11

特集/ 三重のソーシャルレジャー す 王 い 館 海蔵川~陶栄町界 … · 博 物 館 」 に 隣 接 す る 「 ふ る さ と 広 場 」 に は 約 1 0

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Page 1: 特集/ 三重のソーシャルレジャー す 王 い 館 海蔵川~陶栄町界 … · 博 物 館 」 に 隣 接 す る 「 ふ る さ と 広 場 」 に は 約 1 0

平成二十四年二月発行〈偶数月十五日発行予定〉

企画・編集/RON 

印刷/オリエンタル印刷株式会社 

発行/百五銀行

経営企画部広報CSR課

禁無断転載

166

津市岩田二一―

二七

2月中旬~4月中旬

 「斎宮歴史博物館」に隣接する「ふるさと

広場」には約100本の梅が植えられ、春の

訪れとともに甘い香りを放ちます。毎年、

開花に合わせて「いつきのみや梅まつり」が

開催(本年は2月26日(日)予定)。梅の種

飛ばし大会や、斎王さんとの記念撮影など、

家族皆で楽しめます。

いつきのみや梅まつり(明和町)

明和町観光協会

TEL

0596・52・0055

 

シデコブシは、東海地方の丘陵地帯にの

み生育するモクレン科の樹木。例年3月下

旬ごろから4月上旬にかけ、ピンク色の可

憐な花を咲かせます。約200本が自生

する田光地区の群落は、国指定天然記念物。

「田光資源と環境を守る会」など地域の皆

さんが保全活動に取り組んでいます。

田光のシデコブシ(菰野町)

菰野町教育委員会

社会教育課

TEL

059・391・1160

 

東玉垣町の牛頭天王社(須賀神社)では、

4月の第1土・日曜日に春祭りが執り行

われ、参拝者で賑わいます。祭りで披露さ

れるのが県指定無形民俗文化財の唐人踊

り。ひょうきんな面を被り、奇抜な衣装を

身につけて踊る姿は、江戸時代の「朝鮮通

信使」を表現しているといわれます。

牛頭天王社春祭り(鈴鹿市)

鈴鹿市産業振興部

商業観光課

TEL

059・382・9020

■特集/自然を守る! 自然を楽しむ! 三重のソーシャルレジャー

たびか

ずてんのうしゃ

●いま、グループネット/芸濃ふるさとガイド会 ●みえを歩こう/四日市市 海蔵川~陶栄町界隈

ひがしたまがき

かじんじゃ

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222「四日市ウミガメ保存会」による吉崎海岸の早朝清掃「四日市ウミガメ保存会」による吉崎海岸の早朝清掃「四日市ウミガメ保存会」による吉崎海岸の早朝清掃

111

特 集

三重のソーシャルレジャー

自然を守る!

自然を楽しむ!

365306

368

311

260

422

165

166

23

42

25 東名阪自動車道

伊勢自動車道

近畿自動車道

紀勢線

新名神高速道路

伊勢自動車道

桑竹会

豊田ホタルを育てよう会

四日市ウミガメ保存会

「竹の都・明和」農業生産研究会

牛草山を守る会

NPO法人 ふるさと企画舎

 

海・山・川…。美しい自然に恵まれた三重県。

 

近年、この自然を守りながら、自分も楽しもうと

いう考え方が注目されています。「ソーシャルレ

ジャー」です。

 「ソーシャルレジャー」とは、清掃作業・環境活動・

景観整備などの社会貢献を意味する「ソーシャル」と、

自然体験・地元食材の提供・癒しなどの楽しみを意

味する「レジャー」を組み合わせた言葉。つまり、新

しいボランティアの形です。

 

平成21年にスタートした「美し国おこし・三重」で

は、昨年8月から本年1月にかけて「ソーシャルレ

ジャーで三重の自然を守ろうプロジェクト」を展開。県

内の様々なグループが参加し、反響を呼びました。

 

今回は、その中から6グループの活動を紹介し

ます。皆さんからは、地域の自然や文化を次世代へ

残したいという真摯な思いが伝わりました。

うま

「美し国おこし・三重」って?平成21年から平成26年までの6年間にわたって、地域をよりよくしていこうとする住民の皆さんの活

動をサポートし、特色ある地域資源を生かした自立、持続可能な地域づくりへつなげていく取組みです。

「美し国おこし・三重」実行委員会事務局事務局:三重県政策部「美し国おこし・三重」推進室内

〒514-8570三重県津市広明町13番地(三重県庁2階)TEL 059-224-2644  FAX 059-224-2075ホームページ http://www.pref.mie.lg.jp/UMASHI/HP/E-mail [email protected]

■「美し国おこし・三重」に関する お問い合わせ先

うま

「美(うま)し国おこ「美(うま)し国おこし・し・三重」三重」マスコットキャラクター う~まちゃんマスコットキャラクター う~まちゃん「美(うま)し国おこし・三重」

マスコットキャラクター う~まちゃん

取材

文…中村真由美

撮影………梅川紀彦

中野耕司

尾之内孝昭

ただし※印の写真は取材先から提供していただきました

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 「わぁ、すごい」「きれい…」

 

昨年10月26日の夕暮れ時、県

立桑名西高校へと続く竹林を訪

れた人は、皆一様に感嘆の声を

上げました。暗闇の中にきらめ

くのは、優しいオレンジ色の明

かり。まるで空の星が地上に舞

い降りてきたかのようです。こ

の日開催されたのは「第2回桑

西・竹の十三夜」と題したソー

シャルレジャーイベント。竹林

内に竹灯籠を1,300個設置

し、竹明かりの中でコンサート

を楽しむという趣向です。イベ

ントを主催したのは「桑竹会」の

皆さん。事前に竹林を整備し、

竹灯籠はもちろん、ステージや

ベンチなどもすべて伐採した竹

を利用して造るなどの準備を進

めてきました。

 

もともと桑名は「播磨たけの

こ」などで知られるタケノコの

名産地。かつては美しく整備さ

れた竹林が広がっていました。

しかし近年は、管理が行き届か

ず荒廃するばかり。そんな状況

を見かねて結成されたのが「桑

名の竹林を再生する会」、すな

わち「桑竹会」なのです。

 

会が結成されたのは平成21

年。すでに4か所の私有地竹林

を整備し、今では市外からも依

頼があるといいます。桑名西高

校の竹林整備も2年目を迎え、

子どもたちの通学路が明るく

なったと、保護者からも感謝の

言葉が聞かれます。

 

竹林整備以外の活動も行い、

たとえば、夏には「流しそうめ

ん」大会を実施したり、地域の

「エコフェスタ」などに積極的に

参加し、手作りの竹製水鉄砲で

子どもたちに遊んでもらったり

と、竹にまつわる幅広い活動を

行っています。

 

イベント当日、メンバーは休

む暇もなく作業に専念。急な斜

面を軽々と登っていく姿に頼も

しさを感じます。

 「竹林整備は全身運動。ウォー

キングやジョギングよりも体を

鍛えられるよ」と会長の神谷

二さん。会長は、整備した竹林

に遊歩道を設置して、地域の人

人が集う場所を造りたいなどの

夢も語ってくれました。

 

やがて時刻は午後5時30分、

コンサートがスタートしました。

大震災の被害者への黙とうの後、

披露されたのは桑名西高校の生

徒たちによるアカペラ合唱や、

フォークデュオ「レスカ」による

歌と演奏。そして水谷

美之さ

んのアコースティックギター弾

き語り、伊藤

真山さんと長谷川

恋山さんの尺八演奏へと続きま

す。 「桑名歴史案内人の会」の松

節子さんによる民話・神話語

りの後は、「太陽の宴GROUP」

によるアコースティックギター

と太鼓の演奏が最後を締めくく

りました。地域を愛する皆さん

の歌や演奏は、竹明かりととも

に観客を温かく包みこんでくれ

ました。

桑竹会(神谷

勝二会長)

TEL

090・4444・6803

お問い合わせ

4

美しい竹林、きらめく竹明かり

桑 竹 会

桑名市

かい

ちく

そう

夜の竹林を彩る幻想的な竹明かり

急な斜面での点灯作業

桑名西高校の生徒たちによる合唱風景 「桑竹会」の皆さん(前列左から2番目が神谷会長)見る者を癒す優しい明かり

かつ

はりま

3

「第2回桑西・竹の十三夜」の準備風景

よし

しんざん

ざん

れん

ゆき

うたげ

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平成22年7月、近くに林立

するコンビナートの明かりがま

ぶしい四日市市楠町の海岸で、

アカウミガメの産卵が確認され

ました。7年ぶりのことでした。

この朗報を心待ちにしていたの

が「四日市ウミガメ保存会」の皆

さん。ウミガメが安心して産卵

できるようにと、平成21年1

月から月1回の早朝清掃を欠か

さず行ってきたのです。

 

早速、産卵場所に案内板を立

て、周囲のゴミを拾うなどした

結果、9月には90匹以上の子ガ

メがふ化。同保存会のメンバーが

見守る中、無事海へと向かって

いきました。

 

子ガメの感動的なふ化から1

年余り、昨年11月6日の午前

8時に吉崎海岸を訪ねると、あ

いにくの天候にもかかわらず、

30数名の人々が集まっていまし

た。保存会メンバーに加えて楠

地区まちづくり協議会の皆さん

や、親子連れの姿も見られます。

それぞれの手には軍手とゴミ袋。

毎月恒例となった「ウェルカメ

よっかいち早朝清掃」が始まり

ます。

 「最初、小豆ぐらいの黒い小

さな頭が見えたと思ったら、急

に火山が噴火したみたいに次々

と出てきて…」と、ふ化の様子

を昨日のことのように話してく

れるのは会長の森

一知さん。

 

森会長は、もともと市内にま

ちかど博物館「かめ・かめ博物

館」を開館するほどのカメ好き。

しかし当初ウミガメに関しては

知識もなかったため、専門家の

意見を聞いたり、メンバーと勉

強会を重ねてきたといいます。

 

この日も専門家の指導に従い、

外来植物のビロードモウズイカ

を駆除。外来種は繁殖力が高く、

ハマヒルガオやハマダイコンな

どの貴重な海浜植物の生育を脅

かす存在です。

 

また、ペットボトルや空き缶

などのゴミはもちろんのこと、

打ち寄せられた流木も清掃の対

象に。流木は一見害が無さそう

ですが、堆肥になることで砂浜

の生態系を変えてしまうからな

のです。

 

約1時間の清掃の後は、毎回

多彩なゲストを招いて行われる

自然勉強会。この日は民族楽器

演奏グループ「Maktub」が

ゲストです。オーストラリアや

バリ島の楽器や、廃材を利用し

た手作り楽器に子どもたちも興

味津々。楽しい演奏会となりま

した。

 

日本で誕生したアカウミガメ

は、15年から20年の歳月を大

海原で過ごした後、再び産卵の

ために日本に戻ってくるといわ

れます。息の長い活動がこれか

らも続いていくことでしょう。

6

「おかえり」と、ウミガメにいえる海岸へ

四日市ウミガメ保存会

四日市市

手作り楽器に大喜びの子どもたち

清掃活動の参加者全員で演奏会

早朝清掃に参加した皆さん 清掃風景

平成22年9月、子ガメのふ化の様子

5森会長

四日市ウミガメ保存会

(森

一知会長)

TEL

090・5111・0297

お問い合わせ

くすちょう

よしざき

かずとも

マクトゥーヴ

早朝の吉崎海岸

※印の写真は取材先から提供していただきました

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 「夏は夜。(中略)闇もなほ、蛍

のおほく飛びちがひたる。また、

ただ一つ二つなど、ほのかにう

ち光りて行くもをかし。」

 

平安時代、清少納言が随筆『枕

草子』に記したように、私たち

日本人は古くから、ホタルのは

かなげな光を愛してきました。

 

川越町の豊田地区の小川では、

かつてホタルの乱舞が見られた

といいます。しかし宅地造成が

進むにつれて数が激減。何とか

しようと、自宅でゲンジボタル

の幼虫を育て始めたのが今出

紹さん。10年前のことでした。

 

平成17年、試行錯誤の末にホ

タルを卵から育てることに成功

した今出さんに心強い仲間がで

きました。早川

和治会長率いる

「豊田ホタルを育てよう会」の皆

さんです。以来、毎年3月下旬

ごろに子ども会と共同で放流会

を実施。卵・幼虫・サナギ・成虫

と姿を変えるホタルの生育環境

を維持するための環境整備や清

掃などを実施した結果、平成

21年に369匹の飛翔を確認す

るまでに復活しました。

 

昨年6月には「ホタル観賞会

&ジョイントコンサート」を開

催。川越高校と川越中学校の吹

奏楽部の生徒60人による演奏

は大勢の観客を魅了しました。

 

また10月に「ホタルの仲間大

集合」と題したソーシャルレジャー

イベントを実施。専門家による

講演を聞いたり、ホタルの折り

紙づくりなどを楽しんだ後、生

息地の清掃ウォーキングが行わ

れました。

 

やがて桜の蕾ふくらむ3月が

到来。豊田ではホタルの幼虫を

放流する子どもたちの輝くよう

な笑顔が見られるでしょう。

豊田ホタルを育てよう会

(早川

和治会長)

TEL

090・7037・6166

お問い合わせ

8

子どもたちと育む地域の光

はぐく

豊田ホタルを育てよう会

川越町

とよ

「ホタル観賞会&ジョイントコンサート」

ホタルの幼虫の放流風景

「ホタルの仲間大集合」に参加した皆さん7

せいしょう

のそうし

なごん

まさ

つぐ

かずはる

つぼみ

まくら

 「かの斎宮のおはします所は

竹の宮となむいひける」

 

平安時代成立の『大和物語』に

もあるように、斎宮の里・明和

町は、「竹の都(宮)」と呼ばれて

いました。

 「『竹の都・明和』農業生産研

究会」は、竹を活用した堆肥作

りなどを始めとして、多角的な

環境活動を行うグループ。昨秋、

活動拠点の西村牧場を訪ねると、

米沢

正郎代表が温かく迎えて

くれました。

 

代表がまず見せてくれたのが、

竹を細かく砕いたパウダー。サ

ラサラした黄色い粉は、ほんの

り竹の香りがします。現在、この

パウダーを原料に堆肥作りを研

究中で、完成すれば有機農法が

実現するだけでなく、荒廃した

竹林の整備、間伐材の利用にも

なるのです。

 

続いて、こんにゃく畑も見せ

てもらいました。いずれは町の

新たな特産品となるように、種

芋から育てているのです。4月

に開催した「森の音楽祭・バンブー

オーケストラin

明和」では、竹

筒楽器の演奏を楽しむ一方で、

この種芋の植え付け体験を実施。

そして10月には、ソーシャルレ

ジャーイベントとして「ゴミゼ

ロ収穫祭&リサイクルバザー」

を開催しました。収穫したこん

にゃく芋の直径は約15センチ

メートル。予想外の大きさに子

どもたちは大喜びだったとか。

代表からも笑顔がこぼれます。

 

会の活動は平成21年に始まっ

たばかり。新たな循環型社会実

現に向けての、地道で着実な歩

みはまだまだ続きます。

「竹の都・明和」農業生産研究会

(米沢

正郎代表)

TEL

090・7912・6975

お問い合わせ

竹から始まる〝エコ・ビレッジ〞

「竹の都・明和」農業生産研究会明和町

珍しいこんにゃくの花が咲くこんにゃく畑

こんにゃくの種芋の植え付け作業

米沢代表 メンバーの上田 清さん

やまと

せいろう

※ 放流のため幼虫を分けてもらう子どもたち※

「森の音楽祭・バンブーオーケストラin明和」の様子※

※印の写真は取材先から提供していただきました

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 〝牛草山―〞どこか牧歌的な

響きを持つ山は、度会町と南伊

勢町の境界に位置します。その

標高は550.3メートル。昭

和26年(1951)ごろまでは、

その名のとおり、農耕や運搬用

に飼育していた牛の草刈り場が

点在していました。『度会町史』

によれば、かつては「どの家で

も(中略)庭先につながれた牛や

放し飼いの鶏の姿が眼についた

もの」でした。しかしいつしか

牛などを飼育する農家は激減。

牛草山の草刈り場も姿を消して

しまいました。

 

また、30年ほど前までは牛草

山登山道途中の浅間山まで遠足

に行くのが定番でした。当時は

見晴らしもよく格好のハイキン

グコース。ところが、林業従事

者の数が減り、炭焼きのための

間伐などが行

われなくなっ

た結果、子ど

もたちの姿も

見られなくな

りました。

 

牛草山の荒

廃は、かつて

の農山村の風

習や山岳信仰の消滅を意味しま

す。これをくい止め、子どもた

ちに残してあげたいと考えたの

が、日向地区の住民16人。こう

して平成21年に「牛草山を守る

会」が結成されました。会長は橋

丈男さん。長年、登山口近く

に住み、会の結成以前から登山

者にガイドマップを配ったり、

依頼に応じて道案内もしてきた

山の達人です。

 

結成以来、年に数回のペース

で清掃登山などを行ってきた同

会では、昨年10月29日にソー

シャルレジャーイベントとして

「牛草山リフレッシュ登山」を開

催。25名の募集人数を超える

応募がありました。当日は天気

もよく、絶好の登山日和。片道

約3時間の道程を参加者全員が

満喫した様子でほっとしたと、

橋本会長始め、副会長の橋本

郎さん、庶務会計の中野

直浩さ

んが笑顔で語ってくれました。

 

3人からは、登山道途中にあ

る「水呑休み場」や大島桜、頂上

からの絶景などについて聞いた

ほか、山岳信仰の対象である「山

の神」や「木花咲耶姫命」像に関

する祭りの変遷についても教わ

りました。山を治め、農民・猟師

たちの守り神でもある「山の神」

では、かつては年2回祭りを執

り行いましたが、現在は麓の正

傳院境内で年に1回、「お白餅」

と川エビを樫の葉に乗せて供え

るように。また、戦前までは富

士山が望めたという場所に建つ

「木花咲耶姫命」像では「浅間山

祭り」が行われ、若者が川に入っ

て水垢離をして「六根清浄」と唱

えながら山に入ったものですが、

現在は簡略化され、山に登らな

い形に変化してきたといいます。

話を聞いていると、形式は変わっ

ても皆さんの山に対する畏敬の

念に変わりはないことがわかり

ました。

 

最後に会長は、牛草山を一望

できるスポットへと案内してく

れました。「あれが牛草山です」

と指さす会長

からは、牛草

山、そして度

会町の自然・

文化を誇りに

思う気持ちが

伝わってきま

した。

牛草山を守る会(橋本

丈男会長)

TEL

090・3301・5498

お問い合わせ

10

山岳信仰が息づく山を次世代へ

牛草山を守る会

度会町

日向浅間山にある「木花咲耶姫命」像

「牛草山リフレッシュ登山」に参加した皆さん

「山の神」 水呑休み場 牛草山頂上から望む絶景

牛草山遠望

9中野さん(左)、橋本会長(中央)、橋本副会長(右)

ひなた

たけ

よし

せんげん

ろっこんしょうじょう

さん

けい

なおひろ

みずのみ

この

もち し

ょう

しら

でんいん

かし は

なさくやひめのみこと

※※※※

※ 「牛草山リフレッシュ登山」の様子※

※印の写真は取材先から提供していただきました

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 「北牟婁郡には海山町(現在の

紀北町海山区)と云う地名があ

るのを見ても知れるとおり、海

と山との最も近く迫り合ってい

る場所で(中略)海も山も天然の

ままの姿をよく保っている…」。

 

昨秋11月27日、「キャンプinn

海山」を訪ねると、文豪・佐藤

春夫が『山妖海異』で指摘したと

おりの光景が広がっていました。

視線を上げれば迫りくる山々、

下に落とせば驚くほど透き通っ

た銚子川が流れ、海へと注いで

いきます。

 「銚子川で泳いだ人はみんな

虜になるね」と話してくれたの

は、「NPO法人ふるさと企画

舎」の理事長、田上

至さん。

来訪

者には〝第二のふるさと〞に、地

元住民には誇りにできる〝ふる

さと〞でありたいとの思いから

その名を付けたという法人は、

平成18年の設立以来「キャンプ

inn

海山」の管理運営を担ってい

ます。

 

同キャンプでは、豊かな自然

を活かした体験企画が大好評。

夏に人気なのは、銚子川上流域

の魚飛渓の天然滑り台。3メー

トルもの落差のある岩を勢いよ

く飛び込むのは、大人でも足が

すくむといいます。また、カナ

ディアンカヌーもおすすめ。川

底までクリアに見えるため、ま

るで空を飛んでいる気分とか。

さらに、田上理事長は河口部で

見られる神秘的な現象〝ゆらゆ

ら帯〞について教えてくれまし

た。透明度の高い銚子川の水が

海水と混ざると、比重の重い海

水は下に潜り、軽い川の水は上

を流れます。するとアイスティー

にガムシロップを入れた時にで

きるような白っぽいゆらめきが

見られるというのです。

 

こうして銚子川の虜になった

人たちの中には、普段は別の仕

事をしながら、イベントや清掃

作業などの際に手伝いに来る人

もいます。この日のソーシャル

レジャーイベント・「サインクリーン

アップ『看板や標識を磨こう!』」

にも、そうした会員の一人、丸山

小よりさんの姿もありました。

丸山さんからは、冬の清五郎滝

の氷瀑も何度も見たくなる絶景

だと教わりました。

 

多くの人々を惹きつけてやま

ない銚子川ですが、実は平成16

年の台風以降、その姿を大きく

変えてしまったといいます。ま

た、心ない来訪者による空き缶

やタバコの吸殻、バーベキュー

用の網などのゴミも目立ちます。

そこで同法人では、銚子川を本

来の美しい姿に戻そうと、定期

的に清掃活動を実施してきまし

た。そして今回のサインクリー

ンアップでは、川沿いの看板や

標識を清掃。真っ黒に汚れた案

内標識をタワシで磨くと、かわ

いいカッパのイラストが現われ

ました。

 

1時間以上かけて流域の案内

標識などを清掃した後は、スタッ

フの森本

真理さんたちが準備

した白玉ぜんざいを食べながら

の報告会。銚子川の魅力を損な

うことなく、また来訪者に安全

で分かりやすい看板にするには

どうすればよいかなど、真剣な

議論が交わされました。温かく

て甘いぜんざいには、ふるさと

への想いが詰まっていました。

12

銚子川を日本一の川へ

NPO法人

ふるさと企画舎

紀北町「サインクリーンアップ『看板や標識を磨こう!』」に参加した皆さん ぜんざいを食べながらの報告会

11

NPO法人ふるさと企画舎

(キャンプinn

海山)

TEL

0597・33・0077

お問い合わせ

さんようかいい

せい

さひょうばく

すいがら

ごろうたき

銚子川沿いに点在する看板や標識を磨く皆さん

銚子川の清掃風景※銚子川沿いに建つ「キャンプinn海山」

田上理事長※印の写真は取材先から提供していただきました

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1314

いま、グループネット

三重県内で活動するグルー

プを紹介する「いま、グルー

プネット」。今回は、津市北

部の芸濃町に誕生した観光

ボランティアガイド「芸濃ふ

るさとガイド会」をご紹介し

ます。結成して1年が過ぎ

たところですが、会員同士の

結束も固く、和気藹々とした

雰囲気。集まった皆さんは意

欲に充ちていました。

■お問い合わせ〒514-2292津市芸濃町椋本6141-1津市芸濃総合支所地域振興課TEL059-266-2516FAX059-266-2522

平成22年11月、勉強会や町歩き会などをとおして集まった有志24人によって結成される。月1回の勉強会を行い、町の名所を無料で案内する。現在会員は町内外の50~70歳代の28人。年会費1000円。会員募集中

芸濃ふるさとガイド会

――結成して一年あまり。い

かがですか。

ガイド会…実は結成前からも

案内をしていたのですが、初年

度の平成22年度は14件286人、

23年度の上半期で18件473人

をガイドしています。

 

これまで芸濃町には観光ガイ

ド会がなかったので、行政が主

催した講演会や町歩き会などで

郷土に対して興味のある人たち

が集まり、ガイド会が結成され

ました。新しくできたばかりで

すから、年間計画を立て、月1

回の勉強会を行っています。町

内のエリアごとに4、5キロの

コースを作り、午前中は会議室

で勉強をして、午後には現地で

研修という一日がかりのもの。

また、津市には12の地域にボ

ランティアガイドの会があり、

その研修などに積極的に参加し

て、ほかの地域のガイド会と交

流を図っています。 

 

近頃は町内でも知られるよう

になって、揃いのベストを着て

ガイドをしていると地元の人が

助けてくれたり、追加の説明を

してくれたりしますよ。

――芸濃町の見所は。

ガイド会…さまざまな特徴の

ある町でしてね。まずは伊勢別

街道の宿場町、椋本。旅籠も残り、

古い家並みが魅力です。そして、

磨崖仏で三十三所観音めぐりが

できる石山観音。これほどの規

模の磨崖仏は日本でも珍しく、

訪れる人が多いところです。ほ

かにも、林地区、楠原地区、河内

渓谷など見所があります。芸濃

町では春、3度の桜が楽しめま

してね、3月下旬に町内のソメ

イヨシノが咲きます。そしてや

や遅れて4月上旬に山間の河内

地区が、さらに中旬にはフゲン

ゾウという珍しい種類の龍王桜

が見頃となります。

――皆さん、楽しくガイドをさ

れている様子です。

ガイド会…掘れば掘るほど、新

しい疑問が出てきます。調べる

と他の地域とのつながりがわか

ったりして、広がっていくので

すね。例えば、長徳寺には室町

末期の剣客、塚原

卜伝の位牌が

残っているのです。なぜ、卜伝

の位牌が芸濃町にあるのか不思

議だったのですが、高弟がその

地域の殿様だったことがわかり

ました。文献や資料に基づいて

研究したり、また文献がない場

合はなぜあるのかを、皆で想像

するのも楽しいですね。

 

それから、やはり案内した方

から「ありがとうございました」

と礼を言われたり、お礼のメー

ルが届くとうれしいですね。ガ

イドをするようになり芸濃町に

来てほしいという気持ちが強く

なりました。

――今後はどのような活動を

したいですか。

ガイド会…芸濃町は観光地で

はありませんが、まずよい所が

たくさんあることを宣伝したい

ですし、それから無料のガイド

会ができたことを知ってもらっ

て、気軽に町を訪れてほしいで

す。それから、やはり会を継続

していきたいですね。それには

新しい会員を増やしたいですし、

小学校などの出前授業などをと

おして、子どもたちにも町の魅

力を知ってほしいですね。

 

私たちは、芸濃町に来ていた

だいたら、何か一つお土産を

持って帰ってほしいと思ってい

ます。仏さんの蓮華台の知識で

もいい、一つ新しいことを知って

帰ってほしいという想いです。

――ありがとうございました。

ふるさとの町を案内すること

に喜びを感じていらっしゃる

のがよく伝わってきました。ガ

イド会は、芸濃総合支所へ申し

込めば、2人から案内してもら

えます。春には桜も楽しみな芸

濃町をじっくり歩いてみては

いかがでしょうか。

インタビュー…千種清美

■ 芸濃町の名所

龍王桜

椋本の旅籠

石山観音

会員が撮りためた写真を使った「名所めぐり」のパンフレット

芸濃ふるさとガイド会の皆さん

町を案内する様子

芸濃ふるさとガイド会

げい

のう

むく

まがい

ちょうとくぼ

くでん

れんげ

だい

ぶつ

うち

りゅうおうざくら

もと

※印の写真は取材先から提供していただきました

※※

Page 9: 特集/ 三重のソーシャルレジャー す 王 い 館 海蔵川~陶栄町界 … · 博 物 館 」 に 隣 接 す る 「 ふ る さ と 広 場 」 に は 約 1 0

1516

1718

四日市萬古の里

海蔵川〜陶栄町界隈

四日市市

START

■行程図 所要時間/約3時間 ※所要時間は、おおよその目安です。

●お詫びと訂正/155号17ページ、本文2段12行目「1億3000年前」は「1億3000万年前」の誤りでした。ここにお詫びし、訂正いたします。

              

 

今回の散策の起点、近鉄「阿

倉川」駅に降り立つと、カラフル

なモニュメントに迎えられまし

た。この大きな萬古焼は、四日

市市制百周年を記念して平成9

年に建立されたもの。地域の永

遠の発展を願う気持ちも込めら

れています。

 

萬古焼の歴史は、江戸時代中

期に始まります。桑名の豪商・

沼波

弄山は、幼少の頃から茶道

に親しみ、趣味で茶道具の数々

を作りました。異国趣味を反映

した斬新な図柄は、幕府からも

高い評価を得ました。

 

弄山が自身の作品に押印した

のが「萬古」あるいは「萬古不易」

の文字。そこには〝永遠に受け

継がれるもの〞という思いが込

められていたのです。

 

弄山の死後、一時途絶えた萬

古焼ですが、江戸時代末期に復

興したのが森

有節・千秋兄弟で

す。有節は急須を木型で作るな

ど、画期的な製法を次々と考案。

色も華麗で、その人気は全国各

地へと広まりました。

 

萬古焼のモニュメントを後に

して南へ向かうと、やがて目の

前に悠然と流れる川が現れまし

た。海蔵川です。かつては近く

まで海が迫り、蔵が建っていた

ことからその名が付きました。

 

川岸には地元の人々が植えた

ソメイヨシノ約500本が並び、

春には淡いピンク色の花が咲き

誇ります。川沿いに整備された

堀川菖蒲園では、初夏にはハナ

ショウブが見ごろを迎えます。

 

またすぐ近くには三ツ谷の一

里塚跡が建っています。四日市

は東海道五十三次の宿場町。東

海道の道筋と幅は国道1号線に

沿って現在も残っていますが、

戦後に近代的な町並みに変わり、

往時を偲ぶのは難しくなりまし

た。一里塚跡はかつての賑わい

を今に伝えているのです。

 

現在は快適な散策が楽しめる

海蔵川ですが、かつては毎年の

ように氾濫し、村人たちは困窮

していました。しかしこのこと

が、萬古焼が四日市で普及する

きっかけとなったのです。

 

江戸から明治へと変わる激動

の時代、海蔵川と三滝川に挟ま

れた地域の窮状を何とかしよう

と考えたのが、末永村の庄屋(村

役)山中

忠左衛門。 〝有節萬古〞

に魅せられていた彼は、萬古焼

を地場産業にすることを決意。

20年近くもの間、研究を重ねま

した。さらにその成果を惜しげ

もなく公開したことで多くの名

人を輩出し、〝四日市萬古〞は明

治時代の四日市繁栄の一翼を担

う産業となったのです。

 

海蔵橋を渡ると、あちこちで

萬古焼の鋳型や急須などが積み

上げられた光景が見られました。

陶栄町ならではといえるでしょ

う。戦前までは海蔵川に沿って

登り窯が並び、煙たなびく光景

が絵ハガキにもなりました。

 

やがて木々が生い茂る一画が

見えてきました。忠左衛門たち

の功績を後世に残すために創建

された萬古神社です。入口近く

に建つのが忠左衛門の顕彰碑。

奥にたたずむのは、築窯師(窯を

製造する職人)・森

太郎右衛門

の石像です。堂々とした姿は四

日市萬古の振興を今も見守って

いるようです。境内では毎年10

月に「土鍋供養祭」も行われます。

 

萬古神社の向かいに建つ「ば

んこの里会館」では、萬古焼の歴

史を解説したコーナーがありま

した。そこには地場産業として

の萬古焼発展に貢献した川村

助・堀

友直・水谷

寅次郎など

の功績も紹介されています。多

くの人の情熱と努力を経て現在

があるのだとわかります。

 

初心者でも丁寧に指導してく

れると好評の陶芸教室を眺めな

がら2階へ上ると、目の前には

土鍋・急須・蚊やり豚など、多

種多彩な陶器が並びます。ここ

「うつわ亭」では、日常使いの品

から、華麗な芸術品までを購入

することが可能です。

 

萬古焼をさらにお値打ちに購

入するなら、毎年5月の第2土・

日曜日に開催の「萬古まつり」が

おすすめです。同館近くの橋北

通りでは、市価の3割から7割

も安い陶磁器が販売されるほか、

様々な露店がずらりと並びます。

絵付け体験などもでき、1日中

楽しめるでしょう。

       

 「瀬戸焼・美濃焼など有名な焼

き物産地には、必ず原料となる

土があります。でも四日市には

よい土がありません。そこで大

きな役割を果たしたのが四日市

港です。国内外から仕入れた土

で生産し、海外へと輸出するこ

とで発展できたのです」。

 

村田さんの的確な説明を聞き

ながら、山中

忠左衛門の菩提寺・

佛性院を過ぎると、風情ある一

軒家にたどり着きました。高層

ビルなどが並ぶ中、ここだけ純

和風の趣。伝統工芸士・2代目

紫光さんの紫光窯です。

 

工房では、紫光さんの手彫り

の技を間近に見られました。小

さな刀を巧みに操る手元を見て

いると、わずか数分の間にふくよ

かな布袋様が出現。この見事な

彫刻の技と独特の彩色、つまり

「彫彩」が紫光さんの特長。数々

の品評会で最高賞を受賞し、後

進の育成にも携わっています。

 

分業化・大量生産の日常品が

ある一方で、匠の技で生み出さ

れる芸術品も、また萬古焼。多

彩で奥深い四日市萬古を巡る散

策は、紫光窯から徒歩約10分、

近鉄「川原町」駅で終わります。

萬古焼の祖・沼波

弄山

かい

ぞう

がわ

とう

えい

ちょう

ばん

 

風薫る5月、四日市市内では「萬古まつり」が開催され多くの

人々で賑わいます。瀬戸焼(愛知県)・美濃焼(岐阜県)に続い

て全国第3位の生産量を誇る四日市の萬古焼。特に土鍋の生産

は全国の8割以上を占めています。

 

今回は、市内を流れる海蔵川から陶栄町周辺を散策しなが

ら萬古焼の歴史をたどります。そこには四日市の萬古焼発展に

尽力した人々の物語がありました。

ふえき

すえなが

いがた

ちくた

えもん

ろ 

よう

とら

ぶっしょう

ちょうさい

かわらまち

ほてい

いん

じろう

きょうほく

ゆうせつ

せんしゅう

なみ

ろうざん

1000m 300m 500m 600m 100m 500mすぐ近鉄「阿倉川」駅

近鉄「川原町」駅

表紙写真

「桑竹会」主催の「第2回桑西・竹の十三夜」(桑名市)

 

「四日市観光ボランティアガイド」

 

(四日市観光協会)

TEL

059・357・0381

取材・文…中村真由美

近鉄「阿倉川」駅前に建つ萬古焼のモニュメント堀川菖蒲園

桜の開花に合わせて「海蔵川桜まつり」が開催される。

堀川菖蒲園

ばんこの里会館

萬古神社海蔵橋 佛性院 紫光窯

近鉄「阿倉川」駅

近鉄「川原町」駅

堀川菖蒲園

海蔵橋

萬古神社

佛性院

近鉄名古屋線

ばんこの里会館

紫光窯

1

海蔵川

三滝川

三ツ谷の一里塚跡

至桑名

至桑名駅

至近鉄四日市駅

今回の案内人は、「四日市観光ボランティアガイド」の村田 三郎さん。四日市の魅力を発信しようと日々努力を重ねる姿が評価され、平成23年度の四日市市民文化奨励賞を受賞しました。

桜並木が続く海蔵川

四日市萬古の父・

山中

忠左衛門

「ばんこの里会館」

〝萬古不易〞を受け継ぐ

紫光窯

かいぞうがわ

ちゅう

がま

こう

もん

佛性院

様々な萬古焼が揃う「うつわ亭」

伝統工芸士・林 紫光さんの作品

紫光さんの見事な技で掘り出された布袋様

2代目林 紫光さん まちかど博物館「紫光窯」入口

昭和10年(1935)創建の萬古神社

森 太郎右衛門像陶芸教室

「ばんこの里会館」(TEL 059-330-2020 月曜休館)

山中 忠左衛門顕彰碑

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四日市萬古の里

海蔵川〜陶栄町界隈

四日市市

START

■行程図 所要時間/約3時間 ※所要時間は、おおよその目安です。

●お詫びと訂正/155号17ページ、本文2段12行目「1億3000年前」は「1億3000万年前」の誤りでした。ここにお詫びし、訂正いたします。

              

 

今回の散策の起点、近鉄「阿

倉川」駅に降り立つと、カラフル

なモニュメントに迎えられまし

た。この大きな萬古焼は、四日

市市制百周年を記念して平成9

年に建立されたもの。地域の永

遠の発展を願う気持ちも込めら

れています。

 

萬古焼の歴史は、江戸時代中

期に始まります。桑名の豪商・

沼波

弄山は、幼少の頃から茶道

に親しみ、趣味で茶道具の数々

を作りました。異国趣味を反映

した斬新な図柄は、幕府からも

高い評価を得ました。

 

弄山が自身の作品に押印した

のが「萬古」あるいは「萬古不易」

の文字。そこには〝永遠に受け

継がれるもの〞という思いが込

められていたのです。

 

弄山の死後、一時途絶えた萬

古焼ですが、江戸時代末期に復

興したのが森

有節・千秋兄弟で

す。有節は急須を木型で作るな

ど、画期的な製法を次々と考案。

色も華麗で、その人気は全国各

地へと広まりました。

 

萬古焼のモニュメントを後に

して南へ向かうと、やがて目の

前に悠然と流れる川が現れまし

た。海蔵川です。かつては近く

まで海が迫り、蔵が建っていた

ことからその名が付きました。

 

川岸には地元の人々が植えた

ソメイヨシノ約500本が並び、

春には淡いピンク色の花が咲き

誇ります。川沿いに整備された

堀川菖蒲園では、初夏にはハナ

ショウブが見ごろを迎えます。

 

またすぐ近くには三ツ谷の一

里塚跡が建っています。四日市

は東海道五十三次の宿場町。東

海道の道筋と幅は国道1号線に

沿って現在も残っていますが、

戦後に近代的な町並みに変わり、

往時を偲ぶのは難しくなりまし

た。一里塚跡はかつての賑わい

を今に伝えているのです。

 

現在は快適な散策が楽しめる

海蔵川ですが、かつては毎年の

ように氾濫し、村人たちは困窮

していました。しかしこのこと

が、萬古焼が四日市で普及する

きっかけとなったのです。

 

江戸から明治へと変わる激動

の時代、海蔵川と三滝川に挟ま

れた地域の窮状を何とかしよう

と考えたのが、末永村の庄屋(村

役)山中

忠左衛門。 〝有節萬古〞

に魅せられていた彼は、萬古焼

を地場産業にすることを決意。

20年近くもの間、研究を重ねま

した。さらにその成果を惜しげ

もなく公開したことで多くの名

人を輩出し、〝四日市萬古〞は明

治時代の四日市繁栄の一翼を担

う産業となったのです。

 

海蔵橋を渡ると、あちこちで

萬古焼の鋳型や急須などが積み

上げられた光景が見られました。

陶栄町ならではといえるでしょ

う。戦前までは海蔵川に沿って

登り窯が並び、煙たなびく光景

が絵ハガキにもなりました。

 

やがて木々が生い茂る一画が

見えてきました。忠左衛門たち

の功績を後世に残すために創建

された萬古神社です。入口近く

に建つのが忠左衛門の顕彰碑。

奥にたたずむのは、築窯師(窯を

製造する職人)・森

太郎右衛門

の石像です。堂々とした姿は四

日市萬古の振興を今も見守って

いるようです。境内では毎年10

月に「土鍋供養祭」も行われます。

 

萬古神社の向かいに建つ「ば

んこの里会館」では、萬古焼の歴

史を解説したコーナーがありま

した。そこには地場産業として

の萬古焼発展に貢献した川村

助・堀

友直・水谷

寅次郎など

の功績も紹介されています。多

くの人の情熱と努力を経て現在

があるのだとわかります。

 

初心者でも丁寧に指導してく

れると好評の陶芸教室を眺めな

がら2階へ上ると、目の前には

土鍋・急須・蚊やり豚など、多

種多彩な陶器が並びます。ここ

「うつわ亭」では、日常使いの品

から、華麗な芸術品までを購入

することが可能です。

 

萬古焼をさらにお値打ちに購

入するなら、毎年5月の第2土・

日曜日に開催の「萬古まつり」が

おすすめです。同館近くの橋北

通りでは、市価の3割から7割

も安い陶磁器が販売されるほか、

様々な露店がずらりと並びます。

絵付け体験などもでき、1日中

楽しめるでしょう。

       

 「瀬戸焼・美濃焼など有名な焼

き物産地には、必ず原料となる

土があります。でも四日市には

よい土がありません。そこで大

きな役割を果たしたのが四日市

港です。国内外から仕入れた土

で生産し、海外へと輸出するこ

とで発展できたのです」。

 

村田さんの的確な説明を聞き

ながら、山中 忠左衛門の菩提寺・

佛性院を過ぎると、風情ある一

軒家にたどり着きました。高層

ビルなどが並ぶ中、ここだけ純

和風の趣。伝統工芸士・2代目

紫光さんの紫光窯です。

 

工房では、紫光さんの手彫り

の技を間近に見られました。小

さな刀を巧みに操る手元を見て

いると、わずか数分の間にふくよ

かな布袋様が出現。この見事な

彫刻の技と独特の彩色、つまり

「彫彩」が紫光さんの特長。数々

の品評会で最高賞を受賞し、後

進の育成にも携わっています。

 

分業化・大量生産の日常品が

ある一方で、匠の技で生み出さ

れる芸術品も、また萬古焼。多

彩で奥深い四日市萬古を巡る散

策は、紫光窯から徒歩約10分、

近鉄「川原町」駅で終わります。

萬古焼の祖・沼波

弄山

かい

ぞう

がわ

とう

えい

ちょう

ばん

 

風薫る5月、四日市市内では「萬古まつり」が開催され多くの

人々で賑わいます。瀬戸焼(愛知県)・美濃焼(岐阜県)に続い

て全国第3位の生産量を誇る四日市の萬古焼。特に土鍋の生産

は全国の8割以上を占めています。

 

今回は、市内を流れる海蔵川から陶栄町周辺を散策しなが

ら萬古焼の歴史をたどります。そこには四日市の萬古焼発展に

尽力した人々の物語がありました。

ふえき

すえなが

いがた

ちくた

えもん

ろ 

よう

とら

ぶっしょう

ちょうさい

かわらまち

ほてい

いん

じろう

きょうほく

ゆうせつ

せんしゅう

なみ

ろうざん

1000m 300m 500m 600m 100m 500mすぐ近鉄「阿倉川」駅

近鉄「川原町」駅

表紙写真

「桑竹会」主催の「第2回桑西・竹の十三夜」(桑名市)

 

「四日市観光ボランティアガイド」

 

(四日市観光協会)

TEL

059・357・0381

取材・文…中村真由美

近鉄「阿倉川」駅前に建つ萬古焼のモニュメント堀川菖蒲園

桜の開花に合わせて「海蔵川桜まつり」が開催される。

堀川菖蒲園

ばんこの里会館

萬古神社海蔵橋 佛性院 紫光窯

近鉄「阿倉川」駅

近鉄「川原町」駅

堀川菖蒲園

海蔵橋

萬古神社

佛性院

近鉄名古屋線

ばんこの里会館

紫光窯

1

海蔵川

三滝川

三ツ谷の一里塚跡

至桑名

至桑名駅

至近鉄四日市駅

今回の案内人は、「四日市観光ボランティアガイド」の村田 三郎さん。四日市の魅力を発信しようと日々努力を重ねる姿が評価され、平成23年度の四日市市民文化奨励賞を受賞しました。

桜並木が続く海蔵川

四日市萬古の父・

山中

忠左衛門

「ばんこの里会館」

〝萬古不易〞を受け継ぐ

紫光窯

かいぞうがわ

ちゅう

がま

こう

もん

佛性院

様々な萬古焼が揃う「うつわ亭」

伝統工芸士・林 紫光さんの作品

紫光さんの見事な技で掘り出された布袋様

2代目林 紫光さん まちかど博物館「紫光窯」入口

昭和10年(1935)創建の萬古神社

森 太郎右衛門像陶芸教室

「ばんこの里会館」(TEL 059-330-2020 月曜休館)

山中 忠左衛門顕彰碑

Page 11: 特集/ 三重のソーシャルレジャー す 王 い 館 海蔵川~陶栄町界 … · 博 物 館 」 に 隣 接 す る 「 ふ る さ と 広 場 」 に は 約 1 0

平成二十四年二月発行〈偶数月十五日発行予定〉

企画・編集/RON 

印刷/オリエンタル印刷株式会社 

発行/百五銀行

経営企画部広報CSR課

禁無断転載

166

津市岩田二一―

二七

2月中旬~4月中旬

 「斎宮歴史博物館」に隣接する「ふるさと

広場」には約100本の梅が植えられ、春の

訪れとともに甘い香りを放ちます。毎年、

開花に合わせて「いつきのみや梅まつり」が

開催(本年は2月26日(日)予定)。梅の種

飛ばし大会や、斎王さんとの記念撮影など、

家族皆で楽しめます。

いつきのみや梅まつり(明和町)

明和町観光協会

TEL

0596・52・0055

 

シデコブシは、東海地方の丘陵地帯にの

み生育するモクレン科の樹木。例年3月下

旬ごろから4月上旬にかけ、ピンク色の可

憐な花を咲かせます。約200本が自生

する田光地区の群落は、国指定天然記念物。

「田光資源と環境を守る会」など地域の皆

さんが保全活動に取り組んでいます。

田光のシデコブシ(菰野町)

菰野町教育委員会

社会教育課

TEL

059・391・1160

 

東玉垣町の牛頭天王社(須賀神社)では、

4月の第1土・日曜日に春祭りが執り行

われ、参拝者で賑わいます。祭りで披露さ

れるのが県指定無形民俗文化財の唐人踊

り。ひょうきんな面を被り、奇抜な衣装を

身につけて踊る姿は、江戸時代の「朝鮮通

信使」を表現しているといわれます。

牛頭天王社春祭り(鈴鹿市)

鈴鹿市産業振興部

商業観光課

TEL

059・382・9020

■特集/自然を守る! 自然を楽しむ! 三重のソーシャルレジャー

たびか

ずてんのうしゃ

●いま、グループネット/芸濃ふるさとガイド会 ●みえを歩こう/四日市市 海蔵川~陶栄町界隈

ひがしたまがき

かじんじゃ