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日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する 日米両国首脳への第二回報告書 (仮 訳) 2003 年5月 23 日 現在2年目にある「規制改革及び競争政策イニシアティブ」(規制改革イニシアティブ)は、 2001 年6月、 規制改革及び競争政策に関する分野別及び分野横断的な事項に焦点を当てるこ とにより経済成長を促進することを目的として、小泉純一郎内閣総理大臣とジョージ・W・ ブッシュ大統領によって設置された。 具体的な進展の達成という目的及び双方向の対話の原則に則り、日米両国政府は、2002 年 10 月、規制改革についての詳細にわたる要望書を交換した。これらの要望書は、このイニシ アティブの下に設置された上級会合及び作業部会における両政府間の広範にわたる議論の基 礎を提供した。作業部会は、過去1年間にわたり、電気通信、情報技術、エネルギー、医療 機器及び医薬品、競争政策、構造改革特別区域(本イニシアティブにおいては本年はじめて 取り上げられた)透明性、法制度改革、商法改正、流通を含む主要な分野における改革につ いて議論を行ってきた。このイニシアティブにおける1年目の作業と同様、いくつかの作業 部会では、民間部門の代表からのインプットとして、このイニシアティブの下で取り上げら れた重要な問題についての価値ある専門知識、所見及び提言が提供された。 日本政府は、一連の規制改革措置をとってきており、その中には、2003 年 3 月に決定され た規制改革推進3か年計画の再改定が含まれる。さらに、米国政府は、日本政府が構造改革 特別区域推進本部を設置し、2003 年4月に第一弾認定として 57 の特区を立ち上げたことを 特に歓迎する。米国政府は、地方レベルの構造改革と規制緩和を通じて成長を促進するため の革新的な新しいアプローチとしての特区の成功が確実なものとなるよう協力する機会を歓 迎する。米国政府は、特区で成功した改革の措置が迅速に全国規模で適用されることを期待 している。 今回の両国首脳への報告書には、規制改革イニシアティブの下での作業に関連する日米両 国政府による主要な規制改革及びその他の措置が列挙されている(財務金融対話において取 り上げられた金融サービスに関する措置も含まれる。)。両国政府は、この報告書に明記され た措置を歓迎し、これらの措置が、競争力のある製品及びサービスの市場アクセスを改善し、 消費者利益を増進し、効率性を高め、経済活動を促進するとの見解を共有する。 両国政府は、更に規制改革を促進する決意を再確認するとともに、いずれかの政府の要望 に基づき、双方に都合の良い時期に、この報告書に含まれている措置を取り上げるために会 合する。

日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」 …日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する 日米両国首脳への第二回報告書

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Page 1: 日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」 …日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する 日米両国首脳への第二回報告書

日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する

日米両国首脳への第二回報告書

(仮  訳)

2003年5月23日

 現在2年目にある「規制改革及び競争政策イニシアティブ」(規制改革イニシアティブ)は、

2001年6月、規制改革及び競争政策に関する分野別及び分野横断的な事項に焦点を当てるこ

とにより経済成長を促進することを目的として、小泉純一郎内閣総理大臣とジョージ・W・

ブッシュ大統領によって設置された。

 具体的な進展の達成という目的及び双方向の対話の原則に則り、日米両国政府は、2002年

10月、規制改革についての詳細にわたる要望書を交換した。これらの要望書は、このイニシ

アティブの下に設置された上級会合及び作業部会における両政府間の広範にわたる議論の基

礎を提供した。作業部会は、過去1年間にわたり、電気通信、情報技術、エネルギー、医療

機器及び医薬品、競争政策、構造改革特別区域(本イニシアティブにおいては本年はじめて

取り上げられた)透明性、法制度改革、商法改正、流通を含む主要な分野における改革につ

いて議論を行ってきた。このイニシアティブにおける1年目の作業と同様、いくつかの作業

部会では、民間部門の代表からのインプットとして、このイニシアティブの下で取り上げら

れた重要な問題についての価値ある専門知識、所見及び提言が提供された。

 日本政府は、一連の規制改革措置をとってきており、その中には、2003年 3月に決定され

た規制改革推進3か年計画の再改定が含まれる。さらに、米国政府は、日本政府が構造改革

特別区域推進本部を設置し、2003 年4月に第一弾認定として 57 の特区を立ち上げたことを

特に歓迎する。米国政府は、地方レベルの構造改革と規制緩和を通じて成長を促進するため

の革新的な新しいアプローチとしての特区の成功が確実なものとなるよう協力する機会を歓

迎する。米国政府は、特区で成功した改革の措置が迅速に全国規模で適用されることを期待

している。

 今回の両国首脳への報告書には、規制改革イニシアティブの下での作業に関連する日米両

国政府による主要な規制改革及びその他の措置が列挙されている(財務金融対話において取

り上げられた金融サービスに関する措置も含まれる。)。両国政府は、この報告書に明記され

た措置を歓迎し、これらの措置が、競争力のある製品及びサービスの市場アクセスを改善し、

消費者利益を増進し、効率性を高め、経済活動を促進するとの見解を共有する。

 両国政府は、更に規制改革を促進する決意を再確認するとともに、いずれかの政府の要望

に基づき、双方に都合の良い時期に、この報告書に含まれている措置を取り上げるために会

合する。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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日本政府による規制改革及びその他の措置

I. 電気通信

A.競争促進

1.日本政府は、電気通信事業の更なる競争の促進を図ることを目的として、2003年3月、

電気通信事業法改正案を国会に提出した。本改正案は、支配的事業者に対する非対称規制

を維持しつつ、以下の事項を含む。

(a)一種・二種の事業区分や参入許可制の廃止

(b)非支配的事業者に係る契約約款の作成・公表義務の廃止(結果として個別契約によ

るサービスも可能になる)

(c)非支配的事業者に係る接続協定の事前届出制の廃止

2. 総務省は、1ヶ月間の意見招請を経て、2003年2月、県間 IP サービスを提供するとの

NTT 東西の申請を条件付で認めた。2003 年度から、NTT 東西は、NTT 東西が業務範囲を

拡大するに当たってのガイドラインに規定された指標との合致を示す報告書を定期的に総

務大臣に報告するとともに公表することを求められる。

3.情報通信審議会の技術分科会は、DSL サービスの利用環境を保護するため、未確認方式

を含め今後の新たな方式についてスペクトル適合性が速やかに確認されるよう、スペクト

ル管理の基本的な要件について、検討を行っている。2003年6月2日まで意見招請を実施

中の審議会の答申案は、答申内容が情報通信技術委員会(TTC)でのスペクトル管理標準

の策定に反映されることを提言している。その標準は、NTT 東西の接続約款を適用するた

めの客観的な基礎を提供する。

B.電気通信事業紛争処理委員会

 総務省は、電気通信事業紛争処理委員会が、十分な紛争処理能力、予算及び人員を持つこ

との重要性を確認する。

C.固定接続

1.総務省は、2003年2月、接続料規則の一部を改正する省令案について情報通信審議会に

諮問を行った。情報通信審議会では、関係者からのヒアリング及び意見招請を行った上で、

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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3月に答申を行った。総務省は、この答申を受けて、4月、総務省令の改正を行った。

2.総務大臣は、4月、省令改正を受けて NTT 東西から申請のあった接続約款の変更を認可

した。新たな接続料は2年間適用される。総務省は、この期間終了後に適用される新たな

接続料の在り方について、トラヒックの減少及び新規投資の抑制等の大きな環境変化を考

慮しつつ、検討を行う。

3.この検討は、NTS コストの回収方法(月額基本料により回収されるコストの範囲を含む)

及び接続料とユニバーサルサービス基金との関係等の検討を含む。さらに、審議会は、ト

ラヒックの変動により精算が発動される場合には、トラヒック以外の他の入力値(機器単

価等)も見直すことを提言している。

4.日本政府は、接続料に関連する事項について、米国政府との対話を継続する。

D.移動体

1.固定電話発携帯電話着の料金設定に関する紛争を解決するための、電気通信事業法第39

条第3項に基づく固定電話事業者からの裁定申請を受け、総務大臣は、電気通信事業紛争

処理委員会からの答申を踏まえ、2002 年 11 月、いわゆる直収発携帯ネットワーク着につ

いて、当該事業者が利用者料金を設定することが適当である旨の裁定を行った。

2.総務省は、「料金設定の在り方に関する研究会」を開催しており、同研究会では、中継接

続(NTT 東西発中継事業者経由携帯ネットワーク着)及び IP 電話発携帯ネットワーク着の

料金設定について、競争及び利用者の利益を促進する観点から検討している。同研究会の

報告書案に対する意見招請が2003年4月25日より行われている。

3.NTT ドコモの接続料は、これまで累次大幅に引き下げられてきており、2003年3月に届

け出られた NTT ドコモの接続料は、前年度と比較して約5%程度引き下げられた。第二種

指定(移動体系)電気通信設備を有する電気通信事業者は、引き続き、接続約款を総務省

に届け出し、公表することが義務付けられる。

E.先進的な技術及びサービスの促進

1.2003年2月、作業部会は、発展中の IP 電話市場における傾向及び課題について見解を

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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聴取するために、政府及び民間部門の専門家からなるパネルディスカッションを開催した。

2.日米両政府は、進行中の市場の発展に照らし、支配的事業者のネットワークインターフ

ェースのオープン性の原則を維持しつつ、先進的な技術の迅速な展開を妨げることのない

よう、ネットワーク回線終端装置(NCTE)に関する1990年の交換書簡の妥当性について

2003年度中に意見交換する。

3.日米両政府は、無線 LAN を含む先進的な技術の発展及びその市場における潜在的な役

割に関する情報交換を継続する。

II. 情報技術(IT)

A.規制及び非規制障壁の除去

1.法的枠組み

 日本政府は電子商取引を妨げる障壁を引き続き取り除いてきた。具体的には株主総会等の

案内をインターネットを通じて発送することを認めること及びその他の目的のための商法の

改正、「ノーアクションレター制度」の導入、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民

法の特例に関する法律」など新しい電子商取引に関するルールの制定などである。自由で多

岐にわたる電子商取引活動を促進するために、日本政府は、各省庁が引き続き電子商取引を

阻害する規制について必要に応じ見直しやルール制定等を行うようにする。

2.裁判外紛争解決手続の枠組み

 日米両国政府は、オンライン関係紛争の解決のための公正で実効性のある裁判外の紛争解

決手続(ADR)の基本的枠組みを整備することが、電子商取引の発展を図っていく上で重要

であると認識する。日本政府は、ADR に関する総合的な制度基盤を整備するための必要な方

策を検討中である。このなかには、一定の非弁護士が報酬を得る目的でオンライン関係紛争

の解決のために ADR サービスを提供できるようにすることも含まれ得る。必要な方策の検

討にあたっては、日本における ADR の発展の一つの阻害要因ともなり得る弁護士法第72条

について、その適用除外を認めることも検討する。日本政府は、上記の検討過程において、

ADR の利用促進を図るための基本的枠組みに関する報告をまとめ、2003 年の夏、これをパ

ブリック・コメントに付する。日本政府は、2004年 3月までに、上記の検討に基づき、所要

の法令上の措置を講ずる。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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3.民間部門の自己規制

 日本政府及び米国政府は、原則として民間部門がIT分野において自己規制を先導する役

割を担う必要性があり、また、政府の役割は新しい法律や指針が電子商取引を過剰に規制し、

また、阻害しないようにすることにより、競争的かつ革新的なIT分野の環境を促進するこ

とにあるという認識を新たにした。

(a)警察庁はインターネット・オークションを規制する新しい法律(注:改正古物営業法)

の施行規則等(注:国家公安委員会規則等)を制定する際には、民間事業者の自主規制

に十分配慮する。また、警察庁は、日本のパブリック・コメント手続に従って適切な意

見募集の期間を設けること、寄せられたコメントについて十分考慮し必要であれば最終

的な施策において反映することを確保する。

4.電子商取引のガイドライン

 経済産業省は、2002年の3月に「電子商取引に関する準則」をとりまとめた。準則の目的

は、電子商取引に関連した法的問題に対し民法その他関連法上どのように対処するのか、民

間事業者に対してその手引きを示すことにより、電子商取引(事業者間、事業者及び消費者

間、その他)を促進することである。この準則が一つの法解釈のガイドラインとなることに

より、新しい適切な規則形成の一助になることが期待される。

(a)この準則は柔軟なものであり、電子商取引を巡る市場慣行や、技術の動向及び国際的

なルールの変更を適切に反映させるため、必要に応じて改正される。

(b)経済産業省は、準則の見直しや改正に当たり、利害関係者から意見を受け付ける機会

としてパブリック・コメント手続の重要性を認識する。経済産業省は、本年3月、直近

のパブリック・コメント受付期間中に、利害関係者より11のコメントを受け付けた。そ

して、そのいくつかを新準則に取り入れる予定である。

(c)経済産業省は、引き続きパブリック・コメント手続を通常通りに利用することにより、

利害関係者が、これらの準則を見直しまたコメントを寄せる機会を提供する。経済産業

省はおよそ30日間のパブリック・コメント受付期間を提供するほか、受け付けたコメン

トを熟慮し、将来の改正に反映させることを確保する。

5.民間部門の参加

 日本政府は、政策の作成及び実施過程の全ての適当な段階で民間部門が参加する機会を増

やすための手法を検討し実施していくこととしており、これには以下を含む。

(a)公共部門と民間部門間の対話が相互的で透明性があるものになるよう情報技術の活用

を拡大する。

(b)閣議決定された一般的な規則に従い適切なパブリック・コメント期間を設け、提出さ

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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れた意見を熟慮し、必要に応じ実施される施策及び措置に反映する。

(c)次回の情報技術作業部会において、日本及び米国の企業代表者がIT関連事業モデル

の構築を成功させようとする上で直面する法規制の問題について、関係する両国の省庁

に対して適宜意見を述べることを促進する。

(d)2003年に決定される予定の「e-Japan 戦略 II」及びそれに引き続く「重点計画」の策定

及び実施においては民間の意見を十分に取り入れる。日本政府は「e-Japan 戦略 II」やそ

の他のIT関連の計画策定において、IT戦略本部の下に設置される専門委員会やパブ

リック・コメントの活用などを通じ、積極的に民間からの意見を求め、取り入れる。I

T戦略本部は「e-Japan 戦略 II」について、5月から6月にかけての3週間パブリック・

コメントに付した。受け取った意見については十分に検討の上必要に応じて実際に導入

される最終的な施策及び措置に反映させる。

B.知的財産権保護

1.著作権保護期間延長

 日本政府は、映画の著作物の保護期間を最初の公表後50年から70年に延長するため、2003

年5月13日に著作権法の一部を改正する法律案を国会に提出した。日本政府は、著作権法で

保護されるその他の事項の保護期間延長について、国際的な動向を含む様々な要因を考慮し

つつ、検討を継続する。

2.著作権保護の強化

 日本政府は、著作権侵害事案における、権利者の侵害の証明及び損害額の証明のための立

証責任を緩和するため、2003 年5月 13 日に著作権法の一部を改正する法律案を国会に提出

した。日本政府は侵害行為に対する法定損害賠償制度の導入の可能性についての検討を継続

する。

3.ソフトウェア資産管理

 日本政府は政府省庁が正当なソフトウェアのみを利用することを定める指針を策定してお

り、政府が利用、調達するソフトウェアが適正に許可され合法的に利用されるされることを

確保するために、これが効果的で透明性のある手続きであることを確認する。日本政府及び

米国政府は、政府が維持する情報技術環境上のソフトウェア資産及び他の知的財産の保護に

ついて必要に応じ情報交換を継続する。

4.一次的複製

 日本政府は、広く普及するような適切な方法により、「一時的複製」の保護範囲の解釈を説

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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明することを検討する。

5.インターネット・サービス・プロバイダーの責任ルール

(a)2002年5月27日、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の

開示に関する法律」が施行された。本法律は、著作権だけではなく、ウェブサイトや電

子掲示板等での様々な権利侵害に分野横断的に対応するものである。本法律は、インタ

ーネット・サービス・プロバイダー(ISP)に義務づけを行うのではなく、ISP が権利侵

害に対して迅速かつ適切に対処しやすいように法的な裏付けを与えることを目的として

ISP の免責要件を規定しているものである。

(b)また、関係する国内外の民間団体によって構成される協議会によって、本法律の適切

な運用を図るためのガイドラインが作成された。

(c)更に同協議会は、同年9月30日、ISP に代わり著作権侵害を確認する「信頼性確認団

体」を認定し、権利保有者から同団体を経由して ISP に対し著作権侵害を理由とする削

除の申出があった場合には、ISP 自身が権利侵害を確認しなくてもウェブサイトから削

除できる仕組みを整備した。

(d)本法律は、ガイドラインや信頼性確認団体を通じて運用され、一定の成果をあげてい

ることから、日本政府は、法律の改正については現在のところ考えていない。日本政府

は、本法律の運用状況を引き続き見守り、本件について米国政府と対話を行う。

6.技術的保護措置

 日本政府及び米国政府は、技術的保護手段に関する事項について議論を継続する。

7.知的財産政策

 内閣に設置された知的財産戦略会議において、2002年7月に知的財産戦略大綱が策定され

た。同大綱を実施するための知的財産基本法が2002年 11月に国会において成立し、2003年

3月に施行された。同時に、2003年3月1日に内閣に知的財産戦略本部及び知的財産戦略推

進事務局が設置された。

(a)今後、知的財産戦略本部において、知的財産基本法に基づく「知的財産推進計画」の

策定を進めることとなる。その立案に当たっては、知的財産戦略本部は、閣議決定され

ている一般的なルールに従って、パブリック・コメントのための適切な期間を設ける。

また、知的財産戦略本部は、受け取ったコメントについて、熟慮し、必要に応じて、実

施される最終的な施策や措置に反映することを確認する。加えて、日本政府は、知的財

産推進計画及び知的財産基本計画のための施策を実施するにあたっては、国際義務、基

準、規範を遵守することを確認する。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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C.電子商取引利用の促進

1.プライバシー

 2003 年5月 23 日、民間部門における個人情報保護のための基本的かつ一般的な仕組みを

構築する、「個人情報の保護に関する法律」が国会で成立した。同法では、個人情報の保護と

利用(例えば、企業の正統な利益のための利用)の適切なバランスが図られなければならな

いことが明確にされており、また、苦情処理メカニズムなど、プライバシーに対する自主規

制的なアプローチを採ることを確認している。日本政府は、同法に関連する施行政令につい

て、パブリックコメントを行う。情報の国境間の流れの持続に努めることの重要性を認識し

つつ、日本政府と米国政府は、プライバシー保護の重要性について民間部門と議論する方途

の考慮も含め、プライバシーに関する問題について対話を続け、ともに作業をすることとす

る。

2.裁判外の紛争解決手続の利用の促進

 日本政府は、考えられ得る法律上の措置事項を含めた ADR の利用を促進するための基本

的枠組みに関する報告をまとめ、2003年の夏、これをパブリック・コメントに付する。こう

した基本的枠組みは、電子商取引に関する紛争について ADR の利用を促進することになる。

日本政府は、2004 年 3 月までに、ADR に関する総合的な制度基盤を整備するための所要の

措置を講じ、オンライン市場の要請に適った、民間主導の ADR サービスを含む ADR の発展

を促進する助けとなるような、柔軟で、開かれた法制環境の創設を図る。

3.電子署名

(a)日本政府は、電磁的記録は電子署名の有無に関わらず、証拠として認定され得ること、

及びそれらの記録は単に電子的形態であるからというだけで法的効力を否定されること

はないことを確認する。加えて、電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)の

もとでは、特定の技術に対する過度の依存を避けるため、電子署名は技術的中立性を維

持することとされている。

(b)電子署名法施行規則の改正に当たって、関連省庁は2002年4月と6月にパブリック・

コメントの募集を実施した。寄せられた意見に基づき、それらの省庁は2002 年 11 月に

所要の改正を行い、現在追加的な改正を行っているところである。日本政府は、これら

の改正や将来におけるすべての改正は、技術的中立性を維持するものであり、また、認

定を受けていない認証事業者に適用されないようないかなる法的便益をも、認定を受け

た認証事業者に与えるものではないことを確認する。

(c)「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律」は、2002年 12月に国会で成

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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立した。同法の施行規則等は、民間部門を含む専門家の意見を求める透明なプロセスに

基づいて起草され、2003 年に公表される予定である。同法は、使用技術を公開鍵基盤

(PKI)としているが、日本政府は、他の認証技術もある種の政府と住民とのオンライン

手続に対して、より適切である場合があると認識している。ゆえに、日本政府は、施行

規則等は、地方公共団体が電子自治体サービスにおいて他の技術を使うことを制限した

り、禁止したりするものではないことを言明する。日本政府は、将来、同法を見直し、

仮に必要であれば、許容される技術の範囲を拡大させる改正を行う。日本政府は、本シ

ステムを採用する地方公共団体に対し、支援技術やソリューションを調達する際には公

正で開かれたプロセスを経るように推奨する。

4.ネットワークセキュリティ

(a)日米両国政府は、「セキュリティの文化」の構築に向けて努力しているように、情報シ

ステムやネットワーク(政府や民間部門、個人ユーザーが使用するものを含む)のセキ

ュリティや信頼性を確保することの重要性を認識する。この分野について、経済産業省

は情報セキュリティ監査に関するガイドラインを策定した。そのガイドラインは同省内

では将来的に義務化される予定である。経済産業省は、透明性を確保した方法でそのガ

イドラインを策定し、30 日間のパブリック・コメント期間中に受け付けた 35 のコメン

トの多くを取り入れた。経済産業省は、このガイドラインが透明で一貫した方法で実施

されること、及び非差別的であって、ネットワークセキュリティ監査サービス事業者の

登録に当たり、国内外双方の事業者の登録が認められることを確認する。

(b)日米両国政府は、政府、民間事業者及び個人ユーザーが利用する情報システムのセキ

ュリティ確保に向けた取り組みに関し、引き続き情報交換を行う。このため、日米両国

政府は、2003年後半にすべての関心を有する者とともにネットワークセキュリティに関

するイベントを協力して開催する予定である。このイベントは、ネットワークセキュリ

ティの促進にあたり、問題に対する意識向上に加えて、最適手法や官民協力の発展性を

強調することが目的である。

D.IT関連製品及びサービスの調達機会の拡大

1.日本政府は、全府省が2002年3月29日の府省間取決め(2002年4月22日、2003年3

月19日改定)に従い、日本政府による情報システム(製品及びサービス)の調達に関して、

内外無差別性、透明性、公平性を確保するための措置の採用に合意したことを確認する。

主な措置事項は以下を含む。

(a)予定価格が80万 SDR を超える電子政府向けの情報システムについて加算方式の適用

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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(b)入札結果に係る追加情報の各府省ホームページでの公表

(c)複数年にわたる調達についてライフサイクルコストベースでの価格評価

(d)ソフトウェアについては、能力成熟度モデル等のソフトウェア開発のプロセスの改善・

評価の指標を、その民間部門における普及状況を踏まえ、技術的要素として考慮

2.日本政府は、極端な安値落札の防止を含む府省間取決めの目的の達成を促進するため、

取決めの実施状況について、全府省を対象に2003年度末までにフォローアップ調査を実施

する。日米両国政府はIT作業部会を通じて、引き続き情報の交換を行う。

3.2002年 9月、日本政府は各省庁にてITマネジメントを担当するハイレベルの担当官か

らなる「CIO 連絡会議」を立ち上げた。CIO 連絡会議は中央政府によるIT活用を最大限

にするために、政府調達府省連絡会議了承に基づく情報システムの調達を含む電子政府サ

ービスの構築を改善するための包括的施策を提案し実施する。

4.オンライン入札

(a)2002 年 10 月に総務省は、非公共事業に係る調達に関し企業がインターネットによっ

て入札することを可能にする電子入札システムを開始した。他の省庁は2003年度末まで

に同様の電子入札システムを開始する予定である。

(b)総務省はまた、技術的に実行可能となった場合には、24時間の入札受付運用が行える

ようシステムの運用に努めている。他省庁については、CIO 連絡会議が作成した「電子

政府構築計画」(仮称)に基づきオンライン入札システムの 24 時間運用の実現に向けて

作業する。

5.電子教育

 2003年 3月、日本政府は、東京と京都で米国政府が開催した2つの国際教育シンポジウム

を後援した。これらのシンポジウムの参加者には、地方の学区の教育担当者、両国政府の政

策立案者、そして産業界からの代表が含まれていた。これらのシンポジウムにおける、公立

学校でのパソコンを用いたインターネット利用及び教員のためのIT研修に関する意見交換

を通じて、日米両国政府は民間部門における電子教育のための技術的な解決策の活用を促進

することの重要性を再認識した。これらは、この分野の経済的機会に繋がりうるものである。

Page 11: 日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」 …日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する 日米両国首脳への第二回報告書

第2回報告書                                                               日本政府による措置

11

III. エネルギー

A.規制当局

 日本政府は、エネルギー政策基本法に規定されているように、エネルギーの安定供給及び

環境への適合を確保しつつ、エネルギー制度改革を行ってきている。この改革では、電力小

売市場においては 2005 年までに約 63%(現在の 2.4 倍)、ガス小売市場においては 2007 年

までに約 50%(現在の 1.25 倍)まで自由化範囲を拡大する。この措置は米国政府により歓

迎されている。公平、効率的かつ安定的なエネルギー市場を確保するにあたっての、これら

の法制上の重要な事項の効果は、厳正な市場の監視に依存するものである。日本政府は、こ

れを実行するために必要な職員数、専門的知識及び独立性を備えた執行の仕組みの重要性を

認識している。

B.電力

 現在、国会は電気事業制度改革の法案を審議しており、成立した場合には、電気事業法が

改正され、2005年4月には全面施行される。

1.電気事業制度改革の法案の検討過程において、経済産業省はその検討過程が開かれ、か

つ、透明性のあるものとなるべく、いくつかの重要な措置を講じた。

(a)2001年 11月から2003年2月まで、改革のための答申の作成を目的とした電気事業

分科会を計14回公開で開催した。経済産業省はすべての議事及び配付資料をウェブサ

イトで公開している。

(b)経済産業省は、電気事業分科会で最終報告をまとめるにあたってこれをパブリック・

コメントに付し、寄せられた意見について回答を行い、公表している。電気事業分科

会の最終報告書「今後の望ましい電気事業制度の骨格について」は2003年2月にまと

められ、2003年3月に国会に提出された電気事業制度改革法案の基礎となっている。

2.電気事業制度改革の法案は、一般電気事業者制度を維持しつつ、以下の規制により、送

配電部門における公平性・透明性についての市場参加者の信頼を向上させるとともに、電

力の供給信頼度の維持に不可欠な調整を容易にするよう設計されている。

 (a)託送業務において知り得た情報の目的外利用の禁止。

 (b)他部門との内部相互補助を防止するための会計分離及びその結果の公表。

 (c)送配電部門における特定の事業者に対する不当に差別的な取扱いの禁止。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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3.電気事業制度改革の法案では、民間からなり、政府の監督を受け、以下の事項について

責任を有する中立機関が設立される。

(a)公平・透明な手続の下で送配電部門に係るルールの策定をすること。

(b)参加者がルールを遵守しているかどうかを監視すること。

4.電気事業制度改革の法案では、全国の発電所の供給力を有効活用できるよう、供給区域

を跨いで送電するごとに課金される仕組みを廃止する等、現行の託送制度の見直しを行う。

5.電気事業制度改革の法案では、二重投資による著しい社会的弊害が一般消費者の利益を

害する程度にまで生ずる場合を除き、分散型電源から自由化対象の需要である「特定規模

需要」に対し、市場参加者が自前の送電線により電気を供給することを可能とする。分散

型電源のような効率的かつ多様な供給の選択肢の確保に考慮するための措置である。

6.電気事業制度改革の法案では、電源開発株式会社について、行政改革の趣旨を全うする

よう完全民営化を行うこととし、これに伴って電源開発促進法を廃止することを含んでい

る。民営化された電源開発株式会社は、電力卸売市場のような新しい枠組みの中で重要な

役割を演じることが期待されている。

7.日本政府は、電気事業制度改革の法案の公平、効率的かつ安定的な電力市場創設の有効

性において、以下の措置が重要であると認識している。

(a)厳正に市場の事後監視を行い、中立かつ公平に紛争を処理する仕組みを整備・充実

することにより、厳格に規制を執行すること。

(b)上記の措置を効果的に実行するために必要な職員数、専門的知識及び独立性を備え

るような仕組みを経済産業省内に確保すること。

(c)電力市場の自由化を補完するのに不可欠なものとして、適当な分野において独占禁

止法を厳正かつ適正に執行すること。

(d)規制機関が、託送業務において知り得た情報の目的外利用の禁止や特定の事業者に

対する不当に差別的な取扱いの禁止に関するガイドラインを策定すること。

(e)市場参加者の受益と負担の関係を踏まえ、送電設備増強のための費用負担を公平・

公正かつ透明なプロセスの中で決めること。

(f)提案されている中立機関の迅速かつ円滑な設立のために以下の措置を行うこと

(1)一般電気事業者だけでなく、新規参入者、ネットワークに接続している自家発電

設置者、卸電気事業者及び専門的知識を有する学識者を含む、多様な構成からなる

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

13

中立機関の指定のための基準を策定すること。

(2)中立機関が公平かつ透明なプロセスにより、効率的で安定的な送電線の運用と建

設を促進するためのルールを策定し、その規則が公開されること。

(3)中立機関に、送電線の送電可能容量を含む送電ネットワークについての情報公開

システムを運用させること。

(4)上記の情報公開システムの詳細を決めるため、適時適切な措置を講じること。

(g)日本政府は、2007年4月に、供給信頼度の確保、エネルギーセキュリティや環境保

全等の課題との両立、最終保証、ユニバーサルサービスの確保及び実務的課題等につ

いて検討を行った上で、電気事業の全面自由化を行うか否かの決定のための検討を開

始する。

(h)電源開発株式会社の民営化が市場に与えるインパクトを十分に考慮し、独占禁止法

に適法な形で同社が民営化されること。

8.電気事業分科会が経済産業大臣に答申した最終報告書では以下の点が推奨されており、

これらは法案が成立した場合、法が施行される際に考慮されることとなる。

 (a)以下の措置により、公平、効果的かつ安定的な電力市場の整備を促進する。

(1)市場参加者が電源開発に関して堅実な投資を行うことを可能とし、市場参加者に

おける需給ミスマッチ・リスクの解消を図る観点から一日前及び先渡し取引を扱う

全国規模の私設・任意の卸電力取引市場を整備すること。

(2)30分3%同時同量について、変動範囲を10%までの選択制とする弾力化を行い、

変動範囲を超えるインバランスに対する事故時バックアップ扱いの廃止など、系統

利用ルールの変更を行うこと。

 (b)以下の措置により、消費者の選択肢を拡げる。

(1)500kW 以上の高圧需要家を含めることにより、2004 年4月までに市場の約 40%

まで電力小売り自由化を拡大すること。

(2)50kW 以上の高圧需要家を含めることにより、2005年4月までに市場の約63%ま

で電力小売り自由化を拡大すること。

9.日本政府は、電気事業制度改革の法案が国会で成立されれば、引き続き透明性をもって、

2005年4月の自由化範囲拡大のための詳細な制度設計等の措置を行う。この過程において、

日本政府は、電気事業制度改革法制の施行のための措置についてパブリック・コメントの

手続を取ることを確保する。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

14

C.ガス

 現在、国会はガス事業制度改革の法案を審議しており、成立した場合には、ガス事業法が

改正され、2004年4月に施行される。

1. ガス事業制度改革の法案の検討過程において、経済産業省はその検討過程が開かれ、か

つ、透明性のあるものとなるべく、いくつかの重要な措置を講じた。

(a)2002 年9月から 2003 年2月まで、改革のための答申の作成を目的とした都市熱エネ

ルギー部会を全4回公開で開催した。経済産業省はすべての議事及び配付資料をウェブ

サイトで公開している。

(b)経済産業省は、都市熱エネルギー部会で最終報告をまとめるにあたってこれをパブリ

ック・コメントに付し、寄せられた意見について回答を行い、公表している。都市熱エ

ネルギー部会の最終報告書「今後の望ましいガス事業制度の骨格について」は2003年2

月にまとめられ、2003年3月に国会に提出されたガス事業制度改革法案の基礎となって

いる。

2. ガス事業制度改革法案は、以下のような措置により、効率的なガス供給基盤の整備とそ

の有効利用を促進するよう設計されている。

(a)現行制度では一般ガス事業者のみに付与されている公益特権(例えば土地収用権)を、

第三者がガス供給用導管を建設する際にも付与することにより、一般ガス事業者以外の

者によるガス供給用導管の整備を促進する。

(b)現行制度では大手4社のみに適用されている託送義務を、ガス供給用導管を保有又は

運営する全ての者に適用する。

(c)原則として全ての導管を保有又は運営する者に対し、託送約款の作成・届出・公表を

義務づける。

(d)規制当局が会計分離、情報遮断、及び特定の託送利用者に対する差別的取り扱いを禁

止する規定を設ける実施規則等の作成を確保することで、託送の透明性及び中立性を高

める。

3. ガス事業制度改革法案は、以下によりガス需要家の選択肢を拡大する。

(a)現行の大口許可制を変更命令又は中止命令付きの届出制に移行する。

(b)現在は大口供給のみに要求されている託送約款の作成義務を、卸供給を目的とした託

送にも拡大することで、卸市場を活性化する。

(c)現行の卸供給届出制度を廃止する。

4.日本政府は、ガス事業制度改革法案が競争的で安定したガス市場の創設に有効なものと

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

15

なるため、次の措置が重要であると認識している:料金認可の査定、監査の一層厳格な執

行や、市場での自由な競争の結果として生じる紛争の処理を行う、高度な専門性と独立性

を持った中立・公正な事後監視・紛争処理を行う仕組みを経済産業省内に整備・充実する

こと、及び当該の仕組みがこのような目的を効果的に果たすために必要な職員数、専門的

知識、及び独立性を有することを確保することで、ガス事業制度の公正性・透明性の検証

を担保する。

5. 都市熱エネルギー部会が経済産業大臣に答申した最終報告書には以下の勧告が含まれて

おり、これらは法案が成立した場合、法が施行される際に考慮されることとなる。

(a)以下により、効率的なガス供給基盤の整備とその有効利用を促進する。

(1)導管網が未整備な地域や天然ガスが未普及の地域において新規に敷設された導管や

いくつかの需要地を連結する導管に対して一定期間インセンティブを付与する。

(2)都市熱エネルギー部会が提示した以下の実行しうる内容を含む当該インセンティブ

の具体的な内容、対象、期間は、実施規則等の作成の中で検討される。

(i)このような導管の保有者及び運営者の一部に対し、託送約款の作成・届出・公表義

務を課さない。

(ii) このような導管の保有者及び運営者に対し、託送料金の設定の際の高めの報酬率

の設定を認める。

(3)都市熱エネルギー部会が提示した実行しうる措置に関する経済産業省と公正取引委

員会の共同のガイドラインを公表することで、LNGターミナルの保有者(又は運営

者)と第三者利用者との間の非差別的な交渉を促進する。

(b)以下により、ガス需要家の選択肢を拡大する。

(1)2004年までに、小売自由化範囲を、市場の約44%を占める年間契約数量50万 m3以

上の需要家まで拡大する。

(2)2007年までに、小売自由化範囲を、市場の約50%を占める年間契約数量10万 m3以

上の需要家まで拡大する。

(3)年間契約数量 10 万 m3以下の家庭用及び小規模業務用需要の自由化の可否及び手法

については、それまでに実施された自由化の結果と問題点を評価・検証するとともに、

ガスの調達構造の変化や海外における自由化の経験を考慮しつつ、時期を逸すること

なく結論を出す。

6.日本国政府は、ガス事業制度改革の法案が国会で成立すれば、引き続き透明性をもって、

2004年4月の自由化範囲拡大のための詳細な制度設計等の措置を行う。この過程において、

日本国政府は、ガス事業制度改革法制の施行のための措置についてパブリック・コメント

の手続を取ることとする。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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IV. 医療機器・医薬品

A.医療機器及び医薬品の保険償還価格の算定ルールの改革並びに関連事項

1.日本政府は、現在、包括的な医療保険制度改革に取り組んでおり、健康保険法等の一部

を改正する法律の附則に基づき、医療保険制度体系や診療報酬の体系の見直しについての

基本方針を策定した。今後、診療報酬体系の見直しに関連するさらなる議論が行われる。

2.右プロセスの一環として、医療機器及び医薬品の算定制度に関する更なる議論が行われ

る。そして、厚生労働省は、米国業界を含む業界に対し、意見を表明する有意義な機会を、

引き続き提供していく。

3.それらの機会は、革新的な医療機器及び医薬品の早期導入と広範な利用の促進のために、

右価格制度による革新性の価値の認識を高めるために活用されうる。

4.2002年 12月 17日、厚生労働省は「医療保険制度の体系の在り方や診療報酬体系の見直

しについて」と題する広範な医療保険制度改革試案を発表した。この試案は以下の点にお

いて米国政府にとって重要なものである。

(a)試案は、医療機器及び医薬品への保険適用の在り方を含めた広範な医療保険制度改

革についての米国業界を含む全ての関係者との幅広い議論の出発点として、厚生労働

省が提供したものであり、そして、

(b)厚生労働省は、医療の質及び効率性の改善の視点のみならず、例えば長い平均入院

期間や病院の機能分化の欠如に現下の診療報酬体系が影響しているといった、医療提

供体制の見直しの観点からも、広範な診療報酬の改革の必要性を認識した。

5.2002 年8月 30 日、厚生労働省は、「『生命の世紀』を支える医薬品産業の国際競争力強

化に向けて-医薬品産業ビジョン-」と題する医薬品産業に関する本格的な政策文書を発

表した。また、2003年3月31日、厚生労働省は、「医療機器産業ビジョン-“より優れた”

“より安全な”革新的医療機器の提供を目指して」と題する医療機器産業に関する同様の

文書を公表した。「需要とイノベーションの好循環」を通じた産業のスパイラル発展のメカ

ニズムを考慮し、これらのビジョンでは、産業発展は各企業が市場原理に基づき自由に競

争を行っていく中で進むものであって、今後もこうした考え方が基本になるべきと考えて

いる旨を明記している。ビジョンの必須の部分であるアクションプランは、このような基

本的な考え方に立ち、「『イノベーション促進のための集中期間』(5年以内)に行う具体

策」として、次のような幅広い施策を含んでいる。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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(a)研究開発環境: 1)基礎研究の充実、2)技術移転・産学官連携の推進、3)大規模治

験ネットワークの構築を始めとする治験環境の整備、及び4)医工薬連携の強化

(b)薬事制度: 1)審査基準の見直し等制度の改善・充実、及び2)2004年4月に発足す

る独立行政法人医薬品医療機器総合機構への審査の一元化を通じた審査スタッフの量

的・質的な強化による承認審査の質の向上及び迅速化

(c)保険償還: 1)有用で新規性の高い製品の適正な価格による迅速な保険導入の一層

の推進、及び2)産業の国際競争力の確保と公的医療保険制度との調和を図るための中

長期的な観点からの検討

6.厚生労働省は、今後とも内資外資を問わず企業関係者との意味のある対話を継続しなが

ら、優れた医薬品・医療機器が、より早く国民に提供されるよう、アクションプランを着

実に実施し、革新性を促進する、より魅力的な開発環境の実現に努めていく。

7.厚生労働省は、画期的医薬品開発を促進すると期待される革新的な医薬品の適切な評価

を一層確保する目的で、画期性や有用性の加算率を2002年度から、大きく引き上げた。厚

生労働省は、加算が十分な認識の下、革新性を促進するために用いられることを確保する

ために、医療機器及び医薬品のための新たな拡張された加算制度の適用結果を評価してい

く。

8.医療機器及び医薬品の価格算定プロセスの透明性の向上は、依然として重要な議題であ

る。厚生労働省は、米国製造業者を含む関係業界が、個別の製品の特性及び推薦価格に関

する討議を行うために経済課職員に直接アクセスする機会を確保することにより、医療機

器及び医薬品の価格算定プロセスの効率性・透明性を確保してきている。

9.厚生労働省は、医療機器及び医薬品の価格算定の際に製品を特徴づけるデータが、医薬

品医療機器審査センターにおける評価報告に含まれるものである事を明らかにする事によ

り、医療機器及び医薬品の価格算定プロセスの透明性を向上させた。

10.厚生労働省は、新しい「診断群別包括評価制度(DPC)」の適用範囲に関する疑問につい

て明らかとする機会を、企業に対し提供していく。

11.厚生労働省は、バイオ製品の特別の規制要求に関連する実際の価格構造について、かか

る製品群の特性が如何に価格に影響するかについて検討するために、米国業界を含む業界

と討議していく。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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12.厚生労働省は、米国業界を含む業界のリクエストに基づき、例えば画像診断機器、体外

診断薬など、革新的診断機器の認識に関する議論に応じる。

13.米国政府は、厚生労働省に対し、革新性の価値を認識する観点から、医薬品の再算定ル

ールを再評価することを引き続き慫慂する。米国がこの点に言及することは自由である。

14.医療機器及び医薬品の算定に関連する個別の問題は、ケースバイケースで議論される。

B.医療機器及び医薬品の制度改正並びに関連事項

1.厚生労働省は、改正薬事法に基づく薬事規制の重要な改正を行い、その下で医薬品及び

医療機器の承認審査を実施するための新しい独立行政法人を設置しつつある。これらの措

置により、日本の薬事行政システムにおけるプロセスの迅速化、業務の質の確保、及びバ

イオ・ゲノムの新しい時代に即した対応ができることが期待されている。厚生労働省は、

行政の業績(効率、業務の質、信頼性)、国際調和及び最新の国際的に受容された科学を取

り入れた行政制度を進めようとしている。厚生労働省は、米国業界を含む、各々の関係者

との積極的な意見交換を行ってきたところであり、薬事法改正及び独立行政法人に関する

課題に取り組むために、業界関係者からの有益な提案は取り入れてきている。そのような

意義のある機会は、今後も継続して提供される。

2.厚生労働省は、新独立行政法人の手数料体系の設定及び活用において、米国業界を含む

各々の関係者と、協力的かつ透明な手続きを通じて、積極的に意見交換を行うこととして

いる。厚生労働省は、米国業界を含む各々の関係者に対して、例えば、透明性、予見可能

性、公平性、使途及び効率性の評価方法に関する手数料体系に対する意見を表明する有意

義な機会を確保していく。

3.薬事法の規制を受ける医薬品及び他の製品の副作用等による健康被害を防止する観点か

ら、厚生労働省は市販後安全対策を迅速かつ適正に実施しており、今後も新独立行政法人

と緊密に連携しつつ継続する。厚生労働省は、製造業者のみならず、国民に対するプロセ

スの透明性の確保に留意している。例えば、厚生労働省は、同省の安全対策担当官への直

接の面会を通じ、国内外の企業の差別なく、引き続き副作用等データの取扱いに関する意

見交換を行う。国民の健康にとって市販後安全対策が極めて重要であることを考慮した上

で、厚生労働省は、今後とも副作用等の評価において、国内データと同様、海外データに

ついても、科学的に適切な検討を行っていく。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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4.医療機器に関する規制の調和については、米国及び日本の両国が参加している医療機器

規制国際整合化会議(GHTF)において議論されている。厚生労働省は、GHTF 等の議論を

踏まえ、例えば、リスクに応じた医療機器のクラス分類などについて、薬事法改正に取り

入れた。

他の GHTF メンバーとの協力を継続しつつ、厚生労働省は、クラス分類、データ要求、

試験基準及び品質規制制度などの分野における医療機器規制の調和努力を継続する。

5.2003年2月に厚生労働省は、医療機器の生物学的安全性試験ガイドラインを廃止し、新

たに国際整合した生物学的安全性評価に関するガイダンスを定めた。

C.血液製剤

1.2002 年7月 31 日、日本政府は、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律を薬

事法の改正とともに公布した。その国会の審議において、血液製剤等に係る規制について

の附帯決議がなされた。この法的枠組みは、血液製剤等に係る規制を2003年7月30日ま

でに施行するよう規定している。

2.厚生労働省は、例えば、新しい「献血」及び「非献血」表示要求に関する懸念を含め、

米国政府と米国産業界がその関心事項を表明するための有意義な機会を引き続き、提供す

ることとする。このような規制の実施は、共通の国際貿易における義務と完全に整合して

いるものである。

3.厚生労働省は、日本国民に対し、「献血」及び「非献血」が、何ら安全性を暗示するもの

でないことを明確に伝えるための広報を実施する。

D.大規模治験ネットワーク

厚生労働省は、日本の治験制度を国際的に魅力あり、そして競争力のあるものにする大規

模治験ネットワークの取り組みを推進する。厚生労働省は、このネットワークの成功のため、

内資・外資を問わず、産業界からの建設的な協力を歓迎する。このネットワークは、日本の

治験インフラを整備し、医薬品・医療機器製造業者に、日本で製品を開発しようとするイン

センティブを与える。米国政府は、そのような日本政府の取り組みを歓迎する。厚生労働省は、

大規模治験ネットワークの実施に関し、米国業界を含む業界との情報交換を継続する。例え

ば、製品に関する疑問、治験設計及び関連する知的所有権の保護については、引受人と治験

担当医師の間の契約によって取り組むことができる。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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E.栄養補助食品

 厚生労働省は、日本人の食生活にプラスの影響を与え得る「特定保健用食品」に関して、

日本市場における米国企業を含む企業からの申請が増加することを歓迎する。栄養補助食品

を含むいわゆる「健康食品」に関する総合的問題を議論する検討会が組織されつつある。日

本業界に対するのと同様、米国業界に、栄養補助食品の規制に関し相談する有意義な機会が

与えられる。厚生労働省は、業界に対し、業界からの検討会委員の選定に関し打診している。

V. 金融サービス

1.日本政府は郵便金融機関(郵貯及び簡保)による投資顧問会社の資産運用サービスの利

用を解禁する法案を国会に提出した。2003 年4月 18 日、参議院はその法案を可決し、衆

議院に送付した。

2.日本政府は5月14日、確定拠出年金の拠出限度額引上げを2003 年度に検討すると表明

した。

3.2003年春、金融庁は研究者、法律家及び貸金業者等に対し、貸金業法改正の可能性につ

いて、コメントを求めた。これら金融庁がコメントを求めた諸問題の1つは、電子的通知

の使用を書面による開示要件を満たすものと認めることの適切性についてであった。

VI. 競争政策

A.公正取引委員会の独立性・中立性

 日本政府は、2003年3月28日に閣議決定された規制改革推進3か年計画(再改定)(以下

「3か年計画」)に従い、公正取引委員会の位置付けについて、内閣府が規制改革の推進、消

費者利益の確保を担っていることを踏まえ、よりふさわしい体制とする観点からこれを内閣

府に移行するための法案を第156回国会に提出した。法案は2003年4月2日に国会を通過し、

4月9日に施行された。

B.公正取引委員会の人的資源

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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1.公正取引委員会の定員は、2003年度に36人の実質増員を得て、2004年3月31日時点で

全体で643人となる。公正取引委員会の審査部門のスタッフは24人増員され、全体で318

人となる。

2.公正取引委員会は、大学院レベルの知識を有するエコノミストの採用を進めており、2001

年度以降現在まで、3名のエコノミストを採用している。公正取引委員会は、企業結合審

査、経済実態調査等について、より高度な経済分析の手法を導入するため、大学院レベル

の知識を有するエコノミストを更に増やすよう努力する。

3.公正取引委員会は、現行の経済実態調査担当部署を含め、必要な部署に大学院レベルの

知識を有するエコノミストを投入するほか、経済学者等の外部有識者との連携を十分に強

化するなど、経済分析を実施する体制の更なる充実を図っていく。

C.公正取引委員会による執行力の実効性

1.閣議決定された3か年計画において、独占禁止法のエンフォースメントの見直し・強化

を行うこととされ、そのために2003年度中に措置を講ずることとされている。3か年計画

には、以下の事項が含まれている。

(a)刑事告発手続の見直し

(b)課徴金制度の見直し

(c)課徴金減免プログラムの導入

(d)課徴金適用対象の拡大

(e)既往の違反行為に対する措置期限についての見直し

2.公正取引委員会は、独占禁止法違反に対する執行力、抑止力を十分なものにしていく必

要があるとの観点から、現行の措置体系全体の見直しを行っており、そのために 2002 年

10月から独占禁止法研究会を開催している。同研究会は、2003年秋までに提言を含めた報

告書を出すことになっているが、現在以下の検討を行っている。

(a)実効性確保の観点からの課徴金制度見直し

(b)措置軽減制度導入の必要性、可能性

(c)公正取引委員会への犯則調査権限の付与の必要性・可能性

(d)刑事告発手続の見直し

(e)公正取引委員会の調査権限に係る罰則の見直し

(f)既往の違反行為に対する措置期限についての見直し

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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3.独占禁止法の民事的救済制度については、3か年計画において、「独占禁止法の差止請求

制度については、制度の実施状況を注視しつつ、事例の蓄積を待って必要性が認められる

場合には、日本政府は私人による差止請求対象行為の範囲の見直し等、民事的救済制度を

更に充実した制度とするための検討に着手する。」とされている。

4.検察庁と公正取引委員会は、調査の早い段階において、具体的事案につき公正取引委員

会が独占禁止法違反として刑事告発を行うための法律面・事実面に関する情報及び見解を

交換するため、密接に協力している。日本政府は、独占禁止法の刑事罰則の効果的な実施

のため、検察庁と公正取引委員会との密接な協力をさらに進めていく。

D.入札談合への対処措置

1.2003年1月6日に入札談合等関与の排除及び防止に関する法律(官製談合防止法)が施

行された。同法には、公正取引委員会が、各省各庁、地方公共団体等の調達機関に対し、

入札談合行為等への職員の関与を排除するための改善措置を講ずること及び当該措置につ

いて公正取引委員会に通知することを要求できる旨が規定されている。また、同法には、

入札談合行為等に関与した職員に対する懲戒処分と職員が故意又は重大な過失により国等

に損害を与えた場合の損害の賠償についての規定が含まれている。

2.公正取引委員会は官製談合防止法を積極的に運用しており、今後もこれを継続する。

(a)公正取引委員会は、2003 年1月 30 日、同法に基づき、岩見沢市が発注する公共工

事について、入札談合の再発防止のための措置を採るよう岩見沢市長に対し改善措置

要求を行った。

(b)同事件において、公正取引委員会は、入札談合行為等における職員の関与があった

ことを判断する手順を開発した。今後、この手順を入札談合における職員の関与が疑

われる事件に用いる。

(c)同法の効果的な運用を確保するため、公正取引委員会は、地方公共団体や特定法人

の長を含む各省各庁の長等に対し、入札談合行為等への職員の関与が排除されたこと

を確保するための改善措置を要求する場合、公正取引委員会は、各省各庁の長等に対

し、講じた改善措置について、適切な時期に通知するよう求める。

(d)公正取引委員会は、求めに応じ、職員の入札談合等関与行為の調査及び当該行為に

よる損害額の算定について、調達当局に協力する。

3.入札談合等関与行為防止法及び入札契約適正化法適正化指針の全面的な実施のため、

(a)国土交通省は、2003年 6月までに、談合対策に関する冊子を準備し、ウェブサイト

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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に掲載する。当該冊子は、中央省庁及び地方政府の契約担当官にとって、談合を疑う

に足る情報の公正取引委員会への通知や、談合への関与が発覚した企業の指名停止の

実施を行う際の手引きとして利用可能なものである。その冊子には、以下の内容が含

まれる。

(1)発注機関・担当官にとっての、談合関連情報の取扱手続マニュアル

(2)談合その他の違法行為を犯した企業の「指名停止」の実施のための基準に関す

る文書

(3)入札契約適正化法適正化指針の抜粋など、談合により生じる損害に係る賠償請

求に関する情報

(4)入札談合等関与行為防止法の条文

(b)さらに、国土交通省は、同省の建設及び設計・コンサルティング契約に適用される

新たな契約条項を2003年の夏の早い時期を期限に準備しているところである。当該条

項は、請負業者が談合行為を行った場合において、契約額の一定割合を、当該請負業

者が支払わなければならない損害額としてあらかじめ設定するものである。

4.地方自治体による損害賠償請求訴訟(地方自治法第 242 条の2に基づく住民訴訟の結果

として提起されたものを含む)において、公正取引委員会は、独占禁止法において禁止さ

れている入札談合等の行為による過剰請求分の返還請求を行う地方自治体を支援する。こ

の支援には、事業者の秘密等の秘密情報に係る制限を考慮した上で公正取引委員会が保有

する関連の情報、資料を提供すること及び独占禁止法第84条に基づき、地方自治体が回復

すべき過剰請求分の算定に有用な公正取引委員会の専門知識を提供することが含まれる。

E.競争と規制改革

1.公正取引委員会は、経済産業省の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会の下の基本

問題小委員会にオブザーバーとして参加しており、2002 年 11 月の同小委員会において、

送電部門の公正性・透明性の確保が必要であること、電力の卸取引所制度の活用に当たっ

て公正で競争促進的な枠組が不可欠であること等の見解を示した。公正取引委員会は、今

国会に提出された電気事業法の改正法案について、電気事業分野における競争を促進する

観点から、経済産業省と綿密な調整を行ったところであり、今後予定される制度設計の具

体化に当たっても、経済産業省と連携していくこととしている。

2.電気事業分野において競争を促進し、既存事業者等による独占禁止法上問題となる行為

について明確化するため、公正取引委員会と経済産業省は共同して2002年7月に「適正な

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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電力取引についての指針」を改定した。

3.公正取引委員会は、経済産業省の総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会の下

のガス政策小委員会にオブザーバーとして参加しており、2002 年 12 月の同小委員会にお

いて、ガス事業分野における公正かつ自由な競争を確保するための方策について見解を示

した。公正取引委員会は、今国会に提出されたガス事業法の改正法案について、ガス事業

分野における競争を促進する観点から、経済産業省と綿密な調整を行ったところであり、

今後予定される制度設計の具体化に当たっても、経済産業省と連携していくこととしてい

る。 

4.電気通信事業における競争を促進する観点から、公正取引委員会と総務省は、2002年 12

月 25日、電気通信事業分野における競争の促進に関する指針を改定した。公正取引委員会

と総務省は、引き続き、必要に応じて見直しを行う。両当局は、引き続き、電気通信事業

分野における競争を促進する上で協力していく。

5.公正取引委員会は、独占禁止法第8条の4(独占的状態に対する措置)及び第18条の2

(価格の同調的引上げに関する報告の徴収)の規定の適切な運用を図るため、それぞれの

条項の監視対象事業分野及び監視対象事業分野に係る品目を明らかにし、価格、利益率等

に関する実態調査を行い、引き続き企業の動向監視に努める。

VII. 構造改革特別区域(特区)

A.規制改革の柱としての特区

 小泉首相は、2002年7月、構造改革特区推進本部を立ち上げ、特区が規制改革の主要な柱

の一つであることを明らかにした。2002 年7月 26 日以降、同本部は、都道府県、市町村、

その他の地方の公的機関及び民間セクターからの特区提案に基づく構造改革、規制改革の促

進に、開かれた、且つ、透明性をもった方法で取り組んできた。2003年4月21日、首相は、

第一弾の57件の特区の認定を行った。これらの特区は国際物流、産学連携、産業活性化、及

びIT推進といったいくつかの大きなカテゴリーに分類できる。

B.特区の透明性

 本部は特区の進展、特区の提案手続き、特区を実施する手続きの確立にあたって、透明性

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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を確保するために有意義な措置をとってきた。透明性を確保するためにとられた幾つかの措

置には次のものが含まれる。

1.インターネットで次のような重要な特区関連情報を公表している。

(a)全ての特区提案や提案プロセス

(b)特区提案の募集通知

(c)例えば、特区提案に係る規制改革・撤廃への反対の理由など省庁や関係行政機関の

提案に対する反応の全て

(d)特区本部事務局による省庁・関係行政機関、または都道府県・市町村・その他地方

の公的機関や民間セクターとの協議の概要

2.関係主体が容易に情報を探したり、苦情を述べたり、その他特区関連事項を提起するこ

とができるよう、コンタクトポイントの設定(例えば、[email protected] への電子メールを通

じて)

3.本部事務局は積極的かつオープンに外国政府の職員も含め、関係者と会合し、政策決定

前に、全ての関連事項の側面を理解しようとしている。

4.以下のような特区のプロセスにおいて顕著となる事項を処理するためノーアクションレ

ター制度を活用。

(a)特区申請主体が特区計画案の申請前に、所管省庁に対し、関連法令等の解釈を求め

ることが出来る。

(b)地方公共団体に対して、書面または電磁的方法で30日以内に法令等の解釈を提示

5.地方及び全国レベルでの特区に関連する問題を解決するため構造改革特区推進室に相談

窓口を設置

C.平等な形での特区の実施

 日本政府は、特区提案を行い、それが認められ、また、特区内で活動することについて、

国内企業及び外国企業の区別なく、平等な機会を有することを確保する。

D.特区の評価及び拡大

 特区本部は民間及び学界等多様な人から構成される委員会を設置する。当該委員会では、

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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どの特区が成功しており、全国的に拡大されるべきか、どの特区が失敗であるか、またどの

特区が成功か失敗かをさらに時間をかけて決定するものかについて、首相に意見具申する。

この過程において、本部は以下のことを確保するよう努める。

1.委員会が透明性あるやり方で運営されること。

2.特区で講じられた規制で成功したものについては速やかに全国規模で実施されること。

E.将来の特区

1.2003年4月21日の第一弾の57特区の認定に続き、2003年の5月中旬に、特区の第2弾

が出される。これに(7月1日~14日及び 10月1日~14日を始めとした)更なるラウン

ドが続く。

2.本部は引き続き、都道府県、市町村、その他地方の公的機関や民間セクターから、特区

提案を定期的(年に2度程度)に募集し、受け付ける。第3次提案募集は6月1日から30

日、第4次提案募集は11月1日から30日に実施される。

3.第3次、第4次提案募集やそれ以後の提案募集で提案され、改革された規制は、特区の

進展の中、改革された規制についての現在のリストに追加され、リストは拡充されていく。

F.特区に関して特に強調する点:

 構造改革特区は日本経済にとり重要な改革と便益の増加をもたらし、外国企業は特区の成

立や成功の上で重要な役割を果たすことができることに留意し、日本政府と米国政府は以下

の事項を特に強調する。

1.米国企業も含め、外国企業が本部に特区の提案を行い、自らがビジネスの機会があると

判断した特区に積極的に参加することを広く勧奨する。

2.本部を通じ、規制改革イニシアティブが扱う分野における提案など、内外を問わず産業

界が特区の提案を展開することを支援する。

3.分野別横断的な問題に関する作業部会における積極的な情報交換、また、特区の成功に

資する手段の探求を引き続き実施する。

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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VIII. 透明性及びその他の政府慣行

A.パブリック・コメント手続

1.パブリック・コメント手続が実効性をもったものとして幅広く活用されるよう、総務省

は、各府省に対し、規制の設定又は改廃に係る当該手続について、(a)意見募集期間を案件

の内容等を踏まえた適切なものとすること、(b)意見募集の方法を工夫すること、により意

見や情報が幅広く提出されるよう配慮を要請した。

2.各府省の意思決定過程の公正性・透明性をさらに向上させ、パブリック・コメント手続

の有効性を高めるため、総務省は、規制の設定又は改廃に係る意見提出手続の実施状況を

調査・公表する。

3.総務省はパブリック・コメント手続の各府省における実施状況の調査等を通じて当手続

が有効に活用されるよう努力する。

4.総務省は、各府省のパブリック・コメント手続、手続案内情報、組織・制度概要につい

て、政府全体として分かりやすく体系的に、かつ一元的に提供することにより電子政府の

総合窓口(e-Gov)をより充実させることを検討している。

B.法案策定における市民参加

1.国会における審議が、一般市民にとり、法案への意見等をインプットする機会となって

いる。

2. 最近では、幾つかの府省は、その判断で、国会への提出前に、一般市民によるインプッ

トの機会を設けてきた。その例は次のとおり。

(a)2002年の秋に、内閣官房は、国会への提出前に、知的財産基本法(案)骨子につい

てのパブリック・コメントを求めた。

(b)2003年のはじめ、経済産業省は、同年3月に国会に提出されたエネルギー分野の改

革法の基礎となる電気・ガス改革提案の報告案についてのパブリック・コメントを求

めた。

3.特に生命保険契約者保護機構(生保 PPC)及び損害保険契約者保護機構(損保 PPC)に

関して、日本政府は利害関係者に対し、生保・損保 PPC に関連する保険業法またはその他

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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既存の法律および規則の改正案について、コメントを求め、または、意見交換を行うため

の有意義な機会を引き続き設ける意向である。なお、この機会には、日本政府により召集

されうる会合またはこれら会合を構成する要素への関与を含む、2005年度末までに行われ

る生保 PPC のあり方に関する議論に積極的に関与する機会が含まれるであろう。

C.特殊法人

1.2001年 12月 19日、日本政府は、特殊法人等整理合理化計画を閣議決定した。同計画の

実施に際し、2002年末までに、日本政府は、対象163法人のうち118法人の組織形態につ

いて、法改正等の所要の措置を講じた。

2.日本政府は、引き続き特殊法人の再構築及び民営化に取り組んでおり、今後とも透明性

を保ちつつこの改革を進めていくこととしている。

3.整理合理化計画の実施状況の評価・監視を行うため日本政府により設置された民間から

の有識者により構成される特殊法人等改革推進本部参与会議が、2002年7月の発足以来、

11回開催された。その会議資料及び議事要旨は公開されている。

D.郵便金融機関

1.2002 年7月 24 日に国会において成立した「日本郵政公社法案」及び「日本郵政公社法

施行法案」に基づき、2003年4月1日、新たな公社である日本郵政公社が設立された。法

案の起草の過程で、総務省は、研究会を立ち上げ、この研究会が公聴会を実施し、研究会

の中間報告案へのパブリック・コメントを募集し、会合の詳細な議事録を関連資料と併せ、

インターネットを介して公表する等、透明性とパブリック・コメントの機会を確保してき

た。総務省は、簡保商品及び日本郵政公社による元金無保証型の商品の窓口販売又は元売

りに関連する法律改正を国会に求める提案の作成に関し、広く一般に情報を提供すること

の重要性を認識するとともに、民間利害関係者に対し、要請に基づき、総務省職員と意見

交換を行う機会を与える。

2.日本郵政公社が引き受け又は委託により販売する保険商品及び特約は、法律の規定する

ところによる。その拡張又は変更は、法律で認められた商品及び特約の範囲内での限定的

な変更を除き、国会の承認を要する。このような限定的な変更を行う際にとられる手続き

は法律に規定されており、民間分野において適用される同様の手続きと同程度又はそれ以

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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上の透明性が確保されている。日本郵政公社法においては、元金無保証型商品について規

定がないことから、日本郵政公社はこの商品の元売りを行うことはできない。

3.日本郵政公社法及び日本郵政公社法施行法により、簡保及び郵貯に対する検査及び課税

の要件は、以前より、民間金融機関に対するそれに近いものとなった。日本政府は、検査

及び課税の要件において残る相違点は、簡保及び郵貯と民間金融機関の間の不公正な競争

を生みだすものとなっていないと信じる。総務省は、引き続き、民間金融機関に対し、要

請に基づき、これらの点について総務省職員と意見交換を行う機会を与える。

IX. 法務サービス及び司法制度改革

A.法律サービス

1.昨年3月に閣議決定された司法制度改革推進計画に基づき,日本政府は,弁護士と外国

法事務弁護士(外弁)等との提携・協働を積極的に推進する見地から,3月に所要の法案

を本通常国会に提出したところである。この法案は,以下の改正点(政令に基づき公布の

日から2年以内に施行される予定)を含む,外国弁護士による法律事務の取扱いに関する

特別措置法の一部を改正する法律案を盛り込んだものである。

(a)外弁による弁護士の雇用禁止の撤廃

(b)外弁と弁護士との共同事業等に関する規制の撤廃

(c)特定共同事業制度の廃止及び外国法共同事業の創設

2.この法案の成立の結果:

(a)外国法共同事業(単一法律事務所又は各々の独立した事務所として構成)は,その権

限の範囲内で,あらゆる法律事務について包括的な法的助言や法律サービスを提供する

ことが可能となる;

(b)外国法共同事業に係る外弁と弁護士又は弁護士法人は,以下の要件の下で,単一の法

律事務所名称を採用することが可能となる;

 (i)外弁と弁護士は事務所を共にすること

 (ⅱ)外国法共同事業の業務範囲に制限のないこと

 (ⅲ)事務所名称に「外国法共同事業」の文字を含むこと

(c)外国法共同事業に係る外弁と弁護士は,自由に,かつ制限なく,収益の分配をするこ

とが可能となる;

(d)外弁は,個人的に又は外国法共同事業或いは他の外弁と共同経営する外弁事務所にお

いて,弁護士を雇用することが可能となる;

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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(e)外弁と弁護士は,引き続き,アドホックに協働して,収益を分配し経費を分担するこ

とは可能である。

3.日本政府は,外弁法人の設立について,この問題の取扱に係る基礎的な検討を行う。こ

の検討を進めるにあたり,日本政府は,日本弁護士連合会(日弁連),外国法事務弁護士協

会及び在日米国商工会議所と意見交換を行う。

4.外弁は、外弁を管理する会則・会規を審議する、所属の日弁連及び地方弁護士会の総会

を含む諸手続に出席し、意見を述べ、外弁に適用されうる全ての会則・会規の策定・施行

に関する議決に参加することができる。日本政府は、日弁連及び地方弁護士会が、前記原

則に従って外弁に対してこのような弁護士会の手続に参加する効果的な機会を提供するこ

とを積極的に支持する。

5.日本政府は、日弁連が外弁法の基本理念及び解釈を反映した規則等を設けることができ

るよう、適宜、適切な方法によって、同法の基本理念及び解釈を明らかにしていく。日本

政府は、日弁連と外弁法の実施に関する議論を引き続き行う。

B.司法制度改革

1.民事訴訟の充実・迅速化のため、日本政府は、2003年の通常国会に、民事訴訟法の一部

を改正する法律案を提出した。同法律案は、次のような規定を含んでおり、審理期間を概

ね半減することを目的としている。

 (a)計画審理を促進するために、複雑な事件等について裁判所に審理の計画の策定を義

務付ける規定

 (b)訴えの提起前における当事者の証拠収集手段の拡充のために、当事者が相手方に対

して照会することを可能にする手続や、裁判所が文書の所持者に対してその送付を嘱

託することを可能にする規定等

2.司法制度改革推進本部は、行政訴訟制度の見直しについて、2002 年3月 19 日に閣議決

定された司法制度改革推進計画に従い、司法制度改革推進本部において開催している行政

訴訟検討会における議論を通じて検討を継続しており、2004年 11月 30日までに所要の措

置を講じる考えである。検討会は、有識者、その他関係者からのヒアリング、諸外国の行

政訴訟制度の検討を経て、2002 年 10 月から、行政訴訟制度の見直しの具体的な論点につ

いて、幅広い検討を行っている。司法制度改革推進本部は、2002 年7月1日から8月 23

日まで行政に対する司法審査についての意見募集を広く一般に対して行った上、司法制度

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

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改革全般については常に意見を受け付けている。

X. 商法

A.合併手続の柔軟性

1.いわゆる「合併等対価の柔軟化」に関する商法の特例を含む改正産業活力再生特別措置

法は、2003年4月9日に施行された。この法律の施行により、政府の計画認定を受けた事

業者は、外国会社を含む親会社株式や現金を対価として合併、吸収分割又は株式交換を行

うことが可能となる。これらの柔軟な組織再編成手続の導入により、外国会社が日本にあ

る子会社を通じて M&A に関与することが容易になった。

2.現在、法務省の法制審議会会社法部会において、会社法制の現代化について審議中であ

るが、法務省は、会社法制の現代化の検討の一環として、三角合併及びキャッシュ・マー

ジャー等の合併対価の柔軟化やショートフォーム(スクイーズアウト)・マージャーを含む

現代的な合併手法の商法への導入を検討中である。2003年中には合併手法に関する提案を

含む法案要綱中間試案を公表し、パブリック・コメント手続を執る予定であり、国際ビジ

ネス及び法律団体からのコメントも歓迎する。

B.企業統治の改善

1.2002年6月1日より、大部分の証券取引法に係る報告及び申請については電子的に提出

することが可能となった。これらの提出物は金融庁のウェブサイトで一般に閲覧可能であ

る。2004年半ばより、原則として大部分の証券取引法に係る報告及び申請は電子的に提出

されなければならず、これらは www.fsa.go.jp/edinet/edinet.html において電子的に閲覧可能

である。

2.2003年4月1日に施行された「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」の

改正によって、委員会等設置会社の制度を採用した会社においては、各委員会を組織する

取締役の氏名及び当該取締役が社外取締役であるか否かを登記することとなっている。委

員会等設置会社の各委員会メンバーを含むすべての取締役は、株主総会において選任され

るが、取締役の選任決議については、株主総会招集通知に添付する書類に、当該候補者が

有する会社の株式の数、略歴、会社との利害関係の要旨等を記載すべきこととされている。

これにより、取締役選任決議において議決権を有する株主は、当該取締役の独立・非独立

の別及び非独立である場合には当該取締役を非独立ならしめている会社との関係を知るこ

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

32

とができる。

3.日本政府は、委任状投票に関する米国政府の主張についての見解を述べた。

XI. 流通

A.着陸料及び空港使用料

 日本政府は、成田空港と関西空港の着陸料引き下げに関する米国政府の懸念についての見

解を述べた。日本政府は、完全民営化に向けて成田空港公団を全額政府出資の特殊会社化す

るための法案を国会に提出した。

B. 国際物流関係特区における時間外手数料の軽減

 地方公共団体が事業を実施し又はその実施を促進することによって構造改革の推進及び地

域経済の活性化を図るため、小泉内閣の特区制度が昨年夏導入され、本年4月21日に、臨時

開庁手数料の軽減及び税関の執務時間外における通関体制の整備による貿易の促進事業とし

て、12の区域が国際物流関係特区として認定された。この国際物流関係特区には主要な日本

の港湾・空港(成田及び関西国際空港、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、及び北九州の主

要港)が含まれており、財務省関税局は、これらの物流関係特区において、執務時間外の手

数料を軽減(50%)する措置を導入した。当該手数料は税関の執務時間(平日08:30~17:00)

外に貨物の通関を依頼する場合に依頼者より徴収される。これらの施策を通じ関税局は、日

本の国際港の競争力を高めるための地方公共団体による取組を支援する環境を整備した。

C. 執務時間外における通関体制の整備

1. 税関の執務時間外に輸出入通関等の業務処理が恒常的に発生する官署においては、365

日 24時間体制を既に採用しているなど、これまでも税関は執務時間外の通関需要に積極的

に対応してきた。

2. 近年、港湾の24時間フルオープン化に向けた取組みが一層進展する中で、その実現に

向けた官民の取組みの更なる推進が求められている。こうした状況に鑑み、税関では港湾

の24時間フルオープン化への問題点等を把握することを目的として、コンテナ貨物取扱い

実績の多い税関官署において、税関の執務時間外における一定の時間帯に職員を配置する、

「通関体制の試行」を実施している。また、試行実施官署以外の官署においても、執務時

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第2回報告書                                                               日本政府による措置

33

間外の通関需要が恒常的にある場合には、職員を配置して適切に対応する必要がある。一

方、国際物流関係特区においては、臨時開庁承認申請が見込める時間帯に職員を配置する

措置を導入した。

3. これらを踏まえ、本年7月から全国の主要港湾を中心として、税関の執務時間外におけ

る一定の時間帯に職員を常駐させる通関体制の本格的な整備を実施することとした。

D. 到着即時通関制度の緩和

1.日本においては、迅速な通関を確保するため、航空機入港前であっても、予備的に税関

の書類審査を受けることができる予備審査制を導入しており、当該予備審査制を利用した

申告のうち、特に迅速な引取りが必要で、税関の審査の結果、取締上の支障がないものと

して検査が不要とされた貨物については、到着即時輸入許可制度を、航空貨物については

1996年 4月より導入しているところであり、事実上、米国の事前申告制度と同様の効果が

実現されている。

2.なお、空港を補完するために設置された保税地域である原木の TACT(東京エアカーゴ・

シティ・ターミナル)等の物流拠点以外の空港外保税蔵置場へ保税運送される場合につい

ても到着即時輸入許可制度の導入を検討する予定である。

E. 更なる効率化のための施策

 本年4月1日より、近年の国際物流の効率化の要請を踏まえ、非居住者が本邦において輸

入(納税)申告等を行い、在庫管理を行なうことを可能とする措置を実施した。

F.事前申告の承認

 関税局は、航空機が最終着陸態勢に入った時点で貨物の事前申告を認めて欲しいという米

側の要望に留意した。

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

34

米国政府による規制改革及びその他の措置

I. 規制改革及び競争政策に関する分野横断的な問題

A.貿易・投資関連措置

1.アンチ・ダンピング法

米国政府は、アンチ・ダンピング法が WTO 協定上の義務に適合的であることを確保する。

2.エクソン・フロリオ条項

 米国政府は、エクソン・フロリオ条項に関して、就中規制の予見可能性、完了した投資の

法的安定性、デュープロセス確保という観点から、日本政府が有している懸念を認識する。

米国政府は、今後のエクソン・フロリオ条項の運用に当たっては、日本政府の懸念も考慮に

入れつつ、WTO ルールとの整合性に配慮することとする。

3.特許関連事項

 米国政府及び日本政府は、実体特許法の調和に向けた効果的な取り組みに対して相互支援

することを再確認すると同時に、

(a)米国政府は、米国の先発明主義に対する日本政府の懸念に関し日本政府との対話を

継続する。米国は、その先発明主義は世界唯一であることを認識しており、欠点はあ

るものの、米国においてそして米国制度のためには良く機能していると考えており、

先願主義への移行に対する米国内の支持は限られていると認識している。米国政府は

ヒルマードクトリンに基づくシステムの修正という日本政府の要望に関し日本政府と

の対話を継続する。米国は、本件が継続中の実体特許法調和交渉において取り上げら

れており、2003年5月の次回交渉にて協議されることを留意する。

(b)米国政府は、発明の単一性要件の緩和に関する日本政府の要望を引き続き検討する。

(c)米国政府は、米国の早期公開制度中、出願日から18ヶ月以内における特許出願公開

の例外を廃止することに対する日本政府の要望に関し、日本政府との対話を継続する。

米国は、その早期公開制度における経験とともに、例外が必要であるとの裏付けがな

くなることを期待するが、現下の政治情勢では例外を狭めたり排除する試みが成功す

る可能性は低い。

(d)米国政府は、再審査制度の更なる改善に対する日本政府の要望を引き続き検討する。

米国政府は一般的に右基本認識を支持してきた。米国議会は当事者系再審査に対する

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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第三者の連邦巡回控訴裁判所への上訴を規定する法案を最近可決した。

4.メートル法

 米国政府は、民間部門、連邦及び州政府レベルにおけるメートル法の使用を拡大、促進す

るための措置を引き続き講じる。また、当面の間、米国は以下の暫定的措置を講じている。

(a)2002年 11月7日に、商務省国立標準研究所(NIST)は、「公正包装及び表示法(FPLA)」

を新たなものとするための産業界及び公的部門からの支援を得ることを目的としたフ

ォーラムをワシントンで開催した。そこで、FPLA を新しくすることを率先して行う

ワーキンググループが作られた。

(b)このイニシアティブでは、メートル法のみの表示を認める法令の採択を促進する「包

装・表示に関する統一規制(UPLR)」を未だ施行していない州の計量担当部局の長も

一緒に取り組むこととなっている。

5.再輸出規制

 米国政府は再輸出規制の執行に関する日本政府の懸念を理解する。日本政府の懸念事項に

関しては、2003年4月に商務省が「米国原産品の関連した再輸出及び海外取引のガイドライ

ン 英語版」を更新してウェブサイト(アドレス http://www.bis.doc.gov/Licensing/ReExportGuidance.htm.)に掲載した。商務省はこのガイドラインについて日本語版を作成し、ウェブ

サイトに掲載すべく現在最終的な作業を行っている。

 在京米国大使館及び米国領事館に輸出管理の専門家を配置してほしいとの日本政府の要望

に関しては、商務省は米国の輸出管理規制に関する問い合わせに対して助力できる職員を在

京米大使館に配置している。米国政府はこれらの問い合わせについて、今後も全力で対応す

るよう努める。

 米国政府は、米国の輸出者が日本の輸入者(再輸出者)に例えば規制品目識別番号(ECCN)

等の製品に関する十分な情報を提供することを義務付けることについて、日本政府と引き続

き議論していく。

6.時計の輸入関税算定方法と原産地表示規則

 米国政府は、時計の関税率算定方法及び原産地表示規則についての日本政府の懸念を認識

している。

 米国政府は、本件に関し、日本政府との対話を継続する。

B.制裁法

1.米国政府は、イラン・リビア制裁法に対する日本政府の懸念を理解する。 

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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2.米国政府は、1996年キューバの自由と民主主義連帯法に対する日本政府の懸念を理解す

る。

3.米国政府は、州及び地方レベルでの制裁の発動方針について、連邦政府の外交政策との

整合性が確保されるよう引き続き努力する。万一、新たな制裁法の制定が提案された場合、

米国政府は、これらの制裁措置の合憲性を確保するために、州知事、州司法長官及び州政

府調達官に対して、あらゆる合理的な働きかけを行う。

C.流通

1.海事分野等におけるテロ対策の取り組み

 米国政府は、2002 年米国海事運輸保安法の規定及び船積み 24 時間前までのマニフェスト

提出に関する規則の実施についての日本政府の懸念、並びに2002年通商法に基づく航空輸送

におけるマニフェストの事前提出に関する規則案についての日本政府の懸念を理解する。米

国政府は以下のとおりコメントする。

(a)マニフェストの事前提出や C-TPAT を含む保安措置の導入及び実施に際して、米国

政府は、経済界の立場に配慮しつつ、保安と貿易の円滑化という2つの目的の調和を

図るため、引き続き日本の関係当局と密接に協力を行う。

(b)米国の税関及び国境保護局は、コンテナ・セキュリティ・イニシアティブの実施に

つき、日本の関税局及び全ての利害関係者と密接に協力を行う。

2.輸入通関所要時間調査

 米国政府は、世界税関機構(WCO)で開発された通関時間調査ガイドラインに基づく調査

について、現在開発中の ACE(Automated Commercial Environment)導入後、すみやかに通関

時間調査を実施する。

3.1920年商船法

 米国政府は、1920年商船法に関する日本政府の懸念に留意した。また、米国政府は、日本

の港湾の大幅な改善状況に関する日本政府の主張に留意した。米国の行政省庁は、これらの

問題について、日本政府と引き続き協議し、情報交換を行い、その進捗状況を米国連邦海事

委員会(FMC)へ報告することとする。

4.新運航補助制度

 米国政府は、新運航補助制度(MSP)の廃止を日本政府が要望したことに留意した。

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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5.各種貨物留保措置

 米国政府は、アラスカ原油の輸送を米国を旗国とする船舶にのみ認めることとした法律を

含む各種貨物留保措置の撤廃を日本政府が要望したことについて、留意した。

6.1998年外航海運改革法

 米国政府は、1998 年外航海運改革法により FMC が日本その他の外国海運企業による商業

ベースでの海運活動を一方的に規制することを認められていることに対する日本政府の主張

に留意した。

D.競争政策

1. 米国政府の反トラスト当局は,連邦反トラスト法の適用に関する制限及び除外の適切な

対象範囲について引き続き見直しており,適宜見解を示している。

2.この点に関連し,米国政府は,2002 年 12 月,コヴァッド・コミュニケーション社対ベ

ル・アトランティック社事件について,コロンビア地区巡回控訴裁判所に対し,とりわけ

1996 年電気通信法は反トラスト法の適用除外を生み出したと解釈されるべきではないと

のアミカス・キューレ・ブリーフ(第三者が裁判所に提出する意見)を提出した。

E.法律サービス及びその他法律関連事項

1.法律サービス

(a)2002年8月、全米法律家協会(ABA)は、(外国)法コンサルタントの免許に関する1993

年ABAモデル規則(ABAモデル規則)と整合的な規則を採用することによって、全ての

州が外国法コンサルタント(FLCs)の地域における設置を許可するよう奨励することを

内容とする同協会多法域間業務委員会の勧告を正式に採択した。この勧告は、また各州に

対し、既に存在する外国法コンサルタントに関する規則をABAモデル規則と整合させる

よう見直すことをも促している。さらにABAは、各州において外国弁護士が資格を有す

る業務について法律サービスを一時的に提供することを認める規則(いわゆるfly in/fly out又はFIFO規則)を全ての州が採用することを促す内容の同委員会の勧告についても採択

した。

(1)これらの決議を履行するため、ABAは、現在、ランドール・ホランド、デラウエア

州最高裁判事が議長を務める統合法律家規則常任委員会に対して、ほとんどの州におい

てこのような権利や義務を執行している各州最高裁判所が、これらの規則を確実に採用

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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するよう、各地域の弁護士会を奨励及び支持することを指示した。

(2)ABA統合委員会は、2002年8月以降、全ての州の最高裁長官に対し、2つのABAモ

デル規則の採用を考慮し、あるいは既に存在する規則をABAモデル規則と整合させる

よう改正することを要求する内容の書簡を送った。

(3)その結果、2003年4月15日現在、ジョージア州、オレゴン州、ルイジアナ州の弁護士

会が、これらの州の最高裁判所が、既に存在する規則をABAモデル規則と整合させ、

外国弁護士の一時的業務を許可するために修正をするよう勧告した。

(b)米国政府は、全州がこれらの規則を採用することを引き続き支持するとともに、ABAと

の間で法律サービスの問題について今後も引き続き議論する。米国政府は、既に外国法コ

ンサルタント制度を採用している州は、外国法コンサルタントとしての外国弁護士受入に

関する職務経験要件期間を短縮し、申請日の直前の期間の職務経験のみが職務経験と見な

しうるとする規則を撤廃すべきとする日本政府の要求をABAに対し伝え、さらにABAが

この要求を適切な州当局に対して通知することを奨励する。次回の日米規制改革及び競争

政策イニシアティブ会合において、米国政府は、日本政府の要求に対する州当局による正

式な回答をABAから受け取ったか否か、及びその回答内容について日本政府に通知する。

2.製造物責任法

(a)米国大統領は、一般教書演説及びその他の演説の中で、不適切な不法行為訴訟によ

りビジネス界が負っている過度の負担や、不合理な賠償額についての懸念を表明して

おり、医療過誤訴訟改革を強く支持している。

(b)米国最高裁判所も、最近、懲罰的損害賠償に対する憲法上の限界を改めて認めてい

る。2003 年4月、最高裁は、ステートファーム対キャンベル事件の決定の中で、100

万ドルの補償的損害賠償に加えて1億4500万ドルの懲罰的損害賠償を認めることは、

憲法上のデュープロセスを侵害すると認めた。最高裁は、懲罰的損害賠償を与えると

きには、裁判所は、その懲罰的損害賠償が合理的であること、及び原告に生じた損害

の大きさと回復された一般的な損害とに釣り合ったものであることを確認しなければ

ならないと判断した。

F.領事事項

 米国政府は、領事事項に関する日本政府の懸念に対応しうる措置について、日本政府との

議論を継続する。

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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1.社会保障番号及び運転免許証

(a)米国社会保障庁(SSN)は、2003年3月26日に社会保障番号(SSN)の発給に関する

規則改正案を公表した。日本政府は、パブリック・コメント手続に則り、社会保障庁

が依然として代替的身分証明手段を導入していない州、とりわけイリノイ州に働きか

けを行うこと、及び当該州が完全に代替的身分証明手段を導入するまで新規則の施行

を延期することを要請するコメントを5月13日に米国社会保障庁に提出した。米国政

府は、本コメントを十分に検討する。

(b)米国社会保障庁は、自動車運転免許証取得の際に社会保障番号の提示を求める州政

府に対して、非就労査証所有の合法的滞在者が利用できる代替的身分証明手段を導入

するように引き続き働きかけを行う。

2.I-94(滞在許可証)

 米国国土安全保障省の市民権・移民局は、非移民ビザ所有者の滞在許可期間延長申請の処

理期間短縮に向けて引き続き努力する。また、現在行われている出入国に係る便益の再設計

プログラムの一環として、市民権・移民局は、滞在許可期間延長申請の処理手続きの合理化

に向けた努力を続けている。米国政府は、市民権・移民局が延長手続に係る全米一律の標準

処理期間の設定につき引き続き検討することを求める日本政府の要望に留意した。現在、市

民権・移民局は、事務の優先付けを行う作業の過程にある。サービスセンター本部からの指

令と支援を受けた各サービスセンター長が、あらゆる種類の申請に対応できるような計画を

進めている。すべてのサービスセンターに適応する標準処理期間を設定することは不可能で

あるが、各サービスセンター長と処理期間に関する情報や迅速な処理方法を共有することで、

各センター間の処理能力の平準化に努めている。また、米国は、そのような改善努力の成果

に関する最新の情報を適切な形で日本側に提供する。市民権・移民局は、I-539 に関する全て

のサービスセンターにおける申請処理手続の標準化を進めてきた。これは、滞在許可期間延

長申請及びステータス変更に係る処理過程の合理化及び標準化の努力に向けた前向きな一歩

である。

G.建設工事における紛争解決の円滑化

米国政府は、米国の公共工事の一部における紛争解決は、関係する企業にとって時間がかか

る場合があり、建設紛争解決を円滑にすべきであるとの日本政府の見解に留意した。米国連

邦政府の公共工事に関係した紛争は、連邦調達規則第33条に定められた裁判外の第三者的な

紛争解決方法(ADR)の仕組みにより、公平かつ速やかに解決を図ることができる。米国政

府はこの案件につき、日本政府と引き続き、州・地方自治体レベルでの進捗を含む情報交換

を行っていく。

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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II. 電気通信

A.米国無線市場への参加

 米国政府は、米国無線市場における直接投資規制に関し日本政府との対話を継続する。こ

の領域における日本の懸念を考慮し、米国政府は、米国法は民間外国法人が、非放送、非コ

モンキャリア、又は、非航行若しくは非航空固定無線局免許に対する 100%までの直接又は

間接投資を所有することを禁じていないことを説明した。さらに、そのような法人は、放送、

コモンキャリア、又は、航行若しくは航空固定無線局免許について、連邦通信委員会(FCC)の特別な認可なしに、20%まで直接、25%まで間接に所有できるとともに、原則的には、100%

の間接所有も、公共の利益であると見なされる場合には、可能である。FCC は、コモンキャ

リアに関する間接投資については、WTO 加盟国からの投資は参入にかなうものとの反証可

能な推定を行う。上記の枠組みの下で、多くの外国企業が米国市場に参入している。米国政

府は、日本政府に対し、引き続き、米国におけるコモンキャリアと非コモンキャリアの区別

に関する情報を提供する。

B.外国事業者等の米国市場参入に関する審査基準

1.米国政府は、米国の認証・免許付与の審査基準の透明性、並びに免許決定への外交政策、

通商政策、競争上の懸念の適用に関する日本政府との対話を継続する。

2.国際サービスに関する規則の見直しが、2年毎の規制見直しの2002年分の一部として進

行中である。2003 年3月、FCC は、2年毎の規制見直しの 2002 年報告を発表した。FCCはまた、同時に、2年毎の規制見直しの 2002 年スタッフレポートを発表した。1996 年通

信法は、FCC に対し、通信法に基づき電気通信サービス事業者に適用される規則について、

意味のある経済的競争により公衆の利益に照らしてもはや不要となった規則があるかどう

か、及びそのような規則は廃止又は修正されるべきかどうかを決定するため、見直しをす

ることを義務付けている。2年毎の規制見直しの 2002 年 FCC 報告及び付随するスタッフ

レポートは、その規定上の義務を満たし、修正又は廃止されるべき現行の規則を特定する。

3.FCC は、スタッフレポートの提言を実施するための意見招請を必要に応じ行うことによ

り、スタッフの提言に基づいて行動するかどうか決定する。どの意見招請も、日本政府を

含む利害関係者からのコメントを受け付ける。米国政府は、FCC のスタッフレポートにも

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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特定されている事項である、通信法310 条(b)(4)に関する手続の明確化や事業者に対する

トラヒック及び収支データに関する現行の報告義務についての日本の関心を認識する。パ

ウエル委員長及び他の委員の声明及び国際局レポートを含むスタッフレポートは、

http://www.fcc.gov/biennial で全て入手できる。

C.州レベルの規制

1.米国政府は、免許付与手続及び州ごとの規制の調和に関する日本政府の関心を含む、州

レベルの規制について、日本政府との対話を継続する。この領域における日本の懸念を考慮

し、米国政府は、米国内及び外国の両方の全ての事業者が、事業を行っている州1つ1つ

に特有の様式の届出を行う義務があることを認識する。米国政府は、州レベルの規制に関

する事項について全米公益事業委員協会(NARUC)とともに取り組む日本や他国の努力を

歓迎しており、日本の関心を NARUC へ伝達した。

2.FCC は、既存地域電話会社の 1996 年通信法の遵守の観点に関して行った全米の調和さ

れた報告要件(実施基準として知られる)に関する提言を採用するかどうか、引き続き検

討する。

D.アクセス・チャージ及び接続

1.FCC は、「統一された事業者間補償制度の構築に関する意見招請」において、事業者間

補償の全ての現行の規制形式の根本的な再検証を開始する。FCC は、現行の規制システム

の下で電気通信ネットワークの相互接続により発生する電気通信事業者間の支払いの流れ

に関する統一的な制度の概念を検証する。特に、この意見招請は、そのような統一された

制度へのビル・アンド・キープアプローチの実施可能性及び現存の事業者間補償制度への

修正について意見を求める。まとめると、FCC は、過渡的な事業者間補償制度から、1996

年通信法の競争促進的なビジョンを完成するより永続的な制度へと移行することを目指す。

2.2003年2月に採択された3年毎の見直しオーダー(FCC03-36)の FCC による発表後、

米国政府は、TELRIC による価格設定規則及びその他の事項をさらに明確化するために、

日本政府との対話を継続する。

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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E.商用衛星に係る輸出許可及びTAA許可等の処理手続

1.米国政府は、商用通信衛星に係る輸出許可及び技術援助協定(TAA)許可等の処理に要

する期間に関する日本政府の懸念を認識する。

2.米国政府は、商用通信衛星に関する輸出許可や TAA 許可に関する政策や手続を改善する、

以下の措置を採った。

(a)国防貿易の許可事務を行う国務省の国防貿易管理局は、2003年1月、輸出許可政策

及び手続の改善を目的として、大幅な組織改正を行った。

(b)さらに、同局は、電子的な「ペーパーレスの」許可システムを構築中である。この

ことは、申請を促進し処理時間を加速化する。

(c)2002年9月から、日本を含む同盟国への輸出の場合には、商用通信衛星の場合を含

む輸出許可について、議会承認を要する基準額が5千万ドルから1億ドルに引き上げ

られ、議会承認を要しない衛星の範囲が拡大した。

3.米国政府は、国家安全保障を守りつつ米国法と合致して商用通信衛星の輸出許可及び

TAA 許可の遅れを最小限にする努力を継続する。

F.先進的な技術及びサービスの促進

1.2003 年2月、作業部会は、発展中の IP 電話市場における傾向及び課題について見解を

聴取するために、政府及び民間部門の専門家からなるパネルディスカッションを開催した。

2.日米両政府は、進行中の市場の発展に照らし、支配的事業者のネットワークインターフ

ェースのオープン性の原則を維持しつつ、先進的な技術の迅速な展開を妨げることのない

よう、ネットワーク回線終端装置(NCTE)に関する1990年の交換書簡の妥当性について

2003年度中に意見交換する。

3.日米両政府は、無線 LAN を含む先進的な技術の発展及びその市場における潜在的な役

割に関する情報交換を継続する。

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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III. 情報技術(IT)

A.著作権保護

1.米国政府は、利用可能化権、生の実演に関する権利及び著作者・実演家の人格権を確実

に保護することの重要性を認識する。これらの権利に関する米国著作権法上のいくつかの

観点についての日本政府の明確化の要求に応じて、両国政府は、著作権専門家の間で、一

連の有意義な議論を行った。米国政府は、米国法制下における、利用可能化権、生の実演、

人格権、固定されていない著作物の保護について、制定法及び判例法に基づく広範な情報

を提供した。米国政府と日本政府は、これらの問題について議論を継続していく。

2.米国政府及び日本政府は、コンピュータ・プログラムに係る貸与権の保護について、特

にビデオゲームのプログラムを重要視して、議論を継続していく。

3.米国政府及び日本政府は、放送機関の権利を確実に保護することの重要性を認識する。

そのために、両国政府は、世界知的所有権機関(WIPO)におけるこの分野の新条約に向

けた作業を継続する。米国政府は、本年6月に行われる次回の WIPO 著作権等常設委員会

で検討されるべく、放送機関、有線放送機関及びインターネット放送機関に保護を与える、

条約についての包括的な新提案を提出した。

4.情報技術作業部会を通じて、米国政府は、日本政府とともに、アジア地域におけるデジ

タルコンテンツの海賊行為の撲滅及びその他のIT関連の知的財産の保護強化のための共

同措置を、探求し検討していく。

IV. エネルギー

 米国政府は、国内のエネルギー市場の改善・正常化のため改革を行った。この措置は日本

政府により歓迎されている。

A.連邦当局及び州当局

1. 議会で未成立となっている、2003 年エネルギー政策法の最新版では、次のように述べ

られている:送電サービスへの公平で開かれたアクセスの促進、最終消費者を利すること、

卸売における競争に資すること、送電網運営の効率の向上、送電網の信頼度の向上、送電

における不当に差別的なまたは優遇的な取扱いの機会の排除及び競争的な電力卸売市場に

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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おいて伸びている需要を満たすのに必要な送電インフラの効率的な整備のため、州間事業

を扱う全ての送電事業者は、州間取引に係る送電に使用される送電設備の運用上或いは機

能上の制御権を有し、卸販売のための発電設備を所有或いは運用しない、独立して運営さ

れる「地域送電機関(RTO)」の会員に自発的になるべきというのが議会の意向である。

2. 米国議会において現在審議されている2003年エネルギー政策法の様々な案においては、

連邦エネルギー規制委員会(FERC)がその競争を維持する能力を強化するために、強制力

ある州間送電網のための信頼度基準を施行すること、市場の透明性と市場操作を監督し、

非規制の電力会社にその送電網へのオープンアクセスを指示すること、反競争的な行為に

よる損害と同等の違反に対する罰金を課すこと、電力と天然ガスの合併を審査すること、

といった、競争を維持するという当局の能力を強化することだけでなく、RTO を設立し、

監視する権限を認めている。

3.FERC は、地理的に広い地域に対して運用及び計画の責任を負う RTO の設立を厳正に遂

行する。標準市場設計の規則は、異なる地域の RTO の電力卸売市場を調和させる。

4. 電力市場がより競争的になる状況において信頼度基準が引き続き維持されることを確保

すべく、2003年エネルギー政策法では、すべての大規模発電設備の所有者・運用者を強制

的な信頼度基準に従わせることとしている。FERC は、本法案の下、電力信頼度機関(ERO)

の基準に従うよう命令・強制する権限を有するだけでなく、ERO に関する権限をも有する。

B.公益事業持株会社法の見直し

 2001年5月の国家エネルギー政策においては、競争的な市場参加を促進するため、公益事

業持株会社法の廃止を勧告している。過去数年間の多くの改革法案においては、公益事業持

株会社法の全部または一部廃止を提案しており、最も新しいものでは、2003年4月に提出さ

れたエネルギー政策法がこれにあたる。この法案はいまだ米国議会により審議されていると

ころである。

C.公営事業体

 米国政府は、引き続き公営事業体が自由化市場における公平な競争に与えるインパクトに

ついて評価を行う。2003年エネルギー政策法では、連邦の電力取引部門、地方公営電力及び

テネシー川流域開発公社がその送電網へのアクセスをオープンにしなければならないことを

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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規定している。

D.標準市場設計

 米国政府は、提案されている標準市場設計(SMD)に類似の方法で設計されている RTOが設立されている地域において多くの新規発電設備の建設が計画されていると認識している。

米国政府は、さらに、SMD が本質的に発電設備と送電設備の調和した開発を確保することを

目的としていることを明確にした。SMD は、RTO 間取引の際に発生するパンケーキ問題を

解消することを提案している。米国政府は、その透明な政策決定プロセスの一部として、引

き続き SMD の際と同様にパブリック・コメントの機会を確保することとしている。

E.送電設備投資へのインセンティブ

 FERC は、将来の頑強なインフラ整備という目標の達成及びすべての消費者を低価格と莫

大なコスト節約という勝者側に立たせることに取り組んでいる。このため、FERC は、必要

な送電設備投資を促進し、送電網の性能を向上させることに資するインセンティブを提案し

ている。

1.FERC は、RTO 及び独立送電事業者の設立だけでなく、送電設備への投資に報いるよう

な料金インセンティブを創設する新しい送電料金に関する方針を提案している。これは、

独立した地域送電網の運用と調整が、送電網の性能の向上、卸売における送電コスト及び

取引コストの低減、信頼度の向上及び卸売におけるより効果的な競争を実現するからであ

る。

2.特に、この新しい方針では、新しく送電設備に投資をすることにより、株式市場の一般

的な収益率にインセンティブとして1%を付加する。その結果の報酬率が合理的なもので

あることを保証するため、これらのインセンティブには、地域の RTO に参加している送電

設備所有者からなる代理グループの中で最も高い合理的な株式の収益率と同等の上限が設

けられている。

F.市場規制政策の明確化

1. 天然ガス法及び連邦電力法といった米国のエネルギー規制法では、すべての価格は、1935

年に作られた公明、透明な基準に基づくことと規定されている。連邦電力法では、すべて

の価格は公正で合理的でなければならない、としており、競争が起きなくなった場合には

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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この基準に基づいて価格が決められる。公正かつ合理的な基準により、電力会社の投資に

おける合理的な利潤の幅が規定されることとなる。

2. 米国政府は、国内のより多くの人々が電力小売自由化の恩恵にあずかるために必要な、

卸市場の競争を活性化させるための市場設計をよりよいものとすることについて、引き続

きイニシアティブをとる。

G.卸市場におけるプライスキャップ規制

1.各州とは異なり、FERC は卸市場においてプライスキャップや入札キャップを課すこと

ができる。そのようなキャップは、市場支配力の乱用を防止するためだけに用いられる。

FERC は、裁量的な価格変動を起こすことはせず、透明性のある鎮静化措置をとるため、

市場参加者は、卸市場において入札キャップが実行されたとしても、市場を評価し、適切

な経営判断をすることができる。

2.透明な報告システムがあるので、米国の RTO 及び独立系統運用者(ISO)は、客観的か

つ統合的にマストラン電源の指定を行うことができる。RTO 及び ISO は、マストラン電源

を指定する客観的な給電指令を提供している。これらの給電指令者は、一切の商業的な結

びつきがなく、それゆえ偏見のない決定を下すことができる。

H.電力取引市場の正常化

 米国政府は、監視を強化し、エネルギー分野における市場操作を防止するための具体的な

措置を講じた。大統領は、法人不正行為タスクフォースを創設した。メンバーとなる機関は、

そのミッション及び能力をもとに選ばれている。タスクフォースに属する司法省の検事は主

要な商業中心地、即ち、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、ヒューストン、サンフラン

シスコ及びフィラデルフィアから参集している。連邦捜査局(FBI)、財務省国税庁(IRS)及び郵便監察庁からの捜査官に加え、メンバーには、労働省だけでなく、証券取引委員会

(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)、FCC 及び FERC の規制担当官が含まれている。

I.エネルギー・デリバティブに関する会計処理方式の信頼度向上

 米国政府は、不正な会計処理や市場操作・搾取に対処するため、以下の措置を講じた。

1.SEC は、会計処理についてより綿密な調査を実施している。

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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2.FERC は、デリバティブの会計基準を確立する最終ルールを発した。

3. 系列下にある規制下のエネルギー企業による非規制下のエネルギー分野の活動に対する

内部相互補助を防止する観点から、FERC は、規制部門から非規制部門への流用を防止す

る、キャッシュマネジメントのルールの策定を開始した。また、FERC は、当該規制事業

のためだけに用いるという条件で規制事業者の資産を担保にした負債証券の発行を認める

ことを基本とする方針を公表した。

4. SMD は、電力市場における価格の分散の性質を変え、物理的な供給のリスクを制限す

ることにより、実効性を有する電力の先物市場の発展を促進する。

V. 医療機器・医薬品

A.GMPs

1.米国食品医薬品庁(FDA)と厚生労働省は、2000 年 12 月の書簡交換に基づき、医薬品

GMP に関して相互承認協定と同様の協力的な枠組みに向けて積極的に取り組んできた。

FDA は、厚生労働省に対し、協力的に取り組むことを引き続き約束するとともに、この交

換書簡の円滑な実施と継続の確保に取り組む。FDA は、医療機器 GMP に関し、厚生労働

省と、情報交換及びその他の協力活動を続けていく。FDA 及び厚生労働省は、これらの活

動の重要性を認識する。

2.GMP 相互承認は、市場指向型分野別協議(MOSS 協議)フォローアップ会合において、

長年にわたり議論されている重要課題の一つであるが、未だ解決されずに残っている。

GMP 分野における将来的な相互承認又はこれに類似した協力体制の構築を目指し、2003

年2月24日、厚生労働省は、FDA に対し、医療機器及び医薬品に関する日米間の GMP 協

力を積極的に推進するため、書簡を送付した。医薬品 GMP についての厚生労働省の要望

には、例えば書簡交換に記載された現行の協力体制を見直し、相互承認又はそれに類似し

た協力体制構築のための次の段階に向けた協力の強化をしていく考えが含まれている。ま

た、医療機器 GMP についての厚生労働省の要望は、将来的な相互承認又はこれに類似し

た協力体制の構築のための最初の段階について合意することに焦点を当てている。FDA は、

右提案を真剣に考慮し、厚生労働省に対し、可及的速やかに返答する目的で内部での評価

を実施している。

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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3.FDA は、厚生労働省がこれらの未解決の課題を解決することを目的として行った提案を

十分に評価する。

B.GCPs

1.FDA と厚生労働省は、特に日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)の場において、GCPに係る協力活動を続けていく。さらに FDA は係る協力活動の重要性を認識し、厚生労働省

からの要請を含む外国規制当局による GCP に係る情報に関する要請に対し、引き続き適切

に対応する。

2.2003 年2月 24 日、厚生労働省は、FDA に対して書簡を送付し、医薬品に関する GCP協力を推進する旨提案した。FDA は、右提案を真剣に考慮し、厚生労働省に対し可及的速

やかに返答する目的での評価を実施している。

3.FDA は、厚生労働省がこれらの未解決の課題を解決することを目的として行った提案を

十分に評価する。

VI.金融サービス

A.銀行業関係

1.連邦準備銀行 FR Y-7 年次報告システム

 FR Y-7 は米国で銀行業務に従事する全ての外国銀行(FBO)による財務状況および組織状

況に係る年次報告である。連邦準備銀行(FRB)は、その報告から得た情報を用いて、外国銀

行が米国での銀行業務の強化を継続するための資源に係る評価および米国法令・規制のコン

プライアンス状況についての判断を行う。FR Y-7 は今般、規則改正への対応、収集データ活

用の促進および外国銀行への負担の軽減を図るために改訂が行われた。当該改訂は、年間の

報告に係る総負担をおよそ3分の1程度軽減するものと考えられる。

2.ニューヨーク州における資産担保要件

 ニューヨーク州において支店または子会社形態により活動を行っている外国銀行に対する

資産担保要件については、今般、ニューヨーク州銀行局によって、大部分の外国銀行につい

ては担保差入れ額の軽減が行われたところである。現在、ニューヨーク州の法律により、州

内で免許を受けた支店または子会社を有する外国銀行は、第三者に対する負債額の1%にあ

たる資産担保を維持することを求められている。担保差入れ額の下限は、200万ドルであり、

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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優良銀行(well-rated institutions)については4億ドルの上限がかけられている。

3.外国銀行の米国支店の支払利子控除:本店への利子支払い

 米国には、外国企業の米国支店、米国子会社それぞれについて、支払利子控除に関するル

ールがある。どちらのルールも、そのような支払利子控除額を適正な額とすることを意図し

て策定されている。支店形態の場合、米国及び日本は共に、外国企業の支店による支払利子

の適正控除額の算定方法を検討中である経済協力開発機構(OECD)・財務委員会のメンバー

である。

B.その他

1.企業再編時における外国証券発行企業に係る登録要件

 米国証券取引法の下では、企業買収時における株式交換のオファーを含む、米国における

有価証券の公募は、SEC への登録が必要となる。1999 年に SEC は新しいルールを採用し、

買収企業および被買収企業が外国企業であり、米国居住者による被買収企業の株式保有が

10%未満である場合は、登録を免除することとした。さらに、米国人株主比率が10%以上で

あっても、相反する規制上の義務や募集慣行に対応する、より整備された救済策が取り入れ

られている。

2.外国投資信託/会社の商品販売・勧奨に係る規制

 1940年投資会社法により、米国において株式の販売を公に行おうとする全てのファンドは、

一般に、SEC に投資会社として登録を行わなくてはならない。同法セクション7(d)により、

投資会社として登録し、米国において有価証券の公募を行おうとする非米国ファンドは、ま

ずSECから命令を受けなくてはならない。命令を発出するために、SECは“特別な事情

または取極めにより非米国ファンドに対する法律の規定を執行することが法的にも実際的に

も可能である、もしくは命令の発出が公的利益および投資家の保護と合致する”ことを確認

しなくてはならない。セクション7(d)は、株式の購入が非米国ファンドからか米国ファンド

からかに関わらず、米国の投資家が同等の投資家保護を受けられることを一般に確保するた

めのプルデンシャル基準を規定している。同セクションは、非米国ファンドに対して差別の

無い、内国民待遇を与えている。つまり、1940年投資会社法の求める投資家保護を遵守でき

る非米国ファンドは、米国ファンドと変わりない範囲の米国マーケットへのアクセスを法的

に認められている。さらに、下記の通り、非米国投資顧問業者は、米国で投資顧問業者とし

て容易に登録をすることができ、米国ファンドへのサービス提供あるいは米国で組成される

ファンドの設立が可能である。

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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3.外国投資顧問業者の登録要件

(a)1940年投資顧問業者法により、当該顧問業者が登録を免除・禁止されていない限り、

国内外問わず、米国の投資顧問としての業務に関連し米国の司法手段を利用する、如何

なる投資顧問業者に対しても、一般的に登録を求めている。登録ファンドに対し投資顧

問としてサービスを提供する全ての投資顧問業者は、同法下において、登録を行わなく

てはならない。

(b)SEC のスタッフは、非米国投資顧問業者の米国人投資家へのサービス提供においてさ

らに柔軟性を与えるよう同法を運用している。非米国投資顧問業者は彼らの米国の顧客

に同顧問法の保護を与えるよう投資顧問業務を構築する必要があるが、非米国顧客との

取引には同法の適用はない。結果として、非米国投資顧問業者は米国において投資顧問

業者として容易に登録することができ、米国ファンドへのサービス提供あるいは米国で

組成されるファンドの設立が可能である。

4. 海外証券取引所で取引される派生商品の米国投資家への販売に関する規制

(a)外国の先物及びオプション商品を米国投資家に販売する外国仲介業者へのライセンス

要件の限定的適用除外

(1)米国居住者に対する海外の先物またはオプションの契約の勧誘または販売について

は、CFTC 規則のパート30に規定されている。通常、これらの規則は、海外の先物契

約またはオプション契約について米国の顧客に勧誘するまたは注文を受ける、国内外

の如何なる者に対しても、登録を求めている。(注:有価証券に対するオプションは

SEC により監督されている。)

(2)委員会規則30.10 において、所在する国において(米国と)同等の監督上の枠組みに

服しており、米国外に所在しながらビジネスを営む者については、CFTC への登録を

限定的に適用除外を求めることが認められている。同委員会が規則30.10 による適用

除外を許諾した場合、米国外に所在しながらビジネスを営む者は、CFTC への登録を

行わずとも、外国の先物またはオプション取引について米国の顧客に勧誘または注文

を受けても差し支えない。規則 30.10 に基づく適用除外を求める申請者は、所在地の

監督権限下において(米国と)同等の規則が適用されていることを示し、実態ベース

での同等性についての検証結果を説明しなければならない。規則30.10の同等性要件

についてスタッフが評価する際に用いる基準については、規則30の別表Aに明示され

ている。CFTC は1993年に東京穀物商品取引所場に対し、規則30.10に基づく緩和措

置を認めた。

(b)外国の商品を米国投資家に販売する際の認可

(1)一般的に、商品取引法(CEA)および CFTC の規則は、海外取引所で取引されてい

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第2回報告書                                                              米国政府による措置

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る先物および商品オプション商品を米国内において勧誘または販売することを制限し

てはいないが、ある特定のケースにおいては特別な手続きおよび差し止めが適用され

る。外国の総合株価指数先物商品については、外国の取引所で取引されている株価指

数先物契約またはそのオプションの米国内での勧誘または販売の認可に際し、初めに

同委員会のスタッフよりノーアクションレターの発給を受けなくてはならない。この

点に関連し、認可されている日本のブロードベースの株価指数先物契約は以下のとお

り。

(i) FTSE 日本指数先物契約(大阪証券取引所)

(ii) MSCI Japan 指数先物契約(大阪証券取引所)

(iii)日経株価指数300先物契約(日経300)(大阪証券取引所)

(iv) 日経平均株価先物契約(日経225)(大阪証券取引所)

(v) 東証株価指数(TOPIX)先物契約(東京証券取引所)

(vi) S&P/TOPIX150指数先物契約(東京証券取引所)

(2)外国証券取引所で取引されている証券先物商品(ナローベースの株価指数または単

一有価証券の先物またはオプション)は、一般に CFTC および米国 SEC がそれら商品

を規制する規則の適用を行わない限り、勧誘または販売してはならない。

(3)外国政府による債務は、米国 SEC により SEC 規則3a12-8により、先物契約または

そのオプションが米国内で勧誘または販売される前に規制される証券の対象外と規定

されている。SEC は日本国債の米国内における販売を承認しているため、日本国債を

ベースとする先物および先物オプションは CFTC の承認無く米国の投資家に販売して

もよい。