmの波長域においてわずかに0.86 dBであった。

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図-12. EDFA4のOSNR. 図-13. BERが910−のときの受信OSNR.

図-14. NRZ-OOK/RZ-QPSK変換の概略図.

図-15. NRZ-OOK/RZ-QPSK変換の実験系.

(B) OOK-QPSK 変換[1-3][6][11]

(a) 変換の原理

図-14にNRZ-OOK/RZ-QPSK変調フォーマット変換器の概略図を示す。基本的な構成は、上側ア

ームに配置された SOA-MZI OOK/BPSK変調フォーマット変換器 (SOA-MZI#1) と位相シフタ、タン

デム形式で下側アームに配置されたもう一つのSOA-MZI#2からなっている。A.1節で説明した通り、

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SOA-MZI OOK/BPSK 変換器はNRZ-OOKデータ信号をRZ-BPSK信号に変換する。波長 0λ の

NRZ-OOK データ信号 1 および 2 はMZI (ポート1)の上側アームとMZI (port 3)の下側アームに、

それぞれ制御パルス1および2として入射する。波長 1λ のRZクロックパルス列と波長 2λ のCW光は

MZI (ポート2)にそれぞれプローブパルスおよびアシスト光として入射する。NRZ-OOK データ信号1

が "1" であるか "0"であるかによって、SOA-MZI#1を通過後のプローブパルスの位相はそれぞれ

"0" または "π "に変調される。一方、 2/π 位相シフタが前置されていることにより、データ信号2

が"0" であるか "1"であるかによって、SOA-MZI#2を通過後のプローブパルスの位相は " 2/π " ま

たは " 2/π− " に変調される。SOA-MZI#1と#2を通過後、プローブパルスは等しいピーク電力を持

ち、制御パルス1と2のそれぞれの組み合わせに対して直交した干渉を生じる。出力におけるプローブ

パルスは、直交干渉によって入力信号と同一のピーク振幅となり、制御パルス1と2のそれぞれの組み

合わせに対して4つの異なる位相を持つ。よって、NRZ-OOKデータ信号をRZ-QPSK信号に変換する

ことができる。 受信機では、変換されたRZ-QPSK信号を元のディジタルデータに復調するためにコヒ

ーレント検波を用いることが望ましい。コヒーレント検波の代りに、遅延干渉計と簡単な電子回路からな

るデコーダの組み合わせを復調器として用いることもできる。以下に示す実験では、電子的なデコー

ダを用いる代わりに、データ1と2の組み合わせから計算することができる遅延干渉計内の位相シフト

量に依存する2つの出力パターンを事前にBERテスタ (BERT)に記憶させて誤り率測定を行った。

(a) アイ・ダイヤグラム (b) スペクトル.

図-16. 1-ビット遅延干渉計の前で観測した変換された信号のアイ・ダイヤグラムとスペクトル.

(b) 変換実験

図-15にNRZ-OOK/RZ-QPSK変調フォーマット変換の実験系を示す。 利得ピーク波長が1550nm

の引っ張り歪みバルク構造の活性層を持つ長さ2300 μ mのSOAからなる2つのSOA-MZI波長変換器

がMZIの各アームにモノリシック集積されている。NRZ-OOKデータ信号1および2は波長1535.0 nmの

CW光をLN変調器で10.7 Gb/s、符号長 127 − のPRBSで変調して得た。変調フォーマット変換器のポ

ート1およびポート3に入力されるデータ信号1および2の平均電力はそれぞれ+6.4 dBmおよび+4.6

dBmであった。各入力ポートにおいて、データ信号2はデータ信号1を基準として36ビットだけ遅延して

いる。各入力の偏波はPCを使って 適化されている。RZクロックパルスは波長1542.0 nmのCW光を

LN変調器でNRZ-OOKデータ2から再生されたクロックで変調して得た。ここでは、フォト・ディテクタと

電気回路を含む電気的なクロック再生を用いた。しかし、これらの電気部品は既に提案されている全

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光クロック再生技術で置き換えることが可能である。RZクロックパルスは波長1545.3 nmのCWアシスト

光と合波される。変調フォーマット変換器のポート2に入射されるRZクロックパルスとアシスト光の平均

電力はそれぞれ-0.6 dBmおよび+6.2 dBmであった。変換された信号は、 1-ビット遅延干渉計を通過

後バランス受信器によって受信される。1-ビット遅延干渉計通過後の出力信号について、1-ビット遅

延干渉計での位相シフトが / 4π および / 4π− の場合をそれぞれチャネル1およびチャネル2と定義

する。本実験ではデコーダを用いる代わりに、データ信号1と2の組み合わせから計算した出力パター

ンをBERTに入力してBER測定を行った。

遅延干渉計の直前で観測した10.7Gsymbol/s に変換された信号のアイ・ダイヤグラムとスペクトル

をそれそれ図-16(a)および(b)に示す。観測されたRZパルス列には若干の強度揺らぎが見られた。ま

た、PSK信号の生成を示す搬送波成分が抑圧されたスペクトルが観測された。スペクトルが非対称と

なった原因としては、 2つのSOA-MZI のアーム間のアンバランス、SOAへの入力電流調整の非完全

性、もしくは、SOAおよびEDFAの利得特性の波長依存性などが考えられる。しかし、このことは以下に

示すBER測定に致命的な効果を及ぼすものではない。1-ビット遅延干渉計通過後の変換された信号

のアイ・ダイヤグラムを図-17(a)から(d)に示す。チャネル1のコンストラクティブポート(a)およびデストラク

ティブポート(b)の両出力において観測された明確なアイ開口は、変換された信号の位相が安定に

QPSKフォーマットで変調されていることを示している。(c)および(d)に示すように、チャネル2について

もほぼ同様のアイ・ダイヤグラムが観測された。このことは MZIでの干渉によって、変換された信号の

位相がQPSK 信号の形式に適切に変調されていることを示している。チャネル1および2における変換

された信号のBERを図-18に示す。2つのBERカーブはほぼ等しく、両信号ともにほぼ同じ受信感度で

あった。以上の結果より、提案した方法を用いて 2つのNRZ-OOK信号をRZ-QPSK信号に変換でき

ることを示すことができた。

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(a) チャネル 1 – コンストラクティブ出力. (b) チャネル 1 – デストラクティブ出力.

(c) チャネル 2 – コンストラクティブ出力. (d) チャネル 2 – デストラクティブ出力.

図-17. 1-ビット遅延干渉計通過後の変換された信号のアイ・ダイヤグラム.

図-18. 計測されたビット誤り率.

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184

7.3 IIT Kharagpur の成果

7.3.1半導体増幅器の波長およびフォーマット変換器への応用[14]

非線形性の飽和電力が高いことおよび高速応答性を活かして SOA を信号処理に用いることができ

る。飽和領域においては、相互利得変調(Cross-Gain Modulation : XGM)を用いて SOA を波長変換

に用いることができる。 ここでは、10 Gb/s の信号で NRZ(Non-Return-to-Zero)変調された光入力に

対する SOA 中での XGM 効果について、スプリット・ステップモデルを用いた数値シミュレーションを行

う。このモデルに基づいて、入力ポンプ光の電力およびプローブ光の波長に対する、変換された信号

の消光比の変化を調べる。波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing : WDM)に基づく将来の

全光ネットワークシステムへの応用を考える上で、波長変換は光通信に必須の技術である。波長変換

は、ネットワークの制御および、サブネットワーク内での異なる波長の割り当てに柔軟性を持たせること

によって、小規模なサブネットワークの管理を行う上で必要である。SOA には電流注入が必要である

が、そのサイズが小さく、チップへの集積化が容易であることから、将来の全光通信への応用の有望

な候補とされてきた。 波長変換を行う方法としては、SOA 中で生じる非線形効果、すなわち、相互利

得変調 (XGM), 相互位相変調(Cross Phase Modulation : XPM) および四光波混合(Four-Wave

Mixing : FWM) を用いる方法がこれまでに示されてきた。なかでも、XGM は も簡便で、入力信号の

偏波に無依存な方法である。

XGM では、変調された(ポンプ)光の電力は十分大きく、活性領域でのキャリア密度の消失のために

SOA は飽和状態である。よって、プローブ信号の利得は小さくなり、結局、ポンプ光に対して論理反

転したデータでプローブ光が変調される。図-19 に、ポンプ光とプローブ光が同じ方向に伝搬する

SOA 中における XGM によって波長変換を行う方法の概略図を示す。この構成では、出力においてポ

ンプ光からプローブ光を分離するために帯域通過フィルタが必要であり、同じ波長への変換を行うこと

はできない。これらは、逆方向伝搬構成とすることによって解決することができる。しかし、この構成で

はポンプとプローブ信号が同時に伝搬しないので、高い信号レートでは動作しないという欠点がある。

ここでは、時間的に変化する光信号を考えるために以前に示したモデルを拡張し、NRZ パルスに

変調された入力光信号に対する、XGM を用いた SOA の波長変換特性についてシミュレーションを行

う。このモデルを用いて、プローブ光の波長とポンプ光の消光比に対する変換された信号の消光比の

変化について調べ、 他の文献の結果と比較を行うことにより、我々のモデルの妥当性について検証

する。

(A) SOA 中での XGM のモデリング

キャリア密度に対するレート方程式に基づいて解析を行う。ここでは、ASE 雑音と FWM のようなそ

の他の非線形効果については無視する。SOA の活性領域におけるキャリア消失は、活性領域を同時

に伝搬するポンプ光、プローブ光の両方に対して考慮される。入力光電力は次式に従って光強度に

変換される。

図-19. SOA 中での XGM を用いた波長変換.

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185

(17)

ここで、Pin は入力光電力であり、Aeff は SOA の活性領域の実効断面積である。SOA に対するキャリ

ア密度のレート方程式は

(18)

であり、右辺の第一項はポンプ電流 I による活性領域内のキャリア密度の増加を表す。e は電子の

電荷量であり、V は SOA の活性領域の体積である。第二項は自然放出によるキャリア密度の消失を

表し、τs はキャリア寿命である。第三項は入力信号光 Isig (ポンプ光とプローブ光)の増幅による活性領

域内部でのキャリア密度の消失を表す。 SOA の活性領域を伝搬する、ある時刻 ( )gvztt /'−= での信

号光強度は次式で与えられる。

(19)

ここで、Iin はポンプ光とプローブ光両方の入力光強度を表し、ε ( = εCH

+ εSHB

) はスペクトルホールバ

ーニングとキャリアヒーティングによるトータルの利得圧縮係数を表す。S は時刻 t におけるセグメント

中での全光子密度であり、Γ は閉じ込め係数、α は SOA の損失係数である。XGM をモデリングする

上で重要な SOA のパラメータを表-2 に示す。 これらのパラメータは文献に掲載されている値を用い

た。

表-2. シミュレーションに用いた SOA のパラメータ.

シンボル パラメータ 値 単位

Γ 閉じ込め係数 0.3

α 損失係数 2000 m-1

ε 利得圧縮係数 1.5x10-23 m3

w 活性領域の幅 1.33 μm

D 活性領域の厚さ 0.3 μm

N0 透明領域でのキャリア密度 0.85x1024 m-3

vg 群速度 8.43x107 m/s

a0 微分利得 3x10-20 m2

τs キャリア寿命 100 ps

(B) シミュレーション結果と考察-NRZ 信号の波長変換-

ここでは、SOA 中の XGM について同方向伝搬モデルを考える。入力ポンプ光はビットレート

10Gb/s、符号長 26-1 の擬似ランダム 2 進系列(Pseudo Random Binary Sequence : PRBS)で変調され

た NRZ パルスである。PRBS の符号長はシミュレーションに要する時間によって制限されている。波長

1550nm のポンプ光信号と、その入力信号に対応する波長 1535nm の変換された出力信号を図-20

に示す。ポンプ光信号の平均電力は-8 dBm であり、消光比は 20dB であった。また、プローブ光の電

sig

s

gIdn I ndt eV hτ ν

= − −

0

( , ) ( ) exp '1

zm

sig ingI z t I t dz

ε⎡ ⎤Γ⎛ ⎞= −⎢ ⎥⎜ ⎟+⎝ ⎠⎣ ⎦∫

( )( ) inin

eff

P tI tA

=

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力は-15 dBm であった。変換された信号の波形はキャリア寿命に依存する。 信号の周波数に対して

より短い寿命では、変換された出力信号の波形はよりよく保存される。変換された信号のアイ・ダイヤ

グラムのシミュレーション結果を図-21 に示す。この場合、変換された信号の消光比は 8dB 程度であ

る。入力ポンプ光電力に対する変換された信号電力の変化を図-22 に示す。入力ポンプ光電力が増

加すると、変換された信号の電力が減少している。このことは、一般的には、SOA の利得が大幅に抑

圧されるという事実によるものである。 入力プローブ信号光電力の増加は、変換された信号光電力を

強調するが、プローブ光電力が大きい場合には消光比を悪化させる。 入力ポンプ光電力に対して、

アップコンバージョンされた場合と、ダウンコンバージョンされた場合の、プローブ信号の消光比の変

化をそれぞれ図-23 および図-24 に示す。アップコンバージョンされた信号はダウンコンバージョンさ

れた信号に比べてより小さな消光比となっている。

図-25 に示すとおり、プローブ光の波長に対する変換された出力信号の消光比の変化は、XGM はア

ップコンバージョンよりもダウンコンバージョンの方が有利であることを示している。なぜなら、プローブ

信号の波長が増加すると、変換された信号の消光比が劣化するためである。 プローブ光波長に対す

る消光比の変化は、我々のモデルで考えた材料利得 gm の特性に起因する。図-26 には 2 つの異な

るキャリア密度について、信号光の波長に対する材料利得の変化を示す。キャリア密度が増加すると、

利得ピークが短波長側にシフトしている。ポンプ信号の左側における 2 つのカーブ間の利得の違いは

(a) (b) 図-20. 波長 1550nm の入力 NRZ パルス (a) と波長 1535nm の変換された出力 NRZ パルス(b).

このとき, 信号の伝送レートは 10Gb/s であり, PRBS の符号長は 26-1 である.

図-21. 変換された信号のアイ・ダイヤグラム. 図-22. 入力ポンプ光電力と出力 CW 電力の関

係.ポンプ光およびプローブ光の波長はそれぞ

れ 1550nm.1540nm であり, I = 200mA である.

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右側に比べて比較的大きく、 それがアップコンバージョンに比べてダウンコンバージョンが有利にな

る原因と考えられる。

図-23. ポンプ光電力に対する変換された信号の

消光比の変化.ポンプ光およびプローブ光の波

長はそれぞれ 1550nm および 1540nm である.

図-24. ポンプ光電力に対する変換された信号の

消光比の変化.ポンプ光およびプローブ光の波長

はそれぞれ 1550nm および 1560nm である.

図-25. プローブ CW 光の波長に対する消光比

の変化.ポンプ光の消光比, ビットレート, 波長

はそれぞれ 20dB, 10Gb/s, 1550nm である.

図-26. キャリア密度をパラメータとする材料利得

gm の波長依存性.

8.まとめと今後の課題

本共同研究において、SOA の動作シミュレーションコードを開発した。また、開発したコードを用い

て、XGM に基づく波長変換器の静的および動的な特性予測を行った。さらに、NRZ-OOK/RZ-PSK

変調フォーマット変換器の動作確認実験を行った。開発した変調フォーマット変換器は 40 Gb/s よりも

高速なビットレートにおいて用いられると考えられる。なぜなら、位相変調フォーマットはそのような高

ビットレートにおいてより有利になるからである。実システムに適用する前に変換ペナルティについて

のさらなる研究を行う必要があるが、この変調フォーマット変換器は将来の全光ネットワークにおいて

MAN と WAN を接続するゲートウェイノードにおいてキーとなる技術になるであろう。

今後の課題としては、入力信号の位相に対するキャリア密度の変化の効果を含めることによって

BPSK や DPSK 変調された信号に対する波長変換の効果に対して考察を行うこと、より高速のビットレ

ートの信号が受ける効果が考慮できるようにモデルを修正すること、波長変換や論理ゲート動作など

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に応用できる XPM や FWM などの、SOA の他の非線形効果に関するシミュレーションコードを開発す

ること、などが挙げられる。

9. 研究成果の発表

学術論文誌 (2件)

[1] K. Mishina, S. M. Nissanka, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “All-optical modulation format conversion from NRZ-OOK to RZ-QPSK using parallel

SOA-MZI OOK/BPSK converters,” Optics Express, Vol. 15, No. 11, pp. 7774-7785, June 2007.

[2] S. M. Nissanka, K. Mishina, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “Wavelength conversion characteristics of SOA-MZI based all-optical NRZ-OOK to

RZ-BPSK modulation format converter,” IEICE Trans. Commun., Vol. E91-B, No. 7, pp.

2160-2164, July 2008.

国際会議の論文 (査読付)(5件)

[3] K. Mishina, S. M. Nissanka, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “All-optical NRZ-OOK to RZ-QPSK error-free conversion at 10.7Gsymbol/s using

parallel SOA-MZI OOK/BPSK converters in a MZI configuration,” Proc. of the Optical Fiber

Communication Conference & Exposition (OFC/NFOEC 2007), Anaheim Convention Center,

CA, USA, Paper PDP2, March 2007.

[4] K. Mishina, S. M. Nissanka, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “All-optical NRZ-OOK to RZ-QPSK conversion using parallel SOA-MZI OOK/BPSK

converters,” Proc. of the Conference on Lasers and Electro-Optics/the Quantum Electronics

and Laser Science Conference (CLEO/QELS 2007), Baltimore Convention Center, Baltimore,

Maryland, USA, Paper CTuR3, May 2007.

[5] S. M. Nissanka, K. Mishina, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “Wavelength conversion characteristics of SOA-MZI based all-optical NRZ-OOK to

RZ-BPSK modulation format converter,” Proc. of the 12th Optoelectronics and Communications

Conference / 16th International Conference on Integrated Optics and Optical Fiber

Communication (OECC/IOOC2007), Pacifico Yokohama, Yokohama, Japan, 10D2-4, July 2007.

[6] S. M. Nissanka, A. Maruta, S. Mitani, K. Shimizu, T. Miyahara, T. Aoyagi, T. Hatta, A. Sugitatsu,

and K. Kitayama, “All-optical format conversion from NRZ-OOK to RZ-QPSK using integrated

SOA three-arm-MZI wavelength converter,” Proc. of the Optical Fiber Communication

Conference & Exposition (OFC/NFOEC 2009), San Diego Convention Center, CA, USA, Paper

OThM5, March 2009.

[7] I. Takamatsu, S. M. Nissanka, A. Maruta, K. Shimizu, T. Miyahara, T. Aoyanagi, A. Sugitatsu,

and K. Kitayama, “All-optical XOR gate using integrated SOA three-arm-MZI wavelength

converter,” Proc. of The 35th European Conference and Exhibition on Optical Communication

(ECOC2009), Vienna, Sept. 2009.

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フォーラム・ワークショップ等の発表論文 (7件)

[8] A. Maruta, “All-optical signal processing by the use of nonlinear devices,” Digest of the 1st

Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication

Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 106-112, Gakushi-Kaikan,

Tokyo, Japan, Dec. 2006.

[9] K. Hussain, R. Munshi, P. K. Datta, R. Gangopadhyay, S. Debnath, S. Gupta, and A. Maruta,

“Modelling and characterization of a semiconductor optical amplifier,” Digest of the 2nd

Research Forum of Japan-Indo Collaboration Project on Infrastructural Communication

Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 74-79, Kyushu University,

Fukuoka, Japan, July 2007.

[10] P. K. Datta, K. Hussain and R. Gangopadhyay, “Dynamical characterization of an SOA,” Digest

of the 3rd Research Forum of Japan-Indo Collaboration on Infrastructural Communication

Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 97-100, Indian Institute of

Technology Delhi, New Delhi, India, Dec. 2007 .

[11] K. Mishina, S. M. Nissanka, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “All-optical modulation format conversion from NRZ-OOK to RZ-QPSK using parallel

SOA-MZI OOK/BPSK converters,” Digest of the 3rd Research Forum of Japan-Indo

Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully

Ubiquitous Information Society, pp. 88-96, Indian Institute of Technology Delhi, New Delhi, India,

Dec. 2007.

[12] K. Hussain, M. Presi, G. Contestabile, P. K. Datta, and E. Ciaramella, “Split-step bidirectional

model for predicting the steady-state characteristics of a bulk semiconductor optical amplifier,”

Digest of the 4th Research Forum of Japan-Indo Collaboration on Infrastructural Communication

Technologies Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 110-115, Tokyo Institute of

Technology, Tokyo, Japan, July 2008.

[13] S. M. Nissanka, K. Mishina, A. Maruta, S. Mitani, K. Ishida, K. Shimizu, T. Hatta, and K.

Kitayama, “Wavelength conversion characteristics of SOA-MZI based all-optical NRZ-OOK to

RZ-BPSK modulation format converter,” Digest of the 4th Research Forum of Japan-Indo

Collaboration Project on Infrastructural Communication Technologies Supporting Fully

Ubiquitous Information Society, pp. 99-103, Tokyo Institute of Technology, Tokyo, Japan, July

2008.

[14] K. Hussain, G. Contestabile, M. Presi, P. K. Datta, and E. Ciaramella, “Modeling of cross gain

modulation in a semiconductor optical amplifier for wavelength conversion,” Digest of the 5th

Research Forum of Japan-Indo Collaboration on Infrastructural Communication Technologies

Supporting Fully Ubiquitous Information Society, pp. 105-109, Jadapur University, Kolkata, India,

Dec. 2008.

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IV. 自己評価

1.目標達成度

共同研究体制及び各サブテーマの研究成果に関して、当初の目標を達成した。結果の詳細は上記

III.1.研究成果の概要を参照。

2.研究成果

当初の研究計画を遂行し、所望の研究成果を上げた。結果の詳細は上記 III.1.研究成果の概要、

III.1.(4)研究成果の科学的・技術的価値について、及び III.3.研究成果・サブテーマ毎の詳細を

参照。

3.研究計画・手法・実施体制の妥当性

研究計画・手法・実施体制は妥当であった。結果の詳細は上記 III.1.研究成果の概要、III.2.共

同研究体制、及び III.3.研究成果・サブテーマ毎の詳細を参照。

4.実施期間終了後における取組の継続性・発展性

実施期間終了後は、サブテーマ毎に共同研究プロジェクトを計画する。現時点では、共同研究の継

続が確定したものが 1 件、計画を検討中のものが 3 件ある。結果の詳細は上記 III.2.(3)実施期間終

了後における取組みの継続性・発展性を参照。

5.その他、特にアピールしたい点

無線通信と光通信はそれぞれ異なった歴史的経緯を経て発展してきたが、マイクロ波と光波がい

ずれもマクスウェルの方程式で記述される電磁波であることから、両者の技術には共通するものが

多い。無線通信の分野では一層の高周波化、広帯域化、小型化の技術が求められており、光通信の分

野では、マイクロ波帯で実用化した様々な機能デバイスとシステムを光の波長領域で実現する技術を必

要としている。しかしながら、無線通信の専門家と光通信の専門家が、一堂に会して、共通の通信基盤

技術について研究討議する国際的取り組みは非常に少ない。無線通信と光通信の分野で国際的に活

躍している日印の専門家集団が参画した本プロジェクトは、そのような取組みを実現したプロジェクトとし

て大きな意義がある。プロジェクトメンバーと研究協力者は、共同研究体制を通して、両技術分野の高度

化のために応用できる様々な考え方や共通の要素技術に対する理解を深めることができた。その結果

は、今後の研究活動に必ずフィードバックされるであろう。